説明

抗生物質耐性微生物を同定するための方法およびキット

【課題】臨床試料または生物学的試料を迅速に処理すること、また臨床試料中の病原体または抗生物質に耐性を示す遺伝子の迅速かつ正確な検出を提供すること。
【解決手段】本発明は、RNAが実質的に欠乏したハイブリダイゼーション反応混合物を調製するための迅速試料処理方法と、生物のメチシリン耐性状態およびバンコマイシン耐性状態を同定するための方法とを提供する。本発明は、メチシリンおよび/またはバンコマイシンに対する耐性をコードする核酸の検出に使用することができるポリヌクレオチドをベースとした方法、組成物、キット、および装置に関する。より詳しくは、本発明は、微生物のメチシリン耐性に関連したmecA遺伝子の検出を提供するとともに、微生物のバンコマイシン耐性に関連したVanAおよびVanB遺伝子の検出を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国特許仮出願第60/469,997号(2003年5月13日出願)および米国特許仮出願第60/516,100号(2003年10月31日出願)の優先権主張をおこなう。これら先行出願の開示内容全体を本明細書の一部をなすものとして援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、核酸診断の分野に関する。より具体的には、本発明はメチシリン耐性および/またはバンコマイシン耐性微生物を検出および同定するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
感染性の生物を検出および同定するための手順は、臨床検査室でおこなわれるもっとも重要な仕事の一部である。以前は経験豊かな微生物学者によって染色臨床材料の肉眼検査によって感染症の検査室診断がおこなわれていたのに対して、最新の技術を用いることで、より迅速かつ客観的な結果が得られる。放射免疫アッセイ、酵素結合免疫アッセイ、ならびにラテックス凝集および免疫ブロッティング・アッセイを含む免疫アッセイは、モノクローナル抗体が入手可能であることによって高められた利用性を持つ強力な診断ツールとなった。
【0004】
核酸ハイブリダイゼーション・アッセイは、微生物を検出するために開発され、さらにシグナルおよび標的増幅でのより最近になってからの進歩によって、オリゴヌクレオチド・プローブの使用をベースとした分子診断の時代が到来した。一般に、プローブは、検出すべき核酸配列(「標的配列」)に対するある程度の相補性を持つ一本鎖ポリヌクレオチドである。もし該標的配列が、ハイブリダイゼーション促進条件下で、標的配列に対して相補的である十分な数の連続した塩基を持つプローブと接触するならば、プローブと標的配列との二本鎖核酸ハイブリッドが生ずる。したがって、適当な条件下で、DNA/DNA、RNA/DNA、またはRNA/RNAハイブリッドが形成可能である。一般に、プローブを検出可能部位(例えば、放射性同位元素、リガンド、または比色定量部位、蛍光定量部位、もしくは化学発光部位)によって標識することで、ハイブリッドの検出が容易になる。
【0005】
実際、現在では、感染性の生物の同定をおこなうための広範囲に及ぶ多数の技術が臨床微生物学者によって用いられている(例えば、Manual of Clinical Microbiology Murray et al.,eds.,6th edition,ASM Press(1995)を参照せよ)。自動化された基質利用系は、一般に、発色性または蛍光発生性の化合物を放出する酵素反応、異なる炭素源存在下での代謝活性のテトラゾリウムベースの指標、または代謝の酸性産物の検出に依存している。これらの基質によるポジティブ(陽性)およびネガティブ(陰性)の反応のパターンは、臨床試料から単離された微生物の同定に用い得る生化学的プロフィールを確立する。細菌および酵母での脂質形成に貢献する300を超える脂肪酸のクロマトグラフ・プロフィールもまた、微生物の表現型を定める際に用いられている。これらの非常に強力な技術の利用可能性にかかわらずに、ポリヌクレオチドベースのアッセイが臨床検査室での実務で急速に好評を博している。
【0006】
ポリヌクレオチド・ハイブリダイゼーション反応の特異性は、核酸増幅技術によって与えられる並外れた感度とともに、分子診断をたいへん少ない量でのみ利用可能である微生物を検出および同定するためのより抜きの方法とした。一般に用いられるDNAプローブ・ハイブリダイゼーションのフォーマットとして、固相ハイブリダイゼーション、液相ハイブリダイゼーション、およびインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる。固相ハイブリダイゼーション法では、微生物ポリヌクレオチドを含む試料を固体支持体に固定して変性させた後、検出可能な標識の持つポリヌクレオチド・プローブによってプロービングする。ハイブリッドを形成しなかったプローブをその系から取り除き、特異的にハイブリッドを形成したプローブを、例えばオートラジオグラフィーまたは直接肉眼観察することで検出する。液相ハイブリダイゼーション手順では、標的ポリヌクレオチドおよび標識プローブが、ハイブリダイゼーション用水性緩衝液中では自由に相互作用する。特異的にハイブリッドを形成したプローブを次に、混合物中の標的ポリヌクレオチドの存在の指標として検出する。ホルマリン固定組織切片を用いるインサイチュハイブリダイゼーションは、微生物の物理的分布および量についての情報を得るために用いられる。
【0007】
多数のポリヌクレオチドベースのアッセイが報告されている生物の一例は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)である。例えば、米国特許第5,292,874号でMillimanは、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)をスタフィロコッカス属の他の種(Staphylococcus種)と区別するハイブリダイゼーションベースのアッセイを記載しており、このアッセイは23SのrRNAに対して特異的なプローブを用いる。生物学的試料に含まれるスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の検出は、スタフィロコッカス属の中でスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)はそれが引き起こし得る感染症の発症率および重症度によって最も臨床的に重要な種であるので重要である(Morse,Staphylococci,in Medical Microbiology and Infectious Diseases,Abraham Braude,editor,W.B.Saunders Company,Philadelphia,Pa.,1981)。さらに、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)は、院内感染の重要な作用因子であり、メチシリン耐性株(MRSA)は米国全土の病院で重大な疫学的問題として現れた。
【0008】
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、薬剤耐性細菌として現れる別の種類を表す。バンコマイシンが臨床的に導入されてからほぼ30年間経過した後、これらの生物が1986年に最初に同定されたことから、バンコマイシン耐性が、機能的に類似した2種類のオペロン、すなわちVanAおよびVanBのいずれかによって、主に与えられることが確認された。これらのオペロン(その転移はプラスミドまたはトランスポゾンによって媒介され得る)は、他の種で進化して腸球菌によって獲得されたと考えられる複合耐性デターミナントである。VREコロニー形成および感染についてしばしば同定されている危険因子として、長期間にわたる入院、集中治療室への暴露、移植、血液学的悪性疾患、ならびに抗生物質への暴露が挙げられる。特に、米国で回収されるVREの95%を上回るものがエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)であり、実質的にすべてが高レベルのアンピシリンに対して耐性である(Rice,L.,Emerging Infectious Diseases 7:183(2001))。
【0009】
バンコマイシン耐性が遺伝学的手段によって伝わり得ることから、この重要な抗生物質に対する耐性は、他の微生物(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus))によって得られ得る可能性がある。実際、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)からスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)へのVanA遺伝子の接合転移が、すでに生体外(in vitro)で示されている。そのような転移機構が、バンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)(VRSA)の出現の基礎をなすかもしれないと推測されている(Noble et al.,FEMS Microbiol Lett 93:195(1992))。おそらく、メチシリンおよびバンコマイシン(MVSA)の両方に対する耐性を獲得したスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の株が出現することもあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、臨床試料または生物学的試料を迅速に処理すること、また臨床試料中の病原体または抗生物質に耐性を示す遺伝子の迅速かつ正確な検出が今もなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
本発明の第1の態様は、抗生物質に対する耐性をコードする核酸を検出するための装置に関する。本発明の装置は、固体支持体と、該固体支持対上の複数の位置に分布し、検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを含む。複数の位置として、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコッカスエピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)を含むスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする一方で、エンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブを含む第1の位置が含まれる。この装置は、第2の位置をさらに含み、この第2の位置は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)を含むエンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)にもスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の他の細菌種にもハイブリダイズしない1種類以上のプローブを有する。この第2の位置は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の他の種またはエンテロコッカス(Enterococcus)属の細菌種のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない少なくとも1種類のプローブも有する。上記装置はさらに、mecA核酸に対してハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブを含む第3の位置を含む。上記装置はさらに、VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第4の位置を含む。この発明の一実施形態では、検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブの各々が、検出可能に標識された可溶性ハイブリダイゼーション・プローブである。別の実施形態では、検出可能に標識されたハイブリダイゼーション・プローブの各々が、均質的に検出可能な標識によって標識される。例えば、上記均質的に検出可能な標識は、化学発光標識であってもよい。さらに別の実施形態では、本発明の装置は、さらに、第5の位置を含み、該第5の位置は、(グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む)複数のグラム陽性細菌種、腸内細菌(Enterobacteriaceae)科の複数の細菌種、エンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む。なおさらに別の実施形態では、VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズするプローブが、VanA核酸にハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブと、VanB核酸にハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブとを含む。異なる実施形態では、VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズするプローブが、VanA核酸およびVanB核酸の両方に対してハイブリダイズする単一のプローブを含む。
【0012】
本発明の第2の態様もまた、抗生物質に対する耐性をコードする核酸を検出するための装置に関する。本発明の装置は、固体支持体と、該固体支持対上の複数の位置に分布し、検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを含む。複数の位置として、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコッカスエピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)を含むスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを持つ第1の位置が含まれる。この装置はさらに、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の他の種類のリボソーム核酸に対してはハイブリダイズしないプローブを含む第2の位置を含む。この装置はさらに、mecA核酸とハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブを含む第3の位置を有する。この装置はさらに、複数のグラム陽性細菌種(グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む)、腸内細菌(Enterobacteriaceae)科の複数の細菌種、エンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを有する第4の位置を含む。本発明の一実施形態では、第4の位置は、配列番号16または配列番号19のいずれか一つである塩基配列を持つ汎細菌性プローブを含む。この好ましい実施形態では、第3の位置のプローブが、配列番号2、配列番号3、または配列番号5のいずれかである塩基配列を持つ。
【0013】
本発明の第3の態様もまた、抗生物質に対する耐性をコードする核酸を検出するための装置に関する。本発明の装置は、固体支持体と、該固体支持対上の複数の位置に分布し、検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを含む。上記複数の位置は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)を含むエンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを持つ第1の位置を含む。上記装置はさらに、VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズする前記1種類以上のプローブを有する第2の位置を含む。上記装置はさらに、複数のグラム陽性細菌種(グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む)、腸内細菌(Enterobacteriaceae)科の複数の細菌種、エンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌種1種類以上のプローブに由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを持つ第3の位置を含む。本発明の一実施形態では、上記第3の位置が、配列番号16または配列番号19のいずれかである塩基配列を持つ汎細菌性プローブを含む。好ましい実施形態では、上記第2の位置のプローブが、配列番号27、配列番号28、および配列番号29からなる群から選択される配列を有する。別の好ましい実施形態では、上記第2の位置のプローブが、配列番号30、配列番号40、および配列番号41からなる群から選択される配列を有する。
【0014】
本発明の第4の態様は、細胞を含む試料中の標的DNA配列の存在を検出する方法に関する。この発明の方法は、前記試料に含有される細胞を溶解することで溶解物を生成するステップを含む。塩基性組成物によって前記溶解物を処理することで、塩基性混合物を生成するステップも含まれる。この後に、塩基性混合物に対して1種類以上の試薬を導入することで、pHが4.5〜5.5の範囲内で反応混合物を生成する。つぎに、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上記反応混合物をオリゴヌクレオチド・プローブとハイブリダイズさせて、オリゴヌクレオチドと標的DNAとのあいだにハイブリッドを形成するステップがある。最後に、標的DNA配列の存在の指標としてハイブリッドを検出するステップがある。本発明の一実施形態では、上記ハイブリッド形成ステップでのオリゴヌクレオチド・プローブがmecA遺伝子配列、VanA遺伝子配列、またはVanB遺伝子配列のいずれかに対して相補的である。異なる実施形態では、上記処理ステップが、上記溶解物に存在し得るRNAを実質的に加水分解するのに十分な時間にわたって、最大で100℃の温度で上記塩基性混合物を加熱するステップを含む。
【0015】
本発明の第5の態様は、mecA核酸をハイブリダイズさせるためのプローブ混合物に関する。本発明のプローブ混合物は、配列番号2の配列を持ち、検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号3の配列を持ち、検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号5の配列を持ち、検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブと、を含む。より好ましくは、上記検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブは、配列番号2またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、mecA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、上記検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号3またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、mecA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、さらに、上記検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号5またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、mecA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含む。
【0016】
本発明の第6の態様は、VanA核酸を検出するためのプローブ混合物に関する。本発明のプローブ混合物は、配列番号27またはその相補体の配列を有する検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号28またはその相補体の配列を有する検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号29またはその相補体の配列を有する検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブと、を有する。より好ましくは、上記検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号27またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、VanA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を有し、上記検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号28またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、VanA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を有し、さらに、上記検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号29またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、VanA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を有する。
【0017】
本発明の第7の態様は、VanB核酸を検出するためのプローブ混合物に関する。本発明のプローブ混合物は、配列番号30またはその相補体の配列を有する検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号40またはその相補体の配列を有する検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号41またはその相補体の配列を有する検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブと、を含む。より好ましくは、上記検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号30またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、VanB遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を有し、上記検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号40またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、VanB遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を有し、さらに、上記検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号41またはその相補体の長さおよび配列、ならびに、必要に応じて、VanB遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を有する。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
抗生物質に対する耐性をコードする核酸を検出するための装置であって、
固体支持体と、該固体支持体上の複数の位置に分布し、かつ検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを具備し、該複数の位置が、スタフィロコッカス・アウレウスおよびスタフィロコッカス・エピデルミディスを含むスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする一方で、エンテロコッカス属の細菌のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブを含む第1の位置と、
(a)エンテロコッカス・フェカーリスおよびエンテロコッカス・フェシウムを含むエンテロコッカス属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス・アウレウスまたはスタフィロコッカス属の任意の他の細菌に由来するリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブ、ならびに
(b)スタフィロコッカス・アウレウスに由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス属の他の種またはエンテロコッカス属の細菌由来のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない少なくとも1種類のプローブ、
を含む第2の位置と、
mecA核酸とハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブを含む第3の位置と、
VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第4の位置と、
を含む、装置。
(項目2)
前記検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブの各々が、検出可能に標識された可溶性ハイブリダイゼーション・プローブである、項目1の装置。
(項目3)
前記検出可能に標識されたハイブリダイゼーション・プローブの各々が、均質的に検出可能な標識によって標識されている、項目1の装置。
(項目4)
前記均質的に検出可能な標識が化学発光標識である、項目3の装置。
(項目5)
さらに第5の位置を含み、該第5の位置が、グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む複数のグラム陽性細菌種、腸内細菌科の複数の細菌種、エンテロコッカス属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む、項目1の装置。
(項目6)
VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズする前記1種類以上のプローブが、VanA核酸にハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブと、VanB核酸にハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブとを含む、項目1の装置。
(項目7)
VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズする前記1種類以上のプローブが、VanA核酸およびVanB核酸の両方に対してハイブリダイズする単一のプローブを含む、項目1の装置。
(項目8)
抗生物質に対する耐性をコードする核酸を検出するための装置であって、固体支持体と、該固体支持体上の複数の位置に分布し、かつ検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを具備し、該複数の位置が、
スタフィロコッカス・アウレウスおよびスタフィロコッカス・エピデルミディスを含むスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第1の位置と、
スタフィロコッカス・アウレウスに由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス属の他の種類に由来するリボソーム核酸に対してはハイブリダイズしないプローブを含む第2の位置と、
mecA核酸とハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブを含む第3の位置と、
グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む複数のグラム陽性細菌種、腸内細菌科の複数の細菌種、エンテロコッカス属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第4の位置と、
を含む、装置。
(項目9)
前記第4の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号16の塩基配列と配列番号19の塩基配列とからなる群から選択される汎細菌性プローブを含む、項目8の装置。
(項目10)
前記第3の位置の前記少なくとも1種類のプローブが、配列番号2、配列番号3、および配列番号5からなる群から選択される塩基配列を持つ、項目9の装置。
(項目11)
抗生物質に対する耐性をコードする核酸を検出するための装置であって、固体支持体と、該固体支持体上の複数の位置に分布し、かつ検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを具備し、該複数の位置が、
エンテロコッカス・フェカーリスおよびエンテロコッカス・フェシウムを含むエンテロコッカス属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第1の位置と、
VanA核酸およびVanB核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第2の位置と、
グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む複数のグラム陽性細菌種、腸内細菌科の複数の細菌種、エンテロコッカス属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対して集合的にハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む、第3の位置と、
を含む、装置。
(項目12)
前記第3の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号16および配列番号19からなる群から選択される汎細菌性プローブを含む、項目11の装置。
(項目13)
前記第2の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号27、配列番号28、および配列番号29からなる群から選択される塩基配列を持つ、項目12の装置。
(項目14)
前記第2の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号30、配列番号40、および配列番号41からなる群から選択される塩基配列を持つ、項目12の装置。
(項目15)
細胞を含む試料中の標的DNA配列の存在を検出する方法であって、
該試料に含有される細胞を溶解することで溶解物を生成するステップと、
塩基性組成物によって該溶解物を処理することで、塩基性混合物を生成するステップと、
該塩基性混合物に対して1種類以上の試薬を導入することで、pHが4.5〜5.5の範囲内で反応混合物を生成するステップと、
高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で該反応混合物をオリゴヌクレオチド・プローブとハイブリダイズさせて、該オリゴヌクレオチド・プローブと該標的DNAとの間にハイブリッドを形成するステップと、
該標的DNA配列の存在の指標として、該ハイブリッドを検出するステップと、
を有する、方法。
(項目16)
前記オリゴヌクレオチド・プローブが、mecA遺伝子配列、VanA遺伝子配列、またはVanB遺伝子配列のいずれかに対して相補的である、項目15の方法。
(項目17)
前記処理ステップが、前記溶解物に存在し得るRNAを実質的に加水分解するのに十分な時間にわたって、最大で100℃の温度で前記塩基性混合物を加熱するステップを含む、項目15の方法。
(項目18)
mecA核酸をハイブリダイズするためのプローブ混合物であって、
配列番号2の塩基配列を含む検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブと、
配列番号3の塩基配列を含む検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブと、
配列番号5の塩基配列を含む検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブと、
を含む、プローブ混合物。
(項目19)
前記検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号2またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、mecA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、
前記検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号3またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、mecA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、
前記検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号5またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、mecA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含む、項目18のプローブ混合物。
(項目20)
VanA核酸を検出するためのプローブ混合物であって、
配列番号27またはその相補体の塩基配列を含む検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブと、
配列番号28またはその相補体の塩基配列を含む検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブと、
配列番号29またはその相補体の塩基配列を含む検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブと、
を有するプローブ混合物。
(項目21)
前記検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号27またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、VanA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、
前記検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号28またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、VanA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、
前記検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号29またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、VanA遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含む、
項目20のプローブ混合物。
(項目22)
VanB核酸を検出するためのプローブ混合物であって、
配列番号30またはその相補体の塩基配列を含む検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブと、
配列番号40またはその相補体の塩基配列を含む検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブと、
配列番号41またはその相補体の塩基配列を含む検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブと、
を含む、プローブ混合物。
(項目23)
前記検出可能に標識された第1のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号30またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、VanB遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、
前記検出可能に標識された第2のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号40またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、VanB遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含み、
前記検出可能に標識された第3のハイブリダイゼーション・プローブが、配列番号41またはその相補体の長さおよび塩基配列、ならびに、必要に応じて、VanB遺伝子の核酸とはハイブリダイズしない非相補的配列を含む、
項目22のプローブ混合物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
(定義)
以下の用語は、異なる意味を有することを明示的に示されない限り、本明細書中において示された意味を有する。
【0019】
「リボソーム核酸」とは、rRNAおよびrRNAをコードするrDNAである。
【0020】
「位置(locus)」は、何かが位置する位置である。位置は、反応チューブ;マルチウェルプレート内に可溶性ポリヌクレオチドを含むための単一ウェル;一枚のニトロセルロース膜もしくはディップスティック上に固定化されたポリヌクレオチドの単一スポット;または「DNAチップ」上に固定化されたポリヌクレオチドの単一スポットであり得る。試験用装置内の1つの位置に配置されたプローブ分子は、この装置内の別の位置に配置されたプローブ分子とは混ざらない。
【0021】
「アドレス」は、試験用装置内の単一の位置にある1つ以上のポリヌクレオチドプローブを意味し、これにより、このアドレスにおけるハイブリダイゼーション結果が、試験中のポリヌクレオチドの集合の間の相補的なポリヌクレオチド配列の有無についての別個の情報を提供する。例えば、あるアドレスは、細菌起源のものであるrRNAの存在、または1つ以上の特定の遺伝子(例えば、薬物耐性表現型をコードする遺伝子)の存在についての情報を提供し得る。このような情報は、試験用装置の単一の位置に配置される、単一のプローブまたはプローブのカクテルに由来し得る。アドレスはまた、1種以上の微生物(例えば、E.coli、S.aureus、C.albicans、P.aeruginosaおよびS.pneumoniaeのうちのいずれか)由来のrRNAの存在についての情報を提供し得る。簡便にするために、特定の生物の核酸または生物の型を検出するアドレスは、その生物の名称または型で呼ばれる。従って、「汎細菌性」アドレスにおける陽性のハイブリダイゼーション・シグナルは、細菌起源のリボソーム核酸の存在を示す。
【0022】
プローブ「マトリクス」は、未知の微生物を同定するため、未知の生物の可能性のある存在範囲を狭くするため、および/または生物における1種以上の特定の遺伝子の存在を同定するために有用なアドレスの集合である。マトリクスのプローブは、通常は、試験用装置の複数の物理的な位置に配置され(可溶性プローブの封じ込めによってか、または物理的な固定化によって)、ここでは、各位置が、1種または複数の微生物種に由来する核酸と特異的にハイブリダイズする。
【0023】
「ヌクレオチド」は、従来プリン塩基もしくはピリミジン塩基、5炭素糖およびリン酸基を含む核酸のサブユニットである。RNAに見出される5炭素糖はリボースである。DNAでは、5炭素糖は、2’−デオキシリボースである。この用語はまた、リボースの2’位にあるメトキシ基のような、このようなサブユニットの類似体を含む。
【0024】
「非ヌクレオチドユニット」は、ポリマーのハイブリダイゼーションに有意には関与しないユニットである。このようなユニットは、例えば、ヌクレオチドとの何らかの有意な水素結合に関与してはならず、かつ、5種類のヌクレオチド塩基またはその類似体の1つを成分として有するユニットは除外される。
【0025】
「オリゴヌクレオチド」とは、互いに共役結合した2つ以上のヌクレオチドサブユニットを有するポリヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは一般に、約10〜約100ヌクレオチド長であるか、または、より好ましくは、10〜50ヌクレオチド長である。このヌクレオチドサブユニットの糖基は、リボース、デオキシリボースまたはそれらの修飾された誘導体もしくは類似体(例えば、2’−O−メチルリボース(あるいは本明細書中では「2’−O−Me」、「2’メトキシ」、「2’−MeO」という))であり得る。このヌクレオチドサブユニットは、ホスホジエステル結合、改変された結合のような結合によってか、またはその相補的な標的ヌクレオチド配列へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを阻止しない非ヌクレオチド部分によって結び付けられ得る。改変された結合は、標準的なホスホジエステル結合が、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合または天然のペプチド結合のような異なる結合で置換されている結合を含む。窒素性塩基類似体がまた本発明によるオリゴヌクレオチドの構成要素であり得る。通常は、オリゴヌクレオチドは、有機化学的な方法により合成され、他に特定されない限り、単一鎖である。オリゴヌクレオチドは、検出可能な標識で標識され得る。
【0026】
「標的核酸」とは、標的核酸配列を含む核酸である。
【0027】
「標的核酸配列」、「標的ヌクレオチド配列」または「標的配列」とは、オリゴヌクレオチドによりハイブリダイズされ得る特定のデオキシリボヌクレオチド配列またはリボヌクレオチド配列である。例えば、スタフィロコッカス属の細菌の「標的核酸配列領域」とは、スタフィロコッカス細菌において見出される核酸中に存在し、他の種の核酸中には存在しない、核酸配列またはこれに相補的な配列を指す。標的配列に相補的なヌクレオチド配列を有する核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような標的増幅技術または転写により媒介される増幅(例えば、米国特許第5,824,518号を参照のこと)のような標的増幅技術により生成され得る。
【0028】
「プローブ」とは、相補的な一本鎖標的ポリヌクレオチドと組み合わさって二本鎖ハイブリッドを形成する一本鎖ポリヌクレオチドである。プローブは、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドポリマーであり得、そしてプローブの末端に結合し得るかまたはプローブの配列の内部にあり得る検出可能な部分を含み得る。標的ポリヌクレオチドと合わさったヌクレオチドは、検出可能な部分がプローブの配列の内部にある場合と同じように、厳密に連続する必要はない。
【0029】
「汎細菌性」プローブは、複数の種の細菌のリボソーム核酸に見られる、相補的な配列と二本鎖ハイブリッドを形成し得る。例えば、汎細菌性プローブは、複数の種のグラム陽性細菌(「Actinomycetes」として知られるグラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む)、腸内細菌科の複数の細菌種、エンテロコッカス属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に特異的にハイブリダイズし得る。汎細菌性プローブは、真菌生物の核酸にはハイブリダイズしない。
【0030】
「検出可能な部分」とは、ポリヌクレオチドプローブに結合しているか、またはポリヌクレオチドプローブの一部として合成される標識分子である。この分子は、固有に検出可能であるべきであり、結果としてプローブを検出可能にする。これらの検出可能な部分としては、ラジオアイソトープ、比色分子、蛍光分子または化学発光分子、酵素、ハプテン、酸化還元活性化電子移動部分(例えば、遷移金属錯体)、金属標識(例えば、銀粒子または金粒子)、またはなお固有のオリゴヌクレオチド配列が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
「ハイブリッド」とは、相補的な塩基間でのワトソンクリック塩基対形成または非正準塩基対形成によって2つの一本鎖ポリヌクレオチド配列間で形成される複合体である。「核酸ハイブリッド」または「プローブ:標的二重鎖」により、二本鎖の水素結合した構造(好ましくは、10〜100ヌクレオチド長、より好ましくは、14〜50ヌクレオチド長)である構造を意味する。この構造は、化学発光または蛍光検出、比色、オートラジオグラフィー、電気化学分析またはゲル電気泳動のような手段により検出されるのに十分安定である。このようなハイブリッドとしては、RNA:RNA、RNA:DNAまたはDNA:DNAの二重鎖分子が挙げられる。
【0032】
「ハイブリダイゼーション」とは、ポリヌクレオチドの2つの相補鎖が合わさって安定な二本鎖構造(「ハイブリッド」)を形成するプロセスである。
【0033】
「安定な」とは、化学的または生化学的な分解(degradation)、反応、分解(decomposition)、置換または修飾に対して実質的に抵抗性であることを意味する。
【0034】
「安定性」とは、物質の、化学的または生化学的な分解、反応、分解(decomposition)、置換または修飾に対する抵抗性を意味する。
【0035】
用語「ストリンジェンシー」とは、ハイブリダイゼーションおよびその後の処理工程の間に存在する温度および溶媒の組成を記載するために使用される。高ストリンジェンシーな条件下では、高度に相補的な核酸ハイブリッドのみが形成し;十分な程度の相補性を有さないハイブリッドは、形成しない。従って、アッセイ条件のストリンジェンシーは、ハイブリッドを形成する2つのポリヌクレオチド鎖の間に必要とされる相補性の量を決定する。ストリンジェンシーの条件は、標的および非標的ポリヌクレオチドと形成されるハイブリッドの間の安定性の差を最大にするように選択される。
【0036】
用語「プローブ特異性」とは、標的配列と非標的配列との間を区別するその能力を説明する、プローブの特徴を指す。プローブ特異性は、配列およびアッセイ条件に依存し、絶対的であり得るか(すなわち、プローブは、標的生物と任意の非標的生物との間を区別し得る)、または、機能的であり得る(すなわち、プローブは、標的生物と、特定の試料に通常存在する任意の他の生物との間を区別し得る)。多くのプローブ配列が、使用条件に依存して、広いか、または狭い特異性の決定に使用され得る。
【0037】
「ポリヌクレオチド」とは、RNAもしくはDNAのいずれか、ならびに、配列中に存在し得、相補的な配列を有する第2の分子とこのポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを妨げない、任意の合成ヌクレオチド類似体もしくは他の分子を意味する。この用語は、天然に存在するヌクレオチドの類似体を含むポリマーを含み、特に、リボースの2’位にメトキシ基(MeO)を有する類似体を含む。
【0038】
「ヘルパー・オリゴヌクレオチド」とは、アッセイプローブにより結合される領域以外の標的ポリヌクレオチドの領域に結合するオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチドの標的化した領域に新しい二次構造および三次構造を課し、それにより、このアッセイプローブの結合速度が加速する。ヘルパー・オリゴヌクレオチドは検出可能な標識で標識されていないが、これらは、標識されたプローブの結合を促進し、従って、間接的にハイブリダイゼーション・シグナルを増強する。
