説明

抗癌治療に対する腫瘍細胞の感受性を回復させてアポトーシスを誘導するための組成物及び方法

抗エストロゲン療法及び/又は細胞傷害療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復し、細胞のアポトーシスを誘導するための方法及び組成物が提供された。細胞をGP88拮抗剤(例えば、抗GP88抗体、抗GP88アンチセンス核酸、GP88siRNA、及び小分子)と接触させると、アポトーシスが誘導され、抗エストロゲン療法及び細胞傷害療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性が回復した。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年6月23日に出願された米国仮出願第60/480/439の
優先権の利益を主張する。下記の米国特許及び米国公開公報の全体を本願に引用して援用する:米国特許第6,720,159号;米国特許第6,309,826号;米国特許公報2003/0099649号;米国特許公報2003/0215445号;および米国特許公報2002/0025543号。
【0002】
本発明は、細胞生物学、生理学、及び薬剤に関し、88kDaの糖タンパク質成長因子(「GP88」)並びにGP88の発現及び生物活性に影響を及ぼす組成物及び方法に関する。本発明は、癌を含む疾患の診断及び治療に有用なキット製品、組成物、及び方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
多細胞生物における細胞の増殖及び分化は、高度に調節されたプロセスを受ける。癌細胞を区別する特徴はこのプロセスに対する制御が無いことであって、増殖及び分化が調節されなくなり、結果として制御されない増殖が生じる。正常細胞及び腫瘍細胞の間のこの違いをより理解することに対して多大な研究努力が向けられてきた。焦点が当てられている研究の一領域は成長因子であり、より具体的にはオートクリン増殖刺激である。
【0004】
成長因子は、増殖、分化、移入、及び遺伝子発現に関するメッセージを細胞に運ぶポリペプチドである。典型的には、成長因子はある細胞中で産生され、別の細胞に対して増殖を刺激するように作用にする。しかしながら、培養物中のある種の悪性細胞では、オートクリン増殖機構により大きくあるいは完全に依存していることが実証される。このオートクリン挙動が見られる悪性細胞は、他の細胞による成長因子の産生調節を回避し、したがってその増殖が調節されない。
【0005】
オートクリン増殖制御の研究によって、細胞増殖機構の理解が進み、癌の診断及び治療における重要な発展がもたらされる。このような目的に対して、インスリン様成長因子(「IGF1」及び「IGF2」)、ガストリン放出ペプチド(「GRP」)、形質転換成長因子アルファ及びベータ(「TGF−a」及び「TGF−b」)、及び上皮成長因子(「EGF」)を含む多数の成長因子が研究されている。
【0006】
本発明は、最近発見された成長因子に関する。この成長因子は、腫瘍形成能の高い(highly tumorigenic)「PC細胞」(奇形腫由来の脂肪生成細胞系1246から単離されたインスリン非依存性変異体)の培地中に最初に発見された。この成長因子を本明細書中では「GP88」と称する。GP88は精製され、構造的に特性決定がなされている。GP88のアミノ酸配列決定により、GP88はマウスグラヌリン(granulin)/エピセリン(epithelin)前駆体とのアミノ酸配列の類似性を有していることが示される。
【0007】
グラヌリン/エピセリン(「grn/epi」)は6kDaのポリペプチドであり、二重システインに富むポリペプチド(double cysteine rich polypeptide)の新しいファミリーに属する。米国特許第5,416,192号(Shoyab et al.)は、6kDaのエピセリン、具体的にはエピセリン1及びエピセリン2に関する。Shoyabによれば、両方のエピセリンは共通の63.5kDaの前駆体によってコードされており、該前駆体は、合成されると直ぐ、生物試料中に見出される天然産物のみが6kDaの形態となるようにより小さな形態へとプロセシングされる。Shoyabは、エピセリンの前駆体は生物学的に不活性であると教示している。
【0008】
Shoyabらの教示に反して、本発明者らの研究室により、前駆体は合成されたら直ぐにプロセシングされることは常ではないことが実証された。本発明者によって一部なされた研究によって、前駆体(すなわち、GP88)が、実は、Nへ結合した20kDaの炭水化物部分を有する88kDaの糖タンパク質として分泌されることが実証された。GP88のN末端配列の分析によって、GP88はgrn/epi前駆体のアミノ酸17で始まることが示され、前駆体cDNAから推定されるタンパク質配列由来の最初の17個のアミノ酸は膜への局在化又は分泌の標的化に適合する(compatible)シグナルペプチドに対応することが実証されている。さらにShoyabの教示とは対照的に、GP88は生物活性であり、増殖促進活性、具体的には産生細胞のオートクリン成長因子としての増殖促進活性を有する。
【0009】
多細胞生物は体全体に渡って組織の細胞において、生成と破壊の間の注意深いバランスを必要とする。アポトーシス又はプログラムされた細胞死は制御された過程であり、それによって傷害された細胞又は正常な細胞制御から逸脱して複製されている細胞は、しばしば急性の炎症やネクローシスが伴うような、組織破壊や炎症反応を引き起こすことなく除去される。
【0010】
最近の研究により、種々のシグナル(例えば、ホルモン、血清成長因子の枯渇、化学療法剤、電離放射線、およびウイルス感染)により引き起こされる代謝経路を通じて、アポトーシスは制御されることが示されている。例えば米国特許第6,586,395号と米国特許第6,570,002号を見よ。遺伝子のbcl-2ファミリーは多くの型の細胞でアポトーシスを制御する。bcl-2の正常な機能は種々のシグナル(例えば、放射線照射、温熱療法、成長因子除去、グルココルチコイド、及び種々のクラスの化学療法剤)に反応よるアポトーシスを阻害することである。Id。そこで、bcl-2の活性を阻害するとアポトーシスが誘導される。Zhang et al., Clinical Cancer Research, 5:2971-2977(1999年10月)。例えば、抗エストロゲン化合物であるタモキシフェンはbcl-2をダウンレギュレートし、それによって乳癌細胞においてアポトーシスを誘導する。Id。エストロゲンの成長促進効果の阻害に加えて、タモキシフェンは、乳癌細胞株及び臨床的なサンプルにおいてプログラムされた細胞死を誘導することも示されている。タモキシフェンに反応してアポトーシスを受けることに失敗すると、タモキシフェン耐性となる。
【0011】
抗エストロゲン療法は乳癌の治療に広く使用されている。タモキシフェンはこの目的のために使用される主要な薬剤であった。タモキシフェンの活性は、典型的には、エストロゲン受容体陽性の乳癌において観察される。これらの型の腫瘍において、エストロゲンは主要な成長刺激剤であるからである。しかしながら長期の抗ホルモン療法の後には、乳癌はエストロゲン感受性から非感受性の状態へ進行する。タモキシフェンや他の抗エストロゲン化合物によって乳癌が過去には成長阻害されても、抗エストロゲン療法に対して耐性となる。
【0012】
タモキシフェンによって誘導される形態学的な変化は、アポトーシスによって誘導された変化に特徴的である。HER2によるbcl-2のアプレギュレーションは、乳癌細胞において、タモキシフェンにより誘導されたアポトーシスを抑制する。Kumar et al., Clin.Cancer Res.1996 Jul.2(7):1215-9。そこでbcl-2のレベルを変化させることにより、アポトーシスを誘導するための機構が提供される。アポトーシスの誘導は、腫瘍細胞を除去し、収縮させ、破壊することによって腫瘍の後退を引き起こす。Trauth et al., Science.1989 Jul.21;245(4915):301-5。抗アポトーシス性bcl-2遺伝子を標的としたアンチセンスのオリゴヌクレオチドを投与すると、インビボでマウスの腫瘍の後退を誘導する。Elez et al.,Oncogene (2003) 22:69-80。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在必要とされているのは、アポトーシスを誘導し、抗エストロゲン療法及び細胞傷害療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復されるための、新たな方法及び組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の概要
本発明者は、正常細胞では厳格に調節された形式で発現される糖タンパク質(GP88)が正常な細胞由来の腫瘍形成能の高い細胞では過剰発現され、かつ、調節されないこと、腫瘍形成細胞に厳格に(stringently)必要とされる増殖刺激物質としてGP88が作用すること、及び腫瘍形成細胞でのGP88の発現又は作用を阻害することによって過剰産生細胞の腫瘍形成特性が阻害されることを今、予想外にも発見した。
【0015】
本発明の一態様において、抗エストロゲン剤及び/又は細胞傷害性化合物の抗腫瘍形成効果に対する感受性は、腫瘍細胞へGP88拮抗剤(アンタゴニスト)を投与することによって回復する。他の態様においてGP88拮抗剤は、抗エストロゲン性又は細胞傷害性(例えば化学療法剤)化合物と共に、あるいはそれに続いて投与することができる。GP88を過剰発現している腫瘍細胞は成長が刺激され、タモキシフェン及び他の抗エストロゲン剤による治療に耐性である。腫瘍細胞にGP88拮抗剤を投与すると、(1)タモキシフェン及び他の抗エストトロゲン剤(例えば、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤)及び/又は(2)細胞傷害剤又は化学療法剤(例えば、例えば、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウム・フォリナート、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスシン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリピン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲミシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、リポソマール・ドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、マイトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキシド、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン(tioguanine)/チオグアニン(thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)及びそれらの組み合わせ、に対する感受性を回復する。抗エストロゲン性及び/又は細胞傷害性化合物に対する感受性を回復するために、GP88拮抗剤を、抗エストロゲン剤及び/又は細胞傷害性化合物の投与の前又は後のいずれかに投与することも可能である。
【0016】
本発明は、腫瘍細胞にGP88アンタゴニストを投与することにより、アポトーシスを誘導するための方法及び組成物も提供する。アポトーシスの誘導は、例えば、bcl-2蛋白質又はmRNAのレベルを測定すること、細胞がPARP(ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ)を開裂させる能力を測定すること、あるいは腫瘍細胞又は細胞の発現あるいは量を評価することにより決定される。
【0017】
本発明は、GP88の発現又は活性を阻害することが可能であるGP88拮抗組成物、限定するものではないが、例えば、哺乳動物の血液、髄液、血清、血奬、前立腺、膀胱、鼻咽頭、頭部及び頚部、子宮頸管、神経系組織、甲状腺、膵臓、尿、乳頭吸引液(nipple aspirate)、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣、脳、神経、卵巣、皮膚、及び肺を含む組織における癌を含むGP88の量又は活性の欠陥に関連する疾患の治療方法、GP88の発現又は作用の欠陥に関連する疾患に対する被検体の感受性の決定方法、GP88拮抗治療に対する感受性の測定方法、並びに細胞中のGP88及び腫瘍形成活性のin vitro及びin vivoの検出方法、試薬、及びキットも提供する。
