説明

抗ウイルス性または抗増殖性のホスホネート、ヌクレオシドホスホネートおよびヌクレオシドホスフェートの代謝安定性アルコキシアルキルエステル

本発明は、ホスホネート、ヌクレオシドホスホネートまたはヌクレオシドホスフェートの化合物、それらを含有する組成物、それらを得るための方法、ならびに多様な病的障害、特にウイルス感染症、癌などの処置におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は、ウイルス感染症および特定の癌を処置するための経口投与薬物に関する。特に本発明は、ホスホネート(phosphonate)、ヌクレオシドホスホネートおよびヌクレオシドホスフェート(phosphate)の代謝安定性(metabolically stable)アルコキシアルキルエステル、それらを含有する組成物、それらを得るための方法、ならびに多様な病的障害、特にウイルス感染症、癌などの処置におけるそれらの使用に関する。
【従来技術】
【0002】
発明の背景
[0002] ヌクレオシドホスホネートは、抗ウイルス、抗増殖、および他の多様な療法上の有益性をもつ。これらには、抗ウイルス性のヌクレオシドホスホネート、たとえばシドホビル(cidofovir)、環状シドホビル、アデホビル(adefovir)、テノホビル(tenofovir)など、ならびにアジドチミジン(azidothymidine)(AZT)、ガンシクロビル(ganciclovir)、アシクロビル(acyclovir)の5'-ホスホネートおよびメチレンホスホネートなどが含まれる。これらの化合物は、糖部分の5'-ヒドロキシル、または完全な糖部分を含まない非環状ヌクレオシド(ガンシクロビル、ペンシクロビル(penciclovir)、アシクロビル)の同等部分が、リン-炭素結合で置換されている。メチレンホスホネートの場合、5'-ヒドロキシルまたはその同等部分をメチレン基が置換し、メチレン基の炭素原子がホスホネートに共有結合している。
【0003】
[0003] ヌクレオシドホスホネートの細胞代謝に際しては、さらに2つのリン酸化が起きてヌクレオシドホスホネート二リン酸が形成される;これはヌクレオシド三リン酸の同等物質である。抗ウイルス性ヌクレオシドホスホネート二リン酸は、ウイルスのRNAもしくはDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素の選択的阻害薬である。すなわち、ウイルスポリメラーゼに対するそれらの阻害作用は、哺乳動物細胞DNAポリメラーゼα、βおよびγまたは哺乳動物RNAポリメラーゼの阻害度よりはるかに大きい。これに対し、抗増殖性ヌクレオシドホスホネート二リン酸は癌細胞のDNAおよびRNAポリメラーゼを阻害し、正常細胞のDNAおよびRNAポリメラーゼに対しては、はるかに低い選択性を示すであろう。
【0004】
[0004] 前記のように、あるクラスの抗ウイルス化合物および抗増殖化合物は抗ウイルス性ヌクレオシドホスホネートである。このクラスの2つの代表的な化合物、すなわちCDVおよびHPMPAの構造を下記に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
[0005] 他のクラスのホスホネートは、アジドチミジン、ガンシクロビル、アシクロビルの5'-ホスホネートおよびメチレンホスホネートなどである。このタイプの化合物においては、糖部分の5'-ヒドロキシル、または完全な糖部分を含まない非環状ヌクレオシド(ガンシクロビル、ペンシクロビル、アシクロビル)の同等部分が、リン-炭素結合で置換されている。メチレンホスホネートの場合、5'-ヒドロキシルまたはその同等部分をメチレン基が置換し、メチレン基の炭素原子がホスホネートに共有結合している。このクラスの化合物の2つの代表的な構造、すなわちAZT 5'-ホスフェートおよびAZT 5'-ホスホネートを下記に示す。
【0007】
【化2】

【0008】
[0006] 療法上有効な他のクラスの化合物は、ヌクレオシドホスフェート、たとえばアシクロビルモノホスフェート、2'-O-メチル-グアノシン-5'-ホスフェート、2'-O-メチル-シチジン-5'-ホスフェートおよび2'-C-メチル-シチジン-5'-ホスフェートである。このクラスの化合物の2つの代表的な構造を下記に示す。
【0009】
【化3】

【0010】
[0007] さらに他のクラスの抗ウイルス性ホスホネートであるホスホノホルメートおよびホスホノアセテートを下記に示す。
【0011】
【化4】

【0012】
[0008] 多様な置換基をホスホネートおよびホスフェートに結合させて、多様な程度の薬理学的力価をもつ誘導体を製造することができる。あるクラスの誘導体化合物は、アルコキシアルキルエステル、たとえばヘキサデシルオキシプロピルシドホビル(HDP-CDV)であり、これは下記の一般構造により表わされる。
【0013】
【化5】

【0014】
CDV自体は経口活性がない;しかし、CDVを特定のアルコキシアルカノール、たとえばヘキサデシルオキシプロパノールでエステル化すると、それのインビトロ抗ウイルス活性および選択性が著しく増大し、経口による生物学的利用能の程度が高まる。これらのCDV類似体のアルキル鎖長がこれらの化合物の溶解度および生体膜との結合能に関係する。
【発明の開示】
【0015】
[0009] ヌクレオシドホスフェートおよびホスホネートのアルコキシアルキルエステル、たとえばヘキサデシルオキシプロピル-シドホビル(HDP-CDV)は療法上有益な特性をもつが、それらには経口投与薬として薬理学的欠点がある。経口投与薬物は通常は小腸から門脈内へ取り込まれ、その際、薬物は小腸の腸細胞および肝臓において急速な脂質代謝を受ける可能性がある。HDP-CDVなどのホスフェートおよびホスホネートのアルコキシアルキルエステルは細胞膜に取り込まれることができ、次いでここでホスフェートまたはホスホネートは細胞内部へ放出され、あるいは肝臓または腸のシトクロムP450、たとえばCYP3A4により酸化的代謝されて、アルキル鎖のω酸化、続いてβ酸化を受ける可能性がある。ホスフェートおよびホスホネートのアルコキシアルキルエステルはアルキル鎖の末端でω酸化により酸化される可能性があり、さらにβ酸化により分解して短い不活性代謝産物になることが最近分かった。ヌクレオシドモノホスホネートHDP-CDVについて図1に示したこのプロセスは、きわめて急速な可能性があり、これらの化合物の意図する薬理作用にとって有害である。HDP-CDVの場合、不活性代謝産物は水溶性であり、ウイルスに対して不活性であり、速やかに尿中に排出される。この経路による急速な代謝がこのプロドラッグの血漿濃度を低下させ、HDP-CDV、ならびにホスホネート、ヌクレオシドホスホネートおよびヌクレオシドホスフェートのアルコキシアルキルエステルの抗ウイルス効力を低下させる可能性がある。
【0016】
[0010] したがって、ウイルス感染および不適切な細胞増殖により起きる、たとえば癌などの多様な障害を処置するための、より安定な薬剤が依然として求められている。したがって本発明の目的は、経口用の抗ウイルス化合物および抗癌化合物の代謝を遅延させることができる化学修飾されたホスホネート、ヌクレオシドホスホネートおよびヌクレオシドホスフェートを開発することである。
【0017】
発明の概要
[0011] 本発明は、ホスホネート、ヌクレオシドホスホネートおよびヌクレオシドホスフェートのエステル(以下においてエステルと総称する)であって、肝臓におけるこれらの化合物の酸化により生じる代謝不活性化に対して抵抗性である化合物を含む。より詳細には本発明には、ホスホネート化合物の末端または末端前(penultimate)分枝鎖、不飽和、およびハロゲン置換アルコキシアルキルエステルが含まれ、その際これらの置換基は、小腸における吸収、初回通過肝代謝、および後続の末梢組織への分布に際して代謝安定性を付与することにより、これらの化合物を安定化する。本発明には、それらのエステルを多様な処置および状態の処置に使用する方法が含まれる。
【0018】
[0012] 本発明の化合物および方法は、アルキル鎖の末梢前炭素またはその付近に遮断基(1以上)を配置することによりホスホネートおよびホスフェートの脂質エステルのω酸化を遅延させることができるという独自の洞察に基づく。有効な遮断基には、アルキル基(メチル、エチルおよびプロピル、シクロプロピルが含まれるが、これらに限定されない)およびハロゲンが含まれるが、これらに限定されない。有効な遮断基には、1個以上の二重結合(末端二重結合を含む)を含むアルケニル基も含まれる。置換されたアルコキシアルキルホスフェートおよびアルキルグリセロールホスフェートは当技術分野で既知であるが、脂質ホスフェートまたはホスホネートエステル系の薬物を急速なωおよびβ酸化に対して安定化するために末端前置換または末端置換されたアルキル鎖を使用することはこれまで報告されていない。本発明に従って使用するためのホスホネート化合物には、抗ウイルス活性および抗増殖活性をもつものが含まれる。
【0019】
[0013] 本発明に従って使用するためのホスホネート化合物およびそのエステルの代表例は、表1に引用した参考文献に述べられている。本発明の範囲には、C型肝炎に対する活性をもつヌクレオシド類似体も含まれ、これらをそれらのアルコキシアルキル5'-ホスフェートまたはそれらのアルキルグリセロールホスフェートに変換することができる。このクラスの化合物のヌクレオシドの例には、2'-C-メチルアデノシン、2'-C-メチルグアノシン、7-デアザ-2'-メチルアデノシン、2'-C-メチルシトシンが含まれるが、これらに限定されない。本発明に従ってそれらのアルコキシアルキル5'-ホスホネートまたはそれらのアルキルグリセロールホスホネートに変換した後に使用するための他のヌクレオシドおよびその類似体は、表2に引用した参考文献に述べられている。
【0020】
[0014] さらに、B型肝炎に対する活性をもつヌクレオシド類似体も含まれ、これらをそれらの5'-ホスフェート、5'-ホスホネートまたは5'-メチレンホスホネートに変換することができる。このクラスの化合物のヌクレオシドの例には、3TC、FTC、DAPD、L-FMAU、エンテカビル(entecavir)、テルビブジン(telbivudine)、ならびに多様なβ-L-2'-デオキシシチジン、β-L-2'-デオキシアデニンおよびβ-L-2'-デオキシチミジン類似体が含まれるが、これらに限定されない;Bryant et al. ((Jan. 2001) Antimicrob Agents Chemother 45(l): 229-235)により記載。
【0021】
[0015] 抗癌薬も本発明方法に従って誘導体化することができる。若干の対象化合物には、(E)-2'-デオキシ-2'-フルオロメチレン-シチジン(FMdC)およびl-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノシル)シトシン(4'-チオ-FAC)が含まれるが、これらに限定されない。他の抗増殖性ヌクレオシドも、本発明に従って誘導体化すると活性になる可能性があり、これにはAra-C、Ara-G、5-フルオロウリジン、5-フルオロ-デオキシウリジン、フルダラビン(fludarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、デシタビン(decitabine)、またはタキソール(taxol)のアルキルグリセロールホスフェートエステルもしくはアルコキシアルキルホスフェートエステルが含まれるが、これらに限定されない。非ヌクレオシド系抗癌薬も、利用可能なヒドロキシル基をリン酸化およびエステル化することにより同様に本発明の代謝安定性アルコキシアルキル基で誘導体化することができ、これにはトポテカン(topotecan)が含まれるが、これに限定されない。エトポシド(etoposide)は、エトポシドのホスフェート残基に本発明の代謝安定性基を結合させることにより誘導体化できる。
【0022】
[0016] 本発明に従って使用するためのホスホネートおよびホスフェート類似体は、その抗ウイルスまたは抗増殖化合物の生物活性、選択性、および/または生物学的利用能を改善するように選択される。
【0023】
[0017] 本発明の他の観点においては、本明細書に記載するホスホネート化合物の類似体を含有する医薬配合物が提供される。
[0018] 本発明のさらに他の観点においては、多様な療法、たとえばウイルス感染症を処置する方法、および不適切な細胞増殖により起きる障害、たとえば癌などを処置する方法が提供される。
【0024】
好ましい態様の詳細な記述
[0022] 本発明は、アルキル鎖のω末端またはその付近に、分解および代謝による不活性化を遮断または遅延させる特定の部分をもつアルコキシアルキルエステルを合成するための化学的方法を含む。詳細には、本発明はホスホネート化合物の末端または末端前に分枝鎖、不飽和およびハロゲン置換エステルを含み、その際、それらの置換基は酸化に対する抵抗性を付与することによりこれらの化合物を安定化する。抗ウイルス活性または抗癌活性をもつホスホネート、ヌクレオシドホスホネートおよびヌクレオシドホスフェートが本発明の対象である。
【0025】
[0023] 本発明の観点を記述するために多様な用語を本明細書中で用いる。本発明化合物の記載を明確にする補助のために、以下の定義を示す。
[0024] 単数用語は1以上のそのものを表わすことを留意すべきである;たとえばホスホネートは1以上のホスホネートを表わす。したがって本明細書中で、単数用語、”1以上”および”少なくとも1つ”は互換性をもって用いられる。
【0026】
[0025] ある場合、特定の化合物について説明のため単一の立体異性体のみを示すことも留意すべきである。ただし、本発明方法はいずれか特定の異性体に限定されず、そのS鏡像異性体、R鏡像異性体またはラセミ混合物に拡張できる。
【0027】
[0026] 本明細書中で用いる用語”プロドラッグ”は、医薬として有効な化合物の誘導体であって、化学的または代謝的に開裂しうる基をもち、加溶媒分解により、またはインビボ生理的条件下で医薬有効化合物になるものを表わす。
【0028】
[0027] 用語”プリン塩基またはピリミジン塩基”には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:6-アルキルプリンおよびN6-アルキルプリン、N6-アシルプリン、N6-ベンジルプリン、6-ハロプリン、N6-アセチレンプリン、N-アシルプリン、N-ヒドロキシアルキルプリン、6-チオアルキルプリン、N2-アルキルプリン、7-デアザプリン、N4-アルキルピリミジン、N4-アシルピリミジン、4-ハロピリミジン、N4-アセチレンピリミジン、4-アミノおよびN4-アシルピリミジン、4-ヒドロキシアルキルピリミジン、4-チオアルキルピリミジン、チミン、シトシン、6-アザピリミジン(6-アザシトシンを含む)、2-および/または4-メルカプトピリミジン、ウラシル、C5-アルキルピリミジン、C5-ベンジルピリミジン、C5-ハロピリミジン、C5-ビニルピリミジン、C5-アセチレンピリミジン、C5-アシルピリミジン、C5-ヒドロキシアルキルプリン、C5-アミドピリミジン、C5-シアノピリミジン、C5-ニトロピリミジン、C5-アミノピリミジン、N2-アルキルプリン、N2-アルキル-6-チオプリン、5-アザシチジニル、5-アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニルおよびピラゾロピリミジニル。この定義には、前記プリン類のいずれかの環拡大および開環した対応物(cogener)が含まれる。塩基上の官能性酸素および窒素基は、必要または希望に応じて保護することができる。適切な保護基は当業者に周知であり、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t-ブチルジメチルシリルおよびt-ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、アシル基、たとえばアセチルおよびプロピオニル、メタンスルホニルならびにp-トルエンスルホニルが含まれる。好ましい塩基には、シトシン、5-フルオロシトシン、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、キサンチン、2,6-ジアミノプリン、6-アミノプリン、6-クロロプリンおよび2,6-ジクロロプリンが含まれる。
【0029】
[0028] 本明細書中で用いる用語”アルキル”は、別途特定しない限り、飽和の直鎖または分枝鎖炭化水素を表わす。アルキル基は、場合によりF、Cl、BrまたはIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されていてもよい。
【0030】
[0029] 本明細書中で用いる用語”アルケニル”は、別途特定しない限り、部分不飽和の直鎖または分枝鎖炭化水素を表わす。アルケニル基は、場合によりF、Cl、BrまたはIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されていてもよい。
【0031】
[0030] 本明細書中で用いる用語”保護された”は、別途特定しない限り、酸素、窒素またはリン原子がさらに反応するのを阻止するために、または他の目的で、その原子に付加された基を表わす。広範な酸素保護基および窒素保護基が有機合成の当業者に知られている。適切な保護基は、たとえばGreene, et al.,”Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and Sons, 第2版, 1991に記載されており、それの全体を本明細書に援用する。
【0032】
[0031] 本発明のヌクレオシドホスホネートは、一般に下記の構造により表わすことができる:
【0033】
【化6】

