説明

折畳コンテナ

【課題】側壁の自立を従来より安定させることが可能な折畳コンテナを提供する。
【解決手段】本発明の折畳コンテナ10では、起立係合突部25及び起立係合溝37が、ヒンジアーム22,29の回動軸方向において互いに対向したヒンジアーム29の側面とヒンジ凹部35の内側面とに配置されているので、ヒンジ凹部33の底面に起立係合突部25に相当する部位を備えた従来のものに比べて、ヒンジアーム22の回動中心から起立係合突部25までの距離を大きく確保することができ、起立係合突部25と起立係合溝37との係合力を高めることが可能になる。これにより、第2側壁21の自立が安定し、第1側壁11の起立操作時に第2側壁21,21が第1側壁11と干渉するような事態が防がれて作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四角形の底壁の一方の対向辺に1対の第1側壁が回動可能に連結されると共に残りの対向辺に1対の第2側壁が回動可能に連結され、第1、第2の側壁の順に底壁の上に重なって折畳状態になる一方、第2、第1の側壁の順に起立して組立状態になる折畳コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の折畳コンテナでは、折畳状態からの組立作業をスムーズに行うべく、第1側壁を起立させる前に第2側壁を起立状態に保持するための自立係合機構が第2側壁と底壁との間に設けられている。具体的には、この種の折畳コンテナでは、第1及び第2の各側壁の下面から複数のヒンジアームが垂下していて、底壁の外縁部全体からは上方に支持突壁が突出している。また、支持突壁には、上面と内側面とに開口した複数のヒンジ凹部が形成され、各ヒンジアームの下端部が各ヒンジ凹部内に回転可能に連結されている。そして、第2側壁の下面の係合凹部に、支持突壁の上面から突出した係合突部を凹凸係合して第2側壁を自立させる構成や、係合凹部の底面に備えた係合突部を第2側壁のヒンジアームの先端の係合凹部に凹凸係合させて自立させる機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−337977号公報(図6,図11,図13,図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の折畳コンテナのうち支持突壁の上面から突出した係合突部を備えたものでは、折畳コンテナを折畳状態にして積み上げた際に係合突部が潰れて係合力が弱まる事態が懸念された。また、ヒンジ凹部の底面に係合突部を備えたものでは、ヒンジアームの回動中心から係合突部までの距離を十分に確保するとヒンジアームの回動領域とヒンジ凹部の内面との干渉が問題になる一方、ヒンジアームの回動中心から先端の係合凹部までの距離を十分に確保しないと、係合凹部と係合突部との係合力を十分に確保することが困難になる。これらにより、従来のものでは、側壁の自立が安定しない場合が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、側壁の自立を従来より安定させることが可能な折畳コンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る折畳コンテナは、四角形の底壁と、底壁の外縁部のうち1対の対向辺に配置された1対の第1側壁と、残りの1対の対向辺に配置された1対の第2側壁とを別部品にして備え、底壁の外縁部全体から支持突壁が上方に突出し、第1及び第2の各側壁から垂下した複数のヒンジアームの下端部が、支持突壁の上面と内側面とに開放した複数のヒンジ凹部内に回動可能に連結され、第1、第2の側壁の順に底壁の上に重なって折畳状態になる一方、第2、第1の側壁の順に起立して組立状態になり、1対の第1側壁が1対の第2側壁の間に挟まって第2側壁の内倒れが防止されると共に、第1側壁の側部と第2側壁の内面との間の係合機構によって第1側壁の内倒れが防止されて組立状態に保持される折畳コンテナにおいて、第2側壁の少なくとも1つのヒンジアームの側面と、その又はそれらヒンジアームの側面に対してヒンジアームの回動軸方向で対向したヒンジ凹部の内側面とに、第2側壁を起立させたときに互いに凹凸係合して第2側壁を起立姿勢に保持する1対の起立凹凸係合部を設けると共に、ヒンジアームの側面とヒンジ凹部の内側面との何れか一方に、一方の起立凹凸