説明

折構造体のロック機構

【目的】2つの部材を堅牢に係合することができ,かつその係合を小さい力で外すこともできる折構造体のロック機構を提供する。
【構成】内箱10に左側面部15の一端にロックパネル16が連続してつながっている。左側面部15とロックパネル16との間の境界位置(主折り線)でロックパネル16は折曲げられる。上記主折り線は内箱10の前後(高さ方向)の中央部分には入れられていず,主折り線が入れられていない箇所に開口16A,16Bによって上下から挟まれた突起部21が位置している。主折り線でロックパネル16が折曲げられると,突起部21が外方に突出して起立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は折構造体のロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
外箱内に収容された内箱をスライド移動させて,内箱の外箱内からの出し入れを繰り返すことができるスライド・カートンが知られている(たとえば,特許文献1)。
【0003】
特許文献1では,振動等によって外筒状体(外箱)内に収容された紙箱本体(内箱)が移動したり,抜け落ちたりするのを防止するために,紙箱本体の移動方向の両端部のそれぞれに垂直に突起を設け,この突起によって外筒状体の移動方向の両端縁を外側からそれぞれ挟んで係合することで,紙箱本体を外筒状体内にとどめている。紙箱本体をスライドさせて外筒状体内から取出すには紙箱本体の突起を強制的に折り曲げる必要があるので,紙箱本体の引出し時に比較的大きな力が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−286431号公報
【発明の開示】
【0005】
この発明は,2つの部材を堅牢に係合することができ,かつその係合を小さい力で外すことができるロック機構を提供することを目的とする。
【0006】
またこの発明は,折構造体の組立て(折曲げ)に伴って(同時に),折構造体の一部を起立させることを目的とする。
【0007】
この発明による折構造体のロック機構は,主折り線においてつながり,上記主折り線に沿う境界において折れ曲がる第1パネルと第2パネルを含み,第1パネルと第2パネルの上記境界上に上記主折り線が形成されていない主折り線未形成箇所が所定長さにわたって存在し,上記主折り線の端に交わりかつ第1パネルと第2パネルの上記境界と交差する切込みまたは開口が上記第1パネルおよび上記第2パネルに連続して形成されており,上記第1パネルおよび上記第2パネルが,上記切込みまたは開口の縁部を縁部とする外方に起立可能な突起部を有している折構造体,上記折構造体の外方に設けられ,外方に起立した上記突起部が係合する縁部を有するロック受けパネル,および上記折構造体の内方に設けられ,上記突起部を内方から支える突起部落込み防止部材を備えている。
【0008】
折構造体を構成する第1パネルまたは第2パネルはその境界上の主折り線に沿って折曲がりやすくなっている。主折り線は第1パネルと第2パネルの間の境界の全体に(一方の縁から他方の縁にかけて連続して)形成されていず,主折り線が形成されていない箇所,すなわち主折り線未形成箇所が所定長さにわたって存在する。
【0009】
上記主折り線の端に交わり(接し)かつ第1パネルと第2パネルの上記境界と交差する切込みまたは開口が,上記第1パネル上および上記第2パネル上に連続して形成されている。切込みまたは開口は,第1パネルと第2パネルの境界と垂直に交差していても,斜めに交差していてもよい。いずれもしても,切込みまたは開口は第1パネルと第2パネルの境界と交差するので,切込みまたは開口の一端は第1パネル上に,他端は第2パネル上に位置する。
【0010】
第1パネルまたは第2パネルはその境界上の主折り線に沿って折曲げられるが,主折り線未形成箇所では主折り線の延長線上よりも切込みまたは開口の先端の位置で曲がりやすい。第1パネルおよび上記第2パネルが主折り線に沿って折曲げられると,主折り線未形成箇所では切込みまたは開口の先端の位置で曲がり,上記切込みまたは開口の縁部を縁部とする突起部が外方に起立する。折構造体の内方では突起部落込み防止部材によって突起部が支えられているので,突起部が意に反して内方に起立することはない。突起部落込み防止部材は突起部が内方に起立することを防止するように折構造体の内方に配置されていればよく,パネルの面部を突起部落込み防止部材として用いても,パネルの縁を突起部落込み防止部材として用いてもよい。
【0011】
折構造体の外方(突起部が起立する向き)に,外方に突出した突起部が係合する縁部を有するロック受けパネルが設けられている。折構造体の突起部がロック受けパネルの縁部に係合することによって,ロック受けパネルに対する折構造体の移動がロックされる。
【0012】
折構造体の突起部は,主折り線に沿って第1パネルまたは第2パネルを折曲げると(折構造体を組立てると)外方に起立する。すなわち,折構造体の組立て(折曲げ)に伴って(同時に),折構造体の突起部を外方に起立させることができ,突起部を立上げるための特有の所作ないし作業を必ずしも必要としない。外方に起立する突起部を持つ折構造体を簡単に得ることができる。突起部を指で押下げれば突起部の起立(立上り)の程度は解消ないし軽減し,ロック受けパネルの縁部との係合を外すことができる。小さい力でロックを解除することができる。
【0013】
一実施態様では,上記突起部上に,上記主折り線に沿う方向に延びる第1の副折り線が,上記主折り線と位置をずらして形成されている。上記第1の副折り線は,主折り線と好ましくは平行であるが,必ずしも平行でなくてもよく主折り線に対して斜めであってもよい。いずれもしても,第1の副折り線を突起部上に形成しておくことで上記突起部を副折り線に沿って折曲がりやすくすることができ,突出部の起立の程度を大きくすることができる。第1の副折り線は主折り線と位置をずらして形成されているので,第1パネル上または第2パネル上に上記突起部の頂上を位置させることができる。
【0014】
好ましくは,上記第1パネルおよび第2パネルの少なくともいずれか一方において,上記切込みまたは開口の先端に交わる(接する)第2の副折り線が形成されている。第2の副折り線は,主折り線と好ましくは平行であるが,必ずしも平行でなくてもよく主折り線に対して斜めであってもよい。第2の副折り線を出発にして突起部を起立させることができ,上記第1パネル上または第2パネル上の突起部の立上りを高くすることができる。
【0015】
上記ロック受けパネルは,その縁部が上記折構造体の突起部が係合する縁部であってもよいし,ロック受けパネルにあけられたロック窓の縁部に上記折構造体の突起部を係合させてもよい。
【0016】
上述したロック機構は,様々なタイプの容器,カートン,パッケージ等に利用することができる。
【0017】
一実施態様では,上記折構造体が箱状であり,上記ロック受けパネルが上記箱状折構造体の少なくとも一部がスライド自在に挿入される筒状体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む(面する)面部であり,上記突起部落込み防止部材が,上記箱状折構造体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む(面する)面部である。箱状折構造体(内箱)と箱状内構造体が挿入される筒状体(外箱)とが解除可能にロックされる。箱状折構造体(内箱)は多角柱状ないし円柱状とすることができる。また箱状折り構造体(内箱)は内部空間をほぼ完全に仕切るタイプのものであっても,一部の面部が開口しているタイプ(トレー・タイプ)のものであってもよい。筒状体(外箱)は箱状折構造体(内箱)に対応する形状であるのは言うまでもない。筒状体(外箱)は上記箱状折構造体が挿入される開口があればよく,その反対側は開口していても閉じていてもよい。筒状体(外箱)は,スライド方向の面部以外の面部の全体を覆うものであってもよいし,その一部を覆うもの(蓋体ないし帯体)であってもよい。
【0018】
他の実施態様では,上記折構造体が筒状(たとえば,外方に弧状に膨らむ2つの面部の両側が固定された形状)であり,上記ロック受けパネルが,上記筒状折構造体の少なくとも一部がスライド自在に挿入される筒状体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む(面する)面部であり,上記突起部落込み防止部材が,上記筒状折構造体の面部のうちの,上記筒状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部である。一方が他方に挿入される二つの筒状体同士が解除可能にロックされる。
【0019】
さらに他の実施態様では,上記折構造体が,側面部の両端につながる平面部を互いに折り重ね合わせたパッケージ体であり,上記ロック受けパネルが,上記パッケージ折構造体の少なくとも一部がスライド自在に挿入される筒状体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部であり,上記突起部落込み防止部材が上記パッケージ体を構成する平面部の端部である。パッケージ体と筒状体とが解除可能にロックされる。
【0020】