【0039】
「生物学的試料」とは、微生物またはその核酸の存在について試験される物質の材料の試料をいう。この生物学的試料は、生物(例えば、ヒト患者)、実験用哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、サルまたは他の霊長類のメンバー)から、血液試料、痰試料、髄液試料、尿試料、鼻塗抹標本(swab)もしくは喉塗抹標本、またはこのような試料の培養物を引き出すことによって得られ得る。通常、生物学的試料は、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチドは、この生物学的試料を含む生物から放出され得るか、あるいは、ポリヌクレオチド・プローブとのハイブリダイゼーションに利用可能であるようにポリヌクレオチドを放出するための、細胞の超音波破壊、または酵素的溶解もしくは化学的溶解のような技術を用いて、試料中で生物から放出され得る。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「アクリジニウム・エステル」とは、C−9位置にエステル結合を有するアクリジニウム環構造に基づく、化学発光化合物のファミリーのいずれかを意味する。
【0041】
「分析物」とは、1つ以上の特異的な結合パートナーと結合反応を起こし得る任意の物質を意味し、これとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗原およびこれに対する抗体、ハプテンおよびこれに対する抗体;ホルモン、薬物、代謝産物、ビタミン、補酵素およびこれらの結合パートナー(レセプターを含む);ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドのハイブリッド、ならびにこれらに対する抗体結合物質;ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドおよびこれらにハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド;金属およびこれに対するキレート剤。
【0042】
「結合パートナー」とは、分析物と特異的な結合反応を起こし得る任意の分子または物質を意味する。
【0043】
「結合した」とは、結合相互作用が、分子とその特異的な結合パートナーとの間で形成された状態を意味する。
【0044】
「T」とは、50%のプローブがハイブリダイズされた形態からハイブリダイズされていない形態へと変換される温度をいう。
【0045】
当業者は、参照配列もしくは参照領域に実質的に一致するプローブは、参照配列もしくは参照領域とは異なり得、同じ標的核酸配列になおハイブリダイズし得ることを理解する。プローブとその標的配列との間の同一塩基の割合または完全に相補的な塩基の割合が、100%〜80%であるか、または、10ヌクレオチドの標的配列において0塩基のミスマッチ〜10ヌクレオチドの標的配列において2塩基のミスマッチである場合、本発明のプローブは、実質的に核酸配列もしくは核酸領域に一致する。好ましい実施形態において、この割合は、100%〜85%である。より好ましい実施形態において、この割合は、90%〜100%であり;他の好ましい実施形態において、この割合は、95%〜100%である。参照配列もしくは参照領域に実質的に一致するプローブは、そのプローブがその主張される特性(たとえば、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、非標的核酸を上回って、その標的核酸に優先的にハイブリダイズし得る)を有することを妨げない、任意の付加もしくは欠失を有するプローブを含む。
【0046】
「十分に相補的な」または「実質的に相補的な」により、十分な量の連続する相補的なヌクレオチドを有し、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、検出に対して安定なハイブリッドを形成する核酸を意味する。
【0047】
「アンチセンス」により、参照(すなわち、センス)核酸分子に対して完全に相補的な核酸分子を意味する。
【0048】
「RNAおよびDNAの等価物」とは、同じ相補的な塩基対ハイブリダイゼーションの性質を有するRNA分子およびDNA分子を指す。RNA等価物およびDNA等価物は、異なる糖基(すなわちリボースに対してデオキシリボース)を有し、そしてRNAにおけるウラシル、およびDNAにおけるチミンの存在によって異なり得る。RNA等価物とDNA等価物との間のこの相違は、それら等価物が特定の配列に対して同程度の相補性を有するので、実質的に一致する核酸配列の相違に寄与しない。
【0049】
(本発明の序論)
本発明は、メチシリンおよび/またはバンコマイシンに対する耐性をコードする核酸の検出に使用することができるポリヌクレオチドをベースとした方法、組成物、キット、および装置に関する。より詳しくは、本発明は、微生物のメチシリン耐性に関連したmecA遺伝子の検出を提供するとともに、微生物のバンコマイシン耐性に関連したVanAおよびVanB遺伝子の検出を提供する。本発明はまた、好ましくはリボソームRNA(rRNA)等のRNAを実質的に含まないDNAを得るために生物学的試料を迅速に処理する方法に関する。
【0050】
以下に説明するように、変性DNAを持ち、好ましくはrRNAが実質的に含まれない試料が得られる迅速試料処理方法を提供する。この方法では、試料、例えば少なくとも部分的に変性したDNAを含む細胞溶解物を提供することが含まれる。一実施形態によれば、細胞を溶解剤によって処理した後に加熱する。別の実施形態では、溶解剤による処理と加熱とが細胞に対して同時に施される。つぎに、試料を塩基で処理し、必要に応じて加熱することで、試料中のRNA(rRNAを含む)を実質的に減少または除去する。本明細書で用いられる場合、試料中のrRNAを「実質的に減少」させることは、未処理(対照)試料を基準にして、少なくとも100倍、好ましくは少なくとも500倍、より好ましくは少なくとも900倍以上、減少させることを意味する。塩基加水分解後、試料を、pH約4.5〜約5.5で反応混合物を生じさせるための1種類以上の試薬で、ならびに、ポリヌクレオチドをハイブリダイズするのに適した反応混合物(すなわち、1種類以上のプローブおよび標的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーション反応に対して効果的な混合物)をもたらす量の試薬で処理する。塩基処理単独で高信頼性の結果が得られる一方で、熱変性および塩基変性の組み合わせによってよりいっそう良い結果が得られた。より具体的には、上記組み合わせによってrRNA分解および二本鎖DNA変性の増強が生じた。さらに、熱変性および塩基変性を組み合わせることで、バックグラウンド・シグナルが減少し、塩基変性単独と比較してプローブ特異的シグナルが高くなった。さらに、ハイブリダイゼーション反応中のプローブがRNA標的およびDNA標的に結合し得る場合、試料中のRNAの減少が、ゲノムDNA標的と比較してRNA標的量を減少させる。このようにして、rDNA標的を、ハイブリダイゼーション反応での内部対照および/または生物指標として用いることができる。
【0051】
上記試料を処理する方法を用いて、1時間内に、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属のメンバー、より具体的にはスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)として単離体を、そのmecA状態の決定を伴って、同定した。実際、303のスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)および11の他のスタフィロコッカス種(Staphylococcus.種)を示す290の臨床単離体および24のATCC単離体を処理して、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)でmecA遺伝子プローブとハイブリダイズさせた。mecA HPAアッセイの結果をオキサシリン(Ox)最小阻害濃度(MIC)と比較した。本明細書で開示したmecAプローブを用いると、263メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)(MRSA)およびメチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)(MSSA)と100%相関がみられた。さらに、27の境界耐性スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)(BORSA)のうち15が、ハイブリダイゼーション・アッセイで陽性であった。境界単離体に対するmecA PCRおよびラテックス凝集アッセイ(Oxoid,UK)で得られた結果は、プローブで得られた結果と100%一致を示した。したがって、mecA遺伝子内の複数の領域に対して特異的なDNAプローブおよびリボソームDNAプローブによって試料をプロービングすることで、単一の処理済み試料によって、単離体の同定および抗生物質のマーカー検出の両方が得られた。このマルチ・プローブ系も内部対照として用いられ、rDNAコピー数が所定の生物に対して安定性が極めて高いことから、十分な標的DNAが存在して意味のある結果をもたらすことが確実となる。このことによって、有利に偽陰性結果を除去することができる。一実施形態では、メチシリン耐性状態の試験が、一次血液培養ビンが陽性になった後におこなうことができ、それによって試料の平板培養およびインキュベーションの必要性がなくなる。
【0052】
本発明の方法は、感染を処置するための抗生物質の適切な選択をもたらすことで、抗生物質耐性の発生を減らすことができる。この迅速プローブベースアッセイによって、プレートから直接スタフィロコッカスの同定およびmecA遺伝子検出を同時におこなうことが可能となるので、臨床検査室および病院でMRSAおよびメチシリン耐性で、かつ凝固促進酵素陰性のブドウ球菌属(スタフィロコッカス(Staphylococci))(MRCoNS)を同定する際にたいへん有用である。さらに、以下に説明するように、メチシリン耐性およびバンコマイシン耐性を同時に試験することも可能である。
【0053】
したがって、本発明の一実施形態は、試料中のmecA遺伝子を検出するための方法を含む。この方法は、細胞を含む試料を溶解すること、この試料中のRNAを実質的に減少または除去するのに効果的な条件下および量の塩基性組成物で溶解物を処理することで、塩基性混合物を得ることが含まれる。一実施形態では、試料は生体外(in vitro)増幅核酸を含まない。試料中のDNAを変性させるために、この試料を、溶解剤の添加と同時に、あるいは該溶解剤の添加後、少なくとも95℃の温度で少なくとも5分間加熱処理してもよい。あるいは、試料中のDNAを塩基性組成物で処理することで変性し、必要に応じて同時加熱(例えば、60℃)してもよい。好ましくは、試料中のDNAを、溶解剤の添加と同時に、または該溶解剤の添加後、加熱処理(例えば、少なくとも95℃の温度)し、その後塩基性組成物による処理を行う。なぜなら複数の処理の組み合わせが標的DNA検出の感度を改善することがわかったからである。一実施形態では、上記塩基性組成物として、水酸化物溶液が挙げられる。加水分解試料を、次に、塩基性混合物のpHを約4.0〜約6.0、好ましくは約4.5〜約5.5のpHに変える量の1種類以上の試薬と接触させることで、ハイブリダイゼーション反応を実施するのに適当な緩衝混合物が得られる。一実施形態では、上記塩基性混合物のpHを変えるために添加された1種類以上の試薬として、酸(例えばHCl)と、必要に応じて緩衝化合物(例えば、コハク酸塩)を含む。一実施形態では、上記塩基性混合物の等分割量を異なる反応容器に入れ、各等分割量を、塩基性混合物のpHを約4.0〜約6.0のpHに変える量で1種類以上の試薬と接触させることで、緩衝化されたハイブリダイゼーション反応混合物が得られる。各緩衝化ハイブリダイゼーション反応混合物を、少なくとも1種類のプローブ(例えば、mecA配列に特異的、またはVanAおよびVanB配列のいずれかもしくは両方に特異的なプローブ)と、変性標的DNAに対してプローブをハイブリダイズさせるのに効果的な条件、好ましくは高ストリンジェントな条件下で、接触させることができる。必要に応じて、少なくとも1種類の緩衝化ハイブリダイゼーション反応混合物を、他のハイブリダイゼーション反応混合物のプローブとは異なる1種類以上のプローブと接触させる。別の実施形態では、塩基性混合物を、該塩基性混合物のpHを約4.0〜6.0のpHに変える量で1種類以上の試薬と接触させ、ハイブリダイゼーション反応を実施する上で適当な緩衝化混合物を得、また緩衝化ハイブリダイゼーション反応混合物、もしくはその一部をさらに、変性標的DNAに対してプローブをハイブリダイズさせるのに効果的な条件、好ましくは高ストリンジェントな条件下で、少なくとも1種類以上のプローブと接触させることができる。例えば、ハイブリダイゼーション反応混合物の一部を反応容器に加えて、該容器に1種類以上のプローブを加えてもよい。あるいは、ハイブリダイゼーション反応混合物の一部分を少なくとも2つの反応容器に加え、異なるプローブをそれらの容器の各々に加えてもよい。あるいは、ハイブリダイゼーション反応混合物またはその一部を反応容器内の1種類以上のプローブに対して添加する。典型的な高ストリンジェント条件として、0.48Mリン酸ナトリウム緩衝液、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、および各1mMのEDTAもしくはEGTAを含む、あるいは0.6M LiCl、1%ラウリル硫酸リチウム、50〜60mMコハク酸リチウム、および10mMのEDTAもしくはEGTAを含み、温度が少なくとも約50℃のハイブリダイゼーション反応混合物が挙げられる。
【0054】
好ましい一実施形態では、上記ハイブリダイゼーション反応で用いる1種類以上のプローブは、検出可能部分を含む。必要に応じて、ハイブリッド形成をもたらすのに効果的な条件にハイブリダイゼーション反応を供した後、このハイブリダイゼーション反応を、ハイブリダイズしていないプローブ量を減少または除去するのに有効な条件に供する。つぎに、ハイブリダイズしたプローブの存在または量を検出または決定する。本明細書に記載した試料処理法を用いて試料を調製してmecA DNAを検出したにもかかわらず、この試料処理法を用いて試料を調製することで、任意のDNA標的配列を検出してもよい。
【0055】
本発明はまた、試料中のmecA配列を検出するための方法を提供する。この方法は、オリゴヌクレオチド・プローブとmecA DNAのあいだでハイブリッドを形成するのに効果的な高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、1種類以上のmecA オリゴヌクレオチド・プローブに対して、変性DNAを含む試料を接触させることを含む。ハイブリッド形成の存在をその後に検出または決定する。上記プローブとして、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する配列、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する配列、あるいはmecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する配列が挙げられる。好ましくは、上記プローブを、例えば化学発光標識、蛍光標識、または放射性標識によって標識する。一実施形態では、少なくとも3種類のmecAオリゴヌクレオチド・プローブを用いて試料のmecA状態を検出または決定する。好ましい一実施形態では、少なくとも1種類のプローブが、置換リボース部分(例えばリボース部分の2’位にあるメトキシ基)を持つ少なくとも1種類のヌクレオチドを持つ。
【0056】
必要に応じて、1種類以上の非mecA遺伝子プローブ(例えば、リボソーム核酸に対して特異的なプローブ)を、mecA遺伝子プローブに加えて用いることで、試料中の微生物の存在を同定すること、および/またはmecA遺伝子の検出を可能とするために十分なDNAが試料中に存在したことを確認することが可能である(すなわち、内部対照)。例えば、1種類以上の生物に対して特異的なrDNAプローブ(例えば、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)細菌)に対して特異的なプローブ)を用いて、試料中の生物を同定することが可能である。一実施形態では、本明細書に記載した試料処理方法を用いて、試料のmecA状態を検出または決定する前に試料を調製する。mecA遺伝子は一般にスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に関連しているが、他のスタフィロコッカス(Staphylococcal)種(凝固促進酵素陰性スタフィロコッカス「CoNS」)も微生物間での遺伝情報の横方向での転移の結果としてmecA遺伝子を含むものであってもよい。それゆえ、1種類以上の生物に対して特異的なrDNAプローブ、例えばスタフィロコッカス属(Staphylococcus)細菌に対して特異的なプローブを用いて、試料中の生物を同定してもよい。したがって、mecA反応に関連して用いられる同定または内部対照反応は、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)以外の生物についてのrRNAまたはrDNAプローブを用いることが可能である。このように、一実施形態では、上記方法は、mecA遺伝子プローブと接触させた試料中でのハイブリッド形成の存在または量を、rRNAまたはrDNAに特異的なプローブと接触させた対応試料でのハイブリッド形成の存在または量と比較することを含む。
【0057】
本発明の別の実施形態では、1種類以上のmecA遺伝子プローブを、増幅した核酸を含む試料とともに用いることが含まれる。この方法は、プローブと増幅したmecA核酸とのあいだでハイブリッドを形成するのに効果的な高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、少なくとも1種類のmecAオリゴヌクレオチド・プローブに対して、増幅したmecA核酸を含む試料を接触させることを含む。一実施形態では、増幅した核酸は、増幅媒介転写を用いて増幅されたRNAである。必要に応じて、増幅に先立って、細胞試料をメチシリンと接触させてmecA遺伝子から転写を誘導する。つぎに、ハイブリッド形成の存在または量を検出もしくは決定する。本発明のこの実施形態で有用なプローブとして、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する配列、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する配列、あるいはmecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する配列を有するプローブを含む。
【0058】
本発明はまた、プローブ混合物も含む。この混合物は、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する第1のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する第2のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044、その相補体、またはその一部分に対して実質的に対応する第3のオリゴヌクレオチドとのうちの2種類以上を含む。混合物中の各々のオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、mecAゲノムDNAに対してハイブリダイズする。一実施形態では、上記混合物は、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338に対応する第1のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531の相補体に対応する第2のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044に対応する第3のオリゴヌクレオチドとを含む。別の実施形態では、この混合物は、mecAのヌクレオチド304〜338に対応する第1のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531の相補体に対応する第2のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044の相補体に対応する第3のオリゴヌクレオチドとを含む。別の実施形態では、混合物は、mecAのヌクレオチド304〜338の相補体に対応する第1のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531の相補体に対応する第2のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044に対応する第3のオリゴヌクレオチドとを含む。さらに別の実施形態では、上記混合物は、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338に対応する第1のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531に対応する第2のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044の相補体に対応する第3のオリゴヌクレオチドとを含む。好ましくは、混合物中の少なくとも1種類のオリゴヌクレオチドが、リボシルまたはデオキシリボシル部分よりはむしろ2’−O−メチルリボシル類似体を含む1種類以上のヌクレオチド類似体を含む。
【0059】
本発明はさらに、試験試料中のmecA遺伝子を検出するのに有用なプローブを持つキットを含む。このキットは、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338、その相補体、またはその一部分に対応する配列を含む第1のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド501〜531、その相補体、またはその一部分に対応する配列を含む第2のオリゴヌクレオチドと、mecA遺伝子のヌクレオチド1010〜1044、その相補体、またはその一部分に対応する配列を含む第3のオリゴヌクレオチドとのうちの1種類以上を含み、各オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、mecAゲノムDNAに対してハイブリダイズする。このキットは、必要に応じて、他の薬物耐性遺伝子を含むmecA以外の単一コピー遺伝子を検出するのに、またはrDNA遺伝子等の多重複写遺伝子を検出する上で有用であるプローブを含む。
【0060】
本発明は、したがって、2種類以上のプローブの使用を提供するものであり、それらのプローブのうちの1つが、生物の正体(identity)についての情報を提供することができる識別子プローブとして、必要に応じて用いられる。例えば、上記識別プローブが、生物の群、科、属、または種についての情報を提供することが可能であると考えられる。あるいは、識別子プローブを選択してグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を区別したり、あるいは種もしくは株レベルでの同定をおこなうことが可能である。より好ましくは、ポリヌクレオチド・ハイブリダイゼーション・プローブの「マトリクス」の使用は、本明細書に記載された抗生物質耐性プローブと共に使用され得る。一実施形態では、特定のハイブリダイゼーション・プローブが選択された遺伝子(例えば、mecA遺伝子)に対して特異的であり、その一方で、他のハイブリダイゼーション・プローブが生物の種々の種または分類学上関連した生物群の核酸(例えば、rRNAおよびrDNA)に特異的である。これらのプローブを用いて、生物の状態(生物のゲノムが、遺伝子または遺伝子に関連した配列を含むかどうかを意味する)および生物の種を決定することが可能である。この方法は、特に、自動化されたシステムと連結して用いることに適している。
【0061】
プローブ・マトリクス・ハイブリダイゼーション手順での陰性の結果さえ、マトリクスからの他の結果の意味を考慮することで、意義あるものとなり得る。例えば、試料が、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)を同定する第1のアドレスで陽性のハイブリダイゼーション・シグナルを与え、mecA遺伝子を同定する第2のアドレスで陰性の結果を与えるポリヌクレオチドを含むことが、二位置マトリクスから決定される場合、結果の組み合わせは、ポリヌクレオチドがmecA陰性(mecA(−))であるスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に由来したことを示す。あるいは、試料がスタフィロコッカス(Staphylococcus)属のメンバーである細菌の核酸を同定する第1のアドレスでハイブリダイズするポリヌクレオチドを含まないこと(すなわち、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属のアドレスで陰性の結果)と、mecA遺伝子を同定する第2のアドレスでの陽性の結果とが、二位置マトリクスから決定される場合、それらの結果の組み合わせは、ポリヌクレオチドがmecA陽性(mecA(+))である非スタフィロコッカス(Staphylococcus)生物に由来したことを示す。
【0062】
遺伝子および/または微生物同定のマトリクスをベースとした方法の別の態様は、単一のハイブリダイゼーション反応でプローブの組み合わせを用いることに関連しており、マルチウェルプレートの1つのウェル内で実施することも可能である。一実施形態では、選択された遺伝子(例えば、mecA遺伝子)にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブの組み合わせが、内部対照として必要に応じて用いられ得る別の遺伝子(例えば、rDNA遺伝子)に対して1種類以上のプローブとともに用いられる。好ましい実施形態では、mecA遺伝子のプローブを、内部対照プローブに対する標識とは異なる標識によって標識する。このようなアレンジメントは、単一ハイブリダイゼーション反応での両方の標的の検出を促進させる。別の好ましい実施形態では、mecA遺伝子を検出するためのプローブと、リボソーム核酸にとって特異的なプローブを、同一の検出可能な標識によって、あるいは本発明の器具または装置を用いる方法で使用される検出ステップの間、互いに区別されない複数の標識によって、標識する。
【0063】
(I.プローブの選択および調製)
目的とする遺伝子に対して特異的であるプローブを得るためにその遺伝子の核酸配列全体を必ずしも決定しなければならないわけではない。かなり好ましい実施形態では、プローブのすべてが、単一温度および/またはイオン強度条件の単一セットを含むハイブリダイゼーション条件の単一のセットのもとでの使用に、特に選択される。下記のガイドラインは、所望の特徴を持つプローブを設計する上で有用である。
【0064】
第1に、プローブ:標的ポリヌクレオチド・ハイブリッドの安定性は、アッセイ条件に適合するように選択される。このことは、AおよびTが豊富な長い配列を避けることによって、G:C塩基対によってハイブリッドを終止させることで、およびTがアッセイで用いられる標準条件にとって適当なものとなるようにプローブを設計することによって、達成可能である。プローブのヌクレオチド配列は、長さと%Gおよび%Cとが、最終アッセイが実行される温度よりも約2〜10℃高いTを持つプローブをもたらすように選択されるべきである。プローブの塩基組成が重要である。G:C塩基対は、A:T塩基対と比較した場合に、より高い熱的安定性を示すからである。したがって、高G:C含有量を持つ相補的ポリヌクレオチドを伴うハイブリッドが、より低いG:C含有量のハイブリッドと比較した場合に、より高い温度に対しても一般に高い安定性を示す。
【0065】
第2に、プローブが該プローブの標的ポリヌクレオチドと結合する位置が選択されることで、プローブ:非標的ポリヌクレオチド間に形成されたハイブリッドの安定性を最小化する。このことは、非標的生物のポリヌクレオチドと完全に相補的な長さを最小にし、非標的配列と相同のG:Cリッチ領域を避けることで、そして可能な限り多くの非安定的なミスマッチにかかるようにプローブを配置することによって、達成することができる。プローブ配列が生物または遺伝子の特定の種類のみを検出するのに有用であるかどうかは、プローブ:標的ハイブリッドとプローブ:非標識ハイブリッドとのあいだの熱的安定性の違いに、主に依存している。Tでの差は、高特異的プローブを生産するためにできる限り大きいべきである。
【0066】
標的ポリヌクレオチド配列の長さおよびプローブ配列のそれに対応する長さもまた、プローブを設計する上で検討すべき重要なファクターである。相補性が完全ではないポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズすることが可能である一方で、完全に相同な塩基配列の最も長い一続きが、通常はハイブリッド安定性の一次決定因子である。
【0067】
第3に、プローブのハイブリダイゼーションを強く阻害する内部構造を形成することが知られている領域は、標的としてはそれほど好ましくない。自己相補性が高いプローブも排除すべきである。
【0068】
ひとたび推定ユニーク配列が同定されると、対応オリゴヌクレオチドが生成される。本発明を実施するために使用し得る所定のオリゴヌクレオチドを、ホスホラミダイト前駆体を用いて自動化固相化学合成を含むいくつかの周知の方法のいずれかによって生産することができる(Barone et al.,Nucl.Acids Res.12:4051(1984))。合成オリゴヌクレオチドを構成するための他の周知方法ももちろん、採用することが可能である(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,11(1989)を見よ)。本発明のオリゴヌクレオチドのすべてが化学基によって修飾されることで、そのパフォーマンスが強化され得る。したがって、「オリゴヌクレオチド・プローブ」または「ヘルパー・オリゴヌクレオチド」または単に「オリゴヌクレオチド」についての言及は、天然ヌクレオチドのポリマーと、少なくとも一つのヌクレオチド類似体を含むポリマーとを包含することを理解すべきである。骨格修飾オリゴヌクレオチド(例えばホスホロチオエートまたはメチルホスホネート基を持つもの)は、本発明のオリゴヌクレオチドと同時に用いることができる類似体の例である。これらの修飾は、オリゴヌクレオチドを特定のポリメラーゼの核酸分解活性またはヌクレアーゼ酵素に対して耐性にする。オリゴヌクレオチドの構造に取り込まれ得る他の類似体として、ペプチド核酸、すなわち「PNA」が挙げられる。このPNAは、ホスホジエステル骨格よりもむしろペプチド骨格に結合したリガンドを含む化合物である。典型的なリガンドとして、適当なリンカーを介してペプチド骨格に結合している、天然に生ずる主な4種類のDNA塩基(すなわち、チミン、シトシン、アデニン、またはグアニン)、天然に生ずる他のヌクレオチド(例えば、イノシン、ウラシル、5−メチルシトシン、またはチオウラシル)または人工的な塩基(例えば、ブロモチミン、アザアデニン、またはアザグアニン等)のいずれかが挙げられる。PNAは、相補的一本鎖DNA(ssDNA)およびRNA鎖に結合することが可能である。PNAの作製および使用のための方法は、米国特許第5,539,082号に開示されている。本明細書に記載された配列を持つオリゴヌクレオチドを作製するのに用い得る別の種類の修飾は、ハイブリダイゼーションもしくは必要に応じてプライマーの伸長と干渉しないヌクレオチド鎖でのヌクレオチド間の非ヌクレオチド・リンカーの使用を含む(例えば、米国特許第6,031,091号を見よ)。
【0069】
さらに他の類似体は、標的核酸に対するプローブの結合親和性を増加させる、および/または類似体なしのプローブと比較した標的核酸に対するプローブの結合速度を増大させる類似体を含む。そのような類似体として、リボフラノシル・ヌクレオチドの2’位に修飾(置換)を持つ類似体が挙げられる。ハイブリダイゼーション反応で用いた場合、これらの類似体のうちの一種類以上を含むプローブは、ハイブリダイゼーション特性での結果として生ずる変化によって、対応するDNAプローブよりも短いものであってもよい。所定の温度で標的核酸に特異的に結合する、より短いオリゴヌクレオチドを用いることで、さらなる長所が得られる。例えば、より短いオリゴヌクレオチドは、一般に、「ミスマッチ」した塩基配列領域から完全に相補的な標的を識別する能力がよりいっそう高い。より短いオリゴヌクレオチドはまた、望ましくない塩基配列と重なる可能性も低い。より高いハイブリダイゼーション温度を用いることで、ハイブリダイゼーション反応を熱力学的に駆動することで、低温で起こるよりも速いハイブリダイゼーション速度が得られる。さらに、修飾されたオリゴヌクレオチドは、温度が上昇しなくても、修飾を受けていないものよりもハイブリダイゼーション速度が速くなり得る。
【0070】
したがって、ハイブリダイゼーション・アッセイ・プローブおよび/またはヘルパー・オリゴヌクレオチドは、すべて、単独または組み合わせて、標的特異的ハイブリダイゼーション速度を高めるという利点を有し得る修飾された塩基を含むように設計することができる。
【0071】
リボースの2’位に修飾(例えば、アルキル、およびアルコキシまたはハライド置換)を有する類似体が好ましい一実施形態である。好ましい一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、窒素塩基に結合した2’−O−メチルリボフラノシル部分を有するヌクレオチド類似体を含む。上記糖の2’位での別の置換は、該置換がハイブリダイゼーションの立体的阻害を生ずるほど長くないかぎり、類似の特性を持つと予想される。
【0072】
さらに、修飾されたオリゴヌクレオチド:標的ハイブリッドのTを増加させる他の修飾が、同様にハイブリダイゼーション速度の増大に貢献すると合理的に予想される。そのような修飾は、窒素塩基(例えば、N−ジイソブチルアミノメチリデン−5−(1−プロピニル)−2’−デオキシチジン;シチジン類似体、もしくは5−(1−プロピニル)−2’−デオキシウリジン);チミジン類似体上で、または結合部分で、デオキシリボフラノシルまたはリボフラノシル部分(例えば、2’ハライド置換)の2’位(または他の位置)で生じ得る。
【0073】
好ましくは、プローブを標識する。特定の核酸ハイブリダイゼーションをモニターするために使用し得る本質的に任意の標識および検出系を、標識プローブが望まれる際に、本明細書に開示されたプローブとともに使用することができる。有用な標識の一群として、放射性標識、酵素、ハプテン、結合したオリゴヌクレオチド、比色、蛍光定量、または化学発光分子、さらに電気化学的検出法で分析できるレドックス活性部分が挙げられる。標識したオリゴヌクレオチドを生産するために用いることができる標準的な同位体標識として、H、35S、32P、125I、57Co、および14Cが挙げられる。放射性標識したプローブを用いた場合、オートラジオグラフィー、シンチレーション・カウント、またはガンマ・カウントによってハイブリッドを検出することができる。
【0074】
非同位体材料もまたオリゴヌクレオチド・プローブの標識に用いることができる。これらの非同位体標識をオリゴヌクレオチド・プローブの内部または末端に配置することができる。例えば非ヌクレオチド結合基の使用によって、プローブ合成中またはその後に実行されるプローブの修飾によって、修飾したヌクレオチドを、酵素的または化学的に取り込ませることができる。非同位体標識として、比色定量分子、蛍光分子、化学発光分子、酵素、補因子、酵素基質、ハプテン、または他のリガンドが挙げられる。アクリジニウム・エステルは、プローブ・ハイブリッドを検出するための有用な化学発光標識の一例である。
【0075】
実際、任意の数の異なる非同位体標識を用いて、本発明にもとづいた標識されたオリゴヌクレオチドの調製をおこなうことができる。好ましい化学発光分子として、均質保護アッセイと組み合わせて使用される米国特許第5,283,174号に開示された種類のアクリジニウム・エステル、ならびに一回の反応で複数の標的を定量するアッセイと組み合わせて使用される米国特許第5,656,207号に開示された種類のアクリジニウム・エステルが挙げられる。これらの米国特許の開示内容は、本明細書で援用される。米国特許第5,998,135号は、さらに、プローブ上に配置されたランタニド金属標識からの蛍光発光を検出する蛍光定量を用いてプローブを標識および検出するために用いられ得るさらに別の方法を開示しており、これらの標識からの発光はエネルギー転移相手の近傍で高くなる。好ましい電気化学的標識および検出アプローチが米国特許第5,591,578号および第5,770,369号、ならびにPCT/US98/12082に開示されており、これらの開示を本明細書で援用する。電気化学標識として有用なレドックス活性部分として、Cd、Mg、Cu、Co、Pd、Zn、Fe、およびRu等の遷移金属が挙げられる。
【0076】
いくつかの用途では、少なくともある程度の自己相補性を示すプローブが、検出に先立って、ハイブリダイズしていないプローブの除去を最初に必要とすることなく、試験試料中のプローブ:標的二重鎖の検出を促進する上で望ましい。例として、「分子トーチ(molecular torch)」と呼ばれる構造を、結合領域で連結し、かつ所定のハイブリダイゼーション・アッセイ条件下で互いにハイブリダイズする異なる複数の自己相補性領域(「標的結合ドメイン(target binding domain)」および「標的閉鎖ドメイン(target closing domain)」を作る)を含むように設計する。変性条件にさらされる場合、分子トーチの2つの相補的領域(完全または部分的相補性であってもよい)が融解し、所定のハイブリダイゼーション・アッセイ条件が戻される場合に標的配列に対するハイブリダイゼーションに利用可能な標的結合ドメインが残される。分子トーチは、標的結合ドメインが標的閉鎖ドメインよりも標的配列に対してハイブリダイゼーションに有利に働くようにして設計される。分子トーチの標的結合ドメインおよび標的閉鎖ドメインとして、相互作用標識(例えば、蛍光/消光)が挙げられ、このような相互作用標識は、分子トーチが標的核酸にハイブリダイズする場合とは反対に自己ハイブリダイズした場合に、異なるシグナルが生ずるようにして配置され、それによって、結合した存続可能な標識を持つ非ハイブリダイズ・プローブの存在下、試験試料中のプローブ:標的二重鎖の検出が可能となる。分子トーチについては、米国特許第6,361,945号に十分に説明されており、その開示内容を本明細書で援用する。
【0077】
本発明とともに使用可能である自己相補性ハイブリダイゼーション・アッセイ・プローブの別の例は、「分子ビーコン(molecular beacon)」と一般に呼ばれる構造である。分子ビーコンは、標的相補的配列、標的核酸配列が存在しない場合に閉じた立体構造(closed conformation)にプローブを保持する親和性対(または核酸アーム)、およびプローブが閉じた立体構造にある場合に相互作用する標識対を持つ核酸分子を含む。標的核酸と標的相補的配列とのハイブリダイゼーションは、親和性対のメンバーを分けることで、プローブを開いた立体構造に変える。開いた立体構造へのシフトは、標識対の相互作用の減少により検出可能であり、例えばフルオロフォアおよびクエンチャー(例えば、DABCYLおよびEDANS)であってもよい。分子ビーコンは、米国特許第5,925,517号に詳しく説明されており、この開示内容を本明細書で援用する。特定の核酸配列を検出するために有用な分子ビーコンは、本明細書で開示されたプローブ配列の1つのいずれかの末端に、フルオロフォア部位を含む第1の核酸アームと、クエンチャー部分を含む第2の核酸アームとを付加することによって作ることが可能である。この構成で、本明細書に開示された特異的プローブ配列が、結果として得られる分子ビーコンの標的相補的「ループ」部分として働く。
【0078】
分子ビーコンを、好ましくは検出可能な標識からなる相互作用的な対によって標識する。標識相互作用対のメンバーとして好ましい検出可能な標識の例は、FRETまたは非FRETエネルギー伝達機構によって互いに相互作用する。蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)は、熱エネルギーへの変換なしに、またドナーおよびアクセプターが動力学的に衝突することなく、原子間距離よりも著しく大きく離れた距離にわたって、発色団間での共鳴相互作用によって、分子内または分子系内の吸収部位からそれを利用する部位へのエネルギー量子の非放射性伝達を伴う。「ドナー」は、最初にエネルギーを吸収する部分であり、「アクセプター」は続いてエネルギーが移される部分である。FRETに加えて、少なくとも3種類の別の「非FRET」エネルギー伝達プロセスが存在しており、これらのプロセスによって励起エネルギーをドナーからアクセプター分子へ移すことができる。
【0079】
2種類の標識が、1つの標識から発せられたエネルギーが第2の標識によって受け取られたり、あるいは吸収されることができるほど十分に近い距離に保たれている場合、これらの2つの標識は、FRETまたは非FRET機構によるかどうかに関わらず、互いに「エネルギー伝達関係」にあるといわれる。これは、例えば、分子ビーコンがステム二重鎖の形成によって閉じた状態に保たれ、またプローブの1つのアームに結合したフルオロフォアからの蛍光発光が反対側のアーム上にあるクエンチャー部分によって消光される場合である。
【0080】
本発明の分子ビーコンにとってかなり好ましい標識部分として、フルオロフォアと蛍光消光特性を持つ第2の部分(すなわち、「クエンチャー」)が挙げられる。この実施形態では、特徴的なシグナルが特定の波長の蛍光と考えられる一方で、可視光シグナルであってもよい。蛍光が関与する場合、発光の変化は、好ましくはFRET、もしくは放射活性エネルギー伝達もしくは非FRETモードによるものである。閉じた状態で一対の相互作用的標識を持つ分子ビーコンが適当な周波数の光によって刺激された場合、蛍光シグナルが、かなり低いかもしれない最初のレベルで生じる。この同一のプローブが開いた状態にあって、適当な周波数の光によって刺激された場合、フルオロフォアおよびクエンチャー部分が互いに十分に離間して、それらの間でのエネルギー伝達が実質的に妨げられる。そのような条件下では、クエンチャー部分はフルオロフォア部分からの蛍光を消光することができない。もし、フルオロフォアが適当な波長の光エネルギーによって刺激されるならば、第1のレベルよりも高い第2のレベルの蛍光シグナルが生ずる。蛍光の2つのレベル間の違いは、検出可能であり、また測定可能である。このようにしてフルオロフォアおよびクエンチャー部分を用いることで、分子ビーコンは、「開いた」立体構造でのみ「オン」となり、容易に検出可能なシグナルを発することで、プローブが標的に結合していることを示す。プローブの立体構造状態は、標識部分間の相互作用を制御することでプローブから生じたシグナルを変える。
【0081】
非FRET対とFRETとを区別する試みをおこなわず、本発明に関連して使用可能であるドナー/アクセプター標識対の例として、フルオレセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANS/フルオレセイン、EDANS/DABCYL、クマリン/DABCYL、フルオレセイン/フルオレセイン、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/DABCYL、ルシファー・イエロー/DABCYL、BODIPY/DABCYL、エオシン/DABCYL、エリスロシン/DABCYL,テトラメチルローダミン/DABCYL、テキサス・レッド/DABCYL、CY5/BH1、CY5/BH2、CY3/BH1、CY3/BH2、およびフルオレセイン/QSY7色素が挙げられる。当業者は、ドナーおよびアクセプター色素が異なる場合、エネルギー伝達がアクセプターの増感(sensitized)蛍光またはドナー蛍光の消光の出現によって検出され得ることを理解する。ドナーおよびアクセプター種が同一である場合、エネルギーは、結果として生ずる蛍光脱分極によって検出されることができる。DABCYLおよびQSY7染料等の非蛍光アクセプターは、直接的(すなわち非増感(non−sensitized))アクセプター励起の結果生ずるバックグラウンド蛍光の潜在的問題を有利に取り除く。ドナー−アクセプター対の一メンバーとして使用され得る好ましいフルオロフォア部分として、フルオレセイン、ROX、およびCY色素(例えば、CY5)が挙げられる。ドナー−アクセプター対の別のメンバーとして使用され得るかなり好ましいクエンチャー部分として、DABYCLおよびBLACK HOLEクエンチャー部分(Biosearch Technologies,Inc.,(Novato,CA)から入手可能)が挙げられる。
【0082】
特定の遺伝子を検出するための別の手順は、標識されたプローブまたは非標識プローブのいずれかを用いておこなうことができる。例えば、標識プローブの使用に依存しないハイブリダイゼーション・アッセイ法が米国特許第5,945,286号に開示されており、この特許ではペプチドPNAによって作られた非標識オリゴヌクレオチド・プローブ類似体の固定と、二本鎖PNAプローブ/標識核酸二重鎖に結合し得る、検出可能に標識されたインターカレート分子とが記載されている。これらの手順では、特定の電気化学的検出手順、例えばPCT/US98/12082、PCT/US98/12430、およびPCT/US97/20014に開示されたものと同様に、オリゴヌクレオチド・プローブが検出可能な標識を保持することを必要としない。
【0083】
(II.プローブ特異性)
本明細書に開示されたハイブリダイゼーション手順を実施するのに有用な高ストリンジェントな条件として、塩濃度が0.6〜0.9Mの範囲内である場合、55℃〜65℃にする条件が挙げられる。好ましい塩として塩化リチウムが挙げられるけれども、他の塩類、例えば塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムもまた、ハイブリダイゼーション溶液に使用することができる。それにとって代わる他の有用な高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、0.48Mリン酸ナトリウム緩衝液、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、ならびにそれぞれ1mMのEDTAおよびEGTA、あるいは0.6M LiCl、1%ラウリル硫酸リチウム、60mMコハク酸リチウム、ならびにそれぞれ10mMのEDTAもしくはEGTAによって提供される。約60℃でのハイブリダイゼーション用のプローブ全てが、63℃から約78℃までの範囲内にあるT値を有することが好ましい。
【0084】
(III.本発明の例示的な方法およびプローブ)
目的とする遺伝子(例えば薬剤耐性遺伝子)に対して特異的な核酸プローブは、必要に応じて一群の生物に対して特異的な1種類以上のプローブと組み合わせて、核酸を含む生物学的試料にその目的とする遺伝子が存在することを検出するための、また必要に応じて一群の生物を同定するために、および/または内部対照として用いるための、アッセイでの用途を見いだす。例えば、mecA遺伝子に特異的な複数のプローブとスタフィロコッカスrRNAまたはrDNAに特異的な複数のプローブとを用いて、生物学的試料が、mecA(+)またはmecA(−)生物、例えばmecA(+)またはmecA(−)スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)を含むmecA(+)またはmecA(−)スタフィロコッカス(Staphylococci)属であるかどうかを決定することが可能である。同様に、バンコマイシン耐性をコードするVanAおよびVanB遺伝子に特異的な複数のプローブと、エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)を含む1種類以上のエンテロコッカス(Enterococcus)属種のrRNAまたはrDNAに特異的な1種類以上のプローブとを用いて、生物学的試料にバンコマイシン耐性エンテロコッカス(Enterococcus)が含まれるかどうかを判断することが可能である。この後のパネルの他のプローブのなかでもスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)のrRNAまたはrDNAに特異的なプローブを含むことで、バンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)を迅速に同定するための手段が提供される。
