説明

抗血管新生活性療法

本発明は、血管透過性因子(VPF)ファミリー、それらの受容体及び補助受容体に属する分子のオリゴヌクレオチド及びポリペプチド配列の応用、並びにその過程が脈管構造の増加に関連する病態に対する活性免疫療法におけるそれらの修飾に関する。前記手順は、特に、癌及びそれらの転移、急性及び慢性炎症過程、感染性疾患、自己免疫疾患、糖尿病性及び新生児網膜症、移植臓器の拒絶反応、黄斑変性症、血管新生緑内障、血管腫及び血管線維腫を治療するための単剤療法又は併用療法において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学及び製薬工業の分野、特に血管新生に関連する分子を標的として用いる能動免疫に関する。
【背景技術】
【0002】
元からある血管から新たな血管を形成する過程は、血管新生と呼ばれる。この事象は、前血管新生因子及び抗血管新生因子の平衡を介して幅広く調節されている。その過程が前血管新生因子の誘導及び異常な形態での新たな血管の形成に関連するとされている疾患には、(a)癌(原発腫瘍とそれらの転移の双方)、(b)喘息、呼吸困難、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、及び組織浮腫などの急性及び慢性炎症過程、(c)肝炎、及びカポジ肉腫のような感染症起源の疾患、(d)糖尿病、乾癬、関節リウマチ、甲状腺炎のような自己免疫疾患、並びに(e)糖尿病性及び新生児網膜症、臓器移植拒絶反応、黄斑変性症、血管新生緑内障、血管腫、及び血管線維腫のような他の疾患及び状態がある(Carmelliet P.及びJain RK.、Nature、407巻、249ページ、2000年;Kuwano M、他、Intern Med、40巻、565ページ、2001年)。これらの症例の多くにとって魅力的な可能性のある治療手段は、血管の異常形成を刺激する前血管新生因子の活性を、それらの中和若しくはそれらの受容体の中和を介し、又はそれらを産生する源を除去することによって阻害することに基づくと思われる。
【0003】
血管内皮増殖因子は、新たな血管の形成を特異的かつ直接的に誘導する分子の一ファミリーである(Leung、Science、246巻、1306ページ、1989年;Klagsburn M、Annual Rev Physiol、33巻、217ページ、1991年)。このファミリーには、血管内皮増殖因子VPF/VEGF(現在VEGF−Aと呼ばれる)としても知られる血管透過性因子、胎盤増殖因子PIGF、血小板由来増殖因子PDGF−A及びPDGF−B、並びにVEGF−Aと構造的及び機能的に関連し、VEGF−B/VRF、VEGF−C/VRP、VEGD−D/FIGF、及びVEGF−Eと命名された他の4種類の新たな分子が含まれる(Olofsson B他、PNAS USA、13巻、2576ページ、1996年;Joukov V他、EMBO J、15巻、290ページ、1996年;Yamada Y他、Genomics、42巻、483ページ、1997年;Ogawa S他、J Biol Chem、273巻、31273ページ、1998年)。
【0004】
VEGF−Aは、2個の23−kDAサブユニットから形成されるホモ二量体の糖タンパク質であり(Ferrara N、他、Biochem Biophys Res Comun、165巻、198ページ、1989年)、同一RNAの差次的スプライシングに由来する5種類の単量体アイソフォームが存在する。これらには、細胞膜に付着したままの2種類のアイソフォーム(VEGF189及びVEGF206)、及び可溶性の3種類(VEGF121、VEGF145、及びVEGF165)が含まれる。VEGF165は、VEGF189が優位を占める(Neufeld G他、Canc Met Rev、15巻、153ページ、1995年)肺及び心臓を除いては哺乳類組織中に最も豊富にあるアイソフォームであり、胎盤では、VEGF121発現が主流である(Shibuya MA他、Adv Canc Res、67巻、281ページ、1995年)。
【0005】
VEGF−Aは、このファミリーのうちで最も研究されかつ特徴付けられたタンパク質であり、その変化は、多数の疾患において記述されている。その過剰発現は、様々な起源及び局在化の腫瘍、及びそれらの転移(Grunstein J他、Cancer Res、59巻、1592ページ、1999年)、潰瘍性大腸炎及びクローン病のような慢性炎症過程(Kanazawa S、他、Am J Gastrenterol、96巻、822ページ、2001年)、乾癬(Detmar M、他、J Exp Med、180巻、1141ページ、1994年)、呼吸困難(Thickett DR他、Am J Respir Crit Care Med、164巻、1601ページ、2001年)、アテローム性動脈硬化症(Celletti FL他、Nat Med、7巻、425ページ、2001年;Couffinhal T他、Am J Pathol、150巻、1653ページ、1997年)、子宮内膜症(McLaren J、Hum Reprod Update、6巻、45ページ、200年)、喘息(Hoshino M、他、J Allergy Clin Immunol、107巻、295ページ、2001年)、関節リウマチ及び変形性関節症(Pufe T他、J Rheumatol、28巻、1482ページ、2001年)、甲状腺炎(Nagura S他、Hum Pathol、32巻、10ページ、2001年)、糖尿病性及び新生児網膜症(Murata T他、Lab Invest、74巻、819ページ、1996年;Reynolds JD、Paediatr Drugs、3巻、263ページ、2001年)、黄斑変性症及び緑内障(Wells JA他、Br J Opthalmol、80巻、363ページ、1996年;Tripathi RC他、Opthalmology、105巻、232ページ、1998年)、組織浮腫(Kaner RJ他、Am J Respir Cell Mol Biol、22巻、640ページ、2000年;Ferrara N、Endocirnol Rev、13巻、18ページ、1992年)、肥満症(Tonello C他、FEBS Lett、442巻、167ページ、1999年)、血管腫(Wizigmann S 及びPlate KH、Histol Histopathol、11巻、1049ページ、1996年)、炎症性関節症患者の滑液(Bottomley MJ他、Clin Exp Immunol、119巻、182ページ、2000年)に関連し、移植拒絶反応(Vasir B、他、Transplantation、71巻、924ページ、2001年)に関連している。腫瘍の特定の場合には、VEGF−Aの3種類の基本的アイソフォーム121、165、及び189を発現する細胞は、in vivoでより速やかに増殖する細胞であり、一方、最終段階では、大部分の腫瘍は、発現をVEGF165アイソフォームに限定するか、それが存在しない場合には、相加的には程遠いが、腫瘍血管網を強化する協同作用を証明する121及び189の組合せに限定する(Grunstein J、Mol Cell Biol、20巻、7282ページ、2000年)。
【0006】
1991年に記載のPIGFは、そのホモ二量体の形態で内皮増殖を誘導することができない(Maglione D他、Proc Natl Acad Sci USA、88巻、9267ページ、1991年;DiSalvo J他、J Biol Chem、270巻、7717ページ、1995年)。PIGFのアップレギュレーション、及びVEGFR−1を介して伝達されるシグナルのアップレギュレーションにより、内皮細胞は、特定の病理に関連する血管新生表現型への変化の間にVEGFに対する応答を増幅する(Carmeliet P他、Nat Med、7巻、575ページ、2001年)。PIGF発現は、ヒト髄膜腫及び神経膠腫の血管新に関連付けられている(Nomura M他、J Neurooncol、40巻、123ページ、1998年)。この分子は、VEGF165とヘテロ二量体を形成して前血管新生活性を持ち、それらの過剰発現は、一部の腫瘍細胞系の馴化培地において記述されており(Cao Y他、J Biol Chem、271巻、3154ページ、1996年)、一般的に、関節リウマチの進化及び原発性炎症性関節症に関連付けられている(Bottomley MJ他、Clin Exp Immunol、119巻、182ページ、2000年)。
【0007】
あまり研究されていないVEGFファミリーの残りのメンバーの過剰発現も、多くの病理に関連している。VEGF−Bは、乳房、卵巣、及び腎臓の腫瘍、並びに黒色腫及び線維肉腫に関連付けられている(Sowter HM、他、Lab.Invest.、77巻、607ページ、1997年;Salven P、Am.J.Pathol.、153巻、103ページ、1998年;Gunningham SP他、Cancer Res、61巻、3206ページ、2001年)。in vivoにおけるVEGF−B167アイソフォームの差次的発現は、様々な起源の腫瘍細胞において報告されている(Li X、他、Growth Factors、19巻、49ページ、2001年)。VEGF−C及びVEGF−Dは、リンパ管形成の制御に関与し(Joukov V.他、EMBO J、15巻、290ページ、1996年)、VEGF−C過剰発現は、組織浮腫、乳房、肺、頭頸部、食道、及び胃の腫瘍、リンパ腫、前立腺癌、並びに転移結節に関連している(Kajita T、他、Br J Cancer、85巻、255ページ、2001年;Kitadi Y、他、Int J Cancer、93巻、662ページ、2001年;Hashimoto I、他、Br J Cancer、85巻、93ページ、2001年;Kinoshita J、他、Breast Cancer Res Treat、66巻、159ページ、2001年;Ueda M、他、Gynecol Oncol、82巻、162ページ、2001年;Salven P、Am.J.Pathol.、153巻、103ページ、1998年;O−Charoenrat P他、Cancer、92巻、556ページ、2001年)。VEGF−Dの場合、腫瘍細胞によるその過剰発現は、腫瘍におけるリンパ管脈管構造のin vivoにおける増加及びリンパ節における転移の増加に関連している(Stacker SA、他、Nat Med、7巻、186ページ、2001年;Marconcini L他、Proc Natl Acad Sci USA、96巻、9671ページ、1999年)。
【0008】
VEGFファミリーの分子によって誘導される内皮細胞機能に対する変化は、これまでのところVEGFR1(Flt1)、VEGFR2(KDR/Flk1)、及びVEGFR3(Flt4)が含まれるチロシンキナーゼ型クラス3の細胞受容体との結合によって媒介される(Kaipainen A、J.Exp.Med.、178巻、2077ページ、1993年)。N末端ドメイン2は、リガンドに対する結合を担うとして同定され、細胞質ドメインのリン酸化及びシグナルの伝達を助ける(Davis−Smyth T他、EMBO、15巻、4919ページ、1996年)。
【0009】
