説明

抗ウイルス化合物を同定する添加時間検定

本発明は、微生物、例えばHIVなどの複製周期を阻害する化合物を同定するに適した多穴検定および本発明に従う検定を実施するに適した装置に関する。本発明は、更に、本発明に従う検定で同定可能な化合物および前記化合物を治療的に有効な量で含有させた薬剤組成物にも関する。その同定した化合物は薬剤として使用可能であり、特にエイズを包含する感染病を治療する薬剤の製造および感染病を治療する方法で使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関する。本発明は、1番目の面において、微生物、例えばHIVなどの複製周期を阻害する化合物を同定する検定に関する。本発明は、別の面において、本発明に従う検定を実施するに適した装置に関する。本発明は、更に、本発明に従う検定で同定可能な化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と表示されるレトロウイルスは複雑な病気の病因であり、そのような複雑な病気には、免疫系の進行性破壊(後天性免疫不全症候群;エイズ)および中枢および抹消神経系の変性が含まれる。そのようなウイルスはいろいろな名称で知られており、それらには、T−リンパ球ウイルスIII(HTLV−III)またはリンパ節症関連ウイルス(LAV)またはエイズ関連ウイルス(ARV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)が含まれる。区別可能な2ファミリー、即ちHIV−1とHIV−2が今日までに同定された。本明細書では以降、そのようなウイルスを一般的に示す目的でHIVを用いる。
【0003】
HIVは、多種多様な細胞に感染し得る1本鎖RNAウイルスに属する種類のレトロウイルスであり、そのような細胞には、宿主の中のCD4担持マクロファージおよびT−ヘルパーリンパ球が含まれる。最初に免疫系の細胞(例えばリンパ球、単球)と接触して結合した後に細胞内イベントのカスケードが存在する。そのようなイベントの最終結果は、新規なウイルス粒子が非常に多数産生されること、感染した細胞の死、そして免疫系の最終的破壊である。
【0004】
HIV複製周期はいろいろな段階で構成されており、それらは幅広い意味でa)侵入段階、b)逆転写段階、c)組み込み段階、d)出芽段階およびe)成熟段階(プロテアーゼが重要な役割を果たす)として同定可能である。
【0005】
HIVは侵入段階の時にCD4細胞の中に入り込む。また、そのような過程もいろいろな段階を包含する。1番目の段階、即ちCD4受容体結合段階で、HIVの糖蛋白質(gp)120と標的細胞の表面に存在するCD4受容体分子の相互作用によってHIV感染が始まる。CD4結合に続く2番目の段階、即ち共受容体結合段階で、gp 120とケモカイン受容体CCR5またはCXCR4の相互作用によってHIV gp 120/gp 41複合体の中の中心材料の変化が誘発される。そのような認識に関する変化によってgp 41が露出することで、それと膜の融合が始まる。3番目の段階、即ち膜融合イベントを伴う段階で、ウイルスと細胞が融合するにつれて関連RNAによるウイルスコアの内在化が起こる。ウイルスコアの被膜が部分的に除去されることでウイルスRNAが露出する。直ちに、細胞質内でウイルスRNAから二本鎖DNAへの変換が始まる。次の複製段階でウイルスの逆転写酵素が活性を示すようになる。逆転写酵素によって一本鎖ウイルスRNAから二本鎖DNAコピーが合成されることでプロウイルスが生じる。次の組み込み段階で、ウイルスDNAが移動して宿主細胞の核の中に入りそしてインテグラーゼ酵素の補助で細胞のDNAの中に組み込まれる。その時点で、そのプロウイルスは潜伏または活性状態のままである可能性があり、それによって、新しいビリオンを発生させるための産物が生じる。前記核の中のRNAポリメラーゼIIによってウイルスDNAがmRNAに転写される。そのウイルスmRNAが前記核から出る。さらなる段階はプロテアーゼが活性を示す段階を伴う。ウイルスRNAが翻訳されてポリペプチド配列が生じた時点で、その配列が数個の個別蛋白質(逆転写酵素、プロテアーゼ、インテグラーゼ)を包含する長鎖に組み立てられる。前記酵素が機能を果たすようになるには、それ以前により長いポリペプチド鎖から切断される必要がある。ウイルスのプロテアーゼによって前記長鎖が切断されて個々の酵素成分が生じた後、それが新しいウイルスの産生を助長する。
【0006】
抗レトロウイルス療法を開発しようとする時、この上に説明したウイルス複製周期における段階の中の数段階を利用することができる。数種の抗ウイルス化合物はHIV複製周期の中の特別な段階に対してHIV阻害剤として働くことでHIVおよび同様な病気の治療で効果を示す薬剤であることが知られている。例えば、融合阻害剤は、細胞の外側でHIV複製の第一段階を邪魔する働きをする。それらはウイルスの外側膜と細胞膜の融合を阻止することでHIVがCD4細胞の中に入り込まないようにする。HIV感染を遅らせるに有用であることが確認された別の主要な種類の薬剤は集合的に「逆転写酵素阻害剤」と呼ばれている。それらはウイルスRNAからDNAへのレコーディングを阻止することで作用する。HIV複製の逆転写段階は、下記の2種類の薬剤の作用にとって良好な標的である:ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(ヌクレオシド類似物)および非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)。また、インテグラーゼ阻害剤も数多く報告されている。それらには、ヌクレオチドが基になった阻害剤、公知のDNA結合剤、カテコールおよびヒドラジン含有誘導体が含まれる。それらは、ウイルスcDNAが宿主細胞のゲノムの中に挿入されないようにするが、そのような挿入は、ウイルスのライフサイクルの中の重要な段階である。プロテアーゼ阻害剤はウイルス複製周期の最終段階に作用する。それらはHIVが有効に組み立てられないようにしかつ感染したCD4細胞から放出されないようにする。プロテアーゼ阻害剤はプロテアーゼがウイルスのポリペプチドを開裂させて機能的酵素を生じさせる能力を阻止することによって感染の継続を妨害する。
【0007】
しかしながら、エイズの治療に非常に有効ないろいろなHIV阻害剤が同定されたにも拘らず、それらは共通の制限、即ちHIVウイルスの中の標的酵素が変異を起こし得ることで公知薬剤があまり有効でなくなるか或はそのように変異したHIVウイルスに対して有効でさえなくなると言った制限を有する。即ち、言い換えれば、HIVウイルスはその有効な薬剤に対して耐性を作り出し、その耐性が上昇し続ける。また、ある場合には薬剤の効力が充分でないことが理由でウイルスの抑制が完全ではないことから、耐性の発生に格好な土壌がもたらされる可能性もある。
【0008】
従って、HIV−1は変異を起こす傾向が大きくかつ世界的な感染速度で増殖し続けていることから、追加的エイズ治療方法を研究することが最優先である。高い活性を示す抗レトロウイルス治療薬に耐性を示すヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV−1)株が出現したことから、HIV−1感染の治療に適した薬剤を見つけだすことが継続して必要とされている。耐性が生じる速度が遅くかつウイルス複製を更に一層抑制する新規な抗ウイルス薬が本技術分野で非常に求められていることは明らかである。
【0009】
