説明

抗感染剤の徐放

【課題】嚢胞性線維症(CF)患者の肺感染を治療するために用いるアミノグリコシド系薬物を、腎機能不全のある患者でも腎毒性及び聴器毒性が発生しない低い維持量にする治療法を提供する。
【解決手段】アミノグリコシド、ホスファチジルコリン及びステロールを含むリポソーム性アミノグリコシド合物であって、ホスファチジルコリン及びステロールのアミノグリコシドに対する重量比が2.5:1以下である、リポソーム性アミノグリコシド調合物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2002年10月29日に出願された米国仮出願第60/421,923号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
吸入などによる投与に適したいくつかの徐放技術は、リポソームや脂質複合体を利用して、徐放により肺及び全身における薬物の治療効果を長引かせ、また、薬物の疾患部位へのターゲティング能及び取り込み能を高めている。本発明は、リポソーム性抗感染剤と、リポソーム性抗感染剤又は脂質と複合体を形成した抗感染剤を用いて、嚢胞性線維症(CF)患者の肺感染を治療する方法とを包含するものである。意外にも、当該の新規な調合物を用いた治療法の要する投薬量は、当業で効験があると知られるものよりも有意に低い。
【0003】
Goodman and Gilman's The
Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 第8版で報告されるように、腎毒性及び聴器毒性の発生はアミノグリコシドが蓄積する濃度に関係するため、腎機能不全のある患者でこれらの薬物の維持量を低くすることが重要である。アミノグリコシドは、患者の障害に関係なく、前庭又は聴覚の機能不全や腎毒性を生じることがあるため、一般に維持量を減らすことが重要である。本発明は、維持量の劇的な減少を提供するものである。
【0004】
CF患者は濃い粘液及び/又は痰の分泌を肺内に有し、しばしば結果的な感染や、細菌によるコロニ形成を原因とするバイオフィルムも有することがある。これらの流体及び物質のすべては、抗感染剤で感染を効果的に狙う際に障壁となる。本発明は、これらの障壁を克服し、さらには、投薬量(量又は頻度で)の低減を可能にすることで、患者に対する薬物負荷を減らすことができるものである。
【0005】
一般に肺感染の場合、本発明により提供される投薬スケジュールは、薬物負荷を減らす手段となる。
【0006】
発明の概要
とりわけ、有効量のリポソーム性/複合体形成した抗感染剤を、患者に肺投与するステップを含む、嚢胞性線維症患者における肺感染症を治療又は改善する方法が提供され、この場合、(i)投与される量は、相対的遊離薬物量の50%以下であるか、又は(ii)投薬は1日一回以下であるか、又は(iii)両者、である。
【0007】
さらに、有効量のリポソーム性/複合体形成した抗感染剤を、患者に肺投与するステップを含む、動物における肺感染症を治療又は改善する方法が提供され、この場合、(i)投与される量は、相対的遊離薬物量の50%以下であり、そして(ii)投薬は2日毎に1回以下、である。
【0008】
発明の詳細な説明
本出願は、脂質ベースの粒子に封入された抗感染剤(例えば抗生物質)の投与を含む、嚢胞性線維症患者などにおいて肺感染を治療又は改善する方法を開示するものである。
【0009】
抗感染剤とは、細菌、ミコバクテリア、真菌、ウィルス又は原虫感染など、感染に対して作用する作用薬である。
【0010】
本発明により包含される抗感染剤には、限定はしないが、アミノグリコシド(例えば ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、カナマイシン等)、テトラサイクリン(例えばクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン等)、スルホンアミド(例えばスルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメタオキサゾール、スルフィソキサゾール、スルファセタミド等)、パラアミノ安息香酸、ジアミノピリミジン(例えばトリメトプリム、しばしばスルファメトキサゾールと併用される、ピラジンアミド等)、キノロン(例えばナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシン及びノルフロキサシン等)、ペニシリン(例えばペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリン、インダニル、チカルシリン、アズロシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン等)、ペニシリナーゼ耐性ペニシリン(例えばメチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン等)、第一世代セファロスポリン(例えばセファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、セファロシン、セファピリン、セファゾリン等)、第二世代セファロスポリン(例えばセファクロール、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル;セフメタゾール、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォラニド等)、第三世代セファロスポリン(例えばセフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン等)、他のベータ-ラクタム(例えばイミペネム、メロペネム、アズトレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム等)、ベータラクタマーゼ阻害剤(例えばクラブラン酸)、クロラムフェニコール、マクロライド(例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン等)、リンコマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、ポリミキシン類(例えばポリミキシンA、b、C、D、E1(コリスチンA)、又はE2、コリスチンB又はC等)コリスチン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、エチオンアミド、アミノサリチル酸、シクロセリン、カプレオマイシン、スルホン(例えばダプゾン、スルフォキソンナトリウム等)、クロファジミン、サリドマイド、又は、脂質封入可能ないずれか他の抗菌剤、がある。抗感染剤には、ポリエン抗カビ剤(例えばアンフォテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン等)、フルシトシン、イミダゾール(例えばn-チコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール等)、トリアゾール(例えばイトラコナゾール、フルコナゾール等)、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾールシクロピラックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロギン、トルナフテート、ナフチフィン、テルビナフィン、又は、脂質封入もしくは複合体形成可能ないずれか他の抗カビ剤を含め、抗カビ剤を含めることができる。議論及び例は、主にアミカシンに関するが、本出願の範囲は、この抗感染剤に限定されるものとは意図されていない。薬物の組合せを用いることができる。