VEGFR1に関して同定されたリガンドには、親和性の減少順にVEGF−A、PIGF、及びVEGF−Bが含まれる(Shibuya M、Int J Biochem Cell Biol、33巻、409ページ、2001年)。内皮細胞において、この受容体は、循環VEGFを捕捉する(Gille H他、EMBO J.、19巻、4064ページ、2000年)。造血系の細胞において発現されるVEGFR1に対するVEGF−Aの結合は、樹状細胞の前駆体、並びにBリンパ球及びTリンパ球における転写因子NFκBの活性化に著しく影響する。この最後の相互作用は、樹状細胞成熟及びTリンパ球の分画が減少する好ましくない免疫学的平衡のin vivoにおける確立、すなわち免疫抑制患者、特に癌患者で観察される現象に関連している(Dikov MM他、Canc Res、61巻、2015ページ、2001年;Gabrilovich D他、Blood、92巻、4150ページ、1998年)。VEGFR1の過剰発現は、乾癬、子宮体癌及び肝細胞癌に関連付けられている(Detmar M、他、J Exp Med、180巻、1141ページ、1994年;Ng IO、Am J Clin Patol、116巻、838ページ、2001年;Yokoyama Y他、Gynecol Oncol、77巻、413ページ、2000年)。
【0010】
VEGFR2受容体(KDR/Flk1)は、VEGF−Aの生物学的作用を媒介し、VEGF−C及びBEGF−Dとも結合する。この受容体は、活性化された内皮上、及び分泌されたVEGFにより自己分泌経路を確立する腫瘍起源の一部の細胞系において差次的に発現される。そのリガンドの過剰発現に関連する前述の病理に関与するだけでなく、VEGFR2の過剰発現は、子宮体癌の進行(Giatromanolaki A他、Cancer、92巻、2569ページ、2001年)、悪性中皮腫(Strizzi L他、J Pathol、193巻、468ページ、2001年)、星細胞の新生物(Carroll RS他、Cancer、86巻、1335ページ、1999年)、原発性乳癌(Kranz A他、Int J Cancer、84巻、293ページ、1999年)、腸型胃癌(Takahashi Y他、Clin Cancer Res、2巻、1679ページ、1996年)、多形神経膠芽腫、退形成乏突起神経膠腫、及び壊死性上衣腫(Chan AS他、Am J Surg Pathol、22巻、816ページ、1998年)に関連付けられている。KDRの過剰発現も、常染色体性疾患VHL及び血管芽細胞腫(Wizigmann−Voos S他、Cancer Res、55巻、1358ページ、1995年)、糖尿病性網膜症の進行(Ishibashi T、Jpn J Ophthalmol、44巻、323ページ、2000年)、及びFlt−1過剰発現と相まって遅延型過敏反応(Brown LF他、J Immunol、154巻、2801ページ、1995年)に関連付けられている。
【0011】
VEGF−C及びVEGF−Dによって媒介されるリンパ管新生は、リンパ管内皮において発現されるFLT4受容体すなわちVEGFR3に対するそれらの結合によりもたらされる。場合によっては、リガンドの過剰発現が存在しない場合であっても、受容体の過剰発現は、糖尿病性網膜症(Smith G、Br J Ophthalmol、83巻(4号)、486〜94ページ、1999年4月)、慢性炎症及び潰瘍(Paavonen K他、Am J Pathol、156巻、1499ページ、2000年)、リンパ節における転移の確立及び乳癌の進行(Gunningham SP、Clin Cancer Res、6巻、4278ページ、2000年;Valtola R他、Am J Pathol、154巻、1381ページ、1999年)を含む一群の病態の過程における有害な予後に関連付けられ、鼻咽頭腫瘍及び扁平口腔癌腫(Saaristo A他、Am J Pathol、157巻、7ページ、2000年;Moriyama M他、Oral Oncol、33巻、369ページ、1997年)に関連付けられている。さらに、VEGFR3の過剰発現は、カポジ肉腫、Dabska型血管内皮腫及び皮膚リンパ管腫症の高感度マーカーである(Folpe Al他、Mod Pathol、13巻、180ページ、2000年;Lymboussaki A他、Am J Pathol、153巻、395ページ、1998年)。
【0012】
最近、VEGFに関して同定された2種類の受容体がNRP1及びNRP2と命名された。これらは、ニューロフィリンファミリー(NRP)に属し、VEGFファミリー、VEGF−A145、VEGF−A165、VEGF−A167及びPIGF1のタンパク質の一部の特異的アイソフォームに対する補助受容体としての役割を果たし、それらの分裂促進能を増加させる。NRP1の発現は、前立腺癌の攻撃性のマーカーとなっており、黒色腫における血管新生の増加、及び乳癌におけるアポトーシス回避事象に関連付けられている(Latil A他、Int J Cancer、89巻、167ページ、2000年;Lacal PM、J Invest Dermatol、115巻、1000ページ、2000年;Bachelder RE、Cancer Res、61巻、5736ページ、2001年)。NRP1、KDR、及びVEGF−A165の協調的過剰発現は、糖尿病性網膜症症例及び関節リウマチにおける線維血管性増殖に関連付けられている(Ishida S、他、Invest Ophthalmol Vis Sci、41巻、1649ページ、2000年;Ikeda M他、J Pathol、191巻、426ページ、2000年)。NRP2は、骨肉腫において過剰発現され、血管新生及び腫瘍増殖を促進する(Handa A他、Int J Oncol、17巻、291ページ、2000年)。
【0013】
血管新生阻害に基づく、特に癌治療における治療戦略の大部分は、(1)VEGF又はKDR受容体を遮断するモノクローナル抗体、(2)ネオバスタット及びプリノマスタット(Prinomastat)のようなメタロプロテイナーゼ阻害薬、(3)サリドマイド、スラミン、トロポニンI、並びにIFN−α及びネオバスタットのようなVEGF阻害薬、(4)SU5416、FTK787及びSU6668のようなVEGF受容体の遮断薬、(5)エンドスタチン及びCA4−Pのような腫瘍内皮アポトーシスの誘発剤、並びに(6)VEGF又はVEGF受容体発現を減少させるリボザイム(アンジオザイム(Angiozyme))を用いる臨床試験の過程においてVEGFファミリー及びそれらの受容体の分子を遮断することに基づいている。ヒトVEGF並びにその受容体KDR及びFlt−1とそれらのマウス相同体との高い相同性(それぞれ、約90%、81%、及び89%)によって、多くの動物モデルをごく普通に用い、この系を対象とする抗血管新生化合物の前臨床効果が評価される(Hicklin DJ他、DDT、6巻、517ページ、2001年)。
【0014】
VEGF又はVEGFRに対する抗体の受動的投与は、ヒトにおける様々な臨床相において首尾よくテストされる(Hicklin DJ他、DDT、6巻、517ページ、2001年)。抗VEGFヒト化モノクローナル抗体A.4.6.1(Genentech、San Franscisco、United States)は、大腸、乳房、腎臓、及び肺の腫瘍を治療するための第III相臨床試験中である(Kim、KJ他、Nature、362巻、841ページ、1993年;Boersig C、R&D Directions、7巻、44ページ、2001年10月)。特に、KDR受容体の場合には、この受容体のN末端細胞外ドメインを認識し、白血病性ヒト細胞の増殖及び遊走を阻害し、異種移植マウスの生存率を高めるモノクローナル抗体が開発されている(IMC−1C11、ImClone)。現在、大腸癌転移の患者においてその効果が検討されている(Dias S他、J Clin Invest、106巻、511ページ、2000年)。前述の治験では、これらのモノクローナル抗体の投与に付随する有害作用のないことが立証されている。
【0015】
上記にもかかわらず、新血管新生の妨害のために用いられたことのない治療様式は、特異的活性免疫療法(SAI)である。癌のSAIでは、ペプチド、タンパク質又はDNAのような抗原を、適切なアジュバントと混ぜて用いる。SAI手順は、MCHI及びMHCIIとの関連において専門的提示細胞としての樹状細胞機能に関連する体液型(Bリンパ球の活性化)と細胞型(Tヘルパー、及び細胞傷害性リンパ球並びにナチュラルキラー細胞の活性化)の双方の免疫応答の刺激を追い求めている(Bystryn JC、Medscape Hematology−Oncology、4巻、1ページ、2001年;Parker、KC他、J.Immunol、152巻、163ページ、1994年;Nestle FO他、Nature Medicine、7巻、761ページ、2001年;Timmerman JM、Annual Review Medicine、50巻、507ページ、1999年)。
【0016】
SAIは、特に腫瘍学において魅力的な応用例がある実験的及び臨床的研究の急成長分野であり、SAIの手順に基づく60を超える進行中の臨床試験が報告されており、現在、モノクローナル抗体の使用に基づく臨床試験を上回っている。癌の特定の場合には、SAIのための免疫原として使用される抗原は、それらの生理学的関連性及び腫瘍の表現型ドリフトの過程において置き換えられる難易度(Bodey B他、Anticancer Research、20巻、2665ページ、2000年)、並びに腫瘍組織の増殖及び進化との高い特異的関連性の理由から選択される。
【0017】
また、SAIを用いて癌を治療する戦略は、様々な腫瘍タイプにおいて発現される抗原を識別し、何が同一のワクチン調製物による適応症数を増やし得るかを考慮することが好ましい。これらの例は、癌胎児性抗原(CEA)、HER2−neu、ヒトテロメラーゼ、及びガングリオシドである(Greener M.、Mol Med Today、6巻、257ページ、2000年;Rice J、他、J Immunol、167巻、1558ページ、2001年;Carr A他、Melanoma Res、11巻、219ページ、2001年;Murray JL、他、Semin Oncol、27巻、71ページ、2000年)。
【0018】
ヒト腫瘍において、VEGFは、腫瘍区画において過剰発現され(Ferrara、N.、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、237巻、1ページ、1999年)、高レベルなVEGF及びその受容体は、腫瘍関連脈管構造において立証されている(Brekken RA、J Control Release、74巻、173ページ、2001年)。形質転換細胞の刺激に反応して、間質細胞もVEGFを産生し、その結果、腫瘍細胞が除去された場合、VEGFレベルは患者において持続する。VEGF及びその受容体の存在は、前立腺、子宮頸管、及び乳房の腫瘍の場合における予後及びステージングの確立にとって実用的価値を有する(George DJ他、Clin Cancer Res、7巻、1932ページ、2001年;Dobbs SP他、Br J Cancer、76巻、1410ページ、1997年;Callagy G他、Appl Immunohistochem Mol Morphol、8巻、104ページ、2000年)。一方、VEGFも、IL−10、TNF−α及びTGF−β(Ohm JE及びCarbone DP、Immunol Res、23巻、263ページ、2001年)のような他のサイトカインと一緒になって、癌患者を特徴付ける免疫抑制に関与すると思われる可溶性因子のグループに入る(Staveley K、他、Proc Natl Acad Sci USA、95巻、1178ページ、1998年;Lee KH、他、J Immunol、161巻、4183ページ、1998年)。この免疫抑制作用は、Flt1受容体に対する結合に関連しているように見える(Gabrilovich D他、Blood、92巻、4150ページ、1998年)。