【0085】
(A.試料処理法)
DNA標的を検出することを意図した特定のプローブを用いて測定されるハイブリダイゼーション・シグナルが実際に、意図されるDNA標的配列に対して過剰に存在し得るRNAとの反応性によるものであり得ることから、RNAの実質的な減少または除去をもたらした条件が決定された。細胞からポリヌクレオチドを放出する量の溶解剤で細胞を溶解して、溶解物を作った。ポリヌクレオチドは、例えば90℃を上回る温度で、好ましくは少なくとも95℃で、より好ましくは少なくとも100℃〜105℃で、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、必要に応じて25分間以上加熱することによる加熱処理により変性された。このような溶解および変性のステップを、連続的に、または同時に実施することが可能である。
【0086】
溶解物からRNAを除去するために、この溶解物を、試料中のRNAが実質的に減少する量および条件下で塩基によって処理することができる。この点に関しては、任意の塩基を用いることが可能である。一実施形態では、水酸化物を用いて試料からRNAを除去する。好ましくは、水酸化物を最終濃度が約0.2〜約1.0Nとなるように添加し、結果として生ずる混合物を約5分間、必要に応じて30分以上、約50〜60℃で加熱する。この混合物を、つぎに、酸性組成物によって中和してpHを約4.0〜6.0の範囲内にし、さらに試薬を添加することで、例えば一価イオン、界面活性剤、および最終濃度が約20〜約100mMのコハク酸緩衝液を含む緩衝化された混合物が生ずる。中和した混合物は、ハイブリダイゼーション反応の実施に適している。
【0087】
(B1.mecAプローブ)
一群の生物に由来するmecA配列と構造的および/または機能的に関連した配列とを並べて、mecA(−)生物からmecA(+)生物を区別するために使用し得る候補保存配列を同定した。したがって、スタフィロコッカス(Staphylococcal)生物を含む種々の生物のmecA(+)遺伝子の部分的または完全配列を調べ、これらの配列を、構造的および/または機能的に関連した配列と並べて、最大相同性の領域および配列変異の領域を明らかにすることで、mecA遺伝子間で保存されているけれども、構造的および/または機能的に関連した遺伝子とはミスマッチを示す配列を同定した。そのような検討にもとづいて、mecA遺伝子の以下の領域をプローブとして試験するために選択した。すなわち、mecA遺伝子のヌクレオチド304〜338、ヌクレオチド501〜531、およびヌクレオチド1010〜1044である。そのような保存された配列を、つぎに、mecA標準および細菌溶解物のパネルに対して試験し、研究室条件でのプローブとしてのそれらの有用性を確認した。特に、核酸標的領域に対して優先的にハイブリダイズして検出可能な二重鎖を形成するプローブを、ポリヌクレオチドに基づいた診断アッセイ用に選択した。好ましくは、そのようなプローブを2つ以上用いて、標識オリゴヌクレオチド・プローブと該プローブの相補的標的核酸とのあいだの二重鎖の形成に対応するハイブリダイゼーション・シグナルを増強させる。複数のプローブを使用することで、単一のプローブ標的領域での疑似変異の検出減少に起因する偽陰性結果が最小化する。
【0088】
mecA遺伝子の存在を検出するための好ましい方法は、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、試験試料を、mecA遺伝子と優先的にハイブリダイズする少なくとも2種類、好ましくは少なくとも3種類のオリゴヌクレオチド・プローブと接触させ、さらに必要に応じて、他の生物の核酸配列にわたって、核酸配列(例えば、スタフィロコッカス生物に特徴的なDNA配列)と優先的にハイブリダイズする少なくとも1種類のオリゴヌクレオチド・プローブと、接触させるステップを含む。
【0089】
異なる長さおよび塩基組成のオリゴヌクレオチド・プローブを用いてmecA遺伝子を検出することが可能である一方で、好ましいプローブは、最大で70ヌクレオチドの長さ、より好ましくは最大で60ヌクレオチドの長さを持つものであり、また標的核酸に対して十分な相同性を持つことで、高ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションを可能とする。しかし、以下に記載した特異的プローブ配列もまた、核酸クローニング・ベクターまたは転写産物もしくは他の長い核酸に提供され、そのような場合であってもmecA遺伝子の検出に使用することができる。したがって、プローブはmecA遺伝子とは関係のない配列を、例えば5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端の両方に有するものであってもよい(分子ビーコンおよび分子トーチの場合と同様に)。mecA遺伝子の検出にとって好ましいプローブは、mecA遺伝子の配列に対応した長さが最大で60ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも17個の連続したヌクレオチド、より好ましくは30〜35個の連続したヌクレオチドを持つ配列(GENBANK登録番号X52593を見よ)またはその相補体である。好ましいオリゴヌクレオチド配列として、RNAおよびDNA等価物が挙げられ、また少なくとも1種類のヌクレオチド類似体を挙げることも可能である。
【0090】
本明細書に記載されたプローブに対して、mecA遺伝子の検出、ならびに必要に応じて、生物学的試料に存在する微生物の属および/または種を同定するために、生物学的試料(例えば、スタフィロコッカス(Staphylococcus)単離体)とともに合成標的を用いてハイブリダイゼーション反応による試験をおこなった。生物学的試料がmecA遺伝子配列とスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の生物の存在を示す核酸とを含むかどうか決定するための1つの方法では、溶解剤(例えば、界面活性剤)の添加によって、あるいは他の公知の細胞破壊方法によって、細菌細胞から核酸を放出させることができる。他の公知の方法としては、酵素、浸透圧ショック、化学処理、および例えば、ガラス・ビーズを伴うか、あるいは超音波による破壊を伴うボルテックスの使用、例えば米国特許第5,374,522号に開示された方法にもとづくものが挙げられる。細胞から核酸を放出させるのに適した他の適当な方法は、米国特許第5,837,452号および米国特許第5,364,763号に記載されている。好ましい一実施形態によれば、溶解剤を含む溶解緩衝液に細胞を接触させる。
【0091】
好ましくは、mecA特異的プローブは、高ストリンジェントな条件下では、mecA DNA配列にのみハイブリダイズする。そのような条件下では、高度に相補的な核酸ハイブリッドのみが形成される(すなわち、一連の連続した塩基にある17塩基中の少なくとも14塩基が相補的であるもの)。ハイブリッドは、相補性の程度が十分ではない状態では形成されない。したがって、アッセイ条件のストリンジェンシーが、ハイブリッドを形成する二本の核酸鎖のあいだで要求される相補性の量を決める。ストリンジェンシーを選択することで、標的核酸と形成されたハイブリッドと、非標的核酸と形成されたハイブリッドとの間の安定性での違いが最大化される。
【0092】
一実施形態では、mecA配列検出に用いたプローブは、以下の配列を持つ配列番号1〜6のうちの少なくとも1つを含む。すなわち、それぞれが
GGTATGTGGAAGTTAGATTGGGATCATAGCG(配列番号1);
CGCTATGATCCCAATCTAACTTCCACATACC(配列番号2);
GCGATAATGGTGAAGTAGAAATGACTGAACGTCCG(配列番号3);
CGGACGTTCAGTCATTTCTACTTCACCATTATCGC(配列番号4);
GCTCCAACATGAAGATGGCTATCGTGTCACAATCG(配列番号5);および
CGATTGTGACACGATAGCCATCTTCATGTTGGAGC(配列番号6)、である。
【0093】
もちろん、mecA遺伝子またはその相補体と優先的にハイブリダイズするそれらの配列のいずれかの一部分をかわりにもちいることもできる。一実施形態では、好ましいプローブは、1種類以上のヌクレオチド類似体を含み、該類似体は、配列番号1〜6の1つにデオキシリボシル部分を含む1種類以上のヌクレオチドと置き換わった2’−メトキシリボシル類似体を含む。
【0094】
(B2.VanAおよびVanBプローブ)
VanAまたはVanB遺伝子配列の存在を検出するための好ましい方法は、例えばエンテロコッカス属(Enterococcal)生物の場合、少なくとも1種類、好ましくは少なくとも2種類、より好ましくは少なくとも3種類の、凝集した状態で、VanAおよびVanB遺伝子に対して優先的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド・プローブ、必要に応じて、他の生物の核酸配列よりもエンテロコッカス属(Enterococcal)生物の核酸配列(例えば、DNA配列)に対して優先的にハイブリダイズする少なくとも1種類のオリゴヌクレオチド・プローブと、試験試料とを高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で接触させるステップを含む。
【0095】
異なる長さおよび塩基組成のオリゴヌクレオチド・プローブをVanAおよびVanB遺伝子の検出に使用することができる一方で、好ましいプローブは最大で70ヌクレオチドの長さを持ち、より好ましくは最大で60ヌクレオチドの長さを持ち、また高ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な標的配列の相同性を持つものであってもよい。しかし、以下に説明する特異的プローブ配列もまた、核酸クローニング・ベクターもしくは転写産物、あるいは他のより長い核酸に提供することも可能であり、それでもなおVanAおよびVanB遺伝子を検出するために用いることができる。したがって、プローブはVanAおよびVanB遺伝子とは関係のない配列を、例えば5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端の両方に有するものであってもよい(分子ビーコンおよび分子トーチの場合と同様に)。VanAおよびVanB遺伝子の検出にとって好ましいプローブは、VanAおよび/またはVanB遺伝子の配列に対応した長さが最大で60ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも17個の連続したヌクレオチド、より好ましくは30〜35個の連続したヌクレオチドを持つ配列またはその相補体である。好ましいオリゴヌクレオチド配列として、RNAおよびDNA等価物が挙げられ、また少なくとも1種類のヌクレオチド類似体を挙げることも可能である。
【0096】
生物学的試料が、エンテロコッカス(Enterococcus)群のメンバーの存在を示すVanAおよび/またはVanB遺伝子配列および核酸を含むかどうかを決定する一方法では、溶解剤(例えば、界面活性剤)の添加によって、あるいは他の公知の細胞破壊方法によって、細菌細胞から核酸を放出させることができる。他の公知の方法としては、酵素、浸透圧ショック、化学処理、および例えば、ガラス・ビーズを伴うか、あるいは超音波による破壊を伴うボルテックスの使用、例えば米国特許第5,374,522号に開示された方法にもとづくものが挙げられる。その後ハイブリダイゼーション法に供することができる。細胞から核酸を放出させるのに適した他の適当な方法は、米国特許第5,837,452号および米国特許第5,364,763号に記載されている。好ましい一実施形態によれば、溶解剤を含む溶解緩衝液に細胞を接触させる。
【0097】
好ましくは、上記プローブは、高ストリンジェントな条件下では、ゲノムDNA中のVanAおよび/またはVanBとのみ特異的にハイブリダイズする。このような条件下で、高度に相補的な核酸ハイブリッドのみが形成される(すなわち、一連の連続した塩基にある17塩基中の少なくとも14塩基が相補的であるもの)。ハイブリッドは、相補性の程度が十分ではない状態では形成されない。したがって、アッセイ条件のストリンジェンシーが、ハイブリッドを形成する二本の核酸鎖のあいだで要求される相補性の量を決める。ストリンジェンシーを選択することで、標的核酸と非標的核酸とで形成されたハイブリッド間の安定性での違いが最大化される。
【0098】
一実施形態では、VanAおよび/またはVanB遺伝子を検出するためのプローブとして、実施例10に示した配列、またはVanAおよび/またはVanB遺伝子の鎖の1つに優先的にハイブリダイズするその配列の一部分、あるいはそれらの相補体が挙げられる。種々の好ましい実施形態では、プローブは1種類以上のヌクレオチド類似体、例えば2’−メトキシリボシル類似体または塩基類似体を含む。
【0099】
(C.rDNAプローブ)
一群の関連および非関連生物に由来するrRNA配列を並べて、他の細菌および真核生物とスタフィロコッカス属(Staphylococcal)および/またはエンテロコッカス属(Enterococcal)の生物とを区別することに使用し得る属内に保存された候補配列を同定することができる。したがって、スタフィロコッカス属(Staphylococcal)およびエンテロコッカス属(Enterococcal)生物および無関係な系統発生学的近縁種を含む種々の生物のrRNAおよびrDNAの部分配列または完全配列を試験し、最大相同性の領域および配列変異を持つ領域を明らかにするためにそれらの配列を並べることで、属のメンバー間では保存されてはいるが、近縁または離れた関係の他の属のrRNAまたはrDNAとミスマッチを示すrRNAまたはrDNA配列が同定される。そのような配列を、つぎに、細菌溶解およびrRNAまたはrDNA標準のパネルについて試験して、検査室条件下のプローブとしての有用性を検証した。
【0100】
rRNAまたはrDNAのポリヌクレオチド配列は、デオキシヌクレオチド・シークエンシング法を用いて最も簡便に決定される。rRNAについては、長さが約10〜100塩基で、かつ5S、16S、または23Sリボソーム・サブユニットのいずれかに由来するrRNAの保存領域に対して相補的であるオリゴヌクレオチド・プライマーを逆転写酵素によって延長することができる。結果として生じるDNA伸長産物をつぎに、化学的分解またはジデオキシヌクレオチド・シークエンシングによってシークエンシングすることができる(Lane et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:6955(1985))。別の方法によれば、rRNAをコードするゲノム配列もまた決定することができる。
【0101】
rRNA分子の二次構造と機能とのあいだの強い相互依存性はよく知られている。実際、rRNAの一次配列における進化的変化は、その分子の二次構造が維持されるようにして効果的に制限される。例えば、もし塩基がrRNA分子のヘリックスの一面で変化すると、拮抗変化がヘリックスの他の面に生じて相補性が保存される(このことは共分散(covariance)と呼ばれる)。この相互関係は、2つの非常に異なるrRNA配列が、保存された一次配列および二次構造の保存された要素に基づいて「並べられる(aligned)」ことを可能とする。ひとたび配列が並べられると、rRNAまたはrDNA配列の保存領域および可変領域を同定することが可能となる。
【0102】
rRNAの種々の領域が、公表されたrRNA配列および本発明の開発の過程で決定された配列を用いた比較分析によって同定された。本明細書に開示された目的のために市販のソフトウエアを使用または適合させることができる。rRNAの種々の領域(例えば、最小10ヌクレオチドに及ぶ)の各々での配列進化は、大半が分岐しており、収束していないことから、プローブは、標的生物とその系統学的に最も近縁しているものとの間で異なるいくつかのrRNA配列に基づくことができる。
【0103】
スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の細菌のrRNAまたはrDNAを検出するための好ましいプローブは、GCGATTCCAGCTTCATGTAGTCGAGTTGCAGACTACAATCCGAACTGAGAACAACTTTATGGGATTTGCTTGACCTCGCGGTTTCG(配列番号13)によって与えられる配列に含まれる、長さが最大で100ヌクレオチドであり、少なくとも17連続したヌクレオチド、より好ましくは30連続したヌクレオチド、さらにまた好ましくは39連続したヌクレオチドの配列、例えば、CCGAACTGAGAACAACTTTATGGGATTTGC(配列番号10)を有しており、一方CCACTCAAGAGAGACAACATTTTCGACTAC(配列番号7)は、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)のrRNAまたはrDNAに特異的である。注目すべき点は、これらのプローブが、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、エンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸とはハイブリダイズしないことである。好ましいオリゴヌクレオチド配列として、RNAおよびDNA等価物が挙げられ、さらに、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むものであってもよい。
【0104】
エンテロコッカス(Enterococcus)群の細菌のrRNAまたはrDNAを検出するための好ましいハイブリダイゼーション・プローブは、CTCCTAGGTGCCAGTCAAATTTTG(配列番号14)またはCATCATTCTCAATTCCGAGGC(配列番号15)の配列を有する。とりわけ、これらのプローブは、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の細菌のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない。本発明のいくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション・プローブを検出可能な標識によって標識することにより、該標識はヘルパー・オリゴヌクレオチドとは無関係に検出を可能にする。好ましいオリゴヌクレオチド配列として、RNAおよびDNA等価物が挙げられ、少なくとも1種類のヌクレオチド類似体を挙げることも可能である。
【0105】
複数の細菌種のrRNAまたはrDNAを検出するための好ましい汎細菌性ハイブリダイゼーション・プローブは、CGACAAGGAATTTCGC(配列番号16)の配列(2’−メトキシヌクレオチド類似体を用いて合成されたものであってもよく、あるいはTACCTTAGGACCGTTAT(配列番号17)およびCAGGTCGGAACTTACC(配列番号18)の配列を持つヘルパー・オリゴヌクレオチドとともに用いてもよい)、あるいはGGAACTTACCCGACAAGGAATTTCGCTACCTTAGG(配列番号19)(ACCGTTATAGTTACGGCCGCCGTTTACCGGGGCTTC(配列番号20)、GCCTGGCCATCATTACGCCATTCGTGCAGGTC(配列番号21)およびGCCCAAATCGTTACGCCTTTCGTGCGGGTC(配列番号22)の配列を持つヘルパー・オリゴヌクレオチドとともに用いてもよい)の配列を持つ。配列番号16および配列番号19の配列を持つプローブは、複数のグラム陽性細菌種(グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む)、腸内細菌(Enterobacteriaceae)科の複数の細菌種、エンテロコッカス(Enterococcus)属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌種のリボソーム核酸を検出する上で有用である。これらのプローブは、真菌生物の核酸とはハイブリダイズしない。本発明のいくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション・プローブは、ヘルパー・オリゴヌクレオチドとは無関係に検出を可能にする検出可能な標識によって標識される。好ましいオリゴヌクレオチド配列として、RNAおよびDNA等価物が挙げられ、また少なくとも1種類のヌクレオチド類似体を挙げることも可能である。
【0106】
(IV.ヘルパー・オリゴヌクレオチド)
1種類以上の標識オリゴヌクレオチド・プローブと標的ポリヌクレオチドとのあいだのハイブリダイゼーションを、非標識の「ヘルパー・オリゴヌクレオチド」を、米国特許第5,030,557号に開示された手順にもとづいて使用することにより、強化することができる。ヘルパー・オリゴヌクレオチドは、アッセイプローブが結合した領域以外の標的核酸の領域に結合する。この結合は、単鎖核酸の標的領域上にある新たな第2および第3の構造を与え、プローブ結合率を高めるとともに、いくつかの例では、プローブ結合の範囲を拡げる。
【0107】
例えば、rRNAは三次構造を備えている。この構造は、同一種類の引き付け合う力に起因するもので、該力が二本鎖DNAを現在周知のヘリックス構造にする。この二次構造および三次構造の実質的部分は、通常核酸ハイブリダイゼーションで用いられる条件下(昇温条件、塩類の存在、アクセレレーターの存在等を含む)では失われない。この残基構造は、ヌクレオチド多量体(例えば、プローブとして用いているDNAまたはRNAオリゴマー)とリボソームRNAあるいはプローブが標的とするmRNAまたはDNA等の他の一本鎖核酸にあるその相補的配列とのあいだのハイブリッド形成を立体化学的に阻害あるいはさらには阻害することができる。この阻害は、上記プローブによって標的にされている部分以外のRNAまたはDNAの一部分に結合する「ヘルパー」オリゴヌクレオチドの使用によって減少または除去することができる。ヘルパー・オリゴヌクレオチドとの相互作用は、一本鎖核酸の標的領域上に新たな二次および三次構造を与え、続けてプローブ結合速度を高める。このように、適当に選択されたヘルパー・オリゴヌクレオチドを用いて、プローブと標的核酸内のその相補的配列とのあいだのハイブリダイゼーション速度が実質的に増加するとともに、ハイブリダイゼーションが、ヘルパーがない場合は、実質的なハイブリダイゼーションが起こりえないアッセイにとって適切な速度および条件で生ずることを可能とする。
【0108】
ヘルパーの使用は、プローブと該プローブの相補性が低い核酸配列とのハイブリッドのTと比べた場合、相対的に短いプローブと意図する標的とのハイブリッドのTを高め得る。その結果、近縁種である生物が生息する環境で生じる生物に対する高度に特異的なアッセイを得ることができる。
【0109】
検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド・プローブと組み合わせて使用することができるヘルパー・オリゴヌクレオチドは、好ましくは長さが17〜100ヌクレオチドである。上記スタフィロコッカス(Staphylococcus)属リボソーム核酸プローブと組み合わせて使用されるヘルパー・オリゴヌクレオチドとして、限定されるものではないが、UUGACCUCGCGGUUUCG(配列番号11)およびGCGATTCCAGCTTCATGTAGTCGAGTTGCAGACTACAAT(配列番号12)(WO 00/667,189を見よ)が挙げられる。スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に特異的なリボソーム核酸プローブと組み合わせて使用されるヘルパー・オリゴヌクレオチドとして、限定されるものではないが、GATGATTCGTCTAATGTCGACCTTTGTAACTCC(配列番号8)およびCGGAATTTCACGTGCTCCGTCGTACTCAGGAT(配列番号9)が挙げられる。エンテロコッカス(Enterococcus)属のメンバーのリボソーム核酸を検出するための配列CTCCTAGGTGCCAGTCAAATTTTG(配列番号14)の上記プローブと組み合わせて使用することができるヘルパー・オリゴヌクレオチドとして、限定されるものではないが、TCTACGGGGCTTTTACCCTTTCTAGCAGACC(配列番号23)およびCCTCGTGTTCCGCCGTACTCAGGATC(配列番号24)が挙げられる。エンテロコッカス(Enterococcus)属を構成する種のリボソーム核酸を検出するための配列CATCATTCTCAATTCCGAGGC(配列番号15)の上記プローブと組み合わせて使用することができるヘルパー・オリゴヌクレオチドとして、限定されるものではないが、TAGCCCTAAAGCTATTTCGGAGAGAACCAGCTATCTCC(配列番号25)およびCCCTAGTCCAAACAGTGCTCTACCTC(配列番号26)が挙げられる。CGACAAGGAATTTCGC(配列番号16)の配列を持つ汎細菌性プローブと組み合わせて使用することができるヘルパー・オリゴヌクレオチドとして、限定されるものではないが、TACCTTAGGACCGTTAT(配列番号17)およびCAGGTCGGAACTTACC(配列番号18)が挙げられる。GGAACTTACCCGACAAGGAATTTCGCTACC−TTAGG(配列番号19)の配列を持つ汎細菌性プローブと組み合わせて使用することができるヘルパー・オリゴヌクレオチドとして、限定されるものではないが、ACCGTTATAGTTACGGCCGCCGTTTACCGGGGCTTC(配列番号20)、GCCTGGCCATCATTACGCCATTCGTGCAGGTC(配列番号21)、およびGCCCAAATCGTTACGCCTTTCGTGCGGGTC(配列番号22)が挙げられる。本発明のいくつかの実施形態では、上記ハイブリダイゼーション・プローブを検出可能な標識で標識するもので、該標識は、ヘルパー・オリゴヌクレオチドとは無関係に検出を可能とするものである。好ましいオリゴヌクレオチド配列として、RNAおよびDNA等価物が挙げられ、また少なくとも1種類のヌクレオチド類似体を挙げることも可能である。
【0110】
(V.プローブ・マトリクス)
プローブ・マトリクス・ハイブリダイゼーション手順から得られた結果を、キーボードを用いて手作業で、あるいはプレート・リーダー、フイルム・スキャナ、またはルミノメーター等の自動化された装置のインタフェースを介して直接、コンピュータまたはデータ・プロセッサ(「コンピュータ」)に入力することができる。コンピュータは、該コンピュータにリンクしたメモリー装置に格納されたルックアップ・テーブルと比較することができるプロフィールを確立するために、特定の試料に関する陽性および陰性のハイブリダイゼーション結果をソートすることができる。このことによって、対照生物を用いて得られたハイブリダイゼーション結果とハイブリダイゼーション・プロフィールとの関連づけを促進させて、一よりも多くの生物の特徴と、かつ/または試験生物中での目的とする遺伝子の有無とである曖昧な結果の場合、正体または正体の候補を決定する。
【0111】
通常、生物学的試料も微生物に特徴的であるrRNAまたはrDNAを含む場合、生物学的試料中に微生物が存在することが示されるというのは本当である。このように、生物学的試料中に特定のrRNAまたはrDNAが存在することは、そのrRNAまたはrDNAを生産する微生物の存在の診断に役立つ。ハイブリダイゼーション反応がグラム陽性細菌に特有のプローブで陽性結果を与える場合、その結果は生物学的試料でグラム陽性細菌が1種類以上存在することを示す。対照的に、陰性の結果は、グラム陽性細菌の欠如を示す。
【0112】
スタフィロコッカス(Staphylococcus)属プローブは、スタフィロコッカス属(Staphylococcal)細菌の広範囲に及ぶ属のメンバーとして生物を同定するために用いることができ、また種特異的プローブもスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を独立して同定するために用いることができる。同様に、1種類以上のmecAに特異的なプローブを用いて、試料のmecA状態を同定することができる。
【0113】
エンテロコッカス(Enterococcus)種のプローブ(例えば本明細書に記載されているようなもの)を用いて、エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)を含む細菌種の検出に用いることができる。VanAおよび/またはVanB遺伝子をハイブリダイズすることができる1種類以上のプローブを、試料のバンコマイシン耐性状態を同定するために用いられ得る。
【0114】
もちろん、一連の陽性および陰性の対照ハイブリダイゼーションを並行させて実施して、試験結果の有効性を確かめることができる。
【0115】
(VI.ハイブリダイゼーション反応を実施するのに有用な装置)
ハイブリダイゼーション反応を実行するために用いられ得るフォーマットの例として、限定されることを意味するものではないが、異なるプローブをそれぞれ有する、あるいは複数のプローブを含む個々のチューブ、96穴のウェルまたは他のマルチ・ウェル・マイクロタイター・プレート、およびポリヌクレオチド・プローブが離間した構成で異なるアドレスで支持体上に固定された、ディップスティックまたは「DNAチップ」等の固体支持体が挙げられる。
【0116】
1つの好ましい実施形態では、本プローブは可溶性プローブである。別の好ましい実施形態では、プローブが固体支持体に固定される。一般に言えば、温度条件の一般的なセットのもとで機能させるために、抗生物質耐性微生物を同定するための装置で種々のプローブが使用され、それによって全てのプローブが単一の装置に配置され得ることが好ましい。ある種の非常に好ましい実施形態では、単一の温度および/またはイオン強度条件の単一のセットを含み、上記プローブを単一のセットのハイブリダイゼーション条件下で使用する。
【0117】
目的とする微生物および/または遺伝子の存在を有利に同定することは、任意の生体内(in vivo)増幅ステップを必要とすることなく実行することができる。あるいは、予備増幅ステップ、例えば転写媒介増幅(TMA)を用いたものを採用することができる(例えば、米国特許第5,399,491号)。
【0118】
プローブが可溶性であるか固定化されているかどうかにかかわりなく、いくつかの好ましい実施形態では、異なるプローブ・アドレスが互いに空間的に離間して維持される。例えば、VanA標的核酸を検出するためのプローブをチューブ、マイクロタイター・ウェル、またはチューブ、マイクロタイター・ウェル、もしくはVanB標的核酸を検出するための固定化スポットとは物理的に異なるアレイ内の固定化スポットに、配置することができる。同様に、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のリボソーム核酸を検出するためのプローブを、エンテロコッカス(Enterococcus)属の細菌のリボソーム核酸を検出するために使用されるプローブから物理的に分けることができる。プローブ・アドレスの全てが互いに物理的に分けられて維持される場合、またプローブがマイクロアレイ・フォーマットで固定化されたプローブよりはむしろ可溶性プローブである場合、ハイブリダイゼーション反応の数が増加する。4種類のハイブリダイゼーション反応が実施例13に例示した手順の実施に用いられた((a)スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)またはエンテロコッカス(Enterococcus)属の細菌のリボソーム核酸と、(b)VanAまたはVanB核酸とのいずれかを検出するための曖昧なプローブ・アドレスを含んだ)一方で、ハイブリダイゼーション反応の数が、もし異なるプローブアドレスが互いに分けられたとしたら、6にまで増加する。
【0119】
この場合、6つのプローブ・アドレスのプローブは、(1)スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の細菌、(2)スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)細菌、(3)エンテロコッカス(Enterococcus)属の細菌、(4)mecA遺伝子、(5)VanA遺伝子、および(6)VanB遺伝子からの核酸にハイブリダイズする。もちろん、これら6種類のプローブ・アドレスの各々が、もし該プローブが固定化されている場合、マイクロアレイのスポットに対応することができ、つぎに単一のハイブリダイゼーション反応が実施され得る。例えば、アレイ内の異なるスポットを96穴マイクロタイター・プレートの各ウェルに含めることができた。
【0120】
ハイブリダイゼーション手順を実施するための1つのアプローチによれば、プローブを見分けのつく標識で標識することができる。本明細書に記した方法を実施するために用いることができる特に好ましい化学発光標識の例は、米国特許第5,756,011号に開示されたアクリジニウムエステル(AE)標識であり、本明細書ではこの特許の開示を援用する。より具体的には、一本のチューブ、ウェル、支持体、またはアドレスは、発光を生じた後、異なる時間でピーク・エネルギーを発する化学発光標識によって別個に標識された異なったプローブを含むものであってもよい。本発明に関連して有用な見分けのつくプローブの製造および使用に用いられ得る方法および材料は、米国特許第5,756,011号に見いだすことができ、この特許の開示内容を本明細書では援用する。励起後に異なる波長で光を発する蛍光標識は、本明細書に記した手順に関連して用いることができる見分けのつく標識のさらに別の例を表す。このようにして、見分けのつく標識を用いる2通りのプローブが、試験装置の同一位置で組み合わされたとしても、互いに見分けることができる。したがって、同一のアドレスで大量の異なるプローブを組み合わせ、その一方で異なるプローブまたはプローブ・セットに対するハイブリダイゼーションの結果を区別し得ることが可能である。
【0121】
さらに別のアプローチによれば、異なる特異性を持つプローブが、同一標識で、または標識プローブおよび標的を有する特異的ハイブリッドを検出するステップの間で互いに区別することができない標識によって標識されることで、プローブが組み合わさって、一方のプローブが陽性のハイブリダイゼーション・シグナルを与えた場合に曖昧な結果が生じた。
【0122】
(VII.ハイブリダイゼーション手順を実施するためのキット)
本発明にもとづいてハイブリダイゼーション手順を実行するために使われる材料を、診断手順を実施するために用いることができるキットに取り込ませることが可能である。キットは、試験生物由来の核酸とハイブリダイズするための複数のプローブを含む少なくとも1つの装置またはコンテナーおよびこれらのプローブを用いて核酸ハイブリダイゼーション手順を行うための指示書を含む。キットは、必要に応じて、種々のアドレス、例えばスタフィロコッカス(Staphylococcus)および/またはエンテロコッカス(Enterococcus)遺伝子、および試験に供する生物学的試料から得た目的とする標的遺伝子、例えばmecA、VanAおよび/またはVanBを含むプローブ間の特異的ハイブリッドを検出するための指示書を含み得る。いくつかの実施形態では、広範囲な細菌種を検出するために、1種類以上のハイブリダイゼーション・プローブも含まれる。
【0123】
(VIII.典型的な検出アッセイ)
いくつかの好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)を用いて媒体中の分析物検出に用いることができる。ここで、分析物は特異的結合対の一部である。分析物を含むと推測される媒体を結合パートナーと組み合わせた場合、結合パートナーに付着した検出可能な標識は、分析物が特異的結合パートナーに結合する場合はつねに、安定性または識別的分解での変化を生ずることができる。特定の実施形態では、プローブ上の実質的には任意の所望の位置または場所に標識が含まれるように、一本鎖ポリヌクレオチド・プローブを改変した。一実施形態では、プローブ標識は、標的ポリヌクレオチド配列がプローブにハイブリダイズするかどうかに依存して識別的分解の影響を受けやすい、あるいは異なる安定性を持つことが可能である。一実施形態では、結合したプローブ上の標識は、結合していないプローブと比較して安定化される。
【0124】
第1に、結合物質および1種類以上の結合パートナーを含む結合パートナーを選択する。これらの対は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドであってもよい。一実施形態では、結合パートナーはポリヌクレオチドおよび1種類以上のオリゴヌクレオチドである。
【0125】
第2に、アッセイ・フォーマットが選択される。これらは、直接結合アッセイ、競合アッセイ、逐次飽和法、およびサンドイッチ・アッセイを含むフォーマットから選択されるものであってもよい。
【0126】
第3に、標識は、実行すべきアッセイに対して選択される。これは、標識が比色定量、蛍光定量、化学発光、または生物発光手段によって、直接または間接的に検出することができる標識であってもよい。標識は、検出される能力を改変するために、化学的にまたは生化学的に該標識が分解し得る特性を有するものであってもよい。この分解は、標識結合パートナーとその結合基質との結合、ならびに反応に加わり得る他の結合物質および他の結合基質に不都合な作用を及ぼさない条件下で可能である。好ましい標識は、酸、塩基、または選択的酸化剤(例えば、過酸化物)または酵素にさらされた後に検出される能力に影響を与えるものである。
【0127】
第4に、化学または生化学的分解に対する標識の感度が、標識結合パートナーとその特異的結合パートナーとの相互作用によって改変されるように、当該分野で公知の化学方法を用いて、標識をある部位で結合基質に結合させる。いくつかの例では、いくつかの異なる部位が標識結合について試験されることが可能であり、最良の識別的分解が得られる部位を使うことが可能である。
第5に、分解状態は、化学または生化学的であり、その結合物質の有無の下で、標識結合パートナーの最良の検出識別を与えることを必要とする場合に最適化される。
【0128】
アクリジニウム・エステル標識DNAプローブを調製するための方法および差次的加水分解のための条件が、Arnold et al.(Clin.Chem.35:1588(1989))および米国特許第6,004,745号に記載されている。
【0129】
最後に、事前に選択されたアッセイ・フォーマットを用いて、定量的または定性的に分析物を検出するためのアッセイ系の能力は、一般に、インキュベーション、選択的分解、および検出、あるいは同時にインキュベーションおよび選択的分解をおこない、検出するステップが用いられる。
【0130】
化学発光アクリジニウム・エステルによって標識されたオリゴヌクレオチド・プローブは、ハイブリダイゼーションを介して配列特異的ポリヌクレオチドの検出にとって、特に有用である。米国特許出願第07/099,050号(1987年9月21日に出願)に記載されているように、アクリジニウム・エステルを、DNAプローブおよび/または混合ヌクレオチド/非ヌクレオチド・ポリマー上のいくつかの異なる部位に結合させてもよい。このことは、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド塩基、リン酸骨格、3’末端、および5’末端、同様に、混合ヌクレオチド/非ヌクレオチド・ポリマーの非ヌクレオチド・モノマー単位を標識する能力を含む。そのようなアクリジニウム・エステル標識プローブは、それらが結合するプローブが、ハイブリダイズした場合と比べて溶液中で遊離している場合に、著しい差次的な化学的安定性を示し得る。
【0131】
一実施形態では、単一のハイブリダイゼーション反応での少なくとも2つのプローブが、検出可能な部分によって標識される。ハイブリダイゼーション反応後に特異的ハイブリッドを検出するステップ中、これらの検出可能な部位は実質的に互いに区別されない。例えば、プローブが、単一ハイブリダイゼーション反応で使用するために混合される可溶性プローブである場合、異なる特異性を持つプローブを、同一の検出可能な標識によって標識することすら可能である。
【0132】
別の実施形態では、単一ハイブリダイゼーション反応での少なくとも2種類のプローブを検出可能な部分で標識する。これらの部分は区別が可能であり、例えば、各標識は、区別が可能な化学発光反応に関与することが可能な成分を含む(例えば、米国特許第5,656,207号および第5,827,656号を見よ)。多くの種類の化学発光分子の異なるメンバー、動力学的および/または分光学的性質の違いを示すことが可能できるので、本発明で使用することができ、アクリジニウムおよび関連化合物(例えば、フェナントリジニウム化合物)、フタルヒドラジドおよび関連化合物(例えば、ナフタルヒドラジド)、シュウ酸エステルおよび関連化合物、ならびに安定化ジオキセタンおよびジオキセタノンが挙げられる。そのような群内の化合物のバリエーションは当業者に周知であり、同様に、それらの化学発光反応の量子収量、動力学、および放出波長がそれらの構造によって影響を受けることが公知である。したがって、高量子収量を持ち、互いに対して反応速度または放出波長が実質的に異なる化合物を、これらの化合物の検出の解像度を最大限するために、使用することができる。例えば、アクリルアクリジニウムエステルは、所望の動力学パラメータおよび分光学パラメータを生ずるようにされた適切な化学修飾を有する標識として使用され得る(例えば、米国特許第5,656,207号を見よ)。
【0133】
したがって、異なる遺伝子に特異的なプローブを異なる標識によって標識することができ、標識されたプローブを混合し、試験試料中に含まれる任意の核酸に対してハイブリダイズさせることが可能である。ここで、この核酸は、プローブ配列に対して十分に相補的な配列を持つことから、適当な選択条件下でハイブリダイゼーションが可能となる。一実施形態では、一種類以上の試薬を溶液に添加する。この試薬は、ハイブリダイズしていない標識プローブに結合した標識試薬に対して特異的に変更を加え、その一方で、実質的に変更が加えられていないハイブリダイズしたプローブと結合した標識試薬をそのままにしておく。このことによって、ハイブリダイズしたプローブまたはハイブリダイズしていないプローブに標識が結合したかどうかに依存した化学発光ポテンシャルの喪失に対する異なった耐性を、各々の標識化合物が持つことが可能になる。好ましい実施形態では、ハイブリダイズしたプローブに結合した標識がそのようにして保護される(例えば、米国特許第5,827,656号を見よ)。
【0134】
そのような標識試薬は、限定されるものではないが、均質アッセイ系において特に有用である。この均質アッセイ系では、目的とする分析物を、検出に先立って未結合標識から分析物結合標識を物理的に分離することを必要とすることなく検出および測定することが可能である。しかし、そのような試薬を不均質系で、あるいは同様に均質アッセイ系と不均質アッセイ系とを組み合わせて、使用することが可能である。
【0135】
とりわけ、本明細書でプローブとして開示されたオリゴヌクレオチド、またはその相補体もまた、増幅反応のプライマーとして使用してもよい。例えば、mecA配列を増幅するために、配列番号4および配列番号6の標的−相補的配列を持つプライマーがPCR反応において使用された。実施例11は、バンコマイシンに対する耐性の核酸診断を増幅させるために、プライマー配列としてプローブ配列を使用することを例示する。
【実施例】
【0136】
本発明を、さらに、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0137】
(実施例1 mecA遺伝子を検出するためのプローブの初期評価)
2種類のプローブを、mecA遺伝子配列のヌクレオチド501〜531でハイブリダイズするように設計した。すなわち、プローブ2:CGCTATGATCCCAATCTAACTTCCACATACC(配列番号2)をmecA遺伝子の一方の鎖にハイブリダイズするように設計し、プローブ1:GGTATGTGGAAGTTAGATTGGGATCATAGCG(配列番号1)を、mecA遺伝子の反対側の鎖にハイブリダイズするように設計した。これらのプローブは、米国特許第5,656,744号に開示された手順を用いて、それぞれヌクレオチド21位と22位との間、およびヌクレオチド13位と14位との間に、内部非ヌクレオチド・リンカーを挿入するとともに、標準的なホスホルアミダイド手順によって合成した。上記プローブを、米国特許第5,185,439号に開示された方法にもとづいてアクリジニウム・エステル(AE)によって標識し、生物学的試料の試験に用いた。
【0138】
2種類のスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)単離体を、外部の研究所から入手した。この研究所は、診断PCRアッセイ(Murakami and Minamide,In:Diagnostic Molecular Microbiology,D.Pershing et al.,Eds.,American Society for Microbiology,1993,pp.539−541)によって一方の検体(specimen)(#99)がmecA陽性であり、さらにPCRによって他方(#100)がmecA陰性であると報告した。
【0139】
両方の検体とも、オキサシリン最小阻害濃度(Oxacillin Minimum Inhibitory Concentration(”Ox MIC”))が、mecA陰性検体にとっては異常に高いと考えられる値である4μg/mlを持つことが報告された。
【0140】
上記検体を、溶解緩衝液(0.1%ラウリル硫酸リチウム、1mM EDTA、20mMコハク酸リチウム、pH5.5)に約5x10細胞を懸濁し、その後、110℃に設定したヒート・ブロック中で20分間インキュベーションすることにより溶解した。種々の他の検体を一定の温度範囲(約95℃〜110℃に設定されたヒート・ブロック)および時間(約10〜25分)の条件下で熱溶解させた。溶解した試料を、Arnold et al.のClin.Chem.35:1588(1989)および米国特許第6,004,745号に記載されたハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)を用いて、プローブに対して相補的な標的配列の存在について試験した。50μlの加熱処理懸濁液を等量のAE標識プローブとともに2xハイブリダイゼーション緩衝液(1.2M LiCl、2%ラウリル硫酸リチウム、20mM EDTA、20mM EGTA、100mM コハク酸リチウム、pH5.5)中、60℃で30分間インキュベートした。コハク酸溶液のpHは、約4.5〜約5.5の範囲とすることができるが、コハク酸緩衝についてはpH4.8を用いることが望ましい。300μlの選択試薬(0.6M ホウ酸緩衝溶液、pH8.5;注記、pHは8.0から9.0の範囲内で変動してもよい)を添加し、混合物を60℃で10分間加熱することで、差次的加水分解をおこない、さらに、0.1%Hおよび1N NaOH溶液からなる300μl逐次注射を用いて、試料をGEN−PROBE(登録商標)LEADER(登録商標)ルミノメーターで読み取った(Arnold et al,上掲を見よ;GEN−PROBE(登録商標)Detection Reagent Kit,Cat.No.1791を用いてもよい)。
【0141】
検体#99および#100による2つのプローブに対する代表的な試験結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

