抗原性組成物
【課題】所定の要望に応えるか又は少なくとも有用な選択肢を公衆に供する、抗原性組成物および/または送達システムを提供すること。
【解決手段】本発明は抗原性組成物およびこれを使用して動物を免疫化するための方法に関する。抗原性組成物は、最も普通には固形である脂質配合物と、少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなる。好適な抗原性成分は生きた微生物である。好適な実施態様において、組成物は経口投与用に配合されている。
【解決手段】本発明は抗原性組成物およびこれを使用して動物を免疫化するための方法に関する。抗原性組成物は、最も普通には固形である脂質配合物と、少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなる。好適な抗原性成分は生きた微生物である。好適な実施態様において、組成物は経口投与用に配合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗原性組成物、特に生細菌ワクチン、を配合するための脂質の使用に関し、また該組成物を使用して動物を免疫化するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
結核(TB)を引き起こす病原など、大抵のヒトおよび動物の病原は粘膜表面を通じて感染を開始する。従って、このような病原に対する保護性免疫が強い粘膜免疫反応を誘導することを必要とする場合がある。しかしながら、粘膜免疫反応は非経口的な免疫化を受けて一般に弱い。粘膜部位を保護するためにワクチン、特にTBワクチンに対する明らかな必要性にもかかわらず、今日使用されているワクチンは皮内または皮下注射により行われる。それ故に、より効果的な組成物および/または代替的ルートによるワクチン送達システムの開発が望ましい。特にワクチンの経口投与は、投与の容易性および粘膜免疫反応のターゲッティングなど多数の利点を有する。これにもかかわらず、動物およびヒトの経口ワクチン接種により粘膜免疫および/または全身免疫を行うことは今日まで概ね効果をあがっていない。このようなワクチンの効力は、ワクチンが消化管を通過する際にワクチンの分解により阻害されてきた。特に、大抵の抗原性成分は、消化管における胃酸およびタンパク質分解酵素により容易に分解するペプチド結合を有している。
【0003】
多数のワクチンが微生物の凍結乾燥調製物の使用に依存している。例えば、ヒトTBに対する現在のワクチンは、カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)と呼ばれる生(live)の弱毒化細菌の凍結乾燥調製物に基づく。しかしながら、凍結乾燥方法はBCG生存度の30〜50%の損失を生じ、残存する生菌の回復を害する(7)。使用前の高い微生物生存度を保持する組成物は、このようなワクチンの有効性に大きく寄与するものとなろう。
【0004】
免疫反応を改善するために、抗原は、免疫原性を刺激する多数のアジュバント(免疫助成剤)と混合されてきた。これらのアジュバントは主にミョウバンそして水中油エマルジョンである。後者の群はフロイントの鉱物油アジュバントに代表される。しかしながら、ヒトおよび家畜ワクチンにおいてフロイント完全アジュバント(FCA)を使用することは、報告されている毒性反応のために禁忌されている。これらの理由のために、フロイントのアジュバントも経口投与のために不適当となる場合がある。
【0005】
他の水中油エマルジョンでは、高い含油量のために界面活性剤を必要としている。界面活性剤の洗剤特性によって該エマルジョンは非経口投与および経口投与のために不適当となる。更に、承認されている界面活性剤についても毒性反応が報告されている。エマルジョンを使用する場合の更なる欠点は、不混和性の一つの液が他の液に分散される不均一系であるということである。これは不安定であって、経時的に水性相の分離を生じる。このことが安定な懸濁液中でワクチンを維持することを困難にしている。更に、油中水エマルジョンの水性相に捕らえられた抗原は、胃での分解から保護されることが困難である。
【0006】
リポソームおよび脂質ベシクルも、ワクチンと共に、特に容易に被包され得る小さな抗原性成分と共に使用するために検討されてきた。一般に、リポソームおよびベシクルは大きな抗原、例えば生きた微生物、の被包(encupsulation)にとって有用でない。更に、リポソームおよびベシクルはその生産に費用と時間がかかるので、その調製における抽出手順はワクチン調製物の化学構造または生存度に変化を生じさせ、従ってその免疫原性に変化を生じさせる場合がある。例えば、熱および溶媒は、タンパク質などの抗原性成分の生物学的完全性を変化させ得る。
【0007】
したがって、本発明の目的は、これらの要望に応えるか又は少なくとも有用な選択肢を公衆に供する、抗原性組成物および/または送達システムを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
従って、一つの態様において本発明は、医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量の生きた微生物を含む少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなり、経口投与用に配合されている抗原性組成物を提供する。
【0009】
好ましくは、脂質配合物は固形である。
【0010】
別の態様において本発明は、固形であって約30℃〜40℃の間で固体から液体への転移を受ける医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量で存在する少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなる抗原性組成物を提供する。
【0011】
本発明に係る組成物に使用するために好適な脂質配合物は、長鎖脂肪酸を含む。
【0012】
脂肪酸組成の点から、好適な脂質配合物は40〜100%、好ましくは60〜100%、より好ましくは80%〜100%、そして一層好ましくは90〜100%のC16 および/またはC18 脂肪酸を含む。
【0013】
更に好適な組成は、35%未満、好ましくは25%未満、そしてより好ましくは10%未満のC14 又はより短鎖の脂肪酸を含む。
【0014】
一つの実施態様において、脂質配合物は以下を含む:
20%〜60%の飽和脂肪酸;
25%〜60%の一不飽和脂肪酸;および
0.5〜15%の多不飽和脂肪酸。
【0015】
特に好適な組成では、脂質配合物は以下を含む:
35%〜50%の飽和脂肪酸;
40%〜55%の一不飽和脂肪酸;および
5〜9%の多不飽和脂肪酸。
【0016】
本発明に使用するために現在のところ好適な脂質配合物は、以下の配合を有する:3%ミリスチン酸、26%パルミチン酸、15%ステアリン酸、40%オレイン酸、および6%リノール酸。
【0017】
抗原性成分はタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド成分を有する因子であってよい。
【0018】
1つの実施態様において、抗原性成分は生きた微生物を含む。好ましくは、生物学的に純粋な培養物として含む。
【0019】
好ましくは、本発明に係る組成物における生きた微生物は細菌、特に非病原性微生物であり、より好ましくはマイコバクテリウム(Mycobacterium)属に属する細菌である。本発明に使用するために特に好適なマイコバクテリウムは、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis) BCG である。
【0020】
1つの実施態様において、組成物は少なくとも2種の抗原性成分を含む。第1の抗原性成分は生きた微生物であることが好ましく、第2の抗原性成分は病原菌に由来するか又は弱免疫原性のタンパク質もしくはペプチドであることが好ましい。
【0021】
別の態様において本発明は、本発明に係る抗原性組成物を調製するための方法であって、該抗原性成分を脂質配合物と混合することを含んでなる方法を提供する。
【0022】
更に別の態様において本発明は、動物を免疫化するための方法であって、前記動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0023】
別の態様において本発明は、動物の粘膜免疫反応を刺激する方法であって、前記動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0024】
これらの方法における組成物の投与は、好ましくは経口ルートにより行われる。
【0025】
本発明は、本発明に係る抗原性組成物の調製における脂質配合物の使用にも関する。
ここで本発明の態様を添付図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】脂質配合物の脂肪酸組成を示す図である。脂質は標準的プロトコルに従ってガスクロマトグラフィにより分析された。各脂質の脂肪酸組成は全脂肪酸組成の比率として表わされる。
【図2】4℃(2a)または室温(10〜25℃)における脂質中での配合および保存の後のBCG生存度を示す図である。BCG配合物は37℃に温めれ 7H9液体培地中で乳化される。生存可能な微生物の数は7H11寒天プレート上への各エマルジョンの直列的な10倍希釈液を接種することによって決定した。配合媒体のCFU/ul数は培養の2〜3週後に決定した。結果は2重実験を代表し、平均として表わされる。
【図3】種々異なる用量の配合M. bovis BCGによる経口ワクチン接種後のウシPPD誘導INF−γ反応を示す図である。配合M. bovis BCG(丸)、非配合M. bovis BCG(三角)または配合剤のみ(菱形)による経口免疫化後8週で、マウスを殺した。脾臓細胞をウシPPDと共に72時間インキュベートした。次に上清を集め、サンドイッチELISAを用いて分析した。各処理群は6匹のマウスを含んだ。脾臓を個別に処理した。結果は pg/mlで表わされ、三重測定の平均として示される。棒は標準誤差を示す。
【図4】BALB/cマウスにおけるM. bovis BCGワクチン接種に対する抗原誘導脾臓INF−γ反応を示す図である。106 CFUの皮下M. bovis BCG(四角)、107 CFUの配合M. bovis BCGの経口送達(丸)、非配合M. bovis BCG(三角)または配合剤のみ(菱形)によるワクチン接種後2週、4週、6週および8週でマウスを安楽死させた。脾臓細胞をウシPPDと共に72時間インキュベートした。次に上清を集め、サンドイッチELISAを用いて分析した。各処理群は5〜6匹のマウスを含んだ。脾臓を個別に処理した。結果は pg/mlで表わされ、三重測定の平均として示される。8週での結果は2つの別個の実験から得られたものである。P値<0.05(スチューデントt検定)。棒は標準誤差を示す。
【図5】非不着性腹膜滲出細胞(NPEC)と共に同時培養されたマクロファージによるM. bovisの増殖阻害。マクロファージ当たり2桿菌のMOIでマクロファージにM. bovisを感染させた。非不着性自己NPECをマクロファージ当たり10NPECの比で加えた。次に[3H]ウラシルの取込み量を感染後72時間でアッセイした。M. bovisを含有しない細胞培養物による平均[3H]ウラシル取込み量は460cpmであった。同時培養マクロファージおよびNPECからの細胞内桿菌の増殖を三重測定の平均として表わした。結果は2つの実験を代表する。* は配合剤のみの対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒は標準誤差を示す。
【図6】PPD−Bに対する生体外(in vitro)腹膜血液リンパ球芽球発生反応に及ぼす配合BCGによるフクロネズミの経口ワクチン接種の効果を示す図である。配合BCG ◆----◆;非配合BCG 黒四角----黒四角;非ワクチン接種対照群 ×----×;結果は平均刺激指数(SI)として表わされる。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わす。棒はSEを示す。
【図7】M. bovisで抗原投与されたフクロネズミの体重に及ぼす配合BCGによる経口ワクチン接種の効果を示す図である。平均体重変化は抗原投与から検死までの期間にわたって測定された。抗原投与の直前のフクロネズミの平均体重は3.0±0.07(±SE)kgである。棒はSEを示す。
【図8】M. bovisで抗原投与されたフクロネズミの肺重量に及ぼす配合BCGによる経口ワクチン接種の効果を示す図である。平均肺重量は検死時に測定された。肺重量の差を体重の変動で標準化するために、各動物の肺重量を体重と比較し、比として表わした。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒はSEを示す。
【図9】M. bovisで抗原投与を受けた肺から単離されたマイコバクテリアの平均数に及ぼす配合BCGによるフクロネズミの経口ワクチン接種の効果を示す図である。結果はCFU(log10 )/組織のgの幾何平均数として表わされる。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒はSEを示す。
【図10】M. bovisで抗原投与を受けた脾臓から単離されたマイコバクテリアの平均数に及ぼす配合BCGによるフクロネズミの経口ワクチン接種の効果を示す図である。結果はCFU(log10 )/組織のgの幾何平均数として表わされる。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒はSEを示す。
【図11】4種の経口脂質BCG配合物または皮下ワクチン接種に対する免疫反応の比較を示す図である。図はワクチン接種(0週)および抗原投与(8週)を受けたフクロネズミにおけるPPD−Bに対する生体外(in vitro)腹膜血液リンパ球芽球発生反応に及ぼす効果を示す。結果は平均刺激指数(SI)として表わされる。
【図12】本発明による包括的なワクチン送達システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
従って、第1の態様において本発明は、医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量の生きた微生物を含む少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなり、経口投与用に配合されている抗原性組成物を提供する。
【0028】
脂質は固形であることが好ましい。脂質は10℃以上の温度で固形であることが好適である。
【0029】
別の態様において本発明は、固形であって約30℃〜40℃の間で固体から液体への転移を受ける医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量で存在する少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなる抗原性組成物を提供する。
【0030】
上記配合物に用いられる脂質は、動物またはヒトの消費を含む投与のために適していることが好ましく、広範囲の天然(植物または動物由来)または合成の脂質生成物、例えば油、脂肪およびワックスより選択してよい。
【0031】
最も普通には、該脂質材料は約30℃よりも高い温度で液状となる。すなわち、脂質は該脂質が最も普通には経口ルートにより投与される動物の生理学的温度における融点を達成するように選択されるべきである。脂質は大気圧で10〜30℃において固形となり、好ましくは大気圧で20℃〜30℃においても固形であることが望ましい。しかしながら、脂質の融点は限定的でなく、ある範囲の融点をもった油、脂肪およびワックスを含んでよい。
【0032】
ここで使用するために好適な脂質は、約30℃と約40℃、一般には37℃の生理学的温度との間で固相から液相への転移を受ける。脂質相の挙動の概説が当該技術分野で利用可能であり、例えば(10)を参照。従って、当業者は当該技術分野における情報および簡単な実験に基づいて、所望の特性および融点を有する脂質を選択することができる。
【0033】
適した脂質配合物は、カルボン酸グリセリルエステル、脂肪族鎖と−COOH末端からなる化合物、飽和および不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物を含む、トリグリセリド類である。
【0034】
現在のところ好適な脂質は、主にC8 〜C20 アシル基、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パリン酸(parinic acid)、ラウリン酸、リノレン酸、アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸、またはこれらの混合物、を含むトリグリセリド類である。
【0035】
本発明に有用な脂質配合物として、長鎖脂肪酸、例えばC16 〜C18 が好適であることも実証された。長鎖脂肪酸は、マウスおよびフクロネズミに投与されるワクチン中の微生物、例えばBCG、を保護するのに効果的であることが見出された。このような点からみて、本発明に使用するために好適な脂質配合物は、40〜100%、好ましくは60〜100%、好ましくは80%〜100%、そして一層好ましくは90〜100%のC16 および/またはC18 脂肪酸を含む。
【0036】
一般には、C16 脂肪酸は、全脂肪酸含有量の10%〜40%、より好ましくは20%〜35%、そして一層好ましくは25%〜32%であり、そしてC18 脂肪酸は、全脂肪酸含有量の40%〜90%、好ましくは50%〜80%、そして一層好ましくは60%〜70%C18 である。
【0037】
また、好適な脂質配合物は、35%未満、好ましくは25%未満、そしてより好ましくは10%未満のC14 又はより短鎖の脂肪酸を含む。
【0038】
鎖長の点で、好適な脂質配合物は、5%未満のC14 又はより短鎖の脂肪酸、25%〜32%のC16 脂肪酸、および60%〜70%のC18 脂肪酸鎖を含む。
【0039】
脂肪酸含有量の点で、本発明に使用するための脂質配合物は、20%〜60%、好ましくは30%〜55%、そして一層好ましくは40%〜50%の量の飽和脂肪酸;25%〜60%、好ましくは30%〜60%、そして一層好ましくは40%〜55%の量の一不飽和脂肪酸;および0.5%〜15%、好ましくは3%〜11%、そして一層好ましくは5%〜9%の量の多不飽和脂肪酸を含んでよい。
【0040】
本発明に使用するための特に好適な脂質配合物は、40%〜50%の飽和脂肪酸、40%〜50%の一不飽和脂肪酸、および5%〜9%の多不飽和脂肪酸を含んでなる。
【0041】
本発明に使用するために現在のところ好適な脂質配合物は、HPLC分析によって決定される、次の配合:3%ミリスチン酸、26%パルミチン酸、15%ステアリン酸、40%オレイン酸、および6%リノール酸を有する。
【0042】
また、現在のところ好適な脂質配合物としては、動物由来の分別された脂質複合物、1種以上の水素添加植物油、特にオリーブ油またはココナッツ油、市販の座薬基剤、および他の脂質配合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
