説明

抗生物質送達のための絹フィブロインシステム

本発明は、微生物汚染の予防または処置のための、一種または複数種の抗生物質剤を含む、絹フィブロインベースの組成物、抗生物質含有絹足場を作る方法、絹足場中で抗生物質を安定化させる方法、及び、抗生物質含有組成物を用いて微生物汚染を予防または処置するための方法を提供する。絹フィブロインベースの組成物に抗生物質を包埋するため、種々の方法を使用してもよい。本発明の抗生物質含有組成物は、特に抗生物質を安定化し、細菌感染を予防し、そして、医療移植片、組織工学、薬物送達系、または、他の薬学若しくは医学用途のために有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容の全てが本明細書中に参照として組み入れられる、2009年3月4日に出願された米国仮出願第61/157,366号について合衆国法典第35章第119(e)節に基づく優先権の権利を主張する。
【0002】
政府援助
米国国立保険研究所より与えられたEB002520、及び、米国陸軍より与えられたW911NF-07-1-0618に基づく政府援助を受けて本発明は行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、微生物汚染を予防または処置するための組成物、及び、そのような組成物を使用した微生物汚染を予防または処置する方法に関する。本発明の組成物は優れた安定性を示し、そして、医療移植片、組織工学、薬物送達系、または他の薬学若しくは医学用途に用いてもよい。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
心血管及び筋骨格移植片を含め、組織工学により作られる軟骨、骨及び靭帯のための基質として、細胞増殖片及び薬物送達のための生育可能培地として、並びに、ヒト間葉幹細胞の特定組織への適切な分化を導くために、多様な応用目的で生物素材が開発されてきた。
【0005】
移植片、組織工学、薬物送達、または再生医療における使用のための生物素材組成物の効率の評価では、特に手術部位感染により引き起こされる微生物汚染に対して、これらの適用が影響を受けやすいことが、主な制限に関係している。手術部位感染は院内感染の二番目に多い原因である。手術部位感染を回避した患者よりも手術部位感染を起こす患者は、集中治療室に入るか、または病院に再入院する可能性が高く、かつ死亡する可能性も高い。
【0006】
抗菌予防は、術後の微生物汚染を予防する一般的かつ効果的な方法を提供する。しかしながら、現在の抗菌薬の選択肢には明らかな全身性副作用及び制限がある。例えば、予防的抗菌薬の投与の適切な選択、タイミング及び持続に関しては無数の不合理がある。さらに、手術部位感染率が最も低くなるよう、抗菌薬は可能な限り切開部または移植領域の近くに投与されるべきである。さらに、感染予防のための全身性抗菌手法はしばしば抗生物質の不十分な局所濃度をもたらし、手術部位感染のリスクが有意に増加する。
【0007】
例えば、感染した膿瘍の典型的な処置は、傷の排出、ガーゼでのパッキング、そして抗生物質の全身投与である。しかしながら、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染のある状態で形成された膿瘍は抗生物質が浸透できない上皮のバリヤまたは殻を作り出す。現在の非分解性サージカルパック材料は手術による除去を必要とし、そして内在の抗生物質活性を持たない。さらに、これらの患者における大量の全身性用量の抗生物質は肝臓に傷害を与える可能性があり、そして多量の薬剤が無駄になる。導入された薬剤を安定化し、効率を最大にしつつもコスト及び副作用を最小限とするために特定の標的部位へ送達を制限し、且つ手術による除去を避けるため生物分解される抗生物質送達の簡単なシステムが必要とされている。
【0008】
よって、移植片、組織修復、または薬物送達系のために、医学的に妥当な、生物分解性で、且つ機械的に存立できる構造を提供するだけでなく、さらに、感染を効率的に予防または処置するよう、切開、移植片、または標的送達領域への抗生物質の投与を局所へと向ける天然ポリマー媒体を含む組成物が依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、微生物汚染を予防及び/または処置するための、医療用移植片、組織工学、または薬物送達システム用の絹フィブロインベースの組成物を提供する。本発明はさらに、本発明の組成物を用いて微生物汚染を予防及び/または処置するための方法を提供する。より詳細には、本発明の抗生物質装薬(loaded)絹フィブロインシステムは生物分解性であり、安全であり、FDAに承認されており、そしてインビボで非毒性産物に分解される。抗生物質装薬絹生物素材は標的部位に適用または注入できるため、抗生物質が局所的または局部的に送達され、大用量の抗生物質による全身性副作用を避けられる。現在のサージカルパック材料(例えば、ガーゼ)と異なり絹は経時的に分解されるので、手術による除去は不要である。さらに、本発明は、広範囲の妥当な温度で顕著な抗生物質安定性を提供する。例えば、本発明の抗生物質装薬絹組成物は室温で貯蔵でき、その後感染の部位での持続的放出のために適用または注入でき、そこで生物分解される。本発明の組成物は抗生物質の大量の予備的「バースト」用量、続いての、より低量の維持用量のゆっくりとした持続的放出を送達するよう設計してもよい。
【0010】
本発明の一態様は、絹フィブロイン足場と、少なくとも一種の抗生物質剤とを含む組成物に関する。特定の態様において、絹フィブロインベースの足場は、多孔性絹フィブロインマトリックスまたはゲルに包埋した抗生物質装薬ミクロスフェアを含む。ある態様では、絹フィブロイン足場はフィルム、スラブを含むか、または、マトリックス若しくはゲル等の3次元構造を含む。特定の態様では、絹足場は、例えば、包帯または移植片としての使用に適する基質上の被覆である。特定の態様における抗生物質の例には、セファゾリン、ゲンタマイシン、ペニシリン及びアンピシリンが含まれる。ある態様では、抗生物質装薬絹フィブロイン組成物は、生物剤または薬物等の少なくとも一つの追加の剤を含んでもよい。本発明の組成物は、微生物汚染を予防及び/または処置するよう、医療的移植片、組織工学、再生医療、または薬物送達システムのために使用してもよい。組成物は、このような微生物汚染の原因として一般に見出される生物の最小阻害濃度(minimum inhibitory concentration; MIC)を超えるレベルで、少なくとも一種の抗生物質剤を送達するよう製剤化できる。
【0011】
少なくとも一種の抗生物質剤を絹構造中に包埋するために種々の方法を採用してもよい。例えば、絹足場を形成する前に絹フィブロイン溶液中に抗生物質を添加してもよく(即ち、抗生物質は直接、絹フィルム、ゲル若しくは多孔性マトリックスに組み入れられる);抗生物質を含む絹フィブロインミクロスフェアを用意してもよく、その後ミクロスフェアが包埋される絹足場(ゲル若しくは多孔性マトリックス)を形成するために、これらの抗生物質装薬ミクロスフェアを絹溶液と混合してもよく;または、一若しくは複数の抗生物質装薬層を絹足場に被覆できる。本発明の方法はまた、抗生物質含有足場に追加の剤を添加する工程を含んでもよい。
【0012】
本発明はまた、抗生物質及び/または他の剤の絹フィブロイン組成物中での長期貯蔵を提供する。例えば、長期抗生物質貯蔵組成物を調製するための方法は、抗生物質の選択、該抗生物質の絹フィブロイン溶液への組み入れ、そして該溶液からの足場の形成を含む。溶液は水性溶液または水和脂質溶液であってもよい。薬剤または生物剤等の追加の剤を溶液に添加してもよい。足場は、フィルムまたはスラブを産するために表面上に溶液を流し入れることにより形成してもよい。代わりに、溶液を鋳型または容器に流し入れることで足場を形成し、そしてその後、乾燥させて3次元多孔質マトリックスを形成させてもよい。抗生物質含有ナノ粒子またはミクロスフェアを作出するために溶液を処理してもよい。ゲルを形成するように溶液を超音波処理してもよい。さらに、抗生物質装薬ミクロスフェを別の絹フィブロイン溶液に添加し、そしてその後、ゲルまたはマトリックスに形成してもよい。これらの方法で調製された抗生物質は、4℃、25℃または37℃で貯蔵された場合、少なくとも75%の残存活性を少なくとも60日維持する。
【0013】
本発明の別の態様は、医療用移植片、組織工学、再生医療、若しくは薬物送達システムのための物体または対象の一領域において微生物汚染を予防及び/または処置する方法に関する。該方法は、物体または対象の領域を、絹フィブロインを、ベースとした三次元足場と少なくとも一種の抗生物質剤とを含む組成物に接触させることを含む。該接触は包帯、スポンジ、またはサージカルパック材料により達成してもよい。組成物は、微生物汚染の原因として一般に見出されるような生物のMICを超えるレベルで、該少なくとも一種の抗生物質剤を送達するよう製剤してもよい。例えば、可能性のある微生物汚染は、術部感染と関連している場合がある。一態様では、セファゾリン、ゲンタマイシン、ペニシリン、アンピシリン、またはそれらの組み合わせ等の外科的予防薬が、手術部位感染を予防または処置するために絹フィブロイン中に組み入れられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、抗生物質装薬ミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に直接抗生物質を包埋した絹フィブロイン足場、及び、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹フィブロインマットからの、100μlの水中へのゲンタマイシンのインビトロにおける累積的放出を示す。平均±SD。
【図2】図2は、抗生物質装薬ミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に直接抗生物質を包埋した絹フィブロイン足場、及び、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹フィブロインマットからの、100μlの水中へのセファゾリンのインビトロにおける累積的放出を示す。平均±SD。
【図3】図3は、抗生物質装薬ミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に直接抗生物質を包埋した絹フィブロイン足場、及び、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹フィブロインマットからの、100μlの水中へのゲンタマイシン(パネル3A)及びセファゾリン(パネル3B)の組み合わせでのインビトロにおける累積的放出を示す。平均±SD。
【図4】図4は、装薬したミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に抗生物質を包埋したゲンタマイシン装薬絹フィブロイン足場、または、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹マットの周りの大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上の、37℃における24時間後のクリアランスゾーンの平均を示す。対照は、10μgゲンタマイシン センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク(Becton Dickenson)及び抗生物質欠損足場によるクリアランスを含んでいた。平均±SD。
【図5】図5は、装薬したミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に抗生物質を包埋したゲンタマイシン装薬絹フィブロイン足場、または、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹マットの周りの黄色ブドウ球菌ATCC25923のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上の、37℃における24時間後のクリアランスゾーンの平均を示す。対照は、10μgゲンタマイシン センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク及び抗生物質欠損足場によるクリアランスを含んでいた。平均±SD。
【図6】図6は、装薬したミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に抗生物質を包埋したセファゾリン装薬絹フィブロイン足場、または、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹マットの周りの大腸菌ATCC25922のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上の、37℃における24時間後のクリアランスゾーンの平均を示す。対照は、10μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク及び抗生物質欠損足場によるクリアランスを含んでいた。平均±SD。
