説明

抗菌性防錆剤

【課題】 抗菌性が優れ、オイル分離性が良く、低泡性で、かつ防錆性が優れた抗菌性防錆剤を提供する。
【課題を解決するための手段】 一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物(E)および/または該(E)と炭素数6〜20のカルボン酸との塩(Q)を含有する抗菌性防錆剤である。
【化3】


式中、Rは炭素数4〜18の2価の炭化水素基、A1〜A4は炭素数2〜4のアルキレン基、m1〜m4は0または1〜3の整数であり、m1〜m4の合計は4〜12である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性防錆剤に関する。詳しくは水溶性金属加工油に配合することのできる抗菌性防錆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物油、脂肪酸エステルなどの動植物油や合成油などを基油としたエマルション型切削油、界面活性剤を主剤としたソリュブル型切削油及びポリエーテルを主剤としたソリューション系水溶性切削油には、防錆性や抗菌性を付与するために、通常、脂肪酸や二塩基酸のアミン塩が使用されている。アミン塩を構成するアミンにはモノエタノールアミンおよびイソプロパノールアミンなどの1級アミン、ジエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンなどの2級アミン、トリエタノールアミンやアミンのアルキレンオキシド付加体などの3級アミンを使用しているのが一般的である。
しかしながら、モノエタノールアミン塩などの1級アミン塩は皮膚への刺激性が強く、ジエタノールアミン塩などの2級アミン塩はニトロソアミンの形成で発ガン性の問題が指摘されている。また、トリエタノールアミン塩やモノアルキルアミンのアルキレンオキシド付加体の塩においては抗菌性が十分でなく、また、十分な防錆力が得られていない。
また、炭素数8〜18のアルキル基もしくはアルケニル基を有するアミンなどのプロピレンオキサイド付加物(特許文献−1参照)、炭素数2〜3のアルキレン基を有するアルキレンジアミン(特許文献−2参照)、及び脂環式アミンのエチレンオキサイド付加物(特許文献−3参照)などが提案されているが、これらの化合物は、摺動面油などのオイルが混入した場合にオイルとの分離性が悪く、かつ起泡性が大きいという問題点があった。
【特許文献−1】特開平1− 98696号公報
【特許文献−2】特開平2−228394号公報
【特許文献−3】特公昭56−5480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の問題点に鑑み、本発明の課題は、抗菌性が優れ、オイル分離性が良く、かつ低泡性で防錆性が優れた抗菌性防錆剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物(E)および/または該(E)と炭素数6〜20のカルボン酸との塩(Q)を含有する抗菌性防錆剤;並びに該抗菌性防錆剤を含有してなる水溶性金属加工油である。
【0005】
【化2】

【0006】
式中、Rは炭素数4〜18の2価の炭化水素基、A1〜A4は炭素数2〜4のアルキレン基、m1〜m4は0または1〜3の整数であり、m1〜m4の合計は4〜12である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗菌性防錆剤は、
(1)摺動面油などの鉱物油系潤滑油のオイル分離性が良好である。
(2)低泡性である。
(3)腐敗が起こりにくい。
(4)抗菌性に優れている。
(5)防錆性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の抗菌性防錆剤における一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物(E)について説明する。
一般式(1)におけるRは炭素数4〜18の2価の炭化水素基であり、炭化水素基としては脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0009】
脂肪族炭化水素基としては、鎖状および脂環式炭化水素基が挙げられる。
鎖状炭化水素基としては、直鎖および分岐状炭化水素基が挙げられる。
【0010】
炭素数4〜18の2価の脂肪族直鎖炭化水素基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基およびオクタデシレン基などのアルキレン基、並びにブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基などのアルケニレン基が挙げられる。
炭素数4〜18の2価の脂肪族脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシレン基およびシクロヘキシルジメチレン基などが挙げられる。
炭素数4〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基およびキシリレン基などが挙げられる。