上記脂質配合物は、抗原性組成物の調製に、及び該組成物内の抗原を分解から保護するのに有用である。脂質配合物は、生きた微生物、特に細菌、の生存度を維持するのに特に有用である。脂質配合物は微生物を生きているが休眠状態に維持するように作用する。このことは経口投与用に配合される生きた微生物を含んでなるワクチンにとって特に重要である。また、脂質は抗原を均一な分散体中に維持する。すなわち本発明に係る組成物において、抗原性成分、および特に、生きた微生物は、固形またはペースト様の脂質マトリックスの全体に均一に分配されている。また、脂質は経口投与時に胃腸分泌物による破壊から抗原を保護する。他のルート、例えば皮下、による投与時にマクロファージの攻撃からの保護も起こり得る。このことは抗原および特に生きた微生物が胃腸粘膜を通じて取り込まれること、及び次に微生物が宿主内で複製されることを可能とする。生きた微生物の宿主内での複製は、病原性細菌で抗原投与(challenge)を受けた疾患の重症度の低減により決定される、保護性免疫反応を刺激する。
【0044】
広範囲の送達ルート用の配合物はまた、添加剤、例えば限定されることなく、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、界面活性剤、沈殿防止剤、保存剤、着色剤、塩類、酸化防止剤、例えばグルタミン酸一ナトリウム(MSG)、ビタミン類、例えばビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC)、保護コーティング、誘引剤および着臭剤、ならびに脂質中に含まれる微生物の生存補助剤等を含んでもよい。
【0045】
保護コーティングまたは腸溶性コーティングは、例えばゲル、パラフィン、およびゲラチンを含む可塑物から選択してよい。これらのコーティングは更に、経口投与ルートが選択される場合に胃酸および酵素に対して曝露されるのを防止することを助ける。
【0046】
上記配合物は、経口投与用に使用される場合に、例えば嗜好性を改善する添加剤、例えば香味料(アニス油、チョコレートおよびペパーミントを含む)および甘味料(グルコース、フルクトース、または他の何れかの糖もしくは人工甘味料)を含んでもよい。
【0047】
抗原性成分は、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド成分を有する因子、好ましくは単離され及び/又は精製されたもの、あるいはこれらの混合物であってよい。抗原性成分は、動物における免疫反応を生じさせるために使用され得る物質に由来してよい。
【0048】
最も普通には、抗原は、治療される動物種に病原性である微生物上に存在する少なくとも1種のエピトープを有し得る。当該技術分野で公知である等の他の抗原性構造物も使用し得る。例えば、多糖、糖脂質、および担体に結合されたハプテンが挙げられる。
【0049】
好ましくは、抗原性成分は生きた微生物、好ましくは生物学的に純粋な培養物である。
【0050】
本発明の組成物における生きた微生物は、菌類、原生動物、細菌類およびウイルス類からなる群より選択し得る。例えば、HIV、SIV、ブルセラ属(Brucella)および炭疽菌(Anthrax)が挙げられる。好ましくは、微生物は細菌である。経口または皮下の送達用に配合される組成物に使用するのが好適なのは、非病原性細菌から現在選択される微生物である。好適な細菌は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、例えばマイコバクテリウム・ツベロクロシス複合体(マイコバクテリウム・ツベロクロシス(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)、マイコバクテリウム・アフリカナム(M. africanum)およびマイコバクテリウム・ミクロティ(M. microtii)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・アビウム−イントラセルラール複合体(マイコバクテリウム・イントラセルラール(M. intracellulare)およびマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・パラツベロクロシス(M. paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ワッカ(M. vaccae)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M. smegmatis)、マイコバクテリウム・チェロナ(M. chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(M. fortuitum)、マイコバクテリウム・カンサイ(M. kansaii)、マイコバクテリウム・レプラ(M. leprae)、マイコバクテリウム・マリナム(M. marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M. ulcerans)、マイコバクテリウム・シミア(M. simiae)、マイコバクテリウム・ハエモフィラム(M. haemophilum)、マイコバクテリウム・マルモエンス(M. malmoense)、マイコバクテリウム・シモイデイ(M. shimoidei)、マイコバクテリウム・ガストリ(M. gastri)、マイコバクテリウム・テラ(M. terrae)複合体、およびマイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム(M. nonchromogenicum)より選択される非病原性菌株である。特に好適な実施態様において、該物質はカルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin:BCG)、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)の弱毒化菌株、例えば以下の菌株: 83/6235、パスツール(Pasteur) 1173P2、グラクソ(Glaxo)1077、ジャパニーズ(Japanese) 172、プラハ(Prague)、ロシアン(Russian)、ブラジリアン(Brazilian)、デーニッシュ(Danish)1331、コペンハーゲン(Copenhagen)、コンノート(Connaught)、ならびにマイコバクテリウム・ボービスの機能的に等価な変異株および他の弱毒化菌株、これらの菌株の純株(clones)、突然変異株(mutants)および天然の組換え体または広範囲の遺伝子工学技術のいずれかにより生産された組換え体を含め組換え体(recombinants)、およびこれらの抗原性成分である。
【0051】
以下の説明から、抗原性成分がタンパク質もしくはペプチドの複合体等であってよいことが理解されるであろう。
【0052】
一つの実施態様において、本発明の組成物は、上記で特定される抗原性成分のいずれかより選択される少なくとも2種の抗原性成分を含み、サブユニット抗原の複数からなる組合せを含んでよい。3種以上の抗原性成分が適している。
【0053】
本発明の組成物における抗原性成分の濃度は、動物に対する投与による免疫反応、特に小腸の消化管関連リンパ組織における免疫反応、を刺激するのに有効な量で存在する限り、当業界で公知のプロトコルに従って変更してよい。マイコバクテリアの場合には、1×105 〜1×1010 コロニー形成単位(CFU)/mlの範囲が適当である。その濃度は1×107 〜1×109 CFU/mlであることが好ましい。タンパク質およびペプチド型抗原の場合には、10〜1000μg/配合物gの範囲が適当である。ウイルス型抗原の場合には、1×103 〜1×1010 、好ましくは1×105 〜1×108 プラーク形成単位(PFU)/mlが適当である。免疫反応は、体液性であっても、又は粘膜免疫反応など細胞媒介性であってもよい。
【0054】
従って、別の態様において本発明は、動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することによる、動物の粘膜免疫反応を刺激する方法に関する。
【0055】
本発明の組成物は、当業界で公知の方法を用いて調製し得る。好適には、該脂質配合物が必要に応じ加熱されて液化し、そして上述のような抗原性成分および他の成分(使用される場合)が添加される。抗原性組成物の分散は、混合、振盪または抗原性成分の生存度に悪影響を与えない他の方法により達成し得る。
【0056】
本発明に使用するために更に好適な組成物は、水などの水性成分を実質的に含まないものでもある。ここで用いられる「実質的に含まない」という用語は、組成物に含まれる水性成分が10%未満、そして好ましくは水性成分が5%未満であることを意味する。上で示したように、成分、特に水性溶媒が存在することは、特に消化管における脂質配合物の保護効果を低減する。
【0057】
1つの実施態様において、抗原性組成物はワクチンである。
【0058】
代替的な実施態様において、抗原性組成物は、ワクチンの効力を増大させるために、ワクチンを用いた投与に有用なアジュバントである。マイコバクテリウム含有抗原性組成物およびBCG含有抗原性組成物が、アジュバントして使用するために特に好適である。
【0059】
本発明に係る抗原性組成物はまた、抗原性成分について上記で示したタイプ、特に弱免疫原性の第2の又は更なる抗原性分子に対する反応を生じさせるために有用となり得る。このことは、本発明の抗原性組成物の抗原性成分に抗原性分子を結合させることにより、該組成物中の第2の又は更なる抗原性分子を同時送達することによって達成し得る。結合は当業界で標準的な方法(9)を使用して行い得る。特に、関心ある抗原を生体内(in vivo)での抗体産生を妨げないリンカー基により抗原性担体またはアジュバントに結合させ得る。抗原性担体またはアジュバントは、上記で特定される微生物を含む抗原性成分のいずれであってもよいが、好ましくはマイコバクテリウム属であり、より好ましくはBCGである。適したリンカー基としては、マンノースレセプター結合性タンパク質、例えばオブアルブミン、およびFcレセプターに結合するものが挙げられる。第2の又は更なる抗原性分子は、好ましくはタンパク質またはペプチドである。特に好適なタンパク質は免疫避妊性(immunocontraceptive)タンパク質である。脂質はまた送達マトリックスとして作用する。このワクチン送達システムの例を図12に示す。上記組成物が投与されると、結合された分子または同時送達された分子に対する増大した免疫反応が生じる。
【0060】
別の態様において本発明は、動物を免疫化するための方法であって、前記動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することを含んでなる方法も提供する。
【0061】
ここで用いられる「動物」という用語は、温血動物、特に哺乳動物をいう。ヒト、イヌ、ネコ、鳥類、ウシ、ヒツジ、シカ、ヤギ、ラット、マウス、ウサギ、フクロネズミ、アナグマ、モルモット、フェレット、ブタおよびバッファローが、この用語の意味の範囲内の動物の例である。単胃動物および反芻動物が特に、この用語の範囲内と考えられる。
【0062】
本発明に係る組成物は、非経口(皮下、皮内、筋肉内)、粘膜、エアゾールおよび経口投与を含むがこれらに限定されない多様なルートにより投与し得る。1つの実施態様において、経口投与が好適である。本発明の組成物は、ペレット剤、錠剤、カプセル剤、舐剤、または他の適した配合物の形態で経口投与し得る。経口投与は、針と注射器の使用を避けることができる点で広く消費者に受け入れられるとともに、野生生物をワクチン接種するための経済的で実用的な方法である。そのため、1つの実施態様において、本出願人は経口投与用に配合された新規な生ワクチンを提供している。
【0063】
代替的な実施態様において、本発明の組成物は、注射による非経口投与用に配合し得る。この投与形態には、体組織との適合性がある注射用皮下デポー配合物も含まれ得る。該デポー剤からの経時放出吸収(time release absorption)は、脂質配合物を単独で又は追加的な生分解性ポリマーと共に使用して達成し得る。該デポー剤は、感染プロセスと非常に近似するプロセスで抗原性成分の遅延放出を可能とし、当該組成物が投与される動物における免疫反応の増大を促進する。これらの投与形態では脂質保護効果も生じる。
【0064】
本発明の組成物は、特に非経口投与のための、単一用量として投与することができ、又は経時的に反復用量で投与することができる。例えば、時間間隔をおいて初回量およびブースター量で投与できる。投与量は、免疫性成分の放出速度とともにその抗原性により決定される。動物の体重、年齢、性別、併用処理(該当する場合)、および処理される抗原の性質など通常の事項を考慮に入れてよい。一般に、経口によるワクチン接種の場合の用量範囲は上述したように、用量当たり1×105 〜1×1010 、好ましくは1×107 〜1×109 CFU/kgである。タンパク質およびペプチド型抗原の場合には、用量範囲は1〜10,000μg、好ましくは10〜1000μgである。ウイルス型抗原の場合には、用量範囲は1×103 〜1×1010 、好ましくは1×105 〜1×108 PFU/mlである。どの送達方法を使用しても、生きた微生物をワクチン配合物で使用する場合には、それらの微生物が宿主内で増殖して免疫反応を促進することが期待される。
【0065】
本発明の組成物は、集団ワクチン接種計画のための複数用量製剤として又は単一用量製剤として調製することもできる。
【0066】
使用のために必要とされるまで、本発明の組成物は、室温において一定期間保存してよく、又は好ましくは約4℃において通常の冷蔵条件の下で保存してよい。4℃において、脂質配合物は休眠しているが生存可能な状態にある微生物を劣化することなく保存および維持することを容易にする。非経口送達の場合に、組成物は次に30〜40℃に温められて投与前に液化する。経口投与の場合に、組成物は固形またはペーストである。
【0067】
上述した説明は例示のためだけに示されるものであって、当業者に公知である材料および方法の両方における変形が考えられる。
【0068】
本発明を例示する非限定的な例を以下に示す。
【実施例】
【0069】
材料および方法
細菌。
マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis) BCG パスツール(Pasteur) 1173P2 (Pasteur institute, Paris)をワクチン菌株として用いた。マクロファージ感染研究とフクロネズミ抗原投与(challenge)のための用いたM. bovis菌株は、M. bovis 83/6235 (AgResearch, Wallaceville, New Zealand)であり、これは元々ブラッシュテイルフクロネズミの結核病巣から単離され、そして従前のマクロファージおよびフクロネズミ接種研究で使用されたものである(1,4)。BCG配合およびマクロファージ感染のために、アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC;BBL, Becton Dickinson, Maryland, USA)で補充したMiddlebrook 7H9 培地(Difco, Detroit, Mich.)を含む175mlフラスコ(Falcon)内で菌を中間対数増殖期まで増殖させた。桿菌を遠心分離により集菌し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で2回洗浄した後に−70℃で保存した。フクロネズミ抗原投与のために、0.006%v/vアルカリ化オレイン酸、0.5%w/vアルブミン・フラクションVおよび0.25%w/vグルコースで補充したデュボス液体培地(Difco Laboratories, Detroit, USA)を含むツウィーン・アルブミン液体培地(TAB)中でM. bovisを中間対数増殖期まで増殖させ、細菌数を懸濁度により評価した。フクロネズミに接種するための希釈をTAB中で行った。BCGまたはM. bovisのコロニー形成単位(CFU)の数を従前に記載されているようにして決定した(5)。
【0070】
配合物組成。
BCGと共に配合するための均一懸濁液中にBCGを維持する能力および融点に基づいて、3種の脂質製品を選んだ。37℃で液状であるが30℃よりも低い温度で固形となる脂質をBCG生存度研究において試験するために選んだ。生存度試験の後に、マウスおよびフクロネズミにおいて経口ワクチン試験を行うために、以下の3種の配合物を選んだ:
配合物C − 動物由来の分別された脂質複合物; 配合物K − 精製された水素添加ココナッツ油のトリグリセリドからなる; 配合物N −ノバルタ(Novarta) B、市販の座薬基剤。これら3種の配合物をガスクロマトグラフィにより分析して、脂肪酸群の比率を決定した。
【0071】
BCGの配合。
ペレット化したBCGを、37℃まで温められた配合媒体中に再懸濁した。フクロネズミのワクチン接種のために、BCGを1×107 CFU/mlの濃度に再懸濁した。フクロネズミに対する誘引性および嗜好性を増大させるために、配合物ml当たり10mgのグルコースおよび10μlのアニス油(Pharmacare, Auckland NZ)を添加した。マウスの経口ワクチン接種のために、配合物ml当たり10mgのグルコース、1mgのグルタミン酸一ナトリウム塩(Sigma)および10%v/v ADC を添加した。これらの添加剤が配合脂質に分散され、BCGの生存度に影響を与えないことが前もって示された。BCG配合物を15mlチューブ(Falcon)に移し、4℃で穏やかに混合しながら固化させた。チューブから配合物を取り出して、生存度試験およびワクチン接種研究のために必要とされる1gペレットに無菌状態で切断した。ペレットを、7H11寒天プレートで培養して以下に述べるようにCFUをカウントすることにより、BCGの分散について試験した。
【0072】
BCG生存度。
4℃または室温(10〜25℃)において保存した後の配合物中のCFU数を、従前に記載されているように(4)決定した。3種のBCG配合物の100mgアリコートを37℃に15分間温め、 7H9液体培地中で直列的に10倍希釈を行うことによって、培養用のサンプルを集めた。オレイン酸・ADC(OADC; Becton Dickinson, Maryland)および0.5%グリセロールで補充したMiddlebrook 7H11寒天プレート(Difco)上で100μlの各エマルジョンを接種して、生存可能な微生物の数を決定した。エマルジョンはガラス・スプレッダを使用して分散させた。プレートをパラフィンで密封し、37℃で5%CO2 中でインキュベートした。培養の2〜3週後にコロニー数をカウントした。結果はCFU/BCG配合物μgとして表わす。
【0073】
マウスのワクチン接種。
特定の病原の無い雌BALB/cマウス(6〜8週齢)をオタゴ大学動物実験科学部門、ダニディン(University of Otago Department of Animal Laboratory Sciences, Dunedin)より入手した。オタゴ大学動物倫理委員会からの倫理承認(承認番号: 51/2000)の下でマウス実験を行った。マウスを個々のかごに分けて入れ、経口ワクチン接種前12時間食餌を絶った。非配合の対照群は、クレイグ(Craig)の無保存料ストロベリー・ジャム(Heinz-Watties Ltd., Hastings, New Zealand)中のM. bovis BCG からなる。従前の研究により、24時間間隔におけるM. bovis BCGの生存度が、M. bovis BCGを該ジャム中で混合することによっても影響を受けないことが示されている(データは示さない)。非接種の対照群は脂質配合物のみからなる。用量反応および経時実験のために、マウスに24時間の間隔で2種の別個の用量でワクチンを与えた。エアゾール抗原投与実験のために、マウスに単一経口用量(5×107 CFU)を与えるか、又は1×106 CFUで皮下的にワクチン接種した。ペレットおよびジャムの消費時に種々の間隔でマウスを観察して、全用量が食べられていることを確認した。ワクチン接種後の種々の間隔で、5%CO2 吸入によりマウスを殺し、その脾臓を無菌状態で取り出した。
