説明

抗菌性樹脂成形体およびその製造方法

【課題】透明で溶出物が極力少ない、抗菌性に優れた抗菌性樹脂成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するポリマーで樹脂基材が被覆されている抗菌性樹脂成形体、特定の構造を有するポリマーを樹脂基材に含有する抗菌性樹脂成形体、および特定の構造を有するポリマー水溶液に樹脂基材の少なくとも一部に浸漬せしめ放射線を照射し、放射線照射後に加熱工程と洗浄工程をこの順に有する抗菌性樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗菌特性を有する樹脂成形体とその製造方法に関するものである。詳しくは、本発明は、透明性樹脂にも不透明樹脂にも材料の色調をそのまま維持して適用することができ、特に管状材料として好適に用いられる抗菌性樹脂成形体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内水回り関係や高温多湿の場所等の衛生的な環境を必要とされる部分に、カビや細菌の発生を予防できる製品が要望されている。
【0003】
その他にも、具体的には食品包材、建築関係、衣類、衛生用品、台所用品および水処理装置などの各種高分子素材に抗菌性物質を含有させ、有害な微生物の生育を制御する技術が以前から存在している。
【0004】
特に、食品包材や水処理装置の場合には、人間への安全性の面から、無機系抗菌剤である銀イオン置換ゼオライトを主な抗菌性物質として用いることが一般的であった。金属イオンの中では銀イオンの抗菌性が最も強く、特に硝酸銀溶液は、医療や軍事用にも殺菌剤として用いられてきた歴史がある。しかしながら、銀含有抗菌剤は、無機系抗菌剤中では抗菌能が優れている反面、高温あるいは光照射により変色したり、透明性を損なう等という問題があり、また、抗菌性能が経時で低下するという課題もある。また、抗菌性物質としては、無機系化合物だけでなく天然品抗菌剤も安全性の面から注目を集めているが、天然品抗菌剤は抗菌性能が低いという課題がある。
【0005】
また、有機系抗菌剤は、一般的に抗菌性能が天然抗菌剤や無機系抗菌剤よりも優れているが、水や有機溶媒等に溶解しやすく、かつ揮発や分離もしやすい。また、有機系抗菌剤は、その毒性のために、かえって敬遠されがちである。したがって、有機系抗菌剤は、衣服、日用品、家具または建材のような抗菌性能を長期間必要とする用途には適さない。
【0006】
このような状況において、最近では、ポリマー素材に有機系抗菌剤をイオン結合または共有結合させた、不溶性で毒性を示さない固定化抗菌材料が開発されている。
【0007】
具体的に、カルボキシル基やスルホン酸基等の酸性基とイオン結合した4級アンモニウム塩基を有する抗菌成分を含む高分子物質を主体とした抗菌性材料が提案されている(特許文献1参照。)。また、ホスホニウム塩を高分子物質に固定化して用途の拡大を試みた発明として、ホスホニウム塩系ビニル重合体の抗菌剤についての提案(特許文献2参照。)や、ビニルベンジルホスホニウム塩系ビニル重合体の抗菌剤についての提案(特許文献3参照。)、そして他にも高分子系抗菌剤と親水性ビニル系重合体を含む抗菌性樹脂組成物についての提案(特許文献4参照。)がなされている。
【特許文献1】特開昭54−86584号公報
【特許文献2】特開平4−814365号公報
【特許文献3】特開平5−310820号公報
【特許文献4】特開2001−055518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の固定化抗菌材料には、水中溶出物が大きい等の問題があり、食品包装容器等に用いた場合は溶出物に由来する味の悪化等の問題があった。また、無機物である銀イオンを用いた抗菌性成形体もあるが、銀を配合すると黒ずんだ透明製の悪い成形体になってしまうため、内容物を見ることが出来ない。そこで、発明者らは放射線を用いて親水系高分子や4級アンモニウムを樹脂基材表面に被覆・含有させることによって抗菌性を発現させる方法によって、溶出物が非常に少ないため、食品包装容器に用いても味が変化せず、成形体が透明であるため内容物の確認が出来る等、従来からあった問題が解決されることを見出した。しかしながら、親水性高分子や4級アンモニウムは放射線を照射することによって、架橋反応し基材表面を被覆するものであるので、基材表面以外の部分にも架橋反応が大きく生じてゲル化してしまう場合がある。このように基材がゲル化物に包まれた状態になると、洗浄性に問題があるので、有機物や無機物の水中溶出量は多くなってしまい、非常に高いレベルの安全性を求められる食品用途、医療用途で用いることが出来なくなってしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものである。
【0010】
すなわち下記化学構造式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表し、aおよびbは0〜10の整数であり、pとqの比は0.1:99.9〜100:0である。)、
下記化学構造式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Wは酸素、硫黄またはセレンを表し、cは0〜10の整数である。)、
下記化学構造式(3)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、x、yおよびzはそれぞれ1〜10の整数で、mとnの比は0.1:99.9〜99.9:0.1であり、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および炭素原子との結合から選ばれる。)、
下記化学構造式(4)
【0017】
【化4】

【0018】
および、下記化学構造式(5)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、Yは炭素数2〜30のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数6〜30のアリール基またはハロゲン原子を表す。)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーで樹脂基材が被覆され、有機物水中溶出量が2ppm以下てあることを特徴とする抗菌性樹脂成形体であり、
下記化学構造式(1)
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表し、aおよびbは0〜10の整数であり、pとqの比は0.1:99.9〜100:0である。)、
下記化学構造式(2)
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、cは0〜10の整数である。)、
下記化学構造式(3)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、x、yおよびzはそれぞれ1〜10の整数で、mとnの比は0.1:99.9〜99.9:0.1であり、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および炭素原子との結合から選ばれる。)、
下記化学構造式(4)
【0027】
【化9】

