説明

抗炎症性化合物のナノ粒子、及びその製造方法

【課題】効果的に抗炎症効果を発揮することができる抗炎症性化合物を提供する。
【解決手段】多価金属無機塩で被覆したグリチルリチン酸ナノ粒子の製造方法であって、グリチルリチン酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルを含む水性分散液を調製する第1のステップ;及び該水性分散液に多価金属塩を混合し、その後、アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物を混合して、グリチルリチン酸ナノ粒子を調製する第2のステップを含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症性化合物、特にグリチルリチン酸、の多価金属無機塩被覆ナノ粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリチルリチン酸は、甘草(カンゾウ)の茎や根に含まれる難溶性の化合物であり、その誘導体としてグリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリルなどが知られている。グリチルリチン酸及びその誘導体は抗炎症効果を有することが知られているが、例えば皮膚外用剤に配合して使用した場合、その薬理効果はそれほど高いものではない。このような背景の下、上記化合物及びその誘導体は、医薬品及び医薬部外品に配合されている他、化粧品にも配合されている。
【0003】
例えば抗炎症性薬剤を皮膚外用剤に配合して使用する場合、該薬剤は炎症局所に経皮的にデリバリーされることでその薬効を発揮する。したがって、グリチルリチン酸及びその誘導体を皮膚外用に供した際の低い薬理的効果は、皮膚深部の局所炎症部位に効果的にこれらの化合物が到達していないことに起因している可能性がある。
【0004】
本発明者らは、現在までに、化合物のミセルを多価金属無機塩で被覆することにより調製されるナノ粒子を報告している。
【0005】
例えば特許文献1〜3は、レチノイン酸のミセルを多価金属無機塩で被覆することにより、レチノイン酸の刺激性を低減すると共に、徐放的に薬効を発揮できるレチノイン酸ナノ粒子を開示している。
【0006】
特許文献4及び5は、α−リポ酸のミセルを2価金属無機塩で被覆してナノ粒子とすることにより、不安定なα−リポ酸を安定化できることを開示している。
【0007】
特許文献6は、インドメタシンのミセルを2価金属無機塩で被覆することにより、徐放性及び生体組織への高い浸透性を有する、インドメタシンのナノ粒子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−161739号
【特許文献2】国際公開第2005/037267号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/037268号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/078366号パンフレット
【特許文献5】特願2009−131600号
【特許文献6】国際公開第2010/023908号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、効果的に抗炎症効果を発揮することができる抗炎症性化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、抗炎症性化合物として公知のグリチルリチン酸に関し、効果的に抗炎症効果を発揮する形態を検討する過程で、グリチルリチン酸を多価金属無機塩で被覆したカプセル化ナノ粒子を調製することに成功した。グリチルリチン酸のカプセル化ナノ粒子を調製できたことは以下の理由により驚きであった:
(1)今までカプセル化した化合物の中で最も大きなインドメタシンよりもさらに約3倍程度の分子量を有するため、数nm〜数十nmの粒子径を有するナノカプセルが調製できるか不明であった;
(2)嵩高い疎水性ステロール骨格を有するため、非イオン性界面活性剤を使用して同様のナノ粒子が調製できるか不明であった;
(3)これまでカプセル化に成功している化合物は、いずれも1つの解離基を有する化合物であったが、グリチルリチン酸は2つの解離基を有するため、従来と同様の調製方法や成分組成比が適用可能であるか不明であった。
【0011】
さらに驚くべきことに、このグリチルリチン酸のカプセル化ナノ粒子は、皮膚外用に供した際に、炎症浮腫動物モデルにおいて典型的な抗炎症剤であるNSAID類と同等以上の抗炎症効果を示すことが見出された(下記、実施例2参照)。
【0012】
本発明は上記知見を基礎とするものであり、以下の特徴を包含する:
(1)多価金属無機塩で被覆したグリチルリチン酸ナノ粒子の製造方法であって、
グリチルリチン酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルを含む水性分散液を調製する第1のステップ;及び
該水性分散液に多価金属塩を混合し、その後、アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物を混合して、グリチルリチン酸ナノ粒子を調製する第2のステップ;
を含む、前記方法。
【0013】
(2)第1のステップは、水中に、グリチルリチン酸二カリウムを溶解すること、及び非イオン性界面活性剤を混合することを含んでいる、上記(1)記載の方法。
【0014】
(3)非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される、上記(1)記載の方法。
【0015】
(4)非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油、ショ糖ラウリン酸エステルよりなる群から選択される、上記(1)記載の方法。
【0016】