係合部を支持しかつ第2側壁を折り畳み操作したときに弾性変形して1対の起立凹凸係合部の係合解除を許容する弾性支持部を備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の折畳コンテナにおいて、起立凹凸係合部を有しない各ヒンジアームは、第1又は第2の側壁から垂下された複数のアーム構成突片をヒンジアームの回動軸方向に対向配置して連絡壁にて連絡してなるアーム本体と、アーム本体の先端部両側面から相反する方向に突出した1対のヒンジ軸突部とを備えてなり、起立凹凸係合部を有しない各ヒンジ凹部は、支持突壁の内側面に開口した内側面開口が上面開口より幅狭でかつ上面開口の中央に配置された形状をなしかつ、ヒンジ凹部の内側面のうち内側面開口を間に挟んだ両側部分から支持突壁の厚さ方向に1対の孔内係止突部が突出して、それら1対の孔内係止突部の下面に1対のヒンジ軸突部が係止することで、ヒンジアームの下端部がヒンジ凹部内の下端部に回動可能に連結され、起立凹凸係合部を有したヒンジ凹部は、内側面開口が上面開口の幅方向の一端部に寄せて配置されて、内側面開口の一側部の開口縁から支持突壁の厚さ方向の奥部又は奥寄り位置まで面一になった摺接平坦面を有すると共に、その摺接平坦面の一部を陥没させてなる起立係合凹部を一方の起立凹凸係合部として備え、さらに、内側面開口を挟んで摺接平坦面と反対側に孔内係止突部を備えた構造をなし、起立凹凸係合部を有したヒンジアームは、アーム本体の一方の側面のみにヒンジ軸突部を備えると共に、アーム本体の他方の側面のアーム構成突片の一部を片持ち梁状に切り離して弾性支持部としての弾性片を備え、さらに、その弾性片の先端部から突出して起立係合凹部に凹凸係合可能な起立係合突部を他方の起立凹凸係合部として備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の折畳コンテナにおいて、起立係合凹部は、上下方向に延びかつ上端部が支持突壁の上面に開放した溝形状をなしているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の折畳コンテナにおいて、各第2の側壁には、少なくとも3つ以上のヒンジアームが備えられ、それら複数のヒンジアームのうち中央に位置したヒンジアームのみに起立凹凸係合部を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1の折畳コンテナは、折畳状態から第2側壁を起立させるとヒンジアームとヒンジ凹部との間で1対の起立凹凸係合部が凹凸係合して、第2側壁が起立状態に保持され、自立する。ここで、本発明では、1対の起立凹凸係合部が、ヒンジアームの回動軸方向において互いに対向したヒンジアームの側面とヒンジ凹部の内側面とに配置されているので、折畳コンテナを折畳状態にしたときに起立凹凸係合部が従来のように上方に突出するようなことはなく、起立凹凸係合部が他の折畳コンテナとの当接により潰れて係合力が弱まる懸念もなくなる。また、ヒンジ凹部の底面に起立凹凸係合部に相当する部位を備えた従来のものに比べて、ヒンジアームの回動中心から起立凹凸係合部までの距離を大きく確保することができ、起立凹凸係合部同士の係合力を高めることが可能になる。これにより、折畳状態から組立状態にする際に先に起立させる第2側壁の自立が従来より安定する。
【0011】
[請求項2の発明]
請求項2の折畳コンテナの構成によれば、起立凹凸係合部を有したヒンジアーム及びヒンジ凹部が、起立凹凸係合部を有しない通常のヒンジアーム及びヒンジ凹部の幅方向の一端部を変更した構造になっているので、設計が容易になる。また、起立凹凸係合部を有したヒンジアームも、通常のヒンジアームと同様にヒンジ軸突部を備えてヒンジ凹部に回動可能に軸支されているので回動動作が安定し、起立凹凸係合部同士の係合及び係合解除の動作も安定する。
【0012】
[請求項3の発明]
請求項3の折畳コンテナの起立係合凹部は、上下方向に延びた溝形状をなして上端部が支持突壁の上面に開放しているので、底壁を樹脂の成形品とした場合に、樹脂成形金型の構造が簡素化され、金型制作費が抑えられる。
【0013】
[請求項4の発明]
