抗老化性の化合物を使用する蛋白の生成方法
蛋白を、抗酸化剤であるカルノシン等の抗老化性の化合物を含む細胞培養で生成する方法を提供する。本発明の教示によると、抗老化性の化合物を含む細胞培養培地中で増殖させた細胞は、増加した生存率および生産性を示す。さらに、抗老化性の化合物の存在下で増殖させた細胞培養物は、細胞培養培地中の高分子量の凝集体の減少したレベルを示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、2005年10月24日出願の米国仮特許出願第60/729573号に関して、同時係属中であり、少なくとも1人の共通の発明者を共有し、優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般的に、哺乳動物細胞培養における蛋白の生成に関する。特に、本開示は、哺乳動物細胞を、抗老化性の化合物、例えば、カルノシンの存在下で培養して、優れた品質に加えて、生存率を維持し、生産性を高めることに関する。細胞培養によって、多くの蛋白産物が生成されている。ハイブリドーマが生成するモノクローナル抗体等、これらの産物を、治療、研究またはその他の応用例に使用することができる。動物細胞、特に、哺乳動物細胞を使用して蛋白を生成することが多い。残念ながら、動物細胞を使用すると、生成過程が、時間も費用もかかるものになってしまう。
【背景技術】
【0003】
化学薬剤の細胞培養培地への添加は、細胞を誘導して産物を生成させることによって細胞の生産性を高めることができ、したがって、全体的な収率が向上する。使用する最適な薬剤は、所望の蛋白産物および細胞型をはじめとする、多くの要因によって異なる。また、同様の要因が、選択した添加薬剤の量および薬剤を細胞培養培地に添加する時期にも影響を及ぼす。薬剤の例は、アルカン酸もしくは塩、尿素誘導体、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。酪酸ナトリウム等の化学薬剤は、蛋白生成に対して多様な効果を有することができる。薬剤の添加によって、細胞の特異的な生産性を高めることができるが、また、細胞毒性効果もあり、細胞の増殖および生存率を抑制する場合もある。
【0004】
細胞が蛋白を生成する場合、通常、蛋白は、細胞培養培地中に分泌される。しかし、特異的な蛋白が、培地中の唯一の物体ではなく、高分子量の凝集体、酸性の種およびその他の物質もまた培地中に存在することが多く、これらによって、精製過程により多くの労力および費用がかかるようになる場合がある。産物の品質を改善するための技法および方法が利用でき、より効率的な蛋白の精製が可能であり、とりわけ、バイオリアクターの条件を変化させるものまたは異なる細胞系を使用するものが挙げられる。しかし、それでもなお、蛋白生成の分野においては、改善された精製過程をもたらす技法および方法が依然として求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、求められているのは、細胞培養培地に添加して、高い細胞の生存率を維持しつつ、目的の蛋白の発現を増強することができる化学薬剤である。さらに求められているのは、細胞培養培地中の高分子量の凝集体および酸性の種の量を減少させることによって、蛋白産物の品質を高める薬剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の実施形態では、本開示は、蛋白産物の生成を増強するための過程に関する。例えば、特定の実施形態では、本発明は、目的の蛋白を発現する宿主細胞を、抗老化性の化合物を含む培地中で培養する方法を提供し、それによって、目的の蛋白の全体的な生成が増強される。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物は、カルノシンを含む。
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、目的の蛋白の生成を増強する組成物を提供する。例えば、特定の実施形態では、本発明は、宿主細胞中で発現する目的の蛋白の生成を増強する抗老化性の化合物を含む細胞培養培地を提供する。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物は、カルノシンを含む。特定の実施形態では、遺伝子操作した宿主細胞を、接種培地と組み合わせて、細胞培養培地を形成し、これを、バイオリアクター中で増殖させる。生産性を高めるためおよび/または生存率を維持するために、所望の蛋白産物の生成工程の間に、バイオリアクターの条件を変化させることおよび/または補助剤を添加することができる。補助剤は、生育培地および/または1種または複数の添加剤、例えば、本開示においては、カルノシンおよび/またはその他の抗老化性の化合物を含むことができる。
【0008】
宿主の哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、バイオリアクター中での生成工程が終わりに近づくと、生存率の低下を経験する場合がある。カルノシンおよびその類似体等の抗老化性の薬剤の細胞培養培地への添加が、蛋白を収集するまで、生細胞の数および細胞の生存率を高値で維持するのに役立つことが発見されている。
【0009】
その上、生成工程の増殖期の後および/または生成期の間に温度を変化させる等、生産性を高めるための方法を、本発明に従って使用することもできる。一例に過ぎないが、蛋白産物、特異的には、増殖分化因子−8(GDF−8)に対する抗体の生成の間に、温度を低温にシフトさせると、生産性を開始させ、向上させるのに役立った。特定の実施形態では、カルノシン等の抗老化性の化合物の添加は、細胞培養の生産性を高めるのに役立つ。特定の実施形態では、そのような温度のシフトの前、間および/または後に、抗老化性の化合物を添加することができる。
【0010】
また、カルノシン等の抗老化性の化合物の細胞培養培地への添加が、蛋白産物の全体的な品質を高めることも発見されている。蛋白の生成の間には、高分子量の凝集体が、その他の不要な種と共に、細胞培養培地中に存在する。カルノシンの添加によって、高分子量の凝集体の量が減少し、産物の品質が高まる。特定の実施形態では、カルノシン以外の抗老化性の化合物の添加によって、そのような高分子量の凝集体の蓄積が減少し、産物の品質が改善される。特定の実施形態では、カルノシンを、1種または複数の追加の抗老化性の化合物と組み合わせて添加する。
【0011】
細胞培養培地に添加する抗老化性の化合物(例えば、カルノシン)の濃度が、例えば、とりわけ、細胞型、所望の産物およびバイオリアクターの条件をはじめとする、過程の多くの要因によって異なることができる。また、カルノシンを、その類似体であるアセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリンおよびβ−アラニンで代用することもできる。特定の実施形態では、カルノシンを、1種または複数のその他の抗老化性の化合物と組み合わせて提供する。特定の実施形態では、細胞培養培地中の抗老化性の薬剤(例えば、カルノシン)の濃度は、約5mMから約100mMである。特定の実施形態では、濃度は、約10mMから約40mMである。特定の実施形態では、濃度は、約20mMである。
【0012】
蛋白の生成過程において、いずれかの適切な培養の手順および接種培地を使用して、細胞を培養することができる。血清培地および無血清培地の両方を使用することができる。その上、培養方法を使用して、特異的な細胞型および蛋白産物に適した細胞を培養することもできる。そのような手順は、細胞培養技術における当業者には、既知であり、理解されている。
【0013】
本開示のその他の特色および利点が、以下の記載および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0014】
定義
長年の慣習に従って、特許請求の範囲も含めて、本出願で使用する場合、「a」および「an」は、「1つまたは複数(「one or more」)」を意味する。本発明は、ある程度の特殊性をもって記載されているが、本開示に照らして、多くの代替例、改変例および変形例が、当業者には明らかであろうことが明白である。したがって、そのような代替例、改変例および変形例の全てが、本発明の精神および範囲の内であり、定義する特許請求の範囲によって包含されるものとする。
【0015】
本明細書で使用する場合、「抗老化性の化合物」という用語は、細胞培養物に添加すると、そこで増殖する細胞の生存率、増殖および/または寿命を促進するいずれかの薬剤または化合物を指す。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物を細胞培養に使用すると、抗老化性の化合物を欠く以外は同一の培養条件下で観察されるであろう場合と比較して、タイターが増加し、細胞の特異的な生産性が高まり、細胞の生存率が上昇し、生細胞の集積密度が増加し、高分子量の凝集体の蓄積が減少し、かつ/または酸性の種の蓄積が減少する。本発明の方法および組成物に従って使用することができる抗老化性の化合物の非限定的な例として、カルノシン、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリンおよびβ−アラニンが挙げられる。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物を、本発明の方法および組成物に従って使用することができる。
【0016】
「宿主細胞」という表現は、遺伝子操作することができる細胞ならびに/または細胞培養培地中で増殖および生存できる細胞を指す。通常、細胞は、内因性または異種性の目的の蛋白を大量に発現することができ、かつ蛋白を、保有することができるか、または細胞培養培地中へ分泌することができるかのいずれかである。
【0017】
宿主細胞は、通常、「哺乳動物細胞」であり、これは、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓(293)細胞、アカゲザル胎仔正常二倍体(FRhL−2)細胞およびマウス骨髄腫(例えば、SP2/0およびNS0)細胞をはじめとする、脊椎動物細胞の非限定的な例を含む。当業者であれば、本発明の方法および組成物に従って使用することができるその他の宿主細胞が分かるであろう。
【0018】
「細胞培養培地」という用語は、細胞が増殖し、所望の蛋白を生成することができる条件下で、細胞の生存を支持する栄養素を含有する溶液を指す。「接種培地(「inoculation medium」または「inoculum medium」)」という表現は、細胞の培養を開始する、栄養素を含有する溶液または物質を指す。特定の実施形態では、「生育培地」が、接種培地と同様の栄養素を含有するが、これは、培養開始後に細胞に与える溶液または物質である。特定の実施形態では、生育培地は、接種培地には存在しない、1種または複数の成分を含有する。特定の実施形態では、生育培地は、接種培地には存在する、1種または複数の成分を欠く。細胞培養技術における当業者であれば、過度の実験をせずとも、どの成分が接種培地および生育培地を構成するかを知るであろう。通常、これらの溶液は、細胞が増殖および生存のために必要とする必須および非必須のアミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、ならびに微量元素を提供する。特定の実施形態では、接種培地、生育培地またはその両方が抗老化性の化合物を含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、「細胞培養の特徴」という用語は、細胞培養物の観察可能および/または測定可能な特徴を指す。本発明の方法および組成物を、1つまたは複数の細胞培養の特徴を改善するために、有利に使用する。特定の実施形態では、細胞培養の特徴の改善は、細胞培養の特徴の大きさの増加を含む。特定の実施形態では、細胞培養の特徴の改善は、細胞培養の特徴の大きさの減少を含む。非限定的な例として、細胞培養の特徴は、タイター、細胞の特異的な生産性、細胞の生存率、生細胞の集積密度、高分子量の凝集体の蓄積および/または酸性の種の蓄積であることができる。当業者であれば、本発明の方法および組成物を使用して改善することができる、その他の細胞培養の特徴が分かるであろう。
【0020】
本明細書で使用する場合、「既知組成培地」という用語は、培地の組成が既知でありかつ制御されている培地を指す。既知組成培地は、血清または加水分解産物等、未知および/または未制御の成分を含有する複合添加物を含有しない。
【0021】
本明細書で使用する場合、「複合培地」という用語は、身元または量のいずれかが未知または未制御である、少なくとも1種の成分を含有する培地を指す。
【0022】
「細胞系」という表現は、一般に、目的の蛋白を発現する初代の宿主細胞を指す。いくつかの実施形態では、所望の蛋白をコードするおよび/または内因性にしても異種性にしても、連結している配列の発現を活性化する調節配列を含有する外因性のDNAを細胞に形質移入している。特定の実施形態では、そのような遺伝子改変細胞に由来する細胞が、細胞系を形成し、細胞培養培地中に置かれて、増殖し、蛋白産物を生成する。特定の実施形態では、細胞系は、外因性のDNAが形質移入されておらず、内因性の目的の蛋白を発現する初代の宿主細胞を含む。
【0023】
細胞培養培地の「増殖期」とは、細胞が、急速に分裂し、指数関数的にまたはほとんど指数関数的に増殖する期間を指す。通常、細胞を、細胞の増殖のために最適化した条件で、一般的に、1〜4日間培養する。増殖期の条件は、約35℃から42℃、一般的に、約37℃の温度を含むことができる。増殖期の長さおよび増殖期中の培養条件は、異なることができ、細胞培養技術における当業者には、一般的に知られている。特定の実施形態では、増殖期の細胞培養培地を、生育培地で補足する。
【0024】
「移行期」が、細胞培養培地を、増殖期に適応した条件から、生成期に適応した条件へシフトさせている期間の間に生じる。移行期の間は、とりわけ、温度のような要因を変化させることが多い。特定の実施形態では、移行期の細胞培養培地を、生育培地で補足する。
【0025】
「生成期」は、増殖期および移行期の両方の後に生じる。細胞の指数関数的な増殖が終わり、蛋白の生成が主要な目的となる。細胞培養培地を補足して、生成を開始させることができる。特定の実施形態では、生成期の細胞培養培地を、生育培地で補足する。その上、生成期の間は、細胞培養培地の温度を、一般的に、増殖期の間よりも下げることができ、これによって、通常、生成を奨励する。生成期は、所望のエンドポイントに到達するまで続く。
【0026】
「生細胞の密度」という表現は、特定の容量、一般的に、1mlあたりの細胞培養培地中で生存している細胞の全数を指す。「細胞の生存率」という表現は、死細胞および生きている細胞の両方の細胞の全数に対する生きている細胞の数を指し、パーセントとして表す。
【0027】
「生細胞の集積密度」、「IVCD」:本明細書で使用する場合、「生細胞の集積密度」または「IVCD」という用語は、培養が進行する間の生細胞の平均密度に、培養工程時間の長さを乗じたものを指す。生成する蛋白の量が、培養が進行する間に存在する生細胞の数に比例する場合には、生細胞の集積密度は、培養が進行する間に生成する蛋白の量を推定するための有用な道具になる。
【0028】
「高分子量の凝集体」という用語は、一般的に、間違って折り畳まれた蛋白または少なくとも2つのポリペプチドの不適切な会合を指す。会合は、これらに限定されないが、共有結合、非共有結合、ジスルフィド結合または非還元性の架橋結合をはじめとする、いずれかの方法によって生じる場合がある。特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、高分子量の凝集体の蓄積を減少させるために、有利に使用する。
【0029】
「抗酸化剤」という表現は、脂質、蛋白、DNAおよびその他の必須の巨大分子に対する酸化的な損傷を、フリーラジカルを封鎖することによって抑制することができる化合物を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つ、典型的には2つのVHドメインもしくはその一部、および/または少なくとも1つ、典型的には2つのVLドメインもしくはその一部を含む蛋白を含む。特定の実施形態では、抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖からなる四量体であり、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖とが、例えば、ジスルフィド結合によって、相互接続している。抗体またはその一部を、これらに限定されないが、げっ歯類、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒトの霊長類)、ラクダ科をはじめとする、いずれかの起源から得ることができ、さらに、本明細書でより詳細に記載するように、組換えによって、例えば、キメラ抗体もしくはヒト化抗体として生成することもでき、かつ/またはin vitroで作製することもできる。
【0031】
抗体の「抗原結合断片」という用語の範囲内に包含される結合断片の例として、これらに限定されないが、(i)Fab断片、すなわち、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、すなわち、ヒンジ領域においてジスルフィド橋によって連結されている2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;(v)dAb断片、これは、VHドメインからなる;(vi)ラクダまたはラクダ化の可変ドメイン;(vii)単鎖Fv(scFv);(viii)二重特異性抗体;ならびに(ix)Fc領域に融合した、免疫グロブリン分子の1つまたは複数の断片が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子がコードするが、組換えの方法を使用して、合成リンカーによって、それらをつなぎ合わせることができる。この合成リンカーによって、それらのドメインを単一の蛋白鎖として作製することができ、そこでは、VL領域とVH領域とが対になって一価の分子を形成している(これは、単鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Birdら、(1988)Science 242:423−26;Hustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879−83を参照)。そのような単鎖の抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語の範囲内に包含されるものとする。これらの断片を、当業者に知られる従来の技法を使用して得ることができ、完全な状態の抗体の場合と同じように、それらの断片の機能を評価する。
【0032】
「抗原結合断片」は、所望により、1種もしくは複数のエフェクター細胞の、例えば、安定性の機能または補体結合反応を増強する部分をさらに含むことができる。例えば、抗原結合断片は、ペグ化部分、アルブミン、または重鎖および/または軽鎖の定常部をさらに含むこともできる。
【0033】
「二重特異性」または「二機能性」の抗体を除き、抗体は、その各結合部位が全く同一であると理解されている。「二重特異性」または「二機能性」の抗体は、異なる重鎖/軽鎖の対を2つおよび2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体を、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結をはじめとする、多様な方法によって生成することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547−1553(1992)を参照されたい。
【0034】
抗体またはそれらの抗原結合断片を得るために、当業者に知られている多数の方法を利用することができる。例えば、モノクローナル抗体を、既知の方法に従ってハイブリドーマを作製することによって生成することができる。このようにして形成したハイブリドーマを、通常、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)および表面プラズモン共鳴(Biacore(商標))分析法等の標準的な方法を使用してスクリーニングして、特異抗原と特異的に結合する抗体を生成する、1種または複数のハイブリドーマを同定する。いずれかの形態の特異抗原、例えば、組換え抗原、自然に存在する形態、それらの任意の変異体または断片、およびそれらの抗原性ペプチドを、免疫原として使用することができる。
