説明

抗生物質耐性細菌の検出および分析のための方法、組成物、およびキット

本発明は、概して、試料中の抗生物質耐性細菌の検出に関する。具体的には、本発明は、試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および他のメチシリン耐性の細菌を検出し、分析する方法、組成物、およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2007年4月19日に出願された、米国仮特許出願第60/907,848号の出願日遡及の利益を主張し、参照することにより、すべての目的で、この特許の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、試料中の抗生物質耐性細菌の検出に関する。具体的には、本発明は、試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および他のメチシリン耐性細菌を検出し、分析する方法、組成物、およびキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
抗生物質耐性細菌の新菌株および新種は、病院および他の医療施設において、次第によく見られるようになってきた。そのような細菌によって引き起こされる感染の治療の選択肢は、望ましくない副作用をもたらす費用のかかる薬物治療に限定されることが多い。抗生物質耐性は、黄色ブドウ球菌、エルスコビアツルバタ、アルカノバクテリウム・ヘモリティクム、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・ガロリティカス、ストレプトコッカス・ルテティエンシス、バチルス・サーキュランス、パエニバチルス、ロドコッカス、エンテロコッカス、クレブシエラ、ならびにクロストリジウム属およびエガセラ・レンタに属する嫌気性細菌を含む、多くの細菌、および他の多くの病原菌の菌株において検出されている。
【0004】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、世界中の病院において、重大な疫学的問題として発生する抗生物質耐性細菌の種類の一例である。MRSA菌株は、ブドウ球菌感染を治療するために最も一般的に使用されるペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、およびモノバクタムを含む、ベータラクタムに耐性である。したがって、MRSA感染は、中毒性があり費用のかかる抗生物質(バンコマイシンおよびリネゾリド等)でのみ治療することができ、主に、これらのマイナスの副作用のため、通常、最後の砦としてのみ使用される。MRSAの進化における近年の発達は、そのような最後の砦である抗生物質に、少なくとも部分的に耐性である菌株の出現である。これらの部分的に耐性の菌株が、完全に耐性になると、これらの菌株によって引き起こされる感染の効果的な治療はなくなるであろう。
【0005】
初期の検出および治療は、常に進化する抗生物質耐性細菌の菌株の伝達を緩和するための主要な手段である。そのような細菌を検査する従来の方法は、結果を得るまでに少なくとも2〜4日要し、それだけの期間があれば、感染が拡大する機会としては十分である。したがって、抗生物質耐性細菌の検出のための、迅速で正確な方法、組成物、およびキットは、これらの送達および進化の速さを最小限にするために不可欠である。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、制限しない一実施形態における、メチシリン耐性細菌を含む、抗生物質耐性細菌の迅速な検出のための方法、組成物、およびキットを提供する。
【0007】
一態様では、本発明は、試料中のメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。本態様の方法には、(i)プライマーが、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第1の組のプライマーを提供する工程、(ii)プライマーが、架橋領域の少なくとも一部に相補的である、第2の組のプライマーを提供する工程、(iii)プライマーが、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第3の組のプライマーを提供する工程であって、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、orfXポリヌクレオチドではない、工程、(iv)第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物内の試料と合わせる工程、(v)複数のサイクルの増幅反応を、反応混合物で実施する工程、および(vi)mecA、架橋領域、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程が含まれる。本態様では、サイクル数は、MRSAが、試料中に存在するかどうかを示す。
【0008】
別の態様では、本発明は、試料中のメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。本態様の方法には、(i)mecAポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、(ii)架橋領域のポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、および(iii)ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程が含まれる。本態様では、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、orfXポリヌクレオチドではない。本態様では、mecAポリヌクレオチド、架橋領域のポリヌクレオチド、およびブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドのすべてが、該試料中に存在する場合、MRSAは、該試料中に存在する。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、試料中のメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。本態様の方法には、(i)mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第1の組のプライマーを提供する工程、(ii)MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第2の組のプライマーを提供する工程、(iii)ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第3の組のプライマーを提供する工程であって、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列はorfXポリヌクレオチドではない工程、(iv)第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物中の試料と合わせる工程、(v)複数のサイクルの増幅反応を、前記反応混合物で実施する工程、および(vi)mecA、MSSA−orfXおよび黄色ブドウ球菌特定的ポリヌクレオチド配列のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程が含まれる。本態様では、サイクル数は、MRSAが試料中に存在するかどうかを示す。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、試料中の細菌を特定する方法を提供する。本方法には、(i)mecAポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、(ii)MSSA−orfXポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、および(iii)ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程であって、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、orfXポリヌクレオチドではない工程が含まれる。本態様では、試料中に存在する(a)、(b)、および(c)の組み合わせは、試料中の細菌を特定する。
【0011】
一態様では、本発明は、試料中のMRSAを特定するキットを提供する。そのようなキットには、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第1の組のプライマー、MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第2の組のプライマー、架橋配列ではないブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の、少なくとも一部に相補的な第3の組のプライマー、ならびに、DNAポリメラーゼ酵素、dNTP、マグネシウム、および安定剤から選択される少なくとも1つの成員が含まれる。
【0012】
別の態様では、本発明は、試料中のMRSAを特定するキットを提供し、そのようなキットは、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第1の組のプライマー、架橋配列の少なくとも一部に相補的な第2の組のプライマー、架橋配列ではないブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第3の組のプライマー、ならびに、DNAポリメラーゼ酵素、dNTP、マグネシウム、および安定剤から選択される少なくとも1つの成員を含むことができる。
【0013】
一態様では、本発明は、試料中の抗生物質耐性細菌の菌株を検出する方法を提供する。本方法は、(i)抗生物質耐性を与える遺伝子の少なくとも一部から、第1の増幅産物を生成することが可能な第1の組のプライマーを提供する工程、(ii)架橋領域の少なくとも一部から、第2の増幅産物を生成することが可能な第2の組のプライマーを提供する工程、(iii)細菌の菌株に特異的なポリヌクレオチド配列の少なくとも一部から、第3の増幅産物を生成することが可能な第3の組のプライマーを提供する工程、(iv)第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物内の該試料と合わせる工程、(v)複数のサイクルの増幅反応を、反応混合物で実施する工程、および(vi)第1、第2、および第3の増幅産物のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程を含むことができる。本態様では、サイクル数は、抗生物質耐性細菌の菌株が、試料中に存在するかどうかを示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の分析に使用するプライマーおよびプローブの配列の一覧表である。
【図2】本発明の方法を使用する、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の検出、ならびにこれらの識別の結果を図示する。
【図3】メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR−CoNS)、およびメチシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MS−CoNS)の検出、ならびにこれらの識別の結果を図示する。
【図4】本発明の安定化PCR反応混合物のリアルタイムPCR分析の結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特に記載がない限り、本明細書に使用する、すべての専門的および科学的用語は、本発明が属する当該技術の当業者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載するすべての出版物は、出版物に記載され、現在記載する本発明に関連して使用し得る、機器、製剤、および方法論を記載し、開示する目的で、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0016】
本明細書および付属の請求項に使用する、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈により明らかに違うことが分かる場合を除き、複数形の言及を含むことに留意する。したがって、例えば、「ポリメラーゼ」への言及は、そのような薬剤の1つまたは混合物を指し、「方法」への言及には、同等の工程および当業者に周知の方法等への言及が含まれる。
【0017】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの媒介値、および表示範囲内の任意の他の表示値または媒介値は、本発明内に含まれることを理解するものとする。これらのより小範囲での上限および下限は、表示範囲の具体的に除外された任意の制限を条件として、単独に、より小範囲に含まれ得、本発明内にも含まれる。表示範囲が、1つまたは複数の制限値を含む場合、これらの含まれた制限値の両方のいずれかを除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0018】
以下の説明では、多くの具体的な詳細を説明し、本発明のより完全な理解を提供する。しかしながら、本発明は、1つ以上のこれらの具体的な詳細がなくても実施し得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、当業者に周知の特性および手順は、本発明を不明瞭にするのを回避するために、記載していない。これらの付加的な特性も、本発明によって含まれることは、当業者には明らかであろう。
略語
【0019】
「MRSA」は、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」を指す。
【0020】
「MSSA」は、「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌」を指す。
【0021】
SCC:orfXは、SCCmec挿入カセットとブドウ球菌ゲノムのorfX領域との間の領域を指す。この領域は、「架橋領域」とも呼ばれる。
定義
【0022】
「プライマー」という用語は、ポリヌクレオチド(つまり、DNA)鋳型で二本鎖が形成されると、伸展した二重鎖(二本鎖)が形成されるように、核酸合成の開始点として機能し、鋳型に沿って一端から伸展することが可能な、天然または合成のいずれかのオリゴヌクレオチドを指す。本発明のプライマーは、検出可能に標識化し得るかまたは標識化し得ない。
【0023】
「プローブ」は、概して、検出可能に標識化され、ハイブリダイゼーションによって相補的な核酸配列を特定するために使用される、天然または合成のいずれかのオリゴヌクレオチドである。本発明で使用するプライマーおよびプローブは、同一または異なる配列を有し得る。
【0024】
「菌株」は、特定可能な相違によって、同一種の他の細菌と異なる細菌種の一部である。
【0025】
本明細書に使用する、「核酸」という用語は、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド分子」という用語と交換可能に使用される。さらに、これらの記載した用語のすべては、遺伝子の一部、または全遺伝子を指し得、「遺伝子」という用語は、本明細書において、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド分子」、および「核酸」という用語と、交換可能に使用される。
【0026】
「mecAポリヌクレオチド配列」は、mecA遺伝子の一部またはすべてをコード化する配列を含む、ポリヌクレオチドを指す。
概要
【0027】
本発明は、抗生物質耐性細菌を検出し、分析する方法を提供する。本発明は主に、抗生物質メチシリンに耐性の細菌に関して記載するが、本発明の方法および組成物を使用して、制限しない一実施例においてバンコマイシンを含む、広範囲の抗生物質耐性の細菌を検出することができることを理解されたい。本発明に含まれる分析および組成物の柔軟性は、部分的には、細胞の、抗生物質耐性を提供する遺伝子を獲得する能力における柔軟性に起因する。そのような遺伝子の獲得は、プラスミド、トランスポゾン、インテグロン、および原型挿入因子によって促進されることが多い。細菌は、抗生物質耐性を周知の方法で獲得するため、本発明の方法および組成物を、当該技術において周知の方法を使用して、さまざまな抗生物質に耐性の異種の細菌および細菌株を検出するように適応させ得ることは理解されるであろう。抗生物質耐性の獲得に関する情報は、例えば、Toleman et al.,(2006)、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 58:1−6、Handwerger et al.,(1995)、Antimicrobial Agents And Chemotherapy,pp.2446−2453、Launay et al.,(2006)、Antimicrobial Agents And Chemotherapy,pp.1054−1062で見ることができ、これらのすべては、すべての目的のために、および特に細菌の抗生物質耐性の獲得に関する教示のために、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
