説明

抗腫瘍性化合物

下記式(I)の化合物:


式中、R〜R15及びnは、ガンの治療における使用のために許容される意味をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は新規な抗腫瘍性化合物、それらを含む医薬組成物、及び抗ガン剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
環状デプシペプチドは、海洋生物からの生物活性物質の非常に重要な群として浮上している。これらの環状デプシペプチドのいくつかは、細胞毒性、抗ウイルス性、及び/又は抗菌性を有することが開示されている。特に、ネアムファミドA(Neamphamide A)は、カイメンであるネアムフィウス・ハクスレイ(Neamphius huxleyi)から単離され、抗ウイルス活性を示したことが開示された(Okuら, J. Nat. Prod. 2004, 67(8), 1407-1411)。
【0003】
【化1】

【0004】
特に、ネアムファミドAの抗HIV活性が、HIV−1RFを感染させたヒトT細胞株CEM−SSを用いて、XTTに基づく細胞生存アッセイで評価された。6日のインキュベーション期間の後、ネアムファミドAは20nMのEC50でHIV−1感染の細胞変性効果を有効に阻害した。
【0005】
1999年に、Fordらは、カイメンであるテオネラ・ミラビリス(Theonella mirabilis)及びテオネラ・スウィンホエイ(Theonella swinhoei)から、パプアミド(Papuamide)A、B、C、及びDと名付けられた4種の新規な環状デプシペプチドの単離を開示した。加えて、パプアミドAのジアセテート誘導体の合成が開示された(Fordら, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121(25), 5899-5909)。
【0006】
【化2】

【0007】
パプアミドA及びBは、約4ng/mLのEC50でインビトロにおいてHIV−1RFによるヒトTリンパ芽細胞の感染を阻害したことが発見された。加えてパプアミドAは、75ng/mLの平均IC50で、ヒトのガン細胞株群のパネルに対して細胞毒性であることが発見された。
【0008】
最後に、Zampellaらも、抗HIV活性をもつさらなるデプシペプチドを報告した。特に、彼らは、カイメンであるホモフィミア種(Homophymia sp.)からホモフィミン(Homophymine)Aを単離し、これは細胞に基づくXTTアッセイで75nMのIC50でHIV−1感染に対する細胞保護活性を示した(Zampellaら, J. Org. Chem. 2008, 73, 5319-5327)。
【0009】
【化3】

【0010】
ガンは動物及びヒトの死亡の主要な原因であるので、ガンに罹患した患者に投与するために活性且つ安全な抗ガン治療法を得るためにいくつもの努力がなされており、且つなおも行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Okuら, J. Nat. Prod. 2004, 67(8), 1407-1411
【非特許文献2】Fordら, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121(25), 5899-5909
【非特許文献3】Zampellaら, J. Org. Chem. 2008, 73, 5319-5327
【非特許文献4】Burger「Medical Chemistry and Drug Discovery 6th ed.」(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)
【非特許文献5】「Design and Applications of Prodrugs」(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers)
【非特許文献6】March’s Advanced Organic Chemistry 第6版 2007年, Wiley Interscience
【非特許文献7】Skehanら, J. Natl. Cancer Inst. 1990, 82, 1107-1112
【非特許文献8】Fairclothら, Methods in Cell Science, 1988, 11(4), 201-205
【非特許文献9】Mosmannら, Journal of Immunological Methods, 1983, 65(1-2), 55-63
【非特許文献10】Boyd MR及びPaull KD. Drug Dev. Res. 1995, 34, 91-104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決すべき課題は、ガンの治療に有用である化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの側面では、本発明は一般式Iの化合物、又はその医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体を目的とする。
【0014】
【化4】