【0035】
抗体を作製する1つの例示的な方法として、蛋白発現ライブラリー、例えば、ファージまたはリボゾームのディスプレイライブラリーのスクリーニングが挙げられる。ファージディスプレは、例えば、Ladnerら、米国特許第5223409号;Smith(1985)Science 228:1315−1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;およびWO90/02809に記載されている。
【0036】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特異抗原を使用して、非ヒト動物、例えば、げっ歯類、具体的には、マウス、ハムスターまたはラットを免疫化することができる。特定の実施形態では、非ヒト動物は、少なくともヒト免疫グロブリン遺伝子の一部を含む。例えば、マウス抗体の産生を欠損したマウスの系統を、ヒトIg座位の大きな断片を用いて操作することができる。ハイブリドーマの技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を生成し、選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics 7:13−21、US2003−0070185;WO96/34096、1996年10月31日公開;およびPCT出願番号PCT/US96/05928、1996年4月29日出願を参照されたい。
【0037】
特定の実施形態では、モノクローナル抗体を、非ヒト動物から得、次いで、当技術分野で既知の組換えDNA技法を使用して、改変する、例えば、ヒト化、非免疫化、キメラ化することができる。キメラ抗体を作製するための多様なアプローチが記載されている。例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851,1985;Takedaら、Nature 314:452,1985;Cabillyら、米国特許第4816567号;Bossら、米国特許第4816397号;Tanaguchiら、欧州特許公開第171496号;欧州特許公開第0173494号;英国特許第2177096B号を参照されたい。また、ヒト化抗体を、例えば、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現するが、内因性のマウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを使用して生成することもできる。Winterは、本明細書に記載するヒト化抗体を調製するために使用することができる例示的なCDR−移植法を記載している(米国特許第5225539号)。特定のヒト抗体のCDRの全部を、少なくとも一部の非ヒトCDRで置換する、またはCDRを、一部に限って非ヒトCDRで置換することができる。ヒト化抗体が所定の抗原に結合するのに要求される数のCDRを置換することだけが必要である。
【0038】
抗原結合に直接関与しないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインからの同等の配列で置換することによって、ヒト化抗体またはその断片を作製することができる。ヒト化抗体またはその断片を作製する例示的な方法が、Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら、(1986)BioTechniques 4:214;ならびにUS5,585,089;US5,693,761;US5,693,762;US5,859,205;およびUS6,407,213によって提供されている。そのような方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つからの免疫グロブリンFv可変ドメインの全部または一部をコードする核酸配列を単離するステップと、操作するステップと、発現させるステップとを含む。そのような核酸を、上記に記載したように、所定の標的に対して抗体を産生するハイブリドーマから、およびその他の源から得ることができる。次いで、ヒト化抗体分子をコードする組換えDNAを、適切な発現ベクター内にクローン化することができる。
【0039】
特定の実施形態では、ヒト化抗体を、保存的置換、コンセンサス配列置換、胚細胞系置換および/または逆突然変異の導入によって最適化する。そのような変化させた免疫グロブリン分子を、当技術分野で既知のいくつかの技法(例えば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308−7312,1983;Kozborら、Immunology Today,4:7279,1983;Olssonら、Meth.Enzymol.,92:3−16,1982)のいずれかによって作製することができ、PCT公開WO92/06193号または第EP 0239400号の教示に従って作製することができる。
【0040】
また、抗体またはその断片を、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失、またはWO98/52976号およびWO00/34317号に開示されている方法による「非免疫化」によって改変することもできる。手短にいうと、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインを、MHCクラスIIに結合するペプチドについて分析することができる。これらのペプチドは、(WO98/52976およびWO00/34317で定義されている)有望なT細胞エピトープに相当する。有望なT細胞エピトープの検出のために、「ペプチド縫糸法」と呼ばれるコンピュータモデリングのアプローチを適用することができ、その上、WO98/52976およびWO00/34317に記載されているように、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VHおよびVLの配列に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは、18種の主要MHCクラスIIDRアロタイプのうちのいずれかに結合し、したがって、有望なT細胞エピトープを構成する。検出された有望なT細胞エピトープを、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは、単一アミノ酸置換によって排除することができる。通常、保存的置換を作製する。常ではないが、しばしば、ヒト胚細胞系抗体配列中のある位置に共通のアミノ酸を使用することができる。ヒト胚細胞系配列は、例えば、Tomlinsonら、(1992)J.Mol.Biol.227:776−798;Cook,G.P.ら、(1995)Immunol.Today Vol.16(5):237−242;Chothia,D.ら、(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;およびTomlinsonら、(1995)EMBO J.14:4628−4638に開示されている。(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、英国が蓄積した)V BASE登録簿が、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的な登録簿として提供されている。これらの配列を、例えば、フレームワーク領域およびCDRに関するヒト配列の源として使用することができる。また、例えば、US6,300,064に記載されているヒトコンセンサスフレームワーク領域も使用することができる。
【0041】
特定の実施形態では、抗体は、変化させた免疫グロブリンの定常領域またはFc領域を含有することができる。例えば、本明細書の教示に従って生成した抗体は、補体および/またはFc受容体等のエフェクター分子により強くまたはより特異的に結合することができ、このことによって、エフェクター細胞活性、溶解、補体仲介活性、抗体の排除および抗体の半減期等の抗体のいくつかの免疫機能を制御することができる。抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体として、これらに限定されないが、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIならびにFcRnのサブクラスの受容体が挙げられ、それらには、これらの受容体の対立遺伝子の変異体および選択的スプライスによる形態が含まれる。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457−92,1991;Capelら、Immunomethods 4:25−34,1994;ならびにde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330−41,1995に概説されている。
【0042】
「バイオリアクター」という表現は、細胞培養培地を含有することができ、内部条件、例えば、pHおよび温度を培養期間の間に制御できる容器を指す。
【0043】
「流加培養法」は、まず、接種培地を有するバイオリアクター中に細胞を接種する細胞培養法を指す。次いで、生成工程を通して、1回または複数の時点で、細胞培養培地を、栄養成分および/またはその他の補助剤を含有する生育培地で補足する。
【0044】
「回分培養法」とは、生成工程全体で必要とする栄養素および補助剤の全てを有するバイオリアクター中に細胞を接種する細胞培養法を指す。生成期間を通して、細胞培養培地に栄養素を添加することはない。
【0045】
「灌流培養法」とは、回分培養法とも流加培養法とも異なる細胞培養法を指し、この場合、発現した目的の蛋白の単離および/または精製に先立って、培養を終了または必ずしも終了するわけではなく、新しい栄養素およびその他の成分を定期的または連続的に培地に添加し、この間に、発現した蛋白を定期的または連続的に収集する。添加する栄養素の組成を、細胞の必要性、最適な蛋白生成の要件および/または当業者に既知の多様なその他の要因によって、細胞培養の進行の間に変化させることができる。
【0046】
「発現」という表現は、宿主細胞内で生じる転写および翻訳を指す。発現のレベルは、一般的に、宿主細胞が生成する蛋白の量に関係する。
【0047】
「蛋白」または「蛋白産物」という表現は、アミノ酸の1本または複数の鎖を指す。本明細書で使用する場合、「蛋白」という用語は、「ポリペプチド」と同義であり、当技術分野で一般的に理解されているように、連続的なペプチド結合を介して連結しているアミノ酸の少なくとも1本の鎖を指す。特定の実施形態では、「目的の蛋白」は、宿主細胞中に形質転換されている外因性の核酸分子がコードする蛋白である。特定の実施形態では、「目的の蛋白」は、宿主細胞にとって内因性である核酸分子がコードする蛋白である。特定の実施形態では、例えば、1つまたは複数の制御配列を含有することおよび/あるいは目的の蛋白の発現を増強する蛋白をコードすることができる、外因性の核酸分子を宿主細胞に形質移入することによって、そのような内因性の目的の蛋白の発現を変化させる。本発明の方法および組成物を使用して、これらに限定されないが、治療的特性、薬学的特性、診断用特性、農業用特性および/または商業的、実験的および/またはその他の適用例において有用である多様なその他の特性のいずれかを有する蛋白をはじめとする、目的の蛋白のいずれかをも生成することができる。特定の実施形態では、本発明の方法および/または組成物を使用して生成する蛋白を、加工および/または改変することができる。例えば、本発明に従って生成した蛋白を、グリコシル化することができる。
【0048】
「細胞の特異的な生産性」およびその他は、細胞あたりの特異的な産物の発現速度を指す。細胞の特異的な生産性は、一般的に、1日あたり、106個の細胞について、生成する蛋白のマイクログラムとして、または1日あたり、106個の細胞について、生成する蛋白のピコグラムとして測定する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「タイター」という用語は、所与の量の培地の容量中で細胞培養によって生成した、組換え的に発現させた蛋白の全量を指す。タイターは、通常、培地1ミリリットルあたりの蛋白のミリグラムまたはマイクログラムの単位で表す。
【0050】
当業者であれば、本明細書に開示する方法を使用して、当技術分野で日常的に使用および培養される周知の哺乳動物細胞の多くを培養することができること、すなわち、本明細書に開示する方法は、本開示に関する使用のみに制限されないことを認識するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
カルノシン等の抗老化性の化合物を使用して、細胞培養物の生存率および生産性を改変することが発見されている。例えば、カルノシンを添加して、細胞の生存率を維持し、細胞の生産性を改善し、所望の蛋白産物の産物としての品質を改善する。カルノシンは、抗酸化剤であり、抗老化性の化合物でもあり、また、自然に存在するジペプチドであり、動物の筋肉組織および神経組織中に高いレベル(上限20mM)で存在する。抗酸化剤であることから、また、カルノシンは、フリーラジカル捕捉剤でもあり、糖化阻害剤でもある。一般に、カルノシンは、反応性の種を、非反応性の種に変換し、それによって、蛋白、DNAおよびその他の必須の巨大分子を保護する。抗老化性の化合物として、カルノシンは、培地中における20mMの濃度のヒト二倍体線維芽細胞およびヒト胎児肺(初代細胞系)の寿命を延長させることができる。本発明は、(これに限定されないが、カルノシンをはじめとする)抗老化性の化合物を細胞培養において使用して、目的の蛋白を生成することが有利であるという驚くべき知見を包含する。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物を細胞培養において使用して、目的の蛋白を生成すると、1つまたは複数の改善された細胞培養の特徴が得られ、例えば、タイターが増加し、細胞の特異的な生産性が高まり、細胞の生存率が上昇し、生細胞の集積密度が増加し、高分子量の凝集体の蓄積が減少し、かつ/または酸性の種の蓄積が減少するが、これらに限定されない。
【0052】
カルノシンは、より低いグルコースレベルを有する基礎培地(MEM、Sigma製)中では、ヒトまたはげっ歯類の形質転換細胞および腫瘍性細胞に対して細胞毒性であるが、1mMピルビン酸を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma製)中では、そうではないことが実証されている(Hollidayら、Biochemistry(Moscow),65:843−848,846)。その上、低分子量の化合物を除去した透析ウシ胎仔血清は、カルノシンの細胞毒性効果を増加させた。同一著者。また、1mMオキザロ酢酸および1mM α−ケトグルタル酸が、ピルビン酸に匹敵する効果を有することも決定されたが、これらはいずれも、カルノシンの実施例に関して使用した接種培地および生育培地の成分ではない。同一著者。しかし、ピルビン酸ナトリウムは、カルノシン添加のためではなく、むしろ、バイオリアクター系でin vivoの条件をより良好に模倣するためおよび有望な代替エネルギー源としての、0.5mMの濃度での接種培地の元々の成分である。また、接種培地は、無血清でもあり、これは、カルノシンが細胞毒性効果を有すると思われることを意味するであろう。参考文献によると、細胞培養培地へのカルノシンの添加は、HollidayにおいてMEM培地中で見られたと同様の細胞毒性効果を有すると思われる。本発明の方法および/または組成物を利用することによって、そのような細胞毒性を低下または排除し、細胞の生存率および蛋白の生成を改善する。
【0053】
特定の実施形態では、カルノシンを、細胞培養培地中に、約5mMと約100mMとの間の濃度で提供する。特定の実施形態では、カルノシンを、細胞培養培地中に、約10mMから約40mMの濃度、例えば、約20mMの濃度で提供する。特定の実施形態では、カルノシンを、細胞培養培地中に、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mMまたは100mM超の濃度で提供する。特定の実施形態では、細胞培養の過程の間の複数の時点で、例えば、1つまたは複数の生育培地中にカルノシンを添加することによって、カルノシンのそのような濃度を細胞培地中で達成する。利用するカルノシンの濃度は、とりわけ、細胞系または産物に対する求められている所望の効果をはじめとする、細胞培養培地および使用している細胞系の要因によって異なる。また、カルノシンの類似体、例えば、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリンおよびβ−アラニンも、細胞培養培地に提供して、同様の効果を得ることができる。1種または複数のこれらの類似体を、細胞培養培地に提供することができる。特定の実施形態では、そのような類似体を、カルノシンを欠く細胞培養培地に提供する。特定の実施形態では、そのような類似体を、カルノシンと組み合わせて細胞培養培地に提供する。特定の実施形態では、そのような類似体を、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mMまたは100mM超の濃度で提供する。
【0054】
特定の実施形態では、目的の蛋白を生成するために、初めに、蛋白をコードする外因性のDNAを宿主細胞に形質移入または形質転換して、形質転換細胞を供給し、この細胞は、所望の蛋白産物を構造的に生成する。特定の実施形態では、細胞に導入した核酸分子は、本発明に従って発現することが望まれる蛋白をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、制御配列を含有する、あるいは細胞による所望の蛋白の発現を誘導または増強する遺伝子産物をコードする。非限定的な例として、そのような遺伝子産物は、目的の蛋白の発現を増加させる転写因子であることができる。
【0055】
特定の実施形態では、蛋白の発現を導く核酸を、宿主細胞内に安定に導入する。特定の実施形態では、蛋白の発現を導く核酸を、宿主細胞内に一過性に導入する。当業者であれば、実験的、商業的またはその他の必要性に基づいて、核酸を細胞内に安定または一過性のいずれかの状態で導入すべきかを選ぶことができるであろう。
【0056】
目的の蛋白をコードする遺伝子を、所望により、1つまたは複数の遺伝子の制御調節領域に連結させることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子の調節領域は、蛋白の構造的な発現を導く。いくつかの実施形態では、目的の蛋白をコードする遺伝子の誘導性発現を提供する遺伝子の調節領域を使用することができる。誘導性の遺伝子の調節領域(例えば、誘導性のプロモーター)を使用すると、細胞中での蛋白の生成を調節することができる。真核細胞中で使用する場合に有用である可能性が高い誘導性の遺伝子の調節領域の非限定的な例として、ホルモン制御領域(例えば、Mader,S.およびWhite,J.H.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603−5607,1993を参照)、合成リガンド制御領域(例えば、Spencer,D.M.ら、Science 262:1019−1024,1993を参照)、および電離放射線制御領域(例えば、Manome,Y.ら、Biochemistry 32:10607−10613,1993;Datta,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10149−10153,1992を参照)が挙げられる。当技術分野で知られる、追加の細胞に特異的なまたはその他の制御系を、本明細書に記載する方法および組成物に従って使用することができる。
【0057】
