説明

抗エイズ剤としての多環式化合物の医薬的使用

この発明は、インゲノール類、ラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類およびそれらの混合物から選択される多環式化合物の抗エイズ剤としての医薬的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は概して多環式(multicyclic)化合物、すなわちインゲノール(ingenol)およびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール(lanosta−8,24−dien−3−ol)化合物ならびにそれらの混合物の、抗エイズ剤としての医薬的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
後天性免疫不全症候群(エイズとしても知られている)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされるヒトの免疫系の疾患である。
この疾患は免疫系の有効性を進行的に低減させ、人を日和見感染症および腫瘍にかかりやすい状態にする。HIVは、粘膜または血流が、ウイルスを含有する体液、例えば血液、精液、腟液、前精液(preseminal fluid)、および母乳と直接接触することにより伝染する。
【0003】
エイズは現在世界的に流行している。保健機構によれば、2007年に、世界中で3320万人の人々がその疾患を有して生きており、エイズは330,000人の子供が含まれる推定210万人の人々を殺したと概算された。
【0004】
全ての症候群の場合のように、エイズの病態生理は複雑である。HIVは主にヒトの免疫系の極めて重要な器官、例えばCD4+ T細胞(T細胞の亜集団)、マクロファージおよび樹状細胞に感染するレトロウイルスである。HIVは直接的および間接的にCD4+ T細胞を破壊する。Tリンパ球は免疫応答に不可欠であり、それら無しでは体は感染症と戦うことも癌細胞を殺すこともできない。HIVは免疫系を弱め、日和見感染症を許す。
【0005】
疾患の経過を遅くすることができるエイズに関する処置は存在するが、現在公に利用可能なHIVに関するワクチンまたはHIVもしくはエイズに関する治療法は存在しない。唯一の既知の予防の方法は、ウイルスへの曝露を避けること、またはそれに失敗した場合には、非常に重大な曝露の直後に抗レトロウイルス処置(曝露後予防(PEP)と呼ばれる)を行うことに基づく。
【0006】
抗レトロウイルス処置はHIV感染症の死亡率および罹患率の両方を低減するが、これらの薬物は高価であり、抗レトロウイルス薬物療法への日常的なアクセスは全ての国で利用できるわけではない。抗レトロウイルス処置は下痢、倦怠感、吐き気および疲労が含まれる非常に不愉快な副作用も有する。抗レトロウイルス療法無しでは、HIV感染からエイズへの進行の平均時間はHIVの亜型に依存してほぼ10年であり、エイズを発現した後の平均生存時間はわずか数ヶ月である。
【0007】
現在のHIV感染に関する処置は、一般に、少なくとも2タイプの抗レトロウイルス剤に属する少なくとも3種類の薬物からなる組み合わせ(または“カクテル”)を含む、非常に積極的な抗レトロウイルス療法からなる。
【0008】
なぜ一部の人々が抗レトロウイルス療法から利益を得ないのかの主な理由は、療法を順守しないこと(Non−adherence)および続けないこと(non−persistence)である。順守しないことおよび続けないことに関する理由は様々である。主な心理社会的問題には、医療への乏しいアクセス、不十分な社会的支援、精神医学的疾患および薬物乱用が含まれる。抗レトロウイルス療法計画は、多数の丸剤の頻繁な摂取を伴い複雑であり、従って従いにくい可能性もある。副作用も人々が抗レトロウイルス療法を続けるのを止めさせる可能性があり、これらには脂肪異栄養症、脂質異常症、下痢、インスリン抵抗性、心血管の危険性の増大および出生時欠損が含まれる。
【0009】
1987年以来、AZTおよび類似のヌクレオシド類似体の慢性投与がヒト免疫不全ウイルス(HIV)を抑制するために最も一般的な処置としてエイズ患者に処方されてきた。1990年以来、AZTは健康なHIV抗体陽性の人にもエイズを予防するために処方されてきた。その理論的根拠は、細胞のDNA合成を阻害しない用量でHIVのDNA合成を阻害することである(Chiu et al.:抗ウイルス療法に用いられる濃度におけるアジドチミジン(AZT)の培養状態のヒトおよび動物細胞に対する毒性、Genetica 95: 103-109, 1995)。
【0010】
しかし、その本来備わっている細胞毒性および血液学的毒性を考慮して、AZTは許容できる抗HIV薬であるか疑われてきた(Chiu et al.(上述)およびClotet et at.:エイズを有する患者におけるジドブジン(AZT)の毒性。Int Conf AIDS 4-9; 5: 338 1989)。
【0011】
いくつかの独立した研究が、AZTは培養状態のヒト細胞に対して毒性であること、すなわち半数抑制用量(ID50)が1〜50μMの範囲であったことを報告した。これらの結果に一致して、貧血、白血球減少、吐き気、筋萎縮、痴呆、肝炎および死亡が含まれる生命を脅かす毒性が20〜60μMのAZTを用いて処置されたヒトにおいて文書で証明されており、すなわち、AZTの抗HIV薬としての適否は再考され得る(Chiu et al.(上述))。
【0012】
現行の処置を向上させるための研究には、現行の薬物の副作用を減少させること、順守を向上させるために薬物計画をさらに単純化すること、および薬物耐性を管理するために計画の最高のシーケンスを決定することが含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Chiu et al.:抗ウイルス療法に用いられる濃度におけるアジドチミジン(AZT)の培養状態のヒトおよび動物細胞に対する毒性、Genetica 95: 103-109, 1995
