説明

抗汚染性被覆剤の加工構造及び方法

【課題】被覆剤中の抗汚染性材料のパターンの三次元パラメータを複数の大きさの規模において制御して、被覆剤中の二以上の抗汚染性材料の抗汚染効果を最適化することができる、抗汚染性被覆剤の蒸着方法及び構造が必要である。
【解決手段】抗汚染構造の実例となる実施形態は、基板表面を有する基板と、基板表面に塗布された少なくとも1つの抗汚染性材料と、基板表面の少なくとも一部に塗布される疎水性または疎油性、又あるいは親水性又は親油性材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、殺菌性及び/又は対化学特性を有する材料及び構造、及び抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、殺菌性及び/又は対化学表面被覆剤の加工方法に関する。さらに具体的には、本発明は、被覆剤中の異なる抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、殺菌性及び/又は対化学材料が、混合されないまま材料の最大限の効果をほぼ保持する又は最適化することができるように、被覆剤を表面に塗布する抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、殺菌性及び/又は対化学被覆剤の加工方法及び構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、殺菌性及び/又は対化学(以下、抗汚染性)材料及び被覆剤が公知である。抗汚染性プラスチック製品の加工においては、単一の生物致死剤をプラスチック樹脂に加えることができ、その後混合し、溶融し、成形又は押出されて最終的な製品とすることができる。抗汚染性特性を有する布の加工では、単一の生物致死剤(公知の生物致死剤又は例えば非限定的に、フラーレン等の現在研究中の生物致死剤であってよい)を、フォーミング、パディング、噴霧、又は浸漬によって布基板に加えることができる。抗イオン性汚染剤(例えば銀イオン)加工では、イオンをゼオライト構造内に埋め込むことができる。最近のナノテクノロジーの開発により、例えば布及びプラスチック等の様々な材料に銀イオンを埋め込むことが可能になった。調製プロセスにおいては、銀ナノ粒子を、層ごとの蒸着方法を使用して繊維上に固定化することができる。このステップには、様々な溶液に繊維を浸漬する又は様々な溶液で繊維を処理することが含まれ得る。
【0003】
抗汚染性被覆剤の抗汚染効果は、被覆剤中の単一の種類の抗汚染性材料を使用することによって限定することができる。さらに、様々な抗汚染剤を樹脂の中で混合することにより、抗汚染剤を中和する又は沈殿させて、単一の抗汚染剤を使用して得られるよりも作用の弱い抗汚染性被覆剤又は構造にすることができる。複数の種類の抗汚染性材料の選択されたパターンでの構造の表面又は被覆剤中での組み合わせ、パターンの三次元パラメータの最適化により、抗汚染性材料の抗汚染効果を最適化することができる。
【0004】
したがって、被覆剤中の抗汚染性材料のパターンの三次元パラメータを複数の大きさの規模において制御して、被覆剤中の二以上の抗汚染性材料の抗汚染効果を最適化することができる、抗汚染性被覆剤の蒸着方法及び構造が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は概して、抗汚染構造を目的とする。抗汚染構造の実例となる実施形態は、少なくとも1つの抗汚染性材料が基板表面上に塗布されており、疎水性又は疎油性材料が前記基板表面の少なくとも一部に塗布されている基板表面を有する基板を含む。疎油性材料のある実施例は、人体の耐油性である材料である。
【0006】
本発明は概して、抗汚染構造をさらなる目的とする。抗汚染構造の実例となる実施形態は、複数の隆起面と、複数の隆起面の各々に塗布された親水性又は親油性材料を含む、三次元基板表面を有する基板を含む。三次元基板表面とは、高さが少なくとも3ミクロンの頂点を有する基板表面を意味する。三次元基板表面は、様々な公知の技術によって形成することができる。一方で、本発明においては、高さが3ミクロン未満の頂点を有する基板表面は、二次元基板表面である。
【0007】
本発明は概して、抗汚染構造を加工する方法をさらなる目的とする。この方法の実例となる実施形態は、基板を提供し、基板上に少なくとも1つの抗汚染性材料を塗布し、基板の少なくとも一部に疎水性又は疎油性材料を塗布することを含む。
【0008】
ある実施形態では、抗汚染構造を加工する方法は、基板を提供し;基板上に複数の隆起面を含む三次元構造を提供し;隆起面上に親水性又は親油性材料を塗布することを含むことができる。