【0028】
および、下記化学構造式(5)
【0029】
【化10】

【0030】
(式中、Yは炭素数2〜30のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数6〜30のアリール基またはハロゲン原子を表す。)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマー水溶液に、樹脂基材の少なくとも一部を浸漬せしめ、放射線を照射した後に加熱工程と洗浄工程をこの順に有することを特徴とする抗菌性樹脂成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の抗菌性樹脂成形体は、抗菌性が良好で、透明な樹脂材料に用いた場合には透明性を維持することができ、かつ不透明樹脂材料にもその色調をそのまま維持して適用することができ、そして食品用途および浄水器用途にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の抗菌性樹脂成形体の一の態様は、上記の化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーで樹脂基材が被覆されてなるものである。本発明で用いられるこれらのポリマーは、いずれも抗菌性のポリマーである。
【0033】
本発明では、樹脂基材を被覆するポリマーは、化学構造式(1)〜化学構造式(5)に示される繰り返し単位を有するポリマー単独でも、複数種併用されていても特に限定されない。
【0034】
本発明で用いられる化学構造式(1)〜化学構造式(5)に示される繰り返し単位を有する代表的なポリマーを挙げると、上記の化学構造式(1)の例としては、下記化学構造式(6)に示される繰り返し単位からなるカチオン性ポリビニルピロリドン(ビニルイミダゾリウムメトクロライドとポリビニルピロリドンの共重合体)、化学構造式(2)の例としては、下記化学構造式(7)に示される繰り返し単位からなるポリビニルピロリドン、化学構造式(3)の例としては、下記化学構造式(8)に示される繰り返し単位からなるポリエチレンイミン、化学構造式(4)の例としては、同式に示される繰り返し単位からなるポリビニルアルコール、化学構造式(5)の例としては、同式に示れる繰り返し単位からなるポリエチレングリコ−ルまたはポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
次に、これらの化学構造式(1)〜化学構造式(5)に示される繰り返し単位を有するポリマーについて、詳細に説明する。
【0039】
本発明で用いられる化学構造式(1)の繰り返し単位を有するポリマーに関し、化学構造式(1)中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表す。Aとbは0〜10の整数である。また、pとqの比は、0.1:99.9〜100:0の範囲であり、pとqの比はより好ましくは1:99〜99:1の範囲である。
【0040】
化学構造式(1)の繰り返し単位を有するポリマーの中でも代表的なポリマーとしては、毒性の低さ、入手のしやすさ、および取り扱いのしやすさから、化学構造式(6)の繰り返し単位からなるカチオン性ポリビニルピロリドン(ポリビニルイミダゾリウムメトクロライド)が好適である。
【0041】
本発明で用いられるカチオン性ポリビニルピロリドンは、ビニルピロリドンとアミンを含む化合物であり、pH4.5のときの電荷が1meq/g以上あることが望ましい。ここで、アミンとしては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジンン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0042】
カチオン性ポリビニルピロリドンとして、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールの共重合ポリマーや、ビニルピロリドンと3−メチル−1−ビニルイミダゾールメチルスルホン酸塩の共重合ポリマーが、BASF社などから市販されており、好適に用いられる。
【0043】
また、本発明においては、カチオン性ポリビニルピロリドン以外に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコールおよびグリコール系ポリマー等のポリマーが、本発明の効果を妨げない範囲で混合されていても良い。
【0044】
化学構造式(1)の繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量は、好ましくは200〜2000000であり、より好ましくは2000〜1000000であり、更に好ましくは5000〜500000である。なお、この重量平均分子量は、原料段階での分子量であり、最終製品においては、放射線架橋などにより分子量は前記値よりの遥かに大きなものとなっている場合もある。
【0045】
本発明で用いられる化学構造式(2)の繰り返し単位を有するポリマーとしては、化学構造式(7)の繰り返し単位を有するのポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0046】
本発明で好適に用いられるポリビニルピロリドンなど化学構造式(2)の繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量は、好ましくは2000〜2000000であり、より好ましくは10000〜1500000である。入手の容易さの点からは、市販されている重量平均分子量110万、4.5万、2.9万、9000、2900のポリビニルピロリドンが好適に用いられる。ここで記した化学構造式(2)の繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量は、樹脂成形体に使用する原料段階での分子量である。作製された樹脂成形体において、放射線架橋などの手段を用いた場合には、ポリマーの分子量は、原料段階での分子量より大きなものとなっている場合もある。
【0047】
ポリビニルピロリドンの商品例としては、“コリドン”(登録商標)12 PF、同17 PF、同25,同30、同90(BASF社製)、“ルビスコール”(登録商標)K 17、同K 30、同K 80、同K 90(BASF社製)、および“プラスドン”(登録商標)K−29/32、同K−25、同K−90、同K−90D、同K90−M(ISP社製)等のポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0048】
本発明で用いられるポリビニルピロリドンは、ホモポリマーが好適であるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合されたポリビニルピロリドン共重合体であってもかまわない。ここで、他の共重合モノマーの量は、80重量%以下であることが好ましい。
【0049】
ポリビニルピロリドン共重合体の商品例としては、“コリドン”(登録商標)VA 64、(BASF社製)、“ルビスコール”(登録商標)VA 64(BASF社製)、“ルビテック”(登録商標)VPI55 K18P、同VPI55 K72W、同Quat 73W、同VPMA 91W、同VPC 55 K65W(BASF社製)、および“プラスドン”(登録商標)S−630(ISP社製)等のポリビニルピロリドン共重合体が挙げられる。
【0050】
本発明で用いられる化学構造式(3)の繰り返し単位を有するポリマーとしては、化学構造式(8)の繰り返し単位を有するポリエチレンイミンが挙げられる。化学構造式(3)において、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および結合から選ばれるとは、A及びBが水素原子で構成される1級アミンのような直鎖状高分子、A又はBの一方が水素原子、もう一方が炭素原子との結合である2級アミンや、A及びBが炭素原子との結合である3級アミン等の分岐状高分子を表すものである。
【0051】
本発明で好適に用いられるポリエチレンイミンなどの化学構造式(3)の繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量は、好ましくは200〜2000000であり、より好ましくは1000〜150000であり、1級アミンである直鎖状高分子だけでなく、2級、3級アミンを含む分岐状のものが好ましく用いられ、1級、2級、3級アミンがそれぞれ単独でも2種類以上が混合されていても用いることができる。ここで記した重量平均分子量は、樹脂成形体に使用する原料段階での分子量である。作製された樹脂成形体において、放射線架橋などの手段を用いた場合には化学構造式(3)の繰り返し単位を有するポリマーの重量平均分子量は、原料段階での重量平均分子量より大きなものとなっていることがある。
【0052】
ポリエチレンイミンの商品例としては、“エポミン””(登録商標)SP−003、同SP−006、同SP−012、同SP−018、同SP−200、同SP−200、同SP−103、同SP−110、P−1000(日本触媒社製)等のポリエチレンイミンが挙げられる。
【0053】
本発明で用いられる化学構造式(4)に示した繰り返し単位を有するポリビニルアルコールは、その重量平均分子量は、好ましくは200〜400000であり、より好ましくは10000〜200000であり、さらに好ましくは10000〜150000である。ここで記したポリビニルアルコールの重量平均分子量は、樹脂成形体に使用する原料段階での分子量である。作製された樹脂成形体において、放射線架橋などの手段を用いた場合には、ポリビニルアルコールの分子量は原料段階での重量平均分子量より大きなものとなっている。
【0054】
本発明で用いられる化学構造式(5)に示される繰り返し単位を有するグリコール系ポリマーとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG:別名ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、 ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)グリコールポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)グリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルを用いることができ、中でもポリオキシエチレングリコール(PEGとポリオキシプロピレングリコール(PPG)好ましく用いられ、ポリエチレングリコールが最も好ましく用いられる。
【0055】
本発明で用いられるグリコール系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは40〜2000000であり、より好ましくは200〜150000である。ポリエチレングリコールを用いる場合でも、重量平均分子量は、同様に好ましくは200〜2000000であり、より好ましくは200〜150000である。ここで記したグリコール系ポリマーの重量平均分子量は、樹脂成形体に使用する原料段階での分子量である。作製された樹脂成形体において、放射線架橋などの手段を用いた場合にはグリコール系ポリマーの重量平均分子量は、原料段階での重量平均分子量より大きなものとなっている。
【0056】
本発明で用いられる樹脂基材を構成する樹脂としては、汎用の熱可塑性樹脂樹脂や熱硬化樹脂、あるいはゴム等を用いることができ、特に、疎水性高分子化合物が好ましく用いられる。
【0057】
かかる樹脂について具体例を挙げると、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリイミン、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、AS樹脂(スチレンとアクリロニトリルの共重合体)、ABS樹脂、ACS樹脂(塩素化ポリエチレンにアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合したもの)、メタクリル樹脂、ポリエチレン、EVA樹脂(エチレンと酢酸ビニル共重合体)、EVOH樹脂(エチレンビニルアルコ−ル)、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリブチレン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フッ素樹脂、(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、ポリアミド、ポリアセタール、飽和ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエ−テルケトン、液晶プラスチック、セルロース系ポリマー、熱可塑性エラストマー、人工ゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0058】
本発明において好ましく用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチレン、ポリビニリデンクロライドなどの熱可塑性樹脂であり、更に最も好ましく用いられる樹脂は、EVOH樹脂(エチレンビニルアルコ−ルポリマー)、シリコンゴムが挙げられ、これらの樹脂群には後述する補助剤無しでも抗菌効果を発現するものもある。
【0059】
また、本発明で用いられる樹脂基材は透明材料であることが好ましい。透明とは、厚み30μmのフィルム時に全光光線透過率が80%以上である材料を示す。
【0060】
全光光線透過率は厚みによって変化するもので、厚みが200μmの時は全光光線透過率が50%以上、厚みが1000μmの時は全光光線透過率が30%以上である材料が透明である。透明な抗菌性成形体からなる容器・包装材料等は中身の確認をすることが可能なため非常に有用である。
【0061】
ビニル型ポリマーでもポリイソブチレン、ポリビニリデンクロライドなどの放射線崩壊型ポリマーの場合には、放射線照射量を極めて低減して反応させることが好ましい。
【0062】
本発明では、樹脂基材の主成分である樹脂として、ポリスルホン系ポリマーが好ましく用いられる。ポリスルホン系ポリマーは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、ポリスルホンやポリエーテルスルホンが挙げられる。ポリスルホン系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは5000〜100000であり、より好ましくは10000〜80000であり、更に好ましくは15000〜50000である。
【0063】
ポリスルホンの商品例としては、“ユーデル”(登録商標)−1700、同P−3500(テイジンアモコ社製)、“ウルトラゾーン”(登録商標)S3010、同S6010(BASF社製)、“ビクトレックス”(住友化学)、“レーデル”(登録商標)A−200A、同A−300、“レーデル”(登録商標)R−5000、同R−5800(テイジンアモコ社製)、“ウルトラゾーン”(登録商標)E(BASF社製)、“スミカエクセル”(登録商標)(住友化学工業社製)等のポリスルホンが挙げられる。
【0064】
本発明では、ポリスルホンとポリエーテルスルホンが特に好適に用いられるが、本発明の効果を妨げない範囲で、本発明の機能性ポリマー以外の他のモノマーと共重合したものでも、他のポリマーとのブレンド体であっても良い。他の共重合モノマー、またはブレンドポリマーの添加量は特に限定するものではないが、30重量%以下であることが好ましい。
【0065】
本発明では、他の樹脂基材の主成分である樹脂素材として、エチレンビニルアルコ−ルの繰り返し単位からなる樹脂(EVOHポリマー)も好ましく用いられる。このポリマーの好ましい数平均分子量は、100〜10000000である。また、エチレン含有率は0.01〜99.99%が好ましく、最も好ましくは15〜80%であり、さらに好ましくは15〜50%である。
【0066】
エチレンビニルアルコ−ルポリマーの商品例としては、“エバール”(登録商標)L101、F101、H101、E101、G101(クラレエバールカンパニ−社製)、および“ソアノール”(登録商標)V2603、D2908、AT4403、A4412、H4815(日本合成化学社製)等のエチレンビニルアルコ−ルポリマーが挙げられる。
【0067】
本発明には、樹脂基材の少なくとも一部にシリコーンゴムが含有したものも好ましく用いられ、縮合重合型のもの、付加重合型のものいずれも使用可能である。
【0068】
付加重合型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、SiH基含有ポリシロキサン、さらには硬化速度を制御する目的で反応抑制剤、および硬化触媒を含む。ビニル基含有ポリジメチルシロキサンは、下記化学構造式(9)で表される構造を有し、分子末端および/もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。
【0069】
【化14】

【0070】
(式中、nは2以上の整数を示し、R1、R2は炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
上記式中のR1、R2は全体の50%以上がメチル基であることが好ましい。また、分子量としては数千〜数十万のものが使用できるが、その取扱い性、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜100万、さらには5万〜60万のものを用いることが好ましい。
【0071】
SiH基含有ポリシロキサンとしては、分子鎖中、または末端にSiH基を有する、例えば下記下記化学構造式(10)〜(13)で表されるような化合物を挙げることができる。
【0072】
【化15】

【0073】
【化16】

【0074】
【化17】

【0075】
【化18】

【0076】
(上記各式中、nは2以上の整数、mは1以上の整数を示す。)
SiH基含有ポリシロキサン中におけるSiH基の量としては、2個以上、さらには3個以上であることが好ましい。SiH基含有ポリシロキサンの添加量としては、シリコーンゴム層全組成物の0.1〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%である。ポリジメチルシロキサンとの量比ということで言えば、SiH基/ポリジメチルシロキサンのビニル基のモル比が1.5〜30であることが好ましく、さらに好ましくは10〜20である。このモル比が1.5未満である場合には、シリコーンゴム層の硬化が不足する場合があり、逆に30よりも大きい場合にはゴムの物性がもろくなり、柔軟性、耐傷性などに悪影響を与え易くなるためである。
【0077】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールなどが好ましく用いられる。反応抑制剤の好ましい添加量としては、シリコーンゴム組成物中の0.01〜10重量%、さらには0.1〜5重量%である。
【0078】
硬化触媒としては、III族遷移金属化合物、好ましくは、白金化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを一例として挙げることができる。このような硬化触媒の量は、シリコーンゴム層中に固形分として0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%であることが好ましい。添加する触媒量が0.01重量%未満である場合にはシリコーンゴム層の硬化が不十分となり、さらに感熱層との接着性に問題を生じる場合があるためである。他方20重量%より多い場合にはシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらすためである。シリコーンゴム層組成物中における白金などの金属の量で言えば、10〜1000ppm、好ましくは100〜500ppmであることが好ましい。
【0079】
また、これらの組成物の他に、縮合型シリコーンゴム層の組成物である水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シランもしくはシロキサン、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類等が好ましく、特にビニル基を有するものや、ケトキシミンシラン類が好ましい。
【0080】
また、縮合重合型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、水酸基含有ポリジメチルシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型など)、および硬化触媒を含む。
【0081】
水酸基含有ポリジメチルシロキサンも、下記化学構造式(9)で表される構造を有する。水酸基は分子末端および/もしくは主鎖中に位置することができるが、好ましく用いられるものは分子量末端に水酸基を有するものである。構造式中のR1、R2については、同様に全体の50%以上がメチル基であることが好ましい。分子量としては数千〜数十万のものが使用できるが、その取扱い性や、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜20万、さらには3万〜15万のものを用いることが好ましい。
【0082】
縮合重合型のシリコーンゴム層で用いられる架橋剤としては、下記化学構造式(14)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミンシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
【0083】
【化19】

