説明

折り戸用蝶番

【課題】扉への埋込部材における応力集中、変形を防止できる折り戸用蝶番を提供する。
【解決手段】折り戸用蝶番100は、第1の突出部111aおよび軸受部112aを有する第1の羽根110aと、第1の突出部111aの幅より狭く形成された第2の突出部111bおよび軸受部112bを有する第2の羽根110bと有し、軸受部112aの間に軸受部112bが入り込んで互いに回動可能に連結されてなる蝶番本体110と、一方の扉130aに形成された埋込凹部131aに嵌入する埋込部121aと、第1の突出部111aの立ち上がり面101aに嵌合する嵌合部122aとを有する第1の埋込部材120aと、他方の扉130bに形成された埋込凹部131bに嵌入する埋込部121bと、第2の突出部111bの立ち上がり面101bに嵌合する嵌合部122bとを有する第2の埋込部材120bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローゼット扉や開閉間仕切などで用いられる折り戸の中央部の扉間に介装される折り戸用蝶番に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、折り戸等用の蝶番としては、例えば、折り戸の扉体間を回動可能に連結させるヒンジが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のヒンジは、平板体の上下方向の中間部を、裏面側に向けて断面略コ字状に突出した突出部が折り曲げて形成された一対のヒンジ本体を備えている。突出部は、上下両側に一対の立上がり面部が設けられ、また、これら立上がり面部の高さ寸法は、各扉体の埋込凹部の深さ寸法に略一致している。また、一方のヒンジ本体の突出部は他方のヒンジ本体の突出部における上下寸法より幅広である。さらに、各ヒンジ本体の裏面側には、合成樹脂などにて成形された同形の埋込部材がそれぞれ取り付けられている。埋込部材は、ヒンジ本体の突出部の周囲に嵌合される上下一対の嵌合片部を有し、嵌合片部に嵌挿凹部が形成されている。これら嵌挿凹部は、ヒンジ本体の嵌挿突部のそれぞれが圧入されて嵌挿される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−269031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のヒンジは、突出部の幅寸法が小さい方において、突出部の周囲である上下両側域に空隙を介して嵌合されている状態で、座のねじ止めだけで支持しており、経年使用により扉の重さが嵌挿凹部により受けることとなり、嵌挿凹部に応力集中が発生し、変形することで、扉のがたつきや下方への位置ずれが発生し易いことが予測されるものであった。
【0006】
また、特許文献1のヒンジは、ヒンジ本体の立上がり面部の高さ寸法は、各扉体の埋込凹部の深さ寸法に略一致しているため、扉の埋込凹部に装着する際にルータ等で加工される際に残る切削屑、または他の蝶番構成部品の突起やバリ等が邪魔になることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、シンプルな形状で、羽根に強固に固定できる埋込部材を用いることで、埋込部材における応力集中、変形を防止し、扉のがたつきや下方への位置ずれを防ぐことができる折り戸用蝶番を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る折り戸用蝶番は、隣り合う2つの扉の対向する扉縁部にそれぞれ固定され、扉間を回動可能に連結させる折り戸用蝶番であって、上下方向の中央部を折り曲げて形成された第1の突出部と該第1の突出部の一端側に形成された軸受部と第1の突出部の上下に設けられる羽根板とを有する第1の羽根と、上下方向の中央部を折り曲げて前記第1の突出部の幅より狭く形成された第2の突出部と該第2の突出部の一端側に形成された軸受部と第2の突出部の上下に設けられる羽根板とを有する第2の羽根とを有し、第1の羽根の軸受部の間に第2の羽根の軸受部が入り込んで互いに回動可能に連結されてなる蝶番本体と、一方の扉に形成された埋込凹部に嵌入するための埋込部と、該埋込部を略C字形に切り欠いて形成され、前記第1の突出部の上下方向と同幅を有し、前記第1の突出部の立ち上がり面に嵌合する嵌合部とを有する第1の埋込部材と、他方の扉に形成された埋込凹部に嵌入するための埋込部と、該埋込部を略C字形に切り欠いて形成され、前記第2の突出部の上下方向と同幅で前記第1の埋込部材の嵌合部の幅より狭い幅を有し、前記第2の突出部の立ち上がり面に嵌合する嵌合部とを有する第2の埋込部材とを備え、前記第1の埋込部材および第2の埋込部材の切り欠き側には、前記第1の羽根および第2の羽根に掛止する突起がそれぞれ設けられ、切り欠きの底部に前記第1の突出部および第2の突出部の他端側に形成された引っ掛け部を挿入する引っ掛け穴が設けられ、前記蝶番本体に装着する際に、前記第1の埋込部材および第2の埋込部材は前記第1の羽根および第2の羽根に対して傾斜状態で前記引っ掛け部が前記引っ掛け穴に挿入されて、第1の突出部および第2の突出部の立ち上がり面に嵌合されることを特徴とするものである。
