説明

抗弾道効果製品

ASTM D−885による強度が少なくとも1100Mpaの繊維の多数の布地層からなる抗弾道製品が提案される。そこには、少なくとも1つの布地層内に異なる布地密度を持つ、少なくとも2つの群の領域が存在する。第1群の領域はワルツによる布地密度8%〜31%を有し、第2群の領域はワルツによる布地密度32%〜80%を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASTM D−885による強度が少なくとも1100MPaの繊維のヤーンで作成された布地層を有する抗弾道製品に関する。
【背景技術】
【0002】
布地層を有する抗弾道製品は一般に知られている。文献JP61275440Aは、ヤーンがサテン織に織られた布地の複数層を有する防弾チョッキを開示している。リネン織に織られたヤーンと比較して、例えばサテン織に織られたヤーンは布地層内に同じように保持されていない。それ故、文献JP61275440Aによれば、そのチョッキが被弾する際のエネルギー吸収は、リネン織で織られた布地の複数層を有するチョッキによるエネルギー吸収と比較して改良される。しかしながら、サテン織の複数の布地層の1つの欠点は、その取扱い性が貧弱なことである。例えば、貫通阻害性物品を作成する際に、そのような布地層を切断しそして1つの上に他のものを積み重ねることが非常に困難である。
【0003】
文献WO02/14588A1は、複数の布地層がサテン織を有する、防弾物品用の積層された複数の布地層の使用を開示している。しかしながら、サテン織を有する積層された複数の布地層を用いる欠点は、エネルギーを吸収するための、目の粗いサテン織の能力は、積層のために失われることである。
サテン織の複数の布地層の他の欠点は、被弾したときの高いトラウマを示すことである。抗弾道布地中のサテン織は、このように、複数の布地層の貧弱な取扱い性に加えて貧弱なトラウマ値を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、それ故、先行技術の欠点を少なくとも回避し且つそれにもかかわらず良好な抗弾道性能を達成することができる、技術分野に定義された型の抗弾道製品を入手可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、ASTM D−885による、少なくとも1100MPaの強度を持つ繊維のヤーンで作成された多数の布地層を有する抗弾道製品であって、少なくとも1つの独立した布地層内に異なる布地密度を持つ領域の少なくとも2つの群が存在し、第1群の領域はワルツによる布地密度8%〜31%を有しそして第2群の領域はワルツによる布地密度32%〜80%を有する、上記抗弾道製品により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の抗弾道製品を形成するための布地層の織意匠を概略的に示している。
【図2】比較布地層の織意匠を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ワルツによる布地密度は下記式により決定される。
DG=(d+d×f×f
ここで、d=縦ヤーンの実質直径 mm
=横ヤーンの実質直径 mm
=cm当りの縦糸の数
=cm当りの横糸の数
ヤーンの実質直径dおよび/またはdは次のように計算される。
【0008】
【数1】

【0009】
ここで、dはdまたはdのいずれかでありそして相当するヤーンのタイターdtexおよびそのヤーンの密度g/cmが用いられる。
【0010】
上記式により計算された布地密度は、リネン織で織られた布地に適用される。もし、織がリネン織でないときには、織修正係数が計算に含まれていなければならない。特別な型の織を持つ布地については、下記値が織修正係数用に用いられる;例えば
パナマ織2:2 0.56
綾織2:1 0.70
綾織2:2 0.56
綾織3:1 0.56
綾織4:4 0.38
サテン織1:4 0.49
サテン織1:5 0.44
ワルツによる式で計算された布地密度DGはこれらの修正係数と掛け合される。布地密度はパーセントで報告される。
【0011】
第1群の領域は、好ましくはワルツによる布地密度8%〜25%、特に好ましくは8%〜20%を持ち、第2群の領域は、好ましくはワルツによる布地密度32%〜70%、特に好ましくは32%〜50%を持つ。高い布地密度又は低い布地密度の利点が1つの布地層内に必要とされる場合には、それらを非常に特別な方法で用いることは可能であり有益である。例えば、比較的高い布地密度を持つ布地層の縁領域がその布地層の中央部の領域と比較して形成される。
第1群の領域は、好ましくは第1型の織を有しそして第2群の領域は、好ましくは第2型の織を有する。第1型の織は、特に好ましくは第2型の織と異なる。このように、第1群の領域が第2群の領域と比較して異なる布地密度を持つことは、第1群の領域が第2群の領域と比較して異なる型の織を持つことを通して有利に達成され得る。このように、有利な方法で、例えば2つの領域に同じヤーンタイターを持つヤーンを使用するにもかかわらず、異なる布地密度を作ることができる。
