説明

抗アレルゲン組成物

【課題】
抗アレルゲン組成物、特に不織布、繊維または繊維製品に加工できる、抗アレルゲン組成物および抗アレルゲン性能を有する不織布、繊維または繊維製品をを提供することを目的とする。
【解決手段】
カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子と、アルミニウムおよび/またはジルコニウムの塩を含有することを特徴とする抗アレルゲン組成物によってダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させることができ、またカーペット、畳、寝具類、カーテン、衣料品、ぬいぐるみ、マスク、フィルター材料、掃除用ウェットワイパー、電気掃除機の集塵袋等の不織布、繊維または繊維製品にアレルゲン性を低減化させる機能を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させるため、あるいは不織布、繊維または繊維製品にアレルゲン性を低減化させる機能を付与するための抗アレルゲン剤を、固定化あるいは耐水性を付与し徐放化させるための樹脂成分を含有する加工剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患は、長年にわたり、多くの人が悩まされてきたものである。これらのアレルギー性疾患の原因として、屋内に棲息するダニやペットの毛、花粉、カビが代表的なものとして、良く知られている。現在、アレルギー患者の治療には主に薬物療法が適用されているが、一方では、アレルギーを引き起こす因子であるアレルゲンを患者自身の生活環境から除去することも直接、アレルゲンへの暴露から患者を守るという合理的な手段である。このようなアレルゲン除去による症状改善は、日本の他、ヨーロッパやアメリカにおいても報告がなされている。
【0003】
畳、絨毯、寝具、カーテン等の家屋内にある繊維製品はダニの生育の温床となることが多く、ダニが繁殖するためにアレルギーを引き起こす原因となり問題になっている。ダニには、ツメダニ、コナダニ等の種類があり、それらの内コナヒョウヒダニ Dermatophagoides farinae 、ヤケヒョウヒダニ Dermatophagoides pteronyssinusはダニアレルギーを引き起こす原因として重要視されている。これらのダニは、虫体そのものがダニアレルゲンになるだけでなく、ダニの死骸や糞も非常に強いアレルゲンとなる。カビは湿度の高い場所に発生しやすく、肺に吸い込まれた場合にはアレルゲンとなる。植物アレルゲンとしては各種植物の花粉が挙げられ、花粉には、スギ、ヒノキ、ブタクサ、オオアワガエリ、ケヤキ、ヨモギ、ハルガヤ等のものがアレルギーの原因となることが知られている。
【0004】
畳、絨毯、寝具、カーテン、ぬいぐるみ等の繊維でできた装飾品についてもダニの繁殖の可能性があるためアレルゲンの発生源となる問題がある。また、マスクはスギ等の花粉を吸入するのを防ぐために用いられているが、マスクに付着した花粉はアレルゲン性が消失するわけではないので、再び飛散することによって吸収してしまう危険性がある。電気掃除機はアレルゲン除去の方法として有効であるが、吸引したゴミに含まれる多量のアレルゲンは集塵袋に貯蔵されるだけであり、集塵袋の廃棄時にアレルゲンが再飛散する危険性が考えられる。
【0005】
薬剤を使用しないアレルゲン除去の方法としては、電気掃除機による吸引、空気清浄機による除去や寝具の高密度カバーの使用などがあげられる。しかしながら、電気掃除機による吸引だけでは除去できるアレルゲン量に限界があり、空気清浄機では空中に舞うアレルゲンのみの除去になる。また、寝具の高密度カバーでは内側からのアレルゲン除去にはなるが外側からのアレルゲン除去にはならないなど、これらの方法は必ずしも満足できるものではなかった。
【0006】
