説明

抗腫瘍類似体

【課題】腫瘍に対する細胞毒性及び選択性の最適な特徴を有し、全身性毒性が低減され、薬物速度論的特性が改善された、新規化合物の提供。
【解決手段】一般式I:


[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、H、OH、OR'、SH、SR'、SOR'、SO2R'、C(=O)R'、C(=O)OR'、NO2、NH2、NHR'、N(R')2、NHC(O)R'、CN、ハロゲン、=O、などからなる群よりそれぞれ個別に選択され;Xは、OR'、CN、(=O)、またはHから個別に選択され、各R'基は、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、=O、C(=O)H、C(=O)CH、COHなどからなる群よりそれぞれ個別に選択され;mは、0、1、または2であり;更にnは、0、1、2、3、または4である]のエクチナサイジン736の誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクチナサイジンの誘導体、特にエクチナサイジン736(ET−736)、これらをすくむ製薬組成物及び抗腫瘍化合物としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エクチナサイジンは、海洋被嚢類Ecteinascidia turbinataから単離される、非常に有効な抗腫瘍剤である。これまでに、特許及び化学文献中に、幾つかのエクチナサイジンが報告されている。例えば、以下が参照される。
【0003】
米国特許第5, 256, 663号には、熱帯海洋無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから抽出され、そこでエクチナサイジンと指定される物質を含む製薬組成物、及びこうした組成物の、哺乳類における抗菌剤、抗ウィルス剤、及び/または抗腫瘍剤としての使用が記載されている。
【0004】
米国特許第5, 089, 273号には、熱帯海洋無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから抽出され、そこでエクチナサイジン729、743、745、759A、759B、及び770と指定される物質の、新規な組成物が記載されている。これらの化合物は、哺乳類における抗菌剤、及び/または抗腫瘍剤として有用である。
【0005】
米国特許第5, 149, 804号には、カリブ海の無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから単離されるエクチナサイジン722及び736(Et 722及びEt 736)及びこれらの構造が記載されている。Et 722及びEt 736は、生体内で非常に低濃度にて、P388リンパ腫、B16黒色腫、及びルイス肺癌に対して、マウスを保護する。
【0006】
米国特許第5, 478, 932号には、カリブ海の無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから単離されるエクチナサイジン類が記載されており、これはP388リンパ腫、B16黒色腫、M5076卵巣肉腫、ルイス肺癌、及びLX-1ヒトの肺癌及びMX-1 ヒトの乳癌の、異種移植片に対して生体内保護を与える。
【0007】
米国特許第5, 654, 426号には、カリブ海の無脊椎動物、Ecteinascidia turbinataから単離される数種のエクチナサイジンが記載されており、これはP388リンパ腫、M5076卵巣肉腫、ルイス肺癌、及びLX1ヒトの肺癌及びMX-1 ヒトの乳癌の、異種移植片に対して生体内保護を与える。
【0008】
米国特許第5, 721, 362号には、エクチナサイジン化合物及び関連構造の形成のための合成方法が記載されている。
【0009】
米国特許第6, 124, 292号には、新規なエクチナサイジン様化合物類が記載されている。
【0010】
国際出願第0177115号、国際出願第0187894号、及び国際出願第0187895号には、エクチナサイジン類の新規な合成化合物、その合成及び生物学的特性が記載されている。
以下も参照されたい。
【0011】
[参考資料]


【0012】
2000年に、天然のビス(テトラヒドロイソキノリン)アルカロイド類、例えば様々な培養液から入手できるサフラシン抗生物質及びサフラマイシン及びから出発する、エクチナサイジン化合物及び関連構造物、例えばフタラサイジンの生成のための半合成方法が報告されている。Manzanares et al., Org. Lett., 2000, "Synthesis of Ecteinascidin ET-743 and Phthalascidin Pt-650 from Cyanosafrasin B", Vol. 2, No. 16, pp. 2545-2548;及び国際特許出願第0069862号を参照のこと。
【0013】
エクチナサイジン736は、最初にRinehartによって発見されたものであり、天然源から単離されたエクチナサイジン化合物中により一般的に見出されるテトラヒドロイソキノリン単位の代わりにテトラヒドロ-β-カルボリン単位を特徴とする。Sakai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1992, "Additional antitumor ecteinascidins from a Caribbean tunicate: Crystal structures and activities in vivo", vol. 89, 11456-11460.を参照のこと。
【0014】
【化1】

【0015】
国際出願9209607号は、エクチナサイジン736並びに、エクチナサイジン736のC及びD環に一般的な窒素上のメチルの代わりに水素を有するエクチナサイジン722、及びエクチナサイジン736のC環上のヒドロキシの代わりにメトキシを有するO-メチルエクチナサイジン736に係る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5, 256, 663号
【特許文献2】米国特許第5, 089, 273号
【特許文献3】米国特許第5, 149, 804号
【特許文献4】米国特許第5, 478, 932号
【特許文献5】米国特許第5, 654, 426号
【特許文献6】米国特許第5, 721, 362号
【特許文献7】米国特許第6, 124, 292号
【特許文献8】国際出願第0177115号
【特許文献9】国際出願第0187894号
【特許文献10】国際出願第0187895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
化学療法における臨床応用で得られる有用な結果にも関わらず、エクチナサイジン化合物類の分野における探求は、依然として、腫瘍に対する細胞毒性及び選択性の最適な特徴を有し、全身性毒性が低減され、薬物速度論的特性が改善された、新規化合物の識別のために継続されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、下記の一般式IまたはIaの化合物に関する。
【0019】
【化2】