【0034】
式中:
Rは、-R1-O-R2よりなる群から選択され、その際、R1は置換されていてもよいC1-C11アルキル基よりなる群から選択され、R2はC6-C17アルキル基またはC6-C17アルケニル基よりなる群から選択され;
その際、
C6-C17アルキル基は、メチル、エチル、プロピルまたはシクロアルキル(シクロプロピルを含むが、これに限定されない)よりなる群から選択される1個以上のアルキル基(これらに限定されない)ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されており;さらに、C6-C17アルキル基はアルキル基の末端またはその付近の位置、特に末端または末端前の位置に、1個以上の置換基を含み;
その際、
C6-C17アルケニル基は、メチル、エチル、プロピル、シクロアルキル基(シクロプロピルを含むが、これに限定されない)よりなる群から選択されるアルキル基(これらに限定されない)ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されていてもよく;さらに、C6-C17アルケニル基は1以上の二重結合(末端二重結合を含む)を含み;
Bは、プリン塩基またはピリミジン塩基から選択され;
Aは、H+、Li+、Na+、K+、NH4+、テトラアルキルアンモニウムおよび他の第三級アミン(トリエチルアミンを含むが、これに限定されない)塩(これらに限定されない)よりなる群から選択される対イオンである。
【0035】
[0032] 1態様において、Rは下記の一般構造を有する化合物の基:
【0036】
【化7】

【0037】
から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択される。
[0033] 他の態様において、Rは下記の一般構造を有する化合物の基:
【0038】
【化8】

【0039】
から選択され、式中、pおよびqは前記に定めたものである。
[0034] さらに他の態様において、Rは下記の一般構造を有する化合物の基:
【0040】
【化9】

【0041】
から選択され、式中、pおよびqは前記に定めたものであり、Xはハロゲンである。好ましい態様においてXはFである。
【0042】
【化10】

【0043】
式中、pおよびqは前記に定めたものであり、Xは独立してハロゲンから選択される。好ましい態様においてXはFである。
[0035] 特定の態様において、Rは図2に示す構造のいずれかよりなる群から選択される。
【0044】
[0036] 本発明の1態様において、誘導体化ヌクレオシドホスホネートは環状シドホビルまたはシドホビルであり、これらは一般に下記の構造により表わされる:
【0045】
【化11】

【0046】
式中、RおよびAは前記に定めたものである。
[0037] 本発明の他の態様において、誘導体化ヌクレオシドホスホネートは9-(S)-(3-ヒドロキシ-2-ホスホノメトキシプロピル)-アデニン((S)-HMPMA)であり、これは一般に下記の構造により表わすことができる:
【0047】
【化12】

【0048】
式中、RおよびAは前記に定めたものである。
[0038] 本発明に含まれる環状シドホビル、シドホビルおよびHMPMAの具体的な類似体には下記の化合物が含まれる:3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル環状シドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル(S)-環状HPMPA、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-環状HPMPA、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル-(S)-環状HPMPA、3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビルナトリウム、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビルアンモニウム、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチルシドホビル、2-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチルシドホビル、3-(フィタニルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル-(S)-HPMPA、および2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル-(S)-HPMPA、3-(ヘキサ-デカ-15-エニルオキシ)プロピルシドホビルアンモニウム、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-HPMPA、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-環状HPMPA、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-HPMPA、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-環状HPMPA、および11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデシルシドホビルアンモニウム。
【0049】
[0039] 本発明のヌクレオシドホスフェートおよびその類似体は、一般に下記の構造により表わすことができる:
【0050】
【化13】

【0051】
式中、Rは前記に定めた構造をもつアルコキシアルキル基であり、Bは置換または非置換ピリミジン塩基またはそれらの開環対応物である。
[0040] このグループの化合物のヌクレオシドの代表例には、2'-C-メチルアデノシン、2'-C-メチルグアノシン、7-デアザ-2'-メチルアデノシン、2'-C-メチルシトシンが含まれるが、これらに限定されない。本発明に従ってそれらのアルコキシアルキル5'-ホスフェートまたはそれらのアルコキシアルキルグリセロールホスフェートに変換した後に使用するための他のヌクレオシドおよびその類似体を表2に示す。
【0052】
[0041] さらに、B型肝炎に対する抗ウイルス活性をもつヌクレオシド類似体が含まれ、これらを5'-ホスフェート、5'-ホスホネートまたは5'-メチレンホスホネートに変換することができる。このクラスのヌクレオシドの例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:3TC、FTC、、DAPD、L-FMAU、エンテカビル、テルビブジン、ならびに多様なβ-L-2'-デオキシシチジン、β-L-2'-デオキシアデニンおよびβ-L-2'-デオキシチミジンの類似体:Bryant et al. ((Jan. 2001) Antimicrob Agents Chemother 45(1): 229-235)により記載。非ヌクレオシド系抗ウイルス薬のホスフェートも本発明の対象であり、ザナミビル(zanamivir)(リレンザ(Relenza)(登録商標))が含まれるが、これに限定されない。
【0053】
[0042] 抗癌薬も本発明方法に従って誘導体化することができる。若干の代表的化合物には、2'-デオキシ-2'-フルオロメチレン-シチジン(FMdC)およびl-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノシル)シトシン(4'-チオ-FAC)が含まれるが、これらに限定されない。他の抗増殖性ヌクレオシドも、本発明に従って誘導体化するとより代謝安定性になる可能性があり、これにはAra-C、Ara-G、5-フルオロウリジン、5-フルオロ-デオキシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、デシタビン、またはタキソールのアルキルグリセロールホスフェートエステルもしくはアルコキシアルキルホスフェートエステルが含まれるが、これらに限定されない。非ヌクレオシド系の抗癌薬も、利用可能なヒドロキシル基への結合により同様に本発明の代謝安定性アルコキシアルキル基で誘導体化することができ、これにはトポテカンが含まれるが、これに限定されない。エトポシドは、エトポシドのホスフェート残基への結合により本発明の代謝安定性アルコキシアルキルエステルに結合させることができる。
【0054】
[0043] 表1および2は、本発明の化学工程を施すことができる化合物の例を示す。これらの表中に引用した参考文献の全体を本明細書に援用する。
【0055】
【表1−1】

