説明

抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液および抗菌消臭剤

【課題】凍結・解凍後の再分散性に優れた抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を提供する。
【解決手段】抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、無機酸化物微粒子に抗菌消臭性能を有する金属成分を担持してなる平均粒子径1〜500nmの抗菌消臭性無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2となる範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液に関し、特に、凍結・解凍後の再分散性に優れた抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液および抗菌消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀や亜鉛などの金属を修飾した酸化チタンやシリカアルミナなどの微粒子は、抗菌性能や消臭性能、また抗アレルゲンや抗ウイルス機能を有しており、各種の抗菌消臭剤に配合して用いられ、また抗菌、消臭や抗アレルゲン、抗ウイルスを目的として塗料、布、繊維製品、樹脂組成物などに配合して用いられている。
このような抗菌・消臭剤粒子の例として、特許文献1には抗菌性無機酸化物コロイド溶液が記載されている。
【0003】
また、特許文献1にはこのような抗菌性無機酸化物コロイド溶液の溶媒を水からメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に置換してもよいことが記載されている。
また、例えば特許文献2に記載されているように、チタンアルコキシドを原料としてチタン微粒子を製造する際に、溶媒として例えば炭素数1〜10のアルコールを用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−104605号公報
【特許文献2】特開2009−208977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている抗菌性無機酸化物微粒子のコロイド溶液は、分散媒を水としているため、安全性が高く、抗菌剤としての取り扱いが簡便で塗料化や樹脂、繊維等に配合する際の加工が容易である等の利点を有している。
しかし、このコロイド溶液は分散媒が水であるため、寒冷地や低温条件下にて輸送および保管または使用した場合に凍結する場合があり、その際にゾルに含まれる粒子が凝集してこれを再分散させることが非常に困難もしくは不可能であった。そのため凍結後のコロイド溶液の透明性や安定性が著しく低下し、またこのコロイド溶液の抗菌効果が著しく低下するという問題があった。
【0006】
また、特許文献1にはこのコロイド水溶液の分散媒を有機溶媒で置換してもよいことが記載されており、特許文献2にはアルコールを溶媒として含む酸化チタン微粒子のコロイド溶液が記載されているが、抗菌消臭剤として使用するには安全性、取り扱い性および塗料化等の加工性の面から、分散媒の主成分が水であることが求められる場合があった。
【0007】
本発明らは、このような問題に鑑み、鋭意研究した結果、水を分散媒とした抗菌消臭性無機酸化物微粒子の分散液に少量のアルコールを添加することで、凍結解凍後の不可逆的凝集が著しく抑制されることを見出し、本発明を完成させるに到った。
このような課題を解決するために、本発明では、凍結という状態を経ても不可逆的な凝集が起こらず、またその抗菌消臭性能が低下しにくい抗菌消臭性微粒子の水分散液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、無機酸化物微粒子に抗菌消臭性能を有する金属成分を担持してなる平均粒子径1〜500nmの抗菌消臭性無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2となる範囲にあることを特徴とする。
【0009】
前記アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれた1種以上であることが好ましい。
抗菌性無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
アルコール濃度が0.5〜8重量%の範囲にあることが好ましい。
前記無機酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子またはシリカアルミナ微粒子であることが好ましい。
前記抗菌消臭性能を有する金属成分が、銀、亜鉛、スズ、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の抗菌消臭剤は、前記いずれかの抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を含むものである。
本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の製造方法は、抗菌性無機酸化物微粒子を含み、アルコールを含まない水分散液に、該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2の範囲となるようにアルコールを添加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに対して所定の範囲のアルコールを含むため、この水分散液を凍結させた際に該抗菌消臭性無機酸化物微粒子が不可逆的な凝集や沈降を起こすことがなく、これを解凍したのちには容易に再分散させることができて、透明で安定、かつ高い抗菌消臭性能が維持された抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を得ることができる。
【0012】