【0011】
特に好適な抗感染剤には、アミノグリコシド類、キノロン類、ポリエン抗カビ剤類及びポリミキシン類がある。
【0012】
本発明の方法で治療できる肺感染症(例えば嚢胞性線維症患者)の中には、シュードモナス(例えばP.アエルギノーサ(原語:P. aeruginosa)、P.パウシモビリス(原語:P .paucimobilis)、P.プチーダ(原語:P. putida)、P.フルオレセンス(原語:P. fluorescens, )及びP.アシドヴォランス(原語:P. acidovorans))、ブドウ球菌性、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(原語:(MRSA))、連鎖球菌性(ストレプトコッカス・ニューモニエ(原語:Streptococcus
pneumoniae)を含む)、エシェリヒア-コリ(原語:Escherichia coli)、クレブシエラ(原語:Klebsiella )、エンテロバクター(原語:Enterobacter)、セラチア(原語:Serratia )、ヘモフィルス(原語:Haemophilus )、エルシニア-ペスティス(原語Yersinia pestis)、ブルクホルデリア-シュードマレイ(原語:Burkholderia pseudomallei)、B.セパシア(原語:B. cepacia )、B.グラディオリ(原語:B. gladioli )、B.ムルチヴォランス(原語:B. multivorans )、B.ヴェトナミエンシス(原語:B. vietnamiensis)、マイコバクテリウム-ツベルキュローシス(原語:Mycobacterium tuberculosis)、
M.アヴィウム複合 (MAC)(M.アヴィウム(原語:M. avium)及びM.イントラセルラ(原語:M. intracellulare)、M.カンサシ(原語:M. kansasii)、M.ゼノピ(原語:M. xenopi)、M.マリナム(原語:M. marinum)、M.ウルセランス(原語:M. ulcerans)、又はM.フォルテュイタム(原語:M. fortuitum )複合体(M.フォルテュイタム及びM.ケロネイ(原語:M. chelonei)感染、がある。
【0013】
ある好適な実施態様では、本発明な、リポソーム性/複合体形成したアミカシンの投与を含む治療法を包含する。
【0014】
ここで論じられる前記「リポソーム性又は脂質複合体形成した」抗感染剤、又は「リポソーム性/複合体形成した」抗感染剤、又は「Lip抗感染剤」又は「Lip-An」は、当該抗感染剤の重量で少なくとも約1%が脂質に、該脂質との複合体の一部として、あるいはリポソームとして、結合しているようないずれかの形の抗感染性組成物であり、このとき、当該の抗生物質は水相中にあっても、又は、疎水性の二重層中にあっても、又は、リポソーム性二重層の界面にある先頭部の基領域にあってもよい。好ましくは、少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約25%が、そのように結合しているとよい。結合は、脂質と、脂質に結合した薬物とが保持され、遊離した薬物が濾過物中に来るようなフィルタを用いた分離により、測定される。
【0015】
リポソーム性/複合体形成した抗感染剤による治療に必要な投薬量は、従来公知の治療法よりも著しく少ない。ある好適な実施態様では、1日当たり100mg未満のアミノグリコシドをヒトに投与する。別の好適な実施態様では、ほぼ30乃至50mgを一日おきか、又は3日ごとに投与する。投薬量は、他の種に関しても、リポソーム性でないもしくは脂質複合体形成していない抗感染剤に推奨される投薬量に比較して、対応して減らすことができると予測される。これは意外にも低い投薬量である。
【0016】
以下に具体的な投薬量を提示していない場合は、本発明の好適な投薬量は、肺にネブライザを通じて送達された場合に、肺内のCFU数を14日間の治療経過にわたって一桁の規模で減少させるために有効な最小遊離薬物(それはもちろん、塩であってもよい)の50%以下、35%以下、20%以下、又は10%以下である。相対的遊離薬物とは、本発明の薬物投与に適用される投薬期間で用いられるであろう蓄積量である。本段落で定義された該相対的最小遊離薬物とは「相対的遊離薬物量」である。
【0017】
本発明の非CF治療実施態様は、いずれの動物でも用いることができるが、好ましくはヒトで用いるとよい。ある動物における相対的量は、このような動物に関して測定される。
【0018】
投薬スケジュールは、好ましくは1日1回以下であるとよい。好適な実施態様では、該投薬スケジュールは、1日置き、3日目毎、毎週、以下である。例えば投薬スケジュールは、相対的遊離薬物量の50%以下を用いて一日置き以下であってよい。あるいは、例えば、投薬は、相対的遊離薬物量の35%以下を用いて毎日であってもよい。
【0019】
本発明の感染症を治療するためには、ある医薬化合物の有効量は臨床医の認識するところであろうが、治療しようとする疾患、又は、防止又は治療しようとする状態、の一つ以上の症状を治療、軽減、改善、消失又は予防するために有効な量、あるいは、該疾患又は状態の病理に臨床上認識可能な変化をもたらすために有効な量、を含むものである。改善には、予防的に治療された動物における感染の発症率又は重篤度の軽減が含まれる。いくつかの実施態様では、有効量は、肺感染の症状が起きた後で治療又は改善するために有効なものである。いくつかの他の実施態様では、有効量は、予防的に治療された動物において(統計学的研究で測定したところ)平均的発症率又は重篤度を治療又は改善するために有効なものである。
【0020】
リポソーム性もしくは他の脂質ベースの送達系は、ネブライザ・スプレー、粉末、又はエーロゾルとしての吸入で投与することも、あるいは髄腔内投与することもできる。吸入投与が好ましい。全体的な結果は、遊離薬物又は非経口型の薬物に比べて、投与頻度が少なくなり、または治療指数が高くなる。リポソーム又は脂質複合体は、肺の被覆層又は肺表面活性物質と適合性がありながらも、それらの薬物保護能のために特に有利である。
【0021】
本発明は、肺グラム陰性感染症の治療法を包含するものである。有用に治療される感染症の1つは、CF患者における慢性シュードモナス感染である。(例えばCF患者における)肺感染症のアミカシンを用いた公知の治療法は、一般に、一日当たりほぼ200乃至600mgのアミカシン又はトブラマイシンを吸入により投与することを含む。本発明により、ある好適な実施態様では、1日当たり100mg以下(又は、投薬頻度を下げる場合は、一日当たり100mg以下に正規化する)のアミカシンを投与することによる治療が可能となる。さらに別の実施態様では、毎日60mg以下のアミカシン投与を行う。そしてさらに別の実施態様では、2日に一回を越えて、30乃至50mgの投与を行う。最も好適な実施態様は、一日おき又は3日ごとに、ほぼ30乃至50mgの投与を含むものである。
【0022】
トブラマイシンを用いた肺感染症の公知の治療法は、一般に、成人及び6歳以上の小児では300mgを1日に2回、投与することを含む。本発明により、ある好適な実施態様では、1日当たり100mg以下のトブラマイシンの投与による治療が可能となる。さらに別の実施態様では、毎日、60mg以下のトブラマイシンの投与を行う。そしてさらに別の実施態様では、2日に1回を越えず、ほぼ30乃至50mgの投与を行う。最も好適な実施態様は、一日おき又は3日ごとに、ほぼ30乃至50mgの投与を含むものである。