宿主細胞、即ち分泌されたホスホリパーゼAへのウイルス侵入を阻止する新規な種類のHIV阻害剤が非特許文献1に開示されている。HIV−1の実験室株および臨床的単離株の効力のある阻害剤であるT30177が非特許文献2に記述されている。新規な合成ペプチドであるT−22が抗HIV活性を有することが非特許文献3に開示されている。それの作用機構、恐らくはウイルスと細胞の融合を阻害する機構は、添加時間検定(time−of−addition assay)で確かめられた。細胞培養物の中で起こるウイルス複製を阻止する新しい種類のHIVインテグラーゼ阻害剤が非特許文献4に示されている。添加時間実験によってそのような種類の阻害剤の作用様式が示された。HIV−1エンベロープを標的にしてCD4受容体の結合を阻害する低分子HIV−1阻害剤が非特許文献5に開示されている。添加時間検定が用いられた。新規な一連のTIBO誘導体がHIV−1複製をインビトロで有効かつ選択的に阻害することが非特許文献6に記述されている。HIV−1のR5またはX4株のいずれかを用いた中和および薬剤感受性検定を助長するルシフェラーゼ−レポーター遺伝子発現T細胞株が非特許文献7に示されている。アデノウイルスが基になっていてHIVに感染した細胞を同定して単離するに有用な蛍光を発するレポーターベクターが非特許文献8に示されている。複製に有能でくらげ緑色の蛍光を発する蛋白質を発現するHIV−1の発生が非特許文献9に教示されている。HIVのLTR配列を含有するレポーター遺伝子を担持しかつCCR5を発現するT細胞株が特許文献1に示されている。前記T細胞株は、抗HIV薬などの如き薬剤を効率良く見つけだすに有効な選別方法で用いるに適する。
【0010】
2003年2月のインターネット記事にStaccato Cell Station(商標)−Zymark’s Applied Science and Technology Groupによる検定が開示されたが、それは、いろいろな細胞が基になった検定を処理するに適したオートメーションプラットフォームである。2003年4月の別のインターネット記事の中で、Hudsonコントロールグループは、細胞が基になった検定の自動化およびロボット工学が基になった実験室自動化をそれに適用することを考察している。
【0011】
HIVを阻害する化合物の研究において、添加時間(TOA)検定は、試験化合物がHIVウイルスの侵入、複製、組み込みおよびプロテアーゼ活性に関して示す作用の機構を同定しようとする時に価値有る手段である。そのような検定は、一般に、細胞をHIVに感染させそして感染後のいろいろな時点で試験化合物を添加することを包含する。そのような検定は、ある化合物をこの化合物が阻害する段階(複製周期の中の)でか或はそれ以前に添加すると結果として前記段階中にウイルス複製が止まるが前記同じ化合物を複製周期中の前記段階の後に添加しても全く効果がないと言った原理が基になっている。
【0012】
しかしながら、現在用いられている添加時間検定は時間を消費しかつ費用効果的でないと言った重要な欠点を有する。また、そのような検定は、ある化合物が特定の複製段階、例えば侵入、逆転写、組み込み段階、出芽および成熟などの中で起こる個々の細胞イベントの中のどれを邪魔するかの間の区別を充分かつ正確に行うものではない。
【0013】
前記を鑑み、本技術分野では、明らかに、この上に記述した欠点の中の少なくともいくつかを克服する検定が非常に求められている。従って、本発明の目的は、HIV複製周期の中の個々の段階に作用する新規な薬剤を同定するに適するような改良を受けさせた検定を提供することにある。本発明の目的は、また、新規な抗レトロウイルス薬を提供することにある。その上、本発明の目的は、本発明に従う改良を受けさせた検定を実施するに適した装置を提供することにある。
【特許文献1】Takeda Chemical Industries,LtdによるEP 1335019
【非特許文献1】Fenard他、Journal of Clinical Investigation、104巻、no.5、1999年9月
【非特許文献2】Ojwang他、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、39巻、no.11、1995年11月
【非特許文献3】Nakashima他、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、36巻、no.6、1992年6月
【非特許文献4】Pannecouque他、Current Biology、12巻、2002年7月23日
【非特許文献5】Pin−Fang他、PNAS、100巻、no.19、2003年9月16日
【非特許文献6】Pauwels他、Nature、343巻、1990年2月1日
【非特許文献7】Spenlehauer他、Virology、280巻、no.2、2001年2月15日
【非特許文献8】Richman他、Journal of Virological Methods、99巻、no.1−2、2002年1月
【非特許文献9】Lee AH他、Biochemical and Biophysical Research Communications、233巻、no.1、1997年4月7日
【発明の開示】
【0014】
要約
本発明の1つの態様は、微生物の複製周期を阻害する化合物を同定するための多穴検定(multi−well assay)であり、これは、下記の段階:
a)微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴を調製し、
b)微生物の感染および複製が宿主細胞全部の中で共時的に始まるように、時間tの時に前記微生物で覆われた宿主細胞の中で微生物の感染および複製を開始させ、
c)時間t+Δtの時に、候補化合物を1種以上の濃度で前記宿主細胞の一部と接触させ、
d)Δtの時間的間隔後に、前記宿主細胞の別の一部に関して段階c)を繰り返し、
e)場合により、他の1種以上の候補化合物を1種以上の濃度で用いて段階c)およびd)を繰り返してもよく、そして
f)前記候補化合物が前記宿主細胞の中で起こる微生物複製を阻害したか否かを決定する、
段階を含んで成る。
【0015】
本発明の別の態様は、前記微生物がHIVである前記検定である。
【0016】
本発明の別の態様は、Δtが前記微生物複製周期におけるある段階から別の段階への経過に要する時間より短い前記検定である。
【0017】
本発明の別の態様は、Δtが前記微生物複製周期における侵入段階から逆転写段階への経過に要する時間より短い前記検定である。
【0018】
本発明の別の態様は、化合物を多穴に繰り返し添加する時のΔtに1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、60、120、240または360分を含める前記検定である。
【0019】
本発明の別の態様は、段階c)からe)を一定反応条件(5%のCO濃度、95から100%の範囲で構成させた相対湿度および37℃の温度を包含)下で実施する前記検定である。
【0020】
本発明の別の態様は、前記宿主細胞の中で起こさせる微生物複製を、あらゆる細胞を微生物の複製が始まるに適した温度に同時にすることで、時間tの時に開始させる前記検定である。
【0021】
本発明の別の態様は、前記微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴の調製を
a)感染の多重度が高くなるように宿主細胞を微生物で覆い、
b)吸着されなかった微生物を除去し、そして
c)前記微生物で覆われた宿主細胞を前記穴に持って行く、
段階で行う前記検定である。
【0022】
本発明の別の態様は、前記多穴の中の前記宿主細胞が検出可能蛋白質をコードする遺伝子を発現し得る前記検定である。
【0023】
本発明の別の態様は、検出可能蛋白質をHIV応答性プロモーターの制御下でコードする遺伝子を発現するベクターが前記宿主細胞の中に導入されている前記検定である。
【0024】
本発明の別の態様は、前記微生物が、感染すると報告する検出可能蛋白質で標識がされている前記検定である。
【0025】
本発明の別の態様は、前記候補化合物の測定を前記検出可能レポーターの存在有り無しを検出することで実施する前記検定である。
【0026】
本発明の別の態様は、前記検出可能蛋白質の存在有り無しをデジタル画像形成技術で検出する前記検定である。
【0027】
本発明の別の態様は、この上に記述した如き検定を実施するための装置であり、これは、
− 微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴を担持するに適していて、場合により1つ以上の方向に移動し得る担体、
− 微生物の懸濁液を入れるに適した1個以上の瓶、
− 1種以上の化合物を入れるに適した1個以上の瓶、
− 微生物を前記多穴に分注するに適していて、場合により1つ以上の方向に移動し得る分注手段、
