説明

抗CD−22抗体を使用したB細胞悪性疾患の免疫療法

【課題】 B細胞悪性疾患、たとえば、ノンホジキンリンパ腫や慢性リンパ性白血病のB細胞サブタイプは、癌死亡率の重大な一因である。様々な治療形式に対するB細胞悪性疾患の応答は様々である。化学療法と放射線療法を含め、B細胞悪性疾患を治療する伝統的な方法は、有毒な副作用があるため、有用性に限界がある。抗CD20抗体を用いた免疫療法も、その成功は、限られている。
【解決手段】 CD22抗原と結合する抗体の使用は、B細胞悪性疾患、たとえば、無痛形のB細胞リンパ腫、攻撃形B細胞リンパ腫と急性形および慢性形のリンパ性白血病を治療する有効な手段である。さらに、抗CD22抗体を用いた免疫療法は比較的低用量の抗体蛋白質を必要とし、複数の方式の治療方法で有効に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞悪性疾患を治療するための免疫療法に関する。特に、本発明は、比較的低用量のCD22抗原に結合する抗体を投与することによりB細胞悪性疾患を治療する方法に関する。本発明は、抗CD22の投与に、化学療法または免疫複合体や抗体融合蛋白質のような治療用蛋白質の投与を補足した、複数の方式の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
B細胞リンパ腫、たとえば、ノンホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)のB細胞サブタイプは、癌死亡率の重大な一因である。様々な治療形式に対するB細胞悪性疾患の応答は様々である。たとえば、ノンホジキンリンパ腫の適切な臨床病期決定が可能な場合、領域放射線療法で十分に治療することができる。それでもなお、患者の約半数が本疾患で死亡する。Devesaらの特許文献1を参照。
【0003】
慢性リンパ性白血病の大半は、B細胞系統である。Freedmanの特許文献2を参照。このタイプのB細胞悪性疾患は、西欧諸国で最もよくみられる白血病である。Goodmaらの特許文献3を参照。慢性リンパ性白血病の自然史は、幾つかの期間に分類される。初期では、慢性リンパ性白血病は無痛性疾患であり、小さくて成熟した機能的に不調和な、寿命の長い悪性B細胞のたまりを特徴とする。結局、悪性B細胞の倍加時間(doubling time)が減少し、患者は次第に症状を表すようになる。治療によって症状を軽減することはできるが、患者の全体的生存率に対し、僅かな影響を与えるにすぎない。慢性リンパ性白血病の後期は、顕著な貧血または血小板もしくはその両方の減少症を特徴とする。この時点で、生存の中央値は、2年未満である。Foonらの特許文献4を参照。細胞増殖速度が非常に遅いため、慢性リンパ性白血病は治療に対して抵抗性を示す。
【0004】
化学療法と放射線療法を含め、B細胞悪性疾患を治療する伝統的な方法には、有毒な副作用があるため、有用性に限界がある。放射性核種、毒素、または他の治療剤に向けたモノクローナル抗体を使用すると、このような薬剤を腫瘍部位に選択的に送り届けることが可能になるので、正常な組織に対する毒性が制限される。
【0005】
B細胞リンパ腫の治療用に、CD20抗原に対する抗体が研究されてきた。たとえば、「IDEC−C2B8」と呼ばれるキメラ抗CD20抗体は、1回の注射当たり500mgを超える用量の反復注射で非複合抗体として与えられると、B細胞リンパ腫に対する活性を有する。Maloneyらの特許文献5、特許文献6を参照。この治療方式で治療を受けた、等級の低い無痛形ノンホジキンリンパ腫患者の約50%が応答を示した。131I標識B1抗CD−20ネズミモノクローナル抗体を使用して、注射1回当たり600mgを超える用量で反復投与したときも、治療応答が得られている。Kaminskiらの特許文献7、PressらのN. Engl. J. Med. 329:1219 (1993)とPressらの特許文献8を参照。しかし、これらの抗体は、非複合型として与えられたにしても放射標識形で与えられたにしても、もっと優勢で且つ致命的な形、中間形または攻撃形のB細胞リンパ腫患者における客観的応答が表示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Nat'l Cancer Inst. 79:701 (1987)
【非特許文献2】Hematol. Oncol. Clin. North Am. 4: 405 (1990)
【非特許文献3】Leukemia and Lymphoma 22:1 (1996)
【非特許文献4】Annals Int. Medicine 113:525 (1990)
【非特許文献5】Blood 84: 2457 (1994)
【非特許文献6】Longo, Curr. Opin. Oncol. 8:353 (1996)
【非特許文献7】N. Engl. J. Med. 329:459 (1993)
【非特許文献8】Lancet 346: 336 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、比較的低用量の抗体を反復投与することが可能であり、且つかなりの期間の治療応答を達成するために、有毒な薬剤を追加する必要性によって制限を受けない、B細胞悪性疾患向けの免疫療法を開発する必要がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、比較的低用量の抗CD22抗体を使用して、B細胞悪性疾患を治療する方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、低用量の抗CD22抗体に免疫複合体や抗体融合蛋白質のような治療用蛋白質の投与を補足する複数の方式、または化学療法治療方式による、B細胞悪性疾患の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的とその他の目的は、B細胞悪性疾患に罹患した被験者に抗CD22抗体と薬学的に許容できる担体を投与するステップを含んでなるB細胞悪性疾患を治療する方法を提供することによる、本発明の1つの実施形態によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
上述の通り、抗CD20抗体は、非複合体であろうと治療用放射性核種で標識されていようと、中間形または攻撃形のB細胞リンパ腫患者における客観的応答を提供することができなかった。意外なことに、ノンホジキンリンパ腫(無通形も攻撃形も)または急性リンパ性白血病を有する患者を対象とした臨床試験で、比較的低用量(すなわち、1回当たり蛋白質20〜100mg)の非複合ネズミ抗CD22抗体またはヒト化抗CD22抗体が最高24ヶ月持続する部分寛解または完全寛解を惹起することが証明された。この現象は、複数の攻撃的化学療法の連続投与後に、または骨髄移植後でさえも、再発する場合が多い患者にも拘わらずに観察することができる。非複合抗CD20抗体または放射標識抗CD20抗体は、特に低用量蛋白質で、このような効果を示すことができなかったため、非複合抗CD22抗体を用いた有望な結果は、進行した攻撃(中間)形ノンホジキンリンパ腫患者と慢性および急性のリンパ性白血病患者で、特に有効であった。さらに、B細胞型の慢性リンパ性白血病は、一般にCD22を発現しないというFreedmanのHematol. Onvol. Clin. North Am. 4:405 (1990)の説を考慮すると、抗CD22抗体を用いた有望な結果は予想外であった。
【0011】
2.定義
以下の説明において、多数の用語が頻繁に使用されているため、本発明を理解しやすくするために、それらを次の通りに定義する。
【0012】
構造遺伝子は、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、次いで特定のポリペプチドに特有のアミノ酸配列に翻訳されるるDNA配列である。
【0013】
プロモータは、構造遺伝子の転写を指示するDNA配列である。一般に、プロモータは、構造遺伝子の転写開始部位に近い遺伝子の5'領域に位置する。プロモータが誘導プロモータであれば、誘導剤に応答して誘導転写速度が速くなる。対照的に、プロモータが構成的プロモータであれば、転写速度は、誘導剤で制御されない。
【0014】
単離DNA分子は、生物のゲノムDNAに組み込まれないDNAのフラグメントである。たとえば、クローン化抗体遺伝子は、哺乳類細胞のゲノムDNAから分離されていたDNAフラグメントである。単離DNA分子のもう1つの例は、生物のゲノムDNAに組み込まれない化学合成されたDNA分子である。
【0015】
エンハンサは、転写開始部位を基準にしてエンハンサの距離や方向に無関係で、転写の能率を高めることができるDNA制御要素である。
【0016】
相補的DNA(cDNA)は、逆転写酵素により、mRNA鋳型から形成される1本鎖DNA分子である。一般に、mRNAの蛋白質に相補的なプライマーが逆転写の開始に使用される。当業者は、このような1本鎖DNA分子とその相補的DNA鎖で構成される2本鎖DNA分子を指すのに、用語「cDNA」も使用する。
【0017】
発現の用語は、遺伝子生成物の生合成を指す。たとえば、構造遺伝子の場合、発現は、構造遺伝子のmRNAへの転写と、mRNAの1つまたは複数のポリペプチドへの翻訳とを含む。
【0018】
クローニングベクタは、プラスミド、コスミド、またはバクテリオファージのような、宿主細胞内における自律複製能力を有するDNA分子である。クローニングベクタは、一般に、ベクタの不可欠な生物学的機能ならびにクローニングベクタで形質転換された細胞の同定と選択に使用するのに適した標識遺伝子を失わずに、決定可能な様式で外来DNA配列を挿入することができる1つまたは少数の制限エンドヌクリアーゼ認識部位を含む。標識遺伝子は、一般に、テトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性を与える遺伝子を含む。