細胞培養および蛋白の発現に敏感ないずれかの宿主細胞を、本発明に従って利用することができる。宿主細胞は、一般的に、哺乳動物細胞であり、より具体的には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の動物細胞である。本発明に従って使用することができる、哺乳動物細胞のその他の非限定的な例として、BALB/cマウス骨髄腫細胞系(NSO/I、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞腫(PER.C6(CruCell製、Leiden、オランダ));SV40によって形質転換したサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓系(293細胞または懸濁培養での増殖用にサブクローンした293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.,36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.,23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞癌系(Hep G2)が挙げられる。
【0058】
宿主細胞中で発現可能であるいずれかの蛋白を、本発明の方法および組成物に従って生成することができる。蛋白を、宿主細胞にとって内因性である遺伝子からまたは宿主細胞中に導入した異種性の遺伝子から発現することができる。蛋白は、自然に存在するものであってもよいし、代わりに、人工的に操作または選択した配列を有してもよい。生成しようとする蛋白を、個々に自然に発生する蛋白の断片から組み立てることができる。それに加えてまたはそれに代わって、操作した蛋白は、1つまたは複数の自然に発生しない断片を含むことができる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を利用して、薬学的または商業的に適切な酵素、受容体、抗体、ホルモン、制御因子、抗原、結合物質等を発現させる。手近な例では、遺伝子操作した細胞が、増殖分化因子−8(GDF−8)に対する抗体を生成する。非限定的な例示的な実施形態は、Myo29、Myo28およびMyo22と呼ばれる。これらの例示的な実施形態は、ヒトIgGアイソトープの形態で提供される。開示されている非限定的な例は、MYO29を使用し、これは、「Neutralizing Antibodies Against GDF−8 and Uses Thereof」の標題の特許WO2004/037861号で保護されており、参照によって本明細書に組み入れられている。当業者であれば、本発明の方法および組成物に従って発現させることができる、その他の有用なおよび/または所望の蛋白が分かるであろう。
【0060】
細胞系を、所望の蛋白産物を生成するための多様な技法を使用して培養することができる。細胞培養は、細胞培養培地または産物の使用の目的によって、小規模または大規模で行うことができる。例えば、細胞をバイオリアクター中で増殖させることができる。特定の実施形態では、バイオリアクターの容量は、少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットルまたは12,000リットル超、あるいはこれらの間のいずれかの容量であることができる。その上、使用することができるバイオリアクターとして、これらに限定されないが、攪拌タンク型バイオリアクター、流動床式リアクター、中空糸型バイオリアクターまたはローラーボトルが挙げられる。また、系を、回分培養モード、流加培養モードまたは連続/灌流培養モードのいずれかで動作することもできる。細胞培養培地を制御およびモニターするためのバイオリアクターおよびモードは、細胞培養技術における当業者には既知であろう。手近な例では、利用する系は、攪拌タンク型バイオリアクターであり、流加培養モードで動作する。
【0061】
一般に、バイオリアクターには、接種培地および選んだ細胞系、例えば、所望の蛋白産物を安定に発現および生成するように形質移入することができるMYO−29細胞系を播種する。基礎培地(MEM、Sigma製)、Ham’s F10(Sigma製)またはダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma製)等の市販の培地を、基本培地として使用することができる。次いで、これらの基本培地を、アミノ酸、ビタミン、微量元素および/またはその他の成分で補足して、生成工程の間に使用する接種培地または生育培地を生成することができる。特定の実施形態では、カルノシンの存在下で、細胞の強力な増殖を可能にする、細胞の生存率が上昇する、細胞の生産性が高まる、生細胞の集積密度が増加する、かつ/または生成した蛋白の品質を改善するように、基本培地を変化させる。例えば、基本培地を、ピルビン酸、オキザロ酢酸および/またはα−ケトグルタル酸で補足することができる。当業者であれば、過度の実験をせずとも、本発明の方法および組成物を用いた使用に向けて、基本培地を変化させることができるであろう。
【0062】
特定の実施形態では、抗老化性の化合物を含有する、多様な、組成が化学的に既知である培地のいずれかの中で、細胞を培養する。この培地中では、培地の成分が、既知であり、かつ制御されている。例えば、既知組成培地は、通常、血清または加水分解産物等の複合添加物を含有しない。特定の実施形態では、抗老化性の化合物を含有する、多様な複合培地のいずれかの中で、細胞を培養する。この培地中では、全ての培地の成分が、既知であるかつ/または制御されているわけではない。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物は、カルノシンを含む。
【0063】
バイオリアクターの条件を、通常、pHを約6.5と約7.5との間に設定して制御する。pHを、酸、一般的にCO2、または炭酸水素ナトリウム等の塩基を使用して調整する。増殖期の間は、溶存酸素を約5%と約90%との間の空気飽和に制御し、温度を30℃と42℃との間に保つ。細胞培養技術における当業者であれば、過度の実験をせずとも、利用している細胞系および方法に基づいて、バイオリアクターの条件を改変して、所望の結果を達成することができる。
【0064】
本発明の組成物および方法を、蛋白の発現に適した、いずれかの細胞培養の方法または系と共に使用することができる。例えば、目的の蛋白を発現する細胞を、回分培養法または流加培養法で増殖させることができ、蛋白が十分に発現したら、培養を終了し、その後、発現した蛋白を収集し、所望により、精製する。別法として、目的の蛋白を発現する細胞を、灌流培養法で増殖させることができ、培養を終了せず、新しい栄養素およびその他の成分を定期的または連続的に培地に添加し、この間に、発現した蛋白を定期的または連続的に収集する。
【0065】
細胞を播種すると、細胞は、増殖期を経過し、この間に、一般的に、細胞の数が指数関数的に増加する。増殖期の間は、主として、細胞培養物が生存可能な状態を維持する温度または温度範囲、高いレベルの蛋白を生成する温度または温度範囲、代謝老廃物の産生または蓄積を最小化する温度または温度範囲、および/またはこれらの組合せ、あるいは担当者が重要であると見なすその他の要因に基づいて、細胞培養の温度または温度範囲を選択するものとする。1つの非限定的な例として、CHO細胞は、約37℃で、良好に増殖し、高いレベルの蛋白を生成する。一般に、大部分の哺乳動物細胞は、約25℃から42℃の範囲内で、良好に増殖し、かつ/または高いレベルの蛋白を生成することができるが、本開示が教示する方法は、これらの温度に限定されない。特定の哺乳動物細胞は、約35℃から40℃の範囲内で、良好に増殖し、かつ/または高いレベルの蛋白を生成することができる。特定の実施形態では、細胞培養物は、増殖期の間の1回または複数の時点において、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45℃の温度で増殖する。当業者であれば、細胞の必要性および担当者の生成要件によって、細胞が増殖するために適切な温度または温度範囲を選択することができるであろう。
【0066】
増殖期に続くのは、移行期であり、この間では、細胞を、温度変化等、周囲に生じるいずれかの変化に順応させる。生じる変化は、通常、生成期のためのパラメーターである。手近な例では、第4日に、温度を約37℃から約31℃まで下げる。しかし、温度のシフトは、複数回起こすことができ、必ずしも低温にシフトさせるわけではない。さらに、移行期および温度のシフトを起こす日程は、生成工程の間のいつであってもよい。ほとんどの生成方法は、多相性の過程を含むが、カルノシンを単相性の過程で利用することもまた可能である。
【0067】
培養温度をシフトさせる場合、温度を比較的徐々にシフトさせることができる。例えば、温度変化が完了するのに数時間または数日を要する場合がある。別法として、温度を比較的急激にシフトさせることができる。温度を、培養過程の間に、間断なく上げたり、下げたりすることができる。別法として、温度を、培養過程の間の種々の時点で、別個の量だけ上げたり、下げたりすることができる。それに続く温度または温度範囲は、初期または以前の温度または温度範囲よりも、低い場合もあれば、高い場合もある。当業者であれば、複数の個別の温度のシフトが、これらの実施形態に包含されていることを理解するであろう。例えば、温度を1回(より高いまたはより低い温度または温度範囲まで)シフトさせ、特定の期間にわたり、この温度または温度範囲で細胞を維持することができ、その後、温度を、新しい温度または温度範囲に再度シフトさせることができ、これは、以前の温度または温度範囲の温度または温度範囲よりも高いまたは低いのいずれかであることができる。各個別のシフト後の培養温度は、一定であってもよいし、特定の範囲の温度内で維持されてもよい。
【0068】
最後に、生成期があり、ここでは、細胞の数は実質的に増加することはなく、むしろ、細胞が所望の蛋白産物を生成する。しかし、当業者であれば、特定の実施形態では、生成期の間に、細胞が増殖を続け、数が増加する場合があることを理解するであろう。この期の間では、バイオリアクターの環境を、細胞が生産的となる可能性がより高い条件で制御する。例えば、温度を、一般に、増殖期の温度とは異なる温度に保ち、これは、蛋白産物の生成の助けとなる温度、例えば、31℃である。生成工程を通して、細胞が必要とすると思われる栄養素および補助剤を含有する生育培地を、細胞に与えることができる。例えば、特定の場合、細胞が枯渇させたまたは代謝した栄養素またはその他の培地の成分を、それに続く生成期の間に細胞培養物に補足することが有益または必要な場合がある。非限定的な例として、ホルモンおよび/またはその他の増殖因子、(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸等の)特定のイオン、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、またはグルコースもしくはその他のエネルギー源を、細胞培養物に補足することが有益または必要な場合がある。これらの補助的な成分の全部を、一度に細胞培養物に添加してもよいし、複数回に分けて細胞培養物に添加してもよい。特定の実施形態では、抗老化性の化合物を、生成期の間の1回または複数の時点で、生育培地中に提供する。
【0069】
特定の実施形態によると、抗老化性の化合物、例えば、カルノシンを、生成期の間に細胞培養培地中で使用すると、接種培地中に提供しても、生育培地中に供給しても、細胞の生存率および/または特異的な蛋白の生成が増加し、したがって、生成した蛋白の全体的な収率が改善する。
【0070】
蛋白生成過程の態様を、細胞培養技術における当業者であれば決定する。とりわけ、上記で言及したものをはじめとする、播種密度、生成培養の期間、収集の間の動作条件等のパラメーターは、細胞系および細胞培養培地の関数である。したがって、当業者であれば、過度の実験をせずとも、パラメーターを決定することができる。
【0071】
増殖期の間の温度または温度範囲と同様に、主として、細胞培養物が生存可能な状態を維持する温度または温度範囲、高いレベルの蛋白を生成する温度または温度範囲、代謝老廃物の産生または蓄積を最小化する温度または温度範囲、および/またはこれらの組合せ、あるいは担当者が重要であると見なすその他の要因に基づいて、生成期の間の細胞培養の温度または温度範囲を選択するものとする。一般に、大部分の哺乳動物細胞は、約25℃から42℃の範囲内で、生存可能な状態を維持し、高いレベルの蛋白を生成するが、本開示が教示する方法は、これらの温度に限定されない。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、約25℃から35℃の範囲内で、生存可能な状態を維持し、高いレベルの蛋白を生成する。特定の実施形態では、細胞培養物は、生成期の間の1回または複数の時点において、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45℃の温度で増殖する。当業者であれば、細胞の特定の必要性および担当者の特定の生成要件によって、生成期の間に細胞が増殖するために適切な温度または温度範囲を選択することができるであろう。細胞を、担当者の必要性および細胞自体の要件によって、いずれかの長さの時間にわたって増殖させることができる。
【0072】
特定の実施形態では、回分培養または流加培養を、培養が、担当者の必要性によって決定された、1つまたは複数の適切な培養条件に到達した場合に終了する。特定の実施形態では、回分培養または流加培養を、発現した蛋白が十分に高いタイターに達した場合、細胞密度が十分に高いレベルに達した場合、発現した蛋白が十分に高い細胞密度に達した場合、および/または代謝老廃物(例えば、乳酸および/またはアンモニウム)の望ましくない産生もしくは蓄積を抑制するために終了する。当業者であれば、実験的、商業的および/またはその他の観点に基づいて、いつ回分培養または流加培養を終了すべきかを決定するために使用することができる、その他の適切な培養条件が分かるであろう。
【0073】
特定の実施形態では、生成工程に続いて、蛋白産物を、細胞培養培地から回収し、さらに、従来の分離の技法を使用して単離する。例えば、初めに、蛋白を遠心分離によって分離し、蛋白を含有する上清を得ることができる。それに加えてまたはそれに代わって、蛋白産物を、宿主細胞の表面に結合させることができる。そのような実施形態では、精製過程の第1の工程として、培地を除去し、蛋白を発現している宿主細胞を溶解する。宿主の哺乳動物細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的な破壊および高いpH条件への暴露をはじめとする、当業者に知られている多数の手段によって達成することができる。
【0074】
従来の蛋白精製方法を使用して、蛋白を、さらに単離することができる。所望の蛋白産物を単離および精製するための方法は、細胞培養技術において知られている。特異的な方法は、使用する細胞系および求める産物によって異なる。
【0075】
抗老化性の化合物、例えば、カルノシンを、特異的な細胞培養の過程にとって最適な時点で培地に添加することができる。手近な例として、増殖期が実質的に完了した後で、移行期にあるときに、カルノシンを添加する。添加する間に、細胞培養培地は、温度のシフトの結果生じた新しい温度に適応しつつある。移行期は、一般に、薬剤を添加して、生成期の開始を支援する時期である。しかし、カルノシンは、増殖期および生成期をはじめとする、最適な結果を得る生成工程の間のいずれの時点で加えてもよい。また、カルノシンを、生育培地等のその他の成分と組み合わせて添加することもできる。特定の実施形態では、抗老化性の化合物が、接種培地中に提供され、細胞培養の全過程の間、細胞培養物中に存在する。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物を、細胞培養培地中に提供する。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物が、接種培地中に提供され、細胞培養の全過程の間、細胞培養物中に存在する。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物が提供され、1種の抗老化性の化合物は、接種培地中に提供され、細胞培養の全過程の間、細胞培養物中に存在し、もう1種の抗老化性の化合物は、細胞培養が始まってから提供される。
【0076】
特定の実施形態では、細胞系および産物が異なれば、細胞培養物中に存在する抗老化性の化合物の濃度も異なる。特定の実施形態では、細胞系および産物が異なれば、存在するカルノシンの濃度も異なる。一般的に、濃度は、生産性および品質を増強するのに十分であるが、毒性効果を示さない。手近な例では、範囲として、これらに限定されないが、5mMから100mMが挙げられる。使用するカルノシンの濃度は、細胞培養培地によって異なることが理解されるであろう。特定の細胞系についてのカルノシンの適切な濃度を、従来の方法を使用して、日常的な、例えば、2Lのバイオリアクター等の小規模の実験を用いて決定する必要がある場合がある。当業者であれば、過度の実験をせずとも、当技術分野で既知の細胞培養の技法および診断方法を使用して、カルノシンまたはその他の抗老化性の化合物の有利または最適な濃度を決定することができるであろう。
【0077】
化学薬剤ではなく、カルノシンまたは別の抗老化性の化合物を添加する1つの利点は、生存率に対する効果である。通常、酪酸ナトリウムのような化学薬剤を添加すると、細胞の増殖が止まり、生細胞数が減少する(Kimら、Biotechnol Bioeng,71:184−193,184)。しかし、以下の実施例は、カルノシンを細胞培養培地に添加すると、収集時において、カルノシン等の抗老化性の化合物の非存在下で増殖させた細胞培養物中で観察される生存率よりも高い生存率を得ることを実証している。さらに、そのようなカルノシン含有細胞培養物は、特異的な生産性の増加も示す。細胞の生存率および特異的な生産性に対する正の効果によって、全体的な収率が向上する。
【0078】
別の利点は、カルノシン等の抗老化性の化合物は、高分子量の凝集体の量および/または酸性の種の数を減少させることである。高分子量の凝集体および酸性の種の量が減少すると、蛋白産物の精製が簡素化される。蛋白のより効率的な単離が可能になると、蛋白産物の生成コストが減少する。特定の実施形態では、カルノシン以外の抗老化性の化合物を使用して、高分子量の凝集体および/または酸性の種の量を減少させる。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物を使用して、高分子量の凝集体および/または酸性の種の量を減少させる。
【0079】
特定の実施形態では、それぞれが2005年8月25日に出願されており、それぞれの全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、米国特許出願第11/213308号、第11/213317号および第11/213633号に記載されている細胞培養法のうちのいずれかに従って、細胞を増殖させる。例えば、特定の実施形態では、累積アミノ酸の濃度が約70mM超である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積グルタミンの累積アスパラギンに対するモル比が、約2未満である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積グルタミンの累積全アミノ酸に対するモル比が、約0.2未満である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積無機イオンの累積全アミノ酸に対するモル比が、約0.4と約1との間である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積グルタミン濃度と累積アスパラギン濃度との合計が、約16mMと約36mMの間である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、前述の培地条件のうちの2つ、3つ、4つまたは5つの全てを有する培地中で、細胞を増殖させることができる。そのような培地を使用すると、高いレベルの蛋白の生成が可能になり、アンモニウムおよび/または乳酸等の特定の望ましくない要因の蓄積が減少する。
【0080】