【非特許文献2】Clotet et at.:エイズを有する患者におけるジドブジン(AZT)の毒性。Int Conf AIDS 4-9; 5: 338 1989
【発明の概要】
【0014】
本発明は、意義深いことに今までに知られている欠点、すなわち毒性に関連する欠点のないエイズの有効な処置のためのインゲノールおよびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物、ならびにそれらの混合物、またはそれらを含む組成物の使用に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、表Iの結果を示す。
【図2】図2は、表IIの結果を示す。
【図3】図3は、表IIIの結果を示す。
【図4】図4は、表IVの結果を示す。
【図5】図5は、表Vの結果を示す。
【図6】図6は、表VIの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
あらゆる他のものを除外することなく、適切なインゲノール化合物は3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノール、3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、多形体、溶媒和物または水和物、プロドラッグまたは代謝産物の1種類以上である。
【0017】
インゲノール化合物は例えばトウダイグサ科(Euphorbiaceae)の植物から、または化学合成により得ることができ、その経路は本発明に無関係である。適切なインゲノール化合物は、例えば国際特許公開第WO 2007000618号に従ってトウダイグサ科の植物の乳液の極性溶媒抽出物の画分として提供され得る。
【0018】
あらゆる他のものを除外することなく、適切なラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類は、オイホール(euphol)(RN 514−47−6)、チルカロール(tirucallol)(RN 514−46−5)およびラノステロール(lanosterol)(RN 79−63−0)、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、結晶および多形体、溶媒和物および水和物、プロドラッグまたは代謝産物の1種類以上である。ラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類は、例えばトウダイグサ科の植物から、または化学合成により得ることができ、その経路は本発明に無関係である。
【0019】
インゲノール類およびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類の適切な混合は、1:100から100:1まで、詳細には1:50から50:1まで、より詳細には1:10から10:1まで、より詳細には1:4から4:1までの範囲である。
【0020】
従って、第1観点において、本発明は、ヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する、すなわちHIV感染症、エイズの処置において有用な医薬組成物の製造のためのインゲノールおよび/またはラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物の使用に関係する。
【0021】
本発明のインゲノールおよびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物、それらの混合物ならびに本発明に従うそれらを含む組成物は、処置を必要とする対象に、経口、局所、経皮、皮下、腹腔内(intraperitonial)、静脈内、浸透により、吸入により、経皮、経粘膜、筋肉内、肺内、膣内、直腸、眼内、および舌下が含まれる経腸または非経口のあらゆる適切な方法で投与することができる。本発明における特に適切な投与の方法は、局所的におよび全身的に(浸透、経口、スプレーによる吸入、経皮)である。本発明のインゲノール化合物は、遅延または制御放出組成物中に含ませることができる。既知の補助剤および賦形剤を、インゲノール化合物を含有する組成物中で利用することができる−本発明に関連する組成物に有用な医薬剤形に関する参考文献は、刊行物Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing, 1965-1990において見つけることができる。
【0022】
本発明の組成物は、固体、液体または半液体、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、懸濁液、エマルジョン、分散液およびあらゆる他の有用な既知の医薬的に許容できる形として患者に投与することができる。その組成物は、望まれる作用に依存して、さらに有効薬剤、例えば抗生物質を含有していてよい。錠剤またはカプセル(軟および硬カプセル両方)としての経口投与に関して、そのインゲノール化合物は医薬的に許容できる不活性なビヒクル、例えばラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、リン酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、および類似のものと組み合わせることができ;液体の形での経口投与に関して、そのインゲノール化合物はエタノール、グリセロール、水、および類似のものと組み合わせることができる。望まれる場合、または必要な場合、凝集剤、潤滑剤、崩壊剤(disintegrating agents)、色および芳香をその混合物に添加することができる。一般的な凝集剤は、グルコース、[ベータ]−ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然または合成ガム類、例えばアラビアガム(gum arabica)、トラガカントガムまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ろう剤および類似のものである。潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムが含まれる。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、および類似のものが含まれる。
