説明

抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法

【課題】抜蝕及び抜染加工を同時に施すことができ、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を簡便な方法で効率よく製造することが可能な抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と、アルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含む抜染印捺糊とを重ねて基布に印捺した後に熱処理して抜蝕加工と抜染加工とを同時に施すことを特徴とする抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維等の合成繊維材料に意匠性を与える加工として抜染加工や抜蝕加工が行われてきた。そして、このような抜染加工の方法としては、塩化第一錫等の強い還元力を有する物質を含む抜染印捺糊を用い、これを印捺した後、熱処理して抜染模様を形成させる方法や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第三リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ性物質を含む抜染印捺糊を用い、これを印捺した後、熱処理して抜染模様を形成させる方法や、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及びエステル系非イオン界面活性剤を組み合わせたものを含む抜染印捺糊を用い、これを印捺した後、熱処理して抜染模様を形成させる方法等が知られている。例えば、特開平2−127580号公報(特許文献1)においては、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンフェノールエーテル等の界面活性剤を含む抜染印捺糊を基布に印捺し、熱処理を施す方法が開示されている。
【0003】
また、合成繊維材料に凹凸柄の意匠性を与える抜蝕加工の方法としては、金属アルカリ塩を含む抜蝕印捺糊を用い、これを印捺した後、熱処理して抜蝕模様を形成させる方法が知られている。例えば、特開2005−29905号公報(特許文献2)においては、金属アルカリ塩、糊剤、粘土鉱物、及びキレート効果を有する化合物を含む抜蝕印捺糊を、基布に印捺し、熱処理を施す方法が開示されている。そして、近年では、より高度な意匠性を付与するために、上述のような抜染加工と抜蝕加工とを組み合わせた加工が行われるようになってきた。
【0004】
しかしながら、従来の抜染印捺糊、すなわち、前記の塩化第一錫等の強い還元力を有する物質、アルカリ性物質、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又はエステル系非イオン界面活性剤等の抜染印捺糊と、アルカリ金属水酸化物を含有する抜蝕印捺糊とを用いて、これらの全部又は一部が重なるようにして印捺する加工を施した場合には、抜染印捺糊と抜蝕印捺糊とが混ざり合った部分で変色が起こるという問題があった。このような変色が起こった合成繊維材料は、繊維製品として提供できるものではない。そのため、従来の抜染印捺糊と抜蝕印捺糊とを用いて一回で同時に印捺して変色が起こらないように合成繊維材料を加工するためには、凹凸模様と抜染模様が重ならないようにする必要があり、凹凸模様と抜染模様の二つの模様とに隙間を設け、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とが接触しないよう細心の注意を払って印捺する必要があった。
【0005】
また、凹凸模様と抜染模様とが隙間無く連続した模様になるように形成したい場合や、立毛された基布の毛先の部分が全面抜染されたところに一部凹模様を形成し、さらにその凹模様に異色を表現するといった複雑な模様を形成したい場合には、抜染印捺糊と抜蝕印捺糊とが混ざらないように印捺工程を二回に分けてする必要があるとともに一方の加工を施した後に洗浄する必要が生じ、工程が煩雑であるという問題があった。具体的には、抜染印捺糊を印捺した後、熱処理し、更に洗浄処理を施して乾燥させた後、アルカリ金属水酸化物を含有する抜蝕印捺糊を印捺し、熱処理及び洗浄処理を施す必要があった。これは、印捺糊が乾燥した状態であっても、乾燥していない状態であっても、抜染印捺糊と抜蝕印捺糊とが重なった場合には変色が生じるためである。
【特許文献1】特開平2−127580号公報
【特許文献2】特開2005−29905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、抜蝕及び抜染加工を同時に施すことができ、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を簡便な方法で効率よく製造することが可能な抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と、アルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含む抜染印捺糊とを用い、これらを重ねて基布に印捺した後、熱処理を施して抜蝕加工と抜染加工とを同時に施すことにより、抜蝕及び抜染加工を同時に施すことができ、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を簡便な方法で効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法は、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と、アルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含む抜染印捺糊とを重ねて基布に印捺した後に熱処理して抜蝕加工と抜染加工とを同時に施すことを特徴とする方法である。