第1群の領域は、好ましくは、第1群の織と同じサテン織を持つ。サテン織は好ましくは1/5または1/4サテン織である。
【0012】
さらに、第2群の領域が1/1リネン織または綾織を持つことが特に好ましい。第1群の領域のサテン織が1/5織であるなら、綾織は2/1織であるのが特に好ましい。1/4サテン織が第1群の領域に用いられるなら、第2群の領域は2/3もしくは1/4綾織または1/1リネン織を持つのが好ましい。
第1群の領域のヤーンが第1ヤーンタイターを持ち、そして第2群の領域が第2ヤーンタイターを持つことも好ましい。第1ヤーンタイターは第2ヤーンタイターと異なるのが特に好ましい。しかしながら、第1ヤーンタイターが第2ヤーンタイターに実質的に相当していることも同様に好ましい。第2群の領域と比較して第1群の領域に異なるヤーンタイターを用いるときには、第1群の領域と第2群の領域とに同じ型の織が用いられてさえも、第1群の領域と第2群の領域との間に布地密度の差を達成することができる。第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターは100dtex〜8000dtexの範囲にあることができる。しかしながら、2つの領域が異なる型の織を有するなら、このようにして達成される布地密度の差は異なる領域に異なるヤーンタイターを用いることによってさらに有利に増加させることができる。
第1群の領域は、好ましくは100dtex〜1000dtexのヤーンタイターを持ちそして第2群の領域は、好ましくは1050dtex〜8000dtexのヤーンを有する。
【0013】
布地層が第1群の複数の領域内に第1打込数を有しそして第2群の複数の領域に第2打込数を有することが同様に好ましい。第1打込数と第2打込数とは同一であっても異なってもよく、2糸/cm〜50糸/cmの範囲にある。布地層は第1群の複数の領域に2糸/cm〜10糸/cmの第1打込数を有しそして第2群の複数の領域に10.1糸/cm〜50糸/cmの打込数を有することが特に好ましい。
第1群の複数の領域および第2群の複数の領域におけるワルツによる布地密度は、織型、ヤーン型/タイターおよび打込数の如きファクターによって影響されることは明確にされるべきである。第1群の複数の領域がこれらのファクターの1つだけで第2群の複数の領域と異なるなら、その場合には第1群の複数の領域と第2群の複数の領域との間にワルツによる異なる布地密度を達成することができる。第1群の複数の領域と第2群の複数の領域とは、2つのファクターまたは全てのファクターについて異なっていてもよい。
【0014】
一般に、本発明の製品を形成する複数布地層および/または1つの布地層は、第1群の複数の領域と第2群の複数の領域に用いられている織や打込数にかかわらず、約100dtex〜約8,000dtexのヤーンタイターを持つヤーンを有する。さらに、本発明の製品を形成するための複数の布地層および/または1つの布地層は、第1群の複数の領域および第2群の複数の領域に用いられている織やヤーンタイターにかかわらず、2糸/cm〜50糸/cmの打込数を有することができる。複数の布地層は、本発明の製品を形成するために、用いられている打込数やヤーンタイターにかかわらず、第1群の複数の領域および第2群の複数の領域でリネン織または綾織りまたはサテン織を有すことができる。
【0015】
第2群の複数の領域は布地層の全面積の少なくとも20%且つ最大で80%の面積割合を形成するのが好ましい。第2群の複数の領域の面積割合は、布地層の全面積の、特に好ましくは30%と60%の間、就中好ましくは40%と50%の間にある。第2群の複数の領域は、好ましくは布地層内に凝集しているようにデザインされるべきではなく、それに代って、布地層は、例えば第2群の複数の領域の間に複数の接触点は存在するものの、第2群の複数の領域が第1群の多数の複数の領域と互に分離されている、第2群の多数の複数の領域を持つことが好ましい。それ故、1つの布地層内に第1群の多数の非凝集領域が存在することができる。加えて、1つの布地層内にワルツによる布地密度の異なる領域の2つ以上の群が存在することも可能である。第1群の複数の領域と第2群の複数の領域のそれぞれは、好ましくは、少なくとも1つの選ばれた織の繰返しからなっている。
【0016】
本発明製品の布地層は、第1群の複数の領域として、同じヤーンタイターおよび同じ打込数を有する同じ織型を持つ布地の糸抽出抵抗の200%〜700%にもなる糸抽出抵抗を持つのが好ましい。加えて、この布地層は、第2群の複数の領域として同じヤーンタイターおよび同じ打込数を有する同じ織型を持つ布地の糸抽出抵抗の20%〜70%となる糸抽出抵抗を持つことができる。この布地層の性能はこのように第2群の複数の領域によって有利な方法で変えることができる。
