説明

抗細菌、抗真菌、抗酵母、および/または抗ウイルス特性を有するナノ構造組成物

本発明は、抗細菌、抗真菌、抗酵母、および/または抗ウイルス特性を有する、ナノ構造組成物を提供する。本組成物は、1つ以上の活性薬剤のための薬物送達キャリアとして有用であり、あるいは活性薬剤不在下では、このような組成物が望ましい方法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗細菌、抗真菌、抗酵母、および/または抗ウイルス特性を有するナノ構造組成物に関する。本組成物は、1つ以上の活性薬剤のための薬物送達キャリアとして有用であり、あるいは活性薬剤不在下では、このような組成物が望まれる方法において有用である。
【背景技術】
【0002】
(A.薬物剤形および消費者向け製品中における抗細菌薬剤の使用に関する背景)
微生物保存料は、無殺菌の剤形に添加され、微生物の生育、または製造工程中あるいはそれに引き続いて不注意に取り込まれた微生物から、剤形を保護する。多回用量容器内で使用される無菌の物品の場合、抗菌保存料が添加され、個々の用量を繰り返し取り出すことにより取り込まれうる微生物の生育を阻止する。
【0003】
全ての有用な抗菌剤薬剤は、毒性物質である。USP 26, General Chapters, Section 51, "Antimicrobial Effectiveness Testing"を参照されたい。患者を最大限保護するために、完成調製済み包装製品中において効果的と示される保存料の濃度は、ヒトにとって有毒でありうるレベル未満でなくてはならない。
【0004】
米国食品医薬品局ガイドラインは、製品に固有であるか(すなわち抗生剤のために)、あるいは抗菌剤の添加のために生じるかに関わらず、抗菌効果が、多回用量容器内に包装される全ての注入物について、またはその他の抗菌保存料含有製品について、実証されるべきであると要求している。抗菌効果は、多回用量の局所適用剤形および経口剤形、並びにその他の点眼液、点耳液、点鼻液、灌注液、および透析液などの剤形について、実証されなくてはならない。USP 26, General Chapters, Section 51, "Antimicrobial Effectiveness Testing"を参照されたい。
【0005】
このような化合物は有毒である場合があり、また、これらは本来送達されるべき活性薬剤と望ましくない相互作用を有しうるため、治療用剤形への抗菌剤の添加は望ましくないかもしれない。さらに殺微生物剤の使用は、薬剤抵抗性細菌、薬剤抵抗性酵母、薬剤抵抗性真菌などの発生を促進しうる。これは、一般に普及した抗細菌ローション、石鹸、洗浄剤製品などの使用において観察されている。
【0006】
細菌の間で抗生物質耐性が近年増大しており、抗生物質または殺生剤にさらされることにより、細菌またはその他の微生物において交差耐性が生じるかもしれないという懸念が高まっている。Rutala, W. A., "APIC Guideline for Selection and Use of Disinfectants," American J., 24:313-342 (1996);Russell et al., "Do Antiseptics and Disinfectants Select for Antibiotic Resistance?" J. of Medicinal Microbiology, 48:613-615 (1999)。より効果的な消毒剤は極めて刺激性かつ有毒であり、従事者における接触性皮膚炎および粘膜刺激などの健康上の問題をもたらす。Hansen, K.S., "Occupational Dermatoses in Hospital Cleaning Women," Contact Dermatitis, 9:343-351 (1983);Beauchamp et al., "A Critical Review of the Toxicology of Glutaraldehyde, Critical Reviews in Toxicology, 22:143-174 (1992)。したがって、局所および表面消毒、微生物変化、並びに耐性菌発生の観点から、効果的で安全な殺生物性薬剤に対する継続的な必要性がある。
【0007】
(B.真菌性、細菌性、酵母性、およびウイルス性の日和見菌に関する背景)
USPは、剤形の抗菌効果を判定するために、大腸菌(E. coli)、緑膿菌(P. aeruginosa)、および黄色ブドウ球菌(S. aureus)を死滅させ、加えてC.アルビカンス(C. albicans)およびA.ニガー(A. niger)の生育をコントロールし、制限する作用における有効性の試験を規定する。USP 26, Section 51, General Chapters, "Antimicrobial Effectiveness Testing"を参照されたい。これら特定の微生物は、最も問題があり厄介な細菌、真菌、および酵母の代表である。
【0008】
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)は真菌であり、アスペルギルス(Aspergillus)属の最も一般的な種の1つである。それは特定タイプの青果物上で黒カビを引き起こし、一般的な食物汚染物質である。
【0009】
C.アルビカンス(C. albicans)は、ヒトの重要な真菌病原体である。感染症は、膣感染症および経口感染症などのように局在化し、それはかなりの程度の不快感を引き起こす。防御システムが重度に損なわれているいくつかの患者群(未熟児、白血病および火傷患者)では、酵母は致死性病原体になる可能性があり、全身感染症を引き起こして、その結果、感染患者の50%までが死亡する。このような感染症の発生率は、特に入院患者において急速に増加している。ニュージーランドでは、このような感染症が今や15年前の10倍の頻度である。さらに抗カンジダ薬の保有宿主は非常に限られており、これらの薬剤は重度の副作用を有することができる。
【0010】
大腸菌(E. coli)は遍在性細菌であり、多数の既知の株がある。特に厄介な大腸菌(E. coli)株である大腸菌(E. coli)O157:H7は、EHEC−腸管出血性の大腸菌(E. coli)群の一員である。腸管出血性とは、出血、ひいては血液の喪失を引き起こす腸関連生物を意味する。大腸菌(E. coli)O157:H7は、志賀毒素様毒素(SLT)またはベロ毒素と称される毒素を産生する。毒素は、腸管上皮細胞に重度の損傷を引き起こすタンパク質である。子供は大量の血液および体液損失に耐えるには小さすぎるので、この病状は小さな子供にとって特に危険であり、致命的であり得る。場合によっては、腎不全および赤血球損失によって特徴づけられる溶血性尿毒症症候群(HUS)と称される別の症候群が関与する。およそ5%〜10%の子供は疾患のこの段階に進行する。重症例では、疾患は恒久的な腎臓損傷を引き起こす。この細菌の存在はまた、高齢者または虚弱者にとって非常に危険である。血液系が関与し、高齢者にとって50%の症例で致命的である、HUSとその他の要因との組み合わせが存在し得る。大腸菌(E. coli)O157:H7がますます蔓延してきている証拠がある。
【0011】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、その環境融通性、特に感染しやすい個人で疾患を引き起こす能力、およびその抗生物質抵抗性で知られるグラム陰性細菌である。嚢胞性線維症の最も重篤な合併症は、遍在性細菌の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による気道感染症である。癌および火傷患者もまた、一般にこの生物による重篤な感染症を患い、免疫系欠損がある特定のその他の個人も同様である。多くの環境由来細菌とは異なり、緑膿菌(P. aeruginosa)は、感染しやすい宿主において疾患を引き起こす顕著な能力を有する。それは水および土壌から植物および動物組織に至る多くの生態的地位に適応して繁殖する能力を有する。細菌は広範な有機化合物を食物源として利用できるので、栄養素が限られているところに生態的地位をコロニー形成するという例外的な能力をもつ。緑膿菌(P. aeruginosa)は、大規模な組織損傷を引き起こすだけでなく、ヒト免疫系の防御機序を邪魔する多数の有毒タンパク質を生成できる。これらのタンパク質は、コロニー形成部位またはその近辺で宿主細胞に入って殺傷する強力な毒素から、様々な臓器中で細胞膜および結合組織を恒久的に破壊する分解性酵素まで多岐にわたる。
【0012】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、毒性ショック症候群(TSS)および熱傷様皮膚症候群のみならず、軟部組織感染症の主要原因である。黄色ブドウ球菌の病原性効果は、主にそれが産生する毒素に付随する。これらの毒素の多くは、細菌成長曲線中の定常期において産生される。事実、感染部位が、生きた黄色ブドウ球菌細胞を含有しないことは珍しくない。黄色ブドウ球菌(S. aureus)エンテロトキシンは、腹痛および重度の嘔吐をもたらし得る、急激に発症する食中毒を引き起こす。感染症は、調理が完全でなかった汚染食肉に帰着することができる。これらの微生物はまた、白血球細胞を破壊して、膿および座瘡の形成をもたらす毒素であるロイコシジンも分泌する。特に、黄色ブドウ球菌(S. aureus)は、肺炎、髄膜炎、吹出物、関節炎および骨髄炎(慢性骨感染症)などの病気における原因物質であることが分かっている。ほとんどの黄色ブドウ球菌(S. aureus)はペニシリン抵抗性であるが、バンコマイシンおよびナフシリンは、ほとんどの菌種に対する効果的な薬剤であることが知られている。
【0013】
アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)などのカビは糸状菌である。それらは、特に土壌中の生きていない有機物質上に生育して蔓延している。それらは空気中に分生子と称されるそれらの無性胞子を散布する。ほとんどのアスペルギルスはヒトにとって無害であり、A.フミガーツス(A. fumigatus)は、特に疾患、薬物治療法または遺伝的病状によって免疫系が損なわれていないヒトには、無害である。A.フミガーツス(A. fumigatus)にさらされることにより、敏感な個人においては、アレルギー反応が引き起こされ得る。より重要なことには、A.フミガーツス(A. fumigatus)は、骨髄組織移植患者、AIDS患者、およびその他の免疫不全の人々の日和見病原体である。
【0014】
アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)は、世界的に感染症を引き起こす最も一般的なカビである。ヒトで初めて記述された感染症であるアスペルギルス腫は、エディンバラで1842年に報告され、非免疫不全患者における侵襲性疾患の多数の症例が報告されている。これらの症例およびより最近の疫学的データは、A.フミガーツス(A. fumigatus)が、稀ではあるが主要なヒトの病原菌であることを強調する。アスペルギルス(Aspergillus)に起因するアレルギー疾患については、1952年にロンドンで初めて記述され、免疫不全患者における最初の侵襲性(そして致命的)な感染症については、1953年に、British Medical Journalで、グロスター(Gloucester)出身の患者について報告された。
【0015】
侵襲性疾患の発生頻度は、任意抽出の解剖における死後判定で、1992までの12年間でおよそ14倍に上昇した。侵襲性アスペルギルス症は、ヨーロッパの三次医療病院において死後に検出される最も頻繁な真菌病原体として、カンジダ症に取って代わった。したがって死亡する全患者の4%が、侵襲性カンジダ症による約2%と比較して、侵襲性アスペルギルス症を有した。疾患頻度に基づいてリスクがある患者としては、慢性肉芽腫性疾患のある患者(25〜40%)、肺組織移植患者(17〜26%)、同種骨髄移植患者(4〜30%)、白血病がある好中球減少性患者(5〜25%)、心臓組織移植患者(2〜13%)、膵臓組織移植患者(1〜4%)、ヨーロッパおよび米国(約1%)およびインド(約10%)の腎臓組織移植患者、およびAIDS、多発性骨髄腫および重症複合型免疫不全症のある患者(約4%)が挙げられる。500,000件を超える組織移植が、毎年全世界で実施される。急性白血病は人口の約3/100,000に影響し、平均して各患者は3サイクルの化学療法を受け入れ、各サイクルは重要なリスク期間を特徴付ける。同様の発生率は、侵襲性アスペルギルス症の高いリスクにある高悪性度のリンパ腫患者について観察される。先進国だけでもこれらの治療プロトコルは、毎年約250,000の重要なリスク期間を発生させる。AIDS症例は2000年の終わりに4000万を超えることが予測され、これは約140万の侵襲性アスペルギルス症の症例をもたらすであろうが、発展途上国においてほとんどの患者は、この疾患にかかるほど長生きしない。
【0016】
侵襲性アスペルギルス症からの粗死亡率は約85%であり、治療されれば約50%に低下する。試験中の新薬(ボリコナゾールなど)は、死亡率をわずかに(約10%)低下させるかもしれないが、被検患者は、臨床診療で治療されている患者よりも具合がよい傾向がある。侵襲性疾患に加えて、アスペルギルス(Aspergillus)はヒトにおいて、多数のその他の疾患を引き起こす。これらとしては、アスペルギルス腫(既存の肺腔の「コロニー形成」)、正常人の副鼻腔炎、アレルギー性気管支肺および副鼻腔感染症、角膜炎(通常その目に失明をもたらし、発展途上世界では一般的である)、および免疫が保たれている患者の術後感染症が挙げられる。結核発生率増大のために、アスペルギルス腫の数は劇的な上昇に向かっており、このようなアスペルギルス腫の症例は、治療が困難なことで有名である。結核後の2cm以上の空洞は、15〜20%の患者で引き続いてアスペルギルス腫を発生する(英国)。アスペルギルス腫がある患者の5年生存率は、約40%である。アレルギー性気管支肺のアスペルギルス症は、嚢胞性線維症および喘息患者(増加している)で生じ、通常、診断の10年以内に肺線維症および死亡を引き起こす。
