説明

折り畳み二輪車及び折り畳み二輪車用カバー

【課題】前輪を利用した前後両方向への安定した転がし輪行を簡素な構成で実現できる折り畳み二輪車を提供する。
【解決手段】後輪4に駆動力を伝達して走行可能な乗車状態と、車体2が折り畳まれて前輪3が後輪4の側方に配置される折り畳み状態との間で変形可能な折り畳み自転車1は、折り畳み状態において、前輪3と、後輪4に対して前輪3とは反対側に配置されたコロ36とにより、後輪4を浮かした状態で車体2を支持しつつ、前輪3を転がして輪行可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み二輪車及び折り畳み二輪車用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み状態において、前輪等を転がして輪行できるようにした折り畳み自転車が知られている。このような折り畳み自転車は、前輪や後輪を輪行に利用せず、輪行専用の車輪のみを転がして輪行を行う折り畳み自転車(例えば非特許文献1)に比較して、部品点数の削減や小型化の点で有利である。
【0003】
特許文献1では、折り畳み状態において、前輪が、後輪の側方の位置であって、若干前後にずれた位置に配置される折り畳み自転車が開示されている。この折り畳み自転車では、折り畳み状態の自転車の前後を上下に傾けて後輪を浮かせることにより、前輪を転がして輪行を行うことができる。
【0004】
特許文献2では、折り畳み状態において、前輪が後輪の側方に配置されるとともに、前輪及び後輪の前方に補助輪が配置される折り畳み自転車が開示されている。この折り畳み自転車では、前輪、後輪及び補助輪を転がして輪行を行うことができる。また、後輪はワンウェイクラッチを介してクランクやペダルに接続されており、後輪の後退する方向への回転はペダル等により阻害されるところ、特許文献2の折り畳み自転車では、チェーンとギアとの噛合を解除する機構が設けられており、後輪の後退する方向への回転も可能としている。
【特許文献1】特開2002−200995号公報
【特許文献2】特開2001−171586号公報
【非特許文献1】「折りたたみ自転車&小径スポーツの本 Vol.3」、株式会社▲えい▼出版社、2004年8月10日発行、p.22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前輪のみで転がし輪行を行う場合、安定性を得るためには、折り畳んだときに重心の左右方向の位置が前輪付近となるようにしなければならない。従って、設計条件に制約が生じる。また、特許文献1のように前輪を後輪の側方に配置する折り畳み自転車においては、重心の左右方向の位置を前輪付近とすることは困難である。
【0006】
前輪及び後輪により転がし輪行を行う場合には、後輪がワンウェイクラッチに接続されているために、転がし輪行の方向が一方向に限定される。特許文献2のように、チェーンとギアとの噛合を解除可能とすれば、構成が複雑化する。
【0007】
本発明の目的は、前輪を利用した前後両方向への安定した転がし輪行を簡素な構成で実現できる折り畳み二輪車及び折り畳み二輪車用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の折り畳み二輪車は、後輪に駆動力を伝達して走行可能な乗車状態と、車体が折り畳まれて前輪が前記後輪の側方に配置される折り畳み状態との間で変形可能な折り畳み二輪車であって、前記折り畳み状態において、前記前輪と、前記後輪に対して前記前輪とは反対側に配置された輪行補助部とにより、前記後輪を浮かした状態で前記車体を支持しつつ、前記前輪を転がして輪行可能である。
【0009】
好適には、前記輪行補助部は、前記後輪を軸支する後輪フォークの前記乗車状態における天面側の位置であって前記後輪より側方へずれた位置に設けられ、前記車体は、前記後輪フォークの前記乗車状態における天面側が地面側になるように当該車体を折り畳み可能とする後輪側折り畳み部と、前記車体が前記後輪側折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記前輪が前記後輪の前記輪行補助部とは反対側の側方に位置するように前記車体を折り畳み可能とする前輪側折り畳み部とを備える。
【0010】
好適には、前記折り畳み状態において前記車体を支持可能なスタンド部材を更に備え、前記輪行補助部は、前記折り畳み状態において、前記前輪及び前記スタンド部材により前記車体を支持したときに接地し、前記スタンド部材を地面から浮かせたときに前記前輪と当該輪行補助部とにより前記車体を支持する位置に設けられている。
【0011】
好適には、前記折り畳み状態において前記車体を支持可能なスタンド部材を更に備え、前記輪行補助部は、前記折り畳み状態において、前記前輪及び前記スタンド部材により前記車体を支持したときに非接地となり、前記スタンド部材を地面から浮かせたときに接地して前記前輪と当該輪行補助部とにより前記車体を支持する位置に設けられている。
【0012】
好適には、前記後輪を軸支する後輪フォークの前記乗車状態における天面側に設けられた荷台を更に備え、前記輪行補助部は前記荷台に設けられ、前記折り畳み状態において、前記後輪フォークは、前記乗車状態における天面側が地面側になるように配置され、前記荷台は、前記前輪の進退方向において前記前輪の接地点とずれた位置で接地して前記車体を支持可能であり、前記荷台を地面から浮かせ、前記前輪と前記輪行補助部とにより前記車体を支持しつつ、前記前輪を転がして輪行可能である。
【0013】
好適には、前記後輪を軸支する後輪フォークの前記乗車状態における天面側に設けられた荷台を更に備え、前記後輪フォークは、前記折り畳み状態において、前記乗車状態における天面側が地面側になるように配置され、前記輪行補助部は、前記後輪フォークの前記乗車状態における天面側へ、前記荷台から突出する位置と、突出しない位置との間で移動可能に設けられている。
【0014】
好適には、前記輪行補助部は、前記前輪よりも径の小さい複数の補助輪を備え、前記複数の補助輪は、前記折り畳み状態において、前記前輪の周方向に配列され、前記前輪の回転軸と平行な軸回りに回転可能である。
【0015】