表1に示した結果は、検体#100がmecA(−)であり、検体#99がmecA(+)であることを示し、それによって診断PCRアッセイを用いて得られた結果が確認できた。しかし、この実施例で用いた細胞量(ロード)は、直接プローブ検出のための検出限界近傍であった。
【0143】
このことは、細胞量のこのレベルでは幾分難しい解釈がなされた高バックグラウンドシグナルによって明示されるように、プローブ2を含んだ試験でより目立った。逆に言えば、おそらく、実質的により低いバックグラウンドシグナルの結果として、プローブ1がより限定的な結果を与えることがわかった。
【0144】
(実施例2 陽性の対照としての汎細菌性プローブの使用)
並行ハイブリダイゼーション反応でrRNA(プローブ試薬1、GEN−PROBE(登録商標)MTC−NI Kit,catalog no.4573)を標的にした汎細菌性プローブを用いたことを除いて、大量の細菌試料を用いて、実施例1に記載した手順と類似の手順を実施した。PCR陰性検体は異常に高いOx MICレベルを有したが、1つのPCR陽性検体は、非常に低いOx MIC値を有した。汎細菌性プローブ試薬は、すべての検体の溶解の陽性の対照としての役割を果たした。この手順では、各試料を、別々のハイブリダイゼーション反応に含まれる3種類のプローブのパネルに対して試験した。汎細菌性プローブ試薬を用いて試験した試料の等分量を、ルミノメトリー実施に先立って、結果が検出器の直線領域の範囲内に入るように、1:3000に希釈した。シグナルは、各々の試料中のリボソーム核酸の溶解および検出を示した。これらの値は、検体中の細菌細胞数に依存し、同様に細胞溶解の程度、さらに、汎細菌性プローブによって検出される細胞からのリボソーム核酸の放出または接近性(アクセシビリティ)の程度に依存した。
【0145】
種々の検体についての結果を表2に示す。
【0146】
【表2】