【0009】
また、上記本発明にかかるアルコール系アルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、Rは炭素数1〜30の一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、mは5〜2200の整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物、又は、下記一般式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)中、Rは炭素数1〜30のq価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、qは2〜10の整数を示し、pは1〜qの整数を示し、nはn×pの値が5〜2200となる整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0014】
さらに、上記本発明にかかるアミン系アルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(3):
【0015】
【化3】

【0016】
(式(3)中、R及びRは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数8〜30の一価の炭化水素基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、aは5〜2200の整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物、又は、下記一般式(4):
【0017】
【化4】

【0018】
(式(4)中、Rは炭素数8〜30の一価の炭化水素基を示し、b及びcは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ5〜2200の整数を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、抜蝕及び抜染加工を同時に施すことができ、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を簡便な方法で効率よく製造することが可能な抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
本発明の抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法は、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と、アルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含む抜染印捺糊とを重ねて基布に印捺した後に熱処理して抜蝕加工と抜染加工とを同時に施すことを特徴とする方法である。
【0022】
本発明にかかる抜染印捺糊は、アルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含むものである。このようなアルコール系アルキレンオキサイド付加物としては特に制限されず、分子内にヒドロキシル基を1個以上有する化合物にアルキレンオキサイドを付加させたものが挙げられる。また、このようなアルコール系アルキレンオキサイド付加物の中でも、下記一般式(1):
【0023】
【化5】

【0024】
(式(1)中、Rは炭素数1〜30の一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、mは5〜2200の整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物、又は、下記一般式(2):
【0025】
【化6】

【0026】
(式(2)中、Rは炭素数1〜30のq価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、qは2〜10の整数を示し、pは1〜qの整数を示し、nはn×pの値が5〜2200となる整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0027】
前記一般式(1)中のRは、炭素数1〜30の一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基である。このような一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基の炭素数が30を超えると、得られるアルキレンオキサイド付加物の粘度が高くなり過ぎるかあるいは固化するために、印捺に適した糊が得られない。また、このような一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基の炭素数としては、8〜22の範囲にあることが好ましい。前記炭素数が8〜22の範囲にある場合には、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触した際に、合成繊維の変色がより十分に抑制される傾向にある。
【0028】
また、前記炭素数1〜30の一価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の1価の飽和アルコール、オレイルアルコール等の1価の不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の1価の芳香族系アルコール;フェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、スチレン化フェノール等の置換基を有するフェノール類等が挙げられる。
【0029】