【図7】図7は、装薬したミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に抗生物質を包埋したセファゾリン装薬絹フィブロイン足場、または、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹マットの周りの黄色ブドウ球菌ATCC25923のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上の、37℃における24時間後のクリアランスゾーンの平均を示す。対照は、30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク及び抗生物質欠損足場によるクリアランスを含んでいた。平均±SD。
【図8】図8は、装薬したミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に抗生物質を包埋したゲンタマイシン/セファゾリン装薬絹フィブロイン足場、または、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹マットの周りの大腸菌ATCC25922のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上の、37℃における24時間後のクリアランスゾーンの平均を示す。対照は、10μgゲンタマイシン/30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク及び抗生物質欠損足場によるクリアランスを含んでいた。右側のY軸の合計は推定総抗生物質放出を表す。右側のY軸はセンシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクには当てはめることができない。平均±SD。
【図9】図9は、装薬したミクロスフェアを包埋した、抗生物質を積層化した、若しくは足場構造中に抗生物質を包埋したゲンタマイシン/セファゾリン装薬絹フィブロイン足場、または、抗生物質を積層化したエレクトスピニングされた絹マットの周りの黄色ブドウ球菌ATCC25923のミューラー・ヒントン寒天培地プレート上の、37℃における24時間後のクリアランスゾーンの平均を表す。対照は、10μgゲンタマイシン/30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク及び抗生物質欠損足場によるクリアランスを含んでいた。右側のY軸の合計は推定総抗生物質放出を表す。右側のY軸はセンシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクには当てはめることができない。平均±SD。
【図10】図10は、抗生物質含有絹フィルム足場の調剤中で使用されるペニシリン濃度に対する、黄色ブドウ球菌及び大腸菌液体培養の600nmにおける光学密度を示す。
【図11】図11は、4%または8%(w/v)絹溶液から調製された、超音波処理前に絹溶液中へペニシリンを混合しバルクロードした(バルク)、または超音波処理前に絹溶液中へペニシリン絹ミクロスフェアを混合したミクロスフェアを装薬した(スフェア)、ペニシリン装薬絹ゲルの4日に亘る黄色ブドウ球菌阻害を示す。
【図12】図12は、4日に亘るアンピシリン装薬8%(w/v)絹ゲルの黄色ブドウ球菌阻害を示す。絹ハイドロゲルは、ゲル化前に絹溶液中にアンピシリンを混合(バルクロード)することによりアンピシリンを大量(バルク)に装薬しているか、または、超音波処理直後の絹溶液中にアンピシリン絹ミクロスフェアを混合することによりミクロスフェアで装薬されている。
【図13】図13は、4℃(冷蔵)、25℃(室温)、及び37℃(体温)において、溶液中または8%(w/v)絹フィルム中で貯蔵された140日(5ヶ月)に亘るペニシリンの安定性を証明する。N=3、エラーバーは標準偏差を表す。
【図14】図14は、4℃(冷蔵)、25℃(室温)、及び37℃(体温)において、8%(w/v)絹フィルム中、溶液中、及び乾燥粉末として貯蔵されたペニシリンの安定性の比較を示す。N=3、エラーバーは標準偏差を表す。X軸は全て日数で示される。
【図15】図15は、4℃(冷蔵)、25℃(室温)、及び37℃(体温)における、8%(w/v)コラーゲンフィルムに対する8%(w/v)絹フィルム中で貯蔵されたペニシリンの安定性の比較を示す。N=3、エラーバーは標準偏差を表す。
【図16】図16は、ナノフィルム被覆多孔性絹足場から黄色ブドウ球菌及び大腸菌の菌叢上へのゲンタマイシンの累積放出を示す(決定された二つの異なる細菌の間のゲンタマイシン値の密接な一致に注目)。
【図17】図17は、ナノフィルム被覆多孔性絹足場から黄色ブドウ球菌の菌叢上へのセファゾリンの累積的放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明が、本明細書中に記載される特定の方法論、プロトコル及び試薬等々に限定されず、そして異なっていてもよいことが理解されるべきである。本明細書中で使用される用語は、特定の態様の記述のみを目的とし、そして、特許請求の範囲のみによって定義される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0016】
本明細書中及び特許請求の範囲で使用されるように、文脈から明らかに違うことを示していない限り、単数形は複数言及を含み、逆もまた同様である。操作の実施例または他の方法で示されている場合を除いて、成分量または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において、「約」の用語で緩和して理解されるべきである。
【0017】
挙げられる全ての特許及び他の文献は、例えば、本発明との関連で使用され得るそのような文献中に記載される方法論を記載及び開示することを目的として、明示的に本明細書中に組み入れられる。これらの文献は、本出願の出願日前の開示のみのために提供される。この点において、先の発明のおかげまたはその他のいかなる理由であれ、このような開示を先立つものとして本発明が権利を有するものでないと認めていると解釈されるべきではない。これらの文献の日付または表示から内容までについての全ての供述は、出願人に入手可能な情報に基づいており、そして、これらの文献の日付または内容についての正確さについて、いかようにも認定するものではない。
【0018】
他に定義がない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。公知の任意の方法、装置、及び材料を、本発明の実施または試験に使用し得るが、この点について、方法、装置及び材料が明細書中に記載される。
【0019】
本発明は、絹タンパク質と少なくとも一種の抗生物質剤との三次元(3-D)絹フィブロイン足場をベースとする製剤を含む絹フィブロインをベースとする、天然重合体媒体を提供する。このような生物素材組成物は、微生物汚染を予防及び/または処置するための、医療移植片、組織修復等の組織工学、または薬物送達システムのための、独特で医学的に関連した生物適合性の構造を提供する。本発明の絹をベースとした組成物は、少なくとも一つの該抗生物質剤を、このような微生物汚染の原因として通常見出される生物の最小阻害濃度を越えるレベルで送達するよう製剤化してもよい。絹フィブロイン足場中に少なくとも一種の抗生物質剤を包埋する(即ち、組み入れる、吸収させる、または装薬する)ため種々の方法を採用してもよい。例えば、足場形成前に、抗生物質を絹フィブロイン溶液と混合することにより、抗生物質を絹足場に直接組み入れても良く;該剤を、その後、絹足場(多孔性マトリックス若しくはゲル等)中に包埋される絹ミクロスフェアに装薬しても良く;または、一若しくはそれ以上の抗生物質装薬層を絹足場に被覆する。特定の態様では、抗生物質装薬ミクロスフェアを形成するように、絹フィブロインミクロスフェアは抗生物質の存在下で調製され、それはその後、足場(例えば、多孔性マトリックス若しくはゲル)へと形成される絹フィブロイン溶液と混合され、該絹フィブロイン足場中に包埋された抗生物質装薬ミクロスフェアとなる。その他の態様では、該組成物は包帯または移植片上の被覆である。
【0020】
本発明の組成物は、種々の微生物汚染、特に手術部位感染により引き起こされるものを予防または処置するために使用してもよい。一態様において、セファゾリン、ゲンタマイシン、ペニシリン、アンピシリン、またはそれらの組み合わせ等の通常の外科的予防剤を、手術部位感染を予防または処置するために絹フィブロイン足場中に組み入れてもよい。例えば、本発明の薬剤包埋絹フィブロイン足場は、薬剤放出について、並びに、疾病管理センターによると手術部位感染から最も一般的に単離される2つの病原、グラム陰性の大腸菌及びグラム陽性の黄色ブドウ球菌の細菌除去について評価される。本発明は、抗菌剤の有効な局所濃度を適切な時間に亘って提供することにおける、抗生物質を包埋した絹フィブロイン足場の製薬的有用性に関する。さらに、絹フィブロインベースの薬物送達または医療用移植片は、手術のための全身性予防の良好な医薬的代替品となる。絹により達成できる可変性の材料形式、これらの材料の機械的に強固な性質、このタンパク質の生物適合性、及びその制御可能なタンパク質分解性分解と組み合わせると、抗生物質により機能化した絹生物素材は、多くの医学的ニーズにおける使用、並びに、全般的なバイオフィルム制御における適用において興味深い選択肢である。
【0021】
本発明の絹フィブロインをベースとした3-D多孔性の生物素材は、細胞工学のための支持媒体を提供する。絹フィブロイン足場は、生物適合性であり、生物分解性であり、且つ生物学的に多用途で使用できる。絹は生物医療及び生物工学分野での適用において採用されてきた。Sofiaら、54 J. Biomed. Mater. Res. 139-48 (2001);Sohnら、5 Biomacromol. 751-57 (2004);Umら、29 Int. J. Biol. Macromol. 91-97 (2001);Kaplanら、ACS SYMPOSIUN SERIES、第544巻、2-16(McGrath&Kaplan編, Birkhauser, Boston, MA, 1994)中参照。絹はその入手容易性、精製の容易さ(Sofiaら, 2001;Sohnら, 2004;Umら, 2001)、及びその魅力的な特性のため人気がある。Kaplanら, 1994;Kaplanら、PROTEIN BASED MATS, 103-31(McGrath&Kaplan編, Birkhauser, Boston, MA, 1998);Wangら、27 Biomats, 6064-82(2006)参照。
【0022】
絹は珍しいアミノ酸配列を有する:絹フィブロインタンパク質のバルクは、アラニン及びグリシンに富む疎水性ドメイン、並びに、鎖末端親水性ブロック内に密集した大きな側鎖に組織されている。Biniら、335 J. Mol. Biol. 27-40(2004)参照。構造的に親水性ブロックはより不規則な領域を形成するのに対し、疎水性ブロックは結晶領域へと組み立てられる。Zhouら、44 Proteins: Struct. Funct. Bioinf. 119-22(2001)。絹フィブロインの大きな疎水性領域は、分子内及び分子間水素結合並びに疎水性相互作用を介した結晶性β-シート構造へと集合することができ、それが絹フィブロインタンパク質の特異な特性に寄与する。
【0023】
絹フィブロインをベースとする材料は、細胞移動及び細胞接着、新しい細胞外マトリックスの形成、並びに、代謝の老廃物及び栄養素の輸送を促進する。Kimら、26 Biomats. 2775-85(2005);Hofmannら、111 J. Contr. Rel. 219-27(2006);Klugeら、26 Trends Biotechnol. 244-51(2008)。カイコガからのカイコ絹は構造タンパク質フィブロイン、及びフィブロイン線維を結合する可溶性膠様セリシンより構成されている。Magoshiら、POLYMERIC MATS. ENCYCLOP中「Silk fiber formation, multiple spinning mechanisms(絹繊維形成、多様な糸紡ぎ機構)」(Salamone編, CRC Press, NY, 1996)。フィブロインは基本的に、絹材料の機械的安定性、伸張性強度、及び靭性の基礎をなす、水素結合及び疎水性相互作用によりアンチパラレルな結晶性β-シート列を形成するアミノ酸のグリシン、アラニン及びセリンからなる。Altmanら、23 Biomats. 4131-41(2002);Altmanら、24 Biomats. 401-16(2003);Kimら、2005。
【0024】