【0011】
Rのうち好ましいのは、防錆性の観点から、炭素数4〜18の2価の脂肪族直鎖炭化水素基であり、さらに好ましいのはアルキレン基、特に炭素数6〜12のアルキレン基である。
【0012】
一般式(1)におけるA1〜A4は炭素数2〜4のアルキレン基であり、炭素数2のアルキレン基としてはエチレン基、炭素数3〜4のアルキレン基としては1,2−プロピレン基、並びに1,2−、2,3−および1,4−ブチレン基が挙げられる。これらのうち好ましいものはエチレン基、1,2−プロピレン基およびこれらの併用であり、特に好ましいのは水への溶解性の観点からA1〜A4がいずれもエチレン基である場合である。
1〜m4は0または1〜3の整数であり、m1〜m4の合計は4〜12、好ましくは4〜8である。m1〜m4の合計が4未満ではオイル分離性が悪くなり、12を超えると防錆性が悪くなる。
【0013】
(E)は、一般式H2N−R−NH2で表されるジアミン(Rは一般式(1)と同様)に、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造される。
【0014】
一般式H2N−R−NH2で表されるジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デシルメチレンジアミン、ドデシルメチレンジアミン、ヘキサデシルメチレンジアミンおよびオクタデシルメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、シクロヘキシルジアミンなどの脂環式ジアミン、並びにフェニレンジアミンおよびキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0015】
炭素数2のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(EOと略記)が挙げられ、炭素数3〜4のアルキレンオキサイドとしては、1,2−プロピレンオキサイド(POと略記)、1,2−、2,3−、1,3−およびiso−ブチレンオキサイド、並びにテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。これらのうち好ましいものは、EO、POおよびこれらの併用であり、特にEOである。
【0016】
付加反応は、通常、温度100〜180℃、圧力0〜0.6MPa、反応時間2〜15時間で行うことができる。反応は、通常無触媒で行い、必要により触媒の存在下に行われる。触媒としては、アルカリ触媒、例えば水酸化物[KOH、NaOH、CsOH、Ca(OH)2等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物等]、または酸化物(K2O 、CaO、BaO等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物等)
等が挙げられる。
【0017】
本発明の抗菌性防錆剤は、上記の(E)を含有する抗菌性防錆剤、上記の(E)と炭素数6〜12のカルボン酸との塩(Q)を含有する抗菌性防錆剤、または上記(E)と塩(Q)を含有する抗菌性防錆剤のいずれかである。
抗菌性防錆剤が(Q)を含有することにより、鉄のみでなく非鉄金属への防錆性が発揮できる。
【0018】
本発明において、塩(Q)を構成する炭素数6〜20のカルボン酸(F)としては、脂肪族鎖状カルボン酸、脂環式カルボン酸および芳香族カルボン酸などが挙げられる。
【0019】
脂肪族鎖状カルボン酸としては、脂肪族鎖状モノカルボン酸(ヘキサン酸、カプリル酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸等の炭素数6〜20のアルカンモノカルボン酸、並びにオレイン酸などのアルケニルモノカルボン酸など)および脂肪族鎖状ジカルボン酸(アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン2酸等の炭素数6〜20のアルカンジカルボン酸、並びにオクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸およびペンタデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸など)が挙げられる。
脂環式カルボン酸としては、ナフテン酸およびシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸および桂皮酸等が挙げられる。
【0020】
これらのうち潤滑性および防錆性の観点から好ましいものは、炭素数6〜20の脂肪族鎖状モノカルボン酸、炭素数6〜20の脂肪族鎖状ジカルボン酸および炭素数6〜20の脂環式カルボン酸からなる群から選ばれる1種以上である。
【0021】