【0009】
ある実施形態では、抗汚染構造は、複数の隆起面、及び前記隆起面の間に延在する複数のおおむね平面的なくぼんだ面を含む三次元基板表面を有する基板を含むことができる。各隆起面は、上面部と、上面部からくぼんだ面まで延在する側面部を含むことができる。少なくとも1つの抗汚染性材料をくぼんだ面に塗布することができる。疎水性又は疎油性材料を上面部と、各隆起面の側面部に塗布することができる。
【0010】
ある実施形態では、抗汚染構造は、複数の隆起面と、隆起面の間に延在する複数のおおむね平面的なくぼんだ面を含む三次元基板表面を有する基板を含むことができる。各隆起面は、上面部と、上面部からくぼんだ面まで延在する側面部を含むことができる。親水性又は親油性材料は、上面部と、各隆起面の側面部に塗布することができる。
【0011】
ある実施形態では、抗汚染構造を加工する方法は、基板表面を有する基板を提供し、複数の隆起面と、基板表面の隆起面の間に延在する複数のおおむね平面的なくぼんだ面を有する複数の三次元構造を提供することを含むことができる。各隆起面は、上面部と、上面部からくぼんだ面まで延在する側面部を含むことができる。抗汚染性材料は、くぼんだ面に塗布することができる。疎水性又は疎油性材料は、上面部と、各隆起面の側面部に塗布することができる。
【0012】
ある実施形態では、抗汚染構造を加工する方法は、基板表面を有する基板を提供し、複数の隆起面と、基板表面の隆起面の間に延在する複数のおおむね平面的なくぼんだ面を含む複数の三次元構造を提供することを含むことができる。各隆起面は、上面部からくぼんだ面まで延在する上面部及び側面部を含むことができる。疎水性又は疎油性材料は、各隆起面の上面部及び側面部に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は抗汚染性表面被覆剤を加工する方法の実例となる実施形態のフロー図である。
【図2】図2は材料の抗汚染効果を最適化する幾何学的パラメータにしたがって、被覆剤中の基板表面に抗汚染性材料が塗布されている、抗汚染構造の実例となる実施形態の上面図である。
【図3】図3は図2に示す抗汚染構造の実例となる実施形態の側面図である。
【図4】図4は航空機の構造及び就航方法のフロー図である。
【図5】図5は航空機のブロック図である。
【図6】図6は材料の抗汚染効果を最適化する幾何学的パラメータにしたがって、被覆剤中の基板表面に抗汚染性材料が塗布されており、疎水性又は疎油性材料が基板表面に塗布されている、抗汚染構造の実例となる実施形態の上面図である。
【図7】図7は図6に示す抗汚染構造の実例となる実施形態の側面図である。
【図8】図8は疎水性又は疎油性材料が隆起面に塗布されており、抗汚染性材料が構造のおおむね平面的なくぼんだ面に塗布されている、三次元抗汚染構造の実例となる実施形態の断面図である。
【図9】図9は疎水性又は疎油性材料が隆起面に塗布されており、抗汚染性材料が構造のおおむね凹形のくぼんだ面に塗布されている、三次元抗汚染構造の実例となる代替実施形態の断面図である。
【図10】図10は親水性又は親油性材料が構造の隆起面に塗布されており、隆起面の間のおおむね平面的なくぼんだ面が露出している、三次元抗汚染構造の実例となる別の代替実施形態の断面図である。
【図11】図11は親水性又は親油性材料が構造の隆起面に塗布されており、隆起面の間のおおむね凹形のくぼんだ面が露出されている、三次元抗汚染構造の実例となる別の代替実施形態の断面図である。
【図12】図12は疎水性又は疎油性材料が基板表面に塗布されており、液体の溶滴が疎水性又は疎油性材料によってはじかれた微生物を含んでいる、三次元抗汚染構造の実例となる実施形態の断面図である。
【図13】図13は疎水性又は疎油性材料が基板の隆起面に塗布され、抗汚染性材料が基板のおおむね平面的なくぼんだ面に塗布されており、くぼんだ面の抗汚染性材料上で液体の溶滴が微生物を含んでいる、三次元抗汚染構造の実例となる実施形態の断面図である。
【図14】図14は図6及び7に示す抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図である。
【図15】図15は図8、9、12及び13に示す三次元抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図である。
【図16】図16は図8、9、12及び13に示す三次元抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図である。