【0084】
(式中、nは2〜4の整数を示し、R3は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基を示す。)上記式において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
【0085】
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン、テトラアリロキシシラン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類が好ましい。
【0086】
下記化学構造式(14)で表される架橋剤の添加量としては、シリコーンゴム層全組成物の1.5〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜10重量%である。ポリジメチルシロキサンとの量比ということで言えば、官能基X/ポリジメチルシロキサンの水酸基のモル比が1.5〜10.0であることが好ましい。このモル比が1.5未満である場合には、シリコーンゴム層溶液のゲル化が起こり易く、逆に10.0よりも大きい場合にはゴムの物性がもろくなり、基材の柔軟性、耐傷性などに悪影響を与え易くなるためである。
【0087】
本発明で用いられる樹脂基材には、補助剤が含まれているものも好ましく用いられる。補助剤としては、前記の化学構造式(2)〜化学構造式(5)に示される繰り返し単位を有するポリマーを単独で用いても良く、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
このように補助剤には、先に挙げた抗菌性のポリマーと同様の構造のものがあるが、両者はその使用方法が異なる。抗菌性のポリマーは、樹脂基材の表面を被覆することを主目的としているが、補助剤は、樹脂基材とそれを被覆する抗菌性のポリマーの密着を向上させることが主目的であり、樹脂基材中の補助剤と抗菌性のポリマーが化学的に結合するような場合には、非常に強固な被覆を得ることができる。強固な化学結合した抗菌性のポリマーは水への溶出も極めて僅かなので、人体に影響のある飲料や食品用途でも用いることができる。
【0089】
補助剤と樹脂基材の構成および複合方法は特に限定されるものではなく、補助剤と樹脂基材が積層されていてもよく、補助剤が樹脂に混合または相溶されていてもよいが、混合または相溶されていることが好ましい。
【0090】
補助剤の配合量は、樹脂成形体中に好ましくは0.1重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上30重量%以下、最も好ましくは1重量%以上20重量%以下になるように用いられる。
【0091】
化学構造式(2)〜化学構造式(5)に示される繰り返し単位を有する代表的な樹脂ポリマーとしは、既述のように、化学構造式(2)の例としては、化学構造式(7)に示される繰り返し単位からなるポリビニルピロリドン、化学構造式(3)の例としては、化学構造式(8)に示される繰り返し単位からなるポリエチレンイミン、化学構造式(4)に示される繰り返し単位からなるポリビニルアルコール、構造式(5)に示れる繰り返し単位からなるポリエチレングリコ−ルまたはポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0092】
また、本発明の抗菌性樹脂成形体を構成する樹脂基材には、光増感剤を用いることも可能である。光増感剤を用いると、光子を吸収して励起し、樹脂材料を構成する樹脂から水素を引抜き、樹脂にラジカル活性点を形成することができる。このような光増感剤の例として、ベンゾフエノン、3,3’, 4,4’−ベンゾフエノンテトラカルボン酸無水物、4,4’−ジメトキシベンゾフエノン、4−クロロベンゾフエノン、2,4−ジクロロベンゾフエノン、4,4’−ジクロロベンゾフエノン、4−フロロベンゾフエノン、4−トリフロロメチルベンゾフエノン、4−メトキシベンゾフエノン、4−メチルベンゾフエノン、4,4’−ジメチルベンゾフエノン、4−シアノベンゾフエノン、o−ベンゾイルベンゾフエノン等のベンゾフエノン系光増感剤、ベンジル、ジベンジルケトン等のベンジル系光増感剤、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光増感剤、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン系光増感剤、ベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド等のベンズアルデヒド系光増感剤、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン等のジオン系光増感剤、ジベンゾスベロン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、9−フルオレノン、3,4−ベンゾフルオレン、1−アセチルナフタレン、ベンズアントロン、9,10−フエナントレンキノン、2−ベンゾイルナフタレン、3,5−ジメチルアセトフエノン、および4−ブロモアセトフエノン等を挙げることができる。
【0093】
本発明で用いられる樹脂基材には、補助剤以外のポリマーや添加剤などが、本発明の効果を妨げない範囲で混合されていても良い。補助剤以外の添加量は特に限定されるわけではないが、10重量%以下であることが好ましい。
【0094】
本発明で用いられる樹脂基材の形態は、板状、棒状、シート状、チューブ状、フィルム状、繊維状、ビーズ状、粉末状、および中空糸状などの形体、および成形品などいかなる形状であっても放射線照射することができることが好ましい。本発明の樹脂基材は、延伸成形、射出成形、押出成形、キャスト製膜法および湿式凝固法等を用いることによって様々な形状のものを得ることができる。
【0095】
樹脂基材として、ポリスルホン系ポリマーと補助剤を用いる場合、両者を混和溶解するための良溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンおよびジオキサンなどが好ましく用いられる。この場合、ポリスルホン系ポリマーの濃度は、10〜30重量%が好ましく、より好ましくは15〜25重量%である。この溶液を、キャスト製膜法で製膜することによりフィルムを得ることができる。また、湿式凝固法を用いることにより、中空糸膜を作ることもでき、押出成形すれば中空のチューブを得ることもできる。すなわち、ポリスルホン系ポリマーと補助剤の高濃度溶液を作製後、溶媒を蒸発させることで樹脂基材を製造することができるが、これを延伸成形・射出成形・押し出し成形をすることによって様々な成形体を形成できる。たとえば円形口金から押し出せば、チューブを成形することも可能である。
【0096】
また、ポリスルホン系ポリマーを不溶または膨潤させる添加剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサノールおよび1,4−ブタンジオールなどがあるが、生産コストを考えると、水が特に好ましく使用される。ここで、水を使用した場合は、ポリスルホン系ポリマーの凝固性が高いため、水の添加量は7重量%以下、特に1〜5重量%であることが好ましい。凝固性が小さな添加剤を用いるときは、水の添加量が多くなってもよく、適宜好適な量を選択することができる。
【0097】
本発明において、上記の化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーで樹脂基材が被覆されてなる樹脂成形体に、放射線や紫外線等を照射したり、アーク、直流グロー、高周波、マイクロ波およびコロナ放電等によりプラズマ処理したり、UV−オゾン処理する等の方法において発生させたラジカルを開始点として、これにラジカル重合性モノマーを作用させて表面にグラフト重合層を形成させる方法等を適用することができる。
【0098】
例えば、A.Henglein, Angew. Chem., 70,461(1955)には、放射線を用いたグラフト重合が、また、Y. Ogiwara, et. al., Poym. Sci., Polym Letter Ed., 19,457(1981)には、ポリ酢酸ビニル水溶液を用いたメチルメタクリレートまたはアクリル酸を、ポリプロピレン表面上あるいはポリエチレン表面上でグラフト 重合させる方法等が提案されている。
【0099】
本発明において、樹脂基材の表面に、上記の抗菌性ポリマーが被覆されている。抗菌性のポリマーを高分子の樹脂基材に被覆する構成・複合方法は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を妨げない範囲で他の物質と混合または相溶されていても良い。
【0100】
また、化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーを含有する本発明の抗菌性樹脂成形体は、前記の化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマー水溶液に、樹脂基材の少なくとも一部を浸漬せしめ、基材内部まで含浸させた後に放射線を照射してすることで、成形体表面に大きな傷が生じても、内部に抗菌性のポリマ−が含有しているため抗菌性を発現する。成形体内部に抗菌性ポリマーを含有することで、抗菌性被覆層が傷等で剥がれても、抗菌性を維持することが出来るため非常に有用である。また基材内部に抗菌性ポリマーが含有していると、内部に含有している抗菌性ポリマーと表面に被覆される抗菌性ポリマーが強固に結合するため、抗菌性の持続性も良好になる。
【0101】
抗菌性のポリマーを、高分子の樹脂基材に被覆させる方法には、樹脂基材を抗菌性のポリマーの溶液に浸漬した後、放射線照射や熱処理などにより、抗菌性のポリマーを不溶化し、または固定化する方法、樹脂基材を抗菌性のポリマーの溶液に浸漬させ、溶液を除去して湿潤状態にする方法(これは、多孔質膜の場合は、空気や窒素などの気体で表面をブローすることにより得られる。)、さらには、樹脂基材を抗菌性のポリマーの溶液に浸漬させ、溶液を水洗除去し、抗菌性のポリマーを樹脂基材に吸着させた状態にする方法などが挙げられる。
【0102】
中でも、放射線照射により抗菌性のポリマーを不溶化し、または固定化する方法が好ましい。さらに、湿潤状態や吸着状態で、放射線照射や熱処理などにより不溶化し、または固定化することも可能である。放射線照射で抗菌性のポリマーを架橋するような場合には、抗菌性のポリマーの架橋をコントロールするために、公知の抗酸化剤を用いても良い。
【0103】
本発明においては、α線、β線、γ線、電子線およびX線等の放射線、または紫外線照射によるグラフト層の形成が好ましく、中でもγ線、電子線および紫外線のいずれかの照射が好ましく、最も好ましくは、γ線と電子線が用いられる。
【0104】
このように放射線としては、特に電子線とγ線が好ましく、電子線特性として、透過力と活性化効率の面から、加速電圧は少なくとも10Kv以上であることが好ましく、また電子線加速器としては、例えば、エレクトロカーテンシステム、スキャンニングタイプ、ダブルスキャンニングタイプ、バンデグラフ、コールドカソード等が用いられる。γ線の場合、照射量は、好ましくは10kGy以上であり、より好ましくは20kGy以上であり、最も好ましくは25kGy以上である。その理由は、溶出物の低減効果が十分でないためである。
【0105】
放射線照射に際しては、酸素濃度が高いとグラフト活性種(主にフリーラジカル)の失活を招いたり、酸化反応によるポリマーの崩壊を招いたりするため、窒素やヘリウム等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度低下をはかることが好ましい。ただし、過酸化物をグラフト活性種として用いる場合には、この限りではない。グラフト化反応は、放射線照射後、モノマーと直接、あるいは溶媒を用いて反応させるか、あるいは気化させたモノマーと反応させることにより達成することができる。一般に、モノマー単独では反応速度が遅いことが多いので、溶媒を用いた溶液系での反応が有利である。モノマー単独でのホモ重合を防ぐ目的で、モール塩のようなラジカル重合抑制剤、金属銅や第1塩化銅のようなレドックス系添加剤、およびハイドロキノンモノメチルエーテルのような重合禁止剤を併用してもよい。
【0106】
これらの放射線照射によるグラフト化反応は、高線量率であるために反応が早く、低温で行うことができ、かつグラフト量が大きいという利点がある。また、放射線照射により樹脂基材の事前殺菌が可能であるという利点もある。また、反応開始にあたって、反応終了後もグラフト層中に有害かつ悪臭の分解物が残る重合開始剤を用いることなくグラフトが可能である点も、特に食品と接触する場合には重要なポイントである。放射線照射によるグラフト化反応では、樹脂基材とグラフト化されるべきモノマーを共存させて同時に放射線照射する方法(同時照射法)が効率的であるが、モノマー単独の重合が避けられないため、モノマーの単独重合物がその作用(抗菌性や機械的特性)を妨げない場合に有効である。
【0107】
放射線照射を行う際、ポリプロピレンやポリテトラフルオロエチレン等は、極度に強い放射線を照射すると、経年劣化しやすく、物性低下等を引き起こすことがある。他にも、ポリ塩化ビニルは架橋型ポリマーではあるが、放射線により脱塩酸反応を起こし着色する。着色の程度は、放射線量によって変わり、色は低線量で飴色になり、高線量で茶褐色になるが、添加剤によっても着色の程度や色合いも変化する。そのため、これらの樹脂基材に放射線照射するときには、物性の変化に注意して放射線量を調整する。
【0108】
本発明において、使用する放射線照射処理は、樹脂基材表面に抗菌性のポリマ−をグラフトまたは架橋する上で効果がある。樹脂基材の架橋は、簡便には該樹脂基材を溶解しうる溶媒を用いたゲル分率で測定することができる。この際、吸収線量は、線量測定ラベルを成形体の表面に貼り付けるなどして測定することができる。
【0109】
放射線処理の方法は特に限定されず、樹脂基材の全体または一部表面を抗菌性のポリマ−をコーティング等で被覆した後、あるいは、樹脂基材の全体または一部を抗菌性のポリマ−水溶液中に浸漬した後、放射線照射により抗菌性のポリマ−を処理する方法が好適に用いられる。放射線処理は、抗菌性のポリマ−を含む水溶液に湿潤状態で放射線を照射すればよい。水溶液中の抗菌性のポリマーの濃度は、抗菌性効果を上げる点で好ましくは0.0001重量%以上であり、より好ましくは0.01重量%以上70重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以上50%重量以下であり、最も好ましくは0.1重量%以上25%重量以下である。
【0110】
ここでいう湿潤状態とは、樹脂基材の少なくとも一部が抗菌性のポリマ−を含む水溶液で濡れていている状態を指す。その程度は特に限定されるものではないが、樹脂基材がその重量に対して1重量%以上の水分を含んでいることが好ましい。更に好ましくは0.1重量%以上の水分を含んでいる状態である。また、樹脂基材が抗菌性のポリマ−を含む水溶液に一部または全体が浸漬された状態が最も好ましい。放射線の吸収線量は湿潤状態で10〜50kGy程度が好ましく、20kGyを超える線量を照射した場合は、滅菌処理を同時に行うことも可能である。この際、吸収線量は線量測定ラベルを成形体の表面に貼り付けるなどして測定することができる。

