説明

抗ストレス剤

【課題】抗ストレス効果を有する組成物を提供する。
【解決手段】ワサビ葉の抽出物を含む、抗ストレス剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワサビ葉の抽出物を含む、抗ストレス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セリエが、精神的・肉体的ストレスが胃酸分泌や胃粘膜障害に関与することを「ストレス学説」として提唱して以来、ストレスは胃・十二指腸潰瘍の主原因と考えられてきた。このような胃病変は「ストレス潰瘍」と呼ばれ、その代表的なものとして脳外科手術後のCurling潰瘍や広範囲熱傷時に発生するCushing潰瘍が有名である。また動物実験では、水浸拘束ストレス、コミュニケーションボックス(communication box)法による情動ストレスにより、胃粘膜障害を形成することができる。しかし、H. pyloriの分離・培養に成功して以来多くの研究が行われ、胃、十二指腸潰瘍の主な原因はH. pylori感染であると考えられるようになった。現在では、H. pylori感染、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、ストレスが胃粘膜障害の3大原因と考えられている。
【0003】
H. pylori感染による胃・十二指腸における消化器疾患は、菌、宿主、環境因子の間で起こる複雑なクロストークによって引き起こされるので、H. pylori感染のみではその原因を十分に理解することは困難である。また、H. pylori陽性にもかかわらず消化器疾患を発症しないのに対して、H. pylori陰性の消化器疾患が観察されることもある。これらの相違は食事、喫煙、ストレス、NSAIDsなどの薬剤、遺伝子多型、衛生状態などの様々な因子が消化器疾患に関与していることを示唆している。
【0004】
これらの中でもストレスは古くから胃潰瘍などの消化器疾患の有力な原因であると考えられてきた。1996年の阪神・淡路大震災後、出血性胃潰瘍の増加が確認された。この原因として、震災によるストレス、H. pylori感染、そしてH. pyloriのCagA陽性による胃粘膜障害の亢進という複合要因によって起こったとされている。
【0005】
したがって、ストレス、特にH. pylori感染又はストレス負荷が誘導する酸化ストレスを抑制することができる薬剤の開発が望まれていた。
【0006】
我が国固有の香辛料であるわさび(Wasabia japonica Matsumura)は、根茎及びその主成分であるイソチオシアネートに関して研究が行われてきた。しかし、ワサビ葉は、大量に採取可能であるが、食用に適さないこと等から、資源としては活用されていなかった。
【0007】
したがって、ワサビ葉を有効に利用する方法の開発も望まれていた。
【0008】
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ワサビ葉の抽出物が抗ストレス作用を有することを発見し、本発明を完成させた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ワサビ葉の抽出物を含む、抗ストレス剤を提供する。
したがって、本発明は、
1.ワサビ葉の抽出物を含む、抗ストレス剤、
2.ワサビ葉の抽出物が、エタノール抽出物及びn−ブタノール抽出物の混合物である、上記1記載の抗ストレス剤、
3.ストレスがH. pylori感染又はストレス負荷が誘導する酸化ストレスである、上記1又は2に記載の抗ストレス剤、
に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で用いるワサビとしては、アブラナ科ワサビ属のWasabia japonicaを挙げることができ、特にWasabia japonica Matsumuraが好ましい。これらのワサビは、水洗し汚れを除き、そのままでも用いるのが好ましい。
【0011】
ワサビ葉をメタノールにて抽出し、溶媒を減圧下で留去させ、メタノール抽出物を得る。さらにメタノール抽出物を水に溶解し、ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールにて順次分配し、ヘキサン抽出物、酢酸エチル抽出物、n−ブタノール抽出物および水抽出物を得ることができる。