【0023】
本発明において関係する組成物は、リポソームとして、またはビヒクルのような可溶性ポリマーと一緒に投与することもできる。
経口投与のための液体剤形は、患者による許容を増大させるための着色剤および甘味剤を含んでいてよい。水剤形に関して許容できるビヒクルは、水、適切な油、生理食塩水溶液、水性デキストロース、他の糖溶液およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール類のようなグリコール類、リン酸緩衝液である。
【0024】
別の観点において、本発明はヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害するための、すなわちヒト免疫不全ウイルス感染症、例えばエイズの処置の処置のための方法に関係し、前記の方法は患者への薬理学的に許容できるキャリヤー中の薬理学的有効量の本発明に従う化合物の投与を含む。1種類以上のインゲノールまたは1種類以上のラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類、またはそれらの混合物の適切な量の例は、患者の体重1kgあたり0.001〜2000mgの1種類以上のインゲノール類、または1種類以上のラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類、またはそれらの混合物の、そのような患者に1日1回以上投与される投与量に相当する。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は本発明の具体的な態様であるが、それらはこれより先で示される特許請求の範囲において表現されていること以外にそれに制限を課するわけでは決してない。後の文章において、ラノスタ−8,24−ジエン−3−オールファミリーのメンバーである化合物オイホールがしばしば言及されるであろうが、これは単に参照が容易であるためになされているのであって、他のラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物がこの理由のために本発明から除外されることはないことは理解されるべきである。
【0026】
ウイルスおよび細胞
末梢血の単核細胞(MCPB)を、健康な提供者から、フィコール・ハイパック(Ficol−Hipaque)密度勾配法(Hystopaque, Chem Sigma. Co.,米国)により得た。それらの細胞を、10%非働化ウシ胎児血清(供給源:HyClone,米国)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、2mMグルタミンを補ったRPMI 1640培地(供給源:Sigma−Aldrich,米国))中で再懸濁し、5μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA,供給源:Sigma−Aldrich,米国)で2〜3日間刺激し、洗浄し、再び5U/mlのヒト組み換えインターロイキン−2(供給源:Sigma Aldrich,米国)を含有する培地中で維持した。MCPB(3×10)を、48ウェルを有するプレートにおいて血清無しのRPMI培地中で、5%COの雰囲気において37℃で1時間分布させた。ケモカイン受容体に関する異なる指向性により分離した初代HIV−1、すなわちCCR5−tropic(R5−tropic)を用いた。
【0027】
細胞の生存率の試験(XTTおよびトリパンブルー)
その分離株の細胞の生存率への作用を、XTT法により評価した(2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]2H−テトラゾリウム−カルボキシアニリド、供給源:Sigma)。その化合物のミトコンドリア活性への作用を試験するため、96ウェルを有するプレート、37℃、5%CO2中の正常な人のMCPB(2×10細胞/200μl/ウェル)を、異なる濃度のその物質(0.5μg/mL、5μg/mL、20μg/mL、40μg/mL、80μg/mL、160μg/mL、320μg/mLおよび640μg/mL)に3〜7日間の間晒した。この期間の終了時に、細胞の活性を50mlのXTT溶液の添加による比色定量により決定し、その結果を450nmにおける吸光度の読み取りにより(Scudiero et al, 1988, Cancer Res. 48:4827-4833に従って)分析した。
【0028】
抗HIV−1阻害活性
MCPB
MCPBにR5分離株を、5〜10ng/mlのAG p24 HIV−1を2〜3時間用いて感染させた。その細胞を3回洗浄し、5μg/mlのIL−2を補った培地中で再懸濁し、96ウェルのプレートに3つ組で蒔き(2×10細胞/200μl、その試験される化合物に関して示した濃度(0.5μg/mL、1.0μg/mL、5.0μg/mL、10μg/mL、20μg/mLおよび40μg/mL)で処理した。その培養物を5%CO雰囲気において37℃で7日間維持し、ウイルス反応をELISA(酵素結合免疫吸着測定法の情報)によりp24の量により測定した。
【0029】
物質試験の結果
細胞毒性および抗レトロウイルスアッセイ