放射線照射工程は非常に不安定なもので、照射線量が大きくばらつく傾向にある。照射線量のバラツキは、例えばγ線照射(CO-60)の場合には、コバルト付近とその反対側で照射量で差が生じたり、回転させながら照射させても、照射物の外周辺部と中心部で照射量に差が出ることがある。
【0111】
そのため、放射線照射をコントロールしてゲル化を抑制する場合、成形体の場所において、照射線量が最も大きくなる箇所(最もゲル化しやすい部分)をゲル化しない程度の照射線量にする。すると全ての部分においてゲル化を抑制する事が出来る。しかし、反対に照射線量が最も小さい箇所では、放射線照射量が不十分なため、抗菌性ポリマーで被覆する事が出来ない場合があり。このような手法では、抗菌性を十分有する部分もあるが抗菌性が不十分の部分も併せ持つ成形体が得られてしまう場合がある。
【0112】
ゲル化を抑制する方法として、アルコールを架橋抑制剤として抗菌性ポリマー水溶液中に含有しておき、この溶液に成形体を浸積させ、放射線照射をすることで抗菌性樹脂成形体を得ることが出来る。しかし、架橋反応自体を抑制しているため、成形体表面への抗菌性ポリマー架橋も抑制される。そのため抗菌性も少し弱くなる傾向にある。また樹脂基材がエチレンビニルアルコールポリマーのように吸水性がある場合、アルコールも浸透してしまうため、基材中にアルコールを含んだまま放射線照射するが、その後の洗浄で浸透してしまったアルコールを洗浄する事は煩雑になるし、全てのアルコールを洗い出せない場合は後に溶出するためあまり好ましくない。
【0113】
ここで、生じてしまったゲル化物を液状化する手段としてエージングする方法がある。例えば、50mlのサンプル瓶にカチオン性ポリビニルピロリドン(“ルビカットFC905”BASF社製)水溶液3重量%(固形分)を20gEVOH(ソアノールD2908)のポリマーチップ10g入れた物に放射線照射(最低照射線量27kgy、最高照射線量39kgy)を照射して得られたゲル化物の場合、冬場の室温(8℃)で放置すると、液状化するまで約1ヶ月程度を要する。
【0114】
そこで放置温度を60℃にすると、僅か数時間で基材表面に強固に付着していたゲル化物を液状化することが可能で、更に洗浄することで溶出量の非常に少ない抗菌性樹脂成形体を得ることが出来る。このように放射線を照射した後に加熱工程と洗浄工程をこの順に有することで単純・短時間かつ水中溶出量が極めて少ない抗菌性樹脂成形体が得られるため非常に有用である。
【0115】
本発明の抗菌性樹脂成型体は有機物の水中溶出量が2ppm以下であることが必須である。本発明における有機物水中溶出量については、食品衛生法(厚生労働省告示)告示370号に挙げられる、第3 器具及び容器包装の中の、B.器具又は容器包装一般の試験法に準じて浸出用液を作製し、TOCによる分析、あるいは蒸発残留物試験法にて水中溶出量を測定する。

