説明

抗アレルギー剤及び抗アレルギー食品

【課題】βグルカンの抗アレルギー活性を相乗的に増強させることができ、少量の摂取でも十分な効果を発揮する抗アレルギー剤、及び該抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー食品を提供すること。
【解決手段】βグルカンと、ペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌とを含有することを特徴とする抗アレルギー剤、及び該抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性疾患に有用なβグルカンの効果を増強した抗アレルギー剤及びこれを含有する抗アレルギー食品、詳しくは、有効成分として、βグルカンに、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaseus)に属する乳酸菌を配合した抗アレルギー剤、及び該抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、人間の体内に侵入する細菌やウイルスなど、或いは体内で発生する腫瘍などから生体を守るシステムである。一方、食品などの生体に必要な栄養成分は免疫寛容を起こし積極的に生体内に取り込むことができる。しかし、免疫系が必要以上に過敏な応答を行なった結果、アレルギー反応を起こすようになる。アレルギー性疾患は作用機序によりI型〜IV型と大きく4タイプに分類されている。季節性鼻炎である花粉症、通年性鼻炎や、気管支喘息などは免疫グロブリンE(IgE)が介在するI型アレルギーといわれている。アトピー性皮膚炎もI型とIV型の複合型と呼ばれている。また、食物アレルギーの発症にはI型、II型、IV型が関与するとされており、わが国でもI型に関連するアレルギー性疾患が増加しているのが現状である。
【0003】
I型のアレルギー症状は、花粉などの抗原の侵入に対応して抗原提示細胞がT細胞の分化に偏りを起こさしめ、B細胞によるIgE抗体産生が誘導されることがきっかけになり発症する。その後、抗体が結合した特定のリンパ球が再び抗原の侵入を受けると、これらの細胞から顆粒が放出されヒスタミンなどの炎症物質が遊離することによりアレルギー症状が起こると考えられている。従って、アレルギーの予防、治療を目的とした場合、ターゲットとする作用点は初期の抗原提示の段階から最終的な脱顆粒の段階まで幅広く存在し、それぞれの作用点に着眼した抗アレルギー剤、抗アレルギー食品が提案されている。抗原提示の抑制をターゲットとしたものにはサンザシの熱水抽出物(特許文献1参照)がある。また、ヘルパーT細胞の分化バランス改善(Th1/Th2バランス改善)を作用点としたものには初乳(特許文献2参照)、乳酸菌KW3110株(特許文献3参照)、アマランス・ヒポコンドリアカスの種実(特許文献4参照)などを代表とした多数の飲食物が提案されている。さらにIgEクラススイッチを抑制する素材として茶葉成分のストリクチニン(特許文献5参照)が提案されている。これらは、いずれも結果的にIgE抗体産生を抑制することによりアレルギー反応を抑制することを目的としたものである。しかしながら、いずれも直接生体でのIgE抗体産生能の評価にまで至っていないか、評価しているとしても統計的な評価を行っていないので、最終的な目的を達成したのか確認ができていない。乳酸菌KW3110株については、生体でのIgE産生抑制を統計的に評価しており有意な効果を示しているが、通常マウスでは100日以上というかなり長期間の経口投与を前提としており、さらに効果的な素材が切望されている。
また、これらアレルギーに効果を示す食品素材はいずれもその有効投与量が医薬品に比べ多量であり、事実上、販売されている商品形態では有効な投与量が摂取されていない現状にある。
【0004】
また、βグルカンが抗アレルギー活性を有することは知られており、βグルカンと乳酸菌を併用することも提案されている。例えば、アウレオバシジウム属に属する菌を培養して得られるβグルカンを含有する培養物と、乳酸菌菌体とを含有する免疫賦活剤(特許文献6参照)や、βグルカンを含有する素材と、乳酸産生菌の加熱処理体とを含有する感染抑制組成物(特許文献7参照)などが提案されている。しかし、いずれもβグルカンと乳酸菌とが相乗効果を発揮するには至らず、その効果は十分に満足できるものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平09−143090号公報
【特許文献2】特開2006−96752号公報
【特許文献3】特開2005−137357号公報
【特許文献4】特開2003−63972号公報
【特許文献5】特開2005−198664号公報
【特許文献6】特開2005−220065号公報