【図17】図17は図10及び11に示す三次元抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は概して、抗微生物性、抗ウイルス性、抗真菌性、殺菌性及び/又は対化学(以下、抗汚染性)表面被覆剤を加工する方法を目的とする。本明細書で使用されるように、「汚染物質」は例えば非限定的に、微生物、ウイルス、真菌、生物及び/又は化学汚染物質を含む。ある実施形態では、本方法は例えば非限定的に、少なくとも第1及び第2の被覆剤塗布媒体を提供し;少なくとも第1及び第2抗汚染性材料を提供し;第1抗汚染性材料(例えば非限定的に、TiO、Ag、フラーレン、及び/又はH)を第1被覆剤塗布媒体に加え、第2抗汚染性材料を第2被覆剤塗布媒体に加え;表面を有する基板を提供し;第1抗汚染性材料を有する第1被覆剤塗布媒体を基板表面へ塗布し;第2抗汚染性材料を有する第2被覆剤塗布媒体を、第1抗汚染性材料に近接している第2抗汚染性材料を有する基板表面に塗布し;第1及び第2被覆剤塗布媒体を硬化させることを含むことができる。ある実施形態では、第1被覆剤塗布媒体、第2被覆剤塗布媒体及び任意の追加的な被覆剤塗布媒体を、抗汚染性表面被覆剤に重層化された三次元パターンで第1、第2及び任意の追加的な抗汚染性材料を分散又は分配するために、当業者に公知である任意の好適な三次元印刷技術を使用して、基板表面に連続的に塗布することができる。ある実施形態では、第1及び第2及び任意の追加的な被覆剤塗布媒体を基板表面に塗布するのに使用される三次元印刷技術は、例えば非限定的にインクジェット印刷又はスクリーン印刷を含むことができる。
【0015】
本発明は概して、被覆剤中の異なる抗汚染性材料が、ほぼ混合されないまま材料の最大限の抗汚染効果を保持する又は最適化する(ランダム分布、組織的な分布又はランダム分布及び組織的な分布の両方であってよい)パターンとして、表面に塗布される抗汚染性被覆剤を含むことができる抗汚染構造をさらなる目的とする。構造又は被覆剤の抗汚染性材料のパターンの三次元幾何学パラメータを複数の大きさの規模で制御して、抗汚染性材料の抗汚染効果を最適化することができる。したがって、様々な抗汚染性材料を、例えば非限定的にミクロンから1ミリメートルまでの可変の間隔を置いてパターンの中で互いに対してほぼ近接した状態で分散させて、被覆剤の抗汚染効果を最適化することができる。抗汚染性材料は、別々に、また連続的に層ごとのパターンで表面に塗布して、パターンの中で互いに材料が分離した状態をほぼ維持することができる。ある実施形態では、第1被覆剤塗布媒体と第2被覆剤塗布媒体を、当業者に公知の任意の好適な三次元印刷技術を使用して基板表面に塗布することができる。ある実施形態では、抗汚染性材料を、例えば非限定的に、インクジェット印刷を用いて基板表面に塗布することができる。
【0016】
図1をまず参照すると、抗汚染性表面被覆剤を加工する方法の実例となる実施形態のフロー図100が示されている。ブロック102では、第1及び第2被覆剤塗布媒体が提供可能である。各第1及び第2被覆剤塗布媒体は、抗汚染性材料を基板表面に塗布するのに好適な任意の種類の媒体を含むことができる。第1及び第2被覆剤塗布媒体は、例えば非限定的に、塗布ペンキを含むことができる。ある用途においては、基板表面に塗布されるべき異なる種類の抗汚染性材料の数によって、追加的な被覆剤塗布媒体を提供することが可能である。
【0017】
ブロック104では、異なる種類の第1及び第2抗汚染性材料を提供することができる。各第1及び第2抗汚染性材料は、例えば非限定的に細菌又は真菌等の微生物を殺す、及び/又はウイルス及び/又は他の微生物を破壊する又は不活性化することができる任意の種類の材料であってよい。ある用途においては、各第1及び第2抗汚染性材料は、例えば非限定的に、生物致死剤(公知の生物致死剤、又は例えばフラーレン等の現在研究中である生物致死剤であってよい)を含むことができる。ある用途では、第1及び第2の抗汚染性材料に加えて、追加的な抗汚染性材料を提供することが可能である。抗汚染性材料は、抗汚染作用が望ましい目標範囲の微生物によって選択することができる。
【0018】
ブロック106においては、第1抗汚染性材料を第1被覆剤塗布媒体に加えることができ、第2抗汚染性材料を第2被覆剤塗布媒体に加えることができる。ある用途においては、追加的な抗汚染性材料をそれぞれ追加的な被覆剤塗布媒体に加えることができる。ある用途においては、二以上の抗汚染性材料を各被覆剤塗布媒体に加えることができる。
【0019】
ブロック108においては、基板表面を有する基板を提供することができる。基板は、基板表面が例えば非限定的に、プラスチック;金属;木;ガラス;又は布を含む抗汚染特性を有するべき、任意の所望の材料であってよい。