【0056】
【表1−2】

【0057】
【表1−3】

【0058】
【表2−1】

【0059】
【表2−2】

【0060】
【表2−3】

【0061】
[0044] 本発明化合物は、錠剤、カプセル剤、液剤、乳剤もしくは懸濁液剤の形で経口投与し、液体もしくは固体粒子の形で吸入し、マイクロカプセル化粒子、スプレー剤として投与し、経皮パッチなどの用具により皮膚を通して、またはたとえば坐剤の形で直腸に投与することができる。本発明の親油性プロドラッグ誘導体は、経皮吸収による投与および送達系に特に好適であり、練り歯みがき剤中にも使用できる。投与は注射用液剤の形で非経口的に行なうこともできる。
【0062】
[0045] 本発明組成物は、一般的な剤形、たとえばカプセル剤、錠剤、エアゾル剤、液剤、懸濁液剤の形で、または局所投与のためのキャリヤーと共に調製することができる。本発明化合物を含有する医薬配合物は、常法により、たとえばRemington's Pharmaceutical Sciences, 1985の記載に従って調製できる。
【0063】
[0046] 使用する医薬用キャリヤーまたは希釈剤は、一般的な固体または液体キャリヤーであってよい。固体キャリヤーの例は、乳糖、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはセルロース低級アルキルエーテルである。液体キャリヤーの例は、シロップ、ラッカセイ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレンまたは水である。キャリヤーまたは希釈剤は、当技術分野で既知の持続放出材料、たとえばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを単独でまたはろうと混合して含むことができる。
【0064】
[0047] 固体キャリヤーを経口投与用に用いる場合、調製物を粉末状またはペレット状で打錠し、または硬ゼラチンカプセルに装入することができる。固体キャリヤーの量は広範囲に及ぶであろうが、通常は約25mg〜約1 gであろう。液体キャリヤーを用いる場合、製剤はシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤、または無菌の注射用液体、たとえば水性もしくは非水性の懸濁液剤もしくは液剤であってよい。
【0065】
[0048] 錠剤は、有効成分(すなわち1種類以上の本発明化合物)を医薬的に不活性な無機または有機のキャリヤー、希釈剤および/または賦形剤と混合することにより調製される。錠剤に使用できるそのようなキャリヤーの例は、乳糖、トウモロコシ、デンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩類である。ゼラチンカプセル剤に適切な賦形剤の例は、植物油、ろう、脂肪、半固体および液体状のポリオールである。
【0066】
[0049] 鼻腔内投与のためには、製剤はエアゾル用の液体キャリヤー、特に水性キャリヤーに溶解または懸濁した本発明化合物を含有することができる。キャリヤーは、可溶化剤、たとえばプロピレングリコール、界面活性剤、吸収増進剤、たとえばレシチンもしくはシクロデキストリン、または保存剤を含有することができる。
【0067】
[0050] 非経口注射に用いる本発明の医薬組成物には、医薬的に許容できる無菌の水性または非水性液剤、分散液剤、懸濁液剤または乳剤、および使用直前に無菌注射用液剤または分散液剤に再構成するための無菌散剤が含まれる。
【0068】
[0051] 液剤およびシロップ剤の調製に適切な賦形剤は、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコースなどである。注射用液剤の調製に適切な賦形剤は、水、アルコール類、ポリオール、グリセロール、植物油などである。
【0069】
[0052] 医薬製剤は、さらに多様な添加成分のいずれか、たとえば保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、緩衝剤、コーティング剤、酸化防止剤、希釈剤などを含有することができる。
【0070】
[0053] 場合により本発明の医薬組成物は、前記一般式の化合物を、異なる活性を示す1種類以上の化合物、たとえば抗生物質または他の薬理活性物質と組み合わせて含むことができる。そのような組合わせは本発明の範囲に含まれる。
【0071】
[0054] 本発明は、ウイルス感染症、不適切な細胞増殖などに関連する障害を処置する方法を提供する。本発明は特に、その必要があるホストに療法有効量の本発明のプロドラッグを投与することを含む。したがって本発明の1観点においては、ウイルス感染により起きる障害を処置する方法が提供される。そのような処置に適切な適応症には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、単純ヘルぺスウイルス(HSV)、ヒトヘルペスウイルス6および8、サイトメガロウイルス(CMV)、B型およびC型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、水痘-帯状疱疹ウイルスを含む感受性ウイルスによるもの、ならびにオルソポックスウイルス(たとえば大痘瘡および小痘瘡、ワクシニア、天然痘、牛痘、ラクダ痘、サル痘など)、エボラウイルス、パピローマウイルスなどにより起きる疾患、リンパ腫、血液学的障害、たとえば白血病など、ならびにウイルスにより起きる癌、たとえば大部分の症例が高リスクサブタイプのヒトパピローマウイルスにより起きる子宮頚癌。
【0072】
[0055] 本発明のさらに他の観点においては、不適切な細胞増殖により起きる障害、たとえば癌、たとえば黒色腫、肺癌、膵臓癌、胃癌、大腸癌および直腸癌、前立腺癌および乳癌、白血病およびリンパ腫などを処置する方法が提供される。本発明化合物として使用するためにそれらのヌクレオチドホスホネートまたはヌクレオシド-5'-ホスフェートに変換できる抗癌化合物には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:シタラビン(cytarabine)(ara-C)、フルオロウリジン、フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン(floxuridine))、ゲムシタビン、デシタビン(decitabine)、クラドリビン(cladribine)、フルダラビン(fludarabine)、ペントスタチン(pentostatin)(2'-デオキシコホルマイシン)、6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン、ならびに置換または非置換ara-アデノシン(ara-A)、ara-グアノシン(ara-G)、およびara-ウリジン(ara-U)。本発明の抗癌化合物を単独で、または他の代謝拮抗薬もしくは他のクラスの抗癌薬、たとえばアルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、アルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質などと組み合わせて使用することができる。
【0073】
[0056] 本発明のプロドラッグは、目的に応じて経口、非経口、局所、直腸、および他の経路により、適切な投与単位で投与できる。
[0057] 本明細書中で用いる用語”非経口”は、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内または硝子体内への注射または注入法を表わす。
【0074】
[0058] 用語”局所”には、直腸投与および吸入スプレーによる投与、ならびにより一般的な皮膚および口腔粘膜および鼻腔粘膜の経路、ならびに練り歯みがき剤中における投与が含まれる。
【0075】
[0059] 本明細書中で用いる”療法”には、治療および/または予防が含まれる。療法を用いる場合、これはヒトおよび他の動物に対するものである。
[0060] ”医薬有効量または療法有効量(pharmaceutically or therapeutically effective dose or amount)”は、目的とする生物学的結果を誘発するのに十分な投与量を表わす。その結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因の軽減、または目的とする生物系の他のいずれかの変化であってよい。
【0076】
[0061] ”ホスト”または”患者”は、本明細書に記載する組成物が投与される生存しているヒトまたは動物対象である。
[0062] ウイルス感染症または不適切な細胞増殖に関連する障害、たとえば癌に関して、”有効量”はその抗ウイルス性または抗癌性の親化合物に推奨される投与量を参照して決定される。選択する投与量は、選択した化合物の活性、投与経路、処置される状態の重症度、ならびに処置される患者の状態および過去の病歴に応じて異なるであろう。しかし、目的とする療法効果を達成するのに必要なものより低いレベルで本発明化合物(1以上)の投与量を開始し、目的効果が達成されるまで徐々に投与量を増加することは、当業者に自明である。所望により、有効一日量を投与のために複数回量に分割してもよい:たとえば一日2〜4回。ただし、いずれか特定の患者についての具体的な投与量が、体重、全般的健康状態、食事、投与の時間および経路、ならびに他の薬物との組合わせ、ならびに処置される疾患の重症度を含めた多様な要因に依存することは理解されるであろう。
【0077】
[0063] 一般に、本発明化合物は1〜100%の有効成分を含む単位剤形で調合される。療法用量の範囲は、患者、たとえばヒトに投与する場合、薬物として約0.01〜約1,000 mg/kg/日であり、約0.10〜約100 mg/kg/日が好ましい。本発明の医薬組成物中における有効成分の実際の投与量は、特定の患者について目的とする療法応答を達成するのに有効な量の有効化合物(1以上)が投与されるように変更できる。
【0078】
[0064] 本発明化合物は、一般に実施例1〜9のスキーム3〜7に示すように多様な方法で製造できる。以下に記載する一般的なホスホネートエステル化法は説明のために示したものにすぎず、決して本発明を限定するものと解釈すべきではない。実際に、ホスホン酸とアルコール類の直接縮合のための方法が幾つか開発されている(たとえば、R. C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH, ニューヨーク, 1989, p. 966、およびそこに引用された参考文献を参照)。実施例に記載する化合物および中間体の単離および精製は、所望によりいずれか適切な分離法または精製法、たとえば濾過、抽出、結晶化、フラッシュカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、蒸留、またはこれらの操作の組合わせにより行なうことができる。分離および単離のための適切な方法の具体例を以下の実施例に示す。同等な他の分離および単離法ももちろん使用できる。
【0079】
[0065] 実施例1(スキーム1)には、下記の一般式をもつ分枝鎖アルコキシアルカノールの合成のための一般法を概説する:
【0080】
【化14】