【0023】
本発明の組成物で用いられる脂質は、ホスホリピド、トコフェロール、ステロイド、脂肪酸、アルブミンなどの糖タンパク質、負に帯電した脂質及び陽イオン性脂質を含め、合成でも、半合成でも、又は天然で生じる脂質でもよい。ホスホリピドには、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、及び卵ホスファチジン酸(EPA);大豆の相当物、大豆ホスファチジルコリン(SPC);SPG, SPS、SPI、SPE、及びSPA;水素化した卵及び大豆相当物(例えばHEPC、HSPC)、コリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンを含め、12乃至26個の炭素原子を含有する鎖のグリセロールの2位及び3位にある脂肪酸のエステル結合と、グリセロールの1位に様々な先頭基とから成る他のホスホリピドや、対応するホスファチジン酸、がある。これらの脂肪酸上にある鎖は、飽和していても、又は不飽和でもよく、当該のホスホリピドは、様々な鎖長及び様々な程度の不飽和の脂肪酸から構成されていてもよい。具体的には、本調合物の組成物には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、天然型肺表面活性物質の主要構成成分や、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)を含めることができる。他の例には、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)及びジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及びジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)及びジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE) 及び、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン (PSPC) 及びパルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール (PSPG)のような混合ホスホリピド、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、セラニド、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、及び、モノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン (MOPE)のような単アシル化ホスホリピド、がある。
【0024】
用いられる脂質には、脂肪酸、ホスホリピド及びグリセリドのアンモニウム塩、ステロイド、ホスファチジルグリセロール (PGs)、ホスファチジン酸 (PAs)、ホスホチジル(原語: phosphotidyl)コリン
(PCs)、ホスファチジルイノシトール (PIs) 及びホスファチジルセリン (PSs)、がある。当該の脂肪酸には、飽和又は不飽和の12乃至26個の炭素原子の炭素鎖長の脂肪酸が含まれる。いくつかの具体的な例には、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン及びステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン (DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン (DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン (DPEP) 及びジステアロイルエチルホスホコリン (DSEP)、N-(2, 3- ジ-(9 (Z)-オクタデセニルオキシ)-プロップ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド (DOTMA) 及び 1, 2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン (DOTAP)、がある。ステロイドの例には、コレステロール及びエルゴステロールがある。PGs、PAs、PIs、PCs 及び PSs の例には、DMPG、DPPG、DSPG、DMPA、DPPA、DSPA、DMPI、DPPI、DSPI、DMPS、DPPS 及びDSPS、DSPC、DPPG、DMPC、DOPC、卵PC、がある。
【0025】
DPPGなどのホスファチジルコリンから成るリポソーム又は脂質複合体は、肺胞マクロファージなどの肺内の細胞により取り込みを助け、肺内の抗感染剤の徐放に役立つ (Gonzales-Rothi et al. (1991))。PGs、PAs、PSs 及びPIsなどの負に帯電した脂質は、粒子の凝集を抑えることに加え、吸入調合物の徐放上の特徴や、全身への取り込みに向けた肺を通過する調合物の輸送(トランスサイトーシス)において、役割を果たすことができる。当該のステロール化合物は、本調合物の放出及び漏出上の特徴に影響を与えると考えられる。
【0026】
リポソームは、水体積を捉えて内包する完全に閉じた脂質二重層の膜である。リポソームは、単層ベシクル(単一の膜二重層を持つ)であっても、又は多層ベシクル(それぞれ隣のものから水相により隔てられた、複数の膜二重層を特徴とする玉葱様の構造)であってもよい。二重層は疎水性の「尾」の領域と、親水性の「頭部」の領域とを柚須得る2つの脂質単層から成る。この膜二重層の構造は、脂質単層の疎水性(非極性)の「尾」が、二重層の中心に向かい、親水性の「頭部」が水相を向いているようなものである。脂質複合体は、脂質と、取り込ませようとする抗感染剤との間の結合である。この結合は共有結合でも、イオン結合でも、静電結合でも、非共有結合でも、又は立体的結合であってもよい。これらの複合体は、非リポソーム性であり、更なる水溶性の溶質を捉えることができない。このような複合体の例には、アンフォテンシンBの脂質複合体 (Janoff et al.,
Proc. Nat Acad. Sci., 85:6122 6126, 1988) や、ドキソルビシンと複合体形成したカルジオリピンがある。
【0027】
脂質包接物は、一種以上の脂質を用いた、三次元状のかごに似た構造であり、この構造は、対生物活性作用薬を捕捉するものである。このような包接物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
プロリポソームは、水性の液体と接触したときにリポソーム又は脂質複合体となることができる調合物である。攪拌又は他の混合が必要なこともある。このようなプロリポソームは、本発明の範囲内に含まれる。
【0029】
リポソームは多様な方法により作成することができる(例えばBally,
Cullis et al., Biotechnol Adv. 5(1):194, 1987を参照されたい)。Banghamの方法 (J.
Mol. Biol., J Mol Biol. 13(1):238-52, 1965) では通常の多層ベシクル
(MLVs)が作製される。Lenk ら (米国特許第4,522,803号、第5,030,453号及び第5,169,637号)、Fountain ら(米国特許第4,588,578号)及びCullis ら(米国特許第4,975,282号)は、それらの水性区画のそれぞれに実質的に同等な層間溶質分布を有する多層リポソームを作製する方法を開示している。Paphadjopoulos らは、米国特許第4,235,871号で、逆相蒸発によるオリゴラメラ・リポソームの調製を開示している。
