説明

折取りスパウト

【課題】分離された封止キャップが破断形成された注出口に潜り込んで噛み込むことがなく、封止キャップとスパウト筒部との連結強度を増した耐久性に優れた折取りスパウトを提供する。
【解決手段】容器に固定可能な接合部11と、接合部より上方に延びるスパウト筒部12と、スパウト筒部の注出口12a先端に折取り可能な薄肉部13を介して一体に形成された封止キャップ14とからなり、封止キャップは、外側に張出して設けられた摘み部14aを有し、摘み部の内面とスパウト筒部の外周面とが破断可能なブリッジ14bを介して連結されており、スパウト筒部の外周面には、ブリッジの両側に設けられた傾斜ガイド部12bを有しており、封止キャップの開封時に、摘み部を回転させることによって、薄肉部及びブリッジを破断するとともに、破断されたブリッジが傾斜ガイド部に沿って上方に案内されることで、封止キャップをスパウト筒部の注出口先端から分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状の容器の口部に接着固定されるスパウト筒部の注出口先端に折取り可能な薄肉部を介して一体に形成された封止キャップを連結してなる折取りスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルムやアルミ箔などの可撓性材料で袋状に形成された容器は、各種の食品容器や、薬液などを収容した医療用容器などに広く適用されている。
このような袋状容器には、スパウトと呼ばれる両端が開口したプラスチック製の筒状体からなる注出具が設けられており、このようなスパウトとして、例えば、特許文献1には、図7に示すように、注出筒71(スパウト筒部12)先端に、水平スコア72(薄肉部13)を介して注出口閉塞体73(摘み部14a)を連結し、水平スコア72は、注出筒71の上端を閉じるように形成された脚筒74(連結部14c)を備え、水平スコア72は脚筒74の下端部外面と注出筒71の上端部内面と一体に連結しており、水平スコア72を注出筒71から切り離すまで密封が保たれる折取りスパウト70が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−210321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のスパウト70では、開封時において、閉塞体73を手指で把持して押し込みぎみにねじるようにして水平スコア72を破断して注出筒71の上端に注出口を形成する。このとき、形成された注出口に、切り離された閉塞体73の脚筒74の周縁が潜り込んで噛み込んだ状態になることがある。
このように注出口に、切り離された脚筒74の周縁が潜り込んで噛み込んだ状態が一旦生じると、力の弱い幼児や高齢者などは脚筒74の取り外しが困難となるという問題点があった。
また、注出筒71と脚筒74とが環状の水平スコア72だけで連結されているので、
不用意な外力が加わった場合の耐久性に乏しく、環状の水平スコア72が破断しやすいといった問題もあった。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、開封時に分離された封止キャップが、破断形成された注出口に潜り込んで噛み込むようなことをなくし、封止キャップとスパウト筒部との連結強度を増した耐久性に優れた折取りスパウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の折取りスパウトは、容器に固定可能な接合部と、該接合部より上方に延びるスパウト筒部と、該スパウト筒部の注出口先端に折取り可能な薄肉部を介して一体に形成された封止キャップと、からなる折取りスパウトにおいて、
前記封止キャップは、外側に張出して設けられた摘み部を有し、前記摘み部の内面と前記スパウト筒部の外周面とが破断可能なブリッジを介して連結されており、
前記スパウト筒部の外周面には、少なくとも該ブリッジの両側に設けられた傾斜ガイド部を有しており、
前記封止キャップの開封時に、前記摘み部を回転させることによって、前記折取り可能な薄肉部及び前記ブリッジを破断するとともに、前記破断されたブリッジが前記傾斜ガイド部に沿って上方に案内されることで、前記封止キャップを前記スパウト筒部の注出口先端から分離するようにしたことを特徴とする。
【0007】
(2)本発明は前記(1)の折取りスパウトにおいて、前記傾斜ガイド部は、
前記ブリッジより下方位置且つ周方向近傍位置から上方に向かって延びる傾斜面を有するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