【0019】
本発明は、VEGFファミリー及びそれらの受容体の分子を用いる実験腫瘍におけるSAIの手順について記載する。得られる抗腫瘍効果は、少なくとも4種類の異なる機序、すなわち(a)細胞傷害性リンパ球による、VEGFを産生する癌及び間質細胞の直接的破壊、(b)抗体を介する循環VEGFの捕捉又は中和によって腫瘍関連血管の内皮細胞に損傷を与えること、(c)抗体を決定する細胞傷害性リンパ球又は補体による、VEGF受容体を発現する内皮細胞の直接的破壊、(d)循環VEGFの捕捉又は中和の結果としての局所免疫応答の活性化、及びその結果として生じる免疫抑制作用の除去に基づくと考えられるが、それらの可能な組合せを排除するものではない。
【0020】
これらの処置を用い、転移の出現を減少又は回避させ、他の抗腫瘍剤と併用し、又は併用せずに、第一選択又は第二選択療法として原発腫瘍を縮小又は除去できることが理想的である。
【0021】
VEGFファミリー及びそれらの受容体を対象とする活性免疫化は、とりわけ急性及び慢性炎症過程(喘息、呼吸困難、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、組織浮腫)、感染性疾患(肝炎、カポジ肉腫)、自己免疫疾患(糖尿病、乾癬、関節リウマチ、甲状腺炎、滑膜炎)、糖尿病性及び新生児網膜症、臓器移植拒絶反応、黄斑変性症、血管新生緑内障、血管腫、及び血管線維腫の単一療法又は併用療法において効率的であると考えられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、VEGFファミリーのタンパク質、それらの受容体、補助受容体又はそれらの断片、並びにそれらのポリペプチド変異体をコードするオリゴヌクレオチドのin vivo投与は、抗血管新生及び抗腫瘍効果を持つ細胞性及び体液性免疫応答を誘導する。
【0023】
本発明のポリペプチド的性質の目的免疫原、並びにそれらの断片は、自然源から単離するか合成又は組換えDNA技術によって得ることができる。また、これらのポリペプチドは、p64K(R.Silva他、US5286484及びEP0474313)のような認められたアジュバント活性を有するタンパク質と融合させて生成するか、ポリペプチドを個々に取得した後でタンパク質に共有結合させることができる。
【0024】
これらの場合における他の利用可能な戦略は、免疫刺激調製物の一部であるOMP1、この特定の場合にはVSSP(R.Perez他、US5788985及び6149921)のような細菌タンパク質において露出した、又は露出していないループの一部として、天然ポリペプチド、その突然変異又は組換え変異体、及びそれらの断片を取得することである。さらに、ウイルス粒子の表面に露出し(HbsAg、パルボウイルスのVP2など)、免疫応答の誘導を専門とする細胞又は臓器を標的とする特異的ペプチド(CTLA4、IgのFcセグメントなど)、又はVP22のような体内分布を高めることができるタンパク質と結合しているポリペプチド免疫原を得ることが可能である。
【0025】
本発明の目的タンパク質の主要な自然源は、主に胎盤、活性化内皮細胞、及び腫瘍細胞において発現される。これらの細胞又は組織のmRNAを用い、知られている方法によって相補的DNA(cDNA)を得る。抽出RNAは、選択された抗原に対応するcDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介する増幅のためのテンプレートして使用される。いずれの場合も、用いるプライマーは、ベクターの特徴に従って設計され、cDNAは、既報の目的タンパク質配列に挿入される。或いは、PCRによって増幅され、本発明において使用される最大の抗原である受容体の場合には、2個以上の重複断片においてコーディング領域が増幅されることが好ましい。これらの断片には、その断片で始まり、無傷なDNAを構築するのに使用される共通の連結部位が含まれる。
【0026】
目的抗原のクローニングのための別法は、ヒト内皮、又は同一起源の腫瘍に由来する市販のDNAライブラリーからの選択である。場合によっては、特にVEGFファミリーについて、ワクチン接種によって生じる血管新生誘導事象を避けるため、本発明の目的抗原の一部を変異させることが望ましい場合がある。これらの変異は、文献中に既述の受容体結合部位において行われることが好ましい。このために、望ましい分子の両末端を包含するプライマーを設計し、PCR産物をテンプレートとして使用し、変異分子を得る。これらの変異体は、生物活性を欠くが、選択された抗原の免疫原性を再び生み出す。
【0027】
前述の方法によって得られるcDNA分子は、ウイルス、プラスミド、細菌の人工染色体、又は類似物である適切なベクター中で投与される。ベクターは、標的細胞における遺伝子の十分な発現に必要な要素、並びにその性質に従って宿主細胞系において産生させることができる残りの要素を運ぶ。本発明のDNA分子は、1種類又は複数の核酸(cDNA、gDNA、合成又は半合成DNA、又は類似物)によって構成され、標的細胞において転写又は翻訳された場合(適切な場合)に治療上/ワクチンとしての価値がある生成物を産生する1種類又は複数の目的遺伝子を含むことができる。
【0028】
一般に、本発明によるワクチン治療製品の遺伝子は、標的細胞又は生物体(哺乳類)において機能し、目的産物のmRNAの終了及びポリアデニル化に必要なシグナルを含み、その発現を可能にする3’末端領域の転写プロモーターの制御下にある。プロモーターは、遺伝子の天然プロモーター、又は標的細胞において転写的に活性な異種プロモーターであってもよい。プロモーターは、真核生物由来又はウイルス起源であってもよい。真核生物のプロモーターの中では、特異的であろうがなかろうが、誘発性であろうがなかろうが、強く又は弱く遺伝子転写を刺激又は抑制する任意のプロモーター又は誘導配列を使用することが可能である。さらに、プロモーター領域を、活性因子又は誘導原配列の挿入によって修飾し、当該遺伝子の組織特異的又は支配的発現を可能にすることができる。
【0029】
さらに、目的遺伝子は、細胞内局在化のためのシグナル配列を、その細胞局在化又は分泌が、その配列が発現される細胞において、又は他の場所で一旦合成されると修飾することができるような形で含むことができる。また、免疫組織に特異的なリガンドに特異的に結合する領域をコードし、応答が生み出される部位を対象として治療/ワクチン効果が得られる配列を含むことができる。
【0030】
さらに、目的遺伝子の先に、mRNA複製機構のためのコーディング配列を、mRNAが標的細胞において増幅され、前記遺伝子の発現を増加させ、それによって本発明の治療/ワクチン効果を高めるような形で置くことができる。当該複製機構は、アルファウイルス起源(Schlesinger S.、Expert Opin Biol Ther、1巻、177ページ、2001年)、より具体的にはシンドビス若しくはセムリキウイルス、又は類似物由来であってもよい。特定の場合、目的遺伝子は、本発明による分子が一旦内部移行されると、標的細胞においてそのmRNAの増幅を可能にするサブゲノムプロモーターの転写制御下にある。さらに、DNAベクターは、哺乳類細胞における本発明の目的分子の複製を可能にする配列を含むことができる。このことは、発現レベル及び/又は治療/ワクチン効果の増加を可能にする(Collings A.、Vaccine、18巻、4601ページ、1999年)。
【0031】
DNAベクターは、プラスミドDNA精製のための標準的技法を用いて精製することができる。これらの技法には、臭化エチジウムの存在下、塩化セシウム密度勾配による精製の方法、或いは、イオン交換カラム又はDNA分子を分離するためのその他の交換体若しくは方法の使用法が含まれる(Ferreira GN、他、Trends Biotechnol.、18巻、380ページ、2000年)。
【0032】
本発明には、プラスミドDNAベクター、好ましくはヒトにおけるDNA免疫化及び遺伝子療法のためのコンパクトベクターのPAECファミリーのプラスミドDNAベクターの使用法が含まれる(Herrera他、Biochem.Biophys.Res.Commu.、279巻、548ページ、2000年)。このファミリーは、ベクターpAEC−K6(アクセス番号AJ278712)、pAEC−M7(アクセス番号AJ278713)、pAEC−Δ2(アクセス番号AJ278714)、pAEC−SPE(アクセス番号AJ278715)及びpAEC−SPT(アクセス番号AJ278716)を含む。これらのベクターは、ヒト細胞を含む哺乳類細胞における目的産物、及び大腸菌(Escherichia coli)における複製ユニットの発現にとって不可欠な要素のみを含む。転写ユニットは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期プロモーター、目的産物を挿入するための多目的マルチクローニング部位、及びシミアンウイルス40(SV40)由来の転写終結及びポリアデニル化のための配列によって形成される。複製ユニットにおいて、ベクターは、高いコピー数及び目的プラスミドを有する細菌の選択を確実にするため、カナマイシン耐性(Tn903)の遺伝子、及びpUC19複製起点(ColE1)を含む。
【0033】
さらに、本発明には、プラスミドDNAベクター、好ましくはヒトにおけるDNA免疫化のためのコンパクトベクターのPMAEファミリーのプラスミドDNAベクターの使用法が含まれる。これらは、PAEC系列と同一の細菌における機能的要素、並びにCMV前初期プロモーター及びマルチクローニング部位を含む。さらに、ウサギβ−グロビンに由来する転写終結及びポリアデニル化のための合成イントロン及び合成配列を有する。後者に類似する配列により、クローン遺伝子のより高い発現レベルを得ることが可能であることが報告されている(Norman JA他、Vaccine、15巻、801ページ、1997年)。さらに、この系列のベクターには、マウスとヒトの双方で先天性免疫系を刺激し、その結果として、目的分子に対する体液性及び細胞性応答が活性化される免疫刺激配列(CpGモチーフ)の連続的反復が含まれる(Krieg AM、Vaccine、19巻、618ページ、2001年)。
【0034】
組換えウイルス(とりわけ、アデノウイルス、アデノ随伴、ワクシニア、水痘ウイルス、カナリア痘ウイルス)による免疫化は、宿主において強力な細胞傷害性細胞反応を生み出す。組み込み配列を有する組換えウイルスベクターに目的配列を導入するため、各ウイルスタイプに特有のプロモーターを使用する。また、この戦略は本発明の範囲に含まれ、水痘ウイルス及びpFP67xgptベクターを使用することが好ましい。pFP67xgptベクターを使用し、水痘ウイルスFP9の11.2kB BamHIの断片のうちオープンリーディングフレーム6と7の間に合成的性質の強力な初期/後期プロモーターの下で遺伝子をクローニングする。また、このプラスミドは、組換えウイルスを識別するために使用されるワクシニアプロモーターp7.5Kによって制御されるEcogptを含む。本発明の他の代替法は、VEGFファミリー並びにそれらの受容体及び/又は補助受容体のタンパク質による免疫化からなる。既述のようにして得られるcDNA分子を、自動配列決定の従来法によってそれらの配列を確認した後で、抗原のタンパク質変異体を得るため、ウイルス、酵母、ファージ、植物、又は優れた細胞における発現のためにベクター中にクローニングする。発現のためのいくつかのベクターが報告されており、組換えタンパク質を得るために使用されている。これらのベクターは、少なくとも、発現されるDNA又は断片の配列と動作可能に連結された発現を制御する配列を含む。発現の制御に有用な配列の例は、lac系、trp系、tac系、及びtrc系、ラムダファージのプロモーター領域及び主要オペレーター、表面タンパク質fdのコントローラ領域、酵母の解糖プロモーター(例えば、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ)、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、接合アルファ因子のための酵母プロモーター、及びポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、シミアンウイルス由来のプロモーター(例えば、SV40の初期/後期プロモーター)、並びに原核及び真核細胞、それらのウイルスにおいて遺伝子の発現を調節する他の知られている配列、及びそれらの組合せである。