好適には、前記車体は、メインフレームと、前記前輪を軸支し、前記メインフレームを支持する前輪フォークと、前記後輪を軸支し、前記メインフレームを支持する後輪フォークと、前記メインフレームに支持されるハンドルステムパイプと、前記メインフレームに支持されるシートパイプと、前記後輪が前記メインフレームの側方に位置するように、前記後輪フォークと前記メインフレームとを折り畳み可能に連結する第1折り畳み部と、前記車体が前記第1折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記前輪が前記後輪の側方に位置するように前記メインフレームを折り畳み可能とする第2折り畳み部と、前記ハンドルステムパイプを二つ折りに折り畳み可能とする第3折り畳み部と、前記車体が前記第1及び第2折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記二つ折にされたハンドルステムパイプが前記前輪及び前記後輪の側方に位置するように、前記車体を折り畳み可能とする第4折り畳み部と、前記車体が前記第1及び第2折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記シートパイプが前記メインフレーム側へ倒れるように、前記車体を折り畳み可能とする第5折り畳み部と、を備え、前記折り畳み状態において、前記輪行補助部は、前記後輪を浮かした状態で前記前輪とで前記車体を支持可能な位置と、当該位置から天面側へ移動した位置との間で移動可能に設けられている。
【0016】
本発明の第2の観点の折り畳み自転車は、前輪及び後輪のうち一方の車輪に駆動力を伝達して走行可能な乗車状態と、車体が折り畳まれて、前記前輪及び後輪のうち他方の車輪が前記一方の車輪の側方に配置される折り畳み状態との間で変形可能な折り畳み二輪車であって、前記折り畳み状態において、前記他方の車輪と、前記一方の車輪に対して前記他方の車輪とは反対側に配置された輪行補助部とにより、前記一方の車輪を浮かした状態で前記車体を支持しつつ、前記他方の車輪を転がして輪行可能である。
【0017】
本発明の第3の観点の折り畳み二輪車用カバーは、後輪の側方に前輪が配置されるように折り畳まれた状態で、前記前輪及び前記後輪のうち少なくともいずれか一方を転がして輪行可能な折り畳み二輪車を収納するカバーであって、前記折り畳み状態の前記二輪車全体を収納可能な大きさの直方体状に形成され、前記前輪及び前記後輪の側方の面に背中を当接させて背負うためのショルダーベルトが設けられ、前記二輪車の折り畳み状態における地面側を覆う面は着脱可能に設けられ、当該地面側を覆う面を取り外すことにより転がし輪行可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前輪を利用した前後両方向への安定した転がし輪行を簡素な構成で実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の実施形態
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態の折り畳み自転車(以下、単に「自転車」という)1の要部の外観を示す図である。図1は乗車状態を示す側面図、図2(a)は折り畳み状態を示す概観斜視図、図2(b)は折り畳み状態を図2(a)とは異なる視点から示す概観斜視図である。なお、図1及び図2の座標系xyzは、自転車1のメインフレーム6に対して固定して示している。
【0020】
図1に示すように、自転車1は、車体2と、乗車状態において車体2を支持する前輪3及び後輪4とを備えている。自転車1はいわゆる小径の自転車として構成されており、前輪及び後輪の直径は、例えば、14〜18インチである。前輪3及び後輪4は、薄型化しつつ強度を維持するために、例えばディスクホイールにより構成されている。自転車1は、図2(a)及び図2(b)に示すように、前輪3が後輪4の側方に配置されるように折り畳まれる。
【0021】
図1に示すように、車体2は、メインフレーム6と、前輪3を軸支し、メインフレーム6を支持する前輪フォーク7と、後輪4を軸支し、メインフレーム7を支持する後輪フォーク8と、メインフレーム6に支持され、ハンドル9を支持するハンドルステムパイプ10と、メインフレーム6に支持され、サドル11を支持するシートパイプ12を備えている。
【0022】
メインフレーム6は略水平方向に延びており、上下左右に配置された4本のパイプにより構成されている。なお、図2(b)に示すように、折り畳み時には、左右に配置されたパイプの間に後輪4が挿入される。換言すれば、メインフレームとしてのパイプの側方に後輪4は配置される。図1に示すように、メインフレーム6の前方端部には、前輪フォーク7及びハンドルステムパイプ10を軸支するためのヘッドパイプ14が、後方端部には、後輪フォーク8やシートパイプ12等を支持するための支持部15が設けられている。
【0023】
前輪フォーク7は、片側フォークにより構成されており、前輪フォーク7の下部は、前輪3に対して図1の紙面手前側にのみ配置されている。なお、図2(b)に示すように、折り畳み状態では、前輪3の側面のうち、前輪フォーク7が設けられている側の面(図2(b)の紙面奥手方向)が後輪4に向けられ、前輪フォーク7が設けられていない面にはハンドルステムパイプ10が配置される。図1に示すように、前輪フォーク7の上部はヘッドパイプ14に下方側から挿入されており、ヘッドパイプ14の上方側から挿入されたハンドルステムパイプ10と回転方向において係合している。
【0024】
後輪フォーク8は、図1に示すように、側面視において全体形状が概ね三角形に形成されている。三角形の頂点のうち紙面右側の2つの頂点は支持部15に連結され、紙面左側の1つの頂点には後輪4が軸支されている。
【0025】
自転車1は、後輪4へ駆動力を伝達するために、ペダル16と、ペダル16を支持し、支持部15の下方において軸支されるクランク腕17と、クランク腕17の回転軸に固定され、クランク腕17と一体的に回転するギア18と、ギア18に掛架されてギア18の回転を伝達するチェーン19と、チェーン19が掛架され、後輪4の回転軸に固定されて後輪4と一体的に回転するギア20とを備えている。
【0026】
自転車1は、荷台(スタンド部材)35と、荷台35に軸支されるコロ36とを備えている。荷台35は、例えば複数のムク丸棒が組み合わされることにより構成されており、後輪4の天面側に荷物を載置可能に配置され、後輪フォーク8に対して固定されている。
【0027】
コロ36は、荷台35に設けられているから、後輪4の乗車状態における天面側に位置する。当然、コロ36は乗車状態においては接地しない。また、コロ36は、図2(a)に示すように、荷台35の一方の側方に設けられており、後輪4より側方にずれた位置に位置する。コロ36は荷台35の支持部15側に設けられている。
【0028】
図2(a)に示すように、折り畳み状態においては、荷台35及びコロ36は後輪4の地面側に配置され、荷台35の後端部35a及びコロ36は接地する。自転車1は、後端部35aを持ち上げることにより、前輪3及びコロ36により転がし輪行可能である。荷台35の後端部35aは、自転車1を支持するスタンドとして機能し、コロ36は、自転車1を支持するスタンド及び転がし輪行を行う際の補助輪として機能する。