(5)多価金属塩は、多価金属ハロゲン化物、多価金属酢酸化物又は多価金属グルコン酸化物である、上記(1)記載の方法。
【0017】
(6)多価金属塩は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化バナジウム、酢酸バナジウム、臭化バナジウム、フッ化バナジウム、ヨウ化バナジウムよりなる群から選択される、上記(5)記載の方法。
【0018】
(7)アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムよりなる群から選択される、上記(1)記載の方法。
【0019】
(8)グリチルリチン酸と、非イオン性界面活性剤と、多価金属無機塩とを含む、グリチルリチン酸ナノ粒子。
【0020】
(9)非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される、上記(8)記載のナノ粒子。
【0021】
(10)非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油、ショ糖ラウリン酸エステルよりなる群から選択される、上記(8)記載のナノ粒子。
【0022】
(11)多価金属無機塩は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛よりなる群から選択される、上記(8)記載のナノ粒子。
【0023】
(12)上記(8)〜(11)のいずれか記載のナノ粒子を含有する皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、効果的に抗炎症効果を発揮することができるグリチルリチン酸のナノ粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は実施例1に従って調製したナノ粒子の粒径の測定結果である。
【図2】図2は実施例2で行った炎症抑制試験の結果を示す。
【図3】図3は実施例2で行った炎症抑制試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、多価金属無機塩で被覆されたグリチルリチン酸ナノ粒子(以下、本発明のナノ粒子とも称する)、及びその製造方法(以下、本発明の方法とも称する)に関する。
【0027】
本発明のナノ粒子は、グリチルリチン酸と、非イオン性界面活性剤と、多価金属無機塩とを含んでいる。本発明のナノ粒子の粒径は、特に制限されるものではないが、5〜30nm、好ましくは5〜20nm、例えば15nmである。なお、本明細書中でいう「ナノ粒子の粒径」とは、動的光散乱法により測定した値をいう。
【0028】
本発明で使用される非イオン性界面活性剤は、非イオン性であれば特に制限されず、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型、及びアミノ酸系の非イオン性界面活性剤のいずれを用いてもよい。例えば、これに限定されるものではないが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられ、本発明のナノ粒子の使用目的に応じて、当業者は適宜適切な非イオン性界面活性剤を選択することができる。
【0029】
本発明で使用される非イオン性界面活性剤は、好ましくは、約12以上のHLB値を有する。非イオン性界面活性剤のHLB値が過度に低い場合には、後述するグリチルリチン酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルが適切に調製できない虞がある。なお、本明細書で用いられる用語「HLB値」とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)をいい、一般に、20×M/M(式中、M=親水基部分の分子量であり、M=分子全体の分子量である)により算出される。HLB値は、分子中の親水基の量が0%のとき0であり、100%のとき20である。HLB値は、界面活性剤では界面活性剤分子を形成する親水性および疎水性の基の大きさと強さを表し、疎水性の高い界面活性剤はHLB値が小さく、親水性の高い界面活性剤はHLB値が大きい。
【0030】
本発明で使用されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、酸化エチレンの重合度が任意のものであることができる。好ましくは、酸化エチレンの重合度の下限は約10以上であり、酸化エチレンの重合度の上限は約200以下である。好ましいポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80が挙げられる。なお、この数字は、酸化エチレンの重合度を表し、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40は、酸化エチレンの付加モル数が40であることを示す。
【0031】
本発明で使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、酸化エチレンの重合度が任意のものであることができる。好ましくは、酸化エチレンの重合度の下限は約10以上であり、酸化エチレンの重合度の上限は約20以下である。好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(POE(20)ステアリルエーテルとも称する)、ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル(POE(20)オクチルドデシルエーテルとも称する)及びポリオキシエチレン(20)イソステアリルエーテル(POE(20)イソステアリルエーテルとも称する)が挙げられる。この(20)という数字は酸化エチレンの重合度が20であることを示す。
【0032】
