説明

抗Mpl抗体

抗ヒトMpl抗体を取得・精製し、遺伝子工学的手法を用いて抗ヒトMpl Diabodyおよび抗ヒトMpl sc(Fv)2を精製した。さらに抗ヒトMpl sc(Fv)2をヒト化することに成功した。 Diabodyおよびsc(Fv)2のTPO様アゴニスト活性を評価したところ、抗ヒトMpl抗体に対して、Diabodyおよびsc(Fv)2は高いアゴニスト活性を示し、天然リガンドであるhuman TPOと同等以上の活性を示すことが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗Mpl抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
トロンボポエチン(Thrombopoietin:TPO)は、血小板の前駆細胞である巨核球が、造血幹細胞から分化して血小板へと分化成熟することを促進する因子であり、血小板数の調節に主要な役割を担うサイトカインである。TPOは、353アミノ酸からなるTPO前駆体から切り出されて活性体となる。
MplはTPOの受容体であり、ヒトMpl分子は572および635アミノ酸からなる2つの型が知られている。ヒトMplの遺伝子配列は既に解析されている(非特許文献1又は、Genebank:NM_005373参照)。
サイトカイン受容体の多くは、リガンドの結合により受容体が2量体化し、シグナルが細胞内に伝達される。TPOにおいても、その特異的レセプターであるMPLと結合し、受容体を2量体化することにより、細胞内に情報を伝え、生理作用を示すことが報告されている(非特許文献2参照)。
【0003】
このような性質をもつ受容体に結合する抗体の中で、アゴニスト活性を示す抗体が存在することが報告されている。
例えば、エリスロポエチン(EPO)受容体に対する抗体がエリスロポエチン機能を代替することが報告されており、この抗体を一価(Fab)にするとEPO受容体への結合能を維持したまま、シグナル伝達能を失うことから、二価の結合によるエリスロポエチン受容体の二量体形成が必要と考えられる(非特許文献3参照)。
【0004】
又、Mplに結合し、TPOアゴニスト活性を有する抗体も報告されている(非特許文献4および5参照)。これは、MPLに関しても2価である抗体の結合によるレセプターの2量体化の誘導を示唆している。
一方で、TPOアゴニスト活性を示す一本鎖抗体(scFv)が報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、scFvがTPOアゴニスト活性を示す機序として、scFvの一部が二量体(Diabody)化し、そのDiabodyが活性本体であることが明らかになっている(特許文献2〜4参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6342220号
【特許文献2】国際公開第01/79494号
【特許文献3】国際公開第02/33072号
【特許文献4】国際公開第02/33073号
【非特許文献1】Palaciosら著、Cell、1985年、Vol.41、p.727−734
【非特許文献2】Souyriら著、Cell、1990年、Vol.63、p.1137−1147
【非特許文献3】Elliott Sら著、J.Biol.Chem.,1996年、Vol.271(40)、p.24691−24697
【非特許文献4】Abeら著、Immunol.Lett.1998年、Vol.61、p.73−78
【非特許文献5】Bijia Dengら著、Blood、1998年、Vol.92、p.1981−1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みて為されたものであり、その目的はTPOアゴニスト活性を有する新規な抗Mpl抗体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行なった。本発明者らは、抗ヒトMpl抗体VB22Bを取得・精製し、遺伝子工学的手法を用いて一本鎖抗体の発現系を構築した。具体的には、まず抗ヒトMpl抗体の可変領域をクローニングし、抗ヒトMpl抗体Diabody発現ベクターpCXND3−VB22B dbを作製した。さらに該ベクターpCXND3−VB22B dbを用いて、抗ヒトMpl抗体sc(Fv)2発現ベクターpCXND3−VB22B sc(Fv)2を作製した。この発現ベクターpCXND3−VB22B sc(Fv)2をCHO−DG44細胞で発現させ、培養上清から抗ヒトMpl sc(Fv)2を精製した。なお対照として、上記ベクターpCXND3−VB22B dbをCOS7細胞で一過性発現させ、培養上清よりVB22B Diabodyを精製した。
【0008】
また、VB22B DiabodyおよびVB22B sc(Fv)2のTPO様アゴニスト活性を評価したところ、VB22B IgGに対して、VB22B DiabodyおよびVB22B sc(Fv)2は高いアゴニスト活性を示し、天然リガンドであるhuman TPOと同等以上の活性を示すことが分かった。
また、本発明者らは5種類のヒト化VB22B sc(Fv)2を作製することに成功した。また、ヒト化することによるTPO様アゴニスト活性の変化は見られないことが分かった。
【0009】
本発明はより具体的には、以下の〔1〕〜〔38〕を提供するものである。
〔1〕2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域を含み、TPO受容体(Mpl)への結合活性を有する一本鎖ポリペプチドであることを特徴とする抗体。
〔2〕2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域が、一本鎖ポリペプチドのN末端側を基点として重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖可変領域の順に並んでいることを特徴とする、〔1〕に記載の抗体。
〔3〕2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域がリンカーで結合されていることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の抗体。
〔4〕リンカーが15アミノ酸であることを特徴とする、〔3〕に記載の抗体。
〔5〕Mplに結合するキメラ抗体。
〔6〕ヒト化抗体である、〔5〕に記載の抗体。
〔7〕低分子化抗体である、〔5〕または〔6〕に記載の抗体。
〔8〕可溶型Mplに結合する抗体。
〔9〕ヒトMpl及びサルMplに結合する抗体。
〔10〕ヒトMpl及びサルMplに対してアゴニスト活性を有する抗体。
〔11〕可溶型Mplへの結合活性がKD=10−6M以下である抗体。
〔12〕可溶型Mplへの結合活性がKD=10−7M以下である抗体。
〔13〕TPOアゴニスト活性がEC50=100nM以下である抗体。
〔14〕TPOアゴニスト活性がEC50=30nM以下である抗体。
〔15〕TPOアゴニスト活性がEC50=10nM以下である抗体。
〔16〕以下の(1)〜(17)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:3、4、5
(2)配列番号:6、7、8
(3)配列番号:9、10、11
(4)配列番号:15、16、17
(5)配列番号:18、19、20
(6)配列番号:21、22、23
(7)配列番号:24、25、26
(8)配列番号:27、28、29
(9)配列番号:30、31、32
(10)配列番号:33、34、35
(11)配列番号:36、37、38
(12)配列番号:39、40、41
(13)配列番号:42、43、44
(14)配列番号:48、49、50
(15)配列番号:51、52、53
(16)配列番号:54、55、56
(17)配列番号:57、58、59
〔17〕以下の(1)〜(10)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:60、61、62
(2)配列番号:63、64、65
(3)配列番号:78、79、80
(4)配列番号:84、85、86
(5)配列番号:93、94、95
(6)配列番号:96、97、98
(7)配列番号:102、103、104
(8)配列番号:108、109、110
(9)配列番号:111、112、113
(10)配列番号:114、115、116
〔18〕以下の(1)〜(18)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:3、4、5に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:60、61、62に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:6、7、8に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:9、10、11に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:15、16、17に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:18、19、20に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(6)配列番号:21、22、23に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:78、79、80に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(7)配列番号:24、25、26に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(8)配列番号:27、28、29に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:84、85、86に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(9)配列番号:30、31、32に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(10)配列番号:33、34、35に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(11)配列番号:36、37、38に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:93、94、95に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(12)配列番号:39、40、41に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:96、97、98に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(13)配列番号:42、43、44に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:78、79、80に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(14)配列番号:45、46、47に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:102、103、104に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(15)配列番号:48、49、50に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(16)配列番号:51、52、53に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:108、109、110に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(17)配列番号:54、55、56に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:111、112、113に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(18)配列番号:57、58、59に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:114、115、116に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
〔19〕配列番号:118に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体。
〔20〕配列番号:120に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
〔21〕配列番号:118に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号:120に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
〔22〕配列番号:122または264に記載のアミノ酸配列を有する抗体。
〔23〕以下の(1)〜(5)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:230、232、234、236
(2)配列番号:265、267、269、271
(3)配列番号:279、281、283、285
(4)配列番号:298、299、300、301
(5)配列番号:298、299、306、301
〔24〕以下の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:239、241、243、245(2)配列番号:272、274、276、278
(3)配列番号:302、303、304、305
(4)配列番号:302、307、308、305
〔25〕以下の(1)〜(5)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:230、232、234、236に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:239、241、243、245に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:265、267、269、271に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:279、281、283、285に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:298、299、300、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:302、303、304、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:298、299、306、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:302、307、308、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
〔26〕配列番号:229、256、262、289または295に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体。
〔27〕配列番号:238、258、291または297に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
〔28〕以下の(1)〜(5)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:229に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:238に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:256に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:258に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:262に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:258に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:289に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:291に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:295に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:297に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
〔29〕配列番号:2、254、260、287または293に記載のアミノ酸配列を有する抗体。
〔30〕〔16〕〜〔29〕のいずれかに記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入され、かつ〔16〕〜〔29〕のいずれかに記載の抗体と同等の活性を有する抗体。
〔31〕〔16〕〜〔30〕のいずれかに記載の抗体が認識するエピトープを認識する抗体。
〔32〕ヒトMplの26番目から274番目のアミノ酸部位を認識する抗体。
〔33〕TPOアゴニスト活性を有する、〔1〕〜〔32〕のいずれかに記載の抗体。
〔34〕〔1〕〜〔33〕のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
〔35〕〔34〕に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ〔1〕〜〔33〕のいずれかに記載の抗体と同等の活性を有する抗体をコードするポリヌクレオチド。
〔36〕〔34〕または〔35〕に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
〔37〕〔34〕または〔35〕に記載のポリヌクレオチドまたは〔36〕に記載のベクターを保持する宿主細胞。
〔38〕〔1〕〜〔33〕のいずれかに記載の抗体を含有する、医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[図1]図1は、一本鎖抗体sc(Fv)2の作製過程を示す図である。
[図2]図2は、Mpl発現CHO細胞株を用いたVB22B sc(Fv)2の結合活性評価の結果を示すグラフである。VB22B sc(Fv)2精製品を使用した。
[図3]図3は、BaF3−human Mplを用いたVB22B抗体のアゴニスト活性評価の結果を示すグラフである。
[図4]図4は、BaF3−monkey Mplを用いたVB22B抗体のアゴニスト活性評価の結果を示すグラフである。
[図5]図5は、M−07eを用いたVB22B抗体のアゴニスト活性評価の結果を示すグラフである。
[図6]図6は、低分子化により高いアゴニスト活性を示す抗ヒトMpl抗体のアミノ酸配列(H鎖)を示す図である。
[図7]図7は、低分子化により高いアゴニスト活性を示す抗ヒトMpl抗体のアミノ酸配列(L鎖)を示す図である。
[図8]図8は、Mpl発現CHO細胞株を用いたAB317 Diabodyの結合活性評価の結果を示すグラフである。VB22B Diabody(実線)、AB317 Diabody(破線)ともにCOS7培養上清を使用した。
[図9]図9は、BaF3−human Mplを用いたAB324 DiabodyおよびAB317 Diabodyのアゴニスト活性評価の結果を示すグラフである。
[図10]図10は、BaF3−monkey Mplを用いたAB324 DiabodyおよびAB317 Diabodyのアゴニスト活性評価の結果を示すグラフである。
[図11]図11は、BaF3−mouse Mplを用いたAB324 DiabodyおよびAB317 Diabodyのアゴニスト活性評価の結果を示すグラフである。
[図12]図12は、BaF3−human Mpl細胞におけるDiabodyのアゴニスト活性を示す図である。縦軸は、O.D.450/655nmを示し、横軸は濃度を示す。
[図13]図13は、BaF3−human Mpl(G305C)細胞におけるDiabodyのアゴニスト活性を示す図である。縦軸は、O.D.450/655nmを示し、横軸は濃度を示す。
[図14]図14は、BaF3−human Mpl細胞におけるTA136 db、TA136 sc(Fv)2のアゴニスト活性を示す図である。縦軸はO.D.450/655nmを示し、横軸は濃度を示す。
[図15]図15は、BaF3−human Mpl(G305C)細胞におけるTA136 db、TA136 sc(Fv)2のアゴニスト活性を示す図である。縦軸はO.D.450/655nmを示し、横軸は濃度を示す。
[図16]図16は、BaF3−human Mpl(C769T)細胞におけるTA136 db、TA136 sc(Fv)2のアゴニスト活性を示す図である。縦軸はO.D.450/655nmを示し、横軸は濃度を示す。
[図17]図17は、BaF3−human Mpl(C823A)細胞におけるTA136 db、TA136 sc(Fv)2のアゴニスト活性を示す図である。縦軸はO.D.450/655nmを示し、横軸は濃度を示す。
[図18]図18は、ヒト化重鎖配列(hVB22B p−z、hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4およびhVB22B q−wz5:VH)およびヒト化軽鎖配列(hVB22B p−z、hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4およびhVB22B q−wz5:VL)、ならびにFRおよびCDRの対応について示す図である。
[図19]図19は、マウス型VB22B sc(Fv)2およびhVB22B e sc(Fv)2、hVB22B g−esc(FV)2を用いて、BaF3−human MplでのTPO様アゴニスト活性を評価した結果を示す図である。縦軸は吸光度(450nm/655nm)を示し、横軸は濃度を示す。
[図20]図20は、マウス型VB22B sc(Fv)2およびhVB22B p−zsc(Fv)2、hVB22B u2−wz4 sc(Fv)2を用いて、BaF3−human MplでのTPO様アゴニスト活性を評価した結果をに示す図である。縦軸は吸光度(450nm/655nm)を示し、横軸は濃度を示す。
[図21]図21は、マウス型VB22B sc(Fv)2およびhVB22B q−wz5 sc(Fv)2を用いて、BaF3−human MplでのTPO様アゴニスト活性を評価した結果を示す図である。縦軸は吸光度(450nm/655nm)を示し、横軸は濃度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、TPO受容体(Mpl)に結合する抗体を提供する。
本発明の抗体には、低分子化された抗体、ヒト化抗体やキメラ化抗体などのアミノ酸配列が改変された抗体、他の分子(例えば、ポリエチレングリコールなどの高分子等)が結合した修飾抗体、糖鎖が改変された抗体、など如何なる抗体も含まれる。
【0012】