請求項4の折畳コンテナでは、起立凹凸係合部を有したヒンジアームが複数のヒンジアームの中央に配置したので中央以外の位置に配置した場合に比べて、起立凹凸係合部を有したヒンジアームから他の最も遠く離れたヒンジアームまでの距離が小さくなる。これにより、第2側壁と底壁の寸法上のばらつきに起因した起立凹凸係合部同士の係合深さのばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る折畳コンテナの組立状態の斜視図
【図2】折畳コンテナの折畳状態の斜視図
【図3】折畳コンテナの第1側壁の回動途中の斜視図
【図4】第1側壁の斜視図
【図5】第2側壁の斜視図
【図6】ヒンジアームの斜視図
【図7】底壁の斜視図
【図8】底壁の一部拡大斜視図
【図9】ヒンジ凹部とヒンジアームの平断面図
【図10】折畳コンテナの一部を破断した斜視図
【図11】折畳コンテナの一部を破断した斜視図
【図12】本発明の変形例に係るヒンジアームの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る折畳コンテナ10は、長方形の底壁30の外縁部のうち1対の短辺部分に1対の第1側壁11,11の下端部が回動可能に連結されると共に、1対の長辺部分に1対の第2側壁21,21の下端部が回動可能に連結されている。そして、図2に示すように、1対の第1側壁11,11を底壁30の上に重ねてからそれらの上に1対の第2側壁21,21を重ねて折畳状態にすることができる。また、図3に示すように、1対の第2側壁21,21を起立させた後に、1対の第1側壁11,11を起立させると図1に示した組立状態になる。その組立状態では、1対の第1側壁11,11が1対の第2側壁21,21の間に挟まることで第2側壁21,21の内倒れが防止されると共に、第1側壁11の側部と第2側壁21の内面21Nとの間の係合機構50(図4参照)によって第1側壁11の内倒れが防止され、これにより、折畳コンテナ10が組立状態に保持される。
【0016】
具体的には、図5(A)に示すように、第2側壁21は、側壁本体21Sの外面から外面リブ21Lを突出させた構造になっている。また、図5(B)に示すように、第2側壁21の長手方向の両端部から1対のサイド突壁40,40が内側に直角曲げされ、それらサイド突壁40に第1〜第3のサイド係合孔41,42,43が上下に並べて形成されている。さらに、第2側壁21の内面21Nのうち各第1のサイド係合孔41と隣り合わせになる位置には、スライド係合孔46がそれぞれ陥没形成されている。
【0017】
図4に示すように、第1側壁11は、側壁本体11Sの外面から外面リブ11Lを突出させた構造になっている。また、第1側壁11の外面には、両側部を陥没させて1対のサイド陥没部11K,11Kが形成され、それら各サイド陥没部11Kに第1〜第3のサイド係合突部61,62,63が上下方向に並べて設けられている。そして、折畳コンテナ10を組立状態にしたときに、図1に示すように、サイド突壁40がサイド陥没部11Kに収まって、第1〜第3のサイド係合孔41,42,43に、第1〜第3のサイド係合突部61,62,63(図4参照)が凹凸係合し、第1と第2の側壁11,21が結合される。
【0018】
また、図4に示すように、第1側壁11の上端部には、外面リブ11Lを左右方向に貫通するようにガイド孔65が形成されている。そして、1対のスライド係合バー67,67が左右対称に配置されてガイド孔65に挿通されている。また、第1側壁11の外面の上部中央にはカバー68が装着されており、そのカバー68の内側には、スライド係合バー67,67に重ねてスライド盤70が上下動可能に収容されている。また、スライド盤70は、下端部に備えた1対の弾性脚部72,72によって上方に付勢されている。さらに、スライド盤70に突出形成された1対のカム突部71,71が、1対のスライド係合バー67,67に形成されたカム溝69,69に係合している。そして、通常は、1対のスライド係合バー67,67の先端部が第1側壁11の両側面から突出していて、第1側壁11の上面の操作開口11Mを通してスライド盤70を押圧操作すると、1対のスライド係合バー67,67が第1側壁11の両側面からガイド孔65内に引っ込むようにスライドする。
【0019】
なお、前述した係合機構50(図4参照)は、上記した1対のスライド係合バー67,67とスライド盤70と前記した第2側壁21のスライド係合孔46とから構成されている。そして、折畳コンテナ10を組立状態にしたときに、スライド係合バー67,67の先端部がスライド係合孔46,46に凹凸係合して、第1側壁11の内倒れが防止される。