本発明で使用されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、酸化エチレンの重合度が任意のものであることができる。酸化エチレンの重合度の下限は約10以上であり、酸化エチレンの重合度の上限は約20以下である。好ましいポリオキシエチレンソルビタン酸エステルの例としては、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(POE(20)ソルビタンモノオレエートとも称する)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(POE(20)ソルビタンモノラウレートとも称する)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(POE(20)ソルビタンモノステアレートとも称する)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(POE(20)ソルビタンモノパルミテートとも称する)及びポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート(POE(20)ソルビタントリオレートとも称する)が挙げられる。この(20)という数字は酸化エチレンの重合度が20であることを示す。なお、使用するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLB値の下限は、好ましくは約10以上、より好ましくは約12以上、最も好ましくは約14以上である。HLB値の上限は、好ましくは約20以下、より好ましくは約18以下、最も好ましくは約16以下である。
【0033】
本発明で使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、酸化エチレンの重合度が任意のものであることができる。好ましくは、ポリオキシエチレン部分の重合度の下限は約10以上であり、ポリオキシエチレン部分の重合度の上限は約20以下である。好ましくは、ポリオキシプロピレン部分の重合度の下限は約4以上であり、ポリオキシプロピレン部分の重合度の上限は約8以下である。好ましいポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル(POE(20)POP(8)セチルエーテルとも称する)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル(POE(20)POP(4)セチルエーテルとも称する)、ポリオキシエチレン(34)ポリオキシプロピレン(23)セチルエーテル(POE(34)POP(23)セチルエーテルとも称する)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル(POEPOEプロピレンデシルテトラデシルエーテルとも称する)及びポリオキシエチレン(20)イソステアリルエーテル(POE(20)イソステアリルエーテルとも称する)が挙げられる。
【0034】
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノオレートおよびデカグリセリンモノステアレートが挙げられる。HLB値の下限は特に限定はされないが、好ましくは約8以上であり、より好ましくは約10以上であり、さらに好ましくは約12以上であり、上限は好ましくは約20以下であり、より好ましくは約19以下であり、さらに好ましくは約18以下である。
【0035】
本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステル類としては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステルおよびショ糖ラウリン酸エステルが挙げられる。
【0036】
本発明において、非イオン性界面活性剤として使用されるアミノ酸系界面活性剤は、これに限定されるものではないが、例えばラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス−2、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス−5、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス−2、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス−5、PCAイソステアリン酸PEG−30水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG−40水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG−60水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸グリセレス−25よりなる群から選択することができる。
【0037】
非イオン性界面活性剤は上記の1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明に使用される多価金属無機塩は、多価金属イオンと、炭酸イオン又はリン酸イオンとを含んでいる。
【0039】
本発明のナノ粒子に使用することができる多価金属イオンとして、これに限定されるものではないが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、バナジウムイオンなどを挙げることができる。
【0040】
本発明のナノ粒子を製造する際、上記多価金属イオンは、多価金属塩、例えば多価金属ハロゲン化物、多価金属酢酸化物又は多価金属グルコン酸化物の形態で使用することができる。
【0041】