【0074】
脾臓細胞の増殖アッセイ。
セルストレーナ(70μmメッシュ; Beckton Dickinson)を通じて細胞を濾過することにより、脾臓細胞懸濁液を調製した。赤血球を0.83%NH4 Cl(pH7.2)中で溶解させた。細胞をPBS中で2回洗浄し、10%致死性仔ウシ血清(FCS)、100U/mlの20mM HEPES ペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5.5×10-5 M 2−メルカプトエタノールを含有するダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)(DMEM−10%FCS;全てGibco-BRL, USAから)中で1×106 /mlに再懸濁した。細胞をRPMI+10%致死性仔ウシ血清(Gibco)中で107 /mlの濃度に再懸濁した。脾臓細胞(5×105 /ウェル)をプレートから出して96ウェルプレート(Nunc.)の3つのウェルに入れた。細胞を、M. bovis培養物から由来する精製タンパク質(ウシPPD; CSL, Melbourne, Australia)、60μg/ml最終濃度、または培地のみで培養した。細胞を4日後に収穫し、1μCiの[3H]チミジン(Amersham, Buckinghamshire, England)による18時間パルス後、取り込まれたチミジンを従前に記載されているように(5)測定した。ウシPPDでインキュベートした3つの培養物についての平均カウント数/分(cpm)を、培地のみで培養した脾臓細胞についての平均cpmで割り算することによって、刺激指数(SI)を得た。
【0075】
脾臓細胞によるサイトカイン産生についての生体外(in vitro)アッセイ。
脾臓細胞増殖アッセイのために、脾臓細胞懸濁液を上述したように調製した。1mlの細胞懸濁液を24ウェルプレート(Costar)に分散させ、そのウェルに100μlのPBSまたはPPD(60μg/ml最終濃度)を添加した。培養物を37℃において5%CO2 中で72時間インキュベートし、その後200μlの培養上清を集め、−70℃で凍結して、サイトカイン分析に用いた。市販キット(R&D Systems, Duoset, City, Country)を使用し、製造業者の指示に従って、インターロイキン−2(IL−2)捕捉ELISAおよびインターフェロン−ガンマ(IFN−γ)捕捉ELISAを行った。培養上清中のサイトカインレベルを標準曲線からの外挿によって定量した。2種のELISAの最小感度(minimum sensitivities)は、IFN−γについて50pg/mlおよびIL−2について35pg/mlと定量された。
【0076】
M. bovis阻害アッセイ。
腹膜由来マクロファージを、自己リンパ球を用いないで又は自己リンパ球を用いて共培養の後に、M. bovisの細胞内増殖の阻害について試験した。従前に記載されているプロトコルの修正方法に従って実験を行った。腹膜滲出細胞(PEC)を雌BALB/cマウスからの洗浄によって得た。細胞を1%BSAおよび20U/mlへパリンで補充されたPBS中で集め、1回洗浄し、10%致死性仔ウシ血清および100U/mlペニシリンを含有するDMEM(補充DMEM)中で2×106 /mlに再懸濁した。100μlの細胞懸濁液を96ウェル平坦プレート(Nunc)中に分散させた。37℃において5%CO2 中で2時間インキュベートした後に、非付着性細胞を取り出し、洗浄して、補充DMEM中に5×106 /mlの濃度で再懸濁した。非不着性細胞は、25mlフラスコ(facon)中でのインキュベーションにより残留する付着性集団が選択的に除去されたものである。非付着性PEC(NPEC)はメイグリュンワルド/ギムザ(May-Grunwald/Giemsa)染色により90%より多くのリンパ球を含むことが決定された。温かい補充DMEMを、5×104 細胞/ウェルを含むと推定される付着性単層に添加した。この集団は非特異的エステラーゼ染色キット(カタログ番号181−B;Sigma, St. Louis, MO, USA)により98%陽性であることが分かり、以下マクロファージと称する。従前に記載されているように(2)マクロファージ当たり2桿菌(Bacilli)のMOIでマクロファージにM. bovisを感染させた。穏やかな洗浄により、貪食されなかった(non-phagocytosed)細菌を除去した。(5×106 細胞を含有する)100μlの自己NEPCを、感染マクロファージを含有する各ウェルに加え、培養物を更に37℃において5%CO2 中でインキュベートした。得られた10:1のNPEC/マクロファージ比は、末梢血液単核細胞において見られる比のものと近似するように選択された。対照ウェルはM. bovis感染マクロファージのみからなるか、又は未感染NPECおよびマクロファージからなる。72時間後、細胞を1.0μCiの[3H]ウラシルにより18時間パルスした。細胞を0.1%サポニンにより溶解させ、80〜90℃で20分間加熱殺菌した後に、自動セルハーベスター(Cambridge Technology, USA)を用いて、ガラス繊維フィルター上で収穫した(Whatman Inc, Finland)。液体β−シンチレーションカウンター(Wallac, Country)を用いて[3H]ウラシルの取込み量を測定した。
【0077】
M. bovisによるマウスのエアゾール抗原投与。
ワクチン群当たり6匹のマウスをワクチン接種後8週で病原性M. bovisを含むエアゾールで抗原投与(challenge)した。Grover et al., 1967 により記載されている方法の修正方法を使用してM. bovisの単一細胞懸濁液を調製し、−70℃で保存した。これらの懸濁液を調製するために、該細菌細胞をソニケータにより30秒間分散させ、8μm膜フィルターを通じて濾過した。歯槽空間に入るために適当なサイズの飛沫核を生じさせるエアゾールチャンバーを使用して、マウスに呼吸経路を介して感染させた。生存可能なM. bovisの濃度をネブライザ(nebuliser)内で経験的に調整して、マウス肺当たり5〜20の生存可能な微生物の吸入と保持を行った(B. Buddle and G. de Lisle, 未公表データ)。類似の手順によりモルモットの肺の再現性のある均一な感染を生じることが示された。バイオハザード設備内での厳格な単離条件の下でエアゾール感染および次の感染マウスの維持と操作を行った。
【0078】
M. bovisの単離。
エアゾール抗原投与後37〜40日でマウスを安楽死させた。各マウスからの肺と脾臓をマイコバクテリウム単離のために個別に処理した。該微生物をTen-Broeckグラインダー中でホモジェナイズし、サンプルを3500gで20分間遠心分離した。沈降物を1mlの蒸留水中で再懸濁した。TAB中で適当な希釈を行い、0.1ml量の希釈された又は希釈されないサンプルを修正マイコバクテリア7H11寒天プレートに接種した(1)。各希釈物について2つの複製物を調製した。従前に記載されているように(1)培養条件および単離物同定方法を実行した。
【0079】
データ解析
ワクチン群について平均サイトカインレベル差およびlog10 変換された脾臓細胞増殖反応の統計的解析をスチューデントt検定により求めた。肺および脾臓からの細菌数をlog10 変換し、分散解析により解析した。統計的目的のために、組織から培養される細菌が存在しない場合には、最低検出可能数の半分(%CFU/臓器)を使用した。
【0080】
フクロネズミのワクチン接種および抗原投与。
従前に記載されているように(4)フクロネズミを捕獲し収容した。フクロネズミの2つの群(5匹/群)にBCGを供給した。配合されたBCGの1gペレット(1×108 CFU)を1つの群の各フクロネズミに与えた。第2の群には配合手順の対照のためにジャム中のBCG(1×108 CFU)を与えた。該ジャムはBCG生存度を阻害することが従前から示されている(データは示さない)。第3の群(6匹/群)には配合媒体のみを含有するペレットを与え、非ワクチン接種対照とした。ペレットの消費時にフクロネズミを観察して、全ペレットが食べられていることを確認した。次の日にワクチン接種を繰り返した(全BCG用量2×108 CFU/フクロネズミ)。ワクチン接種後41日で、フクロネズミの全てをエアゾール経路により抗原投与した。
【0081】
第2の実験において、4種の経口用脂質BCG配合物を皮下ワクチン接種と比較した。ワクチン接種後8週で、ワクチン群当たり6匹のフクロネズミを、病原性M. bovisを含むエアゾールで抗原投与した。脂質C、K、NおよびF(Kの修正点は10%致死性仔ウシ血清を含有する)。
【0082】
M. bovisによるフクロネズミのエアゾール抗原投与。
フクロネズミに、元々はTaumaranui, New Zealand からのフクロネズミのリンパ節より単離された(5)M. bovis 83/6235を用いて抗原投与した。Grover et al., 1967 により記載されている方法の修正方法を使用して該単離物の単一細胞懸濁液を調製し、−70℃で保存した。これらの懸濁液を調製するために、該細菌細胞を超音波処理により30秒間分散させ、8μ膜フィルターを通じて濾過した。歯槽空間に入るために適当なサイズの飛沫核を生じさせるエアゾールチャンバーを使用して、ケタミンHCl(30ml/kg; Parnell Laboratories, Auckland, New Zealand)の筋肉内注射により麻酔されたフクロネズミに、呼吸経路により感染させた。生存可能なM. bovisの濃度をネブライザ(nebuliser)内で経験的に調整して、フクロネズミ当たり10〜20の生存可能な微生物の吸入と保持を行った(B. Buddle and G. de Lisle, 未公表データ)。この抗原投与用量(challenge dose)は、感染後4週で非ワクチン接種フクロネズミの肺に肉眼で観察される主いぼの数から従前に推定されたものである。類似の手順によりモルモットの肺の再現性のある均一な感染を生じることが示されている(Wiegeshaus et al., 1970; Smith et al., 1970)。バイオハザード設備内での厳格な単離条件の下でエアゾール感染および次の感染フクロネズミの維持と操作を行った。
【0083】
フクロネズミの検死。
抗原投与後56〜57日で全てのフクロネズミを殺し、広範な全体的な死後検査の対象とした。肺を周囲組織から単離し、秤量した。
【0084】
フクロネズミ組織からのM. bovisの単離。
各動物より、肉眼による病巣から重さ約1gの肺および脾臓のサンプルを取り出し、又は病巣が無い場合には、該臓器の予め定めた部分からサンプルを取り出して、マイコバクテリウム単離のために個別に処理した。サンプルを秤量し、Ten-Broeckグラインダー中でホモジェナイズし、0.75%塩化セチルピリジウム中で1時間除染した。サンプルを3500gで20分間遠心分離し、沈降物を1mlの蒸留水中で再懸濁した。TAB中で適当な希釈を行い、0.1ml量の希釈された又は希釈されないサンプルを修正マイコバクテリア7H11寒天プレートに接種した。各希釈物について2つの複製物を調製した。従前に記載されているように(1)培養条件および単離物同定方法を実行した。
【0085】
フクロネズミ末梢血液リンパ球増殖アッセイ。
PPD−BおよびPPD−A(CSL Limited, Parkville, Australia)に対する増殖反応(proliferative responses)を、赤血球除去した全血を用いて測定した。コンカナバリンA(Con A)に対する反応も試験した。簡潔に述べると、1mlのへパリン添加血液を50ml 0.17M Tris−0.16M NH4Cl、pH7.2と37℃で10分間混合し、20℃のPBS中で2回洗浄し、2mMグルタミンおよび2%正常フクロネズミ血清で補充したDMEM組織培養培地中で合計3mlとした。その細胞(200μl)を、50μlのPBS中PPD−B、PPD−AもしくはコンカナバリンAを含有するか又はPBSのみを含有する平底96ウェルプレートに入れた。プレートをエアインキュベータ内の5%CO2 中に72時間置き、1μCi/ウェルの3H−トリチウム標識チミジン(Amersham, UK)でパルスし、更に18時間後に収穫し、Micro Beta Trilux(Wallac, Finland)中で 3Hカウントした。PPDで刺激された3つの培養物からのカウント数/分(cpm)を、培地およびPBSでの3つの培養物からのcpmで割り算することによって、刺激指数(SI)を得た。
【0086】
データの解析
マウスサイトカイン分泌の統計学的有意差を、スチューデントt検定を用いて決定した(GraphPad, San Diego, Calif.)。これらの研究は類似の結果をもって2回行われた。フクロネズミのリンパ球増殖反応のために、3.5よりも大きな刺激指数はバックグラウンドの平均(ワクチン接種前のPPD−Bについての平均SI)よりも大きな少なくとも3の標準偏差を表わすので、これを陽性反応として評価した。種々異なる処理群についてのフクロネズミの体重変化、肺重量、リンパ球芽球発生反応および細菌数を分散の一方向解析により最初に比較した。次に、ダンカンの多重検定(Duncan's multiple range test)を用いて個々の群の平均を比較した。肺および脾臓からのリンパ球増殖反応および細菌数をlog10 変換して解析を行った。統計的目的のために、組織から培養される細菌が存在しない場合には、最低検出可能数の半分(5CFU/臓器)を使用した。
【0087】
結果
A. 配合物脂質の脂肪酸組成。
経口用BCGを配合するのに使用するために選択された脂質を、ガスクロマトグラフィにより分析した。図1は、マウスおよびフクロネズミのワクチン接種試験に使用される3種の脂質の脂肪酸組成を示す。
【0088】
3種の脂質配合物中の脂肪酸の相対比率を図1に示す。HPLCによる脂質の化学分析により、3種の配合物が以下の脂肪酸の混合物からなることが示された。
【0089】
配合物C
89%全脂質(48.5%中性、40.5%極性 − 3%ミリスチン酸、26%パルミチン酸、15%ステアリン酸、40%オレイン酸および6%リノール酸を含んでなる)。
【0090】
配合物K
47%ラウリン酸、20%ミリスチン酸、12%パルミチン酸、12%ステアリン酸および3%オレイン酸。
【0091】
配合物N
ノバルタ(Novarta)B は、分別された植物油の水素添加エステル化混合物ならびに合成トリグリセリド混合物からなる市販の座薬基剤であり、44%ラウリン酸、20%ミリスチン酸、16%パルミチン酸、19%ステアリン酸を含んでなる。
【0092】
B. 配合後のBCG生存度
4℃での保存後の配合BCGの生存度を図2aに示す。16週の期間にわたって、配合物Cおよび配合物Kは高レベルのBCG生存度を維持し、配合物K(52%)に比べ、配合物Cは生存度(98%)を高く保持することを示した。対照的に、配合物NはBCG生存度の累進的損失を示し、16週で97%より多くの生存可能な微生物の損失を生じた。これらの結果は、配合物Nに比べ、配合物Cおよび配合物Kが4℃でのBCG生存度の維持に適していることを示唆する。
【0093】
室温(10〜25℃)での保存後の配合BCGの生存度を図2bに示す。配合物Cおよび配合物Kは高レベルのBCG生存度を維持し、生存度(平均log10 CFU/μg=10)が22日である配合物Kに比べ、配合物Cは40日の長期にわたる生存度(平均log10 CFU/μg=10)の保持を示した。対照的に、配合物Nは12日でBCG生存度(平均log10 CFU/μg=10)の急速な損失を示した。これらの結果は、配合物Nに比べ配合物Cおよび配合物Kが室温でのBCG生存度の維持に適していることを示唆する。
【0094】
C. 配合BCGのマウスにおける免疫原性。
配合M. bovis BCGの経口送達はマウスにおける免疫反応を誘導する。M. bovis BCGの経口送達を受けた全身免疫反応を測定する適当な方法を決定するために、107 CFUの液状配合BCG またはジャム中のM. bovis BCG(非配合M. bovis BCG)の経口送達後8週でのウシPPD誘導脾細胞増殖(LTA)反応、脾臓IL−2反応およびIFN−γ反応を比較した。表1は、LTAアッセイおよびIFN−γアッセイが配合および非配合の経口M. bovis BCGグループ間で有意な差を示したのに対し、IL−2アッセイについては差が有意でないことを示した。結核に対する保護におけるIFN−γの重要性のため、全身免疫反応をモニターするための更なる実験にIFN−γアッセイを用いた。
【0095】
経口送達後のM. bovis BCGの用量の効果を決定するために、ワクチン接種後8週での配合または非配合M. bovis BCGの用量を種々変化させてワクチン接種したマウス中のウシPPDに対する脾臓IFN−γ反応を比較した。図2は、106 CFUのM. bovis BCGによる経口免疫化を受けた配合群において低レベルのIFN−γ(<200pg/ml)が検出されたが、ワクチン群間では有意な差が無かったことを示した。用量を107 CFUに増大させたときに、非配合群におけるIFN−γ反応は低いままであったのに対し、配合M. bovis BCGに対する反応は有意に増大した。同様の差が108 CFUのM. bovis BCGの場合にも見られた。ワクチン用量を109 CFUのBCGに増大させたときに、非配合群においてIFN−γレベルの増大が見られたのに対し、配合群は高いままであった。107 〜109 CFUの範囲のM. bovis BCGの用量では、配合M. bovis BCG群におけるIFN−γ反応は非配合M. bovis BCGのものよりも有意に高かった。非配合M. bovis BCG群において高い用量で見られるIFN−γ反応の増大は、配合M. bovis BCGに比べ、かなり高い用量のM. bovis BCGが免疫反応の誘導に必要とされることを示す。経口M. bovis BCGに対する免疫反応の経時変化を決定するために、M. bovis BCGによる経口または皮下のワクチン接種後2週間の間隔で、脾臓IFN−γ反応を比較した。図3は、皮下ワクチン接種後のIFN−γ反応が4週をピークとして6週および8週で徐々に減少することを示す。これに比べて、配合M. bovis BCGによる経口ワクチン接種後のIFN−γ反応は6週で最初に増大し、ワクチン接種後8週で高いままであった。非配合M. bovis BCGまたは配合剤のみに対するIFN−γ反応は2〜8週で低いままであった。これらの結果は、M. bovis BCGが配合された経口ワクチン接種を受けた免疫反応が、皮下ワクチン接種と比べて遅延するが少なくとも8週まで持続するように見えることを示す。
【0096】
配合M. bovisで経口ワクチン接種されたマウスからの腹膜由来リンパ球が自己マクロファージ内でのM. bovisの増殖を阻害する。