その分析は、末梢血の単核細胞(MCPB)において実施され、ここでその細胞毒性アッセイはXTTにより評価され、ウイルス反応の阻害のアッセイはELISAにより評価された。
【0030】
CC50(50%細胞毒性濃度)は、その細胞の50%を生存可能な状態で保つことができる試験した物質の濃度を示す。
EC50(50%有効濃度)は、ウイルス粒子の産生の50%を抑制することができる物質の濃度である。
【0031】
実施例1−インゲノール類の細胞毒性
下記の表Iの結果(図1にも示す)は、国際特許公開第WO 2007000618号において記述されているような、トウダイグサ科の植物の乳液の極性溶媒抽出物の画分からの3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノールおよび3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノールの1:1混合物に関する。研究室コード:4SII
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2:インゲノール類のウイルス反応の阻害
表IIの結果(図2にも示す)は、国際特許公開第WO 2007000618号において記述されているような、トウダイグサ科の植物の乳液の極性溶媒抽出物の活性画分からの3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノールおよび3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノールの1:1混合物に関する。研究室コード:4SII
【0034】
【表2】

【0035】
実施例3−ラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類の細胞毒性
表IIIの結果(図3にも示す)は、約92%オイホールおよび8%チルカロールの混合物に関する。研究室コード:4SI。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例4:ラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類のウイルス反応の阻害
表IVの結果(図4にも示す)は、約92%オイホールおよび8%チルカロールの混合物に関する−研究室コード:4SI
【0038】
【表4】

【0039】
実施例5−インゲノール類およびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類の混合物の細胞毒性
表Vの結果(図5にも示す)は、おおよそ70%のオイホール、10%のチルカロール、10%の3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノールおよび10%の3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノールを含むミドリサンゴ(Euphorbia tirucalli)の乳液のブタノール抽出物に関する(そのような百分率は本発明の化合物自体のみを考慮しており、その抽出物の残りの部分は考慮していない)。研究室コード4T。
【0040】
【表5】

【0041】
実施例6:インゲノール類およびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類の混合物のウイルス反応の阻害
表VIの結果(図6にも示す)は、おおよそ70%のオイホール、10%のチルカロール、10%の3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノールおよび10%の3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノールを含むミドリサンゴの乳液の極性溶媒抽出物に関する(そのような百分率は本発明の化合物自体のみを考慮しており、その抽出物の残りの部分は考慮していない)。研究室コード4T。
【0042】
【表6−1】

【0043】
【表6−2】

【0044】
実施例5および6において利用された、ミドリサンゴ抽出物から作られた抽出物の記述:水中で1:1希釈した新しい乳液に、ヘキサンを添加して凝固物を得る。その不溶化された物質を水で数回洗浄し、濾過する。得られた物質をブタノールおよびヘキサンの混合物で処理し、より極性の大きい物質がブタノール中に残り、次いでそれをヘキサンから分離し、濾過し、最後に蒸発により回収する。
【0045】
論評
下記の表VIIは、上記の実施例1〜6の結果を要約する。
【0046】
【表7】

【0047】
SI(選択指数)=CC50/EC50は、薬物の使用における安全の程度を表し、従ってその値が高いほど、その物質の作用はより良い。
結果の分析
上記の実施例の結果は、本発明の化合物が末梢血の単核細胞(MCPB)においてHIV−1の産生を阻害することができることを示しており、それはELIZA P24法により評価された。
【0048】
インゲノール類およびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類の混合物において見られたより高い毒性は、それらはそのトウダイグサ属(Euphorbia)の乳液の抽出物の約30%の残りの構成要素から分離されなかったため、意外ではない。
【0049】
しかし、本発明の化合物およびそれらの混合物が限られた毒性でHIVの産生を阻害したことは明確に理解することができる。
本明細書で示した教示および実施例の助けにより、当業者は付随する特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく本発明を均等な方法で再現し、同じ機能を用いて類似の結果を得ることができることは、十分に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゲノール類、ラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類およびそれらの混合物から選択される多環式化合物の、HIV感染症の予防または処置のための医薬組成物の製造のための使用。