具体的に、多価金属塩は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化バナジウム、酢酸バナジウム、臭化バナジウム、フッ化バナジウム、ヨウ化バナジウムよりなる群から選択される1種又は2種以上であることができ、好ましくは、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及びグルコン酸亜鉛よりなる群から選択される1種又は2種以上であることができる。なお、複数種の多価金属塩を使用する場合、本発明のナノ粒子に含まれる多価金属イオンが同一であるように多価金属塩を選択することが好ましい点に留意すべきである。また、上記多価金属塩として市販のものを使用してもよい。
【0042】
本発明のナノ粒子を製造する際、上記炭酸イオン又はリン酸イオンは、例えばアルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物の形態で使用することができる。アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物中のアルカリ金属の例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムが挙げられる。アルカリ金属は、好ましくは、ナトリウム又はカリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
【0043】
本発明において使用することができるアルカリ金属炭酸化物の例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムを挙げることができる。アルカリ金属炭酸化物は、好ましくは炭酸ナトリウムである。
【0044】
本発明において使用することができるアルカリ金属リン酸化物の例としては、例えば、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムを挙げることができる。リン酸ナトリウムは、メタリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム又はピロリン酸水素ナトリウムであることができ、好ましくはリン酸水素二ナトリウムである。リン酸カリウムは、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム又はリン酸三カリウムであることができ、好ましくはリン酸水素二カリウムである。
【0045】
上記アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物は、1種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。なお、アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物として市販のものを使用することができる。
【0046】
本発明のナノ粒子において、多価金属無機塩は、好ましくは炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛である。
【0047】
本発明のナノ粒子は、
グリチルリチン酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルを含む水性分散液を調製する第1のステップ;及び
該水性分散液に多価金属塩を混合し、その後、アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物を混合して、グリチルリチン酸ナノ粒子を調製する第2のステップ
を含む方法によって、製造することができる。
【0048】
具体的に本発明の方法は、水溶液中で形成されたグリチルリチン酸のミセルに対し、その溶解性及び分散性を維持したまま多価金属イオンを吸着し、該多価金属イオンを炭酸化物又はリン酸化物で電荷的に中和することで、前記ミセルを多価金属無機塩で被覆する方法である。
【0049】
本発明の方法において、グリチルリチン酸原料として、天然物(すなわちカンゾウの根及び茎)から抽出される任意形態のものを使用することができる。例えば、塩形態のグリチルリチン酸(これに限定されるものではないが、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウムなど)などが挙げられる。天然物からの抽出は常法に従って行えばよく、特別な手法を要しない。例えば、抽出方法として、溶媒抽出、酵素抽出などを挙げることができ、当業者はこれらを適宜組み合わせて使用することができる。また、グリチルリチン酸又はその任意形態のものとして、市販品を使用してもよい。
【0050】
第1のステップは、グリチルリチン酸を水中に溶解することを含んでいる。したがって、グリチルリチン酸原料として、水溶性形態のグリチルリチン酸を使用することが好ましい。そのようなグリチルリチン酸として、これに限定されるものではないが、塩形態のグリチルリチン酸、例えばグリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウムなどを挙げることができる。最も好ましくは、グリチルリチン酸原料としてグリチルリチン酸二カリウムを使用する。
【0051】
一方、グリチルリチン酸原料として不溶性又は難溶性形態のグリチルリチン酸(例えばグリチルリチン酸)を使用する場合には、アルカリ性化合物を含む水溶液中でグリチルリチン酸の塩を形成させて可溶化することで、グリチルリチン酸のミセルを形成させる。この目的に使用可能なアルカリ性化合物として、これに限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを挙げることができる。その際、水に対するアルカリ性化合物の添加量は、グリチルリチン酸1モルに対し、1モル以上、好ましくは2モル以上、例えば2.1モルとすることが好ましい。1モル未満であると、グリチルリチン酸が溶媒に溶けない虞がある。
【0052】
第1のステップでグリチルリチン酸の溶解に使用される水は、当業者に公知の任意の水であることができる。例えば、これに限定されるものではないが、水道水、蒸留水、イオン交換水、殺菌水などなどを使用することができる。