リンパ球媒介エフェクター機構がM. bovisの細胞内増殖を阻害し得るかどうかを決定するために、経口M. bovis BCG配合物でワクチン接種されたマウスからのM. bovis感染マクロファージに対するNPECの添加を行った。マクロファージ内でのM. bovisの増殖は[3H]ウラシル取込みにより決定した。単独マクロファージ内での、又は経口ワクチン接種されたマウスからのNPECと共に同時培養したときのの、M. bovisの増殖を図4に示す。配合または非配合M. bovis BCGで経口ワクチン接種されたマウスあるいは配合剤のみが与えられたマウスから調製されたマクロファージは、M. bovisの増殖を抑制する能力に有意な差を示さなかった。配合M. bovis BCGでワクチン接種されたマウスからのNPECが自己M. bovis感染マクロファージと共に同時培養された場合は、非配合M. bovis BCGまたは配合剤のみでワクチン接種されたマウスからのNPECの同時培養に比べて、[3H]ウラシルカウント数が有意に減少した(P<0.05)。これらの結果は、配合M. bovis BCGで経口ワクチン接種されたマウスからのリンパ球がマクロファージを活性化してM. bovisの細胞内増殖を阻害するようにすることを実証する。生体外(in vitro)でのM. bovisの細胞内増殖の抑制は、宿主内でのM. bovisの蔓延の減少につながる生体内(in vivo)での増殖阻害を反映し得る。
【0097】
配合M. bovis BCGによる経口ワクチン接種は病原性M. bovisによるエアゾール抗原投与に対して保護する。
配合された経口用M. bovis BCGの保護効果を決定するために、マウスに5×107 CFUの配合M. bovis BCGをワクチン接種するか、又は1×106 CFUのM. bovis BCGを皮下ワクチン接種した。非ワクチン接種マウスを対照とした。マウスをワクチン接種後8週でエアゾール経路により病原性M. bovisで抗原投与し、抗原投与後37〜40日で安楽死させた。表2は、皮下M. bovisワクチン接種が肺細菌数を約2.34log減少させ、また脾臓細菌数を1.90log減少させることを示す。これに比べて、配合された経口M. bovis BCGは肺細菌数を約1.0log 減少させ、また脾臓細菌数を1.48log減少させた。表2の結果は、経口配合M. bovis BCGおよび皮下M. bovis BCGが病原性M. bovisによるエアゾール抗原投与に対する著しい保護を誘導するが、肺における皮下M. bovis BCGの保護効果は経口配合M. bovis BCG群の場合よりも大きいことを示した。
【0098】
D. フクロネズミにおける免疫反応および病理学
リンパ球芽球発生反応。
ウシPPDに対する全血リンパ球芽球発生反応に及ぼす配合BCGによる経口ワクチン接種の効果を図5および表3に示す。ワクチン接種後6週で、配合BCG群についてのPPD−Bに対する平均刺激指数(SI)は、非配合BCG群の場合および非ワクチン接種対照群の場合よりも有意に高かった(P<0.05)。M. bovisで抗原投与後4週で、全ての群が20よりも大きなPPD−Bに対する平均SIを示した。これらの結果は、配合BCGの経口送達が、非配合BCGに比べフクロネズミにおいて強い免疫反応を誘導することを示す。
【0099】
更なる実験により、皮下ワクチン接種による4種の経口脂質BCG配合物に対する免疫反応を比較した(図11)。皮下的にワクチン接種されたフクロネズミは、ワクチン接種後4週をピークとし(平均SI 42.5)8週でSI=30まで徐々に低下する強いLTA反応を示した。対照的に、脂質N配合経口BCGは8週のワクチン期間の間LTA反応を誘導しなかった。脂質C、脂質Kおよび脂質Fに配合された経口BCGは、ワクチン接種後4週で弱いが(SI=1〜7)ワクチン接種後8週まで累進的に増大し持続する(SI=15〜22)LTA反応を誘導した。これらの結果は、経口ワクチン接種に対する全身免疫反応が皮下ワクチン接種の場合に比べて遅延するが、長く持続し得ることを示す。配合物Nは、非ワクチン接種フクロネズミの場合に見られるよりも高いLTA反応を誘導せず、またM. bovisによるエアゾール抗原投与に対する保護も行わなかった(表4参照)。経口BCGを配合するために用いられる脂質の種類が結核に対する保護にとって重要であることを示した。
【0100】
臨床知見。
異なる群の間での抗原投与と検死の間の平均体重の変化を図6に示す。配合BCGでワクチン接種されたフクロネズミの平均体重は、抗原投与と検死の間で0.02kg増加した。対照的に、非配合BCG群および非ワクチン接種群については、平均体重がこの間にそれぞれ0.35kgおよび0.23kg減少した。しかしながら、これらの差は統計学的に有意でなかった。
【0101】
4種の経口脂質BCG配合物と皮下ワクチン接種とを比較する更なる実験(表4)において、抗原投与と検死の間での平均体重変化が、非ワクチン接種群(0.147kg)に比べ、皮下ワクチン接種群(平均体重損失0.012kg)および経口脂質BCG群の1つ(F群)(0.035kg)については有意に減少した。比較して、残りの経口BCG群についての平均体重損失は、0.060kg(脂質C)、0.067kg(脂質K)および0.122kg(脂質K)であった。ワクチン接種に対する免疫反応を示さなかったフクロネズミ(すなわち非ワクチン接種群および脂質N群)は、反応したフクロネズミに比べて大きな体重損失を示した。
【0102】
病理学。
抗原投与した動物の全ての肺において肉眼による病巣を観察した。結核性肺炎の程度は肺重量から推定することができる(図7)。高い肺重量は広範な結核性肺炎に関連する(3)(4)。肺重量差を体重変動で標準化するために、各動物の平均肺重量を体重と比較し、比で表わした。配合BCGでワクチン接種された動物の平均肺重量と体重の比は1.62であった。比較して、非配合BCG群および非ワクチン接種対照群の平均肺重量と体重の比はそれぞれ2.86および3.0であった。配合BCGでワクチン接種したフクロネズミの平均肺重量と体重の比は、非配合BCG群および非ワクチン接種対照群とは有意な差がある(P<0.05)。一般には、肺の病巣は、その病巣の中央に黄色の壊死領域をもった葉様硬化または小硬化領域である。最も広範な肺病巣をもった動物では肥大した気管支リンパ節が観察される。
【0103】
4種の経口脂質BCG配合物と皮下ワクチン接種とを比較した第2の実験(表4)において、ワクチン群の間で平均肺重量と体重の比に有意差は無かった。しかしながら、ワクチン接種に対する免疫反応を示さなかったフクロネズミ(すなわち非ワクチン接種群および脂質N群)は、反応したフクロネズミに比べて高い肺重量を示した。
【0104】
細菌学。
マイコバクテリウム・ボービス(Mycobacterium bovis)をM. bovisで抗原投与したフクロネズミの肺および脾臓から単離した。異なる群について肺および脾臓から単離された平均M. bovis数を図8および図9に示す。非配合群および配合BCG群についての平均肺細菌数は、非ワクチン接種対照群のものよりも有意に低かった(P<0.05)。配合BCG群についての平均脾臓細菌数は、非配合BCG群よりも約10倍少なく、また非ワクチン接種群よりも約40倍少なかった。配合BCG群についての平均脾臓細菌数は、非配合BCG群および非ワクチン接種対照群のものよりも有意に低かった(P<0.05)。
【0105】
4種の経口脂質BCG配合物と皮下ワクチン接種とを比較した第2の実験(表4)において、経口ワクチン接種群のうちの3群および皮下ワクチン接種群について脾臓細菌数は非ワクチン接種群と比べて有意に低かった(P<0.05)。残りの経口脂質BCG群(脂質N)は脾臓細菌数の有意な低下を示さなかった。肺細菌数を比較した場合には、これらの群の間で有意差が見られなかった。一般に、ワクチン接種に対する免疫反応を示さなかったフクロネズミ(すなわち非ワクチン接種群および脂質N群)は反応したフクロネズミに比べて高い平均脾臓および肺細菌数を示した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0110】
産業上利用
抗原性組成物には、安定なマトリックス中に抗原を維持し、マトリクス中に抗原が均一に分散された脂質配合物が含まれる。この抗原性組成物は、一定用量の抗原の投与を促進し、高用量投与(dose dumping)および非効率な低用量投与を回避する。脂質配合物は、本出願人により、その中に含まれる生きた微生物の生存度および保存を改善することも示されている。脂質配合物はまた、胃酸および酵素による分解から抗原および生きた微生物を保護する。脂質系配合物における微生物の生存度の損失は、凍結乾燥製品について報告されているものよりも著しく低い。配合物の疎水的性質のために、劣化することなく、湿性または湿気条件下での保存も達成することができる。
【0111】
ワクチン製剤における微生物、特に細菌、の生存度は、強くて長期間持続する保護性免疫を誘導するために重要であることが実証されている。このことは本発明の組成物を使用することによって達成し得る。本発明の組成物はまた、調製し易く、生産費用が廉価で、針と注射器の使用を避けることができる点で消費者の受け入れ易さと安全性の増大が認められる。
【0112】
本発明の組成物は、皮下を含め多様な経路で投与し得るが、特に経口送達に適している。本出願人は、組成物における脂質配合物が微生物の生存度およびその構成要素である抗原を胃での分解から保護することができ、生きた微生物が免疫系に対する処理、複製および提示のために胃腸粘膜により吸収されることを可能とすることを見出した。さらに、本出願人は、投与される用量が従前に経口投与について予期されていた(8)よりも少ない用量で効果的となり得ることを決定している。
【0113】
例えばフクロネズミ等のような野生動物のワクチン接種には、抗原が粘膜ルートにより送達される必要がある。経口食餌ワクチンはそれ故に実用的で費用対効果に優れた送達の選択肢となる。ヒトの経口ワクチン接種も費用対効果に優れたワクチン接種方法であり、使用者の支持を受け易い。
【0114】
例えば皮下等の他の経路で投与される場合に、脂質配合物は、攻撃、例えばマクロファージによる攻撃から保護をも与える。皮下投与または注射による投与の場合に、脂質デポー配合物は、持続した放出をも可能として、感染プロセスを模倣し、そして免疫反応の増大を促進する。
【0115】
本発明の組成物が、多数の高コストの注射用ワクチン製剤を上回る実質的な利点を与えることが理解されるであろう。
【0116】
本発明の組成物は、広範囲の感染性微生物、例えば胃腸および呼吸系の病原、特に結核に対する免疫反応を誘導するのに効果的である。
【0117】
本発明の組成物は、広範囲の抗原に対するワクチン送達システムとして、または抗原性分子の同時送達または共役送達、特にその用量または抗原性の理由が低い免疫原性である抗原性分子の同時送達または共役送達にも使用し得る。本発明の組成物はワクチンアジュバントとしても有用である。
【0118】
本説明が例示のみのために与えられ、本発明の範囲がこれに限定されないことが当業者に更に理解されるであろう。
【0119】
【表5】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗原性組成物、特に生細菌ワクチン、を配合するための脂質の使用に関し、また該組成物を使用して動物を免疫化するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
結核(TB)を引き起こす病原など、大抵のヒトおよび動物の病原は粘膜表面を通じて感染を開始する。従って、このような病原に対する保護性免疫が強い粘膜免疫反応を誘導することを必要とする場合がある。しかしながら、粘膜免疫反応は非経口的な免疫化を受けて一般に弱い。粘膜部位を保護するためにワクチン、特にTBワクチンに対する明らかな必要性にもかかわらず、今日使用されているワクチンは皮内または皮下注射により行われる。それ故に、より効果的な組成物および/または代替的ルートによるワクチン送達システムの開発が望ましい。特にワクチンの経口投与は、投与の容易性および粘膜免疫反応のターゲッティングなど多数の利点を有する。これにもかかわらず、動物およびヒトの経口ワクチン接種により粘膜免疫および/または全身免疫を行うことは今日まで概ね効果をあがっていない。このようなワクチンの効力は、ワクチンが消化管を通過する際にワクチンの分解により阻害されてきた。特に、大抵の抗原性成分は、消化管における胃酸およびタンパク質分解酵素により容易に分解するペプチド結合を有している。
【0003】
多数のワクチンが微生物の凍結乾燥調製物の使用に依存している。例えば、ヒトTBに対する現在のワクチンは、カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)と呼ばれる生(live)の弱毒化細菌の凍結乾燥調製物に基づく。しかしながら、凍結乾燥方法はBCG生存度の30〜50%の損失を生じ、残存する生菌の回復を害する(7)。使用前の高い微生物生存度を保持する組成物は、このようなワクチンの有効性に大きく寄与するものとなろう。
【0004】
免疫反応を改善するために、抗原は、免疫原性を刺激する多数のアジュバント(免疫助成剤)と混合されてきた。これらのアジュバントは主にミョウバンそして水中油エマルジョンである。後者の群はフロイントの鉱物油アジュバントに代表される。しかしながら、ヒトおよび家畜ワクチンにおいてフロイント完全アジュバント(FCA)を使用することは、報告されている毒性反応のために禁忌されている。これらの理由のために、フロイントのアジュバントも経口投与のために不適当となる場合がある。
【0005】
他の水中油エマルジョンでは、高い含油量のために界面活性剤を必要としている。界面活性剤の洗剤特性によって該エマルジョンは非経口投与および経口投与のために不適当となる。更に、承認されている界面活性剤についても毒性反応が報告されている。エマルジョンを使用する場合の更なる欠点は、不混和性の一つの液が他の液に分散される不均一系であるということである。これは不安定であって、経時的に水性相の分離を生じる。このことが安定な懸濁液中でワクチンを維持することを困難にしている。更に、油中水エマルジョンの水性相に捕らえられた抗原は、胃での分解から保護されることが困難である。
【0006】
リポソームおよび脂質ベシクルも、ワクチンと共に、特に容易に被包され得る小さな抗原性成分と共に使用するために検討されてきた。一般に、リポソームおよびベシクルは大きな抗原、例えば生きた微生物、の被包(encupsulation)にとって有用でない。更に、リポソームおよびベシクルはその生産に費用と時間がかかるので、その調製における抽出手順はワクチン調製物の化学構造または生存度に変化を生じさせ、従ってその免疫原性に変化を生じさせる場合がある。例えば、熱および溶媒は、タンパク質などの抗原性成分の生物学的完全性を変化させ得る。
【0007】
したがって、本発明の目的は、これらの要望に応えるか又は少なくとも有用な選択肢を公衆に供する、抗原性組成物および/または送達システムを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
従って、一つの態様において本発明は、医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量の生きた微生物を含む少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなり、経口投与用に配合されている抗原性組成物を提供する。
【0009】
好ましくは、脂質配合物は固形である。
【0010】
別の態様において本発明は、固形であって約30℃〜40℃の間で固体から液体への転移を受ける医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量で存在する少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなる抗原性組成物を提供する。
【0011】
本発明に係る組成物に使用するために好適な脂質配合物は、長鎖脂肪酸を含む。
【0012】
脂肪酸組成の点から、好適な脂質配合物は40〜100%、好ましくは60〜100%、より好ましくは80%〜100%、そして一層好ましくは90〜100%のC16 および/またはC18 脂肪酸を含む。
【0013】
更に好適な組成は、35%未満、好ましくは25%未満、そしてより好ましくは10%未満のC14 又はより短鎖の脂肪酸を含む。
【0014】
一つの実施態様において、脂質配合物は以下を含む:
20%〜60%の飽和脂肪酸;
25%〜60%の一不飽和脂肪酸;および
0.5〜15%の多不飽和脂肪酸。
【0015】
特に好適な組成では、脂質配合物は以下を含む:
35%〜50%の飽和脂肪酸;
40%〜55%の一不飽和脂肪酸;および
5〜9%の多不飽和脂肪酸。
【0016】
本発明に使用するために現在のところ好適な脂質配合物は、以下の配合を有する:3%ミリスチン酸、26%パルミチン酸、15%ステアリン酸、40%オレイン酸、および6%リノール酸。
【0017】
抗原性成分はタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド成分を有する因子であってよい。
【0018】
1つの実施態様において、抗原性成分は生きた微生物を含む。好ましくは、生物学的に純粋な培養物として含む。
【0019】
好ましくは、本発明に係る組成物における生きた微生物は細菌、特に非病原性微生物であり、より好ましくはマイコバクテリウム(Mycobacterium)属に属する細菌である。本発明に使用するために特に好適なマイコバクテリウムは、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis) BCG である。
【0020】
1つの実施態様において、組成物は少なくとも2種の抗原性成分を含む。第1の抗原性成分は生きた微生物であることが好ましく、第2の抗原性成分は病原菌に由来するか又は弱免疫原性のタンパク質もしくはペプチドであることが好ましい。
【0021】
別の態様において本発明は、本発明に係る抗原性組成物を調製するための方法であって、該抗原性成分を脂質配合物と混合することを含んでなる方法を提供する。
【0022】
更に別の態様において本発明は、動物を免疫化するための方法であって、前記動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0023】
別の態様において本発明は、動物の粘膜免疫反応を刺激する方法であって、前記動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0024】
これらの方法における組成物の投与は、好ましくは経口ルートにより行われる。
【0025】
本発明は、本発明に係る抗原性組成物の調製における脂質配合物の使用にも関する。
ここで本発明の態様を添付図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】脂質配合物の脂肪酸組成を示す図である。脂質は標準的プロトコルに従ってガスクロマトグラフィにより分析された。各脂質の脂肪酸組成は全脂肪酸組成の比率として表わされる。
【図2】4℃(2a)または室温(10〜25℃)における脂質中での配合および保存の後のBCG生存度を示す図である。BCG配合物は37℃に温めれ 7H9液体培地中で乳化される。生存可能な微生物の数は7H11寒天プレート上への各エマルジョンの直列的な10倍希釈液を接種することによって決定した。配合媒体のCFU/ul数は培養の2〜3週後に決定した。結果は2重実験を代表し、平均として表わされる。