【請求項2】
前記のインゲノール化合物が3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノール、3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、多形体、溶媒和物または水和物、プロドラッグまたは代謝産物の1種類以上である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記のラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類がオイホール、チルカロールおよびラノステロール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、結晶および多形体、溶媒和物および水和物、プロドラッグまたは代謝産物の1種類以上である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
1:100から100:1まで、詳細には1:50から50:1まで、より詳細には1:10から10:1まで、より詳細には1:4から4:1までの範囲のインゲノール類およびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類の混合物の、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
HIV感染症の処置のための方法であって、該方法が薬理学的に許容できるキャリヤー中における薬理学的有効量のインゲノール化合物を患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記のインゲノール化合物が3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノール、3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、結晶および多形体、溶媒和物および水和物、プロドラッグまたは代謝産物の1種類以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
HIV感染症の処置のための方法であって、該方法が薬理学的に許容できるキャリヤー中における薬理学的有効量のラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物を患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記のラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類がオイホール、チルカロールおよびラノステロール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、結晶および多形体、溶媒和物および水和物、プロドラッグまたは代謝産物の1種類以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
HIV感染症の処置のための方法であって、該方法が薬理学的に許容できるキャリヤー中における薬理学的有効量のインゲノールおよびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物の混合物を患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、1つの前記のインゲノールおよびラノスタ−8,24−ジエン−3−オール化合物の混合物が、以下:(A)3−(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノール、3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、結晶および多形体、溶媒和物および水和物、プロドラッグおよび代謝産物の1種類以上;(B)オイホール、チルカロールおよびラノステロール、それらの医薬的に許容できる塩類、異性体、結晶および多形体、溶媒和物および水和物、プロドラッグおよび代謝産物の1種類以上を含み;AおよびBの間の比率が1:100から100:1まで、詳細には1:50から50:1まで、より詳細には1:10から10:1まで、より詳細には1:4から4:1までの範囲である、前記方法。
【請求項11】
前記の混合物が重量において約70%のオイホール、10%のチルカロール、10%の3(2,4,6−ドデカトリエノイル)−インゲノールおよび10%の3−(2,4,6,8−テトラデカテトラノイル)−インゲノールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記の1種類以上のインゲノール類、ラノスタ−8,24−ジエン−3−オール類またはそれらの混合物の有効量が、患者の体重1kgあたり0.001〜2000mgであり、そのような患者に1日1回以上投与される、請求項5〜11の内の1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517262(P2013−517262A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548486(P2012−548486)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050198
【国際公開番号】WO2011/086423
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507397021)
【Fターム(参考)】