さらに、このような炭素数1〜30の一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基としては特に制限されず、直鎖状あるいは分岐鎖状のアルキル基、直鎖状あるいは分岐鎖状のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基等が挙げられる。このような炭素数1〜30の一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基の中でも、抜蝕印捺糊と接触した際に、より変色が起こり難いという観点から、直鎖状あるいは分岐鎖状のアルキル基、又は、直鎖状あるいは分岐鎖状のアルケニル基が好ましい。
【0030】
また、前記一般式(1)中のAは、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基の炭素数が2〜4の範囲にある場合においては、抜染性が良好で、しかも印捺に適した糊が得られる。他方、このようなアルキレン基の炭素数が5以上であると、印捺糊に適した糊が得られない。このような炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、印捺糊としての適性及び抜染性がより向上するという観点から、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0031】
また、前記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物において、その分子内にAが複数存在する場合においては、Aは同一であっても又は異なっていてもよく、更には、前記アルキレンオキサイド付加物が共重合体である場合においては、アルキレンオキシ基(AO)のブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。また、このようなアルキレンオキサイド付加物が、共重合体である場合においては、より印捺に適した糊になり易く、抜染性もより向上するという観点から、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基のブロック共重合体、又は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基のランダム共重合体が好ましい。
【0032】
また、前記一般式(1)中のmは、アルキレンオキシ基(AO)の繰り返し単位数であって、5〜2200(好ましくは5〜1200)の整数である。このようなAOの繰り返し単位数が5未満では、抜染性が不十分となり、他方、2200を超えると、得られるアルキレンオキサイド付加物の粘度が高くなり過ぎるかあるいは固化するために、印捺に適した糊が得られない。
【0033】
また、前記一般式(2)中のRは、炭素数1〜30のq価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基である。このようなq価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基の炭素数が30を超えると、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触した際に、合成繊維材料に変色が起こる。また、このようなq価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基の炭素数としては、2〜12の範囲にあることが好ましい。前記炭素数が前記範囲にある場合には、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触した際に、合成繊維の変色がより十分に抑制される傾向にある。
【0034】
さらに、前記一般式(2)中のqは2〜10(より好ましくは2〜6)の整数である。このようなqの値が10を超えると、印捺に適した糊が得られない。
【0035】
また、このような炭素数1〜30のq価のアルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリトリット、ソルビット、ソルビタン、等の多価アルコール;カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の多価フェノール等が挙げられ、多価アルコールが好ましい。
【0036】
また、前記一般式(2)中のAは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、前記一般式(1)中のAと同様のものである。また、前記一般式(2)においてpは1〜qの整数である。更に、前記一般式(2)中のnは、n×pが5〜2200(好ましくは5〜1200)となる整数である。なお、このようなn×pの値は、分子内のアルキレンオキシ基の総数を示す値である。そして、このようなn×pの値が5未満では、抜染性が不十分となり、他方、2200を超えると、得られるアルキレンオキサイド付加物の粘度が高くなり過ぎるかあるいは固化するために、印捺に適した糊が得られない。また、pが2以上の整数であり、一分子内にnが複数存在する場合においては、nは同一であっても又は異なっていてもよい。
【0037】
さらに、このような一般式(1)又は一般式(2)で表されるアルコール系アルキレンオキサイド付加物を製造する方法としては特に制限されず、前記アルコール系アルキレンオキサイド付加物を製造することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。このような一般式(1)又は一般式(2)で表されるアルコール系アルキレンオキサイド付加物を製造する方法としては、例えば、前述のような炭素数1〜30の一価のアルコール又は前述のような炭素数1〜30のq価のアルコールと、アルカリ触媒(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)とを混合し、減圧下、約110℃で十分に脱水した後、窒素雰囲気下、120〜170℃程度の温度条件下でアルキレンオキサイドを圧入し付加する方法を挙げることができる。また、このようにして付加させるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。更に、これらの付加形態は、1種のアルキレンオキサイドの単独付加、2種以上のアルキレンオキサイドのブロック付加及びランダム付加のいずれであってもよい。なお、このようなアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを単独で用いるか、あるいは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを併用することが好ましい。