【0015】
上記式中、
は、置換又は非置換C〜C18アルキル、置換又は非置換C〜C18アルケニル、置換又は非置換C〜C18アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環基から選択され;
は、水素、-CHCONHR16、及び-CH(OR17)CONHR18から選択され;
は、-CHCHCONHR19及び-CH(OR20)CHから選択され;
、R、R、R17、及びR20のそれぞれは独立に、水素、COR、COOR、CONR、SO、SO、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
、R14、R16、R18、及びR19のそれぞれは独立に、水素、COR、COOR、CONR、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
、R11、及びR13のそれぞれは独立に、置換又は非置換C〜C12アルキルから選択され;
及びR10のそれぞれは独立に、水素、COR、COOR、CONR、C(=NR)NR、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
12及びR15のそれぞれは独立に、OR、NR、COR、NRCONR、NRC(=NR)NR、ハロゲン、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環基から選択され;
nは3又は4であり;
は、水素、COR、COOR、CONR、SO、SO、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
及びRのそれぞれは独立に、水素、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環基から選択される。
【0016】
別の側面では、本発明は、医薬としての使用、特にガンを治療するための医薬として用いるための式Iの化合物、その医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体を目的とする。
【0017】
さらなる側面では、本発明はまた、式Iの化合物又はその医薬として許容可能な塩、互辺異性体、プロドラッグ、又は立体異性体の、ガン治療における、あるいは医薬の製造における、好ましくはガンの治療のための医薬の製造における使用も目的とする。本発明の別の側面は、治療方法、及びそれらの方法に用いるための化合物である。したがって、本発明は、ガンに罹患した患者、特にガンに罹患したヒトを治療する方法をさらに提供し、これは治療の必要な前記の罹患した患者に、上で定義した化合物の治療有効量を投与することを含む。
【0018】
なおさらなる側面では、本発明はまた、抗ガン剤として用いるための、式Iの化合物、又はその医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体も目的とする。
【0019】
別の側面では、本発明は、式Iの化合物又はその医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体を、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とともに含む医薬組成物を目的とする。
【0020】
本発明は、リチスチダ(Lithistida)目、ネオペルチダエ(Neopeltidae)族、ホモフィミア(Homophymia)属、ホモフィミア・ラメロサ(Homophymia lamellosa)種のカイメン(Vacelet & Vasseur, 1971)からの式Iの化合物の単離、及びその単離した化合物からの誘導体の生成にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[本発明の詳細な説明]
本発明は、上で定義した一般式Iの化合物に関する。
【0022】
これらの化合物において、基は以下の指針にしたがって選択できる。
【0023】
アルキル基は分岐又は非分岐であってよく、好ましくは1〜約18の炭素原子を有する。アルキル基の一つのより好ましい群は、1〜約12の炭素原子、なおさらに好ましくは1〜約6の炭素原子を有する。1、2、3、4、又は5個の炭素原子を有するアルキル基が特に好ましい。メチル、エチル、n−プロピル、iso-プロピル、及びブチルは、本発明の化合物において特に好ましいアルキル基である。アルキル基の別の好ましい群は、7〜約14の炭素原子、なおさらに好ましくは、8、9、10、11、12、又は13の炭素原子を有する。本明細書で用いるように、別に記載がない限り、「アルキル」の用語は、環式及び非環式の基の両方をいうが、環式基は少なくとも3つの炭素環構成原子を含む。
【0024】
本発明の化合物における好ましいアルケニル及びアルキニル基は、分岐又は非分岐であってよく、1つ以上の不飽和結合と2〜約18の炭素原子をもっていることができる。アルケニル及びアルキニル基の一つのより好ましい群は、2〜約12の炭素原子、なおより好ましくは2〜約6の炭素原子を有する。2、3、4、又は5個の炭素原子を有するアルケニル及びアルキニル基は特に好ましい。アルケニル及びアルキニルの別の好ましい群は、7〜約14の炭素原子、なおより好ましくは8、9、10、11、12、又は13の炭素原子を有する。「アルケニル」及び「アルキニル」の用語は本明細書で用いるように、環式及び非環式基の両方をいうが、環式基は少なくとも3つの炭素環構成原子を含む。
【0025】
本発明の化合物における好適なアリール基には、分離した及び/又は縮合したアリール基を含む多環式化合物を含めて、単環及び多環式化合物が含まれる。典型的なアリール基は、1〜3の分離した及び/又は縮合した環を含み、6〜約18の炭素環原子を含む。アリール基は6〜約10の炭素環原子を含むことが好ましい。特に好ましいアリール基には、置換又は非置換フェニル、置換又は非置換ナフチル、置換又は非置換ビフェニル、置換又は非置換フェナントリル、及び置換又は非置換アントリルが含まれる。
【0026】
好適なヘテロ環式基には、1〜3の分離した及び/又は縮合した環を含み、5〜約18の環原子を含むヘテロ芳香族及びヘテロ脂環式基が含まれる。好ましいヘテロ芳香族及びヘテロ脂環式基は、5〜約10の環原子を含む。本発明の化合物中の好適なヘテロ芳香族基は、N、O、又はS原子から選択された1つ、2つ又は3つのヘテロ原子を含み、例えば、8−クマリニルを含むクマリニル、8−キノリルを含むキノリル、イソキノリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリミジニル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、イソインドリル、イミダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ピリダジニル、トリアジニル、シンノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルが含まれる。本発明の化合物中の好適なヘテロ脂環式基は、N、O、又はS原子から選択される1つ、2つ、又は3つのヘテロ原子を含み、例えば、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]へキシル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプチル、3H−インドリル、及びキノリジニルが含まれる。
【0027】
上述した基は、1つ以上の可能な位置で、1つ以上の好適な基によって置換されていてもよく、その基は例えば、OR’、=O、SR’、SOR’、SOR’、OSOR’、OSOR’、NO、NHR’、N(R’)、=N−R’、N(R’)COR’、N(COR’)、N(R’)SOR’、N(R’)C(=NR’)N(R’)R’、CN、ハロゲン、COR’、COOR’、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、OCON(R’)、CONHR’、CON(R’)、CON(R’)OR’、CON(R’)SOR’、PO(OR’)、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環式基であり、式中、R’基のそれぞれは独立に、水素、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、COOH、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環式基である。そのような基が、それら自体が置換されている場合は、その置換基は上に列挙したものから選択することができる。
