説明

抗菌・防汚塗装物

【課題】簡単な構成で防汚性と抗菌性という異なる機能を兼ね備えた塗装層とすることができる。防汚機能、抗菌機能という異なる機能をいずれも確実に発揮できる。防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料との微小領域での塗り分けの程度により、防汚性、抗菌性に対する顧客の要望に応じた様々な要望に対応した抗菌・防汚塗装物を提供できる。
【解決手段】基材1に形成された塗装層2が、オンデマンド方式の塗装で形成されたものである。塗装層2が、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とを微小領域で塗り分けることで構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンデマンド方式の塗装により形成された抗菌・防汚塗装物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗菌剤と防汚剤とを添加混合した塗料を基材の表面に塗装して、抗菌性と、防汚性という2つの機能を兼ね備えた塗装層を形成することが特許文献1により知られている。
【0003】
上記従来例にあっては、抗菌剤と防汚剤とを添加混合した塗料をスプレー塗装、ロール塗装、フローコータ塗装などにより塗装するものである。
【0004】
しかしながら、抗菌剤と防汚剤とを添加混合した塗料をスプレー塗装、ロール塗装、フローコータ塗装などにより塗装して抗菌性と、防汚性という2つの機能を兼ね備えた塗装層を形成するものにおいては、例えば、抗菌性と、防汚性のどちらの機能をより優先するのかといったような顧客の様々な要望に対応するには、塗料中への抗菌剤、防汚剤の添加量、抗菌剤と防汚剤の添加割合等を変更した塗料をその都度調整し、その個々の要望に対応するように調整した塗料をスプレー塗装、ロール塗装、フローコータ塗装などにより塗装する必要があり、このため、多品種、少量生産(塗装)には適応し難く、また、抗菌剤と防汚剤とを添加混合した塗料で塗装層を構成してあるので、塗料中における抗菌剤と防汚剤との分散状態が不均一となったり、あるいは、抗菌剤と防汚剤とに比重差がある場合は、一方は塗装層の表面側においてリッチとなり、他方は塗装層の底側においてリッチとなり、このため、抗菌性と、防汚性という2つの機能のうち、表面側にリッチとなった剤のみが機能するという事態にもなりかねないという問題がある。
【0005】
また、抗菌剤を添加した塗料と、防汚剤を添加した塗料とを基材の表面に塗り分けて抗菌性のある塗装層と、防汚性のある塗装層とよりなる塗装層を形成することも考えられるが、従来のように塗料をスプレー塗装、ロール塗装、フローコータ塗装などにより塗装するものにおいては広い領域でしか塗り分けができず、微小領域を塗り分けることなどできない。したがって、塗り分けられた広い領域において、ある部分では抗菌性はあるが、防汚性はなく、また、ある部分では防汚性はあるが、抗菌性はないということになり、目的とするような抗菌性、防汚性の両機能を兼ね備えた抗菌・防汚塗装物を構成できないという問題がある。
【0006】
一方、インクジェットに代表されるオンデマンド方式の塗装方法も従来から知られており、このインクジェットに代表されるオンデマンド方式の塗装方法は、既存の塗装方法に比べて微小な狙った位置に的確に吐出(吹きつけ)することで写真に匹敵するような鮮明な画像を作り出すことができるが、従来のオンデマンド方式の塗装方法では、色の異なる複数の塗料を微小領域で塗り分けて鮮明な画像を作り出すようにするためのものでしかなく、複数の塗料は、単に顔料が異なるのみで、色が異なることを除けば基本的な塗料の性質は同じ性質、つまり、単一機能のものでしかなく、複数種類の機能の異なる機能性塗料を塗り分けるものではなく、ましてや、オンデマンド方式で塗装された塗装層が防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とを微小領域で塗り分けることで構成してあるものなど従来存在しなかった。
【特許文献1】特開平5−309328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡単な構成で防汚性と抗菌性という異なる機能を兼ね備えた塗装層とすることができ、また、防汚機能、抗菌機能という異なる機能をいずれも確実に発揮でき、また、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料との微小領域での塗り分けの程度により、防汚性、抗菌性に対する顧客の要望に応じた様々な要望にすることを可能とした抗菌・防汚塗装物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る抗菌・防汚塗装物は、基材1に形成された塗装層2が、オンデマンド方式の塗装で形成されたものであり、且つ、該塗装層2が、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とを微小領域で塗り分けることで構成してあることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、オンデマンド方式の塗装により、微小領域に防汚性を有する塗料を塗布することで形成された防汚機能を有する微小塗装部2aと、抗菌性を有する塗料を塗布することで形成された抗菌機能を有する微小塗装部2bとが塗り分けられて形成してあることになり、簡単な構成で、防汚機能を有する微小塗装部2aにより防汚性という単機能を集中的に発揮でき、また、これに隣接する抗菌機能を有する微小塗装部2bにより抗菌性という単機能を集中的に確実に発揮でき、これらが微小領域で塗り分けられているので、結果的に、抗菌性に優れた且つ汚れ難い塗装層2を有する抗菌・防汚塗装物を提供できることになる。また、塗装層2が、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とをオンデマンド方式の塗装により微小領域で塗り分けることで構成してあるので、微小領域における防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料との微小領域での塗り分けの程度により、防汚性、抗菌性に対する顧客の要望に応じた様々な要望に対応した抗菌・防汚塗装物を提供することができる。