本発明のMplは、変異受容体であっても構わない。本発明において変異受容体とは、通常、50%未満の頻度で存在する受容体であり、好ましくは20%未満の頻度で存在する受容体であり、さらに好ましくは10%未満の頻度で存在する受容体であり、特に好ましくは1%未満の頻度で存在する受容体である。頻度は通常、任意に抽出された被験者において計算された頻度が用いられるが、国や地域、性別などにより頻度に偏りがある場合もあるので、例えば、日本、アメリカ、欧州などのように国や地域を限定して頻度を算出したり、性別を限定して頻度を算出するなどしてもよい。又、1つの受容体について変異が複数個所に存在する場合には、複数の個所を組み合わせて頻度を算出してもよいし、1つの変異個所に絞って頻度を算出してもよい。変異受容体の判断は上述のように頻度で行うことが好ましいが、例えば、シグナル伝達能力等で変異受容体の判断を行うことも可能である。具体的には、例えば、2つの異なる受容体が存在する場合、天然リガンドが結合した際にシグナル伝達が強い方を非変異受容体とし、シグナル伝達が弱い方を変異受容体としてもよい。
【0013】
本発明の変異受容体の一つの態様としては、疾患の発症と関連している受容体を挙げることができる。変異受容体が疾患の発症と関連するとは、天然のリガンドに対する反応性が失われることが一因となり、疾患の発症が誘発されることをいう。本発明においては、変異受容体は疾患の発症の一因を担っていればよく、変異受容体が疾患の発症の全ての原因である必要はない。現在までに変異受容体と疾患の発症の関連については多くの報告があるが、既に報告されている関連以外にも、変異受容体が疾患の発症と関連するか否かは統計的解析方法(例えば、相関解析など)により確認することも可能である。相関解析はケースコントロール研究とも言われ、当業者によく知られた解析方法である(例えば、西村泰治:多型の統計学的用法、最新医学46:909−923,(1991)、Oka A et al.,Hum.Mol.Genetecs 8,2165−2170(1990)、Ota M et al.,Am.J.Hum.Genet.64,1406−1410(1999)、Ozawa A et al.,Tissue Antigens 53,263−268(1999)など)。例えば、患者と健常者で変異受容体の頻度を測定し、患者において有意に変異受容体の頻度が上昇しているか否かを調べることにより、変異受容体と疾患の間の相関を調べることができる。通常、頻度の違いは、χ検定で検討され、χはχ=Σ(観察値−期待値)/期待値で得られる。得られたχからp値を得ることができる。変異受容体と疾患が相関しているか否かはp値から判定することができ、例えば、p<0.05の場合、変異受容体と疾患が相関していると判定することができる。トロンボポイエチン(TPO)受容体の変異受容体は既に報告されている(Matthias Ballmaier et al.,BLOOD、(2001)、Vol.97、No.1、P139、など)。
【0014】
本発明の抗体は、Mplに対してアゴニスト活性を有することが好ましい。
本発明の好ましい態様の一つとして、低分子化抗体が挙げられる。
低分子化抗体は、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)の一部分が欠損している抗体断片を含み、抗原への結合能を有していれば特に限定されない。本発明における低分子化抗体は、whole抗体と比較して、高い活性を有する。本発明の抗体断片は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)又は/及び軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましい。VHまたはVLのアミノ酸配列は、置換、欠失、付加及び/又は挿入がされていてもよい。さらに抗原への結合能を有する限り、VH又は/及びVLの一部を欠損させてもよい。又、可変領域はキメラ化やヒト化されていてもよい。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなどを挙げることができる。また、低分子化抗体の具体例としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv(single chain Fv)、Diabody、sc(Fv)2(single chain(Fv)2)などを挙げることができる。
【0015】
ここで、「Fv」断片は最小の抗体断片であり、完全な抗原認識部位と結合部位を含む。「Fv」断片は1つのVHおよびVLが非共有結合により強く連結されたダイマー(VH−VLダイマー)である。各可変領域の3つの相補鎖決定領域(complementarity determining region;CDR)が相互作用し、VH−VLダイマーの表面に抗原結合部位を形成する。6つのCDRが抗体に抗原結合部位を付与している。しかしながら、1つの可変領域(または、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりも親和性は低いが、抗原を認識し、結合する能力を有する。
【0016】
scFvには、抗体のVHおよびVLが含まれ、これらの領域は単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、FvポリペプチドはさらにVHおよびVLの間にポリペプチドリンカーを含んでおり、これによりscFvは、抗原結合のために必要な構造を形成することができる(scFvの総説については、Pluckthun『The Pharmacology of Monoclonal Antibodies』Vol.113(Rosenburg and Moore ed(Springer Verlag,New York)pp.269−315,1994)を参照)。本発明におけるリンカーは、その両端に連結された抗体可変領域の発現を阻害するものでなければ特に限定されない。
【0017】
Diabodyは、遺伝子融合により構築された二価(bivalent)の抗体断片を指す(Holliger P et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)、EP404,097号、WO93/11161号等)。Diabodyは、2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーであり、通常、ポリペプチド鎖は各々、同じ鎖中でVL及びVHが、互いに結合できない位に短い、例えば、5残基程度のリンカーにより結合されている。同一ポリペプチド鎖上にコードされるVLとVHとは、その間のリンカーが短いため単鎖可変領域フラグメントを形成することが出来ず二量体を形成するため、Diabodyは2つの抗原結合部位を有することとなる。
【0018】
sc(Fv)2は、2つのVH及び2つのVLをリンカー等で結合して一本鎖にした低分子化抗体である(Hudson et al、J Immunol.Methods 1999;231:177−189)。sc(Fv)2は、全長抗体や他の低分子化抗体と比較して、特に高いアゴニスト活性を示す。sc(Fv)2は、例えば、scFvをリンカーで結ぶことによって作製できる。
また2つのVH及び2つのVLが、一本鎖ポリペプチドのN末端側を基点としてVH、VL、VH、VL([VH]リンカー[VL]リンカー[VH]リンカー[VL])の順に並んでいることを特徴とする抗体が好ましい。
【0019】
2つのVHと2つのVLの順序は特に上記配置に限定されず、どのような順序で並べられていてもよい。例えば以下のような、配置も挙げることができる。
[VL]リンカー[VH]リンカー[VH]リンカー[VL]
[VH]リンカー[VL]リンカー[VL]リンカー[VH]
[VH]リンカー[VH]リンカー[VL]リンカー[VL]
[VL]リンカー[VL]リンカー[VH]リンカー[VH]
[VL]リンカー[VH]リンカー[VL]リンカー[VH]
【0020】
抗体の可変領域を結合するリンカーとしては、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカー(例えば、Protein Engineering,9(3),299−305,1996参照)に開示されるリンカー等を用いることができるが、本発明においてはペプチドリンカーが好ましい。ペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能であるが、通常、1〜100アミノ酸、好ましくは3〜50アミノ酸、更に好ましくは5〜30アミノ酸、特に好ましくは12〜18アミノ酸(例えば、15アミノ酸)である。
【0021】
例えば、ペプチドリンカーの場合:
Ser
Gly・Ser
Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly
(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser)n
(Ser・Gly・Gly・Gly・Gly)n
[nは1以上の整数である]等を挙げることができる。但し、ペプチドリンカーの長さや配列は目的に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0022】
よって本発明において特に好ましいsc(Fv)2の態様としては、例えば、以下のsc(Fv)2を挙げることができる。
[VH]ペプチドリンカー(15アミノ酸)[VL]ペプチドリンカー(15アミノ酸)[VH]ペプチドリンカー(15アミノ酸)[VL]
【0023】
合成化学物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドの架橋に通常用いられている架橋剤、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ−EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ−DST)、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、ビス[2−(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ−BSOCOES)などであり、これらの架橋剤は市販されている。
【0024】
4つの抗体可変領域を結合する場合には、通常、3つのリンカーが必要となるが、全て同じリンカーを用いてもよいし、異なるリンカーを用いてもよい。本発明において好ましい低分子化抗体はDiabody又はsc(Fv)2であり、特に好ましくはsc(Fv)2である。このような低分子化抗体を得るには、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンなどで処理し、抗体断片を生成させるか、又はこれら抗体断片をコードするDNAを構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976;Better,M.and Horwitz,A.H.,Methods Enzymol.(1989)178,476−496;Pluckthun,A.and Skerra,A.,Methods Enzymol.(1989)178,497−515;Lamoyi,E.,Methods Enzymol.(1986)121,652−663;Rousseaux,J.et al.,Methods Enzymol.(1986)121,663−669;Bird,R.E.and Walker,B.W.,Trends Biotechnol.(1991)9,132−137参照)。
【0025】
全長抗体を低分子化、特にsc(Fv)2にすることにより、非常に高いアゴニスト活性を有する抗体を作製することが可能である。
本発明における抗体の好ましい態様の一つとして、Mplに結合するキメラ抗体又はヒト化抗体等の改変抗体を挙げることができる。これらの改変抗体は既知の方法を用いて製造することができる。
【0026】
キメラ抗体は、異なる動物由来の配列を組み合わせて作製される抗体であり、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体などである。キメラ抗体の作製は公知の方法を用いて行うことができ、例えば、抗体V領域をコードするDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとを連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。
【0027】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576号公報参照)。
【0028】
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
【0029】
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.etal.,CancerRes.(1993)53,851−856)。
【0030】
キメラ抗体及びヒト型化抗体の定常領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体定常領域を修飾してもよい。
【0031】
一般的に、キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域および定常領域とからなる。
なお、キメラ抗体やヒト化抗体を作製した後に、可変領域(例えば、FR)や定常領域中のアミノ酸を他のアミノ酸で置換等してもよい。
【0032】
キメラ抗体における可変領域、又はヒト化抗体におけるCDRの由来は特に限定されず、どのような動物由来でもよい。例えば、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ラクダ抗体などの配列を用いることが可能である。
抗体のキメラ化やヒト化において、通常、由来となった抗体のアゴニスト活性を維持したままキメラ化やヒト化を行うことは困難であるが、本発明においては、マウス抗体と同等のアゴニスト活性を有するヒト化抗体の取得に成功した。
【0033】
本発明において好ましいヒト化抗体は、配列番号:229(ヒト化重鎖配列:hVB22B p−z VH)、配列番号:256(ヒト化重鎖配列:hVB22B g−e VH)、配列番号:262(ヒト化重鎖配列:hVB22B e VH)、配列番号:289(ヒト化重鎖配列:hVB22B u2−wz4 VH)あるいは配列番号:295(ヒト化重鎖配列:hVB22B q−wz5 VH)に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有する抗体、又は配列番号:238(ヒト化軽鎖配列:hVB22B p−z VL)、配列番号:258(ヒト化軽鎖配列:hVB22B g−e VLあるいはhVB22B e VL)、配列番号:291(ヒト化軽鎖配列:hVB22B u2−wz4 VL)あるいは配列番号:297(ヒト化軽鎖配列:hVB22B q−wz5 VL)に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体であり、特に好ましくは以下の(1)〜(5)のいずれかに記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体である。
(1)配列番号:229に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号:238に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:256に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号:258に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:262に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号:258に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:289に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号:291に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:295に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号:297に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
【0034】
そのような抗体の例としては、配列番号:2、254、260、287または293(ヒト化sc(Fv)2配列(hVB22B p−z sc(Fv)2、hVB22B g−e sc(Fv)2、hVB22B e sc(Fv)2、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5)に記載のアミノ酸配列を有する抗体を挙げることができる。
hVB22B p−z VHの塩基配列を配列番号:228、hVB22B g−e VHの塩基配列を配列番号:255、hVB22B e VHの塩基配列を配列番号:261、hVB22B u2−wz4 VHの塩基配列を配列番号:288、hVB22B q−wz5 VHの塩基配列を配列番号:294、hVB22B p−z VLの塩基配列を配列番号:237、hVB22B g−e VLおよびhVB22B e VLの塩基配列を配列番号:257、hVB22B u2−wz4 VLの塩基配列を配列番号:290、hVB22B q−wz5 VLの塩基配列を配列番号:296に記載する。
【0035】
配列番号:229(ヒト化重鎖配列:hVB22B p−z VH)、配列番号:256(ヒト化重鎖配列:hVB22B g−e VH)、配列番号:262(ヒト化重鎖配列:hVB22B e VH)、配列番号:289(ヒト化重鎖配列:hVB22B u2−wz4 VH)または配列番号:295(ヒト化重鎖配列:hVB22B q−wz5 VH)に記載のアミノ酸配列において、
アミノ酸番号:31〜35がCDR1、
アミノ酸番号:50〜66がCDR2、
アミノ酸番号:99〜107がCDR3、
アミノ酸番号:1〜30がFR1、
アミノ酸番号:36〜49がFR2、
アミノ酸番号:67〜98がFR3、
アミノ酸番号:108〜118がFR4に相当する。
【0036】
又、配列番号:238(ヒト化軽鎖配列:hVB22B p−z VL)、配列番号:258(ヒト化軽鎖配列:hVB22B g−e VLまたはhVB22B e VL)、配列番号:291(ヒト化軽鎖配列:hVB22B u2−wz4 VL)または配列番号:297(ヒト化軽鎖配列:hVB22B q−wz5 VL)に記載のアミノ酸配列において、
アミノ酸番号:24〜39がCDR1、
アミノ酸番号:55〜61がCDR2、
アミノ酸番号:94〜102がCDR3、
アミノ酸番号:1〜23がFR1、
アミノ酸番号:40〜54がFR2、
アミノ酸番号:62〜93がFR3、
アミノ酸番号:103〜112がFR4に相当する。
【0037】
本発明において、hVB22B p−z VH配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B p−z VH:FR1/配列番号:230
hVB22B p−z VH:CDR1/配列番号:36
hVB22B p−z VH:FR2/配列番号:232
hVB22B p−z VH:CDR2/配列番号:37
hVB22B p−z VH:FR3/配列番号:234
hVB22B p−z VH:CDR3/配列番号:38
hVB22B p−z VH:FR4/配列番号:236
【0038】
本発明において、hVB22B p−z VL配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B p−z VL:FR1/配列番号:239
hVB22B p−z VL:CDR1/配列番号:93
hVB22B p−z VL:FR2/配列番号:241
hVB22B p−z VL:CDR2/配列番号:94
hVB22B p−z VL:FR3/配列番号:243
hVB22B p−z VL:CDR3/配列番号:95
hVB22B p−z VL:FR4/配列番号:245
【0039】
本発明において、hVB22B g−e VH配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B g−e VH:FR1/配列番号:265
hVB22B g−e VH:CDR1/配列番号:36
hVB22B g−e VH:FR2/配列番号:267
hVB22B g−e VH:CDR2/配列番号:37
hVB22B g−e VH:FR3/配列番号:269
hVB22B g−e VH:CDR3/配列番号:38
hVB22B g−e VH:FR4/配列番号:271
【0040】
本発明において、hVB22B g−e VL配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B g−e VL:FR1/配列番号:272
hVB22B g−e VL:CDR1/配列番号:93
hVB22B g−e VL:FR2/配列番号:274
hVB22B g−e VL:CDR2/配列番号:94
hVB22B g−e VL:FR3/配列番号:276
hVB22B g−e VL:CDR3/配列番号:95
hVB22B g−e VL:FR4/配列番号:278
【0041】
本発明において、hVB22B e VH配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B e VH:FR1/配列番号:279
hVB22B e VH:CDR1/配列番号:36
hVB22B e VH:FR2/配列番号:281
hVB22B e VH:CDR2/配列番号:37
hVB22B e VH:FR3/配列番号:283
hVB22B e VH:CDR3/配列番号:38
hVB22B e VH:FR4/配列番号:285
【0042】
本発明において、hVB22B e VL配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B e VL:FR1/配列番号:272
hVB22B e VL:CDR1/配列番号:93
hVB22B e VL:FR2/配列番号:274
hVB22B e VL:CDR2/配列番号:94
hVB22B e VL:FR3/配列番号:276
hVB22B e VL:CDR3/配列番号:95
hVB22B e VL:FR4/配列番号:278
【0043】
本発明において、hVB22B u2−wz4 VH配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B u2−wz4 VH:FR1/配列番号:298
hVB22B u2−wz4 VH:CDR1/配列番号:36
hVB22B u2−wz4 VH:FR2/配列番号:299
hVB22B u2−wz4 VH:CDR2/配列番号:37
hVB22B u2−wz4 VH:FR3/配列番号:300
hVB22B u2−wz4 VH:CDR3/配列番号:38
hVB22B u2−wz4 VH:FR4/配列番号:301
【0044】
本発明において、hVB22B u2−wz4 VL配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B u2−wz4 VL:FR1/配列番号:302
hVB22B u2−wz4 VL:CDR1/配列番号:93
hVB22B u2−wz4 VL:FR2/配列番号:303
hVB22B u2−wz4 VL:CDR2/配列番号:94