− 1種以上の化合物を前記多穴に分注するに適していて、場合により1つ以上の方向に移動し得る分注手段、
− 前記分注手段による分注を制御する分注制御手段、および
− 1種以上の化合物を前記宿主細胞と接触させている間の前記装置の中の条件を一定に保持する環境制御手段、
を含んで成る。
【0028】
本発明の別の態様は、前記微生物がHIVである前記装置である。
【0029】
本発明の別の態様は、更に温度制御多穴担体も含んで成る前記装置である。
【0030】
本発明の別の態様は、更に絶縁用カバーも含んで成る前記装置である。
【0031】
本発明の別の態様は、前記分注および環境制御手段の回路が高い湿度にさらされないように密封されている前記装置である。
【0032】
本発明の別の態様は、この上に記述した如き検定で同定可能な化合物である。
【0033】
本発明の別の態様は、この上に記述した如き検定で同定可能な1種以上の化合物を治療的に有効な量で含有しかつ薬学的に受け入れられる賦形剤を含有して成る薬剤組成物である。
【0034】
本発明の別の態様は、この上に記述した如き検定で同定可能な化合物を薬剤として用いる態様である。
【0035】
本発明の別の態様は、この上に記述した如き検定で同定可能な化合物を感染病治療用薬剤の製造で用いる態様である。
【0036】
本発明の別の態様は、エイズを治療する方法であり、これは、それを必要としている患者にこの上に記述した如き検定で同定可能な化合物を治療的に有効な量で投与することを含んで成る。
【0037】
本発明に従い、抗レトロウイルス活性を示す数十万の化合物を自動化した迅速な様式で分析することを可能にする安全で費用効果的な多穴検定を開発した。本検定は、特に、ある化合物が抗レトロウイルス作用を示すのがHIV−1ライフサイクル全体の中のどこであるかを選別することを可能にするものである。
【0038】
従って、本発明は、1番目の態様において、微生物の複製周期を阻害する化合物を同定するに適した多穴検定を提供し、この検定は、下記の段階:
a)微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴を調製し、
b)微生物の感染および複製が宿主細胞全部の中で共時的に始まるように、時間tの時に前記宿主細胞の中で微生物の感染および複製を開始させ、
c)時間t+Δtの時に候補化合物を1種以上の濃度で前記宿主細胞の一部と接触させ、
d)Δtの時間的間隔後に、前記宿主細胞の別の一部に関して段階c)を繰り返し、
e)場合により、他の1種以上の候補化合物を1種以上の濃度で用いて段階c)およびd)を繰り返してもよく、そして
f)前記候補化合物が前記宿主細胞の中で起こる微生物複製を阻害したか否かを決定する、
段階を含んで成る。
【0039】
本発明に従う微生物は、複製周期を有する興味の持たれる如何なる微生物であってもよい。その例には、黄色ブドウ球菌、結核菌、呼吸器系シンシシャルウイルス(Syncitial Virus)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス、好適にはヒト免疫不全ウイルス(HIV)が含まれる。
【0040】
本発明に従う検定における1番目の主要段階は、微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴の調製を包含する。この段階の主な特殊性は、前記穴の調製を微生物複製が前記多穴に入っている微生物で覆われた宿主細胞全部の中で同時に始まるような様式で行う点にある。これは、特に、吸着されなかった微生物の除去を微生物と宿主細胞を相互作用させた後であるが前記微生物に感染させた宿主細胞を多穴プレートに移す前に行うことで得ることができる。加うるに、微生物で覆われた宿主細胞を微生物複製の開始に適した温度の前記多穴に持って行くのを同じ時間tの時に行うことで微生物複製開始の共時性を得ることができる。
【0041】
2番目として、前記多穴の中の微生物で覆われた宿主細胞と試験化合物の接触をいろいろな時に行う。この2番目の段階の主な特殊性は、微生物複製周期におけるある段階から別の段階への経過に要する時間よりも短い時間的間隔Δt後に化合物を多穴に添加する点にある。
【0042】
本検定は、微生物複製のいろいろな段階、例えば侵入段階、逆転写段階、組み込み段階およびプロテアーゼが活性を示す段階などに抗レトロウイルス作用を示す化合物を選別することを可能にするものである。従って、本検定を用いると、有利に、ある化合物が抗レトロウイルス作用を示すのが微生物周期サイクル全体の中のどこであるかを選別することが可能になる。
【0043】
加うるに、本検定では、試験化合物を多穴に添加する時間的間隔を複製周期の中の一段階が完了する時間よりも短くすることから、特定の微生物複製段階の中の個々のイベントを妨害する化合物を選別することも可能である。
【0044】
その上、本検定では、微生物の複製を穴に入っている微生物で覆われた宿主細胞全部の中で同時に開始させることから、微生物複製に関する穴間の変動が実質的に小さく、また、微生物複製開始後に試験化合物を添加することで比較的速い速度で作用する化合物を選択することも可能である。このように、本検定は、微生物複製の非常に早い段階、例えば微生物複製の侵入段階中に既に作用する化合物の同定を可能にするものである。
【0045】
特に好適な態様では、Δtを、微生物複製周期の中の侵入段階から逆転写段階への経過に要する時間よりも短くする。本検定で、微生物が宿主細胞の中に侵入する段階よりも短い時間的間隔Δtを選択することによって、微生物複製の侵入段階中に起こる個々の細胞−ウイルス相互作用イベントに作用する化合物を同定することが可能になる。
【0046】
本検定における3番目の主要な段階は、試験を受けさせた化合物が微生物の複製を阻害したか否かを迅速かつ高感度に検出することを包含する。このように、微生物に感染させて多穴に入れる細胞がレポーター蛋白質をコードする遺伝子を発現し得るようにする。別法として、また、微生物に標識を検出可能なように付けることも可能である。前記レポーターの存在有り無しを検出することで、試験を受けさせた化合物が阻害をもたらしたか否かを決定する。
【0047】
従って、本発明に従う検定を用いると、微生物複製周期の中の個々の段階に作用する新規な薬剤を同定しかつまた抗微生物性薬剤が複製周期の中の特定段階、例えば侵入段階などの中で示す特定の作用様式をより詳細に同定することも可能になる。
【0048】
本発明は、別の態様において、本発明に従う検定を実施するに適した装置にも関する。
【0049】
本発明は、更に、本発明に従う検定で同定可能な化合物および前記化合物を治療的に有効な量で含有させた薬剤組成物にも関する。その同定した化合物を薬剤として用いることができ、特に、微生物感染を治療する薬剤の製造および微生物の感染を治療する方法で用いることができる。
【0050】
以下に行う詳細な説明を添付図および実施例と併せて解釈することで本発明の他の目的および利点が明らかになるであろう。
発明の詳細な記述
現在のHIV治療は、逆転写酵素(RT)の阻害剤、ウイルス侵入の阻害剤およびプロテアーゼ酵素の阻害剤の使用を伴う。新しい種類の阻害剤および複雑な薬剤療法が開発されたにも拘らず、薬剤耐性が増大している。従って、新規な種類の抗HIV薬が継続して必要とされている。
検定
本発明は、1つの態様において、HIV複製周期を阻害する新規な化合物を同定するに適した多穴検定に関する。本検定は、抗レトロウイルス活性を示すことで生きている細胞の中で起こるHIV複製を妨害し得る化合物を高処理量で選別するに便利なモデルを提供するものである。簡単に述べると、本検定は主要な3段階を包含する。最初に、HIVで覆われた宿主細胞を含有する多穴を調製する。次に、前記多穴に加えておいたHIVで覆われた宿主細胞に試験化合物をいろいろな時点で接触させる。多種多様な化合物を場合によりいろいろな濃度で前記多穴に加えることで、そのような化合物が示す抗レトロウイルス活性を試験することができる。本検定における3番目の段階は、その試験を受けさせた化合物がHIV複製を阻害したか否かを迅速かつ高感度に検出することを包含する。
【0051】
特に、本検定は、下記の段階:
a)HIVで覆われた宿主細胞を含有する多穴をHIV複製を抑制する条件下で調製し、
b)時間tの時にHIVの複製が宿主細胞全部の中で共時的に始まるように前記HIVで覆われた宿主細胞の中でHIVの感染および複製を開始させ、
c)時間t+Δtの時に候補化合物を1種以上の濃度で前記HIVで覆われた宿主細胞の一部と接触させ、
d)Δtの時間的間隔後に段階c)を前記HIVで覆われた宿主細胞の別の部分に関して繰り返し、
e)場合により、他の1種以上の候補化合物を1種以上の濃度で用いて段階c)およびd)を繰り返してもよく、そして
f)前記候補化合物が前記HIVに感染させた宿主細胞の中で起こるHIV複製を阻害したか否かを決定する、
段階を含んで成る。
【0052】
本明細書で用いる如き「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」は、実験室のHIV株、野生型のHIV株、変異HIV株および少なくとも1種のHIVウイルスを含有する全ての生物学的サンプル、例えば臨床的HIV単離株などを包含する全てのHIV株を指す。本発明に適合し得るHIV株は、哺乳動物、特にヒトに感染し得るそのような株のいずれかである。その例はHIV−1およびHIV−2である。
【0053】
本明細書で用いる如き「HIV複製周期」または「HIVライブサイクル」または同様な用語は、HIV複製中にそれが経験する全周期、即ちHIVと宿主細胞の接触および結合から始まって新しいウイルス粒子の産生で終結する周期を指す。このHIV複製周期はいろいろな段階を包含することを意味し、そのようないろいろな段階は、幅広い意味で、a)侵入段階、b)逆転写段階、c)組み込み段階、d)出芽段階およびe)成熟段階(プロテアーゼが重要な役割を果たす)として同定可能である。
【0054】
本明細書で用いる如き「HIVで覆われた宿主細胞」は、HIVと接触させたがHIVの複製がまだ始まっていない宿主細胞を指す。宿主細胞に真核細胞、好適にはヒトまたは動物に由来する哺乳類細胞を包含させることを意味する。原則として、HIVに感受性を示しかつHIVが感染し得るあらゆる細胞を本発明に従って用いることができる。本発明の検定で用いるに好適な宿主細胞には、これらに限定するものでないが、動物またはヒト細胞、例えばCHO、COS、ヒーラ、C127、3T3、BHK、HEK 293、Bowesメラノーマ細胞、MT4、D17などが含まれる。
【0055】
本明細書で用いる如き「HIVに感染した宿主細胞」は、HIVと接触しかつHIVの複製が始まった前記宿主細胞を指す。宿主細胞を37℃のインキュベーション温度でHIVと接触させると複製が始まる。
【0056】
この章に記述した態様はHIVに関するが、本分野の技術者は、本発明の方法および装置を異なるライフサイクル段階を有する興味の持たれる微生物のいずれにも適用し得るであろう。その例には黄色ブドウ球菌、結核菌、呼吸器系シンシシャルウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス、好適にはヒト免疫不全ウイルス(HIV)が含まれる。
【0057】
本発明に従う検定の実施では、自動化した迅速な方法で多量の化合物を抗レトロウイルス活性に関して選別するに適した多穴フォーマットを用いる。本発明で用いる多穴プレートは、これにあらゆる大きさの多穴プレートを包含させることを意図し、好適には96穴もしくは384穴プレートを包含させる。
【0058】
本発明に従う多穴プレートの調製では、宿主細胞をHIVで感染の多重度が高くなるように覆い、吸着されなかったHIVを除去しそして前記HIVで覆われた細胞を前記穴の中に持って行くことで調製を行う。前記細胞をHIV−1と接触させて、インキュベーションを37℃で行うことで、感染を開始させることができる。感染の多重度(MOI)を好適には1.0以上、より好適にはそれより高くする。
【0059】
HIVと宿主細胞を相互作用させた後に吸着されなかったHIVを除去することによって、前記宿主細胞と相互作用せずかつ本検定を乱すことでもたらされる結果を信頼できなくする可能性のある残存HIVを除去することが可能になる。その後、その覆われた宿主細胞を多穴プレートに移す。穴1個当たりのHIVで覆われた宿主細胞の濃度を好適には穴1個当たり200,000から600,000個の範囲の細胞にし、更により好適には穴1個当たりに含まれる細胞数を500,000にする。
【0060】
本明細書で用いる如き「感染の多重度」(MOI)は、ウイルスを細胞と接触させる目的で用いる時の細胞数に対するウイルス数の比率を指す。それをまたウイルス感染価とも呼び、これは細胞をウイルスに感染させる時の細胞1個当たりの感染性ウイルスの平均数である。それはまた細胞1個当たりに加えるコロニー形成単位の数も表し、その単位はCFU/細胞として表される。例えば、MOIが1であることは、標的細胞1個当たりの感染性レトロウイルス粒子が1個であることを意味する。感染の多重度(MOI)の計算では、Martuza他、Science 252:854(1991)に記述されているように細胞数から計算するか、或は本分野の技術者に公知の代替方法を用いて計算を行う。通常は、ペトリ皿および多穴プレートを用いる。
【0061】
好適な態様では、そのHIVで覆われた宿主細胞を多穴プレートに移した後、好適には、前記多穴の中の宿主細胞全部をHIV複製開始に適した温度(好適には37℃)に持って行くことでHIV複製をHIVで覆われた宿主細胞全部の中で同じ時間tの時に開始させる。
【0062】
次の段階で、HIVに感染した細胞が入っている多穴プレートに試験化合物をHIV複製開始後のいろいろな時間の時に添加する。原則として、ある化合物をHIV複製におけるある段階またはある段階前に添加し、その化合物がHIV複製を阻害すると、ウイルスの増殖が減少するが、その化合物をHIV複製におけるある段階の後に添加しても、その化合物によるHIV複製の阻害は有効でない。
【0063】
本明細書で用いる如き「化合物」は、抗レトロウイルス活性を有する公知薬剤ばかりでなく抗レトロウイルス活性を有することが知られていない化合物も指し得る。本発明に従う検定を用いると、抗レトロウイルス活性を有する新規な化合物を同定することができるばかりでなく容易に知ることができる抗HIV薬が複製周期の中の特定段階中/内で示す特定の作用様式をより詳細に同定することが可能になる。
【0064】
数種の化合物に試験をある濃度またはいろいろな濃度で同時に受けさせることができることは本発明から明らかであろう。本発明に従う時間tは、多穴の中に入っている細胞の全部または大部分の中でHIV複製が始まる時である。t+Δt時間後に化合物1種または2種以上を多穴プレートの中の多数の穴の数個に移す。いろいろな追加的間隔Δt後に、同じ化合物1種または2種以上を前記多穴プレートの中の他の穴(処理を受けさせていない)に移すことで、前記化合物1種または2種以上が潜在的にHIV複製阻害効果を有するか否かをこれらをHIV感染細胞に添加した時間の関数として選別することができる。それによって、当該化合物1種または2種以上がHIV周期の中のどの個別な段階でHIV複製を妨害するかを評価することができる。
【0065】
本検定では、加うるに、時間的間隔ΔtをこれがHIV複製周期の中のある段階から別の段階への経過に要する時間よりも短いように選択することから、その化合物がHIV周期の中のどの特別な段階でHIV複製を妨害するかを評価することも可能である。
【0066】
候補化合物を前記多穴の中のHIV感染宿主細胞の一部と接触させる時を好適には時間t+Δt[ここで、Δtは、HIV複製周期の中のある段階から別の段階への経過に要する時間よりも短い]の時にする。本発明では、この態様に従い、化合物がHIV複製周期のいろいろな段階、例えば侵入段階、逆転写段階、組み込み段階またはプロテアーゼが活性を示す段階などに抗レトロウイルス作用を示すことに関してそれを選別することができる。その上、本検定では、HIV複製を穴の中のHIVで覆われた宿主細胞全部の中で同時に開始させることから、化合物をHIV複製開始後に添加することで化合物がHIV複製に対して示す効果を比較的速い速度で試験することができる。従って、本検定を用いると、HIV複製の非常に早い段階に抗レトロウイルス作用を示す化合物、例えばHIV複製の侵入段階(これは一般に複製開始後30分以内に起こる)を妨害する化合物などを同定することができる。従って、本検定を用いると、有利に、HIVライフサイクル全体中の初期段階ばかりでなく後期段階に抗レトロウイルス作用を示す化合物を選別することができる。