一態様では、本発明は、試料中のメチシリン耐性細菌の存在を検出するためのサイクル閾値アッセイを提供する。さらなる態様では、そのようなアッセイを使用して、検出されたメチシリン耐性細菌が、黄色ブドウ球菌(「Sブドウ球菌」)であるかどうかを判断することもできる。さらに、本発明は、黄色ブドウ球菌の異なる菌株を識別し、試料中に存在する菌株が、以前に特定および/または配列されなかった、発生中の菌株であるかどうかを判断する方法およびアッセイを提供する。
【0029】
一態様では、本発明のサイクル閾値アッセイは、細菌ゲノム内の3つの異なる座位を対象とした増幅反応を使用する。MRSAの検出の1つの例示的な態様では、これらの3つの異なる座位は、(i)mecA遺伝子、(ii)SCCmec挿入カセットとorfX遺伝子との間の架橋領域、および(iii)orfXではない、黄色ブドウ球菌特異的遺伝子である。別の例示的な実施形態では、メチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)の領域が増幅され、この領域は、挿入カセットが挿入されるが、その挿入カセットを有さない位置周辺のorfX遺伝子の領域である(この領域は、本明細書において、「MSSA−orfX」とも称される)。これらの例示的な実施形態では、それぞれの座位の増幅産物が出現するサイクルは、MRSAが、試料中に存在するかどうかを示す。本明細書に使用する、増幅産物が「出現する」サイクルは、概して、増幅産物を検出可能なサイクルを指し、例示的な実施形態では、産物は、当該技術において周知であり、本明細書でさらに記載する方法を使用して、増幅産物を検出するのに十分な濃度を蓄積する、第1のサイクル数で、「出現する」。さらなる実施形態では、サイクル数は、存在するMRSAの菌株、および任意の他の非mec耐性ブドウ球菌が、試料中に存在するかどうかに関する情報を提供することもできる。
【0030】
本発明の方法を使用して、臨床試料(例えば、鼻汁、全血、血清、プラズマ、脳脊髄液、尿、リンパ液、および気道、腸管、および尿生殖器のさまざまな外分泌物、涙、唾液、乳液等の体液、ならびに、白血球、悪性組織、羊水および絨毛膜絨毛)、環境試料、微生物培養、微生物コロニー、組織、および細胞培養を含むが、これらに限定されない、さまざまな発生源から得た試料から、細菌を検出することができる。試料は、食物、表面(床、テーブル等)、および浮遊微小粒子(花粉および埃を含むがこれらに限定されない)から得てもよい。本発明に使用する試料は、純試料または不純試料であり得る。本発明に使用する試料は、細菌の2つ以上の異なる菌株からの混合物を含み得る。
【0031】
一実施形態では、試料が得られると、ポリヌクレオチド配列は、試料から直接分析され得る。別の実施形態では、DNA等のポリヌクレオチドを、まず、当該技術において周知の方法を使用して試料から抽出し、次いで、本発明のアッセイに使用する。
サイクル閾値アッセイ
【0032】
本発明は、サイクル閾値アッセイを使用して、抗生物質耐性細菌を検出し、分析する方法を提供する。一般的に、本発明のサイクル閾値アッセイは、複数のサイクルの増幅反応を使用し、他の共増幅された断片に対する特定の増幅産物が出現するサイクルは、試料中に存在する細菌株および細菌種における情報を提供することができる。また、サイクル閾値アッセイは、メチシリン耐性細菌の菌株等を含むが、これに限定されない、特定の抗生物質耐性菌株の存在における情報を提供することができる。本発明のサイクル閾値アッセイを、主に、リアルタイムPCRに関して、本明細書に記載するが、他の鋳型ベースの増幅反応を、当該技術において周知であり、本明細書にさらに記載する方法を使用して、本発明に従う使用のために適応させ得ることは理解されるであろう。
【0033】
「検出し、分析する」という用語には、特定の細菌種または細菌株の存在を確認すること、ならびに、異なる細菌種と細菌株とを識別することが含まれる。該用語には、試料中の異なる細菌種または細菌株の濃度または相対濃度を判断することも含まれる。
【0034】
一態様では、増幅反応は、細菌ゲノムの少なくとも3つの異なる座位からのヌクレオチド断片が増幅されるように、提供される。それぞれの座位からの断片が出現するサイクル数を測定して、単一の細菌種(単一菌株)を含む試料と、異なる細菌種および/または菌株の混合物を含む試料とを識別することが可能である。概して、試料が、異なる細菌株または細菌種の混合物を含む場合、および異なる菌株または種が、これらの相対的な濃度において、少なくとも10倍の倍数の差異を有する場合は、1つ以上の細菌種または細菌株において認められる座位からの増幅産物は、単一の細菌種または細菌株においてのみ認められる座位からの増幅産物から、著しく離れた(4サイクル以上)サイクル数で出現する。しかしながら、単一種または単一菌株のみが、試料中に存在する場合(濃度において、10倍未満の倍数の差異を有する細菌株または細菌種の混合物がある場合)は、すべての座位からの増幅産物は、複数のサイクルの増幅サイクルと実質的に同一の(3サイクル以内)時点で出現する。
サイクル閾値アッセイ:MRSA
【0035】
一態様では、本発明のサイクル閾値アッセイを使用して、試料中のMRSAを検出し、分析する。本明細書に使用する「MRSA」という用語は、機能的mecA遺伝子を含むブドウ球菌カセット染色体mec(SCCmec)元素を獲得することによって抗生物質メチシリンの効果に耐性である、黄色ブドウ球菌の任意の菌株または亜株を指す。例示的なMRSADNA配列を、Genebank受入番号NC_02745に記載する。
【0036】
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の菌株は、mecA遺伝子を保有するブドウ球菌カセット挿入(SCCmec)元素の獲得により、MRSA菌株になることが明らかになっている。このカセットは、概して、他のブドウ球菌および非ブドウ球菌から得られるが、これに限定されるわけではない。mecA遺伝子は、特定のブドウ球菌株のメチシリン耐性特性を提供する。mecA遺伝子は、細胞がβラクタム抗生物質に曝露されるときに、正常なPBPの生合成機能を引き継ぐ、βラクタム耐性ペニシリン結合タンパク質(PBP)をコード化する。
【0037】
1つの例示的な実施形態では、本発明は、(i)mecA遺伝子座、(ii)黄色ブドウ球菌特異的遺伝子座位、および(iii)SCCmec領域の3′端部とorfX遺伝子との間の「架橋領域」の座位からの、ポリヌクレオチド配列の増幅(本明細書で「断片」とも称される)の方法および組成物を提供し得る。本実施形態では、試料が、架橋領域のプライマーのいずれかによって、検出不可能なMRSA菌株を含む場合(つまり、以前に特定および/または配列されなかった、新たに発生する菌株である)、mecA増幅産物および黄色ブドウ球菌に特異的な増幅産物は、サイクル数と同一または実質的に同一で、(例えば、それぞれの方向で3サイクル以上離さず)出現する。
【0038】
mecA断片およびブドウ球菌特異的遺伝子断片が、実質的に異なるサイクル数(例えば、いずれか一方に4サイクル以上離れている)で出現する場合は、これは、試料が、黄色ブドウ球菌および別のメチシリン耐性細菌の両方を含み、これらの濃度において、少なくとも10倍の差異を有する、混合された細菌試料であることを示す。出現のサイクル数におけるこの差異は、概して、細菌集団の両方から増幅されるmecA断片の結果であり、黄色ブドウ球菌特異的遺伝子断片は、黄色ブドウ球菌からのみ増幅され得る。
【0039】
別の例示的な実施形態では、本発明のサイクル閾値アッセイは、(i)mecA遺伝子座、(ii)黄色ブドウ球菌特異的遺伝子座位、および(iii)SCCmec元素を含まない、MSSA細菌のSCCmec挿入部位周辺のorfX領域(本明細書では、「MSSA−orfX領域」と呼ぶ)からの断片の増幅の方法および組成物を提供する。本実施形態では、ブドウ球菌特異的断片が、MSSAorfX領域断片よりも4サイクル以上早く出現する場合は、これは、試料がMSSAおよびMRSA細菌の両方の混合物を含み、これらの濃度において、少なくとも10倍の差異を有することを示す。その根拠は、orfX遺伝子断片が、MSSA細菌からのみ増幅された配列を反映し、ブドウ球菌特異的断片が、組み合わされたMSSAおよびMRSA細菌から増幅された配列を反映することである。
【0040】
別の実施形態では、ブドウ球菌特異的断片が、実質的に、MSSA−orfX遺伝子断片と同一のサイクル(つまり、いずれかの方向に3サイクル以上離れない)で出現する場合は、試料が、MRSAを含まない代わりに、MSSA細菌および非mec耐性ブドウ球菌の混合物を含むことを示す。これは、MSSA−orfX増幅産物およびブドウ球菌特異的増幅産物の両方が、試料中のMSSAにのみ由来するためである。また、試料中のmec耐性細菌の濃度が、試料中のMSSA細菌の濃度よりも、少なくとも10倍異なる場合は、mecAは、MSSA−orfXおよびブドウ球菌特異的断片からの個々の集団から増幅されるため、mecAは、MSSA−orfXおよびブドウ球菌特異的断片から、少なくとも4サイクル離れたサイクル数で出現する。
【0041】
MSSAおよび非メチシリン耐性ブドウ球菌が、同様の濃度で試料中に存在する珍しい場合では、MSSA−orfXおよびブドウ球菌特異的断片の両方は、MSSAのみに由来する増幅された配列を反映し、互いから実質的に同一のサイクル数(例えば、3サイクル以上離れない)で出現するはずである。また、mecA断片が、同様の濃度の非メチシリン耐性ブドウ球菌のみに由来する増幅された配列を反映するため、他の2つの断片と実質的に同一のサイクル数(例えば、3サイクル以上離れない)でも出現するはずである。
【0042】
本発明に従い、サイクル数分析は、手動で、またはそのような目的のために設計された器具およびソフトウエアを使用して実施し得る。本発明のサイクル数分析を実施するための手動化および自動化方法は、当該技術において周知であり、本明細書にさらに記載する。
【0043】
一実施形態では、サイクル閾値アッセイ内のすべての増幅反応は、試料の同一のアリコート中で実施される。別の実施形態では、1つ以上の増幅反応が、試料の異なるアリコート中で実施される。
【0044】
以下は、抗生物質耐性細菌を検出するために、サイクル閾値アッセイ、ならびに本明細書に記載する他のアッセイに使用することができる、プライマーの特質をより詳細に記載する。
mecAを対象としたプライマー
【0045】
一態様では、ブドウ球菌ゲノムのmecA領域を対象としたプライマーを、本発明のサイクル閾値アッセイに提供する。本明細書に使用する、特定の領域、またはポリヌクレオチド配列を「対象とした」プライマーは、概して、特定の領域、またはポリヌクレオチド配列を増幅することが可能なプライマーを指す。一実施形態では、そのようなプライマーは、特定のゲノム領域またはポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする、および/またはこれらにアニールすることができる。これらのプライマーは、特定のゲノム領域、またはポリヌクレオチド配列に完全に相補的であり得る、もしくは、これらは、より少ない相補性を有するにも関わらず、それでもなお、適切な領域にアニール/ハイブリダイズし、増幅反応の開始点となることが可能である。本発明のプライマーは、ハイブリダイゼーション反応におけるプローブとしても使用し得る。
【0046】
一実施形態では、本発明のmecAプライマーは、GenBank受入番号X52593に記載されているとおり、mecA遺伝子にハイブリダイズすることができる。さらなる実施形態では、本発明のmecAプライマーは、配列番号10〜11で示す配列を有する。
【0047】
一実施形態では、本発明に従い使用したmecA領域を対象としたプライマーは、配列番号10〜11と100%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、プライマーは、配列番号10〜11と、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、および99%の配列同一性を有する。
SCCmecとorfXとの間の架橋領域を対象としたプライマー
【0048】
一態様では、本発明の方法は、SCCmecの3′末端と、orfX遺伝子の隣接する結合領域との間の架橋領域を対象としたプライマーを使用する。
【0049】
高度な多型性が、SCCmecの3′末端およびorfX遺伝子の隣接する結合領域の両方に存在し、それが、MRSAの少なくとも39個の異なる菌株の分化の原因となることは理解されるであろう。例えば、MRSAのタイプIIIの菌株は、SCCmecに独自のヌクレオチド配列を有し、タイプIIは、Huletskyら(米国特許第20050019893号)によって、さらに詳しく記載される、SCCmecの右終端部への102ヌクレオチドの挿入を有する。MRSAの異なる菌株に関する配列情報は、Ito et al, (2001), Antimicrob.Agents Chemother. 45:1323−1336、Hiramatsu et al, (1996), J. Infect. Chemother. 2:117−129、およびMa et al,(2002), Antimicrob. Agents Chemother. 46:1147−1152、ならびに、Huletsky et al,(米国特許第20050019893号)で、見つけることができ、これらのすべては、すべての目的のため、および、特に、MRSAの異なる菌株の配列に関する教示のために、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
したがって、本発明は、最も広い宿主域の菌株(タイプI−IV)および新たに発生する菌株を含む、MRSAの異なる菌株における架橋領域を検出することが可能な、プライマーのバッテリー(本明細書において、架橋プライマーとも称される)の使用を検討する。
【0051】
架橋領域を対象とした例示的なプライマーを、配列番号2〜8で示す。一実施形態では、少なくとも2つの架橋プライマーを、本発明のアッセイに使用する。さらなる実施形態では、少なくとも5つの架橋プライマーを、本発明のアッセイに使用する。またさらなる実施形態では、約3〜約30、約5〜約25、約7〜約20、約9〜約15、および約10〜約12個の架橋プライマーを、本発明に従い、使用する。
【0052】
一実施形態では、架橋領域を対象としたプライマーは、配列番号2〜8と、100%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、プライマーは、配列番号2〜8と、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、および99%の配列同一性を有する。
MSSA−orfXを対象としたプライマー
【0053】
本明細書に記載する一態様では、本発明は、SCCmec元素を含まないMSSA細菌で独自に見られる、SCCmec挿入部位周辺のorfX領域を対象としたプライマーセットを使用して、座位を増幅させるアッセイを提供する。この領域は、本明細書において、「MSSA−orfX」とも称される。MSSA−orfXを含むDNA断片を増幅することが可能な例示的なプライマーを、配列番号2および24で示す。
黄色ブドウ球菌特異的座位を対象としたプライマー
【0054】
MRSA等の急速に進行する細菌の従来の検出方法の主要な弱点は、1つまたは2つの座位の増幅が、特に試料が、標的細胞の新たに発生する菌株を含むときに、偽陰性を生じる得ることである。1つの例示的な態様では、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的座位を含む3つの異なる座位の増幅を介し、そのような偽陰性を回避する方法および組成物を提供する。一実施形態では、黄色ブドウ球菌特異的座位は、細菌ゲノムのorfXまたは架橋領域内ではない。黄色ブドウ球菌特異的遺伝子の例には、nuc、Sa442、およびfemBが含まれるが、これらに限定されない。nucポリヌクレオチド配列を含む、DNA断片を増幅することが可能な例示的なプライマーは、配列番号18および19で示す。Sa442ポリヌクレオチド配列を含む、DNA断片を増幅することが可能な例示的なプライマーを、配列番号13および14で示す。
【0055】
一態様では、第3の黄色ブドウ球菌特異的座位の増幅により、MRSAの最も広宿主域の菌株だけでなく、新たに発生する菌株を含む、MRSAの他の菌株も検出する、サイクル閾値アッセイの精度を依然として保持しながら、SCCmecとorfXとの間の架橋領域を対象としたプライマー(例えば、配列番号2〜8のプライマー)の使用をより少なくすることが可能になる。架橋プライマーを単独に使用して、そのような高精度を達成することは、膨大な数の付加的な架橋プライマーの使用を必要とする可能性があり、その結果、多重PCR反応の有効性および効率を減少し得る。
内部対照として使用するプライマー
【0056】