【0017】
黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)は、アフラトキシン(aflotoxins)によるマイコトキシン症、過敏性肺炎、耳炎、副鼻腔炎、および侵襲性疾患をはじめとする広範な感染症における病原体である。いくつかの報告は、疾患経過が、特に免疫不全/好中球減少性宿主において、アフラトキシン(aflotoxins)によって増強されるかもしれないことを示唆する。生物は極めて血管侵入性であり、壊死および梗塞が結果として起こる。
【0018】
(C.先行技術の薬物送達(ドラッグ・デリバリー)技術)
活性医薬品送達の容易さは、治療薬を開発し、商品化する製薬会社が直面する重要な課題である。例えば、水に易溶性の活性薬剤は、適切な剤形に調合するのが困難でない。
【0019】
しかし、水難溶性活性薬剤を適切な剤形に調合することは、大きな難題をもたらす。これは、人体が水性系であるためであり、したがって治療活性をもたらす条件として、薬物は投与の後に溶解しなくてはならない。
【0020】
いくつかの水難溶性活性薬剤は、効果的に可溶化できず、したがって条件にあった生体内治療活性を示すことができないため、商品化されたことがない。代案としては、薬剤の不十分な水溶性を考えると、治療活性の許容可能なレベルを達成するために投与しなくてはならない水難溶性活性薬剤の量は多すぎるかもしれず、許容できない毒性をもたらす。活性薬剤を溶剤中に可溶化させて、活性薬剤を液体に調合したとしても、このような剤形は時として最適に機能しない。例えば、このような剤形は、予測不可能な特性を有し、または望ましくない副作用を誘発するかもしれない。
【0021】
活性薬剤の溶解性を高めるための、先行技術の方法が存在する。例えば、活性薬剤の粒子サイズを低下させ、それによって活性薬剤の露出表面積を増大させて、溶解速度の向上およびより大きな水溶性をもたらす。粒子サイズを減少させるための一先行方法は、湿式磨砕である。この方法は、水などその中に活性薬剤が難溶性である媒質中における、硬質ガラス、セラミック、磁器、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、ポリマー樹脂、またはその他の適切な物質からできたビーズによる活性薬剤の粉砕を必要とする。活性薬剤はさらにより小さな粒子に物理的に変えられ、それは粉砕媒体中で懸濁したままになる。次に、濾過または遠心分離などの方法によって、得られたミクロンまたはナノメートルサイズの活性薬剤粒子を粉砕媒体から単離して、適切な剤形に調合する。米国特許第5,145,684号明細書、米国特許第5,518,187号明細書、米国特許第5,862,999号明細書、および米国特許第5,718,388号明細書を参照されたい。活性薬剤がその中で磨砕される媒質は、典型的に活性薬剤のための表面安定剤として機能する1つ以上の化合物を含有する。表面安定剤は活性薬剤表面に吸着し、活性薬剤の粒子サイズが大きくなるのを立体障害する役割を果たす。
【0022】
したがって従来の湿式磨砕技術は「二相」系を生じ、その中で安定化された活性薬剤ナノ粒子が水性媒体に懸濁する。King of Prussia, PAのElan Drug Deliveryによって商品名NanoCrystal(登録商標)技術の下に、およびSkyePharma, plcによって商品名Insoluble Drug Delivery (IDD(登録商標))技術の下に商品化されたナノ微粒子薬物送達技術は、このような湿式磨砕技術を例示する。しかし活性薬剤の湿式磨砕は、主に加工経費の欠点を有する。湿式磨砕を使用して水難溶性活性薬剤をナノ微粒子組成物に調合する追加的経費は、非常に高いと言うことができる。さらに、非晶質の化合物は、湿式磨砕技術に適していない。
【0023】
ナノ微粒子活性薬剤組成物を作成するその他の既知の方法としては、沈殿、均質化、および超臨界流体法が挙げられる。マイクロ沈殿は、難溶性活性薬剤の安定した分散体を調製する方法である。このような方法は、活性薬剤を溶剤に溶解し、それに続いて溶液から活性薬剤を析出させるステップを含む。均質化は、磨砕または粉砕媒体を使用しない技術である。液体媒体中の活性薬剤は、Microfluidizer(登録商標)(Microfluidics, Inc.)において、相互作用チャンバーと称される加工ゾーン内に推進される工程流を構成する。相互作用チャンバーの形状は、強い剪断力、嵌入、および空洞化を生じ、それが粒子サイズの減少をもたらす。米国特許第5,510,118号明細書は、ナノ微粒子活性薬剤粒子をもたらすMicrofluidizer(登録商標)を使用した二相工程に言及する。最後に、ナノ微粒子活性薬剤組成物を作成するための超臨界流体法は、活性薬剤を溶液に溶解するステップを含む。次に溶液および超臨界流体を粒子形成容器に同時導入する。ビヒクルの分散および抽出が超臨界流体の作用によって実質的に同時に起きるように、温度および圧力を制御する。ナノ粒子を作成するための既知の超臨界法の例としては、国際公開第97/144407号パンフレットおよび米国特許第6,406,718号明細書が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
当該技術分野において、固有の抗細菌、抗酵母、抗真菌、および/または抗ウイルス特性を有する薬物送達剤形が求められている。さらに、このような固有の抗細菌、抗酵母、抗真菌、および/または抗ウイルス特性を有して、活性薬剤の不在下で使用できる組成物が求められている。本発明はこれらの要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(要約)
本発明は、抗細菌、抗真菌、抗酵母、および/または抗ウイルス特性を有するナノ構造組成物に関する。組成物は、少なくとも1つの油、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの溶剤、および水を含む。さらに組成物は、活性薬剤を含みうる。活性薬剤は、例えば医薬品、診断用薬、または化粧品として有用であることができる。
【0026】
本発明の別の態様は、本発明に係るナノ構造組成物、ならびに1つ以上の所望の薬学的に許容可能なキャリア、および/または粘度調整剤、着色剤、着香剤、香料等を含みうる所望の賦形剤を備える医薬組成物に関する。本発明の一態様は、(1)ミセル構成成分、(2)水アルコール性構成成分、すなわち水と水混和性溶剤との混合物、(3)水中油型エマルジョン小滴構成成分、および場合により(4)活性薬剤の固体粒子構成成分を含む、ユニークな活性医薬品成分のナノ構造製剤に関する。これらの構成成分のいずれかまたは全てが、所望の活性医薬品、診断用薬、または化粧品、またはその他の活性成分を備えていてもよい。したがって、活性薬剤は、構成成分1〜3で示すような溶液中にあってもよく、あるいは、それは、構成成分4の場合のように、沈殿した懸濁物の形態であってもよい。
【0027】
一実施態様では、組成物を皮膚に塗布すると、可溶化された剤形が皮膚を通って真皮内などのより深部の皮層内に移動する。ミセル、油画分、および/または微粒子薬物などのその他の構成成分は、典型的に、皮膚層の角質層に配置されてもよい。様々な物理および化学的特性次第で、特定の化合物は表皮および真皮の異なる層内に配置されてもよく、他方、その他は皮膚を越えて直接に浸透するかもしれない。
【0028】
この複合製剤は、別の方法では活性医薬品成分の経皮透過を誘発するのに必要である化学透過促進剤を組み込まなければならなかったことを回避する。
【0029】
本発明の別の態様は、(a)少なくとも1つの油、少なくとも1つの溶剤、および少なくとも1つの界面活性剤(表面安定剤とも称される)を混合して、乳剤性基剤を形成するステップと、(b)水を乳剤性基剤に添加するステップと、(c)混合物を均質化または激しく撹拌するステップとを含む、本発明のナノ構造組成物を調製する方法に関する。組成物中で活性薬剤を利用する場合、組成物を作成する例示的方法は、(a)活性薬剤を油、溶剤、および界面活性剤または安定剤の混合物に添加して、乳剤性基剤を形成するステップと、(b)乳剤性基剤に水を添加するステップと、(c)混合物を均質化または激しく撹拌するステップとを含み、活性薬剤は油および溶剤の片方または双方に可溶性であるが、水溶性ではない。
【0030】
最後に、問題を抱える被験者を治療するための、または局所または表面消毒のための広域抗菌組成物としての本発明の組成物の使用方法もまた、本発明に包含される。
【0031】
前述の一般的な説明および続く図面の簡単な説明、および詳細な説明の双方は、例示的および説明的であり、主張される本発明のさらなる説明を提供することが意図される。続く本発明の詳細な説明から、当業者にはその他の目的、利点、および新しい特徴が容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
詳細な説明
(A.発明の概要)
本発明は、驚くべきことに、抗細菌、抗真菌、抗酵母、および/または抗ウイルス特性を有するナノ構造組成物に関する。本発明のナノ構造組成物は、少なくとも1つの溶剤、少なくとも1つの油、少なくとも1つの表面安定剤(界面活性剤とも称される)、および水媒体を含む。本組成物は、油、溶剤、または水のいずれか1つに溶解または分散されうる1つ以上の活性薬剤をさらに含んでもよい。活性薬剤は、例えば医薬品または化粧品として有用であることができる。本発明の組成物に、抗菌、抗酵母、抗真菌、および/または抗ウイルス特性を与えるために、外的抗細菌剤または保存料を添加する必要はない。
【0033】
本発明の組成物は、米国薬局方(USP−General Chapters, Section 51)で述べられるような「Antimicrobial Effectiveness Testing」判定基準を満たす。これは、本発明による組成物の存在下で、様々な微生物を培養した下の実施例4で述べられる試験によって実証される(大腸菌(E. coli)(ATCC 8739)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 6538)、C.アルビカンス(C. albicans)(ATCC 10231)、A.ニガー(A. niger)(ATCC 16404)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 13388)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 25619)、黄色コウジ菌(A. flavus)、およびA.フミガーツス(A. fumigatus)での試験)。また、試験結果を図1に示す。ここで、本発明の組成物の劇的な抗菌特性が、グラフで示されている。
【0034】
標準USP試験は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(ATCC 16404)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(ATCC 10231)、大腸菌(Escherichia coli)(ATCC 8739)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC 9027)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 6538)の5種の微生物中での評価を必要とする。追加的な株を使用して、黄色コウジ菌(A. flavus)、A.フミガーツス(A. fumigatus)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 25619)、および緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 13388)における抗微生物有効性を確認した。この試験結果を示す図2のグラフに示すように、これらの追加的な株における抗菌効果は、組成物ビヒクルそれ自体が抗菌性であることを、疑いの余地なく証明する。
【0035】
さらに活性薬剤の組み込みは、本発明の組成物の抗菌効果を損なわない。具体的には、実施例3および4に示すように、エストラジオールおよびテストステロンを含む本発明の組成物もまた、顕著な抗菌効果も示し、菌剤活性の実証に関するUSP試験要件を満たした。図3および4もまた参照されたい。
【0036】
本発明の組成物は、このような組成物中の活性薬剤の薬理学的特性に加えて、ビヒクルそれ自体が殺微生物剤として作用するので、感染症、創傷治癒などの局所療法のために使用される製品中で特に有用である。このような組成物は、おそらく相乗作用を誘発して、薬剤抵抗性微生物が発生する可能性を低下させる。さらにこのような組成物は、低用量の活性薬剤の使用を可能にし得る。
【0037】
現在のところ、様々なタイプの化粧品および医薬組成物が、微生物の生育を遅らせるために抗菌剤を添加することを必要とする。適正な抗菌剤を選択することは、活性薬剤と抗菌剤との間の潜在的な相互作用のために、困難である。さらに抗菌剤は有毒である可能性があり、それは患者において有害な反応を誘発する可能性がある。
【0038】
本発明の一実施態様では、組成物は活性薬剤を含み、活性薬剤は、これらに限定されるものではないが、フェノフィブラート、エストラジオール、アレンドロン酸、アシクロビル、パクリタキセル、およびシクロスポリンからなる群から選択される。
【0039】