【0038】
また、前記アミン系アルキレンオキサイド付加物としては特に制限されず、アミンにアルキレンオキサイドを付加させたものが挙げられる。このような前記アミン系アルキレンオキサイド付加物の中でも、下記一般式(3):
【0039】
【化7】

【0040】
(式(3)中、R及びRは同一であっても又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数8〜30の一価の炭化水素基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、aは5〜2200の整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物、又は、下記一般式(4):
【0041】
【化8】

【0042】
(式(4)中、Rは炭素数8〜30の一価の炭化水素基を示し、b及びcは同一であっても又は異なっていてもよく、それぞれ5〜2200の整数を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0043】
前記一般式(3)及び(4)中のR、R及びRは、それぞれ炭素数8〜30(より好ましくは8〜22)の一価の炭化水素基である。このような一価の炭化水素基の炭素数が8未満では、印捺に適した糊にならず、作業性が低下する。他方、前記炭素数が30を超えると、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触した際に、合成繊維材料に変色が起こる。なお、R及びRは、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0044】
さらに、このような炭化水素基としては特に制限されず、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、更には、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)のものであっても、環状のものであってもよい。また、このような炭化水素基としては、抜蝕印捺糊と接触した際に合成繊維材料により変色が起こり難いという観点から、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、あるいは、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基が好ましい。
【0045】
また、前記一般式(3)及び(4)中のAは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、前記一般式(1)中のAと同様のものである。
【0046】
さらに、前記一般式(3)及び(4)中のa、b及びcは、アルキレンオキシ基(AO)の繰り返し単位数であって、それぞれ5〜2200(好ましくは5〜1200)の整数である。このようなAOの繰り返し単位数が5未満では、抜染性が不十分となり、他方、2200を超えると、得られるアルキレンオキサイド付加物の粘度が高くなり過ぎるかあるいは固化するために、印捺に適した糊が得られない。
【0047】
また、このような一般式(3)又は一般式(4)で表されるアミン系アルキレンオキサイド付加物を製造する方法としては特に制限されず、このようなアルキレンオキサイド付加物を製造することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。また、このような一般式(3)又は一般式(4)で表されるアミン系アルキレンオキサイド付加物を製造する方法としては、例えば、第1級アミンの場合は第1級アミンと2倍モル量のアルキレンオキサイドとを、第2級アミンの場合は第2級アミンと等モル量のアルキレンオキサイドとをそれぞれ用い、窒素雰囲気下、120〜170℃程度の温度条件で付加させた後、冷却し、次いで、アルカリ触媒(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を加え、減圧下、約110℃で十分に脱水した後、更に、窒素雰囲気下、120〜170℃程度の温度条件でアルキレンオキサイドを圧入し付加する方法が挙げられる。なお、このようなアミン系アルキレンオキサイド付加物を製造する際に用いられるものモノアミン(第1級又は第2級アミン)化合物としては、オクチルアミン、イソオクチルアミン、カプリルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の第1級アミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジミリスチルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン等の第2級アミンが挙げられる。
【0048】
また、本発明にかかる抜染印捺糊は、前述のようなアルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含むものであればよく、特に制限されず、例えば、前記アルキレンオキサイド付加物をそのまま抜染印捺糊として用いてもよく、前記アルキレンオキサイド付加物を水等の水系溶媒に混合してペーストにしたものを抜染印捺糊として用いてもよく、更には、前記アルキレンオキサイド付加物に元糊を配合したものを抜染印捺糊として用いてもよい。