【0035】
これらのベクターを複製するため、及び本発明の目的組換えタンパク質を得るために使用される宿主には、原核及び真核細胞が含まれる。原核生物は、大腸菌(E.coli)(DHI、MRCI、HB101、W3110、SG−936、X1776、X2282、DH5a)、シュードモナス(Pseudomonas)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス(Streptomices)などを含む。真核細胞には、とりわけ酵母及び真菌、昆虫、動物細胞(例えば、COS−7及びCHO)、ヒト、及び植物細胞、及び組織培養物が含まれる。適切な培地において最適な系における発現の後、知られている手順によってポリペプチド又はペプチドを単離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
アジュバントの使用法
特定の動物モデルにおいて裸のDNA又はタンパク質のワクチン接種が有効であることが判明した場合であっても、腫瘍又は自己免疫疾患に冒されている患者は、本発明によって提案される治療戦略への挑戦を示す。免疫応答を助けるため、DNA又はタンパク質ワクチンを、無機塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム)のような既述の免疫増強物質;サイトカイン(例えば、IL−2、IL−12、GM−CSF、IFN−α、IFN−γ、IL−18)、分子(例えば、CD40、CD154、MHCタイプIのインバリアント鎖、LFA3)のような免疫刺激薬;サポニン(例えば、QS21)、MDP誘導体、CpGオリゴ、LPS、MPL及びポリホスファゼン;エマルジョン(例えば、フロイント、SAF、MF59)、リポソーム、ビロゾーム、免疫刺激複合体、補助キレート剤(co−chelator)のような脂質粒子;PLG微小粒子、ポロキサマーのような、ウイルスタイプ(例えば、HBcAg、HCcAg、HBsAg)、及び細菌タイプ(すなわち、VSSP、OPC)の微小粒子アジュバント;並びに、易熱性エンテロトキシン(LT)、コレラ毒素、及び変異体毒素(例えば、LTK63及びLTR72)のような粘膜アジュバント、微小粒子及び重合リポソームと混合することができる。DNAワクチン接種の場合には、目的抗原の発現は、バイシストロン性ベクター上で、いくつかの既述の免疫増強物質分子と混合できると思われる。
【0037】
実施例中に詳述する実験的状況は、非共有結合的にDNAをいくつかの記載粒子と結合させ得ること、及びこれらの混合物を使用すると、最適濃度が減少し、高用量の裸のDNAについての記載に類似した抗腫瘍応答が得られることを示している。
【0038】
哺乳類への投与
治療への応用例については、本発明のワクチン調製物は、以下の経路、とりわけ粘膜、皮下、筋肉内、腹膜、リンパ管内、局所から、及び吸入により、薬剤として許容可能な投与量で哺乳類、好ましくはヒトに投与される。これらは、筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、骨髄、脾臓、胸腺、心臓、リンパ節、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、膀胱、胃、腸、精巣、卵巣、直腸、眼、腺、及び結合組織を含む組織の間質空間に投与することができる。オリゴヌクレオチド伝達のためのベクターの場合、それらの発現は、体性分化細胞を対象とすることが好ましいが、皮膚の線維芽細胞及び血液の多能性細胞のような非分化又は低分化細胞を対象とすることができる。
【0039】
免疫原の投与量は、毒性も治療効果もない、薬剤として許容される媒体中で投与することができる。これらの媒体の例には、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムエステアレート(esthearates)、レクチン、アルブミンのような絹のタンパク質、リン酸塩のような緩衝溶液、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物起源の飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は硫酸プロタミンのような電解質、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース及びポリエチレングリコールに基づく物質が含まれる。本発明では、ワクチン調製物の賦形剤としてリン酸緩衝液を使用することが好ましい。
【0040】
タンパク質及びペプチドを使用する場合、アジュバントのように振る舞う担体として知られている分子に共有結合的又は非共有結合的にコンジュゲートさせることができる。これらの分子には、KLH、p64K、OPC(Musacchio A他、Vaccine、19巻、3692ページ、2001年)、及びVSSPがある。裸のDNA、ウイルスベクター、及びタンパク質免疫原の組合せも、本発明の範囲に含まれる代替法である。有利には、プラスミドDNA投与は、ワクチン調製物中に1種類又は複数の目的分子との製剤の生成を可能にする。したがって、本発明による分子は、様々なタイプのベクター(DNA、タンパク質、ウイルスベクターによる誘導再刺激の変異体)を組み合わせることによりワクチンスケジュールで投与することができる
【0041】
DNAベクターを患者に直接投与するか、これらのベクターによりin vivo又はex vivoで宿主細胞を改変することができる。この最後の戦略は、部位特異的組換えによる挿入、又はベクター発現を特定の細胞に向ける全身性形質転換による免疫化と組み合わせることができる。さらに、DNAベクターの細菌宿主をin vivoにおける伝達の媒体として使用することができる。
【0042】
このように、本発明による遺伝子を運ぶ分子は、裸のDNAの形で、又は様々なベクター、すなわち化学的/生化学的/生物学的、天然/合成又は組換えベクターと組み合わせて使用することができる。これらの分子は、カチオン性ペプチド、コンパクト化(compacting)分子(例えば、PEG、PEI)、核局在化ペプチド(NLP)などと結合又は組み合わせることができる。また、これらの分子は、DNA沈殿物を生成することができるカチオンと一緒に、膜融合物に予め分子が添加され、脂質的性質の合成ベクターではカチオン性ポリマー(例えば、DOGS又はDOTMA)によって生成されるリポソーム調製物の一部として投与することができる。DNAベクターの投与のためには、DNAをコンパクト化し生成する複合体の輸送を媒介するキメラタンパク質、及び特異的細胞によるその選択的エンドサイトーシスも使用することができる。本発明による治療/ワクチン遺伝子を運ぶDNA分子は、パーティクルボンバードメント、エレクトロポレーション(in vitro、in vivo又はex vivo)のような物理的伝達方法を用い、又は局所塗布、微粒子化による吸入などによりin vivoで直接的に細胞への遺伝伝達のために使用することができる。生きているベクターには、アデノウイルス粒子又は本発明による分子が産生されたのと同一の宿主が含まれる。
【0043】
使用されるポリペプチド及び/又はオリゴヌクレオチドの投与量は、様々なパラメータに従い、特に免疫源として投与される遺伝子又はタンパク質、投与の経路、治療すべき症状、治療の期間、及びオリゴヌクレオチドを用いる場合には免疫化に使用するベクターに応じて確立することができる。以下の実施例に記載のものとは異なる投与スケジュール又は投与経路の変更は、本発明の原則又は指針から離れることなく、良好な応答を得るための免疫化スキームの最適化を達成することが可能である。
【0044】
治療目的使用
本発明は、受動免疫療法を上回る利点を有し、標的として同一の分子を用いる臨床試験の進んだ段階にある。モノクローナル抗体(例えば、抗VEGF)の投与による免疫の受動伝達に比較して、タンパク質又はオリゴヌクレオチドによる免疫化は、抗体の内因性産生と、さらには特異的な細胞傷害性CD8+リンパ球の増殖及び拡大を誘導するという利点を有する。
【0045】
本発明が、VEGF−VEGFR系の遮断を対象とする治療戦略を上回る利点を有する理由は、主に、それらの治療戦略が、循環VEGFのレベルを低下させるかKDRを遮断するに過ぎないからである。記載の効果を達成することに加え、提案される戦略は、VEGFの供給源(すなわち、腫瘍細胞及び関連間質)及び/又はそれらの受容体を発現する細胞(腫瘍内皮及び一部の腫瘍細胞)も破壊する。この領域で行われたこれまでの研究は、観察された効果の主要な構成要素として体液性応答について既述しているに過ぎない。本発明の範囲を特定の機序に限定しようとするものではないが、実施例は、ワクチン組成物が、体液性特異的応答の他に、体液性応答と協調するCD8+細胞性応答を誘発することができること、さらに腫瘍との関連で、双方の組合せが、実施例9において観察される抗腫瘍効果を得ることに関連していることを示している。
【0046】
細胞傷害性細胞性応答が、表1及び2に載っているペプチドのいくつかの認識によって媒介されることが可能である。これらの中には、VEGFファミリー、その受容体及び補助受容体における選択された標的を対象とする細胞性応答に関連すると思われるいくつかのペプチドセグメントが現れる。この情報は、NIH及びHeidelberg Institute(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind、及びwww.bmi−heidelberg.com/scripts/MHCServer.dll/home.htm)からの公共データベースに対し、それぞれBIMAS及びSYFPHEITIソフトウエアを用いるコンピュータ解析により得られる。マークされたペプチド及び目的抗原に由来する他の配列は、単剤又は併用治療として、及びアジュバント能のある分子の一部であろうがなかろうが、既述の症状の活性免疫療法として使用できるであろう。また、これらのペプチドは、ワクチン目的でオリゴヌクレオチド変異体中で使用することができる。
【0047】
血管新生及びこの事象に関連する病態を阻害する方法は、有効量の本発明に記載のいくつかのDNA又はタンパク質分子をいずれかの経路によって前述のいくつかの免疫増強物質又はアジュバントを用いて哺乳類に投与することを含む。この哺乳類は、ヒトであることが好ましい。
【0048】