【0020】
次に、第1及び第2の側壁11,21と底壁30との連結部分の詳細構造について以下説明する。図7に示すように、底壁30には、1対の短辺側の外縁部から上方に突出した1対の第1支持突壁31,31と、1対の長辺側の外縁部から上方に突出した1対の第2支持突壁32,32とが備えられている。
【0021】
各第1支持突壁31には、その長手方向の両端部と中央部とにヒンジ凹部33が形成されている。これらヒンジ凹部33は、図8に拡大して示したように、第1支持突壁31の上面に開口した上面開口33Aと第1支持突壁31の内側面面に開口した内側面開口33Bとを有している。その内側面開口33Bは、上面開口33Aより幅狭になって上面開口33Aの幅方向の中央に位置している。また、ヒンジ凹部33の内側面のうち内側面開口33Bを間に挟んだ両側部分からは、第1支持突壁31の壁さ厚方向に1対の孔内係止突部34,34が突出している。これら孔内係止突部34は、ヒンジ凹部33の上端部から上下方向の中間位置に亘って形成され、下端側に頂点を備えた三角形状をなしている。
【0022】
図7に示すように、各第2支持突壁32にも、第1側壁11と同様の複数(例えば、4つ。)のヒンジ凹部33が各第2支持突壁32の長手方向に左右対称に配置して設けられている。そして、第2支持突壁32の長手方向の中央には、他のヒンジ凹部33とは形状が一部異なるヒンジ凹部35(以下、他のヒンジ凹部33と区別する場合には「自立用ヒンジ凹部35」と呼ぶ)が設けられている。具体的には、図8に示すように、自立用ヒンジ凹部35の内側面開口35Bは、上面開口35Aの幅方向の一端部に寄せて配置され、内側面開口35Bの一側部の開口縁から第2支持突壁32の厚さ方向における奥寄り位置まで面一になった摺接平坦面36(本発明の「ヒンジ凹部の内側面」に相当する)が形成されている。また、自立用ヒンジ凹部35のうち内側面開口35Bを挟んで摺接平坦面36と反対側には、他のヒンジ凹部33と同様の孔内係止突部34が備えられている。ここで、自立用ヒンジ凹部35のうち第2支持突壁32の厚さ方向で内側面開口35Bと対向する内面をメイン内側面35Zと呼ぶすると、摺接平坦面36には、メイン内側面35Z側の縁部に沿って起立係合溝37が形成されている。起立係合溝37は、本発明の「起立凹凸係合部」及び「起立係合凹部」に相当し、自立用ヒンジ凹部35の上下方向全体に亘って延びた角溝状をなし、その起立係合溝37の一内側面は、メイン内側面35Zと面一になっている。
【0023】
図4に示すように、第1側壁11の下面には、第1支持突壁31のヒンジ凹部33と対向する位置に複数のヒンジアーム22が設けられている。また、図5(A)に示すように、第2側壁21の下面にも、第2支持突壁32のヒンジ凹部33と対向する位置に複数のヒンジアーム22が設けられている。第2側壁21の各ヒンジアーム22は、図6(A)に示すように第2側壁21の下面から突出した複数(例えば、3つ)のアーム構成突片28を第2側壁21の回動軸方向に対向配置しかつ連絡壁27にて連絡した構造のアーム本体22Hと、そのアーム本体22Hの先端部両側面から相反する方向に突出した1対のヒンジ軸突部23,23とを備えてなる。
【0024】
連絡壁27は、図6(B)に示すように、第2側壁21の内面21Nと面一になってアーム構成突片28群(図6(A)参照)に沿って下方に延びてから、アーム構成突片28群の下面に沿うように屈曲している。ここで、アーム本体22Hのうち第2側壁21の内面21Nと面一の連絡壁27を有した側を後方、その反対側を前方と呼ぶとすると、ヒンジ軸突部23は、図6(A)に示すように、アーム本体22Hの下縁部の先端寄り位置から後端寄り位置に亘る範囲に形成されて側方に張り出しかつ、後端寄り位置で上方に屈曲した形状をなしている。なお、図4に示すように、第1側壁11に備えたヒンジアーム22に関しても第2側壁21のヒンジアーム22と同じ構造をなしている。
【0025】
第2側壁21の下面のうち自立用ヒンジ凹部35と対向する位置には、他のヒンジアーム22とは形状が一部異なるヒンジアーム29(以下、他のヒンジアーム22と区別する場合には「自立用ヒンジアーム29」と呼ぶ)が設けられている。図6(A)に示すように、自立用ヒンジアーム29のアーム本体29Hは、通常のヒンジアーム22と同様にアーム構成突片28群と連絡壁27とからなる。また、アーム構成突片28群のうち両側のアーム構成突片28,28には、第2側壁21側の基端部に板厚部28A,28Aが備えられて外側に膨出し、各板厚部28Aの下端部は、各アーム構成突片28の上下方向の中間に位置して傾斜面になっている。