【0049】
このような抜染印捺糊におけるアルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物の含有量としては、特に制限されず、抜染の対象となる合成繊維材料(基布)の種類及び目標とする抜染の程度によって適宜選択することができるが、十分な抜染効果が得られるという観点から、一般に抜染印捺糊中に5〜100質量%であることが好ましく、15〜100質量%であることがより好ましい。
【0050】
また、このような抜染印捺糊を調整するための前記元糊としては特に制限されず、公知の元糊を適宜用いることができる。このような元糊としては、例えば、デンプン、アラビアゴム、クリスタルゴム、タマリンド、アルギン酸ソーダ等の天然糊料、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、プロピオキシセルロース、アルギン酸エステル、グアガムエチレンオキサイド付加物、エチルセルロース、メチルセルロース、ブリティッシュガム等の加工糊料、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸誘導体、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリマレイン酸共重合体塩、非イオン界面活性剤等の合成糊料や合成樹脂エマルジョン及び無機物等が挙げられる。
【0051】
また、このような元糊の含有量としては特に制限されず、用いる抜染印捺糊の設計に応じて適宜変更できるものではあるが、抜染印捺糊中に50質量%未満であることが望ましい。また、このような元糊の中でも、ポリビニルアルコール、水と石油系溶剤で粘液エマルジョンとしたもの、無機物等のように、イオン性が少なく、エステル基やアマイド基等の加水分解の影響を受けやすい部分を持っていないものが好ましい。
【0052】
さらに、本発明にかかる抜染印捺糊においては、必要に応じて、染料、還元防止剤、金属イオン封鎖剤、吸湿剤、浸透剤、電解質、油脂、蛍光増白剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の染色用薬剤を、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触したときに変色しない範囲で、適宜配合することができる。なお、このような染色用薬剤としては特に制限されず、公知の染色用薬剤を適宜用いることができる。また、前記染料としては、特に好ましくはアルカリ金属水酸化物に耐え得る染料であってキノン系、キノフタロン系、アントラキノン系の分散染料が用いられる。なお、このような染色用薬剤の含有量としては、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触したときに変色しないようにするという観点から、1〜20質量%程度であることが好ましい。
【0053】
また、本発明にかかる抜染印捺糊においては、アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と接触したときに十分に変色を抑制できないという観点から、脂肪酸エステル系の非イオン界面活性剤(例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルバイド等の多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、高級アルコールや多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のエステル化物等)、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等の成分は含有させないほうがよく、これらの成分を含有させる場合には、その含有量を10質量%以下程度としたほうがよい。
【0054】
また、本発明にかかる抜蝕印捺糊は、アルカリ金属水酸化物を含むものである。このような抜蝕印捺糊におけるアルカリ金属水酸化物の含有量は、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満では、抜蝕性が低下し、凹凸模様が十分に形成されず、意匠性に優れた模様を付与することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、凹凸模様の尖鋭性が低下する傾向にある。
【0055】
また、このような抜蝕印捺糊においてアルカリ金属水酸化物以外の他の成分は特に制限されず、従来から用いられている他の成分を適宜用いることができる。そのため、このような抜蝕印捺糊としては、例えば、水溶性高分子化合物を必要に応じて無機物等と混合し、水に溶解したものを元糊として用い、これに、ポリエステル系繊維等の合成繊維材料を加水分解するのに十分な濃度のアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを配合したもの使用することができる。
【0056】
本発明にかかる基布としては、合成繊維材料であればよく特に制限されず、公知の合成繊維材料を適宜用いることができる。また、このような基布(合成繊維材料)の素材は特に制限されず、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びこれらの繊維と他の繊維(例えば、綿、レーヨン、絹、アセテート)との複合繊維等を好適に用いることができる。また、このような基布の形態は特に限定されず、例えば、前記繊維材料を素材とした織物、編物、起毛布、不織布等が挙げられる。
【0057】
また、本発明の抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法においては、前記抜蝕印捺糊と、前記抜染印捺糊とを重ねて基布に印捺した後に熱処理して抜蝕加工と抜染加工とを同時に施す。