第1群の複数の領域と第2群の複数の領域とは、好ましくは、互に対して細長い模様であるいは格子じま模様で配列される。菱形模様や三角形模様の如き他の模様も可能である。加えて、第1群または第2群の複数の領域が布地層の縁領域に主として配置され(例えば窓枠のように)そして、他の群の複数の領域が布地層の中央領域に配置されていることも可能である。抗弾道製品の2つの継続する布地層について、その2つの継続する布地層は本質的に同一でも異なった構造を有していてもよい。異なる構造については、例えば、第1布地層は、縁領域に第1群の複数の領域と中央領域に第2群の複数の領域を有することができ、一方第2布地層は縁領域に第2群の複数の領域と中央領域に第1群の複数の領域とを有することができる。
【0017】
抗弾道製品の布地層を形成するためのヤーンは、好ましくはアラミドヤーンまたは超高分子量ポリエチレンのヤーンまたは超高分子量ポリプロピレンのヤーン、またはポリベンツオキサゾールもしくはポリベンツチアゾールのヤーンである。テイジンアラミド社によってTWARON(登録商標)の商品名で販売されているものの如きポリ(p−フェニレンテレフタラミド)の繊維のヤーンが特に好ましい。布地密度の部分的変化に寄与する異なるヤーンを一つの布地層内に用いられることも同様に可能である。
抗弾道製品の布地層を形成するためのASTM D−885によるヤーンの繊維の強度は、好ましくは2000MPaより大きい。
本願請求項1による抗弾道製品および従属請求項による実施態様は、好ましくは、防弾保護ベストの如き保護衣類を製造するために用いられている。本発明製品は布地層の対応するデザインを通して対刺保護も保証することができる。
【0018】
説明のため、本発明が2つの図を基にしてさらに詳細に記載される。
図1は本発明の製品を製造するための布地層の織意匠を概略的に示している。複数の領域Aにおいて、布地層は、例えば37%の、ワルツによる布地密度を有するリネン織1/1を持つ。複数の領域Bにおいて、布地層は、例えば16%の、ワルツによる布地密度のサテン織1/5(カウンター2,2,3,4,4)を持つ。この複数の領域Bは、第1群の本発明の複数の領域であり、そして第2群の複数の領域である複数の領域Aと格子じま模様で配置されている。図1に図示された織意匠は、実施例1によるパッケージが次の射撃テストのために作成される布地層を有している。
図2は、相当する白黒逆の部分を持つ同じサテン織の布地の織意匠を概略的に示している。ここに示された複数の領域Cにおいて、布地層は5/1サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を持ち、他方複数の領域C’は1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を持っている。複数の領域CとC’において織が異なるにもかかわらず、ワルツによる布地密度は2つの領域で、例えば16%である。図2の実施態様では、1/5サテン織(領域C’)が2回繰返しで示されており且つ5/1サテン織(領域C)が1回繰返しで示されている。図2に示された織意匠は、比較例3によるパッケージが次の射撃テストのために製造される布地層を持っている。
【実施例】
【0019】
実施例と比較例における布地層の製造のためのヤーンはASTM−D885による強度3384MPaと有効タイター960dtexを持つ、テイジンアラミド社から商品名TWARON(登録商標)930dtex f1000として販売されている、アラミドフィラメントヤーンである。アラミドは1.44g/cmの密度を持つ。
それぞれが複数の布地層から形成された、複数のパッケージがテストされる。
【0020】
比較例1
比較例1による製品−および/またはパッケージは26層の継続する布地層からなる。各布地層は1/1リネン織と10.5/cm×10.5/cmの打込数(TC)を有している。ワルツによる布地密度はこれらの布地層のそれぞれについて37%である。
【0021】
比較例2
比較例2によるパッケージは同様に26層の布地層からなるが、各布地層は1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を有している。打込数は10.5/cm×10.5/cmである。ワルツによる布地密度はこれらの布地層のそれぞれについて16%である。
【0022】
実施例1
実施例1による本発明製品は異なる布地密度を有する。2つの群の複数の領域を有する26層の布地層からなる。本発明の製品を形成するためのそれぞれの布地層は1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)と打込数10.5/cm×10.5/cmを有する第1群の複数の領域を有している。ワルツによる布地密度は第1群の複数の領域について16%である。第2群の複数の領域は1/1リネン織と10.5/cm×10.5/cmの打込数を持つ布地層内の複数の領域によって形成されている。