浸出液に有機物を溶解している場合やゴムの溶出量を測定する場合は蒸発残留物試験法(実施例:水中溶出量測定2)で、それ以外はTOC(実施例:水中溶出量測定)で分析する。 本発明における無機物水中溶出量については、銀イオン溶出量を指し、銀イオンの水中溶出物の量は0.1ppm以下が好ましく、更に好ましくは0.05ppm以下であり、更には0.02ppm以下であることが好ましく、最も好ましくは水中溶出量が0.01ppm以下である。より好ましくは0.005ppm未満である。
【0116】
銀イオンの溶出量測定は予め試料を超純水でよく洗い、試料の表面積1cmにつき2mlの割合で超純水を用い、60℃(pH=6.9)に保たれた超純水に浸積させ30分間放置する。放冷後この溶液を試験用液とする。
【0117】
ここで得られた試験用液の銀イオン濃度を原子吸光光度計で測定することで得られる。
【0118】
ここで、樹脂基材がチューブである場合の放射線照射を例示すると、チューブを抗菌性のポリマ−を含む水溶液に浸積させ、湿潤状態で放射線を照射することにより、湿潤状態であった部分には抗菌性が付与される。後は必要に応じて得られたチューブ状の樹脂成形体を洗浄すればよい。また、抗菌性を樹脂基材の一部、例えば、樹脂基材であるチューブの内部だけに抗菌特性を付与する場合は、チューブ内部を抗菌性のポリマー水溶液で満たし、チューブ両端は封(キャップ)をして放射線を照射すれば良い。その後、チューブの内部を水道水等を通水して洗浄すれば良い。他にも、抗菌性のポリマー水溶液の濃度を0.1重量%以上の溶液で内面をディップコートし放射線を照射する方法も用いられる。ポリマー水溶液濃度が濃い状態で放射線照射を行うと、ポリマーがゲル化して被覆される場合もあるが、上述のとおり、加熱により液状化して除去できる場合等、この方法も好適に用いられる。
【0119】
反対に、樹脂基材の最外面のみに抗菌性のポリマーの被覆が必要な場合は、チューブ内部を、空気や純水で満たし両端は封(キャップ)をして、抗菌性のポリマ−を含む水溶液に浸積させ湿潤状態で放射線を照射すれば、湿潤状態であった部分に抗菌性が付与される。チューブ状の樹脂成形体の場合、最内層と最外層の両方に抗菌性のポリマーを被覆することにより、その抗菌作用を最大限に生かすことができる。
【0120】
本発明では、上述のとおり、アルコールを抗菌性ポリマー水溶液中に添加することによって、架橋の度合いをコントロールすることが出来る。架橋の度合いをコントロールするためには添加するアルコール濃度が一例に挙げられ、アルコール濃度が濃いほどゲル化(架橋のし過ぎ)を抑制することが出来る。他にもゲル化抑制効果の異なる様々なアルコール等を用いることでゲル化を抑制することが出来る。アルコールの具体例を列挙するとメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2ーメトキシエタノール、カルビトールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノー2ーエチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3ーブタンジオール、1,4ーブタンジオール等)が挙げられ、その中でも炭素数が3以下のアルコールであるメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールが最も好適に用いることが出来る。
【0121】
またアルコールの添加量については、抗菌性ポリマー水溶液のポリマーの種類・ポリマー濃度によって架橋(ゲル化)の度合いも異なる。上述のとおり、抗菌性ポリマー濃度を濃く&アルコ−ル添加量を減らす程、抗菌ポリマー水溶液がゲル化しやすい傾向になり基材表面の被覆密度も高くなる。反対に抗菌性ポリマー濃度を薄く&アルコ−ル添加量を増やす程、ゲル化しにくい傾向になり基材表面の被覆密度は低くなる傾向になるため、架橋の度合いを適便にコントロールする必要がある。
【0122】
本発明の樹脂基材への被覆がチューブ最内面などに施工されるような場合、放射線照射時にチューブ内に充填された抗菌性ポリマー水溶液の架橋が大きすぎるとゲル化してしまうため、抗菌性ゲル化物で詰まって内面を通水洗浄できない等の問題が生じてしまう。このような問題はチューブ内だけでなく、様々な形状の成形体表面にゲル物が付着してしまうと洗浄が困難になる。このような場合も抗菌性ポリマー水溶液にアルコールを添加することで抗菌性が十分に得られる抗菌性ポリマー濃度でもゲル化せずに表面を抗菌性被覆することが出来る。
【0123】
アルコール添加量は特に限定されるものではないが抗菌性ポリマー水溶液中に1ppt〜50重量%の範囲で用いることができ、好ましくは1ppm〜5重量%、更に好ましくは1ppm〜1重量%、より好ましくは10ppm〜2重量%、最も好ましくは50ppm〜10000ppmの範囲で用いられる。
【0124】
本発明では、樹脂基材の少なくとも一部に抗菌性ポリマー水溶液が含浸状態、吸着状態または樹脂基材が浸積している状態で放射線照射を行うが、この時に樹脂基材表面を被覆するだけでなく、水溶液の粘度が急上昇したり、ゲル化して樹脂基材に付着する場合がある。このような状態になると樹脂基材の洗浄が非常に煩雑になる。また、ホース状成形体の内部に抗菌処理をすべく、内部に抗菌性ポリマー水溶液を充填後のγ線照射でホース内部の水溶液がゲル化するとホース内が詰まって洗浄が不可能になる。このような場合に加熱処理をする事によってゲル化物を液状化することが出来る。また抗菌性ポリマー水溶液がゲル化物までは行かずに粘度が非常に高い粘ちょう液体でも加熱することにより低粘度液体になるので、洗浄に必要な水量を削減することが可能で洗浄性は非常に良好になる。また水中溶出物の低減も極めて容易になる。
【0125】
本発明における加熱処理の加熱温度とは一般に室温以上の温度にする事を意味し、室温よりも高い温度であれば特に限定されるものではないが、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上、最も好ましくは60℃以上で加熱処理を行うことができる。反対に加熱温度上限は特に限定されるものではないが、抗菌性ポリマー溶液の溶媒の沸点または樹脂基材の融点の温度の低い方が加熱温度の上限になる。例えば抗菌性ポリマーが水溶液からなるゲル化物の場合は100℃以下で、なおかつ樹脂基材の融点が100℃以下であれば樹脂基材の融点以下の温度で加熱処理することになる。また樹脂基材が複合材料として用いられる場合、成形体を構成する材料中で最も融点が低い材料の融点が加熱温度の上限になる。例えば成形体が積層されてなる物の場合は、抗菌性を付与する樹脂基材の融点が高くても、積層されている樹脂の融点が低い場合は、この融点が加熱温度の上限になる。加熱時間についても特に限定されるものでは無いが、ゲル化物解消時間も加熱温度によって異なるものであり加熱温度が高い程ゲル化物解消時間は短くなり、加熱温度が低い程ゲル化物解消時間は長くなる。加熱時間の目安としては洗浄しやすい程度の粘度で良好な流動性が得られれば良く、一度流動する位に液状化すれば、室温程度に冷却されても再度ゲル化することはない。
【0126】
加熱処理することでゲル化物が液状化出来れば樹脂基材の洗浄も容易になるため、抗菌性樹脂成形を得ることが容易になる。また洗浄性が良好なため、水中溶出量を2ppm以下にするために必要な洗浄水量も、加熱処理無しのホースに比べ大幅に削減する事ができ、洗浄時間も大幅に短縮することが可能になる。
【0127】
本発明において、チュ−ブ状の樹脂成形体は単独でも使用可能であるが、複数のチューブ状の樹脂成形体を積層してなる多層チュ−ブとして用いることもできる。使用用途、内圧および外圧等の要求で複数層にする場合は、何層のチューブでも被覆することは可能であるが、実用的に用いられる1層〜20層チューブで用いることが好ましい。
【0128】
本発明の樹脂成形体は抗菌性を持つことから、多層チューブにして用いる場合には最外層もしくは最内層の全体または一部に含有させた場合に最大限に抗菌効果が発揮され、その成形体の樹脂基材は特に限定されないがエチレンビニルアルコールまたはポリスルホンの繰り返し単位からなる樹脂やシリコンゴムが好ましく用いられ、最も好ましいのはエチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂である。
【0129】
本発明における最も好適なチューブの積層構成は最内面がエチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂が含有してなる基材、その外側の材質は特に限定されないがポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリイミン、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、AS樹脂(スチレンとアクリロニトリルの共重合体)、ABS樹脂、ACS樹脂(塩素化ポリエチレンにアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合したもの)、メタクリル樹脂、ポリエチレン、EVA樹脂(エチレンと酢酸ビニル共重合体)、EVOH樹脂(エチレンビニルアルコ−ル)、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリブチレン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フッ素樹脂、(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、ポリアミド、ポリアセタール、飽和ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエ−テルケトン、液晶プラスチック、セルロース系ポリマー、熱可塑性エラストマー、人工ゴム、天然ゴム等から1つ以上選ばれる樹脂を用いることができる。
【0130】
本発明で多層チューブの外側で使用できるポリウレタン樹脂としては、基本的にはジイソシアネートとジオールをほぼ等モル量反応せしめたもので、例えばジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を、ジオールとしてはポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、テトラヒドロフラン−エチレンオキサイド共重合体、テトラヒドロフラン−プロピレンオキサイド共重合体、ポリエステルジオール(例えば、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリヘキサメチレンネオペンチルアジペート、ポリエチレンジエチレンアジペート、ポリエチレンヘキサメチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールポリテトラメチレンアジペート等)を代表例として挙げることが出来る。また、分岐したポリウレタン樹脂も利用でき、例えばジイソシアネートの一部または全部を3官能以上のイソシアネート化合物(例えばトリメチロールプロパン1モルに2,4−トルエンジイソシアネート3モル付加させたもの、ウンデカントリイソシアネート、ジシクロペプタントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン等)に置き換え、同時に時オール成分の一部を単官能のモノアルコール(例えば、アリルアルコール、アリロキシエチルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、ベンジルアルコール、エチレンアルコール等)に置き換え官能記を導入したものを挙げることが出来る。
【0131】
この他ジオール成分に特殊な官能基を有するもの、例えばアルキルジアルカノールアミン、(メタ)アクリレート基含有ジオール、カルボン酸基含有ジオール等を用いたポリウレタン樹脂も有用である。カルボン酸基を有するジオールを用いることによってアルカリ水可溶性のポリウレタン樹脂を得ることができる(特開昭63−287942号公報、特開昭63−287943号公報)。またポリウレタンがエラストマー状であっても構わない。例えばポリウレタン・塩化ビニル(PU・PVC)共重合樹脂、ポリウレタンと軟質塩化ビニルとのブレンド品などが挙げられる。なお、ポリウレタンは放射線照射によって黄変する場合があるので用途に応じて放射線照射量を調整する必要がある。
【0132】
本発明の成形体を多層チューブにして用いる場合、外層チューブと隣接した内層チューブの層間接着性に問題があると、多層チューブ切断時に剥離が見られたり、小さく折り曲げると層間剥離を生じることがある。層間剥離を抑制する手段として層間の接着性を向上させることが有効であり、本発明の抗菌性樹脂成形体と隣接する隣接層に接着性樹脂は配合し、隣接層自体に接着性を持たせる手法や、本発明の抗菌性樹脂成形体と隣接層の間に接着層を設けて接着させる手法を用いることが可能である。
【0133】
具体的には外層チューブと隣接する内層チューブの間の少なくとも一部に接着性樹脂からなる接着層を介在させる方法や隣接する外層チューブ及び/または内層チューブの少なくとも一部に接着性樹脂を含有させることで外層と内層間の接着力を向上させ層間剥離を抑制することが出来る。また成形方法も多層同時成形、多層逐次成形でも層間剥離を抑制することができる。外層チューブ及び/または内層チューブの少なくとも一部に接着性樹脂を含有させる場合は0.01%〜100wt%の範囲で接着性樹脂を用いることができる。 また外層と内層の中間に接着層を設ける場合も同様に0.01%〜100wt%の範囲で接着性樹脂を含有して用いることができる。多層チューブ中に、このような接着性樹脂が含有している層は何層であっても特に限定されない。このように得られた多層チューブは切断時にも剥離せず、折り曲げ半径も小さくでき有用である。
【0134】
本発明でいう接着性樹脂とは、特に限定されないが例を挙げるとポリオレフィン系樹脂、無水マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂等を接着性樹脂として好適に用いること可能である。更に本発明でいう接着性樹脂にはポリオレフィン系樹脂、無水マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂のそれぞれの熱可塑性エラストマーも含まれる。本発明でいう熱可塑性エラストマーとは、分子構造的には分子内に架橋点を持ち、3次元の網目構造になっている人工ゴムと違い、分子内に架橋はなく分子内の硬質層の分子グループにより分子を拘束されているだけで加熱すると塑性変形するような物を指す。
【0135】
ポリオレフィン系接着性樹脂とは特に限定されないが例を挙げるとエチレン系重合体および/または不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性され、その含量が0.01〜10重量%である該エチレン系重合体(成分A)、粘着剤(成分B)、およびビニル芳香族化合物を主成分とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主成分とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体又はその水添物(成分C)を含有し、該成分A、成分Bおよび成分Cの合計量あたり、成分Aが35〜98重量%、成分Bが0.5〜62重量%および成分Cが0.5〜62重量%である樹脂。他にも不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された成分を含むオレフィン系樹脂にアルカリ性化合物と有機酸又はその酸無水物とを配合した変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
例えば具体的な商品として、“モディック−AP”(登録商標)のHDPEグレードであるH511、H503、LDPEグレードであるL112A、L502、L553、L504、EVAグレードであるA543、A515、PPグレードであるP502、P604V、P565、特殊グレードであるF502、F532、F534A(三菱化学社製)等に挙げられるポリオレフィン系樹脂等を用いることが出来る。
【0136】
無水マレイン酸系接着性樹脂とは特に限定されないが例を挙げるとエチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸 三元共重合体が、エチレン単位40〜90重量%、α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル単位55〜5重量%、無水マレイン酸 単位0.1〜10重量%からなる共重合体や、他にもスチレン・共役ジエン・スチレン系ブロック共重合体の水添物に無水マレイン酸 をグラフト重合させた変性ブロック共重合体からなる樹脂等が挙げられる。
【0137】
例えば具体的な商品として、“ボンダイン”(登録商標)のLX4110、HX8210、TX8030、HX8290、HX8140、AX8390(アルケマ社製)等に挙げられるポリオレフィン系樹脂等を用いることが出来る。
【0138】
ポリエステル系接着性樹脂とは特に限定されないが例を挙げるとエチレン系重合体および/または不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性され、その含量が0.01〜10重量%である該エチレン系重合体(成分D)、粘着剤(成分E)、およびビニル芳香族化合物を主成分とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主成分とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体又はその水添物(成分F)を含有し、該成分D、成分Eおよび成分Fの合計量あたり、成分Dが35〜98重量%、成分Eが0.5〜62重量%および成分Fが0.2〜80重量%である樹脂等が挙げられ、例えば具体的な商品として、“プリマロイ−AP”(登録商標)のA1500N、A1600N、A1700N、A1800N、A1900N、B1902N、B1900N、B1903N、B1910N、B1920、B1922N、B1932N、B1942N、A1606C、A1706C、A1602N、A1704N、A1610N、A1710N、B1600N、B1700N、B1800N、B1921N(三菱化学社製)等に挙げられるポリオレフィン系樹脂等を用いることが出来る。
【0139】
本発明の抗菌性樹脂成型体は、延伸成形、射出成形、押出成形、キャスト製膜法および湿式凝固法等を用いることによって様々な形状のものを得ることができる。例えば、チューブ状、ビーズ、編み地、不織布、カットファイバー、平膜、中空糸膜、フィルムおよびシートなどの形態に成形することができる。
【0140】
また、化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーを含有する本発明の抗菌性樹脂成形体は、当該ポリマーと前記した樹脂基材を構成する樹脂からなる樹脂組成物を、上記のように適宜形状に成形し、得られた成形体に放射線を照射することによって得ることができる。
【0141】
化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーの割合は、成形体重量に対して好ましくは0.01ppt〜99重量%の範囲で用いられ、更に好ましくは0.01ppt〜50重量%の範囲であり、最も好ましくは0.01ppt〜20重量%で用いられる。
【0142】
本発明のこれらの他の態様においても、前記の一の態様で述べた、化学構造式(1)〜化学構造式(5)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマー、樹脂基材、その樹脂基材を構成する樹脂、それらの使用割合、放射線照射および成形方法等を、そのまま適用することができる。
【0143】
本発明は、種々の細菌に対して優れた抗菌効果を示す。例えば、大腸菌 、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、肺炎桿菌(レジオネラ菌)、乳酸菌、酢酸菌などに対しての抗菌効果が優れており、中でも大腸菌 、黄色ブドウ球菌に対して優れた抗菌性を示す。したがって本発明の抗菌性材料は、これら細菌等の増殖及び生育の抑制や滅菌が必要な箇所の構成材料として使用することができる。
【0144】
抗菌試験においてはJIS Z2801に準処して行い、抗菌活性値の数値の大きさによって抗菌力が表される。抗菌活性値は特に限定されないが好ましくは抗菌活性値0.5以上で菌の増殖抑制効果が得られ、更に好ましくは抗菌活性値1.0以上、最も好ましくは抗菌活性値2.0以上で優れた抗菌効果を得ることができる。本発明の抗菌性樹脂成形体の抗菌活性値は成形体の基材、抗菌性ポリマーの種類・溶液濃度、被覆補助剤の種類・配合量、放射線照射線量等によってコントロールすることができ、必要の用途に応じて適便に用いることができる。
【0145】
本発明の抗菌性樹脂成形体は、透明な樹脂基材等を用いることによって、透明な抗菌性樹脂成形体とすることができる。例えば、チューブ状の透明な抗菌性樹脂成形体は、内部を観察することが容易で、更に雑菌を抑制することができるから、食品や飲料用送液ホースにも好ましく用いられる。例えば、食品製造工場等では、醤油やソースの送液ホース、飲食店などで用いられる清涼飲料サーバーや、ビールサーバー、ミルカー(牛乳搾取装置)等の送液ホースに非常に有用である。
【0146】
本発明で言うところの透明とは、樹脂成形体の厚さが30μmのフィルムやシ−トの光線透過率が50%以上であり、光線透過率は70%以上のものが好ましく、透過率85%以上のものが更に好ましく、最も好ましくは88%以上である。
【0147】
本発明の抗菌性樹脂成形体は、他にも、浄水器、中でも家庭用浄水器などにも有効に用いることができる。浄水器用カートリッジがキッチン下に設置されているアンダーシンク型浄水器では、キッチン下のカードリッジとキッチン上の水栓出口までの区間は、従来ポリエチレンチューブやステンレスチューブ等が用いられている。これらのチューブ内は、カートリッジで脱塩素された浄水で満たされている。このような状態で、放置すると浄水中は細菌増殖が酷く、酷い場合は細菌増殖で生成した代謝物(白い塊物)が発生していた。従来のポリエチレンチューブやステンレスチューブでは、チューブ内部を観察することができなかったため、浄水を出すまでは異常に気づくことができなかった。本発明の飲料用送液ホースを用いることにより、細菌増殖を抑制することが可能で、かつ内部を観察することができるので、非常に有用である。
【0148】
飲料用送液ホースの具体的な用途としては、ビールや牛乳など飲料自体の栄養価が高く、菌が増殖しやすい環境でビールサーバーの送液ホース、ミルカー(牛乳搾取装置)の送液ホース等に好適に用いられ、このホースを用いたビールサーバーやミルカーは雑菌が発生しないため、非常に衛生的でメンテナンスも容易になる。
【実施例】
【0149】