別の実施態様では、油は、これらに限定されるものではないが、アーモンド油(甘扁桃)、杏仁油、ルリヂサ油、カノーラ油、ココナツ油、コーン油、綿実油、魚油、ホホバ豆油、ラード油、アマニ油(煮沸)、マカダミアナッツ油、中鎖トリグリセリド、鉱物油、オリーブ油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、スクアレン、ヒマワリ種子油、トリカプリリン(1,2,3−トリオクタノイルグリセロール)、および小麦胚芽油からなる群から選択される。
【0040】
一実施態様では、溶剤は、これらに限定されるものではないが、ミリスチン酸イソプロピル、トリアセチン、N−メチルピロリジノン、脂肪族および芳香族アルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される。その他の有用な溶剤の例は、長鎖アルコールである。エチルアルコールおよびベンジルアルコールは、本発明で使用してもよいアルコールのなおも別の例である。
【0041】
さらに別の実施態様では、安定剤または界面活性剤は、これらに限定されるものではないが、ソルビタンエステル、グリセロールエステル、ポリエチレングリコールエステル、ブロックポリマー、アクリルポリマー(Pemulen(登録商標)など)、エトキシル化脂肪酸エステル(Cremophor(登録商標)RH-40など)、エトキシル化アルコール(Brij(登録商標)など)、エトキシル化脂肪酸(Tween 20など)、モノグリセリド、ケイ素ベースの界面活性剤、およびポリソルベートからなる群から選択される。さらなる実施態様では、ソルビタンエステル安定剤はSpan(登録商標)またはArlacel(登録商標)であり、グリセロールエステルはモノステアリン酸グリセリンであり、ポリエチレングリコールエステルはポリエチレングリコールステアラートであり、ブロックポリマーはPluronic(登録商標)であり、アクリルポリマーはPemulen(登録商標)であり、エトキシル化脂肪酸エステルはCremophor(登録商標)RH-40であり、エトキシル化アルコールはBrij(登録商標)であり、エトキシル化脂肪酸はTween(登録商標)20、またはその組み合わせである。
【0042】
別の実施態様では、均質化するステップは、1,000〜40,000psiの高圧システムを通じて実施される。
【0043】
一実施態様では、活性薬剤粒子、活性薬剤を含む小滴、またはその組み合わせは、約10μm未満の平均粒子サイズを有する。本発明の別の実施態様では、活性薬剤粒子、活性薬剤を含む小滴、またはその組み合わせは、約9μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約6μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、約2900nm未満、約2800nm未満、約2700nm未満、約2600nm未満、約2500nm未満、約2400nm未満、約2300nm未満、約2200nm未満、約2100nm未満、約2000nm未満、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、または約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、または約10nm未満の平均粒子サイズを有する。一実施態様では、活性薬剤粒子、活性薬剤を含む小滴、またはその組み合わせは、直径約3μm未満の平均粒子サイズを有する。
【0044】
本発明の組成物を作成する3つの方法について述べる。第1の方法は、活性薬剤の存在を必要としない。この方法では、少なくとも1つの油、少なくとも1つの溶剤、および少なくとも1つの界面活性剤を組み合わせて乳剤性基剤を形成し、水を乳剤性基剤に添加して、(c)混合物を均質化しまたは激しく撹拌する。
【0045】
活性薬剤を組成物中で利用する場合、組成物を作成する例示的な方法は、(a)活性薬剤を油、溶剤、および界面活性剤または安定剤の混合物に添加して乳剤性基剤を形成するステップと、(b)水を乳剤性基剤に添加するステップと、(c)混合物を均質化しまたは激しく撹拌するステップとを含み、活性薬剤は油および溶剤の片方または双方に可溶性であるが、水溶性ではない。
【0046】
本発明の活性薬剤組成物を作成する2つの具体的方法について述べる。第1の方法(「経路I」)では、活性薬剤を乳剤性基剤中で磨砕する(すなわち均質化しまたは激しく撹拌して、活性薬剤の粒子サイズを低下させる)。この方法は、活性薬剤が、油相/親油性相の全ての相および水または緩衝液中に、難溶性または不溶性であることを必要とする。第2の方法(「経路II」)では、乳剤性基剤中において同時におこる活性薬剤の磨砕(すなわち均質化しまたは激しく撹拌して、活性薬剤の粒子サイズを低下させる)および沈殿が観察される。第2の方法は、活性薬剤が、乳剤性基剤の1つ以上の相中に可溶性または部分的に可溶性であること、すなわち活性薬剤が、油、溶剤、または水または緩衝液中に可溶性であることを必要とする。
【0047】
湿式磨砕などの先行技術の方法と比較して、本発明の組成物を作成する方法の一利点は、本方法が、水溶性活性薬剤ならびに水難溶性活性薬剤に適用可能であることである。本発明の方法の別の利点は、それらが、粉砕媒体、または特殊粉砕工程、または機器を必要としないことである。このような粉砕媒体の使用は、活性薬剤の粒子サイズを低下させるプロセスにコストと複雑さを与える可能性がある。さらに本発明の方法別の利点は、非晶質の薬剤の加工に使用可能であるということである。
【0048】
経路Iでは、活性薬剤は、最初に油、溶剤、および水または緩衝液などの非混和性液体の混合物中に懸濁されて乳剤性基剤を形成し、乳剤性基剤の均質化または活発な撹拌がそれに続く。ナノ粒子は、往復シリンジ器機、連続流器機、または高速混合機器によって生成することができる。高い剪断力および空洞化力を生じる、高速の均質化または活発な撹拌が好ましい。低剪断加工は活性薬剤のより大きな粒子サイズをもたらす可能性があるので、高剪断加工が好ましい。得られた組成物は、エマルジョン小滴(ナノ−エマルジョン画分)中に懸濁された活性薬剤と、媒体中に立体的に安定化された微晶質および/またはナノ結晶性活性薬剤との複合混合物である。この三相系は、微粒子薬物、油、および水または緩衝液を含む。得られたマイクロ/ナノ−微粒子活性薬剤は、約3μm未満の有効平均粒子サイズを有する。より小さな微粒子活性薬剤もまた、後述するようにして得ることができる。
【0049】
活性薬剤は、より多くの非混和性液体を添加することで、油小滴から析出できる。沈殿した活性薬剤は、典型的に約3μm未満の有効平均粒子サイズを有する。所望ならば、界面活性剤または乳化剤、すなわち「表面安定剤」を組み込むことで、活性薬剤粒子が凝集し、または共に塊になるのを防止できる。
【0050】
経路IIは、溶剤などの乳剤性基剤の少なくとも一部に可溶性である活性薬剤に利用される。経路IIでは、活性薬剤を油、溶剤、および安定剤の混合物に溶解して、エマルジョンプレミクスを形成する。水または緩衝液が混合物に添加されなければ、活性薬剤は可溶性形態を保つ。水または緩衝液の添加、および剪断力の印加に際して、活性薬剤は沈殿し、約3μm未満の有効平均粒子サイズを有するマイクロ/ナノ粒子になる。ナノ粒子は、往復シリンジ器機、連続流器機、または高速混合機器によって生成することができる。高速均質化または活発な撹拌を通じた高エネルギー入力が、好ましい加工である。高エネルギー加工はエマルジョン小滴サイズを低下させ、それによって大きな表面積が周囲の水性環境にさらされる。低剪断加工は、活性薬剤のより大きな粒子サイズをもたらす可能性があるので、高剪断加工が好ましい。これに、乳剤性基剤中にあらかじめ包埋されたナノ微粒子活性薬剤の沈殿が続く。最終産物は、溶液および微粒子懸濁液中に活性薬剤を含み、どちらも溶剤、油、および水または緩衝液の間に分布する。一実施態様では、ナノ微粒子活性薬剤は、その表面に付随する少なくとも1つの表面安定剤を有する。
【0051】
水に難溶性であるが(poorly water soluble in water)、別の液体に可溶性である活性薬剤の例としては、エタノールに可溶性であるエストラジオール、および1−メチル−2−ピロリドンまたはN−メチル−ピロリジノン[NMP]に溶けやすく、油および安定剤にわずかに可溶性であり、水に不溶性であるフェノフィブレートが挙げられる。
【0052】
所望ならば、経路Iまたは経路IIを使用して調製される水混和性油小滴および活性薬剤ナノ粒子は、0.2または0.45μmのどちらかのフィルターを通して濾過できる。より大きな油小滴および/または活性薬剤粒子は、単に含水量を増大させ、油−安定剤−溶剤含量を減少させ、または油小滴の形成において剪断を変化させることで作り出すことができる。
【0053】
抗菌組成物として使用され、または薬物送達ビヒクルとして経路Iまたは経路IIで使用される乳剤性基剤では、油:安定剤:溶剤の好ましい比率は、重量対重量ベースでそれぞれ約23:約5:約4である。油含有相と水または緩衝液の好ましい比率は、それぞれ約2:約1である。本発明の別の実施態様では、油は約5%〜約50%(w/w)存在してもよく、溶剤は約0.5%〜約10%(w/w)存在してもよく、安定剤または界面活性剤は約0.5%〜約10%(w/w)存在してもよく、水は約20%〜約80%(w/w)またはあらゆるその組み合わせで存在してもよい。
【0054】
(B.本発明の組成物)
本発明の方法は、いくつかの異なるタイプの組成物を生成できる。第1の組成物は、(1)少なくとも1つの油と、(2)少なくとも1つの溶剤と、(3)少なくとも1つの界面活性剤または表面安定剤と、(4)水を含む。この組成物は広範な抗菌剤活性を示し、したがって組成物は一般目的の消毒剤として使用できる。
【0055】
本発明によるその他のタイプの組成物は、少なくとも1つの活性薬剤を含む。例えば第2の組成物は、(1)その表面に付随する少なくとも1つの表面安定剤を有するナノ微粒子活性薬剤と、(2)水または緩衝液と、(3)少なくとも1つの油および場合により少なくとも1つの溶剤を含む、エマルジョンプレミクスまたは油相または親油性相と、場合により(4)マイクロ微粒子活性薬剤とを含むことができる。マイクロ微粒子活性薬剤は、ナノ微粒子活性薬剤と同一または異なることができる。微粒子活性薬剤は、水または緩衝液、油、溶剤、またはその組み合わせ中に存在できる。このような組成物は、経路Iを使用して作られる。
【0056】
第3の組成物は、(1)その表面に付随する少なくとも1つの表面安定剤を有するナノ微粒子活性薬剤と、(2)水または緩衝液と、(3)少なくとも1つの油、場合により少なくとも1つの溶剤、および可溶化された活性薬剤を含む、エマルジョンプレミクスまたは油相または親油性相とを含む。組成物は、マイクロ微粒子活性薬剤をさらに含んでもよい。可溶化された活性薬剤は、水または緩衝液、油、溶剤、またはその組み合わせ中に存在することができる。さらにナノ微粒子活性薬剤は、水または緩衝液、油、溶剤、またはその組み合わせ中に存在することができる。このような組成物は、経路IIを使用して作られる。さらなる本発明の実施態様では、可溶化された活性薬剤をエマルジョン小滴から析出できる。沈殿した活性薬剤は、好ましくは約3μm未満の有効平均粒子サイズを有する。
【0057】
本発明の三相組成物は、いくつかの理由から有益である。第一に、経路IIの方法から得られる製剤は、同一活性薬剤の固体形態および可溶化形態の双方を含む。これによって得られた医薬製剤は、構成成分の活性薬剤の迅速な放出と抑制された放出の双方の提供を可能にし、活性薬剤の長期活性とあわさった迅速な活性の発現を提供する。
【0058】
さらに、例えばクリームまたはローション中で、皮膚への局所塗布のために調合すると、乳剤性基剤中の可溶化された活性薬剤が皮膚/細胞バリアを越えて、活性薬剤が体組織に入るようにしながら、固体活性薬剤ナノ粒子が、皮膚表面で即効性の局所性治療効果を提供しうる。すなわち、可溶化された活性薬剤が皮膚を迅速に通り抜けて、より深い層に浸透する一方、固体部分はより深い皮膚層に透過しないが、局所貯蔵所として、および薬物をより深い層に供給する貯留層として作用する。したがって、活性薬剤ナノ粒子および可溶化された活性薬剤の双方を含む製剤は、局所および全身治療効果を提供可能であり、それは経皮剤形のために特に有益である。
【0059】
上述の2つのタイプの組成物の異なる構成成分は分離可能であり、所望ならば、別個に使用可能である。
【0060】
本発明は、多数の異なるタイプの活性薬剤をエマルジョンベースの製剤に調合できるようにする。このような活性薬剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アシクロビル、シクロスポリン、エストラジオール、フェノフィブラート、セチリジン(ceterizine)、ニコチン、ナルトレキソン、およびアレンドロン酸が挙げられる。
【0061】
(1.活性薬剤ナノ粒子)
固体の活性薬剤ナノ粒子は、例えば、濾過または遠心分離によって、水性懸濁媒体および/またはエマルジョン小球から分離できる。これは、水難溶性または水不溶性の活性薬剤のナノ粒子を得るために都合のよい方法を提供する。さらに、粒子サイズを減少させるプロセスに表面安定剤が含められると、それは活性薬剤ナノ粒子が凝集するのを防止し、したがって活性薬剤ナノ粒子はナノ微粒子サイズで安定化する。所望であれば、次に、活性薬剤ナノ粒子をあらゆる適切な剤形に調合できる。活性薬剤ナノ粒子は、ヒトでの使用に適した食品等級、USPまたはNF等級材料を使用して作成できる。
【0062】
例示的な剤形としては、これらに限定されるものではないが、液体分散体、経口懸濁液、錠剤、ゲル、煙霧剤、軟膏、クリーム、カプセル、乾燥粉末、多粒子、スプリンクル、サシェ、ロゼンジ、およびシロップが挙げられる。さらに本発明の剤形は、固体剤形、液体剤形、半液体剤形、即効型製剤、改変放出製剤、放出制御製剤、即溶製剤、凍結乾燥製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、即効型および放出制御型の混合製剤、またはあらゆるその組み合わせであってもよい。本発明の組成物は、非経口注射(すなわち静脈内、筋肉内、または皮下)、固体、液体、または煙霧剤形態での経口投与、腟内、経鼻、直腸内、眼内、耳内、局所(粉末、軟膏または滴剤)、バッカル、大槽内、腹腔内、または局所投与用などのあらゆる適切な方法による送達のために調合してもよい。