【0020】
上記式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、H、OH、OR'、SH、SR'、SOR'、SO2R'、C(=O)R'、C(=O)OR'、NO2、NH2、NHR'、N(R')2、NHC(O)R'、CN、ハロゲン、=O、置換または無置換のC1-C25アルキル、置換または無置換のC2-C18アルケニル、置換または無置換のC2-C18アルキニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環からなる群よりそれぞれ別個に選択され;
Xは、OR'、CN、(=O)、またはHから別個に選択され、
各R'基は、H、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、=O、C(=O)H、C(=O)CH3、CO2H、置換または無置換のC1-C25アルキル、置換または無置換のC2-C18アルケニル、置換または無置換のC2-C18アルキニル、置換または無置換のアリールからなる群よりそれぞれ別個に選択され;
mは、0、1、または2であり;更に
nは、0、1、2、3、または4である。
【0021】
本発明はまた、エクチナサイジン736(式中、R1、R2、R3、R4、R5=H、R2=CH3CO-及びX=OH)及び一般式IまたはIaの関連化合物にも関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、化学式Iの化合物を含む製薬組成物に関する。
別の態様では、本発明は一般式IまたはIaの化合物の、癌の治療における使用に関する。
【0023】
一つの群として、本発明は、式IまたはIaの化合物を提供する。
式中、R1が水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、またはアラルキルであり;
R2及びR3が、水素、R'、C=OR'、またはCOOR'から別個に選択されるが、ここでR'は任意に置換されたアルキルまたはアルケニルであり、前記任意の置換基が、ハロ、アミノ酸から誘導されるアミノを含むアミノ、アリール、または複素環から選択され;
R4が、水素、アルキル、アルキレン、またはC(=O)OR'であり、ここでR'がアルキレンであり;
R5が、水素またはアルキルであり;
Xが、水素、ヒドロキシ、シアノ、またはケトであり;
mが、0または1であり;更に
nが、0または1である。
【0024】
本発明の化合物中の適切なハロゲン置換基は、F、Cl、Br、及びIを含む。
【0025】
アルキル基は、好ましくは1乃至24の炭素原子を含む。より好ましいアルキル基の群は、1乃至約12の炭素原子、更に好ましくは1乃至約8の炭素原子、更により好ましくは1乃至約6の炭素原子、最も好ましくは1、2、3、または4の炭素原子を有する。別のより好ましいアルキル基の群は、12乃至薬24の炭素原子、更に好ましくは12乃至約18の炭素原子、及び最も好ましくは13、15、または17の炭素原子を有する。メチル、エチル、及びイソプロピルを含むプロピルは、本発明の化合物において特に好ましいアルキル基である。ここで使用するように、アルキルなる語は、特記のない限りは環式及び非環式の両方の基を意味するが、但し環式基は少なくとも3つの炭素環メンバーを含むであろう。
【0026】
本発明の化合物中において好ましいアルケニル及びアルキニル基は、1つ以上の不飽和結合及び、2乃至約12の炭素原子、更に好ましくは2乃至約8の炭素原子、更により好ましくは2乃至約6の炭素原子、いっそう好ましくは1、2、3、または4の炭素原子を有する。ここで使用されるアルケニル及びアルキニルなる語は、環式及び非環式の両方の基を意味し、但し、直鎖状または分枝状の非環式基が一般的により好ましい。
【0027】
本発明の化合物中において好ましいアルコキシ基には、1つ以上の酸素結合及び、1乃至約12の炭素原子、更に好ましくは1乃至約8の炭素原子、更により好ましくは1乃至約6の炭素原子、最も好ましくは1、2、3、または4の炭素原子を有する基が含まれる。
【0028】
本発明の化合物中において好ましいアルキルチオ基は、一つ以上のチオエーテル結合及び、1乃至約12の炭素原子、好ましくは1乃至約8の炭素原子、更に好ましくは1乃至約6の炭素原子を有する。1、2、3、または4の炭素原子を有するアルキルチオ基が特に好ましい。
【0029】
本発明の化合物中において好ましいアルキルスルフィニル基には、1つ以上のスルホキシド(SO)基及び、1乃至約12の炭素原子、更に好ましくは1乃至約8の炭素原子、更により好ましくは1乃至約6の炭素原子を有する基が含まれる。1、2、3、または4の炭素原子を有するアルキルスルフィニル基が特に好ましい。
【0030】
本発明の化合物中において好ましいアルキルスルホニル基には、1つ以上のスルホニル(SO2)基及び、1乃至約12の炭素原子、更に好ましくは1乃至約8の炭素原子、更により好ましくは1乃至約6の炭素原子を有する基が含まれる。1、2、3、または4の炭素原子を有するアルキルスルホニル基が特に好ましい。
【0031】
好ましいアミノアルキル基には、1つ以上の第一級、第二級、及び/または第三級のアミン基及び、1乃至約12の炭素原子、更に好ましくは1乃至約8の炭素原子、更により好ましくは1乃至約6の炭素原子、いっそう好ましくは1、2、3、または4の炭素原子を有する基が含まれる。第二級及び第三級のアミン基が、一般的に第一級アミン部分よりも好ましい。
【0032】
好適な複素環基には、複素芳香族及び複素脂肪族基が含まれる。本発明の化合物中の好適な複素芳香族基には、N、O、またはS原子から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子が含まれ、例えば8-クマリニルを含むクマリニル、8-キノリニルを含むキノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチアゾリルが含まれる。本発明の化合物中における好適な複素脂環式基は、N、O、またはS原子から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子を含み、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノ、及びピロリジニル基を含む。
【0033】
本発明の化合物において好適な炭素環アリール基には、別々及び/または縮合したアリール基を含む多環式化合物を含む多環式化合物及び単環式化合物が含まれる。典型的な炭素環アリール基には、1乃至3の別々または縮合した環及び6乃至約18の炭素環原子が含まれる。とりわけ好ましい炭素環アリール基には、例えば2-置換フェニル、3-置換フェニル、2,3-置換フェニル、2,5-置換フェニル、2,3,5-置換の及び2,4,5-置換のフェニルなどの置換フェニルを含むフェニルが含まれ、1つ以上のフェニル置換基が電子吸引基、例えばハロゲン、シアノ、ニトロ、アルカノイル、スルフィニル、スルホニル等;1-ナフチル及び2-ナフチルを含むナフチル;ビフェニル;フェナントリル;及びアントラシルである場合が含まれる。
【0034】
本発明の化合物において置換R'基と言及されるのは、1つ以上の適当な基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード等のハロゲン;シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;アルカノイル、例えばC1−6アルカノイル基、例えばアシル等;カルボキサミド;1乃至約12の炭素原子、または1乃至約6の炭素原子、より好ましくは1−3の炭素原子を有する基を含むアルキル基;1つ以上の不飽和結合及び2乃至約12の炭素または2乃至約6の炭素原子を有する基を含む、アルケニル及びアルキニル基;1つ以上の酸素結合及び1乃至約12の炭素原子または1乃至約6の炭素原子を有するアルコキシ基;アリールオキシ、例えばフェノキシ;1つ以上のチオエーテル結合及び1乃至約12の炭素原子または1乃至約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルチオ基;1つ以上のスルフィニル結合及び1乃至約12の炭素原子または1乃至約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルフィニル基;1つ以上のスルホニル結合及び1乃至約12の炭素原子または1乃至約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルホニル基;1つ以上のN原子及び1乃至約12の炭素原子または1乃至約6の炭素原子を有する基などのアミノアルキル基;6以上の炭素を有する炭素環アリール、特にフェニル(例えばRが置換又は無置換のビフェニル部分である);及びアラルキル、例えばベンジル;複素脂肪族及び複素芳香族基を含む複素環基、例えば5乃至10の環原子を有して、そのうち1乃至4つがヘテロ原子であるもの、より好ましくは5または6つの環原子及び1または2つのヘテロ原子を有する複素環基、または10の環原子及び1乃至3つのヘテロ原子を有する複素環基によって、1つ以上の可能な位置で置換されていて良い、特定の部分、典型的にはアルキルまたはアルケニルを意味する。
【0035】
好ましいR'は、式R'、COR'、またはOCOR'の群中に存在し、アルキルまたはアルケニルであって、1つ以上の適当な基、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード、特にω-クロロまたはペルフルオロによって一つ以上の適当な位置で置換されていて良いもの;アミノアルキル基、例えば一つ以上のN原子及び1乃至約12の炭素原子または1乃至約6の炭素原子を有する基、特にアミノ酸、とりわけグリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリン、特にこうしたアミノ酸の保護形態を含む基;6以上の炭素原子を有する炭素環アリール、特にフェニル;及びアラルキル、例えばベンジル;複素脂肪族及び複素芳香族基を含む複素環基、特に5乃至10の環原子を有し、そのうち1乃至4つがヘテロ原子であるもの、より好ましくは、5または6つの環原子及び1または2つのヘテロ原子を有する複素環基、または10の環原子及び1乃至3つのヘテロ原子を有する複素環基、R'について許容される一つ以上の置換基で、特にジメチルアミノ等のアミノまたはケトで任意に置換された複素環基を含む。
【0036】
徹底的なものではないが、本発明の好ましい化合物は、下記の一つ以上の定義を有する。
R1が、水素;ヒドロキシ;ハロゲン、特にフルオロ;アルコキシ(アルキルが1乃至7の炭素原子のもの)、特にC1乃至C3のアルキル及びベンジルオキシ、とりわけメトキシ及びベンジルオキシである。特に好ましいのは、H、OH、またはOMeである。
【0037】
R2が、H;アセチル;アルキル-CO(アルキルが上限25の炭素原子のもの、例えば上限17、19、または21の炭素原子のものであり、好ましくは奇数の炭素原子が、偶数の炭素原子あるいはまた少数、例えば1乃至7の炭素原子の脂肪酸カルボン酸に相当する)、特にCH3-(CH2)n-CO-(式中、nは例えば1、2、4、6、12、14、または16である);ハロアルキル-CO-、特にトリフルオロメチルカルボニル、ヘプタフルオロブチリルカルボニル、または3-クロロプロピオニル;アリールアルキル-CO-;アリールアルケニル-CO-、特にシンナモイル-CO-;アルキル-O-CO-;特にt-ブチル-O-CO-、またはアルケニル-O-CO-、特にアリル-O-CO-、またはビニル-O-CO-である。
【0038】
R3が、好ましくは水素;アルケニル、特にアリル;アルキル-CO(アルキルが上限25の炭素原子のもの、例えば上限17、19、または21の炭素原子のものであり、好ましくは奇数の炭素原子が、偶数の炭素原子あるいはまた少数、例えば1乃至6の炭素原子の脂肪酸カルボン酸に相当する)、特にCH3-(CH2)n-CO-(式中、nは例えば1、2、4、6、12、14、または16である);アルキル-O-CO-、特にt-ブチル-O-CO-;アルケニル-O-CO-、特にアリル-O-CO-、及びビニル-O-COである。
【0039】
R4が、好ましくは、H、アルキル(アルキルは1乃至6の炭素原子のもの)、特にC1からC3アルキル;アルケニル、特にアリル、アルケニル-O-CO-、特にビニル-O-COであり、R4は、特にHである。