【0019】
発現ベクタは、宿主細胞に発現される遺伝子を含むDNA分子である。一般に、遺伝子発現は、構成的プロモータ、誘導プロモータ、組織特異的調節要素とエンハンサを含む、ある一定の調節要素の支配下に置かれている。このような遺伝子は、調節要素に「機能的に連関している」と言われる。
【0020】
リコンビナント宿主は、クローニングベクタまたは発現ベクタを含む任意の原核細胞または真核細胞であってもよい。この用語は、クローン化遺伝子を宿主細胞の染色体またはゲノムに含む、遺伝子操作されている原核細胞または真核細胞も含む。
【0021】
抗体フラグメントは、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab等々のような抗体の一部である。構造と無関係に、抗体フラグメントは、完全な抗体によって認識されるものと同じ抗原と結合する。たとえば、抗CD22モノクローナル抗体フラグメントは、CD22のエピトープと結合する。
【0022】
用語「抗体フラグメント」は、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより、抗体と同様の作用をするあらゆる合成蛋白質または遺伝子操作蛋白質も含む。たとえば、抗体フラグメントには、軽鎖可変領域で構成される単離フラグメント、重鎖と軽鎖との可変領域で構成される「Fv」フラグメント、軽鎖可変領域と重鎖可変領域がペプチドリンカーで接続されているリコンビナント1本鎖ポリペプチド分子(「sFv蛋白質」)と超可変領域によく似たアミノ酸残基で構成される最小限の認識単位が含まれる。
【0023】
キメラ抗体は、囓歯類抗体(rodent antibody)由来の可変領域と相補的決定領域リコンビナントを含むが、抗体分子の残りはヒト抗体由来である蛋白質である。
【0024】
ヒト化抗体は、モノクローナル抗体のネズミ相補的決定領域が、ネズミ免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域からヒト可変領域にトランスファーされているリコンビナント蛋白質である。
【0025】
本明細書で使用される治療剤は、治療に有用な複合体を作るために、抗体部分に連結される分子または原子である。治療剤の例としては、薬剤、毒素、免疫調節因子、キレート化剤、ホウ素化合物、光活性剤または色素と放射性原子などがある。
【0026】
裸の抗体は、抗体フラグメントと対照的に、治療剤と結合していない抗体全体である。裸の抗体には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両者、ならびに、キメラ抗体やヒト化抗体のようなある一定のリコンビナント抗体が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される用語の抗体成分には、抗体全体と抗体フラグメントの両者が含まれる。
【0028】
免疫複合体は、抗体成分と治療剤との複合体である。
本明細書で使用される用語「抗体融合蛋白質」は、抗体成分と治療剤を含んでなるリコンビナント分子を指す。このような融合蛋白質に適した治療剤の例としては、免疫調節因子(「抗体−免疫調節因子融合蛋白質」)や毒素(「抗体−毒素融合蛋白質」)などがある。
【0029】
3.抗CD22モノクローナル抗体、ヒト化抗体、霊長類抗体とヒト抗体の産生
当業者に周知の方法で、CD22に対する囓歯類モノクローナル抗体を得ることができる。たとえば、Kohler and MilsteinのNature 256:495 (1975)とColiganら(編)のCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、第1巻、 2.5.1〜2.6.7ページ (John Wiley & Sons 1991)「”Coligan”」を参照されたい。簡単に記載すると、CD22を含む組成物をマウスに注射し、血清試料を採取して抗体産生の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を獲得し、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを作り、ハイブリドーマをクローニングし、抗CD22抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養から抗体を単離することによって、モノクローナル抗体を得ることができる。
【0030】
様々な確立した技術で、ハイブリドーマ培養からモノクローナル抗体を単離して精製することができる。このような単離技術としては、プロテイン−A−ファロース(Protein-A Sepharose)を用いたアフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィとイオン交換クロマトグラフィなどがある。たとえば、Coliganの2.7.1〜2.7.12ページと2.9.1〜2.9.3ページを参照されたい。また、METHOD IN MOLECULAR BIOLOGY、VOL.10、79〜104ページ(The Human Press, Inc. 1992)に記載のBainesらの"Purification or Immunoglobulin G (IgG)"を参照されたい。
【0031】
標準技術を使用して、十分に特性化された抗体産生用CD22抗原の適量を得ることができる。一例として、Tedderらの与えられた米国特許第5,484,892号(1996年)に記載の寄託抗体を使用して、CD22をBリンパ球蛋白質から免疫沈降させることができる。
【0032】
あるいは、CD22を過剰生産する形質転換培養細胞からCD22蛋白質を得ることができる。発表されているCD22ヌクレオチド配列を使用して、CD22蛋白質をコード化しているDNA分子を含む発現ベクタを構築することができる。たとえば、WilsonらのJ. Exp. Med. 173: 137 (1991)とWilsonらのJ. Immunol. 150:5013 (1993)を参照されたい。具体例として、相互にプライマー用の長いオリゴヌクレオチドを使用してDNA分子を合成することにより、CD22をコード化しているDNA分子を得ることができる。たとえば、Ausubelら(編)のCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLGY, 8.2.8〜8.2.13ページ(1990)を参照されたい。また、WosnickらのGene 60:115 (1987)とAusubelら(編)のSHORT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLGY、第3版、8-8〜8-9ページ(John Wiley & Sons, Inc. 1995)も参照されたい。ポリメラーゼ連鎖反応を使用する確立された技術で、長さ1.8キロベースという大きい遺伝子を合成することができる。AdangらのPlant Molec. Biol. 21: 1131 (1993)、BambotらのPCR Methods and Applications 2: 266 819939、METHOD IN MOLECULAR BILOGY, Vol 15:PCR PROTOCOLS: CURRENT METHDS AND APPLICATIONS、White(編)の263-268ページ、(Human Press, Inc. 1993)のDillonらの"Use of the Polymerase Chain Reaction for the Rapid Costruction of Synthetic Genes"を参照されたい。
【0033】
このアプローチの変形では、骨髄腫細胞を、CD22 cDNAでしっかりとトランスフェクトされたネズミプレB細胞株で免疫化された脾細胞と融合することによって、抗CD22モノクローナル抗体を得ることができる。Tedderらに与えられた米国特許第5,484,892号(1996年)を参照されたい。
適当なネズミ抗CD22モノクローナル抗体の一例は、バーキット(Burkitt)リンパ腫由来のヒトラージ細胞(human Raji cell)に対して産生された、LL2(以前のEPB−2)モノクローナル抗体である。Pawlak-ByczkowskaらのCancer Res. 49: 4568 (1989)を参照されたい。このモノクローナル抗体はIgG2aアイソタイプを有し、且つこの抗体はリンパ腫細胞内に急速にインターナライズされる。ShihらのInt. J. Cancer 56: 538 (1994)を参照されたい。免疫染色試験とin vivo放射免疫検出試験で、B細胞リンパ腫の検出におけるLL2の優れた感度が証明された。Pawlak-ByczkowskaらのCancer Res. 49: 4568 (1989)、MurthyらのEur. J. Nucl. Med. 19: 394 (1992)を参照されたい。さらに、99mTc標識LL2Fab'フラグメントが、B細胞リンパ腫の治療に有用なことが証明されているが、131I標識された完全なLL2と標識されたLL2 F(ab')2フラグメントを使用して、リンパ腫部位を標的にして治療応答を惹起してきた。MurthyらのEur. J. Nucl. Med. 19: 394 (1992)、MillsらのProc. Am. Assoc.Cancer Res. 34: 479 (1993)[抄録2857]、BaumらのCancer 73 (Suppl. 3): 896 (1994)、GoldenbergらのJ. Clin. Oncol. 9:548 (1991)を参照されたい。さらに、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素と連結したFab' LL2フラグメントは、ヌードマウスで成長している測定可能なヒトリンパ腫に関して、異種移植片完全寛解を惹起することが証明されている。KreitmanらのCancer Res. 53: 819 (1993)を参照されたい。