絹フィブロインは、心血管及び筋骨格移植片、組織工学により作られた軟骨、骨及び靭帯の基質のための生物材料として、並びに、ヒト間葉性幹細胞を特定の組織への適切な分化を導くために調査されてきた。Meinelら、88 Biotechnol. Bioeng. 379-91(2004);Meinelら、37 Bone 688-98(2005);Hofmannら、2006。絹足場は、細胞増殖及び薬物送達のための生存可能な培地を提供し、間葉性幹細胞分化を導くよう、タンパク質放出を介して成長因子及びサイトカイン等のシグナルを供給する。Meinelら、2004;Mainelら、37 Bone 688-98(2005);Hofmannら、2006。多くの合成金属移植片及び高分子は、生物学的に関連性のある条件下で分解されず、そして生物学的に分解性の合成ポリマー(例えば、ポリグリコール酸、ポリ-L-乳酸、ポリヒドロキシ-アルカノエート、及びポリエチレングリコール)は機械的強度を急速に失い、安定な細胞外マトリックスの産生を助け得ない。Wakeら、5 Cell Transplant. 465-73(1996);Kimら、251 Exp. Cell. Res. 318-28(1999);Zhangら、29 Biomats. 2217-27(2008)。組織工学における絹の利用は、機能的及び機械的に有効な移植片材料を生成することができ、これは適切な細胞分化及び/または成長の制御のための生物学的に活性なタンパク質を、制御された薬物送達を介して安定化しかつ放出する。Hofmannら、2006;Wangら、29 Biomats. 894-903(2008)。
【0025】
移植片または再生医療において使用するために設計された絹フィブロイン足場の効率の評価に当たって、主な制限は、この適用が微生物汚染の影響を受けやすいことに関する。手術部位感染は院内感染の二番目に一般的な原因である。Burke、348 N. Engl. J. Med. 651-56(2003);Bratzler & Houck、38 Clin. Infect. Dis. 1706-15(2004)。手術部位感染を起こす患者は、手術部位感染のない患者と比べて、集中治療室に収容される可能性が60%高く、病院へ再入院する可能性が5倍高く、そして、死ぬ可能性が2倍高い。Bratzler & Houck、2004。さらに、患者の医療費は手術部位感染の発生により有意に増加する。Kirklandら、20 Infect. Contrl. Hosp. Epidemiol. 725-30(1999);Hollenbeakら、23 Infect. Contr. Hosp. Epidemiol. 177-82(2002)。連邦防疫センター(CDC)により認可された全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムは、手術部位感染から単離された病原の分布が、過去10年の間一定のままであったことを立証した。黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、エンテロコッカス種、及び大腸菌が手術部位感染から最も頻繁に単離される病原である。NNIS、27 Am. J. Infect. Contr. 520-32(1999)。
【0026】
手術後の微生物汚染を予防するための普及している効果的な方法は抗菌予防である。メディケアおよびメディケイドサービスセンター及びCDCの手術感染予防ガイドライン執筆作業グループ(Surgical Infection Prevention Guideline Writers Workgroup)によると、婦人科、産科、腹部、整形外科、心胸郭、血管、及び結腸直腸手術の適切な予防はしばしば、第一世代セファロスポリン抗生物質セファゾリン及びアミノグリコシド抗生物質ゲンタマイシンを含む。至適な予防は、血清、組織、及び傷口における、手術中及び細菌感染の高いリスクの期間中の適切な抗生物質の十分な濃度を保証する。Bratzler&Houck、2004。しかしながら、予防的抗菌剤の投与の適切な選択、タイミング、及び持続時間に関しては多数の不合理がある。Id.;Mangramら、27 Am. J. Infect. Contr. 132-34(1999)。さらに、最低の手術部位感染率を達成するため、抗生物質剤は切開部または移植片領域に可能な限り近くに投与されるべきである。Classenら、326 N. Engl. J. Med. 281-86(1992);Burke、348 Engl. J. Med. 651-6(2003);Bratzler & Houck、2004。さらには、感染予防のための全身的な抗菌の取り組みはしばしば不十分な抗生物質の局所濃度をもたらし、そして、手術部位感染のリスクを有意に増加させる。Parkら、25 Biomats. 3689-98(2004);Bratzler & Houck、2004。
【0027】
本発明の一態様は、絹タンパク質及び少なくとも一種の抗生物質剤の3-D絹フィブロイン足場をベースとした製剤を含む組成物に関する。本発明の生物素材は、微生物汚染を予防及び/または処置するために、医療移植片、組織工学、再生医療、または薬物送達に使用してもよい。組成物は少なくとも一種の抗生物質剤を、そのような微生物汚染の原因として一般に見出される生物のMICを超えるレベルで送達するよう製剤化してもよい。特定の抗菌剤及び特定の微生物についてのMICは、該微生物にとっては他の点では適当な成長培地中に、その微生物にとって該成長培地を不適当にするために存在する必要がある該抗菌剤の最低濃度、即ち、該微生物の成長を阻害する最低濃度として定義される。
【0028】
本明細書中で使用されるように、「フィブロイン」という用語は、カイコフィブロイン、及び、昆虫またはクモ絹タンパク質を含む。例えば、Lucasら、13 Adv. Protein Chem. 107-242(1958)参照。絹フィブロインは、溶解したカイコの絹またはクモの絹を含む溶液から得てもよい。カイコ絹タンパク質は、例えばカイコガから得られ、そしてクモの絹はジョロウグモから得られる。代わりに、本発明における使用に好適な絹タンパク質は、細菌、酵母、哺乳動物細胞、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物等からの遺伝子工学的に製造された絹を含む溶液から得ることもできる。例えば、WO97/08315号;米国特許第5,245,012号参照。
【0029】
少なくとも一種の抗生物質剤を絹フィブロイン足場に包埋するために種々の方法を採用してもよい。一態様において、抗生物質剤は、3-D足場であってもよい絹フィブロイン足場に直接組み入れられる。他の態様において、抗生物質剤は絹フィブロイン溶液と混合され、その後、絹フィブロイン足場を抗生物質装薬絹フィブロイン溶液中に漬け、得られた構造を乾燥することにより、絹フィブロイン足場を一つまたは複数の抗生物質剤装薬層で被覆する。他の態様において、抗生物質含有組成物を調製する工程は、少なくとも一種の抗生物質剤を組み入れた絹ミクロスフェアを調製する工程;抗生物質装薬絹ミクロスフェアを絹フィブロイン水性塩溶液と混合する工程;並びに、抗生物質装薬絹ミクロスフェアを包埋した3-D絹フィブロイン足場を形成するために、溶液から塩及び水を除去する工程を含む。さらに別の態様では、生物素材を調製する工程は、少なくとも一種の抗生物質剤装薬絹ミクロスフェアを調製する工程;抗生物質装薬絹ミクロスフェアを絹フィブロイン溶液と混合する工程;及び、抗生物質装薬絹ミクロスフェアを包埋した3-D絹フィブロインゲル足場を形成するために溶液を超音波処理する工程を含む。他の態様においては、抗生物質含有絹組成物は、包帯または移植片等の基質の被覆として使用される。
【0030】
本発明はさらに、薬物送達において一般に使用される、絹フィブロイン足場中に抗生物質剤を包埋する他の方法を包含する。絹フィブロインマトリックスは、水性絹フィブロイン溶液から調製してもよく、これは当分野において公知の技術を用いてカイコ繭から調製され得る。例えば、米国特許出願シリーズ第11/247,358号;WO/2005/012606号;WO/2008/127401号参照。絹水性溶液はその後エレクトロスピニング(Jinら、3 Biomacromol. 1233-39(2002))、超音波処置(Wangら、29 Biomats. 1054-64(2008))、または共有結合による化学修飾(Murphyら、29 Biomats. 2829-38(2008))等の種々の加工技術を用いて絹フィブロインマトリックスへと加工され得る。これらの加工は、β-シート集合により形成及び/または安定化され、これらの結晶性β-シート領域の大きさ及び分布に依存した機械的特性及び酵素分解率を有する絹生物素材を産する。例えば、Asakuraら、42 Magn. Reson. Chem. 258-66(2004)参照。例えば、絹足場は凍結乾燥、脱塩またはガス発泡成形により作られた多孔性絹フィブロイン材料を含んでもよい。WO 2004/062697号参照。
【0031】
本発明の生物素材に包埋し得る抗生物質剤は、これらに限定されないが、アクチノマイシン、アミノグリコシド(例えば、ネオマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン)、ベータ-ラクタマーゼ阻害剤(例えば、クルブラン酸、スルバクタム)、グリコペプチド(例えば、バンコマイシン、テイコプラニン、ポリミキシン)、アンサマイシン、バシトラシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファクロル、セフジトレン、セフトビプロール、セフロキシム、セフォタキシム、セフェピム、セファドロキシル、セフォキシチン、セフプロジル、セフジニル)、グラミシジン、イソニアジド、リネゾリド、マクロライド(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)、ムピロシン、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン)、オキソリン酸、ポリペプチド(例えば、バシトラシン、ポリミキシンB)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン、ナリジクス酸、エノキサシン、ガチフロキサシン、レバキン、オフロキサシン等)、スルホンアミド(例えば、スルファサラジン、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コトリメトキサゾール)、スルファジアジン)、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン等)、アズトレオナム等のモノバクタム、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、エタンブトール、ムピロシン、メトロニダゾール、ペフロキサシン、ピラジンアミド、チアムフェニコール、リファンピシン、チアンフェニコール、ダプソン、クロファジミン、キヌプリスチン、メトロニダゾール、リネゾリド、イソニアジド、ピプラシル、ノボビオシン、トリメトプリム、ホスホマイシン、フシジン酸、またはその他の局所的抗生物質を含む。場合により、抗生物質剤は、デフェンシン、マガイニン、及びナイシン等の抗菌ペプチド、または溶解バクテリオファージであり得る。抗生物質剤はまた、上に挙げたいずれの剤の組み合わせであり得る。本発明の一態様において、抗生物質剤はセファゾリン、ゲンタマイシン、またはその組み合わせである。
【0032】
さらに、本発明の抗生物質装薬足場は少なくとも一種の活性剤等のその他の成分を含んでもよい。該剤は、足場中に包埋されていても、または足場上に固定されていてもよい。より詳細には、追加の活性剤の組成物中への包埋は、抗生物質を混合する前またはする時に、該活性剤を絹フィブロインベースの溶液に導入することにより達成してもよい。代わりに、抗生物質含有足場構造の形成後に該活性剤を絹フィブロインベースの組成物中に導入してもよい。
【0033】
本発明の絹フィブロインベース足場と一緒に使用できる活性剤の種類は多様である。例えば、該活性剤は、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸アナログ、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNA、RNA、siRNA)、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはその断片若しくは部分、抗原またはエピトープ、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、成長因子または組換成長因子並びにその断片及びバリアント、細胞付着媒介物(RGD等)、サイトカイン、酵素、抗炎症剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬物(例えば、薬物、染料、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤)その他の抗菌化合物、並びに、それらの組み合わせ等の、治療剤または生物材料であってもよい。例えば、PCT/US09/44117号;米国特許出願シリーズ第61/224,618号参照。
【0034】
ある態様において、該活性剤はまた、菌類、植物若しくは動物、またはウイルス(バクテリオファージを含む)等の生物であってもよい。さらに、該活性剤は、神経伝達物質、ホルモン、細胞内シグナル伝達剤、医薬的活性剤、毒素剤、農業用化学物質、化学的毒素、生物学的毒素、微生物、並びに、ニューロン、肝細胞及び免疫系細胞等の動物細胞を含んでもよい。該活性剤はまた薬理学的材料、ビタミン、鎮静剤、催眠剤、プロスタグランジン及び放射性医薬品等の治療的化合物を含んでもよい。
【0035】