【0018】
本発明の追加の目的及び利点は、一部には以下の詳細な説明中に説明され、一部には詳細な説明から明らかであり、あるいは本発明の実施例によって理解することができる。
【0019】
本発明は、細胞がGP88の変化した発現又はGP88に対する変化した反応を示す、乳癌などの疾患の診断及び治療用の組成物及び方法も提供する。本明細書中の「変化した発現」という用語の使用は、対応する正常な細胞又は周囲末梢細胞と比較して、mRNA又はタンパク質のレベルに基づき、少なくとも2倍、時には10倍以上のGP88の増加した発現又は過剰発現を意味する。「変化した発現」との用語は、制御されなくなったか、あるいは必ずしも高くなることがなく構成的になった発現も意味する。GP88に対する増加した又は変化した「反応」という用語の使用は、GP88によって与えられる任意の生物機能(例えば、増殖、分化、ウイルス感染)の増加によってGP88の変化した発現と同じ又は同等の状態となるような状態を意味する。
【0020】
本明細書中の「GP88」又は「PCDGF」という用語の使用は、細胞抽出物及び細胞外液中のエピセリン/グラヌリン前駆体(プログラヌリンとして知られている)を意味し、マウス及びヒトを起源とする図1から図3中に含まれるアミノ酸配列によるGP88を含むだけでなく他の種を起源とするGP88も含むことを意図する。さらに、該用語には、糖タンパク質又は他の修飾構造を含む炭水化物部分などの追加成分を有するGP88の機能性誘導体が含まれる。
【0021】
GP88又はPCDGFという用語は、上記の配列中に存在する少なくとも10個のアミノ酸を有する任意のポリペプチドフラグメントも意図する。この長さの配列は、抗原として有用であり、タンパク質全体の種々のエピトープに特異的な抗体の産生のための担体との免疫原性共役体の作製に有用である。そのようなポリペプチドは、そのような抗体のスクリーニング及び生物液中のGP88の検出に関する方法に有用である。ペプチドがより大きいタンパク質に対する抗体の生成に有用であることは当該技術分野で周知である。本発明の一実施態様において、長さが12〜19個のアミノ酸のペプチドを用いて全長GP88を認識する抗体を生成することに成功したことが示されている。
【0022】
本発明のポリペプチドは、別の分子と共有結合してあるいは共有結合せずに存在してもよい。例えば、該ポリペプチドを、グルタチオントランスフェラーゼ、ポリヒスチジン、又はmyc標識などの1つ以上のペプチド結合を介して1つ以上の他のポリペプチドに融合してもよい。
【0023】
本ポリペプチドは、GP88又はその機能性誘導体に対する抗体を再生産又は試験するための免疫原として用いることができる免疫原性が異なった(antigenetically distinct)決定基又はエピトープを含有する程に十分に大きい。
【0024】
一実施態様には、他の哺乳動物ペプチドを実質的に有していないポリペプチドが含まれる。本発明のGP88は、細胞、組織、又は生物液から生物化学的に又は免疫化学的に精製することができる。あるいは、ポリペプチドは、原核生物又は真核生物の発現系及び宿主細胞中で組換え手段によって産生することができる。
【0025】
「他の哺乳動物ペプチドを実質的に有していないポリペプチド」とは、原核生物中であるいは所望する場合には非哺乳動物若しくは哺乳動物の真核生物中でポリペプチドを合成することができる事実を反映している。あるいは、固相支持体上の化学合成及びその後の支持体からの分離による所望の配列のポリペプチドの合成方法が周知である。あるいは、少なくとも90%の純度(重量ベースで)あるいは所望する場合にはさらに99%の純度の他の哺乳動物のポリペプチドとなるように、天然に存在する哺乳動物の組織又は液からタンパク質を精製することができ、したがって実質的にそれらを有していないこととなる。タンパク質に対して反応性である抗体を保有する免疫吸着剤上などでの標準のタンパク質精製を組織抽出物又は液に施すことによって、これを成すことができる。本発明の一実施態様は、天然に存在するGP88、及びバキュロウイルスが感染した昆虫細胞中及び哺乳細胞中で発現される組換えGP88の精製のための精製方法を記載する。あるいは、そのような組織又は液からの精製を、本技術分野で既知の方法の組み合わせによって成すことができる。
【0026】
野生型の精製糖タンパク質若しくはポリペプチド又は組換え糖タンパク質若しくはポリペプチドに対する代替として、「GP88」は機能性誘導体を含むことも意図している。機能性誘導体とは、後述のタンパク質又は糖タンパク質の「フラグメント」、「変異体」、「アナログ」、又は「化学誘導体」を意味する。機能性誘導体は、本発明による有用性を可能とする全長GP88の機能の少なくとも一部を保持する。
【0027】
GP88の「フラグメント」とは、GP88の腫瘍形成特性を保持する比較的短いペプチドである分子の任意のサブセットをいう。これは、限定するものではないが、例えば、マウスGP88のK19T及びS14R、及びヒトGP88のE19V及びA14R(それぞれマウスK19T及びS14Rに対応する)などの領域に対応する。
【0028】
GP88の「変異体」とは、ペプチド全体又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する分子をいう。変異体ペプチドは、変異体ペプチドの直接化学合成により、当該技術分野で既知の方法を用いて調製することができる。
【0029】
あるいは、ペプチドのアミノ酸配列変異体は、合成されたタンパク質又はペプチドをコードするDNAを修飾することによって調製することができる。そのような変異体には、例えば、GP88のアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、又は置換が含まれる。最終構築体が所望の活性を有するという条件において、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って最終構築体に到達することもできる。変異体ペプチドをコードするDNAでなされる変異は、リーディング・フレームを変えてはならず、好ましくは、mRNA二次構造を作ることができる相補領域を作り出してはいけない。ペプチド分子をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異(8)によってこれらの変異体を遺伝子レベルで調製することができ、それによって変異体をコードするDNAが産生され、続いて組換え細胞培養でDNAが発現される。変異体は、典型的には、非変異体ペプチドと同じ定性的な生物活性を示す。
【0030】
GP88のタンパク質の「アナログ」とは、分子全体又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する非天然分子をいう。
【0031】
「化学誘導体」は、通常はペプチド又はタンパク質の一部ではない追加の化学部分を含む。ペプチドの共有結合による修飾も本発明の範囲内に含まれる。選択した側鎖又は末端アミノ酸残基と反応することができる有機誘導体化剤とペプチドの標的アミノ酸残基を反応させることにより、そのような修飾を分子中に導入することができる。最もよく誘導体化する残基は、システイニル、ヒスチジル、リシニル、アルギニル、チロシル、グルタミニル、アスパラギニル、及びアミノ末端残基である。プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル及びスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、ヒスチジン、及びヒスチジン側鎖のアルファ−アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、並びにC末端カルボキシル基のアミド化。そのような誘導体化部分によって、溶解性、吸収性(absorption)、生物半減期などが向上する。該部分により、タンパク質などの任意の望ましくない副作用を取り除くあるいは弱めることもできる。さらに、二官能性剤による誘導体化は、水不溶性支持マトリクス又は他の高分子担体へのペプチドの架橋に有用である。通常用いられる架橋剤には、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ホモ二官能性(homobifunctional)イミドエステル、1,1−ビス(−ジアゾロアセチル)−2−フェニルエタン、及び二官能性マレイミドが含まれる。メチル−3−[9p−アジドフェニル]]ジチオプロピオイミデートなどの誘導体化剤により、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化可能な中間体が生ずる。臭化シアン活性化炭水化物などの反応性かつ水不溶性のマトリクス並びに米国特許第3,969,287号及び第3,691,016号に記載される反応性基質をタンパク質固定化に用いることができる。
【0032】
本明細書中のGP88拮抗剤又はGP88「拮抗剤」いう用語の使用は、GP88の発現、産生、若しくは分泌を阻害若しくは遮断する任意の組成物、又はGP88の生物活性を阻害若しくは遮断する任意の組成物を意味する。これは、限定するものではなく、以下のものなど、任意の作用形式で成すことができる。
【0033】
(A)GP88拮抗剤には、以下のGP88発現又は産生を阻害する任意の試薬又は分子が含まれるが、それに限定されるものではない。(1)GP88翻訳を阻害することによってGP88発現を阻害するアンチセンスGP88DNA又はRNA分子;(2)GP88の発現を阻害する小さな阻害剤又は「siRNA」;(3)GP88mRNA及び/又はタンパク質発現を転写、翻訳、又は翻訳後レベルで阻害する試薬(ホルモン、成長因子、小分子);(4)GP88分泌を阻害する因子、試薬、又はホルモン
【0034】
(B)GP88拮抗剤には、限定するものではないが、以下のものなどのGP88作用又は生物活性を阻害する任意の試薬又は分子も含まれる。(1)タンパク質を結合し、該タンパク質がその生物活性を発揮するのを妨げるGP88に対する中和抗体;(2)GP88がその受容体に結合するのを妨げ、かつ、生物活性を発揮するのを妨げるGP88受容体に対する抗体;(3)受容体に結合するGP88の競合阻害剤;(4)小分子の拮抗剤;および(5)GP88シグナル伝達経路の阻害剤
【0035】
本発明の一実施態様において、GP88拮抗剤は、GP88に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、GP88タンパク質の翻訳を阻害することによってGP88発現を阻害することが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドはDNA又はRNAから形成されることがある。他の態様において、GP88拮抗剤は、小さな阻害性のRNA分子である(siRNA又はRNAi)。siRNAは標的遺伝子の発現を抑制できる二本鎖RNA分子である。
【0036】
GP88拮抗剤は、GP88発現を阻害する小分子(例えば試薬、因子、又はホルモン)であってもよい。例えば本発明の態様は、(1)GP88の翻訳後修飾とその分泌を阻害し、(2)GP88細胞表面受容体への結合をGP88と競合することによってGP88活性を遮断し、(3)GP88のシグナル伝達経路を阻害し(例えば、GP88が細胞表層上のその受容体と結合することにより誘導される生化学的な相互作用)、又は(4)GP88受容体を妨害し又は阻害する、小分子を提供する。GP88上の特定の活性部位、GP88表層受容体、又は他の分子と結合させるか又は連関させるために、小分子を合成することができる。小分子は天然起源から得ることもでき、GP88、GP88表層受容体、又は他の分子と結合及び/又は阻害させるために改変することもできる。
【0037】
本発明の抗体(中和抗体など)は、乳癌、その他の癌、又はGP88の増加した発現を示す細胞における他の疾患の治療薬として用いることが好ましい(例えば、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、膵臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、及び肺の癌)。「中和」という用語は、抗体が実験動物及びヒトで細胞増殖を刺激するあるいは腫瘍増殖を誘発するGP88の能力を含むGP88の正常な生物活性を阻害又は遮断する能力を有すると理解しなければならない。有効量の抗GP88抗体をヒトを含む動物に種々の経路で投与する。代替の実施態様において、限定するものではないが癌(例えば、乳癌)などの疾患で生じるGP88の変化した(増加した)発現を示す細胞を検出するための診断薬として、さらに増殖がGP88に依存し、かつ、GP88拮抗治療に反応する患部細胞を同定するための診断薬として、抗GP88抗体を用いる。さらに別の実施態様において、抗GP88抗体を用いて、GP88を発現するあるいはGP88に反応性を有する細胞に細胞傷害性因子又はアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの化合物を送達する。細胞傷害性因子は、抗GP88抗体に付着、結合、又は会合することができる。