本発明の抗菌性防錆剤が塩(Q)を含有する場合の抗菌性防錆剤の製造方法としては、予め製造された塩(Q)を使用してもよいが、製造工程が簡略であるという観点から、カルボン酸(F)およびアルキレンオキサイド付加物(E)を抗菌性防錆剤の成分として任意の当量比で配合し、(F)と(E)との中和反応を起こさせて、配合工程で塩(Q)を生成させる方法が好ましい。
【0022】
配合工程で塩(Q)を生成させる方法において、(E)と(F)の配合量は、通常、(E)の全アミン価の総量に対して(F)の全酸価の総量が0.2〜2.0倍、好ましくは0.3〜1.5倍の割合である。全酸価の総量が1.5倍以下であれば抗菌性防錆剤が水に不溶性になりにくい。
また、(E)と(F)の重量割合は、(E)/(F)=10/1〜1/10、好ましくは8/2〜2/8である。
(E)と(F)の配合量の計算は、例えば、全アミン価300の(E)が100重量部に対して、全酸価389の(F)を300×100/389=77.1重量部配合した場合、(E)の全アミン価の総量に対して(F)の全酸価の総量が1.0倍となる。
(E)の全アミン価の総量に対する(F)の全酸価の総量が1.0倍未満の場合は、(E)が過剰になり、本願発明の抗菌性防錆剤は(Q)と(E)を含有し、1.0倍を超える場合は、(F)が過剰になり、本願発明の抗菌性防錆剤は(Q)と更に(F)を含有する。
従って、本発明の抗菌防錆剤は、(Q)および/または(E)を含有し、必要により(F)を含有する。
【0023】
本発明の抗菌性防錆剤は、必要により水で稀釈することができる。稀釈する場合は、抗菌性防錆剤中の(E)および(Q)の合計の重量濃度がが5〜95%(以下、%は重量%を表す)、好ましくは20〜60%になるように水で希釈することが取り扱いやすさの観点から好ましい。
さらに、使用時に0.2〜20%(好ましくは1〜20%)になるように更に水で希釈して使用することもできる。
【0024】
本発明の抗菌性防錆剤の他の使用方法は、水または有機溶媒(例えばエチルアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミドなど)に抗菌性防錆剤の濃度が0.01〜30%(好ましくは0.5〜20%)になるように添加して使用する方法が挙げられる。
【0025】
さらに他の使用方法としては、洗浄剤、例えば、従来の金属用洗浄剤や電子部品用洗浄剤などに配合して洗浄剤の抗菌性と防錆性を改善することができる。
【0026】
本発明の抗菌性防錆剤は、オイル分離性、抗菌性、防錆性および低起泡性という効果だけでなく、さらに、塗料の塗装面や樹脂への浸透性が弱いため、被処理材料の周辺の塗膜の剥離や膨潤が起きにくい。
【0027】
本発明の水溶性金属加工油は、上記の抗菌性防錆剤および通常の水溶性金属加工油に使用される各種の他の構成成分(以下、他の構成成分と略記する)を含有してなる。
本発明の水溶性金属加工油における、抗菌性防錆剤以外の他の構成成分としては、水溶性のポリエーテル、炭化水素系潤滑油、乳化剤、極圧剤、油性剤および防錆剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用してもよい。
【0028】
水溶性のポリエーテルとしては、例えば数平均分子量500〜20,000 のポリエチレングリコール、プルロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコールのPOブロック付加体、2価アルコールのEO/POランダム付加体(20〜40モル付加)、又はグリセリン、ソルビトール等の3〜6価の多価アルコールのEO/POランダム付加(20〜100モル付加)体等が挙げられる。水溶性ポリエーテルの含有量は、水溶性金属加工油の重量に基づいて、好ましくは40%以下である。
【0029】
炭化水素系潤滑油としては、溶剤精製油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ポリ−α−オレフィン(重量平均分子量200〜4,000)、ポリブテン(重量平均分子量200〜4,000)等が挙げられる。これらの内好ましいのは、溶剤精製油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油である。炭化水素系潤滑油の含有量は、水溶性金属加工油の重量に基づいて、好ましくは70%以下である。
【0030】
乳化剤としては、例えば炭素数10〜40のスルホン酸類(アルキルベンゼンスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等)のNa、K塩等、炭素数8〜22の脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ひまし油脂肪酸等)のNa、K塩等、これら脂肪酸と数平均分子量500 〜5,000のポリエチレングリコールとをエステル化したPEGエステル等及び炭素数8〜24のアルコール(オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等)にエチレンオキサイドを2〜40モル付加した非イオン活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル及びこれらのエチレンオキサイドを5〜40モル付加した非イオン活性剤等が挙げられる。乳化剤の使用量は、水溶性金属加工油の重量に基づいて好ましくは30%以下である。