R5が、Hまたはアルキル(アルキルは1乃至6の炭素原子のもの)であり、R5は、特にHまたはMeである。
【0040】
XはH、-CNまたは-OH、とりわけ-OHまたは-CNである。
mは0または1である。
nは0または1である。
【0041】
R1が水素ではない化合物が、好ましい化合物の一群である。例えば化合物27乃至36を参照のこと。これらの化合物は、活性がより高く、治療上の窓口がより広く、更に、薬物速度論的特性が改善されている。好ましい置換基は、メトキシ、メチル、ヒドロキシ、ベンジルオキシ、フルオロである。
【0042】
R3がエステルまたはエーテルである化合物が、好ましい化合物に入る。一般的に、これらは毒物学特性が改善され、よって治療上の窓口がより広いものである。むろん、この位置にエステルまたはカーボネートを有する化合物、特にカーボネートが最も好ましい。嵩高な基(長鎖の脂肪族または芳香族残基)を有するエステルはより優れた結果を与える。カーボネートの中では、tert-ブチルオキシカルボニル(t-BOC)及びビニルオキシカルボニル(VOC)が、これらの位置に対する最も好ましい置換基である。
【0043】
R5が水素ではない化合物は、好ましい化合物の別の一群である。例えば化合物37乃至44を参照のこと。これらの化合物は、活性が低い傾向にあるが(細胞毒性)、毒性が低く、薬物速度論的特性が改善されている。R5が水素でない場合には不斉中心が発生し、ジアステレオマー間では活性に相違のあることが判明している。
【0044】
R2がエステルまたはエーテルである化合物もまた、好ましい化合物である。一般的に、これらは毒物学特性が改善され、よって治療上の窓口がより広いものである。むろん、この位置にエステルまたはカーボネートを有する化合物、特にカーボネートが最も好ましい。嵩高な基(長鎖の脂肪族または芳香族残基)を有するエステルはより優れた結果を与える。カーボネートの中では、tert-ブチルオキシカルボニル(t-BOC)及びビニルオキシカルボニル(VOC)が、これらの位置に対する最も好ましい置換基である。
【0045】
薬物速度論の優れた表示である、優れたADME特性(吸収−分配−代謝−排出)を有する化合物がある。
【0046】
上記のように、本発明の化合物、好ましくは嵩高な置換基を有するものは、優れた治療上の窓口を有し、フェノールの様々な酸及びカーボネートとのエステル化は、製薬特性の一般的な増大を生じる。肝細胞毒性には著しい減少がみられ、また、これらの誘導体が一層高い代謝安定性を有するシトクロム抑制を示さないことから、薬剤−薬剤相互作用に優れたプロフィールがみられる。
【0047】
幾つかの活性抗腫瘍化合物が調製されており、本開示の教示に従って、多くの更なる化合物を生成することができると思われる。
【0048】
これら化合物の抗腫瘍活性には、白血病、肺癌、結腸癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、肉腫、及び黒色腫が含まれる。
【0049】
本願発明の別のとりわけ好ましい実施態様は、抗腫瘍剤として有用であって、活性成分として本発明の化合物を含有する製薬組成物、並びにこれらの調製のための方法である。
【0050】
製薬組成物の例には、経口、局所、非経口の投与に適した組成を有する、あらゆる固体(錠剤、ピル、カプセル、顆粒等)または液体(溶液、懸濁液、またはエマルジョン)が含まれる。
【0051】
本発明の化合物または組成物の投与は、静脈輸液、経口調剤、腹腔内及び静脈内調剤等のあらゆる適当な方法であってよい。
【0052】
本発明の化合物及び組成物は、別の薬剤と共に使用して組み合わせ療法を提供してもよい。別の薬剤が同組成物の一部を形成しても、同時または別の時点での投与のための別個の組成物を提供してもよい。別の薬剤の同一性は、特に限定されず、好適な候補には、以下:
a)抗有糸分裂作用を有する薬剤、とりわけ細胞骨格成分をターゲットとするもの、微小管調節剤、例えばタキサン薬剤類(例えばタキソール、パクリタキセル、タキソテール、ドキセタキセル)、ポドフィロトキシン類、またはビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン);
b)代謝拮抗剤、例えば5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、プリン類似体、例えばペントスタチン、メトトレキセート);
c)アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(例えばシクロホスファミドまたはイホスファミド);
d)DNAをターゲットとする薬剤、例えばアントラサイクリン薬剤アドリアマイシン、ドキソルビシン、ファーモルビシン、またはエピルビシン;
e)トポイソメラーゼをターゲットとする薬剤、例えばエトポシド;
f)ホルモン及びホルモンアゴニストもしくはアンタゴニスト、例えばエストロゲン類、アンチエストロゲン類(タモキシフェン及び関連化合物)及びアンドロゲン類、フルタミド、ロイプロレリン、ゴセレリン、サイプロトロン、またはオクトレオチド;
g)抗体を含む、腫瘍細胞中におけるシグナル伝達をターゲットとする薬剤、例えばハーセプチン;
h)アルキル化剤、例えば白金剤類(cis-プラチン、カーボンプラチン、オキサリプラチン、パラプラチン)、またはニトロソウレア類;
i)腫瘍の転移に作用する可能性のある薬剤、例えばマトリックスメタロプロテアーゼインヒビター類;
j)遺伝子治療及びアンチセンス剤;
k)抗体療法;
l)海洋由来の別の生物活性化合物、とりわけジデミン(didemnins)類、例えばアプリジン;
m)ステロイド類似体、特にデキサタサゾン;
n)抗炎症剤、特にデキサメタゾン;更に
o)抗嘔吐剤、特にデキサメタゾン
が含まれる。
【0053】
本発明の特に好ましい、更に別の実施態様は、以下に詳細に説明される、本発明の化合物の合成中間体である。
最後に、本発明には、ここに説明される合成方法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の好ましい化合物の一つの群には、一つ以上の以下の置換基を有する本発明の化合物が含まれる。
R1は、水素;ヒドロキシ;ハロゲン、特にフルオロ;アルコキシ、特にメトキシ、またはアラルキル、特にベンジルである。
【0055】
R2は、水素;
アルキル、より好ましくは1乃至6の炭素原子のアルキル;
C(=O)R'(式中R'はアルキル、より好ましくは1乃至24の炭素原子、特に1乃至8または12乃至18の炭素原子のアルキル;ハロアルキル、更に好ましくはω-クロロ-またはペルフルオロ-アルキル(炭素原子1乃至4)、特にω-クロロエチルまたはペルフルオロメチル、エチルまたはプロピル;
複素環アルキル、更に好ましくは、5乃至10の環原子及び1乃至4のヘテロ原子を適切に有するω-複素環置換基を有する、炭素原子1乃至6のアルキル(3つのヘテロ原子を有する縮合複素脂環、例えばビオチンを含む);
アミノアルキル、更に好ましくはアルキルが炭素原子1乃至6、とりわけ炭素原子2つのものであり、ω-アミノ基が任意に、例えば(CH3)3C-O-C=O-等のアルコキシカルボニルまたは他の保護基で保護されているもの;
アリールアルキレン、特にシンナモイル;アルキレン、特にビニルまたはアリル;アラルキル、例えばベンジル;または
C(=O)OR'(式中、R'はアルキル、より好ましくは炭素原子1乃至6のアルキル、特に分枝状のアルキル;アルケニル、より好ましくはアリルである。
【0056】
R3は、水素;
アルキル、より好ましくは1乃至6の炭素原子のアルキル;
C(=O)R'(式中R'はアルコキシ、特に1乃至6の炭素原子のアルキル基を有するもの;アルキル、より好ましくは1乃至24の炭素原子、好ましくは1乃至8または12乃至18の炭素原子のアルキル;ハロアルキル、更に好ましくは炭素原子1乃至4のペルフルオロアルキル、特にペルフルオロメチル、エチル、またはプロピル;アリールアルキレン、特にシンナモイル;複素環アルキル、更に好ましくは、5乃至12の環原子及び1乃至4のヘテロ原子を適切に有するω-複素環置換基を有する、炭素原子1乃至6のアルキル(3つの環原子を有する縮合複素脂環、例えばビオチンを含む);
複素環アルキルであって、好ましくはそのアルキル基中に1つの炭素原子を有するもの、より好ましくは5乃至10の環原子及び1乃至4の環原子を有する複素脂環メチル、特に1乃至4のヘテロ原子を有する縮合複素環、例えばジメチルアミノクマリンまたはクマリン;アルキレン、特にアリル;アラルキル、例えばベンジル;
C(=O)OR'(式中、R'はアルキル、より好ましくは炭素原子1乃至6のアルキル;アルキレン、特にビニルまたはアリル;アラルキル、例えばベンジルである。
【0057】
R4は、水素;
アルキル、より好ましくは炭素原子1乃至6のアルキル;
C(=O)OR'(式中、R'はアルキレン、特にビニルである。
R5は、水素またはアルキルである。
Xは、水素、ヒドロキシ、シアノ、またはケトである。
mは0または1である。
nは0または1である。
【0058】
本発明の関連の態様において、該化合物は以下の一つ以上の特徴を有する。
R2はアセチルではない。好ましくは、これは少なくとも4、5、または6の炭素原子、例えば上限18または24の炭素原子を有する。適切な置換基には、エステルCOR'(式中、R'はアルキル、アルケニルであり、しばしば一つ以上の置換基を有する)が含まれる。アリール、複素環を含む適当な置換基を有する、アルキル、置換アルキル、アルケニル、及びアリールアルケニルが好ましい。R2についての別の定義には、アミノ酸、任意には保護されたアミノ酸から誘導される、式COR'のエステルが含まれる。
【0059】
R3は、水素ではない。好ましくは、これはR'、COR'、またはCOOR'であり、式中R'は幾分の嵩を持った置換基である。こうした嵩高な置換基には、分枝状鎖基、不飽和基、または芳香族基を含む環状基を有するものが含まれる。従って、分枝状アルキル、シクロアルキル、分枝状アルケニル、アリール、複素芳香族及び関連の基が、置換基R3の構造内に取り込むために好ましい。好ましくは、R3中の炭素原子の総数が2乃至24であり、更に好ましくは炭素原子が6乃至18である。典型的には、R3はエステル、エーテル、またはカーボネートであり、式COR'、R'またはCOOR'のものである。
【0060】
R5は、水素ではない。好ましくは、これはR'、COR'、またはCOOR'であり、式中R'は幾分の嵩を持った置換基である。こうした嵩高な置換基には、分枝状鎖基、不飽和基、または芳香族基を含む環状基を有するものが含まれる。従って、分枝状アルキル、シクロアルキル、分枝状アルケニル、アリール、複素芳香族及び関連の基が、置換基R5の構造内に取り込むために好ましい。好ましくは、R5中の炭素原子の総数が2乃至24であり、更に好ましくは炭素原子が6乃至18である。典型的には、R4はエステル、エーテル、またはカーボネートであり、式COR'、R'またはCOOR'のものである。
【0061】
アミノ及び別の置換基に対する保護基の例は、国際出願0069862号に記載されており、その開示はここに取り込むこととする。
【0062】
本出願は、英国特許出願の優先権を主張する。ここに、その英国先行出願の明細書中に記載され、本出願願中には記載されていないあらゆる開示を、参照のためにここに取り込むこととする。
【0063】
さらにまた、本発明の置換基に相当する置換基の議論について、国際出願0069862号、国際出願0177115号、国際出願0187894号、及び国際出願0187895号のそれぞれを、参照のためにここに明確に取り込むこととする。特定の置換基について、これらの先行出願のいずれに記載されたあらゆる定義も、本発明の化合物の置換基に適合させることができる。
【0064】
さらにまた、ここでは、国際出願9209607号を含む先行出願に開示された如何なる化合物についても権利を主張しない。発明者は、こうしたあらゆる化合物についての権利を放棄するものである。先行出願のそれぞれを、必要である可能性のあるあらゆる放棄の表現のため、ここに明確に取り込むこととする。
【0065】
国際特許出願0069862号に開示されているのは、化合物36(シアノサフラシンBからエクチナサイジン743への変換の中間体)である。
【0066】
【化3】