【0053】
第1のステップはまた、非イオン性界面活性剤を添加及び撹拌(混合)して、グリチルリチン酸のミセルを非イオン性界面活性剤との混合ミセルとすることを含んでいる。後述するように、続く第2のステップで、ミセル表面に多価金属イオンを吸着させるが、グリチルリチン酸のミセル表面に多価金属イオンが吸着した場合には、その高い吸着力(結合力)に起因して、その表面の荷電は解離しにくくなり、水への溶解性を失う。溶解性を失ったグリチルリチン酸のミセルは沈殿を生じ、沈殿物は互いに凝集してしまうため、本発明のナノ粒子を製造することはできない。一方、グリチルリチン酸のミセルを非イオン性界面活性剤との混合ミセルとして調製すると、混合ミセル表面に突出した非イオン性界面活性剤に由来する親水基の存在により、多価金属イオンがグリチルリチン酸部分に吸着してもなお、水への溶解性及び分散性を維持することができる。なお、非イオン性界面活性剤として、室温で固体又は半固体のものを使用する場合には、使用前に加熱して液体状にしたものを使用すべき点に留意する。
【0054】
第1のステップにおいて、非イオン性界面活性剤の混合時期は特に制限されない。すなわち、グリチルリチン酸の水への溶解前、溶解と同時、又は溶解後のいずれの時点で非イオン性界面活性剤を混合してもよい。また撹拌時間も特に制限されず、添加した非イオン性界面活性剤が完全に溶解するまで行う。
【0055】
非イオン性界面活性剤の添加量は、特に制限されないが、グリチルリチン酸1重量部に対し、2重量部以上、好ましくは3重量部以上、より好ましくは4重量部以上、最も好ましくは5重量部以上とすることができる。
【0056】
第2のステップは、グリチルリチン酸と非イオン性界面活性剤の混合ミセルを多価金属無機塩で被覆するステップである。第1のステップで調製した混合ミセルの表面は、マイナス荷電で覆われた状態となっていると考えられるため、容易に多価金属イオンを吸着することができる。その後、炭酸イオン又はリン酸イオンを添加して、混合ミセル表面に吸着した多価金属イオンを電荷的に中和することで、多価金属無機塩の被膜を形成することができる。
【0057】
第2のステップで混合する多価金属塩の量は、第1のステップで調製した混合ミセルの表面に多価金属イオンが吸着されるような量で添加する。そのような量の下限は、グリチルリチン酸のモル濃度を100としたときに、モル比で、50〜300%、より好ましくは75〜200%、より好ましくは90〜110%、例えば100%である。
【0058】
多価金属塩の添加後、前記混合ミセル及び多価金属塩を含む水性分散液の撹拌時間は、混合ミセル表面に多価金属イオンが吸着するのに十分な時間である限り特に制限されず、例えば約10分間以上、好ましくは約20分間以上、より好ましくは約25分以上、最も好ましくは約30分以上とすることができる。
【0059】
また添加されるアルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物の量は、前記混合ミセルの表面に吸着した多価金属イオンを電荷的に中和でき、かつ混合ミセル同士の沈殿を生じない量であれば特に制限されない。そのような量は、これに限定されるものではないが、例えば添加した多価金属塩の量を1としたとき、モル比で、約0.01〜1.0であり、好ましくは0.05〜0.7であり、より好ましくは0.1〜0.5であり、最も好ましくは0.1〜0.3、例えば0.2である。
【0060】
アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物の添加後の撹拌時間は、混合ミセル表面に吸着した多価金属イオンと、炭酸イオン又はリン酸イオンとが電荷的な中和反応を生じるのに十分な時間であれば特に制限されず、例えば約10分間以上、好ましくは約20分間以上、より好ましくは約25分以上、最も好ましくは約30分以上とすることができる。
【0061】
上記の各工程を行うことにより、水性分散液中でグリチルリチン酸のナノ粒子が形成される。この水性分散液を必要に応じて乾燥させて粉末を得てもよい。乾燥は、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥など、当業者に公知の任意の手法によって行うことができる。
【0062】
本発明の方法において、撹拌は当業者に公知の撹拌デバイスを用いて行えばよく、添加する成分の適切な混合が実現できる限り、特別な工程又はデバイスを要しない。例えば、これに限定されるものではないが、スターラーバー、スパーテル、乳化機、真空乳化機などのデバイスを用いて撹拌を行うことができる。
【0063】
本発明の方法において、各工程の実施温度は特に制限されず、室温で行えばよい。
【0064】
こうして製造される本発明のナノ粒子は、例えば皮膚外用に供した際に、効果的に抗炎症効果を発揮することができる。また本発明のナノ粒子の被膜は、生体内において徐々に分解されるため、グリチルリチン酸を徐々に放出する徐放性を有している。
【0065】
本発明のナノ粒子は、従来グリチルリチン酸又はその誘導体が使用されてきた様々な用途に使用することもできるが、好ましくは医薬品、特に皮膚外用剤として使用される。
【0066】
本発明の皮膚外用剤は、分散媒と、該分散媒に分散している本発明のナノ粒子とを含み、例えば外用消炎鎮痛剤として使用することができる。本発明の皮膚外用剤の剤形として、これに限定されるものではないが、例えば軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、貼付剤、エアロゾール剤などを挙げることができる。
【0067】
本発明の皮膚外用剤は、剤形に適した分散媒(基剤)や添加剤などを適宜選択し、日本薬局方などに記載される通常の方法に従って製造することができる。
【0068】