ワルツによる布地密度は第2群の複数の領域について37%である。リネン織の複数の領域とサテン織の複数の領域との間の比は1:1である。それにより、サテン織に縦糸および横糸方向に2つの繰返しが存在し、リネン織に縦糸および横糸方向に6つの繰返しが存在する。ワルツによる布地密度は上記式により次のように計算された。
【0023】
DG(第2群1/1リネン:960dtex:10.5×10.5/cm)=37%
DG(第1群1/5サテン:960dtex:10.5×10.5/cm)
=37%×0.44(修正係数)=16%
【0024】
本発明製品の布地層はドビー織機を備えたグリッパ織機にドビー品として糸群を供給することにより製造される。6本のシャフトがリネン織の複数の領域を作成するためのヤーンを供給するのに必要とされそして6本のシャフトがサテン織の複数の領域を作成するためのヤーンを供給するために必要とされる。
【0025】
比較例3
比較例3によるパッケージは26層の布地層を有する。これらの布地層は各布地層が2つの異なる織を持つように実施例1に記載の方法で製造される。しかしながら、ワルツによる布地層は異なる織にもかかわらずその布地層内で同じである。用いられた織は、全領域で16%のワルツによる布地密度を有する、1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)および5/1サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を包含する。
抜取り抵抗は比較例1〜3と実施例1の製品を形成するために用いられる布地層について決定される。そうするために1つの布地層から、それぞれ縦糸と横糸方向に5つの細長布地が作られる。細長布地の長さは30cmであり、幅は布地の型により6cmと8cmの間である。それぞれの細長布地は5cmの幅で波打っている。テストされる糸は細長布地の中央に位置しておりそして細長布地の上端および細長布地の下端でそれぞれ細長布地から10cm除去される、糸10cmはこの細長布地コンポジット中に残ったままである。除去された糸は次いで細長布地の下部で1cm自由長切断される。次いで、細長布地は、前に除去し且つ切断した糸が遊離のまま残っているように底部が布地クランプでクランプされる。頂部にむき出しの糸はヤーンクランプにより、可能な最小張力でクランプされる。10cm長の布地コンポジットからその糸を抜取るに必要とされる最大力をニュートン単位で測定する。抜取り抵抗は測定された10個の試験値の合計の算術平均であると理解される。糸抜取り速度は50mm/minである。
抜取り抵抗の測定の結果を表1にまとめる。
【0026】
【表1】

【0027】
上記方法で測定された布地密度37%の布地の抜取り抵抗(比較例1)は布地密度16%の布地の抜取り抵抗(比較例2)よりも10倍大きい。比較例3の布地層のワルツによる布地密度は、比較例2におけるワルツによる布地密度に相当するが、比較例3の布地層の抜取り抵抗は交互織の使用により約半分の値になっている。実施例1による本発明製品を形成するための布地層は、比較的低い布地密度を持つ布地(比較例2)の抜取り抵抗よりも高い抜取り抵抗を持つが比較的高い布地密度を持つ布地(比較例1)の抜取り抵抗よりも低い。このように、異なる布地密度の使用は、抜取り抵抗が布地密度のように、布地層中の繊維の易動度の尺度となるために、異なる抜取り抵抗に影響する。
糸抜取り抵抗109Nを持つ、実施例1による本発明製品の布地層は、比較例2による布地、すなわち第1群の領域すなわち1/5サテン織の領域として、同じヤーンタイターと同じ打込数を持つ同じ型の織を持つ布地の抜取り抵抗の378%に達する抜取り抵抗を持っている。糸抜取り抵抗109Nを持つ、本発明製品の布地層は、比較例1の布地、すなわち第2群の領域すなわちリネン織の領域として同じヤーンタイターと同じ打込数を持つ同じ型の織を持つ布地のそれの35%に当る抜取り抵抗を持っている。
【0028】
弾道性能の比較
比較例1〜3および実施例1のそれぞれについて、弾薬1タイプ当り3つのパッケージがテストされた。各パッケージ(〜5.2kg/m)は26層の布地層を有しそして各タイプの弾薬はV50値および吸収エネルギーを決定するために10mの距離から8回射撃される。V50値は上記速度で50%の貫通確率があることを意味している。パッケージの背後にはウエイブル(weible)プラスチシンブロックが置かれた。エネルギー吸収は1/2mvで計算される。mは弾丸の重量kgであり、vはV50速度m/秒である。
【0029】