【0038】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、GP88の増加した発現を示す細胞における癌の治療薬として用いることができる。有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ヒトを含む動物に種々の経路で投与する。
【0039】
本発明の一態様において、GP88拮抗剤は、腫瘍細胞の開始及び/又は増殖の阻害あるいは防止に使用される。例えばGP88拮抗剤を、乳癌、他の腫瘍、あるいは細胞がGP88の発現増加を示す他の疾患の発生又は再発の防止に使用できる(例えば、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、膵臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、及び肺の癌)。GP88を過剰発現している腫瘍細胞に正常な表現型を回復させるためにも、GP88拮抗剤を使用できる。
【0040】
本発明は、GP88拮抗剤を細胞に投与することからなる、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するための組成物及び方法も提供する。アポトーシスを誘導するために、任意のGP88拮抗剤が使用可能である(例えばGP88抗体又は抗体断片、GP88アンチセンス核酸、抗GP88siRNA、抗GP88小分子、又は抗GP88受容体抗体)。一つの態様において、GP88拮抗剤を投与した後、アポトーシスを受けている腫瘍細胞は、腫瘍細胞中のアポトーシスのマーカーのレベルを測定することにより定量される。例えば、bcl-2レベルの上昇はアポトーシスの抑制を示唆する。腫瘍細胞のアポトーシス状態は、腫瘍細胞中でPARPがその85kDaの断片に開裂することによっても測定できる。全ての型の腫瘍細胞においてアポトーシスの誘導は可能であり、限定されるものではないが、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、膵臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、及び肺の癌が含まれる。
【0041】
GP88拮抗剤と抗エストロゲン剤を共投与することによる、癌においてアポトーシスを誘導する方法も提供される。一つの態様において抗エストロゲン剤は、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤(例えばアリミデックス(登録商標)、フェメラ(登録商標))、及びエストロゲン受容体ダウンレジュレート剤(例えばファスロデックス(登録商標))からなる群から選択される。
【0042】
本発明は、第一の生体サンプル中のGP88蛋白質レベルを測定する工程、第二の生体サンプル中のGP88蛋白質レベルを測定する工程、および第二の生体サンプル中で測定されたGP88蛋白質レベルが、第一の生体サンプル中のGP88蛋白質レベルより、細胞がアポトーシスを受けていると示唆するに十分な量でもって低いかどうかを決定する工程を含む、細胞がアポトーシスを受けているかどうかを決定する方法を提供する。そのような生体サンプルは、限定されるものではないが、前立腺、血液、膀胱、脳脊髄液、血清、血漿、尿、乳頭吸引液(nipple aspirate)、胸腺、頭部及び頚部、子宮頸管、肝臓、腎臓、乳房、脾臓、胃、大腸、鼻咽頭、結腸直腸、子宮、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、及び肺組織を含む体液及び/又は組織から得られる。
【0043】
本発明は、GP88拮抗試薬を抗GP88抗体又は抗GP88受容体抗体に共役することによる、患部部位へのGP88拮抗試薬の標的化方法も提供する。
【0044】
本明細書中に組み込まれ、かつ、本明細書の一部を構成する付随の図面は、本発明の実施態様を例証し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
発明の詳細な説明
ここで、以下の実施例とともに本発明の要点を説明するのに役立つ現在好ましい本発明の実施態様について詳細に参照する。
【0046】
GP88の生物活性
本発明は、GP88並びに、GP88の変化した(増加した)発現に関連した疾患の治療及び診断に有用な抗腫瘍及び抗ウイルス組成物に関する。加えて本発明は、GP88に対する増加した反応に関連した疾患の治療及び診断に用いられる。本発明の好適な態様によれば、GP88拮抗剤(例えば、抗体、アンチセンス、siRNA、小分子)を用いて、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復し、アポトーシスが誘導できる。
【0047】
抗GP88抗体
本発明は、GP88の発現増加に関連する疾患の治療及び診断用組成物を提供し、これには、GP88に対する反応性の増加に関連する疾患の治療及び診断も含まれる。本発明の組成物には、GP88の生物活性を中和する抗GP88抗体が含まれる。
【0048】
本発明は、GP88のエピトープに特異的な抗体、並びに細胞、細胞若しくは組織抽出物、培地、又は生物液(例えば、全血、血清、血奬、リンパ、及び尿)中におけるGP88分子、その機能性誘導体、又は異なる動物種由来の同族体の存在を検出するためあるいは量又は濃度を測定するためのそのような抗体の使用にも関する。さらに、抗GP88抗体を用いて、特定部位へ細胞傷害性分子を標的化することができる。
【0049】
抗体生成のための抗原として使用するため、天然で産生されたあるいは組換え体又はその機能性誘導体中で発現された少なくとも9個のアミノ酸を有することが好ましいGP88タンパク質を得て、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の産生のため動物を免疫処置(immunize)に用いる。抗体が分子と反応することによって該分子が抗体と結合することが可能である場合、抗体は分子を結合できると言う。特異的反応とは、抗原がその対応する抗体と選択性の高い形式で反応し、他の抗原によって生じ得る多数の他の抗体と反応しないことを示すことを意味する。
【0050】
本明細書中の抗体との用語には、ヒト及び非ヒトポリクローナル抗体、ヒト及び非ヒトモノクローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗IdAb)、並びにヒト化抗体が含まれるが、限定するものではない。ポリクローナル抗体は、抗原で免疫処置された動物の血清又は鶏卵由来の抗体分子の異種集団である。モノクローナル抗体(「mAbs」)は、特異的抗原に対する抗体の実質的に同種の集団である。mAbsは、当業者に既知の方法によって得ることができる(米国特許第4、376,110号)。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、及びそのサブクラスのいずれも含む免疫学的クラスのいずれであってもよい。GP88に対するヒト及び非ヒト抗体を産生するハイブリドーマをin vitro又はin vivoで培養することができる。多量のmAbsの産生のため、in vivoは現在好ましい産生方法である。簡単に言えば、個々のハイブリドーマから得られる細胞をプリスタンプライム化(primed)Balb/cマウス又はヌードマウスに腹腔内注射し、高濃度の所望のmAbsを含有する腹水液を産生させた。当業者に周知である標準のクロマトグラフィー方法を用いて、腹水液又は培養物上清からmAbsを精製することができる。
【0051】
ヒトGP88に対するヒトモノクローナルAbは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを免疫処置することによって調製することができる。トランスジェニック動物から得たリンパ球を用いることによって産生されるハイブリドーマは、マウス免疫グロブリンの代わりにヒト免疫グロブリンを産生する。
【0052】
ほとんどのモノクローナル抗体はマウス供給源及び他の非ヒト供給源由来であるので、それらの臨床的有効性は、ヒトに投与される齧歯類mAbsの免疫原性、エフェクター機能の動員が弱いこと、及び血清からの急速な排泄のため制限され得る。これらの問題を回避するため、マウス抗体の抗原結合特性をヒト化と呼ばれるプロセスによってヒト抗体に付与することができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体骨格に移植される(grafted)親マウスmAbの6個の相補性決定領域(CDR)についてのアミノ酸配列を含有する。ヒト化抗体中の非ヒト配列の含量が低いこと(約5%)は、ヒトにおける免疫原性の減少及び血清半減期の延長の双方に有効であることが証明された。モノクローナル抗体のヒト化のために一価ファージディスプレイ及びコンビナトリアルライブラリー戦略を用いたものなどの方法は、現在、種々の抗体のヒト化に広く適用され、当業者に既知である。上記のトランスジェニック動物により生成されたこれらのヒト化抗体及びヒト抗体は、限定するものではないが癌を含むいくつかの疾患にとって治療上非常に有用である。
【0053】
当該技術分野で周知であるドットブロット及び標準の免疫測定法(EIA又はELISA)を含む任意数の免疫測定法により、GP88の抗体の存在についてハイブリドーマ上清及び血清をスクリーニングする。一度、上清が対象の抗体を有すると同定された場合、それをウエスタンブロッティングによってさらにスクリーニングして、抗体が結合する抗原のサイズを同定する。当業者は、所望のポリクローナル又はmAbを得るために、如何にして過度の実験なしにそのようなハイブリドーマの調製及びスクリーニングをするかを理解するであろう。
【0054】
キメラ抗体は、異なる動物種由来の異なる部分を有している。例えば、キメラ抗体は、マウスmAbから得られる可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有していてもよい。キメラ抗体及びその作成方法は当業者に既知である。
【0055】
したがって、GP88に対して生じたmAbsを用いて、好適な動物でヒト及び非ヒト抗IdAbsを誘発することができる。そのような免疫処置マウスから得た脾臓細胞を用いて、ヒト又は非ヒト抗IdmAbsを分泌するハイブリドーマを産生することができる。さらに、抗IdmAbsをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はウシ血清アルブミン(BSA)などの担体とカップリングして、追加のマウスを免疫処置することができる。これらのマウスから得た血清は、GP88ポリペプチドエピトープに特異的な元来の(original)mAbの結合特性を有するヒト又は非ヒト抗抗IdAbを含有する。したがって、抗IdmAbsは、評価されるエピトープと構造的に類似した自身のイディオタイプエピトープ又はイディオタイプを有する。
【0056】
抗体との用語は、完全体の分子及び抗原に結合することができるそのフラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2など)の双方を含むことも意味する。Fab及びF(ab’)2フラグメントは、完全体の抗体のFcフラグメントを欠き、より速やかに循環から除かれ、完全体の抗体よりも少ない非特異的組織結合性を有することができる。そのようなフラグメントは、典型的には、パパイン(Fabフラグメントを生ずる)及びペプシン(F(ab’)2フラグメントを生ずる)などの酵素を用いたタンパク質分解性の切断によって産生される。完全体の抗体分子について本明細書中に記載された方法に従って、本発明に有用であるFab及びF(ab’)2並びに抗体の他のフラグメントをGP88の検出又は定量化及びGP88発現に関連する病理状態の治療に用いることができることは明らかである。
【0057】