(3)本発明は前記(1)又は(2)の折取りスパウトにおいて、前記スパウト筒部の外周には、前記封止キャップを取り外したスパウト筒部に装着されるチューブの抜けを防止するための段差状装着部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
(4)本発明は前記(1)〜(3)のいずれかの折取りスパウトにおいて、前記スパウト筒部の外周には、前記封止キャップを取り外したスパウト筒部に装着されるチューブ付きコネクタを螺合するための螺着部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の折取りスパウトは、封止キャップの外側に張出して設けられた摘み部と、摘み部の内面とスパウト筒部の外周面とを連結する破断可能なブリッジと、破断されて回転移動するブリッジの先端に沿ってその両側となるスパウト筒部の外周面に設けられた傾斜ガイド部とを有しており、前記封止キャップの開封時に前記摘み部を回転させることによって薄肉部及び摘み部側のブリッジ端を破断するとともに、前記破断されたブリッジ端が傾斜ガイド部に沿って上方に案内されることで、前記封止キャップを前記スパウト筒部の注出口先端から分離するようにしているので、キャップ開封の際に折り取られたキャップ部分が開口部に潜り込んで噛み込むようなことがない。
このようにして、優れた開封性を付与するとともに、耐久性を備えた折取りスパウトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の折取りスパウトの全体正面図である。
【図2】図1の折取りスパウトの全体側面図である。
【図3】図1の折取りスパウトの一部正面半断面図である。
【図4】図3の折取りスパウトの一部側面半断面図である。
【図5】図1の折取りスパウトの開封後の一部正面半断面図である。
【図6】図5の折取りスパウトの一部側面半断面図である。
【図7】従来のスパウトの正面半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の折取りスパウトは、環状の薄肉部を介してスパウト筒部と封止キャップとが一体に成形され、接合部によって袋状に形成されたパウチ容器などの容器に固定され、容器内の液状物を注ぎ出すために用いられる注出具であり、スパウト筒部の外側に板状に張出して形成された摘み部がブリッジを介してスパウト筒部に連結されて、全体的な剛性や強度が高められ、輸送時などにおける安全性や耐久性を高めたものである。
以下、本発明に係る折取りスパウトの一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は実施例の折取りスパウトの全体正面図であり、図2は図1の側面図である。図3は一部正面半断面図であり、図4はその側面半断面図である。図5は開封後の一部正面半断面図であり、図6はその側面半断面図である。
【0013】
図示するように、実施形態の折取りスパウト10は、袋状に形成されたパウチ容器などの注出用開口部に接着材による接着、加熱溶着、螺着などの手段により固定可能な接合部11と、該接合部11より上方に延びるスパウト筒部12と、該スパウト筒部12の注出口12a先端に折取り可能な薄肉部13を介して一体に形成された封止キャップ14とからなる。
封止キャップ14には、使用者が開封時に容易に手指で把持することができるように外側に張出して設けられた摘み部14aが備えられているとともに、この摘み部14aの内面とスパウト筒部12の外周面とを破断可能なブリッジ14bを介して連結して、折取りスパウトの不注意な取り扱いや運搬中の衝撃などによって薄肉部13が容易に破断することのない耐久性を付与している。
【0014】
封止キャップ14は、スパウト筒部12に環状の薄肉部13を介して一体に形成された連結部14cと連結部14cの上面を覆う天面部14dと天面部14dの両外側から外方に張出し、さらに下方に延びる摘み部14aが設けられており、封止キャップ14を手指で把持して折り取る際および周方向に回動する際の操作が容易にできるようにしている。
【0015】
また、摘み部14aの内面とスパウト筒部11の外周面との間にブリッジ14bが配設されている。すなわち、折取りスパウト10の開封前には、ブリッジ14bを介して摘み部14aとスパウト筒部12とが、弱化部15を介して局部的に連結された構造となっている。
これによって、開封前における折取りスパウト10の摘み部14aが、スパウト筒部11の軸芯方向に対して横方向に撓むことを防止して不用意に薄肉部13が開封されることのないように強度を付与している。