裏面変形(以下、トラウマという)を決定するための第2テストにおいて、ウエイブルプラスチシンブロックが用いられる。トラウマは、突き出し(射撃側)から離れた面側に弾丸によって起されたふくらみによって測定されることが知られている。トラウマを決定するために、各パッケージはウエイブルプラスチシンブロックの前に配置されそして5mの距離から434m/s〜443m/sの範囲のほぼ一定の速度で8回射撃された。4回の射撃でパッケージの外側領域がねらわれそして4回の射撃でパッケージの内側領域がねらわれた。選ばれた弾丸速度で貫通射撃はなく、単に弾丸が埋入された。平均トラウマはそれぞれの意匠とそれぞれの攻撃タイプについてプラスチシンに浸入した深さmmとして計算された。
射撃テストの結果のそれぞれの平均値は表2と表3にまとめられる。
【0030】
射撃テスト1
レミントン、0.44マグナム、JHP、15.6gで射撃された。
【0031】
【表2】

【0032】
表2で示されているとおり、比較例2で作成されたパッケージ(サテン織)は0.44マグナムで射撃されたとき493m/sのV50値とそれ故1896Jのエネルギー吸を持っている。しかしながら、そのパッケージが射撃されたときのトラウマは59mmである。しかしながら、比較例1のパッケージ(リネン織)は射撃時のV50は488m/sでありエネルギー吸収は1858Jである。この場合のトラウマは50mmだけである。従って、粗サテン織(比較例2)はリネン布地(比較例1)と比べて高いエネルギー吸収により特徴づけられるが、トラウマに関してはリネン布地に比べ大きく劣っている。本発明の製品(実施例1)は497m/sのV50値を有し、これは1927Jのエネルギー吸収に相当する。実施例1のパッケージのトラウマは54mmである。本発明の製品は、当業者にとり全く驚くべき且つ予測し得なかった結果で、純粋なサテン織層のパッケージと比べてエネルギー吸収の増加を示し、そのため抗弾道性の改良を構成している。加えて、実施例1のパッケージでのトラウマの値は比較例1のパッケージでのトラウマの値よりも僅かに大きい。このことは同様に全く驚くべきことであるが、明確な改良は比較例2のパッケージでのトラウマと比較して達成される。比較例3と実施例1によるパッケージの比較では、1つの布地層内に異なる織型の存在はエネルギー吸収とトラウマの改良を導き出さずその代り異なる織型とともに異なる布地密度が存在しなければならないことが同様に驚くべきことに発見された。1つの布地層内のリネン織とサテン織の組合せ(実施例1)において、サテン布地の良好な抗弾道性はリネン布地の安定性と結合されたことは驚くべきことであった。このようにして製造された布地層は純粋なリネン布地と比較して射撃されたときより良好なエネルギー吸収を示しそして純粋なサテン布地と比較して改良されたトラウマ挙動と明らかに改善された取扱性を示した。
【0033】
射撃テスト2
レミントン、0.357マグナム、JSP、10.2gで射撃した。
【0034】
【表3】

【0035】
表3から、0.357マグナムで射撃されたとき、純粋なサテン布地層のパッケージ(比較例2)のエネルギー吸収は、本発明の製品(実施例1)のエネルギー吸収より僅かに大きいが、本発明の製品を用いたときトラウマは純粋なサテン布地層を持つパッケージを射撃したとき起るトラウマよりも明らかに小さい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D−885による少なくとも1100MPaの強度を持つ繊維のヤーンの複数の布地層を有する抗弾道製品であって、少なくとも1つの独立した布地層内に、異なる布地密度を有する少なくとも2つの群の領域が存在し、そして第1群の領域は8%〜31%のワルツによる布地密度を有し且つ第2群の領域は32%〜80%のワルツによる布地密度を有することを特徴とする、抗弾道製品。
【請求項2】
第1群の領域は8%〜25%のワルツによる布地密度を有しそして第2群の領域は32%〜70%のワルツによる布地密度を有することを特徴とする請求項1による抗弾道製品。
【請求項3】
第1群の領域は8%〜20%のワルツによる布地密度を有しそして第2群の領域は32%〜50%のワルツによる布地密度を有することを特徴とする請求項1による抗弾道製品。
【請求項4】
第1群の領域は第1織型を有し、第2群の領域は第2織型を有しそして第1および第2織型は互に異なっていることを特徴とする請求項1〜3の1つもしくはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項5】
第1織型がサテン織であることを特徴とする請求項4による抗弾道製品。
【請求項6】
サテン織が1/5または1/4織である請求項5による抗弾道製品。
【請求項7】
第2織型がリネン織または綾織であることを特徴とする請求項4による抗弾道製品。
【請求項8】
綾織が2/1綾織または1/4綾織でありそしてリネン織は1/1リネン織であることを特徴とする請求項7による抗弾道製品。
【請求項9】
第1群の複数の領域のヤーンが第1ヤーンタイターを持ちそして第2群の複数の領域のヤーンが第2ヤーンタイターを持ち、第1および第2ヤーンタイターが1つの布地層内で互に異なっていることを特徴とする請求項1〜3の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項10】