【0029】
コロ36は、小型化の観点からは小さいことが望ましく、その一方で、路面に凹凸があっても転がし輪行をスムーズに行うようにする観点からは大きいことが望ましい。従って、例えば、コロ36の直径は50mmである。直径50mmの場合、例えば前輪3が18インチの場合は前輪3の直径の約1/9であり、前輪3が14インチの場合は前輪3の直径の約1/7であり、前輪3とのバランスもよい。なお、従来の折り畳み自転車には、転がし輪行用として50mm以上のコロを設けたものはない。また、コロ36は重量抑制の観点からは薄いことが好ましく、例えば、コロ36の厚さは4cm以下である。
【0030】
自転車1は、図1に示す乗車状態から図2(a)及び図2(b)に示す折り畳み状態へ、車体2を折り畳むための複数の折り畳み部を備えている。具体的には、支持部15と後輪フォーク8との間に設けられた第1折り畳み部21と、メインフレーム6に設けられた第2折り畳み部22と、ハンドルステムパイプ10に設けられた第3折り畳み部23と、ヘッドパイプ14とハンドルステムパイプ10との間に設けられた第4折り畳み部24と、支持部15とシートパイプ12との間に設けられた第5折り畳み部25とを備えている。
【0031】
第1折り畳み部21は、後輪フォーク8の下方側の頂点に設けられており、後輪フォーク8を支持部15に対してy軸回りに回転可能に軸支している。乗車状態においては、第1折り畳み部21に引張り荷重が加わるとともに、後輪フォーク8の上方側の頂点と支持部15との間に弾性部材31を介して圧縮荷重が加わる。なお、後輪フォーク8の上方側の頂点には、後輪フォーク8と支持部15とを固定するための不図示の係合手段も設けられている。
【0032】
第2折り畳み部22は、例えば蝶番により構成され、メインフレーム6を側方(y軸方向)へ折り畳み可能である。
【0033】
第3折り畳み部23は、例えば蝶番により構成され、ハンドルステムパイプ10を二つ折りに折り畳み可能である。
【0034】
第4折り畳み部24は、ハンドルステムパイプ10と前輪フォーク7との係合又はその解除を行う不図示の係合部と、ハンドルステムパイプ10をヘッドパイプ14に対して倒すようにハンドルステムパイプ10及びヘッドパイプ14を折り畳み可能な蝶番とを含んで構成されている。
【0035】
第5折り畳み部25は、例えば蝶番により構成され、シートパイプ12をメインフレーム6側(前方)へ倒すようにシートパイプ12及び支持部15を折り畳み可能である。
【0036】
なお、第2〜第5折り畳み部には、蝶番の開動作を規制する不図示のロック機構も設けられている。
【0037】
図3〜図9は、自転車1の折り畳み手順を示す概念図である。なお、図3〜図9においては、荷台35及びコロ36を省略して示している。
【0038】
図3は乗車状態を示している。なお、乗車状態において前輪3及び後輪4によって規定される接地面をGL1とする。この状態から、図4に示すように、後輪フォーク8を、第1折り畳み部21を中心として地面側を経由するように回転させて、後輪8を、接地面GL1よりも上方であって、メインフレーム6と重なる位置へ配置する。なお、チェーン19もギア18及びギア20に掛架された状態で、後輪フォーク8とともに回転する。
【0039】
次に、図5に示すように、第2折り畳み部22においてフレーム6を折り畳む。第2折り畳み部22の蝶番は、上方側が下方側よりも前方になるように傾斜して設けられており、前輪3は接地面GL1よりも上方に移動し、ハンドルステムパイプ10は前方に傾斜する。また、前輪3は後輪4よりも後方(図5の紙面左側)に位置する。なお、第1折り畳み部21及び第2折り畳み部22により折り畳んだ後の前輪3及び後輪4により規定される接地面をGL2とする。接地面GL2は、フレーム6を基準として、接地面GL1と略平行であり、また、接地面GL1よりも上方側に位置する。
【0040】
図5の状態から、図6に示すように、第4折り畳み部24において、前輪フォーク7とハンドルステムパイプ10との回転方向の係合を解除し、ハンドルステムパイプ10を90度回転させる。そして、図7に示すように、第3折り畳み部23によりハンドルステムパイプ10を二つ折りにする。図7に示す状態から、図8に示すように、第4折り畳み部24によりハンドルステムパイプ10を倒すように折り畳む。これにより、ハンドル9及びハンドルステムパイプ10は、前輪3及び後輪4に略重なる。
【0041】
そして、図9に示すように、サドル11をシートパイプ12から取り外すとともに、第5折り畳み部25によりシートパイプ12を前方に倒す。また、図2(a)に示すように、2本のクランク腕17のうち一方を他方と平行になるように折り畳む。2本のクランク腕の位置は、図2(a)に示す上方側の位置と、図2(b)に示す下方側の位置といずれでもよい。しかし、転がし輪行のときは図2(a)に示す上部位置とする。
【0042】
図10は、折り畳み状態における自転車1の側面図である。実線で示す矩形stqrは、荷台35及びコロ36が設けられていないとした場合に、接地面GL2を一辺とし、自転車1を包含する矩形である。この図にしめすように、荷台35の後端部35aは、矩形stqrから突出している。突出位置は、前輪3の進退方向(図10の左右方向)において、後輪4に対して前輪3の反対側である。従って、自転車1の接地面は、前輪3及び荷台35の後端部35aにより規定される接地面GL3となり、後輪4は非接地となる。
【0043】
コロ36は、前輪3の進退方向において、前輪3と接地面GL3との接地位置と略同じ位置において接地面GL3に接地している。従って、コロ36は、荷台35の後端部35aを接地させた状態では接地してスタンドとして機能し、荷台35の後端部35aを浮かした状態では接地面GL4に対して前輪3とともに転がり可能であり、補助輪として機能する。
【0044】
なお、接地面GL3を一辺とし、自転車1を包含する矩形s′t′q′r′は、矩形stqrと略同程度の大きさとなるように設定することが望ましい。矩形stqrや矩形s′t′q′r′は、コインロッカー等に収納可能な大きさに設定されることが実用上好ましく、例えば、矩形s′t′q′r′の大きさは343mm×471mmである。
【0045】
図11は、荷台35の後端部35aを持ち上げて、前輪3及びコロ36を転がして輪行を行う場合の折り畳み状態を示す概略図である。転がし輪行の際には、第3折り畳み部23及び第4折り畳み部24を折り畳み前の状態とする。これにより、ユーザはハンドル9を掴んで自転車1の荷台35の後端部35a側を持ち上げ、容易に転がし輪行を行うことができる。
【0046】