【0081】
式中、pおよびqは前記に定めたものである。
[0066] 実施例2(スキーム2)には、分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルを環状ホスホネートから合成するための一般法を概説する。この実施例では説明のために環状シドホビルを用いたが、この方法は実質的に、目的とするいかなる環状ホスホネートの使用にも拡張することができる。以下の化合物を実施例1および2に示す一般法で製造した:3-(12-メチル-トリデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(13-メチル-テトラデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(14-メチル-ペンタデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-メチル-ヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビルナトリウム、2-(17-メチル-オクタデシルオキシ)エチルシドホビル、2-(15-メチル-ヘキサデシルオキシ)エチルシドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル-(S)-HPMPA、および2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル-(S)-HPMPA。
【0082】
[0067] 実施例3および4には、実施例1および2に記載した方法をわずかに変更したものを用いた、2種類の特定の分枝鎖アルコキシアルキルエステル、すなわち3-(フィタニルオキシ)プロピルシドホビルおよび15-メチルヘキサデシルオキシプロピルシドホビル(15-Me HDP-CDV)アンモニウムの合成を記載する。
【0083】
[0068] 実施例5(スキーム4)には、本発明の分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルをp-トルエンスルホニルメチルホスホネートから合成するための一般法を記載する。説明のために分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルである3-(15-メチル-ヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-9-[3-トリチルオキシ-2-(ホスホノメトキシ)プロピル]-N6-トリチル-アデニンの合成を記載した。
【0084】
[0069] 実施例6(スキーム5)には、末端二重結合をもつ分枝鎖アルケニルオキシアルキルエステルの合成のための一般法を概説する。説明のためにヌクレオシドホスホネートであるシドホビルを用い、化合物26、ヘキサデカ-15-エニル-オキシプロピル-シドホビルが合成された。
【0085】
[0070] 実施例7〜9(スキーム6〜8)には、説明のためにCDVおよびHPMPAを用いて、多様なアルコキシアルキルエステルの合成のための一般法を概説する。以下の化合物の合成を例示する:3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-HPMPA、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-環状HPMPA、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-HPMPA、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-環状HPMPAおよびll-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)ウンデシルシドホビル。
【0086】
[0071] 実施例10〜12には、CDVおよびHPMPAの代表的な末端前分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルの抗ウイルス活性を示す。結果を表3〜6に示す。表4および5にみられるように、(S)-HPMPAの末端前分枝鎖類似体はインビトロでワクシニアおよび牛痘にウイルス対して高活性であり、末端前分枝鎖アルコキシアルキルシドホビルエステルはインビトロでマイクロモル以下のEC50においてエクトロメリアウイルスに対して有効であった。表6にみられるように、(S)-HPMPAおよびCDVの分枝鎖類似体はすべて、致死性ポックスウイルス感染症による死に対して5 mg/kg/日以上の投与量で完全に保護した。15M-HDP-(S)-HPMPAはHDP-(S)-HPMPAより有効であることが認められた。
【0087】
[0072] 本発明化合物の安定性を実施例13に説明し、そのデータを図3に示す。図3は、HDP-CDおよび15-メチル-HDP-CDV (15M-HDP-CDV)について、肝S9調製物の存在下で種々のインキュベーション時間後に示された、時間に対する薬物残存率%のグラフを示す。この図は、サル肝およびヒト肝S9画分によるアルコキシアルキルエステル誘導体15M-HDP-CDVの分解が、直鎖アルコキシアルキルエステル誘導体HDP-CDVの分解より顕著に遅いことを示す。したがって、フィタン酸(3,7,11,15-テトラメチル-ヘキサデカン酸)の特徴を模倣したアルキル鎖の変更は16番目の炭素のオメガ酸化を遅延させる。実施例13に示すフィタンチル誘導体は4個のメチル基を含むが、HDP-CDVのヘキサデシル部分のように末端前炭素へのアルキル置換基またはハロゲンの導入でも十分である(15-メチル-ヘキサヘキサデシルプロピル-シドホビル、15M-HDP-CDV)。あるいは、前記に詳述したように末端のフッ素、シクロプロピル、アルケン基も代謝安定性を高めるのに十分である。
【実施例】
【0088】
[0073] 以下の実施例は説明のために示したものにすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
[0074] 一般的な操作:1H NMRスペクトルは300 MHz で作動するVarian HG分光光度計により記録され、内標準テトラメチルシラン(0.00 ppm)に対するppm単位で報告される。Analtechシリカゲル-GF (250ミクロン)プレートを薄層クロマトグラフィー(TLC)に用いた。生成物をUV光線、phospray (Supelco; 米国ペンシルベニア州ベレフォンテ)および炭化により視覚化した。フラッシュクロマトグラフィーはシリカゲル(E. Merckシリカゲル60, 230-400メッシュ)またはCombiFlashシステム(Teledyne Isco, Lincoln, NB)を用いて実施された。分子イオンを示す質量スペクトルは、エレクトロスプレーイオン化(MS-ESI)を用いてプラスおよびマイナス両方のモードで得られた。
【0089】
実施例1分枝鎖アルコキシアルカノールの製造
[0075] 分枝鎖アルコキシアルカノール(6)の合成のための一般法をスキーム1に示す。
【0090】
【化15】

【0091】
[0076] 分枝鎖メチルアルカノール(4)の製造:スキーム1を参照して、分枝鎖メチルアルカノールをブロモアルカノール(3)および分枝鎖メチルブロモアルカン(1)から合成した。連鎖延長法はFouquetらにより記載されている(Fouquet and Sclosser (1974) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 13:82-83)。
【0092】
[0077] 一般法:アルキルマグネシウムブロミド(2)の乾燥THF溶液を、分枝鎖メチルアルキルブロミド(1, 94.2 mmol)およびマグネシウム(113 mmol)から乾燥THF (90 mL)中で製造した。ブロモアルカノール(3, 17.3 mmol)の、乾燥THF (50 mL)中における撹拌冷却溶液に、得られたグリニャール試薬を添加し、続いてLi2CuCl4溶液(乾燥THF中0.12 M, 8.0 mL, 0.96 mmol)を-78℃でN2雰囲気下に添加した。得られた混合物を一夜撹拌しながら室温に高めた。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液で停止した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を順に水、飽和NaHCO3およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、分枝鎖メチルアルカノール(4)を得た。
【0093】
[0078] この一般法を用いて下記の化合物を製造した:
12-メチルトリデカン-l-オールを、9-ブロモノナン-l-オールおよび3-メチルブチルブロミドから51%の収率で製造した。1H NMRおよびMS-ESIデータはYuasaらにより報告されたものと一致した(Yuasa and Tsuruta (2004) Flavour and Fragrance Journal 19: 199-204)。
【0094】
13-メチルテトラデカン-l-オールを、10-ブロモデカノールおよび3-メチルブチルブロミドから62%の収率で製造した。1H NMRおよびMS-ESIデータはYuasaらにより報告されたものと一致した(Yuasa and Tsuruta (2004) Flavour and Fragrance Journal 19: 199-204)。
【0095】
14-メチルペンタデカン-l-オールを、9-ブロモノナノールおよび5-メチルヘキシルブロミドから55%の収率で製造した。1H NMRおよびMS-ESIデータはYuasaらにより報告されたものと一致した(Yuasa and Tsuruta (2004) Flavour and Fragrance Journal 19: 199-204)。
【0096】
15-メチルヘキサデカン-l-オールを、12-ブロモ-l-ドデカノールおよび3-メチルブチルブロミドから製造した。1H NMRデータはMasuda et al. ((2002) Biosci. Biotech. Biochem. 66:1531-1537)により報告されたものと一致した。
【0097】
17-メチルオクタデカン-l-オールを、12-ブロモ-l-ドデカノールおよび5-メチルヘキシルブロミドから44%の収率で製造した1H NMR δ 0.86 (6 H), 1.10-1.40 (32 H), 3.64 (2H)。
【0098】
[0079] 分枝鎖アルコキシアルカノール(6)の製造:スキーム1を参照して、分枝鎖メチルアルカノール(4)を対応するメタンスルホネート誘導体(5)に変換し、続いて1,3-プロパンジオールまたは1,2-エタンジオールと反応させることにより、分枝鎖アルコキシアルカノールを製造した。
【0099】
[0080] メタンスルホネートの製造のための一般法:アルカノール4 (100 mmol)およびトリエチルアミン(15.2 g, 150 mmol)の、CH2Cl2 (100 mL)中における溶液に、メタンスルホニルクロリド(15 g, 130 mmol)をO℃で添加した。反応混合物を一夜撹拌し、次いで氷水に注入し、ジエチルエーテルで抽出した。抽出液を飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧濃縮して、分枝鎖アルキルメタンスルホン酸メチル5を79〜89%の収率で得た。化合物をさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0100】
[0081] アルコキシアルカノールの製造のための一般法:1,3-プロパンジオールまたは1,2-エタンジオール(10 mmol)を、水素化ナトリウム(2 mmol)の、乾燥N,N-DMF中における懸濁液に慎重に添加し、30分間撹拌した。次いでこの混合物に、乾燥THF中の分枝鎖アルキルメタンスルホン酸メチル(5, 1 mmol)を添加した。混合物を60℃に4時間加熱し、次いで室温に冷却した。混合物を氷水に添加した後、それを酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄し、減圧濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、分枝鎖メチルアルコキシアルカノール(6)を得た。
【0101】
[0082] これらの方法を用いて下記の化合物を製造した:
3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロパン-l-オール
3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロパン-1-オール
3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロパン-l-オール
3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロパン-l-オール;1H NMR δ 0.86 (d, 6H), 1.15 (m, IH), 1.25 (br s, 26 H), 1.60-1.46 (m, 3H), 1.83 (qt, 2H), 3.43 (t, 2H), 3.61 (t, 2H), 3.78 (t, 2H). MS-ESI (m/z) 315.33 (MH)
2-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エタン-l-オール
2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エタン-l-オール。
【0102】
実施例2環状ホスホネートからの分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルの製造
[0083] 分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルを環状ホスホネートから、説明のために環状シドホビルを用いてスキーム2に示すように製造した。要約すると、Wan et al. ((2005) Antimicrobial Agents and Chemotherapy 49:656-662)により記載されたミツノブ(Mitsunobu)反応を用いて、環状ホスホネートを分枝鎖メチルアルコキシアルカノールに結合させて環状ジエステルを形成し、次いでこれを加水分解して分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルを形成した。
【0103】
【化16】

【0104】
[0084] 環状ジエステル(化合物7により例示)の製造のための一般法:無水環状シドホビルまたは環状(S)-HPMPA (10 mmol)、アルコキシアルカノール(6) (20 mmol)およびトリフェニルホスフィン(20 mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(15 mL)に溶解または懸濁し、窒素雰囲気下で激しく撹拌した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(20 mmol)を3つに分けて15分間かけて添加し、次いで混合物を室温で一夜撹拌した。次いで溶媒を真空下で蒸発させ、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(15% EtOH/CH2Cl2)により精製した。生成物を最後にp-ジオキサンから再結晶した。結合生成物はアキシアルとエクアトリアルのジアステレオマー混合物であった。
【0105】
[0085] 下記の化合物を製造した:
3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロピル環状シドホビル
3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロピル環状シドホビル
3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロピル環状シドホビル
2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル環状シドホビル
3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、MS-ESI (m/z) 558.54 (MH)
3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル(S)-環状HPMPA
3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-環状HPMPA、MS-ESI (m/z) 582.37 (MH)
2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル(S)-環状HPMPA、MS-ESI (m/z) 596.32 (MH)
【0106】
[0086] 分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステル(化合物8により例示)の製造のための一般法:環状シドホビル(7)または環状(S)-HPMPAの分枝鎖メチルアルコキシアルキルエステルを、2 M NaOH (25 mL /mmol)に懸濁し、8O℃に1時間加熱した。その間に混合物は透明になった。加水分解の後、溶液を25℃に冷却し、氷酢酸で約pH 5の酸性にした。生成した沈殿を真空濾過により採集し、減圧乾燥させた。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(20% MeOH/CH2Cl2)またはエタノールからの再結晶により精製した。
【0107】
[0087] 下記の化合物を製造した:
3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロピルシドホビル
3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロピルシドホビル
3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロピルシドホビル
3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビルナトリウム、MS-ESI (m/z) 598.36 (M + Na)
2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチルシドホビル
2-(15-メチル-ヘキサデシルオキシ)エチルシドホビル
3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル(S)-HPMPA
2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル(S)-HPMPA、MS-ESI (m/z) 614.30 (MH)
【0108】
実施例33-(フィタニルオキシ)プロピルシドホビルの製造
[0088] 実施例1および2に示した一般法を以下に詳述するようにわずかに改変したものを用いて、3-(フィタニルオキシ)プロピルシドホビルを製造した。
【0109】
[0089] フィタノールの製造:フィトール(2.0 g, 6.7 mmol)をエタノールに溶解し、アルミニウム上5%ロジウムを添加し、混合物をH260psi下に置き、一夜振とうした。反応混合物を濾過し、蒸発させて、目的生成物を油として得た(2.0 g, 100%の収率)。
【0110】
[0090] フィタニルメタンスルホネートの製造:フィタノール(2.0 g, 6.7 mmol)をピリジンに溶解し、O℃に冷却した。メタンスルホニルクロリド(1.15 g, 10 mmol)を添加し、反応混合物を4時間撹拌した後、混合物を氷水に添加し、エーテルで抽出した。エーテル層を蒸発させると淡褐色の油(1.5 g)が得られ、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0111】
[0091] 3-(フィタニルオキシ)プロパン-1-オールの製造:水素化ナトリウムを、1,3-プロパンジオール(7.6 g, 100 mmol)の、無水N,N-DMF (30 mL)中における溶液に慎重に添加した。メタンスルホン酸フィタニル(1.5 g, 4 mmol)を添加し、混合物を6O℃に加熱し、4時間撹拌した。次いで反応混合物を氷/H2Oに注入し、ジクロロメタンで抽出し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより20%酢酸エチル/ヘキサンを用いて精製して、3-(フィタニルオキシ)プロパン-l-オール(1.25 g, 87%の収率)を得た。
【0112】
[0092] 3-(フィタニルオキシ)プロピル環状シドホビルの製造:トリフェニルホスフィン(524 mg, 2 mmol)、環状シドホビル(無水, 800 mg, 3 mmol)およびフィタニルオキシプロパノール(500 mg, 1.4 mmol)の撹拌混合物に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(404 mg, 2 mmol)を添加した。次いで混合物を室温で一夜撹拌した。固体を濾過により除去し、次いで濾液を濃縮し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。10〜15% EtOH/ジクロロメタンで溶離して、環状エステルを得た(660 mg, 78%)。
【0113】
[0093] 3-(フィタニルオキシ)プロピルシドホビルの製造:フィタニルオキシプロピル環状シドホビルを実施例2の記載に従って加水分解して、目的化合物を得た。
【0114】
実施例415-メチルヘキサデシルオキシプロピルシドホビル(15-Me HDP-CDV)の製造
[0094] 実施例1および2に示す一般法を、以下に詳述し、スキーム3に概説するようにわずかに改変したものを用いて、15-Me HDP-CDVアンモニウム(16)を製造した。
【0115】
【化17】