好ましい実施態様では,上記折構造体の上記スライド方向に沿ってのびる辺に上記突起部が起立する方向と異なる向きに突出する係止片が形成されており,上記ロック受けパネルを有する筒状体には,上記係止片が形成されている折構造体の辺に対応する辺に上記係止片が通る切込みが上記スライド方向に入れられている。折構造体の係止片と筒状体に入れられた切込みとによって折構造体の移動長を規定することができ,たとえば折構造体の筒状体からの抜落ちを防止することができる。
【0021】
上記突起部が起立する方向と異なる向きに突出する係止片を,上記ロック受けパネルの縁部に係合させることによって,折構造体の筒状体からの抜落ちを防止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ロック機構の基本構成1を示すもので,内面体の展開図である。
【図2】ロック機構の基本構成1を示すもので,外面体の正面図である。
【図3】基本構成1のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図4】基本構成1のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図5】基本構成2のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図6】基本構成2のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図7】ロック機構の基本構成3を示すもので,内面体の展開図である。
【図8】ロック機構の基本構成3を示すもので,外面体の展開図である。
【図9】基本構成3のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図10】基本構成3のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図11】ロック機構の基本構成4を示すもので,内面体の展開図である。
【図12】基本構成4のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図13】基本構成4のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図14】ロック機構の基本構成5を示すもので,内面体の展開図である。
【図15】基本構成5のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図16】基本構成5のロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【図17】第1実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図18】第1実施例を示すもので,外箱の展開図である。
【図19】組立て途中の内箱の斜視図である。
【図20】組立て途中の内箱の斜視図である。
【図21】組立てが完成した内箱および外箱の斜視図である。
【図22】外箱から内箱を引出している様子を示す斜視図である。
【図23】内箱の変形例の斜視図である。
【図24】内箱の変形例の斜視図である。
【図25】内箱の他の変形例の斜視図である。
【図26】内箱の他の変形例の斜視図である。
【図27】内箱のさらに他の変形例の斜視図である。
【図28】内箱のさらに他の変形例の斜視図である。
【図29】内箱のさらに他の変形例の斜視図である。
【図30】内箱のさらに他の変形例の斜視図である。
【図31】第2実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図32】第2実施例を示すもので,外箱の展開図である。
【図33】組立てが完成した内箱および外箱の斜視図である。
【図34】組立てが完成した内箱および外箱の斜視図である。
【図35】第3実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図36】第3実施例を示すもので,外箱の展開図である。
【図37】組立てが完成した内箱および外箱を示す斜視図である。
【図38】外箱から内箱を引き出している様子を示す斜視図である。
【図39】第4実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図40】第4実施例を示すもので,外箱の展開図である。
【図41】組立て(挿入)途中の外箱と内箱とを示す斜視図である。
【図42】組立てが完成した内箱および外箱を示す斜視図である。
【図43】第5実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図44】第5実施例を示すもので,外箱の展開図である。
【図45】内箱および外箱を示す斜視図である。
【図46】外箱内に内箱を収納した状態を示す斜視図である。
【図47】第6実施例を示すもので,PTPホルダ・パッケージの展開図である。
【図48】第6実施例を示すもので,外帯の展開図である。
【図49】組立てが完成したPTPホルダ・パッケージおよび外帯を示す斜視図である。
【図50】PTPホルダ・パッケージに外帯をかけた様子を示す斜視図である。
【図51】第7実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図52】第7実施例を示すもので,外箱の展開図である。
【図53】内箱の組立ての様子を示す斜視図である。
【図54】スライド・カートンの組立ての様子を示す斜視図である。
【図55】スライド・カートンの組立ての様子を示す斜視図である。
【図56】スライド・カートンの組立ての様子を示す一部拡大斜視図である。
【図57】スライド・カートンの組立ての様子を示す一部拡大斜視図である。
【図58】第8実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図59】第8実施例を示すもので,内箱の展開図である。
【図60】スライド・カートンの組立ての様子を示す斜視図である。
【図61】スライド・カートンの組立ての様子を示す斜視図である。
【図62】スライド・カートンの組立ての様子を示す斜視図である。
【図63】スライド・カートンの一部拡大斜視図である。
【図64】スライド・カートンの斜視図である。
【図65】外箱から内箱を引き出している様子を示す斜視図である。
【実施例】
【0023】
ロック機構の基本構成1(図1〜図4)
図1から図4はロック機構の基本構成1を示すもので,図1はロック機構を構成する内面体(折構造体)1の展開図を,図2はロック機構を構成する外面体2(ロック受けパネルP4)の正面図をそれぞれ示す。図3および図4はロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。内面体1,外面体2および後述する支持面体(突起部落込み防止部材)P3は,いずれも厚紙,ボール紙,プラスチック・シート等のシート状素材から構成される。
【0024】
図1を参照して,内面体1には,下縁から上縁に向けてその途中まで延びる1本の折り線L1(一点鎖線で示す)が入れられている。この折り線L1は,後述する説明で明らかになるように折曲げ後(組立て後)の内面体1の形状を形付けるためのものであり,以下,主折り線L1と呼ぶ。また,主折り線L1に沿って延びる境界において,内面体1は左右に区分される。2つの領域P1,P2うち,一方の領域P1は後述する突起部aの起立を支持する機能を果たす。他方の領域P2は突起部aが起立する領域(面部)となる。以下,2つの領域P1,P2を,それぞれ支持パネルP1およびロックパネルP2と呼ぶ。
【0025】
主折り線L1の上端に交わって(接して),主折り線L1に垂直(横方向)に切込みcが入れられている。切込みcの一端(左端)は主折り線L1に近い支持パネルP1上に位置する。切込みcの他端(右端)はロックパネルP2上の中央よりもやや右側に位置する。
【0026】
切込みcから内面体1の上端にかけて,3本の折り線(ミシン目)L2,L3,L4(破線で示す)が縦方向に入れられている。この3本の折り線L2,L3,L4は,折曲げ後の内面体1の形状を形付けるためではなく,後述する突起部aを形付けるために入れられている。上述した折曲げ後の内面体1を形付けるための主折り線L1と区別するために,突起部aを形付ける折り線L2,L3,L4を,以下副折り線L2,L3,L4と呼ぶ。
【0027】
副折り線L2は切込みcの左端と内面体1の上端を結び,支持パネルP1上に位置している。副折り線L4は切込みcの右端と内面体1の上端を結び,ロックパネルP2上に位置している。副折り線L3は副折り線L2,L4の間にあり,ロックパネルP2上に位置している。副折り線L2と副折り線L3は,主折り線L1を挟むように,主折り線L1からそれぞれ左右に位置ずれして形成されている。
【0028】
図3を参照して,内面体1のロックパネルP2の内側に沿って平行に矩形の支持面体P3が配置(固定)される。支持面体P3を配置した後,内面体1(支持パネルP1およびロックパネルP2のいずれか)を主折り線L1に沿って内側にほぼ垂直に折曲げ,支持パネルP1とロックパネルP2とがなす角度をほぼ90度にする。すると,3本の副折り線L2,L3,L4がそれぞれ鈍角に折曲がり,副折り線L2,切込みc,副折り線L4および内面体1の上縁によって規定される矩形部分が外方(外側)に起立する。支持面体P3によって内側から支持されるので,上記矩形部分が内方(内側)に起立することはない。外方に起立する部分を突起部aと呼ぶ。突起部aは3本の副折り線L2,L3,L4のうちの真ん中の副折り線L3を頂上とする山型の形状をなす。