【0067】
この半合成中間体は、抗腫瘍治療用活性を有する可能性のある天然産のエクチナサイジン族の別の一員である、エクチナサイジン736の合成のための出発物質の役割を担ってきた。
【0068】
エクチナサイジン736及び、テトラヒドロ-β-カルボリン単位中及び18位(-OR4)に様々な置換基を有する関連化合物の、好ましい製造方法を、下記の反応スキームとして以下に示す。
スキーム1
【0069】
【化4】

【0070】
スキーム1に示されるように、中間体36は、2工程でET-736(または置換誘導体)に変換することができる。
【0071】
化合物36から本発明の好ましい化合物タイプIを製造するための第一工程は、対応する第一級または第2級アミンとの反応による、テトラヒドロ-β-カルボリン単位の導入である。
第二工程は、ACN/H2O中での硝酸銀との反応による、CN基のOH基への変換である。
【0072】
更に、好ましい化合物Iからのアシル化またはアルキル化反応を経て、様々な置換基(-OR4、18位及び、=NR5)を有する新たな誘導体を得ることができる。これら全ての場合において、出発物質中におけるR1及びR2は水素原子である。同一の中間体から、アリルブロミドとのアルキル化反応またはビニルクロロホルミエートとのアシル化反応を経て、N及びOアリル化のN及びOビニル誘導体を得ることができる。硝酸銀との反応によるこれら全ての化合物が、そのCN基がOH基に変換された最終生成物をもたらす。
【0073】
当業者であれば、ここに記載した反応スキームを、広範な置換第一級アミンの使用によって変更し、一連の置換エクチナサイジン736誘導体を製造しうること、及びこうして製造した化合物が、本発明の一部を成すと見なされるべきことは、容易に認識するであろう。
【0074】
特に、反応条件は、テトラヒドロ-β-カルボリン単位中の置換基の別の組み合わせに適合するように、変更することができる。
【0075】
エクチナサイジン694及び、5位及び18位(-OR6および-OR7)に様々な置換基を有する関連化合物を、以下の反応スキーム中に示す。
スキーム2
【0076】
【化5】