例えば軟膏剤の場合、分散媒の例として、ワセリン、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;プラスチベース;精製ラノリン;ラノリンアルコール、水添ラノリン等のラノリン類;動植物油;天然ワックス;ロウなどが挙げられる。クリーム剤の場合、分散媒の例として、ワセリンなどの炭化水素類;エステル類;トリグリセライド類;セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類などが挙げられる。液剤又はエアロゾール剤の場合、分散媒の例として、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール;水;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ヒマシ油などの油分が挙げられる。ゲル剤の場合、分散媒の例として、ステアリン酸アルミニウム、脂肪酸デキストランエステル、カルボキシビニルポリマー、ベントナイトなどが挙げられる。貼付剤の場合、分散媒の例として、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガンドガムなどが挙げられる。
【0069】
本発明のナノ粒子はまた、経口投与、経腸投与又は注射剤の形態で投与する医薬品に配合してもよい。この場合、本発明のナノ粒子は、医薬的に許容できる賦形剤とともに、液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの形態で製剤化することができる。医薬的に許容できる賦形剤としては、これに限定されるものではないが、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖類、デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の無機物、結晶セルロース、蒸留水、精製水、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油等の一般に使用されているものを例示することができる。また賦形剤の他、結合剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤などの添加剤を使用することができる。他の医薬品と混合、或いは併用することも可能である。なお、上記の製剤は殺菌処理を行なってもよい。
【0070】
本発明の医薬品における本発明のナノ粒子の配合量は、当業者が適宜適切な量を設定することができる。そのような量は、採用する剤形に応じて変化する場合があるが、例えば皮膚外用剤の総量に対し、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、例えば3重量%とすることができる。
【0071】
本発明の医薬品の投与量及び投与間隔は、採用する剤形、患者の年齢、体重、性別など、当業者が考慮する一般的な指標に基づいて、当業者は適宜適切な量及び間隔を選択することができる。
【0072】
本発明のナノ粒子の可能な他の用途として、これに限定されるものではないが、化粧品及び飲食品などを挙げることができる。
【0073】
本発明のナノ粒子を化粧品に配合する場合には、これに限定されるものではないが、例えば化粧水、乳液、クリーム等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅などの化粧品、頭髪化粧料、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリーム、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石鹸、ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、浴用剤、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリーム、ケーキなどに加工することができる。またその配合量は、化粧品の形態に応じて変化する場合があるが、化粧品100gに対し、0.2g〜0.8g、例えば0.5g程度とすることができる。
【0074】
本発明のナノ粒子を飲食品に配合する場合には、あらゆる食品形態に加工することができる。本発明のナノ粒子を配合することのできる飲食品としては、天然物及びその加工品を含む飲食物等を挙げることができる。またその配合量は、飲食品の形態応じて変化する場合があるが、飲食品100gに対し、1mg〜100mg、好ましくは50mg程度とすることができる。
【0075】
飲食品の例としては、これに限定されるものではないが、錠剤形、粉末状、顆粒状、カプセル状、ゼリー状等の機能性食品、パン類、菓子類、クッキー、ビスケット等の穀類加工品、牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品類、炭酸飲料、清涼飲料、果汁入り飲料、薬系ドリンク等の飲料、惣菜や加工食品等が挙げられる。
【0076】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
[実施例1] 炭酸マグネシウム被覆グリチルリチン酸ナノ粒子の調製
本実施例で使用した試薬は以下の通りである:
グリチルリチン酸ジカリウム:丸善製薬社製、医薬部外品原料規格
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ社製、医薬用
MgCl:和光純薬社製、試薬グレード
NaCO:試薬グレード
【0078】
グリチルリチン酸二カリウム0.3gに7.5mLのイオン交換水を添加して混合し、完全に溶解するまで攪拌した。さらにポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油を1.5g加え、1時間以上攪拌し完全に溶解させた。そこに2.5M MgClを132μL添加して30分以上攪拌した後、1M NaCOを66μL加えてさらに30分以上攪拌した。そこにイオン交換水を加えて10mlとした。これによりグリチルリチン酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。この分散液をイオン交換水で10倍に希釈し、動的光散乱装置(大塚電子社製、ELS−710TY)を用いて粒径を測定した。なお、上記プロセスは全て室温で行った。