本明細書での使用に好適な例示的細胞は、これらに限定されないが、始原細胞または幹細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、尿路上皮細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、口細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、ケラチノサイト、尿細管細胞、腎基底膜細胞、外皮細胞、骨髄細胞、肝細胞、胆管細胞、膵島細胞、甲状腺の細胞、副甲状腺の細胞、副腎の細胞、視床下部の細胞、脳下垂体の細胞、卵巣の細胞、精巣の細胞、唾液腺細胞、脂肪細胞、及び前駆細胞を含んでもよい。さらに、WO2008/106485号、PCT/US2009/059547号、WO2007/103442号参照。
【0036】
例示的な抗体は、これらに限定されないが、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、セルトリズマブペゴール、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブCD3、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ペンテト酸アルツモマブ、アルシツモマブ、アトリズマブ、ベクツモマブ(bectumomab)、ベリムマブ、ベシレソマブ、ビシロマブ(biciromab)、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、デノスマブ、エドレコロマブ、エフングマブ(efungumab)、エルツマクソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ(etaracizumab)、ファノレソマブ(fanolesomab)、フォントリズマブ(fontolizumab)、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、イゴボマブ(igovomab)、イムシロマブ(imciromab)、ラベツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン(nofetumomab merpentan)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)、ペルツズマブ、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、スレソマブ(sulesomab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、ボツムマブ(votumumab)、ザルツムマブ、及びザノリムマブを含む。
【0037】
追加の活性剤は、ダルベッコ改変イーグル培地、仔ウシ胎児血清、非必須アミノ酸及び抗生物質等の細胞成長培地;繊維芽細胞成長因子、形質転換成長因子、血管内皮成長因子、表皮成長因子、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、骨形成成長因子、骨形成様タンパク質、形質転換成長因子、神経成長因子及び関連タンパク質等の成長及び形成因子(成長因子は当分野において公知である;例えば、Rosen & Thies、CELLULAR&MOLECULAR BASIS BONE FORMATION&REPAIR (R.G. LandesCo.)参照);エンドスタチン及びその他の天然由来または遺伝子工学的に作られたタンパク質等の抗血管新生タンパク質;多糖、グリコタンパク質、またはリポタンパク質;抗生物質及び抗ウイルス剤等の抗感染剤、化学療法剤(即ち、抗癌剤)、抗拒絶剤、鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、抗炎症剤、並びにステロイドを含む。
【0038】
本明細書での使用に好適な例示的酵素は、これらに限定されないが、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、有機リン酸デヒドロゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ等々を含む。例えば、アビジン及びビオチンの特異的相互作用のような成分間の相互作用もまた、それを介して絹フィブロインを機能させるために使用してもよい。米国特許出願シリーズ第61/226,801号参照。
【0039】
本発明の態様はさらに、ポリエチレンオキシド(例えば、米国特許出願シリーズ第61/225,335号参照)、ポリエチレングリコール(PCT/US09/64673号参照)、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、アルギン酸、キトサン、キチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、デキストラン、ポリ無水物、グリセロール(PCT/US2009/060135号参照)、及び他の生物適合性ポリマー等の好適な生物適合性材料を、絹フィブロイン足場中に含んでもよい。WO2004/0000915号参照。さらに、絹フィブロイン上に陰イオンポリマー界面を形成し、そして界面を無機化する物質と接触させることにより、絹足場の一部または全部を無機材料で被覆してもよい。WO2005/000483号参照。代わりに、絹をハイロドキシアパタイト粒子と混合してもよい。PCT/US08/82487号参照。本明細書中で述べるように、絹フィブロインは、有機-無機複合物を形成するのに使用される、繊維状タンパク質ドメイン及び無機化ドメインを含む融合ポリペプチドを含める等の、絹のさらなる修飾を可能とする組換起源であってもよい。これらの有機-無機複合物は、使用される繊維状タンパク質融合ドメインの大きさに依存して、ナノからマクロスケールで構築できる。WO2006/076711号参照。さらに、米国特許出願シリーズ第12/192,588号参照。
【0040】
追加の絹ベース構造が本発明の抗生物質足場に含まれてもよく、またそうでなければ、追加の絹ベース構造が本発明の抗生物質足場を含んでもよい。例えば、足場は溝(WO2008/106485号)、またはマイクロチャネル(WO2006/042287号、WO2008/127403号、WO2008/127405号)、または管(WO2009/023615号)、またはその他の構造(PCT/US2009/039870号)、及び、場合により、これらの構造化された足場内にセルを含んでもよい。さらに、WO/2008/108838号参照。本発明の足場は固定された薬剤の勾配を含んでも、または、抗生物質若しくは薬剤装薬ミクロスフェアの勾配を含有してもよい。例えば、Wangら、134 J. Contr. Release 81-90(2009)参照。絹足場は、例えば、カルボジイミド化学(米国特許出願公開第2007/0212730号参照)、ジアゾニウムカップリング反応(例えば、米国特許出願シリーズ第12/192,588号参照)またはPEGポリマー(例えば、PCT/US09/64673号参照)の化学的に活性な若しくは活性化された誘導体によるペグ化により、均質または勾配のある様式で活性化されてもよい。本明細書中及び、例えばWO2007/016524号に記載されるように、層毎に、付加的な成分または活性剤を絹足場上に装薬してもよい。例えば、WO2007/016524号。絹ミクロ流体足場は創傷治癒で特に役立つかも知れない。PCT/US09/067006号参照。
【0041】
本発明の抗生物質送達のための絹フィブロイン足場はさらに、フォトニック印影(例えば、ホログラム)(PCT/US08/82487号、PCT/US09/47751号参照)等の識別記号を含んでもよく、または、ナノパターン表面を有する絹ベースのバイオポリマー光学装置(WO2008/127404号、WO2008/118211号、WO2008/127402号、WO2008 /140562号参照)、生物分解性の電子機器(WO/2008/085904号参照)または反射表面(米国特許出願シリーズ第61/226,801号参照)中に組み入れても、またはそれを含んでもよい。例えば、抗生物質含有絹足場は、使用期限、及び/または出所の正しさを示す製造者のラベルが記されていてもよい。PCT/US09/47751号参照。
【0042】
本発明はまた、長期貯蔵のための、及び抗生物質を絹足場に組み入れることによって安定化するための組成物並びに方法を提供する。例えば、ペニシリンについての1929年のフレミングの最初の論文に遡ると、該文献はペニシリンが溶液中で不安定であり、室温(25℃)で数週間内に、そして37℃では24時間以内に崩壊することを報告している。例えば、Benedictら、49 J. Bacteriol. 85-95(1945)参照。体温におけるペニシリンの崩壊は、24時間より長い期間に亘って放出するよう設計されたいずれの移植用送達システムにおいても重大な問題となる。さらに、25℃の温度における抗生物質の不安定さは、抗生物質の輸送及び貯蔵(特に、冷蔵が制限される場所)において問題となる。驚くべきことに、本発明の絹足場中に組み入れた場合、ペニシリンは室温(25℃)及び体温(37℃)において少なくとも30日間安定である(即ち、少なくとも50%の残存活性を維持する)。よって、温度感受性抗生物質を冷蔵することなく絹フィブロイン足場中に貯蔵できる。重大なことに、温度感受性抗生物質を絹足場に入れて体内へ送達でき、そして、以前に想像されていたよりも長期間活性を維持できる。
【0043】
本発明はまた、医療用移植片、組織工学、または薬物送達の対象の領域における微生物汚染を予防及び/または処置する方法に関する。該方法は、対象の該領域を、少なくとも一種の抗生物質剤を含む絹フィブロイン足場を含む材料と接触させることを含む。本発明の組成物は、このような微生物汚染の原因として一般に見出される生物のMICを超えるレベルで、少なくとも一種の抗生物質剤を送達するよう製剤化してもよい。従って、例えば、抗生物質含有足場は細胞外マトリックスの発現に治療的または予防的効果を有する(陽性の薬理学的効果を有する剤と同様に)。この点において、例えば、生物活性剤は創傷治癒を増幅できる(例えば、血管部位において)。
【0044】
実際、本発明の抗生物質足場は、制御された放出システムを含む薬物(例えば、小分子、タンパク質、または核酸)送達装置、血管創傷修復装置を含む創傷閉鎖システム、止血包帯、包帯、貼付剤及び接着剤、縫合糸等の多様な医学的応用、並びに、例えば、組織再生のための足場、靭帯補綴装置等の組織工学的応用、並びに、動物またはヒト体内への長期または生物分解性移植のための製品で使用してもよい。
【0045】
絹組成物からの抗生物質及び/または追加の活性剤の制御された放出は、例えば、包括的に約12時間若しくは24時間よりも長い、または包括的に1ヶ月若しくは2ヶ月若しくは5ヶ月よりも長い期間に亘って起こるよう設計してもよい。放出の時間は、例えば、約12時間から24時間または約12時間から1週間の期間に亘って起こるよう選択してもよい。他の態様において、放出は、例えば、包括的に約1ヶ月から2ヶ月のオーダーで起こってもよい。例えば、特定の放出プロフィールは、創傷治癒または一定の放出及び高い局所投薬量が望ましい箇所に、より効果的であり得る。
【0046】
特に手術部位感染により引き起こされた微生物汚染の予防及び/または処置方法が本発明に包含される。手術部位感染は院内感染の最も一般的な原因の一つであり、そして、患者の安全性及び公衆衛生において甚大な問題である。本発明の生物素材を使用して処置または予防し得る手術部位感染は、これらに限定されないが、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)、緑膿菌(P. aeruginosa)、エンテロコッカス・フェーカリス(E. faecalis)、プロテウス・ミラビリス(P. mirabilis)、霊菌(S. marcescens)、エンテロバクター・クロアカ(E. cloacae)、アセチノバクター・アニツラツス(Acetinobacter anitratus; A. anitratus)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、大腸菌、黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、及びエンテロコッカス種等々の細菌感染を含む。本発明の方法は、これらに限定されないが、婦人科、産科、腹部、整形外科、心胸郭、血管、及び大腸直腸手術を含むいずれの手術部位感染にも効果的である。微生物汚染を予防または処置するための、哺乳動物、特にヒトの体の標的領域は、これらに限定されないが、皮膚、肺、骨、関節、胃、血液、心臓弁、尿路、または微生物汚染を有し得る若しくは手術部位感染を特に起こしやすいその他の領域を含む。
【0047】
本製剤は組成物中に被包された抗生物質を必要とする患者に投与され得る。医薬製剤は、局所、経口、眼、経鼻、経皮、または非経口(静脈内、腹腔内、筋内及び皮内注射、並びに、経鼻または吸入投与を含む)、並びに移植を含む当分野において公知の多様な経路により投与することができる。送達は領域的でも局所的でもよい。さらに、送達は、例えばCNS送達のために髄腔内へでもよい。
【0048】