このような抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は凍結によってその品質が低下することが非常に少ないため寒冷地や低温条件下でも輸送および保管または使用することができる。また、該水分散液に含まれるアルコールの量は、抗菌消臭性無機酸化物微粒子の固形分濃度にもよるが、非常に少なくて済み、危険物の法的取り扱い制限を受けることがない。更に、不要なアルコール成分を含まないので、分散媒に含まれる水の割合を非常に多くすることができ、該水分散液を抗菌消臭剤として用いる際の安全性が高く、取り扱いが容易で加工性に優れ、製法が簡便かつ製造コストが安価であるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について具体的に述べる。
抗菌性無機酸化物微粒子
本発明において抗菌性無機酸化物微粒子は、無機酸化物微粒子に抗菌消臭性能を有する金属成分を担持してなる平均粒子径1〜500nmの抗菌消臭性無機酸化物微粒子であることが好ましい。
前記無機酸化物微粒子としては、特に制限されず金属元素の単独酸化物微粒子または複合酸化物微粒子を用いることができる。またはこれらの単独酸化物微粒子や複合酸化物微粒子が複数集合したもの、化合したもの、もしくは結合してなる複合粒子などであってもよい。
【0014】
前記無機酸化物微粒子としては、具体的には、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、ジルコニウム、アンチモン、鉄、タングステンなどの金属元素から選ばれる1種以上を含む酸化物微粒子もしくは複合酸化物微粒子を使用することができる。
より好ましくは、酸化チタン微粒子またはケイ素とアルミニウムの複合酸化物微粒子であるシリカアルミナ微粒子を用いることが好ましい。
前記酸化物微粒子または複合酸化物微粒子は、さらにリン、ホウ素、セリウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属を含むものであってもよい。
【0015】
前記無機酸化物微粒子は、コロイド状の微粒子であることが好ましい。コロイド状の無機酸化物微粒子は、分散性および透明性が高く、これに抗菌消臭性能を有する金属成分を担持した抗菌消臭性微粒子は抗菌消臭性が優れるため好ましい。
前記無機酸化物微粒子の形状は特に制限されるものではなくどのような形状のものであってもよい。例えば球状、繊維状、針状、棒状、鎖状、金平糖状またはこれらに近い形状の微粒子を用いることができる。
【0016】
この無機酸化物微粒子に担持する抗菌消臭性能を有する金属成分としては、抗菌消臭性能を有するものであればよく、特に制限されるものではないが、たとえば銀、銅、亜鉛、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、水銀、コバルト、ニッケル、マンガンなどを用いることができる。
これらの中でも、銀、亜鉛、スズ、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれた1種以上を用いることが好ましく、特に、銀または亜鉛を用いることがより好ましい。
【0017】
この抗菌消臭性能を有する金属成分の無機酸化物微粒子に対する担持量としては特に制限されるものではないが、抗菌消臭性無機酸化物微粒子の固形分換算基準で、該金属成分が酸化物換算基準で0.001〜20重量%の範囲となるように担持すればよい。
前記金属成分の担持量が0.001重量%未満の場合には抗菌消臭性能が低下する場合があり、20重量%を超えるとそれ以上担持する量を増やしても抗菌消臭性能が向上しにくくなる場合があったり、抗菌消臭性無機酸化物微粒子が変色する場合があるので好ましくない。
【0018】
前記抗菌消臭性能を有する金属成分を前記無機酸化物微粒子に担持する方法としては含浸法、イオン交換法、蒸発乾固法またはその他の公知の方法を用いることができる。
前記担持は、前記無機酸化物微粒子の表面に前記金属成分が金属、酸化物または水酸化物等の形態で修飾されている形態、または結合、または化合している形態であってもよく、前記金属成分の少なくとも一部が該無機酸化物微粒子の内部に存在して複合化している形態であってもよい。
【0019】
前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は1〜500nm、より好ましくは3〜30nmの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が1nm未満の場合には前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の安定性が低下しゲル化するおそれがあるので好ましくない。また、前記平均粒子径が500nmを超えると該微粒子の分散性や安定性が低下して透明性が低下したり抗菌消臭性能が低下する場合があるので好ましくない。
このような抗菌消臭性無機酸化物微粒子は例えば特開平08−104605号公報、特開平10−17406号公報、特開平09−299460号公報、特開平07−150075号公報、特開平07−33616号公報に記載の方法などの公知の製造方法で製造することができる。
【0020】
抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液
本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2となる範囲にあることを特徴としている。
上記所定範囲のアルコールを含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、凍結した際の該微粒子の不可逆的な凝集および沈降が著しく抑制され、前記水分散液が一旦凍結してから解凍されたのちであっても、該分散液に含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子が容易に再分散し、その粒子径も殆ど変化することがなく、透明性および安定性を維持することができる。また、該水分散液の抗菌消臭性能も凍結によって変化せず、高い抗菌消臭性能を維持することができる。