本発明は、PCR反応成分(つまり、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド等)の能力を確認し、DNA抽出法が、偽陰性をもたらし得るいかなるPCR阻害物も含まないことを確認するための、内部対照も含み得ることを理解されるものとする。したがって、本発明は、細菌ゲノムの標的領域に無関係のポリヌクレオチド配列の増幅を含む、アッセイを提供する。例えば、ハウスキーピング遺伝子に関連したもの、またはβグロビン等のよく特徴付けられた遺伝子等のヒトポリヌクレオチド配列を、本発明のアッセイに、内部対照として使用し得る。内部対照として使用し得る例示的なプライマーを、配列番号16および17で示す。
【0057】
一実施形態では、そのような内部対照の座位の増幅反応を、本発明のサイクル閾値アッセイの他の増幅反応と同一の試料のアリコート中で実施する。別の実施形態では、内部対照増幅反応を、サイクル閾値アッセイの他の増幅反応と異なる試料のアリコート中で実施する。
サイクル閾値アッセイ:バンコマイシン
【0058】
メチシリン耐性細菌の検出および分析について上述のとおり、本発明は、バンコマイシンを含む、他の抗生物質耐性細菌の検出および分析の同様の方法および組成物を含む。
【0059】
多くの種類の抗生物質耐性の場合のように、バンコマイシン耐性は、機能的van遺伝子を含む元素の細菌ゲノム内への挿入により与えられる。本発明のサイクル閾値アッセイを使用して、van遺伝子の少なくとも一部を含む、細菌ゲノム領域の検出を介して、バンコマイシン耐性である細菌を検出および分析することができる。1つの例示的な実施例では、本発明のサイクル閾値アッセイは、van遺伝子領域を増幅することが可能なプライマーを使用する。そのようなプライマーは、本明細書に記載し、当該技術において周知の方法に従い、設計される。1つの例示的な実施例では、そのようなプライマーは、van遺伝子の一部に相補的であり得る。別の例示的な実施例では、そのようなプライマーは、van遺伝子領域の外側のポリヌクレオチド配列に相補的であり得るにも関わらず、van遺伝子領域を増幅することが可能である。van遺伝子領域は、当該技術において周知であり、バンコマイシン耐性は、例えば、vanA、vanB1、およびvanB2を含む、多くの遺伝子によって与えられる。
【0060】
さらなる実施形態では、本発明のサイクル閾値アッセイは、van、ならびに細菌ゲノム内の他の2つの座位を増幅することが可能なプライマーを使用する。そのような実施形態において増幅された他の2つの座位には、van領域と挿入ポイントとの間の架橋領域、ならびに、種および/または菌株に特異的な細菌ゲノム領域が含まれ得る。例示的な架橋領域のポリヌクレオチド配列については、Launay et al., (2006) Antimicrob. Agents and Chemother. 50(3):1054−62を参照し、これは、すべての目的のために、および特にバンコマイシン耐性細菌の菌株における標的ポリヌクレオチド配列の開示のために、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれ、これらの一部は、配列番号25〜38として図1に記載される。図1に記載するプライマーの配列に相補的なプライマーは、本明細書に開示する、サイクル閾値アッセイ、および本発明の三重座位アッセイに使用し得る。一部の実施形態では、そのようなプライマーは、図1に記載する配列(配列番号25〜38)と、100%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、プライマーは、配列番号25〜38と、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、および99%の配列同一性を有する。
【0061】
本発明の方法に従い、増幅することが可能な別の座位は、獲得したバンコマイシン耐性を有する特定の細菌種または細菌株に特異的な遺伝子座位である。例えば、バンコマイシン耐性は、黄色ブドウ球菌、オルスコビア・ツルバタ、アルカノバクテリウム・ヘモリティクム、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・ガロリティカス、ストレプトコッカス・ルテティエンシス、バチルス・サーキュランス、パエニバチルス、ロドコッカス、エンテロコッカスの菌株、ならびにクロストリジウム属、およびエガセラ・レンタに属する嫌気性細菌内で検出されている。本発明のサイクル閾値アッセイには、これらの菌株に特異的な遺伝子および座位を増幅することが可能なプライマーが含まれ得る。したがって、菌株特異的座位を対象としたプライマーを、架橋領域およびvan遺伝子を対象としたプライマーと共に、本明細書に記載のサイクル閾値アッセイを使用して、試料中のバンコマイシン耐性細菌の存在を検出し、試料中のバンコマイシン耐性細菌種および/または細菌株を特定することができる。
三重座位アッセイ
【0062】
本発明の三重座位アッセイは、サイクル閾値アッセイについて本明細書に記載する増幅反応と同様の増幅反応を使用する。本発明の三重座位アッセイでは、3つの異なる座位を対象としたプライマーを、増幅反応に使用して、3つの座位のうちのどれが、試料中に存在するかを判断する。検出された座位の組み合わせは、抗生物質耐性細菌の菌株が、試料中に存在するかどうかの情報を提供する。さらなる実施形態では、検出された座位の組み合わせは、異なる細菌株および/または細菌種が、試料中に存在するかどうかの情報も提供する。
【0063】
一態様では、本発明の三重座位アッセイは、(i)抗生物質耐性を与える遺伝子を含む領域、(ii)抗生物質耐性を与える遺伝子と、その遺伝子を含む元素が一般的に挿入されるゲノム内の地点との間の「架橋領域」、および(iii)菌株特異的遺伝子を含む領域、を増幅する。
【0064】
1つの例示的な態様では、本発明は、MRSAと試料中の細菌を保有する他のmecA遺伝子とを識別するのに使用し得る、三重座位アッセイを提供する。本発明の三重座位アッセイは、偽陰性または偽陽性結果をもたらす可能性がより低いため、試料中のMRSAを検出するために従来使用されていた方法よりも利点を有する。また、本発明のアッセイは、新たに出現するMRSAの菌株を特定し、これらの菌株を、他の黄色ブドウ球菌種と識別することが可能である。
【0065】
一態様では、本発明の三重座位アッセイは、(1)mecA領域の少なくとも一部、(2)orfX配列の少なくとも一部、および(3)orfXではないブドウ球菌特異的遺伝子の少なくとも一部である、細菌ゲノムの3つの異なる座位を増幅させる、方法および組成物が含まれる。一実施形態では、これらの座位からのポリヌクレオチド配列を、細菌ゲノムのこれらの領域を対象とした、本明細書に記載するプライマー等のプライマーを使用して増幅させる。別の実施形態では、3つの座位の1つ以上の増幅産物を、これらの領域にハイブリダイズすることが可能なプローブを使用して検出する。そのようなプローブは、増幅反応に使用するプライマーと同一または異なる配列を有し得、当該技術において既知の方法を使用して、これらの座位の存在を検出するために使用することができる。
【0066】
一態様では、本発明の三重座位アッセイで検出された3つの座位の組み合わせは、MRSAが試料中に存在するかどうか、mecAを保有する非黄色ブドウ球菌が試料中に存在するかどうか、およびMSSAが試料中に存在するかどうかの情報を提供する。さらなる態様では、三重座位アッセイは、試料中に存在するMRSAの菌株が、新たに出現した菌株であるかどうか特定する。
【0067】
アッセイで調べた3つの座位の、本発明の1つの例示的な態様に従い、2つのDNA配列(mecAポリヌクレオチド配列を含む第1の配列、および架橋領域を含む第2の配列)を増幅させる。両配列の検出は、試料中に存在する黄色ブドウ球菌が、SCCmecおよびmecA遺伝子を有する黄色ブドウ球菌を含み、メチシリンに耐性である可能性が高いことを示す。mecA配列のみの検出は、試料が、mecA遺伝子を保有する非黄色ブドウ球菌の1つ以上の菌株を含み、メチシリン耐性である可能性が高いことを示す。架橋配列のみの検出は、mecA遺伝子(つまり、MSSA)を含む、MRSAタイプのSCCmecを含まない黄色ブドウ球菌が、試料中に存在することを示す。以下の表1は、本発明の本態様による三重座位アッセイの、起こり得る結果の概要の一部を示す。
【表1】

【0068】
図1に見られるように、「A」、「C」、または「D」の結果の場合には、明確な結論が得られ、さらなる分析は不要であり、「A」の結果の場合には、試料がMRSAを有すると推定することができる。「C」または「D」の結果の場合には、試料は、MRSAを含まない可能性が高いと推定することができる。しかしながら、Bの結果の場合には、いかなる精度でも推論することはできない。そのような不明瞭な結果の場合には、本明細書に記載する、サイクル閾値アッセイを使用して、試料中に存在する細菌をさらに特定することができる。
【0069】
別の例示的な態様では、本発明は、mecAポリヌクレオチド配列、orfX遺伝子ではない黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列(本明細書において、「SA」とも称される)、およびSCCmec元素を含まないメチシリン感受性黄色ブドウ球菌内に見られ得る、SCCmecの統合部位周辺のorfX遺伝子のorfXポリヌクレオチド配列(本明細書において、「MSSA−orfX」とも称される)の座位を増幅する方法および組成物を提供する。第3の配列の非検出を伴う最初の2つの配列の検出は、試料が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(つまり、MRSA)を含むことを示す。mecA配列の非検出を伴うSA特異的配列およびMSSA−orfX配列の検出は、試料が、非メチシリン耐性である黄色ブドウ球菌(つまり、MSSA)を含むことを示す。mecAおよびMSSA−orfX配列の検出、ならびに、SA配列の欠失は、試料が、変異したMSSAを含み、黄色ブドウ球菌以外のメチシリン耐性細菌をも含むことを示す。領域のうちのひとつの増幅産物の検出、および他の2つの領域からの増幅産物の欠失は、試料が、MRSAを含まないことを示す。
【0070】
本発明の三重座位アッセイにおける、それぞれの座位の増幅反応は、同一の管内(つまり、試料の単一のアリコートを使用して)、または、2つ以上の個別の管内(つまり、試料の第2のおよびまたは第3のアリコートを使用して)で、実施し得る。1つの例示的な実施例では、3つの配列のすべての増幅を、同一の管内で同時に(つまり、多重反応として)実施する。
【0071】
以下の表2は、本発明の本態様によりアッセイの、起こり得る結果の概要の一部を提示する。
【表2】

【0072】
表2に見られるように、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、または「G」の結果の場合には、明確な結論が得られ、さらなる分析は不要であり、「A」の結果の場合には、試料がMRSAを含むことを推測することができる。「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、または「G」の結果の場合には、試料が、MRSAを含む可能性が高いことを推測することができる。しかしながら、Hの結果の場合には、混合試料は、MSSAおよび、mecA遺伝子を保有する1つ以上の細菌株を含むことは明らかであるが、メチシリン耐性細菌が、MRSA、非黄色ブドウ球菌、または両方を反映するかどうかは不明である。Hの結果等の不明瞭な結論の場合には、本発明のサイクル閾値アッセイを使用して、試料中に存在する細菌を特定することができる。
【0073】
一実施形態では、本発明の三重座位アッセイを使用して、試料中の細菌の異なる株を識別することができる。図2に示すとおり、MRSAおよびMSSA細菌を、架橋領域、mecA遺伝子領域、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列(本実施形態では、nuc遺伝子)、およびヒトベータグロビンポリヌクレオチド配列(内部対照として使用される)を対象とした増幅反応の産物の検出に基づき、識別することができる。MRSA試料中では、4つの増幅産物のすべてが検出された。一方、MSSA試料中では、黄色ブドウ球菌特異的および内部対照のヒトベータグロビンポリヌクレオチドのみが検出された。
【0074】
同様に、図3は、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR−CoNS)とメチシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MS−CoNS)を識別するアッセイの結果を示す。さらに、これらの実験では、増幅反応は、架橋領域、mecA遺伝子領域、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列(本実施形態では、nuc遺伝子)、およびヒトベータグロビンポリヌクレオチド配列(内部対照として使用する)を対象とした。この場合、MR−CoNSを含む試料で、mecA遺伝子ポリヌクレオチド配列および内部対照ポリヌクレオチド配列が検出され、MS−CoNSを含む試料中で、内部対照ポリヌクレオチド配列のみが検出された。したがって、本発明のアッセイは、MRSA、MSSA、MR−CoNS、およびMS−CoNS細菌とを識別する能力を提供する。
三重座位アッセイの利点
【0075】
本明細書に記載するとおり、本発明の三重座位アッセイは、抗生物質耐性細菌を検出する従来の方法よりも正確である。特に、三重座位アッセイは、二重座位または単一座位アッセイと比較すると、偽陽性および陰性結果をもたらすことが非常に少ない。
【0076】
一般的に、mecA遺伝子および黄色ブドウ球菌特異的染色体配列の検出に基づく二重座位アッセイ(例えば、Reischlet al., J. Clin. Microbiol. 38:2429―2433を参照)は、mecA遺伝子が、黄色ブドウ球菌およびCoNS種の両方に広く分布するため、MRSAを、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR−CoNS)と識別する上で、問題に直面することが多い。90%以上の鼻腔用スワブがブドウ球菌(通常、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)を含み、70〜80%のCoNSが、MR−CoNSであるため(Becker et al, (2006), J. Clin. Microbiol. 44:229−231、Diekema et al,(2001), Clin. Infect. Dis. 32(Suppl. 2):S114−S132)、MSSAおよびMR−CoNSを含む多くの混合群の試料は、誤ってMRSAと特定され得る。その結果、二重座位アッセイは、低陽性予測値(PPV)を有する、高確率の偽陽性MRSAにより特徴付けられ、通常、混合細菌群を潜在的に含む標本に適用することができない。
【0077】
単一座位アッセイは、二重座位アッセイにおける上述の難点を克服することが示唆されている。単一座位アッセイは、一般的に、黄色ブドウ球菌特異的orfX遺伝子に隣接して挿入される、SCCmec元素の右端の検出に基づく(例えば、Huletsky et al, (2004)、J. Clin. Microbiol. 42:1875−1884を参照)。しかしながら、MRSAの新しい菌株は、この接合の両側に、突然変異で絶えず発生する(Hansse et al., (2004), Antimicrobial Agents Chemotherapy, 48:285−96、Sundsfjord et al., (2004),APMIS,112:815−8137、Witte et al., (2005),Eur J Microbiology and Infectious Diseases.,24:1−5)。そのようなものとして、MRSAの単一座位アッセイは、偽陰性によって特徴付けられる。さらに、単一座位アッセイは、mecA遺伝子を含むSCCmec元素と、mecA遺伝子を保有しないSCCmecとを識別することができない。
【0078】
Hiramatsuら(米国特許第6,156,507号)は、SCCmec挿入がない場合の、SCCmecの統合部位周辺のorfX遺伝子の増幅を検出するように設計された、単一座位アッセイを記載する。Hiramatsuらのアッセイでは、陰性所見は、MRSAの存在を示すと解釈される。陰性所見は、MSSAおよびMRSAのいずれも含まない患者の試料からも得ることが出来るため、陰性結果に基づくアッセイは、MRSAの存在を判断するのに不十分な方法である。さらに、Hiramatsuらが指摘するように、MRSAおよびMSSAの混合物を含む患者の試料は、これらの試験において陽性結果をもたらし、誤ってMRSAが存在しないと解釈され得る。また、研究により、Hiramatsuの単一座位アッセイは、I−V以外のSCCmecタイプを含むMRSA菌株を反映する臨床試料から、正確にMRSAを検出できなかったため、臨床妥当性に欠けることが明らかになった(例えば、Hansse et al., (2004), Antimicrobial Agents Chemotherapy, 48:285−96、Sundsfjord et al., (2005),APMIS, 112:815−8137,2004、Witte et al., (2005),Eur J Microbiology and Infectious Diseases.,24:1−5を参照)。
【0079】