所望により、抗生物質含有絹足場は標的リガンドまたは前駆標的リガンドを含んでもよい。標的リガンドは、薬物製剤の組織及び/または受容体へのインビボ及び/またはインビトロにおけるターゲティングを促進するいずれの材料または物質をも指す。標的リガンドは合成、半合成、または天然起源であってもよい。標的リガンドとなり得る材料または物質は、例えば、抗体、抗体断片、ホルモン、ホルモンアナログ、糖タンパク質及びレクチンを含むタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、糖、単糖類及び多糖類を含む糖質、炭水化物、ビタミン、ステロイド、ステロイドアナログ、ホルモン、補因子、並びに、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオチド酸構築物、ペプチド核酸(PNA)、アプタマー、及びポリヌクレオチドを含む遺伝的材料を含む。本発明におけるその他の標的リガンドは、例えばサイトカイン、インテグリン、カドヘリン、免疫グロブリン、及びセレクチンがその中に含まれる細胞接着分子(CAM)を含む。標的リガンドの前駆体とは、標的リガンドに変換され得る任意の材料または物質を指す。そのような変換には、例えば、標的リガンドの前駆体を固着することが含まれてもよい。例示的な標的前駆体部分は、マレイミド基、オルトピリジルジスルフィド等のジスルフィド基、ビニルスルホン基、アジド基、及びヨードアセチル基を含む。
【0049】
インビボ適用のための調製においては、本発明の絹ベース足場を、賦形剤を含むように製剤してもよい。例示的な賦形剤には、所望の特定の投薬量形体に適するように、希釈剤、溶媒、緩衝剤、または他の液性ビヒクル、可溶化剤、拡散または懸濁剤、等張剤、粘度制御剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、保存剤、安定剤等々が含まれる。製剤はまた充填剤、キレート剤、及び抗酸化剤を含んでもよい。非経口製剤が使用される場合、製剤は追加または代替的に、糖、アミノ酸、または電解質を含んでもよい。
【0050】
より詳細には、薬学的に許容される担体となり得る材料の例は、これらに限定されないが、ラクトース、グルコース、及びショ糖等の糖;コーンスターチ及びバレイショデンプン等のデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース等のセルロース並びにその誘導体;粉末化トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ごま油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油等の油;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;寒天;ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等の非毒性相溶性潤滑剤;例えば、約70,000kDより少ない分子量の、トレハロース、マンニトール、及びポリエチレングリコール等のポリオールを含む。例えば、米国特許第5,589,167号参照。例示的な界面活性剤はTween界面活性剤等の非イオン性界面活性剤、ポリソルベート20または80等々のようなポリソルベート、並びに、ポリキサマ184または188等のポロキサマ、プルロニックポリオール、並びにその他のエチレン/ポリプロピレンブロックポリマー等々を含む。好適な緩衝剤は、トリス、クエン酸、コハク酸、酢酸、またはヒスチジン緩衝液を含む。好適な保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムを含む。その他の添加物には、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、及びゼラチンが含まれる。好適な安定化剤には、ヘパリン、多硫酸ペントサン、及びその他のヘパリン類似物質、並びに、マグネシウム及び亜鉛等の二価陽イオンが含まれる。染色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、調味料及び賦香剤、保存料及び抗酸化剤もまた、製剤者の判断により該組成物中に存在できる。
【0051】
本発明のある態様は、医療用移植片、組織修復における、及び、医療用機器被覆のための潜在的な用途における、抗生物質薬物送達システムとしての、絹フィブロインベースの生物素材の用途に関する。特に、セファゾリン及びゲンタマイシン、またはその組み合わせ等の一般の手術における予防用抗生物質は、多様な方法を使用して絹足場中に包埋される。薬物包埋絹足場は、薬物放出動力学、並びに、手術部位感染から単離された優勢病原である、例えば大腸菌及び黄色ブドウ球菌の細菌クリアランスについて評価してもよい。
【0052】
抗菌薬物治療の主目標は細菌耐性及び毒性等の有害な副作用を最小にしつつ治療効果を最大にすることである。Dombら、3 Polym. Adv. Technol. 279-92(1993)。静脈内または筋内注射、経口投薬、及びその他の配剤経路を介した薬物投与は、血液の灌流する種々の器官及び組織への抗生物質の広汎且つ全身的な分布に至るが、標的に到達する量は少量ではっきりとしない。Dombら、(1993);Parkら、52 J. Contr. Release 179-89(1998)。本発明は、制御された速度での効果的な局所薬物放出を可能にする医療用移植片等への適用のための、絹フィブロイン等の天然で、生物適合性且つ生物分解性のポリマーを提供する。この結果は、抗菌予防及び術後の持続的な薬物投与の必要性をおそらく無くすであろう。
【0053】
図1〜3は、ゲンタマイシン、セファゾリン、並びに、ゲンタマイシン及びセファゾリンの組み合わせについて、抗生物質剤の直接の絹足場中への包埋、抗生物質装薬絹ミクロスフェアの絹足場中への包埋、一若しくはそれ以上の抗生物質装薬層による絹足場の被覆、または抗生物質装薬層によるエレクトロスピニングされた絹フィブロインマットの被覆を含む異なる方法により、これらの抗生物質を包埋した絹フィブロインをベースとした足場からのインビトロの抗生物質放出プロフィールを示す。図4〜9は、ゲンタマイシン、セファゾリン、及びゲンタマイシンとセファゾリンとの組み合わせを、本明細書で論じた包埋方法を用いて装薬した絹材料を使用した、大腸菌ATCC 25922及び黄色ブドウ球菌ATCC 25923についてのインビトロの細菌クリアランスプロフィールを示す。
【0054】
絹フィブロイン構造からのゲンタマイシンの抗生物質放出のプロフィールは、図1に示すように、薬剤-絹足場製剤に応じて異なっている。全ての薬剤装薬は、24時間以内のゲンタマイシン放出の初期バーストに続く0に近い放出速度への急激な減少を示し、ゲンタマイシン装薬絹ミクロスフェアを絹足場中に包埋したものでの処置が、最も小さい放出のバーストを示した。24時間後、ゲンタマイシン装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場について分光光度検出されたゲンタマイシンのインビトロの放出プロフィール(0.136μg±0.017μg;p<0.05)は、ゲンタマイシンを積層化した絹足場(0.577μg±0.016μg)、ゲンタマイシンを直接フィブロイン構造中に包埋した絹足場(0.471μg±0.017μg)、及び、抗生物質を積層したエレクトロスピニングされた絹フィブロイン(0.770μg±0.020μg)よりも有意に低かった。
【0055】
図2に示すように、セファゾリンの分光光度検出されたインビトロ抗生物質放出プロフィールは薬物-絹足場製剤により異なっている。ゲンタマイシン放出プロフィールで観察されたように、全ての薬剤装薬は24時間以内の抗生物質放出の初期バーストに続いての放出速度の急な減少を示した。剤装薬層による絹足場の被覆は、24時間バースト後に実質的に0となる放出速度をもたらした。対照的に、足場中に直接包埋した、または、足場中の絹ミクロスフェア中に捕らえられた抗生物質は最も小さいバーストであったが、試験期間中を通じて薬物の放出を低い速度で持続した。24時間後のセファゾリン放出は、絹足場中に直接セファゾリンを包埋した(0.235μg±0.001μg;p<0.05)、及び、絹足場中にセファゾリン装薬絹ミクロスフェアを包埋した(0.382μg±0.005μg;p<0.05)製剤で、セファゾリンを絹足場に積層した(0.637μg±0.050μg)及び抗生物質をエレクトロスピニングした絹フィブロインマットの(0.770μg±0.019μg)製剤よりも低かった。
【0056】
図3に示すように、ゲンタマイシン/セファゾリンの組み合わせのインビトロ抗生物質放出プロフィールは薬物-絹足場製剤に応じて異なっている。全ての薬剤装薬は、24時間以内の抗生物質放出の初期バーストに続いての放出速度の頭打ちを示した。24時間後に分光光度検出された抗生物質放出は、ゲンタマイシン/セファゾリン装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場(0.136μg±0.017μg;p<0.05)で、ゲンタマイシン/セファゾリンを積層した足場(0.577μg±0.016μg)、ゲンタマイシン/セファゾリンを直接フィブロイン構造中に包埋した足場(0.471μg±0.017μg)、及び、抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(0.770μg±0.020μg)よりも有意に低かった。
【0057】
図4に示すように、大腸菌 ATCC 25922の平均クリアランスゾーンとして表されるディスク拡散は、24時間後、ゲンタマイシンを直接絹フィブロイン構造中に包埋した絹足場(14.0mm±2.30mm;p<0.05)及びゲンタマイシン装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場(2.00mm±2.67mm;p<0.05)において、その他全ての薬物-絹製剤よりも有意に低かった。ゲンタマイシンを積層した足場(28.0mm±2.33mm)及び抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(30.0mm±1.67mm)は、10μgゲンタマイシン センシ・ディスク(商標)のディスク(27.0mm±1.00mm)と同様のゾーンの大腸菌を排除した。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクのクリアランスゾーン値は、NCCLS Document M100-S13(M2):ディスク拡散補足表(NCCLS, Wayne, PA, 2003)(以下、NCCLS, 2003)において樹立された値から統計学的に異なっておらず、本結果の妥当性を裏付けている(p>0.05)。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク対照によるクリアランスゾーンに基づき、各薬剤-絹製剤についてのゲンタマイシン放出を評価した(図4)。
【0058】
図5に示すように、黄色ブドウ球菌ATCC25923の平均クリアランスゾーンとして表されるゲンタマイシンのディスク拡散は、24時間後、ゲンタマイシンを直接絹フィブロイン構造中に包埋した絹足場(10.0mm±2.67mm;p<0.05)及びゲンタマイシン装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場(13.0mm±2.67mm;p<0.05)において、その他全ての薬物-絹製剤よりも有意に低かった。ゲンタマイシンを積層した足場(27.0mm±2.33mm)及び抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(28.0mm±1.33mm)は、10μgゲンタマイシン センシ・ディスク(商標)のディスク(28.0mm±1.33mm)と同様に黄色ブドウ球菌を排除した。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクのクリアランスゾーン値は、NCCLS, 2003において樹立された値から統計学的に異なっておらず、本結果の妥当性を裏付けている(p>0.05)。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク対照によるクリアランスゾーンに基づき、各薬剤-絹製剤についてのゲンタマイシン放出を評価した(図5)。
【0059】
図6に示すように、大腸菌ATCC25922の平均クリアランスゾーンとして表されるセファゾリンのディスク拡散は、24時間後、セファゾリンを直接絹フィブロイン構造中に包埋した絹足場(6.00mm±3.67mm;p<0.05)において、その他全ての薬物-絹製剤よりも有意に低かった。セファゾリン装薬絹ミクロスフェアを包埋した(19.0mm±2.67mm)、セファゾリンを積層した(21.0mm±3.33mm)及び抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(25.0mm±2.33mm)の絹足場は、30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)のディスク(27.0mm±0.67mm)と同様に大腸菌を排除した。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクのクリアランスゾーン値は、NCCLS, 2003において樹立された値から統計学的に異なっておらず、本結果の妥当性を裏付けている(p>0.05)。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク対照によるクリアランスゾーンに基づき、各薬剤-絹製剤についてのゲンタマイシン放出を評価した(図6)。