【0116】
[0095] 15-メチルヘキサデカン-l-オール(10):火炎乾燥およびArフラッシした500 mLの清浄なRBF内へ、5 g (33 mmol)の市販品9を添加した。これに40 mLの無水THFおよび970 mg (40 mmol)のMg削片を添加し、I2ペレットを添加して反応を促進した。反応混合物を2時間還流した。次いでそれを室温に冷却し、さらに-78℃に冷却した。これに、10 mLの無水THF中における1.6g (6.0 mmol)の12-ブロモ-l-ドデカノールを添加し、続いて3.3 mL (0.33 mmol)の銅(II)酸リチウム(lithium cuprate)を添加した。得られた混合物を一夜撹拌しながら室温に高め、続いて飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、EtOAc (3回)で抽出した。次いでEtOAc層を合わせて順に水、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで残留物をコンビフラッシュ(combiflash)によりヘキサン/EtOAcを溶離剤として用いて精製し、1.07 gの化合物10を白色固体として65〜70%の収率で得た。
【0117】
[0096] 15-メチルヘキサデシル-l-トシレート(11):22 g (86 mmol)の10を200 mLの乾燥DCMに溶解し、14 mL (100 mmol)のEt3Nを添加した。この溶液をO℃に冷却し、19 g (100 mmol)のTsClを添加した。次いで反応混合物を室温で6時間撹拌し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、次いで有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/EtOAcを溶離剤として用いて精製し、ヘキサンから-2O℃で一夜再結晶して、25 gの11を白色結晶として70%の収率で得た。
【0118】
[0097] t-ブチルジメチル-3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロポキシシラン(12):火炎乾燥およびArフラッシした2 Lの清浄なRBF内へ、22.5 ml (105 mmol)の市販品3-t-ブチルジメチルシリルオキシプロパノールおよび200 mLの無水DMFを添加した。混合物をO℃に冷却し、5.0 gのNaHを徐々に添加した。添加終了後、反応混合物を室温で30分間撹拌し、O℃に冷却した。次いで27g (65.7 mmol)の11を、反応物に激しく撹拌しながら徐々に添加した。添加終了後、反応混合物を8O℃に2時間加熱した時点で、TLCは11が完全に消費されたことを示した。次いで反応物を室温に冷却し、飽和NH4Cl水溶液の滴加により反応停止した。200 mLの水を添加し、目的生成物をEtOAc (3回)で抽出し、有機層を合わせて順に水(3回)、ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、23 gの12を無色の油として85%の収率で得た。
【0119】
[0098] 3-(15-メチルヘキサデシルオキシプロパン-l-オール(13):23g (54 mmol)の12に、THF中の1 M TBAF溶液216 mLを添加し、反応物を室温で16時間撹拌した。次いで反応混合物を飽和NH4Cl水溶液で停止し、THFを減圧下で蒸発させた。次いでこの水溶液を200 mLの水で希釈し、目的生成物をEt2O (3回)で抽出し、次いで有機層を合わせてブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、11.5 gの化合物13を黄色の油として70%の収率で得た。
【0120】
[0099] メタンスルホン酸-3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルエステル(14):11 g (35 mmol)の13に、25 mLのDCMおよび7.3 mL (53 mmol)のEt3Nを添加し、混合物をO℃に冷却した。次いでMsCl 3.0 mL (38.5 mmol)および触媒量のDMAPを滴加し、反応物を室温で一夜撹拌した。次いで反応混合物を50 mLのDCMで希釈し、順に飽和NaHCO3水溶液(1回)、水(1回)、ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、13 gの生成物14を定量的収率で得た。
【0121】
[00100] 14とBz-c-CDVの反応:2.4 g (6.6 mmol)の Bz-c-CDVを10 mLのNMPに溶解し、1.7 mL (lOmmol)のDIPEAをそれに添加し、続いて13 g (33 mmol)の14を添加した。反応混合物を95〜100℃に16時間加熱した時点で、TLCは生成物を少量のBz-c-CDVと共に示した。反応をさらに8〜9時間進行させた時点で、TLCは反応がそれ以上は進行しなかったことを示した。この時点で反応混合物を室温に冷却し、溶媒を高真空下で蒸発させた。残留物をコンビフラッシュによりクロロホルム/MeOHを溶離剤として用いて精製し、1.8 gの15を黄色の油として42%の収率で得た。
【0122】
[00101] (15)の脱保護および加水分解:1.7 g (2.56 mmol)の15に、30 mLの濃NH4OHを添加し、密閉した試験管を95℃に2〜3時間加熱した時点で溶液は透明になった。次いで反応混合物を冷却すると、TLCは反応が完了したことを示した。NH4OHを減圧下で蒸発させ、残留物を5〜10 mlの熱蒸留水に溶解し、凍結乾燥器で週末にかけて乾燥させた。次いで黄色固体をアセトンで十分に洗浄し、残留物を凍結乾燥器で一夜乾燥させて、1.6 gの類似体16を黄色固体として得た。
【0123】
実施例5p-トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートからの分枝鎖メチルエステルの製造
[00102] 分枝鎖メチルエステルをp-トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート18から、説明のために(S)-HPMPAエステルの合成を用いてスキーム4に示すように製造した。この方法は、Beadle et al, J. Med. Chem. 49: 2010-2015, 2006により報告された方法に基づく。
【0124】
【化18】

【0125】
[00103] 分枝鎖メチルアルコキシアルキルp-トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートの製造のための一般法:トルエンスルホニルオキシメチルホスホン酸ジエチルを、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチルからHoly and Rosenberg, ((1982) Collect. Czech. Chem. Commun. 47: 3447-3463)により記載された方法に従って合成した。ブロモトリメチルシラン(27 g, 175 mmol)を、トルエンスルホニルオキシメチルホスホン酸ジエチル(9.5 g, 29.5 mmol)の、ジクロロメタン(無水, 150 mL)中における溶液に添加した。混合物を室温でN2雰囲気下に18時間撹拌した。次いで混合物を真空濃縮して溶媒および過剰のTMSBrを除去し、次いでジクロロメタン(150 mL)に再溶解し、氷浴でO℃に冷却した。N,N-DMF (0.5 mL)を添加し、塩化オキサリル(22 g, 175 mmol)の、CH2Cl2(50 mL)中における溶液を、30分間かけて滴加し、次いで溶液をさらに5時間撹拌した。混合物を蒸発させると油になり、これをEt2O (100 mL)に再溶解した。分枝鎖メチルアルコキシアルカノール6 (21.5 mmol)およびピリジン(10 mL)の、Et2O (50 mL)中における溶液を添加し、約3時間、またはTLC分析(1:1 ヘキサン/酢酸エチル)がアルコールの完全なホスホニル化を示すまで、撹拌を続けた。次いで反応混合物を低温の飽和NaHCO3に添加し、1時間激しく撹拌した。加水分解が完了した後、有機層を分離し、MgSO4で乾燥させ、真空下で蒸発させると粗製エステルが得られた。これをフラッシュクロマトグラフィー(15% EtOH/CH2Cl2)により精製した。
【0126】
この方法を用いて3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルp-トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートを製造した。MS-ESI (m/z) 561.07 (M + Na)
[00104] 分枝鎖メチルエステルをp-トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート18から製造するための一般法を、説明のために(S)-HPMPAを用いてスキーム4に示す。要約すると、(S)-9-[3-トリチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル]-N6-トリチル-アデニン17を、アデニンおよび(S)-トリチルグリシジルエーテル(Daiso Co., Ltd., 日本)から、Webb ((1989) Nucleosides & Nucleotides 8: 619-624)の方法に従って製造した。水素化ナトリウム(24 mg, 1.0 mmol)を、(S)-9-[3-トリチルオキシ-2-ヒドロキシプロピル]-N6-トリチルアデニン(640 mg, 0.62 mmol)の、乾燥トリエチルアミン(10 mL)中における撹拌溶液に添加した。15分後、適切なトルエンスルホニルオキシメチルホスホン酸アルコキシアルキル(0.65 mmol)を添加し、反応混合物を5O℃に加熱し、一夜保持した。冷却後、混合物をブラインで反応停止し、酢酸エチル(3回, 15 mL)で抽出した。有機抽出液をMgSO4で乾燥させ、真空濃縮すると、完全保護された(S)-HPMPAエステルが得られた。この残留物をフラッシュクロマトグラフィー(10% EtOH/CH2Cl2)により精製した。説明のためにこの一般法を用いて3-(15-メチル-ヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-9-[3-トリチルオキシ-2-(ホスホノメトキシ)プロピル]-N6-トリチルアデニンを製造した。
【0127】
[00105] (S)-HPMPAアルコキシアルキルエステル19の脱保護および単離:完全保護された(S)-HPMPAエステルを80%酢酸水溶液に懸濁し(20 mL/mmol)、6O℃に1時間、またはTLC分析により脱トリチル化の完了が判定されるまで、加熱した。冷却後、溶媒を蒸発させ、生成物19をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。30% MeOH/CH2Cl2により溶離して、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-HPMPAを白色固体として得た。MS-ESI (m/z) 600.32 (MH)
【0128】
実施例7非環状ヌクレオシドホスホネートのアルケニルオキシアルキルエステルの製造
[00106] 末端二重結合をもつアルケニルアルキルエステルの合成のための一般法を、説明のためにヌクレオシドホスホネートシドホビルを用いてスキーム5に概説する。
【0129】
【化19】