【0021】
前記アルコールの含有量は抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積に対して4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2、より好ましくは5.7×10-6〜1.1×10-4 、さらに好ましくは3.9×10-5〜7.4×10-4mol/m2となる範囲にあることが好ましい。
前記アルコールの含有量が4.4×10-6mol/m2未満の場合には、該水分散液が凍結したときに不可逆的な凝集やゲル化が起こり、その後解凍してもこれらを再分散させることが困難となり分散液の透明性や安定性および抗菌消臭性能が失われるまたは著しく低下するので好ましくない。
【0022】
前記アルコールの含有量が1.32×10-3mol/m2を超えると、それ以上アルコールを添加してもアルコールの添加効果はほとんど向上しなくなり、不要に多くのアルコールを含むとこの水分散液を抗菌消臭剤に用いる際に、危険物法的制限を受ける場合があり、その用途などによって取り扱いや加工上での問題が生じる場合があり好ましくない。さらには、アルコール含有量が多過ぎる場合には分散液の凍結そのものが起こりにくくなるため、その場合には本発明の技術的意義が発揮されないものとなる。
【0023】
前記アルコールは特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。
中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールを用いることが好ましい。特に、エチルアルコールは安全性が高いため好ましい。
【0024】
本発明における抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、殆どの場合、特に再分散工程を必要とせずに、凍結した水分散液を解凍させるだけで前記微粒子の分散性が復元するが、アルコールの含有量や微粒子の濃度などによって擬似的な凝集が起こった場合であっても、超音波処理などの再分散処理によって簡単にこれを再分散させることができる。
このように水分散液に含まれる微粒子の凍結時の不可逆的凝集が抑制される理由としては定かではないものの、水分散液の分散時、もしくは凍結時に、抗菌消臭性無機酸化物微粒子の表面にアルコール分子が存在する、またはアルコール分子が該微粒子の表面を部分的または全体的に被覆または吸着することにより、凍結時の該微粒子の不可逆的な凝集が抑制されると推察される。
【0025】
この時のアルコールの被覆率について正確に測定することは困難であるが、一般的に次のような計算式で表すことができる。
すなわち、一個の微粒子の表面には約8個/10Å2の割合で水酸基が存在し、水酸基三個に対して概ねアルコール分子一個が被覆することができるとすると、粒子の全表面に存在する水酸基の総数n(OH)は下記の通りとなる。
n(OH)=8/10×{1/(10-20)}×全粒子の総表面積c(m2
{ただしc={粒子の全重量a(g)×粒子の比表面積b(m2/g)}とする}
よって、n(OH)個のOH基すべてを被覆するのに必要なアルコールのモル数x(mol)は下記式の通りとなる。
x(mol)=n(OH)×(1/3)×{1/(6×1023)}
これを、全粒子の総表面積c(m2)で割ると、
粒子の単位表面積当りに存在する水酸基を100%被覆するのに必要なアルコールのモル数yはy(mol/m2)=x(mol)/c(m2)と表せる。
また、本発明においてyの理論値は4.4×10-4mol/m2となる。
【0026】
本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の被覆率はこの理論値yに対して1〜300%、より好ましくは1.3〜250%の範囲にあるものであることが好ましい。
被覆率が上記範囲にある抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、凍結時に該微粒子の凝集が著しく抑制されるため、凍結、解凍後の再分散性に非常に優れる。
また、抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液のアルコール含有量が、上記の被覆率の範囲を満足する範囲にあることが好ましい。
【0027】
前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の固形分濃度が0.001〜20重量%、より好ましくは0.001〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
前記固形分濃度が0.001重量%未満の場合には抗菌消臭性能が発現しない場合があるので好ましくない。前記固形分濃度が20重量%を超えると水分散液の分散性が低下する場合があったり、水分散液中のアルコール含有量が増え抗菌消臭剤の用途によっては好ましくない場合がある。
【0028】
前記アルコール濃度が0.5〜8重量%、より好ましくは0.9〜3.5重量%の範囲にあることが好ましい。
前記アルコール濃度が0.5重量%未満の場合には、水分散液を凍結解凍したのちの分散性が低下する場合があるので好ましくない。前記アルコール濃度が8重量%を超えると、この水分散液を抗菌消臭剤として用いる場合に安全性および加工性や取り扱いの面から好ましくない場合がある。
【0029】
また、本発明に係る前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を凍結させ、解凍したのち、遠心分離操作を行って凝集成分を分離した時に、該水分散液の上澄み液に含まれる前記微粒子の固形分濃度が、凍結前の該微粒子の水分散液の固形分濃度の80%以上、より好ましくは90%以上であることが好ましい。
このような抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、凍結状態を経た後も、解凍すれば容易に分散し、抗菌消臭性能が殆ど失われることなく高く維持される。