hVB22B u2−wz4 VL:FR3/配列番号:304
hVB22B u2−wz4 VL:CDR3/配列番号:95
hVB22B u2−wz4 VL:FR4/配列番号:305
【0045】
本発明において、hVB22B q−wz5 VH配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B q−wz5 VH:FR1/配列番号:298
hVB22B q−wz5 VH:CDR1/配列番号:36
hVB22B q−wz5 VH:FR2/配列番号:299
hVB22B q−wz5 VH:CDR2/配列番号:37
hVB22B q−wz5 VH:FR3/配列番号:306
hVB22B q−wz5 VH:CDR3/配列番号:38
hVB22B q−wz5 VH:FR4/配列番号:301
【0046】
本発明において、hVB22B q−wz5 VL配列におけるCDRおよびFRと配列番号との対応は以下の通りである。
hVB22B q−wz5 VL:FR1/配列番号:302
hVB22B q−wz5 VL:CDR1/配列番号:93
hVB22B q−wz5 VL:FR2/配列番号:307
hVB22B q−wz5 VL:CDR2/配列番号:94
hVB22B q−wz5 VL:FR3/配列番号:308
hVB22B q−wz5 VL:CDR3/配列番号:95
hVB22B q−wz5 VL:FR4/配列番号:305
【0047】
なお、hVB22B p−z配列、hVB22B g−e配列、hVB22B e配列、hVB22B u2−wz4配列、およびhVB22B q−wz5配列におけるCDRおよびFRの対応を、図18に示した。
【0048】
従って本発明において、その他の好ましいヒト化抗体の態様は、以下の(1)〜(5)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域を有するヒト化抗体、
(1)配列番号:230、232、234、236(hVB22B p−z:H鎖FR1、2、3、4)
(2)配列番号:265、267、269、271(hVB22B g−e:H鎖FR1、2、3、4)
(3)配列番号:279、281、283、285(hVB22B e:H鎖FR1、2、3、4)
(4)配列番号:298、299、300、301(hVB22B u2−wz4:H鎖FR1、2、3、4)
(5)配列番号:298、299、306、301(hVB22B q−wz5:H鎖FR1、2、3、4)
以下の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域をを有するヒト化抗体、
(1)配列番号:239、241、243、245(hVB22B p−z:L鎖FR1、2、3、4)
(2)配列番号:272、274、276、278(hVB22B g−eまたはhVB22B e:L鎖FR1、2、3、4)
(3)配列番号:302、303、304、305(hVB22B u2−wz4:L鎖FR1、2、3、4)
(4)配列番号:302、307、308、305(hVB22B q−wz5:L鎖FR1、2、3、4)
以下の配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域を有するヒト化抗体
配列番号:36、37、38(hVB22B p−z、hVB22B g−e hVB22B e、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5:H鎖CDR1、2、3)
又は
以下の配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域を有するヒト化抗体
配列番号:93、94、95(hVB22B p−z hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5:L鎖CDR1、2、3)
である。
【0049】
さらに他の好ましい態様は、以下の(1)〜(5)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有するヒト化抗体、
(1)配列番号:230、232、234、236に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:239、241、243、245に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:265、267、269、271に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:279、281、283、285に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:298、299、300、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:302、303、304、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:298、299、306、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:302、307、308、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域、又は
以下に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有するヒト化抗体
配列番号:36、37、38に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:93、94、95に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
である。
【0050】
キメラ抗体やヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下しているため、治療目的などでヒトに投与する場合に有用と考えられる。
本発明における抗体の好ましい態様の一つとして、可溶型Mplに結合する抗体を挙げることができる。ここでいう可溶型Mplとは、細胞膜上に発現しているMpl以外のMplのことをいう。可溶型Mplの具体的な例としては、膜貫通領域の一部又は全部が欠損しているMplを挙げることができる。ヒトMplの場合、膜貫通領域は配列番号:123において492番目のアミノ酸〜513番目のアミノ酸の部分が相当する。
【0051】
可溶型組換えMplに結合する抗体は、エピトープの詳細な解析や結合における反応速度論的解析に利用できるだけでなく、in vivo試験における血中濃度や体内動態を評価することにも有用である
【0052】
本発明における抗体の好ましい態様の一つとして、ヒトMplとサルMplの両方に対して結合活性を有する抗体を挙げることができる。また本発明は、ヒトMpl及びサルMplに対してアゴニスト活性を有する抗体を提供する。ヒトMplとサルMplの両方に対してアゴニスト活性を有する抗体は、通常、ヒトにおいて測定することが困難な体内動態やin vivoでの効果を、サルを用いて検証できることから、非常に有用であると考えられる。
【0053】
これらの抗体は、さらに、ヒト及びサル以外の動物(例えば、マウスなど)のMplに対して、結合活性やアゴニスト活性を有していてもよい。
【0054】
さらに本発明の抗体には、TPOアゴニスト活性(Mplに対するアゴニスト活性)がEC50=100nM以下、好ましくはEC50=30nM以下、さらに好ましくはEC50=10nM以下である抗体が含まれる。
【0055】
アゴニスト活性の測定方法は、当業者に公知の方法により行うことが可能であり、例えば、後述する方法により行うことが可能である。
ヒトMpl(Palaciosら、Cell 1985;41:727−734、GenBank#NM_005373)、カニクイザルMpl(塩基配列を配列番号:164、アミノ酸配列を配列番号:165に記載)、マウスMpl(GenBank#NM_010823)の配列は既に公知である。
さらに本発明は可溶型Mplへの結合活性がKD=10−6M以下、好ましくはKD=10−7M以下の抗体を含む。
【0056】
本発明において、可溶型組換えMplへの結合活性がKD=10−6M以下の抗体であるか否かは、当業者に公知の手段を使用して測定することができる。例えば、Biacoreを用いた表面プラズモン共鳴を利用して測定することが可能である。すなわちSensor Chip上に可溶型MPL−Fc蛋白質、可溶型Mpl蛋白質、または抗体が認識するエピトープペプチドなどを固定させ、抗体とそれらのタンパク質又はペプチドの相互作用を測定値から反応速度定数として算出することができる。Chip上に固定するタンパク質としては特に限定されないが、例えば、実施例記載のMG10(Gln213からAla231)−GST融合蛋白質、Mpl−IgG Fc融合蛋白質などを用いることができる。二つの抗原結合部位を有する二価抗体であるため、その結合活性は、一価での値として、二価での値として、又は一価と二価が混合した状態での値として算出することができるが、本発明においてはそのいずれの値でもよい。
また、結合活性の評価には、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、被験抗体が結合する抗原をコーティングしたプレートに、被験抗体を含む試料、例えば、被験抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
【0057】
結合活性の上限は特に限定されないが、例えば、当業者が技術的に作製可能な範囲の上限を設定することができる。しかしながら、技術的に作製可能な範囲は、技術の進歩により拡大される。
【0058】
本発明における抗体の好ましい態様の一つとして、以下の(I)〜(XII)のいずれかに記載の抗体が認識するエピトープを認識する抗体を挙げることができる。(I)〜(XII)のいずれかに記載の抗体は好ましくは低分子化抗体である。
【0059】
(I)
以下の(1)〜(17)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有するVHを含む抗体(カッコの中に各抗体の名称および該抗体中のH鎖CDRを示す)。
(1)配列番号:3、4、5(VA7:H鎖CDR1、2、3)
(2)配列番号:6、7、8(VA130またはVB17B:H鎖CDR1、2、3)
(3)配列番号:9、10、11(VA259:H鎖CDR1、2、3)
(4)配列番号:15、16、17(VB12B:H鎖CDR1、2、3)
(5)配列番号:18、19、20(VB140:H鎖CDR1、2、3)
(6)配列番号:21、22、23(VB33:H鎖CDR1、2、3)
(7)配列番号:24、25、26(VB45B:H鎖CDR1、2、3)
(8)配列番号:27、28、29(VB8B:H鎖CDR1、2、3)
(9)配列番号:30、31、32(VB115:H鎖CDR1、2、3)
(10)配列番号:33、34、35(VB14B:H鎖CDR1、2、3)
(11)配列番号:36、37、38(VB22B、VB4B、hVB22B p−z、hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5:H鎖CDR1、2、3)
(12)配列番号:39、40、41(VB16:H鎖CDR1、2、3)
(13)配列番号:42、43、44(VB157:H鎖CDR1、2、3)
(14)配列番号:48、49、50(VB51:H鎖CDR1、2、3)
(15)配列番号:51、52、53(AB317:H鎖CDR1、2、3)
(16)配列番号:54、55、56(AB324:H鎖CDR1、2、3)
(17)配列番号:57、58、59(TA136:H鎖CDR1、2、3)
【0060】
(II)
以下の(1)〜(10)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有するVLを含む抗体(カッコの中に各抗体の名称および該抗体中のL鎖CDRを示す)。
(1)配列番号:60、61、62(VA7:L鎖CDR1、2、3)
(2)配列番号:63、64、65(VA130、VA259、VB17B、VB12B、VB140、VB45B、VB115、VB14BまたはB51:L鎖CDR1、2、3)
(3)配列番号:78、79、80(VB33またはVB157:L鎖CDR1、2、3)
(4)配列番号:84、85、86(VB8B:L鎖CDR1、2、3)
(5)配列番号:93、94、95(VB22B、hVB22B p−z、hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5:L鎖CDR1、2、3)
(6)配列番号:96、97、98(VB16:L鎖CDR1、2、3)
(7)配列番号:102、103、104(VB4B:L鎖CDR1、2、3)
(8)配列番号:108、109、110(AB317:L鎖CDR1、2、3)
(9)配列番号:111、112、113(AB324:L鎖CDR1、2、3)
(10)配列番号:114、115、116(TA136:L鎖CDR1、2、3)
【0061】
(III)
以下の(1)〜(24)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるVHを含む抗体。
(1)配列番号:124(VA7:VH)
(2)配列番号:126(VA130:VH)
(3)配列番号:128(VA259:VH)
(4)配列番号:130(VB17B:VH)
(5)配列番号:132(VB12B:VH)
(6)配列番号:134(VB140:VH)
(7)配列番号:136(VB33:VH)
(8)配列番号:138(VB45B:VH)
(9)配列番号:140(VB8B:VH)
(10)配列番号:142(VB115:VH)
(11)配列番号:144(VB14B:VH)
(12)配列番号:118(VB22B:VH)
(13)配列番号:146(VB16:VH)
(14)配列番号:148(VB157:VH)
(15)配列番号:150(VB4B:VH)
(16)配列番号:152(VB51:VH)
(17)配列番号:155(AB317:VH)
(18)配列番号:159(AB324:VH)
(19)配列番号:162(TA136:VH)
(20)配列番号:229(hVB22B p−z:VH)
(21)配列番号:256(hVB22B g−e:VH)
(22)配列番号:262(hVB22B e:VH)
(23)配列番号:289(hVB22B u2−wz4:VH)
(24)配列番号:295(hVB22B q−wz5:VH)
【0062】
(IV)
以下の(1)〜(18)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるVLを含む抗体。
(1)配列番号:125(VA7:VL)
(2)配列番号:127(VA130、VB17B、VB12B、VB115またはVB14B:VL)
(3)配列番号:129(VA259:VL)
(4)配列番号:135(VB140またはVB45B:VL)
(5)配列番号:137(VB33:VL)
(6)配列番号:141(VB8B:VL)
(7)配列番号:120(VB22B:VL)
(8)配列番号:147(VB16:VL)
(9)配列番号:149(VB157:VL)
(10)配列番号:151(VB4B:VL)
(11)配列番号:153(VB51:VL)
(12)配列番号:157(AB317:VL)
(13)配列番号:161(AB324:VL)
(14)配列番号:163(TA136:VL)
(15)配列番号:238(hVB22B p−z:VL)
(16)配列番号:258(hVB22B g−e:VLまたはhVB22B e:VL)
(17)配列番号:291(hVB22B u2−wz4:VL)
(18)配列番号:297(hVB22B q−wz5:VL)
【0063】
(V)
以下の(1)〜(18)のいずれかに記載のVHおよびVLを含む抗体。
(1)配列番号:3、4、5(VA7:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:60、61、62(VA7:L鎖CDR1、2、3)
(2)配列番号:6、7、8(VA130またはVB17B:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:63、64、65(VA130またはVB17B:L鎖CDR1、2、3)
(3)配列番号:9、10、11(VA259:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:66、67、68(VA259:L鎖CDR1、2、3)
(4)配列番号:15、16、17(VB12B:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:72、73、74(VB12B:L鎖CDR1、2、3)
(5)配列番号:18、19、20(VB140:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:75、76、77(VB140:L鎖CDR1、2、3)
(6)配列番号:21、22、23(VB33:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:78、79、80(VB33:L鎖CDR1、2、3)
(7)配列番号:24、25、26(VB45B:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:81、82、83(VB45B:L鎖CDR1、2、3)
(8)配列番号:27、28、29(VB8B:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:84、85、86(VB8B:L鎖CDR1、2、3)
(9)配列番号:30、31、32(VB115:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:87、88、89(VB115:L鎖CDR1、2、3)
(10)配列番号:33、34、35(VB14B:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:90、91、92(VB14B:L鎖CDR1、2、3)
(11)配列番号:36、37、38(VB22B、hVB22B p−z、hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:93、94、95(VB22B、hVB22B p−z、hVB22B g−e、hVB22B e、hVB22B u2−wz4またはhVB22B q−wz5:L鎖CDR1、2、3)
(12)配列番号:39、40、41(VB16:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:96、97、98(VB16:L鎖CDR1、2、3)
(13)配列番号:42、43、44(VB157:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:99、100、101(VB157:L鎖CDR1、2、3)
(14)配列番号:45、46、47(VB4B:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:102、103、104(VB4B:L鎖CDR1、2、3)
(15)配列番号:48、49、50(VB51:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:105、106、107(VB51:L鎖CDR1、2、3)
(16)配列番号:51、52、53(AB317:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:108、109、110(AB317:L鎖CDR1、2、3)
(17)配列番号:54、55、56(AB324:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:111、112、113(AB324:L鎖CDR1、2、3)
(18)配列番号:57、58、59(TA136:H鎖CDR1、2、3)、配列番号:114、115、116(TA136:L鎖CDR1、2、3)
【0064】
(VI)
以下の(1)〜(24)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるVHおよびVLを含む抗体。
(1)配列番号:124(VA7:VH)、配列番号:125(VA7:VL)
(2)配列番号:126(VA130:VH)、配列番号:127(VA130:VL)
(3)配列番号:128(VA259:VH)、配列番号:129(VA259:VL)
(4)配列番号:130(VB17B:VH)、配列番号:127(VB17B:VL)
(5)配列番号:132(VB12B:VH)、配列番号:127(VB12B:VL)
(6)配列番号:134(VB140:VH)、配列番号:135(VB140:VL)
(7)配列番号:136(VB33:VH)、配列番号:137(VB33:VL)
(8)配列番号:138(VB45B:VH)、配列番号:135(VB45B:VL)
(9)配列番号:140(VB8B:VH)、配列番号:141(VB8B:VL)
(10)配列番号:142(VB115:VH)、配列番号:127(VB115:VL)
(11)配列番号:144(VB14B:VH)、配列番号:127(VB14B:VL)
(12)配列番号:118(VB22B:VH)、配列番号:120(VB22B:VL)
(13)配列番号:146(VB16:VH)、配列番号:147(VB16:VL)
(14)配列番号:148(VB157:VH)、配列番号:149(VB157:VL)
(15)配列番号:150(VB4B:VH)、配列番号:151(VB4B:VL)
(16)配列番号:152(VB51:VH)、配列番号:153(VB51:VL)
(17)配列番号:155(AB317:VH)、配列番号:157(AB317:VL)
(18)配列番号:159(AB324:VH)、配列番号:161(AB324:VL)
(19)配列番号:162(TA136:VH)、配列番号:163(TA136:VL)
(20)配列番号:229(hVB22B p−z:VH)、配列番号:238(hVB22B p−z:VL)
(21)配列番号:256(hVB22B g−e:VH)、配列番号:258(hVB22B g−e:VL)
(22)配列番号:262(hVB22B e:VH)、配列番号:258(hVB22B e:VL)
(23)配列番号:289(hVB22B u2−wz4:VH)、配列番号:291(hVB22B u2−wz4:VL)
(24)配列番号:295(hVB22B q−wz5:VH)、配列番号:297(hVB22B q−wz5:VL)
【0065】
(VII)
配列番号:122に記載のアミノ酸配列からなる抗体(VB22B:scFv)。
【0066】
(VIII)
配列番号:2(hVB22B p−z:sc(Fv)2)、配列番号:254(hVB22B g−e:sc(Fv)2)、配列番号:260(hVB22B e:sc(Fv)2)、配列番号:287(hVB22B u2−wz4:sc(Fv)2)、または配列番号:293(hVB22B q−wz5:sc(Fv)2)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるヒト化抗体。
【0067】
(IX)
有するVHを含む抗体。
(1)配列番号:230、232、234、236(hVB22B p−z:H鎖FR1、2、3、4)
(2)配列番号:265、267、269、271(hVB22B g−e:H鎖FR1、2、3、4)
(3)配列番号:279、281、283、285(hVB22B e:H鎖FR1、2、3、4)