【0020】
ブロック110では、第1抗汚染性材料を有する第1被覆剤塗布媒体を、基板表面に塗布することができる。ブロック112では、第1抗汚染性材料に近接する第2抗汚染性材料を有する基板表面に第2被覆剤塗布媒体を続いて塗布することができる。各々選択された種類の抗汚染性材料を有する追加的な被覆剤塗布媒体を、一連の層の基板表面に続いて塗布することができる。ある用途においては、第1被覆剤塗布媒体と第2被覆剤塗布媒体のそれぞれに、二以上の抗汚染性材料を含ませることができる。
【0021】
第1被覆剤塗布媒体、第2被覆剤塗布媒体及び任意の追加的な被覆剤塗布媒体をそれぞれ、当業者に公知である任意の好適な三次元蒸着技術を使用して、基板表面に塗布することができる。被覆剤塗布媒体の基板への蒸着は、例えば非限定的に、マイクロジェット;マイクロノズル;マイクロディスペンサー;静電沈着;スクリーン印刷;粘着性を高める要素を使用したパターン吸収;又は生物有機体をキャリアとして使用することによる塗布を含むことができる。ある用途においては、被覆剤塗布媒体を例えば非限定的に、インクジェット印刷技術を使用して基板表面に塗布することが可能である。抗汚染性材料を含む塗布された被覆剤塗布媒体によって、重層化された抗汚染性被覆剤を基板表面に形成することができる。抗汚染性被覆剤においては、異なる種類の抗汚染性材料によって、抗汚染性材料が互いに対してほぼ近接し重なりあった状態で配置されていてよい三次元パターンを形成することができる。ある用途においては、抗汚染性被覆剤の一連の層の、異なる種類の抗汚染性材料が、パターンの中で例えば非限定的に、1ミクロンから約1ミリメートルの間隔で互いに分離していてよい。ブロック114においては、第1、第2及び任意の後続の被覆剤塗布媒体を硬化させることができる。ある用途では、二以上の異なる種類の抗汚染性材料を抗汚染性被覆剤の各層に提供することができる。各層の抗汚染性材料により、別々の重ね合わさった、互い違いの、又は近接したパターンを形成することができる。
【0022】
次に図2及び3を参照すると、抗汚染構造の実例となる実施形態が、それぞれ上面図及び側面図において数字1で全体的に示されている。抗汚染構造1は、基板表面3を有する基板2(図3)を含むことができる。基板2は、基板表面3が非限定的に、プラスチック;金属;木;ガラス;又は布を含む、抗汚染特性を有する任意の所望の材料であってよい。
【0023】
抗汚染性被覆剤4を基板2の基板表面3に塗布することができる。少なくとも2つの異なる種類の抗汚染性材料を抗汚染性被覆剤4に含めることができる。図2及び3に示す抗汚染構造1の実施形態では、第1抗汚染性材料8;第2抗汚染性材料9;第3抗汚染性材料10;及び第4抗汚染性材料11を抗汚染性被覆剤4に含めることができる。しかしながら、ある実施形態では、抗汚染性被覆剤4は、抗汚染性被覆剤4の目標である所望の範囲の微生物によって、4つを超える異なる種類の抗汚染性材料を含むことができる。
【0024】
抗汚染性被覆剤4は、少なくとも1つの選択された種類の抗汚染性材料をそれぞれ含むことができる二以上の連続的に塗布された被覆剤塗布媒体として、重層化された形で基板表面3に塗布することができる。被覆剤塗布媒体の各層は、抗汚染性材料を基板2の基板表面3に塗布するのに好適な任意の種類の媒体を含むことができる。被覆剤塗布媒体の各層は、例えば非限定的に塗布ペンキを含むことができる。
【0025】
図2及び3に示すように、ある実施形態では、被覆剤塗布媒体の層を基板表面3(図3)に連続的に三次元パターンに形成することができ、三次元パターンでは、第1抗汚染性材料8を基板2の基板表面3におおむね近接して配置することができ;第2抗汚染性材料9を第1抗汚染性材料8におおむね近接して配置することができ;第3抗汚染性材料10を第2抗汚染性材料9におおむね近接して配置することができ;第4抗汚染性材料11を第3抗汚染性材料10におおむね近接して配置することができる。抗汚染性材料8、9、10及び11は、図2に示すように上から見た時に、そして図3に示すように横から見た時に、互い違いに又は互いに重なりあった状態で配置することが可能である。ある実施形態では、異なる種類の少なくとも2つの抗汚染性材料、例えば第1抗汚染性材料8と第2抗汚染性材料9を基板表面3の第1層に一緒に配置することができ、異なる種類の少なくとも2つの抗汚染性材料、例えば第3抗汚染性材料10と第4抗汚染性材料11を基板表面3の第2層に一緒に配置することができる。
【0026】