【特許文献7】特開2003−40785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、βグルカンの抗アレルギー活性を相乗的に増強させることができ、少量の摂取でも十分な効果を発揮する抗アレルギー剤、及び該抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
βグルカンの抗アレルギー活性は、本来生体が保持する免疫機能を改変し、過剰な免疫応答を抑制する機構が関与していると考えられている。一方、I型アレルギーにおいては、リンパ球のうちヘルパーT細胞がTh2型の細胞集団が優位になり、インターロイキン4などのTh2サイトカイン濃度が生体内で高まることが原因であると考えられている。βグルカンは、生体内に経口的に摂取されると、腸管において樹状細胞やマクロファージ細胞、M細胞などの免疫細胞に認識され、インターロイキン12などの炎症性サイトカインを分泌し、その結果、T細胞集団をインターフェロンγなどのサイトカインを産生するTh1型のヘルパーT細胞に分化すると思われている。また、インターロイキン12にはTh2型のヘルパーT細胞の分化を抑制する作用があることも知られている。アレルギー性疾患の患者がβグルカンを摂取すると、その結果としてインターロイキン12が産生誘導され、Th2サブセットのヘルパーT細胞集団が減少し、アレルギー性疾患を抑制すると考えられる。βグルカンの作用には異物貪食増強などの作用も知られているが、アレルギー性疾患に作用するメカニズムは、上記インターロイキン12産生誘導が最も深く関与する作用だと思われる。
【0008】
そこで、本発明者はインターロイキン12産生誘導作用を高める物質に着目し鋭意研究を行った。
本発明者は、まずβグルカンの抗アレルギー活性の指標となるin vitro評価系を構築し、その評価系においてβグルカン存在下、標品を添加することで活性が増強されることを指標に探索を行った。
その結果、特定の乳酸菌にβグルカンの抗アレルギー活性を相乗的に増加する活性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、βグルカンと、ペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌とを含有することを特徴とする抗アレルギー剤、及び該抗アレルギー剤を含有する抗アレルギー食品を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗アレルギー剤は、従来に比べ低容量のβグルカンで、高容量の抗アレルギー作用に匹敵する効果(アレルギー性疾患の予防、治療効果)を得ることができる。そのため、本発明の抗アレルギー剤を含有する本発明の抗アレルギー食品は、販売されている商品形態で十分な効果を発揮する有効な投与量を摂取することができる。
また、本発明で使用する添加成分は、食経験のある天然食品素材由来の乳酸菌であるので、本発明の抗アレルギー剤及び抗アレルギー食品は、安全性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で使用されるβグルカンとしては、食品に用いることができるものであれば特に制限されるものではなく、従来抗アレルギー剤に使用されているβグルカンを使用することができるが、中でも酵母由来βグルカンが好ましい。
【0012】
本発明で使用されるペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌は、高いIL−12(インターロイキン12)産生誘導効果を有し、この作用によって抗アレルギー作用をもたらすとともに、βグルカンと相乗効果を発揮し、βグルカンの抗アレルギー活性を相乗的に増強させる。
上記ペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌としては、ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株が好ましい。該菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託されており、その受託番号はFERM P−21300である。
【0013】
乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の菌学的性質を以下に示す。
MRS液体培地(DIFCO社)を用いて、30℃、18時間培養したときの菌の形態
(1)菌の形態 球菌
(2)グラム染色 陽性
(3)運動性 なし
(4)胞子 なし
(5)カタラーゼ なし
(6)通性嫌気性
(7)ブドウ糖の代謝 50%以上乳酸に転換する
(8)生育温度範囲 15℃、30℃および35℃では生育を認めるが、45℃では生育を認めない
(9)乳酸発酵 ホモ型