【0077】
スキーム2において、塩基性条件中でのC-5のアセチル基の加水分解により、この位置にヒドロキシル基を有する中間体を調製することができる。この化合物から、また酸無水物、酸塩化物またはカルボン酸とのアシル化反応によって、モノ-O置換並びに、(C-5及びC-18において)モノ及びジ-O置換された新たな誘導体が調製される。CN基をOHに変換する反応は、従来条件(CH3CN/H2O中の硝酸銀)で行われる。他方、Et-694は、Et-736から、KOH/MeOHを用いるC-5のアセチル基の加水分解を経て得られる。
【0078】
当業者であれば、ここに記載した反応スキームを、広範な置換第一級アミンの使用によって変更し、一連の置換エクチナサイジン736-CN誘導体を製造しうること、及びこうして製造した化合物が、本発明の一部を成すと見なされるべきことは、容易に認識するであろう。
【0079】
特に、反応条件は、テトラヒドロ-β-カルボリン単位中の、及びC-5及びC-8位にある置換基の別の組み合わせに適合するように、変更することができる。
【0080】
本発明を、理解のためであって限定と解されるべきでない以下の実施例を参照して、更に詳説する。
【実施例】
【0081】
スキーム1
(方法1)室温中、アルゴン下にて、酢酸中に1等量の出発物質の溶液(5.33E-5M)に、3.5等量のトリプタミンを加えた。反応混合物を、24時間撹拌した後、酢酸を蒸発させた。NaHCO3の飽和水溶液を加え、混合物をCH2CL2で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィーにより純粋化合物を得る。
【0082】
(方法2)室温中、アルゴン下にて、CH2CL2中に1等量の化合物1の溶液(0.032M)に、2等量のEt3N及び2等量のブチリルクロライドまたはBoc酸無水物(3等量)またはビニルクロロホルミエートを加えた。反応に続き、TLCを行い、NaHCO3の飽和水溶液でクエンチし、CH2CL2で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィーにより純粋化合物を得る。
【0083】
(方法3)室温中、アルゴン下にて、DMF中に1等量の化合物1の溶液(0.032M)に、3等量のCs2CO3及び3等量のアリルブロミドを加えた。反応に続き、TLCを行い、NaHCO3の飽和水溶液でクエンチし、CH2CL2で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィーにより2つの純粋化合物の混合物:化合物24(ET-736-CN-All)及び化合物25(ET-736-CN-diAll)を得る。
【0084】
(方法4)3:2のCH3CN/H2O中に1等量の出発物質の溶液(0.009M)に、30等量のAgNO3を加えた。24時間後に、飽和食塩水とNHCO3との1:1混合物でクエンチし、10分間撹拌して希釈し、CH2Cl2で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させた。クロマトグラフィーにより純粋化合物を得る。
方法1:
【0085】
【化6】