【0079】
結果を図1に示す。図1から明らかな通り、上記プロセスにより調製した粒子は10.6nm〜24.2nmの範囲の粒径を有し、その平均粒径は15.9nmであった。
【0080】
[実施例2] 炭酸マグネシウム被覆グリチルリチン酸ナノ粒子の抗炎症効果の検証
本実施例では、実施例1で調製した炭酸マグネシウム被覆グリチルリチン酸ナノ粒子が抗炎症効果を有するか否かを判定するために行った。
【0081】
動物急性炎症モデルは、以下の方法で作製した浮腫モデルを使用した。5週齢の雄性Wistarラット(日本エスエルシー(株))の左右それぞれの後肢足蹠に重量比で1%のλカラゲニン生理食塩水溶液を0.1mlずつ皮下投与して、浮腫を惹起した。後肢の浮腫の度合いは、肢の容積をラット後肢足蹠浮腫容積測定装置プレシスモメータ(室町機械 MK−550)で測定した。試験方法は、正常状態の後肢容積を測定した後、カラゲニン生理食塩水溶液を投与する1時間前に、製剤をそれぞれ肢の甲に25μl、肢の裏に25μl塗布した。カラゲニンを投与後、経時ごとに後肢容積の測定を行った。測定は、カラゲニン投与前、カラゲニン投与1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後にそれぞれ行った。実験の対照には市販のジクロフェナクナトリウム配合製剤2種類を使用した。実験群の各n数は1群6匹(n=12)とした。カラゲニン塗布前の正常状態の後肢容積を100%とし、カラゲニン投与後の各時間の後肢容積が何%増加したかを浮腫率として以下の計算式に従って解析を行った(浮腫率(%)={(カラゲニン惹起後の片肢容積/カラゲニン惹起前の片肢容積)−1}×100)。
【0082】
図2及び3から分かる通り、実施例1で調製したナノ粒子は、抗炎症剤として使用されている市販のNSAID類と同等以上の抗炎症効果を有することが明らかにされた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、グリチルリチン酸のミセルを多価金属無機塩で被覆したナノ粒子が提供される。
【0084】
本発明のグリチルリチン酸ナノ粒子は、例えば皮膚外用に供した際に効果的に抗炎症効果を発揮することができるため、各種の皮膚外用剤に配合して使用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属無機塩で被覆したグリチルリチン酸ナノ粒子の製造方法であって、
グリチルリチン酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルを含む水性分散液を調製する第1のステップ;及び
該水性分散液に多価金属塩を混合し、その後、アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物を混合して、グリチルリチン酸ナノ粒子を調製する第2のステップ;
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1のステップは、水中に、グリチルリチン酸二カリウムを溶解すること、及び非イオン性界面活性剤を混合することを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油、ショ糖ラウリン酸エステルよりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
多価金属塩は、多価金属ハロゲン化物、多価金属酢酸化物又は多価金属グルコン酸化物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
多価金属塩は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化バナジウム、酢酸バナジウム、臭化バナジウム、フッ化バナジウム、ヨウ化バナジウムよりなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
アルカリ金属炭酸化物又はアルカリ金属リン酸化物は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムよりなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
グリチルリチン酸と、非イオン性界面活性剤と、多価金属無機塩とを含む、グリチルリチン酸ナノ粒子。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される、請求項8記載のナノ粒子。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油、ショ糖ラウリン酸エステルよりなる群から選択される、請求項8記載のナノ粒子。
【請求項11】
多価金属無機塩は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛よりなる群から選択される、請求項8記載のナノ粒子。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項記載のナノ粒子を含有する皮膚外用剤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−12325(P2012−12325A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149680(P2010−149680)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【出願人】(506151235)株式会社ナノエッグ (11)
【Fターム(参考)】