【0031】
極圧剤としては、ジアルキル(C1〜36)ジチオリン酸亜鉛、例えばジオクチルジチオリン酸亜鉛及びジアリルジチオリン酸亜鉛;炭素数3〜60の有機硫化物、例えばジラウリルチオジプロピオネート及びテトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
極圧剤の使用量は、水溶性金属加工油の重量に基づいて好ましくは5%以下である。
【0032】
油性剤としては、例えば、炭素数8〜22の脂肪酸のアミン塩又はアルカリ金属塩、炭素数8〜22のアルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩及び炭素数8〜22の脂肪酸と炭素数8〜22の1価アルコール又は2〜6価若しくはそれ以上の多価ルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ネオペンチルアルコール、ペンタエリスリトール等)のエステル、動植物油等が挙げられる。油性剤の使用量は、水溶性金属加工油の重量に基づいて好ましくは20%以下である。
【0033】
防錆剤としては、例えば、炭素数2〜36の有機アミン(脂肪族アミン、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン;脂環式アミン、例えばシクロヘキシルアミン;複素環式アミン、例えばモルホリン;炭素数6〜36の脂肪族カルボン酸アミド(カプリル酸、ラウリル酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸のアミド等);炭素数6〜24の二塩基酸アミド(アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、ダイマー酸のアミド等);炭素数6〜36のアルケニルコハク酸アミド(オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸のアミド等);芳香族カルボン酸アミド(安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、ニトロ安息香酸のアミド等);シクロヘキシルアミンナイトライト;ベンゾトリアゾール;メルカプトベンゾチアゾール;N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン;アリザリン等が挙げられる。上記アミドの構成成分であるアミンとしては、前記のアミン及びアンモニアが挙げられる。
防錆剤の使用量は、水溶性金属加工油の重量に基づいて好ましくは10%以下である。
【0034】
本発明の水溶性金属加工油は、上記の抗菌性防錆剤、上記のその他の構成成分、および必要により水を含有する。
水溶性金属加工油の重量に基づく、抗菌性防錆剤(有効成分)/その他の構成成分/水の含有割合(重量%)は、好ましくは5〜80/5〜70/10〜80、さらに好ましくは10〜60/10〜40/30〜60である。
【0035】
本発明の水溶性金属加工油剤は、上記(E)および/または(Q)、並びに必要により(F)および/または他の構成成分を、従来公知の混合装置で混合することにより得られる。混合条件は特に限定はないが、好ましくは0〜30℃で0.5〜3時間混合することにより容易に得られる。
【0036】
配合して得られた水溶性金属加工油は、さらに水で(E)+(Q)+(F)の濃度が0.5〜30%になるように希釈して使用することが好ましい。
【0037】
本発明の水溶性金属加工油剤は、水に任意の濃度に稀釈でき、オイル分離性、防錆性、低泡性に優れる。本発明の水溶性金属加工油剤は、切削油、研削油、研磨油、圧延油、引き抜き油、プレス油、焼き入れ油、アルミディスク及びシリコンウエハの研磨、切断等の加工に好適に用いることができる。
【0038】
[実施例]
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部を表す。
【0039】
実施例1
ガラス製オートクレーブにヘキサメチレンジアミン116部(1モル)を仕込み、耐圧滴下ロートに仕込んだEO176部(4モル)を反応温度が140〜150℃を保つように制御しながら6時間かけて滴下した後、145℃で2時間さらに反応させた。その後、80℃に冷却後、減圧下にストリッピングして、全アミン価が292の本発明の抗菌性防錆剤(E1)292部を得た。
【0040】
実施例2
ガラス製オートクレーブにヘキサメチレンジアミン116部(1モル)を仕込み、耐圧滴下ロートからPO232部(4モル)を反応温度が140〜150℃を保つように制御しながら6時間かけて滴下した後、145℃で2時間さらに反応させた。その後、製造例1と同様にして、減圧下にストリッピングして全アミン価が322の本発明の抗菌性防錆剤(E2)348部を得た。
【0041】
実施例3