表2に示した結果は、両方のmecA特異的プローブが、診断PCRアッセイによってmecA遺伝子に対して陽性であった検体に対して陽性であるが相対的に弱いシグナルを与えたことを示した。
【0147】
一種類のPCR陽性および2種類のPCR陰性検体でプローブ2を使用することで得られた曖昧な結果は、部分的に、相対的に高いプローブ2のバックグラウンドと、試料中の細胞レベルで検体を試験するために単一のプローブを用いることによって与えられる感度の限界によるものであり得る。さらに、mecAプローブは、最適検出シグナルを得るために遺伝子標的領域を含むssDNAに対する変性およびアクセシビリティを必要とした。対照的に、汎細菌性プローブ試薬によって得られたrRNAは、DNAに比較して細胞あたりの実質的な量で利用可能であり、プローブ試薬による検出およびハイブリダイゼーションに対するrRNA標的領域のアクセシビリティは、その試薬にヘルパー・プローブを含有することによって補助された(Hogan et al.,米国特許第5,030,557号)。rRNAの検出は、ハイブリダイゼーションのアクセシビリティまたは動力学に関してssDNA標的領域の量または反応性を示すものではない。その代わりに、溶解手順の成功を示す。
【0148】
(実施例3 検体の塩基処理)
アルカリ条件下での検体の処理を、核酸を変性して標的配列を検出プローブとのハイブリダイゼーションに利用可能にするための手段として、検討した。塩基処理により、陽性内部対照ハイブリダイゼーション・プローブがより適切にリボソームDNA(rDNA)標的を検出するようにRNAを加水分解するというさらなる考えられる利点が与えられ、それによってmecAプローブおよび対照プローブを用いて得られた結果間でのより直接的な比較が可能となった。細胞を溶解し、かつRNAを分解するための塩基処理は、水酸化物の濃度、温度、およびインキュベーション時間に依存する。とりわけ、rRNAを検出するために設計されたプローブもまた、対応のrDNA標的を検出することもできる。
【0149】
スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)検体(#102)に対する塩基処理の効果を、汎細菌性プローブ試薬を用いて、評価した。検体のペレット化試料を120μlの溶解緩衝液に懸濁し、110℃に設定されたヒート・ブロック中に20分間にわたって処理することで溶解した。溶解検体の50μl等分量を、50μlの0.4N LiOH溶液で55℃、10分間にわたり処理し、その後、50μlの0.4N HClの添加によって中和し、さらに50μlの1xハイブリダイゼーション緩衝液(0.6M LiCl、1% ラウリル硫酸リチウム、10mM EDTA、10mM EGTA、50mMコハク酸リチウム、pH5.5)で緩衝化した。この処理試料を、55℃、1時間でインキュベートすることで、AE標識汎細菌性プローブとハイブリダイズさせた。特異的プローブ・ハイブリッドを検出するためのHPAアッセイを、当業者が慣れ親しんでいる標準的な手順で実施した。対照試料は、50μlの溶解検体ならびに処理した試料の容量と等価な容量の加水分解物、中和溶液および緩衝溶液からなっていた。
【0150】
汎細菌性プローブ試薬を用いたスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)検体の塩基処理の結果を表3に示す。
【0151】
【表3】