【0028】
本発明の化合物における好適なハロゲン基又はハロゲン置換基には、F、Cl、Br、及びIが含まれる。
【0029】
「医薬として許容可能な塩、プロドラッグ」の用語は、患者に投与した場合に、本明細書に記載した化合物を(直接的又は間接的に)もたらすことができる全ての医薬として許容可能な塩、エステル、溶媒和物、水和物、あるいは任意の他の化合物をいう。しかし、医薬として許容されない塩類も本発明の範囲に属すると理解され、なぜならそれらは医薬として許容可能な塩を製造するのに有用でありうるからである。塩及びプロドラッグの調製は、当分野で公知の方法によって行うことができる。
【0030】
例えば、本明細書に提供されている化合物の医薬として許容可能な塩は、塩基性又は酸性部分を含む母体化合物から、従来の化学的方法によって合成される。一般に、そのような塩は、例えば、フリーの酸又は塩基の形態のこれらの化合物を、化学量論量の適切な塩基又は酸を水又は有機溶媒中又は両者の混合物中で反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、2−プロパノール、又はアセトニトリルなどの非水媒体が好ましい。酸付加塩の例には、無機酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、及び有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩が含まれる。アルカリ付加塩の例には、無機塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びアンモニウム塩、並びに有機アルカリ塩、例えば、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、N,N−ジアルキルエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、及び塩基性アミノ酸塩が含まれる。トリフルオロ酢酸塩は、本発明の化合物の好ましい医薬として許容可能な塩類の1つである。
【0031】
本発明の化合物は、フリー化合物として又は溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物、特にメタノール和物)としてのいずれかの結晶形態であってもよく、両方の形態とも本発明の範囲に入ることを意図している。溶媒和の方法は当業者に広く知られている。本発明の化合物は様々な結晶多形体で存在することができ、本発明は全てのそのような形態を包含することを意図している。
【0032】
式Iの化合物のプロドラッグである全ての化合物は、本発明の範囲に入る。「プロドラッグ」の用語は、その最も広い意味で用いており、インビボで本発明の化合物に変換されるその誘導体を包含する。プロドラッグの例には、式Iの化合物の誘導体及び代謝産物(これは生物加水分解性(biohydrolyzable)の基、例えば、生物加水分解性のアミド、生物加水分解性のエステル、生物加水分解性のカルバメート、生物加水分解性のカーボネート、生物加水分解性のウレイド、及び生物加水分解性のホスフェートアナログ類を含む)が含まれるがそれらに限定されない。好ましくは、カルボキシル官能基をもつ化合物のプロドラッグは、そのカルボン酸の低級アルキルエステルである。このカルボキシレートエステルは、その分子に存在するカルボキシル基のいずれかをエステル化することによって都合良く形成される。プロドラッグは、典型的には、周知の方法、例えば、Burger「Medical Chemistry and Drug Discovery 6th ed.」(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)及び「Design and Applications of Prodrugs」(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers)に記載されている方法を用いて調製することができる。
【0033】
本明細書で言及した全ての化合物は、そのような具体的な化合物並びにいくらかの変形物又は形態を表すことを意図している。特に、本明細書で言及した化合物は、不斉中心を有することができ、したがって、様々なエナンチオマー又はジアステレオマーの形態で存在する。したがって、本明細書で言及された任意の所定の化合物は、ラセミ体、1つ以上の光学異性体(エナンチオマー)の形態、1つ以上のジアステレオマーの形態、及びそれらの混合物を表すことを意図している。同様に、立体異性、又は二重結合についての幾何異性も可能であり、したがって、いくつかの場合には、その分子は(E)異性体又は(Z)異性体(トランス及びシス異性体)として存在することができる。分子がいくつかの二重結合を含む場合には、各二重結合はそれ自体の立体異性をもち、その分子の別の二重結合の立体異性と同じであるか又は異なることができる。さらに、本明細書で言及した化合物は、アトロプ異性体(atropoisomers)として存在してもよい。本明細書で言及した化合物のエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、及びアトロプ異性体を含めた全ての異性体、並びにそれらの混合物は、本発明の範囲に入ると考える。
【0034】
さらに、本明細書で言及した全ての化合物は、互変異性体として存在してもよい。特に、互変異性体という用語は、平衡状態で存在し、且つ1つの異性体形態から別の異性体形態に容易に変換される、化合物の2つ以上の構造異性体のうちの1つをいう。一般的な互変異性の対は、アミン−イミン、アミド−イミド酸、ケト−エノール、ラクタム−ラクチムなどである。加えて、本明細書で言及した化合物は、同位体標識された形態、すなわち、1つ以上の同位体富化された原子の存在について異なる化合物として存在することもできる。例えば、少なくとも1つの水素原子が重水素又は三重水素で置換されていること、又は少なくとも1つの炭素が13C又は14Cで富化された炭素で置換されていること、又は少なくとも1つの窒素原子が15Nで富化された窒素で置換されていることを除いて本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲に入る。
【0035】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書に示した定量的な表現のいくつかは「約」の用語を用いて定量化されていない。「約」の用語が明示して用いられているか否かにかかわらず、本明細書に示した全ての量は、実際に示した値をいい、そしてそれはさらに、技術常識に基づいて合理的に推論されるそのような所定の値の近似値をもいい、そのような所定の値に対する実験条件及び/又は測定条件による概算値及び当量値を含む。
【0036】
一般式Iの化合物において、Rは、置換又は非置換C〜C18アルキル及び置換又は非置換C〜C18アルケニル(これらは分岐又は非分岐であってよい)から選択されることが好ましい。
【0037】