以下では、コロ36の設置位置の具体例を挙げ、当該具体例について図11のθ1(θ3)を変化させた場合のコロ36の機能を左右させる位置的特徴について説明し、コロ36の実用的な設置領域について説明する。
【0047】
図12(a)は、前輪3、後輪4及びコロ36の平面図である。θ1=0の場合、自転車1は、前輪3の接地点A、荷台35の後端部35aの接地点B1、B2、コロ36の接地点Cにおいて支持されている。このように、4つの接地点により安定して支持するためには、4つの接地点が同一平面状となるように、コロ36の位置等を設定しなければならない。4つの接地点により支持できるか否かには、コロ36の大きさや、前輪3の周方向におけるコロ36の位置等が影響する。なお、接地点A、B1、C等により3点支持するようにしてもよい。
【0048】
接地点A、B1、B2、Cにおいて支持されている状態から、荷台35の後端部35aを持ち上げて前輪3及びコロ36により自転車1を2点支持し、さらにθ1を大きくしていくと、前輪3の接地点及びコロ36の接地点はともにx方向において後端部35aの反対側(紙面左側)へ移動していく。この際、前輪3の径はコロ36の径よりも大きいので、接地点の移動長さは前輪3のほうが大きい。
【0049】
従って、図12(a)に例示するように、θ1=0において、前輪3が接地点Aにおいて接地し、コロ36が接地点Aよりも紙面左側の接地点Cにおいて接地するようにコロ36が配置されていた場合には、θ1が徐々に大きくなるに従って、x方向において前輪3の接地点はコロ36の接地点に近づき、接地点A′、接地点C′においてx方向の位置は同一となる。更にθ1を大きくすると、接地点A″、接地点C″のように、前輪3の接地点がコロ36の接地点よりも紙面左側となる。
【0050】
図12(b)〜図12(d)は、前輪3、後輪4及びコロ36の正面図である。例えば、図12(a)の接地点A′、接地点C′のように、前輪3の接地点とコロ36の接地点とのx方向の位置が同一のときに、図12(c)に示すように、前輪3及びコロ36が地面に対して直角になるようにコロ36が取り付けられているとする。この場合、荷台35の後端部35aを上下させて、θ1を大きく、又は小さくすると、図12(b)に示すように、前輪3はコロ36側に傾く。すなわち、前輪3の接地点とコロ36の接地点とのx方向の位置が離れるほど前輪3のコロ36側への傾きαが大きくなる。
【0051】
また、例えば、コロ36が前輪3の外周よりも前輪3の回転中心側へ引き込まれた位置にある場合は、前輪3の接地点とコロ36の接地点とのx方向の位置が一致するときでも、図12(b)に示すように、前輪3はコロ36側に傾いており、荷台35の後端部35aを上下させて、θ1を大きく、又は小さくすると、角度αは更に大きくなる。
【0052】
逆に、コロ36が前輪3の外周よりも突出した位置にある場合は、前輪3の接地点とコロ36の接地点とのx方向の位置が一致するとき、図12(d)に示すように、前輪3はコロ36とは反対側に角度βで傾いており、θ1を大きく、又は小さくすると、角度βは小さくなる。更にθ1を大きく、又は小さくすると、図12(c)に示すように前輪3は地面に垂直となり、さらには図12(b)に示すように前輪3はコロ36側に傾く。
【0053】
前輪3及びコロ36の接地点がx方向において同一となる状態(図12(a)の接地点A′、C′参照)、又は/及び前輪3及びコロ36が地面に対して垂直となった状態(図12(c)参照)で転がし輪行が行われると、転がし輪行の操作性がよい。従って、転がし輪行の操作性の観点からは、転がし輪行時に接地点A′、接地点C′となり、且つ、角度α(β)が0となるように、コロ36の位置が設定されることが望ましい。例えば、ハンドル9の高さやユーザの一般的な体格等の種々の条件を考慮して、θ1(θ3)の大きさとして最も生じうると想定される値を特定し、当該値のときに接地点A′、接地点C′となり、且つ、角度αが0となるようにコロ36の位置を設定することが好ましい。
【0054】
図13は、コロ36の設置位置として好ましい実用的設置領域R1を示す概念図である。各点P0〜P4は、コロ36の接地点を示しており、接地点P1〜P4に囲まれた、ハッチングして示す領域が実用的設置領域R1である。
【0055】
接地点P0は、幾何学的理論接地点である。すなわち、接地点P0は、側面視において、コロ36の外周面36aが前輪3の外周面3aに接するように前輪3の径方向においてコロ36の位置が設定され、かつ、ハンドルステムパイプ10と接地面GL4とのなす角度θ3が所定の基準角度θ5(例えば最も生じうると想定される角度)になったときに外周面36aと外周面3aとの接点が接地するように前輪3の周方向においてコロ36の位置が設定された場合の当該接点である。従って、角度θ3が基準角度θ5の場合には、コロ36の接地点P0と前輪3の接地点とはx方向において一致し、かつ、前輪3及びコロ36は接地面GL4に対して正面視において(x方向に見て)垂直である。
【0056】
転がし輪行の操作性等の観点からは接地点P0に接地点が設定されることが望まれる。一方で、コロ36の設置位置には種々の制約が生じる。例えば、コロ36の設置位置は乗車状態及び折り畳み状態の双方において他の部品の配置位置を避けなければならない。折り畳み状態の小型化の観点や乗車状態の審美性の観点からは、コロ36が突出し過ぎないことが好ましい。
【0057】
すなわち、接地点P0に接地点を設定することは困難な場合があり、また、逆に、接地点P0は、転がし輪行の操作性以外の他の観点からは必ずしも最適な接地点であるとは限らない。従って、コロ36の設置位置は、実用的設置領域R1として示す、接地点P0の周囲の範囲から適宜に選択することになる。
【0058】
実用的設置領域R1の前輪3の周方向の範囲は、例えば、ハンドルステムパイプ10と接地面GL4とのなす角度θ3が、基準角度θ5±dθの範囲にあるときの前輪3の接地点の周方向の範囲により規定できる。基準角度θ5は例えば50°、dθは例えば20°である。すなわち、コロ36の設置位置は、コロ35の接地点が、ハンドルステムパイプ10と接地面GL4とのなす角度が30°〜70°の範囲にあるときの前輪3の接地点の範囲となるように設定されれば実用上好ましい。
【0059】
また、実用的設置領域R1の前輪3の周方向の範囲は、前輪3の周上長さで規定することも可能である。例えば、接地点P0を中心として周方向両側に片側の幅W1で規定できる。幅W1は例えば5cmである。
【0060】
なお、前輪3の周方向におけるコロ36の設置位置は、主として、折り畳み状態において荷台35側を持ち上げず、転がし輪行を行っていないときに(図11のθ1=0)、コロ36が接地してスタンドとして機能するか否かに影響する。スタンドとしての機能を重視する場合は、コロ36を接地点P0よりも接地点P1、P4側に配置する。