(10)乳酸の施光性 DL
(11)炭水化物の発酵性 グリセロールは陰性、D-アラビノースは陰性、L-アラビノースは陽性、リボースは陽性、D-キシロースは陽性、ガラクトースは陽性、グルコースは陽性、フルクトースは陽性、マンノースは陽性、ラムノースは陰性、マンニトールは陰性、ソルビトールは陰性、αメチルDグルコシドは陰性、アミグダリンは陽性、エスクリンは陽性、サリシンは陽性、セロビオースは陽性、マルトースは陽性、ラクトースは陽性、メリビオースは陰性、シュクロースは陰性、トレハロースは陽性、イヌリンは陰性、メレジトースは陰性、ラフィノースは陽性、スターチは陰性、グルコン酸は陽性
【0014】
乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株は、食経験が豊富な天然食品素材(酒のもろみ)から分離したものであるため、安全に抗アレルギー剤に利用することができる。
【0015】
乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株は、培養物をそのまま抗アレルギー剤に配合してもよく、また培養物から菌体を回収し、必要に応じて濃縮、乾燥してから抗アレルギー剤に配合してもよい。また、乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株を用いて発酵させた種々の動植物性物質を、上記乳酸菌として抗アレルギー剤に配合してもよい。
【0016】
本発明の抗アレルギー剤は、成人1人1日当たりのβグルカンの摂取量が1〜10,000mg、特に100〜2,000mgとなるようにβグルカンを含有することが好ましい。
また、本発明の抗アレルギー剤のβグルカン及び乳酸菌の含有割合は、特に制限されるものではないが、好ましい含有割合は次の通りである。
βグルカン及び乳酸菌の合計含有量を100質量%として、βグルカン1〜99質量%及び乳酸菌99〜1質量%、特に好ましくはβグルカン50〜90質量%及び乳酸菌50〜10質量%。
【0017】
本発明の抗アレルギー剤は、上記βグルカンと、上記乳酸菌と、必要に応じて薬学的に許容される種々の担体、賦形剤、その他の添加剤、その他の成分を配合して製剤化したものである。本発明の抗アレルギー剤の剤型は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの経口剤であり、常法により製剤化することができる。また、他の成分として、その他の抗アレルギー作用を有する成分、抗炎症薬、各種ビタミン類、生薬、ミネラル類などを適宜配合することができる。
【0018】
また、本発明の抗アレルギー食品は、上述の本発明の抗アレルギー剤を食品に含有させたものである。本発明の抗アレルギー剤を含有させる対象の食品としては、パン類、麺類、タブレット、キャンディーなどの菓子類、清涼飲料、ジュース、栄養ドリンクなどの飲料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。食品への添加時機も、特に制限されるものではなく、食品の製造工程中に添加してもよく、製造された食品に添加してもよい。
【0019】
本発明の抗アレルギー食品中の抗アレルギー剤の含有量は、特に制限されるものではないが、成人1人1日当たりのβグルカンの摂取量が1〜10,000mg、特に100〜2,000mgとなるように本発明の抗アレルギー剤を含有させることが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されず、様々な実施形態が可能であり、本発明は本明細書及び図面に開示の思想に従ったものであるかぎり、すべての実施形態を包含することは理解されるべきである。
【0021】
(使用した乳酸菌)
鉄砲漬け、ゴーヤ漬け、キムチなどの漬物やイーストなど、日本人の食経験が豊富な植物性素材から単離された植物性乳酸菌の中から、桿菌または球菌であること、同様の性状をもたらすものが複数菌株見つかること、通常の培地で増殖性が高いことなどを基準に、表1に示す代表的な5菌株を選抜した。表1に示すMIXは、本発明で使用される乳酸菌であるペディオコッカス・ペントサセウスMIX株である。また、同表中のRIEは、ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株であり、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに受託番号FERM P−21110として寄託されているものである。同様にAYAは、ラクトバチルス・プランタラムAYA株であり、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに受託番号FERM P−21106として寄託されているものである。
【0022】
【表1】