【0130】
【化20】

【0131】
[00107] トルエン-4-スルホン酸5-ベンジルオキシ-ペンチルエステル(21):4.0 g (20 mmol)の市販品20を、40 mLの乾燥DCMに溶解した。4.2 mL (30 mmol)のEt3Nを添加し、続いて4.2 g (22 mmol)のTsClおよび触媒量のDMAPを添加し、反応物を16時間撹拌した。次いで100 mLのDCMを添加し、反応混合物を順に飽和NaHCO3水溶液(1回)、水(1回)、およびブライン(1回)で洗浄した。MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、7.0 gのトシレート21を定量的収率で無色の油として得た。
【0132】
[00108] トルエン-4-スルホン酸5-t-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ-ペンチルエステル(23):5.0 mL (20 mmol)の市販品22を、40 mLの乾燥DCMに溶解した。4.2 mL (30 mmol)のEt3Nを添加し、続いて4.2 g (22 mmol)のTsClおよび触媒量のDMAPを添加し、反応物を16時間撹拌した。次いで100 mLのDCMを添加し、反応混合物を順に飽和NaHCO3水溶液(1回)、水(1回)、およびブライン(1回)で洗浄した。MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、7.4 gの目的トシレート23を定量的収率で無色の油として得た。
【0133】
[00109] t-ブチル-ヘキサデカ-15-エニルオキシ-ジメチルシラン(25):火炎乾燥およびArフラッシした500 mLの清浄なRBF内へ、14.2 mL (65 mmol)の市販品24を添加した。これに100 mLの無水THF、1.9 g (78 mmol)のMg削片およびI2ペレットを添加して反応を促進し、反応混合物を2時間還流した。次いでそれを室温に冷却し、さらに-78℃に冷却した。これに、20 mLの無水THF中における7.4 g (20.0 mmol)の23を添加し、続いて6.5 mL (0.65 mmol)の銅(II)酸リチウムを添加した。得られた混合物を一夜撹拌しながら室温に高め、続いて飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、EtOAc (3回)で抽出した。次いでEtOAc層を合わせて順に水、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで残留物をコンビフラッシュによりヘキサン/EtOAcを溶離剤として用いて精製し、6.7 gの25を無色の油として95%の収率で得た。
【0134】
[00110] ヘキサデカ-15-エン-l-オール(26):11.0 g (31 mmol)の25に、THF中の1 M TBAF溶液124 mLを添加し、反応物を室温で16時間撹拌した。次いで反応混合物を飽和NH4Cl水溶液で停止し、THFを減圧下で蒸発させた。次いでこの水溶液を200 mLの水で希釈し、目的生成物をEt2O (3回)で抽出し、次いで有機層を合わせてブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、5.7 gの目的生成物26を無色の油として77%の収率で得た。
【0135】
[00111] ヘキサデカ-15-エニルオキシメチル-ベンゼン(27):火炎乾燥およびArフラッシした500 mLの清浄なRBF内へ、14.2 mL (65 mmol)の市販品24を添加した。この混合物に100 mLの無水THF、1.9 g (78 mmol)のMg削片およびI2ペレットを添加して反応を促進した。反応混合物を2時間還流し、次いで室温に冷却し、さらに-78℃に冷却した。これに、20 mLの無水THF中における7.0 g (20.0 mmol)の21を添加し、続いて6.5 mL (0.65 mmol)の銅(II)酸リチウムを添加した。得られた混合物を一夜撹拌しながら室温に高め、続いて飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、EtOAc (3回)で抽出した。次いでEtOAc層を合わせて順に水、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで残留物をコンビフラッシュによりヘキサン/EtOAcを溶離剤として用いて精製し、6.3 gの化合物27を無色の油として95%の収率で得た。
【0136】
[00112] ヘキサデカ-15-エン-l-オール(26):火炎乾燥およびArフラッシした500 mLの清浄なRBF内へ、6.3 g (19 mmol)の27および100 mLの乾燥DCMを入れ、混合物を-78℃に冷却した。次いで95 mLのBCl3 (DCM中の1.0 M溶液)を徐々に前記溶液に添加した。添加終了後、冷却浴を取り除き、反応混合物を室温に高めた。室温でさらに30分間撹拌を続けた後、反応物を氷水浴内で冷却し、100 mLの水できわめて慎重に(急激になるので)反応停止した。次いで有機層を分離し、水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を真空下で蒸発させた。次いで粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、4.3 gの26を94%の収率で得た。
【0137】
[00113] トルエン-4-スルホン酸-3-t-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ-プロピルエステル(29):25.0 mL (115 mmol)の市販品28を、100 mLの乾燥DCMに溶解し、24.2 mL (173 mmol)のEt3Nを添加し、混合物を0℃に冷却した。次いでこの溶液に24.2 g (127 mmol)のTsClおよび触媒量のDMAPを添加した。反応物を16時間撹拌した。次いで300 mLのDCMを添加し、反応混合物を順に飽和NaHCO3水溶液(1回)、水(1回)、およびブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、34 gの目的トシレート29を85%の収率で無色の油として得た。
【0138】
[00114] t-ブチル-3-ヘキサデカ-15-エニルオキシ-プロポキシ-ジメチルシラン(30):火炎乾燥およびArフラッシした2 Lの清浄なRBF内へ、12 g (50 mmol)の(26)および150 mLの無水DMFを添加した。この溶液を次いでO℃に冷却し、2.6 g (65 mmol)のNaHを徐々に添加した。添加終了後、反応物を室温で30分間撹拌し、O℃に冷却した。次いで34.5 g (100 mmol)の29を、激しく撹拌しながら反応物に徐々に添加した。添加終了後、反応混合物を8O℃に2時間加熱した時点で、TLCは26が完全に消費されたことを示した。次いで反応物を室温に冷却し、飽和NH4Cl水溶液の滴加により反応停止した。200 mLの水を添加し、目的生成物をEtOAc (3回)で抽出し、有機層を合わせて順に水(3回)、ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、13.3 gの30を黄色の油として65%の収率で得た。
【0139】
[00115] 3-ヘキサデカ-15-エニルオキシ-プロパノール(31):13.1 g (31.8 mmol)の30に、THF中の1 M TBAF溶液128 mLを添加し、反応物を室温で16時間撹拌した。次いで反応混合物を飽和NH4Cl水溶液で停止し、THFを減圧下で蒸発させた。次いでこの水溶液を200 mLの水で希釈し、目的生成物をEt2O (3回)で抽出し、次いで有機層を合わせてブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、7.1 gの目的生成物31を黄色の油として75%の収率で得た。
【0140】
[00116] メタンスルホン酸-3-ヘキサ-デカ-15-エニルオキシ-プロピルエステル(32):7.1g (23.7 mmol)の31に、20 mLのDCMおよび5.0 mL (36 mmol)のEt3Nを添加し、溶液を0℃に冷却した。この冷却溶液に2.0 mL (26 mmol)のMsClおよび触媒量のDMAPを添加した。反応物を室温で一夜撹拌した。次いで反応混合物を50 mLのDCMで希釈し、順に飽和NaHCO3水溶液(1回)、水(1回)、およびブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をコンビフラッシュによりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、9 gの目的生成物32を定量的収率で得た。
【0141】
[00117] Bz-c-CDVによる(32)の置換:1.7 g (4.6 mmol)のBz-c-CDVを10 mLのNMPに溶解し、1.2 mL (7 mmol)のDIPEAをそれに添加し、続いて9 g (23.9 mmol)の32を添加した。反応物を95〜100℃に24時間加熱した時点で、TLCは生成物を少量のBz-c-CDVと共に示した。この段階で反応をさらに4時間進行させたが、TLCはさほど進行を示さなかったので、反応混合物を室温に冷却し、溶媒を高真空下で蒸発させた。残留物をコンビフラッシュによりクロロホルム/MeOHを溶離剤として用いて精製し、1.33 gの目的生成物26を黄色の油として45%の収率で得た。
【0142】
[00118] (33)の脱保護および加水分解:1.3 g (2.0 mmol)の33に、30 mLの濃NH4OHを添加し、密閉した試験管を95℃に2〜3時間加熱した時点で溶液は透明になった。次いで反応混合物を冷却すると、TLCは反応が完了したことを示した。NH4OHを減圧下で蒸発させ、残留物を5〜10 mlの熱蒸留水に溶解し、凍結乾燥器内で週末にかけて乾燥させた。次いで黄色固体をアセトンで十分に洗浄し、残留物を凍結乾燥器で一夜乾燥させて、1.1 gの類似体34を黄色固体として得た。
【0143】
実施例7非環状ヌクレオシドホスホネートの末端前フッ素化アルコキシアルキルエステルの製造
[00119] 非環状ヌクレオシドホスホネートの末端前フッ素化アルコキシアルキルエステルを製造するための一般法を、下記のスキーム6に示す。非環状ヌクレオシドホスホネートのフルオロアルコキシアルキルエステル、たとえば3-(15-フルオロ-ヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル42 (15-F-HDP-CDV)および3-(15-フルオロ-ヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-HPMPA 43 (15-F-HDP-(S)-HPMPA)を、この方法で製造できる。要約すると、スキーム6を参照して、市販品2-ブロモプロパン酸35をボラン:THF複合体溶液でアルコールに還元して、2-ブロモ-l-プロパノール36にする。36のフッ素化は、l,l,2-トリフルオロ-2- クロロエチルジエチルアミンを用いて達成される。これはl-ヒドロキシ-2-ハロゲノアルカンを対応する転位フッ化物37に変換する緩和かつ安全な試薬である。37をグリニャール試薬に変換し、続いて触媒の存在下で13-ブロモ-トリデカノールと反応させることにより、15-フルオロヘキサデカノール38が得られる。アルコール38をメタンスルホン酸誘導体に変換し、続いて1,3-プロパンジオールと反応させると、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロパン-l-オール39が得られる。39と環状シドホビルまたは環状(S)-HPMPAを、一般に実施例2(工程a)に記載したように反応させると、環状エステル(それぞれ40および41)が得られ、次いでこれを実施例2(工程b)に述べた一般法により目的化合物(それぞれ42および43)に変換できる。
【0144】
【化21】

【0145】
実施例8非環状ヌクレオシドホスホネートの末端フッ素化アルコキシアルキルエステルの製造
[00120] 非環状ヌクレオシドホスホネートの末端フッ素化アルコキシアルキルエステルを製造するための一般法を、下記のスキーム7に示す。非環状ヌクレオシドホスホネートのフルオロアルコキシアルキルエステル、たとえば3-(16-フルオロ-ヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル(16-F-HDP-CDV) 49および3-(16-フルオロ-ヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-HPMPA 50 (16-F-HDP-(S)-HPMPA)を、この方法で製造できる。要約すると、スキーム7を参照して、l-ブロモ-4-フルオロブタンおよびマグネシウムから調製したグリニャール試薬を12-ブロモドデカノール44と反応させると、16-フルオロヘキサドデカノール45が得られる。45をメタンスルホニルクロリドと反応させ、続いて1,3-プロパンジオールと反応させると、16-フルオロヘキサデシルオキシ-l-プロパノール46が得られる。46と環状シドホビルまたは環状(S)-HPMPAを、一般に実施例2(工程a)に記載したように反応させると、環状エステル(それぞれ47および48)が得られ、次いでこれを実施例2(工程b)に述べた一般法により目的化合物(それぞれ49および50)に変換できる。
【0146】
【化22】

【0147】
実施例9非環状ヌクレオシドホスホネートの末端ペンタフッ素化アルコキシアルキルエステルの製造
[00121] 非環状ヌクレオシドホスホネートの末端ペンタフッ素化アルコキシアルキルエステルを製造するための一般法を、スキーム8に示す。
【0148】
【化23】