(4)配列番号:298、299、300、301(hVB22B u2−wz4:H鎖FR1、2、3、4)
(5)配列番号:298、299、306、301(hVB22B q−wz5:H鎖FR1、2、3、4)
(X)
【0068】
以下の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVLを含む抗体。
(1)配列番号:239、241、243、245(hVB22B p−z:L鎖FR1、2、3、4)
(2)配列番号:272、274、276、278(hVB22B g−eまたはhVB22B e:L鎖FR1、2、3、4)
(3)配列番号:302、303、304、305(hVB22B u2−wz4:L鎖FR1、2、3、4)
(4)配列番号:302、307、308、305(hVB22B q−wz5:L鎖FR1、2、3、4)
(XI)
【0069】
以下の(1)〜(5)のいずれかに記載のVHおよびVLを含む抗体。
(1)配列番号:230、232、234、236に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVH、および配列番号:239、241、243、245に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVL
(2)配列番号:265、267、269、271に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVH、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVL
(3)配列番号:279、281、283、285に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVH、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVL
(4)配列番号:298、299、300、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVH、および配列番号:302、303、304、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVL
(5)配列番号:298、299、306、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVH、および配列番号:302、307、308、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有するVL
【0070】
(XII)
配列番号:264に記載のアミノ酸配列からなる抗体(VB22B:sc(Fv)2)。
【0071】
上記(I)〜(XII)のいずれかに記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入され、かつ(I)〜(XII)のいずれかに記載の抗体と同等の活性を有する抗体。
ここで「機能的に同等」とは、対象となる抗体が本発明の抗体と同様の生物学的あるいは生化学的活性を有することを指す。このような活性としては、例えば、結合活性あるいはアゴニスト活性を例示することができる。
【0072】
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh,T.et al.(1995)Gene 152,271−275、Zoller,MJ,and Smith,M.(1983)Methods Enzymol.100,468−500、Kramer,W.et al.(1984)Nucleic Acids Res.12,9441−9456、Kramer W,and Fritz HJ(1987)Methods.Enzymol.154,350−367、Kunkel,TA(1985)Proc Natl Acad Sci USA.82,488−492、Kunkel(1988)Methods Enzymol.85,2763−2766)などを用いて、本発明の抗体に適宜変異を導入することにより、該抗体と機能的に同等な抗体を調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように、本発明の抗体のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列を有し、該抗体と機能的に同等な抗体もまた本発明の抗体に含まれる。このような変異体における、変異数は、活性が保持されている限り、特に制限されない。変異するアミノ酸数は、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内)であると考えられる。さらに、変異部位は、活性が保持されている限り、特に制限されない。
【0073】
アミノ酸変異は、1または複数のアミノ酸残基(好ましくは非必須アミノ酸残基)に生じうる。ここで、「非必須アミノ酸残基」とは、生物学的な活性を変化させずに、タンパク質の野生型アミノ酸配列から変化可能なアミノ酸残基であるが、「必須アミノ酸残基」とは、生物学的な活性に必要なアミノ酸残基である。アミノ酸は、好ましくは、アミノ酸側鎖の性質の保存を可能にする異なるアミノ酸に置換される。よって、本願において「保存的アミノ酸置換」とは、下記のグループの1つに属するアミノ酸残基を、化学的に同様な側鎖を有する同じグループに属する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本願分野でよく知られている。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
【0074】
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark,D.F.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1984)81,5662−5666、Zoller,M.J.& Smith,M.Nucleic Acids Research(1982)10,6487−6500、Wang,A.et al.,Science 224,1431−1433、Dalbadie−McFarland,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1982)79,6409−6413)。
【0075】
本発明の抗体のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加された抗体には、これら抗体を含む融合タンパク質が含まれる。融合タンパク質は、これら抗体と他のペプチド又はタンパク質とが融合したものであり、本発明に含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと他のペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の抗体との融合に付される他のペプチド又はポリペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp,T.P.et al.,BioTechnology(1988)6,1204−1210)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc−mycの断片、VSV−GPの断片、p18HIVの断片、T7−tag、HSV−tag、E−tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α−tubulinの断片、B−tag、Protein Cの断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の抗体との融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
【0076】
本発明の抗体は、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られた抗体が、本発明の抗体と同等の機能を有している限り、本発明に含まれる。例えば、本発明の抗体を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明の抗体はこのような抗体も包含する。
【0077】
上記(I)〜(XII)のいずれかの抗体が認識するエピトープを認識する抗体は、高いアゴニスト活性を有すると考えられる。(I)〜(XII)のいずれかの抗体が認識するエピトープを認識する抗体は当業者に公知の方法により得ることが可能である。例えば、(I)〜(XII)のいずれかの抗体が認識するエピトープを通常の方法により決定し、該エピトープに含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを免疫原として抗体を作製する方法や、通常の方法で作製された抗体のエピトープを決定し、(I)〜(XII)のいずれかの抗体とエピトープが同じ抗体を選択する方法などにより得ることができる。
【0078】
本発明においては、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する抗体が認識するエピトープを認識する抗体が特に好ましい。配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する抗体は、ヒトMplの26番目のGluから274番目のLeuまでの領域、好ましくは189番目のAlaから245番目のGlyの領域、さらに好ましくは213番目のGlnから231番目のAlaまでの領域を認識していると予想される。従って、ヒトMplの26番目〜274番目、あるいは189番目〜245番目、あるいは213番目〜231番目の領域を認識する抗体も本発明に含まれる。
【0079】
ヒトMplのアミノ酸配列(配列番号:123)の26番目〜274番目、あるいは189番目〜245番目、あるいは213番目〜231番目の領域を認識する抗体は、当業者に公知の方法により得ることが可能であり、例えば、ヒトMplのアミノ酸配列(配列番号:123)の26番目〜274番目、あるいは189番目〜245番目、あるいは213番目〜231番目のペプチドを免疫原として抗体を作製する方法や、通常の方法で作製した抗体が認識するエピトープを決定し、本発明の抗体と同じエピトープを認識する抗体を選択する方法などにより得ることが可能である。
【0080】
本発明は、上記(I)〜(XII)に記載の抗体を提供する。本発明の好ましい態様の一つとして、上記(V)に記載の抗体を挙げることができる。より好ましくは(VI)、さらに好ましくは(VIII)の抗体を挙げることができる。
【0081】
また本発明は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本発明の抗体と同等の活性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードする限り、特に限定されず、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体である。天然以外の塩基を含んでいてよい。本発明のポリヌクレオチドは、抗体を遺伝子工学的な手法により発現させる際に使用することができる。また本発明の抗体と同等な機能を有する抗体をスクリーニングする際に、プローブとして用いることもできる。即ち本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド、またはその一部をプローブとして用い、ハイブリダイゼーション、遺伝子増幅技術(例えばPCR)等の技術により、該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本発明の抗体と同等の活性を有する抗体をコードするDNAを得ることができる。このようなDNAも本発明のポリヌクレオチドに含まれる。ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.,9.47−9.58,Cold Spring Harbor Lab.press,1989)は当業者によく知られた技術である。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSC及び0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するポリヌクレオチドが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0082】
これらハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術により得られるポリヌクレオチドがコードする、本発明の抗体と機能的に同等な抗体は、通常、これら抗体とアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明の抗体には、本発明の抗体と機能的に同等であり、かつ該抗体のアミノ酸配列と高い相同性を有する抗体も含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上の同一性を指す。ポリペプチドの相同性を決定するには、文献(Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983)80,726−730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
【0083】
本発明のベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)などで大量に増幅させ大量調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すれば特に制限はない。ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR−Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM−T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。
【0084】
本発明のベクターとしては、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1−Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら,Nature(1989)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)、araBプロモーター(Betterら,Science(1988)240,1041−1043)、またはT7プロモーターなどを持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX−5X−1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
【0085】
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。蛋白質分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379)を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
【0086】
大腸菌以外にも、例えば、本発明のベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(インビトロゲン社製)や、pEGF−BOS(Nucleic Acids.Res.1990,18(17),p5322)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac−to−BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11、SP−Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
【0087】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら,Nature(1979)277,108)、MMTV−LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら,Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。
【0088】
さらに、遺伝子を安定的に発現させ、かつ、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を目的とする場合には、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pCHOIなど)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられ、また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0089】
本方法においては次いで、該ベクターを宿主細胞に導入する。ベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。宿主細胞は、例えば、本発明の抗体の製造や発現のための産生系として使用することができる。ポリペプチド製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0090】
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、CHO(J.Exp.Med.(1995)108,945)、COS、3T3、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle,et al.,Nature(1981)291,358−340)、あるいは昆虫細胞、例えば、Sf9、Sf21、Tn5が知られている。本発明においては、CHO−DG44、CHO−DXB11、COS7細胞、BHK細胞が好適に用いられる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、エレクトロポーレーション法、リポフェクションなどの方法で行うことが可能である。
【0091】
植物細胞としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が蛋白質生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。
【0092】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、例えば、JM109、DH5α、HB101等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
【0093】
本方法においては次いで上記宿主細胞を培養する。目的とするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞をin vitroで培養することにより、抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行うことができる。例えば、動物細胞の培養液として、例えば、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、FBS、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは、約6〜8であるのが好ましい。培養は、通常、約30〜40℃で約15〜200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、攪拌を加える。
【0094】
一方、in vivoでポリペプチドを産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物又は植物に目的とするポリヌクレオチドを導入し、動物又は植物の体内でポリペプチドを産生させ、回収する。
本発明における「宿主」とは、これらの動物、植物を包含する。
【0095】
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser,SPECTRUM Biotechnology Applications,1993)。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
例えば、目的とするポリヌクレオチドを、ヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生されるポリペプチドをコードする遺伝子との融合遺伝子として調製する。次いで、この融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギヘ移植する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から、目的の抗体を得ることができる。トランスジェニックヤギから産生される抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
【0096】
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の抗体をコードするポリヌクレオチドを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させることにより、このカイコの体液から目的の抗体を得ることができる(Susumu,M.et al.,Nature(1985)315,592−594)。
【0097】
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とする抗体をコードするポリヌクレオチドを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得ることができる(Julian K.−C.Ma et al.,Eur.J.Immunol.(1994)24,131−138)。
【0098】
これにより得られた抗体は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一な抗体として精製することができる。抗体の分離、精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればポリペプチドを分離、精製することができる。本明細書において、あるポリペプチドに関して「実質的に純粋」であるとは、そのポリペプチドが、その他の天然の高分子、培地(組み換え技術によって生産する場合)、または化学前駆物質(化学的に合成する場合)のような不純物を実質的に含まないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で、少なくとも75%、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85、90、95、または99%純粋である。純度は、任意の適当な標準的な方法、例えばクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳導、またはHPLC分析などで測定できる。
【0099】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual.Ed Daniel R.Marshak et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAを用いたカラムとして、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(Pharmacia)等が挙げられる。