【0061】
実用的設置領域R1の前輪3の径方向の範囲は、前輪3の外周面3aからの突出量D1又は引き込み量D2により規定できる。なお、突出量D1及び引き込み量D2は、主として、折り畳み状態における自転車1の傾きα、β(図12参照)に影響する。
【0062】
図14は、正面視における、コロ36の設置位置として好ましい実用的設置領域R2を示す概念図である。2本のクランク腕17のうち一方(紙面左側のクランク腕17)は、2点鎖線で示す位置から、他方のクランク腕17側へ移動可能に設けられている。そして、折り畳み状態の自転車1の紙面左側の位置は、クランク腕17により規定される。換言すれば、クランク腕17以外の部品は、クランク腕17よりも内側に配置することが比較的容易である。
【0063】
従って、折り畳み状態の小型化の観点からは、コロ36はクランク腕17から突出しない位置に配置されていることが好ましく、実用的設置領域R2をクランク腕17から突出しない位置から後輪4までの範囲により規定することができる。
【0064】
以上の第1の実施形態によれば、前輪3と、後輪4に対して前輪3とは反対側に配置されたコロ36とにより、後輪4を浮かした状態で車体2を支持しつつ、前輪3を転がして輪行可能であることから、前後方向の双方にクランク腕を非回転にさせた転がし輪行が可能であり、後輪4のチェーンとギアとの係合を外すような機構も不要であることから構成が簡素である。
【0065】
具体的には、例えば、コロ36が、後輪4に対して、乗車状態における後輪4の天面側の位置であって後輪4の側方にずれた位置に設けられ、後輪4の乗車状態における天面側が地面側になるように後輪フォーク8を回転させる第1折り畳み部21と、前輪3が後輪4のコロ36の反対側の側方に位置するようにメインフレーム6を折り畳むための第2折り畳み部22とが設けられることにより、上記のような転がし輪行が実現される。
【0066】
コロ36は、前輪3及びスタンド部材としての荷台35により車体2を支持したときに接地し、荷台35を地面から浮かせたときに前輪3とコロ36とにより車体2を支持する位置に設けられていることから、コロ36は、転がし輪行のときの補助輪として機能するとともに、転がし輪行を停止したときのスタンドとして機能する。従って、部品点数が削減される。
【0067】
コロ36が荷台35に設けられ、折り畳み状態において、荷台35が前輪3の進退方向において前輪3の接地点Aとずれた位置B1、B2で接地してスタンドとして機能する。そして、荷台35の後端部35a側を地面から浮かせ、前輪3とコロ36とにより転がし輪行が可能であることから、転がし輪行を停止したときのスタンド機能を、部品点数を増加させることなく付加することができ、また、荷台35の後端部35a側を浮かせるだけで停止状態から転がし輪行状態へ移行でき、操作が容易である。
【0068】
第2の実施形態
図15は、本発明の第2の実施形態の折り畳み自転車の要部を示す正面図であり、折り畳み状態を示している。なお、第2の実施形態の折り畳み自転車の概略構成は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と同様の構成については第1の実施形態と同一符号を付す。
【0069】
第1の実施形態のように、コロ36は、転がし輪行の際の補助輪として機能するとともに、転がし輪行を停止した際にはスタンドとして機能することが望ましい。換言すれば、図11のθ1=0のときにも、θ1>0のとき(より具体的には、図11のθ3=基準角度θ5のとき)にも、コロ36が接地することが望ましい。しかし、幾何学的な完璧さを狙うと、補助輪として機能させるとともに、スタンドとして機能させるようにコロ36の位置を設定することは容易ではない。そこで、第2の実施形態の自転車は、補助輪としての機能と、スタンドとしての機能とを両睨み(折衷)するように設計されている。
【0070】
具体的には、図15(a)に示すように、荷台35を接地させて転がし輪行を停止したときには、コロ36が接地面GL3に対して非接地となるように、コロ36の位置を設定する。換言すれば、前輪3及び荷台35の接地点(図12(a)の接地点A、B1、B2参照)により規定される接地面よりもコロ36が上方側に位置するように、コロ36の位置を設定する。
【0071】
ただし、コロ36と接地面GL3との隙間t1を比較的小さく設定することにより、自転車1がコロ36側に微小傾斜したときにコロ36が接地するようにする。すなわち、コロ36を自転車1の転倒等を防止する補助的なスタンドとして機能させる。t1は、後輪4と接地面GL3との距離t2よりも短ければ、後輪4を補助的なスタンドとして機能させる場合よりも好適に転倒等を防止できる。t1は例えば3〜4mm以内である。
【0072】
このようにコロ36の位置を設定した場合、荷台35の後端部35a側を浮かせると、図15(b)に示すように、自転車1全体がコロ36側に傾くことにより、コロ36が接地する。そして、コロ36を補助輪として機能させて転がし輪行を行うことができる。ただし、転がし輪行の操作性を確保するためには、前輪3の傾きαは小さいことが望ましい。例えば、αは4〜5°以内である。
【0073】
以上の第2の実施形態によれば、コロ36の設置位置の設計条件を緩やかにしつつ、コロ36を、転がし輪行時の補助輪として機能させるとともに、転がし輪行を停止した状態における補助的なスタンドとして機能させることができる。
【0074】
第3の実施形態
図16は、本発明の第3の実施形態の折り畳み自転車の要部を示す側面図であり、折り畳み状態における自転車のコロ36周辺を拡大して示している。なお、第3の実施形態の折り畳み自転車の概略構成は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と同様の構成については第1の実施形態と同一符号を付す。
【0075】
図1に示すように、第1の実施形態の折り畳み自転車1では、コロ36が荷台35から天面側へ突出している。この場合、例えば、荷台35に荷物を載置しようとした場合に、コロ36が妨げとなる等の不都合が生じ得る。そこで、第3の実施形態では、コロ36を荷台35から突出する位置と、突出しない位置(荷台から沈み込んだ位置)との間で移動可能とする移動機構351を備えている。
【0076】
移動機構351は、溝部355が開口するプレート352と、溝部355に嵌合する回転軸353と、回転軸353を付勢するコイルばね(付勢手段)354とを備えている。回転軸353はコロ36を軸支しており、回転軸353が溝部355に案内されて移動することにより、コロ36は荷台35から突出する位置P30と沈み込んだ位置P31との間で移動する。
【0077】