【0029】
図2を参照して,外面体2も矩形状であり,その左斜め上方に矩形のロック窓bがあけられている。ロック窓bは突起部aの横幅(横方向の長さ)よりもわずかに狭い横幅を持つ。ロック窓bの縦幅(高さ)は突起部aの縦幅よりもわずかに長い。基本構成1では外面体2の全体がロック受けパネルP4である。
【0030】
図4を参照して,外面体2を,そのロック窓bの位置と内面体1の突起部aの位置を一致させるようにして内面体1の外側に配置する。外面体2のロック窓bを通して内面体1の突起部aの一部が外面体2の外側に至る。
【0031】
内面体1の突起部aの上縁および下縁が外面体2のロック窓bの窓枠に係止されるので,この係止が解かれない限り,内面体1は係止されている向きに移動しない。突起部aをロック窓bを通して内側に押込むと,突起部aの上縁および下縁とロック窓bの窓枠との係止が解かれ,内面体1の移動が可能になる。このようにして,内面体1と外面体2との解除可能なロック機構が形成される。支持面体P3によって内側から支持されるので,突起部aをロック窓bを通して押し込んだときに,突起部aが内側に向けて起立してしまうことも防止される。
【0032】
上述した突起部aを形付ける3本の副折り線L2,L3,L4のうち,副折り線L4は必ずしも必要ではないが,突起部aの形状をはっきりとした山型にするためには形成するのが好ましい。
【0033】
ロック機構の基本構成2(図5および図6)
図5および図6は,図3および図4に対応するもので,ロック機構の基本構成の変形例(基本構成2と呼ぶ)を示している。
【0034】
上述したロック機構の基本構成1では,支持パネルP1とロックパネルP2とがほぼ直角となるように,主折り線L1に沿って内面体1が垂直に折曲げられ(ほぼ90度の折曲げ),さらに内面体1の内面側に突起部aの内方への落込みを防止するための支持面体P3が配置されている(図4参照)。ロック機構の基本構成2では,支持パネルP1とロックパネルP2とがほぼ平行となるように,主折り線L1に沿って内面体1が折重ねられる(ほぼ 180度の折曲げ)。支持パネルP1が,上述したロック機構の基本構成1における支持面体P3と同様の機能(突起部aの内方への落込み防止)を果たす。
【0035】
内面体1の突起部aを大きく(十分に)起立させるには,支持パネルP1とロックパネルPとが約45度から 180度の角度をなすように主折り線L1に沿って内面体1を折曲げればよい。内面体1を主折り線L1に沿って完全に折重ねる( 180度の折曲げ)ことで,突起部aの立上がりは極大となる。いずれにしても,主折り線L1に沿って内面体1を折曲げれば,これに伴って自動的に突起部aが外方に起立する。
【0036】
ロック機構の基本構成3(図7〜図10)
図7から図10はロック機構のさらなる変形例を示すもので,図7は内面体1の展開図,図8は外面体の展開図,図9および図10はロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。上述したロック機構の基本構成1において示した折り線,パネル等と同様の機能を果たす折り線,パネル等には同一の符号を付している。このことは,後述する他の基本構成においても同様である。
【0037】
図7を参照して,基本構成3では突起部aが内面体1の中央部分に形成されている。すなわち,内面体1には間隔をあけて横向きに互いに平行に延びる2つの切込みC1,C2が入れられており,これらの切込みC1,C2の端部同士を結ぶようにして縦向きに副折り線L2,L4が入れられており,これらの切込みC1,C2および副折り線L2,L4によって突起部aが規定されている。副折り線L2,L4の中間に縦方向に延びる副折り線L3が位置している。さらに,突起部a上を除いて,2本の主折り線L1が間隔をあけて縦向きに互いに平行に形成されている。すなわち,基本構成3では内面体1が2本の主折り線L1によって3つの領域に区分されている。中央の領域がロックパネルP2に相当し,ロックパネルP2の左右のそれぞれにつながる2つの領域が支持パネルP1に相当する。副折り線L2と副折り線L4は,主折り線L1から位置ずれして2つの支持パネルP1上に入れられている。
【0038】
図8を参照して,外面体2には,そのほぼ中央に突起部aに対応する大きさの矩形のロック窓bがあけられている。また,ロック窓bの縦方向に延びる2つの窓枠のそれぞれに沿って,外面体2上には縦方向に延びる折り線L5が入れられている。2本の折り線L5によって挟まれる外面体2の領域がロック受けパネルP4である。
【0039】
図9を参照して,内面体1のロックパネルP2の内側に,ロックパネルP2に対して垂直に2つの支持面体P3が間隔をあけて配置される。支持面体P3を配置した後,内面体1を2本の主折り線L1のそれぞれに沿って内側にほぼ垂直に折曲げる。すると,3本の副折り線L2,L3,L4の位置で突起部aが鈍角に折曲がり,副折り線L3を頂上にして外方に起立する。支持面体P3の端部によって内側から支持されるので,突起部aが内方に起立することはない。
【0040】
図10を参照して,外面体2をそのロック窓bの位置と内面体1の突起部aの位置を一致させて内面体1の外側に配置し,折り線L5に沿って内側に垂直に折曲げる。外面体2のロック窓bを通して内面体1の突起部aの一部が外面体2の外側に至る。ロック機構が完成する。
【0041】
ロック機構の基本構成4(図11〜図13)
図11から図13はロック機構のさらなる変形例を示すもので,図11は内面体1の展開図を,図12および図13はロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。基本構成1(図1〜図4)とは,内面体1の突起部aが内面体1の中央に位置する点,突起部aの上縁および下縁をそれぞれ規定する2本の切込みC1,C2が入れられている点が異なる。主折り線L1は突起部a上を除いて縦方向に入れられている。基本構成4においても,基本構成1と同様に,副折り線L4は必ずしも入れる必要はない。
【0042】
図12および図13を参照して,主折り線L1に沿って内面体1を垂直に折曲げると,内面体1の突起部aが外方に起立する。この突起部aが外面体2のロック窓bに係合して内面体1と外面体2とがロックされる。基本構成4(基本構成3も同様)のように,2本の切込みC1,C2を用いて突起部aの上縁および下縁を形成することによって,突起部aをより強固に支持することができる。
【0043】
ロック機構の基本構成5(図14〜図16)
図14から図16はロック機構のさらなる変形例を示すもので,図14は内面体1の展開図を,図15および図16はロック機構の組立ての様子を示す斜視図である。
【0044】
基本構成5の内面体1はその突起部aの下方に開口(隙間)Hがあけられている点が,基本構成1における内面体1(図1)と異なる。開口Hによって,突起部aの下縁が内面体1と接触せず,主折り線L1に沿って内面体1を折曲げたときに突起部aがスムーズに起立する。突起部aを押込んでロックを解除するときにも突起部aの下縁が内面体1と接触しないので,ロック解除時の内面体1の変形も少なくすることができる。
【0045】
突起部aの下方に加えて,上方にも開口(隙間)をあけてもよいのは言うまでもない。
【0046】
以下,上述した基本構成1〜5を利用したロック機構を有するスライド・カートン等を説明する。
【0047】
第1実施例(図17〜図22)(箱状の内箱を持つスライド・カートン)
図17から図22は第1実施例のスライド・カートンを説明するものである。第1実施例のスライド・カートンは,直方体状の内箱10と角筒状の外箱30から構成される。図17は内箱10の展開図である。図18は外箱30の展開図である。図19および図20は組立て途中の内箱10を斜視的に示している。図21は組立てが完成した内箱10および外箱30(スライド・カートン)の全体を斜視的に示している。図22は外箱30から内箱10を引出している様子を示す斜視図である。スライド・カートンを構成する内箱10および外箱30は,いずれも厚紙,ボール紙,プラスチック・シート等のシート状素材を展開図(図17,図18)にしたがって切断し,後述する切込み(切れ目,ミシン目)を入れ,適所を折曲げかつ接着することによってつくられる。
【0048】
内箱10の展開図(図17)および外箱30の展開図(図18)において,内箱10および外箱30を組立てるときに折曲げられる箇所(折り線)が一点鎖線によって示されている。
【0049】
図17を参照して,内箱10の展開図には糊代(または内側左側面部)11,正面部12,右側面部13,背面部14,左側面部15およびロックパネル16が,この順番で水平(横)方向に連続してつながっている。正面部12および背面部14はほぼ同一形状の縦長の矩形状の形状を持ち,組立てられると正面部12および背面部14が内箱10の互いに対向する正面および背面になる。糊代11,右側面部13および左側面部15はほぼ同一形状の縦長の矩形状の形状を持つ。糊代11,右側面部13および左側面部15の横幅(上縁および下縁の長さ)は正面部12および背面部14の横幅と比べて短い。糊代11と左側面部15は内箱10を組立てるときに左側面部15を外側にして重なり合わされ,内箱1の左側面を形成する。右側面部13が上記左側面に対向する内箱1の右側面となる。
