説明

抗原特異的細胞傷害性T細胞の調製キット

【課題】抗原特異的CTLの調製における操作性、経済性及び安全性の更なる改善を図ること。
【解決手段】抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導する第1工程用の要素として、注入容器に収容された培地、密封型培養容器などを備え、抗原提示用活性化T細胞を調製する第2工程用の要素として、注入容器に収容された培地、密封型培養容器などを備え、抗原特異的細胞傷害性T細胞を増殖させる第3工程用の要素として、注入容器に収容された培地、密封型分離用容器、密封型培養容器などを備えた、抗原特異的細胞傷害性T細胞調製法に用いる調製キットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗原特異的な細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:以下、「CTL」とも呼ぶ)の調製に利用されるキット及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原特異的細胞傷害性T細胞療法(CTL療法)は次世代の免疫療法として期待されている。CTL療法では生体外で抗原特異的CTLを調製することになる。従来、抗原特異的CTLの調製には複雑且つ煩雑な操作を伴うことから、開放系培養システムに頼らざるを得なかった。そのため、医療用グレードの培養細胞加工センター(CPC)内にクラス100レベルの清浄環境を保つ施設を整備、管理しなければならず、多大な費用を必要としていた。また、従来の方法では種々のサイトカインを使用することから、調製時に要する費用も相当なものとなる。さらに、クラス100レベルに保った施設のなかで調製するとはいえ、開放系による培養は安全面でのリスクを伴う。このように、従来の抗原特異的CTL調製法では操作性、経済性及び安全性が実用化の大きな妨げとなり、限られた施設でのみ実施可能であった。
【0003】
尚、本出願人の一人は先の特許出願(特許文献1)において、簡便性と安全性を兼ね備え、しかも低コストで実施可能なウイルス特異的CTL培養システムを提案した。当該培養システムは、抗原特異的な細胞傷害性T細胞の誘導や増殖に樹状細胞を利用しないこと、誘導したCTLの単離にCD137抗原を使用することを主な特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/023786号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案した上記培養システムは、従来のシステムに比較すれば飛躍的な進歩をもたらす。しかしながら、各工程における細胞の取り扱いについては特有の手段・手法を採用するものではなく、操作性の点で改善の余地を残す。また、開放系ではなく閉鎖系で培養することの重要性を指摘するものの具体的な対策を提供しない。
そこで本発明は、抗原特異的CTLの調製における操作性、経済性及び安全性の更なる改善を図り、CTL療法の実用化を促すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は先の特許出願(特許文献1)で報告した培養システムを基礎とし、上記課題を解決すべく検討を重ねた。その結果、各工程を見直すとともに培地や培養容器等の形態、取り扱い方法等に独自の工夫を施すことによって、抗原特異的細胞傷害性T細胞の調製に極めて有用なキットの構成を見出すに至った。このように本発明者らの鋭意検討の末に本発明は完成されたものであり、次の通りである。
[1]抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導する第1工程と、抗原提示用活性化T細胞を調製する第2工程と、前記第1工程によって誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞と前記第2工程によって調製された抗原提示用活性化T細胞を用いて抗原特異的細胞傷害性T細胞を増殖させる第3工程とを含む抗原特異的細胞傷害性T細胞調製法に用いる調製キットであって、
前記第1工程用の構成要素として、
(1−1)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地と、
(1−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地と、
(1−3)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた密封型培養容器と、を備え、
前記第2工程用の構成要素として、
(2−1)注入容器に収容された抗CD3抗体含有培地と、
(2−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地と、
(2−3)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地と、
(2−4)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗CD3抗体含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第4ポートと、調製された抗原提示用活性化T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器と、を備え、
前記第3工程用の構成要素として、
(3−1)注入容器に収容された抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地と、
(3−2)注入容器に収容された抗原提示用活性化T細胞分離用培地と、
(3−3)誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた第1密封型分離容器と、
(3−4)調製された抗原提示用活性化T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原提示用活性化T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原提示用活性化T細胞移出用の第4ポートとを備えた第2密封型分離容器と、
(3−5)少なくとも二つの、注入容器に収容された増殖用培地であって、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する増殖用培地と、
(3−6)分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、分離後の抗原提示細胞移入用の第2ポートと、別途調製される血清又は血漿注入用の第3ポートと、前記増殖用培地の数と少なくとも同数の、前記増殖用培地注入用の第4ポートと、増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器と、を備える、調製キット。
[2]前記(1−2)のIL-2含有培地の数が3〜5である、[1]に記載の調製キット。
[3]前記(2−2)のIL-2含有培地の数が3〜6である、[1]又は[2]に記載の調製キット。
[4]前記(3−1)の抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地と前記(3−2)の抗原提示用活性化T細胞分離用培地がIL-2含有培地である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の調製キット。
[5]前記(1−3)の密封型培養容器の第1ポート〜第3ポート、前記(2−4)の密封型培養容器の第1ポート〜第4ポート、並びに前記(3−6)の密封型培養容器の第3ポート及び第4ポートのそれぞれについて2種類のキャップが備えられ、該2種類のキャップは、未使用時に装着されているキャップと、該キャップと識別可能なキャップであって、使用後に装着されるキャップとからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製キット。
[6]前記(1−3)の密封型培養容器の第3ポート、前記(2−4)の密封型培養容器の第3ポート、及び前記(3−6)の密封型培養容器の第4ポートがそれぞれ分岐型ポートである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の調製キット。
[7]前記(1−3)の密封型培養容器、前記(2−4)の密封型培養容器、及び前記(3−6)の密封型培養容器がそれぞれ予備用ポートを備える、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の調製キット。
[8]容器に収容された末梢血単核球調製用培地を更に備える、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の調製キット。
[9]末梢血単核球調製用の容器を更に備える、[8]に記載の調製キット。
[10]第3工程によって増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞を分離するための分離容器を更に備える、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の調製キット。
[11]前記分離容器を用いて分離した細胞を凍結保存するための保存容器を更に備える、[10]に記載の調製キット。
[12]抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導する第1工程と、抗原提示細胞を調製する第2工程と、前記第1工程によって誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞と前記第2工程によって調製された抗原提示細胞を用いて抗原特異的細胞傷害性T細胞を増殖させる第3工程とを含む抗原特異的細胞傷害性T細胞調製法に用いる調製キットであって、
前記第1工程用の構成要素として、
(1−1)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地と、
(1−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地と、
(1−3)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた密封型培養容器と、を備え、
前記第2工程用の構成要素として、容器に収容された凍結乾燥状態の抗原提示細胞を備え、
前記第3工程用の構成要素として、
(3−1)注入容器に収容された抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地と、
(3−2)誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた第1密封型分離容器と、