【0060】
図7に示すように、黄色ブドウ球菌ATCC25923の平均クリアランスゾーンとして表されるセファゾリンのディスク拡散は、24時間後、セファゾリンを直接絹フィブロイン構造中に包埋した絹足場(8.00mm±2.67mm;p<0.05)において、その他全ての薬物-絹製剤よりも有意に低かった。セファゾリン装薬絹ミクロスフェアを包埋した(17.0mm±3.33mm)、セファゾリンを積層した(36.0mm±2.33mm)及び抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(30.0mm±2.33mm)の絹足場は、30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)のディスク(37.0mm±0.33mm)と同様に黄色ブドウ球菌を排除した。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクのクリアランスゾーン値は、NCCLS, 2003において樹立された値から統計学的に異なっておらず、本結果の妥当性を裏付けている(p>0.05)。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク対照によるクリアランスゾーンに基づき、各薬剤-絹製剤についてのセファゾリン放出を評価した(図7)。
【0061】
大腸菌ATCC25922の平均クリアランスゾーンとして表されるゲンタマイシン/セファゾリンのディスク拡散は(図8)、24時間後、ゲンタマイシン/セファゾリンを直接絹フィブロイン構造中に包埋した絹足場(10.00mm±3.33mm;p<0.05)及びゲンタマイシン/セファゾリン装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場(10.0mm±3.67mm;p<0.05)において、その他全ての薬物-絹製剤よりも有意に低かった。ゲンタマイシン/セファゾリンを積層した(23.0mm±3.33mm)及び抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(26.0mm±2.33mm)の絹足場は、10μgゲンタマイシン センシ・ディスク(商標)のディスク(26.5mm±0.50mm)及び30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)のディスク(27.0mm±0.40mm)と同様に大腸菌を排除した。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク対照によるクリアランスゾーンに基づき、各薬剤-絹製剤についてのゲンタマイシン/セファゾリン放出を見積もった(例えば、ゲンタマイシン/セファゾリンを積層した絹足場は、ミューラー・ヒントン寒天プレート上で12μgのセファゾリン及び4μgのゲンタマイシンを同時に放出すると見積もられた。)(図8)。
【0062】
黄色ブドウ球菌ATCC25923の平均クリアランスゾーンとして表されるゲンタマイシン/セファゾリンのディスク拡散は、24時間後、ゲンタマイシン/セファゾリンを直接絹フィブロイン構造中に包埋した絹足場(11.00mm±3.67mm;p<0.05)及びゲンタマイシン/セファゾリン装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場(16.0mm±2.67mm;p<0.05)において、その他全ての薬物-絹製剤よりも有意に低かった(図9)。ゲンタマイシン/セファゾリンを積層した(26.0mm±2.33mm)及び抗生物質を積層したエレクトロスピニングされたフィブロインマット(27.0mm±2.33mm)の絹足場は、10μgゲンタマイシン センシ・ディスク(商標)のディスク(26.0mm±0.34mm)及び30μgセファゾリン センシ・ディスク(商標)のディスク(35.0mm±0.31mm)と同様に黄色ブドウ球菌を排除した。センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスク対照によるクリアランスゾーンに基づき、各薬剤-絹製剤についてのゲンタマイシン/セファゾリン放出を見積もった(図9)。
【0063】
水中に置かれた場合のゲンタマイシン及びセファゾリン製剤の放出プロフィールは、24時間以内に放出のバーストに続くプラトーを示した(図1〜3)。絹足場からの抗生物質放出は、主に、結晶性β-シート内容物と薬剤の溶解特性とにより媒介されるポリマーマトリックスを介した拡散により制御されているかもしれない。ゲンタマイシン及びセファゾリンは高度に親水性の化合物であり、そして足場中の多孔性絹構造及び導管を介して容易に拡散した。Parkら、1998;Naraharisettiら、77 J. Biomed. Mater. Res. B. Appl. Biomater. 329-37(2006)。好都合には、抗生物質の放出傾向は、メディケア及びメディケイド サービス センター及びCDCの手術感染予防ガイドライン執筆作業グループにより確立された予防のためのガイドラインと一致した。ガイドラインは、予防は手術から24時間以内に終了すべきであり、予防的抗菌剤の長期の使用は耐性細菌の危険な出現を伴うと述べている。Burke、348 N. Engl. J. Med. 651-56(2003);Bratzler & Houck、2004。
【0064】
より詳細には、抗生物質被包絹ミクロスフェアを包埋した足場が示す低い放出速度は、DOPC脂質小胞を使ったその調製に帰すことができる。凍結乾燥後、脂質の鋳型は除かれたが、残存脂質が水性拡散境界を形成し、抗生物質の拡散及び溶解に抵抗性を付与するのかも知れない。Wangら、351 Int. J. Pharm. 219-26(2008);Parkら、1998。これはまた、抗生物質装薬絹ミクロスフェアを包埋された足場及び抗生物質を構造中に直接包埋した足場による比較的小さいクリアランスゾーンを説明するかも知れない。さらに、薬物装薬絹ミクロスフェアは、長期の持続的薬物放出条件に適応性を示す(Wangら、2008)。抗生物質を直接に絹構造中に包埋した足場からの控えめな薬物放出は、水性絹調製物中の局所構造における違いが関係する可能性がある。Kimら、26 Biomats. 2775-85(2005);Hof mannら、2006。
【0065】
NCCLS(2000)によると、大腸菌ATCC25922及び黄色ブドウ球菌ATCC25923のクリアランスについて確立されているMIC値は、ゲンタマイシンで各々0.5mg/L及び0.25mg/Lであり、そしてセファゾリンでは各々1.0mg/L及び0.25mg/Lである。本発明の態様における抗生物質の放出では、標準的なMIC値を超える、1.0mg/mLから10.0mg/Lの範囲の単位調整濃度が明らかにされた。標準的なMIC値に匹敵するより低濃度の抗生物質を放出させるためには、抗生物質のより低い初期装薬量を絹材料系に包埋することができる。
【0066】
大腸菌ATCC25922及び黄色ブドウ球菌ATCC25923を用いてのミューラー・ヒントン寒天培地上の抗生物質感受性試験は、放出試験と一致した結果であり、期待通り用量依存的効果を示した(例えば、ゲンタマイシンまたはセファゾリンを積層した足場はより大量の薬物を放出し、そしてそのため、より大きなクリアランスゾーンを生じた;図3〜9)。抗生物質装薬絹ミクロスフェアを使って、または、抗生物質を直接構造中に包埋した足場は、典型的には、その他の抗生物質-絹調製物よりも小さなクリアランスゾーンを示した。一般に、抗生物質を積層した絹足場及びエレクトスピニングされたマットは、ゲンタマイシンまたはセファゾリンを予め装薬した標準的なセンシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクと同様に大腸菌ATCC25922及び黄色ブドウ球菌ATCC25923を排除した。ゲンタマイシン/セファゾリンの組み合わせは増幅された抗菌特性とはならなかった。
【0067】
10μgゲンタマイシンまたは30μgセファゾリンを包埋した標準的なセンシ・ディスク(商標)ディスクのクリアランスゾーンに基づき、各同等の大きさの足場中に被包された抗生物質の量を推定した(右側のY軸、図4〜9)。この推定はまた各絹-抗生物質調製物の抗菌及び薬物拡散特性を説明する。抗生物質の大部分は24時間以内に放出され、そして、総体的に、放出動力学の傾向は処置毎に比較的異なっていない(図1〜3)。例えば、6mm直径の30μgのセファゾリンのディスクは、黄色ブドウ球菌ATCC25923を37.0±0.33mm排除し、そして、セファゾリンを積層した6mm直径の足場は黄色ブドウ球菌を36.0mm±2.33mm排除した。従って、推定29.2μgのセファゾリンが、抗生物質で積層された該6mm足場中に被包されていると推測された。
【0068】
分光光度的に検出された抗生物質の水中での放出及び細菌接種されたミューラー・ヒントン寒天プレート上での比例的に算出された抗生物質放出の相違は、試験毎に異なる条件と関わっている。薬物放出は、水と対比して、寒天との直接接触により増幅される(Clutterbuckら、2007)。さらに、センシ・ディスク(商標)抗生物質ディスクは、10μgゲンタマイシンまたは30μgセファゾリンを寒天上に放出すると推測され、そして、クリアランスゾーンは与えられた薬物ディスク濃度と同等であった。しかしながら、より低い濃度の薬物がディスクから発せられていたかもしれず、薬物-絹調製物からの推定抗生物質放出は比例的に下がる。
【0069】
末梢創傷治癒における抗生物質の使用に関しては合意が存在しない。明らかに、抗菌剤トブラマイシン、ゲンタマイシン及びクロラムフェニコールは、ウサギの角膜上皮創傷に局所的に適用された場合の、治癒の速度または治癒の質に有益な効果を示さず、且つ致死的な毒性の全身効果を生じた。Sternら、101 Arch. Ophthalmol. 644-47(1983)。逆に、成長因子を含有するトブラマイシン装薬コラーゲン-ヒアルロン酸マトリックスは、明らかに、モルモットにおいて強化された皮膚創傷治癒力を有し、そしてこれらの調製物は毒性の結果を示さなかった。Parkら、2004。
【0070】
本発明の態様によると、本発明の生物素材、並びに、このような生物素材を使用した微生物汚染を予防及び/または処置する方法は、大腸菌ATCC25922及び黄色ブドウ球菌ATCC25923の細菌クリアランスのNCCLSにより確立されたMIC値を満たし、従って、抗生物質を送達する薬学的応用の見込みを有する。さらに、本発明は、組織工学及び医療用機器における薬物送達システムとして、絹フィブロインポリマー性装置及び移植片を使用するために、抗菌の効果的な局所濃度及び適当な放出の持続を提供する。ゆえに、抗生物質を包埋した絹フィブロインベースの生物素材は潜在的に手術のための全身性予防に代わる新たな医療代替となり得る。
【0071】
態様の例示となることを意図した以下の実施例により本発明をさらに特徴付ける。
【実施例】
【0072】
実施例1.絹フィブロイン水性溶液の調製
絹フィブロイン水性原液を以前記載されたように調製した。Hofmannら、2006。簡単に述べると、カイコガの繭を20分間、0.02M Na2CO3の水性溶液中で煮、そしてその後、セリシンタンパク質を抽出するために蒸留水でよく洗い流した。抽出された絹フィブロインをその後9.3m LiBr溶液中に60℃で4時間溶解し、20%(重量/容量)溶液を得た。この溶液を蒸留水に対して、Slide-A-Lyzer透析カセット(MWCO3500g/mol, Pierce, Woburn, MA)を用いて室温で48時間、塩を除くため透析した。不純物及び透析の間に形成された凝集物を除くため、透析液を2回、各回4℃で20分間遠心した。絹フィブロイン水性溶液の最終濃度はおよそ8%(wt/v)であった。公知の容量の溶液の残存固体量を60℃における24時間の乾燥後に測定することによりフィブロイン濃度を決定した。
【0073】
所望により絹フィブロイン溶液はWO2005/012606号に教示されるようにさらに濃縮してもよい。本明細書中の別箇所に記載するように、絹フィブロインのβシート内容物が誘導されてもよい。例えば、WO2005/123114号参照。
【0074】
実施例2.抗生物質装薬絹フィブロイン足場の調製
絹フィブロイン足場の調製のため、ディスク型容器中の2mlの6%絹フィブロイン水性溶液への4gの顆粒状NaCl2(粒径600μm〜710μm)の添加により水性由来絹フィブロイン足場を調製した。Kimら、2005。容器を覆いそして24時間室温に置いた。容器を蒸留水に漬け、そして48時間NaCl2を抽出した。足場を該容器から取り、そして所望の寸法に切った。
【0075】