【0012】
得られた抽出液は、そのままか、又は必要に応じ、中和、脱塩、濃縮して使用することができる。必要に応じ、さらに一般的な精製処理を行うこともできる。精製処理としては、有機溶媒による沈殿、硫安、食塩、塩化カリウム等を用いる塩析、透析、限外ろ過、逆浸透処理、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル等を充填したカラムを用いるゲルろ過等を用いることができる。また、これらの処理を2つ以上組み合わせて行うこともできる。
【0013】
以上の操作で得られた活性成分を含む抽出物は、そのまま抗ストレス剤として用いることができるが、通常は、さらに、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、熱風乾燥等によって乾燥することができる。
【0014】
本発明の抽出物は、天然物に由来し、大量に摂取しても生体に悪影響を及ぼさないという利点を有することから、医薬品の原料として用いることができるほか、抽出物それ自体又は種々の栄養分を加えて、又は飲食品中に含有させた抗ストレス作用を有する機能性食品又は健康食品として提供することができる。具体的には、各種のビタミン類、ミネラル類等の栄養分を加えて、例えば、栄養ドリンク、豆乳、スープ等の液状の食品や各種形状の固形食品、さらには、粉末状としてそのままか、又は各種食品へ添加して用いることもできる。かかる抗ストレス剤としての本発明の抽出物の有効成分の含有量は、成人1日体重1kg当たり10〜1000mgであり、単回又は2〜3回に分けて摂取することができる。
【実施例】
【0015】
わさび葉抽出物の調製
わさび葉(フレッシュ重量:9.0kg)をメタノールにて室温で3回抽出し、溶媒を減圧下で留去させ、メタノール抽出物を得た。さらにメタノール抽出物を水に溶解し、ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールにて順次分配し、ヘキサン抽出物、酢酸エチル抽出物、n−ブタノール抽出物および水抽出物を得た。
【0016】
わさび葉の酢酸エチル抽出物及びn−ブタノール抽出物の混合物を低用量群(10mg/kg B.W./day)、中用量群(50mg/kg/day)、高用量群(200mg/kg B.W./day)になるよう生理食塩水200μlに溶解した。対照群には生理食塩水を用いた。
【0017】
わさび葉抽出物の投与および拘束ストレス実験
スナネズミを7日間馴化させ、各群6時間絶食後、試料の経口投与を10日間行った。10日目の投与後に絶食し、絶食後スナネズミの四肢を結紮してコルクボードに固定し、30、90、270分間ストレスを負荷した。拘束後、ネンブタールを40mg/kgになるように腹腔内に投与した。ヘパリンナトリウム注射液を入れた26Gの注射針で大動脈から採血を行い、コメットアッセイに血液を使用後、残りを3000rpm、10minで遠心し血漿を得た。続いて胃を摘出し、滅菌シャーレ上で胃大弯を切開し、胃内容物を取り除いた。胃は、1/2を組織染色用として10%ホルマリン溶液中で固定し、さらに1/2を8−オキソデオキシグアニン(8−oxodG)測定用、感染群ではCFUs測定用に用いた。なお、血漿および8−oxodG測定用の胃はそれぞれの測定直前まで−80℃で凍結保存した。各種測定項目は以下に記載した。
【0018】
各種測定項目
(1)胃の重量の測定
胃内容物を取り出した後、胃の湿重量を計量した。
【0019】
(2)胃内のH. pylori生菌数の測定
摘出した胃を細開後、生理食塩水1.0mlを加え、細切した胃に滅菌生食注6.0mlを加え、ホモジナイズした。ホモジネートを滅菌生食注で10倍、100倍に希釈し、それぞれ100μlをニッスイプレート・ヘリコバクター寒天培地(日水製薬株式会社)に蒔きコンラージ棒で引き伸ばした。アネロパック角型ジャーに培地、アネロパック・ヘリコ(三菱ガス化学株式会社)、雰囲気の保湿用の精製水を入れ、37℃で5日間培養後、コロニー数を計測した。
【0020】
(3)胃内pHの測定
胃内容物のpHをCOMPACT pH METER B-211(HORIBA)で測定した。
【0021】
(4)胃粘膜剥離状態の観察