【0034】
さらなる実施形態で、本発明の抗体は、ヒト抗体の可変領域が囓歯類抗CD22抗体の可変領域で置き換えられているキメラ抗体である。キメラ抗体の利点としては、免疫原性の低減とin vivo安定性の強化などがある。
【0035】
キメラ抗体の構築技術は当業者に周知である。一例として、LeungらのHybridoma 13: 469 (1994)には、彼はどうやってLL2モノクローナル抗体のVκとVHドメインをコードするDNA配列を、それぞれのヒトκ定常領域とIgG1定常領域と結合することによる、LL2キメラを産生するかについて記載されている。この出版物には、LL2軽鎖可変領域と重鎖可変領域、それぞれVκとVHのヌクレオチド配列も提供されている。
【0036】
別の実施形態で、本発明の抗体は類人霊長類抗体である。たとえば、Goldenbergらの国際特許公開WO91/11465号(1991)とLosmanらのInt. J. Cancer 46: 310 (1990)には、治療上有用な抗体を作る一般的技術について記載されている。
【0037】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は「ヒト化」モノクローナル抗体である。すなわち、マウス相補性決定領域が、マウス免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域から、ヒト可変領域にトランスファーされ、続いてそれらのネズミ相対物のフレームワーク領域内のヒト残基が幾つか置換されている。本発明によるヒト化モノクローナル抗体は、諸治療方法に使用するのに適している。ネズミ免疫グロブリン可変領域をクローニングする一般的な技術は、たとえば、OrlandiらのProc Nat'l Acad. Sci. USA 86: 3833 (1989)の出版物に記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を産生する技術は、たとえば、JonesらのNature 321:522 (1986)、RiechamらのNature 332:323 (1989)、VerhoeyenらのScience 239: 1534 (1988)、CartorらのProc. Nat'l Acad. Sci. USA 89: 4265 (1992)、SandhuのCrit. Rev. Biotech. 12: 437 (1992)とSingerらのJ. Immun. 150: 2844 (1993)に記載されている。LeyngらのMol. Immunol. 32: 1413 (1995)の出版物には、ヒト化LL2抗体の構築について記載されている。
【0038】
別の実施形態では、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。このような抗体は、抗原投与に応答して、特定の抗体を産生するように「操作」された形質転換マウスから得られる。この技術で、ヒト重鎖と軽鎖の座の要素が、標的とされた内在性重鎖の座と軽鎖の座の破壊を含む胎仔幹細胞株由来のマウス系に導入される。形質転換マウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができるので、このマウスを使用して、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。形質転換マウスからヒト抗体を得る方法は、GreenらのNature Genet. 7:13 (1994)、LonbergらのNature 368: 856 (1994)とTaylorらのInt. Immun. 6: 579 (1994)に記載されている。
【0039】
4.抗体フラグメントの製作
本発明は、抗CD22抗体または他の治療上有用な抗体のフラグメントの使用を考える。抗体フラグメントを作ることができる。抗体を蛋白質分解的に加水分解するか、またはフラグメントのDNAコーディングをE. coliに発現することによって、抗体フラグメントを作ることができる。
【0040】
従来の方法による全抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって、抗体フラグメントを得ることができる。たとえば、抗体をペプシンで酵素的に切断して5Sフラグメントを提供することにより、F(ab')2と表示される抗体フラグメントを作ることができる。チオール還元剤と、場合に応じてジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基用の封鎖基を使用して、このフラグメントをさらに切断し、3.5SFab'1価フラグメントを作ることができる。あるいは、ペプシンを使用して酵素的に切断すると2つの1価FabフラグメントとFcフラグメントが直接生成する。こうした方法は、たとえば、Goldenbergに与えられた米国特許第4,036,345号と第4,331,647号およびその中に含まれている参考文献に記載されている。NisonoffらのArch Biochem. Biophys. 89:230 (1960)、PorterのBiochem. J. 73: 119 (1959)、METHOD IN ENZYMOLOGY 第1巻、422ページ(Academic Press 1967)のEdelmanらとColiganの2.8.1-2.8.10と2.10.-2.10.4も参照されたい。
【0041】
フラグメントが、完全な抗体によって認識される抗原に結合する限り、抗体を切断する他の方法、たとえば、1価軽鎖−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、さらなるフラグメントの切断、またはその他の、酵素的、化学的または遺伝子的技術も使用することができる。
【0042】
たとえば、FvフラグメントはVH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会合は、InbarらのProc. Nat'l Acad. Sci. USA 69: 2645 (1972)に記載されている通り、非共有結合であってもよい。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合で結合されていてもよく、あるいはグルタルアルデヒドのような化学物質で架橋されていてもよい。たとえば、Sanshu(前出)を参照されたい。
【0043】
好ましくいFvフラグメントは、ペプチドリンカーで接続されているVH鎖とVL鎖を含む。こうした1本鎖抗原結合蛋白質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されているVH領域とVL領域をコード化しているDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって製作される。構造遺伝子を発現ベクタに挿入し、次に、それを宿主細胞、たとえば、E. coliに導入する。リコンビナント宿主細胞は、2つのV領域を架橋するリンカーペプチドを含む1本のポリペプチド鎖を合成する。sFvを作る方法は、たとえば、WhitlowらのMethods: Acompanion to Methods in Enzumology 2: 97 (1991)に記載されている。BirdらのScience 242: 423 (1988)、Ladnerらに与えられた米国特許第第4,946,778号、PackらのBio/Technology 11:1271 (1993)とSandhu(前出)も参照されたい。
【0044】
別の形の抗体フラグメントは、1つの相補性決定領域(CDR)に関するペプチドコーディングである。関心事の抗体のCDRをコード化している遺伝子を構築することによって、CDRペプチド(「最小認識単位」)を得ることができる。このような遺伝子は、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより、作ることができる。たとえば、LarrickらのMethods: A Companion to Methods in Enzymology 2: 106 (1991)、MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION、Ritterら(編)の166-179ページ(Cambridge University Press 1995)のCourtenary-Luckの"Genetic Manipuation of Monoclonal Antibodies"、とMONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS、Birchら(編)の137-185ページ(Wiley-Liss, Inc. 1995)のWardらの" Genetic Manipuation and Expression of Antibodies"を参照されたい。
【0045】
5.免疫複合体の製作