【0026】
自立用ヒンジアーム29の一方の側面の下端部には、ヒンジアーム22と同様のヒンジ軸突部23が備えられ、自立用ヒンジアーム29の他方の側面(本発明の「ヒンジアームの側面」に相当する)の下端部には、ヒンジ軸突部23に代えて摺接突部26が設けられている。ここで、自立用ヒンジアーム29のアーム本体29Hに関しても、他のヒンジアーム22と同様に、連絡壁27側を後方、その反対側を前方と呼ぶとすると、摺接突部26は、アーム本体29Hの下縁部における後端部に配置されている。また、その摺接突部26は、図9(A)に示すように、ヒンジ軸突部23に比べてアーム本体29Hからの突出両が極めて小さくなっていて、摺接突部26の先端はアーム本体29Hの側面と平行な平坦面になっている。
【0027】
図6(A)に示すように、自立用ヒンジアーム29のうち摺接突部26を有したアーム構成突片28には、上端部と上下方向の中間部とにスリット22S,22Sが形成されている。上端部のスリット22Sは、第2側壁21の下面からアーム構成突片28の一部を切り離すように形成されて、アーム本体29Hの前端部から後端寄り位置まで延びている。また、上下方向の中間部のスリット22Sは、板厚部28Aより下方に位置し、上端部のスリット22Sと同じ長さをなして平行に延びている。これらにより、アーム構成突片28のうちスリット22S,22Sに挟まれた部分が片持ち梁状に切り離されて、本発明の「弾性支持部」としての弾性片24が形成されている。
【0028】
弾性片24の先端部からは側方に向かって起立係合突部25が突出形成されている。詳細には、起立係合突部25は、本発明の「起立凹凸係合部」及び「起立係合突部」に相当し、弾性片24の先端部における上端に配置されている。また、起立係合突部25は、上下方向に延びた稜線部25Aを有し、その稜線部25Aより前側と後側とにガイド斜面25B,25Bを備えている。また、起立係合突部25の幅は、前記した起立係合溝37と略同一になっている。
【0029】
本実施形態に係る折畳コンテナ10の構成に関する説明は、以上である。次に、この折畳コンテナ10の作用効果について説明する。折畳コンテナ10を組立状態(図1参照)から折畳状態(図2参照)にするには、スライド盤70を押し下げてスライド係合バー67,67をスライド係合孔46,46から引き抜き、第1側壁11を底壁30の上に倒す。次いで、1対の第2側壁21,21を倒して第1側壁11,11の上に重ねる。これにより、折畳コンテナ10が折畳状態になる。
【0030】
ここで、本実施形態の折畳コンテナ10では、自立用ヒンジアーム29の起立係合突部25がアーム本体29Hの側面に配置されているので、折畳状態にしたときに従来のように起立係合突部25が上方に突出することがなくなる。また、図2に示すように、折畳状態で自立用ヒンジアーム29は第2支持突壁32の上面より下方に位置して、起立係合突部25が第2支持突壁32の内面と第2側壁21の下面との間に配置されて保護される(図10参照)。これらにより、従来のように起立係合突部25が他の折畳コンテナとの当接により潰れて係合力が弱まるような事態の懸念はなくなる。
【0031】
折畳コンテナ10を折畳状態(図2参照)から組立状態(図1参照)にするには、まず、1対の第2側壁21,21を第1側壁11,11より先に起立させる。このとき、第2側壁21は、ヒンジ軸突部23の近傍の架空の回転軸を中心に回転してヒンジ軸突部23が孔内係止突部34の下方に潜り込んでその下面に係止する(図9(B)参照)。また、第2側壁21の下面は第1支持突壁31の上面に載置されて、第1支持突壁31上から第2側壁21が起立した姿勢になる。そして、第1支持突壁31が起立姿勢になったときに、図11に示すように自立用ヒンジアーム29の起立係合突部25が自立用ヒンジ凹部35の起立係合溝37に係合する。詳細には、図10に示すように、第2側壁21を倒れた姿勢から起立させる途中で、起立係合突部25のガイド斜面25B(図6(A)参照)が自立用ヒンジ凹部35の開口縁に摺接して起立係合突部25が摺接平坦面36(図8参照)に乗り上がって弾性片24が変形する。さらに、第2側壁21を起こして行くと起立係合突部25の稜線部25Aが摺接平坦面36上を摺接し、第2側壁21が丁度、起立姿勢になったところで、弾性片24の弾性復元により起立係合突部25が起立係合溝37に凹凸係合し(図11参照)、第2側壁21が起立姿勢に保持されて自立するか又は、第2側壁21の自立が起立係合突部25と起立係合溝37との凹凸係合によって補助される。