本発明によれば、GP88活性をin vitroで中和する抗体を用いてGP88活性をin vivoで中和し、増加したGP88発現又はGP88に対する増加した反応に関連する疾患を治療することができる。増加したGP88発現に関連する疾患を患った被検体、好ましくはヒト被検体をGP88に対する抗体で治療する。そのような治療は、他の抗癌又は抗ウイルス療法と併用して行うことができる。典型的な処方計画は、1週間又は数週間にわたり及び約1〜6ヶ月の間を含む期間にわたりGP88に特異的な抗体を有効量投与することを含む。本発明の抗体は、その意図する目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例えば、投与は、限定するものではないが皮下、静脈内、皮内、筋内、腹腔内、及び/又は経口を含む種々の経路によることができる。非経口投与は、ボーラス注射又は長期にわたる徐々の灌流(gradual perfusion)によることができる。非経口投与用製剤は、当該技術分野で既知の助剤又は賦形剤を含むことができる無菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。錠剤又はカプセル剤などの医薬組成物は、日常的な方法に従って調製することができる。GP88拮抗剤を任意の薬学的に許容される担体(例えば、錠剤、丸薬、注射剤、輸液、吸入剤、経皮パッチ、及び座薬)の中に処方することができる。投与量は、患者の年齢、性別、及び体重、在る場合には併用治療の種類、治療の頻度、並びに所望する効果の性質に拠ると理解される。以下に提供する有効用量の範囲は本発明を限定することを意図するものではなく、好ましい用量範囲を単に示しているだけである。しかしながら、最も好ましい投与量は、当業者によって理解され、かつ、決定される通り、個々の被検体に応じて合わせたものである。各治療に必要な全用量を多数回投与によりあるいは単回投与で投与することができる。有効量の抗体は、約0.01μg〜約100mg/kg体重であり、好ましくは約10μg〜約50mg/kgである。抗体を単独であるいは同じ疾患に関する他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0058】
本発明によれば、中和抗体に関して、たとえGP88発現の変化があることが必要ではなくても、GP88の細胞表面受容体の過剰発現があって今度はこのことが増加した生物活性を生ずる場合、又はシグナル伝達経路が常に「作動している(turned on)」であるとの事実に至るGP88シグナル伝達経路又は受容体の変化がある場合を含む、GP88生物活性を阻害することが必要となるすべての治療の場合において、GP88中和抗体を用いることができる。成長因子に対する及び成長因子受容体に対する中和抗体を用いて、増殖がこの成長因子に依存している細胞の増殖を阻害することに成功している。これは、ヒト乳癌細胞中のIGF−I受容体及び肺癌でのボンベシンの場合にそうであった。GP88に対する抗体を用いて、限定するものではないが、毒素、オンコトキシン(oncotoxins)、マイトトキシン(mitotoxins)、及び免疫毒素、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの細胞傷害性試薬などの化合物を、GP88を発現する細胞又はGP88に反応性である細胞へそれらを特異的に標的化するために送達することもできる。
【0059】
抗原によるGP88に対する中和抗体の生成を可能とする一領域は、マウスGP88中のK19T、及び6kDaのエピセリン/グラヌリンの繰り返し内に位置せずこれらの繰り返しの間に位置している、具体的には可変(variant)領域(図3を参照のこと)とみなされるものの中のグラヌリンA(エピセリン1)及びグラヌリンCの間に位置しているヒトGP88中のE19Vとして定義される19個のアミノ酸領域である。理論に拘束されることを望むものではないが、GP88の生物活性に重要な領域はエピセリンの繰り返しの外部に在ると信じられている。
【0060】
本発明に有用である抗体又は抗体のフラグメントを用いて、定量的又は定性的にGP88タンパク質を発現する細胞の存在を検出することもできる。これは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、又は蛍光測定による検出を伴った蛍光標識抗体を用いた免疫蛍光法技術によって成すことができる(以下を参照のこと)。本発明の抗体及びポリペプチドの反応は、当該技術分野で周知の免疫測定法法によって検出することができる。
【0061】
本発明の抗体は、組織試料、生検、及び生物液中のGP88タンパク質のインサイチュー(in situ)検出のために、光学顕微鏡法、免疫蛍光法、又は免疫電子顕微鏡法などで組織学的に用いることができる。インサイチュー(in situ)検出は、患者から組織学的被検物を取り出し、適切に標識した本発明の抗体を適用することにより成すことができる。抗体(又はフラグメント)は、標識抗体(又はフラグメント)を生物試料に付与又はオーバーレイすることによって提供されることが好ましい。そのような手順を用いることにより、GP88タンパク質の存在のみならず検査組織でのその分布又は生物液中での濃度も決定することが可能である。本発明を用いるとき、そのようなインサイチュー(in situ)検出を行うために非常に種々の組織学的方法(染色手順など)を改変することができることを当業者は容易に理解することができる。
【0062】
GP88のアッセイは、典型的には、GP88タンパク質を同定することが可能な検出できるように標識した抗体の存在下で生物液、組織抽出物、新たに採取され若しくは培養された細胞、又はその培地などの生物試料をインキュベーションする工程、及び当該技術分野で周知の多数の技術で抗体を検出する工程を含む。
【0063】
生物試料をニトロセルロースなどの固相支持体若しくは担体、又は細胞若しくは細胞粒子若しくは可溶性タンパク質を固定化する他の固相支持体で処理することができる。次いで、支持体を洗浄し、続いて検出可能に標識した抗GP88抗体で処理する。これに続いて支持体を洗浄して未結合の抗体を除去する。次いで、該支持体上の結合標識の量を慣用の手段によって検出することができる。固相支持体とは、限定するものではないが、ガラス、ポリスチレンポリプロピレン、ナイロン、改質セルロース、又はポリアクリルアミドなどの抗原又は抗体を結合することができる任意の支持体をいう。
【0064】
GP88タンパク質に対する所与の多くの抗体の結合活性を周知の方法に従って決定することができる。当業者は、日常的な実験を用いることにより、各決定に対する有効な(operative)及び最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0065】
GP88タンパク質又はその機能性誘導体の検出及び該タンパク質に特異的な抗体の検出は、酵素結合免疫測定法(EIA)又は放射線免疫測定法(RIA)などの当該技術分野で周知である種々の免疫測定法によって成すことができる。そのようなアッセイは当該技術分野で周知であり、当業者は本発明の抗GP88抗体及びGP88タンパク質を用いてそのようなアッセイを如何にして実施するかを容易に理解することができる。
【0066】
そのような免疫測定法は、血清又は他の生物液中及び組織、細胞、細胞抽出物、又は生検中のGP88タンパク質の検出及び定量化に有用である。好ましい実施態様において、癌又はGP88の増加した発現に関連する他の疾患を診断するための手段として、組織被検物中のGP88濃度を測定する。別の好ましい実施態様において、生物液試料中のGP88濃度を用いて、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかを決定する。
【0067】
ある種のタイプの癌(例えば、乳癌)の存在及び悪性度は、GP88タンパク質のレベルの増加に「比例する」と言う。本明細書中で用いる「比例する」との用語は、タンパク質のレベルと癌の悪性特性との間の、直線的な又は一定の関係に限定されることを意図しない。本明細書中に用いる「比例する」との用語は、増加したGP88タンパク質のレベルは、当業者が容易に決定することができるタンパク質の濃度範囲において、癌又はGP88の増加した発現に関連する他の疾患の悪性特性の様相、再発、又は提示と関連することが示されることを意図している。
【0068】
本発明の別の実施態様は、薬物又は薬剤(agent)のGP88の発現又は産生を阻害する能力を測定することによる抗癌又は抗ウイルス薬物又は剤の効力の評価に関する。本発明の抗体は、該抗体を用いて上記の免疫測定法の1つでGP88タンパク質の量を決定することができるという点で、抗癌又は抗ウイルス薬物の評価方法に有用である。あるいは、産生されたGP88タンパク質の量を本明細書中で記載した生物アッセイ(細胞増殖アッセイ)によって測定する。より正確な評価のために生物アッセイ及び免疫測定法を組み合わせて用いることができる。
【0069】
追加の実施態様は、好ましくはRNA−DNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて、組織又は生物液中のGP88又はその機能性誘導体をコードする存在しているmRNA配列の量を測定することに基づいた、癌又はGP88発現の増加に関連する他の疾患の診断用アッセイに関する。ある種の癌の存在及びその悪性度は、存在するそのようなmRNAの量に比例する。そのようなアッセイでは、mRNAの供給源は生検及び周囲組織であることができる。mRNAの量を測定するための好ましい技術は、相補性塩基配列のDNAを用いたハイブリダイゼーションアッセイである。
【0070】
別の関連する実施態様は、抗GP88中和抗体による治療によって増殖又は他の生物活性が阻害されるかを組織生検について測定することに基づいた、癌又はGP88反応の増加に関連する他の疾患の診断用アッセイに関する。
【0071】
別の関連する実施態様は、GP88mのRNAの発現阻害に対する薬剤の効果を測定する工程を含む、抗癌又は抗ウイルス薬物又は薬剤の効力の測定方法である。同様に、そのような方法を用いて、GP88のmRNAの産生を阻害する該薬剤の能力を測定することによってGP88拮抗剤の効力を同定又は評価することができる。
【0072】
核酸検出アッセイ、特にハイブリダイゼーションアッセイは、サイズ、配列、又は制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性など、核酸分子の任意の特徴に基づくことができる。検出が観察者に報告又は信号伝達される形式を変えることによって、そのようなアッセイの感度を増加することができる。酵素標識、放射性同位体標識、蛍光標識、化学標識、及び修飾塩基を含む非常に種々の標識が多く開発され、当業者によって用いられている。
【0073】
核酸の検出感度の制限を克服する一方法は、アッセイを行なう前に核酸を選択的に増幅することである。この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」又はPCRと称されている(米国特許第4,683,202号及び4,582,788号)。PCR反応は、その配列が先に精製されてなく、かつ、特定の試料中で単に単一のコピーで存在していたとしても、特定の核酸配列の濃度を選択的に増加する方法を提供する。
【0074】
抗エストロゲン療法と細胞傷害療法に対する感受性の回復
腫瘍は成長と成熟の種々の段階を通じて進行し、体内での腫瘍の移動性の増加に至る。そこで、腫瘍の成長と成熟の進行の間のいくつかの段階において、腫瘍細胞を標的化できる。例えば、GP88拮抗剤は腫瘍細胞の成長と増殖を阻害する。例えばGP88は、腫瘍細胞の成長と増殖に関連した細胞周期制御蛋白質であるサイクリンD1の発現を誘導する。図11に見られるように、抗GP88抗体はサイクリンD1の発現を阻害する。図11のレーン1と2は、抗GP88抗体である5BFはサイクリンD1の発現を阻害することを示す。レーン3と4は、GP88はサイクリンD1の発現を刺激することを示す。レーン5と6は、抗GP88抗体である5BFは、GP88によるサイクリンD1の誘導を阻害することを示す。
【0075】
本発明の好適な態様は、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に感受性を有さない腫瘍細胞とGP88拮抗剤を、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させるのに十分な量で接触させる工程を含む、抗エストロゲン療法に対する腫瘍細胞の感受性を回復させるための方法を提供する。一つの態様において、「感受性を回復する」という用語は、処理された主要細胞が抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に対する反応が増加することを言う。例えば、抗エストロゲン療法に反応しない(すなわち、制御されない成長を継続する)腫瘍細胞は、GP88拮抗剤と接触した後には抗エストロゲン療法に反応する(すなわち、成長が阻害され、アポトーシスを受けるなど)。
【0076】