具体的には、溝部355は、位置P30から、接地面GL3に対して所定の角度で接地面GL3側へ向かう第1経路355aと、第1経路355aに直交し、第1経路355aから接地面GL3とは反対側へ延びる第2経路355bと、第2経路355bに直交し、第2経路355bから接地面GL3とは反対側へ延びる第3経路355cと、第3経路355cに直交し、第3経路355cから接地面GL3側へ延びる第4経路355dからなる。
【0078】
回転軸353が位置P30に位置するときは、回転軸353は第1経路355aの上端側に当接してプレート353を介して自転車の荷重を受ける。第1経路355aが第2経路355bに対して天面側へ突出していることにより、転がし輪行時における回転軸353の第1経路355aから第2経路355bへの移動は防止される。なお、角度θ7は、転がし輪行時における回転軸353の第1経路355aから第2経路355bへの移動をより確実に阻止するために、転がし輪行時(例えば図11のθ3が基準角度θ5のとき)に第1経路355aが地面に対して直交するように設けられることが好ましい。
【0079】
また、コイルばね354は、第2経路353bに沿って第1経路353a側へ、あるいは、第4経路355dに沿って位置P31側へ、回転軸353を付勢しており、回転軸353の第1経路355aから第2経路355bへの移動及び位置P31から第3経路355cへの移動を阻止している。これにより、より確実に回転軸353は位置P30又は位置P31に固定される。
【0080】
以上の第3の実施形態によれば、コロ36が荷台35から突出する位置と、突出しない位置との間で移動可能に設けられていることから、必要に応じてコロ36を突出させて転がし輪行を行う一方で、荷台35の載置面をフラットにして荷物を載置することができる。
【0081】
また、図10に示すように、折り畳み状態の自転車を包含する矩形s′t′q′r′は、1辺が接地面GL3により規定され、接地面GL3は荷台35の後端部35a及び前輪3の接地点又はコロ36の接地点により規定されるところ、コロ36を移動可能とすることにより、折り畳み状態における小型化を図ることができる。特に、本実施形態のように、メインフレームの側方に後輪及び前輪を配置するなどして、矩形s′t′q′r′のs′−t′間の長さを後輪及び前輪の直径と同程度まで小さくすることができる折り畳み自転車において、コロ36がs′−t′間の長さの短小化の妨げとなることを防止できる。
【0082】
なお、コロを移動させる移動機構は適宜な構成としてよく、例えば、一端において回転軸を軸支し、他端において後輪フォークに固定され、当該他端において回転可能に設けられたアームを設けてもよい。
【0083】
第4の実施形態
図17は、本発明の第4の実施形態の折り畳み自転車の要部を示す正面図であり、折り畳み状態における自転車のコロ周辺を拡大して示している。なお、第4の実施形態の折り畳み自転車の概略構成は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と同様の構成については第1の実施形態と同一符号を付す。
【0084】
第4の実施形態では、第1の実施形態のコロ36に代えて、コロ36よりも小径の複数のコロが設けられている。具体的には、前輪3の回転軸と平行な軸回りに回転する2つのコロ451、コロ452が前輪3の周方向に配列されている。換言すれば、荷台35の後端部35aを接地させた状態において、コロ451と接地面GL3との距離よりも、コロ452と接地面GL3との距離のほうが大きく設定されている。
【0085】
後輪ブレーキなどでAR部分(図17のハッチング部分)が空間的にコロ設置のスペースとして確保できない場合、周方向配列複数コロは好都合である。コロが1個である場合よりも地面の凹凸に関して転がしの円滑性の良いことは言うまでもない。
【0086】
なお、図17では、第2の実施形態と同様に、荷台35の後端部35aが接地した状態において、コロ451及びコロ452が接地面GL3に対して微小隙間で浮いている場合を例示しているが、コロ451が接地していてもよい。
【0087】
図17の折り畳み自転車において、荷台35の後端部35aを持ち上げると、第2の実施形態と同様に、折り畳み自転車がコロ451、452側(紙面奥手側)に傾き、コロ451が接地する。これにより、前輪3及びコロ451により転がし輪行が可能となる。
【0088】
更に、後端部35aを持ち上げると、コロ451に加えて、コロ452が接地し、前輪3、コロ451及びコロ452により転がし輪行が可能となる。更に後端部35aを持ち上げると、コロ451は地面から離れ、前輪3及びコロ452により転がし輪行が可能となる。
【0089】
以上の第4の実施形態によれば、複数のコロ451、452が前輪3の周方向に配置されていることから、荷台35を持ち上げたときの傾き(図11の角度θ1参照)に応じて接地するコロが変化する。従って、単一のコロを設けた場合に比較して、比較的小さなコロを用いつつ、例えば、転がし輪行時及び転がし輪行の停止時の双方において接地可能にコロを設けたり、荷台35を持ち上げたときの傾き(θ1)に応じて変化する自転車の側方への傾き(図12の角度α参照)を抑制することができる。
【0090】
なお、コロの小型化は、例えば、審美性の向上に貢献する。また、図17に示すように、比較的大きなコロ36の荷台35からの突出量はコロ36の径に対して小さいことから、コロ36を荷台35により軸支するためには、荷台35を上方側へ湾曲させる等の設計が必要であるが、コロ451、コロ452においては、荷台35からの突出量をコロ451及び452の半径と同等とすれば、そのような必要はない。
【0091】
第5の実施形態
図18及び図19は、本発明の第5の実施形態の折り畳み自転車用カバー(以下、単に「カバー」という)501を示す図であり、図18は側面図、図19(a)は図18の紙面上方から見た図、図19(b)は図18の紙面右側から見た図、図19(c)は図18の紙面左側から見た図である。
【0092】
なお、第5の実施形態のカバー501に収納される自転車は、例えば、第1〜5の実施形態の自転車であることから、カバー501に収納される自転車に第1の実施形態と同一符号を付す。また、以下では、図18の紙面上下方向を便宜的にカバー501の上下方向として説明する。
【0093】
カバー501は、袋部502と、ショルダーベルト503とを備えている。袋部502は、例えばビニール等の可撓性を有する材料により構成され、折り畳み状態の自転車1の全体を収納可能な大きさの直方体状に形成されている。ショルダーベルト503は、前輪3及び後輪4の側方の面502eに背中を当接させて背負うことができるように、面502eに2本設けられている。前輪3及び後輪4の側方の面を背負うことにより、背中への当接面積として比較的広い面積を確保することができ、安定して背負うことができる。なお、面502eには、ユーザの背中や自転車1を保護する観点から、スポンジ等により構成される弾性部材504が配置されている。