摘出した胃の大弯側を幽門から噴門まで切開し、内容物を除去した後、粘膜面を表にして形を整え、インジゴカーミン液を滴下した。余分な液を除き、粘膜の剥離を目視により確認した。
【0022】
(5)胃組織標本の作製
組織を10%ホルマリン溶液に浸漬し固定した後、自動包理装置(ETP-150C、SAKURA)を用いて病理用パラフィン(Histologie、Merck)に包理した。その後、3〜4μmに薄切し、プレパラートを作成し、定法に従ってヘマトキシリンエオシン染色を施した。
【0023】
(6)胃粘膜障害スコアの判定
肉眼所見で正常な状態を0点、浮腫:1点、びらん:2点、びらん多発:3点、潰瘍4点として、胃粘膜障害の状態を数値化し、各群の平均値を胃粘膜障害スコアとした。浮腫は胃の組織間隙に水分が大量に貯留した状態、びらんは組織欠損が粘膜のみの浅い状態、潰瘍は組織欠損が粘膜下層、筋層や漿膜まで達した状態である。
【0024】
(7)胃粘膜出血スコアの判定
肉眼所見で出血のない状態を0点、小出血点:1点、小出血点多発:2点、出血班:3点、出血班多発:4点として、胃粘膜出血の状態を数値化し、各群の平均値を胃粘膜出血スコアとした。
【0025】
(8)胃組織中の8−oxodG量の測定
1.DNAの抽出
解凍した約150mgの胃組織に、氷冷0.3Mスクロース溶液1mlを加えテフロン(登録商標)ガラスホモジナイザーでホモジネートし、さらに、氷冷スクロース溶液2mlで、遠沈管に移し、遠心した。上清を捨てた後、ペレットを氷冷生理食塩水1mlで2回洗い、粗核分画を得た。これ以降の処理・反応はアルゴン雰囲気下で行った。粗核分画を1%SDS溶液350μlに再懸濁し、25mg/mlプロテナーゼK 50μlを加え、時々懸濁しながらインキュベーションした。その後、7M NaI0.4ml、イソプロピルアルコール0.8mlを加えよく混和し、−20℃、10min以上放置し、遠心しDNAを得た。DNAペレットを氷冷70% エタノール1mlで2回洗い、ssc300μl、RNaseを加え、インキュベーションした。反応後、Sevag(クロロホルム/イソミルアルコール=1:1、v/v)400μlを加え、遠心し、上清を他のエッペンドルフチュ−ブに移し、PEG300μlを加え、4℃で一晩静置した。遠心し得られたDNAペレットを、氷冷70% エタノール1mlで2回洗った。沈殿物にChelex処理水50μlを加え、アルゴン置換後、−80℃で保管した。なお、特にことわりがない限り、遠心は3000rpm、20min、4℃、超遠心は15000rpm、10min、4℃、インキュベーションは37℃で行った。
【0026】
2.DNAの濃度測定
抽出したDNAをChelex水で50倍に希釈し、260nmの波長における吸光度を吸光光度計により測定し、次式により抽出したDNA量を算出した。260nmの吸光度1.0が50μg/mlに相当する。320nmの波長はバックグラウンドを示す。DNA濃度(μg/ml)=吸光度(260nm-320nm)×50(μg/ml)×50(希釈率)
【0027】
DNAの加水分解
解凍した25μg相当のDNA水溶液にChelex水を加え22.5mlとし、200mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.8)2.5μg、ヌクレアーゼP1 6単位を加えて、アルゴン置換後、インキュベーション(37℃、30min)した。反応後、1M Tris-HCl 1.5μl、アルカリホスホターゼ2単位を添加して、アルゴン置換後、インキュベーション(37℃、1hr)した。反応後、加水分解溶液をUltrafree-C3LGC(MilliPore)にいれ、遠心分離(14000rpm、10min)してタンパク質をろ過除去し、ヌクレオシドを得た。
【0028】
HPLCによる8−oxodGの定量
8−oxodGは、Mightysil RP-18 GP 150-4.6(5μm)(関東化学株式会社)を接続したECD(ESA CoulechemII5200、Bedford)と組み合わせたHPLC(LC-10ポンプ、Shimadzu)を用いて測定した。使用溶媒は、12.5mMクエン酸、30mM水酸化ナトリウム、25mM酢酸ナトリウム、10mM酢酸を含む0.6%メタノール(pH5.1)で、流量は1.0ml/min、ECDの加電圧は350mVとした。また、8−oxodG量は同時にUVD(UVD-10、Shimadzu)によって測定されたdG量あたりの数に換算した。