【0030】
単層ベシクルは、例えばCullis ら (U.S. Pat. No. 5,008,050) 及び Loughrey ら(米国特許第5,059,421号)の押出法など、数多くの技術でMLVから作製することができる。音波破砕及び均質化を用いて、より小型の単層ラメラリポソームをより大きなリポソームから作製することができる。(例えばPaphadjopoulos et
al., Biochim. Biophys. Acta., 135:624-638, 1967; Deamer,
米国特許第4,515,736号;及びChapman et
al., Liposome Technol., 1984, pp. 1-18を参照されたい)。
【0031】
Bangham ら (J. Mol. Biol., 1965, 13:238-252) の最初のリポソーム調製法は、ホスホリピドを有機溶媒に懸濁させたものを乾燥するまで蒸発させて、ホスホリピドのフィルムを反応容器上に残す方法に関する。次に、適した量の水相を加え、この混合液を「膨潤」させ、その結果できる、多層ラメラベシクル(MLV)から成るリポソームを機械的手段により分散させる。この調製法は、Papahadjopoulos ら (Biochim. Biophys,
Acta.,
1967, 135:624-638)が解説した小型の音波破砕された単層ラメラベシクルや、大型の単層ラメラベシクルの開発に基礎となる。
【0032】
逆相蒸発法、輸注法、及び界面活性剤希釈法など、大型の単層ラメラベシクル(LUV)を作製する技術を用いてリポソームを作製することができる。リポソームを作製するためのこれら及び他の方法のレビューは、その関連する部分を引用をもってここに援用することとする文献 Liposomes, Marc Ostro,
ed., Marcel Dekker, Inc., New
York, 1983、第1章に見ることができる。さらに、その関連する部分を引用をもってやはりここに援用することとするSzoka, Jr. et al., (1980, Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9:467)も参照されたい。
【0033】
ベシクルを調製するために用いられる他の技術には、逆相蒸発ベシクル(REV)を形成するもの、Papahadjopoulos らの米国特許第4,235,871号、がある。使用可能な別のクラスのリポソームは、実質的に同等なラメラ溶質部分を有することを特徴とするものである。このクラスのリポソームは、Lenk らの米国特許第4,522,803号に定義された安定な多層ラメラベシクル(SPLV)と命名されており、Fountainらの米国特許第4,588,578号に解説された通りの単相ベシクルと、上に解説された通りの凍結解凍された多層ラメラベシクル (FATMLV) と含有する。
【0034】
コレステロールヘミスクシネートなど、多種のステロール及びそれらの水溶性の誘導体が、リポソームを形成するために用いられてきた。具体的には1988年1月26日発行のJanoff らの米国特許第4,721,612号、標題「Steroidal Liposomes」
を参照されたい。Mayhew らは、抗菌剤及び抗カビ剤を、αトコフェロール及びそれらの特定の誘導体を含むリポソーム中に封入することにより、それらの毒性を低減する方法を解説した。さらに、多種のトコフェロール及びそれらの水溶性の誘導体が、リポソームを形成するために用いられてきた。Janoff らの米国特許第5,041,278号を参照されたい。
【0035】
リポソーム又は脂質複合体を形成するためのプロセスは、「溶媒輸注」プロセスを含む。これは、一種以上の脂質を、少量、好ましくは最小量のプロセス適合性溶媒に溶解させて、脂質懸濁液又は溶液(好ましくは溶液)を形成させた後、この溶液を、対生物活性作用薬を含有する水性培地に注射することを含むプロセスである。典型的には、プロセス適合性溶媒とは、透析などの水性のプロセスで洗い落とすことのできるものである。冷/温循環させる当該の組成物は、好ましくは、溶媒輸注により形成されるとよく、エタノール輸注が好ましい。アルコールは溶媒として好ましい。溶媒輸注の一種である「エタノール輸注」とは、一種以上の脂質を、少量、好ましくは最小量のエタノールに溶解させて、脂質溶液を形成させた後、この溶液を、対生物活性作用薬を含有する水性培地に注射することを含むプロセスである。溶媒の「少」量とは、輸注プロススでリポソーム又は脂質複合体を形成することに適合する量である。このようなプロセスは、出願の全文を引用をもってここに援用することとする、2003年8月4日出願のLee らの米国出願 10/634,144号、2003年3月5日出願のPilkiewicz らの米国出願 10/383,173号、及び2003年3月5日出願の米国特許出願 10/383,004号、に解説されている。
【0036】
リポソーム又は脂質複合体の分粒は、当業者に公知であり、かつ容易に実施される押出、音波破砕及び均質化技術などの数多くの方法により、達成することができる。押出は、リポソームを一回以上、規定のポア・サイズを有するフィルタに向かって圧力をかけて通すステップを含む。このフィルタは一般に、ポリカーボネートから成るが、このフィルタを、リポソームと相互作用せず、また、充分な圧力下での押出が可能なように充分強度のあるいずれかの耐久材料から形成してよい。好適なフィルタには「直通」フィルタがあるが、なぜならこれらは一般に、本発明の好適な押出プロセスの高圧に耐えるからである。「蛇行通過」フィルタも用いてよい。押出にはまた、分岐ポア型の酸化アルミニウム多孔質フィルタを通してリポソームを押し出すステップを含む、AnotecOTM フィルタなどの非対称のフィルタを使用することもできる。
【0037】
リポソーム又は脂質複合体は、音波エネルギを用いてリポソームを破壊又は剪断することで、より小型のリポソームに自発的に再形成させる音波破砕により、サイズを小さくすることもできる。音波破砕は、槽型音波破砕器で生じる音中心にリポソーム懸濁液を含有するガラス管を浸漬することにより、行われる。代替的には、リポソーム懸濁液と直接接触したチタン・プローブの振動により音波エネルギを生じさせるプローブ型の音波破砕器を用いてもよい。ギフォード・ウッド・ホモジナイザ、ポリトロンTM 又はマイクロフルイダイザTMなどの均質化及び粉砕装置を用いても、大型のリポソーム又は脂質複合体をより小型のリポソーム又は脂質複合体に破壊することができる。
【0038】
その結果できるリポソーム/複合体は、接線流濾過など、当業で公知の方法を用いて均質な集団に分離させることができる。この手法では、不均質な大きさのリポソーム又は脂質複合体の集団を接線流フィルタに通過させることで、上限及び/又は下限の大きさ制限のあるリポソーム集団ができる。異なる大きさの、即ち異なるポア直径を有する2つのフィルタを用いると、第一のポア直径よりも小さなリポソームはこのフィルタを通過する。次にこの濾過物に、第一のフィルタよりもポア・サイズの小さい第二のフィルタを通す接線流濾過を行うことができる。このフィルタの保持物は、それぞれ第一及び第二のフィルタのポア・サイズにより規定された上限及び下限の大きさを有するリポソーム/複合体集団である。
【0039】