【0094】
ショルダーベルト503は、前輪3及び後輪4の進退方向(図19(a)の紙面左右方向)に延びるように設けられている。なお、図10に示すように、自転車1を包含する矩形s′t′q′r′のs′−t′間の長さは前輪3及び後輪4の直径に略等しく、s′−r′間の長さは前輪3及び後輪4の位置がずれている分だけs′−t′間の長さよりも長いから、ショルダーベルト503は、袋部502の長手方向に延びるように設けられることになり、ユーザは袋部502を安定して背負うことができる。
【0095】
袋部502の前輪3や後輪4の接地面側には、袋部502の全周に亘るファスナー508が設けられており、袋部502は上部カバー502aと、下部カバー502bとに分離可能である。換言すれば、下部カバー502bは着脱可能に設けられており、下部カバー502bを取り外すことにより、上部カバー502aを自転車1に被せた状態で、自転車1を転がし輪行可能である。
【0096】
ファスナー508の図18の紙面上下方向の位置は適宜に設定してよい。ただし、転がし輪行時には、後輪4側(紙面右側)を持ち上げるから、上部カバー502aの前輪3側(紙面左側)の裾が地面に付かないように、想定される傾きの大きさに応じた高さに設定することが好ましい。
【0097】
図19(a)及び図19(b)に示すように、袋部502は、前輪3の進退方向(図19(a)の紙面右側)の面と上面との交差部に、開口部505が開口する。また、袋部502には、図19(a)及び図19(c)に示すように、袋部502の上面及び開口部505とは反対側の側面に亘って延びるファスナー506が設けられている。ファスナー506は開口部505に連続している。従って、ファスナー506を開いた状態で、ハンドルステムパイプ10を開口部505から突出させるようにして自転車1を袋部502内に収納した後、ファスナー506を閉じることにより、図18に示すように、ハンドルステムパイプ10を掴んで転がし輪行を行うことが可能となる。なお、カバー501に転がし輪行用の引き紐を設け、当該引き紐を引くことにより転がし輪行を行うようにしてもよい。
【0098】
以上の第5の実施形態によれば、折り畳み状態の自転車1全体を収納可能な大きさの直方体状に形成され、前輪3及び後輪4の側方の面に背中を当接させて背負うためのショルダーベルト503が設けられ、下部カバー502bは着脱可能であるから、自転車1を背負って輪行を行うことも、下部カバー502bを外して転がし輪行を行うこともできる。ショルダーベルト503は、前輪3及び後輪4の側方に背中を当接させるように設けられているから、安定して背負うことができる。ショルダーベルト503は、上部カバー502aのみに取り付けられているとともに、背負ったときに下部カバー502bは側面に位置するから、背負ったときにファスナー508に加わる荷重負担が比較的小さく、強度的に有利である。公共交通機関ではむき出しの荷物(自転車)は他の乗客への安全性から許されていない。しかし、上部カバー502a等がバッグの役目をはたし電車等での運搬に支障がなくなる。
【0099】
本発明は以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施してよい。
【0100】
二輪車は、前輪及び後輪の二輪を備えているものであればよく、自転車に限定されない。例えば、内燃機関や電動モータにより駆動力を得るものでもよい。
【0101】
また、乗車状態と折り畳み状態との間の変形は、前輪が後輪の側方に配置されるように車体が折り畳まれるものであればよく、後輪が地面側を経由するように折り畳むものや、前輪が側方へ移動するように折り畳むものに限定されない。例えば、前輪が天面側又は地面側を経由するように折り畳まれてもよいし、後輪が側方へ移動するように折り畳まれてもよい。
【0102】
輪行補助部は、前輪を転がして輪行する際に接地するものであればよい。従って、輪行補助部はコロに限定されず、例えば、地面に対して摺動する滑り板により輪行補助部を構成してもよい。また、転がし輪行を停止したときにスタンドとして機能しなくてもよいし、輪行補助部が設けられる場所も荷台に限定されない。
【0103】
スタンド部材は、折り畳み状態において、前輪及び当該スタンド部材により車体を支持できるものであればよく、荷台に限定されない。例えば、後輪をスタンド部材として利用してもよい。
【0104】
周方向に配列されている複数の補助輪は、前輪の円周と同一の曲率で配列されていなくてもよい。3つ以上配列されている場合は、前輪の回転軸側を凹とする弧状に配置されていれば、円周方向に配列されているということができる。また、2つ配列されている場合は、転がし輪行を停止した状態、例えば、前輪及びスタンド部材により支持している状態において、一方の補助輪と接地面との距離が、他方の補助輪と接地面との距離よりも離れていれば、周方向に配列されているといえる。いずれにせよ、折り畳み状態の自転車の傾きを変化させたときに、接地する補助輪が変化することにより、自転車の傾き等を抑制することができる。
【0105】
二輪車は、前輪駆動のものであってもよい。この場合、前輪を浮かせて、後輪により転がし輪行を行えるように、折り畳み状態において輪行補助部が前輪を挟んで後輪の反対側に配置されるようにすればよい。例えば、前輪の乗車状態における天面側に荷台を設け、当該荷台に輪行補助部を設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施形態の折り畳み自転車を乗車状態で示す側面図。
【図2】図1の折り畳み自転車を折り畳み状態で示す斜視図。
【図3】図1の折り畳み自転車の折り畳み手順を示す概念図。
【図4】図3の続きの図。
【図5】図4の続きの図。
【図6】図5の続きの図。
【図7】図6の続きの図。
【図8】図7の続きの図。
【図9】図8の続きの図。
【図10】図1の折り畳み自転車の折り畳み状態を示す側面図。
【図11】図1の折り畳み自転車の転がし輪行時の折り畳み状態を示す概略側面図。
【図12】図1の折り畳み自転車の折り畳み状態における接地状況を示す図。
【図13】図1の折り畳み自転車のコロの実用的設置領域を示す図。
【図14】図1の折り畳み自転車のコロの実用的設置領域を示す図。
【図15】本発明の第2の実施形態の折り畳み自転車の要部を示す図。
【図16】本発明の第3の実施形態の折り畳み自転車の要部を示す図。
【図17】本発明の第4の実施形態の折り畳み自転車の要部を示す図。
【図18】本発明の第5の実施形態の折り畳み自転車用カバーを示す図。