【0009】
例えば、前記第1の埋込部材と第2の埋込部材の埋込部の高さを、前記第1の突出部と前記第2の突出部より高くする。
【0010】
また例えば、前記第1の羽根および第2の羽根には、位置決め穴が形成され、前記第1の埋込部材と第2の埋込部材には、前記位置決め穴に嵌合する位置決め凸部が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、折り戸用蝶番は、一方の扉に形成された埋込凹部に嵌入するための埋込部と、該埋込部を略C字形に切り欠いて形成され、第1の突出部の上下方向と同幅を有し、第1の突出部の立ち上がり面に嵌合する嵌合部とを有する第1の埋込部材と、他方の扉に形成された埋込凹部に嵌入するための埋込部と、該埋込部を略C字形に切り欠いて形成され、第2の突出部の上下方向と同幅で第1の埋込部材の嵌合部の幅より狭い幅を有し、第2の突出部の立ち上がり面に嵌合する嵌合部とを有する第2の埋込部材とを備えることで、シンプルな形状で、羽根に強固に固定できる埋込部材を用いることで、埋込部材の取り扱いを容易にできると共に、埋込部材における応力集中を防止し、扉のがたつきや下方への位置ずれを防ぐことができる。
【0012】
また、第1の埋込部材と第2の埋込部材の埋込部の高さは、第1の突出部と第2の突出部より高くすることで、扉への取付の際に、埋込部材のみが扉の埋込凹部の加工面に接触するため、他の蝶番構成部品の突起やバリ、切削屑等が邪魔をすることなく、精度よく安定的に取付られる効果が得られる。
【0013】
また、第1の羽根および第2の羽根には、位置決め穴が形成され、また、第1の埋込部材と第2の埋込部材には、位置決め穴に嵌合する位置決め凸部が形成されることで、第1の埋込部材の第1の羽根への装着、および第2の埋込部材の第2の羽根への装着が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の折り戸用蝶番100の構成を示す分解図である。
【図2】折り戸用蝶番100の構成を示す上面図である。
【図3】羽根への埋込部材の取り付けを示す説明図である。
【図4】埋込部材装着後の状態を示す図である。
【図5】折り戸用蝶番100のA−A断面図である。
【図6】折り戸用蝶番100のB−B断面図である。
【図7】折り戸用蝶番100のC−C断面図である。
【図8】折り戸用蝶番100の扉に装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る折り戸用蝶番を実施するための形態を、図を参照して説明する。
【0016】
本発明に係る折り戸用蝶番は、隣り合う2つの扉の対向する扉縁部にそれぞれ固定され、扉間を回動可能に連結させるものである。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の折り戸用蝶番100の構成を示す分解図である。また、図2は、折り戸用蝶番100の構成を示す上面図である。
【0018】
図1および図2に示すように、折り戸用蝶番100は、第1の羽根110aと、第2の羽根110bと有し、第1の羽根110aの軸受部112aの間に第2の羽根110bの軸受部112bが入り込んで互いに回動可能に連結されてなる蝶番本体110と、第1の羽根110aに装着される第1の埋込部材120aと、第2の羽根110bに装着される第2の埋込部材120bとを備える。
【0019】
蝶番本体110は、扉へ装着する際の上下方向の中央部を裏面側に折り曲げて形成された第1の突出部111aと該第1の突出部111aの一端側に形成された軸受部112aと第1の突出部111aの上下に設けられる羽根板107aとを有する第1の羽根110aと、上下方向中央部を折り曲げて第1の突出部111aの幅より狭く形成された第2の突出部111bおよび該第2の突出部111bの一端側に形成された軸受部112bと第2の突出部111bの上下に設けられる羽根板107bとを有する第2の羽根110bと、第1の羽根110aの軸受部112aの間に第2の羽根110bの軸受部112bが入り込んで互いに回動可能に連結させる軸113と、カム114と、および羽根の回動角度を保持あるいは規制する付勢手段としてのスライダー115およびバネ116とから構成されている。