【0100】
なお、抗体の精製前又は精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼなどが用いられる。
【0101】
Mplに結合する抗体は当業者に公知の方法により作成することができる。
例えば、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、Mplタンパク質又はMpl発現細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0102】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるMplタンパク質を、Genebank:NM_005373に開示されたMpl遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。すなわち、Mplをコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトMplタンパク質を公知の方法で精製する。
【0103】
次に、この精製Mplタンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、Mplの部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒトMplのアミノ酸配列より化学合成により得ることも可能である。
本発明の抗MPL抗体の認識するMpl分子上のエピトープは特定のものに限定されず、Mpl分子上に存在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよい。従って、本発明の抗Mpl抗体を作製するための抗原は、Mpl分子上に存在するエピトープを含む断片ならば、如何なる断片も用いることが可能である。
【0104】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
【0105】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
【0106】
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0107】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、FO(deSt.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
【0108】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0109】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0110】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000−6000程度)を通常30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
【0111】
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
【0112】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでMplに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、Mplへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるMplを投与して抗Mpl抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からMplに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO94/25585号公報、WO93/12227号公報、WO92/03918号公報、WO94/02602号公報参照)。
【0113】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0114】
抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型の抗体を作製することも可能である(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775,1990参照)。
【0115】
具体的には、抗Mpl抗体を産生するハイブリドーマから、抗Mpl抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0116】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002、Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
【0117】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗Mpl抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
【0118】
本発明で使用される抗Mpl抗体を製造するには、通常、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
【0119】
抗体遺伝子の発現は、H鎖またはL鎖をコードするポリヌクレオチドを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするポリヌクレオチドを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO94/11523号公報参照)。
【0120】
アゴニスト活性とは、受容体などの抗原に抗体が結合することにより、細胞内にシグナルが伝達される等して、何らかの生理的活性の変化を誘導する活性である。生理的活性としては、例えば、増殖誘導活性、増殖活性、生存活性、分化誘導活性、分化活性、転写活性、膜輸送活性、結合活性、蛋白質分解活性、リン酸化/脱リン酸化活性、酸化還元活性、転移活性、核酸分解活性、脱水活性、細胞死誘導活性、アポトーシス誘導活性、などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0121】
一般的に、Mplに対するアゴニスト活性とは、巨核球又はその親細胞である造血幹細胞から血小板へと分化することを促進する活性、又は血小板を増殖させる活性である。
アゴニスト活性の測定は当業者に公知の方法により行うことが可能である。又、アゴニスト活性の測定は、本来の活性を指標に測定するだけでなく、他の活性を指標に測定することも可能である。
【0122】
例えば、実施例に記載のように細胞増殖を指標にアゴニスト活性を測定する方法により判定することが可能である。より具体的には、アゴニスト依存性増殖を示す細胞にアゴニスト活性を測定したい抗体を添加し、培養する。その後、WST−8のような生細胞数に応じて特定の波長において発色反応を呈する試薬を添加して吸光度を測定し、得られた吸光度を指標にアゴニスト活性を測定することが可能である。
【0123】
アゴニスト依存性増殖を示す細胞も当業者に公知の方法により作製することが可能であり、例えば、抗原が細胞増殖シグナルを発する受容体である場合には、該受容体を発現している細胞を用いればよい。又、抗原が細胞増殖シグナルを出さない受容体である場合には、細胞増殖シグナルを発する受容体の細胞内領域と、細胞増殖シグナルを出さない受容体の細胞外領域からなるキメラ受容体を作製し、該キメラ受容体を細胞で発現させればよい。細胞増殖シグナルを発する受容体の例としては、例えば、G−CSF受容体、mpl、neu、GM−CSF受容体、EPO受容体、c−kit、FLT−3等を挙げることができる。受容体を発現させる細胞としては、例えば、BaF3、NFS60、FDCP−1、FDCP−2、CTLL−2、DA−1、KT−3等を挙げることができる。
【0124】
その他、アゴニスト活性を測定する為に用いる検出指標としては、量的及び/又は質的な変化が測定可能である限り使用することができる。例えば、無細胞系(cell free assay)の指標、細胞系(cell−based assay)の指標、組織系の指標、生体系の指標を用いることができる。無細胞系の指標としては、酵素反応やタンパク質、DNA、RNAの量的及び/又は質的な変化を用いることができる。酵素反応としては、例えば、アミノ酸転移反応、糖転移反応、脱水反応、脱水素反応、基質切断反応等を用いることができる。また、タンパク質のリン酸化、脱リン酸化、二量化、多量化、分解、乖離等や、DNA、RNAの増幅、切断、伸長を用いることができる。例えばシグナル伝達経路の下流に存在するタンパク質のリン酸化を検出指標とすることができる。細胞系の指標としては、細胞の表現型の変化、例えば、産生物質の量的及び/又は質的変化、増殖活性の変化、細胞数の変化、形態の変化、特性の変化等を用いることができる。産生物質としては、分泌タンパク質、表面抗原、細胞内タンパク質、mRNA等を用いることができる。形態の変化としては、突起形成及び/又は突起の数の変化、偏平度の変化、伸長度/縦横比の変化、細胞の大きさの変化、内部構造の変化、細胞集団としての異形性/均一性、細胞密度の変化等を用いることができる。これらの形態の変化は検鏡下での観察で確認することができる。特性の変化としては、足場依存性、サイトカイン依存応答性、ホルモン依存性、薬剤耐性、細胞運動性、細胞遊走活性、拍動性、細胞内物質の変化等を用いることができる。細胞運動性としては、細胞浸潤活性、細胞遊走活性がある。また、細胞内物質の変化としては例えば、酵素活性、mRNA量、Ca2+やcAMP等の細胞内情報伝達物質量、細胞内タンパク質量等を用いることができる。また、細胞膜受容体の場合には、受容体の刺激によって誘導される細胞の増殖活性の変化を指標とすることができる。組織系の指標としては、使用する組織に応じた機能変化を検出指標とすることができる。生体系の指標としては組織重量変化、血液系の変化、例えば血球細胞数の変化、タンパク質量や、酵素活性、電解質量の変化、また、循環器系の変化、例えば、血圧、心拍数の変化等を用いることができる。
【0125】
これらの検出指標を測定する方法としては、特に制限はなく、吸光、発光、発色、蛍光、放射活性、蛍光偏光度、表面プラズモン共鳴シグナル、時間分解蛍光度、質量、吸収スペクトル、光散乱、蛍光共鳴エネルギー移動、等を用いることができる。これらの測定方法は当業者にとっては周知であり、目的に応じて、適宜選択することができる。例えば、吸収スペクトルは一般的に用いられるフォトメータやプレートリーダ等、発光はルミノメータ等、蛍光はフルオロメータ等で測定することができる。質量は質量分析計を用いて測定することができる。放射活性は、放射線の種類に応じてガンマカウンターなどの測定機器を用いて、蛍光偏光度はBEACON(宝酒造)、表面プラズモン共鳴シグナルはBiacore、時間分解蛍光、蛍光共鳴エネルギー移動などはARVOなどにより測定できる。さらに、フローサイトメータなども測定に用いることができる。これらの測定方法は、一つの測定方法で2種以上の検出指標を測定しても良く、簡便であれば、2種以上の測定を同時及び/又は連続して測定することによりさらに多数の検出指標を測定することも可能である。例えば、蛍光と蛍光共鳴エネルギー移動を同時にフルオロメータで測定することができる。
【0126】
また本発明は、本発明の抗体を含有する医薬組成物を提供する。本発明の抗体を含有する医薬組成物は血小板減少症などの治療および/または予防に有用である。また、血小板成分献血後に、本抗体を投与することにより、血小板数の正常値への回復の期間の短縮させたり、また本抗体の事前投与により、採血時の血小板成分量を増加させるために使用することができる。
【0127】
本発明の抗体を医薬組成物として用いる場合には、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0128】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。
【0129】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0130】
投与は好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与することができる。
【0131】
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。抗体または抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
さらに本発明は、本発明の抗体を用いることにより、Mplを発現する細胞にシグナルを誘起する方法に関する。具体的には、本発明の抗体をMplを発現する細胞に接触させることにより、該細胞にシグナルを誘起する方法に関する。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1]抗ヒトMpl抗体の作製
1.1 Mpl発現BaF3細胞株の樹立
TPO依存増殖性細胞株を得るために、全長Mpl遺伝子を発現するBaF3細胞株の樹立を行った。
全長ヒトMpl cDNA(Palaciosら、Cell 1985;41:727−734)(GenBank#NM_005373)をPCRにより増幅し、pCHOI(Hirataら、FEBS Letter 1994;356:244−248)のDHFR遺伝子発現部位を除去し、HEF−VH−gγ1(Satoら、Mol Immunol.1994;31:371−381)のNeomycin耐性遺伝子発現部位を挿入した発現ベクターpCOS2にクローニングし、pCOS2−hMplfullを構築した。
また、カニクイザル骨髄細胞から抽出したTotal RNAからSMART RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社製)を用いて、カニクイザルMpl cDNA(配列番号:164)をクローニングした。得られたカニクイザルcDNAをpCOS2に挿入し、pCOS2−monkeyMplfullを構築した。
さらに、全長マウスMpl cDNA(GenBank#NM_010823)をPCRにより増幅し、pCOS2に挿入し、pCOS2−mouseMplfullを構築した。
【0133】
作製した各ベクター(20μg)をPBSに懸濁したBaF3細胞(1x10cells/mL)に混合し、Gene Pulserキュベットに加え、Gene Pulser II(Bio−Rad社製)を用いて0.33kV,950μFDの容量でパルスを加えた。エレクトロポーレーション処理により遺伝子導入したBaF3細胞を1ng/mLマウスインターロイキン3(以下、mIL−3、Peprotech社製)、500μg/mL Geneticin(Invitrogen社製)、10%FBS(Invitrogen社製)を含むRPMI1640培地(Invitrogen社製)に加えて選抜し、ヒトMpl発現BaF3細胞株(以下、BaF3−human Mpl)、サルMpl発現BaF3細胞株(以下、BaF3−monkey Mpl)およびマウスMpl発現BaF3細胞株(以下、BaF3−mouse Mpl)を樹立した。選抜後は、1ng/mL rhTPO(R&D社製)、10%FBSを含むRPMI1640培地を用いて培養、維持した。
【0134】
1.2 Mpl発現CHO細胞株の樹立
Flow Cytometryを用いた結合活性評価用の細胞株を得るために、全長Mpl遺伝子を発現するCHO細胞株の樹立を行った。
はじめに、pCXN2(Niwaら、Gene 1991;108:193−199)のHindIII部位にpCHOIのDHFR遺伝子発現部位を挿入して、発現ベクターpCXND3を作製した。
pCOS2−hMplfull、pCOS2−monkeyMplfullおよびpCOS2−mouseMplfullを鋳型にして、His−tag配列を含むプライマーを用いてPCRにより増幅した各Mpl遺伝子をpCXND3にクローニングし、pCXND3−hMpl−His、pCXND3−monkey Mpl−HisおよびpCXND3−mouse Mpl−Hisを構築した。
【0135】
作製した各ベクター(25μg)をPBSに懸濁したCHO−DG44細胞(1x10cells/mL)に混合し、Gene Pulserキュベットに加え、Gene Pulser II(Bio−Rad社製)を用いて1.5kV,25μFDの容量でパルスを加えた。エレクトロポーレーション処理により遺伝子導入したCHO細胞を500μg/mL Geneticin、1xHT(Invitrogen社製)を含むCHO−S−SFMII培地(Invitrogen社製)に加えて選抜し、ヒトMpl発現CHO細胞株(以下、CHO−human Mpl)およびサルMpl発現CHO細胞株(以下、CHO−monkey Mpl)およびマウスMpl発現CHO細胞株(以下、CHO−mouse Mpl)を樹立した。
【0136】
1.3 可溶型ヒトMplタンパク質の調製
可溶型ヒトMplタンパク質を調製するため、昆虫細胞Sf9細胞で分泌産生する発現系を以下のように構築した。
ヒトMplの細胞外領域(Gln26からTrp491)の下流にFLAGタグを付加した遺伝子を作製し、pBACSurf−1 Transfer Plasmid(Novagen社製)のPstI−SmaI部位に挿入し、pBACSurf1−hMpl−FLAGを作製した。続いて、Bac−N−Blue Transfection Kit(Invitrogen)を用いて、4μgのpBACSurf1−hMpl−FLAGをSf9細胞に導入した。培養3日後に培養上清を回収し、プラークアッセイにより組換えウイルスを単離した。ウイルスストックを調製後にSf9細胞に感染させて培養上清を回収した。
【0137】
得られた培養上清を用いて、以下のように可溶型ヒトMplタンパク質を精製した。培養上清をQ Sepharose Fast Flow(Amersham Biosciences社製)に吸着させた後に、50mM Na−Phosphate Buffer,0.01%(v/v)Tween20,500mM NaCl(pH7.2)を用いて溶出した。溶出液をFLAG M2−Agarose(SIGMA−ALDRICH社製)に吸着させた後に、100mM Glycine−HCl,0.01%(v/v)Tween20(pH3.5)を用いて溶出した。溶出後、直ちに1M Tris−Cl(pH8.0)により中和し、PD−10 column(Amersham Biosciences社製)を用いて、PBS(−),0.01%(v/v)Tween20に置換を行った。精製した可溶型Mplタンパク質をshMpl−FLAGと称する。
【0138】
1.4 ヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質の調製
ヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質遺伝子は、Bennettらの方法(Bennettら、J.Biol.Chem.1991;266:23060−23067)に従って作製した。ヒトMplの細胞外領域(Gln26からTrp491)をコードする塩基配列をヒトIgG−γ1のFc領域(Asp216よりの下流の領域)をコードする塩基配列に連結し、連結部にFusion LinkerとしてBstEII配列(アミノ酸Val−Thr)を付加した。シグナル配列は、ヒトIgG H鎖可変領域のシグナルペプチド19アミノ酸を使用した。得られたヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質遺伝子をpCXND3にクローニングし、pCXND3−hMpl−Fcを構築した。
作製したベクター(25μg)をPBSに懸濁したCHO−DG44細胞(1x10cells/mL)に混合し、Gene Pulserキュベットに加え、Gene Pulser II(Bio−Rad社製)を用いて1.5kV,25μFDの容量でパルスを加えた。エレクトロポーレーション処理により遺伝子導入したCHO細胞を500μg/mL Geneticin、1xHTを含むCHO−S−SFMII培地に加えて選抜し、shMPL−Fc発現CHO細胞株(CHO−hMpl−Fc)を樹立した。
【0139】
得られた培養上清を用いて、以下のようにヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質を精製した。
培養上清をQ Sepharose Fast Flow(Amersham Biosciences社製)に吸着させた後に、50mM Na−Phosphate Buffer,0.01%(v/v)Tween20,1M NaCl(pH7.6)を用いて溶出した。溶出液をHiTrap proteinG HPカラム(Amersham Biosciences社製)に吸着させた後に、0.1M Glycine−HCl,150mM NaCl,0.01%(v/v)Tween20(pH2.7)を用いて溶出した。溶出後、直ちに1M Tris−Cl(pH8.0)により中和し、PD−10 column(Amersham Biosciences社製)を用いて、PBS(−),0.01%(v/v)Tween20に置換を行った。精製した可溶型Mplタンパク質をhMpl−Fcと称する。
【0140】
1.5 shMpl−FLAGまたはBaF3−human Mplの免疫およびハイブリドーマの選抜
MRL/MpJUmmCrj−lpr/lprマウス(以下、MRL/lprマウス、日本チャールス・リバーより購入)を用いて、8週齢より免疫を開始した。初回免疫は100μg/匹のshMPL−FLAGにフロイント完全アジュバント(H37 Ra、ベクトン・ディッキンソン社製)を加え、エマルジョン化したものを皮下に投与した。追加免疫は50μg/匹のshMPL−FLAGにフロイント不完全アジュバント(ベクトン・ディッキンソン社製)を加え、エマルジョン化したものを皮下に投与した。合計6回免疫を行ったマウス3匹に対し、50μg/匹のshMPL−FLAGを尾静脈内投与することにより最終免疫を行った。マウスミエローマ細胞P3−X63Ag8U1(P3U1、ATCCより購入)とマウス脾臓細胞を混合し、Polyethylene Glycol 1500(Roche Diagnostics社製)を加えながら混合することにより細胞融合を行った。翌日よりHAT培地を用いて選抜を行い、培養上清を用いてshMpl−FLAGまたはhMpl−Fcを固相化したイムノプレートを用いたELISAおよびBaF3−human Mplを用いた細胞増殖活性を指標としたスクリーニングを実施した。また、BaF3−human MplをBalb/Cマウスに1.0x10細胞ずつ1週間から5ヶ月の間隔で腹腔内投与し、合計11回免疫した。同様に細胞融合によりハイブリドーマを作製し、BaF3−human Mplを用いた細胞増殖活性を指標としたスクリーニングを実施した。陽性クローンについて、限界希釈法によりモノクローン化した後に、拡大培養を行い、培養上清を回収した。
【0141】
1.6 抗ヒトMpl抗体の解析
抗体濃度はヤギ抗マウスIgG(gamma)(ZYMED社製)とアルカリフォスファターゼ−ヤギ抗マウスIgG(gamma)(ZYMED社製)を用いたマウスIgGサンドイッチELISAを行い、Isotypeの等しい市販抗体をスタンダードにして、GraphPad Prism(GraphPad Software,USA)を用いて検量線を作成し、抗体濃度の換算を行った。