ある実施形態では、一連の層の異なる種類の近接した抗汚染性材料8、9、10、11、又は抗汚染性被覆剤4と同じ層の近接した抗汚染性材料は、パターンの中で例えば非限定的に、約1ミクロンから約1ミリメートルまでの間隔を置いて互いに分離させることができる。抗汚染性被覆剤4の異なる種類の抗汚染性材料の分離を維持することで、各抗汚染性材料の抗汚染効果を最適化することができる。
【0027】
通常の用途では、抗汚染性被覆剤4は、これまで説明したように通常基板2の基板表面3に塗布される。基板2の基板表面3は、抗汚染特性を有するべき任意の表面であってよく、例えば非限定的に、民間又は軍用航空機、回転翼機、又は無人飛行体(UAV)の表面であってよい。航空宇宙の用途においては、基板2は例えば非限定的に、エアダクト;トイレ;トレイテーブル;バルクヘッド;又は断熱毛布であってよい。したがって、図2に示すように、抗汚染性被覆剤4の各種の抗汚染性材料8、9、10、11は、抗汚染性材料が作用し、抗汚染性被覆剤4と接触する微生物14の範囲に含まれる例えば細菌、真菌及び/又はウイルス等の微生物14を殺す又は非活性化させることができる。
【0028】
図4及び5を次に参照すると、本発明の実施形態は図4に示すような航空機の製造及び就航方法78及び図5に示すような航空機94において使用可能である。試作段階においては、例示の方法78は航空機94の仕様及び設計80と、材料調達82を含むことができる。製造段階においては、航空機94の部品及びサブアセンブリの製造84と、システム統合86がおこなわれる。そのあとに、航空機94は、認可及び納品88を経て就航90可能である。顧客によって就航されている間、航空機94には所定の整備及び保守92(変更、再構成、改装等も含むことができる)を予定することができる。
【0029】
本方法78の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客等)によって行う又は実施することができる。この説明のために、システムインテグレータは限定しないが、任意の数の航空機メーカー、及び主要システムの下請け業者を含むことができ;第三者は限定しないが、任意の数の供給メーカー、下請け業者、及びサプライヤを含むことができ;オペレータは、航空会社、リース会社、軍部、サービス組織等であってよい。
【0030】
図5に示すように、例示の方法78で製造された航空機94は、複数のシステム96と内装100を有する機体98を備えることができる。高レベルシステム96の例は、一又は複数の推進システム102、電気システム104、油圧システム106、及び環境システム108を挙げることができる。任意の数の他のシステムを含むことができる。航空宇宙での実施例を示したが、本発明の原理は例えば自動車産業等の他の産業分野に応用することが可能である。
【0031】
本明細書に具現化された装置は、任意の一又は複数の製造及び就航方法78の段階において採用することができる。例えば、製造プロセス84に対応する部品又はサブアセンブリは、航空機94が就航している間に製造される部品又はサブアセンブリと同じ方法で加工又は製造することができる。また、一又は複数の装置の実施形態を、例えば、航空機94を実質的に組立てしやすくする、又は航空機94にかかる費用を削減することによって、製造段階84及び86において用いることが可能である。同様に、一又は複数の装置の実施形態を、航空機94が就航している間に、例えば限定しないが、整備及び保守92に用いることができる。
【0032】
図6及び7を次に参照すると、抗汚染構造の実例となる代替実施形態が参照番号1aによって全体的に示されている。構造1aは、図2及び3に関してこれまで説明した構造1と同様に構成されていてよい。構造1aでは、基板表面3は二次元であってよい。疎水性又は疎油性材料16を基板2の基板表面3の少なくとも一部に塗布することができる。したがって、構造1aの用途では、微生物(図示せず)を有する液体の液滴(図示せず)が基板2に接触した場合に、疎水性又は疎油性材料16が液体の液滴及び微生物をはじくことにより、微生物を抗汚染性材料8、9、10又は11に接触させることができる。抗汚染性材料8,9,10及び11は、微生物を殺す、不活性化する、変性させる又は中和して、基板2の基板表面3を衛生的な状態にすることができる。
【0033】
