説明

抗菌防かび剤

【課題】常温で自ら被膜となり、簡単に溶出しない安全性の高い抗菌防かび剤を提供する。
【解決手段】(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす);及び
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物:
を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、
(c)銀化合物から成る群から選択される少なくとも一種の化合物と、
を含む、抗菌防かび剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で自ら被膜となり、簡単に溶出しない安全性の高い抗菌防かび剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生面からプラスチック、ゴム、木材、繊維から金属に至るまで病原菌の繁殖を防ぐため抗菌剤を塗布もしくは練りこむ場合がある。
【0003】
抗菌剤は、銅イオン、銀イオンなどの無機系、トリアゾール系、ジンクピリチオン系の有機系、イソチアン酸アリル系の天然系抗菌剤などの種類がある。
また、粉体の抗菌剤は練りこむことにより、また、液状の抗菌剤は含浸もしくは塗布、あるいは練りこむことにより使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−127372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉体の抗菌剤をプラスチックやゴムに練りこんで抗菌性を付与した場合、抗菌剤が表面に露出しなければ抗菌性が発揮されないため、銀イオンを安定して溶出させるためには抗菌剤量を多く添加する必要があった。
【0006】
また、抗菌性を付与するために塗料に粉体の抗菌剤を添加した際、塗料の透明性を全く変えないことは非常に困難であった。
【0007】
本発明は、前記の課題を解決したものであり、常温で自ら被膜となり、ナノ銀粒子を分散させることで、透明で、抗菌性が高く、防かび性までの効果を併せ持つ、抗菌防かび剤を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、ゾル・ゲル法などで必要とされる加水分解などの複雑な工程を要せず、透明性が高く、かつハードコート特性に優れた高分子物質に、銀化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を配合してなる新規な抗菌防かび剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記の課題を解決したものであり、以下[1]〜[7]の抗菌防かび剤に関する。
[1](a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす);及び
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物:
を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、
(c)銀化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
を含む、抗菌防かび剤。
[2]前記ホウ素化合物(b)が、炭素数1〜7のアルコールに溶解したホウ素化合物アルコール溶液である、[1]に記載の抗菌防かび剤。
[3](c)成分が、硝酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀及び硫酸銀のうちの少なくともいずれか一種である、[1]又は[2]に記載の抗菌防かび剤。
[4](d)有機酸、またはベンゾトリアゾールもしくはその誘導体を更に含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の抗菌防かび剤。
[5](e)金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシドの縮合物を更に含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗菌防かび剤。
[6](e)成分中の金属が、Si、Ti及びZrから成る群から選択される少なくとも1つの元素である、[1]〜[5]のいずれかに記載の抗菌防かび剤。
[7](f)合成樹脂を更に含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の抗菌防かび剤。
【0010】
更に、本発明は、前記の組成物を含む常温硬化のコーティング剤に関する。
【発明の効果】
【0011】
銀を担持させる担体を調製する工程や、銀の変色を抑える工程などの複雑な工程を要せず、しかも耐候性が高く、優れた光学特性(例えば透明性など)と、かつハードコート特性に優れ、しかも、常温で自ら被膜となる、抗菌防かび剤が得られる。本発明の抗菌防かび剤は、木材、紙、プラスチック、ゴムなどに対して抗菌性を付与することが可能である。たとえば、本発明の抗菌防かび剤を、フィルターや繊維製品、衛生用品、包装材料、内装材、外装材、塗料、紙に塗布することにより、安全性の高い抗菌製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
本発明における(a)成分と(b)成分とを反応させて得られる反応生成物を含む高分子物質に関しては、本発明者らにより、すでに、2005年5月31日に日本特許出願がなされ(特願2005−159037)、また、2006年5月31日にPCT国際出願がなされた(PCT/JP2006/310859)。本件出願は、これらの日本特許出願及びPCT国際出願の内容を参照することにより、本出願に取り込む。
【0013】