【0010】
また、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とが同一色であることが好ましい。
【0011】
このような構成とすることで、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とを微小領域で塗り分けて塗装層2を構成してあるにもかかわらず、塗装層2の外観が同一塗装を塗布して構成されたような外観の抗菌・防汚塗装物を構成することができる。
【0012】
また、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とが異なる色であることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることで、微小領域で異なる色で塗り分けられていることになり、抗菌性に優れた且つ汚れ難い塗装層2の外観を細かな斑模様にでき、しかも、防汚機能を有する部分と抗菌機能を有する部分とが視覚的に区別でき、斑模様における両者の色の占める面積の割合により、防汚機能、抗菌機能の度合いや、どちらの機能がより優先しているかといったことが視覚的に分かり、使用場所や顧客の要望に対応した機能のものを視覚的に選択できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、簡単な構成で効果的に防汚機能と抗菌機能と発揮できる従来にない塗装物を提供でき、また、微小領域における塗り分けの程度により、防汚性、抗菌性に対する顧客の要望に応じた様々な要望に対応した抗菌・防汚塗装物を提供できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
図1には本発明の抗菌・防汚塗装物Aが示してある。抗菌・防汚塗装物Aは、基材1の塗装面である表面に塗装層2を形成することで構成してある。基材1は建築関連部材、各種鋼板、フィルム、プラスチック部材、無機材料などを挙げることができるが特に材料の限定は無い。塗装層2はインクジェットなどのオンデマンド方式の塗装により形成されたもので、防汚性を有する塗料により形成される防汚機能を有する微小塗装部2aと、抗菌性を有する塗料により形成される抗菌機能を有する微小塗装部2bとを微小領域で塗り分け形成することで構成してある。
【0017】
すなわち、実施形態においては、塗装部2の全面において防汚機能を有する無数の微小塗装部2aと、抗菌機能を有する無数の微小塗装部2bとが互いに交互に存在するように隣接一体化した関係で存在している。
【0018】
上記防汚機能を有する無数の微小塗装部2aと、抗菌機能を有する無数の微小塗装部2bとが互いに交互に存在する塗装層2を形成するには、インクジェットなどのオンデマンド方式の塗装で塗装することで形成する。
【0019】
オンデマンド方式の塗装は、インクジェット塗装方式を例にとって説明すると、1ノズルから数ピコリットルのインク液(塗料)を吐出して基材1の表面の狙った位置に吹き付けることで、吹き付けられた塗料が1ドットとなり、その点が連続したり、集積したりして面を構成することで基材1の表面に塗装層2を形成するものであり、本発明においては、まず、防汚性を有する塗料又は抗菌性を有する塗料のいずれか一方をノズルから吐出して、図2(a)のように、無数の独立したドットが存在するように又は複数のドットが集合したドット集合体が無数に独立して存在するように吹き付ける。次に、図2(b)のように、防汚性を有する塗料又は抗菌性を有する塗料のうち他方の塗料を別のノズルから吐出して、上記先に吐出してドット間またはドット集合体間の隙間の部分を埋めるように吹き付ける。つまり、防汚性を有する塗料の微小滴と抗菌性を有する塗料の微小滴とが交互に配置されることで微小領域が塗り分けられることになる。
【0020】
図2においてはまず、図2(a)のように防汚性を有する塗料を吹き付けてドット又は複数のドットが集合したドット集合体よりなる防汚性を有する微小塗装部2aを形成し、その後、図2(b)のように無数の防汚性を有する微小塗装部2a間の隙間を埋めるように抗菌性を有する塗料を吹き付けてドット又は複数のドットが集合したドット集合体よりなる抗菌性を有する微小塗装部2bを形成することで、塗装層2を形成してあるが、抗菌性を有する塗料を先に吹き付け、防汚性を有する塗料を後で吹き付けるようにしてもよい。
【0021】
ここで、防汚性を有する塗料とは、塗料中に防汚剤を混練添加したものであり、使用される防汚剤としては、例えば、フッ素化樹脂粉末などを用いることができるが、必ずしもこれにのみ限定されず、従来から公知の種々の防汚剤を用いることができる。
【0022】
また、抗菌性を有する塗料とは、塗料中に抗菌剤を混練添加したものであり、使用される抗菌剤としては、例えば、銀シリカゲル系の抗菌剤粒子を用いることができるが、必ずしもこれにのみ限定されず、従来から公知の種々の抗菌剤を用いることができる。