【0067】
特に好適な態様では、Δtを、HIV複製周期の中の侵入段階から逆転写段階への経過に要する時間よりも短くする。それによって、HIV複製の侵入段階の中の個々の段階中に起こるイベントを妨害する化合物を選別することができる。簡単に述べると、HIV複製の侵入段階は、CD4受容体結合段階、共受容体結合段階、および膜融合イベントを伴う段階に区別される。本検定で、HIVが宿主細胞の中に侵入する段階よりも短い時間的間隔Δtを選択することによって、侵入段階の中のこの上に示した段階の中の1つ以上に抗レトロウイルス作用を示す化合物を同定することができる。特に、本発明を用いると、そのようにして、CD4受容体結合段階、共受容体結合段階および/または膜融合段階のいずれかを妨害する化合物を同定することができる。HIV複製の中の非常に早い段階に抗レトロウイルス作用を示す化合物、特にHIV侵入段階中の個々の段階にさえ抗レトロウイルス作用を示す化合物は抗HIV治療にとって特に重要であるのは明らかである、と言うのは、HIV複製を迅速に阻害するとHIVを成功裏に治療する機会が増すからである。
【0068】
好適な態様では、化合物を多穴に繰り返し添加する時間的間隔Δtに10秒、20秒、40秒、50秒、1分、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、60、120、240または360分を含める。
【0069】
別の好適な態様では、本検定の段階c)からe)で多穴に化合物を添加している間に用いる反応条件を一定に保持する。
【0070】
本発明の1つの態様では、前記穴の温度Tをその使用者が決定するようにする。例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50またはそれ以上の温度を選択してもよく、その温度を実験全体に渡って一定に保持する。
【0071】
本発明の1つの態様では、多穴中の全ての穴の温度を同じにする。
【0072】
本発明の1つの態様では、少なくとも1個の穴の温度をその他の穴の温度とは別にする。例えば、多穴プレートの左側の方が前記プレートの右側よりも熱くなるように、多穴プレートの幅方向を横切る温度勾配を持たせてもよいであろう。別法として、多穴プレートの中の個々の穴の温度を異ならせることも可能である。
【0073】
本発明の別の態様では、前記穴の内容物の体積が蒸発によって減少することがないようにする手段を存在させる。例えば、相対湿度を95から100%の範囲にする。別法として、取り外し可能な熱い蓋を反応体の添加と添加の間に多穴プレートの上部に加える。
【0074】
好適には下記の条件を維持する:5%のCO濃度、95から100%の範囲で構成させた相対湿度および37℃の温度。
【0075】
ある化合物によるHIV複製の阻害の測定では、検出可能蛋白質(宿主細胞が放出するか或はウイルスがそのまま放出する)の存在有り無しを検出することで測定を行う。
【0076】
1つの態様では、前記多穴に入れるHIV感染細胞に処理をそれが検出可能(レポーター)蛋白質をコードする遺伝子を発現し得るように受けさせておく。検出可能蛋白質をコードする遺伝子を好適にはHIV応答性プロモーターの制御下に置き、それを前記宿主細胞の中に導入する。そのレポーター構築物を例えばトランスフェクション、ミクロインジェクションなどで宿主細胞の中に移入させることができる。宿主細胞の中で起こるHIV複製によって前記遺伝子の発現が誘発されそしてそのような検出可能蛋白質の存在によって当該細胞の中で成功裏にHIV複製が起こったことが分かる。
【0077】
本発明で用いる如き用語「HIV応答性プロモーター」は、これに調節要素、例えばエンハンサーおよび転写調節因子と結合している他の領域などを含有していてウイルス複製開始時に転写を開始させる能力を有する転写調節単位のいずれも包含させることを意味する。適切なHIV応答性プロモーターの例は本技術分野で公知である。
【0078】
本発明に従うレポーター蛋白質をコードする適切な遺伝子は、細胞の中で活性を示すとして本分野の技術者に知られるレポーター遺伝子のいずれであってもよい。そのようなレポーター遺伝子は、好適には、ある反応に触媒作用を及ぼすか或は検出可能シグナル、好適には可視的に検出可能なシグナルをもたらす蛋白質、例えば着色した産物などをもたらす酵素をコードする。適切なレポーター遺伝子の例には、これらに限定するものでないが、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)、緑色の蛍光を発する蛋白質(GFP)をコードする遺伝子などが含まれる。
【0079】
別の態様では、HIVに検出可能蛋白質またはリポトレーサー(lipotracer)の如きマーカーによる標識を付けておく。検出可能蛋白質を用いて有機体に標識を付ける例である方法は本技術分野で公知であり、それらには例えばリポトレーサー、VRP−GFPまたは適切なGFP融合のいずれかの使用が含まれる(Mc Donald他、JCB 159、3、441−452頁)。
【0080】
1つの態様において、着色した蛍光または光を発する蛋白質の場合には、その検出可能蛋白質を直接検出する。例えば、ルシフェラーゼ活性の結果としてもたらされる蛍光などは、分光光度計を用いて量化可能である。
【0081】
そのようなレポーター遺伝子による発現の結果としてもたらされる遺伝子産物の存在および/または量もまた免疫標識技術を用いて直接測定可能である。本明細書で用いる如き用語「免疫標識技術」は、特定のエピトープを検出する目的で免疫グロブリンを用いるいろいろな検出方法を指すことを意味する。そのような免疫標識技術には、これらに限定するものでないが、ELISA、免疫染色、免疫組織化学、酵素免疫検定、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、ネフェロメトリー、免疫センサーが含まれ得る。
【0082】
検出を好適にはデジタル画像形成技術を用いて実施する。そのような技術は本技術分野で公知であり、それには例えば照度計、走査顕微鏡、分光光度計、好適には蛍光読み取り装置などの使用が含まれる。
【0083】
本発明は、特に、HIV複製周期の侵入過程中に関与する3段階の各々に対する抗ウイルス効果の差、即ちCD4受容体結合段階と共受容体結合段階と膜融合イベントに対する効果の差を正確かつ精密に可視化する点で有利である。本発明は、ある化合物が作用する特定の段階がHIV複製周期の中のどの段階であるかを決定する検定を提供するものである。そのように抗ウイルス作用様式の同定および可視化が精密かつ正確であることの理由は、ある程度ではあるが、本明細書に示す添加時間検定を自動化したことによる。本検定は、そのように自動化したことから、より短い時間的間隔、即ち1分毎または数秒の範囲内でさえ監視可能である。
装置
本発明は、別の態様に従い、本発明に従う検定を実施するに適した装置に関する。装置1(これの例を図1および図2に示す)は、
− HIVで覆われた宿主細胞を含有する多穴を担持するに適していて一方向または二方向に移動する担体、
− 1種以上の化合物を入れるに適した1個以上の瓶またはミクロタイタープレート穴、
− 前記担体の上に配置可能な多穴の中に1種以上の化合物を分注するに適した分注手段、
− 前記分注手段による分注を制御する制御手段、
− 前記装置の中の反応条件を制御する制御手段、
− 温度を制御する手段、
− 場合により、湿度を制御する手段、
を含んで成る。
【0084】
図1および図2に示すように、HIV感染宿主細胞を含有する多穴を上に位置させることができる担体2を含んで成る装置を示す。前記担体は好適には1または2方向、例えばX1およびY1方向に移動可能である。従って、担体2を例えばX−Yテーブル6の上などに位置させることができる。そのようなX−Yテーブルは本技術分野で良く知られており、従って、本明細書に詳細には記述しない。
【0085】