【0050】
正面部12の上端に外側前面部17が,背面部14の上端に内側前面部18が,それぞれつながっている。右側面部13の上端にフラップ13aが,左側面部15の上端にフラップ15aが,それぞれつながっている。外側前面部17と内側前面部18の形状はいずれも横長の矩形状で,外側前面部17の外形は内側前面部18よりも少し大きい。また,外側前面部17の両側端はいずれもわずかに側方に突出している。外側前面部17の両側端からわずかに突出する部分を翼部17aと呼ぶ。外側前面部17と内側前面部18は内箱10を組立てるときに外側前面部17を外側にして重なり合わされ,内箱1の前面を形成する。フラップ13a,15aは内側前面部18との接着に用いられる。
【0051】
正面部12の下縁に外側後面部19が,背面部14の下縁に内側後面部20が,それぞれつながっている。また,右側面部13の下端にフラップ13bが,左側面部15の下端にフラップ15bが,それぞれつながっている。外側後面部19と内側後面部20の形状はいずれも横長の矩形状であり,外側後面部19の外形は内側後面部20よりも少し大きい。外側後面部19および内側後面部20は内箱10を組立てるときに外側後面部19を外側にして同一の位置で重なり合わされ,内箱1の後面を形成する。フラップ13b,15bは内側後面部20との接着に用いられる。
【0052】
上述した正面部12,背面部14,右側面部13,左側面部15,前面部17,18および後面部19,20によって内箱10内の内部空間がつくられる。内箱10の組立てについての詳細は後述する。
【0053】
正面部12の上端部付近に内容物取出口12Aがあけられている。内容物取出口12Aは一辺が外方に向かってわずかに弧状に湾曲しており,残りの三辺は直線状で,全体としてほぼ矩形である。内容物取出口12Aの弧状に湾曲した一辺と反対側の直線状の一辺が正面部12と糊代11の境界に沿っている。内箱10内に入れられた食料品等の内容物が,内容物取出口12Aを通して内箱10の外に取り出される。
【0054】
左側面部15につながるロックパネル16は,左側面部15の上縁に連続して右向きに水平に伸びる上端と,上端の右端から下方に伸び,内箱10の縦方向の長さ(たとえば正面部12と右側面部13の境界の長さ)の2/3程度の長さを持つ側端と,側端の下端から左側面部15の向きに向かって斜めに伸びる斜縁と,左側面部15の下縁に連続して水平に伸び上記斜縁の下端に至る下端によって,その外形が形成されている。ロックパネル16の側端の下部には,側方にわずかに突出する係止片16cが連続して形成されている。
【0055】
ロックパネル16にはその上下方向のほぼ中央に横長の矩形の突起部(ロック部)21が形成されている。また,ロックパネル16には上記突起部21の上方にほぼ正方形の開口16Aが,下方に台形状の開口16Bがそれぞれあけられている。開口16Aの左縁および開口16Bの左縁は,いずれもロックパネル16と左側面部15の境界に位置している。開口16Aの下縁および開口16Bの上縁が,それぞれ突起部21の上縁および下縁の一部を形成する。
【0056】
ロックパネル16は,後述するように,内箱10が組立てられるときに正面部12の外側に覆い被せられる。突起部21の上方の開口16Aは,ロックパネル16が正面部12上に覆い被せられたときに,正面部12にあけられた内容物取出口12Aに対応する位置にくる箇所にあけられている。開口16Aの形状は内容物取出口12Aの形状と同じであっても異なっていてもよい。内容物取出口12Aから外に出される内容物がロックパネル16の開口16Aによって邪魔されることがないように,好ましくは開口16Aは内容物取出口12Aよりも大きく形成される。
【0057】
突起部21の下方の開口16Bは突起部21の動きをスムーズにするためにあけられている。突起部21の動きについての詳細は後述する。
【0058】
ロックパネル16にはまた,開口16Aの下縁および開口16Bの上縁のそれぞれに連続して水平にのびる切込みk1,k2が入れられている。また,左側面部15に,開口16Aの下縁および開口16Bの上縁のそれぞれに連続して水平にわずかに伸びる切込みk3,k4が入れられている。突起部21の上縁は,ロックパネル16に入れられた切込みk1,開口16Aの下縁および左側面部15に入れられた切込みk3によって規定される。突起部21の下縁は,ロックパネル16に入れられた切込みk2,開口16Bの上縁および左側面部15に入れられた切込みk4によって規定される。
【0059】
突起部21の上縁の左端(切込みk3の先端)および突起部21の下縁の左端(切込みk4の先端)は左側面部15上に位置している。突起部21の上縁の左端および突起部21の下縁の左端を結ぶようにして,左側面部15上に折り線m2(破線で示す)が縦方向に形成されている。すなわち,折り線m2は左側面部15上にあり,左側面部15とロックパネル16の境界(折り線)から側方に位置ずれした位置にある。
【0060】
突起部21の上縁の右端(切込みk1の先端)および突起部21の下縁の右端(切込みk2の先端)はいずれもロックパネル16上に位置している。突起部21の上縁の右端および突起部21の下縁の右端を結ぶようにして,ロックパネル16上には折り線m3が形成されている。折り線m3は折り線m2と平行である。左側面部15上の折り線m2とロックパネル16上の折り線m3のそれぞれが,突起部21の左右縁を規定する。
【0061】
さらに,突起部21上の折り線m2に近い位置に折り線m1が形成されている。折り線m1は折り線m2,m3の間にあり,かつ左側面部15とロックパネル16の境界(折り線)から側方に位置ずれしている。折り線m1も折り線m2,m3と平行に延びている。
【0062】
内箱10は次のようにして組立てられる。右側面部13の上下縁につながるフラップ13a,13b,および左側面部15の上下縁につながるフラップ15a,15bをほぼ垂直に折曲げる。右側面部13および左側面部15をほぼ垂直に折曲げる。背面部14の上下縁につながる内側前面部18および内側後面部20を,フラップ13a,15a,13b,15bを外側から覆うようにしてほぼ垂直に折曲げる。内側前面部18およびフラップ13a,15aと,内側後面部20とフラップ13b,15bとを接着剤等によって接着する。
【0063】
正面部12の左縁につながる糊代11,および正面部12の上下縁につながる外側前面部17および外側後面部19をほぼ垂直に折曲げ,続いて正面部12を垂直に折曲げる。正面部12を折曲げるとき,外側前面部17および外側後面部19は,それぞれ内側前面部18および内側後面部20の外側に位置させる。糊代11は外側左側面部15の内側に位置させる。外側前面部17と内側前面部18,外側後面部19と内側後面部20,糊代11と外側左側面部15とを,それぞれ接着剤等によって接着する。これにより内箱10の内部空間が形成される(図19参照)。内箱10の内部空間には正面部12にあけられた内容物取出口12Aを通して内容物を入れてもよいし,正面部12を折曲げる前に,背面部14上に内容物を入れてもよい。もちろん,内箱10の前面を構成する外側前面部17,内側前面部18およびフラップ13a,15aを一番最後に組立てる(接着する)ようにして,内箱10の前面開口から内箱10の内部空間に内容物を入れるようにしてもよい。
【0064】
上述したように,左側面部15上に,突起部21の一端(折り線m2)が位置している。糊代11と左側面部15との接着については,左側面部15上の突起部21の一部が糊代11と接着されないように行われる。
【0065】
ロックパネル16を正面部12を外側から覆うようにしてほぼ垂直に折曲げる。すなわち,ロックパネル16は左側面部15との境界の折り線(基本構成1で説明した主折り線L1に相当する)でほぼ垂直に折曲げられる。すると,左側面部15上の折り線m2,ロックパネル16上の折り線m3,および2本の切り目m2,m3の間に位置する折り線m1の3つの折り線が,鈍角に折り曲がって突起部21が正面部12上に起立し,折り線m1を頂上にする山型の形状となって正面部12の外方に突出する。ロックパネル16の開口16Aが正面部12にあけられた内容物取出口12Aと連通する(図20参照)。ロックパネル16から側方に突出する係止片16Cは,正面部12の右縁からわずかに側方に突出する。直方体状の内箱10が完成する。
【0066】
図18を参照して,外箱30は右側面部31,ほぼ矩形のロック窓32Aがあけられた正面部32,左側面部33および背面部34がこの順番で水平(横)方向に連続してつながっている。背面部34の側縁に糊代35がつながっている。正面部32の上縁には係止補強片32aがつながっている。右側面部31と正面部32との境界にはその中央部分に切込みk5が形成されている。
【0067】
正面部32にあけられたロック窓32Aは正面部32の上下方向のほぼ中央に位置しており,その左辺が正面部32と左側面部33の境界に位置している。ロック窓32Aの高さ(上下方向の長さ)は,内箱1の突起部21の高さ(上下方向の長さ)よりもわずかに大きい。