【0063】
活性薬剤ナノ粒子は、約3μm未満の有効平均粒子サイズを有するので、粒子は微晶質活性薬剤と比較して、典型的により容易に皮膚などの吸収バリアを横断できる。同様に、活性薬剤の小さな粒子サイズは、様々な臓器の血液/組織および血液/腫瘍バリアの通過を可能にする。
【0064】
(2.活性薬剤ナノ粒子および/または可溶化された活性薬剤を含むエマルジョン小球)
また、可溶化された活性薬剤、活性薬剤ナノ粒子、またはその組み合わせを含むエマルジョン小球は、所望ならば、周囲の水相または緩衝液相から単離して、治療用剤形中で使用可能である。エマルジョン小球は、ヒトでの使用に適した食品等級、USPまたはNF等級の材料を使用して作成できる。可溶化された活性薬剤を含むナノ微粒子油小球、およびこの物質を作成する方法については、参照によって本願明細書に援用する米国特許第5,629,021号明細書(「‘021特許」)で述べられている。本発明のエマルジョン小球は、典型的に、(1)少なくとも1つの油、(2)少なくとも1つの溶剤、(3)少なくとも1つの表面安定剤または界面活性剤、および場合により(4)可溶化された活性薬剤、微粒子活性薬剤、またはその組み合わせを含む。可溶化された活性薬剤、微粒子活性薬剤、またはその組み合わせを含むエマルジョン小球は、所望ならば例えば濾過によって単離できる。可溶化された活性薬剤を含むエマルジョン小球は、皮膚バリアを越えて血液内に活性薬剤を輸送するのに特に適したビヒクルである。したがって可溶化された活性薬剤を含む小球は、活性薬剤を個人に投与する体系的方法を提供する。
【0065】
一般に、可溶化された活性薬剤、活性薬剤ナノ粒子、またはその組み合わせを含むエマルジョン小球は、約10〜約1000nmの直径を有し、多量の活性薬剤を含み、約1μm未満の平均直径が好ましく、最小の小球は微生物学的精製で典型的に使用されるような0.2μmのフィルターを通して濾過できる。小球中の活性薬剤濃度の範囲は、約1%〜約50%である。エマルジョン小球は約20〜約40℃の間で保存できる。本発明の一実施態様では、製剤中の小球の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%は、約1μm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、または約100nm未満の直径を有する。
【0066】
経路Iおよび経路IIの異なるパラメーターを変動させることで、このような小球のサイズおよび集結度を変えることができる。したがって、溶液または沈殿物のどちらかとしての活性薬剤の放出ができるように、溶解した活性薬剤を含む小球の安定性を変えることができる。これはマイクロレザバー溶解制御系であり、そこでは薬物固形分が貯蔵所として作用し、可溶化された画分が枯渇すると、より多くの薬物が微粒子貯蔵所から溶液中に引き出される。したがって可溶化された活性薬剤を含むエマルジョン小球は、長時間にわたる制御された活性薬剤の放出を可能にする。
【0067】
可溶化された活性薬剤、活性薬剤ナノ粒子、またはその組み合わせを含むエマルジョン小球の小さなサイズ、およびそれらの組織適合性は、それらを多数の用途に応用可能にする。例えばエマルジョン小球は、迅速な経皮浸透が可能であるので、局所薬物送達ビヒクルとして有用である。小球はまた、ひときわ融通が利き、その中で利用される活性薬剤は、水または緩衝液、油、または溶剤のいずれかに懸濁可能または溶解可能である、あらゆる活性薬剤であることができる。これらの特性によって、このシステムは、その他の送達系で使用するために調合するのが困難な活性薬剤と共に使用できるようになる。
【0068】
さらに可溶化された活性薬剤、活性薬剤ナノ粒子、またはその組み合わせを含むエマルジョン小球は、安定性を損なうことなしに水溶液で希釈できる。これにより必要に応じて使用のために希釈できる、高濃度、すなわち約30%までの活性薬剤濃度の製品が使用できるようになる。しかし活性薬剤濃度は、実際の薬物の溶解性、およびそれを溶解するのに使用される溶剤量に左右される。
【0069】
本発明の一実施態様では、エマルジョン小球は、活性薬剤としてエストラジオール、アシクロビル、またはテストステロンを含み、経皮送達のための剤形に調合される。
【0070】
(C.本発明の方法および組成物の構成成分)
(1.活性医薬品成分)
(a.特性)
本発明の組成物および方法では、あらゆる適切な活性薬剤を用いてもよい。経路Iの方法で利用される活性薬剤では、活性薬剤は、方法で使用される水および溶剤および油をはじめとする、磨砕(すなわち均質化または激しい撹拌)システムの全ての相に難溶性または不溶性でなくてはならない。経路IIの方法で利用される活性薬剤では、活性薬剤は、水難溶性、または水不溶性であるが、油または溶剤および安定剤または安定剤溶液などの乳剤性基剤の少なくとも1つの相に可溶性でなくてはならない。
【0071】
「水難溶性」または「水不溶性」とは、活性薬剤が、周囲温度および圧力および約pH7で、約20mg/mL未満、約10mg/mL未満、約1mg/mL未満、約0.1mg/mL未満、約0.01mg/mL未満、または約0.001mg/mL未満の水への溶解度を有することを意味する。
【0072】
本発明の方法で使用され、本発明の組成物中に存在する活性薬剤は、非晶質、半非晶質、結晶性、半結晶性、またはその混合物であることができる。
【0073】
(b.活性薬剤の粒子サイズ)
ここでの用法では、活性薬剤の粒子サイズは、沈降場流動分画、光子相関分光法、レーザー回析、またはディスク遠心分離などの当業者によく知られている従来の技術で測定されるように、重量平均粒子サイズに基づいて判定される。
【0074】
ここでの用法では、「ナノ微粒子活性薬剤」とは約3μm未満の有効平均粒子サイズを有する活性薬剤を指し、「微晶質活性薬剤」とは、約3μmを超える有効平均粒子サイズを有する活性薬剤を指す。
【0075】
ここでの用法では、活性薬剤のための「有効平均粒子サイズ」は、約50%の活性薬剤粒子がそれ未満に収まるサイズである。したがって有効平均粒子サイズが約3μm未満であれば、少なくとも50%の活性薬剤粒子は、約3μm未満の組成物サイズを有する。本発明の別の実施態様では、本発明の組成物中の活性薬剤粒子の有効平均粒子サイズは、約2900nm未満、約2800nm未満、約2700nm未満、約2600nm未満、約2500nm未満、約2400nm未満、約2300nm未満、約2200nm未満、約2100nm未満、約2000nm未満、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、または約100nm未満であることができる。
【0076】
本発明の別の実施態様では、活性薬剤粒子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、有効平均未満、すなわち約3μm未満、約2900nm未満、約2800nm未満などのサイズを有する。
【0077】
(c.例示的な活性薬剤)
本発明の方法および組成物において、あらゆる適切な活性薬剤を使用してもよい。有用な活性薬剤の種類の例としては、これらに限定されるものではないが、治療的および診断用薬剤、顔料、塗料、インク、染料、写真材料、美容成分などが挙げられる。
【0078】
両親媒性物質タイプの活性薬剤を本製剤に組み込んでもよい。すなわちイオン化でき、極性または非極性溶剤に可溶性の薬物または治療的化合物を本発明の製剤に組み込んでもよい。したがって、このような化合物は油性および水性環境の双方に可溶性である(両親媒性物質)。このような化合物の例としては、ニコチンおよびセチリジン(ceterizine)が挙げられる。
【0079】
親水性活性薬剤もまた、本発明の製剤中に組み込んでもよい。このような化合物としては、これらに限定されるものではないが、塩酸ナルトレキソン、アレンドロン酸、およびセチリジン(ceterizine)二塩酸塩が挙げられる。
【0080】
活性薬剤は、テストステロン、プロゲステロン、およびエストロゲンなどのホルモンであってもよい。その他のホルモンとしては、(1)カテコールアミン、アドレナリン(またはエピネフリン)、ドーパミン、ノルアドレナリン(またはノルエピネフリン)、トリプトファン誘導体、メラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)、セロトニン(5−HT)、チロシン誘導体、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)などのアミン由来ホルモン、(2)抗ミュラー管ホルモン(AMH、ミュラー管抑制因子またはホルモンとも)、アディポネクチン(Acrp30とも)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH、コルチコトロピンとも)、アンギオテンシノーゲンおよびアンジオテンシン、抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン、アルギニンバソプレシン、AVPとも)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、アトリオペプチンとも)、カルシトニン、コレシストキニン(CCK)、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、エリスロポエチン(EPO)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、ガストリン、グルカゴン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、成長ホルモン(GHまたはhGH)、インシュリン、インシュリン様成長因子(IGF、ソマトメジンとも)、レプチン、黄体化ホルモン(LH)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSHまたはα−MSH)、神経ペプチドY、オキシトシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン(PRL)、リラキシン、レンニン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)などのペプチドホルモン、(3)グルココルチコイド、コルチゾール、鉱質コルチコイド、アルドステロン、性ステロイド、アンドロゲン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、デヒドロエピアンドロステロンスルフェート(DHEAS)、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン(DHT)、エストロゲン、エストラジオール、プロゲスターゲン、プロゲステロン、プロゲスチンなどのステロイドホルモン、(4)ビタミンD誘導体およびカルシトリオールなどのステロールホルモン、(5)プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、およびトロンボキサンなどの脂質およびリン脂質ホルモン(エイコサノイド)が挙げられる。
【0081】
したがって、本発明の一実施態様では、活性薬剤はエストラジオール、フェノフィブラート、アシクロビル、アレンドロン酸、またはテストステロンである。本発明の方法で利用してもよい活性薬剤の具体例としては、これらに限定されるものではないが、インシュリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子調節タンパク質、心房性ナトリウム利尿タンパク質、ベータセロリ(betaserori)、エリスロポエチン、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトスタチン、インシュリン様成長因子、黄体化ホルモン放出ホルモン、第VIII因子、インターロイキン、インターロイキン類似体、血液作用薬、抗凝固剤、造血剤、止血剤、血栓溶解剤、内分泌薬剤、抗糖尿病剤、抗甲状腺薬、β−アドレナリン受容体ブロック剤、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、性ホルモン、甲状腺作用薬、副甲状腺カルシトニン、ビスホスホネート、子宮活性剤、心臓血管作用薬、抗不整脈薬、抗狭心症薬、抗高血圧剤、血管拡張剤、心臓障害の治療において使用される薬剤、強心薬、腎臓作用薬、尿生殖器作用薬、抗利尿薬、呼吸作用薬、抗ヒスタミン剤、咳止め薬、副交感神経様作用薬、交感神経様作用薬、キサンチン、中枢神経系作用薬、鎮痛剤、麻酔剤、制吐剤、食欲抑制薬、抗うつ薬、片頭痛薬、抗てんかん薬、ドーパミン作用薬、抗コリン作用薬、抗パーキンソン病薬、筋肉弛緩薬、麻薬拮抗薬、鎮静薬、興奮薬、注意欠陥障害の治療薬、メチルフェニデート、フルボキサミン(fluoxamine)、ビスオルペロール(bisolperol)、タクロリムス、サクロリムス(sacrolimus)、シクロスポリン、胃腸作用薬、全身性抗感染薬、AIDS治療で使用される薬剤、駆虫薬、抗ミコバクテリア剤、免疫薬、ワクチン、ホルモン、抗炎症薬とエラスターゼ阻害剤をはじめとする外皮用剤、抗ムスカリン様薬、脂質調節剤、血液製剤、代用血液、酢酸ロイプロリドと化学療法剤と腫瘍治療法をはじめとする抗悪性腫瘍薬、栄養素、栄養剤、キレート剤、インターロイキン−2、IL−1ra、ヘパリン、ヒルジン、コロニー刺激因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、オキシトシン、ニトログリセリン、ジルチアゼム、クロニジン、ニフェジピン、ベラパミル、イソソルビド−5−一硝酸、有機硝酸塩、利尿剤、デスモプレッシン、バソプレシン、去痰剤、粘液溶解薬、フェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、レボルファノール、モルフィン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシモルホン、メサドン、リドカイン、ブピバカイン、ジクロフェナク、ナプロキセン、パベリン、スコポラミン、オンダンセトロン、ドンペリドン、メトクロプラミド、スマトリプタン、麦角アルカロイド、ベンゾジアゼピン、フェノチアジン(phenothiozines)、プロスタグランジン抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、収斂剤、コルチコステロイド、フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、またはデスフェリオキサミンが挙げられる。活性薬剤は、創傷−治癒処置において有用であってもよい。