いくつかの実施形態では、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、2006年7月13日出願の米国仮特許出願第60/830658号に記載されている1つまたは複数の条件下で、細胞を増殖させる。例えば、いくつかの実施形態では、マンガンを約10nMと約600nMとの間の濃度で含有する培地中で、細胞を増殖させる。いくつかの実施形態では、マンガンを約20nMと約100nMとの間の濃度で含有する培地中で、細胞を増殖させる。いくつかの実施形態では、マンガンを約40nMの濃度で含有する培地中で、細胞を増殖させる。糖蛋白を増やす場合にそのような培地を使用すると、改善されたグリコシル化のパターン(例えば、1本または複数のオリゴ糖鎖中のより多くの数の共有結合した糖残基)を有する糖蛋白の生成をもたらす。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、本発明の1つまたは複数の方法に従って生成した蛋白は、薬理学的な活性を有し、医薬品の調製に有用であろう。本発明の1つまたは複数の方法に従って生成した蛋白を、対象に投与することができ、またはこれらに限定されないが、非経口(例えば、静脈内)、皮内、皮下、経口、経鼻、気管支、眼、経皮(局所)、経粘膜、直腸および膣の経路をはじめとするいずれかの利用可能な経路によるデリバリーのために、最初に製剤化することができる。発明の医薬組成物は、通常、哺乳動物細胞系から発現した精製蛋白、薬学的に許容される担体と組み合わせたデリバリーのための薬剤(すなわち、上記で記載した、カチオン性ポリマー、ペプチド分子トランスポーター、界面活性物質等)を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という言葉は、医薬品の投与に適合する溶媒、分散媒体、被膜、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、ならびにその他を含む。また、補助的な、活性のある化合物も組成物中に組み入れることができる。
【0082】
医薬組成物を、その意図する投与経路に適合するように製剤化する。そのような製剤は、当業者に知られている。特定の実施形態では、本発明に従って生成した蛋白を、経口剤型および/または非経口剤型に製剤化する。特定の実施形態では、投与の簡素化および投与量の均一性のために、そのような経口剤型および/または非経口剤型を、単位剤型として製剤化し、各単位は、必要な薬学的担体と共同して所望の治療効果をもたらすように計算された、活性のある蛋白の所定の量を含有する。当業者であれば、本発明に従って生成した蛋白に適した単位製剤が分かるであろう。
【0083】
特定の実施形態および態様を、上記で詳細に議論している。本開示を、以下の非限定的な実施例によってさらに例示する。しかし、当業者であれば、これらの実施形態の種々の改変例が、添付の特許請求の範囲内であることを理解するであろう。カルノシンおよび/またはその他の抗老化性の化合物の添加は、その他の哺乳動物細胞培養物および蛋白産物にも等しく適用できることに留意されたい。本発明の範囲を定義するのは、特許請求の範囲およびその等価物であり、本発明の範囲は、特定の実施形態の本記載に限定されることもなければ、特定の実施形態の本記載によって限定されることもなく、かつそのようなことがあってはならない。
【実施例】
【0084】
実施例1
培養皿の規模でのカルノシンの実験
1Lの作業容量を有するバイオリアクター中で、MYO−29細胞系を無血清生成培地中で培養し、第4日に、温度を37℃から31℃にシフトさせた。バイオリアクターのpHを7.00に保ち、溶存酸素は30%空気飽和であった。次いで、第4、7および10日に、細胞培養培地をバイオリアクターから取り出し、8mlの作業容量を有する培養皿中に入れ、31℃のインキュベーター内に置いて、第12日まで、培養皿を培養した。第5および第7日に、細胞に生育培地を補足した。第5日に、10%(v/v)の生育培地を細胞培養に添加し、第7日に、5%(v/v)の生育培地を細胞培養に添加した。第4、7および10日のそれぞれに、10mMのカルノシンを皿に添加し、第12日に、細胞培養培地を収集した。
【0085】
図1aは、第7日における、カルノシン添加の、培養の酸性のピーク量に対する効果を示す。図1bは、培養第7日における、カルノシンの高分子量の凝集体に対する効果を示す。図1cは、カルノシン添加の酸性のピークに対する効果を、第4日と第7日と第10日とで比較して示す。図1dは、高分子量の凝集体について、同じ実験を行った結果を示す。全体的に見て、カルノシンは、培養皿中の酸性のピークおよび高分子量の凝集体の両方を減少させることによって、正の効果を有した。
【0086】
実施例2
カルノシン添加の細胞培養培地に対する効果
無血清接種培地中のMYO−29細胞系の1Lの作業容量を用いて、5つのバイオリアクターに、0.9×106細胞/mlを接種した。14日間の工程の第3、5、7および12日に、全てのバイオリアクターに、5%(v/v)の生育培地を与えた。第10日に、対照のバイオリアクターのうちの2つおよびカルノシンを含有する1つのバイオリアクターに、5%(v/v)の生育培地を添加した。バイオリアクターの条件を、温度は37℃、pHは7.00、および溶存酸素レベルは30%空気飽和に保った。攪拌速度は、200rpmであり、散布ガスは、空気と7%二酸化炭素との組合せを有した。
【0087】
全ての細胞を、4日間培養し、その時点で、バイオリアクターのうちの2つに、20mMのカルノシンを添加し、対照には、カルノシンを添加せず、第4日には、また、全てのバイオリアクターの温度を31℃にシフトさせた。生成工程の第14日に、バイオリアクターを収集した。工程を通して、試料を取り出して、細胞培養培地の進行をモニターした。対照は、期待通りに振舞った。
【0088】
図2aは、日々の生細胞密度を示す。図2bは、カルノシンを有するバイオリアクターの日々の細胞の生存率が、収集された時点では、カルノシンを有しない2つのバイオリアクターと比較して、より高かったことを示す。図2cは、バイオリアクターの日々のタイターを示し、カルノシンが存在する2つのバイオリアクターが、収集時点では、より高いタイターを有したことを示す。図2dに示すように、カルノシンを有する培養物は、より良好な累積の特異的な細胞の生産性を有した。図2eは、高分子量の凝集体の量を示し、カルノシンが存在するバイオリアクター中の高分子量の凝集体の減少を示す。
【0089】
実施例3
カルノシン添加の異なる濃度の効果
無血清接種培地中のMYO−29細胞系の1Lの作業容量を用いて、4つのバイオリアクターに、0.4×106細胞/mlを接種した。14日間の工程の第7日に、全てのバイオリアクターに、5%(v/v)の生育培地を与えた。バイオリアクターの条件を、温度は37℃、pHは7.00、および溶存酸素レベルは30%空気飽和に保った。攪拌速度は、200rpmであり、散布ガスは、空気と7%二酸化炭素との組合せを有した。
【0090】
全ての細胞を、4日間培養し、その時点で、全てのバイオリアクターの温度を31℃にシフトさせた。第4日には、また、1つのバイオリアクターに20mMのカルノシンを添加し、第2のバイオリアクターに40mMのカルノシンを添加し、対照にはカルノシンを全く添加しなかった。生成工程の第12日に、全てのバイオリアクターを収集した。工程を通して、試料を取り出して、細胞培養培地の進行をモニターした。1つの対照が以前に見られたより若干低い日々の生存率を有した以外は、一般的に、対照は期待通りに振舞った。
【0091】
図3aは、日々の生細胞密度を示す。40mMのカルノシンを有するバイオリアクター以外は、異なるバイオリアクターで、かなり類似している。図3bは、カルノシンを有するバイオリアクターの日々の細胞の生存率が、収集された時点では、カルノシンを有しない2つの対照のバイオリアクターと比較して、より高かったことを示す。図3cは、日々のタイターを示す。カルノシンを添加したバイオリアクターおよび対照のうちの1つが類似した。40mMのカルノシンを有するバイオリアクターは、より高い累積の特異的な細胞の生産性を有した。(図3d)。図3eは、高分子量の凝集体の量を示す。全体的に見て、カルノシンを添加した場合、対照と比較して、高分子量の凝集体が減少した。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態を、本明細書に記載してきたが、上記の記載は、単に例示的なものに過ぎない。本明細書に開示した実施形態のさらなる改変例を、細胞培養技術における当業者であればもたらすことができるであろう。そのような改変例の全てを、添付の特許請求の範囲が定義する実施形態の範囲の内に属するものと見なす。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1a】MYO−29について、カルノシンの酸性のピークに対する効果を示すグラフである。
【図1b】カルノシンの高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【図1c】異なる日のカルノシン添加の酸性のピークに対する効果を示すグラフである。
【図1d】異なる日のカルノシン添加の高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【図2a】カルノシンの日々の生細胞密度に対する効果を示すグラフである。
【図2b】カルノシンの日々の細胞の生存率に対する効果を示すグラフである。
【図2c】カルノシンの日々のタイターに対する効果を示すグラフである。
【図2d】カルノシンの累積の特異的な細胞の生産性に対する効果を示すグラフである。
【図2e】カルノシンの高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【図3a】カルノシンの異なる濃度の生細胞密度に対する効果を示すグラフである。
【図3b】カルノシンの異なる濃度の日々の細胞の生存率に対する効果を示すグラフである。
【図3c】カルノシンの異なる濃度の日々のタイターに対する効果を示すグラフである。
【図3d】カルノシンの異なる濃度の累積の特異的な細胞の生産性に対する効果を示すグラフである。
【図3e】カルノシンの異なる濃度の高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、2005年10月24日出願の米国仮特許出願第60/729573号に関して、同時係属中であり、少なくとも1人の共通の発明者を共有し、優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般的に、哺乳動物細胞培養における蛋白の生成に関する。特に、本開示は、哺乳動物細胞を、抗老化性の化合物、例えば、カルノシンの存在下で培養して、優れた品質に加えて、生存率を維持し、生産性を高めることに関する。細胞培養によって、多くの蛋白産物が生成されている。ハイブリドーマが生成するモノクローナル抗体等、これらの産物を、治療、研究またはその他の応用例に使用することができる。動物細胞、特に、哺乳動物細胞を使用して蛋白を生成することが多い。残念ながら、動物細胞を使用すると、生成過程が、時間も費用もかかるものになってしまう。
【背景技術】
【0003】
化学薬剤の細胞培養培地への添加は、細胞を誘導して産物を生成させることによって細胞の生産性を高めることができ、したがって、全体的な収率が向上する。使用する最適な薬剤は、所望の蛋白産物および細胞型をはじめとする、多くの要因によって異なる。また、同様の要因が、選択した添加薬剤の量および薬剤を細胞培養培地に添加する時期にも影響を及ぼす。薬剤の例は、アルカン酸もしくは塩、尿素誘導体、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。酪酸ナトリウム等の化学薬剤は、蛋白生成に対して多様な効果を有することができる。薬剤の添加によって、細胞の特異的な生産性を高めることができるが、また、細胞毒性効果もあり、細胞の増殖および生存率を抑制する場合もある。
【0004】
細胞が蛋白を生成する場合、通常、蛋白は、細胞培養培地中に分泌される。しかし、特異的な蛋白が、培地中の唯一の物体ではなく、高分子量の凝集体、酸性の種およびその他の物質もまた培地中に存在することが多く、これらによって、精製過程により多くの労力および費用がかかるようになる場合がある。産物の品質を改善するための技法および方法が利用でき、より効率的な蛋白の精製が可能であり、とりわけ、バイオリアクターの条件を変化させるものまたは異なる細胞系を使用するものが挙げられる。しかし、それでもなお、蛋白生成の分野においては、改善された精製過程をもたらす技法および方法が依然として求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、求められているのは、細胞培養培地に添加して、高い細胞の生存率を維持しつつ、目的の蛋白の発現を増強することができる化学薬剤である。さらに求められているのは、細胞培養培地中の高分子量の凝集体および酸性の種の量を減少させることによって、蛋白産物の品質を高める薬剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の実施形態では、本開示は、蛋白産物の生成を増強するための過程に関する。例えば、特定の実施形態では、本発明は、目的の蛋白を発現する宿主細胞を、抗老化性の化合物を含む培地中で培養する方法を提供し、それによって、目的の蛋白の全体的な生成が増強される。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物は、カルノシンを含む。
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、目的の蛋白の生成を増強する組成物を提供する。例えば、特定の実施形態では、本発明は、宿主細胞中で発現する目的の蛋白の生成を増強する抗老化性の化合物を含む細胞培養培地を提供する。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物は、カルノシンを含む。特定の実施形態では、遺伝子操作した宿主細胞を、接種培地と組み合わせて、細胞培養培地を形成し、これを、バイオリアクター中で増殖させる。生産性を高めるためおよび/または生存率を維持するために、所望の蛋白産物の生成工程の間に、バイオリアクターの条件を変化させることおよび/または補助剤を添加することができる。補助剤は、生育培地および/または1種または複数の添加剤、例えば、本開示においては、カルノシンおよび/またはその他の抗老化性の化合物を含むことができる。
【0008】
宿主の哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、バイオリアクター中での生成工程が終わりに近づくと、生存率の低下を経験する場合がある。カルノシンおよびその類似体等の抗老化性の薬剤の細胞培養培地への添加が、蛋白を収集するまで、生細胞の数および細胞の生存率を高値で維持するのに役立つことが発見されている。
【0009】
その上、生成工程の増殖期の後および/または生成期の間に温度を変化させる等、生産性を高めるための方法を、本発明に従って使用することもできる。一例に過ぎないが、蛋白産物、特異的には、増殖分化因子−8(GDF−8)に対する抗体の生成の間に、温度を低温にシフトさせると、生産性を開始させ、向上させるのに役立った。特定の実施形態では、カルノシン等の抗老化性の化合物の添加は、細胞培養の生産性を高めるのに役立つ。特定の実施形態では、そのような温度のシフトの前、間および/または後に、抗老化性の化合物を添加することができる。
【0010】
また、カルノシン等の抗老化性の化合物の細胞培養培地への添加が、蛋白産物の全体的な品質を高めることも発見されている。蛋白の生成の間には、高分子量の凝集体が、その他の不要な種と共に、細胞培養培地中に存在する。カルノシンの添加によって、高分子量の凝集体の量が減少し、産物の品質が高まる。特定の実施形態では、カルノシン以外の抗老化性の化合物の添加によって、そのような高分子量の凝集体の蓄積が減少し、産物の品質が改善される。特定の実施形態では、カルノシンを、1種または複数の追加の抗老化性の化合物と組み合わせて添加する。
【0011】
細胞培養培地に添加する抗老化性の化合物(例えば、カルノシン)の濃度が、例えば、とりわけ、細胞型、所望の産物およびバイオリアクターの条件をはじめとする、過程の多くの要因によって異なることができる。また、カルノシンを、その類似体であるアセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリンおよびβ−アラニンで代用することもできる。特定の実施形態では、カルノシンを、1種または複数のその他の抗老化性の化合物と組み合わせて提供する。特定の実施形態では、細胞培養培地中の抗老化性の薬剤(例えば、カルノシン)の濃度は、約5mMから約100mMである。特定の実施形態では、濃度は、約10mMから約40mMである。特定の実施形態では、濃度は、約20mMである。
【0012】
蛋白の生成過程において、いずれかの適切な培養の手順および接種培地を使用して、細胞を培養することができる。血清培地および無血清培地の両方を使用することができる。その上、培養方法を使用して、特異的な細胞型および蛋白産物に適した細胞を培養することもできる。そのような手順は、細胞培養技術における当業者には、既知であり、理解されている。
【0013】
本開示のその他の特色および利点が、以下の記載および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0014】
定義
長年の慣習に従って、特許請求の範囲も含めて、本出願で使用する場合、「a」および「an」は、「1つまたは複数(「one or more」)」を意味する。本発明は、ある程度の特殊性をもって記載されているが、本開示に照らして、多くの代替例、改変例および変形例が、当業者には明らかであろうことが明白である。したがって、そのような代替例、改変例および変形例の全てが、本発明の精神および範囲の内であり、定義する特許請求の範囲によって包含されるものとする。
【0015】
本明細書で使用する場合、「抗老化性の化合物」という用語は、細胞培養物に添加すると、そこで増殖する細胞の生存率、増殖および/または寿命を促進するいずれかの薬剤または化合物を指す。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物を細胞培養に使用すると、抗老化性の化合物を欠く以外は同一の培養条件下で観察されるであろう場合と比較して、タイターが増加し、細胞の特異的な生産性が高まり、細胞の生存率が上昇し、生細胞の集積密度が増加し、高分子量の凝集体の蓄積が減少し、かつ/または酸性の種の蓄積が減少する。本発明の方法および組成物に従って使用することができる抗老化性の化合物の非限定的な例として、カルノシン、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリンおよびβ−アラニンが挙げられる。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物を、本発明の方法および組成物に従って使用することができる。
【0016】
「宿主細胞」という表現は、遺伝子操作することができる細胞ならびに/または細胞培養培地中で増殖および生存できる細胞を指す。通常、細胞は、内因性または異種性の目的の蛋白を大量に発現することができ、かつ蛋白を、保有することができるか、または細胞培養培地中へ分泌することができるかのいずれかである。
【0017】
宿主細胞は、通常、「哺乳動物細胞」であり、これは、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓(293)細胞、アカゲザル胎仔正常二倍体(FRhL−2)細胞およびマウス骨髄腫(例えば、SP2/0およびNS0)細胞をはじめとする、脊椎動物細胞の非限定的な例を含む。当業者であれば、本発明の方法および組成物に従って使用することができるその他の宿主細胞が分かるであろう。
【0018】