単一座位アッセイの別の弱点は、そのようなアッセイが、mecA遺伝子を保有するSCCmec元素(MRSA)を含む細菌かmecA遺伝子を保有しないSCCmec元素(複数のMSSA菌株に存在するSCCcap等)を含む細菌かを識別することができず、したがって、偽陽性を生じる得ることである。したがって、mecA遺伝子を含まないSCC元素を保有するMSSAを含む試料の単一座位アッセイは、偽陽性を生じ得る。偽陽性所見の可能性は、感染対策プログラムの一部として患者を検査する信頼性のある方法としての、単一座位アッセイの臨床的有用性を損ねる。実際に、単一座位アッセイを使用する多くの研究は、擬似−MRSAとして、偽陽性を表すMSSAの臨床例を報告する(Rupp,et al.,J Clinical Microbiology, 2006, 44:2317、Deplano et al., J Antimicrobial Chemotherapy 2000, 46:617−620、Corkill, et al. J Antimicrobial Chemotherapy 2004, 54:229−231、Lina et al. 1999, Clini. Infect. Dis. 29:1128−1132、Warren et al. J. Clin. Microbial. 42:5578−5581)。
【0080】
三重座位アッセイおよびサイクル閾値アッセイの両方を含む、本発明の方法は、MRSA等の抗生物質耐性細菌を検出する従来の方法よりも、精度が向上したことを示す。実施例3に図示するように、本発明の三重座位アッセイは、上述、ならびに実施例1および2に記載した単一または二重座位アッセイのいずれよりも大幅に向上した精度を表し、99.6%の感度および97.4%の特異性であることを示した。
増幅および検出の方法
【0081】
本発明のサイクル閾値および三重座位アッセイの両方には、ゲノムの選択した領域を増幅することが可能なプライマーを使用する、増幅反応が含まれる。「増幅することが可能」という用語は、細菌ゲノムの選択した領域を含む増幅産物を生成することが可能なプライマーを記載する。選択した領域を増幅することが可能なプライマーには、標的領域内の配列に相補的であるプライマーが含まれる。選択した領域を増幅することが可能なプライマーには、標的領域の少なくとも一部に重なる領域に相補的であるプライマー、ならびに標的領域の外側の領域に相補的であるにもかかわらず、標的領域を含む増幅産物を生成することが可能なプライマーも含まれる。そのようなプライマーは、当該技術において確立されている方法を使用して設計し得ることを理解されたい。
【0082】
本発明のアッセイに使用する増幅方法には、ポリヌクレオチド配列の標的部分を増幅することが可能な任意の方法が含まれる。そのような増幅方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、自家持続配列複製(3SR)、鎖置換増幅(SDA)、および分枝DNAシグナル増幅(bDNA)を含むが、これらに限定されない、増幅方法が含まれる。
【0083】
一実施形態では、PCRを、本発明のアッセイの増幅方法として使用する。PCRは、相補的核酸鎖にハイブリダイズし、標的DNA内で増幅される領域に隣接する、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用する、特異的DNA配列の酵素合成の試験管内技術である。(1)鋳型変性、(2)プラマーアニーリング、および(3)DNAポリメラーゼによるアニールしたプライマーの拡張を含む、一連の反応工程は、特異的断片の末端が、プライマーの5′末端によって定義される、特異的断片の指数関数の蓄積をもたらす。
【0084】
本明細書に使用する、「PCR」という用語には、誘導型の反応が含まれ、リアルタイムPCR、定量PCR、多重PCR、逆転写PCR等を含むが、これらに限定されない。反応体積は、約100ナノリットル(nl)〜約500マイクロリットル(μl)、約200nl〜約250μl、約500nl〜約200μl、約1μl〜約100μl、約10μl〜約80μl、約20μl〜約60μl、約5〜約30μl、約10〜約25μl、約30μl〜約40μlの範囲であってもよい。
【0085】
「リアルタイムPCR」は、反応の進行に応じて反応産物の量、つまり単位複製配列が、監視されるPCR方法を指す。主に反応産物を監視するために使用する検出化学によって、多くの異なる形態のリアルタイムPCRがあり、例えば、Gelfandら、米国特許第5,210,015号(「Taqman(登録商標)」、Wittwerら、米国特許第6,174,670号および第6,569,627号(SYBER(登録商標)Green等の挿入染料)、Tyagiら、米国特許第5,925,517号(分子指標)があり、これらのすべては、すべての目的により、および特にリアルタイムPCRに関する教示で参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。他の例示的な検出化学には、サソリプライマー、サンライズプライマー、およびエクリプスプローブが含まれるが、これらに限定されない。リアルタイムPCRの検出化学は、Mackayら、(2002) Nucleic Acids Reserach, 30:1292−1305で検討され、これは、すべての目的のため、および特にリアルタイムPCRの異なる検出化学の開示のため、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
「多重PCR」は、複数の配列が、同一の反応混合物内で同時に増幅されるPCRを指す(多色リアルタイムPCR)。概して、そのような方法では、増幅されるそれぞれの配列に異なるプライマーを使用する。
【0087】
「定量PCR」は、試料または標本中の1つ以上の特異的標的配列の存在量を測定するように設計されたPCRを指す。定量PCRには、そのような標的配列の絶対定量および相対定量の両方が含まれる。定量測定は、標的配列と別個に、またはそれと一緒に分析し得る、1つ以上の参照配列を使用して行う。参照配列は、試料または標本に内因性または外因性であり得、後者の場合では、1つ以上の競合鋳型を含み得る。典型的な内因性参照配列には、βアクチン、GAPDH、βミクログロブリン、リボソームRNA等の遺伝子の転写物の断片が含まれる。定量PCRの技術は、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる、以下の文献に例示されるとおり、当該技術の当業者に周知である。すなわち、Freeman et al,(1999) Biotechniques,26:112−126、Becker−Andre et al,(1989)、Nucleic Acides Research, 17:9437−9447、Zimmerman et al., (1996) Biotechniques,21:268−279、Diviacco et al, (1992) Gene,122:3013−3020。
【0088】
本発明の方法において、一般的に使用される増幅方法は、反応のそれぞれのサイクルにおける鋳型の増幅の開始点として、プライマーを使用する。そのような反応では、プライマーは、鋳型(本明細書において「標的」とも称される)ポリヌクレオチド上の相補的部位にアニールし、次いで、DNAポリメラーゼ等の酵素を使用して、鋳型ポリヌクレオチドの配列に沿って、プライマーを伸展させる。プライマーは、典型的に、約5〜約50、約10〜約40、約12〜約30、約20〜約25個のヌクレオチドの範囲の長さを有する。プライマーの長さは、典型的に、プライマーが、最適な選択で、標的ポリヌクレオチド配列に結合するように、選択される。
【0089】
概して、プライマーは、「順方向」プライマーおよび「逆方向」プライマーに相補的である鋳型ポリヌクレオチドの領域との間に位置する関心対象の増幅と共に、これらのプライマーを含む組として使用される。適切なPCRプライマーの組の設計および選択は、当該技術の当業者に周知のプロセスである。特異的な組のプライマー選択の自動化法も、当該技術においても周知であり、例えば、米国特許出願第20030068625号を参照されたい。一実施形態では、一組の増幅プライマーは、2つのプライマーとの間の距離(つまり、増幅の長さ)が、少なくとも5塩基対であるように、選択することができる。別の実施形態では、プライマーは、距離が、約5〜約50、約10〜約40、および約20〜約30の塩基対であるように選択される。一実施形態では、リアルタイムPCR方法から生じた単位複製配列は、約50〜約400bp、約75〜約300、約100〜約200、および約180〜約400bpである。
【0090】
一態様では、増幅反応の産物は、標識プライマーを使用して検出される。別の態様では、そのような産物は、鋳型核酸の特定の領域を対象としたプローブを使用して検出される。本発明のさらに別の態様では、アッセイは、分子指標ベースのアッセイである。分子指標は、均一溶液中の特異的核酸の存在を報告する、ヘアピン型オリゴヌクレオチドプローブである。これらが、標的物に結合するとき、内部消光されたフルオロフォアの蛍光を修復する立体配座の再構成を行う(Tyagi et al., (1998) Nature Biotechnology. 16:49)。本発明のアッセイに使用し得る例示的なプローブ配列を、配列番号1、9、12、15、および20で示す。
キット
【0091】
一態様では、本発明は、本明細書に記載するアッセイを実施するためのコンポーネントを含む、キットを提供する。
【0092】
一実施形態では、本発明は、リアルタイム増幅アッセイに使用するための反応混合物含む、キットを提供する。そのような反応混合物は、1つ以上の容器(PCR機械で使用する管等)内で反応を実施するためのすべてのコンポーネントを含む、安定化した混合物であってもよい。例示的な実施形態では、そのような安定化した反応混合物には、プライマー、蛍光標識されたプローブが含まれる。さらなる実施形態では、そのような混合物は、室温で保管できるように、安定化される。
【0093】
本発明のキットには、抗生物質耐性細菌を検出し、分析するための本発明のアッセイに使用するプライマーを含み得ることを理解するものとする。一実施形態では、本発明のキットには、MRSAの特定に使用するプライマーが含まれる。本発明のキットは、必要に応じて、本発明の1つ以上の単位のキットを含み得るパックとして提供され得る。パックには、キットの使用手順が添付され得る。パックには、実験補遺の製造、使用、または販売を規制する行政機関によって定められた形状の容器に関連する通知も提供され得、その通知は、機関による組成物の形状の承認を反映する。
【0094】
本発明のキットは、本明細書に記載するとおり、mecAおよび架橋領域からポリヌクレオチド配列を増幅するプライマーを含み得る。キットは、黄色ブドウ球菌特異的遺伝子のポリヌクレオチド配列を増幅するプライマー、および例えば、ヒト遺伝子をコード化し得る、内部対照として使用する領域を増幅するプライマーも含み得る。キットは、DNAポリメラーゼ、dNTP、マグネシウム、バッファ、および安定剤を含むがこれらに限定されない、PCR反応の他のコンポーネントも含み得る。
【0095】
一実施形態によれば、本発明のキットには、上述のとおり、PCR反応のコンポーネントを含む混合物が含まれる。さらなる実施形態では、そのような混合物は、少なくとも50%脱水される。脱水は、オーブン加熱、凍結乾燥、および真空脱水除去を含むが、これらに限定されない、当該技術において周知の任意の方法により達成され得る。さらなる実施形態によれば、本発明の増幅プライマーおよびプローブの少なくとも1つは、脱水前に、そのようなPCR反応混合物に組み込まれる。
【0096】
さらに別の実施形態によれば、DNAポリメラーゼ、dNTP、マグネシウム、および安定剤を含む反応成分、ならびに本発明のアッセイに使用される反応プライマーおよびプローブのすべては、少なくとも50%脱水され、少なくとも40日間分解せずに、室温で保管することができる、使用準備済みの混合物を形成し得る。そのような混合物は、マイクロ管、マイクロ管ストリップ、またはマルチウェルプレート内で保管し得る。そのような脱水成分を含むキットは、キャリーオーバーの二次汚染または実験誤差のリスクの減少により、訓練および経験が浅い検査技師による使用が可能となる。さらに、本発明のキットは、ドライアイスで梱包する必要なく輸送することができ、それにより、より簡単な配達が可能になる。
【0097】
本発明のキットの安定化された反応混合物の保存性能の例を、図4に示す。これらの実験では、室温で保管した反応混合物を、5週間および10週間の保管期間後に分析し、−20℃で保管した試料と比較した。図4Aは、RNase−P遺伝子増幅からの結果を示し、図4Bは、ヒトベータグロビン遺伝子増幅からの結果を示す。両方の増幅反応では、安定化された(室温保管)混合物は、5週間および10週間の両方の時点で、−20℃で保管された反応混合物と同様の結果を示した。
本発明の範囲に含まれる実施形態および組み合わせ
【0098】
一態様では、本発明は、試料中のメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。本態様では、該方法には、(i)プライマーが、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第1の組のプライマーを提供する工程、(ii)プライマーが、架橋領域の少なくとも一部に相補的である、第2の組のプライマーを提供する工程、(iii)プライマーが、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であり、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列はorfXポリヌクレオチドではない、第3の組のプライマーを提供する工程、(iv)第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物中の試料と合わせる工程、(v)複数のサイクルの増幅反応を、反応混合物で実施する工程、および(vi)mecA、架橋領域、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列のそれぞれの出現のサイクル数を判定する工程が含まれる。本態様では、サイクル数は、MRSAが、試料中に存在するかどうかを示す。
【0099】
上記に従い、本発明は、第1の組のプライマーが、配列番号10〜11のうちの少なくとも1つに従う配列を有する複数のプライマーを含む方法をさらに提供する。
【0100】
上述のいずれかに従い、本発明は、第2の組のプライマーが、配列番号2〜8のうちの少なくとも1つに従う配列を有する複数のプライマーを含む方法をさらに提供する。
【0101】
上述のいずれかに従い、本発明は、第3の組のプライマーが、配列番号13〜14、および18〜19のうちの少なくとも1つに従う配列を有する複数のプライマーを含む方法をさらに提供する。
【0102】
上述のいずれかに従い、本発明は、増幅反応が、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である方法をさらに提供する。
【0103】
上述のいずれかに従い、本発明は、試料を、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なプライマーと接触させる工程、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を増幅する工程、および増幅したヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を検出する工程の付加的工程を含む方法をさらに提供する。
【0104】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、nuc、Sa442、およびfemBから選択された成員である遺伝子の少なくとも一部である方法をさらに提供する。
【0105】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、nuc遺伝子の少なくとも一部である方法をさらに提供する。
【0106】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、Sa442遺伝子の少なくとも一部である方法をさらに提供する。
【0107】
別の態様では、本発明は、試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。本態様では、該方法には、(i)mecAポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、(ii)架橋領域のポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、および(iii)ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程が含まれる。本態様では、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、orfXポリヌクレオチドではない。本態様では、mecAポリヌクレオチド、架橋領域のポリヌクレオチド、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドのすべてが、試料中に存在する場合、MRSAは、試料中に存在する。
【0108】