(a)成分(アミノ基を含むシラン化合物)と(b)成分(ホウ素化合物)を混合すると、反応し、数分から数十分で透明で粘稠な液体となる。これは、ホウ素化合物が、(a)成分中のアミノ基を介して架橋剤として働き、これらの成分を高分子化させて、その結果、粘稠な液体となるからであると考えられる。なお、(a)成分は液体である。本発明では、上記(a)成分と(b)成分との反応に際し、水を使用しない。
【0014】
(a)成分は、以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物である。
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす。)
【0015】
ここで、Rはアミノ基含有の有機基を表わすが、たとえば、モノアミノメチル、ジアミノメチル、トリアミノメチル、モノアミノエチル、ジアミノエチル、トリアミノエチル、テトラアミノエチル、モノアミノプロピル、ジアミノプロピル、トリアミノプロピル、テトラアミノプロピル、モノアミノブチル、ジアミノブチル、トリアミノブチル、テトラアミノブチル、及び、これらよりも炭素数の多いアルキル基またはアリール基を有する有機基を挙げることができるが、それらに限定されない。γ−アミノプロピルや、アミノエチルアミノプロピルが特に好ましく、γ−アミノプロピルが最も好ましい。
【0016】
(a)成分中のR’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わす。その中でも、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0017】
(a)成分中のnは1〜3から選択される整数を表わす。その中でも、nは2〜3であるのが好ましく、nは3であるのが特に好ましい。
すなわち、(a)成分としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
なお、本発明においては、(a)成分のアミノ基を含むシラン化合物としては、当該シラン化合物を予め加水分解した加水分解品を使用することもできる。
【0018】
(b)成分は、HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物である。(b)成分は、好ましくは、HBOである。
【0019】
(a)成分と(b)成分との反応における両成分の使用量は、好ましくは、(a)成分100重量部に対して(b)成分0.5〜50重量部の比率であり、抗菌性のみ必要な場合は(b)を必要としないが、(b)を添加することにより銀による変色を防止できる。
(a)成分100重量部に対し、(b)成分が0.5重量部未満では、固化に要する時間が長くなったり、充分に固化しなかったりすることがある。また、(b)成分が50重量部を越すと、硬化物の耐水性が悪くなる。
【0020】
本発明の高分子物質(a)成分と(b)成分との混合条件(温度、混合時間、混合方法など)は、適宜選択することができる。通常の室温条件では、数分から数十分で透明で粘稠な液体となる。この反応生成物の粘度はホウ素化合物の割合でも異なる。
【0021】
前記ホウ素化合物(b)は、好ましくは、炭素数1〜7のアルコールに溶解したホウ素化合物アルコール溶液である。炭素数1〜7のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、各種プロピルアルコール、各種ブチルアルコール、及びグリセリンなどが挙げられるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。当該アルコール溶液を使用することにより、(b)成分を(a)成分に溶解する時間を短縮できる。なお、取り扱い上アルコール中のホウ素化合物の濃度は高いほうが好ましい。
【0022】
前記反応生成物は、好ましくは、水を添加して加水分解する工程を経ないで(a)成分と(b)成分を反応させて得られる反応生成物である。
【0023】
(c)成分は、銀化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。(c)成分を配合することにより、本発明の抗菌防かび剤には、抗菌機能が付与される。
【0024】
(c)成分は、銀化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であれば特に限定されない。
【0025】
(c)成分は、本発明の抗菌防かび剤中に、(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.01重量部〜30重量部、より好ましくは0.1〜25重量部添加する。抗菌性は、抗菌剤の濃度に依存するが、(c)成分の量が、0.01重量部未満であると抗菌効果を示しにくいことがあり、30重量%を超えると(a)成分に溶解しにくくなるので好ましくない。
【0026】
(c)成分としては、例えば、硝酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀及び硫酸銀等を挙げることができる。特に好ましくは硝酸銀である。
(c)成分の平均粒径は約1μm以下であるのが好ましい。そのような細かい粒子の(c)成分を使用することにより、分散性が良くなって凝集物が形成しにくくなり、より透明なコーティング剤被膜を得ることが可能である。
【0027】
(d)成分として、有機酸またはベンゾトリアゾールもしくはその誘導体を(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部添加する。(d)成分の量が0.1重量部未満であると後述の金属アルコキシドを添加した際に銀が析出することがある。20重量部を超えると溶解しにくくなるので好ましくない。
【0028】
(d)成分の有機酸として、酢酸、乳酸、クエン酸等が挙げられる。