【0068】
外箱30は次のようにして組立てられる。左右側面部31,33をほぼ垂直に折曲げ,さらに背面部34および糊代35をほぼ垂直に折曲げ,右側面部31が外側となるようにして右側面部31に糊代35を接着する。正面部32の上縁につながる係止補強片32aは内側に折返して(180度の折曲げ)正面部32の内面と接着する。内側に折曲げられた係止補強片32aの上端は正面部32にあけられたロック窓32Aの上縁とほぼ一致する位置にくる。正面部32と背面部34が互いに対向し,左右側面部31,33が互いに対向し,さらに前面および後面が開口する直方体状の外箱30が完成する。
【0069】
外箱30の外形は内箱10の外形よりもわずかに大きい。内箱10の後面側が,外箱30の前面開口から外箱30内に押し入れられる。内箱10が外箱30内に押し入れられているとき,突起部21の頂上の折り線m1は外箱30によってわずかに下方に押さえつけられる。
【0070】
内箱10を外箱30内に押し入れ続けると,内箱10の前面を構成する外側前面部17の両側端からわずかに側方に突出する翼部17aが,外箱30の前端縁に当接する。内箱10のさらなる押し入れが翼部17aによって阻止され,前面開口から外箱30内に押し入れられた内箱10が後面開口を通って外箱30の外に再び出てしまうことはない。内箱10が外箱30内に完全に押し入れられた状態において,内箱10の内容物取出口12Aおよび開口16Aは外箱30の正面部32によって覆われて閉じられる。
【0071】
内箱10が外箱30内に完全に押し入れられると,突起部21が外箱30の正面部32にあけられたロック窓32Aの位置に達する。すると,外箱30による押さえつけがなくなるので,突起部21の頂上(折り線m1)がロック窓32Aを超えてロック窓32Aの外にわずかに突出する。突起部21の前端縁の一部がロック窓32Aの上縁によって係止されかつ係止補強片32aの上端によっても係止される。この係止が解かれない限り,内箱10は前方に移動することはない。同様に,突起部21の後端縁の一部がロック窓32Aの下縁によって係止される。この係止が解かれない限り,内箱10は後方にも移動することはない(図21)。もっとも,外箱30に完全に入れられた内箱10の後方への移動は,上述したように,内箱10の外側前面部17の両側端から側方に突出する翼部17aによっても阻止される。
【0072】
内箱10を外箱30内に押し入れる途中,内箱10のロックパネル16の側端から突出する係止片16cが外箱30の切込みk5内に入り込み,切込みk5を通してわずかに外箱30の外にわずかに突出する。係止片16cおよび切込みk5は,内箱10の前方移動を移動途中で制限するように機能する。
【0073】
ロック窓32Aからわずかに出ている突起部21を指で下方(内方)に押し込むと,ロック窓32Aの上縁および係止補強片32aの上端と,突起部21とによる係止が解かれ,内箱10の前方移動が可能な状態になる。突起部21を押し込みつつ前方に押すと,内箱10は前方にスライド移動して外箱30の前方開口から次第に外に出る。突起部21を前方に押し続けると,内箱10の内容物取出口12Aおよび開口16Aが外箱2の前方から完全に外に出る。内容物取出口12Aおよび開口16Aを通して内箱10内の内容物が取り出される(図22)。ロックパネル16(突起部21)の下方(内方)には内箱10の正面部12が存在するので,正面部12によって突起部21の下方(内方)への押込みの程度が制限され,突起部21が内方に向けて突出した状態となってしまうことはない。
【0074】
内箱10の前方に移動しつづけると,切込みk5を通して外箱30の外に突出している係止片16cが切込みk5の上端に当接し,ここで内箱10の前方への移動が止まる。内箱10の外箱30からの脱落が防止される。
【0075】
上述した第1実施例のスライド・カートンは,ロックパネル16が垂直(90度)に折曲げられる点において基本構成1(図1〜図4)に相当し,内箱10の左側面部15が基本構成1における支持パネルP1に,ロックパネル16がロックパネルP2にそれぞれ相当する。突起部21の上縁および下縁が切込みk1〜k4によって規定される点において基本構成4(図11〜図13)にも相当する。また,突起部21の上方および下方に開口16A,16Bがあけられている点においては基本構成5(図14〜図16)にも相当する。また,上述したように,ロックパネル16と左側面部15との間の境界の折り線が主折り線L1に相当する。折り線m1〜m3が副折り線L2〜L4に相当する。さらに,内箱10の正面部12が支持面体(突起部落込み防止部材)P3に相当する。外箱30の正面部32がロック受けパネルP4に相当する。
【0076】
組立てが完成した外箱30内に組立てが完成した内箱10を押し入れるのに代えて,ラップラウンド方式によってスライド・カートンを組み立てることもできる。たとえば,図17を参照して,内箱10については,糊代11に糊をつけた後,正面部12と右側面部15の間の折り目を折り,さらに背面部14と左側面部15の間の折り目を折り,左側面部15に糊代11を接着することで,つぶれた(ひしゃげた)状態の内箱10をつくる。その後,製函機を用いてつぶれた状態の内箱10の左右側面部13,15を起こし,フラップ13b,15bを折曲げ,さらに後面部19,20を折曲げかつ接着して後面を閉じる。開口している前面から内箱10内に内容物を入れた後,フラップ13a,15aを折曲げ,さらに前面部17,18を折曲げかつ接着して前面を閉じる。次に,展開状態の外箱30(ブランク)を用意して糊代35に糊をつけ,内箱10の正面部12と外箱30の正面部32の位置合わせを行い,前面部および後面部を除く内箱10の周囲を包み込むようにして,ラップラウンド方式によって,外箱30を折り目の位置で折り曲げ,外箱30の糊代35を外箱30の右側面部31に接着する。ラップラウンド方式によって外箱30を組み立てるときに内箱10のロックパネル16も同時に折り曲げられ,上述したように,ロックパネル16の折曲げに応じて突起部21が自動的に立ち上がり,外箱30のロック窓33A内を通して外に出る。外箱30の組立て,スライド・カートンの組立て,および内箱10の突起部21の起立を同時進行で行うことができる。ラップラウンド方式による組立て例については,後述する他の実施例において詳細に説明する。
【0077】
図23および図24は箱状内箱の変形例を示すもので,内箱10Aの斜視図である。図23および図24において内容物取出口12Aの図示および翼部17aの図示は省略されている。
【0078】
図23および図24に示すように,内箱10Aでは,左側面部15の側縁につながるロックパネル16が 180度折曲げられ,内箱10Aの正面部12上ではなく左側面部15上に重合わせられる。ロックパネル16の突起部21は左側面部15上に起立する。内箱10Aとともに用いられる外箱は,上記突起部21の位置に相当する面部(左側面部)にロック窓があけられたものが用いられるのは言うまでもない。図23および図24に示す内箱10Aは,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において上述した基本構成2(図5および図6)に相当し,突起部21の上縁および下縁が切込みk1〜k4によって規定される点において基本構成4(図11〜図13)に相当する。
【0079】
図25および図26は箱状内箱の他の変形例を示すもので,内箱10Bの斜視図である。図25および図26においても内容物取出口12Aの図示および翼部17aの図示は省略されている。図25を参照して,内箱10Bでは,ロックパネル16のほぼ中央に突起部21の範囲を除いて縦方向に折り線m4が形成されている。折り線m4においてロックパネル16を 180度折曲げ,折り線m4からロックパネル16の側縁に至る範囲を,折り線m4から左側面部15に至る範囲に折重ねる。図26に示すように,内箱10Bの正面部12上に折り線m1を頂上とする突起部21が起立する。すなわち,ロックパネル16上の折り線m4が主折り線L1に相当している。図25および図26に示す内箱10Bも,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において基本構成2(図5および図6)に相当し,突起部21の上縁および下縁が切込みk1〜k4によって規定される点において基本構成4(図11〜図13)に相当する。
【0080】
図27および図28は箱状内箱のさらに他の変形例を示すもので,内箱10Cの斜視図である。図27および図28においても内容物取出口12Aの図示および翼部17aの図示は省略されている。図27を参照して,ロックパネル16は正面部12の側縁につながっており,正面部12との間の境界(主折り線)において 180度折曲げられ,正面部12上に重ね合わさられる。図28を参照して,内箱10Cの正面部12上に折り線m1を頂上する突起部21が起立する。図27および図28に示す内箱10Cも,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において基本構成2(図5および図6)に相当し,突起部21の上縁および下縁が切込みk1〜k4によって規定される点において基本構成4(図11〜図13)に相当する。