【0029】
(9)全血液を用いたコメットアッセイ
以下の実験で、細胞試料を扱う際は、紫外線吸収膜付蛍光灯下で処理した。血液をPBS−で2倍に希釈した。スライドガラス(松浪硝子工業株式会社)にまずプレコートとして0.7%アガー溶液50μlを滴下し、他のスライドガラスの側面を用いてアガーを薄くのばし、乾燥機(50℃)中で1時間以上静置した。次に、第1層として0.7%アガー溶液75μlを滴下し、スライドガラスをかぶせてアガーを広げ、水平な場所に静置した。次いで、かぶせたスライドガラスを外し、第2層として調製した細胞試料と1.4%アガー溶液を1:1で混合した細胞混濁液75μlを滴下し、第1層の時と同様にしてアガーを広げ、水平な場所に静置した。さらに、第3層として1.4%アガー溶液とPBS-を1:1で混合した混合液75μlを滴下し、同様にアガーを広げ、水平な場所に静置した。アガー固化後、スライドガラスを外して細胞標本とした。溶解溶液中に細胞標本を浸し、氷上で1時間放置した。溶解溶液から取り出した細胞標本をFpgバッファーに浸し、5分ごとに3回、新しいものと交換した。その後、アガーの上にFpg溶液1μg/ml(対照にはFpgバッファー)80μlを滴下し、カバーガラスをかぶせて重層し、37℃、15分間、湿度を保った箱中で反応させた。周囲を氷で冷やした水平型電気泳動槽にプレパラートを並べ、電気泳動溶液を満たし、細胞DNAの巻き戻し(unwinding)とアルカリ不安定性部位発現のために10分間静置した。その後、電気泳動(25V、300mA、15min)を行った。この際、電気泳動溶液を10℃以下に保った。泳動後、スライドガラス上の過剰なアルカリ分を0.4MTrisバッファー(2ml/スライド)で中和した。0.4MTrisバッファーは5分ごと2回新しいものと交換した。中和した後、エチジウムブロミド溶液50μlをスライド上に滴下し、カバーガラスをかけた。直ちに観察しない場合は、中和した後100%エタノールに10分間浸して取り出し、冷暗所で保存した。画像解析装置(Comet Analyzer、YOU WORKS)を取り付けた蛍光顕微鏡(Olympus)を用いてG励起波長で観察した。プレパラート1枚につき、細胞50個をカウントしTail momentを求めた。
【0030】
(10)統計学的解析
得られた実験群の個々の値は、平均±SDで表し、統計学的検定はダネット検定でp<0.05をもって有意とした。また、コメットアッセイは得られた実験群の個々の値は、平均±SEMで表し、統計学的検定はマンホイットニーU検定で行い、p<0.05をもって有意とした。
【0031】
実験結果
1.わさび葉抽出物による胃の重量および胃内のH. pylori生菌数への影響
胃の重量および胃内のH. pylori生菌数を表1に示した。胃の重量は100g体重に換算して表記した。H. pylori非感染群において、わさび葉抽出物による胃の重量への影響は認められなかった。しかし、H. pylori感染により、非感染群と比較して、胃の重量は0.83g増加し有意な差を認め、わさび葉抽出物により胃の重量が、低用量群で0.18g、中用量群で0.16g減少し有意な差を示したが、高用量群では0.09g減少したが有意な差は認められなかった。一方、H. pylori生菌数は胃当たりのCFUsの対数で表記した。わさび葉抽出物はH. pylori感染によるCFUsへの影響を認められなかった。
【0032】
【表1】

【0033】
2.わさび葉抽出物による胃内pH、胃粘膜傷害および胃粘膜出血への影響
胃内pH、胃粘膜傷害および出血スコアを表2に示した。H. pylori非感染群において、わさび葉抽出物による胃内pHへの影響は認められなかった。また、感染群と比較して、pHは0.5上昇したが有意な差は示さず、わさび葉抽出物各群において0.4程度の減少を示したが有意な差は認められなかった。また、非感染群において、ストレス負荷により30、90minで0.5程度上昇したが有意な差は示さず、270minで1.1上昇し有意な差を認めた。わさび葉抽出物により、90minで0.6程度減少し有意な差を示した。しかし、270minでは0.5以上減少し抑制傾向は確認されたが有意な差は示さなかった。H. pylori感染群において、ストレス負荷により90minで1.6、270minで3.4上昇し有意な差を認めた。また、わさび葉抽出物により、90minにおいては、中用量群で変化は認めなかったが、高用量群で1.5減少し有意な差を示した。270minにおいては、中用量群で3.2減少し有意な差を示したが、高用量群では1.5減少したが有意な差は認められなかった。