図面の図8を次に参照すると、三次元抗汚染構造(以下、構造)の実例となる実施形態が参照番号20によって全体的に示されている。構造20は基板表面22を有する基板21を含むことができる。ある実施形態では、抗汚染剤(図示せず)を、当業者の知識にしたがって基板21に組み込む又はそうでなければ内部に含めることができる。構造20の基板21は、基板表面22が非限定的にプラスチック;金属;木;ガラス;又は布を含む抗汚染特性を有するべき任意の所望の材料であってよい。隆起面24を基板21の基板表面22に形成することができる。各々おおむね平面的であってよいくぼんだ面30を、隆起面24の間に延在させることができる。各隆起面24は上面部25と、上面部25からくぼんだ面30まで延びた側面部26を有していてよい。ある実施形態では、各隆起面24の上面部25は図示したようにおおむね凸状であってよい。他の実施形態では、上面部25は代替形状を有することができる。隆起面24は、当業者に公知の任意の好適な技術を使用して、基板21の基板表面22に形成することができる。隆起面24を基板表面22に形成するのに好適な技術は、例えば非限定的に、直接描画、インクジェット蒸着、スタンピング、噴霧及び浸漬等の蒸着法を含む。加えて又は代替的に、隆起面24は、例えば非限定的に、成形、エンボス加工、スタンピング、機械加工、フライス加工、及び/又は掘削加工等の技術を使用して基板表面22に形成することができる。隆起面24は任意の大きさ及び形状で基板2の基板表面3に形成することができ、構造20の所望の用途に応じてマクロ、メソ、ミクロ又なナノスケールレベルにおいて加工することができる。
【0034】
疎水性又は疎油性材料31は、構造20の各隆起面24に形成することができる。ある実施形態では、疎水性又は疎油性材料31を各隆起面24の上面部25に限定することができる。他の実施形態では、疎水性又は疎油性材料31は、各隆起面24の側面部26に限定することができる。さらに別の実施形態では、疎水性又は疎油性材料31は、各隆起面24の上面部25及び側面図26に形成することができる。
【0035】
抗汚染性材料32は、構造20のくぼんだ面30に形成することができる。抗汚染性材料32は、例えば非限定的に、真菌又は細菌等の微生物を殺す、及び/又はウイルス、兵器化された生物学的作用物質及び/又は化学物質を殺す、不活性化する又は変性させるのに有効な全ての種類の材料であってよい。疎水性又は疎油性材料31、及び抗汚染性材料32は、浸漬、噴霧及び/又は当業者に公知の他の任意の好適な蒸着法を用いて隆起面24とくぼんだ面30に形成することができる。
【0036】
構造20は、構造20に接触する、例えば非限定的に液体の液滴に存在し得る真菌又は細菌等の微生物を殺す、及び/又はウイルス、兵器化された生物学的作用物質及び/又は化学物質を殺す、不活性化する、変性させる又は中和することが望まれる全ての用途に使用可能である。ある用途では、構造1を航空機(図示せず)の内部表面に設置することができる。ある用途では、隆起面24は基板21の摩擦パッドとして機能することができ、くぼんだ面30に位置する、例えば非限定的に、被覆剤等の機能性に対する摩擦保護を提供することができる。微生物又は生物学的作用物質(図示せず)を含む液体の液滴(図示せず)が直接くぼんだ面30に接触した時に、微生物又は生物学的作用物質が抗汚染性材料32に接触して、微生物又は生物学的作用物質を殺す及び/又は変性させるまたは不活性化することができる。微生物又は生物学的作用物質を含む液体の液滴が、各隆起面24に形成された疎水性又は疎油性材料31に接触した時は、疎水性又は疎油性材料31の疎水性により、液体の液滴を基板2の隆起面24からくぼんだ面30まではじくことが可能である。ある用途では、液体の液滴は隆起面24の上面部25からくぼんだ面30まで、例えば非限定的に、重力、毛細現象及び/又はマイクロ流体チャネル(単数又は複数)によって移動可能である。液体の液滴の微生物又は生物学的作用物質がくぼんだ面30の抗汚染性材料32に接触することにより、微生物又は生物学的作用物質を殺す、変性させる又は不活性化することができる。したがって、抗汚染性材料32は、基板21の基板表面22を衛生的な状態に保つことができる。ある用途では、油、潤滑流体又は機械加工液(図示せず)を疎水性又は疎油性材料31ではじくことができ、これにより、上面部25から各隆起面24の側面部26に沿ってくぼんだ面30まで流すことができる。
【0037】
構造の代替的な実例となる実施形態が、図9の参照番号20aによって全体的に図示されている。構造20aでは、おおむね凹状の又はくぼんだ面34を隆起面24の間に延在させることができる。抗汚染性材料32は、おおむね凹状の又はくぼんだ面34に形成可能である。構造20aの用途は、図8の構造20に関してこれまで説明したものであってよい。
【0038】