アレルゲン物質のアレルギー性を低減あるいは除去するための薬剤に関しても、種々の提案が行われている。例えば、(特許文献1)にはタンニン酸をアレルゲンの不活性化剤として使用する方法、(特許文献2)には茶抽出物、ハイドロキシアパタイト、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、没食子酸及び没食子酸と炭素数1から4までのアルコールとのエステルをアレルゲンの不活性化剤として使用する方法が開示されている。しかし、これらの抗アレルゲン剤は、繊維や繊維製品に付着させた場合、着色あるいは経時的に変色を起こすという問題点があった。したがって、繊維や繊維製品に噴霧する用途に使用するのは困難であり、さらには繊維や繊維製品に加工する場合にも問題点となる。アレルゲン低減化繊維として、(特許文献3)には芳香族ヒドロキシ化合物を繊維に化学的に結合または固着させるものが提案されているが、低減化効果は十分なものではなかった。また(特許文献4)には種々の植物抽出油分を繊維に加工する方法が提案されているが、これらの植物抽出物は経時的に揮発するため効果の持続性に乏しく、また繊維に加工した場合には油分が酸化によって経時的に効力が低減し変色する恐れがあった。(特許文献5〜6)にはアルミニウム塩やジルコニウム塩をアレルゲン不活化剤として使用する方法が開示されているが、これらの塩は水溶性化合物であり、水によって流脱する問題があった。
【0007】
抗アレルゲン剤を不織布、繊維、繊維製品、プラスチック製品、木質材料に加工した場合、洗濯を行ったときや水が噴霧された場合、流脱によって効力が持続しない点が問題となることがあった。この場合には流脱を防ぐためのバインダーとしてアクリルエマルジョン等の樹脂エマルジョンが用いられるが、バインダー量が十分な場合は抗アレルゲン剤を覆ってしまい、流脱を防ぐものの抗アレルゲン性能そのものが発揮されず、バインダー量が少ないと流脱を防ぐことができずに効力を維持できなかった。従来、ポリビニルアルコール系樹脂は水溶性であるため、耐水性を持たせるための試みが種々行われてきた。ポリビニルアルコールと金属塩による樹脂組成物に関しては、(特許文献7〜11)にポリビニルアルコールを含む水溶性樹脂とアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウムやマグネシウム等の多価金属塩を用いた樹脂組成物あるいはバインダーが開示されている。しかし、ポリビニルアルコール系水溶性樹脂と金属塩によって耐水性を向上させた樹脂が、抗アレルゲン性を有し、さらに水による流脱を抑制し徐放化させ効力を長期にわたって持続させることができることは何ら記載されておらず、示唆もされていない。(特許文献12)にはポリビニルアルコールを含有する溶液からなるハウスダスト処理剤が開示されているが、対象物に噴霧するための剤であって耐水性を付与する効果はなく、またアレルゲンを不活性化する効果も充分ではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−44821号
【特許文献2】特開平6−279273
【特許文献3】特開2003−96670
【特許文献4】特開平10−53532
【特許文献5】特開2001−139479
【特許文献6】特開2001−247467
【特許文献7】特開平5−117003
【特許文献8】特開2000−38489
【特許文献9】特開2000−178396
【特許文献10】特開2003−105155
【特許文献11】特開2002−88214
【特許文献12】特開2002−128680
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ダニやスギ花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させるため、あるいは不織布、繊維または繊維製品にアレルゲン性を低減化させる機能を付与し、容易に流脱することのない抗アレルゲン組成物およびこれらの抗アレルゲン組成物を加工した不織布、繊維または繊維製品を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、このような課題を解決するため鋭意研究を行った結果、カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子と、アルミニウムおよび/またはジルコニウムの塩を含有する組成物が高い抗アレルゲン性を持つことを見出し、さらに不織布、繊維または繊維製品に加工することによって耐水性のある抗アレルゲン繊維または抗アレルゲン繊維製品を提供できることを見出し本発明に至った。