【0086】
【化7】

【0087】
【化8】

【0088】
【化9】

【0089】
【化10】

【0090】
【化11】

【0091】
【化12】

【0092】
方法2:
【0093】
【化13】

【0094】
【化14】

【0095】
方法3:
【0096】
【化15】

【0097】
方法4:
【0098】
【化16】

【0099】
【化17】

【0100】
【化18】

【0101】
【化19】

【0102】
【化20】

【0103】
【化21】

【0104】
【化22】

【0105】
【化23】

【0106】
【化24】

【0107】
【化25】

【0108】
【化26】

【0109】
スキーム2
【0110】
【化27】

【0111】
3:1のTHF/H2O中のET-736-CN溶液(0.027M)に、15等量のKOHを加えた。反応混合物を室温にて5時間撹拌した。この時間後に、反応をNaClの飽和水溶液でクエンチし、CH2Cl2で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させた。クロマトグラフィーにより純粋化合物50を得る。
【0112】
【化28】

【0113】
Et-694の誘導体:
(方法5)室温中、アルゴン下にて、CH2Cl2中に1等量のET-694-CN、化合物50の溶液(0.032M)に、2等量のピリジン及び2等量の酸塩化物、クロロホルミエート、または酸無水物を加えた。反応に次いで、TLCを行い、NaHCO3の飽和水溶液でクエンチし、CH2CL2で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィーにより純粋化合物を得る。
【0114】
【化29】

【0115】
【化30】

【0116】
【化31】

【0117】
C-5中のモノBoc誘導体が、6等量のBoc無水物及び6等量のピリジンと共に得られた。これらの条件で、C-5及びC-18中の微量のジBOC誘導体を第二生成物として単離した。この最終化合物は、反応をTEAを塩基として行った場合には主生成物として得られる。
【0118】
【化32】

【0119】
(方法6)室温中、アルゴン下にて、CH2Cl2中、1等量のET-694-CN、化合物50の溶液(0.032M)に、2等量の酸、2等量のEDC.HCl、及び2等量のDMAPを加えた。反応に次いで、TLCを行い、NaHCO3の飽和水溶液でクエンチし、CH2CL2で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィーにより純粋化合物を得る。
【0120】
【化33】

【0121】
(方法4)3:2のCH3CN/H2O中、1等量の出発物質の溶液(0.009M)に、30等量のAgNO3を加えた。24時間後に、飽和食塩水とNaHCO3との1:1混合物で反応をクエンチし、10分間撹拌し、希釈してCH2Cl2で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させた。クロマトグラフィーにより純粋化合物を得る。
【0122】
【化34】

【0123】
【化35】

【0124】
【化36】

【0125】
抗腫瘍スクリーニングのためのバイオアッセイ
これらアッセイの最終段階は、試験しようとする試料に細胞を絶えず投与することによって、生体外での腫瘍細胞培養の成長を阻害することである。
細胞系列:
【0126】
【表1】