Mayer らは、例えばアントラサイクリン又はビンカ・アルカロイドなどの抗新生物作用薬など、親油性のイオン化可能な対生物活性作用薬を効率的に捕獲する際の問題は、膜内外イオン勾配を利用することで軽減できることを見出した。より多量の取り込みを誘導することの他にも、このような膜内外の勾配は、リポソーム/複合体中への抗感染剤の保持を増す作用をすることもできる。
【0040】
リポソーム性/複合体形成した抗感染剤は、持続的な抗感染効果及び低い毒性を有するため、投与頻度も少なくてすみ、また治療指数も高い。前臨床動物研究や、同等な用量レベルのトブラマイシン(リポソーム性でも、脂質複合体形成したものでもない)を吸入した場合に比較して、リポソーム性/複合体形成したアミカシンは、投与直後から24時間後という時間にわたって、トブラマイシンの2乃至数百倍の肺内薬物レベルを有することが示されている。加えて、リポソーム性/複合体形成したアミカシンはこれらのレベルをゆうに24時間にわたって維持した。CF患者に見られるシュードモナス感染を模倣するようにデザインされた動物モデルでは、リポソーム性/複合体形成したアミカシンは、有利アミノグリコシドに比較して、動物の肺内感染を大きく消失させることが示された。
【0041】
肺表面活性物質により、呼吸中の肺の拡張及び圧縮が可能である。これは、肺を脂質及びタンパク質の組合せで被覆することにより、達成されている。この脂質は、外側を向いた疎水性の鎖を持つ単層として提供される。この脂質は、肺表面活性物質の80%を占め、この脂質の大半はホスファチジルコリンであり、その50%はジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC) (Veldhuizen et al, 1998)である。提供される表面活性物質タンパク質(SP)は、構造を維持したり、呼吸中に起きる肺表面活性物質の拡張及び圧縮の両方を促したりする働きをする。これらのうち、SP-B 及びSP-C は特異的な溶解上の挙動を有し、またリポソームを溶解させることができる (Hagwood et al.,
1998; Johansson, 1998)。この溶解上の挙動は、リポソームの段階的な分解や、続くそれらの内側の内容物の放出を促すことで、貯蔵作用を可能にしていると考えられる。リポソームのこのような分解は、エキソサイトーシスにより放出される層状体の自発的な解舒に証左されるように天然で起きる (Ikegami & Jobe, 1998) 。肺表面活性物質内で同化されることに加え、リポソームを、貪食によりマクロファージにより直接、飲食させることができる (Couveur et al.,
1991; Gonzales-Roth et al., 1991; Swenson et al, 1991)。肺胞マクロファージによるリポソームの取り込みは、薬物を罹患部位に送達することのできる別の手段である。
【0042】
吸入使用に向けたリポソーム又は脂質複合体のいずれかを形成するために用いることが好ましい脂質は、肺表面活性物質に見られる内因性脂質に共通のものである。リポソームは、所望の医薬を捕捉する二重層から成る。これらを、異なる層の脂質内か、又は、層間の水性空間内に捕捉された医薬と同軸にある二重層の多層ラメラ・ベシクルとして、構成することができる。本発明は、固有のリポソーム及び脂質/薬物複合体を作製するための固有のプロセス。これらのプロセスと、これらのプロセスの生成物の両方が、本発明の一部である。
【0043】
本発明のプロセスを用いた脂質対薬物比は、好ましくは3対1未満であるとよい。そしてより好ましくは、前記の脂質対薬物比は、2.5対1未満である。さらに、特定の期間生成物を透析した後の遊離抗感染剤のパーセンテージは減少させられる。
【0044】
ここで解説された全てのプロセスは、大規模な無菌的製造に容易に適合させることができる。最終的なリポソームの大きさは、脂質の組成、濃度、医薬品添加物、及び加工パラメータを改変することにより、調節が可能である。
【0045】
嚢胞性線維症患者における慢性疾病の大きな原因である、シュードモナス-アエルギノーサ(原語:Pseudomonas aeruginosa)などの感染性疾患を治療する上での障壁は、上皮細胞上の痰/バイオフィルム障壁内の薬物透過である(図1)。図1では、ドーナツ型は、リポソーム/複合体形成した抗感染剤を表し、「+」の記号は遊離抗感染剤を表し、「−」の記号はムチン、アルギン酸及びDNAを表し、そして実線の棒の記号はシュードモナス-アエルギノーサを表す。この障壁は、細菌由来のアルギン酸又はエキソポリサッカリド内に埋め込まれたコロニ形成した及びプランクトン性の両方のP.アエルギノーサや、損傷した白血球由来のDNA、そして肺上皮細胞由来のムチン、から成り、これらの全てが、正味で負の電荷を持つ (Costerton, et al., 1999)。この負の電荷が結び付き合って、
アミノグリコシドなどの性の電荷を持つ薬物の透過を妨げることで、それらを生物学的に無効にする (Mendelman et al., 1985)。抗感染剤をリポソーム又は脂質複合体内に捕捉すると、痰/バイオフィルムへの非特異的結合から抗感染剤を遮蔽もしくは部分的に遮蔽でき、こうして(捕捉されたアミノグリコシドと一緒に)リポソーム又は脂質複合体の透過が可能になるであろう(図1)。
【0046】
アミカシンは、細菌酵素に対して高度の耐性を有することが示されているため、トブラマイシン及びゲンタマイシンを含む他のアミノグリコシドで見られるよりも、より大きなパーセンテージの可能性ある臨床単離物となっている (Price et al., 1976)。具体的には、P.アエルギノーサ単離物は、他のアミノグリコシドよりもアミカシンに対して遙かに感受性があり、他方、何の交差耐性も示さない(Damaso et al.,
1976)。
【0047】
リポソーム性/複合体形成したアミカシンの徐放及び貯蔵効果が、図2にはっきりと見られる。この研究では、ラットにトブラマイシンを気管内及び静脈内投与により与えた。これらのラットにはまた、リポソーム性/複合体形成したアミカシンを同じ用量(4mg/ラット)、気管内投与した。該データは、徐放及び貯蔵効果が達成されたのは、リポソーム性/複合体形成したアミカシンを用いた場合のみであることを示している。実際、投薬後24時間で、リポソーム性/複合体形成したアミカシンは、著しい薬物レベルを動物の肺内で示し、他方、両トブラマイシン調合物は、取るに足らぬレベルしか示さず、その主な原因は、急速な全身吸収であると考えられる。リポソーム性/複合体形成した抗感染剤に関して、肺内のアミノグリコシドのこのような百倍を越える増加は、現在認可されているTOBITM調合物(カリフォルニア州アメリーヴィル、キロン・コーポレーション)よりも取り込みを頻繁に行わせられないような徐放リポソーム性/複合体形成した抗感染剤という考えの裏付けとなる。
【0048】
さらに、痰/バイオフィルムが存在すると、遊離アミノグリコシドの透過が、その表面への抗感染剤の結合が原因で、妨げられる(図1)。従って、1000 pgのトブラマイシン/肺組織1グラム、を越える用量が、CF患者で治療効果を示すためには必要である。これは、リポソーム性/複合体形成したアミカシンで克服される。このように、薬物の治療的レベルは、遊離トブラマイシンに比較して、アミカシンのリポソーム性/複合体形成した調合物では、より長時間、維持される。結合及び透過のこのような促進は、抗菌剤が最小阻害濃度よりも低いレベルでin vivoに存在するときに通常見られる細菌耐性の発生を、リポソーム性/複合体形成したアミカシンに大きく低下させる手段手段ともなるであろう。
【0049】