本発明は、B細胞悪性疾患の治療を遂行するために、「裸の」抗CD22抗体の使用ならびに免疫複合体の使用を考える。治療剤を抗体成分に間接的に連結することによって、このような免疫複合体を作ることができる。一般的な技術は、ShihらのInt. J. Cancer 41: 832-839 (1988)、ShihらのInt. J. Cancer 46:1101-1106 (1990)とShihらに与えられた米国特許第5,057,313号に記載されている。一般的な方法には、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し且つ複数の薬剤、毒素、キレート化剤、ホウ素付加物、またはその他の治療剤を付加した担体ポリマーと反応させることを含む。この反応の結果として最初のシッフ(Schiff)塩基(イミン)結合を生じ、これを第二級アミンに還元することにより安定化させて最終複合体を形成することができる。
【0046】
キャリヤーポリマーは、アミノデキストランまたはアミノ酸残基が少なくとも50個のポリペプチドであることが好ましいが、その他の実質的に等価のポリマーキャリヤも使用することができる。最終免疫複合体は、治療に使用するために、投与しやすく且つ有効に標的に向けるために、水性溶液、たとえば、哺乳類血清に溶けることが好ましい。したがって、担体ポリマー上の官能基を可溶化すると、最終免疫複合体の血清溶解性が高くなる。特に、アミノデキストランが好ましい。
【0047】
アミノデキストラン担体との免疫複合体の調製方法は、一般に、デキストランポリマーから始まり、平均分子量が約10,000〜100,000のデキストランが好ましい。このデキストランを酸化剤と反応させて、その炭水化物環の部分の制御された酸化を遂行し、アルデヒド基を生成する。酸化は、従来の手順にしたがって、NaIO4のような糖分解化学試薬で便利に遂行される。
【0048】
次いで、酸化されたデキストランをポリアミン、好ましくはジアミン、さらに好ましくはモノヒドロキシジアミンまたはポリヒドロキシジアミンと反応させる。適するアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、または、その他のポリメチレンジアミンに類するもの、ジエチレントリアミンまたはジエチレンポリアミンに類するもの、3,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、またはその他の水酸化されたジアミンまたは水酸化されたポリアミンに類するもの、等々がある。デキストランのアルデヒド基に比して過剰のアミンを使用して、アルデヒド基からシッフ塩基に実質的に完全に変換する。
【0049】
このようにして得られたシッフ塩基中間体を、NaBHなどのような還元剤を使用して、安定化させる。結果として得られた付加物を、従来のサイズ排除カラムを通過させて架橋したデキストランを除去することにより、精製することができる。
【0050】
アミン官能基を誘導するために、その他の、デキストランを誘導する従来の方法、たとえば、臭化シアンとの反応に続くジアミンとの反応を使用することができる。
【0051】
次いで、アミノデキストランを、個々の薬剤、毒素、キレート化剤、免疫調節因子、ホウ素付加物、または付加すべきその他の治療剤の誘導体と、活性形、好ましくは、従来の方法、たとえば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはその水溶性変異体を使用して調製したカルボキシル活性化誘導体で、反応させて、中間体付加物を形成する。
【0052】
あるいは、グルタルアルデヒド縮合または蛋白質上の活性化カルボキシル基とアミノデキストラン上のアミンとの反応によって、ポリペプチド毒素、たとえば、ヤマゴボウ抗ウイルス蛋白質またはリシンA鎖等々をアミノデキストランにカップリングすることができる。
【0053】
放射性金属用のキレート化剤または磁気共鳴増強剤は、当技術分野で周知である。代表的なものは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)とジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)である。これらのキレート化剤は、一般に、側鎖上に基を有し、それによってキレート化剤を単体に結合することができる。このような基としては、たとえば、ベンジルイソチオシアナートがあり、それによってDTPAやEDTAを担体のアミン基にカップリングすることができる。あるいは、活性化または事前の誘導とその後のカップリングにより(すべて、周知の方法で)、キレート化剤のカルボキシル基またはアミン基を担体にカップリングすることができる。
【0054】
ホウ素付加物、たとえば、カルボラン類を、従来の方法で抗体成分に結合させることができる。当業者に周知の通り、たとえば、ペンダント側鎖上のカルボキシル官能基を用いてカルボランを調製することができる。カルボランのカルボキシル基を活性化して、担体上のアミンと縮合させ、中間複合体を作ることによって、このようなカルボランを担体、たとえば、アミノデキストランに結合することができる。次いで、このような中間複合体を抗体成分に結合し、下記の通りに、治療上有用な免疫複合体を作る。
【0055】
アミノデキストランの代わりにポリペプチド担体を使用してもよいが、このポリペプチド担体は、鎖にアミノ酸残基が少なくとも50個、好ましくは100〜5000個なければならない。このアミノ酸残基のうち少なくとも幾つかは、リジン残基またはグルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基でなければならない。リジン残基のペンダントアミンおよびグルタミンとアスパラギン酸のペンダントカルボキシレートは、薬剤、毒素、免疫調節因子、キレート化剤、ホウ素付加物またはその他の治療剤を結合するのに便利である。適当なポリペプチド担体としては、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらのコポリマーとこれらのアミノ酸の混合ポリマー、および、その他、たとえば、結果として得られる付加された担体と免疫複合体に望ましい溶解性を与えるためのセリンなどが挙げられる。
【0056】
中間複合体と抗体成分との連結は、抗体成分の炭水化物部分を酸化し、生じたアルデヒド(およびケトン)カルボニル類を、薬剤、毒素、キレート化剤、免疫調節因子、ホウ素付加物とその他の治療剤を付加した後に担体上に残っているアミン基と反応させることによって遂行される。あるいは、治療剤を付加した後に中間複合体に導入しておいたアミン基を介して、酸化された抗体成分に中間複合体を結合させることができる。酸化は、たとえば、NaIO4またはその他の糖分解剤を用いて化学的に、またはたとえば、ノイラミニダーゼやガラクトースオキシダーゼを用いて酵素的に、便利に行われる。アミノデキストラン担体の場合、一般に、治療剤の付加に、アミノデキストランのアミンの全てが使用されるわけではない。アミノデキストランの残りのアミンは、酸化された抗体成分と縮合してシッフ塩基付加物を形成し、次いで、それを還元によって、通常は水素化ホウ素還元剤で、安定化させる。
【0057】
類似した手順を使用して、本発明による他の免疫複合体が作られる。付加されたポリペプチド担体は、酸化された抗体成分の炭水化物部分と縮合するために残っている、遊離のリジン残基を有することが好ましい。必要に応じて、たとえば、DCCで活性化し、過剰のアミンと反応させることによって、ポリペプチド担体上のカルボキシルをアミンに変換することができる。
【0058】
従来の技術、たとえば、SephacrylS−300を用いたサイズ排除クロマトグラフィを使用して、最終的な免疫複合体を精製する。
【0059】
あるいは、抗体成分を治療剤と直接連結させることによって、免疫複合体を調製することができる。一般的な手順は、治療剤を酸化された抗体成分に間接的に結合させること以外は、間接連結方法に似ている。
【0060】
本明細書に記載のキレート化剤の代わりに他の治療剤を使用できることは十分に理解されるであろう。当業者は、過度に実験しなくても連結計画を工夫することができるであろう。
【0061】
さらなる具体例として、ジスルフィド結合形成を介して、還元された抗体成分のヒンジ領域に治療剤を結合することができる。たとえば、ペプチドを抗体成分に結合するのに使用されるシステイン残基1つで、破傷風毒素ペプチドを構築することができる。その代わりに、ヘテロ二官能性架橋剤、たとえば、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロプリオネート(SPDP)を使用して、このようなペプチドを抗体成分に結合することができる。YuらのInt. J. Cancer 56:244 (1994)を参照されたい。このような連結の一般的な技術は当業者にとって周知である。たとえば、WongのCHEMISTRY OF PRORTEIN CONJUGATION AND CROSS-LONKING (CRC PRES 1991)、MONOCLONAL ANTIBODIES : PRINCIPLES AND APPLICATIONS、Birchら(編)187-230ページ(Wiley-Liss, Inc. 1995)のUpeslacisらの"Modification of Antibodies by Chemical Methods"、MONOCLONAL ANTIBODIES :PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION、Riteerら(編)60-84ページ(Cambridge University Press 1995)Price "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Dericed Antibodies"を参照されたい。