【0081】
図29および図30は箱状内箱のさらに他の変形例を示すもので,それぞれ六角柱状の内箱10Dおよび円筒状の内箱10Eの斜視図である。図29および図30に示すように,内箱の形状は,直方体以外の多角柱状であってもよいし,円筒状ないし楕円筒状であってもよい。
【0082】
第2実施例(図31〜図34)(箱状の内箱を持つスライド・カートン)
図31〜図34は第2実施例のスライド・カートンを示すもので,このスライド・カートンは直方体状の内箱10Fと角筒状の外箱30Fから構成される。図31は内箱10Fの展開図である。図32は外箱30Fの展開図である。図33および図34は組立てが完成した内箱10Fおよび外箱30Fの斜視図である。第1実施例の内箱10および外箱30(図17〜図22)と同一の面部,折り線等には同一符号を付し,重複説明を避ける。このことは他の実施例も同様である。
【0083】
内箱10Fには,第1実施例の内箱10の正面部12にあけられている内容物取出口12A(たとえば,図19を参照)はあけられていない。内箱10Fには,その糊代11,正面部12,左側面部15および右側面部13の上側の位置に,ミシン目(割け目)11A,12A,13A,15Aが横方向に入れられ,このミシン目11A,12A,13A,15Aの位置で糊代11,正面部12,左側面部15および右側面部13を裂くことで内箱10Fを開口させ,そこから内容物が内箱10Fの外に取出される(図34)。背面部14には内箱10Fを開口させるときに折曲げられる箇所に折り線が横方向に入れられている。
【0084】
ロックパネル16が左側面部15の側縁に連続して形成されている。間隔をあけて互いに平行に延びる切込みk1およびk3と,k2およびk4によって突起部21の上縁および下縁がそれぞれ規定される。間隔をあけて互いに平行に縦方向に延びる2つの折り線m2,m3によって突起部21の両端縁が規定される。2つの折り線m2,m3の間に,折り線m2,m3と平行に折り線m1が入れられている。折り線m2は左側面部15上に位置し,折り線m1,m3はロックパネル16上に位置する。折り線m2は左側面部15とロックパネル16の境界の折り線(主折り目)の近くにあるが,わずかに位置ずれして形成されている。
【0085】
図32を参照して,外箱30Fは,その左側面部33にロック窓33Aがあけられている。外箱30Fを構成する各面部の上縁から下縁までの長さが,内箱10Fを構成する各面部の上縁から下縁までの長さよりも短い点が,第1実施例の外箱30と異なっている。
【0086】
図33を参照して,正面部12,背面部14,左側面部15,右側面部13,前面部17および後面部19で構成される直方体状の内箱10Fが組立てられる。ロックパネル16は左側面部15との境界(主折り線)で 180度折曲げられる。折り線m1を頂上とする突起部21が左側面部15上に起立する。内箱10Fをその後面部19側から外箱30Fの前面開口から押し入れる。内箱10Fのロックパネル16の突起部21が,外箱30Fのロック窓33Aから外方に突出し,これにより外箱30Fに内箱10Fがロックされる。
【0087】
図34を参照して,ロック窓33Aを通して突起部21を指で押してロックを解除し,その状態で外箱30Fを下方(後面側)に押し下げる。内箱10Fがスライド移動して次第に外箱30Fの前面開口か外に出る。ミシン目11A,12A,13A,15Aにおいて内箱10Fの糊代11,正面部12,左側面部15および右側面部13が裂かれることで内箱10Fが開口する。
【0088】
第2実施例のスライド・カートンは,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において,基本構成2(図5および図6)に相当する。突起部21の上縁および下縁が切込みk1〜k4によって規定される点において基本構成4(図11〜図13)にも相当する。
【0089】
第3実施例(図35〜図38)(トレー状内箱を持つスライド・カートン)
図35から図38はスライド・カートンの第3実施例を示すもので,図35は内箱10Gの展開図を,図36は外箱30Gの展開図をそれぞれ示す。図37は組立てが完成したスライド・カートン(内箱10Gおよび外箱30G)を示す斜視図である。図38は外箱30Gから内箱10Gを引き出している様子を示す斜視図である。
【0090】
第3実施例のスライド・カートンは,その内箱10Gが正面部12を持たない。背面部14に左側面部15,右側面部13,前面部18a〜18d,および後面部20がつながっている。
【0091】
前面部は,横向きに延びる折り線によって四つの領域に区分けされており,背面部14の上端に4つの前面部18a〜18dが連続している。前面部18a,18cの上端および下端の間の間隔は等しく,これよりも短い間隔を持つ前面部18b,18dの上端および下端の間の間隔も等しい。図35および図38を参照して,背面部14と前面部18aの境界の折り線で前面部18aを垂直に山折りし,前面部18aと前面部18bの境界の折り線で前面部18bを垂直に山折りし,前面部18bと前面部18cの境界の折り線で前面部18cを垂直に山折りし,最後に前面部18cと前面部18dの間の境界の折り線で前面部18dを垂直に谷折りする。前面部18aが内箱10Gの前面部を構成する。先端の前面部18dが背面部14に接着されて固定される。
【0092】
左側面部15にはその上端にフラップ15aがつながるとともに,上端部分において側方にもフラップ15cがつながっている。右側面部13も同様で,その上端にフラップ13aがつながるとともに,上端部分における側方にもフラップ13cがつながっている。
【0093】
背面部14の左右の側縁につながる左側面部15および右側面部13がそれぞれ垂直に折曲げられる。左側面部15の側方にロックパネル16がつながっており,左側面部15をほぼ垂直に折曲げた後,左側面部15との境界の折り線においてロックパネル16を 180度折曲げて左側面部15に重ね合わせる。折り線m1を頂上とする突起部21が左側面部15上に起立する。ロックパネル16の折り線m3よりも側方に延びる部分はさらに垂直に折曲げられて背面部14に沿わされる(図37参照)。
【0094】
図36を参照して,外箱30Gは,その後面を閉じるタイプのもので,正面部32の下縁に後面部38がつながり,後面部38の下縁にさらにフラップ39がつながっている。正面部32と後面部38の境界において後面部38は垂直に折曲げられる。また,フラップ39は後面部38との境界において垂直に折曲げられて,背面部34の内側に沿わせられる。
【0095】
また,正面部32の上縁および背面部34の上縁には,内箱10Gの端部を掴みやすくするために,円弧状の凹み32c,34cが形成されている。
【0096】
外箱30Gの左側面部33にロック窓33Aがあけられている。外箱30G内に内箱10Gが入れられると,内箱10Gの左側面部15上に位置する突起部21がロック窓33Aから突出し,これにより内箱10Gが外箱30Gにロックされる。突起部21を指で押込んだ状態で内箱10Gの前端部を掴んで前方に引き出す。内箱10Gが前方にスライド移動し,外箱30Gの前方開口から外に出る。
【0097】
第3実施例のスライド・カートンは,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において,基本構成2(図5および図6)に相当する。
【0098】
第4実施例(図39〜図42)(外箱にロック窓があけられていないスライド・カートン)
図39から図42は第4実施例のスライド・カートンを示すもので,図39は内箱10Hの展開図を,図40は外箱30Hの展開図をそれぞれ示す。図41は外箱30H内に内箱10Hを挿入している様子を示す斜視図である。図42は組立てが完成したスライド・カートン(内箱10Hおよび外箱30H)を示す斜視図である。
【0099】
上述した第1〜第3実施例のスライド・カートンは,外箱にロック窓があけられ,ロック窓にロックパネル16の突起部21の上縁および下縁がそれぞれ係合して内箱の前後方向の動きが阻止される。第4実施例のスライド・カートンでは,外箱30Hにロック窓はあけられていず,突起部21の縁部は外箱30Hの縁部に係合する。
【0100】
図39から図42を参照して,内箱10Hを組立てるとき,左側面部15とロックパネル16の境界の折り線(主折り線)でロックパネル16を垂直に折曲げる(90度の折曲げ)と,折り線m1を頂上とする突起部21が正面部12上に起立する。図40および図41を参照して,外箱30Hはその高さ(上縁と下縁との間の長さ)が内箱10Hの高さの半分程度である。内箱10Hの前面側が外箱30Hの下面開口から外箱30内に押し入れられる。内箱10Hを外箱30H内に押し入れ続けると,突起部21の前端が外箱30Hの正面部32の下端に当接する。内箱10Hの前方移動がロックされる。
【0101】
外箱30Hから内箱10Hを引き出す(押し出す)場合,突起部21を下方に押し込んだ状態で内箱10Hを前方にスライド移動させる(図22を参照)。内箱10Hが前方にスライド移動することで内箱10Hの内容物取出し口12Aが現れる。内箱10Hの前方へのスライド移動は,外箱30Hの係止補強片32a(図40および図42参照)の縁が内箱10Hのロックパネル16の縁に当接することで止まる。