【0149】
[00122] トルエン-4-スルホン酸7,7,8,8,8-ペンタフルオロオクチルエステル(52):火炎乾燥した250 mLの清浄なRBF内へ、N2流下で11.8 g (53.6 mmol)の市販品51を添加し、次いでこれを100 mLの乾燥DCMに溶解した。これに11.2 mL (80.4 mmol)のトリエチルアミンを添加し、フセスコを氷浴内で冷却した。これに徐々に11.3g (59 mmol)のTsClを添加し、続いて62 mg (0.50 mmol)のDMAPを添加した。反応混合物を3時間撹拌した後、これを100 mLのDCMで希釈し、順に飽和NaHCO3溶液、H2Oおよびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。残留物をコンビフラッシュ(120 gのシリカカラム)によりヘキサン/酢酸エチルを溶媒として用いて精製し、18 g (90%)の目的トシレート52を無色の油として得た。
【0150】
[00123] 11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデカ-l-エン(54):火炎乾燥した1 Lの清浄なRBF内へ、N2流下で100 mLの乾燥DMFおよび20 mL (96 mmol)の市販品53を添加した。2.3 g (57.6 mmol)のNaHを反応物に添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。18g (48 mmol)の52を50 mLのDMFに溶解し、徐々に前記の反応混合物に添加した。添加終了後、室温で2時間、80℃で2時間、撹拌を続けた。次いで反応物を氷浴内で冷却し、飽和NH4Cl水溶液で反応停止した。次いで300 mLの水を添加し、反応混合物をDCM (4回)で抽出した。次いでDCM層を合わせてH2O (3回)、ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。次いで残留物をコンビフラッシュ(120 gのシリカカラム)によりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、12.86 g (72%)の目的生成物54を無色の油として得た。
【0151】
[00124] 11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデカン-l-オール(55):火炎乾燥した1 Lの清浄なRBF内へ、N2流下で、12.86g (34.48 mmol)の54を装入した。これに172 mL (86.2 mmol)の9-BBN (THF中0.5 M)を添加した。反応物を3時間撹拌した。次いで23 mLの30% H2O2、続いて49 mLの15% NaOH水溶液を反応混合物に滴加し、反応混合物を85℃で3時間撹拌した。次いで混合物を室温に冷却し、THFを蒸発させ、残留物をH2Oで希釈し、EtOAc (3回)で抽出した。次いで有機層を合わせてブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。次いで残留物をコンビフラッシュ(120 gのシリカカラム)によりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、10.15 g (76%)の化合物55を白色固体として得た。
【0152】
[00125] メタンスルホン酸11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデシルエステル(56):火炎乾燥した250 mLの清浄なRBF内へ、N2流下で10.10 g (26 mmol)の55を添加した。これに100 mLのDCMおよび5.5 mL (39 mmol)のEt3Nを添加した。次いで反応混合物を氷水浴内で冷却し、2.3 mL (29 mmol)のMsClを添加し、室温で12時間撹拌した。次いで反応物を200 mLのDCMで希釈し、順に飽和NaHCO3水溶液(1回)、H2O (2回)、ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。次いで残留物をコンビフラッシュ(120 gのシリカカラム)によりヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて精製し、10.15 g (84%)の目的生成物56を白色固体として得た。
【0153】
[00126] 11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデシルN4-ベンゾイル環状シドホビル(57):火炎乾燥した250 mLの清浄なRBF内へ、N2流下で、2.0 g (5.45 mmol)のベンゾイル保護したc-CDV、続いて40 mLの乾燥NMPを入れ、溶液が透明になるまで混合物を撹拌した。次いでこれに2.9 mL (16.35 mmol)のDIPEAおよび10.15 g (21.7 mmol)の56を添加し、続いて1.3 g (11 mmol)のNaIを添加した。次いで反応混合物を90℃で16時間撹拌した。次いで溶媒を真空下で蒸発させ、コンビフラッシュ(120 gのシリカカラム)によりCHCl3/MeOHを溶離剤として用いて精製し、1.8 g (45%)の目的生成物57を黄色固体として得た。
【0154】
[00127] 11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデシルシドホビルアンモニウム塩(58):1.8 g (2.44 mmol)の57を試験管に入れ、40 mLのNH4OHを添加し、試験管を密閉した。次いで反応混合物を密閉試験管内において80℃で12時間撹拌した。次いでそれを室温に冷却した後、NH4OHを真空下で蒸発させ、残留物を10 mLのH2Oに溶解し、凍結乾燥した。次いで黄白色固体をアセトン(6回)で洗浄し、吸引濾過した。次いで固体を高真空下で16時間乾燥させて、1.46 g (91%)の目的生成物58を黄白色固体としてアンモニウム塩の形で得た。1H NMR、31P NMR、19F NMR、元素分析およびLRMSデータはすべて、目的生成物58の構造と一致した。
【0155】
実施例10ワクシニアウイルスおよび牛痘ウイルスに対するインビトロでのシドホビル(CDV)および9-(S)-(3-ヒドロキシ-2-ホスホノメトキシプロピル)-アデニン((S)-HPMPA)の末端前分枝鎖メチルアルコキシアルキル類似体の抗ウイルス活性の評価
[00128] ウイルスプールの調製:ワクシニアウイルス株コペンハーゲン(Copenhagen)、および牛痘ウイルス株ブライトン(Brighton)の保存プールを、米国陸軍感染症医学研究所(U.S. Army Medical Research Institute for Infectious Diseases、メリーランド州フレデリック)のJohn Hugginsから入手した。これらのプールはベロ細胞において調製され、1:50希釈して作業用保存株を得た。
【0156】
[00129] 有効性に関するプラーク減少アッセイ:使用の2日前に細胞を6ウェルプレートに播種し、37℃、10% CO2および湿度90%でインキュベートした。アッセイ当日、5%ウシ胎仔血清(FBS)および抗生物質を含有する2×最小必須培地(MEM)中に薬物を目的濃度の2倍で調製し、2×MEM中に1:5系列希釈して、6種類の薬物濃度を得た。最初の開始濃度は通常は200μMであり、0.06μMの範囲にまで及んだ。用いるウイルスを10% FBS含有MEM中に、ウェル当たり20〜30プラークとなる目的濃度に希釈した。次いで培地をウェルから吸引し、0.2 mLのウイルスを各ウェルに添加し(三重試験法)、0.2 mLの培地をこれらの薬物毒性ウェルに添加した。プレートを15分毎に振とうしながら1時間インキュベートした。インキュベーション期間後、等量の1%アガロースを等容量の各薬物希釈液に添加した。これにより、100μMから0.03μMまでの最終薬物濃度、および最終アガロースオーバーレイ濃度0.5%が得られた。この薬物-アガロース混合物を各ウェルに2 mL容量で添加し、次いでプレートを3日間インキュベートした後、細胞を1.5%ニュートラルレッド溶液で染色した。5〜6時間のインキュベーション期間後、色素を吸引し、立体顕微鏡によりlO倍の倍率でプラークを計数した。MacSynergy II、バージョン1コンピュータープログラムを用いて50%有効濃度(EC50)を計算した。結果を表3および4に示す。
【0157】
[00130] 毒性に関するニュートラルレッド取込みアッセイ:アッセイの24時間前に、HFF細胞を96ウェルプレートに2.5×10/5mLの濃度で播種した。24時間後、培地を吸引し、125μLの薬物を第1列のウェルに添加し、次いでBeckman BioMek液体操作システムを用いて1:5系列希釈した。薬物を添加した後、プレートをCO2インキュベーター内で37℃において7日間インキュベートした。その時点で薬物を含む培地を吸引し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の0.01%ニュートラルレッドをウェル当たり200μl添加し、1時間インキュベートした。色素を吸引し、Nuncプレート洗浄器を用いて細胞をPBSで洗浄した。PBSを除去した後、ウェル当たり200μlの50%エタノール-1%氷酢酸(H20中)を添加した。プレートをロータリーシェーカーに15分間乗せておき、Bio-tekプレートリーダーにより540 nmで光学濃度を読み取った。結果を表3および4に示す。
【0158】
【表3】

【0159】
SI(選択性指数)=CC50/EC50
略号:CDV, シドホビル;HDP-CDV, ヘキサデシルオキシプロピル-CDV;17M-ODE-CDV, 17-メチル-オクタデシルオキシエチルシドホビル;15M-HDP-CDV, 15-メチル-ヘキサデシルオキシプロピルシドホビル;14M-PDP-CDV, 14-メチル-ペンタデシルオキシプロピルシドホビル;13M-TDP-CDV, 13-メチル-テトラデシルオキシプロピルシドホビル;12M-TrDP-CDV, 12-メチル-トリデシルオキシプロピルシドホビル。
【0160】
【表4】

【0161】
SI(選択性指数)=CC50/EC50
略号:CDV, シドホビル;(S)-HMPMA, 9-(S)-(3-ヒドロキシ-2-ホスホノメトキシプロピル)-アデニン;HDP-, ヘキサデシルオキシプロピル;ODE-, オクタデシルオキシプロピル;15M-HDP-, 15-メチル-ヘキサデシルオキシプロピル-;17M-ODE-, 17-メチル-オクタデシルオキシエチル-。
【0162】
実施例11エクトロメリアウイルスに対するインビトロでのCDVおよび(S)-HPMPAの末端前分枝鎖メチルアルコキシアルキル類似体の抗ウイルス活性の評価
[00131] 細胞およびウイルス:BS-C-1細胞(ATCC CCL 26)を、10%のウシ血清胎仔クローンIII (Hyclone, ユタ州ローガン)、2 mMのL-グルタミン(GIBCO, ニューヨーク州グランドアイランド)、100 U/mLのペニシリン(GIBCO)および100μg/mLのストレプトマイシン(GIBCO)を含有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。MOS-3-P2と表示されるECTV (ATCC VR-1374)のプラーク純粋MOS単離株を、アフリカミドリザル(African green monkey)腎細胞系BS-C-I内で増殖させた。ショ糖クッションを通してウイルスを精製した。ウイルス懸濁液をPBS+1%血清中に系列希釈し、単層に37℃で1時間吸収させ、DMEM中1%カルボキシメチルセルロース懸濁液+5%胎仔クローンIIIでオーバーレイした。37℃で4日後、各ウェルに0.5 mLの0.3%クリスタルバイオレット/10%ホルマリン溶液を添加することによりウイルスプラークを可視化し、かつウイルスを不活性化した。
【0163】
[00132] プラーク減少アッセイ:CV-1細胞を24ウェル-クラスタープレートのウェルに播種した。0.1 mLのDMEM+5%胎仔クローンIII中における75プラーク形成単位(PFU)の指示ウイルスを、37℃で60分間、各単層に感染させた。培地を吸引により除去し、薬物を含有しない、または0.05〜50μMの濃度の被験薬物を含有する、標準ウイルスオーバーレイ培地を添加した。プレートを37℃で、ECTVについては3〜4日間、VACV-WRについては2日間インキュベートし、単層を染色し、立体顕微鏡によりプラークを計数した。各薬物のEC50濃度を計算した。結果を表5に示す。
【0164】
【表5】

【0165】
略号は表3および4に示したとおりである。
【0166】
実施例12致死性エクトロメリアウイルス感染症における経口15M-HDP-(S)-HPMPAの活性
[00133] インビボ薬物評価:A/Ncrマウスに、有効量の麻酔薬カクテル(ケタミン(ketamine) 90 mg/kg/キシラジン(xylazine) 10 mg/kg)を注射し、垂直から45°Cで挿管プラットフォーム上に保持し、各鼻孔に5μlのウイルス懸濁液を全攻撃量140 PFU (約280 ×LD50)で接種した。ウイルス接種の約2.5分後、マウスをそれらのケージに戻した。ECTV曝露の4時間後、マウスのグループを0.1 mlの無菌蒸留水のみ、または被験化合物を含有する蒸留水の胃管投与により処理した。この処理を1、2、3および4日目に、合計5回繰り返した。マウスを疾患臨床徴候(罹患率)および死亡率について21日間にわたって観察した。結果を表6に示す。
【0167】
【表6】