表3に示した結果は、rDNAおよび残留rRNA標的の両方が、加水分解試料で測定された化学発光シグナルに貢献することができたことから、試験した条件下での、著しいが、不完全であると思われるrRNA標的の分解の証拠を示した。塩基濃度を高くし、インキュベーション時間を長くし、さらに温度を高くすることで、シグナルの分解の上昇が示された。例えば、0.8N LiOHで55℃、10分間にわたる塩基処理の効果は、AE−プローブ1を用いて評価した。これらの処理に対して、等量の0.8N LiOHを試料に添加し、緩衝化およびHPAによるアッセイに先立って、等量の0.8N HClの添加により、反応混合物を中和した。各々の反応混合物の300μl等分量を、ルミノメーターで読み取った。これらの手順は、標的細菌に存在する配列と同一の配列を持ち、かつ試験しているハイブリダイゼーション・プローブに対して完全に相補的である一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを合成標的として用いた。
【0152】
【表4】

表4に示す結果は、試験した塩基処理条件下で、標的DNA配列の分解による、あるとしても大変少ないシグナルの喪失があることを示した。
【0153】
(実施例4 塩基処理および溶解)
溶解緩衝液での加熱処理の有無による塩基処理の効果を、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)検体(GP1217,ATCC #33591)を用いて評価した。この手順では、試料を0.8N LiOHで処理し、加熱溶解を15分間の加熱処理によっておこなった。他の条件は上記の通りとした。アクリジニウム・エステルで標識したプローブ1をこの手順で用いた。
【0154】
【表5】