上記に従い、本発明は、mecAポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程に試料上の増幅反応を実施する工程が含まれる方法をさらに提供する。この増幅反応は、第1の組のプライマーを使用し、第1の組のプライマーの大半は、mecAポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である。
【0109】
上述のいずれかに従い、第1の組のプライマーには、配列番号10〜11のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0110】
上述のいずれかに従い、本発明は、orfXポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程に試料上の増幅反応を実施する工程が含まれ、増幅反応は、第2の組のプライマーを使用し、第2の組のプライマーの大半は、orfXポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、方法をさらに提供する。
【0111】
上述のいずれかに従い、本発明は、第2の組のプライマーが、配列番号2〜8のうちの少なくとも1つを含む、方法をさらに提供する。
【0112】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程に試料上の増幅反応を実施する工程が含まれ、増幅反応は、第3の組のプライマーを使用し、第3の組のプライマーの大半は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、方法をさらに提供する。
【0113】
上述のいずれかに従い、本発明は、第3の組のプライマーが、配列番号13〜14、および18〜19のうちの少なくとも1つを含む、方法をさらに提供する。
【0114】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、nuc、Sa442、およびfemBから選択される成員である、遺伝子の少なくとも一部である、方法をさらに提供する。
【0115】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、nucである、方法をさらに提供する。
【0116】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、Sa442である、方法をさらに提供する。
【0117】
上述のいずれかに従い、本発明は、試料を、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なプライマーと接触させる工程、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を増幅する工程と、増幅したヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を検出する工程の付加的工程を含む、方法をさらに提供する。
【0118】
上述のいずれかに従い、本発明は、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列が、ハウスキーピング遺伝子の少なくとも一部を含む、方法をさらに提供する。
【0119】
上述のいずれかに従い、本発明は、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列が、βグロビン遺伝子の少なくとも一部を含む、方法をさらに提供する。
【0120】
上述のいずれかに従い、本発明は、3つのポリヌクレオチド配列のすべてが、同時に検出される、方法をさらに提供する。
【0121】
上述のいずれかに従い、本発明は、3つのポリヌクレオチド配列のそれぞれが、試料中に存在するかどうかを判断する工程は、任意の順序で連続して達成される、方法をさらに提供する。
【0122】
上述のいずれかに従い、本発明は、3つのポリヌクレオチド配列のそれぞれが、試料中に存在するかどうかを判断する工程は、試料の同一のアリコート中で達成される、方法をさらに提供する。
【0123】
上述のいずれかに従い、本発明は、3つのポリヌクレオチド配列のそれぞれが、試料中に存在するかどうかを判断する工程は、試料の異なるアリコート中で達成される、方法をさらに提供する。
【0124】
上述のいずれかに従い、本発明は、mecAポリヌクレオチドが試料中に存在し、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが試料中に存在するが、架橋領域のポリヌクレオチドは試料中に存在しない場合、試料は、非メチシリン耐性ブドウ球菌を含む、方法をさらに提供する。
【0125】
さらに別の態様において、上述のいずれかに従い、本発明は、試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。本態様では、該方法には、(i)第1の組のプライマーが、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第1の組のプライマーを提供する工程、(ii)第2の組のプライマーが、MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第2の組のプライマーを提供する工程、(iii)第3の組のプライマーが、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であり、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、orfXポリヌクレオチドではない、第3の組のプライマーを提供する工程、(iv)第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物内の試料と合わせる工程、(v)複数のサイクルの増幅反応を、反応混合物で実施する工程、および(vi)mecA、MSSA−orfX、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程が含まれる。本態様では、サイクル数は、MRSAが、試料中に存在するかどうかを示す。
【0126】
上述のいずれかに従い、本発明は、3つの組のプライマーのすべてが増幅反応において増幅産物を生成し、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の出現から少なくとも4サイクル離れたサイクルで発現する場合、試料は、MRSAおよびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の両方を含む、方法をさらに提供する。
【0127】
上述のいずれかに従い、本発明は、3つの組のプライマーのすべてが、増幅反応において増幅産物を生成し、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の出現から少なくとも3サイクル離れたサイクルで発現する場合、試料は、MSSAおよび非メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む、方法をさらに提供する。
【0128】
さらに別の態様において、上述のいずれかに従い、本発明は、試料中の細菌を特定する方法を提供する。この方法には、(i)mecAポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、(ii)MSSA−orfXポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程、および(iii)黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、試料中に存在するかどうかを判断する工程であって、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、orfXポリヌクレオチドではない、工程が含まれる。本態様では、試料中に存在する(a)、(b)、および(c)の組み合わせが試料中の細菌を特定する。
【0129】
上述のいずれかに従い、本発明は、mecAポリヌクレオチドおよびブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドの両方が、試料中に存在し、MSSA−orfXポリヌクレオチドが、試料中に存在しない場合、試料は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む、方法をさらに提供する。
【0130】
上述のいずれかに従い、本発明は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドおよびMSSA−orfXの両方が、試料中に存在し、mecAポリヌクレオチドが、試料中に存在しない場合、試料は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含むが、MRSAは含まない、方法をさらに提供する。
【0131】
上述のいずれかに従い、本発明は、mecAポリヌクレオチドおよびMSSA−orfXポリヌクレオチドの両方が、試料中に存在し、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、試料中に存在しない場合、試料は、非メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含むが、試料は、MRSAを含まない、方法をさらに提供する。
【0132】
上述のいずれかに従い、本発明は、mecAポリヌクレオチド、MSSA−orfXポリヌクレオチド、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドのうちの1つのみが、試料中に存在する場合、試料は、MRSAを含まない、方法をさらに提供する。
【0133】
上述のいずれかに従い、本発明は、試料が、細菌、単一菌株からの細菌、または1つ以上の菌株からの細菌の混合物を含み得ない、方法をさらに提供する。
【0134】
上述のいずれかに従い、本発明は、試料が、体液、鼻腔用スワブ、および組織から選択された成員である、方法をさらに提供する。
【0135】
上述のいずれかに従い、本発明は、mecAポリヌクレオチドが試料中に存在するかどうかを判断する工程、MSSA−orfXポリヌクレオチドが試料中に存在するかどうかを判断する工程、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが試料中に存在するかどうかを判断する工程のすべてが試料の個々のアリコート中で実施される増幅反応である、方法をさらに提供する。
【0136】
上述のいずれかに従い、本発明は、mecAポリヌクレオチドが試料中に存在するかどうか判断する工程、MSSA−orfXポリヌクレオチドが試料中に存在するかどうか判断する工程、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが試料中に存在するかどうか判断する工程のうちの2つ以上が試料の同一のアリコート中で実施する増幅反応である、方法をさらに提供する。
【0137】
別の態様では、上述のいずれかに従い、本発明は、試料中のMRSAを特定するキットをさらに提供し、そのようなキットは、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第1の組のプライマー、架橋配列の少なくとも一部に相補的な第2の組のプライマー、架橋配列ではない黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第3の組のプライマー、およびDNAポリメラーゼ酵素、dNTP、マグネシウム、および安定剤から選択される少なくとも1つの成員を含むことができる。
【0138】
別の態様では、上述のいずれかに従い、本発明は、試料中のMRSAを特定するキットをさらに提供する。そのようなキットには、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第1の組のプライマー、MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第2の組のプライマー、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、架橋配列ではない、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的な第3の組のプライマー、およびDNAポリメラーゼ酵素、dNTP、マグネシウム、および安定剤から選択された少なくとも1つの成員が含まれる。
【0139】
一態様では、上述のいずれかに従い、本発明は、試料中の抗生物質耐性細菌株を検出する方法をさらに提供する。この方法は、(i)抗生物質耐性を与える遺伝子の少なくとも一部から第1の増幅産物を生成することが可能な、第1の組のプライマーを提供する工程、(ii)架橋領域の少なくとも一部から第2の増幅産物を生成することが可能な、第2の組のプライマーを提供する工程、(iii)細菌株特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部から第3の増幅産物を生成することが可能な、第3の組のプライマーを提供する工程、(iv)第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物の試料と合わせる工程、(v)複数のサイクルの増幅反応を、反応混合物で実施する工程、および(vi)第1、第2、および第3の増幅産物のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程、を含むことができる。本態様では、サイクル数が、抗生物質耐性細菌の菌株が、試料中に存在するかどうかを示す。
【0140】
上述のいずれかに従い、本発明は、第1の組のプライマーを使用して増幅された遺伝子がバンコマイシンへの耐性を与える方法をさらに提供する。
【0141】
上述のいずれかに従い、本発明は、第1の組のプライマーを使用して増幅された遺伝子がメチシリンへの耐性を与える方法をさらに提供する。
【0142】
上述のいずれかに従い、本発明は、増幅された細菌株特異的ポリヌクレオチド配列が黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列である、方法をさらに提供する。
【0143】
上述のいずれかに従い、本発明は、増幅された架橋領域には、配列番号2〜8から選択された成員であるポリヌクレオチド配列が含まれる、方法をさらに提供する。
【0144】
本発明は、本発明の例示として提供される、以下の非制限的な実施例を参照することによってより理解され得る。以下の実施例は、本発明の所望の実施形態をより完全に説明するために提示するが、決して本発明の広範囲を制限するように解釈されてはならない。
【0145】
本発明は、具体的な実施形態を参照して開示するが、本発明の他の実施形態および変形が、本発明の忠実な精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。
【0146】
本出願において引用するすべての特許明細書、特許出願書、および他の出版物は、参照することにより、その全体が組み込まれる。
【実施例】
【0147】
概して、本明細書に使用する命名および本発明に使用する実験手順には、分子技術、生化学的技術、微生物学的技術、および組み換えDNA技術が含まれる。そのような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」 Sambrook et al, (1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」 Volumes I−III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, 「A Practical Guide to Molecular Cloning」, John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., 「Recombinant DNA」, Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) 「Genome Analysis: A Laboratory Manual Series」, Vols. 1−4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号、および第5,272,057号に示される方法論、「Cell Biology: A Laboratory Handbook」, Volumes I−III Cellis, J. E., ed. (1994)、「Oligonucleotide Synthesis」 Gait, M. J., ed. (1984)、
「Nucleic Acid Hybridization」 Hamees, B.D.,and Higgins S. J., eds. (1985)、「Transcription and Translation」 Hamees, B.D., and Higgins S. J., eds. (1984)、「A Practical Guide to Molecular Cloning」 Perbal, B., (1984)および「Methods in Enzymology」 Vol. 1−317, Academic Press、「PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications」, Academic Press, San Diego, CA (1990)を参照し、これらのすべては、本明細書に完全に示されるかのように、参照することにより、本明細書に組み込まれる。他の一般的な参考文献を、本書において提供する。その中の手順は、当該技術において周知であると考えられ、読者の利便性のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