(3−3)少なくとも二つの、注入容器に収容された増殖用培地であって、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する増殖用培地と、
(3−4)分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、調製した抗原提示細胞移入用の第2ポートと、別途調製される血清又は血漿注入用の第3ポートと、前記増殖用培地の数と少なくとも同数の、前記増殖用培地注入用の第4ポートと、増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器と、を備える、調製キット。
[13][1]〜[12]のいずれか一項に記載の調製キットを用いることを特徴とする、抗原特異的細胞傷害性T細胞の調製法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調製キットによれば簡便な操作で抗原特異的細胞傷害性T細胞を調製できる。また、調製に要する時間も非常に短くなる。一方、本発明の調製キットは全ての培養工程を閉鎖系で行うことを可能にする。これによって安全性の向上がもたらされる。高い安全性が確保できることによって、必要な設備のレベルが低下し、低コストで抗原特異的細胞傷害性T細胞を調製可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原特異的CTLの誘導工程に使用する構成要素が示される。
【図2】抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原提示細胞の調製工程に使用する構成要素が示される。
【図3】抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原特異的CTLの増殖工程に使用する構成要素が示される。
【図4】抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原特異的CTLの増殖工程に使用する構成要素が示される。
【図5】細胞の移入・移出用チューブ及び分注用チューブを示す図。
【図6】抗原特異的CTL誘導工程を示すフロー図。
【図7】抗原提示細胞調製工程を示すフロー図。
【図8】抗原特異的CTL増殖工程を示すフロー図。
【図9】抗原特異的CTL増殖工程以降の各工程を示すフロー図。
【図10】フローサイトメトリー解析の結果。図6(抗原特異的CTL誘導工程のフロー)に示す0日目、7日目及び14日目、並びに図8(抗原特異的CTL増殖工程のフロー)に示す21日目にサンプリングし、フローサイトメトリーで解析した(上段)。下段は総細胞数とテトラマー陽性細胞数の経時変化を示すグラフである。
【図11】フローサイトメトリー解析の結果。図6(抗原特異的CTL誘導工程のフロー)に示す0日目、7日目及び14日目、図8(抗原特異的CTL増殖工程のフロー)に示す21日目、及び更に4日間増殖させた時点(25日目)にサンプリングし、フローサイトメトリーで解析した(上段)。下段左は総細胞数とテトラマー陽性細胞数の経時変化を示すグラフである。下段右は細胞障害活性試験の結果を示すグラフである。細胞障害活性試験では、ドナーから調製したEBV(エプスタインバールウイルス)感染LCL(リンパ芽球細胞)を標的細胞とし、これにエフェクター細胞(テトラマー陽性細胞)を所定の比率(エフェクター細胞/標的細胞=10)で混合した後、各濃度で抗原ペプチドを添加してインキュベートした。細胞の溶解に伴い検出される51Crの量から細胞障害活性を評価した。抗原ペプチドとしてQYD(HLA-A*2402拘束性CMVpp65エピトープペプチド)とTYG(HLA-A*2402拘束性EBV LMP2aエピトープペプチド)(コントロール)を使用した。
【図12】フローサイトメトリー解析の結果。図6(抗原特異的CTL誘導工程のフロー)に示す0日目、7日目及び14日目、図8(抗原特異的CTL増殖工程のフロー)に示す21日目、及び更に3日間増殖させた時点(24日目)にサンプリングし、フローサイトメトリーで解析した(上段)。下段は総細胞数とテトラマー陽性細胞数の経時変化を示すグラフである。
【図13】フローサイトメトリー解析の結果。図6(抗原特異的CTL誘導工程のフロー)に示す0日目、7日目及び14日目、図8(抗原特異的CTL増殖工程のフロー)に示す21日目、及び更に7日間増殖させた時点(28日目)にサンプリングし、フローサイトメトリーで解析した(上段)。下段左は総細胞数とテトラマー陽性細胞数の経時変化を示すグラフである。下段右は細胞障害活性試験の結果を示すグラフである。細胞障害活性試験では、ドナーから調製したEBV(エプスタインバールウイルス)感染LCL(リンパ芽球細胞)を標的細胞とし、これにエフェクター細胞(テトラマー陽性細胞)を所定の比率(エフェクター細胞/標的細胞=10)で混合した後、各濃度で抗原ペプチドを添加してインキュベートした。細胞の溶解に伴い検出される51Crの量から細胞障害活性を評価した。抗原ペプチドとしてQYD(HLA-A*2402拘束性CMVpp65エピトープペプチド)とTYG(HLA-A*2402拘束性EBV LMP2aエピトープペプチド)(コントロール)を使用した。
【図14】フローサイトメトリー解析の結果。図6(抗原特異的CTL誘導工程のフロー)に示す0日目、7日目及び14日目、図8(抗原特異的CTL増殖工程のフロー)に示す21日目、及び更に4日間増殖させた時点(25日目)にサンプリングし、フローサイトメトリーで解析した(上段)。下段左は総細胞数とテトラマー陽性細胞数の経時変化を示すグラフである。下段右は細胞障害活性試験の結果を示すグラフである。細胞障害活性試験では、ドナーから調製したEBV(エプスタインバールウイルス)感染LCL(リンパ芽球細胞)を標的細胞とし、これにエフェクター細胞(テトラマー陽性細胞)を所定の比率(エフェクター細胞/標的細胞=10)で混合した後、各濃度で抗原ペプチドを添加してインキュベートした。細胞の溶解に伴い検出される51Crの量から細胞障害活性を評価した。抗原ペプチドとしてNLV(HLA-A*0201拘束性CMVpp65エピトープペプチド)とCLG(HLA-A*0201拘束性EBV LMP2aエピトープペプチド)(コントロール)を使用した。
【図15】凍結乾燥状態の抗原提示細胞を利用した抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原特異的CTLの誘導工程に使用する構成要素が示される。
【図16】凍結乾燥状態の抗原提示細胞を利用した抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原提示細胞の調製工程に使用する構成要素が示される。
【図17】凍結乾燥状態の抗原提示細胞を利用した抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原特異的CTLの増殖工程に使用する構成要素が示される。
【図18】凍結乾燥状態の抗原提示細胞を利用した抗原特異的CTL調製キットの一例。キットの構成要素の内、抗原特異的CTLの増殖工程に使用する構成要素が示される。
【図19】抗原提示細胞を凍結乾燥する際の条件の例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の局面は、抗原特異的細胞傷害性T細胞(抗原特異的CTL)の調製に用いる調製キットに関する。「抗原特異的CTL」とは、特定の抗原に対する特異性の高いCTLである。抗原特異的CTLは、対応する抗原を発現ないし提示する細胞を特異的に認識し、細胞傷害活性を発揮する。抗原特異的CTLは、生体の有する防御機構によって生体内でも誘導されるが、本発明においては「抗原特異的CTL」は生体外で誘導されることになる。
【0010】
本発明の調製キットは抗原特異的CTLの誘導(第1工程)、抗原提示用活性化T細胞の調製(第2工程)、及び抗原特異的CTLの増殖(第3工程)を実施するために必要な要素を具備する。工程毎、本発明の調製キットに含まれる要素を説明する。
【0011】
(第1工程:CTLの誘導)
この工程では末梢血単核球より、特定の抗原に特異的なCTLを誘導する。当該工程の実施のため、本発明の調製キットは少なくとも以下の要素(1−1)〜(1−3)を含む。
(1−1)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地
(1−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地
(1−3)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた密封型培養容器
【0012】
以下、各要素の詳細について説明する。尚、以下の説明において、特に言及のない限り、「抗原ペプチド含有培地」は「注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地」を意味する。同様に「IL-2含有培地」は「注入容器に収容されたIL-2含有培地」を意味する。
【0013】
(1−1)抗原ペプチド含有培地
注入容器の形態は、培地を保持できるとともに、収容物である培地を後述の密封型培養容器に注入可能である限り特に限定されない。例えば密栓可能な注射器(シリンジ)を注入容器として利用すればよい。
【0014】
注入容器には抗原ペプチド含有培地が収容されている。抗原ペプチド含有培地とは、目的に合わせて特定の抗原ペプチドを含有させた培地である。抗原ペプチドとしては、ウイルス(サイトメガロウイルス、エプスタインバールウイルス、アデノウイルス等)、腫瘍抗原(WT1、hTERT、MN/CA9、gp100、MART1、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、MAGE1、MAGE2、MAGE3、MAGE6、NY-ESO-1、MUM1、BAGE、GAGE1、GAGE2、CEA、PSA等)のHLA結合ペプチドを例示することができる。通常は1種類の抗原ペプチドのみが用いられるが、2種類以上の抗原ペプチドの使用を妨げるものではない。T細胞の培養に適した培地(例えばRPMI1640、AIM-V、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified
eagle medium)等)に抗原ペプチドを添加することによって抗原ペプチド含有培地を調製することができる。血清、血漿、血清アルブミン、抗生物質、L-glutamine等も添加することにしてもよい。培地中の抗原ペプチドの量は例えば0.01μg/mL〜100μg/mLである。抗原ペプチド含有培地の量については例えば5 mL〜50 mLとする。抗原ペプチド含有培地の量に合わせて注入容器の大きさを決定すればよい。例えば、5mLの抗原ペプチド含有培地を用いるのであれば5mL用の注射器を注入容器として採用すればよい。