GP88拮抗剤又はGP88に拮抗する薬剤には、限定されるものではないが、抗GP88抗体又は抗体断片、抗GP88受容体抗体、抗GP88小分子、抗GP88アンチセンス核酸、及びsiRNAが含まれる。抗GP88拮抗剤は、任意の腫瘍又は任意の型の癌において腫瘍の形成と成長を防止し、限定されるものではないが、それには、前立腺、頭部及び頚部、鼻咽頭、胸腺、脾臓、膀胱、子宮頸管、結腸直腸、血液、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣、卵巣、脳、神経、大腸、及び肺のの癌が含まれる。
【0077】
一態様において、腫瘍細胞の抗エストロゲン療法に対する効果に対する感受性は、アポトーシスを誘導することによって増加する。抗エストロゲン剤及びGP88拮抗剤を腫瘍細胞と接触させることにより、アポトーシスは誘導される。抗エストロゲン療法は、腫瘍の成長を防止又は治療する目的で抗エストロゲン剤を投与することに関する。上記で議論されたように、タモキシフェンのような抗エストロゲン剤は、部分的にはアポトーシスの誘導によって腫瘍の成長を阻害する。しかし図9に示されるように、タモキシフェンは実際には単独で、GP88を過剰発現している細胞においてインビボで腫瘍の成長を刺激することがある。そこで、高レベルのGP88を有する患者を抗エストロゲン剤単独で治療することは、逆効果を招くかもしれない。
【0078】
抗エストロゲン剤と抗GP88抗体の両者でGP88を過剰発現している腫瘍を処理すると、アポトーシスを誘導し、GP88過剰発現細胞における抗エストロゲン剤治療の潜在的な成長刺激性を除くことができる。抗エストロゲン剤の例には、限定されるものではないが、強力な抗エストロゲン性及び抗腫瘍性が示され乳癌を患っている患者に一般的に処方されている非ステロイド性抗エストロゲン剤(米国特許第4,536,516号を見よ)であるクエン酸タモキシフェン(「タモキシフェン」)、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤(例えば、アリミデックス(登録商標)(アナストロゾール)、フェメラ(登録商標)、レトロゾール)、及びエストロゲンダンレギュレート剤(例えばファスロデックス(登録商標))が含まれる。
【0079】
タモキシフェンが誘導するアポトーシスは、GP88を過剰発現している腫瘍細胞において阻害される。図5は、タモキシフェン、タモキシフェン+GP88、タモキシフェン+エストラジオール、GP88、及びコントロールで処理されたMCF−7乳癌細胞において、PARP開裂産物(85kDaバンド)のレベルを測定したウエスタンブロットである。図5で見られるように、タモキシフェン処理はMCF−7細胞のアポトーシスを誘導した。85kDaのPARP開裂産物は、「タモキシフェン」と名付けたレーンで顕著に増加し、アポトーシスを示唆している。タモキシフェンが誘導したアポトーシスはエストラジオール処理により阻害され、エストラジオールは、「タモキシフェン+エストラジオール」とラベルされたレーンにおける85kDaのバンドの減少によって示されるように、タモキシフェンが誘導したアポトーシスを阻害すると知られている化合物である。タモキシフェンが誘導したアポトーシスは、GP88処理により、エストラジオール処理と同程度に阻害された。「タモキシフェン+GP88」とラベルされたレーンは、「タモキシフェン」のレーンと比較して、PARP開裂産物の顕著な減少を示す。図5は、腫瘍細胞において、GP88はタモキシフェンが誘導したアポトーシスを阻害することを示す。
【0080】
本発明の更なる態様は、アポトーシスを誘導する組成物及び方法に向けられている。プログラムされた細胞死として知られているアポトーシスは、細胞の成長制御機構の本質的な成分である、例えばアポトーシスは、生体が傷害を受けた細胞を駆逐するための機構である(例えば、ウイルス感染した細胞、DNAが損傷された細胞)。アポトーシスを受けている細胞は、典型的には正常細胞よりも小さく、核が高度に凝縮されている。アポトーシス性の細胞は免疫機構による除去のためにマークされている。
【0081】
アポトーシスの制御の欠損は、細胞成長の非制御化と腫瘍形成を引き起こす。癌遺伝子はDNAの損傷によって活性化される。正常なアポトーシスの状態の下では、生体は損傷を受けた細胞を除去するするであろう。非正常な条件下ではアポトーシスは起こらず、損傷を受けた細胞が成長して増殖し、腫瘍形成へ至る。例えば、p53は通常はアポトーシスを誘導するように機能する。しかし、癌遺伝子型のp53はアポトーシスの誘導を阻害し、制御されない細胞死へ至る。制御されない細胞が生き残ることは、癌、自己免疫疾患、及び炎症性疾患などの疾患に貢献する。上記で議論したように、bcl-2遺伝子はアポトーシスを阻害できる蛋白質をコードする。bcl-2の過剰発現は、アポトーシスが阻害され、細胞がプログラムされた細胞死を受けないことを示す。
【0082】
本発明は、細胞傷害性又は化学療法性の薬剤の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させるための方法及び組成物を提供する。例えばGP88拮抗剤(例えば、抗GP88抗体、GP88アンチセンス核酸、siRNA、及び小分子など)を、細胞傷害性薬剤の抗腫瘍形成効果に対する耐性を形成した患者に投与できる(例えば、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウム・フォリナート、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスシン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリピン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲミシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、リポソマール・ドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、マイトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキシド、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン(tioguanine)/チオグアニン(thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)。細胞傷害性及び/又は化学療法性の薬剤、及びそれらの組み合わせに対する感受性と反応性を回復できる。
【0083】
本発明の他の態様において、GP88拮抗剤を、抗エストロゲン性及び/又は細胞傷害性化合物と共に腫瘍細胞へ投与できる。例えば、抗GP88抗体をタモキシフェンと共に癌細胞へ投与し、タモキシフェンの抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させるか、又はタモキシフェン耐性の形成を防ぐことができる。他の態様において、GP88拮抗剤を抗エストロゲン性及び/又は細胞傷害性化合物と共に順次投与することができる。そこで、GP88拮抗剤を、抗エストロゲン性又は細胞傷害性化合物の投与の前あるいは後のいずれかに投与することができる。
【0084】
本発明は、GP88拮抗剤を腫瘍細胞へ投与することにより、アポトーシスを誘導する方法も提供する。アポトーシスを全ての型の腫瘍細胞で誘導することができ、その腫瘍細胞には、限定されないが、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、膵臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、及び肺の癌が含まれる。種々の技術で腫瘍細胞においてアポトーシス検出することができ、その技術には、限定されないが、例えば、bcl-2レベルの検出、あるいはPARP開裂産物、DNAラダー、及びアポトーシス細胞の産生の検出が含まれる。PARP又はポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼは、DNA鎖の切断を検出する核結合蛋白質であり、DNA修復に寄与する。PARPの開裂はカスパーゼ依存性のアポトーシスの証明である。アポトーシスが起きるとき、116kDaの無傷PARPは、85kDaと25kDaの2つの断片へ開裂する。無傷及び開裂した型のPARPの、抗PARP抗体を用いたウエスタンブロット解析による検出は、アポトーシスアッセイとして確立されている。Duriez et al.,Biochem Cell Biol. 75:337-49,1997。
【0085】
アポトーシスは、抗アポトーシス性因子とアポトーシス性因子の比率、とりわけbcl-2、bcl-x1及びbaxにより制御される。過去の報告は、bcl-2の発現はタモキシフェン処理によってダウンレギュレートされ、MCF-7細胞及びタモキシフェンで治療された患者に由来の組織におけるアポトーシスの活性化へ至ることを示唆している。Zhang et al., Clin. Cancer Res. 5:2971-7,1999; Cameron et al., Eur.J.Cancer 36:845-51, 2000。bcl-2の発現レベルの変化はbax:bcl-2比を変え、アポトーシスに対する感受性を変化させる。O4細胞は、GP88発現コンストラクトにより形質転換したMCF-7細胞であり、GP88を過剰発現している。Serrero et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:3993-8,2000。図6に示されるように、試験した全ての濃度において、タモキシフェンはMCF-7細胞においてbcl-2転写物のダンレジュレーションを誘導し、それは、タモキシフェンがアポトーシスを誘導することを示唆している。対照的に、タモキシフェンは、高濃度においても、O4細胞中のbcl-2転写物をダウンレギュレートしなかった。
【0086】
図6に示されるように、タモキシフェン耐性のMCF-7細胞は、bcl-2をダンレジュレートできなかった。しかしながら、タモキシフェン耐性のMCF-7細胞へ抗GP88抗体を添加すると、bcl-2のダンレジュレーションによって示唆されるように、アポトーシスを回復した(図6)。そこでGP88拮抗剤は、タモキシフェン耐性細胞において、タモキシフェンがアポトーシスを誘導する能力を回復する。
【0087】
抗GP88抗体もO4細胞(GP88過剰発現、タモキシフェン耐性のMCF-7細胞)におけるアポトーシスを誘導する。図7に示されるように、5B4抗体(5B4)又は5B4+タモキシフェン(5B4+T)で処理されたO4細胞において、PARP開裂産物は増加し、抗GP88抗体による細胞の処理はアポトーシスを誘導することを示唆する。
【0088】
抗GP88抗体によるタモキシフェン耐性のMCF-7細胞の処理も、アポトーシスを誘導する。図8に示されるように、抗GP88抗体である5B4抗体を単独で、あるいはタモキシフェンと組みあわせて添加すると、PARPを開裂させる結果となり、一方タモキシフェン単独での処理はPARPを開裂させない。
【0089】
図9は、卵巣切除されたヌードマウスにおける、MCF-7細胞とO4細胞の成長に対するタモキシフェンの効果を示す。MCF-7細胞又はO4細胞のいずれかを注入(皮下注射)する一日前に、胸腺が欠損し卵巣を切除したメスのヌードマウスに、エストロジオールのペレットを埋め込んだ。10日後に腫瘍が見えるようになった時、マウスにプラセボのペレット又はタモキシフェンのペレットを受けさせた。腫瘍の成長を45日間観察した。実験の終わりにマウスを安楽死させ、腫瘍を切り出して評価した。図9に示されるように、O4細胞(GP88過剰発現細胞)により腫瘍を誘導しタモキシフェンで処理されたマウスにおける腫瘍の容積は、45日後には約50mm2から約225mm2へ増加した。対照的に、O4細胞により腫瘍を誘導しタモキシフェンで処理されなかったマウスにおける腫瘍の容積は、45日後には約75mm2から約150mm2へ増加した。GP88を過剰発現している腫瘍におけるタモキシフェン処理は、腫瘍の容積を4倍以上に増加させ、一方、非処理のGP88を過剰発現している腫瘍は2倍に増加した。
【0090】
そこでGP88拮抗剤(例えば、抗GP88抗体、GP88アンチセンス核酸、siRNA、抗GP88小分子など)を腫瘍細胞に投与し、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果を、例えばアポトーシスを誘導することにより回復させることができる。
【0091】