実施例1:純粋培養試料を使用する、単一および二重座位アッセイ
【0148】
MRSAを検出する単一座位qRT−PCRアッセイを、Huletskyら(米国特許第20050019893号および米国特許第20060252078号)に基づく方法を使用して、実施した。このアッセイは、SCCmec:orfXの右先端接合部のハイブリダイゼーションのための複数のプライマーおよび二重標識プローブを使用する。ヒトβグロビンの検出を、内部対照として加えた。黄色ブドウ球菌orfX領域(配列番号1)に相補的な二重標識プローブを使用した。順方向プライマーは、ブドウ球菌orfX領域(配列番号2)に相補的であり、6つの逆方向プライマーは、SCCmec元素内のMREJ配列に相補的である。「MREJ」は、「多型右端接合部(poly−Morphic Right Extremity Junction)」を指す。Huleskyらの米国特許第20050019893号では、MREJは、突然変異する傾向がある、SCCmecカセットの右端に向かう配列であり、多くの異なるMRSA菌株は、これらのゲノムのこの領域において変化を示す。SCCmec遺伝子のタイプi、ii、iii、iv、およびv(配列番号3〜配列番号8)を使用した。Huletskyら(2004)のMREJのタイプiv(meciv511)へのハイブリダイゼーション用のプライマーの代わりに、それぞれ、meciv511の配列に重複する、わずかに異なる2つのプライマー(配列番号7および配列番号8)を使用した。この変更は、MREJのタイプIVの同等の検出を提供したが、非特異的バックグラウンド増幅を減少させた。1つのプローブ(配列番号15)、順方向プライマー(配列番号16)、および逆方向プライマー(配列番号17)から成る内部対照アッセイを、ヒトβグロビンを検出するために加えた。
【0149】
二重座位アッセイでは、Reischlら(2000)、J. Clin. Microbiol. 38:2429−2433に記載されるとおり、MRSAを検出するqRT−PCRアッセイを実施した。このアッセイは、プライマーおよびプローブを使用して、黄色ブドウ球菌特異的遺伝子Sa442およびmecA遺伝子を検出する。ヒトβグロビンの検出を、内部対照として加えた。二重標識プローブを、黄色ブドウ球菌特異的遺伝子Sa442の検出に、配列番号12で示す配列と共に使用した。二重標識プローブを、mecAの検出に、配列番号9で示す配列と共に使用した。ブドウ球菌特異的遺伝子Sa442(配列番号13〜14)に相補的な順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用した。mecA遺伝子(配列番号10〜11)に相補的な順方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用した。1つのプローブ(配列番号15)、順方向プライマー(配列番号16)、および逆方向プライマー(配列番号17)から成る内部対照アッセイを、ヒトβグロビンを検出するために、加えた。
【0150】
単一および二重座位アッセイの両方では、上述のプライマーを、標準のqRT−PCR反応混合物(AB遺伝子からのAbsolute(登録商標)QPCRMIX)に加え、周知のMRSA、MSSA、MS−CoNS、およびMR−CoNSの菌株のDNA試料で試験した。それぞれのアッセイを、150個の純粋培養試料(50個のMRSA、50個のMSSA、25個のMR−CoNS、および25個のMS−CoNS)で試験した。増幅および検出反応を、以下の標準qRT−PCRプロトコルに従い、Corbett Life Science社のRotorGene3000システムリアルタイムPCR装置を使用して、行った。
1.酵素活性およびDNA変性に対して、95℃で15分間
2.それぞれ以下の3工程を含む、50増幅サイクル:
工程1−95℃で10秒
工程2−56℃で30秒
工程3−72℃で15秒(工程3の最後に、4つの蛍光染料のそれぞれに対する測定値を取った)
【0151】
単一座位アッセイは、51個のSCC:orfX陽性結果をもたらし、そのうち49個は、MRSA(真陽性)であり、2個は、MSSA(偽陰性)であった。単一座位アッセイは、99個のSCC:orfX陰性結果をももたらし、そのうち1個は、MRSA(偽陰性)であり、48個は、MSSA(真陰性)、25個は、MR−CoNS(真陰性)、および25個は、MS−CoNS(真陰性)であった。単一座位アッセイは、純粋培養試料を検出する上で、98%の感度、98%の特異性、96.1%の陽性予測値、および99%の陰性予測値をもたらした。
【0152】
二重座位アッセイは、50個のSa442陽性mecA陽性結果をもたらし、そのうち50個は、MRSA(真陽性)であった。二重座位アッセイは、48個のSa442陽性mecA陰性結果をももたらし、48個すべてがMSSA(真陰性)であった。このアッセイは、25個のSa442陰性mecA+結果ももたらし、25個のすべてがMR−CoNS(MRSAに対して真陰性)であった。二重座位アッセイは、27個のSa442陰性mecA陰性結果ももたらし、そのうち25個は、MS−CoNS(真陰性)であり、そのうち2個は、MSSAであった(MRSAに対して真陰性であるが、Sa442遺伝子を含むはずであるMSSAに対して偽陰性である)。二重座位アッセイは、純粋培養試料を検出する上で、100%の感度、100%の特異性、100%の陽性予測値、および100%の陰性予測値をもたらした。
【0153】
上述の結果は、本発明に従って使用するプライマーを上手く使用し、ブドウ球菌の異なる種および菌株に対するゲノムの標的領域を増幅し得ることを示す。
実施例2:臨床患者の試料を使用してMRSAを、MSSA、MS−CoNSおよびMR−CoNSと識別する上での、単一および二重座位アッセイの精度の限界の実証
【0154】
qRT−PCR反応を、上述の実施例1に記載する単一座位アッセイおよび二重座位アッセイを使用して、混合群を含む培養したスワブから得られた患者のDNAの460個の試料で実施した。反応を、上述のとおり、標準qRT−PCR反応混合物(AB遺伝子からのAbsolute(登録商標)QPCR Mix)および上述の標準qRT−PCRプロトコルを使用して、Corbett Life Science社のRotorGene3000システムリアルタイムPCR装置を使用して実行する増幅および検出と共に、行った。
【0155】
すべての実行は、2つのNTC試料(鋳型対照ではない)、および周知のMRSA、MSSA、およびMR−CoNS対照を含んだ。臨床試料をプレート化し、黄色ブドウ球菌を疑うコロニーについてのみ、翌日にqRT−PCRを、実施した。qRT−PCRのためにコロニーをサンプリングする際に使用するのと同一の細胞針を使用して、すべての試料を混合群に対して分析した。すべての試料は、従来の方法(CNAのプレーティング)、マンニトールおよびクロモアガーMRSAプレート(Hy−labs、Israel)、目視検査、スライド凝縮反応(Pastorex、Bio−Rad)、ならびに、NH+NaCl+OXAおよびDNaseプレート上のプレーティングメッキ法によっても分析した。
【0156】
338個の試料(患者の重複物(122)を除外)を分析し、そのうちの219個は、MRSAを含み、そのうちの37%は、他のグラム陽性細菌も含み、6%は、グラム陰性細菌も含み、ならびに32%は、グラム陽性およびグラム陰性の両方をも含んだ。119個の非MRSA試料のうちの、8個は、MS−CoNSであり、16個は、MR−CoNSであり、5個は、非ブドウ球菌であり、90個は、MSSAであった。90個のMSSAのうち、42%は、他のグラム陽性細菌も含み、2%は、グラム陰性細菌を含み、21%は、グラム陽性およびグラム陰性の両方を含んだ。MSSA含有試料のうちの、49%は、MR−CoNSも含んだ。これらの割合は、鼻腔用スワブの混合群の真の割合を示すのではなく、多くの試料が、オキサシリン含有プレートに由来するため、オキサシリン耐性細菌に偏った、qRT−PCRに対してサンプルされた混合群を示すことに留意されたい。そのような混合物の比率は、直接のスワブ分析においてより高いと予測される。
【0157】
すべてのNTCおよび対照を、両方のアッセイのすべての実行で正確に検出した。
【0158】
単一座位アッセイは、混合培養で、不十分な精度を示した。単一座位アッセイは、216個のSCC:orfX−陽性結果をもたらし、そのうちの203個は、MRSA(真陽性)であり、13個は、MSSA(偽陽性)であった。単一座位アッセイは、122個のSCC:orfX−陰性結果をももたらし、そのうちの16個は、MRSA(偽陰性)であり、77個は、MSSA(真陰性)であり、16個は、MR−CoNS(真陰性)であり、8個は、MS−CoNS(真陰性)であり、5個は、非ブドウ球菌(真陰性)であった。単一座位アッセイは、混合培養試料を検出する上で、わずか89.1%の特異性、および86.9%の陰性予測値をもたらした。結果を、以下の表4に要約する。
【表3】

【0159】
上記の表2に要約するとおり、二重座位アッセイは、混合培養で、不十分な精度を示した。二重座位アッセイは、264個のSa442陽性mecA陽性結果をもたらし、そのうちの218個は、MRSA(真陽性)であり、46個は、MSSA(偽陽性)であった。偽陰性のうちの、44個は、培養試験により、MR−CoNSと合わせたMSSAであることが判断され、2個は、恐らく、非機能的にするように変異されたmecA遺伝子を有するMRSAに由来する、mecA陽性MSSAであることが分かった。そのような細菌は、遺伝子的にはMRSAであるが、表現型でMSSAである。二重座位アッセイは、36個のSa442−陽性mec4−陰性結果をももたらし、1つは、MRSA(偽陰性)であり、35個は、MSSA(真陰性)であった。二重座位アッセイは、16個のSa442−陰性mecA−陽性結果ももたらし、16個すべては、MR−CoNS(MRSAに対して真陰性)であった。二重座位アッセイは、22個のSa442−陰性mecA−陰性結果ももたらし、そのうちの9個は、MSSA(真陰性)であり、そのうちの8個は、MSCoNS(真陰性)であり、5個は、非ブドウ球菌(真陰性)であった。二重座位アッセイは、混合培養試料を検出する上で、わずか61.4%の特異性および82.6%の陽性予測値を生じた。
実施例3:三重座位およびサイクル閾値アッセイの優れた精度の実証
【0160】
17オリゴヌクレオチド(配列番号1〜17)を含む、三重座位高密度多重qRT−PCRアッセイ混合物が開発された。この多重アッセイ混合物を、スワブから得た同一の460人の患者のDNA試料で試験した。反応を、上述の標準qRT−PCRプロトコルを使用して、Corbett Life Science社のRotorGene3000システムリアルタイムPCR装置を使用して実施した増幅および検出と共に実行した。
【0161】
本発明の方法は、結果を分析し、偽陰性および偽陽性結果を実質的に減少させる2工程プロセスを提供する。第1の工程は、4つの分類に従い、結果を分類することである:
1.3個のすべての座位で陽性=MRSA
2.Sa442で陰性=MRSAではない
3.Sa442で陽性、およびmecAで陰性=MRSAではない
4.Sa442で陽性、mecAで陽性、およびSCC;orfXで陰性=工程2に進む
【0162】
第1の工程分析によると、203個の試料が第1の分類の基準を満たした。202個を、正確にMRSAとして特定し、1個の試料は、3つの座位のすべてで陽性であったが、偽陽性であることが発見され、実際、MSSA(SCC:orfX−陽性Sa442−陽性mecA−陰性)およびMR−CoNS(mecA−陽性)の2つの種の混合物であることを示す。
【0163】
38個の試料は、第2の分類の基準を満たし、すべてがMRSAではないと正確に特定された。36個の試料は、分類3の基準を満たした。恐らくはプライマーまたはプローブの部位で突然変異したmecA遺伝子を有するMRSA菌株により、陰性mecA反応がもたらされた結果偽陰性であると発見された1つを除くすべてが、MRSAではないと正確に特定された。
【0164】
61個の試料は、第4の分類の基準を満たし、これらは、本発明に規定される第2の工程分析、つまり、Sa442のサイクル閾値とmecAのサイクル閾値との比較にかけられた。18個については、2つのアッセイのサイクル閾値(CT:試料が、最初に検出されるサイクル−標的遺伝子の濃度を反映する)は、お互い、3つのCT値内であり、mecA遺伝子およびSa442遺伝子の陽性信号が同一の有機体に由来するかまたは、混合物である場合、両方の有機体は、同一の濃度であることを示唆する。これらの18個のうち、16個はMRSAであり、2個はMSSAであったが、これらのすべてがMRSAだと公表されていた。43個については、2つのアッセイのサイクル時間は、3つのCTを上回り、これらの試料がMRSAを含まない代わりに、陽性mecA検出が1つの種を反映し、陽性Sa442検出は、異種を反映したことを示唆する。予想したとおり、43個のこれらの試料のすべては、MSSAおよびMR−CoNSを反映する混合物を含むことが証明された。
【0165】
組み合わせたアッセイは、混合培養試料からMRSAを検出する上で、99.6%の感度、97.4%の特異性、98.6%の陽性予測値、および99.1%の陰性予測値をもたらし、したがって、MRSA等の抗生物質耐性細菌を検出するために従来使用する二重座位および単一座位アッセイのどちらと比べても、本発明のアッセイの精度および特異性が高くなっていることを示す。
実施例4:環境温度−安定したqRT−PCR混合物を使用する三重座位アッセイ
【0166】
バッファxl(10mMトリスpH8.3、50mM KCl)、MgCl、dNTP混合物、1.5単位〜2.5単位のホットスタート好熱性DNAポリメラーゼ、および安定化剤を含む、環境温度qRT−PCR反応混合物を開発した。25マイクロリットルの混合物を、PCRマイクロ管に入れ、それぞれのミイクロ管内で、水和を、少なくとも50%まで減少させた。マイクロ管を、実質的に、環境温度で保管した。
【0167】
17個のオリゴヌクレオチドを含む、三重座位高濃度多重qRT−PCRアッセイ(上述の実施例3に記載するとおり)を、環境温度qRT−PCR反応混合物を含むマイクロ管に加えた。多重分析混合物を、スワブからプレート化した、20個の周知の患者DNAの試料および4個の対照試料で試験した。反応を、上述の標準qRT−PCRプロトコルを使用して、Corbett Life Science社のRotorGene3000システムリアルタイムPCR装置を使用して実施した増幅および検出と共に、実行した。
【0168】
このアッセイの結果を、表4に示す。予測通り実施した24個のアッセイのすべては、関心対象の的確な遺伝子標的を検出した。上述実施例3に記載した結果の分析のための本発明の2工程プロトコルに続き、MRSAを含む試料と、MRSAを含まない試料とを、100%の精度で識別することが可能であった。結果は、本発明のアッセイを使用する、環境安定化したキットの臨床患者の試料からの、MRSAの特定および非MRSA細菌からのMRSAの識別の有用性を示す。
【表4】


実施例5:MRSAと、MSSA、MS−CoNS、およびMR−CoNSとの識別
【0169】
周知のブドウ球菌DNAを含む、合計29個の実験試料を調製した。これらの試料はいずれも、MREJタイプi、ii、iii、iv、またはvの検出の単一座位アッセイを使用して検出することが可能な、SCC:orpC遺伝的子マーカーを含むブドウ球菌DNAを含まない。SCC:orfXは、本明細書において、「架橋領域」とも称される。
【0170】
それぞれ、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含む、試料1〜4は、4つの異なる対数濃度のうちの1つにおいて、Sa442遺伝子で陽性であり、mecAポリヌクレオチドで陰性であることが分かった。
【0171】
それぞれ、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR−CoNS)を含む、試料2〜8は、4つの異なる対数濃度のうちの1つにおいて、mecAポリヌクレオチドで陽性であり、Sa442ポリヌクレオチドで陰性であることが分かった。
【0172】
周知のブドウ球菌DNAの混合物を含む、試料9〜13は、MSSAの固定濃度およびMR−CoNSの5つの異なる対数濃度レベルのうちの1つを反映する。
【0173】
周知のブドウ球菌DNAの混合物を含む、試料14〜18は、MR−CoNSの固定濃度およびMSSAの5つの異なる対数濃度レベルのうちの1つを反映する。
【0174】
周知のMRSAを含む、試料19〜22は、4つの異なるログ濃度レベルのうちの1つにおいて、Sa442ポリヌクレオチドで陽性であり、mecAポリヌクレオチドで陽性であることが分かった。
【0175】
周知のMRSAを反映する、試料19〜22を複製した試料23〜26は、4つの異なるログ濃度レベルのうちの1つにおいて、Sa442遺伝子で陽性であり、mecA遺伝子で陽性であることが分かった。