【0023】
上記のような構成の抗菌・防汚塗装物Aは、防汚機能を有する無数の微小塗装部2aと抗菌機能を有する無数の微小塗装部2bとが交互に存在して塗装層2を形成してあるので、防汚機能を有する微小塗装部2aにより防汚性という単機能を集中的に発揮でき、また、これに隣接する抗菌機能を有する微小塗装部2bにより抗菌性という単機能を集中的に発揮でき、これが微小領域で隣接して交互に存在するので、塗り分けられた微小領域の集合としてのある広がりを持った塗装部2としてみると、抗菌性に優れた且つ汚れ難い塗装層2を有する抗菌・防汚塗装物Aを提供できることになる。
【0024】
また、塗装層2が、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とをオンデマンド方式の塗装により微小領域で塗り分けることで構成してあるので、前述のように微小領域における防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料との微小領域での塗り分けの程度により、例えば、微小領域において防汚性を有する塗料の塗布領域を抗菌性を有する塗料を広くするように塗り分けたり、あるいは、この逆に塗り分けたり、その塗り分けの比率を変えたりするに当たり、防汚性を有する塗料、抗菌性を有する塗料のそれぞれの配合を変えなくても、各ノズルからの塗料の吐出を調整する制御をおこなうだけで簡単に対応できる。使用場所、使用目的、あるいは顧客の要望に簡単に対応して目的とする防汚機能、抗菌機能を備えた抗菌・防汚塗装物を構成できる。
【0025】
また、前述のようにオンデマンド方式の塗装により微小領域を防汚性を有する塗料の微小滴と抗菌性を有する塗料の微小滴とが交互に配置されて塗り分けられることで、滴と滴との混合を防ぐことができるが、更に、防汚性を有する塗料の溶剤と抗菌性を有する塗料の溶剤とをいずれか一方が油、他方が水といったように混合しない材料により作製すれば、滴同士の混合を更に防止できる。
【0026】
更に、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とが同一色とする(つまり、防汚性を有する塗料に添加する顔料と、抗菌性を有する塗料に添加する顔料を同じ顔料とする)ことで、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とを微小領域で塗り分けて防汚機能、抗菌機能の両機能を有する塗装層2を構成してあるにもかかわらず、塗装層2の外観が同一塗装を塗布して構成されたような外観にできる。
【0027】
また、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とが異なる色とする(つまり、防汚性を有する塗料に添加する顔料と、抗菌性を有する塗料に添加する顔料を異ならせる)と、微小領域で異なる色で交互に塗り分けられることになり、抗菌性に優れた且つ汚れ難い塗装層2の外観を細かな斑模様のような色模様にできて外観が良くなる。しかも、防汚機能を有する点状の部分と抗菌機能を有する点状の部分とが視覚的に区別でき、斑模様における両者の色の占める面積の割合により、防汚機能、抗菌機能の度合いや、どちらの機能がより優先しているかといったことが視覚的に分かり、複数種類の抗菌・防汚塗装物Aの中から使用場所や顧客の要望に対応した機能のものを視覚的に簡単に選択することが可能となる。
【0028】
なお、基材1に形成する塗装層2としては、塗装層2全面が、防汚機能を有する微小塗装部2aと、抗菌性を有する塗料により形成される抗菌機能を有する微小塗装部2bとが交互に存在するものであってもよく、また、塗装層2の一部が防汚機能を有する微小塗装部2aと、抗菌性を有する塗料により形成される抗菌機能を有する微小塗装部2bとが交互に存在する部分で、他の部分は防汚機能を有する塗料のみ塗布することによって形成された部分、または、抗菌機能を有する塗料のみを塗布することによって形成された部分、あるいは、防汚機能、抗菌機能のいずれも備えていない塗料を塗布することによって形成された部分であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の拡大断面図である。
【図2】(a)(b)は同上の塗装順序を示す説明のための断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基材
2 塗装層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に形成された塗装層が、オンデマンド方式の塗装で形成されたものであり、且つ、該塗装層が、防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とを微小領域で塗り分けることで構成してあることを特徴とする抗菌・防汚塗装物。
【請求項2】
防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とが同一色であることを特徴とする請求項1記載の抗菌・防汚塗装物。
【請求項3】
防汚性を有する塗料と、抗菌性を有する塗料とが異なる色であることを特徴とする請求項1記載の抗菌・防汚塗装物。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−289873(P2007−289873A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121316(P2006−121316)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】