【図3】種々異なる用量の配合M. bovis BCGによる経口ワクチン接種後のウシPPD誘導INF−γ反応を示す図である。配合M. bovis BCG(丸)、非配合M. bovis BCG(三角)または配合剤のみ(菱形)による経口免疫化後8週で、マウスを殺した。脾臓細胞をウシPPDと共に72時間インキュベートした。次に上清を集め、サンドイッチELISAを用いて分析した。各処理群は6匹のマウスを含んだ。脾臓を個別に処理した。結果は pg/mlで表わされ、三重測定の平均として示される。棒は標準誤差を示す。
【図4】BALB/cマウスにおけるM. bovis BCGワクチン接種に対する抗原誘導脾臓INF−γ反応を示す図である。106 CFUの皮下M. bovis BCG(四角)、107 CFUの配合M. bovis BCGの経口送達(丸)、非配合M. bovis BCG(三角)または配合剤のみ(菱形)によるワクチン接種後2週、4週、6週および8週でマウスを安楽死させた。脾臓細胞をウシPPDと共に72時間インキュベートした。次に上清を集め、サンドイッチELISAを用いて分析した。各処理群は5〜6匹のマウスを含んだ。脾臓を個別に処理した。結果は pg/mlで表わされ、三重測定の平均として示される。8週での結果は2つの別個の実験から得られたものである。P値<0.05(スチューデントt検定)。棒は標準誤差を示す。
【図5】非不着性腹膜滲出細胞(NPEC)と共に同時培養されたマクロファージによるM. bovisの増殖阻害。マクロファージ当たり2桿菌のMOIでマクロファージにM. bovisを感染させた。非不着性自己NPECをマクロファージ当たり10NPECの比で加えた。次に[3H]ウラシルの取込み量を感染後72時間でアッセイした。M. bovisを含有しない細胞培養物による平均[3H]ウラシル取込み量は460cpmであった。同時培養マクロファージおよびNPECからの細胞内桿菌の増殖を三重測定の平均として表わした。結果は2つの実験を代表する。* は配合剤のみの対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒は標準誤差を示す。
【図6】PPD−Bに対する生体外(in vitro)腹膜血液リンパ球芽球発生反応に及ぼす配合BCGによるフクロネズミの経口ワクチン接種の効果を示す図である。配合BCG ◆----◆;非配合BCG 黒四角----黒四角;非ワクチン接種対照群 ×----×;結果は平均刺激指数(SI)として表わされる。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わす。棒はSEを示す。
【図7】M. bovisで抗原投与されたフクロネズミの体重に及ぼす配合BCGによる経口ワクチン接種の効果を示す図である。平均体重変化は抗原投与から検死までの期間にわたって測定された。抗原投与の直前のフクロネズミの平均体重は3.0±0.07(±SE)kgである。棒はSEを示す。
【図8】M. bovisで抗原投与されたフクロネズミの肺重量に及ぼす配合BCGによる経口ワクチン接種の効果を示す図である。平均肺重量は検死時に測定された。肺重量の差を体重の変動で標準化するために、各動物の肺重量を体重と比較し、比として表わした。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒はSEを示す。
【図9】M. bovisで抗原投与を受けた肺から単離されたマイコバクテリアの平均数に及ぼす配合BCGによるフクロネズミの経口ワクチン接種の効果を示す図である。結果はCFU(log10 )/組織のgの幾何平均数として表わされる。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒はSEを示す。
【図10】M. bovisで抗原投与を受けた脾臓から単離されたマイコバクテリアの平均数に及ぼす配合BCGによるフクロネズミの経口ワクチン接種の効果を示す図である。結果はCFU(log10 )/組織のgの幾何平均数として表わされる。* は非ワクチン接種対照群の平均から有意な差がある平均を表わし;棒はSEを示す。
【図11】4種の経口脂質BCG配合物または皮下ワクチン接種に対する免疫反応の比較を示す図である。図はワクチン接種(0週)および抗原投与(8週)を受けたフクロネズミにおけるPPD−Bに対する生体外(in vitro)腹膜血液リンパ球芽球発生反応に及ぼす効果を示す。結果は平均刺激指数(SI)として表わされる。
【図12】本発明による包括的なワクチン送達システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
従って、第1の態様において本発明は、医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量の生きた微生物を含む少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなり、経口投与用に配合されている抗原性組成物を提供する。
【0028】
脂質は固形であることが好ましい。脂質は10℃以上の温度で固形であることが好適である。
【0029】
別の態様において本発明は、固形であって約30℃〜40℃の間で固体から液体への転移を受ける医薬として許容される脂質配合物と、抗原として有効量で存在する少なくとも1種の抗原性成分とを含んでなる抗原性組成物を提供する。
【0030】
上記配合物に用いられる脂質は、動物またはヒトの消費を含む投与のために適していることが好ましく、広範囲の天然(植物または動物由来)または合成の脂質生成物、例えば油、脂肪およびワックスより選択してよい。
【0031】
最も普通には、該脂質材料は約30℃よりも高い温度で液状となる。すなわち、脂質は該脂質が最も普通には経口ルートにより投与される動物の生理学的温度における融点を達成するように選択されるべきである。脂質は大気圧で10〜30℃において固形となり、好ましくは大気圧で20℃〜30℃においても固形であることが望ましい。しかしながら、脂質の融点は限定的でなく、ある範囲の融点をもった油、脂肪およびワックスを含んでよい。
【0032】
ここで使用するために好適な脂質は、約30℃と約40℃、一般には37℃の生理学的温度との間で固相から液相への転移を受ける。脂質相の挙動の概説が当該技術分野で利用可能であり、例えば(10)を参照。従って、当業者は当該技術分野における情報および簡単な実験に基づいて、所望の特性および融点を有する脂質を選択することができる。
【0033】
適した脂質配合物は、カルボン酸グリセリルエステル、脂肪族鎖と−COOH末端からなる化合物、飽和および不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物を含む、トリグリセリド類である。
【0034】
現在のところ好適な脂質は、主にC8 〜C20 アシル基、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パリン酸(parinic acid)、ラウリン酸、リノレン酸、アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸、またはこれらの混合物、を含むトリグリセリド類である。
【0035】
本発明に有用な脂質配合物として、長鎖脂肪酸、例えばC16 〜C18 が好適であることも実証された。長鎖脂肪酸は、マウスおよびフクロネズミに投与されるワクチン中の微生物、例えばBCG、を保護するのに効果的であることが見出された。このような点からみて、本発明に使用するために好適な脂質配合物は、40〜100%、好ましくは60〜100%、好ましくは80%〜100%、そして一層好ましくは90〜100%のC16 および/またはC18 脂肪酸を含む。
【0036】
一般には、C16 脂肪酸は、全脂肪酸含有量の10%〜40%、より好ましくは20%〜35%、そして一層好ましくは25%〜32%であり、そしてC18 脂肪酸は、全脂肪酸含有量の40%〜90%、好ましくは50%〜80%、そして一層好ましくは60%〜70%C18 である。
【0037】
また、好適な脂質配合物は、35%未満、好ましくは25%未満、そしてより好ましくは10%未満のC14 又はより短鎖の脂肪酸を含む。
【0038】
鎖長の点で、好適な脂質配合物は、5%未満のC14 又はより短鎖の脂肪酸、25%〜32%のC16 脂肪酸、および60%〜70%のC18 脂肪酸鎖を含む。
【0039】
脂肪酸含有量の点で、本発明に使用するための脂質配合物は、20%〜60%、好ましくは30%〜55%、そして一層好ましくは40%〜50%の量の飽和脂肪酸;25%〜60%、好ましくは30%〜60%、そして一層好ましくは40%〜55%の量の一不飽和脂肪酸;および0.5%〜15%、好ましくは3%〜11%、そして一層好ましくは5%〜9%の量の多不飽和脂肪酸を含んでよい。
【0040】
本発明に使用するための特に好適な脂質配合物は、40%〜50%の飽和脂肪酸、40%〜50%の一不飽和脂肪酸、および5%〜9%の多不飽和脂肪酸を含んでなる。
【0041】
本発明に使用するために現在のところ好適な脂質配合物は、HPLC分析によって決定される、次の配合:3%ミリスチン酸、26%パルミチン酸、15%ステアリン酸、40%オレイン酸、および6%リノール酸を有する。
【0042】
また、現在のところ好適な脂質配合物としては、動物由来の分別された脂質複合物、1種以上の水素添加植物油、特にオリーブ油またはココナッツ油、市販の座薬基剤、および他の脂質配合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
上記脂質配合物は、抗原性組成物の調製に、及び該組成物内の抗原を分解から保護するのに有用である。脂質配合物は、生きた微生物、特に細菌、の生存度を維持するのに特に有用である。脂質配合物は微生物を生きているが休眠状態に維持するように作用する。このことは経口投与用に配合される生きた微生物を含んでなるワクチンにとって特に重要である。また、脂質は抗原を均一な分散体中に維持する。すなわち本発明に係る組成物において、抗原性成分、および特に、生きた微生物は、固形またはペースト様の脂質マトリックスの全体に均一に分配されている。また、脂質は経口投与時に胃腸分泌物による破壊から抗原を保護する。他のルート、例えば皮下、による投与時にマクロファージの攻撃からの保護も起こり得る。このことは抗原および特に生きた微生物が胃腸粘膜を通じて取り込まれること、及び次に微生物が宿主内で複製されることを可能とする。生きた微生物の宿主内での複製は、病原性細菌で抗原投与(challenge)を受けた疾患の重症度の低減により決定される、保護性免疫反応を刺激する。
【0044】
広範囲の送達ルート用の配合物はまた、添加剤、例えば限定されることなく、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、界面活性剤、沈殿防止剤、保存剤、着色剤、塩類、酸化防止剤、例えばグルタミン酸一ナトリウム(MSG)、ビタミン類、例えばビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC)、保護コーティング、誘引剤および着臭剤、ならびに脂質中に含まれる微生物の生存補助剤等を含んでもよい。
【0045】
保護コーティングまたは腸溶性コーティングは、例えばゲル、パラフィン、およびゲラチンを含む可塑物から選択してよい。これらのコーティングは更に、経口投与ルートが選択される場合に胃酸および酵素に対して曝露されるのを防止することを助ける。
【0046】
上記配合物は、経口投与用に使用される場合に、例えば嗜好性を改善する添加剤、例えば香味料(アニス油、チョコレートおよびペパーミントを含む)および甘味料(グルコース、フルクトース、または他の何れかの糖もしくは人工甘味料)を含んでもよい。
【0047】
抗原性成分は、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド成分を有する因子、好ましくは単離され及び/又は精製されたもの、あるいはこれらの混合物であってよい。抗原性成分は、動物における免疫反応を生じさせるために使用され得る物質に由来してよい。
【0048】
最も普通には、抗原は、治療される動物種に病原性である微生物上に存在する少なくとも1種のエピトープを有し得る。当該技術分野で公知である等の他の抗原性構造物も使用し得る。例えば、多糖、糖脂質、および担体に結合されたハプテンが挙げられる。
【0049】
好ましくは、抗原性成分は生きた微生物、好ましくは生物学的に純粋な培養物である。
【0050】
本発明の組成物における生きた微生物は、菌類、原生動物、細菌類およびウイルス類からなる群より選択し得る。例えば、HIV、SIV、ブルセラ属(Brucella)および炭疽菌(Anthrax)が挙げられる。好ましくは、微生物は細菌である。経口または皮下の送達用に配合される組成物に使用するのが好適なのは、非病原性細菌から現在選択される微生物である。好適な細菌は、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、例えばマイコバクテリウム・ツベロクロシス複合体(マイコバクテリウム・ツベロクロシス(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)、マイコバクテリウム・アフリカナム(M. africanum)およびマイコバクテリウム・ミクロティ(M. microtii)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・アビウム−イントラセルラール複合体(マイコバクテリウム・イントラセルラール(M. intracellulare)およびマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・パラツベロクロシス(M. paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ワッカ(M. vaccae)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M. smegmatis)、マイコバクテリウム・チェロナ(M. chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(M. fortuitum)、マイコバクテリウム・カンサイ(M. kansaii)、マイコバクテリウム・レプラ(M. leprae)、マイコバクテリウム・マリナム(M. marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M. ulcerans)、マイコバクテリウム・シミア(M. simiae)、マイコバクテリウム・ハエモフィラム(M. haemophilum)、マイコバクテリウム・マルモエンス(M. malmoense)、マイコバクテリウム・シモイデイ(M. shimoidei)、マイコバクテリウム・ガストリ(M. gastri)、マイコバクテリウム・テラ(M. terrae)複合体、およびマイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム(M. nonchromogenicum)より選択される非病原性菌株である。特に好適な実施態様において、該物質はカルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin:BCG)、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)の弱毒化菌株、例えば以下の菌株: 83/6235、パスツール(Pasteur) 1173P2、グラクソ(Glaxo)1077、ジャパニーズ(Japanese) 172、プラハ(Prague)、ロシアン(Russian)、ブラジリアン(Brazilian)、デーニッシュ(Danish)1331、コペンハーゲン(Copenhagen)、コンノート(Connaught)、ならびにマイコバクテリウム・ボービスの機能的に等価な変異株および他の弱毒化菌株、これらの菌株の純株(clones)、突然変異株(mutants)および天然の組換え体または広範囲の遺伝子工学技術のいずれかにより生産された組換え体を含め組換え体(recombinants)、およびこれらの抗原性成分である。
【0051】
以下の説明から、抗原性成分がタンパク質もしくはペプチドの複合体等であってよいことが理解されるであろう。
【0052】
一つの実施態様において、本発明の組成物は、上記で特定される抗原性成分のいずれかより選択される少なくとも2種の抗原性成分を含み、サブユニット抗原の複数からなる組合せを含んでよい。3種以上の抗原性成分が適している。
【0053】
本発明の組成物における抗原性成分の濃度は、動物に対する投与による免疫反応、特に小腸の消化管関連リンパ組織における免疫反応、を刺激するのに有効な量で存在する限り、当業界で公知のプロトコルに従って変更してよい。マイコバクテリアの場合には、1×105 〜1×1010 コロニー形成単位(CFU)/mlの範囲が適当である。その濃度は1×107 〜1×109 CFU/mlであることが好ましい。タンパク質およびペプチド型抗原の場合には、10〜1000μg/配合物gの範囲が適当である。ウイルス型抗原の場合には、1×103 〜1×1010 、好ましくは1×105 〜1×108 プラーク形成単位(PFU)/mlが適当である。免疫反応は、体液性であっても、又は粘膜免疫反応など細胞媒介性であってもよい。
【0054】
従って、別の態様において本発明は、動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することによる、動物の粘膜免疫反応を刺激する方法に関する。
【0055】
本発明の組成物は、当業界で公知の方法を用いて調製し得る。好適には、該脂質配合物が必要に応じ加熱されて液化し、そして上述のような抗原性成分および他の成分(使用される場合)が添加される。抗原性組成物の分散は、混合、振盪または抗原性成分の生存度に悪影響を与えない他の方法により達成し得る。
【0056】
本発明に使用するために更に好適な組成物は、水などの水性成分を実質的に含まないものでもある。ここで用いられる「実質的に含まない」という用語は、組成物に含まれる水性成分が10%未満、そして好ましくは水性成分が5%未満であることを意味する。上で示したように、成分、特に水性溶媒が存在することは、特に消化管における脂質配合物の保護効果を低減する。
【0057】
1つの実施態様において、抗原性組成物はワクチンである。
【0058】
代替的な実施態様において、抗原性組成物は、ワクチンの効力を増大させるために、ワクチンを用いた投与に有用なアジュバントである。マイコバクテリウム含有抗原性組成物およびBCG含有抗原性組成物が、アジュバントして使用するために特に好適である。
【0059】
本発明に係る抗原性組成物はまた、抗原性成分について上記で示したタイプ、特に弱免疫原性の第2の又は更なる抗原性分子に対する反応を生じさせるために有用となり得る。このことは、本発明の抗原性組成物の抗原性成分に抗原性分子を結合させることにより、該組成物中の第2の又は更なる抗原性分子を同時送達することによって達成し得る。結合は当業界で標準的な方法(9)を使用して行い得る。特に、関心ある抗原を生体内(in vivo)での抗体産生を妨げないリンカー基により抗原性担体またはアジュバントに結合させ得る。抗原性担体またはアジュバントは、上記で特定される微生物を含む抗原性成分のいずれであってもよいが、好ましくはマイコバクテリウム属であり、より好ましくはBCGである。適したリンカー基としては、マンノースレセプター結合性タンパク質、例えばオブアルブミン、およびFcレセプターに結合するものが挙げられる。第2の又は更なる抗原性分子は、好ましくはタンパク質またはペプチドである。特に好適なタンパク質は免疫避妊性(immunocontraceptive)タンパク質である。脂質はまた送達マトリックスとして作用する。このワクチン送達システムの例を図12に示す。上記組成物が投与されると、結合された分子または同時送達された分子に対する増大した免疫反応が生じる。