【0082】
(2.油)
経路Iおよび経路IIの方法および本発明の組成物の双方のために、あらゆる適切な油が使用できる。使用できる例示的な油としては、例えば植物油、堅果油、魚油、ラード油、鉱物油、スクアラン、トリカプリリン、およびそれらの混合物が挙げられる。使用してもよい油の具体例としては、これらに限定されるものではないが、アーモンド油(甘扁桃)、杏仁油、ルリヂサ油、カノーラ油、ココナツ油、コーン油、綿実油、魚油、ホホバ豆油、ラード油、アマニ油(煮沸)、マカダミアナッツ油、中鎖トリグリセリド、鉱物油、オリーブ油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、スクアレン、ヒマワリ種子油、トリカプリリン(1,2,3−トリオクタノイルグリセロール)、小麦胚芽油、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
(3.表面安定剤または界面活性剤)
本発明の組成物はまた、少なくとも1つの表面安定剤または界面活性剤を含む。組成物がナノ微粒子活性薬剤をさらに含む場合、本発明の方法および組成物で使用される表面安定剤は、ナノ微粒子活性薬剤の表面に会合し、または吸着されるが、活性薬剤と共有結合はしない。表面安定剤は、好ましくは水中に可溶性である。本発明の組成物および方法で、1つ以上の表面安定剤を使用してもよい。ここでの用法では、「安定剤」、「表面安定剤」、および「界面活性剤」という用語は、同義的に使用される。
【0084】
アニオン性、カチオン性、および両性イオン性界面活性剤をはじめとする、あらゆる適切な非イオン性またはイオン性界面活性剤を本発明の組成物中で利用してもよい。活性薬剤を欠く本発明の組成物中で、そして本発明の組成物を構成する活性薬剤中で使用してもよい例示的な安定剤または界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、Tween(登録商標)(ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体)ファミリーの界面活性剤(すなわち、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)60、およびTween(登録商標)80)、非フェノールポリエチレングリコールエーテル、ソルビタンエステル(Span(登録商標)およびArlacel(登録商標)など)、グリセロールエステル(モノステアリン酸グリセリンなど)、ポリエチレングリコールエステル(ポリエチレングリコールステアリン酸など)、ブロックポリマー(Pluronics(登録商標)など)、アクリルポリマー(Pemulen(登録商標)など)、エトキシル化脂肪酸エステル(Cremophor(登録商標)RH−40など)、エトキシル化アルコール(Brij(登録商標)など)、エトキシル化脂肪酸、モノグリセリド、ケイ素ベース界面活性剤、ポリソルベート、およびTergitol(登録商標)NP−40(ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、α−(4−ノニルフェノール)−ω−ヒドロキシ、分枝[分子量平均1980])、およびTergitol(登録商標)NP−70(混合界面活性剤−AQ=70%)などの非リン脂質界面活性剤が挙げられる。
【0085】
(4.溶剤)
本発明の方法および組成物では、あらゆる適切な溶剤が使用できる。例示的な溶剤としては、これらに限定されるものではないが、ミリスチン酸イソプロピル、トリアセチン、N−メチルピロリジノン、長鎖アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびエタノールなどの長鎖および短鎖アルコールが挙げられる。その他の短鎖アルコールおよび/またはアミド、ならびにベンジルアルコール(alchohol)などの脂肪族および芳香族アルコールも使用してもよい。溶剤混合物もまた、本発明の組成物および方法で使用できる。
【0086】
(5.水または緩衝液)
本発明の方法および/または組成物が水または緩衝液を使用する場合、またはそれを含む場合、水溶液は好ましくは水またはリン酸緩衝食塩水などの生理学的に適合性を有する溶液である。
【0087】
(6.その他の成分)
いくつかのその他の材料を本発明の組成物に添加してもよい、一部の油の代わりに揮発性香味油などの揮発性油が使用でき、または主要油に加えて添加できる。本発明で利用できる例示的な揮発性油または香料としては、これらに限定されるものではないが、香膏油、ベイ油、ベルガモット油、セダー油、チェリー油、シナモン油、クローブ油、マヨラナ油、およびペパーミント油が挙げられる。食品着色剤などの着色剤もまた使用できる。本発明の組成物中で利用できる例示的な食品色素としては、これらに限定されるものではないが、緑、黄色、赤、および青が挙げられる。利用される食品色素は食品等級材料(McCormick)であるが、その他の供給元からの材料で置き換えてもよい。さらに本発明の方法および組成物では、着香抽出物が使用できる。例示的な着香抽出物としては、これらに限定されるものではないが、純粋アニス抽出物(73%アルコール)、模造バナナ抽出物(40%エタノール)、模造チェリー抽出物(24%エタノール)、チョコレート抽出物(23%エタノール)、純粋レモン抽出物(84%エタノール)、純粋オレンジ抽出物(80%エタノール)、純粋ペパーミント抽出物(89%エタノール)、模造パイナップル抽出物(42%エタノール)、模造ラム抽出物(35%エタノール)、模造イチゴ抽出物(30%エタノール)、および純粋または模造バニラ抽出物(35%エタノール)が挙げられる。典型的に利用される抽出物は食品等級材料(McCormick)であるが、その他の供給元からの材料で置き換えることができる。
【0088】
(D.本発明の組成物を使用する方法)
本発明の組成物は、広範な抗菌剤として有用である。それらは、例えば生物学的および非生物学的表面の局所または表面の消毒のために使用できる。組成物を使用して、調理表面、食事表面、病院内のあらゆる表面、子供に触れられる領域等、微生物にさらされた思われる表面を消毒できる。生物学的表面としては、皮膚、髪、粘膜、創傷表面、虫刺されなどが挙げられる
【0089】
本組成物はまた、薬物または化粧品などの活性薬剤のための送達ビヒクルとしても使用できる。組成物は、微生物の生育を遅らせるために、抗菌剤を添加して必要性をなくす。ヒトなどの哺乳類に投与するための剤形に調合すると、本発明の組成物は、あらゆる従来の手段を通じて対象に投与できる。本組成物は、創傷および創面(would surfaces)治療することが意図される活性薬剤の製剤中で有用であることができる。これらのいくつかの活性薬剤は、典型的な抗菌剤と適合性でない。したがって、本質的に抗菌剤であるビヒクルは、理想的な送達系であるだろう。
【0090】
ここでの用法では、「対象」という用語は、動物、好ましくはヒトまたは非ヒトをはじめとする哺乳類を意味するのに使用される。患者および対象という用語は、同義的に使用してもよい。さらに本発明の組成物は、液体分散体、経口懸濁液、錠剤、ゲル、煙霧剤、軟膏、クリーム、カプセル、乾燥粉末、多粒子、スプリンクル、サシェ、ロゼンジ、およびシロップなどのあらゆる適切な剤形に調合できる。さらに本発明の剤形は、固体剤形、液体剤形、半液体剤形、即効型製剤、改変放出製剤、放出制御製剤、即溶製剤、凍結乾燥製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、即効型および徐放製剤の混合、またはあらゆるその組み合わせであってもよい。
【0091】
本発明の組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤、および予製剤などのアジュバントを含んでもよい。注射用医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の使用によってもたらすことができる。
【0092】
液体剤形としては、薬学的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。活性薬剤に加えて、液体剤形は、水またはその他の溶剤、可溶化剤、および乳化剤などの当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含んでもよい。例示的な乳化剤は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、綿実油とラッカセイ油とコーン胚芽油とオリーブ油とヒマシ油とゴマ油などの油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などである。このような不活性希釈剤の他に、本組成物はまた、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味料、着香料、および芳香剤などのアジュバントも含むことができる。
【0093】
「治療的有効量」とは、活性薬剤投薬量に関するここでの用法では、このような処置を必要とする多数の対象において、活性薬剤が投与されるものに、特異的な薬理学的反応を与える投薬量を意味するものとする。なお、特定の場合にある対象に投与される「治療的有効量」が、ある疾患について治療される患者の100%に対しては効果的でないかもしれないということは強調されるべきである。このような投薬量は、たとえ当業者によって「治療的有効量」と見なされても、ここで述べられる疾患を治療する上で常に効果的とは限らない。
【0094】
当業者は、活性薬剤有効量が経験的に判定でき、純粋形態で、またはこのような形態が存在する場合は、薬学的に許容可能な塩、エステル、またはプロドラッグ形態で用いることができることを理解するであろう。本発明の組成物中の活性薬剤の実際の投薬量レベルを変動させて、特定の組成物および投与方法について所望の治療的反応を得るのに効果的な活性薬剤の量を得てもよい。したがって選択される投薬量レベルは、所望の治療効果、投与経路、投与される活性薬剤の効力、所望の治療持続期間、およびその他の要因に左右される。
【0095】
投薬単位組成物は、一日量を構成するよう使用されてもよいその分量単位の量を含有してもよい。しかし、あらゆる特定の患者のための特定の用量レベルは、次のような多様な要因に左右されることが理解されるであろう。達成する細胞または生理学的反応のタイプおよび程度、用いられる特定薬剤または組成物の活性、用いられる特定薬剤または組成物、患者の年齢と体重と総体的な健康と性別と食生活、投与時間と投与経路と薬剤の排出速度、治療持続時間、特定薬剤と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、および医療分野でよく知られている類似した要因。
【0096】
以下の実施例は、本発明を例示するために与えられる。しかし本発明は、これらの実施例で述べられる特定の条件または詳細に限定されないと理解すべきである。明細書全体を通じて、米国特許をはじめとする公的に入手可能な文献へのあらゆるおよび全ての参照は、具体的に参照によって援用する。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
本実施例は、本発明による例示的なナノ構造組成物の調製について述べることを目的とした。
【0098】
エチルアルコール、ダイズ油、およびポリソルベート80を共に混合した。次にこの混合物に水を添加して、得られた組成物を櫂形撹拌機を使用してよく混合した。各構成成分の量を下の表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
次に、組成物を高圧ホモジナイザー(APV Invensys、モデルAPV-1000)内に供給して、圧力を10,000psiにした。混合物をホモジナイザーに2回通過させた。
【0101】
代案としては、Silversonミキサーに取り付けたロータステータアセンブリーを使用して高速撹拌下で、エチルアルコール、油、およびポリソルベート80混合物に水を添加できる(10,000rpm、15分間)。
【0102】
得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および/または抗酵母特性を有する局所ローションまたはクリームとして直接使用でき、または組成物を調合して別の適切な剤形にすることができる。
【0103】
(実施例2)
本実施例は、活性薬剤エストラジオールを含む、本発明による例示的なナノ構造組成物の調製について述べることを目的とした。
【0104】
エストラジオールは、化学的にエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオールと記述される。エストラジオールの分子式はC1824であり、構造的式は、
【化1】