【0062】
上述の通り、抗体のFc領域の炭水化物部分を使用して、治療剤を連結することができる。しかし、免疫複合体の抗体成分としてフラグメントを使用する場合、Fc領域が存在しない。それにも拘わらず、抗体または抗体フラグメントの炭水化物部分を軽鎖可変領域に導入することが可能である。たとえば、LeungらのJ. Immunol. 154:5919 (1995)、Hansenらに与えられている米国特許第5,443,953号(1995)を参照されたい。次いで、操作した炭水化物部分を使用して治療剤と結合する。
【0063】
さらに、当業者は、多数の可能な連結方法の変形を理解するであろう。たとえば、血中、リンパ中、またはその他の細胞外体液中での、完全な抗体またはその抗原結合フラグメントの半減期を延長するために、炭水化物部分を使用して、ポリエチレングリコールを結合することができる。さらに、治療剤を炭水化物部分と遊離のスルフヒドリル基に結合することにより、「二価免疫複合体」を構築することができる。このような遊離のスルフヒドリル基は、抗体成分のヒンジ領域に位置していてもよい。
【0064】
6.単一治療方式と複数の方式の治療方式での抗CD22抗体の治療的使用
本発明は、B細胞悪性疾患を治療するための、一次治療用組成物として、裸の抗CD22抗体の使用を考える。このような組成物としては、ポリクローナル抗CD22抗体またはモノクローナル抗CD22抗体が挙げられる。
さらに、本発明の治療用組成物としては、異なる、非遮断CD22エピトープに向けた諸抗CD22モノクローナルの混合物などがある。モノクローナル抗体交差阻害試験で、CD22上の5つのエピトープが同定され、エピトープA〜Eと呼ばれている。たとえば、LEUKOCYTE TYPING IV. WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS、Knappら(編)65ページ(Oxford University Press 1989)のSchwartz-Albiezらの”The Carbohydrate Moiety of the CD22 Antigen Can Be Modulated by Inhibitors of the Glycosylation Pathway”を参照されたい。具体例として、LL2抗体はエピトープBと結合する。SteinらのCancer Immunol. Immunother. 37: 293 (1993)を参照されたい。したがって、本発明は少なくとも2つのCD22エピトープを結合するモノクローナル抗CD22抗体の混合物を含む治療用組成物を考える。たとえば、このような混合物は、エピトープA、エピトープB、エピトープC、エピトープDとエピトープEからなる群から選択される少なくとも2つのCD22エピトープと結合するモノクローナル抗体を含む。
【0065】
抗CD22抗体の結合投機性を決定する方法は、当業者に周知である。一般的な方法は、たとえば、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOLUME 10: IMMUNOCHEMICAL PROTOCOLS、Mason(編)、105-116ページのMoleの"Epitope Mapping"に記載されている。さらに詳細には、SteinらのCancer Immunol. Immunother. 37:293 (1993)とTedderらに与えられている米国特許第5,485,892号(1996)により、CD22エピトープ特異性を決定するための競合遮断分析法について説明されている。
【0066】
Tedderに付与された特許には、1つまたは複数の免疫グロブリン様領域が欠如しているCD22変異種の産生についても記載されている。これらの変異蛋白質を使用して、免疫グロブリン様領域1、2,3と4が、それぞれエピトープA、D、BとCと対応することが決定された。このように、被験抗体を、特定の免疫グロブリン様量言基が欠如しているCD22蛋白質群と結合させることによって、CD22エピトープ特性も同定することができる。
【0067】
裸の抗CD22抗体はB細胞悪性疾患を治療するための一次治療様組成物であるが、裸の抗体に免疫複合体と本明細書に記載の他の形の補足療法を追加することによって、このような抗CD22抗体療法の効力を増強することができる。このような複数の方式による治療方式では、裸の抗CD22抗体の投与前に、投与と同時に、または投与後に、補足療法用組成物を投与することができる。
【0068】
好ましい免疫複合体としては、放射標識抗体成分と抗CD22抗体成分と免疫調節因子の複合体などがある。本明細書に記載の治療用組成物は、無痛形のB細胞リンパ腫、攻撃形B細胞リンパ腫と急性リンパ性白血病の治療に特に有用である。たとえば、抗CD22抗体成分と免疫複合体を使用して、無痛形ノンホジキンリンパ腫と攻撃形ノンホジキンリンパ腫の両者を治療することができる。
放射免疫複合体は、α放射放射性同位元素、β放射放射性同位元素、γ放射放射性元素、オージェ電子エミッタ、α粒子を放射する中性子捕捉剤または電子捕捉によって崩壊する放射性同位元素も含んでもよい。適当な放射性同位元素としては、198Au、32P、125I、131I、90Y、186Re、188Re、67Cu、211At等々が挙げられる。
【0069】
上述の通り、キレート化剤を介して、放射性同位元素を抗体成分に直接または間接的に結合させることができる。たとえば、67Cuは、半減期が61.5時間と長く、β粒子とγ線を豊富に供給するため、より有望な放射免疫療法用の放射性元素の1つと考えられ、キレート化剤p−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸(TETA)を使用して、これを抗体成分に連結することができる。REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版、Gennaroら(編)の624-652ページ(Mack Publishing Co. 1990)のChaseの"Medical Applications of Radioisotopes"を参照されたい。あるいは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を使用して、強力なβ粒子を放出する90Yを抗体成分にカップリングすることができる。さらに、SteinらのAntibody Immunoconj. Radiopharm. 4: 703 (1991)により、抗体成分を131Iで直接放射標識する方法が説明されている。
【0070】
あるいは、上述の通り、カルボランのようなホウ素付加物を抗体成分に結合することができる。
【0071】
さらに、治療用免疫複合体は、免疫調節因子部分を含んでもよい。本明細書で使用する用語「免疫調節因子」としては、サイトカイン類、幹細胞成長因子、腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンフォトキシン、インターロイキン(たとえば、インターロイキン−1(IL−1),IL−2、IL−3、IL−6、IL−10とIL−12)のような造血因子、コロニー刺激因子(たとえば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(たとえば、インターフェロン−α、インターフェロン−βとインターフェロン−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞成長因子、エリスロポイエチンとトロンボポイエチンなどがある。
【0072】
関連した形の治療用蛋白質は、抗体部分と免疫調節因子部分を含む融合蛋白質である。有用な抗体部分としては、CD19、CD20またはCD22と結合する抗体成分などがある。抗体−免疫調節因子融合蛋白質を作る方法は、当業者に周知である。たとえば、インターロイキン−2部分を含む抗体融合蛋白質は、BoletiらのAnn. Oncol. 6: 945 (1995)、NicoletらのCancer Gene Ther. 2: 161 (1995)、BeckerらのProc. Nat'l Acad. Sci. USA 93: 7826 (1996)、HankらのClin. Cancer Res. 2:1951 (1996)とHuらのCancer Res. 56:4998 (1996)により説明されている。さらに、YangらのHum. Antibodies Hybridomas 6: 129 (1995)には、F(ab')2フラグメントと腫瘍壊死因子α部分を含む融合蛋白質について記載されている。さらに、本出願の実施例3に、hLL2−IL−2融合蛋白質の治療的使用について例示する。
【0073】
このような免疫複合体と抗体−免疫調節因子融合蛋白質は、免疫調節因子を標的細胞に送り届ける手段を提供するので、腫瘍細胞に対して特に有用である。免疫調節因子の細胞傷害作用は、当業者に周知である。たとえば、BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY、Pessutoら(編)の5〜30ページ(Chapman & Hall 1993)のKlegermanらの"Lymphokines and Monokines"を参照されたい。具体例として、インターフェロンは、様々な細胞表面上でのクラスI組織適合性抗原の発現増加により細胞増殖を阻止することができ、したがって、細胞傷害性Tリンパ球による細胞の破壊速度を高めることができる。さらに、TNF−αのような腫瘍壊死因子は、DNA分断を惹起することにより、細胞傷害性を引き起こすと考えられる。
【0074】