【0127】
比色アッセイによる細胞成長の阻害
スルホローダミンB(SRB)反応を使用する比色タイプのアッセイは、細胞成長及び生活力の定量的測定に適合させている[Philip Skehan, et al. (1990), New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer drug screening, J. Natl. Cancer Inst., 82:1107-1112に従う]。
【0128】
この形式のアッセイは、9mm直径の96ウェル細胞培養マイクロプレートを使用する(Faircloth, 1988: Mosmann, 1983)。ほとんどの細胞系列は、様々なヒトの癌タイプから誘導されたAmerican Type Culture Collection (ATCC)から得られる。
【0129】
細胞を、0.1g/lのペニシリン及び0.1g/lストレプトマイシンスルフェートを加えた、RPMI 1640 10%FBS中に維持し、37℃で5%CO2及び98%の湿度にてインキュベートする。実験のために、トリプシンを使用して準融合性培地から細胞を採取し、プレート培養する前に新たな培地中に再懸濁させた。
【0130】
細胞を、96ウェルマイクロタイタプレートに、1つのウェル毎に細胞5×10として195μlの媒質のアリコート中に接種し、これらを18時間に亘って薬剤を含まない媒質中で培養することによって、プレート表面に接合させる。その後、試料を、10乃至10−8μg/mlの範囲のアリコート5μl中に加え、DMSO/EtOH/PBS(0.5:0.5:99)中に溶解させる。48時間の曝露後に、抗腫瘍効果をSRB法によって測定する:細胞を、冷温の50%(wt/vol)トリクロロ酢酸(TCA)50μlを加え、4℃にて60分間インキュベートすることによって固定する。プレートを、脱塩水で洗浄して乾燥させる。100μlのSRB溶液(1%酢酸中0.4%wt/vol)を各マイクロタイタウェルに加え、室温にて10分間インキュベートする。未結合のSRBを、1%酢酸で洗浄除去する。プレートを空気乾燥させ、結合した染色をTrisバッファで溶解させる。光学密度を、490nmの単波長にて、自動式電光光度プレートリーダーで読みとる。
【0131】
3複製のウェルからのデータの平均+/-SDの値を算出する。細胞反応についての幾つかのパラメータを算出することができる:GI=成長阻害、TGI=全成長阻害(細胞増殖抑制効果)及びLC=細胞損傷(細胞毒性効果)。
【0132】
得られた結果から、有効な癌治療薬としてのかかる薬剤の有用性が予測される。この技術のために、10μg/mlよりも小なるGI50値を示す化合物を、さらなる研究の継続のために選択する。GI50データにより、薬剤が細胞増殖抑制性であり得ることのみならず、腫瘍縮小の点でも可能性を有することが予測される。
【0133】
活性データ(モル)
【0134】
【表2】

【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
【表5A】

【表5B】

【0138】
【表6A】

【表6B】

【0139】
【表7A】

【表7B】

【0140】
【表8A】

【表8B】

【0141】
【表9A】

【表9B】

【0142】
毒性データ
毒性を、Toxicology in Vitro, 15 (2001)571-577, J. Luber Narod et al.:"Evaluation of the use of in vitro methodologies as tools for screening new compounds for potential in vivo toxicity"に報告されている方法により評価した。
【0143】
方法
薬剤の正常細胞への細胞毒性を評価するために、ATCCの指示通りに維持した正常細胞系列(ATCC、表1)を用い、(1つのウェル毎に細胞12000をプレート培養したFDC-P1以外は)1つのウェル毎に細胞5000の密度でプレート培養した、96ウェルプレートを使用した:AML-12、正常マウス肝臓細胞;NRK-52E、正常ラット腎臓細胞;L8、正常ラット骨格筋細胞;FDC-P1、正常マウス骨髄形成幹細胞;及びH9c2(2-1)、正常ラット心臓筋細胞。各プレート中の細胞を、試験薬剤を加える前に一晩沈殿させた。更に、定法(Federoff and Richardson, 1977)を用いて、胎児(日齢e-17)全脳(前脳及び脳幹)及び脊髄から一次ニューロン培地を調製した。
【0144】
各ウェル(100μl媒質)に、媒質中10μlの薬剤を様々な濃度(1×10-10−0.01mg/mlの最終濃度)で加え、更に5%CO2と共に37℃にて一晩インキュベートした。24時間後に、以下のアッセイを行った。全ての実験は、少なくとも3回繰り返し、二重にアッセイを行った。
【0145】
1.MTSアッセイ(CellTiter96水性)を、(全ての細胞タイプについて)製造者(Promega)の指示に従って行った。細胞生活力(ミトコンドリア活性)を、ホルマザン基体の酵素変換によって測定する。
【0146】
【表10】