抗生物質を包埋した絹足場の調製のため、1mgの抗生物質(ゲンタマイシン、セファゾリン、及び組み合わせでのゲンタマイシン/セファゾリン)を2mlの6%(w/v)絹フィブロイン溶液に添加し、本明細書中に記載される絹足場調製の手順に従った。
【0076】
抗生物質装薬絹ミクロスフェアを包埋した絹足場を調製するため、100mgの1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC; Avanti Polar Lipids, Alabaster, AL)をガラス管中の1mlクロロホルム中に溶解し、そして窒素ガスの流れの中でフィルムへと乾燥させた。Wangら、117 J. Contr. Release 360-70(2007)。2ミリグラム(2mg)の抗生物質(ゲンタマイシン、セファゾリン、及び組み合わせでのゲンタマイシン/セファゾリン;Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を2mlの8%(w/v)絹フィブロイン溶液と混合し、そして、この混合物を、0.33ml、0.5ml、及び1mlの設定で脂質膜を水和させるために添加した。混合物を蒸留水で2mlまで溶解し、そしてプラスチックチューブに移した。液体窒素中、試料を15分間凍結し、そしてその後、37℃で15分間解凍した。凍結-解凍工程は、サイズ分布が均一なより小さな小胞を作り出すのに役立つかもしれない。Brandl、7 Biotech. Ann. Rev. 59-85(2001);Colletierら、2 BMC Biotech. 9(2002)。凍結-解凍サイクルを3回繰り返し、そしてその後、解凍した溶液をゆっくりと50mlの水中にピペットで入れ、素早く攪拌した。得られた溶液を72時間凍結乾燥し、そして4℃で貯蔵した。
【0077】
20ミリグラム(20mg)の凍結乾燥した材料を、エッペンドルフ管中の2mlの純粋メタノール中に懸濁し、そして、懸濁物を30分間室温でインキュベートした。メタノールにより誘導したβシート構造の自己組織化後、脂質鋳型(白い粘着性材料)を除き、そして、混合物を4℃、10,000rpmで5分間遠心した(エッペンドルフ5417R遠心分離機)。得られたペレットを空気中で乾燥させ、そして4℃で貯蔵した。絹ミクロスフェアの懸濁液を産出するため、乾燥したペレットを2mlの蒸留水で遠心により一回洗浄し、そしてその後水中に再懸濁した。集合したミクロスフェアは、Branson450超音波処理機(Branson Ultrasonics Co., Danbury, CN)を用い、30%振幅(およそ20W)で10秒間超音波処理して分散させた。抗生物質装薬ミクロスフェア懸濁液を直接2mlの8%(w/v)絹フィブロイン溶液中に添加し、そして、本明細書中に記載される絹足場調製手順に従った。さらに、WO2008/118133号参照。ミクロ及びナノ粒子も同様に、有機溶媒に曝露することなく、絹及びポリビニルアルコールの相分離を用いて調製してもよい。米国特許出願シリーズ第61/246,676号参照。
【0078】
抗生物質層で被覆された絹足場については、絹足場上への多層の抗生物質の蓄積は、以前報告された修正プロトコルを用いた絹フィブロイン及び抗生物質の連続的吸着により達成した。Wangら、21 Langmuir 11335-41(2005)。上述のように、絹足場調製手順に従い、そして、乾燥した足場を1mg/mlの抗生物質溶液(ゲンタマイシン、セファゾリン、及び組み合わせでのゲンタマイシン/セファゾリン)中に3分間浸した。37℃で10分間足場を乾燥させ、そしてその後、希釈0.2%(w/v)絹フィブロイン溶液中に3分間浸した。足場を37℃で10分間乾燥させ、総計3層の抗生物質積層のため、この被覆工程を2回繰り返した。また、WO2007/016524号も参照。
【0079】
抗生物質が装薬されたエレクトロスピニングされた絹フィブロイン足場を調製するため、以前記載されたようにエレクトロスピニングされた絹フィブロイン足場マットを調製し、そして、前に記載したように、抗生物質層(ゲンタマイシン、セファゾリン、及び組み合わせでのゲンタマイシン/セファゾリン)で被覆した。Zhangら、29 Biomaterials 2217-27(2008)。
【0080】
ここで調製された各試料についての抗生物質放出及び抗菌感受性試験は、実施例3及び4にあるように試験した。
【0081】
実施例3.抗生物質放出試験
抗生物質を含有する足場、及び、抗生物質を含有しない対照の足場を6mmの直径の円筒に切った。3mlの蒸留水中に足場を浸漬し、そして、振盪することなく室温でインキュベートした。24時間の間隔で、168時間に亘って各100μlの溶液を取り出し、そして水を補充した。放出された抗生物質量は分光光度的に分析した(SPECTRAMAX(登録商標)分光光度計, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)。
【0082】
セファゾリンは270nmのUV光を吸収する。Voisineら、356 Int. J. Pharm. 206-11(2008)。ゲンタマイシンはUV光を吸収しないので、従って、o-フタルジアルデヒド試薬(OPA; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を、ゲンタマイシン濃度を分析するために用いた。Cabanesら、14 J.Liq. Chrom.. 1989-2010(1991);Changら、110 J. Contr. Release 414-21(2006)。
【0083】
100マイクロリッター(100μl)のゲンタマイシンを含有する水性溶液を100μlのイソプロパノール及び100μlのo-フタルジアルデヒド試薬に添加した。333nmにおけるUV吸収を測定する前に、試料を室温で45分間インキュベートした。組み合わせのゲンタマイシン/セファゾリンで調製した足場について、まずセファゾリン検出を行い、続いて、ゲンタマイシン定量のためにOPAと反応させた。ゲンタマイシン及びセファゾリンの濃度は、抗生物質の水への連続希釈を用いた検量線との比較により得た。対照足場から決定した絹フィブロインのバックグランド吸収を試験試料から差し引いた。
【0084】
全ての分析は3連で行い、そして、結果は平均±標準偏差として報告した。有意水準はANOVAまたはSPSSバージョン13.0(SPSS, Inc., Chicago, IL)におけるスチューデントのt−検定により決定した。p<0.05の場合、差異を有意と判断した。
【0085】
実施例4.抗菌感受性試験
抗生物質装薬足場に対する大腸菌ATCC25922及び黄色ブドウ球菌ATCC25923(どちらもAmerican Type Culture Collection, Manassas, VAから)の感受性は、臨床研究所規格委員会(NCCLS)の「好気的に生育する細菌についての希釈抗菌感受性試験方法、承認標準M7-A5(Methods for dilution antimicrobial susceptibility testing for bacteria that grow aerobically Approved standard M7-A5)」(Nat. Committee Clin. Lab. Standards, Wayne, PA, 2000)に従った、寒天上の改変Kirby-Bauerディスク拡散方法により決定した。1ミリリットル(1ml)の各細菌バイアルを5mlの#18 Tryptic Soy Broth(Beckton Dickenson, Sparks, MD)に懸濁し、そして懸濁液の密度は、3.0×108CFU/mlの濁度標準(McFarland Standard, BioMerieux, Marcy l’Etoile, France)に適合すると見積もられた。ミューラー・ヒントン寒天100mmプレートに1mlの細菌懸濁液を接種した。寒天プレートの表面上に懸濁液が確実に完全に覆うように、滅菌1mlシリンジ及び棒を用いて広げた。
【0086】
抗生物質含有足場及び抗生物質を含有しない対照足場を、6mm直径の円筒に切った。足場及びセンシ・ディスク(商標)抗生物質感受性試験ディスク(ゲンタマイシン、10μg;セファゾリン、30μg;Becton Dickenson, Sparks, Maryland)をプレート上にプレートの端から15mm開けて配置するために滅菌ピンセットを使用し、そして、均一な接触を保証するため優しく押した。プレートは24時間、37℃でインキュベートし、そして、クリアランスゾーン(mm)を記録した。
【0087】
全ての分析は3連で行い、そして、結果は平均±標準偏差として報告した。有意水準はANOVAまたはSPSSバージョン13.0(SPSS, Inc., Chicago, IL)におけるスチューデントのt−検定により決定した。p<0.05の場合、差異を有意と判断した。
【0088】
実施例5.絹フィルムからのペニシリン及びアンピシリンの制御された放出
多くの材料形式試験についてより長い期間の放出プロフィールが試験されたものの、移植片が表面細菌コロニー形成に特に感受性である移植後6時間の「決定的期間」について報告する文献(Zilberman & Elsner, 130 Contr. Release 202-15(2008))のため、絹フィルムからのペニシリン及びアンピシリン放出の最初の24時間のみを特徴付けた。絹フィルムからの最初の24時間の放出はそのため、細菌接着の予防及び長期に亘る移植片の成功において最も重大であると考えられた。
【0089】
以前に記載された、黄色ブドウ球菌叢におけるゾーン阻害分析を用いて放出を決定した。簡潔には、希釈したLuria-Bertani(LB)寒天を黄色ブドウ球菌培養物と一晩混合し、そしてLB寒天プレートに添加した。標準物質及び試験のための材料を、接種された希釈寒天層上に置き、そして、プレートを37℃において一晩生育させた。阻害ゾーンは、翌日Image Jイメージングソフトウェアを用いて測定した。その後、試料の阻害ゾーンとフィルター紙ディスク上の公知の標準物質の阻害ゾーンとの比較により、24時間に亘る薬物放出量を決定した。試験する材料を24時間毎に新しいプレートに移すことによって、延長された放出研究を行った。薬物を8%(w/v)絹溶液中に混合し、そして、適当な条件下で一晩フィルムを乾燥させることにより、抗生物質装薬絹フィルムを調製した。二つの装薬濃度を研究した:高装薬(5mg/mL;およそ、フィルム当たり0.4mg)及び低装薬(2.5mg/mL;フィルム当たり〜0.2mg)。組み入れられた抗生物質に対するメタノールの効果を評価するため、フィルムをメタノールで5分間処理するか、または、未処置のままとした。絹フィルムからのアンピシリン及びペニシリン放出は、各々、表1及び2に報告される。
【0090】
(表1)アンピシリンフィルム放出

高装薬=8%(w/v)絹溶液中に5mg/mLアンピシリン(理論的装薬量=フィルム当たり0.4mg)
低装薬=8%(w/v)絹溶液中に2.5mg/mLアンピシリン(理論的装薬量=フィルム当たり0.2mg)
【0091】
(表2)ペニシリンフィルム放出

高装薬=8%(w/v)絹溶液中に10mg/mLペニシリン(理論的装薬量=フィルム当たり0.8mg)
低装薬=8%(w/v)絹溶液中に5mg/mLペニシリン(理論的装薬量=フィルム当たり0.4mg)
【0092】
結果は標準偏差を加えたn=3フィルムの平均として報告する。絹溶液中の薬物濃度及びフィルムを鋳造するのに使用した溶液容量に基づき、理論的装薬量を計算した。メタノール処理からのメタノール残余物を一晩蒸発させ、PBSに再懸濁し、そして分析した場合、抗生物質活性は検出されなかった。未処理フィルムと比べてメタノール処理されたフィルムで活性の減少が見られないため、これらの結果は、メタノール処理が組み入れられた抗生物質を分解しないことを示唆する。結果はまた、フィルムが、その初期装薬量のおよそ半分を細菌曝露の最初の24時間に送達することを示す。
【0093】
絹フィルム中の最小阻害ペニシリン装薬濃度を決定するため、100mg/mlから、下は0.013mg/mlまでの範囲の濃度で8%絹溶液にペニシリンを混合した。200μlの絹+ペニシリン溶液を48ウェルプレートの各ウェル中に分注し、適当な条件下で一晩乾燥させ、5分間メタノール処理し、そして、再度乾燥させた。1/100でLB培地中に希釈した、400μLの黄色ブドウ球菌または大腸菌の一晩の培養物を各ウェルに添加した。培養物を37℃で48時間成長させ、そしてその後、各試料について、細菌成長を測定するために、UV光学光度計により600nmにおける光学密度を測定した。結果は図10に示す。
【0094】
試験した両方の細菌について、絹1ml当たり25mg、50mg、若しくは100mgのペニシリンで調製したフィルムで完全な阻害が見られた(各々、フィルム当たり5mg、10mg及び20mgのペニシリン)。大腸菌及び黄色ブドウ球菌の完全阻害に近い阻害を誘導するのに、各々、0.39mg/ml及び0.05mg/mlの最小濃度が必要とされた。これらの結果は、十分な薬物濃度で調製されれば、これらのフィルムは感染を予防するために使用でき、そして、完全に細菌成長を抑制することができることを示唆する。
【0095】
実施例6.バルク装薬絹ハイドロゲル及び絹ハイドロゲル中に包埋された絹ミクロスフェアによる抗生物質送達