【0060】
別の態様において本発明は、動物を免疫化するための方法であって、前記動物に対して本発明に係る抗原性組成物を投与することを含んでなる方法も提供する。
【0061】
ここで用いられる「動物」という用語は、温血動物、特に哺乳動物をいう。ヒト、イヌ、ネコ、鳥類、ウシ、ヒツジ、シカ、ヤギ、ラット、マウス、ウサギ、フクロネズミ、アナグマ、モルモット、フェレット、ブタおよびバッファローが、この用語の意味の範囲内の動物の例である。単胃動物および反芻動物が特に、この用語の範囲内と考えられる。
【0062】
本発明に係る組成物は、非経口(皮下、皮内、筋肉内)、粘膜、エアゾールおよび経口投与を含むがこれらに限定されない多様なルートにより投与し得る。1つの実施態様において、経口投与が好適である。本発明の組成物は、ペレット剤、錠剤、カプセル剤、舐剤、または他の適した配合物の形態で経口投与し得る。経口投与は、針と注射器の使用を避けることができる点で広く消費者に受け入れられるとともに、野生生物をワクチン接種するための経済的で実用的な方法である。そのため、1つの実施態様において、本出願人は経口投与用に配合された新規な生ワクチンを提供している。
【0063】
代替的な実施態様において、本発明の組成物は、注射による非経口投与用に配合し得る。この投与形態には、体組織との適合性がある注射用皮下デポー配合物も含まれ得る。該デポー剤からの経時放出吸収(time release absorption)は、脂質配合物を単独で又は追加的な生分解性ポリマーと共に使用して達成し得る。該デポー剤は、感染プロセスと非常に近似するプロセスで抗原性成分の遅延放出を可能とし、当該組成物が投与される動物における免疫反応の増大を促進する。これらの投与形態では脂質保護効果も生じる。
【0064】
本発明の組成物は、特に非経口投与のための、単一用量として投与することができ、又は経時的に反復用量で投与することができる。例えば、時間間隔をおいて初回量およびブースター量で投与できる。投与量は、免疫性成分の放出速度とともにその抗原性により決定される。動物の体重、年齢、性別、併用処理(該当する場合)、および処理される抗原の性質など通常の事項を考慮に入れてよい。一般に、経口によるワクチン接種の場合の用量範囲は上述したように、用量当たり1×105 〜1×1010 、好ましくは1×107 〜1×109 CFU/kgである。タンパク質およびペプチド型抗原の場合には、用量範囲は1〜10,000μg、好ましくは10〜1000μgである。ウイルス型抗原の場合には、用量範囲は1×103 〜1×1010 、好ましくは1×105 〜1×108 PFU/mlである。どの送達方法を使用しても、生きた微生物をワクチン配合物で使用する場合には、それらの微生物が宿主内で増殖して免疫反応を促進することが期待される。
【0065】
本発明の組成物は、集団ワクチン接種計画のための複数用量製剤として又は単一用量製剤として調製することもできる。
【0066】
使用のために必要とされるまで、本発明の組成物は、室温において一定期間保存してよく、又は好ましくは約4℃において通常の冷蔵条件の下で保存してよい。4℃において、脂質配合物は休眠しているが生存可能な状態にある微生物を劣化することなく保存および維持することを容易にする。非経口送達の場合に、組成物は次に30〜40℃に温められて投与前に液化する。経口投与の場合に、組成物は固形またはペーストである。
【0067】
上述した説明は例示のためだけに示されるものであって、当業者に公知である材料および方法の両方における変形が考えられる。
【0068】
本発明を例示する非限定的な例を以下に示す。
【実施例】
【0069】
材料および方法
細菌。
マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis) BCG パスツール(Pasteur) 1173P2 (Pasteur institute, Paris)をワクチン菌株として用いた。マクロファージ感染研究とフクロネズミ抗原投与(challenge)のための用いたM. bovis菌株は、M. bovis 83/6235 (AgResearch, Wallaceville, New Zealand)であり、これは元々ブラッシュテイルフクロネズミの結核病巣から単離され、そして従前のマクロファージおよびフクロネズミ接種研究で使用されたものである(1,4)。BCG配合およびマクロファージ感染のために、アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC;BBL, Becton Dickinson, Maryland, USA)で補充したMiddlebrook 7H9 培地(Difco, Detroit, Mich.)を含む175mlフラスコ(Falcon)内で菌を中間対数増殖期まで増殖させた。桿菌を遠心分離により集菌し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で2回洗浄した後に−70℃で保存した。フクロネズミ抗原投与のために、0.006%v/vアルカリ化オレイン酸、0.5%w/vアルブミン・フラクションVおよび0.25%w/vグルコースで補充したデュボス液体培地(Difco Laboratories, Detroit, USA)を含むツウィーン・アルブミン液体培地(TAB)中でM. bovisを中間対数増殖期まで増殖させ、細菌数を懸濁度により評価した。フクロネズミに接種するための希釈をTAB中で行った。BCGまたはM. bovisのコロニー形成単位(CFU)の数を従前に記載されているようにして決定した(5)。
【0070】
配合物組成。
BCGと共に配合するための均一懸濁液中にBCGを維持する能力および融点に基づいて、3種の脂質製品を選んだ。37℃で液状であるが30℃よりも低い温度で固形となる脂質をBCG生存度研究において試験するために選んだ。生存度試験の後に、マウスおよびフクロネズミにおいて経口ワクチン試験を行うために、以下の3種の配合物を選んだ:
配合物C − 動物由来の分別された脂質複合物; 配合物K − 精製された水素添加ココナッツ油のトリグリセリドからなる; 配合物N −ノバルタ(Novarta) B、市販の座薬基剤。これら3種の配合物をガスクロマトグラフィにより分析して、脂肪酸群の比率を決定した。
【0071】
BCGの配合。
ペレット化したBCGを、37℃まで温められた配合媒体中に再懸濁した。フクロネズミのワクチン接種のために、BCGを1×107 CFU/mlの濃度に再懸濁した。フクロネズミに対する誘引性および嗜好性を増大させるために、配合物ml当たり10mgのグルコースおよび10μlのアニス油(Pharmacare, Auckland NZ)を添加した。マウスの経口ワクチン接種のために、配合物ml当たり10mgのグルコース、1mgのグルタミン酸一ナトリウム塩(Sigma)および10%v/v ADC を添加した。これらの添加剤が配合脂質に分散され、BCGの生存度に影響を与えないことが前もって示された。BCG配合物を15mlチューブ(Falcon)に移し、4℃で穏やかに混合しながら固化させた。チューブから配合物を取り出して、生存度試験およびワクチン接種研究のために必要とされる1gペレットに無菌状態で切断した。ペレットを、7H11寒天プレートで培養して以下に述べるようにCFUをカウントすることにより、BCGの分散について試験した。
【0072】
BCG生存度。
4℃または室温(10〜25℃)において保存した後の配合物中のCFU数を、従前に記載されているように(4)決定した。3種のBCG配合物の100mgアリコートを37℃に15分間温め、 7H9液体培地中で直列的に10倍希釈を行うことによって、培養用のサンプルを集めた。オレイン酸・ADC(OADC; Becton Dickinson, Maryland)および0.5%グリセロールで補充したMiddlebrook 7H11寒天プレート(Difco)上で100μlの各エマルジョンを接種して、生存可能な微生物の数を決定した。エマルジョンはガラス・スプレッダを使用して分散させた。プレートをパラフィンで密封し、37℃で5%CO2 中でインキュベートした。培養の2〜3週後にコロニー数をカウントした。結果はCFU/BCG配合物μgとして表わす。
【0073】
マウスのワクチン接種。
特定の病原の無い雌BALB/cマウス(6〜8週齢)をオタゴ大学動物実験科学部門、ダニディン(University of Otago Department of Animal Laboratory Sciences, Dunedin)より入手した。オタゴ大学動物倫理委員会からの倫理承認(承認番号: 51/2000)の下でマウス実験を行った。マウスを個々のかごに分けて入れ、経口ワクチン接種前12時間食餌を絶った。非配合の対照群は、クレイグ(Craig)の無保存料ストロベリー・ジャム(Heinz-Watties Ltd., Hastings, New Zealand)中のM. bovis BCG からなる。従前の研究により、24時間間隔におけるM. bovis BCGの生存度が、M. bovis BCGを該ジャム中で混合することによっても影響を受けないことが示されている(データは示さない)。非接種の対照群は脂質配合物のみからなる。用量反応および経時実験のために、マウスに24時間の間隔で2種の別個の用量でワクチンを与えた。エアゾール抗原投与実験のために、マウスに単一経口用量(5×107 CFU)を与えるか、又は1×106 CFUで皮下的にワクチン接種した。ペレットおよびジャムの消費時に種々の間隔でマウスを観察して、全用量が食べられていることを確認した。ワクチン接種後の種々の間隔で、5%CO2 吸入によりマウスを殺し、その脾臓を無菌状態で取り出した。
【0074】
脾臓細胞の増殖アッセイ。
セルストレーナ(70μmメッシュ; Beckton Dickinson)を通じて細胞を濾過することにより、脾臓細胞懸濁液を調製した。赤血球を0.83%NH4 Cl(pH7.2)中で溶解させた。細胞をPBS中で2回洗浄し、10%致死性仔ウシ血清(FCS)、100U/mlの20mM HEPES ペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5.5×10-5 M 2−メルカプトエタノールを含有するダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)(DMEM−10%FCS;全てGibco-BRL, USAから)中で1×106 /mlに再懸濁した。細胞をRPMI+10%致死性仔ウシ血清(Gibco)中で107 /mlの濃度に再懸濁した。脾臓細胞(5×105 /ウェル)をプレートから出して96ウェルプレート(Nunc.)の3つのウェルに入れた。細胞を、M. bovis培養物から由来する精製タンパク質(ウシPPD; CSL, Melbourne, Australia)、60μg/ml最終濃度、または培地のみで培養した。細胞を4日後に収穫し、1μCiの[3H]チミジン(Amersham, Buckinghamshire, England)による18時間パルス後、取り込まれたチミジンを従前に記載されているように(5)測定した。ウシPPDでインキュベートした3つの培養物についての平均カウント数/分(cpm)を、培地のみで培養した脾臓細胞についての平均cpmで割り算することによって、刺激指数(SI)を得た。
【0075】
脾臓細胞によるサイトカイン産生についての生体外(in vitro)アッセイ。
脾臓細胞増殖アッセイのために、脾臓細胞懸濁液を上述したように調製した。1mlの細胞懸濁液を24ウェルプレート(Costar)に分散させ、そのウェルに100μlのPBSまたはPPD(60μg/ml最終濃度)を添加した。培養物を37℃において5%CO2 中で72時間インキュベートし、その後200μlの培養上清を集め、−70℃で凍結して、サイトカイン分析に用いた。市販キット(R&D Systems, Duoset, City, Country)を使用し、製造業者の指示に従って、インターロイキン−2(IL−2)捕捉ELISAおよびインターフェロン−ガンマ(IFN−γ)捕捉ELISAを行った。培養上清中のサイトカインレベルを標準曲線からの外挿によって定量した。2種のELISAの最小感度(minimum sensitivities)は、IFN−γについて50pg/mlおよびIL−2について35pg/mlと定量された。
【0076】
M. bovis阻害アッセイ。
腹膜由来マクロファージを、自己リンパ球を用いないで又は自己リンパ球を用いて共培養の後に、M. bovisの細胞内増殖の阻害について試験した。従前に記載されているプロトコルの修正方法に従って実験を行った。腹膜滲出細胞(PEC)を雌BALB/cマウスからの洗浄によって得た。細胞を1%BSAおよび20U/mlへパリンで補充されたPBS中で集め、1回洗浄し、10%致死性仔ウシ血清および100U/mlペニシリンを含有するDMEM(補充DMEM)中で2×106 /mlに再懸濁した。100μlの細胞懸濁液を96ウェル平坦プレート(Nunc)中に分散させた。37℃において5%CO2 中で2時間インキュベートした後に、非付着性細胞を取り出し、洗浄して、補充DMEM中に5×106 /mlの濃度で再懸濁した。非不着性細胞は、25mlフラスコ(facon)中でのインキュベーションにより残留する付着性集団が選択的に除去されたものである。非付着性PEC(NPEC)はメイグリュンワルド/ギムザ(May-Grunwald/Giemsa)染色により90%より多くのリンパ球を含むことが決定された。温かい補充DMEMを、5×104 細胞/ウェルを含むと推定される付着性単層に添加した。この集団は非特異的エステラーゼ染色キット(カタログ番号181−B;Sigma, St. Louis, MO, USA)により98%陽性であることが分かり、以下マクロファージと称する。従前に記載されているように(2)マクロファージ当たり2桿菌(Bacilli)のMOIでマクロファージにM. bovisを感染させた。穏やかな洗浄により、貪食されなかった(non-phagocytosed)細菌を除去した。(5×106 細胞を含有する)100μlの自己NEPCを、感染マクロファージを含有する各ウェルに加え、培養物を更に37℃において5%CO2 中でインキュベートした。得られた10:1のNPEC/マクロファージ比は、末梢血液単核細胞において見られる比のものと近似するように選択された。対照ウェルはM. bovis感染マクロファージのみからなるか、又は未感染NPECおよびマクロファージからなる。72時間後、細胞を1.0μCiの[3H]ウラシルにより18時間パルスした。細胞を0.1%サポニンにより溶解させ、80〜90℃で20分間加熱殺菌した後に、自動セルハーベスター(Cambridge Technology, USA)を用いて、ガラス繊維フィルター上で収穫した(Whatman Inc, Finland)。液体β−シンチレーションカウンター(Wallac, Country)を用いて[3H]ウラシルの取込み量を測定した。
【0077】
M. bovisによるマウスのエアゾール抗原投与。
ワクチン群当たり6匹のマウスをワクチン接種後8週で病原性M. bovisを含むエアゾールで抗原投与(challenge)した。Grover et al., 1967 により記載されている方法の修正方法を使用してM. bovisの単一細胞懸濁液を調製し、−70℃で保存した。これらの懸濁液を調製するために、該細菌細胞をソニケータにより30秒間分散させ、8μm膜フィルターを通じて濾過した。歯槽空間に入るために適当なサイズの飛沫核を生じさせるエアゾールチャンバーを使用して、マウスに呼吸経路を介して感染させた。生存可能なM. bovisの濃度をネブライザ(nebuliser)内で経験的に調整して、マウス肺当たり5〜20の生存可能な微生物の吸入と保持を行った(B. Buddle and G. de Lisle, 未公表データ)。類似の手順によりモルモットの肺の再現性のある均一な感染を生じることが示された。バイオハザード設備内での厳格な単離条件の下でエアゾール感染および次の感染マウスの維持と操作を行った。
【0078】
M. bovisの単離。
エアゾール抗原投与後37〜40日でマウスを安楽死させた。各マウスからの肺と脾臓をマイコバクテリウム単離のために個別に処理した。該微生物をTen-Broeckグラインダー中でホモジェナイズし、サンプルを3500gで20分間遠心分離した。沈降物を1mlの蒸留水中で再懸濁した。TAB中で適当な希釈を行い、0.1ml量の希釈された又は希釈されないサンプルを修正マイコバクテリア7H11寒天プレートに接種した(1)。各希釈物について2つの複製物を調製した。従前に記載されているように(1)培養条件および単離物同定方法を実行した。
【0079】
データ解析
ワクチン群について平均サイトカインレベル差およびlog10 変換された脾臓細胞増殖反応の統計的解析をスチューデントt検定により求めた。肺および脾臓からの細菌数をlog10 変換し、分散解析により解析した。統計的目的のために、組織から培養される細菌が存在しない場合には、最低検出可能数の半分(%CFU/臓器)を使用した。
【0080】
フクロネズミのワクチン接種および抗原投与。
従前に記載されているように(4)フクロネズミを捕獲し収容した。フクロネズミの2つの群(5匹/群)にBCGを供給した。配合されたBCGの1gペレット(1×108 CFU)を1つの群の各フクロネズミに与えた。第2の群には配合手順の対照のためにジャム中のBCG(1×108 CFU)を与えた。該ジャムはBCG生存度を阻害することが従前から示されている(データは示さない)。第3の群(6匹/群)には配合媒体のみを含有するペレットを与え、非ワクチン接種対照とした。ペレットの消費時にフクロネズミを観察して、全ペレットが食べられていることを確認した。次の日にワクチン接種を繰り返した(全BCG用量2×108 CFU/フクロネズミ)。ワクチン接種後41日で、フクロネズミの全てをエアゾール経路により抗原投与した。
【0081】
第2の実験において、4種の経口用脂質BCG配合物を皮下ワクチン接種と比較した。ワクチン接種後8週で、ワクチン群当たり6匹のフクロネズミを、病原性M. bovisを含むエアゾールで抗原投与した。脂質C、K、NおよびF(Kの修正点は10%致死性仔ウシ血清を含有する)。
【0082】
M. bovisによるフクロネズミのエアゾール抗原投与。