別法として、担体2は固定式であってもよく、そして液体を分注するアーム4が1つ以上の方向、例えばY1および場合によりX1の方向に動き得るようにする。
【0086】
別法として、本発明の装置に応じて、この上に記述した如きアームとX−Yテーブルの両方が動くようにしてもよい。
【0087】
本発明の別の態様では、前記多穴プレートの温度が本方法に従う温度に維持されるようにプレート担体を加熱する。前記プレート担体にこれの表面全体の温度を同じ温度に一定に維持する手段を持たせることは本発明の1つの面である。前記プレート担体にこれの表面全体の温度を一定の温度勾配(例えば左から右に向かう温度勾配)に維持する手段を持たせることは本発明の別の面である。前記プレート担体に多穴プレートの各穴の異なる温度を一定に維持する手段を持たせることは本発明の別の面である。
【0088】
本発明の別の態様では、その領域全体の温度が一定に保持されるように温度制御を最適に行う。必要ならば、温度を増分的に上昇または低下させてもよい。温度の例は4℃、室温(±22℃)または37℃である。
【0089】
好適な態様では、本装置に、試験を受けさせるべき化合物を保持する容器を1個以上含める。そのような容器は1個以上の多穴プレート、瓶または本技術分野で公知の容器であってもよい。そのような化合物を担体2の上に位置させるべき多穴プレートに移す時、これは分注手段4で実施可能である。そのような分注手段4を好適には3方向、即ちX、YおよびZ方向に移動可能なようにする。
【0090】
本装置に更に1種以上の制御手段を含めてもよい。HIV複製開始前ばかりでなく開始後の本装置の中の反応条件を制御する制御手段5を設ける。検定開始時には、本装置の条件をHIV複製が抑制されるように調節すべきである。本装置の中の温度を制御することで、HIV複製が前記多穴の中の細胞の全部で同じ時、即ち時間tの時のみに始まるようにすべきである。加うるに、複製開始後および試験を受けさせるべき化合物を添加している間、あらゆる化合物に選別を同様な反応条件下で受けさせることができるように、インキュベーター内の反応条件も一定に保持すべきである。従って、そのような制御手段によってパラメーター、例えばプレートの温度、周囲空気の温度、周囲空気の湿度および周囲空気の気体組成などを監視して維持する。
【0091】
本装置を周囲空気が制御されている環境の中に封じ込めることは本発明の一面であり、例えばその使用者がCO濃度、温度および/または湿度を制御することができるようにしてもよい。電子機器を多穴プレートと同じ環境の中に存在させそしてその電子機器の正常な機能を妨害する湿度、温度およびCOから防護する目的でそれらを密封することは本発明の一面である。
【0092】
本装置をこれの使用者の環境から実質的に封鎖するカバー手段を用いてその環境を封じ込めることは本発明の一面である。前記カバーは本装置の一部である。そのようなカバーは使用者が多穴プレートを見ることができるように部分的または全体的に透明であってもよい。温度が安定になり得るように前記カバーに絶縁特性を持たせることも可能である。COの濃度が安定になるように、前記カバーに気密性を持たせてもよい。
【0093】
好適には、分注手段4の分注作用を制御するさらなる制御手段を設ける。そのような制御手段は、本装置の中の反応条件を調節する制御手段5と同様または異なってもよい。そのような分注制御手段は、化合物を多穴に添加する必要がある間隔Δtを決定しかつ調節するに適する。
【0094】
そのような制御手段およびそれによって制御される分注器がナノリットルの体積を分注し得るようにすることは本発明の一面である。自動分注装置の例は本技術のいずれであってもよい。それらには、ナノリットルの体積まで分注し得る分注器が含まれ、それらはミクロポンプまたは圧電ポンプで作動し得る。
【0095】
本発明の別の態様では、本装置に、更に、熱せられた蓋も装備して、それを、インキュベーション中の多穴プレートの上部表面と接触させる。その蓋の穴側の温度を穴の内容物が蒸発することがないほど高い温度に維持する。その蓋にこれが多穴プレートの表面と一緒になってシールを形成する手段、例えばガスケットなどを持たせてもよい。インキュベーション中、機械的に、前記蓋が多穴プレートの上部表面と接触した状態であるようにする。添加操作中には前記蓋を機械的に開ける。その蓋を機械的に開ける手段は如何なる機械的手段であってもよく、例えばロボットのアーム、モーターで動くヒンジなどであってもよい。
【0096】
本発明に従う装置は、化合物を多穴に添加する必要がある時毎に本装置から多穴プレートを取り出す必要なく化合物をいろいろな時間的間隔Δtで試験することができると言った利点を有する。これは、化合物を抗レトロウイルス活性に関して選別するに必要な器具の全部を装置1の中に装備しかつ前記装置内の反応条件を制御しかつ一定に設定する手段5を設けることで得ることができる。
【0097】
本発明の別の好適な態様では、本装置に、更に、試験を受けさせた化合物がHIV複製を阻害したか否かを測定する検出手段も装備する。そのような検出手段には例えば画像形成手段などが含まれ得る。
【0098】
更に別の好適な態様では、本装置に、更に、試験を受けさせた化合物がHIV複製に対して示した効果を分析する分析手段も装備する。そのような分析手段には、例えば当該化合物が抗レトロウイルス効果を示す段階がどの複製段階であるか或は複製段階の中のどの段階であるかを記録しかつ決定するに適したコンピューター手段が含まれ得る。
【0099】
別の好適な態様では、本発明に従う装置に好適にはいろいろなユニットを含めるが、そのようなユニットには、試験化合物を多穴プレートに移す充填ユニット、試験化合物が潜在的に示す阻害効果を測定する検出ユニット、および試験化合物の効果を分析する分析ユニットが含まれる。本装置に好適には多穴プレートを前記装置内のあるユニットから別のユニットに移送する移送手段を含める。
医薬用途
本検定は抗ウイルス性分子の同定に必要な感度を示すことを見いだした。従って、本発明に従う検定を用いると、化合物のライブラリーに選別を抗HIV活性に関して受けさせるに効率の良い安全な方法を開発することが容易になり得る。
到達可能な生成物
本発明は、さらなる面において、本発明に従う検定で同定可能な化合物に関する。そのような化合物は特にエイズ治療に適用するに適する。用語「エイズ(後天性免疫不全症候群)」はHIV病の後期段階を指し、これは、免疫系が悪化しかつある範囲の日和見感染および癌にかかり易いことで特徴づけられる。
【0100】
別のさらなる態様では、本発明に従う検定で同定可能な1種以上の化合物を治療的に有効な量で含有しかつ薬学的に受け入れられる賦形剤を含有して成る薬剤組成物を提供する。
【0101】
本発明は、また、本発明に従う検定で同定可能な化合物をエイズ治療用薬剤として用いるか或はそれ用の薬剤を製造する目的で用いることにも関する。
【0102】
本発明は、更に別の態様において、エイズを治療する方法に関し、この方法は、それを必要としている患者に本発明に従う検定で同定可能な化合物を治療的に有効な量で投与することを含んで成る。
【0103】
以下に示す実施例は本発明の説明を意味する。本実施例は本発明を例示する目的で示すものであり、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきでない。
実施例
【実施例1】
【0104】
本発明に従う添加時間実験では、ある化合物が作用を示す段階(HIV複製周期の中の)を決定しそしてそれを基準化合物[結合/融合(侵入過程)の阻害剤、逆転写酵素の阻害剤、インテグラーゼの阻害剤およびプロテアーゼの阻害剤を包含]と比較する。効力のある抗ウイルス化合物を感染時に添加するとウイルスの複製が起こらない。しかしながら、化合物の添加が遅れると、HIV複製に対する保護を観察することができるのは、ウイルスが当該阻害剤と相互作用する段階が過ぎる時までである。その結果を正確に解釈するには作用様式が既知の基準化合物を用いることが必須であった。
【0105】
EGFPレポーター遺伝子をHIV−1−LTRプロモーター要素の制御下で発現するMT4細胞株を用いた。MT4−LTR−EGFP細胞をHIVに感染の多重度(MOI)が高くなるようにして400gの遠心分離に10分間かけることで接触させた。次に、感染を共時にする目的で、4℃で行う洗浄段階を2段階行うことで吸着されなかったウイルスを除去した。次に、細胞を充填した多穴プレートを37℃、即ちHIV複製周期を開始させるに適した温度でインキュベートした。