【0058】
このような抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とを重ねて基布に印捺する方法としては、特に制限されず、前記抜蝕印捺糊と前記抜染印捺糊のうちのいずれか一方を基布に印捺した後にもう一方を重ねて印捺すればよい。また、このような抜蝕印捺糊と抜染印捺糊との印捺に際しては、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とをいわゆるウェットオンウェットで順次印捺する方法を採用してよく、一方の印捺糊を印捺した後にこれを予備乾燥させ、次いでもう一方の印捺糊を印捺する方法(いわゆるウェットオンドライ)を採用してもよく、より効率よく印捺するという観点からは、ウェットオンウェットで順次印捺する方法を採用することが好ましい。
【0059】
また、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊の印捺の順序はどちらが先でも良いが、より型際のシャープな凹凸模様が得られるという観点からは、抜蝕印捺糊を印捺した後に抜染印捺糊を印捺する方が好ましい。本発明においては、このようにして抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とを重ねて印捺し、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とが混合しても合成繊維材料の変色が起こらないため、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とが混ざらないように注意を払う必要がなく、更には抜蝕及び抜染加工のうちの一方の加工を施した後にもう一方の加工を施す前に洗浄を施す必要もなく、効率よく抜蝕及び抜染加工を施すことが可能となる。
【0060】
さらに、基布への抜染印捺糊及び抜蝕印捺糊の印捺方法は特に制限されず、従来公知の印捺方法を適宜採用することができ、例えば、スクリーン捺染、ロータリー捺染、ローラー捺染、インクジェット捺染、手捺染等の方法を採用できる。また、このような印捺の際には、公知の装置を適宜用いてもよい。更に、このような印捺の際には、模様等の部分印捺から基布のほぼ全面の印捺まで任意に印捺することができる。なお、抜染印捺糊及び抜蝕印捺糊を基布に重ねて印捺した後においては、熱処理を施す前に必要に応じて予備乾燥させてもよい。このような予備乾燥をさせる方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0061】
また、前記熱処理の方法としては特に限定されず、抜蝕及び抜染加工の際に採用される公知の方法を適宜採用することができ、例えば、乾熱処理法であっても湿熱処理法であってもよい。このような乾熱処理法としては、例えば、オーブンや乾燥機等を用いてベーキングを施す方法、熱プレス機を用いてベーキングを施す方法等を適宜採用できる。また、前記湿熱処理法としては、例えば、HTスチーマー等を用いてスチーミングを施す方法を採用できる。
【0062】
さらに、このような熱処理の条件は、対象とする合成繊維材料の種類によって適宜変更させるものであるため一概には言えないが、一般に90〜200℃程度の温度条件下において30秒〜30分程度加熱する熱処理の条件を採用することが好ましい。また、本発明においては、前述のような熱処理を施した後に、必要に応じて、熱処理された合成繊維材料に水洗、ソーピング等の後処理を施し、乾燥させてもよい。
【0063】
また、本発明の製造方法により得られる抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料には、抜蝕及び抜染加工前又は後に通常の染色又は通常の捺染加工を施してもよい。そして、本発明による抜蝕及び抜染加工によって形成される凹凸模様と抜染加工の組み合わせによる模様、色相や、更なる染色又は捺染加工によって形成される柄、色相等の組み合わせによって、得られる合成繊維材料に多種多様の高度の意匠効果を付与することが可能となる。
【0064】
このように、本発明によれば、抜蝕及び抜染加工を同時に施すことができ、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を簡便な方法で効率よく製造することが可能となる。すなわち、本発明においては、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とを重ねて印捺しても合成繊維材料が変色しないため、抜蝕印捺糊と抜染印捺糊とを印捺する際に、これらが接触しないように細心の注意を払う必要がないばかりか、一方の印捺糊を印捺した後、もう一方の印捺糊を印捺する前に洗浄工程を経る必要もなく、簡便な方法で効率よく抜蝕及び抜染加工を施すことが可能となる。そして、このような加工を施すことにより、間隙無く凹凸模様と抜染模様とが交錯した模様や、全面抜染されたところに凹凸模様が表現されて凹部分が異色に見えるような立体柄模様等を有する意匠性に優れた合成繊維材料を効率よく製造することが可能となる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(製造例1:試験布)
各実施例及び各比較例で用いる試験布(基布)を以下の方法で製造した。すなわち、先ず、ポリエステル起毛布(白布、精練上がり)と、下記組成の染色浴とを用いて、浴比を1:20として昇温速度2℃/分の条件で30℃から130℃まで昇温した後、130℃の温度条件で30分間保持し、前記ポリエステル起毛布の染色を行った。次に、染色されたポリエステル起毛布を水洗し、下記組成のソーピング浴を用いて、浴比を1:20として80℃の温度条件で20分間ソーピングを行い、その後、乾燥させて青色に染色された試験布を得た。
【0067】
<染色浴の組成>
染料(C.I. Disperse Blue 60):1.0%o.w.f.