【0020】
第1の羽根110aは、金属製の板状部材の長手方向中央部にプレス成形などにて折り曲げて形成された所定幅の凸状(断面略コ字状)の第1の突出部111aを有し、この第1の突出部の立上がり面101aは、互いに平行に立設されている。また、立上がり面101aの高さ寸法は、スライダー115、バネ116等の部品を収納できるように適宜に設計される。この第1の突出部111aの各立上がり面101aの一端側に1対の軸受部112aが設けられている。これら軸受部112aは、立上がり面101aと同一な面の平板状であり、各軸受部112aの中心部には、互いに同軸の円形の軸受孔102aがそれぞれ形成されている。また、第1の突出部111aの他端側に引っ掛け部103aが形成されている。
【0021】
第2の羽根110bは、金属製の板状部材の長手方向中央部にプレス成形などにて折り曲げて形成された所定幅の凸状(断面略コ字状)の第2の突出部111bを有する。第2の突出部111bの幅は、第1の突出部111aの幅より狭く形成されている。また、この第2の突出部111bの立上がり面101bは、互いに平行に立設されている。また、立上がり面101bの高さ寸法は、第1の突出部111aの高さと同じである。この第2の突出部111bの各立上がり面101bの一端側に1対の軸受部112bが設けられている。これら軸受部112bは、立上がり面101bと同一な面の平板状であり、各軸受部112bの中心部には、互いに同軸の円形の軸受孔102bがそれぞれ形成されている。また、第2の突出部111bの他端側に引っ掛け部103bが形成されている。
【0022】
第2の羽根110bの軸受部112bを、第1の羽根110aの軸受部112aの間に入り込むことが可能である。さらに、第1の羽根110bの軸受部112bと第2の羽根110bの軸受部112bの間にそれぞれブッシュ117が配置されている。これらのブッシュ117は異音軽減、緩衝機能を有する。
【0023】
また、第1の羽根110aおよび第2の羽根110bにおいて、羽根板107a,107bに、円形のねじ挿通孔104a,104bが複数、例えば第1の突出部111a、第2の突出部111bの両側に2つずつ設けられる。羽根板107a,107bはねじで扉に固定される。また、角形の位置決め穴105a,105bが、第1の突出部111a、第2の突出部111bの両側に1つずつ設けられる。
【0024】
第2の羽根110bの軸受部112bを、第1の羽根110aの軸受部112aの間に入り込んで軸113により互いに回動可能に連結させて、蝶番本体110が構成される。
【0025】
埋込部材120は、一方の扉130aに形成された埋込凹部131aに嵌入するための埋込部121aと、該埋込部121aを切り欠き状にして形成され、第1の突出部111aの幅に対応した幅を有し、第1の突出部111aの立ち上がり面101aに嵌合する嵌合部122aとを有する第1の埋込部材120aと、他方の扉130bに形成された埋込凹部131bに嵌入するための埋込部121bと、該埋込部121bを切り欠き状にして形成され、第2の突出部111bの幅に対応し第1の埋込部材120aの嵌合部122aの幅より狭い幅を有し、第2の突出部111bの立ち上がり面101bに嵌合する嵌合部122bとを有する第2の埋込部材120bとを備える。ここで、第1の埋込部材120aの埋込部121aと第2の埋込部材120bの埋込部121bは、形成された嵌合部以外に同一の形状を有する。
【0026】
第1の埋込部材120aは、合成樹脂などから略C字状に成形されている。この第1の埋込部材120aは、円形の外周面を有する埋込部121aと、該埋込部121aを切り欠き状にして形成され、第1の羽根110aの第1の突出部111aの立ち上がり面101aに嵌合する嵌合部122aとを有する。埋込部121aは、一方の扉130aに形成された埋込凹部131aに嵌入することが可能である。また、第1の埋込部材120aには、第1の羽根110aの位置決め穴105aに嵌合する位置決め凸部123aが形成される。位置決め凸部123aの端部には面取りまたは円角Rが形成されている。さらに、第1の埋込部材120aの開口端(切り欠き側)には、第1の羽根110aに掛止する一対の突起124aが形成され、突起124aの端面に凹弧面状の軸逃凹部125aがそれぞれ設けられ、反対側に掛止面128aが設けられている。なお、第1の埋込部材120aの開口端に対向する側に外方へと突出した板状部126aが一体的に設けられている。この板状部126aは、第1の羽根110aの切り欠き部106aとほぼ同じ形状を有し、かつ第1の羽根110aと同じ厚さを有する。