【0176】
3つの付加的な周知の単離されたMRSAを反映した、試料27〜29のすべては、最適使用濃度で、Sa442ポリヌクレオチドで陽性であり、mecAポリヌクレオチドで陽性であることが分かった。
【0177】
7個の付加的な試料を対照として調製した。
【0178】
試料30〜31は、Sa442ポリヌクレオチド、mecAポリヌクレオチド、およびSCC:orfXの3つの遺伝子座位のすべてで陽性であることが分かった、周知のMRSA DNAの2つの異なる濃度レベルを反映した。
【0179】
試料32〜33は、試料30および31を複製した。
【0180】
MR−CoNSからの周知のDNAを含む、試料34は、mecA遺伝子で陽性であり、Sa442ポリヌクレオチドで陰性であることが分かった。
【0181】
周知のMRSADNAの試料を含む、試料35は、Sa442遺伝子で陽性であり、mecA遺伝子で陽性であり、SCC:orfXで陰性であることが分かった。
【0182】
試料36は、DNAを含まなかった。
【0183】
qRT−PCR増幅および検出を、前述の標準qRT−PCR反応混合物、反応プロトコル、および装置により、本発明の三重座位高濃度アッセイを使用して、実験試料および対照試料で実施した。
【0184】
実験試料および対照試料のすべては、全く予想通りに実施され、SCC:orfX、Sa442ポリヌクレオチド、およびmecAポリヌクレオチドである場合では、陽性または陰性所見を示した。
【0185】
試料の21個(アイテム9〜29、および35)を、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド(Sa442等)、およびmecAポリヌクレオチドの陽性所見を反映するが、SCC:orfX陰性MRSA(アイテム19〜29、および35)、または異なる濃度でのMSSAおよびMR−CoNSの混合物(アイテム9〜18)に由来する、SCC:orf遺伝子領域の証拠に対して陰性を反映するように設計した。本発明のプロトコルは、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド(Sa442等)およびmecA遺伝子で陽性であるが、SCC:orfXで陰性であることが分かった試料の第2の工程分析プロセスを、つまり、試料がMRSAを含むのか、または2つの非MRSA種の混合物を反映するのかどうかを判断するために、黄色ブドウ球菌特異的マーカー検出のサイクル閾値を、mecA検出のサイクル時間と比較するプロセスを、提供する。
【0186】
第2のプロトコル工程分析を、第2の工程分析を必要とする21個の実験試料で実施した。Sa442遺伝子の検出、およびmecA遺伝子の検出は、MRSAを含むすべての試料に対して、互いの3CT以内で生じることが分かった。したがって、本発明のプロトコルを使用して、MRSAを含む実験試料の100%が正確に特定された。Sa442遺伝子の検出、およびmecA遺伝子の検出は、MSSAおよびMR−CoNSを含む混合された実験試料、ならびに、同一濃度のMSSAおよびMR−CoNSを含む2つの試料(アイテム12および15)を除く、MRSAを含まない混合された実験試料のすべてにおいて、4CTもしくはより広い間隔で生じることが分かった。
【0187】
要約すると、本発明のプロトコルは、Huletskyらの単一座位アッセイを使用して検出不可能な、非定型変異体のSCC:orfX領域を有する、MRSAを含む試料からのMSSAおよびMR−CoNSを含む、混合試料を識別する上で、100%の精度であることが分かった。
【0188】
異種を識別するこのアッセイからの結果を、図2および図3に図示する。図2に示すとおり、MRSAおよびMSSA細菌は、架橋領域(本明細書において、SCC:orfXとも称される)、mecA遺伝子領域、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列(本実施形態では、nuc遺伝子)、およびヒトベータグロビンポリヌクレオチド配列(内部対照として使用)を対象とした増幅反応の産物の検出に基づき、互いから識別される。MRSA試料中では、4個の増幅産物のすべてが検出された。反対に、MSSA試料中では、黄色ブドウ球菌特異的および内部対照ヒトベータグロビンポリヌクレオチドのみが検出された。
【0189】
同様に、図3は、増幅反応が、架橋領域、mecA遺伝子領域、ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列(本実施形態では、nuc遺伝子)、およびヒトベータグロビンポリヌクレオチド配列(内部対照として使用)を対象としたアッセイの結果を示す。この場合、MR−CoNSを含む試料では、mecA遺伝子ポリヌクレオチド配列、および内部対照ポリヌクレオチド配列が検出され、MS−CoNSを含む試料では、内部対照ポリヌクレオチド配列のみが検出された。したがって、本発明のアッセイは、MRSA、MSSA、MR−CoNS、およびMS−CoNS細菌を識別する能力を提供する。
実施例6:QRT−PCR反応混合物および多重アッセイの保存安定性
【0190】
オリゴヌクレオチドプライマーおよび二重蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを組み込む、多重アッセイQRT−PCR混合物の性能および保存安定性を確立するために、実験を実施した。
【0191】
環境温度のqRT−PCR混合物を、上記の実施例4に記載するとおりに、調製した。
【0192】
順方向および逆方向プライマー(配列番号21および22)、および5′端部に加えられたHEX蛍光標識、および3′端部(配列番号23)に加えられたBHQ1蛍光消光標識を有するプローブから成る、ヒトβグロビンを対象とした、プライマー・プローブの1つの組を、調製し、精製した。順方向プライマー、逆方向プライマー、および5′端部でFAM、および3′端部でTAMRAで標識されたTaqMan(登録商標)プローブから成る、ヒトRNase−P遺伝子を対象とした第2のプライマー・プローブの組を、Applied Biosystems Inc.社(TaqMan(登録商標)RNase−P検出試薬キット、パート番号4316831)から購入した。
【0193】
4つのプライマーおよび2つのプローブのすべてを、水分減少プロセス前に、環境温度のqRT−PCR混合物に加えた。これらのプライマーおよびプローブを、対照となるように−20℃で保管した、環境温度のqRT−PCR混合物のコンポーネントのすべてを含む、第2のマイクロ管にも加えた。
【0194】
5週間後、脱水PCR混合物および二本鎖プライマー・プローブアッセイを含む、室温で保管した管を再脱水し、対照混合物を含む第2の管を、冷蔵室から取り出し、解凍した。まず、95℃の15分間の保持サイクルのプロトコルに従い、100ngのヒトDNAを、それぞれの管に加え、混合物をCorbett Life Science社のRotorGene6000システムリアルタイムPCR装置内で増幅させた。これに続いて、3つの工程で、それぞれ50サイクル行った。工程1は、95℃で15秒間、工程2は、55℃で20秒間、および工程3は、72℃で30秒間であった。
【0195】
第1段階の実験を、PCR反応の直後に行い、以下のとおりであった。ヒトβヘモグロビンを標的とするプライマー・プローブアッセイは、以下の結果をもたらした。−20℃で保管された試料は、23.30のCT値をもたらし、室温で保管された試料は、23.46のCT値をもたらした。ヒトRNase−Pを標的とするプライマー・プローブアッセイは、以下の結果をもたらした。−20℃で保管された試料は、25.79のCT値をもたらし、室温で保管された試料は、26.08のCT値をもたらした。
【0196】
第2段階の実験は、5週間後に行った。手順は、室温で保管された2つの管、および−20で保管された1つの管を、該実験で使用したことを除き、上述の手順と同一である。3つの管のそれぞれに、100ngのヒトDNAを加え、次いで、上述のとおり、それぞれを増幅させた。
【0197】
第2段階の実験結果は、以下の通りであった。ヒトβヘモグロビンを対象とするプライマー・プローブアッセイは、以下の結果をもたらした。−20℃で保管された試料は、25.42のCT値をもたらし、室温で保管された2つの試料は、25.46および26.06のCT値をもたらした。ヒトRNase−Pを対象とするプライマー・プローブアッセイは、以下の結果をもたらした。−20℃で保管された試料は、23.09のCT値をもたらし、室温で保管された2つの試料は、23.50および23.65のCT値をもたらした。
【0198】
10週間後、室温で放置された本発明の安定化された混合物と、−20℃で保管された同等の混合物との有効性における差異は、1サイクル未満であった。これらの結果を、図4に図示する。結果は、多重リアルタイムPCRのPCR混合物の室温での実用性および安定性を明確に示す。
実施例7:高濃度の三重座位qRT−PCRアッセイ、および単一および混合細菌試料内のMRSAの検出、ならびに、MRSAを、MSSA、MR−CoNS、およびMSSA&MR−CoNSの混合試料と識別する、三重座位にわたるサイクル閾値の比較
【0199】
4つの組のプライマーおよびプローブを含む、三重座位多重qRT−PCRアッセイ混合物を、合計12個のオリゴヌクレオチド(配列番号1〜2、9〜11、15〜17、18〜20、および24)に対して、開発した。増幅プライマーおよび二重標識プローブの1つの組を、mecA遺伝子(配列番号9〜11)を増幅し、検出するように設計した。プライマーおよび二重標識プローブの第2の組を、黄色ブドウ球菌特異的nuc遺伝子(配列番号18〜20)を増幅し、検出するように設計した。プライマーおよび二重標識プローブの第3の組を、SCCmec元素(配列番号1〜2、および24)を含まないMSSA内で増幅され得るように、黄色ブドウ球菌内のSCCmec元素の挿入部位周辺のorfX遺伝子の領域を増幅し、検出するように設計した。プライマーおよび二重標識プローブの第4の組を、ヒトβグロビンを増幅および検出して、対照アッセイとなるように設計した(配列番号15〜17)。
【0200】
本発明の三重座位多重qRT−PCRアッセイ、およびバッファxl(10mMトリスpH8.3、50、M KCl)、MgCl、dNTP混合物、1.5単位〜2.5単位のホットスタート好熱性DNAポリメラーゼ、および安定化剤を含む、環境温度のqRT−PCR反応混合物を、開発した。25マイクロリットルの混合物を、マイクロ管に入れ、水和を、それぞれのマイクロ管内で、少なくとも50%まで減少させた。マイクロ管を、実質的に、環境温度で保管した。
【0201】
この環境温度多重アッセイ混合物を、周知のDNA試料、MRSA、MSSA、MS−CoNS、およびMR−CoNS菌株で試験した。該アッセイを、以下のDNA試料のそれぞれの2つの試料で試験した:
1.純MRSA
2.純MSSA
3.純MR−CoNS
4.対照としてのβグロビンおよびMS−CoNSの混合試料
5.MSSAおよびMS−CoNSの混合試料
6.等濃度のMRSAおよびMSSAの混合試料
7.等濃度のMRSA、MSSA、およびMR−CoNSの混合試料
8.1:10比の濃度のMRSAおよびMSSAの混合試料
9.10:1比の濃度のMRSAおよびMSSAの混合試料
10.等濃度のMSSAおよびMR−CoNSの混合試料
11.1:10比の濃度のMSSAおよびMR−CoNSの混合試料
12.10:1比の濃度のMSSAおよびMR−CoNSの混合試料
【0202】
反応を、上述の標準qRT−PCRプロトコルを使用して、Corbett Life Science社のRotorGene3000システムリアルタイムPCR装置を使用して実施される増幅および検出と共に実行した。
【0203】
本発明の方法は、結果を分析して、実質的に、偽陰性および偽陽性結果を減少させる、2工程プロセスを提供する。第1の工程は、5つの分類に従い、結果を分類することである(表2に提示するとおり、1=mecA、2=nuc、3=MSSA−orfX):
1.1+2で陽性、3で陰性=MRSAであり、MSSAではない
2.2+3で陽性、1で陰性=MSSAであり、MRSAではない
3.1で陽性、2+3で陰性=MR−非黄色ブドウ球菌であり、MRSAおよびMSSAのいずれでもない
4.3つのすべてで陰性、対照で陽性=MRSA、MSSA、MR−非黄色ブドウ球菌のいずれでもない
5.1+2+3で陽性=分析工程2に進み、異なる単位複製配列のCT値と比較する
【0204】
第1の工程分析に基づき、アッセイを、24個の試料のすべてで予測したとおりに実施し、関心対象の正確な遺伝子標的を検出した。予測したとおり、3個の座位のすべてを、MSSAおよび1つ以上のメチシリン耐性細菌を含む、すべての試料中で検出し、これらは、本発明によって規定された第2の工程分析、つまり、3個の標的遺伝子のそれぞれのサイクル閾値(CT:陽性と考えられ、標的遺伝子の濃度を反映するサイクル)の比較にかけられる。
【0205】
予測したとおり、nucアッセイおよびMSSA−orfXのサイクル閾値は、MSSAを含むが、MRSAは含まない混合試料のすべてで、互いの3つのCT以内であり、nuc遺伝子の陽性信号が、MSSA−orfX領域としての同一のMSSA有機体に由来し、個別のMRSA有機体に由来しないことを示唆する。同様に、nucアッセイおよびMSSA−orfXのサイクル閾値は、不等濃度のMSSAおよびMRSAを含む混合試料のすべてで(試料8、9)、4つのCTまたは、互いより高く、nuc遺伝子の陽性信号が陽性MSSA−orfX信号を生成するMSSA有機体およびMRSA有機体の組み合わせに由来することを示唆する。
【0206】
結果分析のための本発明の2工程プロトコルに続き、不等濃度のMRSAを含む試料と、MRSAを含まない試料(試料8、9)とを、100%の精度で識別することが可能であった。結果は、不等濃度の純試料および混合試料の両方において、本発明の三重座位アッセイおよびプロトコルの非MRSA細菌からのMRSAの特定およびMRSAの識別の実用性を示した。
【0207】
明確にするために、個別の実施形態の文脈に記載された、本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせても提供し得ることを理解されたい。反対に、1つの実施形態の文脈に簡潔に記載された、本発明の様々な特徴は、個別に、または任意の適切な副次的組み合わせで、提供し得る。
【0208】
本発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されるが、多くの代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは、明白である。したがって、付属の請求項の精神および広範囲に含まれる、そのような代替、修正、および変形のすべてを包括することを意図する。本明細書に記載する、すべての出版物、特許明細書、および特許出願書は、それぞれの個別の出版物、特許明細書、または特許出願書が、参照することにより組み込まれるように、具体的、且つ個別に示すような同一の範囲で、参照することにより、これらの全体が本明細書に組み込まれる。また、本出願における、いかなる参照の引用または特定も、そのような参照が、本発明の先行技術として得られることの承認として解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法であって、
(a)第1の組のプライマーを提供する工程であって、前記第1の組のプライマーは、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、工程と、
(b)第2の組のプライマーを提供する工程であって、前記第2の組のプライマーは、架橋領域の少なくとも一部に相補的である、工程と、
(c)第3の組のプライマーを提供する工程であって、前記第3の組のプライマーは、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であり、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、orfXポリヌクレオチドではない、工程と、
(d)前記第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物中の前記試料と合わせる工程と、
(e)複数のサイクルの増幅反応を、前記反応混合物で実施する工程と、
(f)前記mecA、架橋領域、および黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の、それぞれの出現のサイクル数を決定する工程と、を含み、
前記サイクル数は、MRSAが試料中に存在するかどうかを示す、
方法。
【請求項2】
前記第1の組のプライマーは、配列番号10〜11のうちの少なくとも1つに従う配列を有する複数のプライマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の組のプライマーは、配列番号2〜8のうちの少なくとも1つに従う配列を有する複数のプライマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の組のプライマーは、配列番号13〜14、および18〜19のうちの少なくとも1つに従う配列を有する複数のプライマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅反応は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