より好ましいアルキル及びアルケニル基(これらは分岐又は非分岐であってよい)は、7〜約14の炭素原子、なおより好ましくは8、9、10、11、12、又は13の炭素原子を有するものである。アルキル及びアルケニル基が1つ以上の好適な置換基で置換されていることが特に好ましく、その置換基は、OR’、=O、SR’、SOR’、SOR’、SOR’、OSOR’、OSOR’、NO、NHR’、N(R’)、=N−R’、N(R’)COR’、N(COR’)、N(R’)SOR’、N(R’)C(=NR’)N(R’)R’、CN、ハロゲン、COR’、COOR’、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、OCON(R’)、CONHR’、CON(R’)、CON(R’)OR’、CON(R’)SOR’、PO(OR’)、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環式基であり、式中、R’基のそれぞれは独立に、水素、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、COOH、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環式基から選択されることが好ましい。そのような基において、それら自体が置換されている場合は、その置換基は上に列挙したものから選択することができる。さらに好ましくは、上述したアルキル及びアルケニル基への置換基は、OR’、OSOR’、OSOR’、ハロゲン、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、OCON(R’)、CONHR’、及びCON(R’)から選択され、式中、R’基のそれぞれは独立に、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、置換又は非置換C〜Cアルケニル、置換又は非置換C〜Cアルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環式基から成る群から選択され、この置換基はOHであることがさらに好ましい。最も好ましいRは、8、9、10、11、12、又は13の炭素原子を有する置換アルキル基であり、2−ヒドロキシ−1,3,5−トリメチルへキシル、及び2−ヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルオクチルが最も好ましい。
【0038】
特に好ましいRは、水素、−CHCONHR16、及び−CH(OR17)CONHR18から選択され、式中、R16及びR18はそれぞれ独立して、水素、及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択され、R17は、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rは、水素、及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRは置換又は非置換C〜Cアルキルであり、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)がさらに好ましい。R17は水素であることがさらに好ましい。さらに好ましくは、R16及びR18はそれぞれ独立に、水素、及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される。なおさらに好ましくは、R16及びR18はそれぞれ独立に、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)から選択され、水素が最も好ましい基である。
【0039】
特に好ましいRは、−CHCHCONHR19、及び−CH(OR20)CHから選択され、式中、R19は水素及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択され、R20は、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rは、水素及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRは置換又は非置換C〜Cアルキルであり、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)がさらに好ましい。さらに好ましくは、R20は水素である。さらに好ましくは、R19は水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される。なおさらに好ましくは、R19は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)から選択され、水素が最も好ましい基である。
【0040】
特に好ましいR、R、及びRはそれぞれ独立に、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rは、水素及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRは置換又は非置換C〜Cアルキルであり、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)がさらに好ましい。さらに好ましくは、R、R、及びRは水素である。
【0041】
特に好ましいR及びR14はそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択される。より好ましくは、R及びR14はそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される。なおさらに好ましくは、R及びR14はそれぞれ独立に、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)から選択され、水素が最も好ましい基である。
【0042】
、R14、R16、R18、及びR19は、本発明の化合物において同じ意味をもつことが好ましい。
【0043】
、R、R、R17、及びR20は、本発明の化合物において同じ意味をもつことが好ましい。
【0044】
特に好ましいRは、置換又は非置換C〜Cアルキルであり、これは分岐又は非分岐であってよい。さらに好ましいアルキル基(これは分岐又は非分岐であってよい)は、1、2、3、4、又は5個の炭素原子を有するものであり、メチル及び1,2−ジメチルプロピルが最も好ましい。
【0045】
特に好ましいR及びR10はそれぞれ独立に、水素、置換又は非置換C〜C12アルキル、COR、CONR、及びC(=NR)NRから選択され、式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択される。特に好ましいR及びRはそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択され、さらに好ましくはそれぞれ独立に、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)から選択される。R及びR10が水素であることがさらに好ましい。
【0046】
特に好ましいR11及びR13はそれぞれ独立に、置換又は非置換C〜Cアルキルから選択され、これは分岐しているか又は非分岐であってよい。さらに好ましいアルキル基(これは分岐していても非分岐であってもよい)は、1、2、3、又は4個の炭素原子を有するものであり、メチル及びエチルが最も好ましい。R11及びR13は、本発明の化合物中で異なる意味を有することが好ましい。
【0047】
特に好ましいR12及びR15はそれぞれ独立に、NR及びORから選択され、式中、Rは、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択されることが好ましく、式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜C12アルキルから選択される。特に好ましいR及びRはそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択され、さらに好ましくはそれぞれ独立に、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、及びブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含む)から選択される。Rが水素であることがさらに好ましい。R12及びR15はOH及びNHから選択され、本発明の化合物中で同じ意味をもつことが好ましい。
【0048】
追加の好ましい態様では、異なる置換基について上述した好ましいものが組み合わされる。本発明は、上の式(I)における好ましい置換基のそのような組み合わせも目的とする。
【0049】
本明細書の記載及び定義中、本発明の化合物中に存在するいくつかの基R、R、又はRがある場合は、明示してそのように記載していない限り、それらは与えられた定義の中でそれぞれが独立して異なることができることが理解されるべきであり、即ち、Rは、本発明の与えられた化合物中で同時に同じ基を必ずしも表すものではない。
【0050】
本発明の特に好ましい化合物は以下のものである。
【0051】
【化5A】