さらに、抗体成分が毒素または化学療法薬に連結されている、治療上有用な免疫複合体を作ることができる。このような複合体を作るのに適した毒素の具体例は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNAアーゼI、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルス蛋白質、ジェロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素とシュードモナス内毒素である。たとえば、PastanらのCell 47: 641 (1986)とGoldenbergのCA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43 (1994)を参照されたい。その他の適当な毒素は、当業者に周知である。
【0075】
治療用抗体と毒素の組合せを導入するための代替アプローチは、抗体−毒素融合蛋白質である。抗体−毒素融合蛋白質は、抗体部分と毒素部分を含む融合蛋白質である。有用な抗体部分には、CD19、CD20またはCD22と結合する抗体成分が含まれる。抗体−毒素融合蛋白質を作る方法は、当業者に周知である。たとえば、抗体−シュードモナス外毒素A融合蛋白質は、ChaudharyらのNature 339:394 (1989)、BrinkmannらのProc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:8616 (1991)、BatraらのProc. Nat'l Acad. Sci. USA 89: 5867(1992)、FriedmanらのJ. Immunol. 150:3054 (1993)、WelsらのInt. J. Can. 60:137 (1995)、FominayaらのJ. Biol. Chem. 271:10560 (1996)、KuanらのBiochemstry 35: 2872 (1996)とSchmidtらのInt. J. Can. 65:538 (1996)により説明されている。ジフテリア毒素部分を含む抗体−毒素融合蛋白質は、KreitmanらのLeukemia 7: 553 (1993)、NichollsらのJ. Biol. Chom. 268: 5302 (1993)、ThompsonらのJ.Biol. Chem. 270: 28037 (1995)とValleraらのBlood 88: 2342 (1996)により説明されている。DeonarainらのTumor Targeting 1: 177 (1995)には、RNAアーゼ部分を有する抗体−毒素融合蛋白質について記載されており、LinardouらのCell Biophys. 24-25:243 (1994)は、DNAアーゼI成分を含む抗体−毒素融合蛋白質を作った。WangらのAbstracts of the 209th ACS National Meeting, Anaheim, CA, 1995年4月2〜6日、Part 1, BIOT005の抗体−毒素融合蛋白質の毒素部分として、ジェロニンが使用された。さらなる例として、DohlstenらのProc. Nat'l Acad. Sci. USA 91: 8945 (1994)は、ブドウ球菌エンテロトキシン−Aを含む抗体−毒素融合蛋白質を報告している。
【0076】
免疫複合体を作るのに有用な癌化学療法薬としては、ナイトロジェンマスタード類、アルキルスルホネート類、ニトロソウレア類、トリアゼン類、葉酸類縁体、ピリミジン類縁体、プリン類縁体、諸抗生物質、エピポドフィロトキシン類、白金配位複合体、諸ホルモン等々がある。適当な化学療法剤は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第19版 (Mack Publishing Co. 1995)とGOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、第7版(Macmillan Publishing Co. 1985)に記載されている。その他の適当な化学療法剤、たとえば、実験用薬は、当業者に周知である。
【0077】
さらに、光活性剤または色素を抗体成分に連結することによって、治療上有用な免疫複合体を得ることができる。蛍光クロモゲンまたはその他のクロモゲン、または可視光線感受性ポルフィリンのような色素を使用して、適当な光線を病変に向けることによって、病変を検出して治療してきた。治療法では、これは、光放射、光化学療法、または光力学療法と呼ばれてきた。(Joriら(編)のPHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES (Libreria Progetto 1985)、van den BerghのChem. Britain 22: 430 (1986))を参照されたい。さらに、光化学療法を実現するために、モノクローナル抗体を光活性化色素とカップリングしてきた。MewらのJ. Immunol. 130: 1473 (1983)、同上、Cancer Res. 45: 4380 (1985)、OseroffらのProc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8744 (1986)、同上、Photochem. Photobiol. 46:83 (1987)、HasenらのProg. Clin Biol. Res. 288:471 (1989)、TotsutaらのLasers Surg. Med. 9:422 (1989)、PelegrinらのCancer 67: 2529 (1991)を参照されたい。しかし、こうした以前の試験は、特に、抗体フラグメントまたはサブフラグメントを使用した、内視鏡的治療適用の使用を含まなかった。したがって、本発明は、光活性剤または色素を含む免疫複合体の治療的使用を考える。
【0078】
本発明の複数の方式による治療法は、裸の抗体の形での、または免疫複合体としての、抗CD19抗体または抗CD20抗体の投与を捕捉した裸の抗CD22抗体による免疫療法をさらに含む。抗CD19抗体と抗CD20抗体は、当業者に周知である。たとえば、GhetieらのCancer Res. 48: 2610 (1988)、HekmanらのCancer Immunother. 32:364 (1991)、KaminskiらのN. Engl. J. Med. 329:459 (1993)、PressらのN. Engl. J. Med. 329: 1219 (1993)、MaloneyらのBlood 84: 2457 (1994)、PressらのLancet 346:336 (1995)、LongoのCurr. Opin Oncol. 8:353 (1996)を参照されたい。
【0079】
別の形の複数の方式による治療法で、被験者は裸の抗CD22抗体と標準的な癌化学療法を受けた。たとえば、「CVB」(シクロホスファミド1.5g/m2、エトポシド200〜400mg/m2、カルムスチン150〜200mg/m2)の治療方式を使用して、非ホジキンリンパ腫が治療された。PattiらのEur. J. Haemotol. 51: 18 (1993)を参照されたい。その他の適当な併用化学療法による治療方式は、当業者に周知である。たとえば、CANCER MEDICINE、第2巻、第3版、Hollandら(編)2028〜2068ページ(Lea & Febiger 1993)のFreedmanらの"Non-Hodgkin's Lymphomas"を参照されたい。具体例として、中等度非ホジキンリンパ腫を治療するための第一世代化学療法剤による治療方式としては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)が挙げられる。有用な第二世代化学療法剤による治療方式は、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンとロイコボリン)であり、適当な第三世代治療方式は、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシンとロイコボリン)である。さらなる有用な薬剤としては、フェニルブチレートとブロスタチン−1である。
【0080】
一般に、投与される抗CD22抗体、抗CD22抗体成分、免疫複合体と融合蛋白質の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、医学的全身状態と既往歴によって異なる。一般に、約1pg/kg〜10mg/kg(薬剤の量/患者の体重)の範囲である抗体成分、免疫複合体または融合蛋白質の投与量を受容者に与えることが望ましいが、必要に応じて、それより低用量または高用量を投与してもよい。
【0081】
抗体成分、免疫複合体または融合蛋白質の患者への投与は、局部カテーテルを介した還流による静脈内、動脈内、腹腔内、筋内、皮下、胸膜内、鞘内投与であってもよく、直接病変内注射であってもよい。治療用蛋白質を注射で投与するとき、連続注入であっても1回または複数回のボーラス投与であってもよい。
【0082】
静脈内注射は、完全に循環して抗体を速やかに分布させるため、有用な投与方式であることを当業者は知っている。しかし、静脈内投与は、血管系の内皮細胞と内皮下マトリックスを含む血管関門による制限を受ける。さらに、充実性腫瘍による治療用抗体の取り込みに関して、血管関門は、さらに注目に値する問題である。リンパ腫は血流速度が比較的速く、これが、効果的に抗体を送り届ける一因である。たとえば、皮下注射や筋内注射またはリンパ管のカテーテル法によるリンパ内投与経路も、リンパ腫を治療する有用な手段である。
【0083】