ガラス製オートクレーブにドデカメチレンジアミン200部(1モル)を仕込み、耐圧滴下ロートからEO176部(4モル)を反応温度が140〜150℃を保つように制御しながら5時間かけて滴下した後、145℃で2時間反応させ、その後、製造例1と同様にして、減圧下にストリッピングして全アミン価が298の本発明の抗菌性防錆剤(E3)376部を得た。
【0042】
比較例1〜3
ガラス製オートクレーブにヘキサメチレンジアミン116部(1モル)と粉末状のKOH4.8部を仕込み、耐圧滴下ロートからEO880部(20モル)を仕込み、反応温度が140〜150℃を保つように制御しながら10時間かけて滴下した後、145℃で2時間反応させた後、80℃に冷却後、吸着処理剤(協和化学工業社製キョワード600)で処理し、濾過後、110℃で1時間減圧脱水して、全アミン価が112の比較の抗菌性防錆剤(E’1)996部を得た。
比較例2および3
比較例2としてはトリエタノールアミン、比較例3としてはエチレンジアミンのPO4モル付加物を用いた。
【0043】
抗菌性防錆剤の評価;
本願発明の抗菌性防錆剤(E1)〜(E3)、並びに比較の抗菌性防錆剤としての(E’1)、トリエタノールアミンおよびエチレンジアミンのPO4モル付加物について、 抗菌性、防錆性、泡立ち性およびオイル分離性を評価した。
評価方法は、以下のとおりである。
(1)抗菌性
200mlのガラス瓶に試料の1%水溶液100mlを入れ、その中にとうもろこし粉2g、鋳鉄切粉3g、腐敗した切削液1mlを添加し、pHを9.5に塩酸または水酸化カリウムで調整後、37℃の恒温槽に放置して14日後のpH低下度及び一般細菌数(簡易培養測定キット イージ−カルトTTC(第一化学薬品製)を用いて測定)を測定した。pH低下が少ないほど腐敗が少なく、抗菌性が良好であることを示す。
(2)防錆性
試料の1%水溶液に鋳鉄(FC−25)の切り屑5gを10分間浸漬後取り出し、濾紙を敷いたシャーレに広げ、フタをして室温で24時間後の錆の発生する状態を観察した。○;錆なし、△;十数点錆発生、 ×;全面積の1/2に錆発生
(3)泡立ち性
試料の2%水溶液100mlを200mlメスシリンダーに入れ、30秒間激しく振とうさせた後、静置して1分後の泡の容量(ml)を測定した。
(4)オイル分離性
共栓付き100mlメスシリンダーに、試料の2%水溶液90mlを入れ、更に摺動面油(ダイナウエイ68:コスモ石油製)10mlを加え、30秒間振とう後、静置して30分後の分離したオイルの容量(ml)からオイルの分離率(%)を測定した。
【0044】
評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例4〜8、比較例4〜7
表2に示す配合処方に基づいて、水溶性金属加工油を得た。
【0047】
評価は、作成した水溶性金属加工油をさらに稀釈し、水以外の成分の濃度を4%に調整して実施した。
評価方法は上記と同様である。
【0048】
【表2】

【0049】
本発明の抗菌性防錆剤は、抗菌性があり、泡立ちが低く、かつ、オイル分離性が良好であり、防錆性が優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の抗菌性防錆剤は、抗菌性があり、泡立ちが低く、かつ、摺動面油などのオイル分離性が良好で防錆性が優れている。このため、金属の切削、研削、プレス、圧延、引き抜き、焼き入れ、アルミディスク及びシリコンウエハの研磨・切断などの加工油に配合する防錆剤として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物(E)および/または該(E)と炭素数6〜20のカルボン酸との塩(Q)を含有する抗菌性防錆剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数4〜18の2価の炭化水素基、A1〜A4は炭素数2〜4のアルキレン基、m1〜m4は0または1〜3の整数であり、m1〜m4の合計は4〜12である。)
【請求項2】
一般式(1)におけるRが直鎖アルキレン基である請求項1記載の抗菌性防錆剤。
【請求項3】
一般式(1)におけるA1〜A4がいずれもエチレン基である請求項1または2記載の抗菌性防錆剤。
【請求項4】
炭素数6〜20のカルボン酸が、炭素数6〜20の脂肪族鎖状モノカルボン酸、炭素数6〜20の脂肪族鎖状ジカルボン酸および炭素数6〜20の脂環式カルボン酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいづれか記載の抗菌性防錆剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の抗菌性防錆剤を含有してなる水溶性金属加工油。

【公開番号】特開2006−348079(P2006−348079A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172540(P2005−172540)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】