【0102】
第4実施例のスライド・カートンは,ロックパネル16が 180度の折曲げられる点において,基本構成2(図5および図6)に相当する。
【0103】
第5実施例(図43〜図46)(内箱が袋(筒)状であり,外箱がかぶせ蓋であるスライド・カートン)
図43から図46は第5実施例のスライド・カートンを示すもので,図43は内箱10Iの展開図を,図44は外箱(外蓋)30Iの展開図をそれぞれ示す。図45は内箱10Iおよび外箱30Iを示す斜視図である。図46は外箱30I内に内箱10Iを収納した状態を示す斜視図である。
【0104】
第5実施例において内箱10Iは両側面部を持たず,正面部12と背面部14とが連続している。正面部12の側縁に糊代11が連続し,背面部14の側縁上部にロックパネル16が連続している。正面部12の下縁には内側後面部19が,背面部14の下縁には外側後面部20がつながっている。内側後面部19および外側後面部20は横長の楕円状の形状を持つ。内側後面部19の下縁にさらに弧状の差込み片19aが連続している。背面部14と外側後面部20の間の境界に上記差込み片19aが差込まれる切込みk6が形成されている。
【0105】
正面部12と背面部14の境界を 180度に近い角度で折曲げる。内側後面部19および外側後面部20はほぼ垂直に折曲げる。糊代11を背面部14に接着し,かつ内側後面部19の差込み片19aを背面部14と外側後面部20の間の切込みk6に差込む。内側後面部19および外側後面部20によって内箱10Iの後面部が形成される。内側後面部19および外側後面部20は内箱10Iの内部に向けて滑らかに凹む湾曲面となる。図45を参照して,背面部14とロックパネル16の境界の折り線(主折り線)において,正面部12上にロックパネル16を折重ねる(ほぼ 180度の折曲げ)。前面が開口し,折り線m1を頂上とする突起部21を備えた袋状の内箱10Iが完成する。
【0106】
図44を参照して,外箱30Iも側面部を持たず,横方向に連続する正面部32および背面部34を有し,正面部32の側方に糊代35が連続している。正面部32および背面部34の上縁に,横長の楕円状の形状を持つ内側前面部36および外側前面部37がつながっている。内側前面部36の上縁に弧状の差込み片36aが連続している。背面部34と外側前面部37の間の境界に上記差込み片36aが差込まれる切込みk7が形成されている。正面部32上に矩形のロック窓32Aがあけられている。
【0107】
正面部32と背面部34の境界を 180度に近い角度で折曲げ,内側前面部36および外側前面部37をほぼ垂直に折曲げる。糊代35を背面部34に接着し,かつ内側前面部36の差込み片36aを背面部34と外側前面部37の間の切込みk7に差込む。内側前面部36および外側前面部37によって外箱30Iの前面部が形成される。内側前面部36および外側前面部37は外箱30Iの内部に向けて滑らかに凹む湾曲面となる。後面が開口する袋状の外箱(外蓋)30Iが完成する。
【0108】
内箱10Iの開口する前方部分が,外箱30Iの後部開口から押し入れられる。内箱10Iを外箱30I内に押し入れ続けると,ロックパネル16の突起部21が外箱30Iにあけられたロック窓32Aから外に突出し,内箱10Iと外箱30Iとがロックされる(図46)。ロック窓32Aを通して指で突起部21を押下しつつ,外箱30Iを前方に引っ張ると,外箱30Iが内箱10Iから外される。
【0109】
第5実施例のスライド・カートンは,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において,基本構成2(図5および図6)に相当する。
【0110】
第6実施例(図47〜図50)(PTPホルダパッケージと外帯を含むもの)
図47から図50は第6実施例を示すもので,図47はPTP(Press Through Package )ホルダ・パッケージ10Jの展開図であり,図48は外帯30Jの展開図である。図49はPTPホルダ・パッケージ10Jと外帯30Jの斜視図であり,図50はPTPホルダ・パッケージ10Jに外帯30Jをかけた様子を示す斜視図である。
【0111】
PTPホルダ・パッケージ10Jは,その展開図において左右対称の形状を持つ。中央に左側面部15が位置し,その両側にそれぞれ正面部12および背面部14が連続している。正面部12の側縁(図47において右側縁)に第1の右側面部13Aが,背面部14の側縁(図47において左側縁)に第2の右側面部13Bがつながっている。第1,第2右側面部13A,13Bのさらに側方に,PTPホルダ26,27が連続している。
【0112】
突起部21は左側面部15の上下方向のほぼ中央に形成されている。横方向に互いに平行に延びる切込みk1〜k4と,切込みの両端のそれぞれを縦方向に結ぶ折り線m2,m3によって突起部21の外形が規定される。2つの折り線m2,m3はそれぞれ背面部14,正面部12上に位置する。これらの2つの折り線m2,m3の中間に折り線m1が形成されている。
【0113】
PTPホルダ26には3行3列に合計9つの楕円形の薬剤保持孔26aが形成されている。PTPホルダ27にも3行3列に合計9つの楕円形の薬剤保持孔27aが形成されている。薬剤保持孔26a,27aにはたとえば透明プラスチックよりなる薬剤収容部(図示略)が突出して設けられ,この薬剤収容部内に薬剤(錠剤)が収納される。
【0114】
PTPホルダ26,27の間の折り線に沿って外側に位置するPTPホルダ27を内側に位置するPTPホルダ26に折重ねる。第1,第2の右側面部13A,13BにつながるPTPホルダ26を,これらの間の折り線に沿って垂直に折曲げる。さらに第1の右側面部13Aと正面部12の間の折り線,第2の右側面部13Bと背面部14の間の折り線に沿って,第1,第2の右側面部13A,13Bを垂直に折曲げる。最後に,左側面部15の左右の折り線(主折り線)に沿って正面部12および背面部14を垂直に折曲げる。方形のPTPホルダ・パッケージ10Jが形成される。左側面部15上に折り線m1を頂上とする突起部21が起立する(図49参照)。
【0115】
外帯30Jの展開図(図48)では,その中央に左側面部33が位置し,その両側に正面部32および背面部34が連続する。正面部32の側縁に右側面部31が,背面部34の側縁に糊代35がつながっている。外帯30Jの高さ(たとえば,正面部32の上縁と下縁の長さ)はPTPホルダ・パッケージ10Jの高さよりも短い(たとえば,1/3程度)。左側面部33のほぼ中央に矩形のロック窓33Aがあけられている。
【0116】
PTPホルダ・パッケージ10Jの前面部(後面部でもよい)が外帯30Jの後部開口(前部開口)から外帯30J内に押入れられる。PTPホルダ・パッケージ10Jを外帯30J内に押し入れ続けると,ロックパネル16の突起部21が外帯30Jにあけられたロック窓33Aから外に突出し,PTPホルダ・パッケージ10Jと外帯30Jとがロックされる(図50)。折重ねられたPTPホルダ46,47は外帯30Jによってその周囲から押さえつけられるので,広がってしまうことがない。ロック窓33Aを通して指で突起部21を押下しつつ,外帯30Jを前方または後方に引っ張ると,PTPホルダ・パッケージ10Jから外帯30Jが外される。
【0117】
第6実施例は,ロックパネル16の両側に主折り線があるので基本構成3(図7〜図10)に相当する。ロックパネル16の上縁および下縁が切込みk1〜k4によって規定される点において基本構成4(図11〜図14)にも相当する。
【0118】
第7実施例(図51から図57)(ラップラウンド方式による組立て)
図51から図57は第7実施例のスライド・カートンを示すもので,図51は内箱10Kの展開図,図52は外箱30Kの展開図,図53から図57は組立て途中の内箱10Kおよび外箱30Kを示す斜視図である。第7実施例では,組立てられた外箱に組立てられた内箱を挿入するのではなく,組立て前または組立て途中の内箱を,組立て前の外箱によって包込みながら,内箱および外箱を同時に組立る組立て方法(ラップラウンド方式)を説明する。
【0119】
図51および図53を参照して,内箱10Kはトレー状のものである。第3実施例(図35〜図38)の内箱10Gとは,後面部20の下縁に背面部14よりも長さの短い正面部12が連続しており,この正面部12の右側縁にロックパネル16が連続して形成されている点,正面部12の左側縁に補強片28が連続して形成されている点が異なる。
【0120】
図52を参照して,外箱30Kは,正面部32の下縁に後面部38およびフラップ39がつながっていない点が,図36に示す第3実施例の外箱30Gと異なる。
【0121】
図53を参照して,前面部18a〜18dは第3実施例と同様にして折曲げられる。左右の側面部13,14を垂直に折曲げ,後面部20を垂直に折曲げ,後面部20につながる正面部12をさらに垂直に折曲げる。正面部12によって内箱10Kの内部空間の一部が覆われる。
【0122】
図54を参照して,途中まで組立てられた内箱10Kの上方(正面部12の外側)に,展開状態の外箱30Kが配置される。図55から図57を参照して内箱10Kの背面部14と外箱30の正面部32とが同一の位置となるように位置合わせが行われた後,内箱10Kをその外側から包込むようにして,外箱30Kの組立てが行われる。