第1群の複数の領域のヤーンが第1ヤーンタイターを持ちそして第2群の複数の領域のヤーンが第2ヤーンタイターを持ち、第1および第2ヤーンタイターが1つの布地層内で互に同じであるか異なっていることを特徴とする請求項1〜8の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項11】
第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターとが100dtex〜8000dtexの範囲にあることを特徴とする請求項9または10による抗弾道製品。
【請求項12】
第1ヤーンタイターが100dtex〜1000dtexでありそして第2ヤーンタイターが1050dtex〜8000dtexであることを特徴とする請求項9、10または11による抗弾道製品。
【請求項13】
第1群の複数の領域が第1打込数を有しそして第2群の複数の領域が第2打込数を有し、且つ第1および第2打込数が1つの布地層内で互に異なっていることを特徴とする請求項1〜3の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項14】
第1群の複数の領域が第1打込数を持ちそして第2群の複数の領域が第2打込数を持ち且つ第1および第2打込数が1つの布地層内で互に同じであるか異なっていることを特徴とする請求項1〜12の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項15】
第1および第2打込数が2糸/cm〜50糸/cmの範囲にあることを特徴とする請求項13または14による抗弾道製品。
【請求項16】
第1群の複数の領域が2糸/cm〜10糸/cmの打込数を持ちそして第2群の複数の領域が10.1糸/cm〜50糸/cmの打込数を持つことを特徴とする請求項13、14または15による抗弾道製品。
【請求項17】
第2群の複数の領域が1つの布地層の全領域の少なくとも20%、最大でも80%の領域割合を持つことを特徴とする請求項1〜16の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項18】
布地層が、第1群の複数の領域と同じヤーンタイターおよび同じ打込数を持つ同じ型の織を持つ布地の糸引抜抵抗の200%〜700%に達する糸引抜抵抗を有することを特徴とする請求項1〜17の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項19】
布地層が、第2群の複数の領域と同じヤーンタイターおよび同じ打込数を持つ同じ型の織を持つ布地の糸引抜抵抗の20%〜70%である糸引抜抵抗を有することを特徴とする請求項1〜18の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項20】
第1群の複数の領域と第2群の複数の領域とが互に格子じま模様で配置されていることを特徴とする請求項1〜19の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項21】
第1群の複数の領域と第2群の複数の領域とが互に細長い模様で配置されていることを特徴とする請求項1〜19の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項22】
ヤーンがアラミドヤーンまたは超高分子量ポリエチレンヤーンまたは超高分子量ポリプロピレン、またはポリベンツオキサゾールもしくはポリベンゾチアゾールのヤーンであることを特徴とする請求項1〜21の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項23】
ヤーンの繊維がASTM−D885による、2000MPaより大きい強度を持つことを特徴とする請求項1〜22の1つまたはそれ以上による抗弾道製品。
【請求項24】
請求項1〜23の1つまたはそれ以上による抗弾道製品の、保護衣類の製造への使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523011(P2011−523011A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510946(P2011−510946)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056115
【国際公開番号】WO2009/153120
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(502036011)テイジン・アラミド・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】