アミカシンの薬物動態を、遊離トブラマイシン又はリポソーム性/複合体形成したアミカシンの気管内(IT)投与後のラットで判定した。これらのデータを、遊離トブラマイシンの尾の静脈への注射後に、肺内で得られた分布と比較した。すべての場合で、4mg/ラットの用量を投与した。図2に見られるように、注射に比べ、気管内では、はるかに多量のアミノグリコシドの沈着を送達することができる。リポソーム性/複合体形成した抗感染剤技術の貯蔵効果も、IT又はIVのいずれかで投与されたトブラマイシンに比較したそれで実証されており、リポソーム性/複合体形成したアミカシンに関する百倍を越える薬物の増加は、投与後24時間後の肺でもまだ維持される。このように、薬物の治療的レベルは、遊離トブラマイシンに比較して、アミカシンのリポソーム性調合物では、より長時間、維持される。
【0050】
CF患者の痰へのアミノグリコシドの結合は、特にこの結合が当該抗感染剤の対生物活性を低下させる場合に、問題である (Hunt et al., 1995)。リポソーム性/複合体形成したアミカシンが生物活性を長時間にわたって維持できるかどうかを判定するために、正常なラットにリポソーム性/複合体形成したアミカシンを気管内点滴により投与した。これに続き、気管支肺胞潅注(BAL)によりそれを2又は24時間、除去して、生物活性を判定した。限外濾過に続き濾過(0.2ミクロン)を行って試料を濃縮して、混入した肺内微生物を取り除いた。アミカシン濃度はTDX装置を用いて判定され、生物活性はミューラー・ヒントン・ブロス希釈検定法を用いて判定された(シュードモナス-アエルギノーサ)。結果を以下の表1に示す。
【0051】
【表1】




【0052】
上の表に示すように、回収された濾過済みのリポソーム性/複合体形成したアミカシンは、ミュラー・ヒントン・ブロス検定法において、P.アエルギノーサを24時間後でも4のMICで致死させることができた。2時間目の時点では、2のMICが得られ、これは、濾過済みのリポソーム性/複合体形成したアミカシンのストックで得られたものと同様である。このように、リポソーム性/複合体形成したアミカシンは、肺内で24時間後でもまだ尚、有効であった。24時間目の時点では、同じ用量の遊離トブラマイシンは、BALで検出不能であった。このことは、本リポソーム性/複合体形成した抗感染剤調合物が肺内で保持されたということだけでなく、それは、痰/バイオフィルムを透過させるために長時間にわたって自由に利用できるということも示している。リポソーム性/複合体形成したアミカシンは遊離抗感染剤を経時的に放出しながらも、肺内で該抗感染剤の高レベルを維持するという、図2及び表11(下記)で証左された事実と、これらのデータとを組み合わせると、このシステムは経時的な持続的抗感染剤効果を生じるであろうという理論的解釈が裏付けられる。この効果は、シュードモナスの生物負荷と、抗感染剤の谷間のレベルを原因とする耐性の発生の両方を減らす上で重大であるはずである。
【0053】
リポソーム性/複合体形成したアミカシンのゆっくりとした放出と、その持続的な持続的な抗感染効果のin vitroでの実証として、本調合物をPAO1粘液性シュードモナスを含有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者由来の痰中でインキュベートした。さらに本リポソーム性/複合体形成したアミカシンを、PAO1粘液性シュードモナスを含有するアルギン酸中でもインキュベートした。両方の場合において、経時的な持続的かつ高いシュードモナス位置が、表2で示されるように観察された。
【0054】
【表2】

【0055】
伝統的な致死曲線はリポソーム性/複合体形成した抗感染剤技術には適用できない。なぜなら、本リポソーム調合物は、高い抗感染効果を持つ抗感染剤のゆっくりとした放出を示すからである。本リポソーム/複合体は、アミカシンを痰及び/又はアルギン酸から、それが放出されるまで保護する。そのうちに、抗感染剤の干渉も失活もないまま、ゆっくりと放出される持続的な抗感染効果のモデルと一致して、完全な致死が観察される。
【0056】
リポソーム性/複合体形成したアミカシン調合物の効験を、アガロース・ビーズ・マトリックスに包埋したP.アエルギノーサをラットの気管内に点滴注入した慢性肺感染症のモデル(Cash et al., 1979) を用いて研究した。この粘液性シュードモナス動物モデルは、CF患者に見られるシュードモナス感染を模倣するように開発された。CFへの臨床上の相関物のいくつかには:同様な肺病理;免疫複合体異常の発生;及び、P.アエルギノーサ株による粘液性表現型への変化、がある (Cantin and Woods, 1999)。ラット肺を、CF患者単離物から取った粘液性シュードモナス(株PAO1)の107CFUを越えるものに感染させた後、(a)遊離アミノグリコシド、(b)非薬物コントロールとしての脂質賦形剤単独、及び(c)リポソーム性/複合体形成したアミカシン、で処理した。加えて、調合物をまず、 in vitro のP.アエルギノーサ致死能について、改変カービー・バウアー・プレートでスクリーニングした。
【0057】
多様なリポソーム性/複合体形成したアミカシン調合物を、in vitro実験で致死域が異なってくるような様々な脂質組成物か、又は、製造パラメータに基づいて、検査した。この実験は、遊離アミノグリコシドに比べたときの、リポソーム性/複合体形成したアミノグリコシドで得られた効験の上昇を判定するようにデザインされた。盲検コントロール脂質組成物、2つの異なるリポソーム性/複合体形成したアミカシン調合物及び遊離アミカシン、並びに、リポソーム性/複合体形成した抗感染剤調合物と同じアミノグリコシド濃度にした遊離トブラマイシンを比較した。加えて、10倍高い用量の遊離アミカシン及び10倍高い用量の遊離トブラマイシンも投与された。投薬は、7日間にわたって毎日のITだった。結果(図3)は、2つの調合物中のリポソーム性/複合体形成したアミカシン(脂質組成の上で異なる)は、CFUレベルで有意な減少をもたらし、10倍高い用量の遊離アミカシン又は遊離トブラマイシンよりもCFUを減らす上で良好であったことを示している。図面においてLip-An-14 はDPPC/Chol/DOPC/DOPG (42:45:4:9) 及び10 mg/ml のアミカシンであり、Lip-An-15 は やはり10mg/mlのDDPC/Chol
(1:1) である。ここでの脂質対脂質及び脂質対薬物比はすべて、重さ対重さである。
【0058】
次の実験(図4)は、リポソーム性/複合体形成したアミカシンのゆっくりとした持続的な抗感染能を実証するようにデザインされた。投薬は、前の実験での7日間毎日とは対照的に、14日間、一日おきだった。結果は、2つの調合物(脂質組成で異なる)中のリポソーム性/複合体形成したアミカシンは、遊離アミカシン又は遊離トブラマイシンよりも10乃至100倍、より強力(CFUレベルを下げる、より大きな能力)であることを示している。TOBI(R)のヒト日用量600 mg (又は約 375 mg/m2 ) は、ラットの日用量9.4 mgに相当する。このように、このデータは、ヒト効験の10乃至100倍の向上に直接、相関させることができる。2つの対数減少が、このモデルで観察できる最良であることに留意された。痰検定でのP.アエルギノーサの100倍の減少は、肺機能の向上と相関付けられている (Ramsey et al., 1993)。リポソーム性/複合体形成したアミカシン調合物のこのような徐放は、低用量及び/又は頻度の少ない投薬量を用いても、遊離アミノグリコシドで得られるよりも、より大きな細菌成長減少を得ることができることを示している。
【0059】