「細胞培養培地」という用語は、細胞が増殖し、所望の蛋白を生成することができる条件下で、細胞の生存を支持する栄養素を含有する溶液を指す。「接種培地(「inoculation medium」または「inoculum medium」)」という表現は、細胞の培養を開始する、栄養素を含有する溶液または物質を指す。特定の実施形態では、「生育培地」が、接種培地と同様の栄養素を含有するが、これは、培養開始後に細胞に与える溶液または物質である。特定の実施形態では、生育培地は、接種培地には存在しない、1種または複数の成分を含有する。特定の実施形態では、生育培地は、接種培地には存在する、1種または複数の成分を欠く。細胞培養技術における当業者であれば、過度の実験をせずとも、どの成分が接種培地および生育培地を構成するかを知るであろう。通常、これらの溶液は、細胞が増殖および生存のために必要とする必須および非必須のアミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、ならびに微量元素を提供する。特定の実施形態では、接種培地、生育培地またはその両方が抗老化性の化合物を含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、「細胞培養の特徴」という用語は、細胞培養物の観察可能および/または測定可能な特徴を指す。本発明の方法および組成物を、1つまたは複数の細胞培養の特徴を改善するために、有利に使用する。特定の実施形態では、細胞培養の特徴の改善は、細胞培養の特徴の大きさの増加を含む。特定の実施形態では、細胞培養の特徴の改善は、細胞培養の特徴の大きさの減少を含む。非限定的な例として、細胞培養の特徴は、タイター、細胞の特異的な生産性、細胞の生存率、生細胞の集積密度、高分子量の凝集体の蓄積および/または酸性の種の蓄積であることができる。当業者であれば、本発明の方法および組成物を使用して改善することができる、その他の細胞培養の特徴が分かるであろう。
【0020】
本明細書で使用する場合、「既知組成培地」という用語は、培地の組成が既知でありかつ制御されている培地を指す。既知組成培地は、血清または加水分解産物等、未知および/または未制御の成分を含有する複合添加物を含有しない。
【0021】
本明細書で使用する場合、「複合培地」という用語は、身元または量のいずれかが未知または未制御である、少なくとも1種の成分を含有する培地を指す。
【0022】
「細胞系」という表現は、一般に、目的の蛋白を発現する初代の宿主細胞を指す。いくつかの実施形態では、所望の蛋白をコードするおよび/または内因性にしても異種性にしても、連結している配列の発現を活性化する調節配列を含有する外因性のDNAを細胞に形質移入している。特定の実施形態では、そのような遺伝子改変細胞に由来する細胞が、細胞系を形成し、細胞培養培地中に置かれて、増殖し、蛋白産物を生成する。特定の実施形態では、細胞系は、外因性のDNAが形質移入されておらず、内因性の目的の蛋白を発現する初代の宿主細胞を含む。
【0023】
細胞培養培地の「増殖期」とは、細胞が、急速に分裂し、指数関数的にまたはほとんど指数関数的に増殖する期間を指す。通常、細胞を、細胞の増殖のために最適化した条件で、一般的に、1〜4日間培養する。増殖期の条件は、約35℃から42℃、一般的に、約37℃の温度を含むことができる。増殖期の長さおよび増殖期中の培養条件は、異なることができ、細胞培養技術における当業者には、一般的に知られている。特定の実施形態では、増殖期の細胞培養培地を、生育培地で補足する。
【0024】
「移行期」が、細胞培養培地を、増殖期に適応した条件から、生成期に適応した条件へシフトさせている期間の間に生じる。移行期の間は、とりわけ、温度のような要因を変化させることが多い。特定の実施形態では、移行期の細胞培養培地を、生育培地で補足する。
【0025】
「生成期」は、増殖期および移行期の両方の後に生じる。細胞の指数関数的な増殖が終わり、蛋白の生成が主要な目的となる。細胞培養培地を補足して、生成を開始させることができる。特定の実施形態では、生成期の細胞培養培地を、生育培地で補足する。その上、生成期の間は、細胞培養培地の温度を、一般的に、増殖期の間よりも下げることができ、これによって、通常、生成を奨励する。生成期は、所望のエンドポイントに到達するまで続く。
【0026】
「生細胞の密度」という表現は、特定の容量、一般的に、1mlあたりの細胞培養培地中で生存している細胞の全数を指す。「細胞の生存率」という表現は、死細胞および生きている細胞の両方の細胞の全数に対する生きている細胞の数を指し、パーセントとして表す。
【0027】
「生細胞の集積密度」、「IVCD」:本明細書で使用する場合、「生細胞の集積密度」または「IVCD」という用語は、培養が進行する間の生細胞の平均密度に、培養工程時間の長さを乗じたものを指す。生成する蛋白の量が、培養が進行する間に存在する生細胞の数に比例する場合には、生細胞の集積密度は、培養が進行する間に生成する蛋白の量を推定するための有用な道具になる。
【0028】
「高分子量の凝集体」という用語は、一般的に、間違って折り畳まれた蛋白または少なくとも2つのポリペプチドの不適切な会合を指す。会合は、これらに限定されないが、共有結合、非共有結合、ジスルフィド結合または非還元性の架橋結合をはじめとする、いずれかの方法によって生じる場合がある。特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を、高分子量の凝集体の蓄積を減少させるために、有利に使用する。
【0029】
「抗酸化剤」という表現は、脂質、蛋白、DNAおよびその他の必須の巨大分子に対する酸化的な損傷を、フリーラジカルを封鎖することによって抑制することができる化合物を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つ、典型的には2つのVHドメインもしくはその一部、および/または少なくとも1つ、典型的には2つのVLドメインもしくはその一部を含む蛋白を含む。特定の実施形態では、抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖からなる四量体であり、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖とが、例えば、ジスルフィド結合によって、相互接続している。抗体またはその一部を、これらに限定されないが、げっ歯類、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒトの霊長類)、ラクダ科をはじめとする、いずれかの起源から得ることができ、さらに、本明細書でより詳細に記載するように、組換えによって、例えば、キメラ抗体もしくはヒト化抗体として生成することもでき、かつ/またはin vitroで作製することもできる。
【0031】
抗体の「抗原結合断片」という用語の範囲内に包含される結合断片の例として、これらに限定されないが、(i)Fab断片、すなわち、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、すなわち、ヒンジ領域においてジスルフィド橋によって連結されている2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;(v)dAb断片、これは、VHドメインからなる;(vi)ラクダまたはラクダ化の可変ドメイン;(vii)単鎖Fv(scFv);(viii)二重特異性抗体;ならびに(ix)Fc領域に融合した、免疫グロブリン分子の1つまたは複数の断片が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子がコードするが、組換えの方法を使用して、合成リンカーによって、それらをつなぎ合わせることができる。この合成リンカーによって、それらのドメインを単一の蛋白鎖として作製することができ、そこでは、VL領域とVH領域とが対になって一価の分子を形成している(これは、単鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Birdら、(1988)Science 242:423−26;Hustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879−83を参照)。そのような単鎖の抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語の範囲内に包含されるものとする。これらの断片を、当業者に知られる従来の技法を使用して得ることができ、完全な状態の抗体の場合と同じように、それらの断片の機能を評価する。
【0032】
「抗原結合断片」は、所望により、1種もしくは複数のエフェクター細胞の、例えば、安定性の機能または補体結合反応を増強する部分をさらに含むことができる。例えば、抗原結合断片は、ペグ化部分、アルブミン、または重鎖および/または軽鎖の定常部をさらに含むこともできる。
【0033】
「二重特異性」または「二機能性」の抗体を除き、抗体は、その各結合部位が全く同一であると理解されている。「二重特異性」または「二機能性」の抗体は、異なる重鎖/軽鎖の対を2つおよび2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体を、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結をはじめとする、多様な方法によって生成することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547−1553(1992)を参照されたい。
【0034】
抗体またはそれらの抗原結合断片を得るために、当業者に知られている多数の方法を利用することができる。例えば、モノクローナル抗体を、既知の方法に従ってハイブリドーマを作製することによって生成することができる。このようにして形成したハイブリドーマを、通常、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)および表面プラズモン共鳴(Biacore(商標))分析法等の標準的な方法を使用してスクリーニングして、特異抗原と特異的に結合する抗体を生成する、1種または複数のハイブリドーマを同定する。いずれかの形態の特異抗原、例えば、組換え抗原、自然に存在する形態、それらの任意の変異体または断片、およびそれらの抗原性ペプチドを、免疫原として使用することができる。
【0035】
抗体を作製する1つの例示的な方法として、蛋白発現ライブラリー、例えば、ファージまたはリボゾームのディスプレイライブラリーのスクリーニングが挙げられる。ファージディスプレは、例えば、Ladnerら、米国特許第5223409号;Smith(1985)Science 228:1315−1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;およびWO90/02809に記載されている。
【0036】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特異抗原を使用して、非ヒト動物、例えば、げっ歯類、具体的には、マウス、ハムスターまたはラットを免疫化することができる。特定の実施形態では、非ヒト動物は、少なくともヒト免疫グロブリン遺伝子の一部を含む。例えば、マウス抗体の産生を欠損したマウスの系統を、ヒトIg座位の大きな断片を用いて操作することができる。ハイブリドーマの技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を生成し、選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics 7:13−21、US2003−0070185;WO96/34096、1996年10月31日公開;およびPCT出願番号PCT/US96/05928、1996年4月29日出願を参照されたい。
【0037】
特定の実施形態では、モノクローナル抗体を、非ヒト動物から得、次いで、当技術分野で既知の組換えDNA技法を使用して、改変する、例えば、ヒト化、非免疫化、キメラ化することができる。キメラ抗体を作製するための多様なアプローチが記載されている。例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851,1985;Takedaら、Nature 314:452,1985;Cabillyら、米国特許第4816567号;Bossら、米国特許第4816397号;Tanaguchiら、欧州特許公開第171496号;欧州特許公開第0173494号;英国特許第2177096B号を参照されたい。また、ヒト化抗体を、例えば、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現するが、内因性のマウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを使用して生成することもできる。Winterは、本明細書に記載するヒト化抗体を調製するために使用することができる例示的なCDR−移植法を記載している(米国特許第5225539号)。特定のヒト抗体のCDRの全部を、少なくとも一部の非ヒトCDRで置換する、またはCDRを、一部に限って非ヒトCDRで置換することができる。ヒト化抗体が所定の抗原に結合するのに要求される数のCDRを置換することだけが必要である。
【0038】
抗原結合に直接関与しないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインからの同等の配列で置換することによって、ヒト化抗体またはその断片を作製することができる。ヒト化抗体またはその断片を作製する例示的な方法が、Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら、(1986)BioTechniques 4:214;ならびにUS5,585,089;US5,693,761;US5,693,762;US5,859,205;およびUS6,407,213によって提供されている。そのような方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つからの免疫グロブリンFv可変ドメインの全部または一部をコードする核酸配列を単離するステップと、操作するステップと、発現させるステップとを含む。そのような核酸を、上記に記載したように、所定の標的に対して抗体を産生するハイブリドーマから、およびその他の源から得ることができる。次いで、ヒト化抗体分子をコードする組換えDNAを、適切な発現ベクター内にクローン化することができる。
【0039】
特定の実施形態では、ヒト化抗体を、保存的置換、コンセンサス配列置換、胚細胞系置換および/または逆突然変異の導入によって最適化する。そのような変化させた免疫グロブリン分子を、当技術分野で既知のいくつかの技法(例えば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308−7312,1983;Kozborら、Immunology Today,4:7279,1983;Olssonら、Meth.Enzymol.,92:3−16,1982)のいずれかによって作製することができ、PCT公開WO92/06193号または第EP 0239400号の教示に従って作製することができる。
【0040】
また、抗体またはその断片を、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失、またはWO98/52976号およびWO00/34317号に開示されている方法による「非免疫化」によって改変することもできる。手短にいうと、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインを、MHCクラスIIに結合するペプチドについて分析することができる。これらのペプチドは、(WO98/52976およびWO00/34317で定義されている)有望なT細胞エピトープに相当する。有望なT細胞エピトープの検出のために、「ペプチド縫糸法」と呼ばれるコンピュータモデリングのアプローチを適用することができ、その上、WO98/52976およびWO00/34317に記載されているように、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VHおよびVLの配列に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは、18種の主要MHCクラスIIDRアロタイプのうちのいずれかに結合し、したがって、有望なT細胞エピトープを構成する。検出された有望なT細胞エピトープを、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは、単一アミノ酸置換によって排除することができる。通常、保存的置換を作製する。常ではないが、しばしば、ヒト胚細胞系抗体配列中のある位置に共通のアミノ酸を使用することができる。ヒト胚細胞系配列は、例えば、Tomlinsonら、(1992)J.Mol.Biol.227:776−798;Cook,G.P.ら、(1995)Immunol.Today Vol.16(5):237−242;Chothia,D.ら、(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;およびTomlinsonら、(1995)EMBO J.14:4628−4638に開示されている。(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、英国が蓄積した)V BASE登録簿が、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的な登録簿として提供されている。これらの配列を、例えば、フレームワーク領域およびCDRに関するヒト配列の源として使用することができる。また、例えば、US6,300,064に記載されているヒトコンセンサスフレームワーク領域も使用することができる。
【0041】
特定の実施形態では、抗体は、変化させた免疫グロブリンの定常領域またはFc領域を含有することができる。例えば、本明細書の教示に従って生成した抗体は、補体および/またはFc受容体等のエフェクター分子により強くまたはより特異的に結合することができ、このことによって、エフェクター細胞活性、溶解、補体仲介活性、抗体の排除および抗体の半減期等の抗体のいくつかの免疫機能を制御することができる。抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体として、これらに限定されないが、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIならびにFcRnのサブクラスの受容体が挙げられ、それらには、これらの受容体の対立遺伝子の変異体および選択的スプライスによる形態が含まれる。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457−92,1991;Capelら、Immunomethods 4:25−34,1994;ならびにde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330−41,1995に概説されている。
【0042】
「バイオリアクター」という表現は、細胞培養培地を含有することができ、内部条件、例えば、pHおよび温度を培養期間の間に制御できる容器を指す。
【0043】
「流加培養法」は、まず、接種培地を有するバイオリアクター中に細胞を接種する細胞培養法を指す。次いで、生成工程を通して、1回または複数の時点で、細胞培養培地を、栄養成分および/またはその他の補助剤を含有する生育培地で補足する。
【0044】
「回分培養法」とは、生成工程全体で必要とする栄養素および補助剤の全てを有するバイオリアクター中に細胞を接種する細胞培養法を指す。生成期間を通して、細胞培養培地に栄養素を添加することはない。
【0045】
「灌流培養法」とは、回分培養法とも流加培養法とも異なる細胞培養法を指し、この場合、発現した目的の蛋白の単離および/または精製に先立って、培養を終了または必ずしも終了するわけではなく、新しい栄養素およびその他の成分を定期的または連続的に培地に添加し、この間に、発現した蛋白を定期的または連続的に収集する。添加する栄養素の組成を、細胞の必要性、最適な蛋白生成の要件および/または当業者に既知の多様なその他の要因によって、細胞培養の進行の間に変化させることができる。
【0046】
「発現」という表現は、宿主細胞内で生じる転写および翻訳を指す。発現のレベルは、一般的に、宿主細胞が生成する蛋白の量に関係する。
【0047】