構造44の別の代替的な実例となる実施形態を図12及び13に示す。構造44においては、各隆起面24の上面部25はおおむね平面であってよい。各隆起面24の側面部26は、上面部25に対しておおむね垂直の状態で配置することができる。図12では、微生物又は生物学的作用物質45をそれぞれ含む複数の液体の液滴44が、各隆起面24の上面部25に塗布された疎水性または疎油性材料31の上にある様子が示されている。図13に示すように、疎水性又は疎油性材料31は液体の液滴44を隆起面24からくぼんだ面30にはじくことができ、くぼんだ面30において抗汚染性材料32が接触して、液体の液滴44に含まれる微生物又は生物学的作用物質45を殺す又は不活性化する、変性させる又は中和することができる。ある用途においては、液体の液滴44を重力及び/又は毛細現象により、隆起面24の上面部25からくぼんだ面30まで移動させることができる。
【0039】
次に図10を参照すると、三次元抗汚染構造の代替的な実例となる実施形態が、参照番号40によって全体的に図示されている。構造40は、基板表面22を有する基板21を含むことができる。複数の隆起面24とくぼんだ面30を、図8の構造20に関してこれまで説明したように、基板表面22に形成することができる。親水性又は親油性材料41は各隆起面24に形成することができる。ある実施形態では、親水性又は親油性材料41は各隆起面24の上面部25に限定することができる。他の実施形態では、親水性又は親油性材料41を各隆起面24の側面部26に限定することができる。さらに別の実施形態では、親水性又は親油性材料41を各隆起面24の上面部25及び側面部26に形成することができる。
【0040】
構造40の用途は、図8の構造20に関してこれまで説明したものであってよい。したがって、微生物(図示せず)を含む液体の液滴(図示せず)が隆起面24に接触した時に、親水性又は親油性材料41は、親水性又は親油性材料41に含まれる液体の液滴及び微生物を各隆起面24の上面部25及び/又は側面部26に限定することができる。ある実施形態では、微生物又は生物学的作用物質を隆起面24に静止させることができるため、くぼんだ面30を微生物又は生物学的作用物質を殺す、変性させる又は中和する以外の機能性のための予備としておくことができる。
【0041】
構造の代替的な実例となる実施形態が、図11の参照番号40aによって全体的に図示されている。構造40aにおいては、おおむね凹状の又はくぼんだ面34を隆起面24の間に延在させることができる。構造40aの用途は、図8の構造20に関してこれまで説明したものであってよい。
【0042】
図14を次に参照すると、図6及び7に示す抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図1400が図示されている。ブロック1402では、第1及び第2被覆剤塗布媒体を提供することができる。ブロック1404では、第1及び第2抗汚染性材料を提供することができる。ブロック1406では、第1抗汚染性材料を第1被覆剤塗布媒体に加えることができ、第2抗汚染性材料を第2被覆剤塗布媒体に加えることができる。ブロック1408では、基板を提供することができる。ブロック1410では、第1抗汚染性材料を有する第1被覆剤塗布媒体を基板に加えることができる。ブロック1412では、第2被覆剤塗布媒体を、第1抗汚染性材料に近接する第2抗汚染性材料を有する基板に加えることができる。ブロック1414では、第1及び第2被覆剤塗布媒体を硬化させることができる。ブロック1416では、疎水性又は疎油性材料を基板の少なくとも一部に塗布することができる。
【0043】
次に図15を参照すると、図8、9、12及び13に示す三次元抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図1500が図示されている。ブロック1502では、基板が提供されている。ブロック1504では、三次元構造を基板上に形成することができる。ある実施形態では、三次元構造は、隆起面と、隆起面の間に延在するくぼんだ面を含むことができる。ブロック1506では、少なくとも1つの抗汚染性材料を基板上に塗布することができる。ある実施形態では、抗汚染性材料を隆起面に塗布することができる。
【0044】
次に図16を参照すると、図8、9、12及び13に示す三次元抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図1600が図示されている。ブロック1602では、基板を提供することができる。ブロック1604では、隆起面と、隆起面の間で延在するくぼんだ面を含む三次元構造を基板上に形成することができる。ブロック1606では、疎水性又は疎油性材料を隆起面に塗布することができる。ある実施形態では、疎水性又は疎油性材料を各隆起面の上面部及び側面部のうちの少なくとも1つに塗布することができる。ブロック1608では、抗汚染性材料を隆起面の間のくぼんだ面に塗布することができる。