【0168】
略号:HDP-, ヘキサデシルオキシプロピル;15M-HDP, 15-メチル-ヘキサデシルオキシプロピル;13M-TDP, 13-メチル-テトラデシルオキシプロピル;14M-PDP, 14-メチル-ペンタデシルオキシプロピル;感染の4時間後に1日1回、5日間、薬物を経口投与した;MDD, 平均死亡日。
【0169】
実施例13肝S9画分を用いた代謝安定性試験
[00134] 目的化合物を、サルおよびヒトの肝臓からプールした肝S9画分(業者から購入)中、37℃でインキュベートした。対照試料(直ちに急冷)を用いてゼロ時点での応答を判定した。インキュベートした試料とゼロ時点での試料の応答の比が、親化合物の残留率%を示した。化合物をDMSOに溶解し、緩衝液で系列希釈して、アッセイに適切な濃度(1〜10μM)にした。高濃度希釈液(約500 mM)の一部を用いて、分析のためのLC-MS/MS条件(イオン化極性、SRM転位、衝突エネルギー)を決定した。7-エトキシクマリンを対照として含めた。インキュベーション条件における被験化合物の安定性を調べるために、陰性対照(S9なし)を含めた。すべてのアッセイを三重試験法で実施し、親化合物の残留率%を報告した。インキュベーションは一般にマイクロタイタープレート内でタンパク質濃度3 mg/mLおよび化合物濃度1μMを用いて実施された。反応物を特定時点でサンプリングし、冷アセトニトリル/水溶液の添加により停止した。反応停止したプレートを遠心した後、高速勾配LC-MS/MSにより分析した。結果を図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】ヘキサデシルオキシプロピルシドホビル(HDP-CDV)に関して模式的な抗ウイルス活性化および代謝不活性化の経路を示す。
【図2】シドホビルの”代謝抵抗性”親油性エステルの代表的な構造を示す。
【図3】HDP-CDVおよび15-メチル-HDP-CDV (15M-HDP-CDV)に関して、時間に対する薬物残存率%のグラフを示す。この図は、サル肝機能による分枝鎖アルコキシアルキルエステル誘導体15M-HDP-CDVの分解が直鎖アルコキシアルキルエステル誘導体HDP-CDVの分解より顕著に遅いことを示す。方法を実施例13に記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造を有する化合物の群から選択されるヌクレオシドホスホネート:
【化1】

[式中:
Rは、-R1-O-R2よりなる群から選択され、その際、R1は置換されていてもよいC1-C11アルキル基よりなる群から選択され、R2はC6-C17アルキル基またはC6-C17アルケニル基よりなる群から選択され;
その際、
C6-C17アルキル基は、メチル、エチル、プロピルまたはシクロアルキル(シクロプロピルを含む)よりなる群から選択される1個以上のアルキル基ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されており;さらに、C6-C17アルキル基はアルキル基の末端またはその付近の位置に1個以上の置換基を含み;
その際、
C6-C17アルケニル基は、メチル、エチル、プロピル、シクロアルキル基(シクロプロピルを含む)よりなる群から選択されるアルキル基ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されていてもよく;さらに、C6-C17アルケニル基は1以上の二重結合(末端二重結合を含む)を含み;
Bは、プリン塩基またはピリミジン塩基から選択され;
Aは、H+、Li+、Na+、K+、NH4+、テトラアルキルアンモニウムおよび他の第三級アミン(トリエチルアミンを含む)塩よりなる群から選択される対イオンである]。
【請求項2】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化2】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択される、請求項1のホスホネート。
【請求項3】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化3】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択される、請求項1のホスホネート。
【請求項4】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化4】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択され、Xはハロゲンである、請求項1のホスホネート。
【請求項5】
XはFである、請求項4のホスホネート。
【請求項6】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化5】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択され、Xは独立してハロゲンから選択される、請求項1のホスホネート。
【請求項7】
XはFである、請求項6のホスホネート。
【請求項8】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化6】

から選択される、請求項6のホスホネート。
【請求項9】
Rはホスホネートの代謝分解を阻止または減少させるように選択される、請求項1のヌクレオシドホスホネート。
【請求項10】
ホスホネートは下記の構造を有する化合物:
【化7】

から選択される、請求項1のヌクレオシドホスホネート。
【請求項11】
ホスホネートは下記の構造を有する化合物:
【化8】

から選択される、請求項1のヌクレオシドホスホネート。
【請求項12】
下記よりなる群から選択されるヌクレオシドホスホネート:3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル環状シドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル(S)-環状HPMPA、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピル(S)-環状HPMPA、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル-(S)-環状HPMPA、3-(12-メチルトリデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(13-メチルテトラデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(14-メチルペンタデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビルナトリウム、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビルアンモニウム、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチルシドホビル、2-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチルシドホビル、3-(フィタニルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-メチルヘキサデシルオキシ)エチル-(S)-HPMPA、2-(17-メチルオクタデシルオキシ)エチル-(S)-HPMPA、3-(ヘキサ-デカ-15-エニルオキシ)プロピルシドホビルアンモニウム、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-HPMPA、3-(15-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-環状HPMPA、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピルシドホビル、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル環状シドホビル、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-HPMPA、3-(16-フルオロヘキサデシルオキシ)プロピル-(S)-環状HPMPA、および11-(7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-オクチルオキシ)-ウンデシルシドホビルアンモニウム塩。
【請求項13】
ホスホネートは抗ウイルス薬または抗新生物薬から選択される、請求項1のヌクレオシドホスホネート。
【請求項14】
抗ウイルス薬はアデホビル、シドホビル、環状シドホビル、テノホビル、ホスホノメチオキシエチルグアニンまたはHPMPAである誘導体である、請求項13のヌクレオシドホスホネート。
【請求項15】
請求項1に記載のヌクレオシドホスホネートおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項16】
その必要があるホストに有効量の請求項1に記載のホスホネート化合物を投与することを含む、ウイルス感染症を処置するための方法。
【請求項17】
下記の構造を有する化合物の群から選択されるヌクレオシドホスフェート:
【化9】

[式中:
Rは、-R1-O-R2よりなる群から選択され、その際、R1は置換されていてもよいC1-C11アルキル基よりなる群から選択され、R2はC6-C17アルキル基またはC6-C17アルケニル基よりなる群から選択され;
その際、
C6-C17アルキル基は、メチル、エチル、プロピルまたはシクロアルキル(シクロプロピルを含む)よりなる群から選択される1個以上のアルキル基ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されており;さらに、C6-C17アルキル基はアルキル基の末端またはその付近の位置に1個以上の置換基を含み;
その際、
C6-C17アルケニル基は、メチル、エチル、プロピル、シクロアルキル基(シクロプロピルを含む)よりなる群から選択されるアルキル基ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されていてもよく;さらに、C6-C17アルケニル基は1以上の二重結合(末端二重結合を含む)を含み;
Bは、プリン塩基またはピリミジン塩基から選択され;
Aは、H+、Li+、Na+、K+、NH4+、テトラアルキルアンモニウムおよび他の第三級アミン(トリエチルアミンを含む)塩よりなる群から選択される対イオンである]。
【請求項18】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化10】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択される、請求項17のホスフェート。
【請求項19】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化11】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択される、請求項17のホスフェート。
【請求項20】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化12】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択され、Xはハロゲンである、請求項17のホスフェート。
【請求項21】
XはFである、請求項20のホスフェート。
【請求項22】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化13】

から選択され、式中、pは1〜11から選択され、qは6〜17から選択され、Xは独立してハロゲンから選択される、請求項17のホスフェート。
【請求項23】
XはFである、請求項22のホスフェート。
【請求項24】
Rは下記の構造を有する化合物の基:
【化14】

から選択される、請求項17のホスフェート。
【請求項25】
Rはホスホネートの代謝分解を阻止または減少させるように選択される、請求項17のヌクレオシドホスフェート。
【請求項26】
ホスフェートは抗ウイルス薬または抗新生物薬から選択される、請求項17のヌクレオシドホスフェート。
【請求項27】
抗ウイルス薬は、アシクロビル、ガンシクロビル、AZT、ddI、ddA、d4T、ddC、3TC、FTC、2'-C-メチルアデノシン、2'-C-メチルグアノシン、7-デアザ-2'-メチルアデノシン、2'-C-メチルシトシン、DAPD、L-FMAU、エンテカビル、テルビブジン、ならびに多様なβ-L-2'-デオキシシチジン、β-L-2'-デオキシアデニンおよびβ-L-2'-デオキシチミジンの誘導体である、請求項26のヌクレオシドホスフェート。
【請求項28】
抗新生物薬は、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン(ゲムシタビン)、(E)-2'-デオキシ-2'-フルオロメチレン-シチジン(FMdC)、または1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノシル)シトシン(4'-チオ-FAC)、Ara-C、Ara-G、5-フルオロウリジン、5-フルオロ-デオキシウリジン、(R)-デオキシコホルマイシン、およびフルダラビンよりなる群から選択される、請求項26のヌクレオシドホスフェート。
【請求項29】
請求項17に記載のヌクレオシドホスフェートおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項30】
その必要があるホストに有効量の請求項17に記載のホスフェート化合物を投与することを含む、ウイルス感染症を処置するための方法。
【請求項31】
その必要があるホストに有効量の請求項17に記載のホスフェート化合物を投与することを含む、増殖性新生物を処置するための方法。
【請求項32】
その必要があるホストに有効量の請求項17に記載のホスフェート化合物を投与することを含む、細胞増殖を調節するための方法。
【請求項33】
下記の構造を有する、抗ウイルス化合物ザナミビルのリン酸エステル:
【化15】

[式中:
Zは、-P(O)(OR)(OA)よりなる群から選択され;
その際、
Rは、-R1-O-R2よりなる群から選択され、その際、R1は置換されていてもよいC1-C11アルキル基よりなる群から選択され、R2はC6-C17アルキル基またはC6-C17アルケニル基よりなる群から選択され;
その際、
C6-C17アルキル基は、メチル、エチル、プロピルまたはシクロアルキル(シクロプロピルを含む)よりなる群から選択される1個以上のアルキル基ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されており;さらに、C6-C17アルキル基はアルキル基の末端またはその付近の位置に1個以上の置換基を含み;
その際、
C6-C17アルケニル基は、メチル、エチル、プロピル、シクロアルキル基(シクロプロピルを含む)よりなる群から選択されるアルキル基ならびに/あるいはF、Cl、BrおよびIよりなる群から選択される1個以上のハロゲンで置換されていてもよく;さらに、C6-C17アルケニル基は1以上の二重結合(末端二重結合を含む)を含み;
Aは、H+、Li+、Na+、K+、NH4+、テトラアルキルアンモニウムおよび他の第三級アミン(トリエチルアミンを含む)塩よりなる群から選択される対イオンである]。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−538829(P2009−538829A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509926(P2009−509926)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/066822
【国際公開番号】WO2007/130783
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508326806)キメリクス,インコーポレーテッド (1)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】