【0023】
(乳酸菌試料の調製)
10μg/mlシクロヘキシミドを含むMRS培地を用いて37℃で48時間培養した表1に示した各乳酸菌株を、遠心分離によって集菌し、滅菌水で3回洗浄した後、滅菌水に懸濁させ、121℃で30分間オートクレーブ処理した。これらを凍結乾燥して乳酸菌試料をそれぞれ得た。
【0024】
実施例1(THP−1細胞を用いた乳酸菌の評価)
表1に示した各乳酸菌株について、ヒトに対する応答をTHP−1細胞により下記のようにして評価した。
THP−1細胞が未分化の状態では、IL−12産生が誘導されず、またβグルカンの応答性も確認されない。LPS(リポポリサッカライド)の添加によりβグルカンの応答性が確認されたので、LPS添加系を使用することとした。LPSの最適な添加量を確認する目的でLPSの濃度依存性効果を検討した。その結果を図1に示す。これより、βグルカンによる応答性が最も反映される、20ng/mlのLPSを添加した系を使用することとした。
次に、βグルカンの至適添加量を確認する目的で、陽性対照としてペプチドグリカン(Peptidoglycan) の有無におけるβグルカンの濃度依存性を確認した。その結果、図2に示すように、ペプチドグリカンの有無に関らず、濃度依存性が確認されたが、ペプチドグリカンが存在した場合の方が濃度依存性曲線の立ち上がりが早く、βグルカンに対しペプチドグリカンの相乗性効果が確認された。ペプチドグリカン存在下におけるHalf maximumである、20μg/mlを至適βグルカン濃度とした。
【0025】
培地調製
基礎培地:基礎培地としてSIGMA RPMI1640, Code No. ; R0883, Lot. No. :80K2350 を使用した。
添加物:添加物としてウシ胎児血清 (FCS);ICN Cellect Gold ;Lot.No. 6511F β-mercaptoethnol 、20倍添加液: 200mM(23.8g/500ml) HEPES 、25g/500ml Glucose 、20mM(1.1g/500ml) Na-Pyruvate in RPMI1640 pH7.2にNaOHで調製後濾過滅菌
調製法:以下のように調製した。
RPMI1640を500ml ボトルに425ml 分注
↓非働化済FCS 50mlを添加
↓20倍添加液を25ml添加
↓50mM β-mercaptoethnol (in RPMI1640) 500ml添加
↓混和 保管は 4℃において行った。
THP-1 細胞Stock の解凍
液体窒素中保管してあったStock 細胞を37℃温水中で解凍
↓培地9ml 入れた50ml遠心管に細胞懸濁液全量(1ml) を添加
↓遠心分離 1240rpm 、5 分間
↓上清を除去
↓+FCS 培地25mlで細胞を懸濁
↓75cm3 フラスコに全量
培養
使用インキュベータ;
培養条件;37℃、5 %CO 、100%湿潤条件
【0026】
細胞数計測
(1) トリパンブルー溶液10mlをマイクロ遠心管にとり、等量の細胞懸濁液を加えピペッテ ィングした。
(2) 血球計測板に懸濁液をのせ、生存細胞数を計測した。
以下の計算により細胞数を算出した。
細胞数濃度=1区画あたりの細胞数×希釈率(2倍)×104 cells/ml
継代
(1) 適当な継代液量の培養液を新しいフラスコに移し、新しい培地を追加する。
(2) 37℃、5 %CO 下で培養
細胞の凍結保存
使用保存液:日本全薬工業製、セルバンカー Code No.,ZCB-101, Lot No., 309180
細胞の準備
1.ミッドログフェースに生育した細胞を遠心分離(1240rpm 、5min)し、上清を除去
2.セルバンカーで細胞を懸濁する。
3.クライオチューブに細胞懸濁液を分注する。
4.クライオチューブを緩冷却容器に入れ容器を-80 ℃へ
5.2 〜3 日後、緩冷却容器から保管用容器に移し-80 ℃保存
【0027】
THP−1細胞を用いたIL−12産生誘導
添加物:
βグルカン;原液濃度10mg/ml EtOH懸濁後凍結乾燥により滅菌済み
LPS;原液20mg/ml
乳酸菌;乳酸菌試料を秤量後1mg/mlになるようにRPMI1640に懸濁し使用した。
THP-1 細胞を3 ×105 cells/mlになるよう培地(10% FCS RPMI1640 medium with Glucose, HEPES, Pyruvate, 2-mercaptoethanol )で懸濁