すなわち本発明は、(1)カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子と、アルミニウムおよび/またはジルコニウムの塩を含有する抗アレルゲン組成物、(2)カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子が、ポリビニルアルコールおよび/またはポリアクリル酸であることを特徴とする抗アレルゲン組成物、(3)それらの抗アレルゲン組成物を加工した不織布、繊維または繊維製品、(4)それらの抗アレルゲン組成物を不織布、繊維または繊維製品に加工し、環境中に存在するアレルゲンのアレルゲン性を低減化させる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物を用いることにより、不織布、繊維または繊維製品にダニやスギ花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させ、さらに耐水性を持った機能を付与し、アレルゲン性を低減化させる機能を持ったフィルター材、マスク等の不織布、繊維または繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における、カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子はポリマーにカルボキシル基または水酸基を有していればどのようなポリマーでも差し支えなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、澱粉、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。それらの中でもポリアクリル酸とポリビニルアルコールが好ましい。ポリアクリル酸の場合、重合度は10000〜70000が適しており、ポリビニルアルコールの場合、ポリ酢酸ビニルをけん化したものが用いられ、重合度は300〜10000である。けん化度は80〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましい。ポリビニルアルコールとポリアクリル酸は混合して使用しても差し支えなく、また各々異なる重合度、けん化度のものを混合して使用することも可能である。なお本発明において水溶性高分子とは、常温の水あるいは熱水に1%以上溶解することを意味する。アルミニウム塩としては特に限定されないが、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、カリミョウバン等を使用することができる。ジルコニウム塩としても特に限定されないが、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル等を使用することができる。アルミニウム塩とジルコニウム塩は混合して使用しても差し支えない。
【0013】
抗アレルゲン組成物中の、カルボキシル基および/または水酸基を有する水溶性高分子の含有率は、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。0.01重量%未満の場合には耐水性を付与するのが困難になり、また15重量%を超えると液状に製剤するのが困難となる。抗アレルゲン組成物中の、アルミニウム塩および/またはジルコニウム塩の含有率は、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。0.01重量%未満の場合には耐水性を付与するのが困難になり、また10重量%を超えると液状に製剤するのが困難となる。カルボキシル基および/または水酸基を有する水溶性高分子とアルミニウム塩および/またはジルコニウム塩の比率は1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2であり、この範囲以外では耐水性効果が低下する。
【0014】
本発明の抗アレルゲン組成物に公知となっている抗アレルゲン成分をさらに添加することも可能である。抗アレルゲン成分としては、タンニン酸、ガロタンニン、エピカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のポリフェノール類、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸系化合物またはその塩等、茶抽出物、柿渋、没食子酸、カルシウム塩、ストロンチウム塩、希土類塩等が挙げられる。