RM−EX(分散均染剤、日華化学(株)製):0.5g/L
90%酢酸 :0.1g/L。
【0068】
<ソーピング浴の組成>
ハイドロサルファイト:2g/L
水酸化ナトリウム:1g/L
サンモールRC−700E(ソーピング剤、日華化学株式会社製):2g/L。
【0069】
(実施例1)
先ず、ニッカガムMA−20(カルボキシメチルセルロールとケイ酸金属塩の混合物、日華化学株式会社製)10g、水70g、水酸化ナトリウム20gを混合し抜蝕印捺糊を調製した。また、重量平均分子量10,000のポリエチレングリコール40g及び水60gを混合して抜染印捺糊を調製した。
【0070】
次に、前記試験布に前記抜蝕印捺糊を印捺機として辻井式自動捺染機(辻井染機工業株式会社製)を用いて柄状に印捺した後、模様が一部重なるようにして、前記抜染印捺糊を柄状に印捺し、乾燥させた。なお、このときの各印捺糊の塗布量は、抜蝕印捺糊を500g/mとし、抜染印捺糊を300g/mとした。次いで、HTスチーマー(HT−3−550型:辻井染機工業株式会社製)を用いて180℃で7分間の湿熱処理を施した後、水洗し、更に、下記組成のソーピング浴を用いて、浴比を1:20として80℃の温度条件で20分間ソーピングを行った後、乾燥させて、抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0071】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様が隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0072】
<ソーピング浴の組成>
ハイドロサルファイト:2g/L
水酸化ナトリウム:1g/L
サンモールFLconc(ソーピング剤、日華化学株式会社製):2g/L
(実施例2)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、ポリプロピレングリコール(平均分子量2250)のエチレンオキサイド40モル付加物10g及び水90gを混合したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0073】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様が隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0074】
(実施例3)
実施例1で用いられた抜染印捺糊に更に分散染料(C.I.Disperse Red 92)2gを添加したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0075】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が赤く着色されたシャープな輪郭を有した模様とが間隙無く形成され、且つ、凹凸模様と赤く着色された模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0076】
(実施例4)
実施例2で用いられた抜染印捺糊に更に分散染料(C.I.Disperse Red 92)2gを添加したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例2と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0077】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が赤く着色されたシャープな輪郭を有した模様とが間隙無く形成され、且つ、凹凸模様と赤く着色された模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と赤く着色された模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0078】
(実施例5)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、ステアリルアルコールのエチレンオキサイド90モル付加物10g及び水90gを混合したものを用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0079】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様が隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0080】
(実施例6)
実施例5で用いられた抜染印捺糊に更に分散染料(C.I.Disperse Red 92)2gを添加したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例5と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0081】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が赤く着色されたシャープな輪郭を有した模様とが間隙無く形成され、且つ、凹凸模様と赤く着色された模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と赤く着色された模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0082】
(実施例7)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、重量平均分子量10,000のポリエチレングリコール40g、重量平均分子量1,000のポリプロピレングリコール10g及び水50gを混合したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0083】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様が隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0084】
(実施例8)
実施例7で用いられた抜染印捺糊に更に分散染料(C.I.Disperse Red 92)2gを添加したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例7と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0085】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が赤く着色されたシャープな輪郭を有した模様とが間隙無く形成され、且つ、凹凸模様と赤く着色された模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と赤く着色された模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0086】
(実施例9)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、グリセリンのエチレンオキサイド100モル付加物10g及び水90gを混合したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0087】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様とが隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0088】
(実施例10)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、重量平均分子量50000のポリエチレングリコール10g及び水90gを混合したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0089】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様とが隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0090】