抗エストロゲン療法と細胞傷害性療法に対する感受性を回復させるために適しており、本発明において好適な他の組成物及び方法における(例えばアポトーシスの誘導など)GP88抗体は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801 University Blvd.,Manassas,VA20110-2209に寄託されており、ハイブリドーマの細胞株から産生可能であり、そのハイブリドーマーには、限定されるものではないが、6B3ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5262)、6B2ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5261)、6C12ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5597)、5B4ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5260)、5G6ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5595)、4D1ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5593)、3F8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5591)、3F5ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5259)、3F4ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5590)、3G2(ATCCアクセッション番号PTA-5592)、及び2A5ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5589)が含まれる。
【0092】
本発明の他の態様において、限定されるものではないが、6G8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5263)及び5A8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5594)を含む、ハイブリドーマ細胞株から作製された抗体を含む抗GP88受容体抗体を使用し、抗エストロゲン療法と細胞傷害性療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させ、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することができる。
【0093】
抗GP88抗体と抗GP88受容体抗体(まとめて「GP88拮抗剤抗体」)を、インビボとインビトロの両者で細胞に供給できる。インビトロの用途には、GP88拮抗剤抗体を細胞培養培地へ添加し、典型的には、細胞培養培地における濃度を0.01ngから約100mg/mlの範囲に、好ましくは約10ngから約50mg/mlにすることができる。抗体を単独で、あるいは、同じ疾患に対する他の治療剤と組み合わせて投与できる。GP88拮抗剤抗体又は抗体断片をコードしているDNA又はRNA、あるいはそのようなDNA又はRNA配列を含んでいるベクタ−で、細胞をトランスフェクトすることもできる。任意の適切な技術(例えば、誘導性プロモーター、及び多重プラスミドコピー)を用いて、トランスフェクトされた細胞を誘導し、GP88拮抗剤抗体又は抗体断片を生成させることができる。
【0094】
GP88拮抗剤抗体組成物を、エクスビボの技術を使用して、細胞へ投与することもできる。腫瘍形成性又は正常の細胞を被検体(例えば、ヒト又は他の哺乳類)から取り去り、培地中で培養する。その細胞を、GP88拮抗剤抗体をコードしているDNA又はRNAでトランスフェクトし、GP88拮抗剤抗体を産生するように誘導できる。トランスフェクトされた細胞を被検体へ再導入し、GP88拮抗剤抗体又は抗体断片を生成させ、GP88の活性を阻害し、腫瘍細胞増殖を抑制し、腫瘍の容積を抑制できる。
【0095】
インビボの用途のために、種々の投与経路と投与形態でGP88拮抗剤抗体組成物を被検体体に提供できる。GP88発現の増加と関連した疾患を患っている被検体を、GP88拮抗剤抗体又は断片で治療することができる。代わりに被検体の細胞を、GP88拮抗剤抗体又は断片をコードしているポリヌクレオチドでトランスフェクトできる。典型的な処方計画は、一週間から約6ヶ月の期間に渡って、GP88拮抗剤抗体の有効量を投与することからなる。
【0096】
本発明のGP88拮抗剤は種々の経路で投与することができ、限定されるものではないが、その経路には、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内及び経口投与が含まれる。非経口投与は、ボーラス注射又は長期にわたる徐々の灌流(gradual perfusion)によることができる。非経口投与用製剤は、当該技術分野で既知の助剤又は賦形剤を含むことができる無菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。錠剤又はカプセル剤などの医薬組成物も調製することができる。薬学的に許容される担体(例えば、錠剤、丸薬、注射剤、輸液、吸入剤、経皮パッチ、及び座薬)も、GP88拮抗剤を患者へ投与するのに使用できる。本発明の薬学組成物はGP88拮抗剤からなり、抗エストロゲン性及び/又は細胞傷害性化合物を含むことができる。
【0097】
投与量は、受け手の年齢、性別、及び体重、併用治療の種類、治療の頻度、並びに所望する効果の性質に拠ると理解される。以下に提供する有効用量の範囲は本発明を限定することを意図するものではなく、例証となる用量範囲を単に示しているだけである。しかしながら、最も好ましい投与量は、当業者によって理解され、かつ、決定される通り、個々の被検体に応じて合わせたものである。各治療に必要な全用量を多数回投与によりあるいは単回投与で投与することができる。有効量の抗体は、約0.01μg〜約100mg/kg体重であり、好ましくは約10μg〜約50mg/kgである。抗体を単独であるいは同じ疾患に関する他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0098】
本発明は、第一の生体サンプル中のGP88蛋白質レベルを測定する工程、第二の生体サンプル中のGP88蛋白質レベルを測定する工程、および第二の生体サンプル中で測定されたGP88蛋白質レベルが、第一の生体サンプル中のGP88蛋白質レベルより、細胞がGP88拮抗剤治療に反応していると示唆するに十分な量でもって低いかどうかを決定する工程を含む、GP88拮抗剤治療に対する反応性を決定する方法も提供する。「細胞がGP88拮抗剤治療に反応している」という用語は、細胞成長又は腫瘍細胞成長を、防止、抑制及び/又は減少させることを意味する。
【0099】
第一の又は最初の生体サンプル中のGP88レベルが測定され、異なった時点で採取された、第二の腫瘍生体サンプル中のGP88レベルと比較される。例えば、生体サンプル又は生検を規則的な間隔で採取でき、引き続いたサンプルにおいて測定されたGP88濃度を、最初のサンプルにおけるレベルと比較できる。腫瘍サンプルにおけるGP88レベルの長期間の低下は、その細胞がGP88拮抗剤治療に反応していることを示唆している。
【0100】
GP88発現阻害剤
本発明は、GP88発現阻害剤も提供する(例えば、アンチセンス化合物、及びsiRNA)。アンチセンス成分という用語は、特定のmRNA分子に対して十分に相補的な、RNA配列のみならずそれをコードするDNA配列に対応し、そのアンチセンスRNAは特異的であるので、アンチセンスRNAとmRNAの間に分子ハイブリダイゼーションを引き起こし、そのmRNAの翻訳を阻害するようにする。そのようなハイブリダイゼーションをインビボの条件下で起こすことも可能である。アンチセンスRNAの作用は細胞において、遺伝子発現を特異的に阻害する結果となる。例えば、アンチセンス成分はmRNAの翻訳を阻害し、及び/又は、mRNAのスプライシングを阻害又は防止できる。アンチセンス分子はイントロンへを結合することも可能であり、イントロンは種の間での保存が低いので特異性がより高くなる(例えば、ある種の遺伝子産物の発現を阻害するが、他の種におけるその相同物は阻害しない)。
【0101】
siRNAは、標的核酸と複合体を形成することにより遺伝子発現を阻害する二本鎖(ds)RNA分子である。センス鎖と呼ばれている一つの鎖は、標的核酸(例えば、メッセンジャーRNA「mRNA」)と相補的であるが、一方、第二の鎖はセンス鎖と相補的である。Fire et al.,Nature,391(6669):801-811(1998)。siRNA又はRNAiは、種々の種において遺伝子発現を阻害するために用いられている(例えば、線虫、Id、及びショウジョウバエ(Kennerdell and Carthew, Cell (1998) 95:1075-1026; Misquitta and Patterson, PNAS (1999) 96:1451-1456))。一態様において、siRNAとして使用されるdsRNAをインビボの転写で生成できる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又は標準なあるいは他のプロトコールに従って他の技術(例えば、プロメガ・ラージスケール・RNA生成システム(マジソン、ウィスコンシン州))を使用して、インビトロでdsRNAを生成できる。他の態様において、相補的なセンス及びアンチセンスRNA鎖を標的遺伝子(例えばGP88)の配列から得、合成することができる。得られたセンス及びアンチセンスRNAを緩衝液中でアニールし、動物に投与するか、細胞培養実験に使用することができる。例えば、Timmons and Fire, Nature (1998) 395:854; Montgomery et al., PNAS (1998) 95:15502-15507; Tabara et al., Science (1998)282:430-431。
【0102】
二本鎖siRNAは標的mRNAと複合体を形成して開裂させ、標的RNAの破壊をもたらす。Id 。二本鎖siRNAは、いわゆるRNAに誘導サイレンシング複合体又はRISKの中に組み込まれる。Kim et al., J.Korean Med Sci 18:309-18 (2003)。RNAヘリカーゼは、RISK複合体を活性化しているsiRNAの一つの鎖の破壊を触媒し、標的RNA分子の標的化と破壊をもたらす。Id 。siRNAはそれらの標的遺伝子について特異性を有し、殆どの遺伝子において遺伝子発現を90%阻害する。Id
【0103】
好ましくは、GP88に対するsiRNAは、GP88のmRNAの機能に干渉する。これらはGP88の任意の部位に対するものであってよいが、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さの部位に対するものである。GP88に対するsiRNAは、本発明によれば、腫瘍細胞の成長を阻害すること、腫瘍細胞の成長を防止すること、腫瘍の後退を引き起こすこと、及びアポトーシスを誘導することが可能である。
【0104】
GP88に対するsiRNAは適切な任意の配列を標的とすることができる。siRNAはGP88のヌクレオチド配列の任意の部位を標的とするように生成できる。GP88のヌクレオチド配列の一部分に結合した後、GP88核酸配列は破壊のためにマークされる。一態様において、siRNAは下記の配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドから生成する:5’AGGTTGATGCCCACTGCTCTG 3’(siRNA配列1)。siRNA配列1は、ヌクレオチド位置203で始まるヒトGP88ヌクレオチド領域を標的とする(図2A)。GP88の位置223で始まるヒトGP88配列を標的とするsiRNAは、下記の配列を有する:GAGCAGUGGGCAUCAACCUGG(siRNA配列2)。siRNA配列3(5’AGATCAGGTAACAACTCCGTG 3’)は、ヌクレオチド342で始まるヒトGP88配列を標的とする。siRNA配列4(5’GGACACTTCTGCCATGATAAC 3’)は、ヌクレオチド342で始まるヒトGP88を標的とする。
【0105】
一態様において、本技術分野において良く知られた方法により、siRNA配列を二本鎖siRNA配列とすることができる。種々の種(ヒト、マウス、ブタ、イヌなど)に由来するGP88ヌクレオチド配列の任意の適切な領域を標的とするために、siRNA配列を生成できることが理解される。破壊のためにGP88核酸(例えばmRNA)を標的化するというsiRNA配列の機能を変えることなく、ヌクレオチドの置換、欠失、逆転、及び変異をsiRNA配列内に導入できる。
【0106】