「蛋白」または「蛋白産物」という表現は、アミノ酸の1本または複数の鎖を指す。本明細書で使用する場合、「蛋白」という用語は、「ポリペプチド」と同義であり、当技術分野で一般的に理解されているように、連続的なペプチド結合を介して連結しているアミノ酸の少なくとも1本の鎖を指す。特定の実施形態では、「目的の蛋白」は、宿主細胞中に形質転換されている外因性の核酸分子がコードする蛋白である。特定の実施形態では、「目的の蛋白」は、宿主細胞にとって内因性である核酸分子がコードする蛋白である。特定の実施形態では、例えば、1つまたは複数の制御配列を含有することおよび/あるいは目的の蛋白の発現を増強する蛋白をコードすることができる、外因性の核酸分子を宿主細胞に形質移入することによって、そのような内因性の目的の蛋白の発現を変化させる。本発明の方法および組成物を使用して、これらに限定されないが、治療的特性、薬学的特性、診断用特性、農業用特性および/または商業的、実験的および/またはその他の適用例において有用である多様なその他の特性のいずれかを有する蛋白をはじめとする、目的の蛋白のいずれかをも生成することができる。特定の実施形態では、本発明の方法および/または組成物を使用して生成する蛋白を、加工および/または改変することができる。例えば、本発明に従って生成した蛋白を、グリコシル化することができる。
【0048】
「細胞の特異的な生産性」およびその他は、細胞あたりの特異的な産物の発現速度を指す。細胞の特異的な生産性は、一般的に、1日あたり、106個の細胞について、生成する蛋白のマイクログラムとして、または1日あたり、106個の細胞について、生成する蛋白のピコグラムとして測定する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「タイター」という用語は、所与の量の培地の容量中で細胞培養によって生成した、組換え的に発現させた蛋白の全量を指す。タイターは、通常、培地1ミリリットルあたりの蛋白のミリグラムまたはマイクログラムの単位で表す。
【0050】
当業者であれば、本明細書に開示する方法を使用して、当技術分野で日常的に使用および培養される周知の哺乳動物細胞の多くを培養することができること、すなわち、本明細書に開示する方法は、本開示に関する使用のみに制限されないことを認識するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
カルノシン等の抗老化性の化合物を使用して、細胞培養物の生存率および生産性を改変することが発見されている。例えば、カルノシンを添加して、細胞の生存率を維持し、細胞の生産性を改善し、所望の蛋白産物の産物としての品質を改善する。カルノシンは、抗酸化剤であり、抗老化性の化合物でもあり、また、自然に存在するジペプチドであり、動物の筋肉組織および神経組織中に高いレベル(上限20mM)で存在する。抗酸化剤であることから、また、カルノシンは、フリーラジカル捕捉剤でもあり、糖化阻害剤でもある。一般に、カルノシンは、反応性の種を、非反応性の種に変換し、それによって、蛋白、DNAおよびその他の必須の巨大分子を保護する。抗老化性の化合物として、カルノシンは、培地中における20mMの濃度のヒト二倍体線維芽細胞およびヒト胎児肺(初代細胞系)の寿命を延長させることができる。本発明は、(これに限定されないが、カルノシンをはじめとする)抗老化性の化合物を細胞培養において使用して、目的の蛋白を生成することが有利であるという驚くべき知見を包含する。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物を細胞培養において使用して、目的の蛋白を生成すると、1つまたは複数の改善された細胞培養の特徴が得られ、例えば、タイターが増加し、細胞の特異的な生産性が高まり、細胞の生存率が上昇し、生細胞の集積密度が増加し、高分子量の凝集体の蓄積が減少し、かつ/または酸性の種の蓄積が減少するが、これらに限定されない。
【0052】
カルノシンは、より低いグルコースレベルを有する基礎培地(MEM、Sigma製)中では、ヒトまたはげっ歯類の形質転換細胞および腫瘍性細胞に対して細胞毒性であるが、1mMピルビン酸を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma製)中では、そうではないことが実証されている(Hollidayら、Biochemistry(Moscow),65:843−848,846)。その上、低分子量の化合物を除去した透析ウシ胎仔血清は、カルノシンの細胞毒性効果を増加させた。同一著者。また、1mMオキザロ酢酸および1mM α−ケトグルタル酸が、ピルビン酸に匹敵する効果を有することも決定されたが、これらはいずれも、カルノシンの実施例に関して使用した接種培地および生育培地の成分ではない。同一著者。しかし、ピルビン酸ナトリウムは、カルノシン添加のためではなく、むしろ、バイオリアクター系でin vivoの条件をより良好に模倣するためおよび有望な代替エネルギー源としての、0.5mMの濃度での接種培地の元々の成分である。また、接種培地は、無血清でもあり、これは、カルノシンが細胞毒性効果を有すると思われることを意味するであろう。参考文献によると、細胞培養培地へのカルノシンの添加は、HollidayにおいてMEM培地中で見られたと同様の細胞毒性効果を有すると思われる。本発明の方法および/または組成物を利用することによって、そのような細胞毒性を低下または排除し、細胞の生存率および蛋白の生成を改善する。
【0053】
特定の実施形態では、カルノシンを、細胞培養培地中に、約5mMと約100mMとの間の濃度で提供する。特定の実施形態では、カルノシンを、細胞培養培地中に、約10mMから約40mMの濃度、例えば、約20mMの濃度で提供する。特定の実施形態では、カルノシンを、細胞培養培地中に、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mMまたは100mM超の濃度で提供する。特定の実施形態では、細胞培養の過程の間の複数の時点で、例えば、1つまたは複数の生育培地中にカルノシンを添加することによって、カルノシンのそのような濃度を細胞培地中で達成する。利用するカルノシンの濃度は、とりわけ、細胞系または産物に対する求められている所望の効果をはじめとする、細胞培養培地および使用している細胞系の要因によって異なる。また、カルノシンの類似体、例えば、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリンおよびβ−アラニンも、細胞培養培地に提供して、同様の効果を得ることができる。1種または複数のこれらの類似体を、細胞培養培地に提供することができる。特定の実施形態では、そのような類似体を、カルノシンを欠く細胞培養培地に提供する。特定の実施形態では、そのような類似体を、カルノシンと組み合わせて細胞培養培地に提供する。特定の実施形態では、そのような類似体を、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mMまたは100mM超の濃度で提供する。
【0054】
特定の実施形態では、目的の蛋白を生成するために、初めに、蛋白をコードする外因性のDNAを宿主細胞に形質移入または形質転換して、形質転換細胞を供給し、この細胞は、所望の蛋白産物を構造的に生成する。特定の実施形態では、細胞に導入した核酸分子は、本発明に従って発現することが望まれる蛋白をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、制御配列を含有する、あるいは細胞による所望の蛋白の発現を誘導または増強する遺伝子産物をコードする。非限定的な例として、そのような遺伝子産物は、目的の蛋白の発現を増加させる転写因子であることができる。
【0055】
特定の実施形態では、蛋白の発現を導く核酸を、宿主細胞内に安定に導入する。特定の実施形態では、蛋白の発現を導く核酸を、宿主細胞内に一過性に導入する。当業者であれば、実験的、商業的またはその他の必要性に基づいて、核酸を細胞内に安定または一過性のいずれかの状態で導入すべきかを選ぶことができるであろう。
【0056】
目的の蛋白をコードする遺伝子を、所望により、1つまたは複数の遺伝子の制御調節領域に連結させることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子の調節領域は、蛋白の構造的な発現を導く。いくつかの実施形態では、目的の蛋白をコードする遺伝子の誘導性発現を提供する遺伝子の調節領域を使用することができる。誘導性の遺伝子の調節領域(例えば、誘導性のプロモーター)を使用すると、細胞中での蛋白の生成を調節することができる。真核細胞中で使用する場合に有用である可能性が高い誘導性の遺伝子の調節領域の非限定的な例として、ホルモン制御領域(例えば、Mader,S.およびWhite,J.H.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603−5607,1993を参照)、合成リガンド制御領域(例えば、Spencer,D.M.ら、Science 262:1019−1024,1993を参照)、および電離放射線制御領域(例えば、Manome,Y.ら、Biochemistry 32:10607−10613,1993;Datta,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10149−10153,1992を参照)が挙げられる。当技術分野で知られる、追加の細胞に特異的なまたはその他の制御系を、本明細書に記載する方法および組成物に従って使用することができる。
【0057】
細胞培養および蛋白の発現に敏感ないずれかの宿主細胞を、本発明に従って利用することができる。宿主細胞は、一般的に、哺乳動物細胞であり、より具体的には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の動物細胞である。本発明に従って使用することができる、哺乳動物細胞のその他の非限定的な例として、BALB/cマウス骨髄腫細胞系(NSO/I、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞腫(PER.C6(CruCell製、Leiden、オランダ));SV40によって形質転換したサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓系(293細胞または懸濁培養での増殖用にサブクローンした293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.,36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.,23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞癌系(Hep G2)が挙げられる。
【0058】
宿主細胞中で発現可能であるいずれかの蛋白を、本発明の方法および組成物に従って生成することができる。蛋白を、宿主細胞にとって内因性である遺伝子からまたは宿主細胞中に導入した異種性の遺伝子から発現することができる。蛋白は、自然に存在するものであってもよいし、代わりに、人工的に操作または選択した配列を有してもよい。生成しようとする蛋白を、個々に自然に発生する蛋白の断片から組み立てることができる。それに加えてまたはそれに代わって、操作した蛋白は、1つまたは複数の自然に発生しない断片を含むことができる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物を利用して、薬学的または商業的に適切な酵素、受容体、抗体、ホルモン、制御因子、抗原、結合物質等を発現させる。手近な例では、遺伝子操作した細胞が、増殖分化因子−8(GDF−8)に対する抗体を生成する。非限定的な例示的な実施形態は、Myo29、Myo28およびMyo22と呼ばれる。これらの例示的な実施形態は、ヒトIgGアイソトープの形態で提供される。開示されている非限定的な例は、MYO29を使用し、これは、「Neutralizing Antibodies Against GDF−8 and Uses Thereof」の標題の特許WO2004/037861号で保護されており、参照によって本明細書に組み入れられている。当業者であれば、本発明の方法および組成物に従って発現させることができる、その他の有用なおよび/または所望の蛋白が分かるであろう。
【0060】
細胞系を、所望の蛋白産物を生成するための多様な技法を使用して培養することができる。細胞培養は、細胞培養培地または産物の使用の目的によって、小規模または大規模で行うことができる。例えば、細胞をバイオリアクター中で増殖させることができる。特定の実施形態では、バイオリアクターの容量は、少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットルまたは12,000リットル超、あるいはこれらの間のいずれかの容量であることができる。その上、使用することができるバイオリアクターとして、これらに限定されないが、攪拌タンク型バイオリアクター、流動床式リアクター、中空糸型バイオリアクターまたはローラーボトルが挙げられる。また、系を、回分培養モード、流加培養モードまたは連続/灌流培養モードのいずれかで動作することもできる。細胞培養培地を制御およびモニターするためのバイオリアクターおよびモードは、細胞培養技術における当業者には既知であろう。手近な例では、利用する系は、攪拌タンク型バイオリアクターであり、流加培養モードで動作する。
【0061】
一般に、バイオリアクターには、接種培地および選んだ細胞系、例えば、所望の蛋白産物を安定に発現および生成するように形質移入することができるMYO−29細胞系を播種する。基礎培地(MEM、Sigma製)、Ham’s F10(Sigma製)またはダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma製)等の市販の培地を、基本培地として使用することができる。次いで、これらの基本培地を、アミノ酸、ビタミン、微量元素および/またはその他の成分で補足して、生成工程の間に使用する接種培地または生育培地を生成することができる。特定の実施形態では、カルノシンの存在下で、細胞の強力な増殖を可能にする、細胞の生存率が上昇する、細胞の生産性が高まる、生細胞の集積密度が増加する、かつ/または生成した蛋白の品質を改善するように、基本培地を変化させる。例えば、基本培地を、ピルビン酸、オキザロ酢酸および/またはα−ケトグルタル酸で補足することができる。当業者であれば、過度の実験をせずとも、本発明の方法および組成物を用いた使用に向けて、基本培地を変化させることができるであろう。
【0062】
特定の実施形態では、抗老化性の化合物を含有する、多様な、組成が化学的に既知である培地のいずれかの中で、細胞を培養する。この培地中では、培地の成分が、既知であり、かつ制御されている。例えば、既知組成培地は、通常、血清または加水分解産物等の複合添加物を含有しない。特定の実施形態では、抗老化性の化合物を含有する、多様な複合培地のいずれかの中で、細胞を培養する。この培地中では、全ての培地の成分が、既知であるかつ/または制御されているわけではない。特定の実施形態では、そのような抗老化性の化合物は、カルノシンを含む。
【0063】
バイオリアクターの条件を、通常、pHを約6.5と約7.5との間に設定して制御する。pHを、酸、一般的にCO2、または炭酸水素ナトリウム等の塩基を使用して調整する。増殖期の間は、溶存酸素を約5%と約90%との間の空気飽和に制御し、温度を30℃と42℃との間に保つ。細胞培養技術における当業者であれば、過度の実験をせずとも、利用している細胞系および方法に基づいて、バイオリアクターの条件を改変して、所望の結果を達成することができる。
【0064】
本発明の組成物および方法を、蛋白の発現に適した、いずれかの細胞培養の方法または系と共に使用することができる。例えば、目的の蛋白を発現する細胞を、回分培養法または流加培養法で増殖させることができ、蛋白が十分に発現したら、培養を終了し、その後、発現した蛋白を収集し、所望により、精製する。別法として、目的の蛋白を発現する細胞を、灌流培養法で増殖させることができ、培養を終了せず、新しい栄養素およびその他の成分を定期的または連続的に培地に添加し、この間に、発現した蛋白を定期的または連続的に収集する。
【0065】
細胞を播種すると、細胞は、増殖期を経過し、この間に、一般的に、細胞の数が指数関数的に増加する。増殖期の間は、主として、細胞培養物が生存可能な状態を維持する温度または温度範囲、高いレベルの蛋白を生成する温度または温度範囲、代謝老廃物の産生または蓄積を最小化する温度または温度範囲、および/またはこれらの組合せ、あるいは担当者が重要であると見なすその他の要因に基づいて、細胞培養の温度または温度範囲を選択するものとする。1つの非限定的な例として、CHO細胞は、約37℃で、良好に増殖し、高いレベルの蛋白を生成する。一般に、大部分の哺乳動物細胞は、約25℃から42℃の範囲内で、良好に増殖し、かつ/または高いレベルの蛋白を生成することができるが、本開示が教示する方法は、これらの温度に限定されない。特定の哺乳動物細胞は、約35℃から40℃の範囲内で、良好に増殖し、かつ/または高いレベルの蛋白を生成することができる。特定の実施形態では、細胞培養物は、増殖期の間の1回または複数の時点において、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45℃の温度で増殖する。当業者であれば、細胞の必要性および担当者の生成要件によって、細胞が増殖するために適切な温度または温度範囲を選択することができるであろう。
【0066】
増殖期に続くのは、移行期であり、この間では、細胞を、温度変化等、周囲に生じるいずれかの変化に順応させる。生じる変化は、通常、生成期のためのパラメーターである。手近な例では、第4日に、温度を約37℃から約31℃まで下げる。しかし、温度のシフトは、複数回起こすことができ、必ずしも低温にシフトさせるわけではない。さらに、移行期および温度のシフトを起こす日程は、生成工程の間のいつであってもよい。ほとんどの生成方法は、多相性の過程を含むが、カルノシンを単相性の過程で利用することもまた可能である。
【0067】
培養温度をシフトさせる場合、温度を比較的徐々にシフトさせることができる。例えば、温度変化が完了するのに数時間または数日を要する場合がある。別法として、温度を比較的急激にシフトさせることができる。温度を、培養過程の間に、間断なく上げたり、下げたりすることができる。別法として、温度を、培養過程の間の種々の時点で、別個の量だけ上げたり、下げたりすることができる。それに続く温度または温度範囲は、初期または以前の温度または温度範囲よりも、低い場合もあれば、高い場合もある。当業者であれば、複数の個別の温度のシフトが、これらの実施形態に包含されていることを理解するであろう。例えば、温度を1回(より高いまたはより低い温度または温度範囲まで)シフトさせ、特定の期間にわたり、この温度または温度範囲で細胞を維持することができ、その後、温度を、新しい温度または温度範囲に再度シフトさせることができ、これは、以前の温度または温度範囲の温度または温度範囲よりも高いまたは低いのいずれかであることができる。各個別のシフト後の培養温度は、一定であってもよいし、特定の範囲の温度内で維持されてもよい。
【0068】
最後に、生成期があり、ここでは、細胞の数は実質的に増加することはなく、むしろ、細胞が所望の蛋白産物を生成する。しかし、当業者であれば、特定の実施形態では、生成期の間に、細胞が増殖を続け、数が増加する場合があることを理解するであろう。この期の間では、バイオリアクターの環境を、細胞が生産的となる可能性がより高い条件で制御する。例えば、温度を、一般に、増殖期の温度とは異なる温度に保ち、これは、蛋白産物の生成の助けとなる温度、例えば、31℃である。生成工程を通して、細胞が必要とすると思われる栄養素および補助剤を含有する生育培地を、細胞に与えることができる。例えば、特定の場合、細胞が枯渇させたまたは代謝した栄養素またはその他の培地の成分を、それに続く生成期の間に細胞培養物に補足することが有益または必要な場合がある。非限定的な例として、ホルモンおよび/またはその他の増殖因子、(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸等の)特定のイオン、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、またはグルコースもしくはその他のエネルギー源を、細胞培養物に補足することが有益または必要な場合がある。これらの補助的な成分の全部を、一度に細胞培養物に添加してもよいし、複数回に分けて細胞培養物に添加してもよい。特定の実施形態では、抗老化性の化合物を、生成期の間の1回または複数の時点で、生育培地中に提供する。
【0069】
特定の実施形態によると、抗老化性の化合物、例えば、カルノシンを、生成期の間に細胞培養培地中で使用すると、接種培地中に提供しても、生育培地中に供給しても、細胞の生存率および/または特異的な蛋白の生成が増加し、したがって、生成した蛋白の全体的な収率が改善する。