(実施例11)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、ベヘニルアルコールのエチレンオキサイド15モル付加物15g及び水90gを混合したものを抜染印捺糊として用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0091】
このようにして得られた抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料は、シャープな輪郭を有した凹凸模様と、印捺部が白く抜染されたシャープな輪郭を有した模様とが隙間無く形成され、且つ、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分の変色もなく、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた模様が形成されて非常に意匠性の高いものであった。
【0092】
(比較例1)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、ニッカガムC−66R(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、日華化学株式会社製)3g、オレイン酸ジエステル30g及び水67gを混合して調製した抜染印捺糊を用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0093】
このようにして得られた合成繊維材料においては、凹凸模様と、印捺部が抜染された模様とが組み合わされた模様となっていたが、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分とその周囲が変色しており、更には、その重なった部分の凹部が浅くなっており、意匠性が十分なものではなかった。
【0094】
(比較例2)
比較例1で用いられた抜染印捺糊に更に分散染料(C.I.Disperse Red 92)2gを添加したものを抜染印捺糊として用いた以外は、比較例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0095】
このようにして得られた合成繊維材料においては、凹凸模様と、印捺部が赤色に着色抜染された模様とが組み合わされた模様が形成されていたが、凹凸模様と赤色に着色抜染された模様とが重なった部分とその周囲が変色しており、更には、その重なった部分の凹部が浅くなっており、意匠性が十分なものではなかった。
【0096】
(比較例3)
実施例1で用いられた抜染印捺糊の代わりに、ニッカガムC−66R(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、日華化学株式会社製)4g及び水56gからなる元糊60gに、ひまし油のエチレンオキサイド36モル付加物6g、ドデシルアミンのエチレンオキサイド17モル付加物の塩化メチル4級化物4g、リン酸二水素一ナトリウム0.2g、塩素酸ナトリウム0.4g及び水11.4gを混合して調製した抜染印捺糊を用いた以外は、実施例1と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0097】
このようにして得られた合成繊維材料においては、凹凸模様と、印捺部が抜染された模様とが組み合わされた模様が形成されていたが、凹凸模様と抜染模様とが重なった部分とその周囲が変色しており、更には、その重なった部分の凹部が浅くなっており、意匠性が十分なものではなかった。
【0098】
(比較例4)
比較例3で用いられた抜染印捺糊に更に分散染料(C.I.Disperse Red 92)2gを添加したものを抜染印捺糊として用いた以外は、比較例3と同様にして抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料を得た。
【0099】
このようにして得られた合成繊維材料においては、凹凸模様と、印捺部が赤色に着色抜染された模様とが組み合わされた模様が形成されていたが、凹凸模様と赤色に着色抜染された模様とが重なった部分とその周囲が変色しており、更には、その重なった部分の凹部が浅くなっており、意匠性が十分なものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、抜蝕及び抜染加工を同時に施すことができ、凹凸模様と抜染模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を簡便な方法で効率よく製造することが可能な抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法を提供することが可能となる。
【0101】
したがって、本発明の合成繊維材料の製造方法は、簡便な方法で効率よく抜蝕及び抜染加工を施すことが可能であるため、抜染模様と凹凸模様とが組み合わされた意匠性の高い合成繊維材料を製造する方法として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物を含む抜蝕印捺糊と、アルコール系アルキレンオキサイド付加物及び/又はアミン系アルキレンオキサイド付加物を含む抜染印捺糊とを重ねて基布に印捺した後に熱処理して抜蝕加工と抜染加工とを同時に施すことを特徴とする抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法。
【請求項2】
前記アルコール系アルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(1):
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜30の一価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、mは5〜2200の整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物、又は、下記一般式(2):
【化2】

(式(2)中、Rは炭素数1〜30のq価のアルコールからヒドロキシル基を除いた残基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、qは2〜10の整数を示し、pは1〜qの整数を示し、nはn×pの値が5〜2200となる整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項1に記載の抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法。
【請求項3】
前記アミン系アルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(3):
【化3】

(式(3)中、R及びRは同一であっても又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数8〜30の一価の炭化水素基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、aは5〜2200の整数を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物、又は、下記一般式(4):
【化4】

(式(4)中、Rは炭素数8〜30の一価の炭化水素基を示し、b及びcは同一であっても又は異なっていてもよく、それぞれ5〜2200の整数を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抜蝕及び抜染加工された合成繊維材料の製造方法。

【公開番号】特開2008−81901(P2008−81901A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265674(P2006−265674)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物セルコン (104)
【Fターム(参考)】