裸の抗CD22抗体を、20〜100mg蛋白質/投与のような低蛋白質用量で、1回または繰り返して、非経口的に投与することが好ましい。あるいは、30〜90mg蛋白質/投与、40〜80mg蛋白質/投与、または50〜70mg蛋白質/投与の用量で、裸の抗CD22抗体を投与する。
【0084】
上述の通り、本発明は、裸の抗CD22抗体成分に免疫複合体または融合蛋白質を捕捉する治療方法も考える。1つの変形で、裸の抗CD22抗体を、低用量放射標識抗CD22抗体またはフラグメントと一緒に投与する。第二の代替法として、裸の抗CD22抗体を、低用量放射標識抗CD22−サイトカイン免疫複合体と一緒に投与する。第三の代替法として、裸の抗CD22抗体を、放射標識されていない抗CD22−サイトカイン免疫複合体と一緒に投与する。131I標識免疫複合体の「低用量」に関して、好ましい投与量は15〜40mCiの範囲内であり、最も好ましい範囲は20〜30mciである。それにひきかえ、90Y標識免疫複合体の好ましい投与量は10〜30mciの範囲内であり、最も好ましい範囲は10〜20mciである。好ましい抗体成分は、ネズミLL2モノクローナル抗体、キメラLL2抗体、ヒト化LL2抗体を含む、LL2抗体由来の抗体およびフラグメントを含む。
【0085】
熱中性子活性化療法用の、ホウ素付加物−付加担体を有する免疫複合体は、通常、同様の方式で行われる。しかし、標的に向けられなかった免疫複合体が消えるまで待ってから、中性子照射を実施することが有利であろう。
【0086】
免疫複合体に結合する抗体を使用して、クリアランスを促進することができる。この一般原理に関する説明については、米国特許第4,624,846号を参照されたい。
【0087】
薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って、本発明の抗CD22抗体成分、免疫複合体および融合蛋白質を調合することができ、それによって治療用蛋白質を薬学的に許容できる担体との混合物中に配合することができる。ある組成物を投与したとき、受容患者が耐えられば、その組成物は「薬学的に許容できる担体」と言われる。滅菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容できる担体の一例である。損他の適当な担体は、当業者に周知である。たとえば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES第19版(1995)を参照されたい。
【0088】
治療のために、抗体成分(または免疫複合体/融合蛋白質)と薬学的に許容できる担体を、治療的に有効な量で、患者に投与する。投与される量が生理学的に有意な場合、抗体成分と、場合に応じて免疫複合体/融合蛋白質と、薬学的に許容できる担体との組合せは、「治療的に有効な量」で投与されると言われる。ある薬剤が存在した結果として、受容患者の生理学に検出可能な変化が生じる場合、その薬剤は生理学的に有意である。この状況で、ある薬剤が存在した結果として、標的腫瘍細胞の成長が阻止される場合、その薬剤は生理学的に有意である。
【0089】
さらなる薬学的方法を使用して、治療的適用における抗体成分、免疫複合体または融合蛋白質の作用持続期間を調節することが可能である。ポリマーを使用して抗体成分、免疫複合体または融合蛋白質を連結または吸着することにより、コントロール放出製剤を調製することができる。たとえば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)のマトリックスとステアリン酸二量体とセバシン酸とのポリ無水物コポリマーのマトリックスなどがある。SherwoodらのBio/Technology 10: 1446 (1992)を参照されたい。こようなマトリックスからの抗体成分(または免疫複合体)の放出速度は、蛋白質の分子量、マトリック内の抗体成分/免疫複合体/融合蛋白質の量、分散粒子のサイズによって異なる。SaltzmanらのBiophys. J. 55:163 (1989)、Sherwoodらの(前出)REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第19版(1995)には、その他の固体剤形について記載されている。
【0090】
本発明は、正常細胞と特に造血細胞の、放射線誘発性毒性または薬剤誘発性毒性を予防、緩和または消去するために、免疫複合体を投与する治療方法も考える。補助的免疫調節因子療法を使用すると、受容哺乳類の耐性が高くなるため、より高用量の細胞傷害性剤を投与することが可能になる。さらに、補助的免疫調節因子療法は、用量制限的骨髄毒性を予防、緩和または消去することができる。補助療法に適した免疫調節因子の例として、トロンボポイエチン、IL−1、IL−3、IL−12等々が挙げられる。補助的免疫調節因子療法の方法は、Goldenbergに与えられている米国特許第5,120,525号に開示されている。
【0091】
たとえば、リコンビナントIL−2を、ボーラスとして6×106IU/kgで静脈内投与してもよく、また、18×106IU/m2/日の用量で連続注入として投与してもよい。WeissらのJ. Clin. Oncol. 10:275 (1992)を参照されたい。あるいは、リコンビナントIL−2を、12×106IUの用量で皮下投与してもよい。VogelzangらのJ. Clin.Oncol. 11: 1809 (1993)を参照されたい。さらに、INF−γを、1.5×106Uの用量で皮下投与してもよい。LienardらのJ. Clin. Oncol. 10: 52 (1992)を参照されたい。さらに、NadeauらのJ. Pharmacol. Exp. Ther. 274: 78 (1995)には、リコンビナントIL−2(42.5μg/kg)の静脈内注射1回で、アカゲザルのIFN−γレベルが上昇することを証明している。適当なIL−2製剤としては、PROLEUKIN(Chiron Corp. /Cetus Oncology Corp, Emeryville, CA)やTECELEUKIN(Hoffmann-La Roche, Inc. Nutley, NJ)などがある。ACTIMMUNE (Genetech, Inc., South San Francisco, CA)は、適当なINF−γ製剤である。
【0092】
ここまで全般的に説明してきたが、本発明を例示するためであって、限定するためではない、以下の実施例を参照することにより、本発明をより容易に理解できるであろう。
【実施例1】
【0093】
[再発した中等度非ホジキンリンパ腫患者の治療]
中等度非ホジキンリンパ腫患者は、CHOP×6(5ヶ月間、完全寛解に導いた)、別のCHOP×6(進行した)、D−MOOP(6ヶ月間、安定した疾患)、CVBと抹消幹細胞移植(4ヶ月間、部分的寛解)からなる先の攻撃的化学療法は失敗であった患者は、胸部および頚部リンパ節に再発性リンパ腫を呈し、両者は、それぞれ、X線断層撮影および触診で測定可能である。
患者にヒト化LL2モノクローナル抗体50mgを、連続2週間の第2日、第5日、第9日、第12日に注入するが、有害作用は全く認められない。3週間後、頚部リンパ節拡張の触診は、約60%という測定可能な減少を示し、繰り返し胸部X線断層撮影は、70%という著明な腫瘍の減少を示す。治療の10週後に実施する追跡調査測定は、頚部または胸部の疾患の証拠を示さない。新しい疾患が他所で検出されないため、患者は完全寛解であると考えられる。10〜12週ごとの追跡調査で、治療後少なくとも16ヶ月間、完全寛解が確認される。
【実施例2】
【0094】
[CHOPとhLL2による拡散性(diffuse)大細胞攻撃形リンパ腫患者の治療]
ある患者が拡散性大細胞攻撃形リンパ腫を呈し、予後が悪いと診断され、腹部に大きい疾患と、多数の他のextradnodal疾患部位と、高い血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を有する。この患者をCHOPで治療し、3サイクル投与した後、腹部外の多数のextradnodal疾患部位が消散して、部分的反応が確認される。しかし、腹部の大きい疾患は体積が増えつづけ、血清LDHは高いままである。
第3サイクルのCHOを開始後間もなく、第2日、第5日、第9日、第12日に、ヒト化LL2モノクローナル抗体50mgを患者に注入する。さらに4サイクルのCHOPと同時に、このhLL2の治療方式を繰り返す。治療中に、血清LDHレベルは正常範囲内まで低下する。
CHOPとhLL2の第3サイクルの1ヶ月後に、腹部の大きい腫瘍のX線断層撮影は、塊の90%以上の縮小を示す。10〜12週ごとの追跡調査で9ヶ月以上、完全寛解が確認される。
【実施例3】
【0095】
[hLL2とhLL2−IL2による再発した攻撃形大細胞リンパ腫の治療]
B−細胞慢性大細胞攻撃形リンパ腫患者は第一線化学療法(CHOP)と第二線(m−BACOD)化学療法に応答したが、第三線化学療法(MACOP−Bは失敗である。第三線化学療法の完了後、患者は骨髄のび慢性疾患、充実性脾腫大、触診できない多数のリンパ節拡大を有する。次いで、第2日、第5日、第9日、第12日に、ヒト化LL2モノクローナル抗体50mgを患者に注入する。この治療方式を1週おきに4週間繰り返す。骨髄の疾患は次第にhLL2治療に応答し、節のサイズも減少する。しかし、多くの節が依然として触診され、脾のサイズはほとんど減少しない。
【0096】
hLL2による治療を2週ごとに続けながら、hLL2−IL2融合蛋白質10mgも患者に投与する。初回投与後、脾臓のサイズが明白に減少し、第2回hLL2/hLL2−IL2投与後、節は触診できず、脾臓はサイズがさらに減少する。6週間以上、疾患の進行がみられない。
【0097】