以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
【0150】
(樹脂成形体を構成する樹脂)
樹脂成形体の主成分となる樹脂を下に列挙した。
Psf:ポリスルホン(ソルベイ社製“Udel−P3500”(登録商標))
Pes:ポリエーテルスルホン(住友化学工業社製“スミカエクセル”(登録商標)3600P)
PS:ポリスチレン(和光純薬工業社製スチレンポリマー 平均重合度3500)
透明ABS:透明ABS用MAS樹脂(メチルメタクリレート:スチレン:アクリロニトリル=72:24:4の共重合体)。
EVOH:エチレンビニルアルコール共重合体(日本合成化学社製“ソアノール(登録商標)D2908”)
EVOH2:エチレンビニルアルコール共重合体(日本合成化学社製“ソアノール(登録商標)A4412)
シリコンゴム:(アズワン社製“シリコンゴムシート”)
シリコンゴムチューブ:(アズワン社製“シリコンチューブ内径×外径:5×9”)
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製“エバフレックス(登録商標)EV460”)
ポリオレフィン系接着性樹脂:(三菱化学社製“モディック(登録商標)−AP、グレードA543”)
無水マレイン酸系接着性樹脂:(アルケマ社製“ボンダイン(登録商標)、グレードTX8030”)
PE2:ポリエチレン樹脂:(三井化学社製“ハイゼックス(登録商標) 7000F”)
(補助剤)
PVP:ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製ポリビニルピロリドンK90 重量平均分子量36万)
PEI:ポリエチレンイミン(和光純薬工業社製ポリエチレンイミン、平均分子量10000)
PVA:ポリビニルアルコール(和光純薬工業社製ポリビニルアルコール、平均重合度2000)
PEG:ポリエチレングリコール(和光純薬工業社製ポリエチレングリコール200)
(ポリマー水溶液作成)
抗菌性のポリマー水溶液を、下記の条件にて作成した。
【0151】
A:ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドン(式(6)中、p:q=95:5)の共重合体の固形分40重量%水溶液であるルビカットFC905(BASF社製(登録商標):分子量40000)を、250g、純水を750gを混和させて濃度6重量%のカチオン性ポリビニルピロリドン水溶液を得た。
【0152】
B:ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドン(式(6)中、p:q=30:70)の共重合体の固形分40重量%水溶液であるルビカット(登録商標)FC370(BASF社製(登録商標):分子量100000)を50g、純水を950gを混和させて濃度2重量%のカチオン性ポリビニルピロリドン水溶液を得た。
【0153】
C:ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドン(式(6)中、p:q=50:50)の共重合体の固形分40重量%水溶液であるルビカットFC550(BASF社製(登録商標):分子量80000)を50g、純水を950gを混和させて濃度2重量%のカチオン性ポリビニルピロリドン水溶液を得た。
【0154】
D:ポリビニルピロリドン(和光純薬工業社製ポリビニルピロリドンK90、 重量平均分子量36万)50g、純水950gを混和させ5重量%の水溶液を得た。
【0155】
E:ポリエチレンイミン(和光純薬工業社製ポリエチレンイミン、平均分子量10000)100g、純水900gを混和させ10重量%の水溶液を得た。
【0156】
F:ポリビニルアルコール(和光純薬工業社製ポリビニルアルコール、平均重合度10000)50g、純水950gを混和させ5重量%の水溶液を得た。
【0157】
G:ポリエチレングリコール(和光純薬工業社製ポリエチレングリコール、平均分子量20000)50g、純水950gを混和させ5重量%の水溶液を得た。
【0158】
H:水溶液A、水溶液D、水溶液E、水溶液F、水溶液Gを1:1:1:1:1の比にて混和させて水溶液を得た。
【0159】
I:ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドン(式(6)中、p:q=95:5)の共重合体の固形分40重量%水溶液であるルビカットFC905(BASF社製(登録商標):分子量40000)を、純水に混和させて任意の固形分濃度のカチオン性ポリビニルピロリドン水溶液を得た。
【0160】
J:ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドン(式(6)中、p:q=30:70)の共重合体の固形分40重量%水溶液であるルビカット(登録商標)FC370(BASF社製(登録商標):分子量100000)を、純水に混和させて任意の固形分濃度のカチオン性ポリビニルピロリドン水溶液を得た。
【0161】
(アルコール)
抗菌ポリマー水溶液に添加するアルコールには下記の物を用いた。
【0162】
a:エタノール
高分子素材、補助剤、抗菌性のポリマーの配合比詳細については表1、表4、表5に記載し、評価結果は表2〜7に示した。
【0163】
(抗菌性試験方法)
抗菌試験においてはJIS Z2801に準処して行う。
【0164】
なお下記(1)〜(2)に記載する試験菌を用いた。
・試験菌
(1)大腸菌 :escherichia coli NBRC 3972
(2)黄色ぶどう球菌 :Staphylococcus aureus subsp.aureus NBRC 12732
・菌液調製:各菌共通
試験菌(1)及び(2)の前培養詳細は、普通寒天培地で35℃の温度で、16〜24時間培養後、得られた菌体を1/500普通ブイヨン培地に懸濁させ、1ml当たりの菌数が約10となるように調製し、菌液とした。
・板状試料の試験操作:各菌共通
板状の抗菌性樹脂成型体を約30mm×30mmにカットした試料を99.5%エタノールを含ませた脱脂綿で表面を軽くふき、風乾させた。試料の試験面に菌液0.1mlを滴下後、約20mm×20mmのポリエチレンをかぶせた。
【0165】
これを35℃±1℃、相対湿度90%以上で保存し、保存24時間後に試料の生菌数を測定した。
【0166】
また、約30mm×30mmのポリエチレンフィルムを比較用の試料とし、同様に試験した。
・チューブ状試料の試験操作:各菌共通
内径5mm×外径7mm、長さ5cmのチューブ状の抗菌性樹脂成型体を輪切りにした面と垂直方向に、輪切りにされた面が半円になるようにカットし、最内面が見える試料を得た。試料の内面を99.5%エタノールを含ませた脱脂綿で軽くふき、風乾させた。試料の内面に菌液0.1mlを滴下後、約10mm×40mmのポリエチレンをかぶせた。
【0167】
これを35℃±1℃、相対湿度90%以上で保存し、保存24時間後に試料の生菌数を測定した。
【0168】
また、内径5mm×外径7mm、長さ5cmのポリエチレンチューブを比較用の試料とし、同様に試験した。
・生菌数の測定:各菌共通
試料から生残菌を、SCDLP培地(SOYBEAN-CASEIN DIGEST BROTH with LECITHIN & POLYSORBATE 80 )10mlで洗い出し、この洗い出し液についてSA培地(標準寒天培地)を用いた混釈平板培養法(35℃±1℃、2日間培養)で生菌数を測定し、試料当たりに換算した。
実施例1〜46、比較例1〜46の抗菌性試験については、生菌数から下記の記号にて記載した。
[生菌数]
A:10以下(生菌検出不可)
B:100以下
C:1000以下
D:10000以下
E:100000未満
F:500000未満
G:500000以上
なお実施例47〜82、比較例47〜82の抗菌性試験については、下記する抗菌活性値にて記載した。
試料の抗菌性の判定はJIS Z2801で定められている抗菌活性値を用い、下記数式(15)にて抗菌活性値2以上ものを抗菌性有り、抗菌活性値2未満のものを抗菌性無しと判定した。
【0169】
抗菌活性値=log(B/C) (15)
B:無加工試験片(PEフィルム)の24時間後の生菌数の平均値
C:検体の24時間後の生菌数の各々の平均値
(水中溶出量測定)
1.試験方法:「食品、添加物の規格基準 厚生労働省告示第370号 第3 B.器具及び容器包装」に準じて浸出液を作製しTOCによる分析で水中溶出量を測定する。
【0170】
2.分析項目:溶出試験 TOC(浸出用液:超純水)
3.溶出試験における試験溶液の調整法
γ線照射から60時間以内にスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄を行い、空気または窒素ガスにて乾燥し、試料の表面積1cmにつき2mlの割合で指定された浸出用液を用い、60℃に保ちながら30分間放置する。放冷後この溶液を試験溶液とする。
【0171】
4.分析方法
測定方法:JIS K 0102 22.1(燃焼酸化−赤外線式TOC分析法)
装置名:TOC−650計(東レエンジニアリング社製)