【0015】
(1−2)IL-2含有培地
注入容器の構成は(1−1)の場合と同様であるのでその説明を省略する。注入容器にはIL-2含有培地が収容されている。T細胞の培養に適した培地(例えばRPMI1640、AIM-V、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified eagle medium)、X-VIVO(BioWhittaker社)、ALyS505N((株)細胞科学研究所)等)にIL-2を添加することによってIL-2含有培地を調製することができる。血清、血漿、血清アルブミン、抗生物質、L-glutamine等も添加することにしてもよい。IL-2として組換えヒトIL-2(例えばChiron社が提供するPROLEUKIN)を用いることが好ましい。IL-2の含量は例えば10 IU/mL〜1,000IU/mLである。
【0016】
本発明では、注入容器に収容されたIL-2含有培地を少なくとも二つ用いる。好ましくは、IL-2含有培地の数を3以上とする。具体的には例えばIL-2含有培地の数を3〜5とする。IL-2含有培地の数が増えれば、CTL誘導工程において培地を追加できる回数が増加する。これによって誘導効率の向上及び/又は誘導される細胞数の増加が図られる。
【0017】
培地組成(IL-2の含有量やその他の成分の含有量など)や液量などが全てのIL-2含有培地について統一されている必要はない。例えば、液量が少ないIL-2含有培地(例えば10mL)と液量が多いIL-2含有培地(例えば20mL)を組み合わせたり、IL-2含量が少ないIL-2含有培地(例えば100 IU/mL)とIL-2含量が多いIL-2含有培地(例えば1,000 IU/mL)を組み合わせたりするように、様々な組合せが可能である。前者の組合せの場合、操作性及び効率性を考慮し、液量が少ないIL-2含有培地の数を1とし、液量が多いIL-2含有培地の数を2〜4とするとよい。尚、IL-2含有培地の一部を予備用として用いることにしてもよい。
【0018】
(1−3)密封型培養容器
密封型培養容器は少なくとも4種類のポート(第1〜第4ポート)を備える。第1ポートは、別途調製される末梢血単核球の注入用ポートである。同様に、第2ポートは抗原ペプチド含有培地の注入用ポートであり、第3ポートはIL-2含有培地の注入用ポートであり、第4ポートは誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の注入用ポートである。
【0019】
第2ポートについては、IL-2含有培地の数と少なくとも同数、備えられる。即ち、第2ポートの数をIL-2含有培地の数と同じ又はそれ以上とする。IL-2含有培地の数よりも多い数の第2ポートを設けた場合、一部のポートを予備のポートとして利用できる。第1ポート、第3ポート及び第4ポートの数は原則として1である。但し、操作ミスに対応すべく予備ポートを設けることにしてもよい。予備ポートはポート毎に又は二つ以上のポート(例えば第2ポートと第3ポート)に共通なものとして設けることができる。
【0020】
各ポートの形態は特に限定されない。例えば、ルアーロックタイプ、針刺しポート又は膜チューブ等の形態を採用できる。中でもルアーロックタイプのポートを採用することが好ましい。確実な固定により液漏れを防止できるからである。全てのポートが同一の形態である必要はない。例えば、第1ポートを注射針による注入が可能なポート(例えばゴム等の弾性体からなる注入口を有するもの)とし、その他のポートをルアーロックタイプのポートとする。好ましい一形態では全てのポートをルアーロックタイプとする。当該構成によれば各注入操作における液漏れを防止できるとともに、操作方法が共通化されることから操作性が向上する。
【0021】
第1〜第4ポートの一部又は全部を分岐型ポートにしてもよい。分岐型ポートを採用するとポートと容器本体の接続部の数が少なくなり、構造が簡素化する。従って、製造及び取り扱いが容易となり、加えて使用時の不具合の発生も防止できる。このように、分岐型ポートを利用することは、密封型容器において相当数のポートを備える必要がある本発明において有利な構成である。
【0022】
分岐型ポートの分岐数は特に限定されない。例えば分岐数が2〜4の分岐型ポートを用いることができる。好ましくは、少なくともIL-2含有培地(1−2)用の第3ポートを分岐型ポートにする。尚、本明細書では、分岐型ポートの場合、分岐の数をポート数とみなす。例えば、3分岐ポートは3個のポートとみなす。
【0023】
本発明の密封型培養容器における特有の構成は各ポートである。従って、本発明の密封型培養容器の構成は、各ポートに係る部分を除いて、公知の構成(例えば細胞培養に利用される各種バッグ)に準じればよい。取り扱いが容易であること等の理由から、柔軟な材質からなるバッグの形態とすることが好ましい。
【0024】
(第2工程:抗原提示用活性化T細胞の調製)
この工程では末梢血単核球より、抗原提示用活性化T細胞を調製する。当該工程の実施のため、本発明の調製キットは少なくとも以下の要素(2−1)〜(2−4)を含む。尚、「抗原提示用活性化T細胞」とは、末梢血単核球に対して特定の刺激を加えることによって細胞表面に副刺激因子を発現する細胞であって、抗原特異的CTLの増殖を促す抗原提示細胞として機能する細胞である。本発明の調製キットを用いた場合、抗CD3抗体の使用によって抗原提示用活性化T細胞が調製されることになる。尚、説明の便宜上、以下では「抗原提示用活性化T細胞」を「抗原提示細胞」と略称する。
(2−1)注入容器に収容された抗CD3抗体含有培地
(2−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地
(2−3)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地
(2−4)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗CD3抗体含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、前記抗原ペプチド注入用の第4ポートと、調製された抗原提示用活性化T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器
【0025】
以下、各要素の詳細について説明するが、特に言及しない事項(注入容器の構成や、ポートに係る部分を除く密封型培養容器の構成など)については第1工程に使用される対応する要素と同様であるため、そこでの説明を援用する。また、以下の説明において、特に言及のない限り、「抗CD3抗体含有培地」は「注入容器に収容された抗CD3抗体含有培地」を意味する。同様に「IL-2含有培地」は「注入容器に収容されたIL-2含有培地」を、「抗原ペプチド含有培地」は「注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地」をそれぞれ意味する。
【0026】
(2−1)抗CD3抗体含有培地
抗CD3抗体含有培地に使用する抗CD3抗体は、CD3分子又はその一部を用いた免疫学的手法により調製することができる。市販の抗CD3抗体を用いることもできる。市販の抗CD3抗体の例はOKT-3抗体(ヤンセンファーマ株式会社)である。安全性の点から薬事承認を受けているOKT-3抗体を用いることが好ましい。尚、抗CD3抗体はモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。但し、特異性や効率の点を考慮すれば、モノクローナル抗体である抗CD3抗体を用いることが好ましい。2種類以上の抗CD3抗体を併用することも可能である。
【0027】
T細胞の培養に適した培地(例えばRPMI1640、AIM-V、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified eagle medium)等)に抗CD3抗体を添加することによって抗CD3抗体含有培地を調製することができる。血清、血漿、血清アルブミン、抗生物質、L-glutamine等も添加することにしてもよい。培地中の抗CD3抗体の量は例えば0.01μg/mL〜 10μg/mLである。抗CD3抗体含有培地の量については例えば5 mL〜50 mLとする。
【0028】
(2−2)IL-2含有培地
(1−2)のIL-2含有培地と同様に二つ以上のIL-2含有培地が備えられる。好ましくはIL-2含有培地の数を3以上とする。更に好ましくはIL-2含有培地の数を4以上とする。具体的には例えばIL-2含有培地の数を3〜6とする。IL-2含有培地の数が増えれば、抗原提示細胞の調製工程において培地を追加できる回数が増加する。これによって調製効率の向上及び/又は調製される細胞数の増加が図られる。
【0029】
培地組成(IL-2の含有量やその他の成分の含有量など)や液量などが、全てのIL-2含有培地について統一されている必要はない。例えば、液量が少ないIL-2含有培地(例えば10mL)と液量が多いIL-2含有培地(例えば20mL)を組み合わせたり、IL-2含量が少ないIL-2含有培地(例えば100 IU/mL)とIL-2含量が多いIL-2含有培地(例えば1,000 IU/mL)を組み合わせたりするように、様々な組合せが可能である。好ましくはIL-2含量及び液量が少ないIL-2含有培地(例えば液量が10mLでIL-2含量が100 IU/mL)とIL-2含量及び液量が多いIL-2含有培地(例えば液量が20mLでIL-2含量が1000 IU/mL)を組み合わせて用いる。この場合、操作性及び効率性を考慮し、例えば前者の数を1とし、後者の数を3〜5とするとよい。尚、IL-2含有培地の一部を予備用として用いることにしてもよい。
【0030】
(2−3)抗原ペプチド含有培地
当該抗原ペプチド含有培地については、(1−1)の抗原ペプチド含有培地と同様であるのでその説明を省略する。
【0031】
(2−4)密封型培養容器
この密封型容器は少なくとも5種類のポート(第1〜第5ポート)を備える。第1ポートは、別途調製される末梢血単核球の注入用ポートである。同様に、第2ポートは抗CD3抗体含有培地注入用のポートであり、第3ポートはIL-2含有培地の注入用ポートであり、第4ポートは抗原ペプチド含有培地の注入用ポートであり、第5ポートは調製された抗原提示用活性化T細胞の移出用ポートである。
【0032】
第3ポートについては、IL-2含有培地の数と少なくとも同数、備えられる。即ち、第2ポートの数をIL-2含有培地の数と同じ又はそれ以上とする。IL-2含有培地の数よりも多い数の第2ポートを設けた場合、一部のポートを予備のポートとして利用できる。第1ポート、第3ポート、第4ポート及び第5ポートの数は原則として1である。但し、操作ミスに対応すべく予備ポートを設けることにしてもよい。予備ポートはポート毎に又は二つ以上のポート(例えば第3ポートと第4ポート)に共通なものとして設けることができる。