抗生物質放出絹生物素材の注射可能な送達システムも研究した。バルク装薬したゲル及び薬物放出絹ミクロスフェアを装薬したゲルの両方からの薬物放出を特徴付けた。Branson Digital Sonifier 450を15%振幅で60秒から90秒間用いて絹溶液を超音波処理し、その後抗生物質溶液に混合し、その後ゲル化が起こるのを待って、それにより薬物を封入することによって、バルク装薬したゲルを調製した。ミクロスフェアは本明細書中に記載する脂質鋳型プロトコルに従って調製した。バルク装薬の場合と同様に、ゲル化直前に絹を超音波処理し、ミクロスフェア懸濁液と混合した。
【0096】
ペニシリン装薬ゲルについては、薬物放出に対する絹濃度の効果を調べるため、8%(w/v)及び4%(w/v)の絹ハイドロゲルを試験した。目立った効果は観察されなかったため、アンピシリン放出試験は8%(重量/容量)の絹のみを用いて行った。ペニシリン装薬ゲルについての黄色ブドウ球菌叢に対する阻害ゾーン研究の結果を図11に示し、そして、アンピシリン装薬絹ゲルについての結果は図12に示す。
【0097】
バルク装薬ゲルは、そのペニシリン薬装薬を48時間以内に、そして、そのアンピシリン装薬を72時間以内に使い尽くした。ミクロスフェア装薬ゲルは、バルク装薬の場合よりもより低い一日当たりの放出速度で放出し、ペニシリン及びアンピシリンの両方について4日間放出し続けた。絹ミクロスフェアへの薬物の装薬は、バルク装薬ゲルと比較して放出を持続し、そして、噴出(バースト)するのを遅延させた。これは、バルク装薬を大量の初期バースト用量を送達するのに使用でき、ミクロスフェアをより低い持続的抗生物質用量の持続的放出のために組み入れられることを示唆する。これらの結果はまた、注射可能な形式が活性な抗生物質を効果的に送達できることを示す。
【0098】
実施例7.絹フィルム中の温度感受性抗生物質の安定化
絹フィルムへの組み入れが、酵素について観察されるのと同様の安定化効果を有するかどうかを決定するため、8%(w/v)の絹フィルム、または、4℃(冷蔵)、25℃(室温)、及び37℃(体温)の溶液中で貯蔵されたペニシリンの残存活性を比較する長期安定化試験を行った。最初の5ヶ月の安定化データの結果を図13に示す。
【0099】
25℃及び37℃で貯蔵された溶液中のペニシリンの安定性は急激に減少するものの、絹フィルム中では温度は安定性にあまり影響がないようである。140日間の保存後も活性は依然として存在した。酵素貯蔵データでも観察される現象であるが、貯蔵の最初の40日間は、インキュベーションにより活性が初期値の100%よりも増幅した。
【0100】
4℃、25℃、及び37℃で貯蔵された乾燥ペニシリン粉末の安定性もまた特徴付けた。60日間に亘って、絹フィルム中、溶液中、及び乾燥粉末形式で貯蔵されたペニシリンの安定性の比較を図14に示す。
【0101】
乾燥粉末及び絹フィルムは4℃において貯蔵された場合、どちらも同じくらい良くペニシリンを安定化させたが、25℃及び37℃で貯蔵した試料に関しては、乾燥ペニシリン粉末と比べ、絹フィルム中のペニシリンの方が活性は高かった。匹敵する薬物装薬量でのコラーゲンフィルム中、及び、大量貯蔵での様々な貯蔵温度での60日間の活性の比較(図15)もまた、絹フィルム中に貯蔵されたペニシリンの方が、コラーゲンフィルム中に貯蔵されたペニシリンと比較して活性が高いことを示す。
【0102】
実施例8.多孔性絹足場上のゲンタマイシン及びセファゾリンのナノフィルム被覆
幾層ものナノフィルム被覆を、水溶性抗生物質及び多孔性三次元基質についての潜在的な装薬方法として試験した。被覆前、ゲンタマイシン被覆足場の絹足場の平均質量は25.1mg±3.4mgであり、そして、セファゾリン被覆足場については25.0mg±4.8mgであった。
【0103】
6mmではなく直径8mmのスポンジを使用したこと、より厚いキャッピング層を提供するために最後の絹層により高濃度の4%(w/v)絹溶液を用いたこと、及び、乾燥時間が10分ではなく30分近くであったこと以外、本明細書中に記載されるナノフィルム被覆手順に従った。
【0104】
黄色ブドウ球菌プレート上で決定したセファゾリン放出データを示す。ゲンタマイシン放出データは黄色ブドウ球菌及び大腸菌阻害の両方に基づいて示される。最終的に、ゲンタマイシン放出持続期間は5日間、セファゾリンは4日間であった。累積ゲンタマイシン放出のデータは表3に報告され、そして図16に示される;セファゾリン放出は表4に報告され、そして図17に示される。
【0105】
(表3)大腸菌及び黄色ブドウ球菌叢上の成長阻害ゾーンにより決定されたゲンタマイシンの累積放出

【0106】
(表4)黄色ブドウ球菌叢上の成長阻害ゾーンにより決定されたセファゾリンの累積放出

【0107】
37℃で一晩、仕上げられた被覆足場を0.1mg/mLプロテイナーゼK溶液中で分解することにより総装薬量を決定した。ゲンタマイシン装薬足場については、総装薬量は107.5μg±30.95μg(n=4試料)であり、そして、セファゾリン装薬足場については、総装薬量は55.5μg±6.98μg(n=3試料)であった。ゲンタマイシン装薬足場は5日間に亘って40μg及び45μgの間で放出し、そして、セファゾリン装薬足場は3日間に亘って〜45μgを放出した。これらの結果は、多孔性基質からの水溶性薬物のかなり直線的な持続的放出を達成し、抗生物質放出絹スポンジを製造するために、ナノフィルム被覆を使用できることを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元絹フィブロイン足場中に包埋された抗生物質装薬(loaded)絹フィブロインミクロスフェアを含む組成物。
【請求項2】
足場がスポンジ、フィルム、スラブ、粉末、エレクトスピニングされたマット、多孔性マトリックス、ミクロスフェア、ゲル、光学装置、または電子機器である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
包帯を形成するための可撓性物質をさらに含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
足場がサージカルパック材料である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
足場が、絹フィブロイン足場に包埋された抗生物質装薬絹フィブロインミクロスフェアを含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
抗生物質が、アクチノマイシン、アミノグリコシド、β-ラクタマーゼ阻害剤、グリコペプチド、アンサマイシン、バシトラシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、イソニアジド、リネゾリド、マクロライド、ムピロシン、ペニシリン、オキソリン酸、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、モノバクタム、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、エタンブトール、ムピロシン、メトロニダゾール、ペフロキサシン、ピラジンアミド、チアンフェニコール、リファンピシン、チアムフェニクル(thiamphenicl)、ダプソン、クロファジミン、キヌプリスチン、メトロニダゾール、リネゾリド、イソニアジド、ピラシル(piracil)、ノボビオシン、トリメトプリム、ホスホマイシン、及びフシジン酸からなる群より少なくとも選択される抗生物質である、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
抗生物質がセファゾリン、ゲンタマイシン、ペニシリン、アンピシリン、またはそれらの組み合わせである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
デフェンシン、マガイニン、ナイシン、溶菌バクテリオファージ、細胞、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸アナログ、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはその断片若しくは部分、抗原またはエピトープ、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、成長因子または組換成長因子並びにその断片及びバリアント、細胞付着性メディエーター、サイトカイン、抗炎症剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬物、染料、ビタミン、酵素、抗酸化剤、並びに、他の抗菌化合物からなる群より選択される少なくとも一つの剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
以下を含む工程により調製された、抗生物質装薬三次元絹フィブロイン足場:
少なくとも一種の抗生物質剤を含む絹フィブロインミクロスフェアを調製する工程、
該抗生物質装薬絹フィブロインミクロスフェアを絹フィブロイン水性塩溶液と、三次元の形を限定する容器中で混合する工程、並びに
抗生物質装薬絹ミクロスフェアが包埋された三次元絹フィブロイン足場を形成するために、該溶液から塩及び水を除去する工程。
【請求項10】
以下を含む工程により調製された、抗生物質装薬三次元絹フィブロイン足場:
少なくとも一種の抗生物質剤を含む絹フィブロインミクロスフェアを調製する工程、
該抗生物質装薬絹フィブロインミクロスフェアを絹フィブロイン溶液と混合する工程、並びに
抗生物質装薬絹ミクロスフェアを包埋したゲル足場を形成するよう、該溶液を超音波処理する工程。
【請求項11】
少なくとも一つの活性剤をさらに含む、請求項9または10記載の抗生物質装薬三次元絹フィブロイン足場。
【請求項12】
必要とする対象の一領域における微生物汚染を予防及び/または処置する方法であって、対象の該領域を請求項1記載の組成物と接触させる段階を含む方法。
【請求項13】
抗生物質を選択する段階、
該抗生物質を絹フィブロイン溶液中に組み入れる段階、及び
該溶液より足場を形成する段階
を含む、抗生物質長期貯蔵組成物を調製する方法。
【請求項14】
前記溶液が水性溶液または水和型脂質溶液である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記足場が、前記溶液を表面上に流し込んでフィルムまたはスラブ得ることにより形成される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記足場が、前記溶液を鋳型または容器中に流し入れることにより形成され、次いで乾燥させて三次元足場が形成される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
ゲル足場を形成するように前記溶液が超音波処理される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
マット足場を形成するように前記溶液がエレクトロスピニングされる、請求項13記載の方法。
【請求項18】
抗生物質含有ミクロスフェアを作出するように前記溶液を処理する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
抗生物質装薬ミクロスフェアを絹フィブロイン溶液に添加する段階、及び
該抗生物質装薬ミクロスフェアを含む足場を形成する段階
をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記足場を抗生物質含有絹フィブロイン溶液と少なくとも1回接触させて、前記足場上に抗生物質含有層を形成させる段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項21】
前記溶液に追加の剤を添加する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記抗生物質長期貯蔵組成物中の抗生物質が、少なくとも10日間、約4℃において、少なくとも50%の残存活性を維持する、請求項13記載の方法。
【請求項23】
前記抗生物質長期貯蔵組成物中の抗生物質が、少なくとも10日間、約25℃において、少なくとも50%の残存活性を維持する、請求項13記載の方法。
【請求項24】
前記抗生物質長期貯蔵組成物中の抗生物質が、少なくとも10日間、約37℃において、少なくとも50%の残存活性を維持する、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−519698(P2012−519698A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553104(P2011−553104)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/026190
【国際公開番号】WO2010/141133
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510300430)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (12)
【Fターム(参考)】