【0032】
次いで、自立した第2側壁21,21から手を放して第1側壁11,11を起立させる。ここで、本実施形態では、起立係合突部25及び起立係合溝37が、ヒンジアーム22,29の回動軸方向において互いに対向したヒンジアーム29の側面とヒンジ凹部35の内側面とに配置されているのでヒンジ凹部33の底面に起立係合突部25に相当する部位を備えた従来のものに比べて、ヒンジアーム22,29の回動中心から起立係合突部25までの距離を大きく確保することができ、起立係合突部25と起立係合溝37との係合力を高めることが可能になる。しかも、起立係合突部25を支持する弾性片24の変形方向が第2側壁21の回動方向と直交した方向を向いているので、その弾性片24に相当する部位が第2側壁21の回動方向と同方向に変形する従来のものより高い係合力を得ることができる。これにより、第2側壁21の自立が安定し、第1側壁11の起立操作時に第2側壁21,21が第1側壁11と干渉するような事態が防がれて作業効率が向上する。そして、第1側壁11,11を起立姿勢にして折畳コンテナ10が組立状態になる。
【0033】
上記したように本実施形態の折畳コンテナ10では、折畳状態から組立状態にする際に先に起立させる第2側壁21の自立が従来より安定する。また、自立用ヒンジアーム29及び自立用ヒンジ凹部35が、通常のヒンジアーム及びヒンジ凹部の一端部のみを変更した構造になっているので設計が容易である。しかも、自立用ヒンジアーム29も、通常のヒンジアーム22と同様にヒンジ軸突部23を備えてヒンジ凹部33に回動可能に軸支されているので回動動作が安定し、延いては起立凹凸係合部同士の係合及び係合解除の動作も安定する。また、自立用ヒンジアーム29のうちヒンジ軸突部23を有しない側面には、その側面全体より突出した摺接突部26が備えられているので、第2側壁21の回動時の摩擦抵抗が摺接突部26によって軽減されると共に、第2側壁21の回動軸方向のガタを抑えられる。
【0034】
また、起立係合溝37は、上下方向に延びかつ上端部が第2支持突壁32の上面に開放しているので(図11参照)、底壁30を樹脂成形金型で成形する場合に、その金型のうち起立係合溝37を成形する部位の構造が簡素化されて、金型制作費が抑えられる。
【0035】
さらには、自立用ヒンジアーム29を第2側壁21の中央に配置したので中央以外の位置に配置した場合に比べて、自立用ヒンジアーム29から他の最も遠く離れたヒンジアーム22までの距離が小さくなる。これにより、第2側壁21と底壁30の寸法上のばらつきに起因した起立係合突部25と起立係合溝37の互いの係合深さのばらつきを抑えることができる。
【0036】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0037】
(1)前記実施形態では、自立用ヒンジアーム29のアーム本体29Hにおける基端部に板厚部28Aが備えられていたが、図12(A)及び図12(B)に示した自立用ヒンジアーム29Vのように板厚部28Aを備えず、アーム本体29Hの側面にしてもよい。
【0038】
(2)前記実施形態では、自立用ヒンジアーム29側に本発明の起立係合突部(起立係合突部25)が形成れる一方、自立用ヒンジ凹部35の内面に起立係合凹部(起立係合溝37)が形成されていたが、それとは逆に自立用ヒンジアーム側に係合係合凹部を形成する一方、その自立用ヒンジ凹部に起立係合突部を形成してもよい。
【0039】
(3)前記実施形態では、各第2側壁21の1つずつの自立用ヒンジアーム29が備えられていたが、各第2側壁に複数の自立用ヒンジアームを備えた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 折畳コンテナ
11 第1側壁
21 第2側壁
22,29,29V ヒンジアーム
22H,29H アーム本体
23 ヒンジ軸突部
24 弾性片