【0147】
ADME-TOXプロフィールについての化合物の生体外評価
分配係数(log D)
化合物の分配係数は、その親水性親油性バランスの熱力学的尺度を与える。親油性は、化合物の薬物速度論的且つ薬力学的作用に影響する主要な構成要素である。水またはバッファと1-オクタノールとの間の分配係数は、化合物親油性の最も広く使用される尺度である。
【0148】
分配係数の測定を、小型化シェイク−フラスコ操作に基づいて評価した。バッファ(Dulbecco's PBS, pH 7.40)を水性相として使用した。試験化合物を、100μMの濃度でDMSOに溶解させた。オクタノールバッファ分配の際の最終DMSO濃度(1%)は、分配の際の偏倚を避けるために非常に低い。バッファ相中の化合物の量を、60分の平衡相の後に光ダイオードアレー検出を用いて、HPLCによって測定した。オクタノール相中の化合物の量を、検定試料から測定される化合物全量から、バッファ中の化合物の量を減算することにより算出する。
【0149】
Log Dを、オクタノール相中の化合物の量を、バッファ相中の化合物の量で除算したLog10として算出する。log Dマイクロアッセイの有効範囲は、およそ−0.5乃至+4.5である。
【0150】
生体外腸管吸収アッセイ
腸管上皮浸透性は、ヒトの吸収の速度及び程度、及び究極的には薬剤候補の生物学的利用能を決定する、重要な特徴である。Caco-2浸透性アッセイにより、膜の浸透性の迅速な検定が可能であり、これによって化合物をその吸収可能性について等級付けすることができる。
【0151】
Caco-2細胞系列は、培地中で分化してヒトの小腸の上皮官壁に類似する、ヒトの結腸腺癌細胞系列である。これは、薬剤運搬及び発見化合物の浸透性スクリーニングのための生体外腸管上皮モデルとして、広く用いられている。
【0152】
見かけ浸透性係数(Papp)を、ポリカーボネート膜フィルター上で培養した細胞単層(Caco-2のTC-7サブクローン)を横切る先端−基底外側(AからB)方向で測定した。化合物を、50μMで試験し、最終DMSO濃度を1%とした。試料を、HPLC-MSまたはHPLC-MS/MSにより分析した。
【0153】
試験化合物を、先端側に加え、2時間のインキュベートの後に基底外側での試験化合物の出現の速度に基づいて、Pappを測定した。2つの参照化合物、プロプラノロール(高度浸透性)及びラニチジン(浸透性に乏しい)を、コントロールとして各アッセイにおいて試験する。このアッセイの結果は、化合物を、その吸収可能性について等級付けするために使用することができる。20×10-6cm/s以上のPappを有する化合物は、高度浸透性であるとみなされ、「浸透性が制限されていない」ようである。5×10-6cm/s未満のPappを有する化合物は、浸透性に乏しいとみなされ、「浸透性が制限されている」ようである。5×10-6cm/sより大であるが、20×10-6cm/s未満のPappを有する化合物は、中程度の浸透性を有するとみなされる。
【0154】
代謝
肝性代謝は、薬物速度論的作用の主要な決定因子であり、迅速な一次通過代謝は、低い生物学的利用能の主な原因である。貯留された肝臓ミクロソーム及び組換えシトクロムP450'sを、ヒット(hits)、リード(leads)、及び新規な製薬化合物の代謝検定について使用する。代謝スクリーニング研究の結果は、下記:
・化合物が代謝される初期速度の測定
・薬剤代謝の主要経路の検出
・生体内薬物速度論的作用の予測
・薬剤−薬剤相互作用の可能性の検出
において、有用である。
【0155】
ミクロソーム及び細胞質ゾルの両方の酵素活性を含む代謝安定性を、ヒトの肝臓S9ホモジネートを使用して測定した。試験化合物をメタノール中(0.625%)及びアセトニトリル中(0.625%)で濃度1Mに希釈し、ヒト肝臓プール(タンパク質=1mg/mL)中で60分間37℃にてインキュベートした。全ての分析物(代謝産物)に相当するピーク領域を、HPLC-MS/MSにより測定した。領域を記録し、各分析物についての内部標準に対する分析物のピーク領域の比率を測定した。60分後に残っている前駆体化合物の比率、及びゼロ時間に残っている量は、百分率で表され、代謝安定性として報告される。高い値は高い代謝安定性を意味する。
【0156】
シトクロムP450(CYP450)の阻害
シトクロムP450は、主に肝臓内に位置する関連酵素の一群であり、薬剤の代謝に関与する。薬剤によるこれらCYPの阻害は、薬剤−薬剤相互作用及び毒性に関連する。
CYP3A4は、成人に見られるCYP3A酵素の最も一般的な形態であり、ほとんどの薬剤相互作用に関係する形態である。CYP2D6は臨床的に有用な薬物の25%より多くを代謝する。
【0157】
CYP2D6阻害アッセイのために、化合物を、メタノール及びアセトニトリルのいずれも0.25%最終濃度にて、蛍光基体BFC(50μM)の存在下にて、二重に試験した。HFC(7-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルクマリン)中のBFC(7-ベンジルオキシ-4-トリフルオロメチルクマリン)の変換を、37℃にて30分間の酵素とのインキュベートの後に、蛍光分光光度計で測定した。
【0158】
いずれのアッセイについても、t=0で測定された蛍光強度を、適切なインキュベート時間の後に測定された値から減算する。ノイズに対するシグナルの比率を、試験化合物を含有するインキュベート中の蛍光物を、同様の溶媒媒体を含有するコントロール試料の場合と比較することによって算出する。コントロール活性のパーセンテージは、阻害(%)として算出され、報告される。
【0159】
生体外安全性検定、細胞生活力
化合物の毒性可能性を、一次性ヒト肝細胞(HEPG2)を使用して生体外で検出した。化合物を、最終DMSO濃度1%にて、30μMで二重試験した。37℃にて24時間に亘りインキュベートした後、酸化alarmarBlue(レサズリン)から還元alarmarBlue(レゾルフィン)への変換によって細胞生活力を測定した。クロルプロマジンを参照化合物として使用した。結果をコントロール値の阻害パーセンテージとして表す。
【0160】
ADME-TOX研究の結果
【0161】
【表11】

【0162】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式I:
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、H、OH、OR'、SH、SR'、SOR'、SO2R'、C(=O)R'、C(=O)OR'、NO2、NH2、NHR'、N(R')2、NHC(O)R'、CN、ハロゲン、=O、置換または無置換のC1-C25アルキル、置換または無置換のC2-C18アルケニル、置換または無置換のC2-C18アルキニル、置換または無置換のアリール、置換または無置換の複素環からなる群よりそれぞれ別個に選択され;
Xは、OR'、CN、(=O)、またはHから別個に選択され、
各R'基は、H、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、=O、C(=O)H、C(=O)CH3、CO2H、置換または無置換のC1-C25アルキル、置換または無置換のC2-C18アルケニル、置換または無置換のC2-C18アルキニル、置換または無置換のアリールからなる群よりそれぞれ別個に選択され;
mは、0、1、または2であり;更に
nは、0、1、2、3、または4である]
の化合物。
【請求項2】
式中、R1が水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、またはアラルキルであり;
R2及びR3が、水素、R'、C=OR'、またはCOOR'から別個に選択されるが、ここでR'は任意に置換されたアルキルまたはアルケニルであり、前記任意の置換基が、ハロ、アミノ酸から誘導されるアミノを含むアミノ、アリール、または複素環から選択され;
R4が、水素、アルキル、アルキレン、またはC(=O)OR'であり、ここでR'がアルキレンであり;
R5が、水素またはアルキルであり;
Xが、水素、ヒドロキシ、シアノ、またはケトであり;
mが、0または1であり;更に
nが、0または1である;
請求項1の化合物。
【請求項3】
式中、R1が、水素、ヒドロキシ、フルオロ、メチル、メトキシ、またはベンジルオキシであり、更にnが0または1である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
式中、R2が、水素、アセチル、トリフルオロメチルカルボニル、ヘプタフルオロブチリルカルボニル、3-クロロプロピオニル、シンナモイル-CO-、t-ブチル-O-CO-、アリル-O-CO-、またはビニル-O-COである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式中、R3が、水素;アリル;CH3-(CH2)n-CO-(式中、nは、1、2、4、6、12、14、または16である);t-ブチル-O-CO-;アリル-O-CO-;またはビニル-O-COである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式中、R4が、水素;C1からC3アルキル;アリル;またはビニル-O-COである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式中、R5が、水素またはメチルであり、mが0または1である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Xが、ヒドロキシまたはシアノである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R1が、水素ではない、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R2が、アセチルではない、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R3が、水素ではない、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R5が、水素ではない、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の化合物を、製薬品として許容される希釈剤と共に含む、製薬組成物。
【請求項14】
癌の治療のための医薬の調製における、請求項1に記載の一般式Iの化合物の使用。

【公開番号】特開2011−26331(P2011−26331A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209928(P2010−209928)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【分割の表示】特願2003−519076(P2003−519076)の分割
【原出願日】平成14年8月6日(2002.8.6)
【出願人】(501440835)ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ (30)
【Fターム(参考)】