説明

抵抗値算出装置

【課題】給電システムの運用中に、負荷装置の絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握する。
【解決手段】正極線とアースとの間の第1の絶縁抵抗と、負極線とアースとの間の第2の絶縁抵抗とを有する負荷装置の第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出する抵抗値算出装置であって、正極線とアースとを接続する第1の接地線上に設けられた第1の接地抵抗の両端の電位差を測定する第1の電位差測定部と、負極線とアースとを接続する第2の接地線上に設けられた第2の接地抵抗の両端の電位差を測定する第2の電位差測定部と、第1または第2の接地線上に設けられた可変抵抗と、可変抵抗の変化の前後の抵抗値と、その変化の前後に第1及び第2の電位差測定部にて測定された電位差と、第1及び第2の接地抵抗の抵抗値とを用いて、第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出する制御部と、算出された抵抗値を外部に通知するための出力を行う出力部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷装置の絶縁抵抗の抵抗値を算出する抵抗値算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源から給電線を介して電力が供給される負荷装置の絶縁抵抗は、感電を防止するために、十分に大きな抵抗値(例えば1MΩ程度)である必要がある。なお、負荷装置の絶縁抵抗とは、負荷装置内の給電線とアースとの間の抵抗のことである。
【0003】
上述したように負荷装置の絶縁抵抗は、十分に大きな抵抗値であることが必要であるが、負荷装置内の基板が汚れたり、埃がたまったりすることによって抵抗値が低下した場合、その負荷装置に触れた人は感電してしまう可能性がある。
【0004】
そこで、絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握する必要があるが、それを実現する方法の一例を以下に説明する。
【0005】
図2は、絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握する方法の一例を説明するための図である。
【0006】
図2において、接地抵抗41は、正極線61とアースとを接続する接地線71に設けられた抵抗である。また、接地抵抗42は、負極線62とアースとを接続する接地線72に設けられた抵抗である。
【0007】
負荷装置30は、絶縁抵抗31,32を有している。絶縁抵抗31は、正極線61とアースとの間の抵抗であり、絶縁抵抗32は、負極線62とアースとの間の抵抗である。なお、絶縁抵抗の抵抗値は例えば、数10kΩ程度である。
【0008】
この方法において、電圧計12は接地抵抗41の両端の電位差を測定し、電圧計13は接地抵抗42の両端の電位差を測定する。ここで、電圧計13で計測される電圧は、接地抵抗41の抵抗値と接地抵抗41に流れる電流の積になる。また、電圧14で計測される電圧は、接地抵抗42の抵抗値と接地抵抗42に流れる電流の積になる。通常、接地抵抗よりも絶縁抵抗の方が抵抗値が大きいため、絶縁抵抗に流れる電流は小さくなり、また、接地抵抗41に流れる電流と接地抵抗42に流れる電流は同じになる。このため、電圧計12にて測定された電位差と電圧計13にて測定された電位差との電位差比は、接地抵抗41の抵抗値と接地抵抗42の抵抗値との抵抗値比となる。
【0009】
ここで、例えば正極線61または負極線62が地絡する等、絶縁抵抗31の抵抗値と絶縁抵抗32の抵抗値とのいずれかが低下すると、抵抗値が低下した絶縁抵抗に電流が流れるようになる。絶縁抵抗に流れる電流は、接地線を介して、接地抵抗41又は接地抵抗42に流れる電流経路を形成する。このため、接地抵抗41に流れる電流と接地抵抗42に流れる電流とが異なることとなり、上述した電位差比が変化する。従って、検出器100を用いて電位差比の変化を監視することにより、絶縁抵抗31の抵抗値と絶縁抵抗32の抵抗値とのいずれかの低下を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4142137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、絶縁抵抗31の抵抗値と絶縁抵抗32の抵抗値との両方が同じように低下した場合、抵抗値が低下した絶縁抵抗に流れる電流は大きくなるが、絶縁抵抗31と絶縁抵抗32とに同じ電流が流れて、接地線には電流が流れない。このため、接地抵抗41に流れる電流と接地抵抗42に流れる電流とは同じになる。したがって、上述した電位差比が変化しないため、絶縁抵抗31,32の抵抗値の低下を把握することができない。
【0012】
ここで、絶縁抵抗31の抵抗値と絶縁抵抗32の抵抗値との両方が同じように低下した場合でも、接地抵抗41または接地抵抗42を外すことにより、絶縁抵抗31,32の抵抗値の低下を把握することできる。
【0013】
しかし、接地抵抗を外すと、給電システムにノイズが発生したり、給電電位が不安定になったりするため、給電システムの運用中には行うことができないという問題点がある。
【0014】
本発明は、給電システムの運用中に、負荷装置の絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握することを可能にする抵抗値算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明の抵抗値算出装置は、電力が供給される給電線を構成する正極線とアースとの間の第1の絶縁抵抗と、前記給電線を構成する負極線とアースとの間の第2の絶縁抵抗とを有する負荷装置の前記第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出し、該算出した抵抗値を外部に通知する抵抗値算出装置であって、
前記正極線とアースとを接続する第1の接地線上に設けられた第1の接地抵抗の両端の電位差を測定する第1の電位差測定部と、
前記負極線とアースとを接続する第2の接地線上に設けられた第2の接地抵抗の両端の電位差を測定する第2の電位差測定部と、
前記第1または第2の接地線上に設けられた可変抵抗と、
前記可変抵抗の抵抗値を変化させ、該変化の前後の抵抗値と、前記変化の前後に前記第1及び第2の電位差測定部にて測定された電位差と、前記第1及び第2の接地抵抗の抵抗値とを用いて、前記第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出する制御部と、