抗体のアイソタイプは、アイソタイプ特異的な二次抗体を用いた抗原依存的ELISAにて決定した。hMpl−Fcを1μg/mLとなるようにcoating buffer(0.1mM NaHCO(pH9.6),0.02%(w/v)NaN)で希釈したものを加え、4℃にて一晩反応し、コーティングした。Diluent buffer(50mM Tris−HCl(pH8.1),1mM MgCl,150mM NaCl,0.05%(v/v)Tween20,0.02%(w/v)NaN,1%(w/v)BSA)にてブロッキング処理を行った後、ハイブリドーマの培養上清を加え、室温で1時間放置した。Rinse buffer(0.05%(v/v)Tween20,PBS)にて洗浄した後、Alkaline phosphatase標識したアイソタイプ特異的二次抗体を加え、室温で1時間放置した。発色はSIGMA104(SIGMA−ALDRICH社製)を1mg/mLとなるようにSubstrate Buffer(50mM NaHCO(pH9.8),10mM MgCl)に希釈したものを用い、405nmの吸光度をBenchmark Plus(Bio−Rad社製)にて測定した。
【0142】
shMpl−FLAGおよびhMPL−Fcに対する結合活性は、ELISAにより評価した。精製したshMpl−FLAGおよびhMPL−Fcを1μg/mLになるようにコーティングし、Diluent bufferにてブロッキング処理を行った。ハイブリドーマの培養上清を加え、室温で1時間放置した後、Alkaline Phosphatase標識した抗マウスIgG抗体(Zymed社製)を加え、上記方法と同様に発色を行った。室温で1時間発色させた後に405nmの吸光度を測定し、GraphPad Prismを用いてEC50値を算出した。
CHO−human MplまたはCHO−monkey Mplを回収し、1x10cells/mLになるようにFACS Buffer(1%FBS/PBS)に懸濁した。100μL/wellとなるようにMultiscreen(Millipore社製)に分注し、遠心操作にて培養上清を除去した。5μg/mLになるように希釈した培養上清を加え、氷上にて30分間反応させた。細胞をFACS bufferにて1回洗浄し、FITC標識抗マウスIgG抗体(Beckman Coulter社製)を添加し、氷上にて30分間反応させた。反応後、500rpmで1分間遠心し、上清を除き、FACS Buffer 400μLに懸濁し、EPICS ELITE ESP(Beckman Coulter)を用いてフローサイトメトリーを行った。前方散乱光(forward scatter)及び側方散乱光(side scatter)のヒストグラムにて生細胞集団にゲートを設定した。
【0143】
抗体のアゴニスト活性は、TPO依存性増殖を示すBaF3−human MplまたはBaF3−monkey Mplを用いて評価した。各細胞をそれぞれ4x10cells/mLとなるように10%Fetal Bovine Serum(Invitrogen社製)を含むRPMI1640(Invitrogen社製)に懸濁し、60μL/wellで96well plateに分注した。rhTPO(R&D社製)およびハイブリドーマ培養上清の濃度を振り、各wellに40μL加え、37℃、5%CO条件下で、24時間培養した。10μL/wellでCell Count Reagent SF(ナカライテスク社製)を加え、2時間培養後に、450nmの吸光度(対照655nm)をBenchmark Plusにて測定し、GraphPad Prismを用いてEC50値を算出した。
これらの解析により、ヒトMplに結合するマウスモノクローナル抗体を合計163個取得した。
以下に記載する抗ヒトMpl抗体の中で、TA136はBaF3−human Mpl免疫マウスより樹立され、それ以外の抗体はshMpl−Flag免疫マウスより樹立した。
【0144】
1.7 抗ヒトMpl抗体の精製
ハイブリドーマの培養上清を用いて、以下のように抗ヒトMpl抗体を精製した。
培養上清をHiTrap proteinG HPカラム(Amersham Biosciences社製)に吸着させた後に、0.1M Glycine−HCl(pH2.7)を用いて溶出した。溶出後、直ちに1M Tris−Cl(pH9.0)により直ちに中和し、PBSで一昼夜透析を行い、バッファー置換を行った。
【0145】
1.8 抗ヒトMpl抗体VB22Bのエピトープの決定
抗ヒトMpl抗体VB22Bがwestern blottingに使用可能である性質を利用し、ヒトMplの部分配列とGSTの融合蛋白質を構築しVB22Bのエピトープ解析を行った。MG1(Gln26からTrp491)、MG2(Gln26からLeu274)の領域をそれぞれPCR増幅し、GST融合蛋白質として発現されるようにpGEX−4T−3(Amersham社)へクローニングした。プラスミドDNAをDH5αへ導入し形質転換体を得、対数増殖期にある形質転換体に1mMとなるようにIPTGを加えることによりGST融合蛋白質の発現を誘導し、2時間培養後に菌体を回収した。Sonicationにより破砕後、XL−80 Ultracentrifuge(Beckman,Rotor 70.1Ti)を用い35,000rpmで30分遠心後の培養上清を回収し、GST Purification Modules(Amersham社)を用いて精製した。10%−SDS−PAGEにより分離後、PVDF膜にトランスファーし、VB22Bマウス抗体を用いたwestern blottingを行った。VB22BはMG−1、MG−2を認識した事から、VB22BのエピトープはGln26からLeu274の領域にあることが判明した。
【0146】
次に、MG3(Gln26からAla189)、MG4(Gln26からPro106)、MG5(Gln26からGlu259)、MG6(Gln26からGly245)の領域とGSTの融合蛋白を作製し同様にwestern blottingを行った結果、VB22BはMG5、MG6を認識したが、MG3、MG4を認識しなかった事から、VB22BのエピトープはAla189からGly245の周辺に存在する事が予想された。さらにMG7(Gln26からAla231)、MG8(Gln26からPro217)とGSTの融合蛋白質を作製し評価した結果、VB22BはMG7を認識したが、MG8は認識しなかった事から、VB22BのエピトープはGln217からAla231の周辺に存在することが示された。さらにMG10(Gln213からAla231)とGSTの融合蛋白質との結合が確認されたことから、VB22BのエピトープはGln213からAla231の19アミノ酸に限定された。
【0147】
1.9 抗ヒトMpl抗体VB22Bの抗原抗体反応の反応速度論的解析
抗ヒトMpl抗体VB22Bが可溶型組換えMplに結合する性質を利用し、実施例1.4で示したヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質とVB22B IgGとの抗原抗体反応における速度論的な解析を行った。Biacore 2000(Biacore社製)にSensor Chip CM5(Biacore社製)をセットし、アミンカップリング法にてヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質を固定化した。次に、HBS−EP Buffer(Biacore社製)を用いて1.25〜20μg/mLのVB22B IgGを調製し、VB22B IgGを2分間添加し、結合領域を得た後に、HBS−EP Bufferを2分間添加することで解離領域を得た。Sensor Chip上のヒトMpl−IgG Fc融合タンパク質に結合したVB22B IgGは、10mM NaOHを15秒間添加して除去し、Sensor Chipを再生した。ランニングバッファーとしてHBS−EP Bufferを用い、流速は20μL/minとした。BIAevaluation ver.3.1ソフトウェア(Biacore社製)を用いて、各濃度で得られたセンサーグラムより反応速度定数を算出した。その結果、VB22B IgGの解離定数(KD)は1.67±0.713×10−9Mであった。
【0148】
[実施例2]抗ヒトMpl一本鎖抗体の作製
取得した抗ヒトMpl抗体の中で、結合活性およびアゴニスト活性が高かった23種類の抗体について、遺伝子工学的手法により一本鎖抗体の発現系を構築した。以下に抗ヒトMpl抗体VB22Bの一本鎖抗体作製例について示す。
【0149】
2.1 抗ヒトMpl抗体可変領域のクローニング
抗ヒトMpl抗体を産生するハイブリドーマより抽出したTotal RNAを用いて、RT−PCR法によって増幅した。Total RNAは、RNeasy Plant Mini Kits(QIAGEN社製)を用いて1x10細胞のハイブリドーマより抽出した。
1μgのTotal RNAを使用して、SMART RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を用いて、マウスIgG2b定常領域配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドMHC−IgG2b(配列番号:166)またはマウスκ鎖定常領域塩基配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドkappa(配列番号:167)を用いて、5’末端側遺伝子断片を増幅した。逆転写反応は42℃で1時間30分間反応させた。
【0150】
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×AdVantage2 PCR Buffer、
5μLの10×Universal Primer A Mix、
0.2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
1μLのAdvantage2 Polymerase Mix
(以上の成分はいずれもCLONTECH社製)、
2.5μLの逆転写反応産物、
10pmolの合成オリゴヌクレオチドMHC−IgG2bまたはkappa
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて30秒間、
94℃/5秒間、72℃/3分間のサイクルを5回反復、
94℃/5秒間、70℃/10秒間、72℃/3分間のサイクルを5回反復、
94℃/5秒間、68℃/10秒間、72℃/3分間のサイクルを25回反復、
最後に反応産物を72℃で7分間加熱した。
【0151】
PCR産物はQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、pGEM−T Easyベクター(Promega社製)へクローニングした。さらに、ABI 3700 DNA Analyzer(Perkin Elmer社製)を用いて塩基配列を決定した。
クローニングしたVB22B H鎖可変領域(以下、VB22B−VH)の塩基配列を配列番号:117、アミノ酸配列を配列番号:118、およびL鎖可変領域(以下、VB22B−VL)の塩基配列を配列番号:119、アミノ酸配列を配列番号:120に示す。
【0152】
2.2 抗ヒトMpl抗体Diabody発現ベクターの作製
5アミノ酸からなるリンカー配列を用いたVB22B一本鎖Fv(以下、VB22B Diabody)をコードする遺伝子は、VB22B−VHをコードする遺伝子の3’末端およびVB22B−VLをコードする遺伝子の5’末端に(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列を付加させた遺伝子について、それぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。
【0153】
VB22B−VHの前方プライマー70・115HF(配列番号:168)は、EcoRI部位を有するように設計し、VB22B−VHの後方プライマー33・115HR(配列番号:169)は、VB22B−VHのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、かつ(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列ならびにVB22B−VLのN末端をコードするDNAにハイブリダイズする塩基配列を有するように設計した。VB22B−VLの前方プライマー33・115LF(配列番号:170)は、VB22B−VLのN末端をコードする塩基配列ならびに(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列、VB22B−VHのC末端をコードする塩基配列を有するように設計した。VB22B−VLの後方プライマー33・115LR(配列番号:171)は、VB22B−VLのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、かつFLAGタグ(AspTyrLysAspAsp AspAspLys/配列番号:172)をコードする塩基配列を有し、さらにNotI部位を有するように設計した。
【0154】
第一PCRにおいて、VB22B−VHおよびリンカー配列とVB22B−VLおよびリンカー配列を含む2つのPCR反応物を以下のように合成した。
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×PCR Buffer、
0.4mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa EX Taq
(以上の成分はいずれも宝酒造社製)、
10ngのVB22B−VHまたはVB22B−VL遺伝子を含むpGEM−T Easyベクター、
10pmolの合成オリゴヌクレオチド70・115HF、33・115HRまたは33・115LF、33・115LR
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて30秒間、
94℃/15秒間、72℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、70℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、68℃/2分間のサイクルを28回反復、
最後に反応産物を72℃で5分間加熱した。
【0155】
約400bpのPCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、各PCR産物の一部を用いて以下のように第二PCRを行った。
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×PCR Buffer、
0.4mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa EX Taq
(以上の成分はいずれも宝酒造社製)、
1μLの第一PCR産物(2種類)、
10pmolの合成オリゴヌクレオチド70・115HF、33・115LR
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて30秒間、
94℃/15秒間、72℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、70℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、68℃/2分間のサイクルを28回反復、
最後に反応産物を72℃で5分間加熱した。
【0156】
約800bpのPCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素NotI(宝酒造社製)で消化した後に、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、pCXND3にクローニングし、pCXND3−VB22B dbを作製した。
【0157】
2.3 抗ヒトMpl抗体sc(Fv)2発現ベクターの作製
VB22B由来の2つのH鎖可変領域および2つのL鎖可変領域を含む改変抗体
[sc(Fv)2]を発現するプラスミドを作製するために、前述のpCXND3−VB22B dbを用いて以下のようにPCR法により修飾した。sc(Fv)2遺伝子の構築過程について、図1に示した。
【0158】
はじめに、VB22B−VHをコードする遺伝子の3’末端およびVB22B−VLをコードする遺伝子の5’末端に15アミノ酸から成るリンカー(GlySer)をコードする塩基配列を付加させた遺伝子について、それぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。この構築過程において、3種類のプライマーを新たに設計した。VB22B−VHの前方プライマーVB22B−fpvu(プライマーA,配列番号:173)は、5’末端にEcoRI部位を有し、VB22B dbのGln22およびLeu23がPvuII部位に変換するように設計した。VB22B−VHの後方プライマーsc−rL15(プライマーB,配列番号:174)は、VB22B−VHのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、かつ(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列ならびにVB22B−VLのN末端をコードするDNAにハイブリダイズする塩基配列を有するように設計した。VB22B−VLの前方プライマーsc−fL15(プライマーC,配列番号:175)は、VB22B−VLのN末端をコードする塩基配列ならびに(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列、VB22B−VHのC末端をコードする塩基配列を有するように設計した。
【0159】
第一PCRにおいて、VB22B−VHおよびリンカー配列とVB22B−VLおよびリンカー配列を含む2つのPCR反応物を以下のように合成した。
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×PCR Buffer、
0.4mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa EX Taq
(以上の成分はいずれも宝酒造社製)、
10ngのpCXND3−VB22B db、
10pmolの合成オリゴヌクレオチドVB22B−fpvu、sc−rL15またはsc−fL15、33・115LR
(プライマーD)
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて30秒間、
94℃/15秒間、72℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、70℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、68℃/2分間のサイクルを28回反復、
最後に反応産物を72℃で5分間加熱した。
【0160】
約400bpのPCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、各PCR産物の一部を用いて以下のように第二PCRを行った。
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×PCR Buffer、
0.4mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa EX Taq
(以上の成分はいずれも宝酒造社製)、
1μLの第一PCR産物(2種類)、
10pmolの合成オリゴヌクレオチド70・115HF、33・115LR
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて30秒間、
94℃/15秒間、72℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、70℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、68℃/2分間のサイクルを28回反復、
最後に反応産物を72℃で5分間加熱した。
【0161】
約800bpのPCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素NotI(宝酒造社製)で消化した後に、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、pBacPAK9(CLONTECH社製)にクローニングし、pBacPAK9−scVB22Bを作製した。
【0162】
次に、pBacPAK9−scVB22BのPvuII部位に挿入する断片を作製した。すなわちN末端が欠けたVB22B−VHとVB22B−VLを(GlySer)から成るリンカーで連結したアミノ酸をコードする遺伝子をさらにVB22B−VHのN末端をコードする遺伝子と(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列で連結する断片で、両末端がPvuII認識配列となる断片である。2種類のプライマーを新たに設計し、PCR法を用いて、この断片を作製した。目的断片の前方プライマーFv2−f(プライマーE,配列番号:176)は、5’末端にPvuII部位を有し、VB22B−VHの5’末端側の配列を持つように設計した。目的断片の後方プライマーFv2−r(プライマーF,配列番号:177)は、VB22B−VLのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、かつ(GlySer)から成るリンカーをコードする塩基配列ならびにVB22B−VHのN末端をコードするDNAにハイブリダイズする塩基配列、さらにPvuII部位を有するように設計した。pBacPAK9−scVB22Bを鋳型にして、以下のようにPCRを行った。
【0163】
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×PCR Buffer、
0.4mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa EX Taq
(以上の成分はいずれも宝酒造社製)、
10μgのpBacPAK9−scVB22B、
10pmolの合成オリゴヌクレオチドFv2−f、Fv2−r
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて30秒間、
94℃/15秒間、72℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、70℃/2分間のサイクルを5回反復、
94℃/15秒間、68℃/2分間のサイクルを28回反復、
最後に反応産物を72℃で5分間加熱した。
【0164】
約800bpのPCR産物をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製した後、pGEM−T Easyベクター(Promega社製)へクローニングした。塩基配列の決定後、制限酵素PvuII(宝酒造社製)で消化した後に、目的断片を回収した。pBacPAK9−scVB22Bを制限酵素PvuII(宝酒造社製)で消化した後に、回収した断片を連結し、pBacPAK9−VB22B sc(Fv)2を作製した。作製したベクターを制限酵素EcoRI(宝酒造社製)および制限酵素NotI(宝酒造社製)で消化した後に、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約1600bpの断片をアガロースゲルから精製し、発現ベクターpCXND3にクローニングし、pCXND3−VB22Bsc(Fv)2を作製した。