【0070】
蛋白生成過程の態様を、細胞培養技術における当業者であれば決定する。とりわけ、上記で言及したものをはじめとする、播種密度、生成培養の期間、収集の間の動作条件等のパラメーターは、細胞系および細胞培養培地の関数である。したがって、当業者であれば、過度の実験をせずとも、パラメーターを決定することができる。
【0071】
増殖期の間の温度または温度範囲と同様に、主として、細胞培養物が生存可能な状態を維持する温度または温度範囲、高いレベルの蛋白を生成する温度または温度範囲、代謝老廃物の産生または蓄積を最小化する温度または温度範囲、および/またはこれらの組合せ、あるいは担当者が重要であると見なすその他の要因に基づいて、生成期の間の細胞培養の温度または温度範囲を選択するものとする。一般に、大部分の哺乳動物細胞は、約25℃から42℃の範囲内で、生存可能な状態を維持し、高いレベルの蛋白を生成するが、本開示が教示する方法は、これらの温度に限定されない。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、約25℃から35℃の範囲内で、生存可能な状態を維持し、高いレベルの蛋白を生成する。特定の実施形態では、細胞培養物は、生成期の間の1回または複数の時点において、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45℃の温度で増殖する。当業者であれば、細胞の特定の必要性および担当者の特定の生成要件によって、生成期の間に細胞が増殖するために適切な温度または温度範囲を選択することができるであろう。細胞を、担当者の必要性および細胞自体の要件によって、いずれかの長さの時間にわたって増殖させることができる。
【0072】
特定の実施形態では、回分培養または流加培養を、培養が、担当者の必要性によって決定された、1つまたは複数の適切な培養条件に到達した場合に終了する。特定の実施形態では、回分培養または流加培養を、発現した蛋白が十分に高いタイターに達した場合、細胞密度が十分に高いレベルに達した場合、発現した蛋白が十分に高い細胞密度に達した場合、および/または代謝老廃物(例えば、乳酸および/またはアンモニウム)の望ましくない産生もしくは蓄積を抑制するために終了する。当業者であれば、実験的、商業的および/またはその他の観点に基づいて、いつ回分培養または流加培養を終了すべきかを決定するために使用することができる、その他の適切な培養条件が分かるであろう。
【0073】
特定の実施形態では、生成工程に続いて、蛋白産物を、細胞培養培地から回収し、さらに、従来の分離の技法を使用して単離する。例えば、初めに、蛋白を遠心分離によって分離し、蛋白を含有する上清を得ることができる。それに加えてまたはそれに代わって、蛋白産物を、宿主細胞の表面に結合させることができる。そのような実施形態では、精製過程の第1の工程として、培地を除去し、蛋白を発現している宿主細胞を溶解する。宿主の哺乳動物細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的な破壊および高いpH条件への暴露をはじめとする、当業者に知られている多数の手段によって達成することができる。
【0074】
従来の蛋白精製方法を使用して、蛋白を、さらに単離することができる。所望の蛋白産物を単離および精製するための方法は、細胞培養技術において知られている。特異的な方法は、使用する細胞系および求める産物によって異なる。
【0075】
抗老化性の化合物、例えば、カルノシンを、特異的な細胞培養の過程にとって最適な時点で培地に添加することができる。手近な例として、増殖期が実質的に完了した後で、移行期にあるときに、カルノシンを添加する。添加する間に、細胞培養培地は、温度のシフトの結果生じた新しい温度に適応しつつある。移行期は、一般に、薬剤を添加して、生成期の開始を支援する時期である。しかし、カルノシンは、増殖期および生成期をはじめとする、最適な結果を得る生成工程の間のいずれの時点で加えてもよい。また、カルノシンを、生育培地等のその他の成分と組み合わせて添加することもできる。特定の実施形態では、抗老化性の化合物が、接種培地中に提供され、細胞培養の全過程の間、細胞培養物中に存在する。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物を、細胞培養培地中に提供する。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物が、接種培地中に提供され、細胞培養の全過程の間、細胞培養物中に存在する。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物が提供され、1種の抗老化性の化合物は、接種培地中に提供され、細胞培養の全過程の間、細胞培養物中に存在し、もう1種の抗老化性の化合物は、細胞培養が始まってから提供される。
【0076】
特定の実施形態では、細胞系および産物が異なれば、細胞培養物中に存在する抗老化性の化合物の濃度も異なる。特定の実施形態では、細胞系および産物が異なれば、存在するカルノシンの濃度も異なる。一般的に、濃度は、生産性および品質を増強するのに十分であるが、毒性効果を示さない。手近な例では、範囲として、これらに限定されないが、5mMから100mMが挙げられる。使用するカルノシンの濃度は、細胞培養培地によって異なることが理解されるであろう。特定の細胞系についてのカルノシンの適切な濃度を、従来の方法を使用して、日常的な、例えば、2Lのバイオリアクター等の小規模の実験を用いて決定する必要がある場合がある。当業者であれば、過度の実験をせずとも、当技術分野で既知の細胞培養の技法および診断方法を使用して、カルノシンまたはその他の抗老化性の化合物の有利または最適な濃度を決定することができるであろう。
【0077】
化学薬剤ではなく、カルノシンまたは別の抗老化性の化合物を添加する1つの利点は、生存率に対する効果である。通常、酪酸ナトリウムのような化学薬剤を添加すると、細胞の増殖が止まり、生細胞数が減少する(Kimら、Biotechnol Bioeng,71:184−193,184)。しかし、以下の実施例は、カルノシンを細胞培養培地に添加すると、収集時において、カルノシン等の抗老化性の化合物の非存在下で増殖させた細胞培養物中で観察される生存率よりも高い生存率を得ることを実証している。さらに、そのようなカルノシン含有細胞培養物は、特異的な生産性の増加も示す。細胞の生存率および特異的な生産性に対する正の効果によって、全体的な収率が向上する。
【0078】
別の利点は、カルノシン等の抗老化性の化合物は、高分子量の凝集体の量および/または酸性の種の数を減少させることである。高分子量の凝集体および酸性の種の量が減少すると、蛋白産物の精製が簡素化される。蛋白のより効率的な単離が可能になると、蛋白産物の生成コストが減少する。特定の実施形態では、カルノシン以外の抗老化性の化合物を使用して、高分子量の凝集体および/または酸性の種の量を減少させる。特定の実施形態では、2種以上の抗老化性の化合物を使用して、高分子量の凝集体および/または酸性の種の量を減少させる。
【0079】
特定の実施形態では、それぞれが2005年8月25日に出願されており、それぞれの全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、米国特許出願第11/213308号、第11/213317号および第11/213633号に記載されている細胞培養法のうちのいずれかに従って、細胞を増殖させる。例えば、特定の実施形態では、累積アミノ酸の濃度が約70mM超である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積グルタミンの累積アスパラギンに対するモル比が、約2未満である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積グルタミンの累積全アミノ酸に対するモル比が、約0.2未満である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積無機イオンの累積全アミノ酸に対するモル比が、約0.4と約1との間である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、累積グルタミン濃度と累積アスパラギン濃度との合計が、約16mMと約36mMの間である培地中で、細胞を増殖させることができる。特定の実施形態では、前述の培地条件のうちの2つ、3つ、4つまたは5つの全てを有する培地中で、細胞を増殖させることができる。そのような培地を使用すると、高いレベルの蛋白の生成が可能になり、アンモニウムおよび/または乳酸等の特定の望ましくない要因の蓄積が減少する。
【0080】
いくつかの実施形態では、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、2006年7月13日出願の米国仮特許出願第60/830658号に記載されている1つまたは複数の条件下で、細胞を増殖させる。例えば、いくつかの実施形態では、マンガンを約10nMと約600nMとの間の濃度で含有する培地中で、細胞を増殖させる。いくつかの実施形態では、マンガンを約20nMと約100nMとの間の濃度で含有する培地中で、細胞を増殖させる。いくつかの実施形態では、マンガンを約40nMの濃度で含有する培地中で、細胞を増殖させる。糖蛋白を増やす場合にそのような培地を使用すると、改善されたグリコシル化のパターン(例えば、1本または複数のオリゴ糖鎖中のより多くの数の共有結合した糖残基)を有する糖蛋白の生成をもたらす。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、本発明の1つまたは複数の方法に従って生成した蛋白は、薬理学的な活性を有し、医薬品の調製に有用であろう。本発明の1つまたは複数の方法に従って生成した蛋白を、対象に投与することができ、またはこれらに限定されないが、非経口(例えば、静脈内)、皮内、皮下、経口、経鼻、気管支、眼、経皮(局所)、経粘膜、直腸および膣の経路をはじめとするいずれかの利用可能な経路によるデリバリーのために、最初に製剤化することができる。発明の医薬組成物は、通常、哺乳動物細胞系から発現した精製蛋白、薬学的に許容される担体と組み合わせたデリバリーのための薬剤(すなわち、上記で記載した、カチオン性ポリマー、ペプチド分子トランスポーター、界面活性物質等)を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という言葉は、医薬品の投与に適合する溶媒、分散媒体、被膜、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、ならびにその他を含む。また、補助的な、活性のある化合物も組成物中に組み入れることができる。
【0082】
医薬組成物を、その意図する投与経路に適合するように製剤化する。そのような製剤は、当業者に知られている。特定の実施形態では、本発明に従って生成した蛋白を、経口剤型および/または非経口剤型に製剤化する。特定の実施形態では、投与の簡素化および投与量の均一性のために、そのような経口剤型および/または非経口剤型を、単位剤型として製剤化し、各単位は、必要な薬学的担体と共同して所望の治療効果をもたらすように計算された、活性のある蛋白の所定の量を含有する。当業者であれば、本発明に従って生成した蛋白に適した単位製剤が分かるであろう。
【0083】
特定の実施形態および態様を、上記で詳細に議論している。本開示を、以下の非限定的な実施例によってさらに例示する。しかし、当業者であれば、これらの実施形態の種々の改変例が、添付の特許請求の範囲内であることを理解するであろう。カルノシンおよび/またはその他の抗老化性の化合物の添加は、その他の哺乳動物細胞培養物および蛋白産物にも等しく適用できることに留意されたい。本発明の範囲を定義するのは、特許請求の範囲およびその等価物であり、本発明の範囲は、特定の実施形態の本記載に限定されることもなければ、特定の実施形態の本記載によって限定されることもなく、かつそのようなことがあってはならない。
【実施例】
【0084】
実施例1
培養皿の規模でのカルノシンの実験
1Lの作業容量を有するバイオリアクター中で、MYO−29細胞系を無血清生成培地中で培養し、第4日に、温度を37℃から31℃にシフトさせた。バイオリアクターのpHを7.00に保ち、溶存酸素は30%空気飽和であった。次いで、第4、7および10日に、細胞培養培地をバイオリアクターから取り出し、8mlの作業容量を有する培養皿中に入れ、31℃のインキュベーター内に置いて、第12日まで、培養皿を培養した。第5および第7日に、細胞に生育培地を補足した。第5日に、10%(v/v)の生育培地を細胞培養に添加し、第7日に、5%(v/v)の生育培地を細胞培養に添加した。第4、7および10日のそれぞれに、10mMのカルノシンを皿に添加し、第12日に、細胞培養培地を収集した。
【0085】
図1aは、第7日における、カルノシン添加の、培養の酸性のピーク量に対する効果を示す。図1bは、培養第7日における、カルノシンの高分子量の凝集体に対する効果を示す。図1cは、カルノシン添加の酸性のピークに対する効果を、第4日と第7日と第10日とで比較して示す。図1dは、高分子量の凝集体について、同じ実験を行った結果を示す。全体的に見て、カルノシンは、培養皿中の酸性のピークおよび高分子量の凝集体の両方を減少させることによって、正の効果を有した。
【0086】
実施例2
カルノシン添加の細胞培養培地に対する効果
無血清接種培地中のMYO−29細胞系の1Lの作業容量を用いて、5つのバイオリアクターに、0.9×106細胞/mlを接種した。14日間の工程の第3、5、7および12日に、全てのバイオリアクターに、5%(v/v)の生育培地を与えた。第10日に、対照のバイオリアクターのうちの2つおよびカルノシンを含有する1つのバイオリアクターに、5%(v/v)の生育培地を添加した。バイオリアクターの条件を、温度は37℃、pHは7.00、および溶存酸素レベルは30%空気飽和に保った。攪拌速度は、200rpmであり、散布ガスは、空気と7%二酸化炭素との組合せを有した。
【0087】
全ての細胞を、4日間培養し、その時点で、バイオリアクターのうちの2つに、20mMのカルノシンを添加し、対照には、カルノシンを添加せず、第4日には、また、全てのバイオリアクターの温度を31℃にシフトさせた。生成工程の第14日に、バイオリアクターを収集した。工程を通して、試料を取り出して、細胞培養培地の進行をモニターした。対照は、期待通りに振舞った。
【0088】
図2aは、日々の生細胞密度を示す。図2bは、カルノシンを有するバイオリアクターの日々の細胞の生存率が、収集された時点では、カルノシンを有しない2つのバイオリアクターと比較して、より高かったことを示す。図2cは、バイオリアクターの日々のタイターを示し、カルノシンが存在する2つのバイオリアクターが、収集時点では、より高いタイターを有したことを示す。図2dに示すように、カルノシンを有する培養物は、より良好な累積の特異的な細胞の生産性を有した。図2eは、高分子量の凝集体の量を示し、カルノシンが存在するバイオリアクター中の高分子量の凝集体の減少を示す。
【0089】
実施例3
カルノシン添加の異なる濃度の効果
無血清接種培地中のMYO−29細胞系の1Lの作業容量を用いて、4つのバイオリアクターに、0.4×106細胞/mlを接種した。14日間の工程の第7日に、全てのバイオリアクターに、5%(v/v)の生育培地を与えた。バイオリアクターの条件を、温度は37℃、pHは7.00、および溶存酸素レベルは30%空気飽和に保った。攪拌速度は、200rpmであり、散布ガスは、空気と7%二酸化炭素との組合せを有した。
【0090】
全ての細胞を、4日間培養し、その時点で、全てのバイオリアクターの温度を31℃にシフトさせた。第4日には、また、1つのバイオリアクターに20mMのカルノシンを添加し、第2のバイオリアクターに40mMのカルノシンを添加し、対照にはカルノシンを全く添加しなかった。生成工程の第12日に、全てのバイオリアクターを収集した。工程を通して、試料を取り出して、細胞培養培地の進行をモニターした。1つの対照が以前に見られたより若干低い日々の生存率を有した以外は、一般的に、対照は期待通りに振舞った。
【0091】
図3aは、日々の生細胞密度を示す。40mMのカルノシンを有するバイオリアクター以外は、異なるバイオリアクターで、かなり類似している。図3bは、カルノシンを有するバイオリアクターの日々の細胞の生存率が、収集された時点では、カルノシンを有しない2つの対照のバイオリアクターと比較して、より高かったことを示す。図3cは、日々のタイターを示す。カルノシンを添加したバイオリアクターおよび対照のうちの1つが類似した。40mMのカルノシンを有するバイオリアクターは、より高い累積の特異的な細胞の生産性を有した。(図3d)。図3eは、高分子量の凝集体の量を示す。全体的に見て、カルノシンを添加した場合、対照と比較して、高分子量の凝集体が減少した。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態を、本明細書に記載してきたが、上記の記載は、単に例示的なものに過ぎない。本明細書に開示した実施形態のさらなる改変例を、細胞培養技術における当業者であればもたらすことができるであろう。そのような改変例の全てを、添付の特許請求の範囲が定義する実施形態の範囲の内に属するものと見なす。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1a】MYO−29について、カルノシンの酸性のピークに対する効果を示すグラフである。
【図1b】カルノシンの高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【図1c】異なる日のカルノシン添加の酸性のピークに対する効果を示すグラフである。
【図1d】異なる日のカルノシン添加の高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【図2a】カルノシンの日々の生細胞密度に対する効果を示すグラフである。
【図2b】カルノシンの日々の細胞の生存率に対する効果を示すグラフである。
【図2c】カルノシンの日々のタイターに対する効果を示すグラフである。
【図2d】カルノシンの累積の特異的な細胞の生産性に対する効果を示すグラフである。
【図2e】カルノシンの高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【図3a】カルノシンの異なる濃度の生細胞密度に対する効果を示すグラフである。
【図3b】カルノシンの異なる濃度の日々の細胞の生存率に対する効果を示すグラフである。
【図3c】カルノシンの異なる濃度の日々のタイターに対する効果を示すグラフである。
【図3d】カルノシンの異なる濃度の累積の特異的な細胞の生産性に対する効果を示すグラフである。
【図3e】カルノシンの異なる濃度の高分子量の凝集体に対する効果を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的とする蛋白をコードし、細胞培養の条件下で発現される遺伝子を含有する哺乳動物細胞を、抗老化性の化合物を含む細胞培養培地にて培養する工程;および
蛋白の発現を可能とする条件下で、その発現のために十分な時間、該培養を維持する工程を含む、蛋白を細胞培養にて産生する方法であって、
細胞培養物が、抗老化性の化合物を欠く他は同一の培地にて、その他同一の条件下で観察される対応する細胞培養特徴と異なる改善された細胞培養特徴を示し、
その改善された培養特徴が、タイターの増加、細胞特異的生産性の増加、細胞生存率の上昇、集積生存細胞密度の増加、高分子量の凝集体の蓄積の減少、酸性種の蓄積の減少およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、蛋白の産生方法。
【請求項2】
抗老化性の化合物が、カルノシン、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリン、β−アラニンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗老化性の化合物がカルノシンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で細胞培養培地に存在する、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