リポソーム性/複合体形成したアミカシンの効験を、P.アエルギノーサをアガロース・ビーズ・マトリックスに包埋し、これをスプラーグ/ドーリー・ラットの気管に点滴注入した慢性肺感染症のモデルで研究した。三日後に、遊離アミカシン又はリポソーム性/複合体形成したアミカシンを、毎日(図3)又は一日おき(図4)に、1 mg/ラット又は10 mg/ラットの投与アミノグリコシド又は 1 mg/ラットのリポソーム性/複合体形成したアミカシンにして、コントロールとしての盲検リポソーム(脂質賦形剤)も並行して、1群当たり5匹のラットに投薬した。
【0060】
14日間の実験後の均質化させたラット肺(凍結)をアミノグリコシド含量及び活性について分析した。臨床化学検定はTDX装置を用いて行い、他方、バイオアッセイは、バチルス-サティリス(原語:Bacillus subtilis)に包埋された寒天プレート上の阻害域を測定することにより、行われた。
【0061】
結果を表3に示す。
【0062】
【表3】






【0063】
薬物重量は、塩型の非存在時の場合に正規化した薬物についてのものである。
【0064】
表3の結果は、両方のリポソーム性/複合体形成した抗感染性調合物について、アミノグリコシドが存在し、かつ活性であるが、遊離アミノグリコシドについては10倍高い用量であっても、少しも検出されないことを示している。これらの更なる結果は、リポソーム性/複合体形成した抗感染剤の徐放という特徴を確立するものであり、また、残った抗感染剤もまだ活性であることを裏付けてもいる。上記の調合物のうちで、遊離トブラマイシン(0.1 マイクログラム/ml) のみが、いずれかの検出可能なレベルのアミノグリコシドを腎臓中で示した。
【0065】
リポソーム性/複合体形成したアミカシンの徐放及び貯蔵効果を図5でさらに実証する。ラットに、効験実験で用いたものと同じビーズを用い、P.アエルギノーサをアガロース・ビーズ・マトリックスに包埋し、これを気管を通じて点滴注入するという慢性肺感染症を起こさせた。次にこれらのラットに遊離トブラマイシン又はリポソーム性/複合体形成したアミカシン(調合物 Lip-An-14)を気管内投与を通じて同じ用量 (2 mg/ラット)投薬した。肺組織1グラム当たりの抗感染剤のマイクログラムで経時的に測定されたデータは、リポソーム性/複合体形成した抗感染剤は徐放及び貯蔵効果を示すが、他方、遊離トブラマイシンは、主に急速な全身吸収が原因であると考えられるが、24時間で取るに足らない肺内レベルになることを示している。感染ラットにおけるリポソーム性/複合体形成したアミカシンの、肺内におけるこのような百倍を越える抗感染剤の増加は、現在認められているTOBITM調合物よりも摂取頻度が少なくてもすむ徐放性リポソーム性/複合体形成した抗感染剤という発想の裏付けとなる。
【0066】
アミカシンの薬物動態を、遊離トブラマイシン又はリポソーム性/複合体形成したアミカシンのいずれかの気管内(IT)投与後のラットで判定した。2 mg/ラットの用量が投与された。リポソーム性/複合体形成した抗感染剤技術の貯蔵効果は、気管内投与された遊離トブラマイシンに比較して、リポソーム性/複合体形成したアミカシンでの薬物の百倍を越える増加が、投与後24時間でも被感染肺内に留まることで実証されている。このように、薬物の治療的レベルは、遊離トブラマイシンに比較してリポソーム性調合物ではより長時間、維持される。
【0067】
図7は、肺内における有効量の抗感染剤の著しい滞留時間及び蓄積という、比較的に頻度の低い投薬を用いることができることを確立した結果を示す。各用量は、15mg/mlのアミカシンのネブライザによるリポソーム性アミカシン (DPPC/Chol., 1:1) の吸入(上述の通り、ラットにおいて、1群当たり3匹のラット)による4時間である。投薬は1日目;3日目及び5日目に行うか、あるいは、1日目、2日目、3日目、4日目及び5日目である。所定のデータ棒を出したラットは、データ棒の各投薬後にと殺された。調合物は実施例の通りに作製されている。
【0068】
同様な抗感染剤は、肺炭疽及び野兎病のような細胞内感染の治療に用いることができる。肺炭疽では、炭疽胞子は肺胞にエーロゾル中で到達する。吸入された胞子は、肺胞中の肺胞マクロファージにより摂取されて、局所的な気管気管支リンパ節又は縦隔リンパ節にリンパ管を通じて運ばれる (Pile et al., 1998; Gleiser
et al., 1968)。このマクロファージは、感染経路の両方で中心的であり、全身性(吸入)炭疽のホスト自己破壊の主要な寄与物質である。徐放及びターゲティングという特徴に加え、リポソーム性/複合体形成した抗感染剤技術は、薬物ターゲティング及び送達において、細胞取り込みを高め、肺胞マクロファージ及び肺上皮細胞を用いることができる。これらの特徴を有することは、肺内で置き、またマクロファージにより輸送されるようなこれらの細胞内感染の治療を容易にすると考えられる。より重要なことに、リポソーム性/複合体形成した抗感染剤は、疾患を含有するまさにその細胞によって貪食されるという点で、これらの特徴は当該の抗感染剤をより有効にするはずである。本抗感染剤は、標的決定された態様で、細胞内に放出され、それが播種する前に、感染を攻撃すると考えられる。封入される薬物は、シプロフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン又はアミカシンなど、既に認可を受けている医薬であってよい。リポソーム性/複合体形成したシプロフロキサシンが開発されている。
【0069】
ある研究では、この化合物をマウスに投与し、遊離シプロフロキサシンの気管内投与と、遊離シプロフロキサシンの経口投与の両方に比較した。これら3つの化合物はすべて同じ用量、投与された(図6)。各マウスの用量は15 mg/kgであり、1群当たり3匹のマウスだった。リポソーム性/複合体形成したシプロはDPPC/コレステロール(9:1)中に、3
mg/ml のシプロで入れ、当該の調合物は実施例の通りに作製された。脂質対薬物比は重量で 12.5:1 だった。経口投与されたシプロフロキサシンに比較して、リポソーム性/複合体形成したシプロフロキサシンは、マウス肺内に、遊離シプロフロキサシンよりも2桁多い量、存在した。さらに、リポソーム性/複合体形成したシプロフロキサシンのみが、24時間後に肺内の薬物レベルを示し、他方、経口投与されたこの薬物は、2時間未満で検出不能となった。このデータは、リポソーム性/複合体形成したシプロフロキサシンや、バイオテロリストが用いる細胞内疾患の治療及び予防のための他のアミノグリコシド、テトラサイクリン及びマクロライドなどの抗感染剤の使用を裏付けるものである。
【0070】
リポソーム性/複合体形成の製造プロセスの種類の1つは、典型的には、当該の調合物で用いられる脂質の相転移温度未満である室温でのエタノール輸注を含む。小型の単層ラメラ・ベシクル(SUV)の形のリポソームを、捕捉しようとする対生物活性作用薬を含有する水性又はエタノール性の溶液に混合する。エタノールをこの混合液に輸注する。この混合液はすぐに、拡がった脂質シートか、又は、多層ラメラ・ベシクル(MLV)のいずれかを形成する。形成された拡がった脂質シートは、遠心分離、透析又はダイアフィルトレーションなどの方法によるスパージング又は洗浄によりエタノールを除去すると、MLVから誘導することができる。このMLVは、典型的には、直径でほぼ0.1乃至ほぼ3.0μmの間の範囲であろう。
【0071】