腫瘍細胞を、GP88cDNAとアンチセンスのDNA又はsiRNAでトランスフェクトすると、内在性のGP88の発現が阻害され、トランスフェクトされた細胞の腫瘍形成が阻害される。このアンチセンスDNAは、GP88遺伝子と十分な相補性(長さで18から30ヌクレオチド)を有するべきであり、それによってアンチセンスのRNAはGP88遺伝子(又はmRNA)とハイブリダイズでき、その作用がスプライシング、転写、又は翻訳のいずれのレベルであるにも関わらず、GP88遺伝子の発現を阻害できる。阻害の程度は、本願中で与えられた教示により過度の実験をすることなく、当業者にとって認識可能であり、好ましくはその増殖がGP88の発現に依存している細胞の成長を阻害するのに十分である。当業者はアンチセンスRNAのアプローチを認識するであろうが、特定の遺伝子発現を阻害するために多くの機構を採用できる。
【0107】
本発明のアンチセンス成分は、コード配列、3’又は5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的GP88cDNAのいくつかの部分のいずれとも又はGP88のmRNAとハイブリダゼーションすることができる。当業者に容易に理解される通り、本発明に必要な最小量の相同性は、好ましくは他のmRNA分子の機能及び他の無関係な遺伝子の発現に影響を及ぼすことなしにGP88のDNA又はmRNAとのハイブリダイゼーションを生じ、かつ、DNAの転写又はmRNAの翻訳若しくは機能を阻害するのに十分なものである。
【0108】
プロモーターを含む適切な調節配列とともにアンチセンスRNAをコードするDNAが配置されたレトロウイルスベクター及びプラスミドを含むベクターによる形質転換又はトランスフェクションによってアンチセンスRNAが細胞に送達され、宿主細胞中でアンチセンスRNAの発現が生じる。GP88のcDNAフラグメントをアンチセンス方向で含有する種々のアンチセンス発現ベクターの安定的なトランスフェクションを行った。レトロウイルスベクターを用いてアンチセンス成分を細胞に送達することもできる。リポソームによって送達することもできる。
【0109】
in vivo治療用の目的のために、現在好ましい方法は、発現ベクター中に構成されたアンチセンスcDNAフラグメントの安定的なトランスフェクションを行なうのに代えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることである。長さ15〜30個の塩基のサイズを有し、かつ、コード配列、3’又は5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的GP88のcDNAのいくつかの部分のいずれか、又はGP88のmRNAとハイブリダイゼーション可能な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。GP88に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、最も効力があるアンチセンス効果を有するものとして選択されることが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の標的部位を律する要因は、オリゴヌクレオチドの長さ、結合親和性、及び標的配列への到達容易性(accessibility)に関連する。GP88タンパク質翻訳及びGP88に関連する表現型の阻害、例えば培養物中の細胞増殖の阻害を測定することにより、配列をそのアンチセンス活性についてin vitroでスクリーニングすることができる。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、RNAのほとんどの領域(5’及び3’非翻訳領域、AUG開始部、コード領域、スプライス接合部、及びイントロン)を標的にすることができることは既知である。
【0110】
好ましいGP88アンチセンスオリゴヌクレオチドは安定であり、ヌクレアーゼ(オリゴヌクレオチドを潜在的に分解することができる酵素)に対して高い回復力(resilience)を有し、非毒性用量でそれらを疾患組織へ運搬することを可能とする好適な薬物動態を有し、かつ、形質膜を横切る能力を有するオリゴヌクレオチドである。
【0111】
ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができる。リン酸ジエステル結合の修飾及び複素環又は糖の修飾によって、効力を増加することができる。リン酸ジエステル結合の修飾に関して、ホスホロチオエートを用いることができる。N3’−P5’ホスホロアミデート結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化し、RNAへの結合を増加すると記載されている。ペプチド核酸(PNA)結合は、リボース及びリン酸ジエステル骨格の完全な置換であり、ヌクレアーゼに安定であり、RNAに対する結合親和性を増加し、かつ、RNAseHによって開裂されない。その基本構造は、アンチセンス成分としてそれを最適化することを可能とする修飾を受け入れやすい(amenable)。複素環の修飾に関して、ある種の複素環修飾は、RNAseH活性を妨げることなしにアンチセンス効果を増大することが証明されている。そのような修飾の例は、C−5チアゾール修飾である。糖の修飾も考慮することができる。2’−O−プロピル及び2’−メトキシエトキシリボース修飾は、細胞培養物中及びin vivoにおいてヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化する。c−raf−1を標的としたこれらのタイプのオリゴヌクレオチドを用いた細胞培養物及びin vivo腫瘍実験では、効力が増大した。
【0112】
送達経路は、上記の基準に従って測定された最良のアンチセンス効果を提供するものである。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたin vitro細胞培養アッセイ及びin vivo腫瘍増殖アッセイによって、カチオン性リポソームによって仲介される送達、レトロウイルスベクターによって仲介される送達、及び直接的な送達が効果的であることが示された。別の可能性ある送達様式は、抗体を用いて腫瘍細胞の細胞表面マーカーを標的としたものである。GP88又はその受容体に対する抗体は、この目的に役立つことができる。
【0113】
組換えGP88
本発明は、他の哺乳動物DNA配列を実質的に有さない組換えGP88ポリペプチド又はその機能性誘導体を発現するためのDNA発現系にも関する。そのようなDNAは、二重鎖又は一本鎖であることができる。DNA配列は、好ましくは、別のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを可能とするために約20個以上のヌクレオチドを有しなければならない。GP88タンパク質又はその同族体若しくは機能性誘導体をコードする配列以外の配列とのハイブリダイゼーションが無いことによって特徴付けられるより高い特異性のハイブリダイゼーションを達成するためには、長さが少なくとも50個のヌクレオチドが好ましい。
【0114】
本発明は、上記のDNA分子、発現可能なベヒクル又はベクター、及びベヒクルでトランスフェクションされた又は形質転換された、かつ、ポリペプチドを発現することができる宿主にも関する。そのような宿主は、原核生物、好ましくは細菌、又は真核生物、好ましくは酵母若しくは哺乳動物細胞であることができる。好ましいベクター系には、昆虫細胞中で発現するバキュロウイルスが含まれる。形質転換、形質導入(transduction)、トランスフェクション、感染、又は当該技術分野で既知の関連するプロセスによって、DNAを宿主生物に組み込むことができる。GP88ポリペプチドをコードするDNA及びmRNA配列に加えて、本発明は核酸配列の発現方法も提供する。さらに、遺伝子配列及びオリゴヌクレオチドによって、本明細書中に記載されるポリペプチドGP88と配列相同性を有する追加のポリペプチドの同定及びクローニングが可能となる。
【0115】
発現ベクターは、(適切な転写及び/又は翻訳制御配列の存在ゆえに)ベクター中にクローニングされたDNA(又はcDNA)分子を発現することができ、それによってポリペプチド又はタンパク質を産生するベクターである。クローニングされた配列の発現は、発現ベクターが適切な宿主細胞に組み込まれたときに起こる。原核生物発現ベクターを用いた場合、適切な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の原核生物細胞であろう。同様に、真核生物発現系を用いた場合、適切な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の真核生物細胞であろう。例えば、バキュロウイルスベクターを用いて、GP88cDNAをクローニングし、続いて昆虫細胞中でcDNAを発現することができる。
【0116】
GP88ポリペプチド又はその機能性誘導体をコードするDNA配列を、連結のための平滑末端又は付着末端、適切な末端を与える制限酵素消化、必要に応じた付着末端の充填(filling)、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、及び的確な酵素リガーゼによる連結を含む慣用技術に従って、ベクターDNAと組み換えることができる。そのような操作のための技術は(35)で論じている。
【0117】
核酸分子は、該核酸分子が転写及び翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、かつ、そのような配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に動作可能に結合されている場合、ポリペプチドを発現することができる。動作可能な結合とは、調節DNA配列及び発現させたいDNA配列が遺伝子発現するような方法で結合される結合である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は生物ごとに変わってもよいが、一般には、原核生物ではプロモーター(RNA転写の開始を指示する)及びRNAに転写されたときにタンパク質合成の開始をシグナル伝達するDNA配列の双方を含有するプロモーター領域を含んでいなければならない。それらの領域は、通常、TATAボックス、キャップ形成配列(capping sequence)、CAAT配列などの転写及び翻訳の開始に関与するそれらの5’非コード配列などを含む。
【0118】
所望する場合、タンパク質をコードする遺伝子配列に対する3’非コード領域を記載の方法(適切なcDNAライブラリーのスクリーニング又はPCR増幅)によって得ることができる。この領域は、終結及びポリアデニル化などの転写終結調節配列が存在するために保持することができる。したがって、タンパク質をコードするDNA配列にもともと隣接している3’領域を保持することによって、転写終結シグナルを付与することができる。発現宿主細胞中で転写終結シグナルが与えられず、又は満足がいくほど機能的ではない場合、別の遺伝子由来の3’領域に置き換えることができる。
【0119】
配列間の結合の性質によって、フレームシフト変異の導入が生じず、かつ、ポリペプチド遺伝子配列の転写を指示するプロモーター配列の能力が妨げられない場合、プロモーター領域配列及びGP88コード配列などの2つのDNA配列が動作可能に結合していると言う。プロモーター配列は、原核生物性、真核生物性、又はウイルス性であることができる。好適なプロモーターは、誘導性、抑制性、又は構成的であることができる。
【0120】
真核生物プロモーターには、マウスメタロチオネインI遺伝子用プロモーター、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、遺伝子gal4プロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、及びサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターが含まれるが、限定するものではない。強力なプロモーターが好ましい。そのようなプロモーターの例は、T3、SP6、及びT7ポリメラーゼ、バクテリオファージラムダのPLプロモーター、recAプロモーター、マウスメタロチオネインI遺伝子のプロモーター、SV40プロモーター、及びCMVプロモーターを認識するものである。
【0121】
本発明の教示を特定の問題又は環境へ適用することは、本明細書中に含まれる技術に照らして、当業者の能力の範囲内であると理解すべきである。以下の限定するものではない実施例によって本発明をより十分に例証する。
【実施例】
【0122】
実施例1