フクロネズミに、元々はTaumaranui, New Zealand からのフクロネズミのリンパ節より単離された(5)M. bovis 83/6235を用いて抗原投与した。Grover et al., 1967 により記載されている方法の修正方法を使用して該単離物の単一細胞懸濁液を調製し、−70℃で保存した。これらの懸濁液を調製するために、該細菌細胞を超音波処理により30秒間分散させ、8μ膜フィルターを通じて濾過した。歯槽空間に入るために適当なサイズの飛沫核を生じさせるエアゾールチャンバーを使用して、ケタミンHCl(30ml/kg; Parnell Laboratories, Auckland, New Zealand)の筋肉内注射により麻酔されたフクロネズミに、呼吸経路により感染させた。生存可能なM. bovisの濃度をネブライザ(nebuliser)内で経験的に調整して、フクロネズミ当たり10〜20の生存可能な微生物の吸入と保持を行った(B. Buddle and G. de Lisle, 未公表データ)。この抗原投与用量(challenge dose)は、感染後4週で非ワクチン接種フクロネズミの肺に肉眼で観察される主いぼの数から従前に推定されたものである。類似の手順によりモルモットの肺の再現性のある均一な感染を生じることが示されている(Wiegeshaus et al., 1970; Smith et al., 1970)。バイオハザード設備内での厳格な単離条件の下でエアゾール感染および次の感染フクロネズミの維持と操作を行った。
【0083】
フクロネズミの検死。
抗原投与後56〜57日で全てのフクロネズミを殺し、広範な全体的な死後検査の対象とした。肺を周囲組織から単離し、秤量した。
【0084】
フクロネズミ組織からのM. bovisの単離。
各動物より、肉眼による病巣から重さ約1gの肺および脾臓のサンプルを取り出し、又は病巣が無い場合には、該臓器の予め定めた部分からサンプルを取り出して、マイコバクテリウム単離のために個別に処理した。サンプルを秤量し、Ten-Broeckグラインダー中でホモジェナイズし、0.75%塩化セチルピリジウム中で1時間除染した。サンプルを3500gで20分間遠心分離し、沈降物を1mlの蒸留水中で再懸濁した。TAB中で適当な希釈を行い、0.1ml量の希釈された又は希釈されないサンプルを修正マイコバクテリア7H11寒天プレートに接種した。各希釈物について2つの複製物を調製した。従前に記載されているように(1)培養条件および単離物同定方法を実行した。
【0085】
フクロネズミ末梢血液リンパ球増殖アッセイ。
PPD−BおよびPPD−A(CSL Limited, Parkville, Australia)に対する増殖反応(proliferative responses)を、赤血球除去した全血を用いて測定した。コンカナバリンA(Con A)に対する反応も試験した。簡潔に述べると、1mlのへパリン添加血液を50ml 0.17M Tris−0.16M NH4Cl、pH7.2と37℃で10分間混合し、20℃のPBS中で2回洗浄し、2mMグルタミンおよび2%正常フクロネズミ血清で補充したDMEM組織培養培地中で合計3mlとした。その細胞(200μl)を、50μlのPBS中PPD−B、PPD−AもしくはコンカナバリンAを含有するか又はPBSのみを含有する平底96ウェルプレートに入れた。プレートをエアインキュベータ内の5%CO2 中に72時間置き、1μCi/ウェルの3H−トリチウム標識チミジン(Amersham, UK)でパルスし、更に18時間後に収穫し、Micro Beta Trilux(Wallac, Finland)中で 3Hカウントした。PPDで刺激された3つの培養物からのカウント数/分(cpm)を、培地およびPBSでの3つの培養物からのcpmで割り算することによって、刺激指数(SI)を得た。
【0086】
データの解析
マウスサイトカイン分泌の統計学的有意差を、スチューデントt検定を用いて決定した(GraphPad, San Diego, Calif.)。これらの研究は類似の結果をもって2回行われた。フクロネズミのリンパ球増殖反応のために、3.5よりも大きな刺激指数はバックグラウンドの平均(ワクチン接種前のPPD−Bについての平均SI)よりも大きな少なくとも3の標準偏差を表わすので、これを陽性反応として評価した。種々異なる処理群についてのフクロネズミの体重変化、肺重量、リンパ球芽球発生反応および細菌数を分散の一方向解析により最初に比較した。次に、ダンカンの多重検定(Duncan's multiple range test)を用いて個々の群の平均を比較した。肺および脾臓からのリンパ球増殖反応および細菌数をlog10 変換して解析を行った。統計的目的のために、組織から培養される細菌が存在しない場合には、最低検出可能数の半分(5CFU/臓器)を使用した。
【0087】
結果
A. 配合物脂質の脂肪酸組成。
経口用BCGを配合するのに使用するために選択された脂質を、ガスクロマトグラフィにより分析した。図1は、マウスおよびフクロネズミのワクチン接種試験に使用される3種の脂質の脂肪酸組成を示す。
【0088】
3種の脂質配合物中の脂肪酸の相対比率を図1に示す。HPLCによる脂質の化学分析により、3種の配合物が以下の脂肪酸の混合物からなることが示された。
【0089】
配合物C
89%全脂質(48.5%中性、40.5%極性 − 3%ミリスチン酸、26%パルミチン酸、15%ステアリン酸、40%オレイン酸および6%リノール酸を含んでなる)。
【0090】
配合物K
47%ラウリン酸、20%ミリスチン酸、12%パルミチン酸、12%ステアリン酸および3%オレイン酸。
【0091】
配合物N
ノバルタ(Novarta)B は、分別された植物油の水素添加エステル化混合物ならびに合成トリグリセリド混合物からなる市販の座薬基剤であり、44%ラウリン酸、20%ミリスチン酸、16%パルミチン酸、19%ステアリン酸を含んでなる。
【0092】
B. 配合後のBCG生存度
4℃での保存後の配合BCGの生存度を図2aに示す。16週の期間にわたって、配合物Cおよび配合物Kは高レベルのBCG生存度を維持し、配合物K(52%)に比べ、配合物Cは生存度(98%)を高く保持することを示した。対照的に、配合物NはBCG生存度の累進的損失を示し、16週で97%より多くの生存可能な微生物の損失を生じた。これらの結果は、配合物Nに比べ、配合物Cおよび配合物Kが4℃でのBCG生存度の維持に適していることを示唆する。
【0093】
室温(10〜25℃)での保存後の配合BCGの生存度を図2bに示す。配合物Cおよび配合物Kは高レベルのBCG生存度を維持し、生存度(平均log10 CFU/μg=10)が22日である配合物Kに比べ、配合物Cは40日の長期にわたる生存度(平均log10 CFU/μg=10)の保持を示した。対照的に、配合物Nは12日でBCG生存度(平均log10 CFU/μg=10)の急速な損失を示した。これらの結果は、配合物Nに比べ配合物Cおよび配合物Kが室温でのBCG生存度の維持に適していることを示唆する。
【0094】
C. 配合BCGのマウスにおける免疫原性。
配合M. bovis BCGの経口送達はマウスにおける免疫反応を誘導する。M. bovis BCGの経口送達を受けた全身免疫反応を測定する適当な方法を決定するために、107 CFUの液状配合BCG またはジャム中のM. bovis BCG(非配合M. bovis BCG)の経口送達後8週でのウシPPD誘導脾細胞増殖(LTA)反応、脾臓IL−2反応およびIFN−γ反応を比較した。表1は、LTAアッセイおよびIFN−γアッセイが配合および非配合の経口M. bovis BCGグループ間で有意な差を示したのに対し、IL−2アッセイについては差が有意でないことを示した。結核に対する保護におけるIFN−γの重要性のため、全身免疫反応をモニターするための更なる実験にIFN−γアッセイを用いた。
【0095】
経口送達後のM. bovis BCGの用量の効果を決定するために、ワクチン接種後8週での配合または非配合M. bovis BCGの用量を種々変化させてワクチン接種したマウス中のウシPPDに対する脾臓IFN−γ反応を比較した。図2は、106 CFUのM. bovis BCGによる経口免疫化を受けた配合群において低レベルのIFN−γ(<200pg/ml)が検出されたが、ワクチン群間では有意な差が無かったことを示した。用量を107 CFUに増大させたときに、非配合群におけるIFN−γ反応は低いままであったのに対し、配合M. bovis BCGに対する反応は有意に増大した。同様の差が108 CFUのM. bovis BCGの場合にも見られた。ワクチン用量を109 CFUのBCGに増大させたときに、非配合群においてIFN−γレベルの増大が見られたのに対し、配合群は高いままであった。107 〜109 CFUの範囲のM. bovis BCGの用量では、配合M. bovis BCG群におけるIFN−γ反応は非配合M. bovis BCGのものよりも有意に高かった。非配合M. bovis BCG群において高い用量で見られるIFN−γ反応の増大は、配合M. bovis BCGに比べ、かなり高い用量のM. bovis BCGが免疫反応の誘導に必要とされることを示す。経口M. bovis BCGに対する免疫反応の経時変化を決定するために、M. bovis BCGによる経口または皮下のワクチン接種後2週間の間隔で、脾臓IFN−γ反応を比較した。図3は、皮下ワクチン接種後のIFN−γ反応が4週をピークとして6週および8週で徐々に減少することを示す。これに比べて、配合M. bovis BCGによる経口ワクチン接種後のIFN−γ反応は6週で最初に増大し、ワクチン接種後8週で高いままであった。非配合M. bovis BCGまたは配合剤のみに対するIFN−γ反応は2〜8週で低いままであった。これらの結果は、M. bovis BCGが配合された経口ワクチン接種を受けた免疫反応が、皮下ワクチン接種と比べて遅延するが少なくとも8週まで持続するように見えることを示す。
【0096】
配合M. bovisで経口ワクチン接種されたマウスからの腹膜由来リンパ球が自己マクロファージ内でのM. bovisの増殖を阻害する。
リンパ球媒介エフェクター機構がM. bovisの細胞内増殖を阻害し得るかどうかを決定するために、経口M. bovis BCG配合物でワクチン接種されたマウスからのM. bovis感染マクロファージに対するNPECの添加を行った。マクロファージ内でのM. bovisの増殖は[3H]ウラシル取込みにより決定した。単独マクロファージ内での、又は経口ワクチン接種されたマウスからのNPECと共に同時培養したときのの、M. bovisの増殖を図4に示す。配合または非配合M. bovis BCGで経口ワクチン接種されたマウスあるいは配合剤のみが与えられたマウスから調製されたマクロファージは、M. bovisの増殖を抑制する能力に有意な差を示さなかった。配合M. bovis BCGでワクチン接種されたマウスからのNPECが自己M. bovis感染マクロファージと共に同時培養された場合は、非配合M. bovis BCGまたは配合剤のみでワクチン接種されたマウスからのNPECの同時培養に比べて、[3H]ウラシルカウント数が有意に減少した(P<0.05)。これらの結果は、配合M. bovis BCGで経口ワクチン接種されたマウスからのリンパ球がマクロファージを活性化してM. bovisの細胞内増殖を阻害するようにすることを実証する。生体外(in vitro)でのM. bovisの細胞内増殖の抑制は、宿主内でのM. bovisの蔓延の減少につながる生体内(in vivo)での増殖阻害を反映し得る。
【0097】
配合M. bovis BCGによる経口ワクチン接種は病原性M. bovisによるエアゾール抗原投与に対して保護する。
配合された経口用M. bovis BCGの保護効果を決定するために、マウスに5×107 CFUの配合M. bovis BCGをワクチン接種するか、又は1×106 CFUのM. bovis BCGを皮下ワクチン接種した。非ワクチン接種マウスを対照とした。マウスをワクチン接種後8週でエアゾール経路により病原性M. bovisで抗原投与し、抗原投与後37〜40日で安楽死させた。表2は、皮下M. bovisワクチン接種が肺細菌数を約2.34log減少させ、また脾臓細菌数を1.90log減少させることを示す。これに比べて、配合された経口M. bovis BCGは肺細菌数を約1.0log 減少させ、また脾臓細菌数を1.48log減少させた。表2の結果は、経口配合M. bovis BCGおよび皮下M. bovis BCGが病原性M. bovisによるエアゾール抗原投与に対する著しい保護を誘導するが、肺における皮下M. bovis BCGの保護効果は経口配合M. bovis BCG群の場合よりも大きいことを示した。
【0098】
D. フクロネズミにおける免疫反応および病理学
リンパ球芽球発生反応。
ウシPPDに対する全血リンパ球芽球発生反応に及ぼす配合BCGによる経口ワクチン接種の効果を図5および表3に示す。ワクチン接種後6週で、配合BCG群についてのPPD−Bに対する平均刺激指数(SI)は、非配合BCG群の場合および非ワクチン接種対照群の場合よりも有意に高かった(P<0.05)。M. bovisで抗原投与後4週で、全ての群が20よりも大きなPPD−Bに対する平均SIを示した。これらの結果は、配合BCGの経口送達が、非配合BCGに比べフクロネズミにおいて強い免疫反応を誘導することを示す。
【0099】
更なる実験により、皮下ワクチン接種による4種の経口脂質BCG配合物に対する免疫反応を比較した(図11)。皮下的にワクチン接種されたフクロネズミは、ワクチン接種後4週をピークとし(平均SI 42.5)8週でSI=30まで徐々に低下する強いLTA反応を示した。対照的に、脂質N配合経口BCGは8週のワクチン期間の間LTA反応を誘導しなかった。脂質C、脂質Kおよび脂質Fに配合された経口BCGは、ワクチン接種後4週で弱いが(SI=1〜7)ワクチン接種後8週まで累進的に増大し持続する(SI=15〜22)LTA反応を誘導した。これらの結果は、経口ワクチン接種に対する全身免疫反応が皮下ワクチン接種の場合に比べて遅延するが、長く持続し得ることを示す。配合物Nは、非ワクチン接種フクロネズミの場合に見られるよりも高いLTA反応を誘導せず、またM. bovisによるエアゾール抗原投与に対する保護も行わなかった(表4参照)。経口BCGを配合するために用いられる脂質の種類が結核に対する保護にとって重要であることを示した。
【0100】
臨床知見。
異なる群の間での抗原投与と検死の間の平均体重の変化を図6に示す。配合BCGでワクチン接種されたフクロネズミの平均体重は、抗原投与と検死の間で0.02kg増加した。対照的に、非配合BCG群および非ワクチン接種群については、平均体重がこの間にそれぞれ0.35kgおよび0.23kg減少した。しかしながら、これらの差は統計学的に有意でなかった。
【0101】
4種の経口脂質BCG配合物と皮下ワクチン接種とを比較する更なる実験(表4)において、抗原投与と検死の間での平均体重変化が、非ワクチン接種群(0.147kg)に比べ、皮下ワクチン接種群(平均体重損失0.012kg)および経口脂質BCG群の1つ(F群)(0.035kg)については有意に減少した。比較して、残りの経口BCG群についての平均体重損失は、0.060kg(脂質C)、0.067kg(脂質K)および0.122kg(脂質K)であった。ワクチン接種に対する免疫反応を示さなかったフクロネズミ(すなわち非ワクチン接種群および脂質N群)は、反応したフクロネズミに比べて大きな体重損失を示した。
【0102】
病理学。
抗原投与した動物の全ての肺において肉眼による病巣を観察した。結核性肺炎の程度は肺重量から推定することができる(図7)。高い肺重量は広範な結核性肺炎に関連する(3)(4)。肺重量差を体重変動で標準化するために、各動物の平均肺重量を体重と比較し、比で表わした。配合BCGでワクチン接種された動物の平均肺重量と体重の比は1.62であった。比較して、非配合BCG群および非ワクチン接種対照群の平均肺重量と体重の比はそれぞれ2.86および3.0であった。配合BCGでワクチン接種したフクロネズミの平均肺重量と体重の比は、非配合BCG群および非ワクチン接種対照群とは有意な差がある(P<0.05)。一般には、肺の病巣は、その病巣の中央に黄色の壊死領域をもった葉様硬化または小硬化領域である。最も広範な肺病巣をもった動物では肥大した気管支リンパ節が観察される。
【0103】
4種の経口脂質BCG配合物と皮下ワクチン接種とを比較した第2の実験(表4)において、ワクチン群の間で平均肺重量と体重の比に有意差は無かった。しかしながら、ワクチン接種に対する免疫反応を示さなかったフクロネズミ(すなわち非ワクチン接種群および脂質N群)は、反応したフクロネズミに比べて高い肺重量を示した。
【0104】
細菌学。
マイコバクテリウム・ボービス(Mycobacterium bovis)をM. bovisで抗原投与したフクロネズミの肺および脾臓から単離した。異なる群について肺および脾臓から単離された平均M. bovis数を図8および図9に示す。非配合群および配合BCG群についての平均肺細菌数は、非ワクチン接種対照群のものよりも有意に低かった(P<0.05)。配合BCG群についての平均脾臓細菌数は、非配合BCG群よりも約10倍少なく、また非ワクチン接種群よりも約40倍少なかった。配合BCG群についての平均脾臓細菌数は、非配合BCG群および非ワクチン接種対照群のものよりも有意に低かった(P<0.05)。
【0105】
4種の経口脂質BCG配合物と皮下ワクチン接種とを比較した第2の実験(表4)において、経口ワクチン接種群のうちの3群および皮下ワクチン接種群について脾臓細菌数は非ワクチン接種群と比べて有意に低かった(P<0.05)。残りの経口脂質BCG群(脂質N)は脾臓細菌数の有意な低下を示さなかった。肺細菌数を比較した場合には、これらの群の間で有意差が見られなかった。一般に、ワクチン接種に対する免疫反応を示さなかったフクロネズミ(すなわち非ワクチン接種群および脂質N群)は反応したフクロネズミに比べて高い平均脾臓および肺細菌数を示した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0110】
産業上利用
抗原性組成物には、安定なマトリックス中に抗原を維持し、マトリクス中に抗原が均一に分散された脂質配合物が含まれる。この抗原性組成物は、一定用量の抗原の投与を促進し、高用量投与(dose dumping)および非効率な低用量投与を回避する。脂質配合物は、本出願人により、その中に含まれる生きた微生物の生存度および保存を改善することも示されている。脂質配合物はまた、胃酸および酵素による分解から抗原および生きた微生物を保護する。脂質系配合物における微生物の生存度の損失は、凍結乾燥製品について報告されているものよりも著しく低い。配合物の疎水的性質のために、劣化することなく、湿性または湿気条件下での保存も達成することができる。
【0111】
ワクチン製剤における微生物、特に細菌、の生存度は、強くて長期間持続する保護性免疫を誘導するために重要であることが実証されている。このことは本発明の組成物を使用することによって達成し得る。本発明の組成物はまた、調製し易く、生産費用が廉価で、針と注射器の使用を避けることができる点で消費者の受け入れ易さと安全性の増大が認められる。
【0112】
本発明の組成物は、皮下を含め多様な経路で投与し得るが、特に経口送達に適している。本出願人は、組成物における脂質配合物が微生物の生存度およびその構成要素である抗原を胃での分解から保護することができ、生きた微生物が免疫系に対する処理、複製および提示のために胃腸粘膜により吸収されることを可能とすることを見出した。さらに、本出願人は、投与される用量が従前に経口投与について予期されていた(8)よりも少ない用量で効果的となり得ることを決定している。
【0113】
例えばフクロネズミ等のような野生動物のワクチン接種には、抗原が粘膜ルートにより送達される必要がある。経口食餌ワクチンはそれ故に実用的で費用対効果に優れた送達の選択肢となる。ヒトの経口ワクチン接種も費用対効果に優れたワクチン接種方法であり、使用者の支持を受け易い。