凍結解凍および遠心分離後の水分散液の固形分濃度が凍結前の固形分濃度の80%未満の場合には、凍結解凍後の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の抗菌消臭性能が低下する場合があるため好ましくない。
【0030】
前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、さらに、界面活性剤、分散剤、アロマ成分、各種添加剤などの成分を含んでいても良い。
本発明の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、凍結解凍後も不可逆的な凝集が起こらず、分散性、透明性、安定性、均一性に優れ、抗菌消臭性能も高いため、寒冷地や低温条件下で輸送または保管もしくは使用しても、品質の低下を招くことがない。
【0031】
また前記水分散液は、抗菌消臭性無機酸化物微粒子の固形分濃度にもよるが、アルコール含有量が非常に少なくて済み、溶媒中の水分含有量を増やすことができるので、生体への安全性が高く、取り扱いが容易で、安価であり、また加工や他成分との混合が容易であり、簡便かつ安価な方法で製造することができる。
前記水分散液の用途は特に制限されるものではなくあらゆる用途に使用することができる。特に、抗菌消臭剤として使用することが好ましい。
【0032】
抗菌消臭剤
本発明に係る抗菌消臭剤は、前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を含むことを特徴としている。
前記抗菌消臭剤は、前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を含むために、凍結による品質の低下の問題がなく、また安全性が高く、塗料または樹脂組成物その他への加工が容易で、取り扱いも容易である。
前記抗菌消臭剤は、そのまま散布または塗布等して使用してもよく、塗料、樹脂組成物等に配合して使用してもよい。
【0033】
また家屋の建築材料、建具材、セラミックス、革製品、紙製品、布製品、繊維、木製品およびガラス、金属製品等に配合または塗布して使用してもよい。
前記抗菌消臭剤としては、本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液をそのまま用いてもよく、これに他の配合成分を含むものであってもよい。
前記配合成分としては公知のものを用いることができるが例えば界面活性剤、 分散剤、アロマ成分、各種添加剤などが挙げられる。
【0034】
抗菌消臭性無機酸化物微粒子の分散液の製造方法
本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の製造方法は、抗菌消臭性無機酸化物微粒子を含み、アルコールを含まない水分散液に、該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2の範囲となるようにアルコールを添加することを特徴としている。
前記アルコールの添加量が4.4×10-6mol/m2未満の場合には、該水分散液を凍結した際に微粒子の凝集と沈殿が起こりこれを解凍させたのちに凝集した微粒子を再分散させることが困難となり分散液の透明性および抗菌消臭性能が著しく低下するので好ましくない。
前記アルコールの添加量が1.32×10-3mol/m2を超えても、抗菌消臭性能に問題はないが、それ以上アルコールを添加しても効果はほとんど向上しなくなり、また不要に多くのアルコールを含むとこの分散液を抗菌消臭剤として用いる際に場合によっては危険物法的制限を受けることがあり、取り扱いや加工上での問題が生じる場合があるので、好ましくない。
【0035】
前記アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれる1種以上を用いることができ、中でも、エチルアルコールを用いることがより好ましい。
前記抗菌消臭性無機酸化物微粒子は、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、ジルコニウム、アンチモン、鉄、タングステンなどの金属元素から選ばれる1種以上を含む酸化物微粒子もしくは複合酸化物微粒子からなる無機酸化物微粒子に、抗菌消臭性能を有する金属元素を担持してなる微粒子であることが好ましい。
前記抗菌消臭性能を有する金属元素としては銀、銅、亜鉛、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、水銀、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0036】
前記担持方法は含浸法、イオン交換法、その他公知の方法を用いることができる。
前記抗菌消臭性能を有する金属元素は無機酸化物微粒子の表面にあっても内部にあってもよい。
前記抗菌消臭性能を有する金属元素の担持量は0.001〜20重量%の範囲にあることが好ましい。前記担持量が0.001重量%未満の場合には、抗菌消臭性能が低下する場合があり、前記担持量が20重量%を超えると、抗菌消臭性能もそれ以上向上することが少なく、また金属元素の種類によっては変色しやすくなる場合があるので好ましくない。
このような抗菌消臭性無機酸化物微粒子を含み、アルコールを含まない水分散液は公知の方法で製造することができる。
【0037】
例えば特開平08−104605号公報、特開平10―17406号公報、特開平09−299460号公報、特開平07−150075号公報、特開平07−33616号公報に記載の方法などを用いることができる。
このような方法で得られた、アルコールを含まない抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液に前記アルコールを添加すれば本発明に係る抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液が得られる。
【0038】