【図19】図18の折り畳み自転車用カバーを示す図。
【符号の説明】
【0107】
1…自転車、2…車体、3…前輪、4…後輪、36…コロ(輪行補助部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪に駆動力を伝達して走行可能な乗車状態と、車体が折り畳まれて前輪が前記後輪の側方に配置される折り畳み状態との間で変形可能な折り畳み二輪車であって、
前記折り畳み状態において、前記前輪と、前記後輪に対して前記前輪とは反対側に配置された輪行補助部とにより、前記後輪を浮かした状態で前記車体を支持しつつ、前記前輪を転がして輪行可能な折り畳み二輪車。
【請求項2】
前記輪行補助部は、前記後輪を軸支する後輪フォークの前記乗車状態における天面側の位置であって前記後輪より側方へずれた位置に設けられ、
前記車体は、
前記後輪フォークの前記乗車状態における天面側が地面側になるように当該車体を折り畳み可能とする後輪側折り畳み部と、
前記車体が前記後輪側折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記前輪が前記後輪の前記輪行補助部とは反対側の側方に位置するように前記車体を折り畳み可能とする前輪側折り畳み部と、
を備えた請求項1に記載の折り畳み二輪車。
【請求項3】
前記折り畳み状態において前記車体を支持可能なスタンド部材を更に備え、
前記輪行補助部は、前記折り畳み状態において、前記前輪及び前記スタンド部材により前記車体を支持したときに接地し、前記スタンド部材を地面から浮かせたときに前記前輪と当該輪行補助部とにより前記車体を支持する位置に設けられている
請求項1又は2に記載の折り畳み二輪車。
【請求項4】
前記折り畳み状態において前記車体を支持可能なスタンド部材を更に備え、
前記輪行補助部は、前記折り畳み状態において、前記前輪及び前記スタンド部材により前記車体を支持したときに非接地となり、前記スタンド部材を地面から浮かせたときに接地して前記前輪と当該輪行補助部とにより前記車体を支持する位置に設けられている
請求項1又は2に記載の折り畳み二輪車。
【請求項5】
前記後輪を軸支する後輪フォークの前記乗車状態における天面側に設けられた荷台を更に備え、
前記輪行補助部は前記荷台に設けられ、
前記折り畳み状態において、前記後輪フォークは、前記乗車状態における天面側が地面側になるように配置され、前記荷台は、前記前輪の進退方向において前記前輪の接地点とずれた位置で接地して前記車体を支持可能であり、前記荷台を地面から浮かせ、前記前輪と前記輪行補助部とにより前記車体を支持しつつ、前記前輪を転がして輪行可能である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の折り畳み二輪車。
【請求項6】
前記後輪を軸支する後輪フォークの前記乗車状態における天面側に設けられた荷台を更に備え、
前記後輪フォークは、前記折り畳み状態において、前記乗車状態における天面側が地面側になるように配置され、
前記輪行補助部は、前記後輪フォークの前記乗車状態における天面側へ、前記荷台から突出する位置と、突出しない位置との間で移動可能に設けられている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の折り畳み二輪車。
【請求項7】
前記輪行補助部は、前記前輪よりも径の小さい複数の補助輪を備え、
前記複数の補助輪は、前記折り畳み状態において、前記前輪の周方向に配列され、前記前輪の回転軸と平行な軸回りに回転可能である
請求項1〜6のいずれか1項に記載の折り畳み二輪車。
【請求項8】
前記車体は、
メインフレームと、
前記前輪を軸支し、前記メインフレームを支持する前輪フォークと、
前記後輪を軸支し、前記メインフレームを支持する後輪フォークと、
前記メインフレームに支持されるハンドルステムパイプと、
前記メインフレームに支持されるシートパイプと、
前記後輪が前記メインフレームの側方に位置するように、前記後輪フォークと前記メインフレームとを折り畳み可能に連結する第1折り畳み部と、
前記車体が前記第1折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記前輪が前記後輪の側方に位置するように前記メインフレームを折り畳み可能とする第2折り畳み部と、
前記ハンドルステムパイプを二つ折りに折り畳み可能とする第3折り畳み部と、
前記車体が前記第1及び第2折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記二つ折にされたハンドルステムパイプが前記前輪及び前記後輪の側方に位置するように、前記車体を折り畳み可能とする第4折り畳み部と、
前記車体が前記第1及び第2折り畳み部により折り畳まれた状態において、前記シートパイプが前記メインフレーム側へ倒れるように、前記車体を折り畳み可能とする第5折り畳み部と、
を備え、
前記折り畳み状態において、前記輪行補助部は、前記後輪を浮かした状態で前記前輪とで前記車体を支持可能な位置と、当該位置から天面側へ移動した位置との間で移動可能に設けられている
請求項1に記載の折り畳み二輪車。
【請求項9】
前輪及び後輪のうち一方の車輪に駆動力を伝達して走行可能な乗車状態と、車体が折り畳まれて、前記前輪及び後輪のうち他方の車輪が前記一方の車輪の側方に配置される折り畳み状態との間で変形可能な折り畳み二輪車であって、
前記折り畳み状態において、前記他方の車輪と、前記一方の車輪に対して前記他方の車輪とは反対側に配置された輪行補助部とにより、前記一方の車輪を浮かした状態で前記車体を支持しつつ、前記他方の車輪を転がして輪行可能な折り畳み二輪車。
【請求項10】
後輪の側方に前輪が配置されるように折り畳まれた状態で、前記前輪及び前記後輪のうち少なくともいずれか一方を転がして輪行可能な折り畳み二輪車を収納するカバーであって、
前記折り畳み状態の前記二輪車全体を収納可能な大きさの直方体状に形成され、前記前輪及び前記後輪の側方の面に背中を当接させて背負うためのショルダーベルトが設けられ、
前記二輪車の折り畳み状態における地面側を覆う面は着脱可能に設けられ、当該地面側を覆う面を取り外すことにより転がし輪行可能とした
折り畳み二輪車用カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−8418(P2007−8418A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195041(P2005−195041)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】