【0027】
第2の埋込部材120bは、合成樹脂などから略C字状に成形されている。この第2の埋込部材120bは、円形の外周面を有する埋込部121bと、該埋込部121bを切り欠き状にして形成され、第2の羽根110bの第2の突出部111bの立ち上がり面101bに嵌合する嵌合部122bとを有する。即ち、第2の埋込部材120bの嵌合部122bの幅は、第1の埋込部材120aの嵌合部122aの幅より狭く形成されている。埋込部121bは、他方の扉130bに形成された埋込凹部131bに嵌入することが可能である。また、第2の埋込部材120bには、第2の羽根110bの位置決め穴105bに嵌合する位置決め凸部123bが形成される。位置決め凸部123bの端部には面取りまたは円角Rが形成されている。さらに、第2の埋込部材120bの開口端(切り欠き側)には、第2の羽根110bに掛止する一対の突起124bが形成され、突起124bの端面に凹弧面状の軸逃凹部125bがそれぞれ設けられ、反対側に掛止面128bが設けられている。なお、第2の埋込部材120bの開口端に対向する側に外方へと突出した板状部126bが一体的に設けられている。この板状部126bは、第2の羽根110bの切り欠き部106bとほぼ同じ形状を有し、かつ第2の羽根110bと同じ厚さを有する。
【0028】
また、第1の埋込部材120aおよび第2の埋込部材120bの切り欠きの底部には、第1の羽根110aの引っ掛け部103aおよび第2の羽根110bの引っ掛け部103bを挿入する引っ掛け穴127a,127bが設けられている。これにより、装着後の第1の埋込部材120aおよび第2の埋込部材120bが外れることを防止することができる。
【0029】
次に、第1の埋込部材120aおよび第2の埋込部材120bを、第1の羽根110aおよび第2の羽根110bに装着する方法について、図3、図4を参照しながら説明する。ここで、第2の埋込部材120bを第2の羽根110bに装着する方法を例として説明する。第1の埋込部材120aの装着は第2の埋込部材120bと同様である。
【0030】
第2の埋込部材120bを第2の羽根110bに装着する際に、まず、図3(a)に示すように、第2の羽根110bの第2の突出部111bを上になるようにして、第2の埋込部材120bを傾斜させ、引っ掛け穴127bを第2の羽根110bの引っ掛け部103bに対応する位置にする。
【0031】
次に、図3(a)に示す状態から図中の矢印方向に、第2の羽根110bの引っ掛け部103bを引っ掛け穴127bに挿入するように第2の埋込部材120bをほぼ水平方向へ移動させる。図3(b)に示す状態にする。
【0032】
そして、図3(b)に示す状態から図中の矢印方向に、第2の埋込部材120bを下方に押して、位置決め凸部123bを第2の羽根110bの位置決め穴105bに圧入し嵌合させ、突起124aの掛止面128a,128bが羽根板107a,107bに掛止するように、即ち、図3(c)に示す状態にする。これにより、第2の埋込部材120bの第2の羽根110bへの装着が完了する。
【0033】
図4は、埋込部材120を蝶番本体110に装着された状態を示す図である。図4に示すように、第1の埋込部材120aの嵌合部122aは、第1の突出部111aの立ち上がり面101aにすき間なく嵌合されている。また、第2の埋込部材120bの嵌合部122bは、第2の突出部111bの立ち上がり面101bにすき間なく嵌合されている。
【0034】
図5は、折り戸用蝶番100のA−A断面図である。図5に示すように、第1の埋込部材120aと第2の埋込部材120bを蝶番本体110に装着された状態では、第1の埋込部材120aの位置決め凸部123aが、第1の羽根110aの位置決め穴105aに嵌合される状態になり、第2の埋込部材120bも同様である。これにより、第1の埋込部材120aの第1の羽根110aへの装着、および第2の埋込部材120bの第2の羽根110bへの装着が容易にできると共に、位置決めも確実になる。
【0035】