(d)成分のベンゾトリアゾールの誘導体として、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、アミノアルキル等の置換基をもつ化合物が挙げられる。
【0029】
本発明の抗菌防かび剤は、(e)成分として、金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシドの縮合物を更に含むことができる。すなわち、前記(d)成分添加後(e)成分を添加させることができる。(e)成分を添加することにより、得られる反応生成物中の金属塩の含有率を高めることができ、化学特性をより向上させることができるとともに、(e)成分を用いない場合と同様の粘稠な液体の状態となるので、繊維やフィルム状に加工することができる。
【0030】
(e)成分の金属アルコキシドの金属としては、Si、Ta、Nb、Ti、Zr、Al、Ge、B、Na、Ga、Ce、V、Ta、P、Sb、などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、Si、Ti、Zr、Alであり、より好ましくは、Si、Ti、Zrであり、また、(e)成分の金属アルコキシドは液体であることが好ましいため、Si、Tiが特に好ましい。(e)成分の金属アルコキシドのアルコキシド(アルコキシ基)としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びそれ以上の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが好ましく、メトキシ及びエトキシがより好ましい。
【0031】
(e)成分の金属アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、プロピルトリプロポキシチタン、ブチルトリブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、メチルトリメトキシジルコニウム、エチルトリエトキシジルコニウム、プロピルトリプロポキシジルコニウム、及びブチルトリブトキシジルコニウムなどを挙げることができる。その中でも、好ましいものとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びメチルトリメトキシシランを挙げることができ、より好ましいものとしては、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシランを挙げることができる。
【0032】
(e)成分の金属アルコキシドの使用量は、(a)成分100重量部に対して1000重量部以下の比率が好ましい。より好ましくは、40重量部〜500重量部の比率である。(a)成分100重量部に対し、(e)成分が40重量部未満では、前述したような(e)成分を添加する効果が得られにくくなることがあり、また、(e)成分が500重量部を越すと、硬化時間が長くなることがある。
【0033】
(e)成分の金属アルコキシドの縮合物としては、以下の式(e1)及び(e2)からなる群から選択される少なくとも1種の式で表わされる金属アルコキシドの縮合物(e)を挙げることができる。
【化1】


(式中、Rは、アルキル基を表わし、その一部は水素であってもよく、Rは、夫々独立に同一であっても異なっていてもよく、mは2〜20から選択される整数を表わし、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属を表わす。)
【0034】
すなわち、前記(a)成分と(b)成分との反応に際して、あるいは、反応後、(e)成分を添加することができる。(e)成分を添加することにより、硬度を高めることができ、化学特性をより向上させることができる。
【0035】
(e)成分である前記金属アルコキシドの縮合物の添加量は、前記(a)成分100重量部に対し、金属アルコキシドモノマー重量換算で、40重量部〜1000重量部であるのが好ましく、200重量部以上であるのが、より好ましい。すなわち、(e)成分の添加量が多すぎる場合には、硬度が低下する傾向があり、逆に、少なすぎる場合には、Si含有量が少なくなるので用途によっては硬度が低下したり化学的耐久性の問題が発生することがある。また、(e)成分の添加量が多すぎる場合には、本発明の抗菌防かび剤を得るための硬化時間が長くなる傾向がある。
【0036】
(e)成分中のRはアルキル基を表わし、その一部は水素であってもよく、Rは、夫々独立に同一であっても異なっていてもよいが、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びそれ以上の炭素数を有するアルキル基であり、メチル基あるいはエチル基であるのが好ましい。
【0037】
(d)成分中のmは、2〜20から選択される整数を表わすが、3〜10であるのが好ましく、5であるのが最も好ましい。
【0038】
(d)成分中のMは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属を表わすが、SiまたはTiであるのが好ましく、Siが最も好ましい。
【0039】
(e)成分を構成する金属アルコキシドモノマー単位としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、プロピルトリプロポキシチタン、ブチルトリブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、メチルトリメトキシジルコニウム、エチルトリエトキシジルコニウム、プロピルトリプロポキシジルコニウム、及びブチルトリブトキシジルコニウムなどを挙げることができる。
【0040】
(e)成分が前記式(e1)で表わされる場合には、テトラエトキシシランの縮合物(5量体)又はテトラメトキシシランの縮合物(5量体)であるのが好ましく、前記式(d2)で表わされる場合には、エチルトリエトキシシランの縮合物(5量体)又はメチルトリメトキシシランの縮合物(5量体)であるのが好ましい。