【0015】
本発明の抗アレルゲン組成物の剤型は、不織布、繊維および繊維製品への加工が可能であれば、液状、粉体状及びペースト状等、どのような剤型でも差し支えないが、液状とするのが扱いが容易で有効である。このような製剤を行うため、適当な溶剤を単独、もしくは二種類以上の混合溶剤として使用できる。溶剤には特に限定されないが、水溶性高分子と相溶性の高い、例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、酢酸、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、γ−ブチロラクトン、スルホランなどの極性溶剤を適宜使用することができる。通常は、水、アルコール類、グリコールエーテル類等の極性溶剤が使用される。
【0016】
本発明の抗アレルゲン組成物は、屋内塵性ダニのアレルゲン除去を目的に使用する場合、殺ダニ剤と同時に加工することにより、その抗アレルゲン効果をさらに持続させることも可能である。使用する殺ダニ剤は、屋内塵性ダニに対して致死効果や忌避効果のあるものであれば特に限定はなく、例えば、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、サリチル酸フェニル、シンナムアルデヒド、ヒソップ油、ニンジン種子油等を用いることができ、また天然ピレトリン、フェノトリン、ペルメトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、マラチオン、フェンチオン、ダイアジノン等の有機リン系化合物、ジコホル、クロルベンジレート、ヘキシチアゾクス、テブフェンピラド、ピリダベン、アミドフルメト等を用いることができる。
【0017】
本発明の抗アレルゲン組成物は、カビあるいは菌の増殖が懸念される場合がある。そのために防カビ剤または抗菌剤を同時に併用することが可能である。防カビ剤または抗菌剤の種類は防カビまたは抗菌効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、5−クロロ−N−メチルイソチアゾロン、メチレンビスチオシアネート、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、グルタルアルデヒド、ヨードプロピニルブチルカーバメート、ピリジンチオール−N−オキシドの亜鉛塩、1,2−ベンゾイソチアゾロン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、グルコン酸クロルヘキシジン、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、オルトフェニルフェノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラクロロメタキシレノール、パラクロロメタクレゾール、ポリリジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、N−n−ブチルベンゾイソチアゾロン、N−オクチルイソチアゾロン、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチルパラトリルスルホン、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、脂肪酸グリセリンエステル、ヒノキチオール等を用いることができる。
【0018】
本発明の抗アレルゲン組成物の使用方法としては、不織布、繊維または繊維製品に浸漬、塗布、スプレー等の方法によって加工することができる。繊維または繊維製品としては、衣料品、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット、天井材及び床材等の自動車部品類、ぬいぐるみ等が挙げられ、不織布としては掃除用ウェットワイパー、マスク、フィルター材料、電気掃除機の集塵袋等があげられる。またアレルゲンで汚染されたカーペット、畳、寝具類、カーテン等の環境中の対象物に処理するための散布剤として使用することも可能である。
【0019】
本発明の抗アレルゲン組成物を加工することができる不織布や繊維には種々のものがあるが、たとえばナイロン、綿、ポリエステル、羊毛等が挙げられ、これらの繊維を2種類以上使用した複合繊維であっても差し支えない。またポリエチレンやポリプロピレンを用いた不織布にも使用することが可能である。本発明の抗アレルゲン組成物の不織布、繊維または繊維製品への加工方法は特に限定されるものではないが、浸漬処理、スプレー処理、吸尽加工等を行うことが可能である。使用濃度は製剤の0.1〜5.0%o.w.fであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜2.0%o.w.fである。
【0020】
本発明の抗アレルゲン組成物の製剤化に際しては、前述の溶剤、防ダニ剤、抗菌剤の他に、必要に応じてキレート剤、防錆剤、増粘剤、香料、スケール防止剤、界面活性剤、pH調節剤、消泡剤、帯電防止剤、柔軟加工剤等を添加することも可能である。
【0021】
本発明の抗アレルゲン組成物の使用形態としては、加工剤用途の水性溶液が適しているが、スプレー、エアゾール、ペースト、粉剤等の剤型にすることも可能であり、特に限定されるものではない。また環境中で人が接触する可能性のある組成物、たとえば洗剤、石鹸、シャンプー、柔軟剤、消臭剤、防カビ剤、除菌剤、殺虫剤、塗料、接着剤等に添加することによって環境中のアレルゲンを低減化させることも可能であり、環境中で人が接触する可能性のある材料、たとえば木材、コンクリート、金属、石、ガラス等の建材等、ゴム、紙、樹脂、プラスチックのよる成型品等に加工することによって環境中のアレルゲンを低減化させることも可能である。
【0022】
本発明組成物、および本発明組成物を加工した不織布、繊維または繊維製品の使用により、ハウスダスト中のダニ由来のアレルゲン、イヌやネコなどのペットの毛や上皮、ゴキブリ、羽毛、カビ由来のアレルゲン、及びスギ、ヨモギ、ハルガヤ、ヒノキ、ブタクサ等の花粉、天然ゴムラテックス等の植物アレルゲンを低減化することができ、多種のアレルゲンを実質的になくすことができる。よって本発明は、環境中のアレルゲンがハウスダスト中のダニアレルゲンや植物アレルゲンの場合に特に効果的に作用するものである。
【実施例】
【0023】
本発明を実施例、試験例により更に詳しく説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。なお、下記に示す%はすべて重量%である。
【0024】
(実施例1〜4)
下記、表1に示す組成のものを、充分攪拌することにより、均一な溶液を得た。ポリビニルアルコールとしては日本合成化学株式会社製ゴーセノールを使用した。ポリアクリル酸は和光純薬工業製25%水溶液を使用した。
【0025】
【表1】