タモキシフェン処理細胞中でGP88拮抗剤はアポトーシスを誘導する
GP88の過剰発現は、タモキシフェン処理に反応したbcl-2mRNA転写産物のダウンレジュレーションを阻害する。MCF−7細胞及びGP88を過剰発現しているMCF−7細胞(O4細胞)を、0又は2μmのタモキシフェンで処理した。図6。Super ScriptII(BRL、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)により、20ngのランダムヘキサマー(Gibco)をプライマーとして用いて、5μgの全RNAを一本鎖cDNAへ逆転写した。その逆転写反応は、10nM Tris−HCl(pH8.3)、2.5mM MgCl、50mM KCl、DTT 0.01M及びdNTP(各0.5mM)中で、42℃で1時間行なわれた。増幅される遺伝子により、全30−35サイクルのPCRサイクルが行なわれ、引き続いて1%アガロースゲル上で電気泳動をした。使用された特定のプライマーのペアは以下のようである:グリセルアルデハイド3−ホスフェイトデヒドロナーゼ(GAPDH)のためには:フォワードプライマー 5’TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGGT3’、リバースプライマー 5’CATGTGGGCCATGAGGTCCACCAC3’;bcl-2のためには:フォワードプライマー 5’GGTGCCACCTGTGGTCCACCTG3’、リバースプライマー 5’CTTCACTTGTGGCCCAGATAGG3’;Baxのためには:フォワードプライマー 5’GAGCAGATCATGAAGACAGGGG3’、リバースプライマー 5’CTCCAGCAAGGCCCAGCGTC3’;bcl-x1のためには:フォワードプライマー 5’CAGTGAGTGAGCAGGTGTTTTGG3’、リバースプライマー 5’GTTCCACAAAAGTATCCCAGCCG3’。
【0123】
図6において見られるように、GP88を過剰発現していないタモキシフェン処理細胞において、bcl-2はダウンレジュレートされた(レーン1-4−空ベクター)。GP88を過剰発現しているタモキシフェン処理細胞においては、bcl-2のダウンレジュレーションは阻害された(レーン5−8)。
【0124】
実施例2
GP88を過剰発現している細胞(O4細胞)又はタモキシフェン耐性細胞において抗GP88抗体5B4はアポトーシスを誘導する
上記で議論したように、PARPの開裂は85kDaの断片を遊離し、細胞がアポトーシスを受けていることを示唆する。抗PARP抗体を使用したウエスタンブロットにより、タモキシフェン、抗GP88抗体、及びエストラジオールの組み合わせで処理された細胞におけるアポトーシスの有無が明らかになる。
【0125】
MCF細胞又はO4細胞を、5%FBSを添加したDMEM/F12が入った60mmディッシュに、7×10細胞の密度で播種した。24時間後に培地を変え、無血清でフェノールレッドを含まない、ベヒクル又は精製したGP88を添加したDMEM/F12培地にした。更に24時間経過した後、ベヒクルのみ、あるいはタモキシフェン、抗GP88抗体、エストラジオール又はベヒクルを種々に組み合わせた物のいずれかで、24時間細胞を処理した。細胞溶解物を、6M尿素を含むRIPA緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.4、1%NP−40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、蛋白質分解酵素阻害剤)の中に採取した。抗PARP抗体による免疫沈降のために、各サンプルから100μgの蛋白質を使用した。無傷及び開裂型のPARPを、オンコジーン・リサーチ(サンディエゴ、カリフォルニア州)由来のマウスモノクローナル抗PARP抗体を用いて検出した。搭載量を標準化するためにα−アクチンを使用した。
【0126】
図5に見られるように、GP88はタモキシフェンによるアポトーシスの誘導を阻害する。エストロゲン受容体経路の活性化剤であるエストラジオールも、タモキシフェンによるアポトーシスの誘導を阻害する。図21と22は、GP88を過剰発現している細胞(O4細胞)又はタモキシフェン耐性細胞において、抗GP88抗体5B4がアポトーシスを誘導することを示している。
【0127】
上記の記載及び実施例は本発明の目的、特徴、及び利点を達成する態様を表すのみであり、本発明はそれにより限定されるものではない。特許請求の範囲の精神及び範囲の内にある本発明の任意の改変は、本発明の一部であると見做される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1A】図1Aは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。抗GP88抗体K19TとS14Rを生成する抗原として使用されたペプチド領域を下線で示す。pCMV4哺乳動物発現ベクターにおいてアンチセンス方向でクローン化された領域を括弧の間に示す。
【図1B】図1Bは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。抗GP88抗体K19TとS14Rを生成する抗原として使用されたペプチド領域を下線で示す。pCMV4哺乳動物発現ベクターにおいてアンチセンス方向でクローン化された領域を括弧の間に示す。
【図1C】図1Cは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。抗GP88抗体K19TとS14Rを生成する抗原として使用されたペプチド領域を下線で示す。pCMV4哺乳動物発現ベクターにおいてアンチセンス方向でクローン化された領域を括弧の間に示す。
【図2A】図2Aは、ヒトGP88cDNAのヌクレオチド配列を示している。pcDNA3哺乳動物発現系にアンチセンス方向でクローニングされた領域が括弧の間に示されている。
【図2B】図2Bは、ヒトGP88の推定アミノ酸配列を示している。抗ヒトGP88中和抗体を生成するための抗原として用いたE19V領域に下線を引いてある。それは、マウスS14R領域に相当する領域A14Rも示している。
【図3】図3は、グラヌリンg、f、B、A、C、D、及びe(右側)として定義される7つと半分の繰り返しを示すように並べたマウスGP88のアミノ酸配列を示している。この図示により、抗GP88中和抗体を生成するためのGP88抗体を生じさせるのに用いる領域K19T及びS14Rが可変領域とみなされるものの中の2つのエピセリン/グラヌリンの繰り返しの間に見出されることが示される。Batemanら(6)による繰り返しのグラヌリン分類を右側に示す。グラヌリンB及びグラヌリンAはそれぞれ、Plowmanら(1992)(5)によるエピセリン2及びエピセリン1としても定義される。
【図4】図4は、GP88アンチセンスcDNAを発現ベクターにクローニングするための制限部位を示すpCMV4及びGP88cDNAクローンを図示したものを示している。
【図5】図5は、タモキシフェンに反応したMCF−7細胞のアポトーシスを、GP88が阻害することを示す。アポトーシスのマーカーであるPARP(ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ)は開裂し、タモキシフェンの存在下で85kDa断片を生成するが、GP88又はタモキシフェン+GP88の存在下ではそれを生成しない。
【図6】図6は、抗GP88抗体はアポトーシスを誘導することを示す。タモキシフェン耐性MCF−7細胞はbcl−2をダウンレギュレートできない。GP88抗体又はGP88抗体+タモキシフェンの存在下では、bcl−2はダウンレギュレートされる。
【図7】図7も、抗GP88抗体はアポトーシスを誘導することを示す。O4細胞(GP88を過剰発現している)はPARPを開裂することができない。抗GP88抗体又は抗GP88抗体+タモキシフェンの存在下でPARPは開裂し、アポトーシスの誘導を示す。
【図8】図8は、抗GP88抗体はアポトーシスを誘導することを示す。タモキシフェン耐性MCF−7細胞はPARPを開裂できない。抗GP88抗体又は抗GP88抗体+タモキシフェンの存在下でPARPは開裂し、アポトーシスの誘導を示す。
【図9】図9は、インビボでGP88過剰発現細胞(O4細胞)において、タモキシフェンは腫瘍容積の増加を誘導できることを示す。そこでタモキシフェン処理は、GP88のレベルが上昇した腫瘍においては、腫瘍成長を促進するという危険性をもたらすかもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に感受性を有さない腫瘍細胞を、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させるのに有効な量のGP88拮抗剤と接触させる工程を含む、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させるための方法。
【請求項2】
腫瘍細胞でアポトーシスを誘導するのに有効な量で、GP88拮抗剤と腫瘍細胞を接触させる工程を含む、腫瘍細胞でアポトーシスを誘導する方法。
【請求項3】
前記GP88拮抗剤が、抗GP88抗体又は抗体断片、抗GP88受容体抗体、及びGP88アンチセンス核酸からなる群から選択された、請求項1及び請求項2のいずれか一つの請求項記載の方法。
【請求項4】
前記GP88拮抗剤がsiRNAである、請求項1及び請求項2のいずれか一つの請求項記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍が、前立腺、頭部及び頚部、鼻咽頭、甲状腺、膵臓、膀胱、子宮頸管、結腸直腸、血液、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣、卵巣、脳、神経、大腸、及び肺の癌からなる群から選択された、請求項1及び請求項2のいずれか一つの請求項記載の方法。
【請求項6】
細胞を、細胞傷害療法に対する感受性を回復させるのに十分な量のGP88拮抗剤と接触させる工程を含む、細胞傷害療法に対する感受性を回復させるための方法。
【請求項7】
前記細胞傷害療法が、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウム・フォリナート、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスシン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリピン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲミシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、リポソマール・ドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、マイトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキシド、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン(tioguanine)/チオグアニン(thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンからなる群から選択された細胞傷害性薬剤を、腫瘍細胞へ投与する工程を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
GP88拮抗剤、第二の抗腫瘍形成剤、及び薬学的に許容可能な担体を含む、抗エストロゲン療法の抗腫瘍形成効果に対する感受性を回復させるための薬剤。
【請求項9】
前記抗腫瘍形成剤が抗エストロゲン剤である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記第二の抗腫瘍形成化合物が細胞傷害性化合物である、請求項8記載の組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−524622(P2007−524622A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517556(P2006−517556)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020036
【国際公開番号】WO2005/000240
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505184654)エイアンドジー ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】