(g)前記試料を、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なプライマーと接触させる工程と、
(h)前記ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を増幅させる工程と、
(i)前記増幅したヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を検出する工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、nuc、Sa442、およびfemBから選択される成員である、遺伝子の少なくとも一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子は、nucである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子は、Sa442である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法であって、
(a)mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する工程と、
(b)架橋領域のポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する工程と、
(c)黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する工程であって、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、orfXポリヌクレオチドではない、工程と、
を含み、
前記mecAポリヌクレオチド、前記架橋領域のポリヌクレオチド、および前記ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中にすべて存在する場合、MRSAは、前記試料中に存在する、
方法。
【請求項11】
前記mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程は、前記試料上で増幅反応を行う工程を含み、前記増幅反応は、第1の組のプライマーを使用し、前記第1の組のプライマーの大半は、前記mecAポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の組のプライマーは、配列番号10〜11のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記orfXポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程は、前記試料上で増幅反応を行う工程を含み、前記増幅反応は、第2の組のプライマーを使用し、前記第2の組のプライマーの大半は、前記orfXポリヌクレオチドの少なくとも1部に相補的である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の組のプライマーは、配列番号2〜8のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程は、前記試料上で増幅反応を行う工程を含み、前記増幅反応は、第3の組のプライマーを使用し、前記第3の組のプライマーの大半は、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の組のプライマーは、配列番号13〜14、および18〜19のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、nuc、Sa442、およびfemBから選択される成員である遺伝子の少なくとも一部である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、nucである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、Sa442である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、
(d)前記試料を、ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であるプライマーに接触させる工程と、
(e)前記ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を増幅させる工程と、
(f)前記増幅したヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列を検出する工程と、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列は、ハウスキーピング遺伝子の少なくとも一部を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト遺伝子ポリヌクレオチド配列は、βグロビン遺伝子の少なくとも一部を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
(a)、(b)、および(c)の工程は、同時に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
(a)、(b)、および(c)の工程は、任意の順序で連続して実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項25】
(a)、(b)、および(c)の工程は、前記試料の同一のアリコート中で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項26】
(a)、(b)、および(c)の工程は、前記試料の異なるアリコート中で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項27】
前記mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在し、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するが、前記架橋領域のポリヌクレオチドが、前記試料中に存在しない場合、前記試料は、非メチシリン耐性ブドウ球菌を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項28】
試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法であって、
(a)第1の組のプライマーを提供する工程であって、前記第1の組のプライマーは、mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、工程と、
(b)第2の組のプライマーを提供する工程であって、前記第2の組のプライマーは、MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、工程と、
(c)第3の組のプライマーを提供する工程であって、前記第3の組のプライマーは、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であり、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、orfXポリヌクレオチドではない、工程と、
(d)前記第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物内の前記試料と合わせる工程と、
(e)複数のサイクルの増幅反応を、前記反応混合物で実施する工程と、
(f)前記mecA、MSSA−orfXおよび黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程と、
を含み、
前記サイクル数は、MRSAが試料中に存在するかどうかを示す、
方法。
【請求項29】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、前記MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の出現から、少なくとも4サイクル離れたサイクルで出現する場合、前記試料は、MRSAおよびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の両方を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列が、前記MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の3サイクル内で出現する場合、前記試料は、MSSAおよび非メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
試料中の細菌を特定する方法であって、
(a)mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する工程と、
(b)MSSA−orfXポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する工程と、
(c)黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する工程であって、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドは、orfXポリヌクレオチドではない、工程と、
を含み、
前記試料中に存在する(a)、(b)、および(c)の組み合わせは、前記試料中の細菌を特定する、
方法。
【請求項32】
前記mecAポリヌクレオチド、および前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に共に存在し、前記MSSA−orfXポリヌクレオチドが、前記試料中に存在しない場合、前記試料は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド、および前記MSSA−orfXが、前記試料中に共に存在し、前記mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在しない場合、前記試料は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含むが、MRSAは含まない、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記mecAポリヌクレオチド、および前記MSSA−orfXポリヌクレオチドが、前記試料中に共に存在し、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在しない場合、前記試料は、非メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含むが、MRSAを含まない、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記mecAポリヌクレオチド、前記MSSA−orfXポリヌクレオチド、および前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドのうちの1つのみが、前記試料中に存在する場合、前記試料は、MRSAを含まない、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記試料は、細菌、単一菌株からの細菌、または2つ以上の菌株からの細菌の混合物を含んでいない可能性がある、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記試料は、体液、鼻腔用スワブ、および組織から選択される成員である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程、MSSA−orfXポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程、および、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程はすべて、前記試料の個別のアリコート中で行われる増幅反応である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
mecAポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程、MSSA−orfXポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程、および、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチドが、前記試料中に存在するかどうかを判断する前記工程のうちの2つ以上は、前記試料中の同一のアリコート中で行なわれる増幅反応である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
試料中のMRSAを特定するキットであって、
(a)mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第1の組のプライマーと、
(b)MSSA−orfXポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第2の組のプライマーと、
(c)黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第3の組のプライマーであって、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、架橋配列ではない、第3の組のプライマーと、
(d)DNAポリメラーゼ酵素、dNTP、マグネシウム、および安定剤から選択される少なくとも1つの成員と、
を備える、キット。
【請求項41】
試料中のMRSAを特定するキットであって、
(a)mecAポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第1の組のプライマーと、
(b)架橋配列の少なくとも一部に相補的である、第2の組のプライマーと、
(c)黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的である、第3の組のプライマーであって、前記黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列は、架橋配列ではない、第3の組のプライマーと、
(d)DNAポリメラーゼ酵素、dNTP、マグネシウム、および安定剤から選択される少なくとも1つの成員と、
を備える、キット。
【請求項42】
試料中の抗生物質耐性細菌の菌株を検出する方法であって、
(a)第1の組のプライマーを提供する工程であって、前記第1の組のプライマーは、遺伝子の少なくとも一部から、第1の増幅産物を生成することが可能であり、前記遺伝子は、抗生物質耐性を与える、工程と、
(b)第2の組のプライマーを提供する工程であって、前記第2の組のプライマーは、架橋領域の少なくとも一部から、第2の増幅産物を生成することが可能である、工程と、
(c)第3の組のプライマーを提供する工程であって、前記第3の組のプライマーは、細菌の菌株に特異的なポリヌクレオチド配列の少なくとも一部から、第3の増幅産物を生成することが可能である、工程と、
(d)前記第1、第2、および第3の組のプライマーを、反応混合物内の前記試料と合わせる工程と、
(e)複数のサイクルの増幅反応を、前記反応混合物で実施する工程と、
(f)前記第1、第2、および第3の増幅産物のそれぞれの出現のサイクル数を判断する工程と、
を含み、
前記サイクル数は、抗生物質耐性細菌の菌株が、前記試料中に存在するかどうかを示す、方法。
【請求項43】
前記遺伝子は、バンコマイシンへの耐性を与える、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記遺伝子は、メチシリンへの耐性を与える、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記細菌の菌株に特異的なポリヌクレオチド配列は、黄色ブドウ球菌特異的ポリヌクレオチド配列である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記架橋領域は、配列番号2〜8から選択される成員であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項42に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−524454(P2010−524454A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503619(P2010−503619)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001958
【国際公開番号】WO2008/129428
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509289010)モレキュラー ディテクション インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】