【化5B】

又はそれらの医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体。
【0052】
ピペコリデプシン(Pipecolidepsin)A、B、及びCは、リチスチダ(Lithistida)目、ネオペルチダエ(Neopeltidae)族、ホモフィミア(Homophymia)属、ホモフィミア・ラメロサ(Homophymia lamellosa)種のカイメン(Vacelet & Vasseur, 1971)から単離された。このカイメンは、マダガスカルのセントマリー島(Saint Marie Island)(17°07.436’S/49°47.525’E)にて、3〜7mの範囲の深さでスキューバダイビングによって手で採集した。
【0053】
このカイメンの説明:
数個の多かれ少なかれ独立しているが融合したものからなる、丸みを帯びた輪郭をもつ厚い層状のカイメンであって(高さ6cm、幅10cm、厚さ2cm)、上部に位置する別個の小さな小孔(2〜3mmの直径)をもつ。
主大骨片(Megascleras): 擬葉状体(Pseudophyllotrianes)の大きさは200〜420μm。デスマ(Desma、海綿の不規則に分岐した骨片)は約250〜350μmの大きさであり、テトラクロン(tetraclone)に似ているが単軸(モノクレピジアル、monocrepidial)である。その他のコアノソーム主大骨片(choanosomal megascleres)は、380〜560μmの長さと2.5〜5μmの厚みがあり、ストロンギレス(strongyles)/タイロート(tylotes)への大きな軸針である。
微小骨片(Microscleres):これは長く細い筋をもつ微小棘星状体であり、軸洞とコアノソームの(choanosomal)溝の表面に非常に豊富である。それらは12.2〜16.25μmの長さと6.25〜12.5μmの幅である。
このカイメン(海綿)の地理学的分布:マダガスカル、ニュージーランド、レユニオン島
【0054】
加えて、本発明の化合物は、様々な化学反応を用いることによって、天然資源から既に得られたものを修飾することによって、あるいは既に修飾したものをさらに修飾することによって得ることができる。したがって、ヒドロキシル基は、標準のカップリング又はアシル化法によって、例えばピリジン中で酢酸、塩化アセチル、又は無水酢酸を用いるなどによって、アシル化することができる。ギ酸エステル基は、ギ酸中でヒドロキシル前駆体を加熱することによって得ることができる。カルバメートは、ヒドロキシル前駆体をイソシアネートとともに加熱することによって得ることができる。ヒドロキシル基は、ヨウ化物、臭化物、塩化物のためには中間体スルホネートを通って、あるいはフッ素化物のためには三フッ化硫黄(サルファートリフルオライド)を用いることによって直接、ハロゲン基に変換することができる。あるいは、ヒドロキシル基は中間体のスルホネートの還元によって水素に還元することができる。ヒドロキシル基は、臭化アルキル、ヨウ化アルキル、又はアルキルスルホネートを用いるアルキル化によってアルコキシ基へ、あるいは例えば保護した2-ブロモエチルアミンを用いることによってアミノ低級アルコキシ基へ変換することもできる。アミド基は、標準的なアルキル化又はアシル化法によって、例えば、それぞれKH及びヨウ化メチル、あるいはピリジン中の塩化アセチルなどを用いることによってアルキル化又はアシル化することができる。エステル基は、カルボン酸に加水分解し、あるいはアルデヒド又はアルコールに還元することができる。カルボン酸は、標準のカップリング又はアシル化法によってアミンと結合させてアミドをもたらすことができる。必要な場合には、適切な保護基を置換基に対して用いて、反応性基が影響を受けないように確実にすることができる。これらの誘導体を調製するために必要な方法及び試薬は当業者に公知であり、一般的な教科書、例えば、March’s Advanced Organic Chemistry 第6版 2007年, Wiley Interscienceに見ることができる。
【0055】
上述した式Iの化合物の重要な特徴は、それらの生物活性、特に、ガン細胞に対するそれらの細胞毒性活性である。したがって、本発明によって、我々は、一般式(I)の化合物、あるいはその医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体の医薬組成物(これは細胞毒性を有する)、及び抗ガン剤としてのそれらの使用を提供する。本発明はさらに、式Iの化合物又はその医薬として許容可能な塩、互変異性体、プロドラッグ、又は立体異性体を、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とともに含む医薬組成物を提供する。
【0056】
医薬組成物の例には、経口、局所、又は非経口投与のための任意の固形(錠剤、丸薬、カプセル、顆粒など)又は液体(溶液、懸濁液、又は乳化液)の組成物が含まれる。
【0057】
本発明の化合物又は組成物の投与は、任意の好適な方法、例えば、静脈内注入、経口製剤、並びに腹腔内及び静脈内投与によるものであってよい。24時間以下、好ましくは1〜12時間、最も好ましくは1〜6時間の注入時間を用いることが好ましい。病院での夜通しの滞在なしで治療を行うことを可能にする短い注入時間が特に好ましい。しかし、注入は12〜24時間、あるいは必要であればさらに長くさえなりうる。注入は、例えば1〜4週間の適切な間隔で行うことができる。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、持続放出処方で、あるいはその他の標準的な送達手段によって、リポソーム又はナノスフェアカプセル封入によって送達してもよい。
【0058】
本化合物の正しい用量は、具体的な配合、応用形態、及び治療される具体的な部位、ホスト、及び腫瘍によって変わりうる。年齢、体重、性別、食餌、投与時間、排出速度、ホストの状態、薬物の組み合わせ、反応の感度、及び疾患の重篤度などのその他の因子も考慮に入れなければならない。投与は、最大の耐量内で連続して又は定期的に行うことができる。
【0059】
本明細書で用いるように、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」の用語には、腫瘍又は原発性、局所的、又は転移性のガン細胞又は組織の根絶、除去、変性、又は制御、及びガンの広がりを最小化又は遅延することが含まれる。
【0060】
本発明の化合物は、いくつかのガンに対する抗ガン活性を有し、それには肺ガン、結腸ガン、及び乳ガンが含まれるがこれらに限定されない。
【0061】
したがって、本発明の別の態様では、上で定義した式(I)の化合物を含む医薬組成物は、肺ガン、結腸ガン、又は乳ガンの治療のためのものである。
【実施例】
【0062】
[例1:海洋生物及び採集場所の記載]
ホモフィミア・ラメロサ(Homophymia lamellosa)(Vacelet & Vasseur, 1997)を、マダガスカルのセントマリー島(Saint Marie Island)(17°07.436’S/49°47.525’E)にて、3〜7mの範囲の深さでスキューバダイビングによって手で採集した。
【0063】
[例2:ピペコリデプシンAの単離]
例1の凍結試料(82g)をさいの目に切り、HO(3×300mL)で抽出し、次にCHOH:CHCl(50:50、3×300mL)の混合物で室温にて抽出した。一緒にした水及び有機抽出液を別々に濃縮して、それぞれ2.82g及び700mgの残留物を得た。
【0064】
水抽出物を、リクロプレップ(Lichroprep)RP−18で、HOからCHOHへと段階的に勾配をつけてVLCにかけた。CHOH:HO(3:1)で溶出させた画分(58.7mg)を、準分取逆相HPLCにかけた(シンメトリープレップ(SymmetryPrep)C18、7μm、7.8×150mm、勾配をつけたHO+0.1%TFA:CHCH+0.1%TFA(22分で25から40%CHCNへ、次に6分で40から100%へ)、UV検出、流量2.5mL/分)。このクロマトグラフィーの20〜26分の保持時間の画分を、準分取逆相HPLC(Atlantis dC18、10μm、10×150mm、定組成のHO+0.1%TFA:CHCH+0.1%TFA(64:36)、UV検出、流量2.5mL/分)によってさらに精製して、ピペコリデプシンA(3mg、保持時間31.45分)を得た。
【0065】
上記の有機抽出物をリクロプレップ(Lichroprep)RP−18で、HOからCHOHへと段階的に勾配をつけてVLCにかけた。CHOH:HO(3:1)で溶出させた画分(14.1mg)を、準分取逆相HPLCにかけて(シンメトリープレップ(SymmetryPrep)C18 7μm、7.8×150mm、勾配をつけたHO+0.1%TFA:CHCH+0.1%TFA(25分で22から42%CHCNへ、次に7分で42から100%へ)、UV検出、流量2.5mL/分)、さらなる量のピペコリデプシンA(2mg、保持時間23.84分)を得た。
【0066】
ピペコリデプシンA:非晶質白色固体。(+)HRMALDIMS m/z1655.90918[M+H](C741271626に対する計算値 1655.91020)。H(500MHz)及び13C NMR(125MHz)は表1を参照されたい。
【0067】
【表1A】