【0034】
【表2】


*Table8を表2として挿入してください。説明を日本語にしてください。
【0035】
胃粘膜面をインジゴカーミン染色した組織標本を図1に示した。インジゴカーミン液は、胃内視鏡検査において、がん組織など異常部分と、正常粘膜の境界を検索するために汎用されている。正常胃粘膜の凹部分に分布しこれを青色に可視化するため、正常粘膜の範囲を目視で観察するのに適している。非感染群ではストレス負荷0min(a)、270min(b)ともに、粘膜面は濃染し粘膜の剥離はみられなかった。しかし、H. pylori感染群では、ストレス負荷0min(c)では、粘膜は青染し、剥離は認められなかったが、ストレス負荷270min(d)では、粘膜表面全体に、染まりが淡く粘膜が剥離している様子が観察された。
【0036】
胃組織に対するストレスの影響を検討するために、ヘマトキシリンエオジン染色像を図2に示した。H. pylori非感染群において、ストレス負荷0min(a)では、粘膜厚が揃い、粘膜表面は粘液で覆われていた(正常像)が、ストレス負荷270min(b)では、粘液が剥がれ、粘膜表面が、不揃いになり、浅いびらんを呈している。H. pylori感染群においては、ストレス負荷0minでも、胃腺構造が崩れた部分が散見され、顕著な白血球(リンパ球)浸潤が観察された(c)。この状態に270minストレス負荷を加えると、胃腺の崩壊はより顕著になり、粘膜筋板あるいは、粘膜下層に及ぶ組織融解がみられた(d)。
【0037】
H. pylori非感染群において、わさび葉抽出物による胃粘膜傷害スコアは高用量群で0.6点上昇を認めるものの有意な差は示さなかった。しかし、感染群との比較では、2.8点上昇し有意な差を認め、中用量群で0.8点減少し有意な差を示したが、その他の群では有意な差は示さなかった。また、非感染群におけるストレス負荷の影響は、90minで上昇傾向を示し、270minで1.6点上昇し有意な差を認めた。また、中用量群では影響は認めなかったが、高用量群では90minでは2.2点上昇し有意な差を認め、270minにおいても1点上昇したが有意な差は認めなかった。感染群に対するストレス負荷は、時間依存的に上昇し270minで1点上昇し有意な差を示した。また、わさび葉抽出物は、90minにおいて、高用量群では影響を示さず、中用量群で1点減少したものの有意な差は示さなかった。270minでは、中用量群で2点、高用量群で0.6点減少し有意な差を示した。
【0038】
H. pylori非感染群において、わさび葉抽出物による胃粘膜出血スコアへの有意な差は認めなかった。また、感染群との比較では、3点上昇し有意な差を示したが、わさび葉抽出物は出血に対して影響を認めなかった。また、非感染群におけるストレス負荷の影響は、90minで上昇傾向を示し、270minで1.4点上昇し有意な差を示した。わさび葉抽出物は、90minで0.6点以上減少したが有意な差は認めず、270minでは各群影響を認めなかった。感染群に対するストレス負荷は、出血に有意な差を示さなかった。わさび葉抽出物は、90minにおいて、中用量群で0.8点減少したが有意な差は認めなかった。270minでは、中用量群で1.5点減少し有意な差を示したが、高用量群では有意な差を示さなかった。
【0039】
3.わさび葉抽出物による胃組織中の8-oxodG量への影響