表5に示した結果は、特定の条件下での塩基処理が細胞の溶解に適当であり、標的配列を標識ハイブリダイゼーション・プローブによる検出に利用可能にすることを示した。
【0155】
塩基処理条件の範囲は、この目的にとって効果的であることがわかった。例えば、水酸化物の最終濃度が約0.2〜0.4N、温度が約55℃〜約60℃、さらにインキュベーション時間が約5〜30分では全て、上記手順で良好な結果が得られた。したがって、幅広い範囲の条件は、検体の塩基処理に用いることが可能であり、限定されるものではないが、水酸化物の最終塩基濃度を約0.2N〜約1N、温度を約50℃〜約60℃、さらにインキュベーション時間を約5分〜30分とすることができる。もちろん、水酸化物の濃度をより低くして、より高い温度でインキュベーションする条件は、本発明の一部と考えられる。一般的に言えば、異なる塩基濃度で、ほぼ室温から最大で約100℃までの温度範囲は、本発明の範囲内にある試料調製ステップについて意図される。
【0156】
(実施例5 内部対照)
(スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)のプローブおよびヘルパー)
(プローブ)
SauB338:CCACTCAAGAGAGACAACATTTTCGACTAC(配列番号7)。
SauB338−AE(20/21):このプローブは、配列番号7の配列を有し、ヌクレオチド20位と21位との間に挿入された非ヌクレオチド・リンカーに対して結合したアクリジニウム・エステルによって標識した。
【0157】
(ヘルパー)
SauB278:GATGATTCGTCTAATGTCGACCTTTGTAACTCC(配列番号8)
SauB368:CGGAATTTCACGTGCTCCGTCGTACTCAGGAT(配列番号9)
(スタフィロコッカス(Staphylococcus)属のプローブおよびヘルパー)
(プローブ)
SauA1276:CCGAACTGAGAACAACTTTATGGGATTTGC(配列番号10)
SauA1276−AE(19/20):このプローブは、配列番号10の配列を有し、ヌクレオチド19位と20位との間に挿入されたリンカーに対して結合したアクリジニウム・エステルによって標識した。
【0158】
(ヘルパー)
MeO−SauA1259:UUGACCUCGCGGUUUCG(配列番号11)
(2−メトキシヌクレオチド類似体を用いて、このヘルパー・オリゴヌクレオチドの合成をおこなった)
SauA1306:GCGATTCCAGCTTCATGTAGTCGAGTTGCAGACTACAAT(配列番号12)
メチシリン耐性(mecA陽性)スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)(”MRSA”)単離体GP1217(ATCC #33591)およびGP1218(ATCC #43866)、ならびにメチシリン感受性(mecA陰性)スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)(”MSSA”)単離体 GP1214(ATCC #29247)およびGP18(ATCC #12600)を、TSAプレート(Hardy Diagnostics,Cat.No.A−10)上で、一晩、37℃で増殖させ、配列番号7〜9によって同定されるスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)プローブおよびヘルパー(Milliman,米国特許第5,292,874号)、配列番号10〜12によって同定されるスタフィロコッカス(Staphylococcus)種プローブおよびへルパー(Hogan et al.,米国特許第6,376,186号)を、検体中の標的生物の適当な存在についての内部対照として、検体がスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)またはコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(Staphylococcus)種(”CoNS”)であるかどうかを決定するために試験する検体として用いた。
【0159】
培養スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)検体を、150μlの溶解緩衝液中に1μlループの細菌を懸濁して105℃で15分間インキュベートすることで、溶解した。次に、100μlの2N LiOH塩基溶液を添加し、混合物を60℃で15分間インキュベートすることでRNAを加水分解した。加水分解試料を100μlの中和試薬(2N HClおよび100mMのコハク酸緩衝液(HClによる酸性化に先立ってpH5.5)を含む)を添加して中和した。特に、ハイブリダイズされたプローブを標準HPA、基本的に実施例1に記載したものによって検出した。
【0160】
4種類の検体に対してヘルパー・プローブとともにスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属プローブを用いた試験結果を表6に示す。
【0161】
【表6】

表6に示す結果は、4種類の試料すべてに対する予想したハイブリダイゼーション・パターンに正確に一致した。より具体的には、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種プローブは、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属を構成する複数のメンバーに対して特異的であり、すべての試料に対して陽性のハイブリダイゼーション・シグナルを与えた。これは、全ての試料が、期待したとおり、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の細菌を含むことを示した。さらに、4つ全ての試料は、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に特異的なプローブとハイブリダイズさせた場合、陽性のハイブリダイゼーションシグナルを与えた。このことは、全てのサンプルがスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)を含むことを示した。最終的に、mecA陽性検体のみがmecA特異的プローブ1との陽性ハイブリダイゼーションシグナルを与え、meaA陰性検体はそうではなかった。
【0162】
これらの結果は、テストを受けている細菌の正体およびメチシリン耐性状態を決定するのに有用なハイブリダイゼーション・プローブの非常に望ましいパネルを定めた。一実施形態では、本発明は、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)およびスタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)を含むスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の複数の細菌に対して特異的であるプローブを含む。このプローブが標的細菌のリボソーム核酸に対して特異的であることがかなり好ましい。また、パネルに存在するものは、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の核酸に対して特異的にハイブリダイズするが、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の他の細菌、例えばスタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)の核酸に対してはハイブリダイズしないプローブである。かなり好ましいことは、このプローブがスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)のリボソーム核酸に対して特異的であることである。さらに、パネルがmecA遺伝子または該mecA遺伝子によってコードされたRNA転写産物に対してハイブリダイズするプローブを含むことが好ましい。このmecA特異的プローブは、他の薬物耐性マーカー、例えばバンコマイシン耐性をコードする遺伝子に対しては、ハイブリダイズしないべきである。
【0163】
以下の実施例に示すように、代替プローブ配列を、核酸を含む試料中のmecA遺伝子の検出に用いることができる。
【0164】
(実施例6 追加のmecA遺伝子プローブの評価)
(プローブ)
プローブ3:GCGATAATGGTGAAGTAGAAATGACTGAACGTCCG(配列番号3)
プローブ4:CGGACGTTCAGTCATTTCTACTTCACCATTATCGC(配列番号4)
プローブ5:GCTCCAACATGAAGATGGCTATCGTGTCACAATCG(配列番号5)
プローブ6:CGATTGTGACACGATAGCCATCTTCATGTTGGAGC(配列番号6)
mecA 検出の感度を増加させるために、追加のプローブをmecA遺伝子のヌクレオチド塩基304〜338および1010〜1044に対応させて設計した。これらのプローブは、プローブ1およびプローブ2に隣接していた。プローブ3(配列番号3、mecA遺伝子のアンチセンス(−)鎖に対して相補的)を、塩基16と17との間に位置したリンカーによって結合したAEにより、標識した。プローブ4(配列番号4、mecA遺伝子のセンス(+)鎖に対して相補的)を、塩基15と16との間に位置したリンカーによって結合したAEにより、標識した。プローブ5(配列番号5、mecA遺伝子のアンチセンス(−)鎖に対して相補的)を、塩基20と21との間に位置したリンカーによって結合したAEにより、標識した。プローブ6(配列番号6、mecA遺伝子のセンス(+)鎖に対して相補的)を、塩基23と24との間に位置したリンカーによって結合したAEを介して、標識した。
【0165】
(手順)
検体(1μlループの細菌)を、以下の相違点を除いて実施例5の記載と本質的に同様にして処理および試験した。すなわち、表7〜8に示した試料に対しては、15分間にわたって溶解物のインキュベーションをおこない、そして45分間にわたりハイブリダイゼーションのためのインキュベーションをおこない、一方で表9に示す試料に対しては、10分間にわたって溶解のためのインキュベーションをおこない、そして20分間にわたりハイブリダイゼーションのインキュベーションをおこなった。塩基処理した溶液のすべてを、100mMコハク酸塩を含む250μlの0.8N HClの添加によって中和した。
【0166】
プローブ3〜6を単独で、および混合物として用いて検体を試験したときの結果を表7〜9に示す。
【0167】
【表7】

【0168】
【表8】

【0169】
【表9】

表7〜9に示した結果によれば、追加の標的領域に対するプローブが、望ましく低いバックグラウンドを伴う良好な特異性を与えることが示された。プローブの混合物は、強化されたシグナルを示した。しかし、高バックグラウンドとのいくつかの組み合わせは、望ましくないプローブ相互作用を示し得る。
【0170】
(実施例7 2’−デオキシおよび2’−メトキシプローブ混合物)
AE標識DNAプローブの2’−メトキシ類似体を、2’メトキシホスホルアミダイト類似体を用いた標準的なホスホラミダイト合成によって、調製した。プローブ2に対する表11の括弧に示した追加のリンカー位置も、試験のために調製した。デオキシ・プローブおよび2’メトキシプローブ類似体を、以下に記す点を除いて、基本的に実施例5の記載にしたがって合成した。結果は、表10〜12に示す。2’−メトキシヌクレオチド類似体を用いて合成したプローブは、特に、「MeO」という記号で表示した。結果を得るために用いた手順の簡単なまとめは、表に付け加えた。
【0171】
【表10】

【0172】
【表11】

AE(4,5)−MeO−プローブ2に対するさらなる試験結果を表12に示す。
【0173】
【表12】

これらの結果は、メトキシヌクレオチド類似体がmecA陰性試料によって中程度のシグナル増加をもたらすが、メチシリン耐性生物から調製した核酸に対してハイブリダイズした場合、実質的に高いシグナルを示した。プローブの混合物は、かなり高いシグナルをもたらした。プローブの種々の組み合わせは、良好な結果をもたらした。
【0174】
(実施例8 臨床検体の試験)
mecAプローブと組み合わせて臨床単離体を試験した結果を表13に示す。オキサシリンMICおよびオキソイドPBP2’ラテックス凝集(「OLA」)試験の結果を、mecA遺伝子状態の決定のために試料を発送する前に、収集部位で決定した。収集部位で1μlループの検体を150μlの溶解試薬に懸濁し、10分間、100℃でインキュベートし、続いて凍結した。HPA測定のために、試料を解凍し、ボルテックスし、さらに100℃で5分間インキュベートした。各々の試料に2N LiOHの100μl等分量を受けて、続いて60℃で10分間インキュベートした。200mMコハク酸緩衝液を含む100μlの2N HClを添加することで試料を中和した。反応混合物の等分量をつぎに、実施例1に記載したHPAによってアッセイした。Gen−Probe(”GP”)HPAスタフィロコッカス(Staphylococcus)種およびスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)RLU 値を、20位と21位との間のかわりに22位と23位との間に挿入されたリンカーを持つAE標識スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)プローブ(配列番号7)を用いて、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の結果を決定したこと以外は、実施例5に記載したプローブおよびヘルパー・オリゴヌクレオチドを用いて決定した。mecA状態を、AE標識プローブの混合物(すなわち、(4,5)−2’−OMe−プローブ2、(16,17)−プローブ3、ならびに(20,21)−プローブ5)を用いて、決定した。
【0175】
【表13】

表13に示した結果は、本発明のハイブリダイゼーション・アッセイが多数の臨床単離体に対する生物タイプおよびメチシリン耐性状態を正しく同定することを示した。GP28試料について得られた通常とは異なる結果は、中間mecAハイブリダイゼーション・シグナルが中間MIC読み取りと連結していることを意味しており、反復することができず、選択された試薬によっては効率的に加水分解されない未反応のプローブに起因した。高バックグラウンドHPAの結果は、HPA処理中のプローブと選択試薬との不完全な混合によって容易に説明される。
【0176】
(実施例9 追加の検体試験)
単離体の追加の試験を表14にまとめた。オキサシリンMICの結果は、外部の研究室から提供された。GPプローブ結果を、実施例8に記載したようにして決定した。
【0177】
【表14】

表14に示す結果は、オキソイド(OLA)試験が、いくつかの臨床mecA(+)スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)試料の検出に失敗したことを示した。偽陰性結果がOLAアッセイで得られたという事実は、MICアッセイの結果によって支持された。さらに、OLAアッセイでは、スタフィロコッカス・ワーネリ(S.warneri)単離体による偽陽性結果が得られた。全体として、表に示された結果は、本発明のプローブをベースとしたアッセイの優れた精度および優れた特異性に対する証拠を示した。
【0178】
(実施例10 バンコマイシン耐性遺伝子検出のためのプローブ)
VanAおよびVanB遺伝子を検出するために用いたオリゴヌクレオチド・プローブの配列を以下に示す。もちろん、これらのプローブが二本鎖DNA標的を検出することを目的とするので、これらの配列の相補体を有するプローブもまた、VanAおよびVanB遺伝子を検出するために用いることができ、本発明の範囲内である。また、mRNA標的の検出は、本発明の範囲内に入る。
【0179】
(VanA特異的プローブ)
VanA(+)464 GGGTTGCTCAGAGGAGCATGACGTATCGG(配列番号27)
VanA(−)792 GCTGAGCTTTGAATATCGCAGCC(配列番号28)
VanA(−)1325 CGTTCAGTACAATGCGGCCG(配列番号29)
(VanB特異的プローブ)
VanB(+)084 CCGCAGCTTGCATGGACAAATCACTGGC(配列番号30)
VanB(+)428 CGCATCCATCAGGAAAACGAGCCGG(配列番号31)
VanB(−)1006 CCAAGCACCCGATATACTTTCTTTGCC(配列番号32)
(VanAおよびVanB 交叉反応プローブ)
Van A&B(−)734 GAGCTTTGAATATCGCAGCCTAC(配列番号33)
これらの配列の検査から明らかなように、VanA(−)792プローブおよびVan
A&B(−)734プローブは、GAGCTTTGAATATCGCAGCC(配列番号34)によって与えられるコア配列を共有する。これは、GCTGAGCTTTGAATATCGCAGCCTAC(配列番号35)によって与えられる複合配列に含まれる。この複合物は、VanA(−)792プローブの5’境界とVanA&B(−)734プローブの3’境界とによって定まる末端を持つ26塩基からなる連続した配列を表す。2つのプローブの各々は、所定の複合配列に含まれる20の連続した塩基を持つ。VanA(−)792プローブ配列とVan A&B(−)734プローブ配列との実質的な類似性にもかかわらず、以下に示す結果は、Van A&B(−)734プローブが、臨床試料に由来する溶解物内でのVanAおよびVaB遺伝子配列のいずれか一方または両方に対して優れたキャパシティを持つことを証明した。この予想もしなかった特性は、この開示に先立って予測できるものではなく、VanA&B(−)734プローブの1つの利点を例示する。逆に、VanA(−)792プローブは、有利に、VanA遺伝子配列との反応性が高く、VanB遺伝子配列との反応性が実質的に低いことから、高効率的にVanA遺伝子配列を選択的に検出するための手段が提供される。
【0180】
上に列挙したプローブの各々を、DNA前駆体を用いて合成し、本明細書に記載された手順にしたがって結合した非ヌクレオチド・リンカーによってアクリジニウム・エステルで標識した。VanA(+)464プローブのリンカーを、ヌクレオチド19位と20位との間に置いた。VanA(−)792プローブのリンカーを、ヌクレオチド8位と9位との間に置いた。VanA(−)1325プローブのリンカーを、ヌクレオチド13位と14位との間に置いた。VanB(+)084プローブのリンカーを、ヌクレオチド8位と9位との間に置いた。VanB(+)428プローブのリンカーを、ヌクレオチド8位と9位との間に置いた。VanB(−)1006プローブのリンカーを、ヌクレオチド18位と19位との間に置いた。VanA&B(−)734プローブのリンカーを、ヌクレオチド11位と12位との間に置いた。
【0181】
化学発光AE標識系の使用が単に実例となる目的のために使われた本発明の一実施形態を意味するだけであること理解すべきである。当業者によって容易に理解される他の検出可能な種類をプローブの標識にも使用することができる。もちろん、均質的に検出可能な標識は、最も高くて好ましい検出可能な標識を表す。
【0182】
(実施例11 培養VRE細菌の遺伝子型の確立)
種々の試料のVRE細菌を、ATCCから得て、適当な増殖培地で増殖させ、それらの単離された核酸をPCRプロトコルによって試験し、薬物耐性表現型を担う遺伝子の正体を決定した。VanA遺伝子を増幅するためのプライマーは、VanA(+)464 Kpn(CGGGGTACCGGGTTGCTCAGAGGAGCATGACGTATCGG(配列番号36))およびVanA(−)1325Bam(CGCGGATCCGTTCAGTACAATGCGGCCG(配列番号37))の配列を持っていた。これらのプライマーは、増幅すべき標的とは相補的ではない配列の下流に位置する、それぞれ配列番号27および配列番号29の標的の標的相補性試験の配列を持っていた。VanB遺伝子を増幅するためのプライマーは、VanB(+)084 Kpn(CGGGGTACCGCAGCTTGCATGGACAAATCACTGGC(配列番号38))およびVanB(−)1006Bam(CGCGGATCCAAGCACCCGATATACTTTCTTTGCC(配列番号39))の配列を持っていた。これらのプライマーは、増幅すべき標的とは相補的ではない配列の下流に位置する、それぞれ配列番号30および配列番号32の標的相補的配列を持っていた。あらゆる場合に、別々の反応を実施して、各単離体由来のゲノムDNAの試料を用いてVanAおよびVanB遺伝子を増幅した。特定のバンコマイシン耐性遺伝子の存在を示す陽性の結果は、エチジウム・ブロマイドによって染色されたアガロース・ゲル上のPCR産物を表す独立したバンドの出現によって、判断された。各VRE試料は、VanAまたはVanB遺伝子のいずれかを含んでおり、これらの試料のいずれもこれらの遺伝子の両方を含まなかった。これの手順の結果を表15に示す。
【0183】
【表15】

(実施例12 バンコマイシン耐性をコードする遺伝子を検出するためのハイブリダイゼーション・アッセイ)
VanAまたはVanB遺伝子配列のいずれかの挿入片を保持している二本鎖プラスミドを、対照テンプレートとして使用するために調製した。より具体的には、VanA遺伝子配列は、VanA(+)464KpnおよびVanA(−)1325Bamの配列を持つプライマーを用いたPCRプロトコルで増幅した。同様に、VanB遺伝子配列を、VanB(+)084KpnおよびVanB(−)1006Bamの配列を持つプライマーを用いて増幅した。VanAまたはVanB遺伝子型を有することが公知の細菌由来のゲノムDNA試料を増幅反応のテンプレートとして用いた。VanA遺伝子配列を含む平滑末端化増幅産物をpPCR−SCRIPTAMP SK(+)(Stratagene;La Jolla,CA)プラスミド・クローニング・ベクターに連結し、大腸菌(E.coli)宿主細菌で増殖させた。この際、当業者によく知られた手順を用いた。VanB遺伝子配列を含む二本鎖増幅産物は、最初にKpnIおよびBamHIで消化し、次いで、同様に切断したpBLUESCRIPT−II KS(+)(Stratagene;La Jolla,CA)プラスミド・クローニング・ベクターに連結した。単離した二本鎖プラスミドDNAをハイブリダイゼーション・アッセイの対照として用いた。
【0184】
実施例10のもとで示された配列を有する2’−デオキシ・プローブを標準的なホスホルアミダイト合成によって調製した。プローブのAE標識もまた、本明細書に記載されているように、また当業者が精通しているとおりの標準的な手順を用いておこなった。先に述べた実施例のもので説明された4通りの異なる培養VRE細菌の試料を原則的に上記したように溶解した。試料中のRNAをハイブリダイズし、温度を上昇させて溶解物を水酸化物とインキュベーションさせることでDNAの変性をおこなった。並行手順として、VanAまたはVanB挿入片のいずれかを保持する2種類のプラスミド・クローンの試料(先行する実施例のもので説明されたように)もまた、処理してDNAを変性させた。すべての試料を緩衝HCl試薬の添加によって中和した。AEで標識したプローブを試料の各々に添加して、45℃にわたって55〜60℃でハイブリダイズし、相補的なプローブ:標的二重鎖の形成を可能にした。実施例2のもとで記載された汎細菌性プローブ(プローブ試薬1、GEN−PROBE(登録商標)MTC−NI Kit,catalog no.4573)を陽性対照として用い、細菌核酸標的の存在を確認した。付加的な標的が存在せず標識プローブを含む試験(すなわち、「プローブ単独」)が陰性の対照として働いた。ハイブリダイゼーション手順の後に一本鎖のままであった、プローブ分子に結合したAE標識を、穏やかアルカリ条件下での処理によって破壊し、特異的なハイブリッドの形成程度を、前述の例で述べられるように、ルミノメトリーによって定量した。とりわけ、VanBプラスミド・クローンは、VanA&B(−)734プローブに対して相補的な配列を完全には含まなかった。これらの手順から得られた数値結果(RLUで測定)を表16に表す。
【0185】
【表16】