【0016】
ブリッジ14bは、封止キャップ14の外側に張出して設けられた摘み部14aの両側に張出し、さらに下方に延びる部分の内方側と、スパウト筒部12の外周面とを局部的に連結しており、開封時に、この摘み部14aを把持して封止キャップ14を周方向に回転させることによって、ブリッジ14bのスパウト筒部12の外周面に連結されている弱化部分である弱化部15が破断されて、ブリッジ14bはスパウト筒部12の外周面から切り離され、摘み部14aの内面に、スパウト筒部12の外周面に向かって突出したブリッジ14bが残されるようになっている。即ち、ブリッジ14bは、摘み部14a側からスパウト筒部12側に向かって、漸次薄肉となっている。
なお、ブリッジ14bの弱化部15は、開封前においては傾斜ガイド部12bの最下位置に対応した部位の即上部においてスパウト筒部12の外周面に連結されている。
【0017】
ブリッジ14bが弱化部15を介して配置されているスパウト筒部12の外周面には、傾斜ガイド部12bが両ブリッジ14bに近接して設けられている。傾斜ガイド部12bは、摘み部14aの内面に残され回転移動する両ブリッジ14bの先端を当接して、このブリッジ14bを上方に案内するための溝などの案内部であり、使用者が封止キャップ14の開封時に摘み部14aを手指で把持して周方向に回転させることによって、折取り可能な薄肉部13及びブリッジ14bを破断するとともに、破断されたブリッジ14bを傾斜ガイド部12bに沿って上方に案内する。
【0018】
また、傾斜ガイド部12bは、ブリッジ14bが切り離される前の連結位置の下部に近接した部位を基点として、スパウト筒部12外周面に、周方向の2方向にそれぞれ上昇するように傾斜して形成されており、開封時において、摘み部14aを周方向のいずれ方向に回転させても、破断されたブリッジ14bの先端を傾斜ガイド部12bに沿って上方に案内して、封止キャップ14をスパウト筒部12の注出口12a先端から分離するようにしている。
また、上方に案内されたブリッジ14bを傾斜ガイド部12b上方に留め置き、薄肉部13の破断により形成された注出口12aに封止キャップ14が再び潜り込むことを防止することができる。
なお、図示していないが、傾斜ガイド部12bは、一方のブリッジ14bのみを案内するように、片側のブリッジに近接して設けられていてもよい。
【0019】
さらに、本実施形態の折取りスパウト10は、傾斜ガイド部12bが、前述した案内溝の他に、ブリッジ14bより下方位置且つ周方向近傍位置から上方に向かって延びる傾斜面を有するものであってもよい。傾斜面の場合は、半径方向に幅を持った坂道の形状となっており、摘み部14aを周方向に回転させると、ブリッジ14bの下方が傾斜面に接して案内されるようになる。
傾斜ガイド部12bをブリッジ14bを挟み込む溝ではなくブリッジ14bの下方のみを拘束する傾斜面とすることによって、摘み部14aをスパウト筒部12から分離することがより容易となる。
【0020】
さらに、折取りスパウト10は、スパウト筒部12の注出口12a先端が環状の薄肉部13を介して封止キャップ14に連なっているとともに、スパウト筒部12の外周面がブリッジ14bを介して連結されている構造を有しており、このため、環状の薄肉部のみによりキャップとスパウトとが連なっている従来公知のキャップ一体型注出具に比して、不用意に外力が加わった場合などにおける封止キャップの耐久性に優れている。
薄肉部13は、スパウト筒部12と封止キャップ14とを連結している弱化部分であり、スパウト筒部12と封止キャップ14との封止状態を維持するとともにスパウト筒部12に封止キャップ14を固定し、封止キャップ14の摘み部14aを手指で把持して回転する開封操作を行うことによって容易に破断され、封止キャップ14を折り取って、注出口12aをスパウト筒部に形成させることができる。
【0021】
接合部11は、舟形筒状であり、その上面に下フランジ11aとさらに間隔を空けた位置に上フランジ11bを備え、袋状のパウチ容器などの開口部に挿入された後、固定される。固定手段としては、加熱溶着や接着材の使用などが挙げられる。
図では、接合部11の装着面に上中下3段の線状突起11cが配置されており、これによって、接合部11のパウチ容器への接合を容易にしている。
【0022】
接合部11の上フランジ11b上方へスパウト筒部12が延設されており、スパウト筒部12は、折取りスパウト10から封止キャップ14を取り除いた開封後において、使用者が直接口を付ける飲み口や、注出用チューブなどの装着部分となる。
【0023】