50mlの細胞懸濁液に25μl of 20 μg/ml LPSと 100μl of 10 mg/ml βglucanを添加

懸濁液を 24 well plateに各1.0ml/wellで分注

Final 10μg/mlの乳酸菌試料 (1mg/ml 10 μl)を添加.

24 hr 37℃ 5% CO 雰囲気下で培養

0.5ml の培養上清をサンプリングしhIL-12 p40 ELISA. に供した。
ELISA によるIL−12の定量結果を表2に示す。
【0028】
実施例2(J774.1細胞を用いた乳酸菌の評価)
表1に示した各乳酸菌株について、マウスに対する応答をJ774.1細胞で下記のようにして評価した。
J774.1細胞を用いたIL−12産生誘導
添加物:
乳酸菌;乳酸菌試料を秤量後1mg/mlになるようにRPMI1640に懸濁し使用した。
J774.1細胞を3 ×105 cells/mlになるよう培地(10% FCS RPMI1640 medium )で懸濁

懸濁液を 24 well plateに各1.0ml/wellで分注

Final 10μg/mlの乳酸菌試料 (1mg/ml 10 μl)を添加.

24 hr 37℃ 5% CO 雰囲気下で培養

0.5ml の培養上清をサンプリングしhIL-12 p40 ELISA. に供した。
ELISA によるIL−12の定量結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
ELISA によるIL−12の定量の詳細は次の通りである。
使用Plate: Nunc MaxiSorb
一次抗体:
ヒトIL-12 用;Anti-human IL-12 p40 antibody ; Mouse monoclonal ; R & D systems Inc. MAB609; Lot. ZD054121
マウスIL-12 用;Monoclonal Anti-mouse IL-12/IL-23 p40 Antibody R & D systems Inc.MAB499; LotAGN05
使用濃度:原液 500μg/ml in PBS (Aliquot; 20μl/tube) PBSで325 倍希釈し使用
洗浄buffer: 0.05% Tween20 in PBS
反応buffer: 0.1% Block A, PBS 0.01% NaN or 0.1% Block A, PBS (for HRP-Streptavidin)
Blocking buffer:×4 Block A (YUKIJIRUSHI) with 0.01% NaN
標準物質
ヒトIL-12 用;hIL-12 p40 R & D systems Inc.; Lot. JB054111 Conc.; 100ng/ml
Dilution: 1st;× 10 ( 70 μl+ 630μl) with reaction buffer → 10000 pg/ml
2nd;× 3.16 (200μl+432 μl) with reaction buffer → 3162pg/ml
Each dilution ×10 (50μl+ 450μl) with reaction buffer →316, 100, 31.6pg/ml
マウスIL-12 用;mIL-12/IL-23 p40 Homodimer R & D systems Inc.; 499ML
二次抗体:
ヒトIL-12 用; Biotinylated anti human IL-12 antibody; Mouse monoclonal ; ENDOGEN Inc. M-121-B; Lot. DB53895
使用濃度:原液 500μg/ml in 0.1% Block A, TBS (Aliquot; 10μl) 反応bufferで650 倍に希釈し使用
マウスIL-12 用;Biotinylated Anti-mouse IL-12/IL-23 p40 Antibody
R & D Systems. BAF499; Lot. AKD11
使用濃度:原液 500μg/ml in 0.1% Block A, TBS (Aliquot; 10μl) 反応bufferで650 倍に希釈し使用
Streptavidin; HRP conjugated Streptavidin; ENDOGEN N100 Lot. EB60509
使用濃度:原液1.25mg/ml 0.1% Block A, PBS NaN free HRP で10000倍に希釈し使用
HRP 基質: TMB Moss Inc.
反応停止液: 2N HSO
使用機器:Beckman Coulter プレートウォシャー
Plate Reader: :ARVO MAX (Perkin Elmer.)
【0031】
ヒト用もマウス用も工程は同じ
一次抗体をプレートに分注(100 μl/well)4℃、20hrインキュベート

液を除去し、ブロッキングバッファーを(250ml/well)分注、25℃、1 hrインキュベート↓
プレートを3回洗浄バッファーで洗浄

Standard hIL-12 p40 とサンプル(培養上清)を分注(100 μl/well)し、25℃、2 hrインキュベート

プレートを3回洗浄バッファーで洗浄

一次抗体をプレートに分注(100 μl/well)25℃、2 hrインキュベート

プレートを3回洗浄バッファーで洗浄

HRP-streptavidinを分注(100 μl/well)25℃、30 minインキュベート

プレートを3回洗浄バッファーで洗浄

TMB 基質を分注(100 μl/well)25℃、5 〜10min インキュベート

停止液を添加(100 μl/well)