【0114】
例えば皮下等の他の経路で投与される場合に、脂質配合物は、攻撃、例えばマクロファージによる攻撃から保護をも与える。皮下投与または注射による投与の場合に、脂質デポー配合物は、持続した放出をも可能として、感染プロセスを模倣し、そして免疫反応の増大を促進する。
【0115】
本発明の組成物が、多数の高コストの注射用ワクチン製剤を上回る実質的な利点を与えることが理解されるであろう。
【0116】
本発明の組成物は、広範囲の感染性微生物、例えば胃腸および呼吸系の病原、特に結核に対する免疫反応を誘導するのに効果的である。
【0117】
本発明の組成物は、広範囲の抗原に対するワクチン送達システムとして、または抗原性分子の同時送達または共役送達、特にその用量または抗原性の理由が低い免疫原性である抗原性分子の同時送達または共役送達にも使用し得る。本発明の組成物はワクチンアジュバントとしても有用である。
【0118】
本説明が例示のみのために与えられ、本発明の範囲がこれに限定されないことが当業者に更に理解されるであろう。
【0119】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)48.5%の中性脂質、および3%のミリスチン酸、26%のパルミチン酸、15%のステアリン酸、40%のオレイン酸および6%のリノール酸を含む40.5%の極性脂質、を含む医薬として許容される脂質配合物、
(ii)47%のラウリン酸、20%のミリスチン酸、12%のパルミチン酸、12%のステアリン酸および3%のオレイン酸を含む医薬として許容される脂質配合物、又は
(iii)44%のラウリン酸、20%のミリスチン酸、16%のパルミチン酸および19%ステアリン酸を含む医薬として許容される脂質配合物、並びに
(iv)固形またはペースト様の脂質マトリックスの全体に均一に分配されている少なくとも1種の抗原性成分
を含む、抗原性組成物。
【請求項2】
追加の抗原性成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記追加の抗原性成分が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド成分を有する因子あるいはこれらの混合物であって、前記成分が10〜1000μg/脂質配合物gの量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗原性成分が、菌類、原生動物、細菌類およびウイルス類からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原性成分が、ウイルス類由来である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウイルスがHIVまたはSIVである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗原性成分が、細菌類由来である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記細菌が、ブルセラ属(Brucella)、炭疽菌(Anthrax)およびマイコバクテリウム(Mycobacterium)属より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記細菌がマイコバクテリウムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記マイコバクテリウムが、マイコバクテリウム・ツベロクロシス複合体(マイコバクテリウム・ツベロクロシス(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)、マイコバクテリウム・アフリカナム(M. africanum)およびマイコバクテリウム・ミクロティ(M. microtii)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・アビウム−イントラセルラール複合体(マイコバクテリウム・イントラセルラール(M. intracellulare)およびマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・パラツベロクロシス(M. paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ワッカ(M. vaccae)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M. smegmatis)、マイコバクテリウム・チェロナ(M. chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(M. fortuitum)、マイコバクテリウム・カンサイ(M. kansaii)、マイコバクテリウム・レプラ(M. leprae)、マイコバクテリウム・マリナム(M. marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M. ulcerans)、マイコバクテリウム・シミア(M. simiae)、マイコバクテリウム・ハエモフィラム(M. haemophilum)、マイコバクテリウム・マルモエンス(M. malmoense)、マイコバクテリウム・シモイデイ(M. shimoidei)、マイコバクテリウム・ガストリ(M. gastri)、マイコバクテリウム・テラ(M. terrae)複合体、およびマイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム(M. nonchromogenicum)、並びにこれらの菌株の機能的に等価な変異株、天然または遺伝子工学による純株、突然変異株および組換え体、およびこれらの抗原性成分より選択される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記マイコバクテリウムが、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記マイコバクテリウム・ボービスが、カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記マイコバクテリウム・ボービスが、デーニッシュ(Danish)1311株、83/6235、パスツール(Pasteur) 1173P2、グラクソ(Glaxo)1077、ジャパニーズ(Japanese) 172、プラハ(Prague)、ロシアン(Russian)、ブラジリアン(Brazilian)、デーニッシュ(Danish)1331、コペンハーゲン(Copenhagen)、コンノート(Connaught)、マイコバクテリウム・ボービスの機能的に等価な変異株および他の弱毒化菌株、これらの菌株の純株(clones)、突然変異株および組換え体、並びにこれらの抗原性成分からなる群より選ばれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原性成分がタンパク質またはペプチドであり、該タンパク質が免疫避妊性タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記タンパク質またはペプチドが低い免疫原性である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
水性成分を含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
非経口投与用、皮下投与用または経口投与用に配合されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
1以上の香味料、誘引剤または着臭剤を更に含む経口投与用に配合されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC)を更に含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
ワクチンである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
ワクチンアジュバントである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、保護的にコーティングされている、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記保護コーティングがゼラチンである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
非ヒト動物を免疫するための、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
非ヒト動物における粘膜免疫応答を刺激するための、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記脂質配合物が、オリーブ油またはココナッツ油を含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記オリーブ油またはココナッツ油が、水素添加されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記非ヒト動物が、ウシ、シカ、ヒツジ、アナグマまたはフクロネズミである、請求項24〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項1】
(i)48.5%の中性脂質、および3%のミリスチン酸、26%のパルミチン酸、15%のステアリン酸、40%のオレイン酸および6%のリノール酸を含む40.5%の極性脂質、を含む医薬として許容される脂質配合物、
(ii)47%のラウリン酸、20%のミリスチン酸、12%のパルミチン酸、12%のステアリン酸および3%のオレイン酸を含む医薬として許容される脂質配合物、又は
(iii)44%のラウリン酸、20%のミリスチン酸、16%のパルミチン酸および19%ステアリン酸を含む医薬として許容される脂質配合物、並びに
(iv)固形またはペースト様の脂質マトリックスの全体に均一に分配されている少なくとも1種の抗原性成分
を含む、抗原性組成物。
【請求項2】
追加の抗原性成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記追加の抗原性成分が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド成分を有する因子あるいはこれらの混合物であって、前記成分が10〜1000μg/脂質配合物gの量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗原性成分が、菌類、原生動物、細菌類およびウイルス類からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原性成分が、ウイルス類由来である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウイルスがHIVまたはSIVである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗原性成分が、細菌類由来である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記細菌が、ブルセラ属(Brucella)、炭疽菌(Anthrax)およびマイコバクテリウム(Mycobacterium)属より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記細菌がマイコバクテリウムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記マイコバクテリウムが、マイコバクテリウム・ツベロクロシス複合体(マイコバクテリウム・ツベロクロシス(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)、マイコバクテリウム・アフリカナム(M. africanum)およびマイコバクテリウム・ミクロティ(M. microtii)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・アビウム−イントラセルラール複合体(マイコバクテリウム・イントラセルラール(M. intracellulare)およびマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)を含んでなるもの)、マイコバクテリウム・パラツベロクロシス(M. paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ワッカ(M. vaccae)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M. smegmatis)、マイコバクテリウム・チェロナ(M. chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(M. fortuitum)、マイコバクテリウム・カンサイ(M. kansaii)、マイコバクテリウム・レプラ(M. leprae)、マイコバクテリウム・マリナム(M. marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M. ulcerans)、マイコバクテリウム・シミア(M. simiae)、マイコバクテリウム・ハエモフィラム(M. haemophilum)、マイコバクテリウム・マルモエンス(M. malmoense)、マイコバクテリウム・シモイデイ(M. shimoidei)、マイコバクテリウム・ガストリ(M. gastri)、マイコバクテリウム・テラ(M. terrae)複合体、およびマイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム(M. nonchromogenicum)、並びにこれらの菌株の機能的に等価な変異株、天然または遺伝子工学による純株、突然変異株および組換え体、およびこれらの抗原性成分より選択される、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記マイコバクテリウムが、マイコバクテリウム・ボービス(M. bovis)である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記マイコバクテリウム・ボービスが、カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記マイコバクテリウム・ボービスが、デーニッシュ(Danish)1311株、83/6235、パスツール(Pasteur) 1173P2、グラクソ(Glaxo)1077、ジャパニーズ(Japanese) 172、プラハ(Prague)、ロシアン(Russian)、ブラジリアン(Brazilian)、デーニッシュ(Danish)1331、コペンハーゲン(Copenhagen)、コンノート(Connaught)、マイコバクテリウム・ボービスの機能的に等価な変異株および他の弱毒化菌株、これらの菌株の純株(clones)、突然変異株および組換え体、並びにこれらの抗原性成分からなる群より選ばれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原性成分がタンパク質またはペプチドであり、該タンパク質が免疫避妊性タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記タンパク質またはペプチドが低い免疫原性である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
水性成分を含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
非経口投与用、皮下投与用または経口投与用に配合されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
1以上の香味料、誘引剤または着臭剤を更に含む経口投与用に配合されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC)を更に含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
ワクチンである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
ワクチンアジュバントである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、保護的にコーティングされている、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記保護コーティングがゼラチンである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
非ヒト動物を免疫するための、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
非ヒト動物における粘膜免疫応答を刺激するための、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記脂質配合物が、オリーブ油またはココナッツ油を含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記オリーブ油またはココナッツ油が、水素添加されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記非ヒト動物が、ウシ、シカ、ヒツジ、アナグマまたはフクロネズミである、請求項24〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−248240(P2010−248240A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157213(P2010−157213)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2003−515260(P2003−515260)の分割
【原出願日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願人】(504031665)オタゴ イノベイション リミティド (1)
【出願人】(504031654)アニマル ヘルス ボード,インコーポレイティド (1)
【出願人】(503012247)アグリサーチ リミティド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2003−515260(P2003−515260)の分割
【原出願日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願人】(504031665)オタゴ イノベイション リミティド (1)
【出願人】(504031654)アニマル ヘルス ボード,インコーポレイティド (1)
【出願人】(503012247)アグリサーチ リミティド (1)
【Fターム(参考)】
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