【0045】
次に図17を参照すると、図10及び11に示す三次元抗汚染構造の加工に好適な実例となる方法のフロー図1700が図示されている。ブロック1702では、基板を提供することができる。ブロック1704では、隆起面と、隆起面の間に延在するくぼんだ面を含む三次元構造を基板上に形成することができる。ブロック1706では、親水性又は親油性材料を隆起面に塗布することができる。ある実施形態では、親水性又は親油性材料を各隆起面の上面部及び側面部のうちの少なくとも1つに塗布することができる。
【0046】
本発明の実施形態を特定の例示の実施形態について説明してきたが、当然ながら特定の実施形態は例示目的のものであって、限定するものではなく、当業者によって他の変形例を発想することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 抗汚染構造
1a 構造
2 基板
3 基板表面
4 抗汚染性被覆剤
8 第1抗汚染性材料
9 第2抗汚染性材料
10 第3抗汚染性材料
11 第4抗汚染性材料
14 微生物
16 疎水性又は疎油性材料
20 構造
20a 構造
21 基板
22 基板表面
24 隆起面
25 上面部
26 側面部
30 くぼんだ面
31 疎水性又は疎油性材料
32 抗汚染性材料
34 凹状の又はくぼんだ面
40 構造
40a 構造
41 親水性又は親油性材料
44 液体の液滴
45 微生物又は生物学的作用物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面を有する基板;
前記基板表面に塗布された少なくとも1つの抗汚染性材料;及び
前記基板表面の少なくとも一部に塗布された疎水性又は疎油性材料
を含む、抗汚染構造。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抗汚染性材料が複数の抗汚染性材料を含む、請求項1に記載の抗汚染構造。
【請求項3】
前記基板の前記基板表面が二次元である、請求項1に記載の抗汚染構造。
【請求項4】
前記基板の前記基板表面が三次元である、請求項1に記載の抗汚染構造。
【請求項5】
複数の隆起面と、前記隆起面の間に延在する複数のくぼんだ面とを前記基板表面上にさらに含む、請求項4に記載の抗汚染構造。
【請求項6】
前記疎水性又は疎油性材料が前記隆起面に塗布され、前記少なくとも1つの抗汚染性材料が前記くぼんだ面に塗布されている、請求項5に記載の抗汚染構造。
【請求項7】
前記複数のくぼんだ面が複数のおおむね平面的なくぼんだ面を含む、請求項5に記載の抗汚染構造。
【請求項8】
前記複数のくぼんだ面が複数のおおむね凹状のくぼんだ面を含む、請求項5に記載の抗汚染構造。
【請求項9】
基板を提供し;
前記基板に少なくとも1つの抗汚染性材料を塗布し;
前記基板の少なくとも一部に疎水性又は疎油性材料を塗布する
ことを含む、抗汚染構造の加工方法。
【請求項10】
前記基板を提供するステップが、二次元基板表面を有する基板を提供することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板を提供するステップが、複数の隆起面と、前記隆起面の間に延在する複数のくぼんだ面とを前記基板上に含む三次元構造を提供することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記基板の前記基板表面に少なくとも1つの抗汚染性材料を塗布するステップが、前記隆起面に少なくとも1つの抗汚染性材料を塗布することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の前記基板表面の少なくとも一部に疎水性又は疎油性材料を塗布する前記ステップが、疎水性又は疎油性材料を前記くぼんだ面に塗布することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗汚染構造を含む航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−93317(P2011−93317A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−243051(P2010−243051)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】