【0033】
(1−3)の密封型培養容器の場合と同様、各ポートの形態等は特に限定されない。各ポートの構成の一例を示すと、第1ポートを注射針による注入が可能なポート(例えばゴム等の弾性体からなる注入口を有するもの)とし、その他のポートをルアーロックタイプのポートとする。好ましくは、(1−3)の密封型培養容器の場合と同様の理由から、全てのポートをルアーロックタイプにする。
【0034】
一方、(1−3)の密封型培養容器の場合と同様、第1〜第5ポートの一部又は全部を分岐型ポートにしてもよい。好ましくは、少なくともIL-2含有培地(2−2)用の第3ポートを分岐型ポートにする。
【0035】
(第3工程:CTLの増殖)
この工程では、第1工程によって誘導された抗原特異的CTLと第2工程によって調製された抗原提示細胞とを用いて抗原特異的CTLを増殖させる。当該工程の実施のため、本発明の調製キットは少なくとも以下の要素(3−1)〜(3−6)を含む。
(3−1)注入容器に収容された抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)分離用培地
(3−2)注入容器に収容された抗原提示細胞分離用培地
(3−3)誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた第1密封型分離容器
(3−4)調製された抗原提示細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原提示細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原提示細胞移出用の第4ポートとを備えた第2密封型分離容器
(3−5)少なくとも二つの、注入容器に収容された増殖用培地であって、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する増殖用培地
(3−6)分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、分離後の抗原提示細胞移入用の第2ポートと、別途調製される血清又は血漿注入用の第3ポートと、前記増殖用培地の数と少なくとも同数の、前記増殖用培地注入用の第4ポートと、増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器
【0036】
(3−1)抗原特異的CTL分離用培地及び(3−2)抗原提示細胞分離用培地
抗原特異的CTL分離用培地及び抗原提示細胞分離用培地はいずれも、T細胞の培養に適した培地(例えばRPMI1640、AIM-V、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified
eagle medium)、X-VIVO(BioWhittaker社)、ALyS505N((株)細胞科学研究所)等)であればよい。好ましくはIL-2又はIL-15が添加された培地を用いる。IL-2とIL-15の両者が添加された培地を用いることにしてもよい。IL-2を添加する場合、その含量は例えば10 IU/mL〜1,000 IU/mLである。IL-15を添加する場合、その含量は例えば10 ng/mL〜100 ng/mLである。IL-15として組換えヒトIL-15(例えばCellGenix社が提供するCellGro IL-15)を用いることが好ましい。血清、血漿、血清アルブミン、抗生物質、L-glutamine等も添加された培地を用いることにしてもよい。抗原特異的CTL分離用培地及び抗原提示細胞分離用培地の組成が同一である必要はない。典型的には、抗原特異的CTL分離用培地と抗原提示細胞分離用培地を各一つ用意するが、後述のように分離の際に洗浄工程を実施する場合には、それに合わせて必要な数の培地を用意する。
【0037】
(3−3)第1密封型分離容器
第1密封型分離容器は、誘導された抗原特異的CTLの分離に利用される。第1密封型分離容器は少なくとも4種類のポート(第1〜第4ポート)を備える。第1ポートは誘導された抗原特異的CTLの移入用ポートである。同様に、第2ポートは排液用のポートであり、第3ポートは抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地の注入用ポートであり、第4ポートは分離後のCTLの移出用ポートである。各ポートの形態等は特に限定されない。例えば、第3ポートをルアーロックタイプのポートとする。
【0038】
ここでの「分離」とは、第1工程によって得られた細胞含有培養液から細胞を回収することをいう。本発明における「分離」は、遠心処理による細胞の沈降(遠心)、不要な培地の廃棄(排液)、培地への細胞の再懸濁(培地の注入)、細胞懸濁液の回収(細胞の移出)を含む一連の操作からなる。排液操作用の専用ポート(第2ポート)を設けるのでなく、CTLの移出用ポートを排液にも利用することにしてもよい。細胞の移出操作の前に、再度の遠心処理及びそれに続く排液操作と培地の注入操作を行うことにしてもよい。即ち、細胞の洗浄工程を組み込むことにしてもよい。このような洗浄工程を繰り返すことにしてもよい(例えば2回〜4回)。
【0039】
(3−4)第2密封型分離容器
第2密封型分離容器は、調製された抗原提示細胞の分離に利用される。第2密封型分離容器は少なくとも4種類のポート(第1〜第4ポート)を備える。第1ポートは、調製された抗原提示細胞の移入用ポートである。同様に、第2ポートは排液用のポートであり、第3ポートは抗原提示細胞分離用培地の注入用ポートであり、第4ポートは分離後の抗原提示細胞の移出用ポートである。第1密封型分離容器と同様、各ポートの形態等は特に限定されない。例えば、第3ポートをルアーロックタイプのポートとする。尚、ここでの「分離」については、第1密封型分離容器の場合と同様であるのでその説明を省略する。
【0040】
(3−5)増殖用培地
二つ以上の増殖用培地が備えられる。好ましくは当該培地の数を3以上とする。具体的には例えば当該培地の数を5〜7とする。培地の数が増えれば、CTL増殖工程において培地を追加できる回数が増加する。これによって増殖効率の向上及び/又は回収される細胞の数の増加が図られる。増殖用培地は、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する。IL-2の含量は例えば10 IU/mL〜1,000
IU/mLである。他方、IL-15の含量は例えば10
ng/mL〜100 ng/mLである。
【0041】
(3−6)密封型培養容器
この密封型容器は少なくとも5種類のポート(第1〜第5ポート)を備える。第1ポートは分離後の抗原特異的CTLの移入用ポートである。同様に、第2ポートは分離後の抗原提示細胞の移入用ポートであり、第3ポートは別途調製される血清又は血漿の注入用ポートであり、第4ポートは増殖用培地の注入用ポートであり、第5ポートは増殖した抗原特異的CTLの移出用ポートである。
【0042】
第4ポートについては、増殖用培地の数と少なくとも同数、備えられる。即ち、第4ポートの数を増殖用培地の数と同じ又はそれ以上とする。増殖用培地培地の数よりも多い数の第4ポートを設けた場合、一部のポートを予備のポートとして利用できる。第1ポート、第2ポート、第3ポート及び第5ポートの数は原則として1である。但し、操作ミスに対応すべく予備ポートを設けることにしてもよい。予備ポートはポート毎に又は二つ以上のポート(例えば第3ポートと第4ポート)に共通なものとして設けることができる。
【0043】
(1−3)の密封型培養容器の場合と同様、各ポートの形態等は特に限定されない。各ポートの構成の一例を示すと、第3ポートを注射針による注入が可能なポート(例えばゴム等の弾性体からなる注入口を有するもの)とし、その他のポートをルアーロックタイプのポートとする。好ましくは、(1−3)の密封型培養容器の場合と同様の理由から、少なくとも第4ポートをルアーロックタイプにする。一方、(1−3)の密封型培養容器の場合と同様、第1〜第5の一部又は全部を分岐型ポートにしてもよい。好ましくは、少なくとも第4ポートを分岐型ポートにする。
【0044】
本発明の調製キットでは、全ての培養容器((1−3)、(2−4)、(3−6))について、そこに備えられた各ポートは1回の操作のみに使用される。つまり、一度使用されたポートがそれ以降の操作において再び使用されることはない。このような取り扱いをすることによってコンタミネーションの発生を可及的に回避できる。分離容器((3−4)、(3−5))についても同様の取り扱いをすれば、分離操作の際のコンタミネーションも防止できる。
【0045】
本発明の調製キットに含まれる各要素は、通常、要素毎、又は二つ以上の要素をまとめた状態で包装されている。好ましくは密封包装されている。
【0046】
好ましい一形態では、(1−3)の密封型培養容器の第1ポート〜第3ポート、(2−4)の密封型培養容器の第1ポート〜第4ポート、並びに(3−6)の密封型培養容器の第3ポート及び第4ポートのそれぞれについて2種類のキャップが備えられる。片方のキャップは未使用の状態のポートに装着される。他方のキャップは使用済のポートに装着される。このような2種類のキャップを使用することによって各ポートが未使用であるか使用済であるかを容易に把握することが可能となる。これによってコンタミネーションを防止できる。また、操作ミスも防止できる。当該2種類のキャップの構成(色や形状など)は、両者を識別可能である限り、特に限定されない。例えば色の異なる2種類のキャップとする。或いは形状の異なる2種類のキャップとする。
【0047】
本発明の調製キットに追加可能な要素として、末梢血単核球の調製に使用する培地や容器など、末梢血単核球の注入に使用する容器、血漿の調製に使用する培地や容器など、血漿の注入に使用する容器、第3工程によって増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞を分離するための分離容器、当該分離容器を用いて分離した細胞を凍結保存するための保存容器、細胞の移入・移出又は分注に用いるチューブを挙げることができる。例えば、末梢血単核球の調製に使用する培地及び/又は末梢血単核球の調製に使用する容器も備えることにすれば、末梢血単核球の調製にも利用可能なキットとなり、その利便性ないし利用価値が高まる。同様に、第3工程によって増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞を分離するための分離容器(及び当該分離容器を用いて分離した細胞を凍結保存するための保存容器)を備えることにすれば、第3工程以降の操作にも利用可能なキットとなる。
【0048】