である。エストラジオールの分子量は272.39である。
【0105】
現行の米国食品医薬品局(FDA)認可エストラジオール製品としては、経口ピル(Estinyl(登録商標)、Estrace(登録商標)、Gynodiol(登録商標)、Ovcon 35(登録商標))、経皮パッチ(Climara(登録商標)、Vivelle(登録商標)、Estraderm(登録商標))、膣リング(Estring(登録商標))、および局所エマルジョン(Estrasorb(登録商標))が挙げられる。薬物は、閉経に付随するのぼせおよび寝汗の中程度から重度の症状を治療するため、および妊娠を防止するためのホルモン代替療法で使用される。
【0106】
エストラジオールをエタノールに溶解した。油およびポリソルベート80をエストラジオール溶液に添加して、エストラジオール/エチルアルコール/油/ポリソルベート80混合物に水を添加し、得られた組成物を櫂形撹拌機を使用してよく混合した。各構成成分の量を下の表2Aに示す。
【0107】
【表2】

【0108】
組成物を高圧ホモジナイザー(APV Invensys、モデルAPV-1000)内に供給し、圧力を10,000psiにした。混合物をホモジナイザーに2回通過させた。組成物の粒子サイズを下の表2Bに詳述し、図5でさらに示す。
【0109】
【表3】