450nm 吸光度測定
【0032】
実施例3(ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の濃度依存性試験)
ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株について、その添加濃度を変化させて実施例1に記載のTHP−1細胞を用いたIL−12産生誘導を、βグルカンの存在下及び非存在化で実施した。その結果を図3に示す。βグルカンの有無により、その曲線勾配は変化し、βグルカンに対する相乗効果が確認された。一方、ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の添加濃度を固定し、βグルカンの濃度を変化させた濃度依存性試験も実施した。その結果を図4に示す。この結果から、 ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株に対するβグルカンの相乗効果も確認された。
J774.1細胞についても、ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の濃度依存性試験を行った。その結果を図5に示す。
【0033】
実施例4
(乳酸菌及びβグルカン摂食によるアレルギー性鼻炎モデルモルモットの鼻汁量抑制に及ぼす影響の評価)
1.動物実験スケジュール
4週齢の雄モルモット20匹の体重を測定し、無作為抽出法により各群10匹の平均体重および分散がほぼ等しくなるように群分けを行なった。群分け後、製造後5ヵ月以内の固形飼料LRC4(オリエンタル酵母工業株式会社製)を給餌器に入れ、自由に摂取させた。βグルカン500mg/kg/日+乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株500mg/kg/日投与群には、群分け翌日から1日2回計28日連続で経口投与した。
また、全モルモットの両側鼻前庭に、10%TDI溶液に浸した細軸綿棒を10秒間接触させて塗布し、この操作を1日1回、群分け翌日から5日間繰り返し実施して感作を行なった。それ以降は感作を行なわず飼育を続け、最終感作の4週間後に鼻汁の誘発を行った。鼻汁の誘発は、5%TDI溶液に浸した細軸綿棒を両鼻前庭に10秒間接触させ塗布することにより行なった。
2.鼻汁量測定
鼻汁誘発開始から15分間の鼻汁を脱脂綿に吸収させ、密栓マイクロチューブにいれてその重量を測定し、各群10匹ずつの鼻汁量の平均値を算出した。また、対照群の鼻汁量平均値からβグルカンと乳酸菌MIX株投与群の鼻汁量平均値を減じたものを対照群の鼻汁量平均値で割った値を鼻汁量抑制値とした。
3.実験結果
表3に示すように、βグルカン500mg/kg+乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株500mg/kg投与群は、対照群と比較してアレルギー性鼻炎発症に伴う鼻汁の量が有意(危険率1%)に低下していることが確認され、βグルカンとペディオコッカス・ペントサセウスMIX株を含有する抗アレルギー剤は、経口投与によりアレルギー症状を緩和する効果があること、すなわち、抗アレルギー作用を示すことが確認された。
【0034】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】LPSの添加によるβグルカンの応答性を示す図である。
【図2】ペプチドグリカンの有無におけるβグルカンの濃度依存性を示す図である。
【図3】実施例3におけるTHP−1細胞についてのペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の濃度依存性試験(MIX株の添加濃度を変化させた場合)の結果を示す図である。
【図4】実施例3におけるTHP−1細胞についてのペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の濃度依存性試験(βグルカンの添加濃度を変化させた場合)の結果を示す図である。
【図5】実施例3におけるJ774.1細胞についてのペディオコッカス・ペントサセウスMIX株の濃度依存性試験(MIX株の添加濃度を変化させた場合)の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
βグルカンと、ペディオコッカス・ペントサセウスに属する乳酸菌とを含有することを特徴とする抗アレルギー剤。
【請求項2】
βグルカンが、酵母由来βグルカンである請求項1に記載の抗アレルギー剤。
【請求項3】
ペディオコッカスに属する乳酸菌が、ペディオコッカス・ペントサセウスMIX株(受託番号FERM P−21300)である請求項1又は2に記載の抗アレルギー剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の抗アレルギー剤を含有することを特徴とする抗アレルギー食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−67742(P2009−67742A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239170(P2007−239170)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【出願人】(000103840)オリエンタル酵母工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】