前述の事項は具体的な好ましい実施形態に言及しているが、本発明は、そのように限定されないことが理解されるであろう。当業者は、開示されている実施形態を様々に修飾できることとそのような修飾は、以下の請求の範囲によって規定される本発明の範囲内であることを意図することを、思い起こすであろう。
【0098】
本明細書に記載の全ての出版物と特許出願は、本発明が属する技術分野における技術の水準を示すものである。各出版物または特許出願が、ここではその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容できる担体と少なくとも1種の裸の抗CD22抗体を含む治療用組成物を、B細胞悪性疾患を有する被験者に投与するステップを含んでなるB細胞悪性疾患の治療方法。
【請求項2】
前記抗CD22抗体を、20〜100mg蛋白質/投与の投与量で非経口的に投与することを特徴とする請求項1に記載の治療方法。
【請求項3】
前記被験者が、抗CD22抗体を、20〜100mg蛋白質/投与の投与量で繰り返して非経口投与として摂取することを特徴とする請求項1に記載の治療方法。
【請求項4】
前記抗CD22抗体が、類人霊長類抗体、ネズミモノクローナル抗体、キメラ抗体とヒト化抗体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の治療方法。
【請求項5】
前記抗CD22抗体がLL2抗体であることを特徴とする請求項4に記載の治療方法。
【請求項6】
前記治療用組成物が、異なるCD22エピトープと結合する少なくとも2種のモノクローナル抗体を含み、前記CD22エピトープが、エピトープA、エピトープB、エピトープC、エピトープDとエピトープEからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の治療方法。
【請求項7】
前記B細胞悪性疾患が無痛形B細胞リンパ腫、攻撃形B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病と急性リンパ性白血病からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の治療方法。
【請求項8】
前記B細胞リンパ腫が、ノンホジキンリンパ腫であること特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療用蛋白質を投与するまたは化学療法剤による治療を行うステップをさらに含み、前記治療用蛋白質が、抗体、免疫複合体、抗体−免疫調節因子融合蛋白質と抗体−毒素融合蛋白質からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の治療方法。
【請求項10】
前記抗CD22抗体の投与前に、前記治療用蛋白質が投与されるまたは前記化学療法剤による治療が行われることを特徴とする請求項9に記載の治療方法。
【請求項11】
前記抗CD22抗体の投与と同時に、前記治療用蛋白質が投与されるまたは前記化学療法剤による治療が行われることを特徴とする請求項9に記載の治療方法。
【請求項12】
前記抗CD22抗体の投与後に、前記治療用蛋白質が投与されるまたは前記化学療法剤による治療が行われることを特徴とする請求項9に記載の治療方法。
【請求項13】
前記化学療法剤による治療が、シクロホスファミド、エトポシド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン、カルムスチン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ブレオマイシン、デキサメタゾン、フェニルブチレート、ブロスタチン−1とロイコボリンからなる群から選択される少なくとも一つの薬剤の投与を含んでなることを特徴する請求項9に記載の治療方法。
【請求項14】
前記治療用蛋白質が、裸の抗CD19抗体か裸の抗CD20のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の治療方法。
【請求項15】
前記治療用蛋白質が、放射標識された免疫複合体である、請求項9に記載の治療方法。
【請求項16】
前記放射標識された免疫複合体が、198Au、32P、125I、131I、90Y、186Re、188Re、67Cu、211Atからなる群から選択される放射性核種を含んでなることを特徴とする請求項15に記載の治療方法。
【請求項17】
前記放射標識された免疫複合体が、CD19、CD20とCD22からなる群から選択される抗原と結合する抗体または抗体フラグメントを含んでなることを特徴とする請求項16に記載の治療方法。
【請求項18】
前記放射標識された免疫複合体が、放射標識された抗CD22免疫複合体であることを特徴とする請求項17に記載の治療方法。
【請求項19】
前記放射標識された免疫複合体がサイトカイン部分をさらに含み、前記サイトカイン部分がインターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、インターフェロン−α、インターフェロン−βとインターフェロン−γからなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の治療方法。
【請求項20】
前記治療用蛋白質が、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNAアーゼI、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルス蛋白質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス(Psedomonas)外毒素とシュードモナス内毒素からなる群から選択される毒素を含んでなる免疫複合体または抗体−毒素融合蛋白質であることを特徴とする請求項9に記載の治療方法。
【請求項21】
前記免疫複合体または前記抗体−毒素融合蛋白質が、CD19、CD20とCD22からなる群から選択される抗原と結合する抗体または抗体フラグメントを含んでなることを特徴とする請求項20に記載の治療方法。
【請求項22】
前記治療用蛋白質が免疫複合体または融合蛋白質であり、前記免疫複合体または融合蛋白質が、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、インターフェロン−α、インターフェロン−βとインターフェロン−γ、顆粒球−コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子とリンフォトキシンからなる群から選択される免疫調節因子を含んでなることを特徴とする請求項9に記載の治療方法。
【請求項23】
前記免疫調節因子または前記抗体−免疫調節因子融合蛋白質が、CD19、CD20とCD22からなる群から選択される抗原と結合することを特徴とする請求項22に記載の治療方法。
【請求項24】
B細胞悪性疾患を治療する方法に使用するための医薬品の調製において少なくとも1種の裸の抗CD22抗体の使用であって、前記方法においてB細胞悪性疾患を患っている被験者に、治療的に有効な量の裸のCD22抗体を投与する使用。
【請求項25】
前記抗CD22抗体がLL2抗体であることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記治療用組成物が、異なるCD22エピトープと結合する少なくとも2種のモノクローナル抗体を含み、前記CD22エピトープが、エピトープA、エピトープB、エピトープC、エピトープDとエピトープEからなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記B細胞悪性疾患が無痛形B細胞リンパ腫、攻撃形B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病と急性リンパ性白血病からなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項28】
治療用蛋白質を投与するまたは化学療法剤による治療を行うステップをさらに含み、前記治療用蛋白質が、抗体、免疫複合体、抗体−免疫調節因子融合蛋白質と抗体−毒素融合蛋白質からなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項29】
前記治療用蛋白質が、裸の抗CD19抗体か裸の抗CD20のいずれかであることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項30】
前記治療用蛋白質が免疫複合体または融合蛋白質であり、前記免疫複合体または融合蛋白質が、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、インターフェロン−α、インターフェロン−βとインターフェロン−γ、顆粒球−コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子とリンフォトキシンからなる群から選択される免疫調節因子を含んでなることを特徴とする請求項28に記載の使用。

【公開番号】特開2010−31032(P2010−31032A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−237426(P2009−237426)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願平10−545761の分割
【原出願日】平成10年3月17日(1998.3.17)
【出願人】(599176263)イムノメディクス, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】