末梢血単核球の調製に使用する培地及び容器は、末梢血単核球を調製する際に通常使用されるものを採用すればよい。ここでの培地の一例として血清アルブミン及び抗生物質を含むRPMI1640培地を挙げることができ、容器の一例としては使い捨てタイプの遠沈チューブを挙げることができる。一方、上記の分離容器としては、(3−1)又は(3−2)の分離容器と同様の構成のもの、或いは細胞の分離に利用される市販の分離用バッグ(例えば分離バッグA(ニプロ株式会社))を採用すればよい。また、細胞の凍結に利用される各種バッグ(例えばフローズバッグ(ニプロ株式会社))が市販されており、これらのいずれかを上記保存容器として用いることができる。
【0049】
以下、本発明の調製キットを用いた、抗原特異的CTLの調製法(本発明の第2の局面)を説明する。当該調製法は大別して抗原特異的CTLの誘導工程、抗原提示細胞の調製工程及び抗原特異的CTLの増殖工程の3工程からなる。前2者の実施順序は限定されない。即ち、どちらを先に実施してもよい。両者を並行して実施することにしてもよい。
【0050】
(1)抗原特異的CTLの誘導工程
この工程では最初に、第1ポートから末梢血単核球を、第2ポートから抗原ペプチド含有培地(1−1)をそれぞれ密封型培養容器(1−3)に注入する。この操作の後、T細胞の培養に適した条件(典型的には37℃、5%CO2)に設定したインキュベータ内へ密封型培養容器を移す。所定時間(例えば1日〜4日)経過後、インキュベータから密封型培養容器を取り出し、第3ポートの一つからIL-2含有培地(1−2)を注入する。インキュベータ内で所定時間(例えば2〜7日)培養した後、第3ポートの一つ(但し未使用のもの)からIL-2含有培地(1−2)を再び密封型培養容器に注入する。その後、インキュベータ内での培養を継続する。IL-2含有培地を二つ含む調製キットを使用する場合は、この後、後述の抗原特異的CTLの増殖工程に移る。IL-2含有培地を三つ以上含む調製キットを使用する場合には、抗原特異的CTLの増殖工程に移る前に、IL-2含有培地の注入操作及びそれに続く培養が所定回数(IL-2含有培地の数に合わせて1回又は2回以上)繰り返されることになる。IL-2含有培地の注入操作を行ってから次のIL-2含有培地の注入操作を行うまでの間隔は例えば1日〜6日である。1回目の注入操作と2回目の注入操作の間隔を5日とし、2回目の注入操作と3回目の注入操作の間隔を3日とする例のように、ここでの間隔を必ずしも統一する必要はない。尚、末梢血単核球の調製は常法で行えばよい。但し、末梢血単核球の調製用の要素を含むキットの場合は、末梢血単核球の調製の際にもキットを利用することになる。
【0051】
(2)抗原提示細胞の調製工程
この工程では最初に、第1ポートから末梢血単核球を、第2ポートから抗CD3抗体含有培地(2−1)をそれぞれ密封型培養容器(2−4)に注入する。この操作の後、T細胞の培養に適した条件(典型的には37℃、5%CO2)に設定したインキュベータ内へ密封型培養容器を移す。所定時間(例えば1日〜4日)経過後、インキュベータから密封型培養容器を取り出し、第3ポートの一つからIL-2含有培地(2−2)を密封型培養容器に注入する。好ましくは、ここでの注入操作には、後に使用するIL-2含有培地よりもIL-2濃度が低いものを使用する。インキュベータ内で所定時間(例えば2〜7日)培養した後、第3ポートの一つ(但し未使用のもの)からIL-2含有培地(2−2)を再び注入する。その後、インキュベータ内での培養を継続する。IL-2含有培地を二つ含む調製キットを使用する場合は、この後、第4ポートを用いて抗原ペプチド含有培地の注入操作を行う。当該注入操作の後、密封型培養容器を所定時間(例えば30分〜2時間)放置する。この間、密封型培養容器を傾けるなどして所定間隔(例えば15分間隔)で撹拌するとよい。この後、後述の抗原特異的CTLの増殖工程に移る。IL-2含有培地を三つ以上含む調製キットを使用する場合には、抗原ペプチド含有培地の注入操作の前に、IL-2含有培地の注入操作及びそれに続く培養が所定回数(IL-2含有培地の数に合わせて1回又は2回以上)繰り返されることになる。尚、IL-2含有培地の注入操作を行ってから次のIL-2含有培地の注入操作を行うまでの間隔は例えば1日〜6日である。1回目の注入操作と2回目の注入操作の間隔を3日とし、2回目の注入操作と3回目の注入操作の間隔を2日とする例のように、ここでの間隔を必ずしも統一する必要はない。
【0052】
(3)抗原特異的CTLの増殖工程
この工程では最初に、抗原特異的CTLの誘導工程で誘導された抗原特異的CTLと抗原提示細胞の調製工程で調製された抗原提示細胞をそれぞれ回収する。抗原特異的CTLの回収には、密封型培養容器(1−3)の第4ポートを用いる。通常は、チューブなどを利用して当該第4ポートを第1密封型分離容器(3−3)の第1ポートに連結し、直接、第1密封型分離容器内に抗原特異的CTLを回収する。第4ポートにチューブが付属された密封型培養容器(1−3)を用いた場合、別途チューブを用意することなく抗原特異的CTLの回収を行うことができる。
【0053】
抗原提示細胞の回収も同様の操作で行う。即ち、通常は、チューブなどを利用して密封型培養容器(2−4)の第5ポートを第2密封型分離容器(3−4)の第1ポートに連結し、直接、第2密封型分離容器内に抗原提示細胞を回収する。
【0054】
次に、第1密封型分離容器に回収した抗原特異的CTLを分離する。即ち、第1密封型分離容器を遠心処理に供し、不要な培養液を除去する。その後、第3ポートから抗原特異的CTL分離用培地を第1密封型分離容器に注入し、細胞を懸濁させる。続いて、チューブなどを利用して第1密封型分離容器の第4ポートと密封型培養容器(3−6)の第1ポートを連結し、第1密封型分離容器から密封型培養容器(3−6)へ細胞を移送する。
【0055】
一方で、第2密封型分離容器に回収した抗原提示細胞を、抗原特異的CTLの分離の場合と同様の手順で分離する。その後、チューブなどを利用して第2密封型分離容器の第4ポートと密封型培養容器(3−6)の第2ポートを連結し、第2密封型分離容器から密封型培養容器(3−6)へ細胞を移送する。尚、抗原特異的CTLの分離及び移送と、抗原提示細胞の分離及び移送の順序は問わない。
【0056】
次に、第3ポートから血清又は血漿を密封型培養容器(3−6)に注入した後、T細胞の培養に適した条件(典型的には37℃、5%CO2)に設定したインキュベータ内へ密封型培養容器を移す。但し、抗原特異的CTLの移送及び/又は抗原提示細胞の移送に先行して、血清又は血漿の注入操作をすることにしてもよい。所定時間(例えば1〜4日)経過後、インキュベータから密封型培養容器を取り出し、第4ポートの一つから増殖用培地(3−5)を密封型培養容器に注入する。インキュベータ内で所定時間(例えば2〜7日)培養した後、第4ポートの一つ(但し未使用のもの)から増殖用培地(3−5)を再び注入する。その後、インキュベータ内での培養を継続する。増殖用培地を二つ含む調製キットを使用する場合は、この後、細胞の回収操作に移る。増殖用培地を三つ以上含む調製キットを使用する場合には、回収操作の前に、増殖用培地の注入操作及びそれに続く培養が所定回数(増殖用培地の数に合わせて1回又は2回以上)繰り返されることになる。増殖用培地の注入操作を行ってから次の増殖用培地の注入操作を行うまでの間隔は例えば1日〜6日である。1回目の注入操作と2回目の注入操作の間隔を3日とし、2回目の注入操作と3回目の注入操作の間隔を2日とする例のように、ここでの間隔を必ずしも統一する必要はない。
【0057】
回収操作には、密封型培養容器(3−6)の第5ポートが用いられる。即ち、第5ポートより、以上の操作によって増殖した抗原特異的CTLを移出する。
【0058】
本発明の更なる局面(第3の局面)は、凍結乾燥状態の抗原提示細胞を利用した抗原特異的CTL調製キットを提供する。本発明の調製キットは抗原特異的CTLの誘導(第1工程)、抗原提示細胞の調製(第2工程)、及び抗原特異的CTLの増殖(第3工程)を実施するために必要な要素を具備する。工程毎、本発明の調製キットに含まれる要素を説明する。但し、第1工程用の要素は、第1の局面の発明の場合と同一であるためその説明を省略する。また、特に言及しない事項については第1の局面における、対応する記載が援用される。
【0059】
(第2工程:抗原提示細胞の調製)
この工程では、凍結乾燥状態の抗原提示細胞を浸潤状態に復元する。この処理のことを本明細書では「再構成」とも呼ぶ。当該工程の実施のため、本発明の調製キットは少なくとも、凍結乾燥状態の抗原提示細胞を含む。「凍結乾燥状態の抗原提示細胞」とは、所定の抗原による誘導化によって抗原提示能を獲得した細胞であって凍結乾燥状態のものをいう。「凍結乾燥状態の抗原提示細胞」は、抗原提示細胞の調製及びそれに続く凍結乾燥処理によって調製することができる。例えば、樹状細胞や末梢血単核球より常法に従って抗原提示細胞を調製することができる。また、K562細胞等より抗原提示細胞を調製することもできる。好ましくは、所定のHLA(例えばHLA-A24)、CD80、CD83及びCD86を発現させたK562細胞を抗原提示細胞として用いる。抗原提示細胞の凍結乾燥処理は、細胞懸濁液中にトレハロースが存在する条件下で行うと良い。抗原提示細胞の調製及び凍結乾燥処理の具体例を後述の実施例の欄に示す。凍結乾燥処理の一例が米国特許5,059,518に記載されている。当該処理方法に準じて凍結乾燥処理を実施することにしてもよい。尚、当該文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
(第3工程:CTLの増殖)
この工程では、第1工程によって誘導された抗原特異的CTLと第2工程によって調製された抗原提示細胞とを用いて抗原特異的CTLを増殖させる。当該工程の実施のため、本発明の調製キットは少なくとも以下の要素(3−1)〜(3−4)を含む。
(3−1)注入容器に収容された抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地
(3−2)誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた第1密封型分離容器
(3−3)少なくとも二つの、注入容器に収容された増殖用培地であって、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する増殖用培地
(3−4)分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、調製した抗原提示細胞移入用の第2ポートと、別途調製される血清又は血漿注入用の第3ポートと、前記増殖用培地の数と少なくとも同数の、前記増殖用培地注入用の第4ポートと、増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器
【0061】
(3−1)は第1の局面の(3−1)と同一であり、(3−2)は第1の局面の(3−3)と同一であり、(3−3)は第1の局面の(3−5)と同一であるため、その説明を省略する。(3−4)は第1の局面の(3−6)に対応する。唯一の相違点は第2ポートが、調製した抗原提示細胞の移入に利用されることである。当該第2ポートの構成は特に限定されない。例えば、第1の局面の(3−6)における第2ポートと同様の構成にすればよい。