この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液は、固形分濃度が0.001〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
前記固形分濃度が0.001重量%未満の場合には、抗菌消臭性能が低下する場合があり、前記固形分濃度が20重量%の場合には、水分散液の安定性が低下する場合があるので好ましくない。
【0039】
[測定方法および評価試験方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験方法を具体的に述べれば、以下の通りである。
(1)平均粒子径の測定方法
抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液に含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径をマイクロトラック(日機装(株)製、NPA150-1-000-0-10N)を用いて測定した。
【0040】
(2)比表面積の測定方法
抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を110℃で1時間乾燥させたのち、得られた抗菌消臭性無機酸化物微粒子の粉末に含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の比表面積をBET比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM model-1220)によりBET1点法を用いて測定した。
【0041】
(3)抗菌性能の評価方法
シェーク法を用いて抗菌消臭性無機酸化物微粒子の抗菌性能を評価した。
具体的な手順は以下の通りである。
検体試料:固形分濃度1.5%に調整した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の上澄み液0.1 mlを検体試料とした。
試験菌:黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureuse NBRC 12732)
【0042】
測定方法
三角フラスコに、リン酸緩衝液100mlを加え、試験菌の数が1.5〜3.0×107個/mlとなるように調整した菌懸濁液を1ml加え、よく攪拌する。(最終的に、三角フラスコの菌数は、1.5〜3.0×105個/mlとなった)
ついで、三角フラスコに検体試料を加え、振とう機で振とう(320〜340rpm)し1時間後の菌数を測定した。
植菌数=A、処理後の菌数=Bとして、増減値差Dを以下の通り算出した。
増減値差D=log(植菌数[A])−log(加工菌数[B])
【0043】
評価基準
前記検体試料の増減値差の値によって抗菌性能を評価した。
5≦D :非常に良い(◎)
2≦D<5 :良い(○)
0≦D<2 :やや良い(△)
D<0 :抗菌性能なし(×)
【0044】
(4)消臭性能評価方法
消臭性試験
検体試料:抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の上澄み34gを乾燥させた粉末を検体試料とした。
測定方法:5Lテドラーバッグに乾燥させた検体試料を入れ、臭気ガス(硫化水素:20ppm、アンモニア:200ppm)を3L注入し、室温にて放置した。2時間後、検知管にて試験臭濃度を測定し下記式(I)により消臭率(%)を測定し、消臭性能を消臭率の値(0%〜100%)で表示する。
消臭率(%)=100×(初期消臭濃度−2時間後の消臭濃度)/初期消臭濃度・・・(I)
【0045】
(5)分散性の評価
凍結解凍後の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の分散性を下記の通り評価した。
良好・・・特に分散工程に処さずとも分散する。目視にて透明でゲル化が確認されず、凍結解凍前後で平均粒子径に殆ど変化が見られない。
可・・・超音波処理などにより容易に分散する。分散後目視にて透明でゲル化が確認されない。
不可・・・抗菌消臭性無機酸化物微粒子が凝集沈降しており、超音波照射などの分散処理に処しても再分散しない。目視にて不透明でゲル化している部分がある。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(UA) (シリカアルミナを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにエチルアルコール(林純薬工業 99%以上)0.4gを添加して、エチルアルコールを1重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで比表面積は143m2/gであり、固形分濃度は1.5重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、15nmであった。
【0048】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約15nmで該水分散ゾルは透明であった。
この水分散ゾルの抗菌性能は◎であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.4重量%で、凍結前の固形分濃度の93.3%であった。
【0049】
[実施例2]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(UA) (シリカアルミナを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにエチルアルコール(林純薬工業 99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで比表面積は143m2/gであり、固形分濃度は1.5重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、15nmであった。