【0110】
代案としては、エストラジオールをエチルアルコールに溶解でき、油および水をエストラジオール溶液に添加でき、Silversonミキサーに取り付けたロータステータアセンブリーを使用して高速撹拌下で、得られた組成物に水を添加できる(10,000rpm、15分間)。
【0111】
Silverson法に従った組成物の粒子サイズを下の表2Cに詳述し、図6でさらに示す。
【0112】
【表4】

【0113】
得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および/または抗酵母特性を有すると、エストラジオール局所ローションまたはクリームとして直接使用でき、または組成物を調合して別の適切な剤形にすることができる。
【0114】
(実施例3)
本実施例は、活性薬剤テストステロンを含む、本発明による例示的なナノ構造組成物の調製について述べることを目的とした。
【0115】
テストステロンUSPは、化学的に17−βヒドロキシアンドロステ−4−エン−3−オンと記述される、白色からほとんど白色の結晶性粉末である。
【化2】

これは化学式C1928および分子量288.42を有する。テストステロンは、例えば注射用剤形、経皮ゲル(AndroGel(登録商標)、Testim(登録商標))、経皮送達装置(Androderm(登録商標)、Testoderm(登録商標))、およびバッカル薬物送達系(Striant(登録商標))で市販される。テストステロンは、例えばホルモン代替療法で使用される。
【0116】
テストステロンをエチルアルコールに溶解した。油およびポリソルベート80をテストステロン溶液に添加して、得られた組成物に水を添加した。得られた組成物を櫂形撹拌機を使用してよく混合した。各構成成分の量を下の表3Aに示す。
【0117】
【表5】

【0118】
テストステロン/エチルアルコール/油/ポリソルベート80/水組成物を高圧ホモジナイザー(APV Invensys、モデルAPV-1000)内に供給し、圧力を10,000psiにした。混合物をホモジナイザーに2回通過させた。組成物の粒子サイズを下の表3Bに詳述し、図7でさらに示す。
【0119】
【表6】

【0120】
代案としては、テストステロンをエチルアルコールに溶解でき、油およびポリソルベート80をテストステロン溶液に添加できる。Silversonミキサーに取り付けたロータステータアセンブリーを使用して高速撹拌下で、テストステロン/エチルアルコール/油/ポリソルベート80組成物に水を添加できる(10,000rpm、15分間)。
【0121】
得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および/または抗酵母特性を有するテストステロン局所ローションまたはクリームとして直接使用でき、または組成物を調合して別の適切な剤形にすることができる。
【0122】
(実施例4)
本実施例は、製剤の抗菌特性に対する賦形剤濃度の影響を判定することを目的とした。実施例1に記載の組成物を水で10倍に希釈し、抗菌効果について試験した。
【0123】
各構成成分の量を下の表4に示す。
【0124】
【表7】

【0125】
この製剤は、USP抗菌効果試験基準に従って試験した際に、記載の判定基準を満たさなかった。得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および/または抗酵母特性を有する局所ローションまたはクリームとして直接使用できず、また抗菌特性を与えるために、組成物を調合して別の適切な剤形にすることもできない。
【0126】
(実施例5)
本実施例の目的は、製剤の抗菌特性に対する賦形剤の濃度の影響を判定するためのさらに別の例としてであった。実施例1の組成物を水で50倍希釈して、抗菌特性について試験した。
【0127】
各構成成分の量を下の表4に示す。
【0128】
【表8】

【0129】
この製剤は、USP抗菌効果試験基準に従って試験した際に、記載の判定基準を満たさなかった。得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および/または抗酵母特性を有する局所ローションまたはクリームとして直接使用できず、また抗菌特性を与えるために、組成物を調合して別の適切な剤形にすることもできない。
【0130】
(実施例6)
本実施例は、本発明に係る例示的なナノ構造組成物の調製について述べることを目的とした。
【0131】
エチルアルコール、ダイズ油、およびPluronic F-68を共に混合した。次にこの混合物に水を添加して、得られた組成物を櫂形撹拌機を使用してよく混合した。各構成成分の量を下の表6に示す。
【0132】
【表9】

【0133】
次に組成物を高圧ホモジナイザー(APV Invensys、モデルAPV-1000)内に供給し、圧力を10,000psiにした。混合物をホモジナイザーに2回通過させた。
【0134】
代案としては、Silversonミキサーに取り付けたロータステータアセンブリーを使用して、高速撹拌下で、エチルアルコール、油、およびPluronic F-68混合物に水を添加できる(10,000rpmで15分間)。
【0135】
得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス、抗真菌、および/または抗酵母特性を有する局所ローションまたはクリームとして直接使用でき、または組成物を調合して別の適切な剤形にすることができる。
【0136】
(実施例7)
本実施例は、本発明に係る例示的なナノ構造組成物の調製について述べることを目的とした。
【0137】
エチルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、軽油、およびPluronic F-68を共に混合した。次にこの混合物に水を添加して、得られた組成物を櫂形撹拌機を使用してよく混合した。各構成成分の量を下の表7に示す。
【0138】
【表10】

【0139】
次に組成物を高圧ホモジナイザー(APV Invensys、モデルAPV-1000)内に供給し、圧力を10,000psiにした。混合物をホモジナイザーに2回通過させた。
【0140】
代案としては、Silversonミキサーに取り付けたロータステータアセンブリーを使用して高速撹拌下で、エチルアルコール、油、およびPluronic F-68混合物に水を添加できる(10,000rpm、15分間)。
【0141】
得られた組成物は、抗細菌、抗ウイルス性、抗真菌、および/または抗酵母特性を有する局所ローションまたはクリームとして直接使用でき、または組成物を調合して別の適切な剤形にすることができる。
【0142】
(実施例8)
本実施例は、モデル活性医薬品成分であり、USP抗菌効果試験基準を満たさないプロポフォールを含む、ナノ構造組成物の調製について述べることを目的とした。
【0143】
プロポフォール、エチルアルコール、ダイズ油、およびポリソルベート80を共に混合した。次にこの混合物に食塩水を添加して、得られた組成物を櫂形撹拌機を使用してよく混合した。各構成成分の量を下の表8に示す。
【0144】
【表11】

【0145】
次に組成物を高圧ホモジナイザー(APV Invensys、モデルAPV-1000)内に供給して、圧力を10,000psiにした。混合物をホモジナイザーに2回通過させた。
【0146】
この製剤は、USP抗菌効果試験基準に従って試験した際に、記載された判定基準を満たさなかった。
【0147】
(実施例9)
本実施例は、実施例1で述べられるようにして調製された組成物の抗菌効果を判定することを目的とした。
【0148】
USP 25、<51>、1869〜1871頁に従って、抗菌試験を行った。実施例1で述べられるようにして調製された組成物の一定量を以下の様々な細菌、酵母、または真菌に曝露した。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(真菌)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母)、大腸菌(Escherichia coli)(細菌)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(細菌)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(細菌)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)(真菌)、および黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)(真菌)。
【0149】
試験に先だって、適切な容積の固体寒天培地の表面に、下の表4に示す各生物の近時に再活性化した保存培養物を接種した。実施例1のようにして調製された組成物の各試験のための接種材料の量を下の表4に示す。細菌、真菌、または酵母の量を接種時、7日目、14日目、および28日目に測定した。培養条件は、USP25、<51>、1869〜1871頁に従った。試験結果を表4に示す。さらに結果を図1および2に図示する。
【0150】
【表12】