【表1B】

重なっている
HTMHA:3-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルヘプタン酸; DADHOHA:4,7-ジアミノ-2,3-ジヒドロキシ-7-オキソヘプタン酸; AHDMHA:2-アミノ-3-ヒドロキシ-4,5-ジメチルヘキサン酸
【0068】
【化6】

【0069】
[例3:ピペコリデプシンB及びCの単離]
例1の試料の第二の群(382.5g)を2-プロパノールとともに磨り潰し、徹底的に抽出した(4×400mL、2×300mL)。一緒にした抽出物を濃縮して13.19gの粗生成物を得た。この粗生成物を300mLのHOに溶かし、ヘキサン(3×300mL)、EtOAc(3×300mL)、及びn-ブタノール(3×100mL)で抽出した。
【0070】
n-ブタノール抽出液を蒸発させて5.86gの粗生成物を得て、これをリクロプレップ(Lichroprep)RP−18で、HOからCHOHへ、次にCHOH:CHCl(50:50)へと段階的に勾配をつけてVLCにかけた。CHOH:HO(75:25)及びCHOH:HO(85:15)で溶出させた画分を貯めて592.5mgの画分を得て、これをHO:CHOH(35:65)からCHOHへ段階的に勾配をつけてRP−18カラムクロマトグラフィーにかけた。HO:CHOH(30:70)で溶出した画分(223.4mg)を分取HPLC(シンメトリー(Symmetry) C18、7μm、19×150mm、勾配をつけたHO+0.1%TFA:CHCH+0.1%TFA(25分で22から42%CHCNへ、次に7分で42から100%へ);流量:15mL/分、UV検出)にかけて、ピペコリデプシンA及びB(24.2から26.2分の保持時間)の混合物を含む画分を得た。この画分を、準分取HPLC(Xブリッジプレップ(X-Bridge Prep)C18、5μm、10×150mm、定組成HO+0.1%TFA:CHCN+0.1%TFA(65:35)、流量:2.3mL/分、UV検出)によってさらに精製して、純粋ではないピペコリデプシンA(39.9mg、保持時間:26.49分)と純粋なピペコリデプシンB(13.6mg、保持時間:24.99分)を得た。ピペコリデプシンA(14.9mg)の最終的な精製は、準分取HPLC(クロマジル(Kromasil)100C、10μm、10×150mm、勾配をつけたHO:CHCN(30分で30から45%へ)、流量:2.5mL/分、UV検出、保持時間:20.70分)によって行った。
【0071】
CHOH及びCHOH:CHCl(50:50)で溶出した、リクロプレップ(Lichroprep)RP−18でのVLCからの画分を貯めて、分取HPLC(シンメトリー(Symmetry) C18、7μm、19×150mm、勾配をつけたHO+0.1%TFA:CHCH+0.1%TFA(25分で22から42%CHCNへ、次に7分で42から100%へ)、流量15mL/分、UV検出)にかけて、純粋なピペコリデプシンC(18.9mg)をそのトリフルオロ酢酸塩の形態で得た。
【0072】
ピペコリデプシンB:非晶質白色固体。(+)HRMALDIMS m/z1671.89954[M+H](C741271627に対する計算値 1671.90511)。H(500MHz)及び13C NMR(125MHz)、表2を参照されたい。
【0073】
ピペコリデプシンC:非晶質白色固体。(+)HRMALDIMS m/z1541.87463[M+H](C691211623に対する計算値 1541.87850)。H(500MHz)及び13C NMR(125MHz)、表3を参照されたい。
【0074】
【表2A】