なお、スパウト筒部12の外周には、フランジ11b側から先端側の薄肉部13に向かって先細り状に且つ段差を有して形成された複数の段差状装着部12cを設けることもできる。このような段差状装着部12cを設けることにより、薄肉部13を破断して封止キャップ14を折り取った状態のスパウト筒部12に装着されるチューブの抜け落ちを効果的に防止でき、容器から薬液などの内容物を外部に漏出させることなく移送することができる。
【0024】
さらに、本実施形態の折取りスパウト10は、スパウト筒部12の外周に封止キャップを取り外したスパウト筒部12に装着されるチューブ付きコネクタを螺合するための螺着部12dを設けることもできる。
これによって、チューブ付きコネクタを介してチューブをスパウト筒部12に確実に取り付けることができ、内容物の漏洩を防止して安全かつ衛生的に利用することができる。
【0025】
なお、折取りスパウト10を構成する樹脂材としては、成形性や容器壁との薄肉部13の引き裂き性や接着性や溶着性などの観点から、各種のオレフィン樹脂、例えば低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)などを適用することができる。
この中でも特に軟質のものを用いることによって、折取りスパウトを射出成形機等により精密にかつ安価に一体成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、封止キャップの外側に張出して設けられた摘み部の内面とスパウト筒部の外周面とを破断可能なブリッジで連結して、破断されて回転移動するブリッジの先端に当接してこれを上方に案内する傾斜ガイド部を設けた折取りスパウトに関するものであり、
キャップ開封の際に折り取られたキャップ部分が開口部に潜り込んで噛み込むようなことがなく、優れた開封性を付与するとともに、耐久性を備えた折取りスパウトを提供することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0027】
10 折取りスパウト
11 接合部
11a 下フランジ
11b 上フランジ
11c 線状突起
12 スパウト筒部
12a 注出口
12b 傾斜ガイド部
12c 段差状装着部
12d 螺着部
13 薄肉部
14 封止キャップ
14a 摘み部
14b ブリッジ
14c 連結部
14d 天面部
15 弱化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に固定可能な接合部と、該接合部より上方に延びるスパウト筒部と、
該スパウト筒部の注出口先端に折取り可能な薄肉部を介して一体に形成された封止キャップと、からなる折取りスパウトにおいて、
前記封止キャップは、外側に張出して設けられた摘み部を有し、前記摘み部の内面と前記スパウト筒部の外周面とが破断可能なブリッジを介して連結されており、
前記スパウト筒部の外周面には、少なくとも該ブリッジの両側に設けられた傾斜ガイド部を有しており、
前記封止キャップの開封時に、
前記摘み部を回転させることによって、
前記折取り可能な薄肉部及び前記ブリッジを破断するとともに、
前記破断されたブリッジが前記傾斜ガイド部に沿って上方に案内されることで、
前記封止キャップを前記スパウト筒部の注出口先端から分離するようにしたことを特徴とする折取りスパウト。
【請求項2】
前記傾斜ガイド部は、前記ブリッジより下方位置且つ周方向近傍位置から上方に向かって延びる傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の折取りスパウト。
【請求項3】
前記スパウト筒部の外周には、
前記封止キャップを取り外したスパウト筒部に装着されるチューブの抜けを防止するための段差状装着部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の折取りスパウト。
【請求項4】
前記スパウト筒部の外周には、
前記封止キャップを取り外したスパウト筒部に装着されるチューブ付きコネクタを螺合するための螺着部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の折取りスパウト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197104(P2012−197104A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63204(P2011−63204)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】