また、第1の埋込部材120aの開口端に設けられた突起124aが第1の羽根110aと軸113との間に位置し、掛止面128a,128bは羽根板107a,107bに掛止する。なお、この突起124aを押すことで、第1の埋込部材120aを簡単に取り外すことができる。第2の埋込部材120bも同様である。
【0036】
図6は、折り戸用蝶番100のB−B断面図である。図6に示すように、第1の埋込部材120aの嵌合部122aは第1の突出部111aの立ち上がり面101aに緊密に嵌合される状態となる。これにより、扉130aの重さ(図中矢印方向)を、嵌合部122aと接触する第1の突出部111aの立ち上がり面101aにより受けることになる。そのため、第1の埋込部材120aにおける応力集中を防止し、扉130aのがたつきや下方への位置ずれを防ぐことが可能となる。
【0037】
図7は、折り戸用蝶番100のC−C断面図である。図7に示すように、第2の埋込部材120bの嵌合部122bは第2の突出部111bの立ち上がり面101bに緊密に嵌合される状態となる。これにより、扉130bの重さを、嵌合部122bと接触する第2の突出部111bの立ち上がり面101bにより受けることになる。そのため、第2の埋込部材120bにおける応力集中を防止し、扉130bのがたつきや下方への位置ずれを防ぐことが可能となる。
【0038】
図8は、折り戸用蝶番100の扉に装着した状態を示す断面図である。図8に示すように、折り戸用蝶番100の扉に装着した状態において、第1の羽根110aの引っ掛け部103aが引っ掛け穴127aに挿入されており、第2の羽根110bの引っ掛け部103bが引っ掛け穴127bに挿入されている。また、第1の埋込部材120aと第2の埋込部材120bの埋込部121a,121bの高さを、第1の突出部111aと第2の突出部111bより高くなっているため、埋込部材120(120a,120b)のみが扉の埋込凹部130a,131bの加工面に接触することになる。
【0039】
このように本実施の形態においては、折り戸用蝶番100は、扉へ装着する際の上下方向の中央部を裏面側に折り曲げて形成された第1の突出部111aと該第1の突出部111aの一端側に形成された軸受部112aと第1の突出部111aの上下に設けられる羽根板107aとを有する第1の羽根110aと、上下方向中央部を折り曲げて第1の突出部111aの幅より狭く形成された第2の突出部111bおよび該第2の突出部111bの一端側に形成された軸受部112bと第2の突出部111bの上下に設けられる羽根板107bとを有する第2の羽根110bとを有し、第1の羽根110aの軸受部112aの間に第2の羽根110bの軸受部112bが入り込んで互いに回動可能に連結されてなる蝶番本体110と、一方の扉130aに形成された埋込凹部131aに嵌入するための埋込部121aと、該埋込部121aを切り欠き状にして形成され、第1の突出部111aの幅に対応した幅を有し、第1の突出部111aの立ち上がり面101aに嵌合する嵌合部122aとを有する第1の埋込部材120aと、他方の扉130bに形成された埋込凹部131bに嵌入するための埋込部121bと、該埋込部121bを切り欠き状にして形成され、第2の突出部111bの幅に対応し第1の埋込部材120aの嵌合部122aの幅より狭い幅を有し、第2の突出部111bの立ち上がり面101bに嵌合する嵌合部122bとを有する第2の埋込部材120bとを備える。
【0040】
これにより、埋込部材120(120a,120b)の取り扱いを容易にできると共に、埋込部材120における応力集中を防止し、扉、特に扉130bのがたつきや下方への位置ずれを防ぐことができる。また、従来のような嵌挿突部を形成する切り起し加工を省略したため、第1の羽根110aおよび第2の羽根110bの加工が容易にできる。
【0041】
また、第1の埋込部材120aと第2の埋込部材120bの埋込部121a,121bの高さは、第1の突出部111aと第2の突出部111bより高くすることで、扉130a,130bへの取付の際に、埋込部材120(120a,120b)のみが扉の埋込凹部130a,131bの加工面に接触するため、他の蝶番構成部品の突起やバリ、切削屑等が邪魔をすることなく、精度よく安定的に取付られ、美観を損ねることがない効果が得られる。
【0042】
また、第1の羽根110aおよび第2の羽根110bには、位置決め穴105a,105bが形成され、また、第1の埋込部材120aと第2の埋込部材120bには、位置決め穴105a,105bに嵌合する位置決め凸部123a,123bが形成されることで、第1の埋込部材120aの第1の羽根110aへの装着、および第2の埋込部材120bの第2の羽根110bへの装着が容易にできると共に、位置決めも確実になる。