【0041】
本発明の抗菌防かび剤は、上記のように、(e)成分として、金属アルコキシド(モノマー)及び/又は金属アルコキシドの縮合物を含むことができるが、金属アルコキシドモノマーの粘性は、同縮合物に比べて低いため、金属アルコキシドモノマーを更に含有させることにより、得られる抗菌防かび剤の基材への密着性が向上することがあるという優位点があるが、金属アルコキシドモノマーの含有量を、同縮合物と同量以上など多くすると、塗膜を厚くした時の被膜性が低下してしまうことがある。
【0042】
本発明の抗菌防かび剤は、合成樹脂((f)成分)を更に含むことができる。すなわち、前記(a)成分から(e)成分までの添加および反応に際して、あるいは、反応後、合成樹脂((f)成分)を添加させることができる。(f)成分を加えることで、得られる反応生成物にクラック防止性を付与することができ、(f)成分を含む抗菌防かび剤は、樹脂ハードコート剤として使用できる。
【0043】
(f)成分の合成樹脂としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及び紫外線硬化性樹脂などを挙げることができ、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂を挙げることができ、様々な重合度(分子量)を有する合成樹脂を使用することができる。その中でもエポキシ樹脂、エポキシアクリレート、シリコーン、PVB及びビニルエステル樹脂などが好ましい。
【0044】
(f)成分の使用量は、組成物全体に対して50重量%以下の比率が好ましい。より好ましくは、1重量%〜40重量%の比率である。(f)成分が1重量%未満では、前述したような(f)成分を添加する効果が得られにくくなることがあり、また、(f)成分が40重量%を越すと、樹脂硬化剤を添加する必要があることがあり、また、高い硬度が得られないことがある。
【0045】
本発明の抗菌防かび剤を繊維状の形態にすることにより、耐熱性や耐薬品性の優れた抗菌防かび不織布を得ることができる。繊維化の方法としては、溶融紡糸法、遠心法、あるいはエレクトロスピニング法などを挙げることができる。
【0046】
本発明の抗菌防かび剤を粒子状の形態にすることにより、抗菌防かび無機フィラーとして利用できる。粒状化の方法としては、スプレーで球状固化する方法や、スピンコートで薄膜を形成して粉砕する方法などを挙げることができる。
【0047】
本発明の抗菌防かび剤は、上記で列挙した成分以外にも、その用途に応じて、有機系および天然系抗菌剤(トリアゾール、イソチアン酸アリル、ヒノキチオール等)などを含ませることができる。また、予め加水分解させることにより、水系の抗菌塗料とすることもできる。それにより、硫酸銅、硝酸銅、尿素等を添加することもできる。
【0048】
本発明の抗菌防かび剤は、その粘度を1ポイズ以下でも塗工できるため基材の内部に含浸させることにより、その基材材料の素材を活かしながら抗菌、防かび性を付与することも可能である。また、スプレー等で塗布できるため、被塗装物に容易に抗菌、防かび性を付与することができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳しく説明する。
下記の実施例に示す配合の抗菌防かび剤は、(a)成分と(b)成分を室温で充分混合してから、反応変性した後、(c)成分を添加攪拌することにより、試料を調製した。
なお、(b)成分はエタノールに分散し10重量%エタノール分散液にして配合した。
(d)成分および(e)成分、更に(f)成分を添加し、抗菌防かびコーティング剤を調製した。また、1ヵ月後の液の安定性を目視で確認した。
【0050】
実施例1
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を4重量部、(c)成分として硝酸銀1重量部および(d)成分としてカルボキシルベンゾトリアゾールを1重量部添加混合した。これに(e)成分としてテトラエトキシシラン300重量部、更に(f)成分としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック(株)製商品名「デタナイトCY−232」)を100重量部添加混合したコーティング剤をJIS Z 2911−2000に基づきかび抵抗性試験を行った。ガラス板に得られたコーティング剤を塗布した後、110℃で1時間硬化して被膜を得、その後72時間室内で放置し、被膜の透明性を目視した。
【0051】
実施例2
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を4重量部、(c)成分として硝酸銀1重量部および(d)成分として乳酸を1重量部添加混合した。これに(e)成分としてテトラエトキシシラン300重量部、更に(f)成分としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック(株)製商品名「デタナイトCY−232」)を100重量部添加混合したコーティング剤をJIS Z 2911−2000に基づきかび抵抗性試験を行った。ガラス板に得られたコーティング剤を塗布した後、110℃で1時間硬化して被膜を得、その後72時間室内で放置し、被膜の透明性を目視した。
【0052】
実施例3
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を4重量部、(c)成分として硝酸銀0.1重量部および(d)成分として乳酸を1重量部添加混合した。これに(e)成分としてテトラエトキシシラン300重量部、更に(f)成分としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック(株)製商品名「デタナイトCY−232」)を100重量部添加混合したコーティング剤をJIS Z 2911−2000に基づきかび抵抗性試験を行った。ガラス板に得られたコーティング剤を塗布した後、110℃で1時間硬化して被膜を得、その後72時間室内で放置し、被膜の透明性を目視で確認した。