【0062】
第1の局面の調製キットと同様に、様々な要素(末梢血単核球の調製に使用する培地や容器、末梢血単核球の注入に使用する容器、血漿の調製に使用する培地や容器、血漿の注入に使用する容器、抗原提示細胞の再構成に使用する培地や容器、第3工程によって増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞を分離するための分離容器、当該分離容器を用いて分離した細胞を凍結保存するための保存容器、細胞の移入・移出又は分注に用いるチューブなど)を追加可能である。
【0063】
本発明の調製キットを用いた、抗原特異的CTLの調製法(本発明の第4の局面)は、第2工程を除いて、本発明の第1の局面の調製キットを用いた場合と同様である。この局面の第2工程では、凍結乾燥状態の抗原提示細胞を再構成する。再構成の方法は典型的には細胞の浸潤、洗浄(及び懸濁)からなる。具体例を示すと、まず、凍結乾燥状態の抗原提示細胞に十分量の溶媒(脱イオン水、蒸留水、生理食塩水など)を添加し、しばらく放置する(浸潤工程)。培地を添加した後、遠心処理に供する(洗浄工程)。上清を吸引除去した後、再度培地を加え、細胞を懸濁する(懸濁工程)。
【0064】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0065】
本発明の実施例(抗原特異的CTL調製キット)の構成要素(構成品)を図1〜4に示す。尚、図1は抗原特異的CTLの誘導工程に使用する構成要素一式(抗原特異的CTL誘導用要素)を示し、図2は抗原提示細胞の調製工程に使用する構成要素一式(抗原提示細胞調製用要素)を示し、図3及び4は抗原特異的CTLの増殖工程に使用する構成要素一式(抗原特異的CTL増殖用要素)を示す。
【0066】
抗原特異的CTL誘導用要素(図1)の内訳は次の通りである。
培養用バッグ1・・1個
ルアーロックシリンジに収容された抗原ペプチド含有培地10(0.01% ヒト血清アルブミン及び2μg/mL
CMVpp65(抗原ペプチド)含有のHepes緩衝RPMI1640)5 mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地11(0.01%ヒト血清アルブミン及び100 IU/mL IL-2含有のHepes緩衝RPMI1640)10 mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地12(100 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所)20
mL・・3本
【0067】
培養用バッグ1は、ルアーロックタイプのポート2、ルアーロックタイプの3分岐ポート(3、4)、プラスチック針(図5を参照)用のポート5を備える。ポート2は別途調製される末梢血単核球の注入に利用される。また、3分岐ポート(3、4)は、抗原ペプチド含有培地10の注入とIL-2含有培地11、12の注入に利用される兼用ポートである。ポート5は、誘導された抗原特異的CTLの移出に利用される。ポート5を除く全てのポートはルアーロックタイプである。ポート2、3分岐ポート(3、4)には未使用時にキャップ6が装着されている。符号7で示すのは、使用後のポート(2、3、4)に装着されるキャップであり、未使用時に装着されているキャップ6と色が異なる。この例ではキャップ6を青色とし、キャップ7を無色透明とした。未使用時のポート5にもキャップ8が装着されている。培養用バッグ1の材質はポリエチレンとした。
【0068】
抗原提示細胞調製用要素(図2)の内訳は次の通りである。
培養用バッグ21・・1個
ルアーロックシリンジに収容された抗CD3抗体含有培地30(0.01% ヒト血清アルブミン及び2 μg/mL OKT-3(抗CD3抗体)含有のHepes緩衝RPMI1640)5 mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地31(100 IU/mL IL-2含有のHepes緩衝RPMI1640)10
mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容された抗原ペプチド含有培地32(0.01% ヒト血清アルブミン及び2μg/mL
CMVpp65(抗原ペプチド)含有のHepes緩衝RPMI1640)10 mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地33(1000 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所))20 mL・・4本
【0069】
培養用バッグ21は、ルアーロックタイプのポート22、ルアーロックタイプの3分岐ポート(23、24)、プラスチック針用のポート25を備える。ポート22は別途調製される末梢血単核球の注入に利用される。また、3分岐ポート(23、24)は、抗CD3抗体含有培地30の注入、IL-2含有培地(31、33)の注入、及び抗原ペプチド含有培地32の注入に利用される兼用ポートである。ポート25は、調製された抗原提示細胞の移出に利用される。ポート25を除く全てのポートはルアーロックタイプである。ポート22、3分岐ポート(23、24)には未使用時にキャップ26が装着されている。符号27で示すのは、使用後のポート(22、23、24)に装着されるキャップであり、未使用時に装着されているキャップ26と色が異なる。この例ではキャップ26を青色とし、キャップ27を無色透明とした。未使用時のポート25にもキャップ28が装着されている。培養用バッグ21の材質はポリエチレンとした。
【0070】
抗原特異的CTL増殖用要素(図3、4)の内訳は次の通りである。
分離用バッグ(41a、41b)・・2個
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地50(100 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所))20
mL・・2本
培養用バッグ51・・1個
ルアーロックシリンジに収容された増殖用培地61(1000 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所))20 mL・・3本
【0071】
分離用バッグ(41a、41b)は、チューブを介してプラスチック針が連結されたポート(42a、42b)、ルアーロックタイプの2分岐ポート(43a、43b)、プラスチック針用のポート(44a、44b)を備える。分離用バッグの片方41aは、誘導された抗原特異的CTLの分離に利用される。当該分離用バッグではポート42aは誘導された抗原特異的CTLの移入に利用される。2分岐ポート43aは排液及びIL-2含有培地50の注入に利用される。ポート44aは処理後の細胞の移出に利用される。一方、分離用バッグ41bは、調製された抗原提示細胞の分離に利用される。当該分離用バッグではポート42bは調製された抗原提示細胞の移入に利用される。2分岐ポート43bは排液及びIL-2含有培地50の注入に利用される。ポート44bは処理後の細胞の移出に利用される。
分離用バッグ(41a、41b)の材質はポリエチレンとした。
【0072】
培養用バッグ51は、ルアーロックタイプのポート52、ルアーロックタイプの3分岐ポート53、チューブを介してプラスチック針が連結された2分岐ポート54、プラスチック針用のポート55を備える。ポート52は別途調製される血漿の注入に利用される。また、3分岐ポート53は増殖用培地61の注入に利用される。ポート54は、分離された抗原特異的CTL及び抗原提示細胞の移入に利用される。ポート55は増殖した抗原特異的CTLの移出に利用される。ポート52、3分岐ポート53には未使用時にキャップ56が装着されている。符号57で示すのは、使用後のポート(52、53)に装着されるキャップであり、未使用時に装着されているキャップ56と色が異なる。この例ではキャップ56を青色とし、キャップ57を無色透明とした。未使用時のポート55にもキャップ58が装着されている。培養用バッグ51の材質はポリエチレンとした。
【0073】
以上の構成の調製キットを用い、以下の工程によってHLA-A24拘束性CMV pp65抗原特異的CTLを調製した。各工程の詳細を図6〜8を参照しながら説明する。
(1)CTL誘導工程(図6)
(a)末梢血単核球(PBMC)の単離
HLA-A24陽性健常人より末梢血を、ヘパリンを少量加えた注射筒を用いて50 mL 採取し、フィコール比重遠心分離法にてPBMCを単離した(4×107)。
【0074】
(b)血漿の採取
PBMCを単離する際、血漿を採取し、56℃、20分間、加熱処理した後、2500rpmで10分間遠心処理した。
【0075】
(c)RPMI1640培地へのPBMCの懸濁
図示の通り、バッグ培地(0.01% ヒト血清アルブミン及び10μg/mLゲンタシン含有のHepes緩衝RPMI1640培地)を用いてPBMCを洗浄した後、バッグ培地を4mL採取し、PBMCと懸濁させた。さらに、自己血漿を1mL加えた(PBMC濃度 6×106/mL)。
【0076】
(d)CTLの誘導
RPMI1640培地に懸濁したPBMCを、ルアーロックシリンジを用いてポート2より培養用バッグ1に注入した(図1を参照)。続いて抗原ペプチド含有培地10を3分岐ポート3(又は3分岐ポート4)のいずれかのポートより培養用バッグ1に注入した後、培養用バッグ1を37℃、5%CO2のCO2インキュベータ内に移した(培養開始)。尚、一度使用したポートについてはキャップ6に代えてキャップ7が装着され、再び使用されることはない。
【0077】
2日後に培養用バッグ1を取り出した。次に、IL-2含有培地11を3分岐ポート3(又は3分岐ポート4)のいずれかのポート(但し、使用済みポートを除く)より培養用バッグ1に注入した。CO2インキュベータ内で5日間培養した後、IL-2含有培地12を3分岐ポート3(又は3分岐ポート4)のいずれかのポート(但し、使用済みポートを除く)より培養用バッグ1に注入した。その後、培養(3日間)、IL-2含有培地12の注入、培養(2日間)、IL-2含有培地12の注入、及び培養(2日間)をこの順序で行った。以上の操作によって、培養開始から14日(但し、PBMC及び血漿の調製に要する時間を除く)という短時間で抗原特異的CTLを誘導した。
【0078】
尚、PBMCの調製の際に使用するバック培地を調製キットに添付することにしてもよい。フィコール分離に使用するチューブ、PBMCの洗浄に使用するチューブ、PBMCの再懸濁に使用するチューブについても同様である。
【0079】
(2)抗原提示細胞の調製工程(図7)
(a)RPMI1640培地へのPBMCの懸濁