血管新生の非可逆的かつ無秩序な増加は、幅広い疾患のグループに関連付けられている。VEGFファミリー、その受容体及び補助受容体を含む系は、前述したようにこれらの病態の多くで過剰発現される。このように、本発明が提案する治療戦略は、(a)癌(原発腫瘍とそれらの転移の双方)、(b)喘息、呼吸困難、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、及び組織浮腫などの急性及び慢性炎症過程、(c)肝炎、及びカポジ肉腫のような感染症起源の疾患、(d)糖尿病、乾癬、関節リウマチ、甲状腺炎のような自己免疫疾患、並びに(e)糖尿病性及び新生児網膜症、臓器移植拒絶反応、黄斑変性症、血管新生緑内障、血管腫、及び血管線維腫などの他の疾患及び状態の治療に有効である。
【0049】
癌の場合は特に、本発明が提案する免疫原のワクチン接種は、癌腫、肉腫及び血管が新生した腫瘍の治療に有効である。提案戦略で治療することができる腫瘍のいくつかの例には、類表皮腫瘍、頭頸部の扁平上皮腫瘍のような扁平上皮腫瘍、並びに結腸直腸、前立腺、乳房、肺(小細胞及び非小細胞を含む)、膵臓、甲状腺、卵巣、及び肝臓の腫瘍が含まれる。これらの方法は、カポジ肉腫、中枢神経系腫瘍形成(神経芽細胞腫、毛細血管腫、髄膜腫及び脳転移)、黒色腫、腎及び胃腸癌腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫及び平滑筋肉腫のような他のタイプの腫瘍の治療にも有効である。
【0050】
具体的に、免疫原としてのVEGF−A及び/又はそれらの受容体VEGFR−1及びVEGFR−2の使用は、様々な起源及び局在化の腫瘍、及びそれらの転移、血管腫、子宮内膜症、潰瘍性大腸炎及びクローン病のような慢性炎症過程、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ及び変形性関節症、炎症性関節症、乾癬、呼吸困難、喘息、甲状腺炎、糖尿病性及び新生児網膜症、黄斑変性症、及び緑内障、常染色体性VHL疾患、肥満症、並びにいくつかの臓器移植の拒絶反応の治療に有用である。一方、PIGFに対する応答は、関節リウマチの場合に、及び一般に原発性炎症性関節症の治療において有用である。
【0051】
VEGF−Bの場合、免疫原としてのその使用は、乳房、卵巣及び腎臓の腫瘍の場合に、並びに黒色腫及び線維肉腫に有用である。VEGF−C及びその受容体VEGFR−3の使用は、組織浮腫、糖尿病性網膜症、慢性炎症、潰瘍、並びに乳房、肺、頭頸部、食道、及び胃の腫瘍、リンパ腫、及び前立腺、転移結節及びカポジ肉腫、Dabska型血管内皮腫及び皮膚リンパ管腫症の治療に有用である。VEGF−Dのワクチン接種は、具体的にリンパ節転移の治療に使用することができる。
【0052】
哺乳類のワクチン接種におけるNRP1及びNRP2補助受容体の使用は、特に、前立腺癌における線維血管性増殖、黒色腫、骨肉腫、乳癌転移、糖尿病性網膜症、及び関節リウマチの治療に有用である。
【0053】
抗体の投与による受動免疫療法に基づく研究は、VEGF−Aに対する抗体とKDRの併用は、同系腫瘍のモデルにおいてより有効であることを示した。したがって、本発明において提案される2種類以上の免疫原の使用は、血管新生及び腫瘍増殖を阻害するための特に効率的な治療を提供する。これらの免疫原は、個々に、又は既述の経路によるバイシストロン性ベクターを用いペアで投与することができる。さらに、本発明のワクチン組成物は、一緒に、又は連続して、治療中の状態にとって利益をもたらす薬物又は化学療法剤と共に使用することができる。
【0054】
後述の結果は、抗血管新生及び抗腫瘍応答は、体液性及び細胞性応答の協調によって媒介されることを立証している。特に、VEGF及びその受容体は、樹状細胞の成熟の過程に関与し、B及びTリンパ球前駆体に作用する。実施例10は、提案する治療戦略が、血清中のVEGFのレベルを低下させる他に、B及びTリンパ球の比率、及び成熟樹状細胞の正常化にも寄与していることを立証している。この効果は、MHC Iとの関連で腫瘍抗原の提示を助け、免疫原ばかりでなく、腫瘍との関連では他の腫瘍関連、腫瘍特異的、及び過剰発現抗原を対象とする免疫抗腫瘍効果の質及び強度を改善する。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【実施例1】
【0057】
抗原のクローニング及び一過性発現。
ヒトVEGF、そのアイソフォーム及び機能的変異体
VEGFアイソフォームは、CaSki細胞系(ATCC CRL1550)のmRNAの前回の分離から得られたcDNAをテンプレートとして用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を適用し、製造業者の使用説明書に従い(Perkin−Elmer)、プライマー配列番号1及び配列番号2を使用してクローニングした。VEGFアイソフォーム121、165及び189の増幅産物に対応するバンドを2%アガロースゲルから抽出した。エンドヌクレアーゼBamHI及びEcoRIによるバンド消化の後、VEGFアイソフォームからのcDNAを精製し、PAECΔ2ベクター(CIGBの所有ベクター)中に独立にクローニングした。得られたプラスミドを配列決定し、クローン化アイソフォームについてEMBL(www.embl−heidelberg.de)によって報告されているアミノ酸に関して変異が無いと判定した。続いて、VEGFアイソフォームに対応するcDNAを、5個の免疫刺激性CpG部位の存在によってpAECΔ2とはとりわけ特徴が異なるpMAE5Δ5上のKpnI/EcoRVにクローニングした。
【0058】
KDR受容体と結合しないVEGF変異体(VEGFKDR(−))からのcDNAは、Siemeister G他(Siemeister G他、J Biol Chem、273巻、11115ページ、1998年)により記載されたように、前にクローニングしたVEGF121アイソフォームの直接変異誘発によって得た。
【0059】
変異体は、以下のプライマーを用いるPCRにより生成させた。
(A)5’末端断片(315bp)の増幅:配列番号3及び配列番号4の配列を有するプライマーを使用
(B)3’末端断片(93bp)の増幅:配列番号5及び配列番号6の配列を有するプライマーを使用
【0060】
このように増幅した断片を述べるように精製し、配列番号7及び配列番号8の配列に対応するプライマーを用いるフュージョンPCR用のテンプレートとして等モル濃度で使用した。変異を含む得られたcDNAをBamHI/EcoRIで消化し、精製し、pAECΔ2ベクター中にクローニングした。導入された変異を配列決定法によりチェックし、VEGFKDR(−)に対応するDNAを、pMAE5Δ5中のKpnI/EcoRVにサブクローニングすると、pMAE5Δ5 VEGFKDR(−)が得られた。
【0061】
トランスフェクションと動物のワクチン接種の双方で使用されるプラスミドは、Whalen R他(Whalen RG及びDavis HL、Clin Immunol Immunopathol、75巻、1ページ、1995年)によって記載されているように内毒素が含まれている条件で精製した。手短に言うと、製造業者の使用説明書に従い、QIAGEN Endo−freeシステムを用いてDNAを精製し、そのDNAをさらに第二の沈殿にかけた。最後に、DNAを、内毒素を含まないPBS(SIGMA、USA)に溶かし、最終濃度を4mg/mLとした。
【0062】
1.2 ヒトVEGF受容体(KDR/Flk1)
VEGFのKDR受容体の細胞外ドメイン(KDR1〜3)並びにこの受容体の膜貫通及び細胞内ドメイン(KDR TC)をコードするcDNAは、内皮細胞系HUVEC(Clonetic、USA)のmRNAを用いるRT−PCRから取得し、ヒトVEGF(Sigma)及びヘパリン(Sigma)で処理した。
【0063】
細胞外ドメイン1から3の場合、使用するプライマーは、配列番号9及び配列番号10の配列に相当する。増幅断片(943bp)のエンドヌクレアーゼBamHI及びEcoRIによる消化の後、KDRの1〜3ドメインをコードするcDNAを精製し、pAECΔ2ベクター中にクローニングした。対応するDNAの配列決定により、制限分析が陽性のクローンを確認した。次いで、KDR1〜3に対応するDNAを、既述のpMAE5Δ5中のKpnI/EcoRVにサブクローニングした(pMAE5Δ5 KDR1〜3)。
【0064】
受容体の膜貫通及びサイトゾル領域のクローニングのため、二段階戦略を設計した。第一のセグメントの挿入のため、配列番号11及び配列番号12に対応するプライマーを使用した。この747bpセグメントのXbaI/BgIII消化の後、予め同一酵素により消化したpMAE5ベクター中に産物をクローニングし、プラスミドPMAE5 KDR747を得た。配列番号13及び配列番号14の配列に対応するプライマーを用いて増幅した残りの1091bpのカルボキシ末端断片を挿入するため、このプラスミドをBgIII/NotIにより消化した。DNA配列決定により制限分析が陽性のクローンを確認し、pMAE5 KDR Cと命名した。
【0065】
1.2.1 ウイルスベクターにおけるKDRの膜貫通及びサイトゾル領域のクローニング
水痘ウイルス上のVEGF受容体(KDR)の膜貫通及びサイトゾル領域のクローニングのため、配列番号15及び配列番号16の配列に対応するプライマーを使用した。この953bpセグメントをStuI/SmaI酵素により消化した後、予め同一酵素により消化したpFP67xgptベクター中にクローニングした。SmaI/BamHIにより消化したこの同一ベクターにおいて、残りの919bpを挿入し、配列番号17及び配列番号18の配列に対応するプライマーを用いて元のcDNAから増幅した。DNA配列決定により制限分析が陽性のクローンを確認し、pFP67xgpt KDR Cと命名した。
【0066】
水痘ウイルス(FWPV)は、ウシ胎児血清(FBS)を2%添加したDMEM培地中、トリ胚線維芽細胞(CEF)の中で複製した。Lipofectin(Gibco BRL、Grand Island、USA)を用い、弱毒株FP9に予め感染させたCEFにpFP67xgpt KDR Cをトランスフェクトした。24時間後、新鮮な培地を加え、細胞をさらに3〜4日間培養した。その後、細胞を3回凍結解凍した。Ecogpt酵素をコードする遺伝子を発現する組換えウイルスを、ミコフェノール酸(25μg/mL)、キサンチン(250μg/mL)、及びヒポキサンチン(15μg/mL)(MXH)により選択培地中で精製した。組換えウイルスにおける遺伝子の正しい封入は、PCRによってチェックした。組換えウイルスをFPKDRgptと命名し、非組換え体を陰性対照FPとして使用した。
【実施例2】
【0067】
抗原のin vivo発現
in vivoにおいてタンパク質を発現させるための構築物の能力を確認するため、これらを、C57BL6マウス(1群3匹)の大腿四頭筋に注射した。
1.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF121(10及び50μg/マウス)
2.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF165(10及び50μg/マウス)
3.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF189(10及び50μg/マウス)
4.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGFKDR(−)(10及び50μg/マウス)
5.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−KDR1〜3(10及び50μg/マウス)
6.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5 KDR C(10及び50μg/マウス)