(水中溶出量測定2)
1.試験方法:「食品、添加物の規格基準 厚生労働省告示第370号 第3 B.器具及び容器包装 4.蒸発残留物試験法−酒類に準じて浸出液を作製しTOCによる分析で水中溶出量を測定する。
【0172】
2.分析項目:蒸発残留物試験法 (浸出用液:20%エタノール水)
3.溶出試験における試験溶液の調整法
γ線照射から60時間以内にスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄を行い、空気または窒素ガスにて乾燥し、試料の表面積1cmにつき2mlの割合で指定された浸出用液を用い、60℃に保ちながら30分間放置する。放冷後この溶液を試験溶液とする。
【0173】
4.分析方法
試験溶液を予め105℃で乾燥した重量既知の白金製の蒸発皿に採り、水浴上で蒸発乾固する。次にこれを105℃で2時間乾燥した後、デシケータ−中で放冷する。冷却後、秤量して蒸発残差を精密に計る同様に試験溶液と同量の溶出溶媒について得た空試験値を求め、蒸発残留物量を式(16)によって算出した。
【0174】
蒸発残留物(ppm)=((a−b)×1000)/試験溶液の採取量(ml) (16)
a:試験溶液を乾固→冷却後の蒸発皿の重量(mg)
b:試験溶液と同量の浸出溶液を乾固→冷却後の蒸発皿の重量(mg):空試験値
(銀イオン濃度測定方法)
1.試験方法:「食品、添加物の規格基準 厚生労働省告示第370号 第3 B.器具及び容器包装」に準じて浸出液を作製した。
【0175】
2.分析項目:溶出試験 TOC(浸出用液:pH=6.9の超純水)
3.溶出試験における試験溶液の調整法:γ線照射から60時間以内にスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄を行い、空気または窒素ガスにて乾燥し、試料の表面積1cmにつき2mlの割合で指定された浸出用液を用い、60℃に保ちながら30分間放置する。放冷後この溶液を試験溶液とする。
【0176】
4.上記3.の操作を試験試料無しの状態で行い、標準溶液を作成した。
【0177】
5.得られた試験溶液及び標準溶液の銀イオン濃度を原子吸光光度計によって測定し、その差を銀イオン濃度とした。
【0178】
(光線透過率測定)
スガ試験機社製のSMカラーコンピュータSM−7−CHを用いて測定した。測定は、70μmの厚さの成形体について、25℃の温度に温調された部屋で行った。
【0179】
(架橋度判定)
γ線照射後の抗菌性ポリマー水溶液の架橋度(ゲル化物)を目視で判定した。
【0180】
A:水溶液に粘度変化・ゲル化物全く無し。
【0181】
B:水溶液の粘度が上昇している。
【0182】
C:水溶液は流動するが液中に小さなブツブツ状のミクロなゲル化物が見られる。
【0183】
D:完全にゲル化して流動しない。
【0184】
(実施例1)
ポリスルホン(ソルベイ社製Udel−P3500)100重量%をジメチルアセトアミドに溶解させ20時間攪拌し濃度25重量%の溶液を得た。この溶液を、ナイフクリアランス320μmでガラス板上にキャストした。このガラス板を90℃の温度の恒温乾燥機に入れ30分間乾燥した。乾燥後、ガラス板を取り出し水浴へ浸漬しポリスルホンフィルムを剥離させて、厚さ70μmの透明フィルム(樹脂基材)を得た。この透明フィルムを、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性のポリマー水溶液(A)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し放射線処理フィルムを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、放射線処理フィルムをスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、洗浄済みフィルムを得た後、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表2に示す。
【0185】
(実施例2〜42)
樹脂基材、補助剤および抗菌性のポリマーの種類と割合と加熱温度、加熱時間を、表1、表2のように変えたこと以外は、実施例1と同様に実施して放射線処理フィルムを得た。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、フィルムをスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、洗浄済みフィルムを得た後、架橋度判定を行い、得られた洗浄済みフィルムについて、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。結果を表2に示す。
【0186】
(実施例43)
EVOHフィルム(厚み30ミクロン)を、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性のポリマー水溶液(A)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理フィルムを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了後、架橋度判定を行い、放射線処理フィルムをスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、洗浄済みフィルムを得た後、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表2に示す。
【0187】
(実施例44)
EVOH樹脂をオリフィス型二重円筒型口金(外形10.5mm、内径9mm)を装着した溶融押出機(15粍式押出機:田辺プラスチック社製)に投入し溶融押し出しして、透明なチューブ(外形9mm、内径8mm、肉厚0.5mm)を得た。この透明チューブを、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性のポリマー水溶液(A)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理チューブを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、チューブ内を純水200Lで通水洗浄後、乾燥させて洗浄済みチューブを得た後、このチューブについて、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。抗菌試験は上記の抗菌性試験の(2)で記載した試験菌液を用い、長さ10cmのチュ−ブの片側に封(キャップ)をし試験菌液を0.4ml入れ、精製水で充填させ、口を封(キャップ)じて試験菌液が漏れないようにした。このチューブを温度35℃、相対湿度90%で24時間培養し、その後、封を外して試験菌液内の生菌数を測定した。結果を表2に示す。
【0188】
(実施例45)
シリコンゴムシート(アズワン社製“シリコンゴムシート”、厚み0.5mm)を、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性のポリマー水溶液(A)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理フィルムを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた放射線処理シートをスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量2の処方で測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表2に示す。
【0189】
(実施例46)
シリコンゴムホース(アズワン社製“シリコンチューブ”、内径6mm×外形12mm)10mを、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性のポリマー水溶液(A)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理フィルムを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、その後チューブ内を純水200Lを通水させて洗浄・乾燥し、得られたチューブについて、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量2の処方で測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。抗菌試験は上記の抗菌性試験の(2)で記載した試験菌液を用い、長さ10cmのチュ−ブの片側に封(キャップ)をし試験菌液を0.4ml入れ、精製水で充填させ、口を封(キャップ)じて試験菌液が漏れないようにした。このチューブを温度35℃、相対湿度90%で24時間培養し、その後、封を外して試験菌液内の生菌数を測定した。結果を表2に示す。
【0190】
(実施例47)
樹脂基材を熱プレス法で成形して厚み1mmで3cm四方の板状サンプルを得た。
ここで得られた樹脂基材を、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性ポリマー水溶液(I)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理樹脂基材を得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。得られた放射線処理樹脂基材について、放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた放射線処理樹脂基材をスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、抗菌性試験方法の処方で抗菌性試験、水中溶出量測定の処方で水中溶出量を測定した。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表4、表6に示す。
【0191】
(実施例47〜61)
樹脂基材、抗菌性のポリマーの種類と割合、ポリマー濃度を、表3のように変えたこと以外は、実施例47と同様に実施して放射線処理樹脂基材を得た。得られた放射線処理樹脂基材について、放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた放射線処理樹脂基材をスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、実施例47と同様に抗菌性試験および水中溶出量の測定、架橋度判定を行った。結果を表4、表6に示す。
【0192】
(実施例62〜76)
本発明の積層チューブは、公知の共押出成形機を用いて製造する。即ち、その第一押出成形機を用いて、基材組成比に記載のあるエチレンビニルアルコール樹脂(EVOHまたはEVOH2)を表4の通り、最内層樹脂に用い、最外層エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を加熱溶融し、180〜230℃の範囲の成形温度で、共通ヘッドダイを介して内径5mm、肉厚0.2mmのエチレンビニルアルコール樹脂からなる内層チューブを押出成形すると同時に、第二押出成形機を用いて、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を加熱溶融し、160〜220℃の範囲の成形温度で、該共通ヘッドダイを介して、肉厚2.3mmのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなる外層チューブを押出成形すれば、該内層チューブの外周面に連続的に熱融圧着し、一体に結着して内径5mm、外径10mmの本発明の2層積層チューブを得た。この2層チューブを長さ20mにカットし、チュ−ブの片側に封(キャップ)をし、表4に記載通りの抗菌性ポリマー水溶液の種類、ポリマー固形分濃度にて充填し空気が入らないように封をした。水溶液が充填されたチューブをコバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理チューブを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後のホース内に抗菌性ポリマー水溶液が入ったホースを表4記載の加熱温度に設定してある熱風オーブンに入れ、表4記載の加熱時間にて加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた加熱処理チューブ内を純水200Lを通水洗浄して、窒素ガスをフロ−させて乾燥した。その後抗菌性試験および水中溶出量の測定、銀イオン濃度の測定を行った。結果を表4、表6に示す。
【0193】
(実施例77)
シリコンゴムシート(アズワン社製“シリコンゴムシート”、厚み0.5mm)を、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性のポリマー水溶液(I)の3重量%水溶液を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理フィルムを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた放射線処理シートを純水で良く洗浄して、抗菌性試験方法の処方で抗菌性試験および水中溶出量測定2の処方で水中溶出量の測定、架橋度判定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表4、表6に示す。
【0194】
(実施例78)
抗菌性ポリマー水溶液濃度を5重量%に変えたこと以外は、実施例77と同様に実施して放射線処理樹脂基材を得た。得られた放射線処理樹脂基材について、放射線照射後の抗菌性ポリマー水溶液が入ったサンプル袋を熱風オーブンに入れ、表2に記載した加熱温度、加熱時間で加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、実施例47と同様に抗菌性試験方法および水中溶出量測定2の処方で測定を行った。結果を表4、表6に示す。
【0195】
(実施例79)
本発明の積層チューブは、公知の共押出成形機を用いて製造する。即ち、その第一押出成形機を用いて、最内層樹脂であるエチレンビニルアルコール樹脂(EVOH2)と最外層エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を加熱溶融し、180〜230℃の範囲の成形温度で、共通ヘッドダイを介して内径5mm、肉厚0.2mmのエチレンビニルアルコール樹脂からなる内層チューブを押出成形すると同時に、第二押出成形機を用いて、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を加熱溶融し、160〜220℃の範囲の成形温度で、該共通ヘッドダイを介して、肉厚2.3mmのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなる外層チューブを押出成形すれば、該内層チューブの外周面に連続的に熱融圧着し、一体に結着して内径5mm、外径10mmの本発明の2層積層チューブを得た。 この2層チューブを長さ20mにカットし、チュ−ブの片側に封(キャップ)をし、抗菌性ポリマー水溶液(I)の3重量%を充填し空気の入らないように封をした。水溶液が充填されたチューブをコバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理チューブを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後のホース内に抗菌性ポリマー水溶液が入ったホースを60℃に設定してある熱風オーブンに入れ、3時間加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた加熱処理チューブ内を純水600Lを通水洗浄して、窒素ガスをフロ−させて乾燥した。その後抗菌性試験および水中溶出量の測定、剪定ばさみ切断時の端面剥離、小さく折り曲げた時の層間剥離を観察した。更にホースを縦割りにして内層と外層の密着状態を確認した。結果を表7に示す。
【0196】
(実施例80)
第二押出成形機で成形する最外層の樹脂をエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA):ポリオレフィン系接着性樹脂=10:90のブレンド比にした以外は実施例79と同製法で洗浄済みチューブを得た。得られた洗浄済みチューブを用い実施例79と同様に評価した。結果を表7に示す。
【0197】
(実施例81)
第二押出成形機で成形する最外層の樹脂をエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA):無水マレイン酸系接着性樹脂=10:90のブレンド比にした以外は実施例79と同製法で洗浄済みチューブを得た。得られた洗浄済みチューブを用い実施例79と同様に評価した。結果を表7に示す。
【0198】
(実施例82)
第一押出成形機を用いて最内層樹脂であるエチレンビニルアルコール樹脂(EVOH(2))、第二押出成形機を用いて中間層にポリオレフィン系接着性樹脂、第三押出成形機を用いて最外層エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を加熱溶融し、160〜230℃の範囲の成形温度で、共通ヘッドダイを介して内径5mm、最内層肉厚0.2mmのエチレンビニルアルコール樹脂からなる内層チューブを押出成形すると同時に、第二押出成形機を用いて、ポリオレフィン系接着性樹脂を加熱溶融し、160〜220℃の範囲の成形温度で押出成形し、第三押出成形機を用いてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を加熱溶融し、160〜220℃の範囲の成形温度で押出成形し、第一〜第三押出成型機で加熱溶融された状態で該共通ヘッドダイを介して、中間層の肉厚が0.2mmであるポリオレフィン系接着性樹脂、肉厚2.1mmのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなる最外層チューブを押出成形すれば、該最内層チューブの外周面と最外層チューブの内周面の間に強固熱融圧着された接着層を有する内径5mm、外径10mmの本発明の3層積層チューブを得た。得られたチューブを実施例79と同様に処理し洗浄済みチューブを得た。得られた洗浄済みチューブを用い実施例79と同様に評価した。結果を表7に示す。
【0199】
(実施例83)
アンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55(東レ株式会社製)のカートリッジ〜水栓出口間の樹脂チューブを、実施例79で得られたチューブに差し替えた。この浄水器を35℃の温度の温調室の水道に接続し、水道水を通水した。その後水道を止め、30日間放置した。30日後に1L容器に800ccを通水し細菌増殖で生成した代謝物の発生がないか観察した。代謝物は発生しなかった。
【0200】
(実施例84)
アンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55(東レ株式会社製)のカートリッジ〜水栓出口間の樹脂チューブを、実施例81で得られたチューブに差し替えた。この浄水器を35℃の温度の温調室の水道に接続し、水道水を通水した。その後水道を止め、30日間放置した。30日後に1L容器に800ccを通水し細菌増殖で生成した代謝物の発生がないか観察した。代謝物は発生しなかった。
【0201】
(実施例85)
アンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55(東レ株式会社製)のカートリッジ〜水栓出口間の樹脂チューブを、実施例82で得られたチューブに差し替えた。この浄水器を35℃の温度の温調室の水道に接続し、水道水を通水した。その後水道を止め、30日間放置した。30日後に1L容器に800ccを通水し細菌増殖で生成した代謝物の発生がないか観察した。代謝物は発生しなかった。
【0202】
(実施例86)
実施例79で得られた2層積層チューブ内に抗菌性ポリマー水溶液(I)の3重量%を充填しチューブ両端を空気の入らないように封をした所までは同様だが、25℃で24時間水溶液充填チューブを放置した後、チューブ内の水溶液を圧空にて追い出した。ホース内部に、水溶液は充填されておらずチューブ最内面が少し濡れている状態で両端をシリコンゴムにて封をし、チューブ内面が抗菌性ポリマー水溶液で濡れた状態のチューブをコバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理チューブを得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。放射線照射後のホース内に抗菌性ポリマー水溶液が入ったホースを60℃に設定してある熱風オーブンに入れ、3時間加熱処理した。加熱処理が終了した後、架橋度判定を行い、得られた加熱処理チューブ内を純水200Lで通水洗浄して、窒素ガスをフロ−させて乾燥した。その後抗菌性試験および水中溶出量、銀イオン濃度を測定した。結果を表8に示す。
【0203】
(実施例87)
水溶液充填チューブの放置時間を10分間にした以外は実施例86と全く同一方法で抗菌性樹脂成形体を得た。その後抗菌性試験および水中溶出量、銀イオン濃度を測定した。結果を表8に示す。
【0204】
(実施例88)
抗菌性ポリマー水溶液(I)の濃度を5重量%にしてを水溶液充填チューブの放置時間を5分間にした以外は実施例86とと全く同一方法で抗菌性樹脂成形体を得た。その後抗菌性試験および水中溶出量、銀イオン濃度を測定した。結果を表8に示す。
【0205】
(比較例1)
加熱処理をしないこと以外は実施例1と全く同一製法で洗浄済みフィルムを得た後、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表3に示す。
【0206】
(比較例2〜43)
加熱処理をしないこと以外は実施例2〜43と全く同一製法で洗浄済みフィルムを得た後、光線透過率、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表3に示す。
【0207】
(比較例44)
加熱処理をしないこと以外は実施例44と全く同一製法で洗浄済みサンプルを得た後、抗菌性試験および水中溶出量の測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表3に示す。
【0208】
(比較例45)
加熱処理をしないこと以外は実施例45と全く同一製法で洗浄済みサンプルを得た後、抗菌性試験および水中溶出量2の処方で測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表3に示す。
【0209】
(比較例46)
加熱処理をしないこと以外は実施例46と全く同一製法でサンプルを作製したがγ線照射後のチューブ内の抗菌性ポリマー水溶液がゲル化していて通水洗浄が不可能だったため、チューブを長さを10cmに切断して、耳掻きにガーゼを巻いてホース内のゲル化物を掻き落とした。このサンプルを得た後、抗菌性試験および水中溶出量2の処方で測定を行った。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表3に示す。
【0210】
(比較例47)
樹脂基材を熱プレス法で成形して厚み1mmで3cm四方の板状サンプルを得た。
ここで得られた樹脂基材を、PE(ポリエチレン)製の袋に入れ、その袋内に抗菌性ポリマー水溶液(I)を満たし、コバルト−60線源にてγ線を照射し、放射線処理樹脂基材を得た。γ線吸収線量は、33kGyであった。得られた放射線処理樹脂基材をγ線照射後60時間以内にスポンジで擦る等の物理的接触はさせず、純水で流すだけの洗浄・乾燥し、抗菌性試験方法の処方で抗菌性試験、水中溶出量測定の処方で水中溶出量を測定した。測定結果は3個の測定値の平均値を用いた。結果を表5に示す。
【0211】
(比較例48〜78)
加熱処理をしないこと以外は実施例48〜78と全く同一製法でγ線を照射し架橋度判定、水中溶出量測定を行った。結果を表5に示す。
【0212】
(比較例79〜82)
加熱処理をしないこと以外は実施例79〜82と全く同一製法でγ線照射ホースを得たがホース内部にゲル化物が詰まって通水洗浄することが不可能であったため架橋度判定のみ行った。他にも剪定ハサミでホースを切断しホース端面の剥離状態を観察した。更にホースを縦割りにして内層と外層の密着状態を確認した。結果を表7に示す。
【0213】
(比較例83)
アンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55(東レ株式会社製)のカートリッジ〜水栓出口間の樹脂チューブを、比較例79で得られたチューブに差し替えた。この浄水器を35℃の温度の温調室の水道に接続し、水道水を通水した。その後水道を止め、30日間放置した。30日後に1L容器に800ccを通水し細菌増殖で生成した代謝物の発生がないか観察した。代謝物が発生し、ホース詰まりを生じた。
【0214】
(比較例84)
アンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55(東レ株式会社製)のカートリッジ〜水栓出口間の樹脂チューブを、比較例81で得られたチューブに差し替えた。この浄水器を35℃の温度の温調室の水道に接続し、水道水を通水した。その後水道を止め、30日間放置した。30日後に1L容器に800ccを通水し細菌増殖で生成した代謝物の発生がないか観察した。代謝物が発生し、ホース詰まりを生じた。
【0215】
(比較例85)
アンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55(東レ株式会社製)のカートリッジ〜水栓出口間の樹脂チューブを、比較例82で得られたチューブに差し替えた。この浄水器を35℃の温度の温調室の水道に接続し、水道水を通水した。その後水道を止め、30日間放置した。30日後に1L容器に800ccを通水し細菌増殖で生成した代謝物の発生がないか観察した。代謝物が発生し、ホース詰まりを生じた。 (比較例86〜88)
加熱処理しないこと以外は実施例86〜88と全く同一方法にて抗菌性樹脂成形体を得た。そして、実施例86〜88と同様に抗菌性試験および水中溶出量、銀イオン濃度を測定した。結果を表8に示す。
【0216】
【表1】