表16に示した結果は、VanA、VanB、またはVanAおよび/またはVanBの組み合わせに特異的な種々のプローブの各々が、4種類の培養した細菌試料の各々に存在する適当なバイコマイシン耐性遺伝子を検出および同定することができることを示した。より具体的には、VanA(+)464、VanA(−)792、およびVanA(−)1325プローブは、VanA陽性である単一細菌単離体に由来する核酸を含む試料に対して、非常に強いハイブリダイゼーション・シグナルを与えた。これらのプローブの各々は、VanA標的を保持しない試料とハイブリダイズする場合、実質的に弱いシグナルを発生した。同様に、VanB(+)084、VanB(+)428、およびVanB(−)1006 プローブは、VanB陽性であるVRE細菌由来の核酸を含む試料とハイブリダイズする場合、非常に強いシグナルを与えた。これらのプローブの各々は、VaB核酸標的を保持しない試料とハイブリダイズする場合、実質的に弱いシグナルを発生した。最後に、Van A&B(−)734プローブは、VanA陽性またはVanB陽性のいずれかであったVRE細菌由来の核酸とハイブリダイズする場合、非常に強いシグナルを与えた。
【0186】
興味深いことに、23塩基長であり、かつ20塩基からなる共通コア配列を共有する標的相補的配列を持つにもかかわらず、VanA&B(−)734およびVanA(−)792プローブは、著しく異なるハイブリダイゼーション特性を示した。これらの類似性にも関わらず、異なる細菌単離体から調製した溶解物を用いて得られた定量的結果によって示されるように、2種類のプローブは、VanAおよびVanB標的に対する相対的選択性が互いに異なった。例えば、2種類のプローブのいずれかとVanA陽性細菌試料(ATCC # 700221)を用いて得た陰性対照に関連したバックグラウンドを訂正したハイブリダイゼーション・シグナルとの比較は、実質的に匹敵した(VanA(−)792およびVanA&B(−)734プローブに対するバックグラウンドシグナルよりも、それぞれ約40倍および約36倍大きい)。VanB陽性細菌試料(ATCC番号51575、700802、および51299)の溶解物と2つのプローブのハイブリダイゼーションから得たシグナルを同様に比較することで、大変異なる結果が得られた。これらの例では、VanA(−)792プローブを用いて得たハイブリダイゼーション・シグナルの平均は、バックグラウンドよりも約10.5倍大きく、一方VanA&B(−)734プローブを用いて得たハイブリダイゼーション・シグナルは、バックグラウンドよりも約24倍平均値がおおきかった。陽性結果が陰性対照よりも少なくとも10倍大きいと判断される従来のシナリオでは、これらの2種類のプローブは均一にVanA標的を検出したが、VanB標的を曖昧に検出した。これらの知見は、プローブの機能性に対するマイナーな配列のバリエーションのわずかな効果を強調した。
【0187】
以下の実施例は、いくつかの好ましい設計ゴールを満たした試験装置を開示している。装置は、離間した構成で、可溶性ハイブリダイゼーションプローブの所定のコレクションを含む個々のウェルを保持する固体支持体を含んだ。この配置は、すべてのプローブが、例えばハイブリダイゼーション・インキュベーターまたはルミノメーターに同時に移されることができることと、ハイブリダイゼーション反応のすべてが同一温度条件下で便利に実施することができたことを意味した。装置は、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(Staphylococcal)属細菌(CoNS)、同様にエンテロコッカス属(Enterococcus)細菌を迅速に同定することを促した。さらに、装置は、テストを受けているいかなる生物ででもメチシリンまたはバンコマイシンに耐性を表す核酸マーカーを検出することができた。最後に、装置は均質なアッセイを実施する上で有用だった。したがって、相補的標的配列の存在を示した特異的なハイブリッドを検出するために、ハイブリダイズしていないプローブを、特異的にハイブリダイズされたプローブから切り離すことは、不必要だった。
【0188】
装置が、関連した標的の有無を決定するために、好ましくはDNAを試験することに使われ、RNAに対しては使われないという事実は、ある種の限界を与え、克服すべき問題を定義した。より詳しくは、試験されるDNA試料の量が制限される場合、同定をおこなうために必要なハイブリダイゼーション反応の数は最小化されなければならない。陽性ハイブリダイゼーションの結果が曖昧な決定をもたらすように、問題の好ましい解決はある種のプローブを一つのハイブリダイゼーション反応に組み込むことをともなった。後述するように、VanAおよびVanB遺伝子に特有のプローブを使用している別々のハイブリダイゼーション反応を実行するよりはむしろ、単一のハイブリダイゼーション反応はどの標的が存在するかを決定することではなく、それらの標的のいずれかを含んでいる核酸を同定することに用いられた。また、それぞれにスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の核酸およびエンテロコッカス(Enterococcus)属細菌に対して別個に特異的である2種類のプローブは、同一の標識を保持し、単一のハイブリダイゼーション反応に組み込まれた。特にどの生物が存在するかを同定することなく、この反応の陽性ハイブリダイゼーション・シグナルは、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)またはエンテロコッカス(Enterococcus)属細菌の存在を示した。
【0189】
充分な材料がテストに利用可能な場合、陽性対照として汎細菌性プローブをさらに使用することで、本発明の装置に付加的な機能性が付加されるとともに、試験を受けている生物の正体についての事前情報の必要条件を除去する。例えば、生物が本発明の装置で事前に試験されてエンテロコッカス(Enterococcus)群のメンバーであると誤認されることが容易に起こりうることから、エンテロコッカス属に特異的なハイブリダイゼーション・プローブ(汎細菌性アドレスがない場合)を使用して得られる陰性結果は、装置の他のアドレスの陰性結果と共に、いずれの不十分な材料も手順のなかに含まれたことから、または生物がプローブ・ハイブリダイゼーション手順の前に誤認されたことが可能であるので、情報価値がない。この曖昧さは、陽性対照として汎細菌性プローブを用いて解決することができる。したがって、本明細書中に記載されるタイプの汎細菌性プローブを使用しているハイブリダイゼーション反応で観察される陽性ハイブリダイゼーション・シグナルは、同じ装置を使用して実施される他のハイブリダイゼーション反応で意味がある結果を出すために充分な核酸がテストを受けている試料に存在することを示す。
【0190】
(実施例13 細菌同定および抗生物質耐性テストを同時に実施するための装置)
以下の特異性を有しているAE標識されたハイブリダイゼーション・プローブの等分量を、以下の通りに96穴プラスチック製マイクロタイタープレートの4つのウェルに分配した。装置の第1のウェルは、配列番号11および12の配列を有しているヘルパー・オリゴヌクレオチドと共に、配列番号10の配列を有しているAEで標識されたプローブの等分量を含むことから、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)、およびスタフィロコッカス・ヘモリチカス(S.haemolyticus)を含むスタフィロコッカス(Staphylococcus)属で複数の細菌核酸にハイブリダイズすることができたが、エンテロコッカス(Enterococcus)属の細菌の核酸にはハイブリダイズできなかった。配列番号11の配列を有しているオリゴヌクレオチドは、2’−メトキシヌクレオチド類似体を使用して合成された。第2のウェルはAEで標識されたプローブの混合物を含んでおり、プローブのうちの1つが、配列番号8および9の配列を有しているヘルパー・オリゴヌクレオチドと共に、配列番号7のスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に特異的な配列を有した。第2のウェルは、配列番号23および24の配列を有しているヘルパー・オリゴヌクレオチドととともに、配列番号14の配列を有している第1のAEで標識されたエンテロコッカス(Enterococcus)属に特異的なプローブ、ならびに配列番号25および26の配列を有しているヘルパー・オリゴヌクレオチドとともに、配列番号15の配列を有している第2のAEで標識されたエンテロコッカス属に特異的なプローブをさらに含んだ。第2のウェルのプローブは、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)とエンテロコッカス(Enterococcus)属細菌の核酸にハイブリダイズすることができた。とりわけ、第2のウェルのプローブは交叉反応性を示さなかった。このことは、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の核酸に特異的なプローブはエンテロコッカス属細菌の核酸にハイブリダイズせず、エンテロコッカス属細菌の核酸に特異的なプローブはスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の他のいかなるメンバーの核酸にもハイブリダイズしなかったことを意味する。また、とりわけ、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の核酸に特異的なプローブは他のスタフィロコッカス属(Staphylococcal)の他のメンバーの核酸にハイブリダイズしなかった。このように、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)に特異的なプローブは、例えば、スタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)またはスタフィロコッカス・ヘモリチカス(S.haemolyticus)にハイブリダイズしなかった。装置の第3のウェルは、配列番号2、3、および5の配列を有しているAEで標識されたプローブの混合物を含んだので、mecA遺伝子の核酸にハイブリダイズすることができたが、VanAまたはVanB遺伝子のいずれの核酸にもハイブリダイズできなかった。これらの3つのプローブを全て、2’−メトキシヌクレオチド類似体を使用して合成した。装置の第4のウェルは、配列番号27、28、29、および30の配列を有しているAEで標識されたプローブの混合物を含んだ。混合物は、さらに、配列番号31(すなわち、CCGGCTCGTTTTCCTGATGGATGCG(配列番号40))および配列番号32(すなわち,GGCAAAGAAAGTATATCGGGTGCTTGG(配列番号41))の相補体を有するAEで標識したプローブを含んだ。
【0191】
第4のウェルのプローブは、VanAおよびVanB遺伝子の核酸にハイブリダイズすることができたが、mecA遺伝子の核酸にはハイブリダイズできなかった。上で示されるように、装置の任意の第5のウェルは複数の細菌生物の核酸に特異的にハイブリダイズするが真菌生物の核酸にはハイブリダイズしない標識プローブを含むことができる。例えば、配列番号16の配列を有している標識プローブを、この目的のために用いることができる。
【0192】
数多くの生物学的試料を、本明細書中に記載される試料調製、プローブ・ハイブリダイゼーション、および特異的なハイブリッド検出法を使用して試験した。結果は、一様に、表17に示される陽性および陰性ハイブリダイゼーション結果のパターンに合致した。実際、試験生物の核酸をハイブリダイズするために装置を使用した場合、表に示される情報を使用して、陽性および陰性ハイブリダイゼーション結果のユニークな組合せから、ドナー生物の正体を決定することが可能であった。とりわけ、表17の塗りつぶしたボックスは陽性ハイブリダイゼーション・シグナルを示し、白抜きのボックスは陽性ハイブリダイゼーション・シグナルの欠如を示す。MRE(メチシリン耐性エンテロコッカス属)とVRSA(バンコマイシン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus))についてのテーブルのエントリは、これらの単離体について期待されるハイブリダイゼーション結果のユニークなパターンを示すが、しかし、これらの生物を試験のために入手することは不可能であった。多くのVRSA単離体がメチシリン耐性を示すとともに、二重抗生物質耐性の表現型を有している細菌は、VanAおよび/またはVanBアドレスと同様に、mecAアドレスで陽性ハイブリダイゼーションシグナルを与えると期待される。メチシリン耐性CoNS単離体は、スタフィロコッカス属(Staphylococcal)アドレスで、またmecA・アドレスで陽性ハイブリダイゼーションシグナルを与えるがスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)/エンテロコッカス(Enterococcus)属アドレスまたはVanA/VanBアドレスではそうではないと期待される。最後に、装置で使用されるプローブの全てを、以下の表に示される結果を成し遂げるために、同じ温度でハイブリダイズさせた。
【0193】
【表17】

前述の表に示したものと実質的に等価な診断情報を得るための代替アプローチは、6つの独自のプローブ・アドレスの使用を含む。表18は、ハイブリダイゼーション反応が、上記と同様のハイブリダイゼーション・プローブと手順とを使用しておこなわれる場合、各々のハイブリダイゼーション反応が明白な結果を得た場合を除いて、期待される結果を示す。本発明のこの態様を例示するために、バンコマイシン耐性表現型に対するVREおよびVRSAアドレスに一致しながら、VanAおよびVanBの結果が表18で示される。しかし、VanAおよびVanBアドレスの一方(両方ではない)が、陰性ハイブリダイゼーション結果を与えることができ、まだバンコマイシン耐性表現型を示すことができた。別の言い方をすれば、VanAまたはVanBプローブ・アドレスのいずれかが、陽性ハイブリダイゼーション・シグナルを与える場合、それはバンコマイシンに対する耐性の証拠となる。上記したように、多くのVRSA単離体がメチシリン耐性も有することから、二重の抗生物質耐性の表現型を有している細菌は、VanAおよび/またはVanBアドレスと同様に、mecA・アドレスで陽性ハイブリダイゼーションシグナルを与えると期待される。メチシリン耐性CoNS単離体は、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属アドレスで、そして、mecA・アドレスで陽性ハイブリダイゼーションシグナルを与えるが、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、VanAまたはVanBに特異的な核酸を検出するためのアドレスではそうではない。
【0194】
【表18】

最後に、上記ハイブリダイゼーション・アッセイ技術を用いて、測定したハイブリダイゼーション・シグナルの大きさに基づいて、異なる生物の混合物の貢献を定量することが可能である。
【0195】
この発明を、いくつかの具体的な例とその実施形態とに関して記載した。もちろん、本発明の多数の異なる実施形態は、それ自身を前述の詳細な説明を再検討することで、当技術分野で通常の技量を有している人々へと示唆する。このように、本発明の本当の範囲は、添付された特許請求の範囲を参照して決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法であって、
該試料に含有される細胞を溶解することで溶解物を生成するステップと、
塩基性組成物によって該溶解物を処理することで、塩基性混合物を生成するステップと、
該塩基性混合物に対して1種類以上の試薬を導入することで、pHが4.5〜5.5の範囲内で反応混合物を生成するステップと、
高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で該反応混合物をオリゴヌクレオチド・プローブとハイブリダイズさせて、該オリゴヌクレオチド・プローブと該標的核酸との間にハイブリッドを形成するステップと、
該標的DNA配列の存在の指標として、該ハイブリッドを検出するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
細胞を含む試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法であって、
該試料に含有される細胞を溶解することで溶解物を生成するステップと、
塩基性組成物によって該溶解物を処理することで、塩基性混合物を生成するステップと、
該塩基性混合物に対して1種類以上の試薬を導入することで、pHが4.5〜5.5の範囲内で反応混合物を生成するステップと、
高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で複数のオリゴヌクレオチド・プローブを該反応混合物と接触させることにより、1種類以上のハイブリダイゼーション反応を実施するステップであって、該高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、該反応混合物中にその標的核酸が存在する場合に、プローブに該標的核酸とハイブリッド形成させる、ステップと、
該標的DNA配列の存在の指標として、該ハイブリッドを検出するステップと、
を有する、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記オリゴヌクレオチド・プローブとその標的核酸との間にハイブリッドを形成するためのハイブリダイゼーションのステップが、固体支持体と、該固体支持体上の複数の位置に分布し、かつ検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブとを具備する装置を用いて実施され、
該複数の位置が、
スタフィロコッカス・アウレウスおよびスタフィロコッカス・エピデルミディスを含むスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、エンテロコッカス属の細菌のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブを含む第1の位置と、
(a)エンテロコッカス・フェカーリスおよびエンテロコッカス・フェシウムを含むエンテロコッカス属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス・アウレウスまたはスタフィロコッカス属の任意の他の細菌に由来するリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブ、ならびに
(b)スタフィロコッカス・アウレウスに由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス属の他の種またはエンテロコッカス属の細菌由来のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない少なくとも1種類のプローブ、
を含む第2の位置と、
mecA核酸とハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブを含む第3の位置と、
VanA核酸およびVanB核酸に対してハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第4の位置と、
を含む、方法。
【請求項4】
抗生物質に対して耐性であり得る細菌種を検出するための方法であって、
ハイブリダイゼーション反応のために、抗生物質に対して耐性であり得る細菌を含むことが疑われる試料を調製するステップであって、ここで、該細菌中に存在する標的核酸間のハイブリッドは、オリゴヌクレオチド・プローブとのハイブリッドを形成する、ステップと;
該試料の別々の部分を固体支持体上の複数の位置に分布させるステップであって、該複数の位置が、
スタフィロコッカス・アウレウスおよびスタフィロコッカス・エピデルミディスを含むスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、エンテロコッカス属の細菌のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブを含む第1の位置と、
(a)エンテロコッカス・フェカーリスおよびエンテロコッカス・フェシウムを含むエンテロコッカス属の複数の細菌に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス・アウレウスまたはスタフィロコッカス属の任意の他の細菌に由来するリボソーム核酸とはハイブリダイズしない1種類以上のプローブ、ならびに
(b)スタフィロコッカス・アウレウスに由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする一方で、スタフィロコッカス属の他の種またはエンテロコッカス属の細菌由来のリボソーム核酸とはハイブリダイズしない少なくとも1種類のプローブ、
を含む第2の位置と、
mecA核酸とハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブを含む第3の位置と、
VanA核酸およびVanB核酸に対してハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む第4の位置と、
を含む、ステップと、
該位置の各々においてハイブリッドの有無を検出するステップであって、該検出は、細菌の存在もしくは不在、そして、該細菌中の抗生物質耐性遺伝子型の存在もしくは不在を示す、ステップと、
を有する、方法。
【請求項5】
前記検出可能に標識された複数のハイブリダイゼーション・プローブの各々が、検出可能に標識された可溶性ハイブリダイゼーション・プローブである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記検出可能に標識されたハイブリダイゼーション・プローブの各々が、検出可能な部分によって標識されている、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記検出可能な部分が化学発光標識である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに第5の位置を含み、該第5の位置が、グラム陽性細菌の高(G+C)サブセットを含む複数のグラム陽性細菌種、腸内細菌科の複数の細菌種、エンテロコッカス属の複数の細菌種、およびスタフィロコッカス属の複数の細菌種に由来するリボソーム核酸に対してハイブリダイズする1種類以上のプローブを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項9】
前記第4の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号16の塩基配列と配列番号19の塩基配列とからなる群から選択される汎細菌性プローブを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
VanA核酸およびVanB核酸に対してハイブリダイズする前記1種類以上のプローブが、VanA核酸にハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブと、VanB核酸にハイブリダイズする少なくとも1種類のプローブとを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項11】
VanA核酸およびVanB核酸に対してハイブリダイズする前記1種類以上のプローブが、VanA核酸およびVanB核酸の両方に対してハイブリダイズする単一のプローブを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項12】
以下の(1)〜(3):
(1)前記第3の位置が、配列番号2の塩基配列を含む第1の検出可能に標識されたハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号3の塩基配列を含む第2の検出可能に標識されたハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号5の塩基配列を含む第3の検出可能に標識されたハイブリダイゼーション・プローブとを含むか;または
(2)前記第4の位置が、配列番号27の塩基配列もしくはその相補体を含む第1の検出可能に標識されたVanAハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号28の塩基配列もしくはその相補体を含む第2の検出可能に標識されたVanAハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号29の塩基配列もしくはその相補体を含む第3の検出可能に標識されたVanAハイブリダイゼーション・プローブとを含むか;または
(3)前記第4の位置が、配列番号30の塩基配列もしくはその相補体を含む第1の検出可能に標識されたVanBハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号40の塩基配列もしくはその相補体を含む第2の検出可能に標識されたVanBハイブリダイゼーション・プローブと、配列番号41の塩基配列もしくはその相補体を含む第3の検出可能に標識されたVanBハイブリダイゼーション・プローブとを含む、
のいずれかである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の位置の前記少なくとも1種類のプローブが、配列番号2、配列番号3、および配列番号5からなる群から選択される塩基配列を持つ、請求項3または4に記載の方法。
【請求項14】
前記第4の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号27、配列番号28、および配列番号29からなる群から選択される塩基配列を持つ、請求項3または4に記載の方法。
【請求項15】
前記第4の位置の前記1種類以上のプローブが、配列番号30、配列番号40、および配列番号41からなる群から選択される塩基配列を持つ、請求項3または4に記載の方法。

【公開番号】特開2011−62210(P2011−62210A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265827(P2010−265827)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2006−514343(P2006−514343)の分割
【原出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【出願人】(500506530)ジェン−プロウブ インコーポレイテッド (58)
【Fターム(参考)】