ゴーセノールGL−05:ポリビニルアルコール(けん化度 87%)
ゴーセノールNH−20:ポリビニルアルコール(けん化度 99%)
【0026】
(比較例1〜5)
下記、表2に示す組成のものを、充分攪拌することにより、均一な溶液を得た。
【0027】
【表2】

【0028】
加工品によるダニアレルゲンの低減化効果の測定
(不織布への加工)
70g/m2の不織布(30cm×40cm、)を、実施例1〜4、比較例1〜5を各々15%となるように水で希釈した液に20分間浸漬し、しぼり率300%で処理後、105℃で20分間乾燥させた。処理した不織布を半分に切断し、一方をイオン交換水100mLに1時間浸漬することによって水洗を行った。水洗前および水洗後の不織布について抗アレルゲン試験を行った。
【0029】
(試験例1)
実施例または比較例を加工した不織布を5cm×5cmに切り取り、チャック付きポリ袋に投入し標準ダニアレルゲン懸濁液(アレルゲン量1000ng/mL)1mLを加え、試料とアレルゲンを接触させた。1時間後にチャック付きポリ袋からアレルゲン液を搾り出し、遠心分離後のこれら試料について Derf2酵素免疫測定法(ELISA)のサンドイッチ法にてダニアレルゲン低減化効果の測定を行った。まず、リン酸緩衝液(pH7.4、0.1重量%NaN含有)で2μg/mLに希釈したDerf2 モノクローナル抗体15E11を、F16 MAXISORP NUNC−IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり100μLずつ添加し、4℃にて1日以上感作させた。感作後、液を捨て、ブロッキング試薬{1重量%牛血清アルブミン+リン酸緩衝液(pH7.2、0.1重量%NaN含有)}を1ウェルあたり200μLずつ添加し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。次に、加工不織布と接触させたダニアレルゲン抽出液試料を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識したDerf2モノクローナル抗体を蒸留水で200μg/mLに溶解し、それをリン酸緩衝液{pH7.2、1重量%牛血清アルブミン及び0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で1000倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、先ずリン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で、次いで蒸留水でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)13mLにオルト−フェニレンジアミンジヒドロクロライド(26mg Tablet、SIGMA CHEMICAL CO.製)と過酸化水素水13μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間反応させた。その後直ちに、2mol/L H2SO4を50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(Bio−Rad Laboratories Inc.製)で吸光度(OD490nm)を測定した。結果を表3に示した。
【0030】
【表3】

【0031】
(試験例2)
抗アレルゲン組成物によるスギ花粉アレルゲンCryj1の低減化効果の測定
実施例または比較例を加工した不織布を5cm×5cmに切り取り、チャック付きポリ袋に投入し標準スギ花粉アレルゲン液(アレルゲン量 35ng/mL)1mLを加え、試料とアレルゲンを接触させた。1時間後にチャック付きポリ袋からアレルゲン液を搾り出し、遠心分離後のこれら試料について Cryj1酵素免疫測定法(ELISA)のサンドイッチ法にてスギ花粉アレルゲン低減化効果の測定を行った。
まず、リン酸緩衝液(pH7.4、0.1重量%NaN含有)で2μg/mLに希釈したCryj1 モノクローナル抗体013を、F16 MAXISORP NUNC−IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり100μLずつ添加し、4℃にて1日以上感作させた。感作後、液を捨て、ブロッキング試薬{1重量%牛血清アルブミン+リン酸緩衝液(pH7.2、0.1重量%NaN含有)}を1ウェルあたり200μLずつ添加し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。次に、加工不織布と接触させたスギ花粉アレルゲン抽出液試料を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識したCryj1モノクローナル抗体053を蒸留水で200μg/mLに溶解し、それをリン酸緩衝液{pH7.2、1重量%牛血清アルブミン及び0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で1200倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、先ずリン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)13mLにオルト−フェニレンジアミンジヒドロクロライド(26mg Tablet、SIGMA CHEMICAL CO.製)と過酸化水素水13μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間反応させた。その後直ちに、2mol/L H2SO4を50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(Bio−Rad Laboratories Inc.製)で吸光度(OD490nm)を測定した。結果を表4に示した。
【0032】

【表4】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、ダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させることができ、また不織布、繊維または繊維製品にアレルゲン性を低減化させる機能を付与するための抗アレルゲン組成物、およびアレルゲンを低減化できる不織布、繊維または繊維製品を提供することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子と、アルミニウムおよび/またはジルコニウムの塩を含有することを特徴とする抗アレルゲン組成物。

【請求項2】
カルボキシル基および/または水酸基を有する少なくとも一種類の水溶性高分子が、ポリビニルアルコールおよび/またはポリアクリル酸であることを特徴とする請求項1記載の抗アレルゲン組成物。

【請求項3】
請求項1または2記載の抗アレルゲン組成物を加工した不織布、繊維または繊維製品。

【請求項4】
請求項1または2記載の抗アレルゲン組成物を、不織布、繊維または繊維製品に加工し、環境中に存在するアレルゲンのアレルゲン性を低減化させる方法。


【公開番号】特開2008−94906(P2008−94906A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276345(P2006−276345)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000250018)住化エンビロサイエンス株式会社 (69)
【Fターム(参考)】