あるいは、用いようとする脂質をエタノールに溶解させて脂質−エタノール溶液を形成する。この脂質−エタノール溶液を、捕捉しようとする対生物活性作用薬の分子を含有する水性又はエタノール性の溶液に輸注する。操作はすべて、最低溶解脂質の相転移未満で行われる。この混合液はすぐに、拡がった脂質シートか、又は、多層ラメラ・ベシクル(MLV)のいずれか(10)を形成する。この拡がった脂質シートは、遠心分離、透析又はダイアフィルトレーションなどの方法によるスパージング又は洗浄によりエタノールを除去すると、MLVから形成するであろう。このMLVは、典型的には、直径でほぼ0.1乃至ほぼ3.0μmの間の範囲であろう。
【0072】
【表4】



【0073】
アミカシンを用いた数多くの調合物が、以下に要約するように、実施例の方法により作製された。
【0074】
リポソーム性/複合体形成した抗感染剤を形成する更なる情報は、引用をもってぞの全文をここに援用することとする、2003年3月5日出願のPCT/US03/06847に見ることができる。
【0075】
実施例: 以下は、150 mL のリポソーム性/複合体形成したアミカシンの製造の詳細な解説である。当初の総体積 = 1.5 L エタノール含量 = 23.5% (v/v) 脂質の組成:DPPC/Chol (1:1 モル比)
当初[脂質] = 7.6 mg/ml当初[アミカシンスルフェート]= 57.3 mg/ml 最終生成物体積 = 150 mL
【0076】
I)配合及び輸注 7.47g DPPC及び3.93g コレステロールを直接、352.5 mL
エタノールに50℃の水槽中で溶解させた。85.95g アミカシンスルフェートを1147.5 mL PBS 緩衝液中に直接、溶解させた。次にこの溶液を、ION NaOH 又は KOH で滴定して、pHをほぼ6.8にした。
【0077】
352.5 mL
エタノール/脂質を、1147.5 mL アミカシン/緩衝液に加えるか、又は輸注して、当初の総体積を1.5 Lとした。このエタノール/脂質を蠕動ポンプで-30mL/分(輸注速度とも呼ばれる)で、室温の攪拌プレート上に載せた反応容器中の、150RPMで高速攪拌中のアミカシン/緩衝溶液に入れた。
【0078】
この生成物を室温で20乃至30分間、攪拌した。
【0079】
II)ダイアフィルトレーション又は「洗浄」ステップ: この混合容器を蠕動ポンプ及びダイアフィルトレーション・カートリッジにつなげた。このダイアフィルトレーション・カートリッジは、500キロダルトンの分子量カットオフ値の中空膜フィルタである。生成物を該反応容器からこのダイアフィルトレーション・カートリッジまでポンプした後、室温の混合容器に戻した。約7psiの背圧がこのカートリッジ全体で生じる。遊離アミカシン及びエタノールを該背圧により加圧してこの中空線維膜を通し、後にリポソーム性アミカシン(生成物)を残した。この生成物を室温で8回、洗浄した。新鮮なPBS緩衝液を(別の蠕動ポンプを通じて)該反応容器に加えて、透過除去分を補い、生成体積を一定に維持した。
【0080】
生成物を濃縮した。
【0081】
特許及び特許出願を含め、しかしこれらに限定せず、本出願で引用された公開文献及び参考文献を、あたかも各個々の公開文献又は参考文献が具体的かつ個々に、全文が記載され、引用をもってここに援用すると示唆された場合と同様に、引用された部分の全体を、引用をもってここに援用することとする。本出願の優先権主張の基礎となるいずれの特許出願も、公開文献及び参考文献に関して上述した態様で、引用をもってここに援用することとする。
【0082】
以上、本発明を、好適な実施態様に強調を置いて解説してきたが、当業者であれば、好適な装置及び方法の変更例を用いてもよいこと、そして、本出願は、ここに具体的に解説された以外の方法でも実施してよいことが意図されていること、は明白であろう。従って、本出願は、以下の請求の範囲に規定された本発明の精神及び範囲に包含されたあらゆる変更例を包含するものである。
【0083】
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【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、嚢胞性線維症患者に見られる痰/バイオフィルムの横断面図である。
【図2】図2は、本発明の薬物のターゲティング及び貯蔵効果の図解である。
【図3】図3及び図4は、多様な形のアミカシンの細菌学の図解である。
【図4】図3及び図4は、多様な形のアミカシンの細菌学の図解である。
【図5】図5は、リポソーム性/複合体形成したアミカシン及びトブラマイシンに関する徐放の図解である。
【図6】図6は、遊離又は複合体形成したシプロフロキサシンに関するデータである。
【図7】多様な投薬スケジュールを行われた肺における薬物滞留の図解である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノグリコシド、ホスファチジルコリン及びステロールを含むリポソーム性アミノグリコシド合物であって、ホスファチジルコリン及びステロールのアミノグリコシドに対する重量比が2.5:1以下である、リポソーム性アミノグリコシド調合物。
【請求項2】
前記アミノグリコシドがアミカシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルミシン、及びカナマイシンから成る群より選択される、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
前記アミノグリコシドがアミカシンである、請求項1に記載の調合物。
【請求項4】
前記アミノグリコシドがアミカシンスルフェートである、請求項1に記載の調合物。
【請求項5】
ホスファチジルコリン及びステロールのアミノグリコシドに対する前記重量比が1.1:1以下である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の調合物。
【請求項6】
前記ホスファチジルコリンが、卵ホスファチジルコリン(EPC)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、及びこれらの混合物、から成る群より選択される、請求項1乃至5記載のいずれか一つに記載の調合物。
【請求項7】
前記ステロールがコレステロールである、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の調合物。
【請求項8】
前記ホスファチジルコリンがDPPCであり、前記ステロールがコレステロールである、請求項6に記載の調合物。
【請求項9】
DPPC対コレステロールのモル比が19:1、9:1、4:1、13:7又は1:1である、請求項8に記載の調合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93925(P2011−93925A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1318(P2011−1318)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【分割の表示】特願2005−500829(P2005−500829)の分割
【原出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(504335633)トランセイブ, インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】TRANSAVE, INC.
【住所又は居所原語表記】11 Deer Park Drive, Suite 117, Monmouth Junction, NJ 08852 (US)
【Fターム(参考)】