【0050】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約15nmで該水分散ゾルは透明であった。
この水分散ゾルの抗菌性能は◎であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.41重量%で、凍結前の固形分濃度の94.0%であった。
【0051】
[実施例3]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(UA) (シリカアルミナを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにエチルアルコール(林純薬工業 99%以上)2.8gを添加して、エチルアルコールを7重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで比表面積は143m2/gであり、固形分濃度は1.5重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、15nmであった。
【0052】
この水分散ゾルを−2℃凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約15nmで該水分散ゾルは透明であった。
この水分散ゾルの抗菌性能は◎であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.45重量%で、凍結前の固形分濃度の96.7%であった。
【0053】
[実施例4]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(UA) (シリカアルミナを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにメチルアルコール(林純薬工業(株) 99%以上)2.0gを添加して、メチルアルコールを5重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで比表面積は143m2/gであり、固形分濃度は1.5重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、15nmであった。
【0054】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約15nmで該水分散ゾルは透明であった。
この水分散ゾルの抗菌性能は◎であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.42重量%で、凍結前の固形分濃度の94.7%であった。
【0055】
[実施例5]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(S) (酸化チタンを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにメチルアルコール(林純薬工業(株) 99%以上)2.0gを添加して、メチルアルコールを5重量%含む抗菌性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は5nmで比表面積は368m2/gであり、固形分濃度は1.5重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、5nmであった。
【0056】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約5nmで該水分散ゾルは透明であった。
この水分散ゾルの抗菌性能は◎であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.42重量%で、凍結前の固形分濃度の94.7%であった。
【0057】
[実施例6]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(TZ-R) (酸化チタンを含む無機酸化物微粒子に亜鉛を担持した無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度10重量%) 40gにメチルアルコール(林純薬工業(株) 99%以上)2.0gを添加して、メチルアルコールを5重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は10nmで比表面積は259m2/gであり、固形分濃度は10重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、10nmであった。
【0058】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約10nmで該水分散ゾルは透明であった。
この水分散ゾルの抗菌性能は○であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.42重量%で、凍結前の固形分濃度の94.7%であった。
【0059】
[実施例7]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(S) (酸化チタンを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにエチルアルコール(林純薬工業(株) 99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は5nmで比表面積は368m2/gであり、固形分濃度は1.5重量%であった。
また、この抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径を透過型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、日立H−800)を用いて倍率50万倍で撮影し、得られたTEM写真から任意の抗菌消臭性無機酸化物微粒子100個について粒子径を求め、その平均値を求めたところ、5nmであった。