(1)の(a)で用意したPBMC(0.5mL)にバッグ培地を3.6mLと自己血漿を0.9mL添加した(PBMC濃度 6×105/mL)。
【0080】
(b)抗原提示細胞の調製
RPMI1640培地に懸濁したPBMCを、ルアーロックシリンジを用いてポート22より培養用バッグ21に注入した(図2を参照)。続いて抗CD3抗体含有培地30を3分岐ポート23(又は3分岐ポート24)のいずれかのポートより培養用バッグ21に注入した後、培養用バッグ21を37℃、5%CO2のCO2インキュベータ内に移した(培養開始)。尚、一度使用したポートについてはキャップ26に代えてキャップ27が装着され、再び使用されることはない。
【0081】
2日後に培養用バッグ21を取り出した。次に、IL-2含有培地31を3分岐ポート23(又は3分岐ポート24)のいずれかのポート(但し、使用済みポートを除く)より培養用バッグ21に注入した。CO2インキュベータ内で3日間培養した後、IL-2含有培地33を3分岐ポート23(又は3分岐ポート24)のいずれかのポート(但し、使用済みポートを除く)より培養用バッグ21に注入した。その後、培養(2日間)、IL-2含有培地33の注入、培養(4日間)、IL-2含有培地33の注入、培養(2日間)、IL-2含有培地33の注入、及び培養(1日間)をこの順序で行った。以上の操作により、培養開始から14日という短時間で抗原提示細胞を調製した。尚、この実施例では、抗原提示細胞の調製工程(2)をCTL誘導工程(1)と並行して行った。従って、合計14日(但し、PBMC及び血漿の調製に要する時間を除く)で抗原特異的CTL及び抗原提示細胞の両者が得られる。
【0082】
(c)抗原提示細胞へのペプチドパルス
抗原ペプチド含有培地32を3分岐ポート23(又は3分岐ポート24)のいずれかのポート(但し、使用済みポートを除く)から培養用バッグ21に注入した。その後、室温で1時間インキュベートした。
【0083】
(3)抗原特異的CTL増殖工程(図8)
(a)抗原提示細胞と抗原特異的CTLの分離
分離用バッグ41bのポート42bに連結されたプラスチック針を培養用バッグ21のポート25に挿入し、培養用バッグ21の内容物を分離用バッグ41bに移した(図3を参照)。ポート42bのクランプを閉じた後(チューブをシーラーなどで溶着することにしてもよい)、分離用バッグ41bを遠心処理に供した。2分岐ポート43bのクランプを開いた状態でバッグを押圧し、2分岐ポートの排液口45bより上清を廃棄した後、IL-2含有培地50を2分岐ポートの注入口46bより分離用バッグ41bに注入した。一方、分離用バッグ41aのポート42aに連結されたプラスチック針を、上記工程(1)を経た後の培養用バッグ1のポート5に挿入し、培養用バッグ1の内容物を分離用バッグ41aに移した後、上記操作と同様の操作(遠心処理、排液、IL-2含有培地50の注入)を行った。
【0084】
(b)抗原提示細胞と抗原特異的CTLの混合、培養
培養用バッグ51のポート54に連結されたプラスチック針の片方59を分離用バッグ41aのポート44aに挿入し、分離用バッグ41aの内容物を培養用バッグ51に移した(図3及び4を参照)。同様に、プラスチック針60を分離用バッグ41bのポート44bに挿入し、分離用バッグ41bの内容物を培養用バッグ51に移した。続いて、工程(1)の(b)で用意した自己血漿を、ルアーロックシリンジを用いてポート52より培養用バッグ51に注入した後、培養用バッグ51を37℃、5%CO2のCO2インキュベータ内に移した(培養開始)。1日後に培養用バッグ51を取り出した。次に、増殖用培地61を3分岐ポート53のいずれかのポートより培養用バッグ51に注入した。尚、一度使用したポートについてはキャップ56に代えてキャップ57が装着され、再び使用されることはない。CO2インキュベータ内で3日間培養した後、増殖用培地61を3分岐ポート53のいずれかのポート(但し、使用済みポートを除く)より培養用バッグ51に注入した。その後、培養(2日間)、増殖用培地61の注入、及び培養(1日間)をこの順序で行った。以上の操作により、工程(1)及び(2)における培養開始から21日という短時間で抗原特異的CTLを得た。得られた細胞をフローサイトメトリー解析に供した。その結果、純度74.39%のHLA-A24拘束性CMV pp65抗原特異的CTLが3.26×108個得られていることがわかった(図10)。即ち、21日間(但し、PBMC及び血漿の調製に要する時間を除く)という短時間にも拘わらず高純度の抗原特異的CTLの調製に成功した。
【0085】
別のドナー(3名)から同様の手法で抗原特異的CTLの調製を試みた(図11〜図14)。ドナー1名(HLA-A24陽性)については同一条件下で2回調製した(図11、図12)。図14の例のみドナーのHLA型(HLA-A2陽性)が異なる。図11〜14に示した通り、高純度の抗原特異的CTLが再現性良く調製できた。また、調製した抗原特異的CTLは高い細胞障害活性を示した(図11下段右、図13下段右、図14下段右)。
【0086】
抗原特異的CTLを調製した後の操作の一例を図9に示す。まず、培養用バッグ51のポート55を利用して調製バッグの内容物(即ち抗原特異的CTL)を分離用バッグに分注する(図4を参照)。この操作は例えば図5に示した3分岐チューブ63を利用して行うことができる。次に、遠心分離した後、上清(培養液)を廃棄し、凍結保存液(8%ヒト血清アルブミン加CP-1(極東製薬工業株式会社)等)を注入して細胞を懸濁する。続いて細胞懸濁液を凍結保存用のバッグに移出し、凍結保存する(例えば-130℃〜-150℃)。使用時に融解し、分離用バッグ(例えば分離用バッグ41に準ずる構成のもの)を用いて細胞を洗浄した後、患者へ細胞を輸注する。
【実施例2】
【0087】
本発明の実施例(凍結乾燥抗原提示細胞を含む抗原特異的CTL調製キット)の構成要素(構成品)を図15〜図18に示す。図15は抗原特異的CTLの誘導工程に使用する構成要素一式(抗原特異的CTL誘導用要素)を示し、図16は抗原提示細胞の調製工程に使用する構成要素一式(抗原提示細胞調製用要素)を示し、図17及び18は抗原特異的CTLの増殖工程に使用する構成要素一式(抗原特異的CTL増殖用要素)を示す。尚、実施例1と同一の要素には同一の符合を付してある。
【0088】
抗原特異的CTL誘導用要素(図15)の内訳は次の通りである。尚、各要素の構成は実施例1の場合と同一であるのでその説明を省略する。
培養用バッグ1・・1個
ルアーロックシリンジに収容された抗原ペプチド含有培地10(0.01% ヒト血清アルブミン及び2μg/mL
CMVpp65(抗原ペプチド)含有のHepes緩衝RPMI1640)5 mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地11(0.01%ヒト血清アルブミン及び100 IU/mL IL-2含有のHepes緩衝RPMI1640)10 mL・・1本
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地12(100 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所)20
mL・・3本
【0089】
抗原提示細胞調製用要素(図16)の内訳は次の通りである。
容器(この例ではバイアル)に収容された凍結乾燥状態の抗原提示細胞70・・1本
【0090】
目的に応じた抗原提示能を有する抗原提示細胞が用いられる。以下、凍結乾燥した抗原提示細胞の調製法の一例を示す。尚、抗原提示細胞としては樹状細胞を用いることが一般的であるが、ここでは活性化T細胞を抗原提示細胞として調製する。
(1)末梢血単核球の単離
ヘパリンを少量加えた注射筒を用い、HLA-A24陽性の健常人より末梢血を採取した。そして、フィコール比重遠心分離法にて末梢血単核球を単離した。
(2)培養開始
10mL
RPMI1640で3回洗浄した後、4×105/mLとなるように末梢血単核球を10mL
RPMI1640(10% 自己血漿及び1μg/mL OKT-3を含有する)に再懸濁し、培養バッグに注入した。CO2インキュベータ内で37℃にて培養を開始した。
(3)IL-2の添加
2日後、10mL RPMI1640(100 IU/mL IL-2を1μg/mL含有する)を注入し、3日間、CO2インキュベータ内(37℃)にて培養した。
(4)ALyS505N(IL-2を1000 IU/mL含有する)培地の添加
ALyS505N(IL-2を1000 IU/mL含有する)培地を20mL添加した後、3日おきにALyS505N(IL-2を1000 IU/mL含有する)培地(20mL)を加えながら9日間、CO2インキュベータ内(37℃)で培養した(総培養日数14日間)。
(5)細胞数の測定
細胞数を測定した結果、1.53×108個の細胞が得られていた。
(6)CD80、CD86の検出
細胞表面抗原の発現を調べた結果、80%の細胞がCD80陽性であり、85%の細胞がCD86陽性であった(結果を図示せず)。
(7)エピトープペプチドのパルス
上記で調製した抗原提示細胞をPRMI1640に2×106/mLとなるように再懸濁した後、HLA-A24拘束性CMV pp65抗原エピトープペプチド(QYDPVLAALF)を10μg/mLとなるように添加した。室温で30分間インキュベーションした後、10 mL RPMI1640で3回洗浄した。
(8)凍結乾燥
ペプチドをパルスした細胞を2×106/mLとなるように、10%トレハロースを含有するISOTON(登録商標)IIIに再懸濁した。1 mLずつ凍結乾燥用バイアルに分注した後、図19に示す条件で凍結乾燥を実施した。
【0091】
抗原特異的CTL増殖用要素(図17、18)の内訳は次の通りである。尚、各要素の構成は実施例1の場合と同一であるのでその説明を省略する。
分離用バッグ41a・・1個
ルアーロックシリンジに収容されたIL-2含有培地50(100 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所))20
mL・・1本
培養用バッグ71・・1個
ルアーロックシリンジに収容された増殖用培地61(1000 IU/mL IL-2含有のALyS505N((株)細胞科学研究所))20 mL・・3本
【0092】
培養用バッグ71には、ルアーロックタイプのポート52が二つ備えられている。片方は別途調製される血漿の注入に利用され、他方は抗原提示細胞の注入に利用される。一方、チューブを介してプラスチック針が連結されたポート72は、分離された抗原特異的CTLの移入用ポートである。
【0093】
この実施例の抗原特異的CTL調製キットを使用する際には、抗原特異的CTL誘導用要素を用いて抗原特異的CTLを誘導するとともに、抗原提示細胞調製用要素を用いて抗原提示細胞を再構成する。このようにして得られた2種類の細胞を抗原特異的CTL増殖用要素の培養用バッグ71内で共培養し、目的の抗原特異的CTLを得る。尚、抗原提示細胞の調製(再構成)は例えば次のように行う。