【0053】
比較例1
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を1重量部、(c)成分として硝酸銀0.1重量部添加混合した。これに(e)成分としてテトラエトキシシラン300重量部、更に(f)成分としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック(株)製商品名「デタナイトCY−232」)を100重量部添加混合したコーティング剤をJIS Z 2911−2000に基づきかび抵抗性試験を行った。ガラス板に得られたコーティング剤を塗布した後、110℃で1時間硬化して被膜を得、その後72時間室内で放置し、被膜の透明性を目視で確認した。
【0054】
比較例2
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を4重量部、銀化合物として平均粒径2.5ミクロンの銀ゼオライトを2重量添加混合した。これに(e)成分としてテトラエトキシシラン300重量部、更に(f)成分としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック(株)製商品名「デタナイトCY−232」)を100重量部添加混合したコーティング剤をJIS Z 2911−2000に基づきかび抵抗性試験を行った。ガラス板に得られたコーティングを塗布した後、110℃で1時間硬化して被膜を得、その後72時間室内で放置し、被膜の透明性を目視で確認した。
【0055】
比較例3
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を4重量部、(d)成分として乳酸を1重量添加混合した。これに(e)成分としてテトラエトキシシラン300重量部、更に(f)成分としてエポキシ樹脂(ナガセケムテック(株)製商品名「デタナイトCY−232」)を100重量部添加混合したコーティング剤をJIS Z 2911−2000に基づきかび抵抗性試験を行った。ガラス板に得られたコーティング剤を塗布した後、110℃で1時間硬化して被膜を得、その後72時間室内で放置し、被膜の透明性を目視で確認した。
【0056】
【表1】


判定基準:
0:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められなかった。
1:試料または試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積は、全面積の1/3を超えない
2:試料または試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積は、全面積の1/3を超える
試験に用いたかび
アスペルギルス ニゲル FERM S−2
ペニシリウム フニクロスム FERM S−6
クラドスポリウム クラドスポリオイデス FERM S−8
オーレオバシジウム プルランス FERM S−9
グリオクラジウム ビレンス FERM S−10
【0057】
以上、実施例で示した様に、本発明の抗菌防かび剤を含浸させた被処理物は、優れた抗菌性を有する。また、抗菌防かび剤が硬化して得られた被膜は透明であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の抗菌防かび剤は、常温で自ら被膜となり、抗菌効果の高い抗菌防かび剤として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす);及び
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物:
を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、
(c)銀化合物から成る群から選択される少なくとも一種の化合物と、
を含む、抗菌防かび剤。
【請求項2】
前記ホウ素化合物(b)が、炭素数1〜7のアルコールに溶解したホウ素化合物アルコール溶液である、請求項1に記載の抗菌防かび剤。
【請求項3】
(c)成分が、硝酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀及び硫酸銀のうちの少なくともいずれか一種である、請求項1又は請求項2に記載の抗菌防かび剤。
【請求項4】
(d)有機酸、またはベンゾトリアゾールもしくはその誘導体を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌防かび剤。
【請求項5】
(e)金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシドの縮合物を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗菌防かび剤。
【請求項6】
(e)成分中の金属が、Si、Ti及びZrから成る群から選択される少なくとも1つの元素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗菌防かび剤。
【請求項7】
(f)合成樹脂を更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗菌防かび剤。

【公開番号】特開2011−190220(P2011−190220A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58583(P2010−58583)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】