【0106】
感染させてから5、10、15、20、30またはそれ以上の分数が経過した時点で、試験を受けさせるべき化合物をミクロタイタープレートの中の並列培養物にいろいろな時間の時に添加した。感染から24時間後の培養物を顕微鏡で蛍光に関して等級付けした後、上澄み液を集めた。その上澄み液サンプルの中のp24ウイルス抗原濃度を商業的キットを用いてその製造業者のプロトコル(NEN)に従って測定することでHIV複製を量化した。図3は、ウイルス産生に関係したp24産生を基にして侵入(DS5000=硫酸デキストラン)、逆転写[EFV=エファビレンズ(efavirenz)]および組み込み(TMC143205=インテグラーゼ阻害剤)を区別することができることを示している。
【実施例2】
【0107】
この実施例では、HIV複製周期の侵入過程中にHIVに対して阻害効果を示す化合物を同定するに適した本発明に従う方法を説明する。
【0108】
この実施例では、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をHIV−1−LTRプロモーター要素の制御下で発現するMT4細胞株を用いた。細胞の数を数えそして96穴もしくは384穴のそれぞれで用いる目的で500.000mlまたは350.000mlの細胞懸濁液を作成した。これらの細胞を遠心分離に400gで10分間かけた。その後、細胞にHIV−1(IIIB株)を1/1の宿主細胞/ウイルス力価で感染の多重度が高くなるように感染させた。感染を共時にする目的で、吸着されなかったウイルスを2回の洗浄段階で除去した。その2回目の洗浄段階後に細胞を再懸濁させて、その懸濁液をミクロタイタープレートの穴の中に96穴フォーマットまたは384穴フォーマットの各々に関して95μlまたは36μlの量で入れて分散させた。前以て決めておいた時点で化合物を5μl(96穴)および4μl(384穴)加えた。試験を受けさせる化合物と同様に、作用機構が良く知られている基準化合物もプレートの中に入れた。
2.1 TOA条件下の化合物の滴定
この上に説明したようにしてウイルスで覆っておいた細胞を充填した96穴プレートをHIV複製周期を開始させるに適した温度である37℃でインキュベートした。感染させてから30分後に前記ミクロタイタープレートの穴に試験を受けさせるべき化合物の一連の希釈液を5μl/穴の量で加えた。前記プレートを37℃で更に26時間インキュベートした。
【0109】
試験を受けさせる化合物と同様に、作用機構が良く知られている基準化合物もプレートの中に入れた。この基準化合物に下記を含めた:
− HIV侵入過程に対して阻害効果を示すATA、AMD 3100およびT20、
− HIV逆転写酵素過程に対して阻害効果を示すEFV、
− HIV組み込み過程に対して阻害効果を示すTMC 143205、
− HIVプロテアーゼが活性な過程に対して阻害効果を示すSQV。
【0110】
ATAを5μMから3x10−6μMの濃度で用いる一方、他のあらゆる化合物を5μMから3x10−7μMの濃度で用いた。
【0111】
毒性が最も低くて最も高い活性を示す化合物を決定する目的で、示した化合物の活性試験と並行して毒性試験も実施した。この上に記述した細胞と同じ細胞をウイルス粒子を添加しない以外はこの上に記述したプロトコルと同じプロトコルを用いてインキュベートすることで、当該化合物が示す非特異的活性を測定した。
【0112】
前記試験化合物が宿主細胞の中で起こるHIV複製を阻害したか否かを決定する目的で、ルシフェラーゼ遺伝子産物の存在有り無しを測定した。従って、各穴にLuc−lit(商標)基質を100μl添加して、前記プレートをPerkinElmer−Viewlux(商標)の中で30分以内処理することで発光を監視した。ルシフェラーゼシグナルを測定することでHIV複製を量化した。
【0113】
活性および毒性に関する用量反応曲線をそれぞれ図4および図5に示す。本検定で用いた最も高い化合物濃度でも毒性が示されず(図5)かつもたらされた阻害はほぼ100%である(図4)ことが前記図から分かるであろう。これらの結果は、本発明の方法を用いると毒性が最も低くて最も高い活性を示す化合物を選択することができることを示している。
2.2 発光細胞を用いた本発明に従う方法の時間面
この上に示した如く調製した96穴プレートをHIV複製周期を開始させるに適切な温度である37℃でインキュベートした。感染させてから30分後に前記ミクロタイタープレートの穴に試験を受けさせるべき化合物の一連の希釈液を5μl/穴の量でいろいろな時点で加えた。前記プレートを37℃で更に16時間インキュベートした。
【0114】
また、この上に示した如く調製した384穴プレートもHIV複製周期を開始させるに適切な温度である37℃でインキュベートした。感染させてから30分後に前記ミクロタイタープレートの穴に試験を受けさせるべき化合物を4μl/穴の量で加えた。前記プレートを37℃で更に16時間インキュベートした。
【0115】
1.1に示した基準化合物に試験を受けさせた。ATAを5μMの濃度で用い、AMD3100、T20 EFVおよびSQVを1μMの濃度で用い、そしてTMC143205を1μMの濃度で用いた。この実施例では、前記化合物を添加する時点に30、45、60、75、90、105、120、135、150、165、180、210、240、270、300、330、360、390、420、450、480、510、540および570分を含めた。各穴にLuc−lit(商標)基質を100μl添加して、前記96穴および384穴プレートをPerkinElmer−Viewlux(商標)の中で30分以内処理することで発光を監視した。ルシフェラーゼシグナルを測定することでHIV複製を量化した。
【0116】
試験を受けさせた化合物が96穴プレートおよび384穴プレートの中で示した活性に関する時間反応曲線をそれぞれ図6および図7に示す。基準化合物の全部が示した挙動が予想通りであることが前記図から分かるであろう。得た結果は96穴プレートと384穴プレートで同様であった。より詳細には、侵入阻害剤であるATA、AMD3100およびT20の全部が添加の早い段階で強力な阻害活性を示したのは明らかである。
2.3 TOA実験の可視化
画像は、次のサブステージ(substages)に作用する侵入阻害剤は予測されるTOA地点でそれらの活性を失うことを示している。明らかに、HIV−1複製周期における次の段階(逆転写酵素段階)を侵入段階から区別することができる。
【0117】
実施例2は、本方法を用いるとHIV侵入過程に対して効果を示す化合物を検出することができることを示している。
【実施例3】
【0118】
本発明に従い、いろいろな阻害剤がHIV感染細胞に対して示す効果を試験する実験を異なる2種類の温度を用いて濃度を異ならせかつデルタtを異ならせて実施した。実験の詳細を説明図9から11に示す。
【0119】
これらの結果は、いろいろなHIV阻害剤が示す阻害活性に対して温度が影響することを立証しかつ本発明の方法が明らかに有利であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1に、本発明に従う装置の透視図を示す。
【図2】図2に、本発明に従う装置の局所的図を示す。
【図3】図3に、HIV感染細胞に対する作用が既知の基準化合物が示す効果を96穴プレートの中に入れておいたHIVで覆われた細胞にそれらを添加した後のいろいろな時点で試験する古典的なTOAプロトコルに従う検定の結果を示す。
【図4】図4に、HIV感染細胞に対する作用が既知の基準化合物が示す効果をいろいろな濃度で試験する本発明に従う検定の結果を示す。
【図5】図5に、HIV感染細胞に対する作用が既知の基準化合物が示す細胞毒性効果をいろいろな濃度で試験する本発明に従う検定の結果を示す。
【図6】図6に、HIV感染細胞に対する作用が既知の基準化合物が示す効果を96穴プレートの中に入れておいたHIV感染細胞にそれらを添加した後のいろいろな時点で試験する本発明に従う検定の結果を示す。