【0165】
2.4 動物細胞を用いた抗ヒトMpl一本鎖抗体の発現
CHO−DG44細胞を用いた一本鎖抗体の安定発現細胞株の作製は次のようにして行った。Gene PulserII(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。発現ベクター(25μg)とPBSに懸濁したCHO−DG44細胞(1×10細胞/mL)の0.75mLを混合したものを氷上で10分間冷却し、キュベットに移した後に1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、500μg/mL Geneticin(Invitrogen社製)を含むCHO−S−SFMII培地(Invitrogen社製)に加えて選抜し、発現CHO細胞株を樹立した。VB22B sc(Fv)2は、この方法で安定発現細胞株およびその培養上清を調製した。
【0166】
COS7細胞を用いた一本鎖抗体の一過性発現は次のようにして行った。発現ベクター(10μg)とPBSに懸濁したCOS7細胞(1×10細胞/mL)の0.75mLを混合したものを氷上で10分間冷却し、キュベットに移した後に1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%FBSを含むDMEM培地(Invitogen社製)に加え、一晩培養した後に、PBSで洗浄後にCHO−S−SFMII培地を加えて約3日間培養した。VB22B Diabodyは、この方法で培養上清を調製した。
【0167】
2.5 培養上清中の抗ヒトMpl一本鎖抗体の定量
COS細胞に一過性発現させた抗ヒトMpl一本鎖抗体の培養上清中の濃度は、表面プラズモン共鳴を利用して測定した。すなわちBiacore 2000(Biacore社製)にSensor Chip CM5(Biacore社製)をセットし、ANTI−FLAG M2 Monoclonal Antibody(SIGMA−ALDRICH社製)を結合した。流速5mL/secで適濃度のサンプルを流し、50mMジエチルアミンを流して結合した抗体を解離させた。サンプルを流したときの質量変化を測定し、標準品の質量変化に基づいて作成した検量線を用いて、濃度を算出した。Diabodyについての標準品は、db12E10(WO02/33073、WO02/33072参照)を使用し、sc(Fv)2についての標準品は同じ遺伝子構造を持つ12E10sc(Fv)2を使用した。
【0168】
2.6 抗ヒトMpl Diabodyおよび一本鎖抗体の精製
VB22B Diabody発現COS7細胞あるいはCHO細胞の培養上清を、50mM Tris−HCl(pH7.4),150mM NaCl,0.05% Tween20で平衡化したAnti−Flag M2 Affinity Gel(SIGMA−ALDRICH社製)カラムに吸着させ、100mM Glycine−HCl(pH3.5)で溶出させた。溶出画分は、直ちに1M Tris−HCl(pH8.0)で中和を行い、HiLoad 26/60 Superdex200pg(Amersham−Bioscience社製)カラムを用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行った。ゲルろ過クロマトグラフィーのバッファーは、PBS、0.01%Tween20を使用した。
【0169】
VB22B sc(Fv)2発現COS7細胞あるいはCHO細胞の培養上清を、Diabody精製と同一条件で精製を行った。また、大量に調製する場合には、CHO細胞の培養上清を20mMリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化したMacro−Prep Ceramic Hydroxyapatite TypeI(Bio−Rad社製)カラムにかけ、250mMリン酸緩衝液(pH6.8)で段階的に溶出した。溶出画分は、限外ろ過膜を用いて濃縮後、HiLoad 26/60 Superdex200pgカラムを用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、分子量が約40kD〜70kDに相当する画分を分取した。この画分を、50mM Tris−HCl(pH7.4),150mM NaCl,0.05% Tween20で平衡化したAnti−Flag M2 Affinity Gelカラムに吸着させ、100mM Glycine−HCl(pH3.5)で溶出させた。溶出画分は、直ちに1M Tris−HCl(pH8.0)で中和を行い、HiLoad 26/60 Superdex200pgカラムを用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行った。ゲルろ過クロマトグラフィーのバッファーは、20mM酢酸緩衝液(pH6.0),150mM NaCl,0.01%Tween80を使用した。各精製ステップにおいて、Diabodyおよびsc(Fv)2の確認は、SDS−PAGEおよび抗Flag抗体(SIGMA−ALDLICH社)を用いたWestern Blottingを用いて行なった。それぞれ、分取したピーク画分をLaemliの方法に準じて電気泳動し、クマシーブリリアントブルーで染色した結果、Diabodyでは、見かけ上の分子量約29kDaに、またsc(Fv)2では、見かけ上の分子量約55kDaに、それぞれ単一のバンドが検出された。
【0170】
2.7 Flow Cytometryによる抗ヒトMpl一本鎖抗体の結合活性の評価
CHO−human Mpl、CHO−monkey MplおよびCHO−mouse Mplを回収し、1x10cells/mLになるようにFACS Buffer(1%FBS/PBS)に懸濁した。100μL/wellとなるようにMultiscreen−HV Filter Plates(Millipore社製)に分注し、遠心操作にて上清を除去した。適濃度のDiabodyまたはsc(Fv)2を加え、氷上にて30分間反応させた。細胞を200μLのFACS bufferにて1回洗浄し、10μg/mLのANTI−FLAG M2 Monoclonal Antibody(SIGMA−ALDRICH社製)を添加し、氷上にて30分間反応させた。次に200μLのFACS bufferにて細胞を1回洗浄した後、100倍希釈したFITC標識抗マウスIgG抗体(Beckman Coulter社製)を添加し、氷上にて30分間反応させた。最後に遠心し上清を除き、FACS Buffer 400μLに懸濁し、EPICS ELITE ESP(Beckman Coulter社)を用いてFlow Cytometryに供した。前方散乱光(forward scatter)及び側方散乱光(side scatter)のヒストグラムにて生細胞集団にゲートを設定した。
【0171】
精製したVB22B sc(Fv)2を用いて、各種Mplを発現させたCHO細胞に対する結合活性を評価した結果を図2に示す。宿主細胞であるCHOおよびCHO−mouse Mplに対しては結合活性を示さず、CHO−human MplおよびCHO−monkey Mplに特異的に結合することが確認された。この結合活性の傾向は、VB22B IgGと変わらないことから、低分子化により抗体の結合部位は変化していないことが推測された。
【0172】
2.8 抗ヒトMpl一本鎖抗体のTPO様アゴニスト活性の評価
TPO依存性増殖を示すBaF3−human MplまたはBaF3−monkey Mplを用いてTPO様アゴニスト活性を評価した。
各細胞を1% Fetal Bovine Serum(Invitrogen社製)を含むRPMI1640(Invitrogen社製)で2回洗浄した後、4x10cells/mLとなるように10%Fetal Bovine Serumを含むRPMI1640に懸濁し、60μL/wellで96well plateに分注した。rhTPO(R&D社製)、COS7培養上清または精製品の濃度を振り、各wellに40μL加え、37℃、5%CO条件下で、24時間培養した。10μL/wellでWST−8試薬(Cell Count Reagent SF、ナカライテスク社製)を加え、直後にBenchmark Plusを用いて450nmの吸光度(対照655nm)を測定し、2時間培養後に、再度450nmの吸光度(対照655nm)を測定した。WST−8試薬は生細胞数に応じて450nmの発色反応を呈することから、2時間の吸光度変化を指標にTPO様アゴニスト活性を評価した。また、GraphPad Prismを用いてEC50値を算出した。
【0173】
また、TPO依存性増殖を示すヒト白血病細胞株であるM−07e(DSMZより購入)を使用して、TPO様アゴニスト活性を評価した。M−07eを1% Fetal Bovine Serumを含むRPMI1640で2回洗浄した後、5x10cells/mLとなるように10% Fetal Bovine Serumを含むRPMI1640に懸濁し、50μL/wellで96well plateに分注した。rhTPO、COS7培養上清または精製品の濃度を振り、各wellに50μL加え、37℃、5%CO件下で、48時間培養した。10μL/wellでWST−8試薬(Cell Count Reagent SF、ナカライテスク社製)を加え、直後にBenchmark Plusを用いて450nmの吸光度(対照655nm)を測定し、4時間培養後に、再度450nmの吸光度(対照655nm)を測定した。4時間の吸光度変化を指標にTPO様アゴニスト活性を評価した。
【0174】
精製したVB22B IgG、VB22B DiabodyおよびVB22B sc(Fv)2を用いて、BaF3−human Mpl、BaF3−monkey Mpl、M−07eでのTPO様アゴニスト活性を評価した結果をそれぞれ図3、図4、図5に示す。アゴニスト活性は、抗原結合部位が二価であることが重要であるが、抗原結合部位間の距離や角度も重要な要素であると考えられる(WO02/33073、WO02/33072参照)。新たに取得した抗ヒトMpl抗体も同様であり、VB22B IgG(BaF3−human Mpl EC50:>30nM)に対して、VB22B DiabodyおよびVB22B sc(Fv)2は高いアゴニスト活性(BaF3−human Mpl EC50:それぞれ61pM,27pM)であり、天然リガンドであるhuman TPO(BaF3−human Mpl EC50:76pM)と同等以上の活性を示した。VB22B Diabodyと比較してVB22B sc(Fv)2が高い活性を示したことから、一本鎖抗体はリンカー配列の長さや分子形状によって構造が大きく変化し、アゴニスト活性も変化することが推測される。このような高いアゴニスト活性を示す16種類の抗ヒトMpl一本鎖抗体を取得した。代表的な抗体のH鎖およびL鎖可変領域のアミノ酸配列についてそれぞれ図6および図7に示す。
【0175】
2.9 抗ヒトMpl一本鎖抗体のヒト化
VB22B sc(Fv)2のヒト化を実施するために、公開されているKabat Database(ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/databases/kabat/)より抗体の配列データを入手し、H鎖可変領域、L鎖可変領域に分けてホモロジー検索を行った。その結果、H鎖可変領域はDN13(Smithsonら、Mol Immunol.1999;36:113−124)と高い相同性を持つことが分かった。また、L鎖可変領域はToP027(Hougsら、J.Immunol.1999;162:224−237)と高い相同性を持つことが分かった。これらの抗体のフレームワーク領域(以下、FR)に相補性抗原決定領域(以下、CDR)を移植したヒト化抗体を作製した。ヒト化抗体sc(Fv)2をCHO−DG44細胞にて発現させ、BaF3−human Mplを用いたアゴニスト活性を評価した。アゴニスト活性を指標に、FR内にアミノ酸置換を加え、マウス型VB22B sc(Fv)2と同等のアゴニスト活性を有するヒト化VB22B sc(Fv)2を作製した。
【0176】
具体的には、50base程度の合成オリゴDNAを約20base程度ハイブリダイズするように設計し、これらの合成オリゴDNAをPCR法によりアッセンブリさせて各可変領域をコードする遺伝子を作製した。これらの遺伝子を用いて、実施例2.3の方法と同様に、sc(Fv)2を作製し、発現ベクターpCXND3にクローニングし、ヒト化VB22B sc(Fv)2を挿入した各発現ベクターpCXND3−hVB22B p−z sc(Fv)2、pCXND3−hVB22B g−e sc(Fv)2、pCXND3−hVB22B e sc(Fv)2、pCXND3−hVB22B u2−wz4 sc(Fv)2、pCXND3−hVB22B q−wz5 sc(Fv)2を作製した。本プラスミドに含まれるhVB22B p−z sc(Fv)2の塩基配列を配列番号:1に、アミノ酸配列を配列番号:2に、hVB22B g−e sc(Fv)2の塩基配列を配列番号:253に、アミノ酸配列を配列番号:254に、hVB22B e sc(Fv)2の塩基配列を配列番号:259に、アミノ酸配列を配列番号:260に、hVB22B u2−wz4 sc(Fv)2の塩基配列を配列番号:286に、アミノ酸配列を配列番号:287に、hVB22B q−wz5 sc(Fv)2の塩基配列を配列番号:292に、アミノ酸配列を配列番号:293に示す。またマウス型VB22B sc(Fv)2の塩基配列を配列番号:263に、アミノ酸配列を配列番号:264に示す。実施例2.4の方法と同様にCHO−DG44細胞に発現させ、培養上清を回収した。ヒト化VB22B sc(Fv)2はFlagタグを付加していないことから、培養上清からの精製は、実施例1.8に記載したVB22Bが認識するエピトープであるMG10(Gln213からAla231)とGST融合蛋白質を利用して行った。MG10とGST融合蛋白質の精製は、Glutathione Sepharose 4B(Amersham Biosciences社製)を用いて、メーカーのプロトコールに従って精製した。さらに、精製したMG10とGST融合蛋白質をメーカーのプロトコールに従って、HiTrap NHS−activated HP(Amersham Biosciences社製)に固定化し、アフィニティカラムを作製した。ヒト化VB22B sc(Fv)2発現CHO細胞の培養上清を、50mM Tris−HCl(pH7.4),150mM NaCl,0.01% Tween80で平衡化したMG10−GST融合蛋白質固定化カラムに流し、ヒト化VB22B sc(Fv)2を吸着させ、100mM Glycine−HCl(pH3.5),0.01% Tween80で溶出させた。溶出画分は直ちに1M Tris−HCl(pH7.4)で中和を行い、HiLoad 16/60 Superdex200pg(Amersham Biosciences社製)を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行った。ゲルろ過クロマトグラフィーの緩衝液は、20mMクエン酸緩衝液(pH7.5),300mM NaCl,0.01% Tween80を使用した。得られた精製品を用いて、実施例2.8の方法と同様にTPO様アゴニスト活性を評価した。精製したマウス型VB22B sc(Fv)2、hVB22B p−z sc(Fv)2、hVB22B u2−wz4 sc(Fv)2、hVB22B q−wz5 sc(Fv)2およびヒト化したhVB22B e sc(Fv)2、hVB22B g−e sc(Fv)2を用いて、BaF3−human MplでのTPO様アゴニスト活性を評価した結果を図19、20、21に示す。各種ヒト化VB22B sc(Fv)2のアゴニスト活性はほぼ同等であり、ヒト化による活性変化は無いことが示された。
【0177】
2.10 抗ヒトMpl抗体VB22B IgG,VB22B sc(Fv)2およびヒト化VB22B sc(Fv)2の抗原抗体反応における反応速度論的解析
抗ヒトMpl抗体VB22Bが可溶型組換えMplに結合する性質を利用し、実施例1.8で示したMG10(Gln213からAla231)−GST融合蛋白質とVB22B IgG,VB22B sc(Fv)2およびヒト化VB22B sc(Fv)2との抗原抗体反応における速度論的解析を行った。Biacore 3000(Biacore社製)にSensor Chip CM5(Biacore社製)を装着し、アミンカップリング法にてMG10−GST融合蛋白質を固定化した。測定のランニングバッファーはHBS−EP Buffer(Biacore社製)を使用し、流速は20μL/minとした。ここにHBS−EPBufferで5.5〜175.0nMの濃度に調製したVB22B IgGをそれぞれ2分間添加して、各濃度での結合領域を得た後に、解離領域を2分間測定した。Sensor Chip上のMG10−GST融合蛋白質に結合したVB22B IgGは、20mM HClを1分間添加して除去し、Sensor Chipを再生した。同様に、4.7〜150.1nMのVB22B sc(Fv)2、5.3〜168.9nMのhVB22B q−wz5 sc(Fv)2、4.9〜156.8nMのhVB22B u2−wz4 sc(Fv)2を調製し、MG10−GST融合蛋白質を固定化したチップに添加して、測定を実施した。
いずれも二価抗体であるため、各濃度で得られたセンサーグラムでは、一価と二価の両方の結合が混在した状態になる。このため、BIAevaluation ver.3.1ソフトウェア(Biacore社製)のBivalent analyte modelを適用して解析することにより、一価の状態での反応速度定数を算出した。以上の解析は全ての抗体について3回実施した。このようにして算出された、いずれも一価での結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)および解離定数(KD)を表1に示した。VB22B IgG、VB22B sc(Fv)2、hVB22B q−wz5 sc(Fv)2、hVB22B u2−wz4 sc(Fv)2の解離定数(KD)は、それぞれ1.15x10−8M、1.17x10−8M、1.36x10−8M、1.02x10−8であり、MG10−GST融合蛋白質に対して、ほぼ同等の結合活性を持つことが確認された。
【0178】


【0179】
[実施例3]AGS法による抗Mpl抗体Diabodyの作製
AGS(autocrine growth selection)法(WO03/91424参照)によりアゴニスト活性を有する抗Mpl抗体Diabodyを作製した。
【0180】
3.1 レトロウイルスライブラリの構築
実施例1.5に従って、shMPL−Flagを免疫したMRL/lprマウスより脾臓を摘出し、TRIZOL Reagent(Invitrogen社製)を加えた後、ダウンスホモジナイザーを用いて破砕した。クロロホルムを添加し振とうした後、水相を分取し、イソプロパノール沈殿によりTotal RNAを抽出した後、PolyATract System 1000(Promega社製)を用いてmRNAを精製した。2.5μg相当のmRNAを使用して、Superscript First strand synthesis system for RT−PCR(Invitrogen社製)、及び添付のオリゴdTプライマーを用いて、42℃にて50分反応することによりcDNAを作製した。
【0181】
PCR反応溶液(250μL)の組成を次に示す。
25μLの10×KOD Plus Buffer、
25μLの2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
10μLの2.5mM MgSO
7.5μLのKOD Plus、
(以上の成分はいずれも東洋紡社製)、
25μLの逆転写反応産物、
500pmolのH鎖またはL鎖の可変領域に相補的なmix primer
また反応温度条件は次のとおりである。
98℃の初期温度にて3分間、
98℃/20秒間、58℃/20秒間、72℃/30秒間のサイクルを32回反復、
最後に反応産物を72℃で6分間加熱した。
【0182】
H鎖のmix primerはHS1−HS19(配列番号:178〜配列番号:196)及びHA1−HA4(配列番号:197〜配列番号:200)を、表2に示す各配列名の隣に示した比率で混合したものを使用し、L鎖のmix primerはLS1−LS17(配列番号:201〜配列番号:217)、LSlambda(配列番号:218)及びLA1−LA5(配列番号:219〜配列番号:222)、LAlambda(配列番号:223)を混合したものを使用した。各PCR産物はQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて、アガロースゲルから精製した。H鎖及びL鎖可変領域は、sc−S(配列番号:224)、sc−AS(配列番号:225)を用いて以下のようにPCRを行うことにより、リンカー配列(GlySer)を挟む形で連結した。
【0183】
PCR反応溶液(100μL)の組成を次に示す。
10μLの10×KOD Plus Buffer、
10μLの2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
4μLの2.5mM MgSO
2μLのKOD Plus、
(以上の成分はいずれも東洋紡社製)、
4μLのH鎖可変領域断片、
4μLのL鎖可変領域断片、
はじめに以下の反応温度条件で反応させた。
94℃の初期温度にて3分間、
94℃/1分間、63℃/4分間のサイクルを7回反復、
25pmolのsc−S及びsc−ASを添加、
次に以下の反応温度条件で反応させた。
94℃/30秒間、55℃/2分間、72℃/2分間のサイクルを30回反復、
最後に反応産物を72℃で6分間加熱した。
【0184】
この産物は両端に制限酵素SfiI部位を有することから、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した後、制限酵素SfiI(宝酒造社製)を用いて50℃にて一晩反応させた。QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、アガロースゲルから精製されたPCR産物をウイルスベクタープラスミドpMX/IL3ssGFPHisのSfiI部位に挿入した。
【0185】
本プラスミドは5’末端にEcoRI部位、マウスIL−3シグナル配列及びSfiI部位、3’末端にSfiIサイト及びHisタグ配列、終止コドン及びNotIサイトを有するGFP遺伝子を、ウイルスベクターpMX(Onishiら、Mol.Cell.Biol.vol.18,3871−3879)のEcoRIとNotIサイトの間に挿入したものである。Ligation反応物を用いてGene Pulser II(Bio−Rad社製)によるエレクトロポレーション(2.5kV、25μF、100Ω)によりElectroMAX DH10B T1 phage resistant cells(Invitrogen社製)へ導入した。100μg/mLのアンピシリンを添加したLB−Agar培地に塗沫し、一晩培養した結果、約10個のコロニーが出現した。コロニーを回収し、QIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いてプラスミドを抽出した。
【0186】


【0187】
3.2 AGS法による自律増殖株の取得