7.PBSpH7.2に溶かしたFPKDRgpt(2.5*10cfu)
8.PBSpH7.2(陰性対照)
【0068】
注射48時間後に動物を犠牲にし、注射した筋肉を無傷で摘出した。プロテアーゼ阻害剤及び非イオン性界面活性剤の存在下に筋肉組織の一部をホモジナイズした。タンパク質抽出物中のVEGFの存在は、記載手順に従い、すべてのヒトVEGFアイソフォームを認識するポリクローナル抗体(sc−152G)を用いるドットブロット及びウエスタンブロットにより分析した。RNAは、TRI−Reagent(SIGMA)を用いて残りの筋肉組織から抽出した。各実験状況から合計20μgのRNAを、ホルムアルデヒドを含有する1%アガロースゲルの電気泳動にかけた。RNAをナイロンフィルタ(HYBOND)に写し、すべてのVEGFアイソフォームを認識するATP32で標識したVEGF121アイソフォームのcDNA、又は同様に標識したKDRのcDNAとハイブリダイズさせた。いずれの場合にも、フィルタは、構成遺伝子であるグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対応するcDNAと再びハイブリダイズさせた。ヒトVEGFに対応するすべての分析構築物バンド及びKDR受容体のクローン化断片を同定した。
【実施例3】
【0069】
VEGF受容体であるKDRの遺伝子断片を含むプラスミドのワクチン接種を用いるin vivoの予防実験。
10匹のC57BL/6マウスのグループに、以下の変異体をワクチン接種するか、接種しなかった。
1.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−KDR 1〜3(1、10、50及び100μg/マウス)
2.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5 KDR C(1、10、50及び100μg/マウス)
3.FPKDRgpt(2.5*10cfu)
4.PBSpH7.2(陰性対照)
5.FP(2.5*10cfu)(陰性対照グループ3)
【0070】
どの場合においても、全容積50μlの左後足への筋肉内注射(im.)により、マウスを免疫化した。15日後、最初の免疫化方式を用いてすべての動物を再免疫化した。最後の免疫化から30日後、すべての動物の右腹部へのB16−F10黒色腫(ATCC、CRL−6475)の細胞10個の皮下(sc.)注射により、腫瘍チャレンジを展開した。腫瘍増殖は、動物が死亡し始めるまで週3回の測定でモニターした。
【0071】
pMAE5Δ5−KDR 1〜3プラスミドにより免疫化されたマウスでは、DNA50及び100μg/マウスの投与量において腫瘍サイズの減少は明らかであり、陰性対照に対して有意に低値であった(表3)。33日目の生存率分析は、非免疫化マウス(グループPBSpH7.2)に対し、マウス1匹当たり前記DNA投与量50及び100μgにより免疫化された動物について、このパラメータの有意な増加(陰性対照に対して)を示した。pMAE5 KDR Cの場合(表3)、使用した4種類の投与量において腫瘍体積の有意な減少が観察され、100から10μg/動物の投与量で生存率が増加した。ウイルスベクターの使用は、それぞれの陰性対照(挿入FPgptを含まないベクターにより免疫化されたマウスのグループ)と比較すれば、FPKDRgpt構築物に使用した条件で容積を減少させ、生存率を増加させた(表3)。
【0072】
【表3】


注:腫瘍体積は、各グループの動物に対して行われた測定値の平均値±標準偏差(SD)のように報告する。統計比較は、一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後テストを用いて行った。生存率の場合、報告する統計的有意性は、指示日において対照グループに対して各グループを比較するログランク検定を用いて得た。統計的有意性は、ns、p≦0.05有意でない;、p≦0.05;**、p≦0.01;及び***、p≦0.001のように表示する。
【実施例4】
【0073】
VEGFアイソフォーム、及び変異体を含むプラスミドのワクチン接種を用いるin vivoの予防実験。
10匹のC57BL/6マウスのグループに、以下の変異体をワクチン接種するか、接種しなかった。
1.PBSpH7.2に溶かしたpAECΔ2−VEGF121(1、10、50及び100μg/マウス)
2.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF121(1、10、50及び100μg/マウス)
3.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF165(1、10、50及び100μg/マウス)
4.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF189(1、10、50及び100μg/マウス)
5.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGFKDR(−)(1、10、50及び100μg/マウス)
6.PBSpH7.2(陰性対照)
【0074】
どの場合においても、全容積50μlの左後足へのim.注射により、マウスを免疫化した。15日後、最初の免疫化方式を用いてすべての動物を再免疫化した。最後の免疫化から30日後、すべての動物の右腹部へのB16−F10黒色腫(ATCC、CRL−6475)の細胞10個の皮下(sc.)注射により、腫瘍チャレンジを展開した。腫瘍の増殖は、動物が死亡し始めるまで週3回の測定でモニターした。
【0075】
100μg/動物で免疫化されたマウスの場合にpAEC系列における裸のDNA変異体に関して、陰性対照に対する腫瘍増殖の減少が観察された(表4)。VEGFアイソフォームとは無関係に、5個のCpG部位を有するpMAE5Δ5系列のベクターに含まれる変異体では、DNA10、50、又は100μgの投与量で免疫化されたマウスのグループにおいて陰性対照に比べ腫瘍サイズが有意に減少した。変異した変異体pMAE5Δ5−VEGFKDR(−)を用いた場合には、pMAE5Δ5−VEGF121について用いたのと同様な投与量において腫瘍サイズの有意な減少が得られた。
【0076】
43日目の生存率分析は、変異体pMAE5Δ5−VEGF121、pMAE5Δ5−VEGF165、pMAE5Δ5−VEGF189、及びpMAE5Δ5−VEGFKDR(−)により免疫化された動物の、動物一匹当たり50及び100μgの投与量における(陰性対照に対する)有意な増加を示した(表4)。
【0077】
【表4】


注:腫瘍体積は、各グループの動物に対して行われた測定値の平均値±標準偏差(SD)のように報告する。統計的比較は、一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後テストを用いて行った。生存率の場合、報告する統計的有意性は、指示日において対照グループに対して各グループを比較するログランク検定を用いて得た。統計的有意性は、ns、p≦0.05有意でない;、p≦0.05;**、p≦0.01;及び***、p≦0.001のように表示する。
【実施例5】
【0078】
コラーゲン誘発関節炎のモデルにおけるpMAE5Δ5−VEGF121及びpMAE5Δ5−KDR1〜3による免疫化を介するin vivoの予防実験。
20匹のマウスのグループに、以下の変異体をワクチン接種するか、接種しなかった。
1.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF121(DNA50μg/マウス)
2.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−KDR1〜3(DNA50μg/マウス)
3.PBSpH7.2(陰性対照)
【0079】
すべての場合において、免疫化(0日目)は、全容積50μlの左後足へのim.経路によった。15日後、最初の免疫化方式を用いてすべての動物を再免疫化した。
【0080】
5日目に、Campbell他(Campbell IK他、Eur.J.Immunol.、30巻、1568ページ、2000年)による既述のモデルであるトリII型コラーゲン(Sigma)による免疫化により、自己免疫性関節炎の誘発を開始した。この免疫化を26日目に繰り返した。各マウスの四肢は、各肢について、検査における紅斑(1)、炎症(2)、又は関節硬直(3)の徴候の存在により0から3までの区切りを定め、最大値が12である関節炎指数に従って毎日評価した。マウスは、誘発から23日後に関節炎発症の臨床症状を示し始め、50日目の発生率が最も高かった。表5は、異なる実験グループの動物における関節炎発生率の分析を示している。40及び55日目には、対照グループに比べ、ワクチン接種グループ(1及び2)において関節炎発生率の有意な低下が観察された。
【0081】
【表5】

【実施例6】
【0082】
ワクチン接種のin vivoにおける抗血管新生効果
15匹のマウスのグループに、以下の変異体をワクチン接種するか、接種しなかった。
1.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF121(DNA50μg/マウス)
2.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−KDR1〜3(DNA50μg/マウス)
3.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5 KDR C(DNA50μg/マウス)
4.PBSpH7.2(陰性対照)
【0083】
どの場合においても、全容積50μlの左後足へのim.注射により、C57BI/6マウスを免疫化した。15日後、最初の免疫化方式を用いてすべての動物を再免疫化した。最後の免疫化から30日後、Coughlin MC他(Coughlin MC他、J.Clin.Invest.、101巻、1441ページ、1998年)により記載されているマトリゲルを用い、in vivoの血管新生を動物において評価した。予めワクチン接種した動物を5匹のグループに分け、
1.VEGF50ng/mL、ヘパリン50U/mL
2.10個のB16−F10黒色腫の細胞
3.PBS
を含有する500μlのマトリゲル(Becton Dickinson and Co.、Franklin Lakes、New Jersey、USA)を、腹部中間線に皮下注射した。
【0084】
6日後、動物を犠牲にし、マトリゲルプラグを摘出した。プラグ中のヘモグロビン含量を、製造業者の使用説明書(Drablinの試薬キット;Sigma Diagnostics Co.、St.Louis、Missouri、USA)に従って分析した。VEGF又はその受容体KDRをコードするプラスミドによる免疫化は、VEGF誘発性血管新生、並びにより複雑な系である腫瘍細胞によって誘発される血管新生を有意に(p<0.001)阻害する。
【実施例7】
【0085】
様々なアジュバント剤に対するpMAE5Δ5−VEGF121の非共有結合性結合に基づく免疫原の取得。
既報の様々な免疫刺激剤を用い、後述の方法に従ってpMAE5Δ5−VEGF121構築物と混ぜた。髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の外膜からのOpcタンパク質を、Musacchio他(Musacchio A他、Vaccine、67巻、751ページ、1997年)の報告に従って精製した。pMAE5Δ5−VEGF12150μg/mLを、酸性pHにおいて緩やかに振盪しながらOpc10μg/mLに加えた。得られた複合体は、エンドフリーPBSpH7.2(Sigma)中で一夜、広範に透析した。Opcタンパク質−プラスミドDNA会合(Opc−pMAE5Δ5−VEGF121)のレベルは、1%アガロースゲルを用いるDNA可視化によってチェックした。50%を超えるプラスミドDNAがOpcタンパク質と会合した。