【表2B】

溶媒のもとで
これらの位置&(δ 174.7、174.4、174.2、173.8、170.6、及び170.4ppm)におけるカルボニルシグナルはH-13Cロングレンジ結合を得ることができなかったのでシグナルの帰属をしなかった。3つのカルボニルシグナルは重なっており/検出されていない。
メチルシグナルは重なっている。
NH及びNHシグナルは重なっている。
これらの位置$(δ 7.54/6.81、7.50/6.96、7.53/7.30、及び7.16/6.79ppm)におけるNHのシグナル帰属は交換可能である。
シグナル帰属は交換可能である。
HTMHA:3-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルヘプタン酸; DADHOHA:4,7-ジアミノ-2,3-ジヒドロキシ-7-オキソヘプタン酸; AHDMHA:2-アミノ-3-ヒドロキシ-4,5-ジメチルヘキサン酸。
【0075】
【化7】

【0076】
【表3A】

【表3B】

これらの位置&(δ 176.0、174.1、173.9、173.6、及び170.0ppm)におけるカルボニルシグナルはH-13Cロングレンジ結合を得ることができなかったのでシグナルの帰属をしなかった。
これらの位置$(δ 6.75/7.22、及び6.76/7.54ppm)におけるNHのシグナル帰属は交換可能である。
溶媒の元で
シグナル帰属は交換可能である。
HTMNA:3-ヒドロキシ-2,4,6,8-テトラメチルノナン酸; ATHHA:4-アミノ-2,3,5-トリヒドロキシヘキサン酸、AMHA:2-アミノ-4-メチルヘキサン酸。
【0077】
【化8】

【0078】
[例4: 抗腫瘍活性の検出のためのバイオアッセイ]
このアッセイの目的は、試験する試料のインビトロでの細胞増殖抑制(腫瘍細胞増殖を遅延又は阻む能力)又は細胞毒性(腫瘍細胞を殺す能力)活性を評価することである。
【0079】
【表4】

【0080】
〔SBR比色試験を用いた細胞毒性活性の評価〕
細胞の増殖及び生存の定量的測定をするために、スルホローダミンB(SRB)反応を用いる比色試験が採用されてきている(Skehanら, J. Natl. Cancer Inst. 1990, 82, 1107-1112に記載された方法にしたがった)。
【0081】
この形態のアッセイは、SBS-標準96ウェル細胞培養マイクロプレートを用いる(Fairclothら, Methods in Cell Science, 1988, 11(4), 201-205; Mosmannら, Journal of Immunological Methods, 1983, 65(1-2), 55-63)。この試験で使用した細胞株の全ては、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection (ATCC))から入手し、様々なタイプのヒトのガンに由来する。
【0082】
細胞は、10%のウシ胎仔血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン、及び100U/mLのストレプトマイシンを補充したダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%CO、及び98%湿度で維持した。試験のためには、細胞はトリプシン処理を用いて未密集(subconfluent)培養物から採取し、計数及びプレーティングする前に新しい培地に再懸濁させた。
【0083】
細胞を96ウェル微量滴定プレートに、1ウェル当たり150μLの分注物(アリコート)中の5×10細胞をまき、薬物を含まない培地中で18時間(夜通し)プレート表面に接触させておいた。その後、各細胞株の1つの対照(未処理)プレートを(以下に記載するように)固定し、ゼロ時間の参照値のために用いた。培養皿を次に、10の段階希釈物(10から0.00262μg/mLの範囲の濃度)と3通りの培養物(DMSOの1%最終濃度)を用いて、試験化合物(完全な培地+4%DMSO中の4×原液の50μLアリコート)で処理した。72時間の処理の後、抗腫瘍効果を、SRB法を用いて測定した。手短に言えば、細胞をPBSで2回洗い、室温にて1%グルタルアルデヒド中で15分間固定し、PBS中で2回洗い、0.4%SRB溶液中で30分間室温にて染色した。次に細胞を1%酢酸溶液で数回すすぎ、室温で空気乾燥させた。次にSRBを10mMのトリス塩基(trizma base)に抽出し、自動分光光度プレートリーダー中で490nmにて吸光度を測定した。細胞の増殖及び生存は、NCIアルゴリズムを適用することによって見積もった(Boyd MR及びPaull KD. Drug Dev. Res. 1995, 34, 91-104)。
【0084】
三通りの培養物の平均±SDを用いて、用量応答曲線を、非線形回帰分析を用いて自動的に作り出した。3つの参照パラメータを、自動補間法によって計算した(NCIアルゴリズム):GI50=対照培養物と比較して50%細胞増殖阻害を引き起こす化合物濃度;TGI=対照培養物と比較して完全な細胞増殖阻害(細胞静止作用);及びLC50=50%の正味の細胞の死を引き起こす化合物濃度(細胞毒性効果)。
【0085】
表4は、本発明の化合物の生物活性のデータを示している。
【0086】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iの化合物、又はその医薬として許容可能な、塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【化1】