25 起立係合突部
26 摺接突部
27 連絡壁
28 アーム構成突片
30 底壁
31 第1支持突壁
32 第2支持突壁
32,32 第2支持突壁
33,35 ヒンジ凹部
33A,35A 上面開口
33B,35B 内側面開口
34 孔内係止突部
36 摺接平坦面
37 起立係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の底壁と、前記底壁の外縁部のうち1対の対向辺に配置された1対の第1側壁と、残りの1対の対向辺に配置された1対の第2側壁とを別部品にして備え、
前記底壁の外縁部全体から支持突壁が上方に突出し、前記第1及び第2の各側壁から垂下した複数のヒンジアームの下端部が、前記支持突壁の上面と内側面とに開放した複数のヒンジ凹部内に回動可能に連結され、前記第1、第2の側壁の順に前記底壁の上に重なって折畳状態になる一方、前記第2、第1の側壁の順に起立して組立状態になり、前記1対の第1側壁が前記1対の第2側壁の間に挟まって前記第2側壁の内倒れが防止されると共に、前記第1側壁の側部と前記第2側壁の内面との間の係合機構によって前記第1側壁の内倒れが防止されて前記組立状態に保持される折畳コンテナにおいて、
前記第2側壁の少なくとも1つの前記ヒンジアームの側面と、その又はそれらヒンジアームの側面に対して前記ヒンジアームの回動軸方向で対向した前記ヒンジ凹部の内側面とに、前記第2側壁を起立させたときに互いに凹凸係合して前記第2側壁を起立姿勢に保持する1対の起立凹凸係合部を設けると共に、
前記ヒンジアームの側面と前記ヒンジ凹部の内側面との何れか一方に、一方の前記起立凹凸係合部を支持しかつ前記第2側壁を折り畳み操作したときに弾性変形して前記1対の起立凹凸係合部の係合解除を許容する弾性支持部を備えたことを特徴とする折畳コンテナ。
【請求項2】
前記起立凹凸係合部を有しない各前記ヒンジアームは、前記第1又は第2の側壁から垂下された複数のアーム構成突片を前記ヒンジアームの回動軸方向に対向配置して連絡壁にて連絡してなるアーム本体と、前記アーム本体の先端部両側面から相反する方向に突出した1対のヒンジ軸突部とを備えてなり、
前記起立凹凸係合部を有しない各前記ヒンジ凹部は、前記支持突壁の内側面に開口した内側面開口が上面開口より幅狭でかつ前記上面開口の中央に配置された形状をなしかつ、前記ヒンジ凹部の内側面のうち前記内側面開口を間に挟んだ両側部分から前記支持突壁の厚さ方向に1対の孔内係止突部が突出して、それら1対の孔内係止突部の下面に前記1対のヒンジ軸突部が係止することで、前記ヒンジアームの下端部が前記ヒンジ凹部内の下端部に回動可能に連結され、
前記起立凹凸係合部を有した前記ヒンジ凹部は、前記内側面開口が前記上面開口の幅方向の一端部に寄せて配置されて、前記内側面開口の一側部の開口縁から前記支持突壁の厚さ方向の奥部又は奥寄り位置まで面一になった摺接平坦面を有すると共に、その摺接平坦面の一部を陥没させてなる起立係合凹部を一方の前記起立凹凸係合部として備え、さらに、前記内側面開口を挟んで前記摺接平坦面と反対側に前記孔内係止突部を備えた構造をなし、
前記起立凹凸係合部を有した前記ヒンジアームは、前記アーム本体の一方の側面のみに前記ヒンジ軸突部を備えると共に、前記アーム本体の他方の側面の前記アーム構成突片の一部を片持ち梁状に切り離して前記弾性支持部としての弾性片を備え、さらに、その弾性片の先端部から突出して前記起立係合凹部に凹凸係合可能な起立係合突部を他方の前記起立凹凸係合部として備えたことを特徴とする請求項1に記載の折畳コンテナ。
【請求項3】
前記起立係合凹部は、上下方向に延びかつ上端部が前記支持突壁の上面に開放した溝形状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の折畳コンテナ。
【請求項4】
各前記第2の側壁には、少なくとも3つ以上の前記ヒンジアームが備えられ、それら複数のヒンジアームのうち中央に位置したヒンジアームのみに前記起立凹凸係合部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の折畳コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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