【0151】
結果は、抗細菌、抗真菌、および抗酵母薬剤としての本発明の組成物の驚くべき有効性を劇的に実証している。試験された一生物(A.ニガー(A. niger))を除いて、全ての生物は7日後に根絶されて、A.ニガー(A. niger)では生物の生育が劇的に衰え28日目に70cfu/gのみが測定された。さらに結果は、組成物がUSP 25の抗菌効果試験(Antimicrobial Effectiveness Test)の要件を満たすことを実証している。
【0152】
(実施例10)
本実施例は、実施例2で述べられるようにして調製された組成物の抗菌効果を判定し、エストラジオールなどの活性薬剤の添加が、本発明の組成物の抗細菌、抗酵母、抗真菌、および/または抗ウイルス特性に影響するかどうかを判定することを目的とした。本実施例はまた、本発明の組成物中に存在する変動する量のアルコールが、抗菌剤活性に及ぼす影響を評価している。
【0153】
抗菌試験は、USP25、<51>、1869〜1871頁に従って行った。実施例2で述べられるようにして調製された組成物の一定量を以下の様々な細菌、酵母、または真菌に曝露した。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(真菌)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母)、大腸菌(Escherichia coli)(細菌)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(細菌)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(細菌)。
【0154】
試験に先だって、適切な容積の固体寒天培地の表面に、下の表5に示す各生物の近時に再活性化した保存培養物を接種した。実施例2で述べられるようにして調製された組成物の各試験のための接種材料の量を下の表5に示す。細菌、真菌、または酵母の量を接種時、14日目(表5)、および28日目(表6)に測定した。培養条件は、USP25、<51>、1869〜1871頁に従った。試験結果を表5および6に示す。さらに結果を図3に図示する。
【0155】
【表13】

【0156】
【表14】

【0157】
(実施例11)
本実施例は、実施例3で述べられるようにして調製された組成物の抗菌効果を判定し、テストステロンなどの活性薬剤の添加が、本発明の組成物の抗細菌、抗酵母、抗真菌、および/または抗ウイルス特性に影響するかどうかを判定することを目的とした。
【0158】
抗菌試験は、USP25、<51>、1869〜1871頁に従って行った。実施例2で述べられるようにして調製された組成物の一定量を以下の様々な細菌、酵母、または真菌に曝露した。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(真菌)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(酵母)、大腸菌(Escherichia coli)(細菌)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(細菌)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(細菌)。
【0159】
試験に先だって、適切な容積の固体寒天培地の表面に、A.ニガー(A. niger)、C.アルビカンス(C. albicans)、大腸菌(E. coli)、緑膿菌(P. aeruginosa)、および黄色ブドウ球菌(S. aureus)の各生物の近時に再活性化した保存培養物を接種した。細菌、真菌、または酵母の量を接種時、7日目、14日目、および28日目に測定した。培養条件は、USP25、<51>、1869〜1871頁に従った。表4に示す試験結果は、本組成物を薬物送達ビヒクルとして使用した場合における、抗細菌、抗真菌、および抗酵母薬剤としての本発明の組成物の驚くべき有効性を劇的に実証している。意外にも活性薬剤の存在は、本発明の組成物の抗菌効果を無効化しない。さらに結果は、本組成物がUSP 25の抗菌効果試験(Antimicrobial Effectiveness Test)の要件を満たすことを実証している。
【0160】
本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、本発明の方法および組成物に様々な修正およびバリエーションを加えられることは、当業者には明らかである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にあるならば、本発明の様々な修正およびバリエーションを包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、USP25、<51>、1869〜1871頁で規定されるプロトコルに従って行われた、本発明のプラセボ組成物(すなわち活性薬剤を欠く)の抗細菌効果試験の結果を示す(大腸菌(E. coli)(ATCC 8739)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 6538)、C.アルビカンス(C. albicans)(ATCC 10231)、およびA.ニガー(A. niger)(ATCC 16404)での試験)。
【図2】図2は、USP25、<51>、1869〜1871頁で規定されるプロトコルに従って行われたが、微生物(緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC 13388)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 25619)黄色コウジ菌(A. flavus)、およびA.フミガーツス(A. fumigatus))を追加した場合の、本発明のプラセボ組成物(すなわち活性薬剤を欠く)の抗細菌効果試験の結果を示す。
【図3】図3は、USP25、<51>、1869〜1871頁で規定されるプロトコルに従って行われた、本発明のエストラジオール組成物の抗細菌効果試験の結果を示す(大腸菌(E. coli)(ATCC 8739)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 6538)、C.アルビカンス(C. albicans)(ATCC 10231)、およびA.ニガー(A. niger)(ATCC 16404)での試験)。
【図4】図4は、USP25、<51>、1869〜1871頁で規定されるプロトコルに従って行われた、本発明のテストステロン組成物の抗細菌効果試験の結果を示す(大腸菌(E. coli)(ATCC 8739)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 6538)、C.アルビカンス(C. albicans)(ATCC 10231)、およびA.ニガー(A. niger)(ATCC 16404)での試験)。
【図5】図5は、均質化後のナノ構造組成物内のエストラジオールの粒子サイズを示す。
【図6】図6は、Silverson法後のナノ構造組成物内のエストラジオールの粒子サイズを示す。
【図7】図7は、均質化後のナノ構造組成物内のテストステロンの粒子サイズを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの溶剤、
(b)少なくとも1つの界面活性剤、
(c)少なくとも1つの油、及び
(d)水
のエマルジョンを含む抗菌組成物であって、
抗菌効果のための米国薬局方(USP)試験要件を満たす、抗菌組成物。
【請求項2】
大腸菌(E. coli)(ATCC 8739)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 6538)、C.アルビカンス(C. albicans)(ATCC 10231)、及びA.ニガー(A. niger)(ATCC 16404)の1つ以上に対して抗菌効果を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 13388)、緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 25619)、黄色コウジ菌(A. flavus)、及びA.フミガーツス(A. fumigatus)の1つ以上に対して抗菌効果を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
重量対重量ベースで、それぞれ約23:約5:約4の比率で、油:安定剤:溶剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
それぞれ約2:約1の比率で、相を備える油と水又は緩衝液を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(a)約10%〜約30%(w/w)の前記油、
(b)約0.5%〜約10%(w/w)の前記溶剤、
(c)約1%〜約8%(w/w)の前記界面活性剤、
(d)約20%〜約80%(w/w)の前記水、又は
(e)あらゆるその組み合わせ.
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(a)前記溶剤に溶解された少なくとも1つの活性薬剤、(b)前記油に溶解された少なくとも1つの活性薬剤、(c)前記水に溶解された少なくとも1つの活性薬剤、(d)前記溶剤中に存在する少なくとも1つの活性薬剤の粒子、(e)前記油中に存在する少なくとも1つの活性薬剤の粒子、(f)前記水中に存在する少なくとも1つの活性薬剤の粒子、(g)又はその組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性薬剤が、アシクロビル、シクロスポリン、ナルトレキソン、アレンドロン酸、セチリジン(ceterizine)、ニコチン、テストステロン、プロゲステロン、又はエストラジオールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
溶解された活性薬剤を含む油の小球を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記油の小球が、直径約1μm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、及び約100nm未満からなる群から選択される粒子サイズを有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記活性薬剤粒子、可溶化された活性薬剤を含む油小滴、可溶化された薬剤を含む水小滴、又はその組み合わせが、直径約10μm未満の平均粒子サイズを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記活性薬剤粒子、可溶化された活性薬剤を含む油小滴、可溶化された薬剤を含む水小滴、又はその組み合わせが、直径約9μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約6μm未満、約5μm未満、約4μm未満、及び約3μm以上からなる群から選択される平均粒子サイズを有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記活性薬剤粒子、可溶化された活性薬剤を含む油小滴、可溶化された薬剤を含む水小滴、又はその組み合わせが、直径約3μm未満の平均粒子サイズを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性薬剤粒子、可溶化された活性薬剤を含む油小滴、可溶化された薬剤を含む水小滴、又はその組み合わせが、約2900nm未満、約2800nm未満、約2700nm未満、約2600nm未満、約2500nm未満、約2400nm未満、約2300nm未満、約2200nm未満、約2100nm未満、約2μm未満、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1μm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、及び約10nm未満からなる群から選択される平均粒子サイズを有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記溶剤が、ミリスチン酸イソプロピル、トリアセチン、N−メチルピロリジノン、脂肪族及び芳香族アルコール、エタノールジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、エトキシジグリコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記油が、アーモンド油(甘扁桃)、杏仁油、ルリヂサ油、カノーラ油、ココナツ油、コーン油、綿実油、魚油、ホホバ豆油、ラード油、アマニ油(煮沸)、マカダミアナッツ油、中鎖トリグリセリド、鉱物油、オリーブ油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、スクアレン、ヒマワリ種子油、トリカプリリン(1,2,3−トリオクタノイルグリセロール)、及び小麦胚芽油からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記界面活性剤が、ソルビタンエステル、グリセロールエステル、ポリエチレングリコールエステル、ブロックポリマー、アクリルポリマー(Pemulenなど)、エトキシル化脂肪酸エステル(Cremophor RH-40など)、エトキシル化アルコール(Brijなど)、エトキシル化脂肪酸(Tween 20など)、モノグリセリド、ケイ素ベースの界面活性剤、及びポリソルベートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ソルビタンエステル界面活性剤がSpan及びArlacelであり、前記グリセロールエステルがモノステアリン酸グリセリンであり、前記ポリエチレングリコールエステルがポリエチレングリコールステアリン酸であり、前記ブロックポリマーがPluronicであり、前記アクリルポリマーがPemulenであり、前記エトキシル化脂肪酸エステルがCremophor RH-40であり、前記エトキシル化アルコールがBrijであり、前記エトキシル化脂肪酸がTween 20である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
表面を
(a)少なくとも1つの溶剤、
(b)少なくとも1つの界面活性剤、
(c)少なくとも1つの油、及び
(d)水
を含む組成物にさらすことを含む、生物学的又は非生物学的表面を消毒する方法であって、
前記組成物が抗菌効果に関する米国薬局方(USP)試験要件を満たす、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−533341(P2009−533341A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504226(P2009−504226)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/008054
【国際公開番号】WO2007/123790
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(507301246)ノババックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】