(1)脱イオン水の添加
バイアル70に1 mLの脱イオン水を加え、5分間室温で放置する。
(2)洗浄
1mL のRPMI1640(0.05% HSA)の入った15mL 遠心チューブに移し、1200rpm 10分間、室温で遠心する。上清を吸引除去後、1mLのRPMI1640(5%自己血漿)を添加し、細胞を懸濁させる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
目的とする抗原特異的CTLの調製に要する時間は当然ながら治療目的や患者の状態などに影響を受けるものの、本発明のキットを用いると、単離した末梢血単核球より概ね20日〜2月程度で治療に必要量の抗原特異的CTLの調製が可能となる。
【0095】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0096】
1 培養用バッグ
2 ルアーロックポート
3、4 3分岐ルアーロックポート
5 移出用ポート
6、7、8 キャップ
10 抗原ペプチド含有培地(5 mL)
11 IL-2含有培地(10 mL)
12 IL-2含有培地(20 mL)
21 培養用バッグ
22 ルアーロックポート
23、24 3分岐ルアーロックポート
25 移出用ポート
26、27、28 キャップ
30 抗CD3抗体含有培地(5 mL)
31 IL-2含有培地(10 mL)
32 抗原ペプチド含有培地(10 mL)
33 IL-2含有培地(20 mL)
41a、41b 分離用バッグ
42a、42b 移入用ポート
43a、43b 2分岐ルアーロックポート
44a、44b 移出用ポート
50 IL-2含有培地
51 培養用バッグ
61 増殖用培地
62 移入・移出用チューブ
63 分注用3分岐チューブ
70 バイアル(凍結乾燥状態の抗原提示細胞を含む)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導する第1工程と、抗原提示用活性化T細胞を調製する第2工程と、前記第1工程によって誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞と前記第2工程によって調製された抗原提示用活性化T細胞を用いて抗原特異的細胞傷害性T細胞を増殖させる第3工程とを含む抗原特異的細胞傷害性T細胞調製法に用いる調製キットであって、
前記第1工程用の構成要素として、
(1−1)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地と、
(1−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地と、
(1−3)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた密封型培養容器と、を備え、
前記第2工程用の構成要素として、
(2−1)注入容器に収容された抗CD3抗体含有培地と、
(2−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地と、
(2−3)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地と、
(2−4)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗CD3抗体含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第4ポートと、調製された抗原提示用活性化T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器と、を備え、
前記第3工程用の構成要素として、
(3−1)注入容器に収容された抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地と、
(3−2)注入容器に収容された抗原提示用活性化T細胞分離用培地と、
(3−3)誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた第1密封型分離容器と、
(3−4)調製された抗原提示用活性化T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原提示用活性化T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原提示用活性化T細胞移出用の第4ポートとを備えた第2密封型分離容器と、
(3−5)少なくとも二つの、注入容器に収容された増殖用培地であって、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する増殖用培地と、
(3−6)分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、分離後の抗原提示細胞移入用の第2ポートと、別途調製される血清又は血漿注入用の第3ポートと、前記増殖用培地の数と少なくとも同数の、前記増殖用培地注入用の第4ポートと、増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器と、を備える、調製キット。
【請求項2】
前記(1−2)のIL-2含有培地の数が3〜5である、請求項1に記載の調製キット。
【請求項3】
前記(2−2)のIL-2含有培地の数が3〜6である、請求項1又は2に記載の調製キット。
【請求項4】
前記(3−1)の抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地と前記(3−2)の抗原提示用活性化T細胞分離用培地がIL-2含有培地である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の調製キット。
【請求項5】
前記(1−3)の密封型培養容器の第1ポート〜第3ポート、前記(2−4)の密封型培養容器の第1ポート〜第4ポート、並びに前記(3−6)の密封型培養容器の第3ポート及び第4ポートのそれぞれについて2種類のキャップが備えられ、該2種類のキャップは、未使用時に装着されているキャップと、該キャップと識別可能なキャップであって、使用後に装着されるキャップとからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製キット。
【請求項6】
前記(1−3)の密封型培養容器の第3ポート、前記(2−4)の密封型培養容器の第3ポート、及び前記(3−6)の密封型培養容器の第4ポートがそれぞれ分岐型ポートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の調製キット。
【請求項7】
前記(1−3)の密封型培養容器、前記(2−4)の密封型培養容器、及び前記(3−6)の密封型培養容器がそれぞれ予備用ポートを備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調製キット。
【請求項8】
容器に収容された末梢血単核球調製用培地を更に備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の調製キット。
【請求項9】
末梢血単核球調製用の容器を更に備える、請求項8に記載の調製キット。
【請求項10】
第3工程によって増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞を分離するための分離容器を更に備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の調製キット。
【請求項11】
前記分離容器を用いて分離した細胞を凍結保存するための保存容器を更に備える、請求項10に記載の調製キット。
【請求項12】
抗原特異的細胞傷害性T細胞を誘導する第1工程と、抗原提示細胞を調製する第2工程と、前記第1工程によって誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞と前記第2工程によって調製された抗原提示細胞を用いて抗原特異的細胞傷害性T細胞を増殖させる第3工程とを含む抗原特異的細胞傷害性T細胞調製法に用いる調製キットであって、
前記第1工程用の構成要素として、
(1−1)注入容器に収容された抗原ペプチド含有培地と、
(1−2)少なくとも二つの、注入容器に収容されたIL-2含有培地と、
(1−3)別途調製される末梢血単核球注入用の第1ポートと、前記抗原ペプチド含有培地注入用の第2ポートと、前記IL-2含有培地の数と少なくとも同数の、前記IL-2含有培地注入用の第3ポートと、誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた密封型培養容器と、を備え、
前記第2工程用の構成要素として、容器に収容された凍結乾燥状態の抗原提示細胞を備え、
前記第3工程用の構成要素として、
(3−1)注入容器に収容された抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地と、
(3−2)誘導された抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、排液用の第2ポートと、前記抗原特異的細胞傷害性T細胞分離用培地注入用の第3ポートと、分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第4ポートとを備えた第1密封型分離容器と、
(3−3)少なくとも二つの、注入容器に収容された増殖用培地であって、IL-2又はIL-15或いはこれら両方を含有する増殖用培地と、
(3−4)分離後の抗原特異的細胞傷害性T細胞移入用の第1ポートと、調製した抗原提示細胞移入用の第2ポートと、別途調製される血清又は血漿注入用の第3ポートと、前記増殖用培地の数と少なくとも同数の、前記増殖用培地注入用の第4ポートと、増殖した抗原特異的細胞傷害性T細胞移出用の第5ポートとを備えた密封型培養容器と、を備える、調製キット。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の調製キットを用いることを特徴とする、抗原特異的細胞傷害性T細胞の調製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−130999(P2010−130999A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166630(P2009−166630)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(308033490)株式会社ティーセルテクノロジーズ (1)
【出願人】(390004097)株式会社医学生物学研究所 (41)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】