細胞培養物にさらに補助成分を配合する、請求項1−4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
補助成分が生育培地にて提供される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
補助成分が、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸等)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、グルコースもしくはその他のエネルギー源、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
補助成分が抗老化性の化合物を包含する、請求項5、6または7記載の方法。
【請求項9】
目的とする蛋白をコードし、細胞培養の条件下で発現される遺伝子を含有する哺乳動物細胞を、増殖期の間に細胞増殖をもたらす第1の温度で、または温度範囲で、細胞培養培地にて培養する工程;
細胞培養培地の温度または温度範囲を、蛋白産生をもたらす第2の温度または温度範囲にシフトする工程;
宿主細胞を細胞培養培地にて第2の温度または温度範囲で移行期を介して生成期へと培養する工程を含み、
ここで、抗老化性の化合物が細胞培養物に添加され、その結果、細胞培養物が、抗老化性の化合物を欠く他は同一の培地にて、その他同一の条件下で観察される対応する細胞培養特徴と異なる改善された細胞培養特徴を示し、
その改善された培養特徴が、タイターの増加、細胞特異的生産性の増加、細胞生存率の上昇、集積生存細胞密度の増加、高分子量の凝集体の蓄積の減少、酸性種の蓄積の減少およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、蛋白の産生方法。
【請求項10】
抗老化性の化合物が細胞培養工程の開始時に細胞培養培地に添加される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
抗老化性の化合物が増殖期の間に細胞培養培地に添加される、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
抗老化性の化合物が移行期の間に細胞培養培地に添加される、請求項9、10または11記載の方法。
【請求項13】
抗老化性の化合物が生成期の間に細胞培養培地に添加される、請求項9−12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗老化性の化合物が、カルノシン、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリン、β−アラニンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9−13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗老化性の化合物がカルノシンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で細胞培養培地に存在する、請求項9−15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
細胞培養物にさらに補助成分を配合する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
補助成分が生育培地にて提供される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
補助成分が、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸等)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、グルコースもしくはその他のエネルギー源、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
補助成分が抗老化性の化合物を包含する、請求項17、18または19記載の方法。
【請求項21】
産生される蛋白が哺乳動物細胞に対して異種である、上記した請求項いずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物細胞がCHO細胞である、上記した請求項いずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
上記した請求項のいずれかに記載の方法により産生される蛋白。
【請求項24】
抗体である、請求項23記載の蛋白。
【請求項25】
抗体がMyo29、Myo28、Myo22およびそれらの組み合わせからなる群より選択される抗−GDF−8抗体である、請求項24記載の蛋白。
【請求項26】
さらに、蛋白を細胞培養培地より単離する工程を含む、請求項1−22のいずれか一項に記載の蛋白を調製する方法。
【請求項27】
蛋白が処方用にさらに精製または加工処理される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
蛋白が医薬組成物に処方される、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
目的とする蛋白をコードする遺伝子で形質転換された哺乳動物細胞を細胞培養培地で培養する工程;
該細胞培養培地に有効量の抗老化性の化合物を添加する工程:
目的とする蛋白が蓄積するまで、該細胞培養培地を維持する工程;および
目的とする蛋白を単離する工程を含み、
抗老化性の化合物の不在の下、その他同一の条件の下にて抗老化性の化合物の不在の下で、目的とする蛋白の産生と比較して、目的とする蛋白の産生が強化され、細胞生存率が維持され、および高分子量の凝集体が減少するところの、蛋白を産生する方法。
【請求項30】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
目的とする蛋白が抗体である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
抗体がIgGアイソトープである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
抗体が組換えヒト抗体である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
抗体が増殖分化因子−8(GDF−8)またはそのエピトープと特異的に反応する、請求項32記載の方法。
【請求項36】
組換え抗体がBMP−11に特異的に結合する、請求項32記載の方法。
【請求項37】
抗老化性の化合物がカルノシンまたはカルノシン類似体である、請求項29記載の方法。
【請求項38】
カルノシン類似体がアセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリン、およびβ−アラニンからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項40】
抗老化性の化合物が約10mMと約40mMの間の濃度で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項41】
抗老化性の化合物が約20mMの濃度で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項42】
抗老化性の化合物が生育培地と組み合わせて加えられる、請求項29記載の方法。
【請求項43】
収集の際の細胞生存率が維持される、請求項29記載の方法。
【請求項44】
目的とする蛋白の産生が増加する、請求項29記載の方法。
【請求項45】
目的とする蛋白の細胞特異的産生性が向上する、請求項29記載の方法。
【請求項46】
目的とする蛋白の量が高分子量の凝集体が減少したことによって増加する、請求項29記載の方法。
【請求項47】
目的とする蛋白の量が酸性種の減少によって増加する、請求項29記載の方法。
【請求項48】
細胞系を増殖期の間に細胞増殖誘発の温度で細胞培養培地にて培養する工程;
細胞培養培地の温度を少なくとも1回蛋白産生を誘発する温度にシフトする工程;
宿主細胞を細胞培養培地にて蛋白産生を誘発する温度で移行期を介して生成期へと培養する工程;
抗老化性の化合物を、抗老化性の化合物が存在しない他は同一の条件にある目的とする蛋白の産生と比較して、目的とする蛋白の産生が強化され、細胞生存率が維持され、および高分子量の凝集体が減少する濃度にて、該移行期の間に該細胞培養培地に添加する工程を含む、蛋白の産生方法。
【請求項49】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で存在する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
抗老化性の化合物が約10mMと約40mMの間の濃度で存在する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
抗老化性の化合物が約20mMの濃度で存在する、請求項48記載の方法。
【請求項1】
目的とする蛋白をコードし、細胞培養の条件下で発現される遺伝子を含有する哺乳動物細胞を、抗老化性の化合物を含む細胞培養培地にて培養する工程;および
蛋白の発現を可能とする条件下で、その発現のために十分な時間、該培養を維持する工程を含む、蛋白を細胞培養にて産生する方法であって、
細胞培養物が、抗老化性の化合物を欠く他は同一の培地にて、その他同一の条件下で観察される対応する細胞培養特徴と異なる改善された細胞培養特徴を示し、
その改善された培養特徴が、タイターの増加、細胞特異的生産性の増加、細胞生存率の上昇、集積生存細胞密度の増加、高分子量の凝集体の蓄積の減少、酸性種の蓄積の減少およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、蛋白の産生方法。
【請求項2】
抗老化性の化合物が、カルノシン、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリン、β−アラニンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗老化性の化合物がカルノシンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で細胞培養培地に存在する、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
細胞培養物にさらに補助成分を配合する、請求項1−4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
補助成分が生育培地にて提供される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
補助成分が、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸等)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、グルコースもしくはその他のエネルギー源、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
補助成分が抗老化性の化合物を包含する、請求項5、6または7記載の方法。
【請求項9】
目的とする蛋白をコードし、細胞培養の条件下で発現される遺伝子を含有する哺乳動物細胞を、増殖期の間に細胞増殖をもたらす第1の温度で、または温度範囲で、細胞培養培地にて培養する工程;
細胞培養培地の温度または温度範囲を、蛋白産生をもたらす第2の温度または温度範囲にシフトする工程;
宿主細胞を細胞培養培地にて第2の温度または温度範囲で移行期を介して生成期へと培養する工程を含み、
ここで、抗老化性の化合物が細胞培養物に添加され、その結果、細胞培養物が、抗老化性の化合物を欠く他は同一の培地にて、その他同一の条件下で観察される対応する細胞培養特徴と異なる改善された細胞培養特徴を示し、
その改善された培養特徴が、タイターの増加、細胞特異的生産性の増加、細胞生存率の上昇、集積生存細胞密度の増加、高分子量の凝集体の蓄積の減少、酸性種の蓄積の減少およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、蛋白の産生方法。
【請求項10】
抗老化性の化合物が細胞培養工程の開始時に細胞培養培地に添加される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
抗老化性の化合物が増殖期の間に細胞培養培地に添加される、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
抗老化性の化合物が移行期の間に細胞培養培地に添加される、請求項9、10または11記載の方法。
【請求項13】
抗老化性の化合物が生成期の間に細胞培養培地に添加される、請求項9−12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗老化性の化合物が、カルノシン、アセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリン、β−アラニンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9−13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
抗老化性の化合物がカルノシンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で細胞培養培地に存在する、請求項9−15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
細胞培養物にさらに補助成分を配合する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
補助成分が生育培地にて提供される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
補助成分が、ホルモンおよび/または他の増殖因子、特定のイオン(ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸等)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、グルコースもしくはその他のエネルギー源、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
補助成分が抗老化性の化合物を包含する、請求項17、18または19記載の方法。
【請求項21】
産生される蛋白が哺乳動物細胞に対して異種である、上記した請求項いずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物細胞がCHO細胞である、上記した請求項いずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
上記した請求項のいずれかに記載の方法により産生される蛋白。
【請求項24】
抗体である、請求項23記載の蛋白。
【請求項25】
抗体がMyo29、Myo28、Myo22およびそれらの組み合わせからなる群より選択される抗−GDF−8抗体である、請求項24記載の蛋白。
【請求項26】
さらに、蛋白を細胞培養培地より単離する工程を含む、請求項1−22のいずれか一項に記載の蛋白を調製する方法。
【請求項27】
蛋白が処方用にさらに精製または加工処理される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
蛋白が医薬組成物に処方される、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
目的とする蛋白をコードする遺伝子で形質転換された哺乳動物細胞を細胞培養培地で培養する工程;
該細胞培養培地に有効量の抗老化性の化合物を添加する工程:
目的とする蛋白が蓄積するまで、該細胞培養培地を維持する工程;および
目的とする蛋白を単離する工程を含み、
抗老化性の化合物の不在の下、その他同一の条件の下にて抗老化性の化合物の不在の下で、目的とする蛋白の産生と比較して、目的とする蛋白の産生が強化され、細胞生存率が維持され、および高分子量の凝集体が減少するところの、蛋白を産生する方法。
【請求項30】
宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
目的とする蛋白が抗体である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
抗体がIgGアイソトープである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
抗体が組換えヒト抗体である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
抗体が増殖分化因子−8(GDF−8)またはそのエピトープと特異的に反応する、請求項32記載の方法。
【請求項36】
組換え抗体がBMP−11に特異的に結合する、請求項32記載の方法。
【請求項37】
抗老化性の化合物がカルノシンまたはカルノシン類似体である、請求項29記載の方法。
【請求項38】
カルノシン類似体がアセチルカルノシン、ホモカルノシン、アンセリン、およびβ−アラニンからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項40】
抗老化性の化合物が約10mMと約40mMの間の濃度で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項41】
抗老化性の化合物が約20mMの濃度で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項42】
抗老化性の化合物が生育培地と組み合わせて加えられる、請求項29記載の方法。
【請求項43】
収集の際の細胞生存率が維持される、請求項29記載の方法。
【請求項44】
目的とする蛋白の産生が増加する、請求項29記載の方法。
【請求項45】
目的とする蛋白の細胞特異的産生性が向上する、請求項29記載の方法。
【請求項46】
目的とする蛋白の量が高分子量の凝集体が減少したことによって増加する、請求項29記載の方法。
【請求項47】
目的とする蛋白の量が酸性種の減少によって増加する、請求項29記載の方法。
【請求項48】
細胞系を増殖期の間に細胞増殖誘発の温度で細胞培養培地にて培養する工程;
細胞培養培地の温度を少なくとも1回蛋白産生を誘発する温度にシフトする工程;
宿主細胞を細胞培養培地にて蛋白産生を誘発する温度で移行期を介して生成期へと培養する工程;
抗老化性の化合物を、抗老化性の化合物が存在しない他は同一の条件にある目的とする蛋白の産生と比較して、目的とする蛋白の産生が強化され、細胞生存率が維持され、および高分子量の凝集体が減少する濃度にて、該移行期の間に該細胞培養培地に添加する工程を含む、蛋白の産生方法。
【請求項49】
抗老化性の化合物が約5mMと約100mMの間の濃度で存在する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
抗老化性の化合物が約10mMと約40mMの間の濃度で存在する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
抗老化性の化合物が約20mMの濃度で存在する、請求項48記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【公表番号】特表2009−512459(P2009−512459A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537834(P2008−537834)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041256
【国際公開番号】WO2007/050498
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041256
【国際公開番号】WO2007/050498
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]