【0043】
なお、上述実施の形態においては、第1の埋込部材120aと第2の埋込部材120bが合成樹脂から形成されたものについて説明したが、これに限定されるものではない。他の材料、例えば、金属材料から形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、クローゼット扉や開閉間仕切などで用いられる折り戸の中央部の扉間に介装される折り戸用蝶番に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
100 折り戸用蝶番
101a,101b 立上がり面
102a,102b 軸受孔
103a,103b 引っ掛け部
104a,104b ねじ挿通孔
105a,105b 位置決め穴
106a,106b 切り欠き部
107a,107b 羽根板
110 蝶番本体
110a 第1の羽根
110b 第2の羽根
111a 第1の突出部
111b 第2の突出部
112a 軸受部
112b 軸受部
113 軸
114 カム
115 スライダー
116 バネ
117 ブッシュ
120 埋込部材
120a 第1の埋込部材
120b 第2の埋込部材
121a,121b 埋込部
122a,122b 嵌合部
123a,123b 位置決め凸部
124a,124b 突起
125a,125b 軸逃凹部
126a,126b 板状部
127a,127b 引っ掛け穴
128a,128b 掛止面
130a,130b 扉
131a,131b 埋込凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う2つの扉の対向する扉縁部にそれぞれ固定され、扉間を回動可能に連結させる折り戸用蝶番であって、
上下方向の中央部を折り曲げて形成された第1の突出部と該第1の突出部の一端側に形成された軸受部と第1の突出部の上下に設けられる羽根板とを有する第1の羽根と、上下方向の中央部を折り曲げて前記第1の突出部の幅より狭く形成された第2の突出部と該第2の突出部の一端側に形成された軸受部と第2の突出部の上下に設けられる羽根板とを有する第2の羽根とを有し、第1の羽根の軸受部の間に第2の羽根の軸受部が入り込んで互いに回動可能に連結されてなる蝶番本体と、
一方の扉に形成された埋込凹部に嵌入するための埋込部と、該埋込部を略C字形に切り欠いて形成され、前記第1の突出部の上下方向と同幅を有し、前記第1の突出部の立ち上がり面に嵌合する嵌合部とを有する第1の埋込部材と、
他方の扉に形成された埋込凹部に嵌入するための埋込部と、該埋込部を略C字形に切り欠いて形成され、前記第2の突出部の上下方向と同幅で前記第1の埋込部材の嵌合部の幅より狭い幅を有し、前記第2の突出部の立ち上がり面に嵌合する嵌合部とを有する第2の埋込部材とを備え、
前記第1の埋込部材および第2の埋込部材の切り欠き側には、前記第1の羽根および第2の羽根に掛止する突起がそれぞれ設けられ、切り欠きの底部に前記第1の突出部および第2の突出部の他端側に形成された引っ掛け部を挿入する引っ掛け穴が設けられ、前記蝶番本体に装着する際に、前記第1の埋込部材および第2の埋込部材は前記第1の羽根および第2の羽根に対して傾斜状態で前記引っ掛け部が前記引っ掛け穴に挿入されて、第1の突出部および第2の突出部の立ち上がり面に嵌合されることを特徴とする折り戸用蝶番。
【請求項2】
前記第1の埋込部材と第2の埋込部材の埋込部の高さを、前記第1の突出部と前記第2の突出部より高くすることを特徴とする請求項1に記載の折り戸用蝶番。
【請求項3】
前記第1の羽根および第2の羽根には、位置決め穴が形成され、
前記第1の埋込部材と第2の埋込部材には、前記位置決め穴に嵌合する位置決め凸部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の折り戸用蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−80236(P2011−80236A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232877(P2009−232877)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)
【出願人】(000119449)磯川産業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】