【0123】
図56および図57を参照して,外箱30Kの左側面部33を垂直に折曲げると,左側面部33によって内箱10Kのロックパネル16が押され,同時に内箱10Kの正面部12とロックパネル16の間の境界(主折り線)においてロックパネル16も垂直に折曲がる。これによりロックパネル16の突起部21が起立し,外箱30Kの左側面部33にあけられたロック窓33Aを通して外に出る。外箱30Kの糊代35を垂直に折曲げると,内箱10Kのロックパネル16の側縁につながる先端片29も同時に垂直に折曲がる。外箱30Kの糊代35を外箱30Kの背面部34に接着することによって外箱30Kの組立てが完成する。同時に内箱10Kの組立ても完成する。外箱30Kの組立て,内箱10Kの組立て,および内箱10Kの突起部21の起立を同時進行で行うことができる。
【0124】
第7実施例のスライド・カートンは,2本の主折り線(内箱10Kの正面部12とロックパネル16の間の境界,およびロックパネル16と先端片29の間の境界)によって突起部21の両側が規定される点において,ロック機構の基本構成3(図7〜図10)に対応する。
【0125】
第8実施例(図58から図65)(ラップラウンド方式による組立て)
図58から図65に示す第8実施例も,ラップラウンド方式によって内箱10Lと外箱30Lとを同時に組立てる組立て方法を説明するものである。
【0126】
図58を参照して,内箱10Lはその背面部14の側縁にロックパネル16が連続する。ロックパネル16は,突起部21の下方に開口16Bがあけられているタイプのものである。
【0127】
ロックパネル16の下方の開口16Bに向けてわずかに突出するようにして,背面部14の側縁に係止片14aが連続して設けられている。後述するように,係止片14aは外箱30Lのロック窓34Aに係合して,内箱10Lの外箱30Lからの脱落を防止するために設けられている。
【0128】
図59を参照して,外箱30Lではその背面部34から左側面部33の一部にかけて,ロック窓34Aがあけられている。すなわち,ロック窓34Aの一側縁が左側面部33上に位置している。
【0129】
図60を参照して,ロックパネル16を除いて内箱10Lを組立て,その上方に展開状態の外箱30Lを配置する。内箱10Lの正面部12と外箱30Lの正面部32の位置合わせが行われる。
【0130】
図61を参照して,外箱30Lの正面部32と左側面部33の間の折り線において左側面部33を垂直に折曲げると,内箱10Lのロックパネル16も同時に折曲げられる。ロックパネル16の突起部21が,外箱30Lの背面部34にあけられたロック窓34Aを通して外に出る。図62を参照して,外箱30Lの左側面部33と背面部34の間の折り線において背面部34をさらに垂直に折曲げる。内箱10Lのロックパネル16は内箱10Lの背面部14上に折り重ねられる(1180度の折曲げ)。
【0131】
図63は,第8実施例のスライド・カートンの一部をその背面側から見た斜視図である。外箱30Lの背面部34にあけられたロック窓34Aに内箱10Lのロックパネル16の突起部21が係合し,外箱30Lに対する内箱10Lの前後方向の移動がロックされる。
【0132】
図64は第8実施例のスライド・カートンの全体をその背面側から見た斜視図である。上述した係止片14aが,内箱10Lの背面部14の側縁から側方(左側面方向)に突出している。
【0133】
図65は外箱30Lから内箱10Lを途中まで引出し,かつ内箱10Lの前部を開口させた状態を,背面側から示す斜視図である。上述した内箱10Lの係止片14aは,外箱30Lのロック窓34Aに係合し,これにより内箱10の前方への移動(引出し)が止まる。ロック窓34Aが外箱30Lの背面部34のみならず左側面部33にわたってあけられているので,内箱10Lの左側面部15Aから側方に突出する係止片14aを,確実に外箱30Lのロック窓34Aに係合させることができる。
【0134】
第8実施例のスライドカートンは,ロックパネル16が 180度折曲げられる点において,基本構成2(図5および図6)に相当する。また,突起部21の下縁に開口16Bが形成されている点において基本構成5(図14〜図16)にも相当する。
【符号の説明】
【0135】
P1 支持パネル
P2 ロックパネル
P3 支持面体(突起部落込み防止部材)
P4 ロック受けパネル
L1 主折り線
L2,L3,L4 副折り線
C,C1,C2 切込み
H 開口
a 突起部
b ロック窓
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10K,10L 内箱
10J PTPホルダ・パッケージ
12 内箱の正面部
13 内箱の右側面部
14 内箱の背面部
15 内箱の左側面部
16 ロックパネル
14a,16c 係止片
21 突起部
30,30G,30H,30I,30K,30L 外箱
30J 外帯
31 外箱の右側面部
32 外箱の正面部
33 外箱の左側面部
34 外箱の右側面部
32A,33A,34A ロック窓
k1,k2,k3,k4,k5 切込み
m1,m2,m3 折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主折り線においてつながり,上記主折り線に沿う境界において折れ曲がる第1パネルと第2パネルを含み,第1パネルと第2パネルの上記境界上に上記主折り線が形成されていない主折り線未形成箇所が所定長さにわたって存在し,上記主折り線の端に交わりかつ第1パネルと第2パネルの上記境界と交差する切込みまたは開口が上記第1パネル上および上記第2パネル上に連続して形成されており,上記第1パネルおよび上記第2パネルが,上記切込みまたは開口の縁部を縁部とする外方に起立可能な突起部を有している折構造体,
上記折構造体の外方に設けられ,外方に起立した上記突起部が係合する縁部を有するロック受けパネル,および
上記折構造体の内方に設けられ,上記突起部を内方から支える突起部落込み防止部材を備える,
折構造体のロック機構。
【請求項2】
上記突起部上に,上記主折り線に沿う方向に延びる第1の副折り線が,上記主折り線と位置をずらして形成されている,
請求項1に記載の折構造体のロック機構。
【請求項3】
上記第1パネルおよび第2パネルの少なくともいずれか一方に,上記切込みまたは開口の先端に交わる第2の副折り線が形成されている,請求項2に記載の折構造体のロック機構。
【請求項4】
上記ロック受けパネルにロック窓があけられており,上記外方に突出した上記突起部は上記ロック窓の縁部に係合する,請求項1から4のいずれか一項に記載の折構造体のロック機構。
【請求項5】
上記折構造体が箱状であり,
上記ロック受けパネルが,上記箱状折構造体の少なくとも一部がスライド自在に挿入される筒状体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部であり,
上記突起部落込み防止部材が,上記箱状折構造体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部である,
請求項1から4のいずれか一項に記載の折構造体のロック機構。
【請求項6】
上記折構造体が筒状であり,
上記ロック受けパネルが,上記筒状折構造体の少なくとも一部がスライド自在に挿入される筒状体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部であり,
上記突起部落込み防止部材が,上記筒状折構造体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部である,
請求項1から4のいずれか一項に記載の折構造体のロック機構。
【請求項7】
上記折構造体が,側面部の両端につながる平面部を互いに折り重ね合わせたパッケージ体であり,
上記ロック受けパネルが,上記パッケージ折構造体の少なくとも一部がスライド自在に挿入される筒状体の面部のうちの,上記箱状折構造体の上記突起部が起立する面部を臨む面部であり,
上記突起部落込み防止部材が上記パッケージ体を構成する平面部の端部である,
請求項1から4のいずれか一項に記載の折構造体のロック機構。
【請求項8】
上記折構造体の上記スライド方向にそってのびる辺に上記突起部が起立する方向と異なる向きに突出する係止片が形成されており,
上記ロック受けパネルを有する筒状体には,上記係止片が形成されている折構造体の辺に対応する辺に上記係止片が通る切込みが上記スライド方向に入れられている,
請求項5から7のいずれか一項に記載の折構造体のロック機構。
【請求項9】
上記折構造体の上記スライド方向にそってのびる辺に上記突起部が起立する方向と異なる向きに突出する係止片が形成されており,
上記係止片もロック受けパネルの縁部に係合する,
請求項5から7のいずれか一項に記載の折構造体のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【公開番号】特開2012−166797(P2012−166797A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27301(P2011−27301)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】