このライブラリをパッケージング細胞Pt−E(Moritaら、Gene threapy vol.7,1063−1066)にFugene6(Roche Diagnostics社製)を用いてトランスフェクションした。すなわちPt−Eを、10%FBSを含むDMEM培地(Invitrogen社製)で6cm dishに播種し、翌日Fugene6とライブラリを混合したものを培地に加えた。その翌日、培養上清を交換し、24時間後培養上清を回収した。組換えウィルスを含む培養上清に10μg/mLのポリブレン(Hexadimethrine Bromide,SIGMA社製)及び2ng/mLのmIL−3を加え、標的細胞であるBaF3−monkey Mplへ感染させた。翌日、細胞をPBSで洗浄後、mIL−3を含まない10%FBSを含むRPMI1640培地に懸濁し、1000cells/wellになるように96well plateに播種した。7日間培養を続けた結果、自律増殖する細胞株(AB317、AB324)が得られた。これら細胞よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、PCR法により抗体遺伝子を増幅した。
【0188】
PCR反応溶液(50μL)の組成を次に示す。
5μLの10×LA Taq Buffer、
5μLの2mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、
5μLの2.5mM MgCl
0.5μLのTaKaRa LA Taq、
(以上の成分はいずれも宝酒造社製)、
0.5μgのゲノムDNA、
25pmolのAGSdbS1(配列番号:226)、AGSdbA1(配列番号:227)
また反応温度条件は次のとおりである。
94℃の初期温度にて1分間、
94℃/30秒間、60℃/30秒間、70℃/1分間のサイクルを30回反復、
最後に反応産物を72℃で6分間加熱した。
【0189】
クローニングしたAB317のH鎖の塩基配列を配列番号:154、アミノ酸配列を配列番号:155、AB317のL鎖の塩基配列を配列番号:156、アミノ酸配列を配列番号:157、AB324のH鎖の塩基配列を配列番号:158、アミノ酸配列を配列番号:159、AB324のL鎖の塩基配列を配列番号:160、アミノ酸配列を配列番号:161に示す。
【0190】
3.3 AGS法により得られたDiabodyの活性評価
取得した抗Mpl抗体Diabodyを発現ベクターpCXND3に挿入した。Diabodyの5’末端領域に相補的でEcoRI部位を有する合成オリゴヌクレオチドおよびDiabodyの3’末端側塩基配列に相補的でFLAGタグとNotI部位を有する合成オリゴヌクレオチドを用いてPCRを行い、得られたPCR産物をpCXND3のEcoRI、NotI部位に挿入した。実施例2.4に従い、COS7細胞を用いた一過性発現を行い、培養上清を回収し、活性評価を実施した。
各種Mplを発現させたCHO細胞株を用いてFlow Cytometryによる結合活性の評価を実施した。結果を図8に示す。AB317はCHO−mouse Mplに結合することが確認された。
【0191】
また、BaF3−human Mpl、BaF3−monkey MplおよびBaF3−mouse MplによるTPO様アゴニスト活性の評価を行った。結果を図9、図10、図11に示す。AB317はヒト、サル、マウスMplに対して強いアゴニスト活性を有し、AB324はヒト、サルMplに対し強いアゴニスト活性を示した。
このことから、AGS法を用いて強いアゴニスト活性を有する抗Mpl抗体Diabodyが取得できることが確認された。
【0192】
[実施例4]CAMT患者の持つMpl変異に対する抗Mpl抗体のアゴニスト活性評価
4.1 CAMT患者の持つ変異Mpl導入BaF3細胞株の樹立
CAMT(Congenital amegakaryocytic thrombocytopenia;先天性無巨核球性血小板減少症)患者においてMpl遺伝子中にG305C(R102P)変異、C769T(R257C)変異およびC823A(P275T)変異が報告されている。各変異を持つMpl遺伝子の発現ベクターをそれぞれ構築し、BaF3細胞に導入した。正常なMpl遺伝子(塩基配列を配列番号:246、アミノ酸配列を配列番号:123)および該遺伝子の開始コドンから305番目の塩基をGからCに置換した遺伝子G305C(塩基配列を配列番号:247、アミノ酸配列を配列番号:248)、開始コドンから769番目の塩基をCからTに置換した遺伝子C769T(塩基配列を配列番号:249、アミノ酸配列を配列番号:250)および開始コドンから823番目の塩基をCからAに置換した遺伝子C823A(塩基配列を配列番号:251、アミノ酸配列を配列番号:252)を作製した。これらのDNA断片を制限酵素EcoRI、SalIで切断し、動物細胞発現用ベクターpCOS2−HaのEcoRI、SalI部位に導入し、pCOS2−hMPLfullG305C、pCOS2−hMPLfullC769TおよびpCOS2−hMPLfullC823Aを作製した。
【0193】
実施例1.1と同様にしてBaF3細胞に遺伝子導入し、各Mpl遺伝子を発現するBaF3細胞株であるBaF3−human MPL(G305C)、BaF3−human MPL(C769T)およびBaF3−human MPL(C823A)を樹立した。選抜後は、1ng/mL mIL−3、10%FBSを含むRPMI1640培地を用いて培養、維持した。
【0194】
4.2 抗ヒトMpl抗体Diabody、sc(Fv)2の作製
図6および図7に示したアミノ酸配列の中で、VB8B、VB45B、VB33、VB140、VB157、TA136について、実施例2.2と同様にしてDiabody発現ベクターを作製した。作製した発現ベクターを実施例2.4と同様に、COS7細胞に導入し、得られた培養上清中のDiabody濃度を実施例2.5の方法で定量した。TA136については、実施例2.3と同様にして、sc(Fv)2発現ベクターを作製した。実施例2.4と同様にCHO−DG44細胞に導入し、実施例2.6に従って得られた培養上清よりsc(Fv)2を精製した。
【0195】
4.3 抗ヒトMpl抗体Diabody、sc(Fv)2のアゴニスト活性の評価
作製したDiabody、sc(Fv)2を用いて、実施例2.8と同様にして正常Mpl発現BaF3細胞および変異Mpl発現BaF3細胞に対するアゴニスト活性を評価した。Diabody発現培養上清を用いて、BaF3−human MplとBaF3−human Mpl(G305C)におけるアゴニスト活性を比較した。その結果、TA136 Diabody(TA136 db)は、正常なMpl遺伝子を発現するBaF3−human Mplでは活性が弱いが、変異Mpl遺伝子を発現するBaF3−humanMpl(G305C)では強いアゴニスト活性を示した。BaF3−human Mpl(G305C)に対しては、hTPOや他のDiabodyでは強いアゴニスト活性を示すことはできなかった(図12および図13)。
【0196】
さらに、TA136 Diabody、TA136 sc(Fv)2の精製品を用いて、BaF3−human Mpl、BaF3−human Mpl(G305C)、BaF3−human Mpl(C769T)、BaF3−human Mpl(C823A)に対するアゴニスト活性を評価した。その結果、TA136 sc(Fv)2は、3種のTPO受容体変異株全てにおいてhTPOやTA136 Diabodyより高いアゴニスト活性を示した(図15〜図17)。また、正常なMpl遺伝子を発現するBaF3−human Mplにおいて、TA136 DiabodyはhTPOよりも弱い活性しか示さなかったが、sc(Fv)2に変換することにより、hTPOと同等のアゴニスト活性を示すことが示された(図14)。
【産業上の利用可能性】
【0197】
組換え型ヒトTPOは、化学療法剤等の治療による血小板減少症の治療薬として、さまざまな形で、臨床試験が行われてきた。その臨床試験において、一つの大きな問題として、TPOの投与による抗TPO抗体の出現が報告されており(Junzhi Li,et.al.,Blood(2001)98,3241−324、Saroj Vandhan−Raj.et.al.Ann.Intern.Med.(2000)132,364−368)、特に内在性のTPO活性を阻害する中和抗体が産生され、その結果として、血小板減少症を発症することが報告されている。本発明によって示される抗TPO受容体アゴニスト低分子化抗体の投与によって、内在性TPOに対する抗体の出現を誘導することはない。また抗体を低分子化することにより、高い比活性を示し、また血中半減期を短くできることから、有効血中濃度の調節が容易となり、臨床応用上有利となると考えられる。従って、天然型TPOやアゴニスト抗体よりも優れた性質をもつ、血小板減少症の治療薬となることが期待される。また、低分子化抗体は、糖鎖が結合していないことから、組換え型タンパクの発現においても、その発現系に制限はなく、哺乳動物由来の細胞株、酵母、昆虫細胞、大腸菌まで、いずれの発現系においても、作製することが可能である。また、変異型TPO受容体に対する結合強度が、TPOとは異なることから、遺伝的にTPO受容体に変異を持ち、血小板減少症を発症するCAMT患者で検出されるTPO受容体変異に対しても、特定の変異体に対しては結合し、アゴニスト活性を示すことが期待される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】



【図19】

【図20】

【図21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域を含み、TPO受容体(Mpl)への結合活性を有する一本鎖ポリペプチドであることを特徴とする抗体。
【請求項2】
2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域が、一本鎖ポリペプチドのN末端側を基点として重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖可変領域の順に並んでいることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域がリンカーで結合されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
リンカーが15アミノ酸であることを特徴とする、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
Mplに結合するキメラ抗体。
【請求項6】
ヒト化抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
低分子化抗体である、請求項5または6に記載の抗体。
【請求項8】
可溶型Mplに結合する抗体。
【請求項9】
ヒトMpl及びサルMplに結合する抗体。
【請求項10】
ヒトMpl及びサルMplに対してアゴニスト活性を有する抗体。
【請求項11】
可溶型Mplへの結合活性がKD=10−6M以下である抗体。
【請求項12】
可溶型Mplへの結合活性がKD=10−7M以下である抗体。
【請求項13】
TPOアゴニスト活性がEC50=100nM以下である抗体。
【請求項14】
TPOアゴニスト活性がEC50=30nM以下である抗体。
【請求項15】
TPOアゴニスト活性がEC50=10nM以下である抗体。
【請求項16】
以下の(1)〜(17)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:3、4、5
(2)配列番号:6、7、8
(3)配列番号:9、10、11
(4)配列番号:15、16、17
(5)配列番号:18、19、20
(6)配列番号:21、22、23
(7)配列番号:24、25、26
(8)配列番号:27、28、29
(9)配列番号:30、31、32
(10)配列番号:33、34、35
(11)配列番号:36、37、38
(12)配列番号:39、40、41
(13)配列番号:42、43、44
(14)配列番号:48、49、50
(15)配列番号:51、52、53
(16)配列番号:54、55、56
(17)配列番号:57、58、59
【請求項17】
以下の(1)〜(10)のいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:60、61、62
(2)配列番号:63、64、65
(3)配列番号:78、79、80
(4)配列番号:84、85、86
(5)配列番号:93、94、95
(6)配列番号:96、97、98
(7)配列番号:102、103、104
(8)配列番号:108、109、110
(9)配列番号:111、112、113
(10)配列番号:114、115、116
【請求項18】
以下の(1)〜(18)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:3、4、5に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:60、61、62に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:6、7、8に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:9、10、11に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:15、16、17に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:18、19、20に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(6)配列番号:21、22、23に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:78、79、80に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(7)配列番号:24、25、26に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(8)配列番号:27、28、29に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:84、85、86に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(9)配列番号:30、31、32に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(10)配列番号:33、34、35に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(11)配列番号:36、37、38に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:93、94、95に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(12)配列番号:39、40、41に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:96、97、98に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(13)配列番号:42、43、44に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:78、79、80に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(14)配列番号:45、46、47に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:102、103、104に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(15)配列番号:48、49、50に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:63、64、65に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(16)配列番号:51、52、53に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:108、109、110に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(17)配列番号:54、55、56に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:111、112、113に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
(18)配列番号:57、58、59に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する重鎖可変領域、および配列番号:114、115、116に記載のアミノ酸配列からなるCDR1、2、3を有する軽鎖可変領域
【請求項19】
配列番号:118に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体。
【請求項20】
配列番号:120に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
【請求項21】
配列番号:118に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号:120に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
【請求項22】
配列番号:122または264に記載のアミノ酸配列を有する抗体。
【請求項23】
以下の(1)〜(5)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:230、232、234、236
(2)配列番号:265、267、269、271
(3)配列番号:279、281、283、285
(4)配列番号:298、299、300、301
(5)配列番号:298、299、306、301
【請求項24】
以下の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:239、241、243、245
(2)配列番号:272、274、276、278
(3)配列番号:302、303、304、305
(4)配列番号:302、307、308、305
【請求項25】
以下の(1)〜(5)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:230、232、234、236に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:239、241、243、245に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:265、267、269、271に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:279、281、283、285に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:272、274、276、278に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:298、299、300、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:302、303、304、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:298、299、306、301に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する重鎖可変領域、および配列番号:302、307、308、305に記載のアミノ酸配列からなる、FR1、2、3、4を有する軽鎖可変領域
【請求項26】
配列番号:229、256、262、289または295に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体。
【請求項27】
配列番号:238、258、291または297に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体。
【請求項28】
以下の(1)〜(5)のいずれかに記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体。
(1)配列番号:229に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:238に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(2)配列番号:256に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:258に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(3)配列番号:262に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:258に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(4)配列番号:289に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:291に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
(5)配列番号:295に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号:297に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
【請求項29】
配列番号:2、254、260、287または293に記載のアミノ酸配列を有する抗体。
【請求項30】
請求項16〜29のいずれかに記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入され、かつ請求項16〜29のいずれかに記載の抗体と同等の活性を有する抗体。
【請求項31】
請求項16〜30のいずれかに記載の抗体が認識するエピトープを認識する抗体。
【請求項32】
ヒトMplの26番目から274番目のアミノ酸部位を認識する抗体。
【請求項33】
TPOアゴニスト活性を有する、請求項1〜32のいずれかに記載の抗体。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項35】
請求項34に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ請求項1〜33のいずれかに記載の抗体と同等の活性を有する抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項36】
請求項34または35に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項37】
請求項34または35に記載のポリヌクレオチドまたは請求項36に記載のベクターを保持する宿主細胞。
【請求項38】
請求項1〜33のいずれかに記載の抗体を含有する、医薬組成物。

【国際公開番号】WO2005/056604
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516202(P2005−516202)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018506
【国際出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】