【0086】
Center of Molecular Immunologyより提供される髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質(OMPC)の複合体に由来する極めて小さな粒子(VSSP)(R.Perez他、米国特許出願第5788985号及び第6149921号)を、目的プラスミドDNAとの組合せに使用した。VSSP(1mg)を、一夜緩やかに撹拌しながらpMAE5Δ5−VEGF1215mgと共にインキュベートした。得られた材料は、エンドフリーPBSpH7.2(Sigma)中で広範に透析した。VSSP−プラスミドDNA会合(VSSP−pMAE5Δ5−VEGF121)のレベルは、1%アガロースゲルを用いるDNA可視化によってチェックした。50%を超えるプラスミドDNAがVSSP粒子と会合した。
【0087】
C型肝炎及びB型肝炎のコア粒子(particulated)抗原(HCcAG及びHBcAg)は、既報(Lorenzo LJ他、Biochem Biophys Res Commun、281巻、962ページ、2001年)に従って生成した。抗原1mgをプラスミド5mgと混ぜて一夜インキュベートした。HCcAG又はHBcAg−プラスミドDNA会合(それぞれ、HCcAg−pMAE5Δ5−VEGF121及びHBcAg−pMAE5Δ5−VEGF121)のレベルは、1%アガロースゲルを用いるDNA可視化によってチェックした。いずれの場合にも、50%を超えるDNAが抗原性粒子と会合した。
【実施例8】
【0088】
pMAE5Δ5−VEGF121構築物及び免疫応答アジュバントによるin vivo予防の実験。
10匹のC57BL/6マウスの群に、以下の変異体をワクチン接種するか、接種しなかった。
1.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF121(DNA1、10及び50μg/マウス)
2.Opc−pMAE5Δ5−VEGF121(DNA1、10及び50μg/マウス)
3.VSSP−pMAE5Δ5−VEGF121(DNA1、10及び50μg/マウス)
4.HBcAg−pMAE5Δ5−VEGF121(DNA1、10及び50μg/マウス)
5.HCcAg−pMAE5Δ5−VEGF121(DNA1、10及び50μg/マウス)
6.PBSpH7.2(グループ1の陰性対照)
7.Opc(グループ2の陰性対照)
8.VSSP(グループ3の陰性対照)
9.HBcAg(グループ4の陰性対照)
10.HCcAg(グループ5の陰性対照)
【0089】
免疫化手順、並びに腫瘍チャレンジ及び腫瘍体積測定は、これまでの実施例に記載と同様に行った。DNA10μg/マウス以上の投与量のワクチン変異体は、それぞれの陰性対照に比べて腫瘍増殖を低下させた(表6)。それぞれの対照に比べて有意に優れた生存率は、免疫増強媒体としてOpc、VSSP、HCcAg及びHBcAgと会合している、又は会合していないVEGF遺伝子により免疫化された動物について観察された。媒体を有する変異体はすべて、10μg/マウスから始まる投与量においてそれぞれの対照に対して有意に優れた生存率を示し、一方、ベクターpMAE5Δ5−VEGF121を有する裸のDNA変異体は、50μg/マウスの投与量において陰性対照と有意に異なる結果を与えた(表6)。
【0090】
【表6】


注:腫瘍体積は、各グループの動物に対して行われた測定値の平均値±標準偏差(SD)のように報告する。統計比較は、一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後テストを用いて行った。生存率の場合、報告する統計的有意性は、指示日において対照グループに対して各グループを比較するログランク検定を用いて得た。統計的有意性は、ns、p≦0.05有意でない;、p≦0.05;**、p≦0.01;及び***、p≦0.001のように表示する。
【実施例9】
【0091】
VEGFをタンパク質の形で用いるin vivoの予防実験。
10匹のC57BL/6マウスの群に、以下の変異体をワクチン接種するか、接種しなかった。
完全及び不完全フロイントアジュバントを含むVEGF165(20μg/マウス)
完全及び不完全フロイントアジュバント(陰性対照)
【0092】
純度が97%を超えるVEGF165抗原を商業ソース(SIGMA)から入手した。マウスは、完全フロイントアジュバント(Sigma)を用いて腹腔内経路によって免疫化し、15及び30日目には不完全フロイントアジュバントを用いて同一経路により再免疫化した。腫瘍チャレンジ、及び腫瘍体積の測定は、前の実施例の記載と同様に行った。
【0093】
対照の非免疫化グループに比べ、VEGF免疫化グループでは腫瘍体積の有意な減少及び生存率の増加が観察された。この効果は、VEGF DNAを用いた前の実験に見られた効果と同様であった。
【実施例10】
【0094】
重症複合型免疫不全症(SCID)のC57BL/6マウスにおける免疫防御伝達のin vivo実験。
実施例5に記載の手順を用い、pMAE5Δ5−VEGF121DNA50μg/マウスの投与量でC57BL/6マウスを免疫化し、又はしなかった。最初の免疫化から45日後にマウスを犠牲にした。これらのマウスのCD8+、CD4+及びBリンパ球は、製造業者の使用説明書に従い、磁気ビーズ(Dynabeads、USA)を用いて分離した。
【0095】
10匹の6週齢C57BL/6SCIDマウスのグループを、前に摘出したリンパ球の以下の組合せで再構成した。
グループ1:pMAE5Δ5−VEGF121DNAにより免疫化されたマウスからのCD8+Tリンパ球及びCD4+Tリンパ球。Bリンパ球は再構成しなかった。
グループ2:免疫化マウスからのBリンパ球及びCD4+Tリンパ球、及び非免疫化マウスからのCD8+Tリンパ球。
グループ3:実験の陽性対照としての、免疫化マウスからのBリンパ球、CD8+Tリンパ球及びCD4+Tリンパ球。
グループ4:実験の陰性対照としての、非免疫化マウスからのBリンパ球、CD8+Tリンパ球及びCD4+Tリンパ球。
【0096】
再構成したSCIDマウスに、10個のB16−F10黒色腫細胞を皮下チャレンジした。腫瘍の増殖は、動物が死亡し始めるまで週3回の測定によりモニターした。抗VEGF抗体レベルは、実験用ELISAにより分析した。VEGF165(Sigma)の0.5μg/ml溶液と共に、96ウエルプレートを一夜インキュベートした。ウエルをPBS−BSA1%(BDH、UK)溶液でブロックし、その後、動物血清の段階希釈液と共にインキュベートした。PBS−Tween0.05%で洗浄後、市販のポリクローナル抗マウスIgG(Sigma、A0168)を加えた。市販の基質オルトフェニレンジアミン(OPD、Sigma)の存在下にシグナルを増幅した。
【0097】
表7は、腫瘍チャレンジを受けたマウスのグループの腫瘍体積(24日目)及び生存率(40日目)の結果を示している。再構成後15日目に始まり、グループ1〜3の動物は、非免疫化マウスからのリンパ球により再構成されたグループ4に比べ、腫瘍サイズの減少を経験した。したがって、免疫化マウスにおいて免疫系を刺激し、腫瘍サイズを減少させる効果は、グループ1に抗VEGF抗体が存在しないことから、細胞傷害性型CTLの最後の一つである体液性及び細胞性応答に関連している。しかしながら、使用した実験条件では、残りのグループに比べ、グループ3(免疫化マウスのB及びTリンパ球)において生存率が増加したに過ぎなかった(表7)。CTL型応答のB又はTが存在しない部分的に再構成した動物(それぞれ、グループ1及び2)では、生存率は、陰性対照と異ならなかった。これらの結果は、体液性及び細胞性応答の組合せは(表4)、腫瘍チャレンジを受けたマウスの生存率を延ばすことができる有効な応答を可能にする相乗効果を有することを立証している。
【0098】
【表7】


注:ドナーマウスは、マウス1匹当たりpMAE5Δ5−VEGF DNA50μgの投与量で免疫化するか、又はしなかった。腫瘍体積は、各グループの動物に対して行われた測定値の平均値±標準偏差(SD)のように報告する。統計比較は、一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後テストを用いて行った。生存率の場合、報告する統計的有意性は、指示日において対照グループに対して各グループを比較するログランク検定を用いて得た。統計的有意性は、ns、p≦0.05有意でない;、p≦0.05;**、p≦0.01;及び***、p≦0.001のように表示する。
【実施例11】
【0099】
免疫応答を介する循環(circulant)VEGFの枯渇による免疫回復の証明。
15匹のC57BL/6雌性マウスのグループに以下の変異体をim.経路によって注射した。
1.PBSpH7.2に溶かしたpMAE5Δ5−VEGF121(50μg/マウス)
2.PBSpH7.2
【0100】
いずれの場合においても、全容積50μlの左後足への筋肉内注射(im.)により、マウスを免疫化した。15日後、最初の免疫化方式を用いてすべての動物を再免疫化した。最後の免疫化から30日後、各グループから無作為に選択した5匹の動物を犠牲にし、免疫化動物及び対照動物の免疫状態、並びに臓器及び組織に対するワクチン接種の毒性を巨視的及び組織学的評価によって分析した。
【0101】
各グループの残りの動物には、右腹部へ10個の黒色腫B16−F10細胞を皮下(sc.)注射した。腫瘍細胞注射から15及び30日後、グループ当たり5匹のマウスを犠牲にし、既述のように評価した。
【0102】
評価したいずれの動物にも巨視的レベルで毒性事象は認められず、組織病理学的分析は、最後の免疫化から30日後に検査したいずれの臓器にも損傷を示さない。免疫学的評価は、(1)血清におけるマウスVEGFレベルの評価;(2)T及びBリンパ球の細胞含量、並びに脾臓、上腕腋窩及び鼠径リンパ節における樹状細胞の成熟度とした。
【0103】
未処置動物の血清におけるマウスVEGFのレベル(マウスVEGF用のR&Dキット)の分析は、腫瘍への曝露時間の増加につれて、経時的な腫瘍サイズの増加に伴って、VEGFレベルが血清中で増加することを示した。ヒトVEGFに対して免疫化したグループでは、マウスVEGFレベルの有意な低下(p<0.001ANOVA、事後テストボンフェローニ)が検出され、腫瘍チャレンジ後30日を過ぎても持続した。
【0104】
各時点で犠牲にした動物の免疫系の状態は、Gabrilovich他(Gabrilovich D他、Blood、92巻、4150ページ、1998年)の報告に従い、リンパ節及び脾臓に存在する細胞集団の比率の検討により分析した。これらの検討のため、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びフィコエリトリン(PE)で標識した、CD3、CD19、CD11c及びCD86(B7−2)分子を認識する市販のモノクローナル抗体(Pharmingen)を使用し、フローサイトメーター(FACS)を用いる細胞集団の可視化を可能にした。
【0105】
得られた結果を表8に示す。
【0106】
【表8】


注:どの場合においても、値は、定量した細胞の合計に対する陽性細胞の割合を示す。
【0107】