式中、
は、置換又は非置換C〜C18アルキル、置換又は非置換C〜C18アルケニル、置換又は非置換C〜C18アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環基から選択され;
は、水素、-CHCONHR16、及び-CH(OR17)CONHR18から選択され;
は、-CHCHCONHR19及び-CH(OR20)CHから選択され;
、R、R、R17、及びR20のそれぞれは独立に、水素、COR、COOR、CONR、SO、SO、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
、R14、R16、R18、及びR19のそれぞれは独立に、水素、COR、COOR、CONR、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
、R11、及びR13のそれぞれは独立に、置換又は非置換C〜C12アルキルから選択され;
及びR10のそれぞれは独立に、水素、COR、COOR、CONR、C(=NR)NR、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
12及びR15のそれぞれは独立に、OR、NR、COR、NRCONR、NRC(=NR)NR、ハロゲン、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環基から選択され;
nは3又は4であり;
は、水素、COR、COOR、CONR、SO、SO、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニルから選択され;
及びRのそれぞれは独立に、水素、置換又は非置換C〜C12アルキル、置換又は非置換C〜C12アルケニル、及び置換又は非置換C〜C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換ヘテロ環基から選択される。
【請求項2】
が、置換又は非置換C〜C18アルキル及び置換又は非置換C〜C18アルケニルから選択され、これらは分岐又は非分岐であってよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、置換C〜C14アルキル及び置換C〜C14アルケニルから選択され、それらが独立に、OR’、OSOR’、OSOR’、ハロゲン、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、OCON(R’)、CONHR’、及びCON(R’)から選択される1つ以上の置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、2−ヒドロキシ−1,3,5−トリメチルへキシル及び2−ヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチルオクチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、水素、−CHCONHR16、及び−CH(OR17)CONHR18から選択され、式中、R16及びR18はそれぞれ独立して、水素、及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択され、R17は、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rは、置換又は非置換C〜Cアルキルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が−CHCONHR16であり、式中、R16は、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
が−CH(OR17)CONHR18であり、式中、R17は、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rは置換又は非置換C〜Cアルキルであり、且つR18は、水素、及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
が、水素、−CHCONH、及び−CH(OH)CONHから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
が、−CHCHCONHR19、及び−CH(OR20)CHから選択され、式中、R19が水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択され、R20が、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rが、置換又は非置換C〜Cアルキルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
が、−CHCHCONH、及び−CH(OH)CHから選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
、R、及びRがそれぞれ独立に、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択され、式中、Rが置換又は非置換C〜Cアルキルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
、R、及びRが水素である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
及びR14がそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
及びR14が水素である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
が、置換又は非置換C〜Cアルキルであり、これは分岐又は非分岐であってよい、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
がメチル及び1,2−ジメチルプロピルから選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
及びR10がそれぞれ独立に、水素、置換又は非置換C〜C12アルキル、COR、CONR、及びC(=NR)NRから選択され、式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
及びR10が水素である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
11及びR13がそれぞれ独立に置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
11及びR13がそれぞれ独立にメチル及びエチルから選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
12及びR15がそれぞれ独立に、NR及びORから選択され、式中、Rは、水素、置換又は非置換C〜Cアルキル、COR、及びCOORから選択されることが好ましく、式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素及び置換又は非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
12及びR15がOH及びNHから選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
nが3である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
nが4である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
下記の構造を有する請求項1に記載の化合物、又はその医薬として許容可能な、塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【化2】

【化3】

【請求項27】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容可能な、塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体と、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項28】
医薬として使用するための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容可能な、塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【請求項29】
ガンを治療するための医薬の製造における、請求項1〜26のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容可能な、塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体の使用。
【請求項30】
ガンに罹患した患者の治療方法であって、治療の必要な前記の罹患した患者に、請求項1〜26のいずれか一項に記載した化合物の治療有効量を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2012−512839(P2012−512839A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541460(P2011−541460)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067470
【国際公開番号】WO2010/070078
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(505404208)ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ (6)
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MRS,S.A.
【Fターム(参考)】