【0060】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、外に放置し解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子のゾルはややゲル化状態となった。
ゲル化した水ゾルを超音波分散器((株)カイジョー type5281)で再分散させ、ゾルは透明となった。
この水分散ゾルの抗菌性能は◎であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.5gであって、この検体試料0.5gの消臭性能は硫化水素100%、アンモニア99%以上であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は1.41重量%で、凍結前の固形分濃度の94.0%であった。
【0061】
[比較例1]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(UA) (シリカアルミナを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gの水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで比表面積は143m2/gであり、固形分濃度1.5重量%であった。
【0062】
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約150nmで該水分散ゾルは凝集体を形成し、沈殿した。
この水分散ゾルの上澄みの抗菌性能は×であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.01gであって、この検体試料0.01gの消臭性能は硫化水素0%、アンモニア0%であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は0.04重量%で、凍結前の固形分濃度の0.6%であった。
【0063】
[比較例2]
日揮触媒化成製ATOMY BALL-(UA) (シリカアルミナを含む無機酸化物微粒子に銀を担持した抗菌性無機酸化物微粒子の水分散液、固形分濃度1.5重量%) 40gにメチルアルコール(林純薬工業(株) 99%以上)0.004gを添加して、エチルアルコールを0.01重量%含む抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散ゾルを得た。
この水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで比表面積は143m2/gであり、固形分濃度1.5重量%であった。
【0064】
この水分散ゾルを−2℃凍結させた後、室温で解凍させた。
解凍させた水分散ゾルに含まれる抗菌消臭性無機酸化物微粒子の平均粒子径は約150nmで該水分散ゾルは凝集体を形成し、沈殿した。
この水分散ゾルの上澄みの抗菌性能は×であった。また、この水分散液の上澄み34gを乾燥して得られた検体試料の重量は0.01gであって、この検体試料0.01gの消臭性能は硫化水素0%、アンモニア0%であった。
また、この水分散ゾルを遠心分離装置(卓上冷却遠心分離機H−30R、(株)コクサン)を用いて4000rpmで20分間遠心分離処理したのちの、上澄み液の固形分濃度は0.01重量%で、凍結前の固形分濃度の4.0%であった。
【0065】
実施例および比較例で調製した抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の性状および抗菌性能、消臭性能を表1に示す。
表1より、実施例で調製した水分散液は凍結解凍後も凝集沈殿せず分散し、抗菌性能および消臭性能が高く維持されることがわかった。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物微粒子に抗菌消臭性能を有する金属成分を担持してなる平均粒子径1〜500nmの抗菌消臭性無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2となる範囲にあることを特徴とする抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項2】
前記アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項3】
抗菌性無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項4】
アルコール濃度が0.5〜8重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項5】
前記無機酸化物微粒子が、酸化チタン微粒子またはシリカアルミナ微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項6】
前記抗菌消臭性能を有する金属成分が、銀、亜鉛、スズ、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液を含む抗菌消臭剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の製造方法であって、抗菌性無機酸化物微粒子を含み、アルコールを含まない水分散液に、該抗菌消臭性無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに4.4×10-6〜1.32×10-3mol/m2の範囲となるようにアルコールを添加することを特徴とする抗菌消臭性無機酸化物微粒子の水分散液の製造方法。

【公開番号】特開2012−20897(P2012−20897A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159397(P2010−159397)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】