免疫化から30日後の動物におけるリンパ系細胞集団及び樹状細胞の成熟の分析は、VEGF DNAによるワクチン接種は、動物の免疫状態にいかなる変化も引き起こさないことを示している。しかしながら、腫瘍移植から30日後、非ワクチン接種動物は、リンパ節と脾臓の双方で、腫瘍チャレンジ前の比に対してTリンパ球/Bリンパ球比(CD3/CD19)の減少を示す。さらに、脾臓においては特に、リンパ系細胞数の有意な減少が認められる。これらの動物では、リンパ節と脾臓の双方における成熟樹状細胞数の減少も観察される。VEGF DNAをワクチン接種したマウスのグループでは、すべてのパラメータの有意な回復が認められ、このグループの動物において観察された血清中のVEGFレベルの低下と相関していると思われる。
【配列表】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生の増加に直接関連するポリペプチド及び/又は血管新生の増加に直接関連するタンパク質をコードするオリゴヌクレオチド、並びにそれらの変異体を含む、アジュバント化されている、又はされていないワクチン調製物の投与を特徴とする活性ワクチン接種の方法。
【請求項2】
血管新生の増加に直接関連する前記タンパク質は、血管内皮増殖因子(VEGF)のファミリーに属する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質はVEGFAアイソフォームの一つである請求項1及び2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質はVEGFA121である請求項1、2及び3に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質はVEGFA165である請求項1、2及び3に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質はVEGFA189である請求項1、2及び3に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質はVEGFBアイソフォームの一つである請求項1及び2に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質はVEGFB167である請求項1、2及び7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質はVEGFCである請求項1及び2に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質はVEGFDである請求項1及び2に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質はPLGFである請求項1及び2に記載の方法。
【請求項12】
血管新生の増加に直接関連する前記タンパク質は、VEGFの受容体及び補助受容体の群に属する請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質はVEGFR1である請求項1及び12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質はVEGFR2である請求項1及び12に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質はVEGFR3である請求項1及び12に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質はNRP1である請求項1及び12に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質はNRP2である請求項1及び12に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫原は、ヒトVEGFファミリー及びそれらの受容体に由来する変異体である請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗原は自己の性質のものである請求項1〜18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗原は異種の性質のものである請求項1〜18に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫原は、合成、組換え、キメラ又は天然である請求項1〜20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫原はペプチドの性質のものである請求項1〜21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫原は、請求項2〜22に記載の少なくとも2種類の分子の混合物である請求項1記載の方法。
【請求項24】
哺乳類における腫瘍を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項25】
哺乳類における腫瘍を治療及び予防するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項26】
ヒトにおける悪性腫瘍形成及びそれらの転移におけるような血管新生の増加を特徴とする疾患を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項27】
良性腫瘍形成において起こるような血管新生の増加を特徴とする存在物を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項28】
急性及び慢性炎症過程において起こるような血管新生の増加を特徴とする疾患を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項29】
自己免疫過程において起こるような血管新生の増加を特徴とする疾患を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項30】
眼の変化において起こるような血管新生の増加を特徴とする疾患を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項31】
特に、情動性(affective)動物及び畜牛における、血管新生の増加を特徴とする疾患を治療するための請求項1〜23に記載の方法。
【請求項32】
血管新生の増加に直接関連するポリペプチド及び/又は血管新生の増加に直接関連するタンパク質をコードするオリゴヌクレオチド、並びにそれらの変異体を含み、薬剤として許容されるアジュバントの存在下、又は非存在下に投与されるワクチン組成物。
【請求項33】
前記関連タンパク質は血管内皮増殖因子(VEGF)である請求項32記載のワクチン組成物。
【請求項34】
前記関連タンパク質はVEGFAアイソフォームの一つである請求項32及び33に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
前記関連タンパク質はVEGFA121である請求項32、33及び34に記載のワクチン組成物。
【請求項36】
前記関連タンパク質はVEGFA165である請求項32、33及び34に記載のワクチン組成物。
【請求項37】
前記関連タンパク質はVEGFA189である請求項32、33及び34に記載のワクチン組成物。
【請求項38】
前記関連タンパク質はVEGFBアイソフォームの一つである請求項32及び33に記載のワクチン組成物。
【請求項39】
前記関連タンパク質はVEGFB167である請求項32、33及び38に記載のワクチン組成物。
【請求項40】
前記関連タンパク質はVEGFCである請求項32及び33に記載のワクチン組成物。
【請求項41】
前記関連タンパク質はVEGFDである請求項32及び33に記載のワクチン組成物。
【請求項42】
前記関連タンパク質はPIGFである請求項32及び33に記載のワクチン組成物。
【請求項43】
前記関連タンパク質はVEGF受容体及び補助受容体のグループに属する請求項32記載のワクチン組成物。
【請求項44】
前記関連タンパク質はVEGFR1である請求項32及び43に記載のワクチン組成物。
【請求項45】
前記関連タンパク質はVEGFR2である請求項32及び43に記載のワクチン組成物。
【請求項46】
前記関連タンパク質はVEGFR3である請求項32及び43に記載のワクチン組成物。
【請求項47】
前記関連タンパク質はNRP1である請求項32及び43に記載のワクチン組成物。
【請求項48】
前記関連タンパク質はNRP2である請求項32及び43に記載のワクチン組成物。
【請求項49】
ヒトVEGFファミリー、それらの受容体及び補助受容体に由来する変異体を免疫原として含有することを特徴とする請求項32〜48に記載のワクチン組成物。
【請求項50】
前記抗原は自己の性質のものである請求項32〜49に記載のワクチン組成物。
【請求項51】
前記抗原は異種の性質のものである請求項32〜49に記載のワクチン組成物。
【請求項52】
前記免疫原は、合成、組換え体、キメラ又は天然である請求項32〜51に記載のワクチン組成物。
【請求項53】
前記免疫原はペプチドの性質のものである請求項32〜51に記載のワクチン組成物。
【請求項54】
請求項33〜53に記載の少なくとも2種類の分子の混合物を免疫原として含むことを特徴とする請求項32記載のワクチン組成物。
【請求項55】
前記免疫原はプラスミドベクターの一部として投与される請求項32〜54に記載のワクチン組成物。
【請求項56】
前記免疫原はウイルスベクターの一部として投与される請求項32〜54に記載のワクチン組成物。
【請求項57】
前記免疫原はポリペプチドとして投与される請求項32〜54に記載のワクチン組成物。
【請求項58】
前記免疫原は、アジュバントと共有結合的に連結されて、又は連結されずに投与される請求項32〜57に記載のワクチン組成物。
【請求項59】
前記アジュバントは粒子状である請求項58記載のワクチン組成物。
【請求項60】
前記アジュバントは具体的にB型肝炎コア抗原の組換え粒子である請求項59記載のワクチン組成物。
【請求項61】
前記アジュバントは具体的にC型肝炎コア抗原の組換え粒子である請求項59記載のワクチン組成物。
【請求項62】
前記アジュバントは具体的にVSSPである請求項59記載のワクチン組成物。
【請求項63】
前記アジュバントはタンパク質の性質のものである請求項58記載のワクチン組成物。
【請求項64】
前記アジュバントはOPCタンパク質である請求項63記載のワクチン組成物。
【請求項65】
前記アジュバントはKLHタンパク質である請求項63記載のワクチン組成物。
【請求項66】
前記アジュバントはエマルジョンである請求項58記載のワクチン組成物。
【請求項67】
前記アジュバントは、フロイントアジュバント又はその誘導体である請求項66記載のワクチン組成物。
【請求項68】
前記アジュバントはモンタニド(Montanide)ISA51である請求項66記載のワクチン組成物。

【公表番号】特表2006−501145(P2006−501145A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−583468(P2003−583468)
【出願日】平成15年4月11日(2003.4.11)
【国際出願番号】PCT/CU2003/000004
【国際公開番号】WO2003/086450
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】