胃組織中の8-oxodG量を表3に示した。H. pylori非感染群において、わさび葉抽出物による8-oxodG量は高用量群で30%上昇したが有意な差は認められなかった。また、感染群と比較して、8-oxodG量は145%程度上昇し有意な差を認め、わさび葉抽出物により8-oxodG量が中用量群で34%程度、高用量群で27%程度減少し有意な差を示したが、低用量群では11%程度上昇したが有意な差は認められなかった。また、ストレス負荷による影響は、非感染群においては時間依存的に上昇し、90min以降8-oxodG量の増加を認め、270minで8-oxodG量は167%程度上昇し有意な差を示し、わさび葉抽出物により、270minにおいて、中用量群で32%程度、高用量群では42%程度の8-oxodG量の減少を確認し有意な差を示した。また、感染群におけるストレスの影響は30minで17%程度上昇し、90minで20%程度上昇したが有意な差は示さず、270minで42%程度上昇し有意な差を示した。また、わさび葉抽出物は、90minにおいて、中用量群で46%程度、高用量群で31%程度減少し有意な差を示し、270minにおいては、中用量群で41%程度、高用量群で48%程度減少し有意な差を示した。
【0040】
【表3】


*Table9を表3として挿入してください。説明を日本語にしてください。
【0041】
4.わさび葉抽出物による血液中の酸化的DNA損傷への影響
コメットアッセイの結果を表4に示した。Fpg(−)の結果については、非感染群において、わさび葉抽出物は各群30%程度減少し有意な差を認めた。しかし、感染群と比較して43%上昇したが有意な差は認めなかったが、非感染群と同様にわさび葉抽出物は中用量群で抑制効果を認め有意な差を示した。感染群との比較では、43%上昇したが有意な差は認めず、低用量群で34%上昇し有意な差を示した。非感染群におけるストレス負荷は、90minまで影響を示さず、270minで42%上昇し、有意な差を示した。また、270minにおいて、わさび葉抽出物により20%以上減少し有意な差を認めた。感染群では、ストレス負荷による有意な差は認めなかった。しかし、わさび葉抽出物は、90minにおいて、6%以上上昇し有意な差を示した。Fpg(+)の結果については、非感染群において、わさび葉抽出物は中用量群で31%減少し有意な差を示した。感染群と比較して460%上昇し有意な差を認めたが、低用量群で13%減少し抑制傾向を示し、中用量、高用量群で27%程度減少し有意な差を認めた。非感染群における、ストレス負荷は時間依存的な上昇を示し、90minで16%上昇し、270minで113%上昇し有意な上昇を認めた。この上昇に対して、わさび葉抽出物は各群10〜38%減少し有意な差を認めた。感染群において、ストレス負荷は30minで影響はなく、90minで8%上昇、270minで28%上昇し有意な差を認めた。これに対して、わさび葉抽出物は21〜33%減少を示し有意な差を示した。
【0042】
【表4】


*Table10を表4として挿入してください。説明を日本語にしてください。
【0043】
本発明の抽出物は、安全かつ廉価であり、その抗ストレス効果を利用した薬剤や機能性食品の原料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】胃粘膜面をインジゴカーミン染色した組織標本である。
【図2】胃組織をヘマトキシリンエオジン染色した組織標本である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワサビ葉の抽出物を含む、抗ストレス剤。
【請求項2】
ワサビ葉の抽出物が、エタノール抽出物及びn−ブタノール抽出物の混合物である、請求項1記載の抗ストレス剤。
【請求項3】
ストレスがH. pylori感染又はストレス負荷が誘導する酸化ストレスである、請求項1又は2に記載の抗ストレス剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−230975(P2008−230975A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68859(P2007−68859)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年2月1日 http://nenkai.pharm.or.jp/127/web/及びhttp://nenkai.pharm.or.jp/127/pc/ipdfview.asp?i=952を通じて発表 平成19年3月5日 社団法人日本薬学会発行の「日本薬学会第127年会講演要旨集」に発表
【出願人】(802000020)財団法人浜松科学技術研究振興会 (63)
【Fターム(参考)】