【図7】図7に、HIV感染細胞に対する作用が既知の基準化合物が示す効果を384穴プレートの中に入れておいたHIV感染細胞にそれらを添加した後のいろいろな時点で試験する本発明に従う検定の結果を示す。
【図8】図8に、HIV感染細胞に対する作用が既知の基準化合物が示す効果を384穴プレートの中に入れておいたHIVで覆われた細胞にそれらを添加した後のいろいろな時点で重複して試験する本発明に従う検定の画像を示す。
【図9a−9b】図9aおよび9bに、阻害剤であるBMS806がHIV感染細胞の活性に対して示す効果をインキュベーション温度を23℃(9a)および37℃(9b)にして確かめる本発明に従う検定の結果を示す。前記阻害剤の添加を説明に示す如き時間デルタtの時に開始して規則的間隔(30分、1、2、4、6および8)で行う。9aでは、細胞を23℃で4時間インキュベートした後、読み取りを行うまで、複製周期を37℃で進行させた。9bでは、実験全体に渡って細胞を37℃でインキュベートした。
【図10a−10b】図10aおよび10bに、阻害剤であるAMD3100がHIV感染細胞の活性に対して示す効果をインキュベーション温度を23℃(10a)および37℃(10b)にして確かめる本発明に従う検定の結果を示す。前記阻害剤の添加を説明に示す如き時間デルタtの時に開始して規則的間隔(30分、1、2、4、6および8)で行う。10aでは、細胞を23℃で4時間インキュベートした後、読み取りを行うまで、複製周期を37℃で進行させた。10bでは、実験全体に渡って細胞を37℃でインキュベートした。
【図11a−11b】図11aおよび11bに、阻害剤であるT−20がHIV感染細胞の活性に対して示す効果をインキュベーション温度を23℃(11a)および37℃(11にして確かめる本発明に従う検定の結果を示す。前記阻害剤の添加を説明に示す如き時間デルタtの時に開始して規則的間隔(30分、1、2、4、6および8)で行う。11aでは、細胞を23℃で4時間インキュベートした後、読み取りを行うまで、複製周期を37℃で進行させた。11bでは、実験全体に渡って細胞を37℃でインキュベートした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の複製周期を阻害する化合物を同定するための多穴検定であって、下記の段階:
a)微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴を調製し、
b)微生物の感染および複製が宿主細胞全部の中で共時的に始まるように、時間tの時に前記微生物で覆われた宿主細胞の中で微生物の感染および複製を開始させ、
c)時間t+Δtの時に、候補化合物を1種以上の濃度で前記宿主細胞の一部と接触させ、
d)Δtの時間的間隔後に、前記宿主細胞の別の一部に関して段階c)を繰り返し、
e)場合により、他の1種以上の候補化合物を1種以上の濃度で用いて段階c)およびd)を繰り返してもよく、そして
f)前記候補化合物が前記宿主細胞の中で起こる微生物複製を阻害したか否かを決定する、
段階を含んで成る検定。
【請求項2】
前記微生物がHIVである請求項1記載の検定。
【請求項3】
Δtが前記微生物複製周期におけるある段階から別の段階への経過に要する時間より短い、請求項1および2記載の検定。
【請求項4】
Δtが前記微生物複製周期における侵入段階から逆転写段階への経過に要する時間より短い、請求項2から3のいずれか1項記載の検定。
【請求項5】
前記化合物をHIV侵入段階:CD4受容体結合段階、共受容体結合段階および膜融合イベントの中のいずれか1つの阻害の点で同定する請求項2から4のいずれか1項記載の検定。
【請求項6】
化合物を多穴に繰り返し添加する時のΔtに、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、60、120、240または360分が含まれる、請求項1−4のいずれか1項記載の検定。
【請求項7】
段階c)からe)を、5%のCO濃度、95から100%の範囲を含んでなる相対湿度および37℃の温度下を包む、一定の反応条件下で実施する、請求項1−6のいずれか1項記載の検定。
【請求項8】
前記宿主細胞の中で起こさせる微生物複製を、あらゆる細胞を微生物の感染および複製が始まるに適した温度に同時にすることにより、時間tの時に開始させる、請求項1から4および6から7のいずれか1項記載の検定。
【請求項9】
前記多穴の調製を
a)感染の多重度が高くなるように宿主細胞を微生物で覆い、
b)吸着されなかった微生物を除去し、そして
c)前記微生物で覆われた宿主細胞を前記穴に持って行く、
段階で行う請求項1から8のいずれか1項記載の検定。
【請求項10】
前記多穴の中の前記宿主細胞が検出可能マーカーをコードする遺伝子を発現し得る、請求項1−9のいずれか1項記載の検定。
【請求項11】
検出可能蛋白質をHIV応答性プロモーターの制御下でコードする遺伝子を発現するベクターが前記宿主細胞の中に導入されている請求項10記載の検定。
【請求項12】
前記微生物が検出可能蛋白質で標識されている、請求項1−11のいずれか1項記載の検定。
【請求項13】
前記候補化合物の測定を前記検出可能マーカーの存在有り無しを検出することで実施する請求項1−12のいずれか1項記載の検定。
【請求項14】
前記検出可能マーカーの存在有り無しをデジタル画像形成技術で検出する請求項13記載の検定。
【請求項15】
請求項1−14のいずれか1項記載の検定を実施するための装置であって、
− 微生物で覆われた宿主細胞を含有する多穴を担持するに適していて、場合により1つ以上の方向に移動し得る担体、
− 微生物の懸濁液を入れるに適した1個以上の瓶、
− 1種以上の化合物を入れるに適した1個以上の瓶、
− 微生物を前記多穴に分注するに適していて、場合により1つ以上の方向に移動し得る分注手段、
− 1種以上の化合物を前記多穴に分注するに適していて、場合により1つ以上の方向に移動し得る分注手段、
− 前記分注手段による分注を制御する分注制御手段、および
− 1種以上の化合物を前記宿主細胞と接触させている間の該装置の中の条件を一定に保持する環境制御手段、
を含んで成る装置。
【請求項16】
前記微生物がHIVである請求項15記載の装置。
【請求項17】
更に温度制御多穴担体も含んで成る請求項15および16のいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
更に絶縁用カバーも含んで成る請求項15および17のいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記分注および環境制御手段の回路が高い湿度にさらされないように密封されている請求項15および18のいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
請求項1から14のいずれか1項記載の検定で同定可能な化合物。
【請求項21】
請求項1から14のいずれか1項記載の検定で同定可能な1種以上の化合物を治療的に有効な量で含有しかつ薬学的に受け入れられる賦形剤を含有して成る薬剤組成物。
【請求項22】
請求項1から14のいずれか1項記載の検定で同定可能な化合物を薬剤として用いる使用。
【請求項23】
請求項1から14のいずれか1項記載の検定で同定可能な化合物の、感染病治療用薬剤の製造における使用。
【請求項24】
エイズを治療する方法であって、それを必要としている患者に請求項2から14のいずれか1項記載の検定で同定可能な化合物を治療的に有効な量で投与することを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−505615(P2007−505615A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526644(P2006−526644)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052250
【国際公開番号】WO2005/028669
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】