【0217】
【表2】

【0218】
【表3】

【0219】
【表4】

【0220】
【表5】

【0221】
【表6】

【0222】
【表7】

【0223】
【表8】

【0224】
実施例1〜43、45、77、78比較例1〜43、45、77、78を表2、表3にて各種項目を比較すると、抗菌性試験において実施例、比較例共に黄色ブドウ球菌と大腸菌の生菌数を激減していることからも抗菌性は十分に発現していると言える。しかし、架橋度判定時の抗菌性ポリマー水溶液の状態は大きく異なり、加熱処理を行った実施例1〜43、45は低粘度液体であるのため、サンプルに純水を通水するだけでも余剰な抗菌性ポリマー水溶液は洗い流すことができた。それに対し加熱処理を行っていない比較例1〜43、45はPE袋内の抗菌性ポリマー液体の粘度が高くドロドロであったり、中には完全にゲル化して、ゲル化物を手で掻き分けてサンプルを取り出し、更にサンプル表面の微少なゲル化物を洗浄しなければならないものもあった。
【0225】
実施例47〜61、比較例47〜61のように樹脂基材がEVOHになると、その差はより顕著になり、放射線照射することによって抗菌性ポリマー水溶液が非常にゲル化しやすい傾向になる。しかし、実施例のように加熱処理を行うことで抗菌性ポリマー水溶液が液状化するため洗浄することが非常に容易になる。また、水溶液中にアルコールを含有させた比較例48、49、52、53、56、57、59、60はアルコールが含有していないものに比べて水中溶出量が多い傾向にある。吸湿性の高いEVOH基材にアルコールが吸い込まれ、溶出試験時の60℃浸積時にアルコールが水へ溶出したためと考えられ、洗浄前に加熱処理を行い、EVOH基材からアルコールを除去している実施例全ての溶出量は極めて少ない。
【0226】
実施例62〜76、比較例62〜76のように、成形体の形状がチューブ状になるとγ線照射時の樹脂基材表面積:抗菌性ポリマー水溶液の充填量の比がチューブ状の内面になると樹脂基材表面積が大きくなるため、更にゲル化しやすい傾向にあることが表4、5の架橋度判定からもわかる。
【0227】
中でも比較例66、69、70、73、76はホース内で抗菌性ポリマー水溶液がゲル化するため洗浄する事が不可能で、そのため水中溶出量は測定不可となった。チューブ内部の抗菌性ポリマー水溶液がゲル化してしても、長さが数cmのホースであれば洗浄水の水圧や棒などの道具で洗浄することはできても(内表面にゲル化は付着している)洗浄が不十分になるため水中溶出量が大きくなる。また数m、数十mののホースになると詰物が取れないことから実質洗浄不可能になるためホースとして機能しないことになる。
実施例46、実施例62〜76の様に加熱処理をすることで、チューブ内部の抗菌性ポリマー水溶液ゲル化物が液状化するため、長さが数十mのホースでも内部洗浄する事が可能となることから抗菌性を有し、水中溶出量が極めて少ないチューブを得ることが出来る。
【0228】
実施例79〜82のように積層ホースの一部の層の材料に接着性樹脂を配合、または接着層を設けることで、層間剥離せずに水中溶出量が極めて少ない抗菌性チューブを得ることが出来る。
【0229】
また、実施例83のチューブ状樹脂成形体を、実施例79で記載したようにアンダーシンク型浄水器“トレビーノ”(登録商標)SK55の樹脂ホースと交換して用いたところ代謝物が発生しなかった。比較例83ではホース内にゲル化物が詰まっていたため浄水器としては機能しなかった。
【0230】
同様に実施例84と比較例84、実施例85と比較例85においても、実施例では代謝物が発生しないで浄水器として機能していた物が、比較例ではホースで発生した代謝物がノズルで詰まって浄水器としては機能しなかった。
【0231】
実施例86〜88、比較例86〜88からも解るように、樹脂基材が抗菌性ポリマー水溶液に浸積せず、水溶液が樹脂基材表面に僅かに濡れている位の樹脂基材にγ線照射して洗浄したサンプルでも抗菌性を発現した。しかし、比較例86〜88では、基材表面にブツブツ状のゲル化物が付着しているため、抗菌性は発現したが水中溶出量が大きい傾向になった。実施例では加熱処理後に洗浄するため基材表面が綺麗に洗浄され、基材表面のゲル化付着物は観察されない。そのため抗菌性を有し、かつ水中溶出量が極めて小さく、従来からある抗菌材料である銀イオン徐放型の抗菌材料と異なり、銀イオンの溶出物は全く確認されない。
【0232】
また本発明の抗菌性樹脂成形体は透過率が高いため、チューブにして用いた時にも内容物を確認する事ができる。
【0233】
本発明の抗菌性樹脂成形体を用いた浄水器は高透過率で水中溶出量も低く押さえられている。
【0234】
以上のことから、本発明によって透明かつ水中溶出量が低い抗菌性樹脂成形体を得ることが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明の抗菌性樹脂成形体は、上記した問題を解決し透明かつ抗菌特性に優れるため、抗菌性が要求されるあらゆる用途へ使用することができる。特に、透明かつ抗菌特性で、溶出物質が極力少ないことが要求される飲料や食品用途、中でも食品や飲料等の送液チューブおよび包装容器等に有用に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学構造式(1)
【化1】

(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表し、aおよびbは0〜10の整数であり、pとqの比は0.1:99.9〜100:0である。)、
下記化学構造式(2)
【化2】

(式中、Wは酸素、硫黄またはセレンを表し、cは0〜10の整数である。)、
下記化学構造式(3)
【化3】

(式中、x、yおよびzはそれぞれ1〜10の整数で、mとnの比は0.1:99.9〜99.9:0.1であり、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および炭素原子との結合から選ばれる。)、
下記化学構造式(4)
【化4】

および、下記化学構造式(5)
【化5】

(式中、Yは炭素数2〜30のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数6〜30のアリール基またはハロゲン原子を表す。)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーで樹脂基材が被覆され、有機物水中溶出量が2ppm以下であることを特徴とする抗菌性樹脂成形体。
【請求項2】
下記化学構造式(1)
【化6】

(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表し、aおよびbは0〜10の整数であり、pとqの比は0.1:99.9〜100:0である。)、
下記化学構造式(2)
【化7】

(式中、Wは酸素、硫黄またはセレンを表し、cは0〜10の整数である。)、
下記化学構造式(3)
【化8】

(式中、x、yおよびzはそれぞれ1〜10の整数で、mとnの比は0.1:99.9〜99.9:0.1であり、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および炭素原子との結合から選ばれる。)、
下記化学構造式(4)
【化9】

および、下記化学構造式(5)
【化10】

(式中、Yは炭素数2〜30のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数6〜30のアリール基またはハロゲン原子を表す。)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマーを樹脂基材に含有する請求項1に記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項3】
化学構造式(1)が、下記化学構造式(6)
【化11】

(式中、pとqの比は0.1:99.9〜100:0である。)で示されるものである請求項1または2に記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項4】
化学構造式(2)が、下記化学構造式(7)
【化12】

で示されるものである請求項1または2に記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項5】
化学構造式(3)が、下記化学構造式(8)
【化13】

(式中、mとnの比は0.1:99.9〜99.9:0.1であり、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および炭素原子との結合から選ばれる。)で示されるものである請求項1または2に記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項6】
ポリスルホン系樹脂を樹脂基材に含有する請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項7】
シリコンゴムを樹脂基材に含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項8】
エチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂を樹脂基材に含有する請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項9】
抗菌性樹脂成形体が管状であり、樹脂基材が多層で構成されており、樹脂基材の最内面層及び/または最外面層がエチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項10】
無機物水中溶出量が0.01ppm以下である請求項1〜9のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項11】
フィルム時(膜厚30μm)の全光光線透過率が70%以上である請求項1〜10のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体を装着してなる浄水器、ビールサーバー及びミルカー。
【請求項13】
下記化学構造式(1)
【化14】

(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、Rは水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表し、aおよびbは0〜10の整数であり、pとqの比は0.1:99.9〜100:0である。)、
下記化学構造式(2)
【化15】

(式中、Xは酸素、硫黄またはセレンを表し、cは0〜10の整数である。)、
下記化学構造式(3)
【化16】

(式中、x、yおよびzはそれぞれ1〜10の整数で、mとnの比は0.1:99.9〜99.9:0.1であり、AおよびBはそれぞれ独立に水素原子および炭素原子との結合から選ばれる。)、
下記化学構造式(4)
【化17】

および、下記化学構造式(5)
【化18】

(式中、Yは炭素数2〜30のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数6〜30のアリール基またはハロゲン原子を表す。)で示される群から選ばれた繰り返し単位を有するポリマー水溶液に、樹脂基材の少なくとも一部を浸漬せしめ、放射線を照射した後に加熱工程と洗浄工程をこの順に有することを特徴とする抗菌性樹脂成形体の製造方法。
【請求項14】
該ポリマー水溶液中にアルコールが含有している請求項13に記載の抗菌性樹脂成形体の製造方法。
【請求項15】
放射線が電子線またはγ線である請求項13〜14のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体の製造方法。
【請求項16】
抗菌性樹脂成形体が管状であり、樹脂基材の最内面層及び/または最外面層がエチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂を含有してなる抗菌性樹脂成形体の製造方法であって、エチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂を含有する層の隣接層となる樹脂に、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、無水マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる樹脂を含有させる工程、エチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂およびその隣接層となる樹脂を、積層成形する請求項13〜15のいずれかに記載の抗菌性樹脂成形体の製造方法。
【請求項17】
エチレンビニルアルコールの繰り返し単位からなる樹脂を含有する層とその隣接層の間に、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、無水マレイン酸樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる樹脂を含む接着層を有する請求項16に記載の抗菌性樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2007−277445(P2007−277445A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107210(P2006−107210)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】