前記制御部にて算出された抵抗値を外部に通知するための出力を行う出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上説明したように構成されているので、給電システムの運用中に、負荷装置の絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の抵抗値算出装置を適用した給電システムの実施の一形態の構成を示す図である。
【図2】絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握する方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の抵抗値算出装置を適用した給電システムの実施の一形態の構成を示す図である。
【0020】
本実施形態の給電システムは図1に示すように、抵抗値算出装置10と、電源20と、電源20から給電線を介して電力を供給される負荷装置30とを備えている。
【0021】
図1において、第1の接地抵抗である接地抵抗41は、給電線を構成する正極線61とアースとを接続する第1の接地線である接地線71上に設けられた抵抗である。また、第2の接地抵抗である接地抵抗42は、給電線を構成する負極線62とアースとを接続する第2の接地線である接地線72上に設けられた抵抗である。以降、接地抵抗41の抵抗値をR1と表記し、接地抵抗42の抵抗値をR2と表記する。
【0022】
負荷装置30は、第1の絶縁抵抗である絶縁抵抗31と、第2の絶縁抵抗である絶縁抵抗32とを有している。絶縁抵抗31は、正極線61とアースとの間の抵抗であり、絶縁抵抗32は、負極線62とアースとの間の抵抗である。以降、絶縁抵抗31の抵抗値をR3と表記し、絶縁抵抗32の抵抗値をR4と表記する。
【0023】
抵抗値算出装置10は、可変抵抗11と、第1の電位差測定部である電圧計12と、第2の電位差測定部である電圧計13と、制御部14と、出力部15とを備えている。
【0024】
可変抵抗11は、接地線71上または接地線72上に設けられる。本実施形態において可変抵抗11は図1に示すように、接地線71上に設けられているものとする。なお、図1において可変抵抗11は、接地抵抗41とアースとの間で接地線71上に設けられているが、可変抵抗11は、正極線61と接地抵抗41との間で接地線71上に設けられていてもよい。
【0025】
電圧計12は、接地抵抗41の両端の電位差を測定する。また、電圧計13は、接地抵抗42の両端の電位差を測定する。
【0026】
制御部14は、可変抵抗11の抵抗値を変化させる。そして、制御部14は、その変化の前後の可変抵抗11の抵抗値と、その変化の前後に電圧計12,13にて測定された電位差と、接地抵抗41,42の抵抗値とを用いて、絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4を算出する。制御部14が絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4を算出する動作の詳細については後述する。
【0027】
出力部15は、例えば警報機であり、制御部14にて算出された抵抗値R3,R4が所定の抵抗値以下であった場合に警報を出力する。なお、出力部15は、警報を出力するものに限られず、制御部14にて算出された抵抗値R3,R4を外部に通知するための出力を行う機能を有していればよい。例えば出力部15は、画面を備え、制御部14にて算出された抵抗値R3,R4をその画面に表示するものであってもよい。
【0028】
以下に、上記のように構成された抵抗値算出装置10において、絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4を算出する動作について説明する。
【0029】
まず、制御部14は、可変抵抗11の抵抗値を0にする。以降、このときの可変抵抗11の抵抗値(0)をR51と表記する。
【0030】
次に、制御部14は、電圧計12にて測定された接地抵抗41の両端の電位差を取得する。以降、ここで取得した電位差をV11と表記する。また、制御部14は、電圧計13にて測定された接地抵抗42の両端の電位差を取得する。以降、ここで取得した電位差をV21と表記する。
【0031】
次に、制御部14は、可変抵抗11の抵抗値を0以外の所定の抵抗値に設定する。なお、0以外の所定の抵抗値とは例えば、接地抵抗41,42と同等以上の抵抗値である。以降、このときの可変抵抗11の抵抗値(0以外の所定の抵抗値)をR52と表記する。
【0032】
次に、制御部14は、電圧計12にて測定された接地抵抗41の両端の電位差を取得する。以降、ここで取得した電位差をV12と表記する。また、制御部14は、電圧計13にて測定された接地抵抗42の両端の電位差を取得する。以降、ここで取得した電位差をV22と表記する。
【0033】
そして、制御部14は、絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4を算出する。
【0034】
上述したように、制御部14は、可変抵抗11の抵抗値をR51(0)としたときに電圧計12,13にて測定された電位差V11,V21を取得している。また、制御部14は、可変抵抗11の抵抗値をR52(0以外の所定の値)としたときに電圧計12,13にて測定された電位差V12,V22を取得している。
【0035】
また、本実施形態の給電システムにおいては、正極線61、負極線62、接地抵抗41,42、可変抵抗11及び絶縁抵抗31,32で閉回路が形成されている。以上により、以下に示す式(1)(2)が導出される。
【0036】
【数1】

【0037】
【数2】

【0038】
上述した式(1)(2)は、可変抵抗11の変化の前後の抵抗値R51,R52と、その変化の前後に電圧計12,13にて測定された電位差V11,V12,V21,V22と、接地抵抗41,42の抵抗値R1,R2と、絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4との関係を表す関係式となる。
【0039】
式(1)(2)において未知の値は、絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4だけである。従って、抵抗値R1,R2,R51,R52及び電位差V11,V12,V21,V22を、式(1)(2)に代入することで、絶縁抵抗31,32の抵抗値R3,R4を算出することができる。
【0040】
なお、R3,R4をより正確に算出するためには、接地抵抗41,42の抵抗値R1,R2を負荷装置30に規定の絶縁抵抗値程度にしておくことが望ましい。具体的には、人体保安を考えた場合、R1,R2を(給電電圧/10mA)程度にしておくのがよい。
【0041】
このように本実施形態においては、可変抵抗11の抵抗値を変化させ、その変化の前後の抵抗値と、その変化の前後に電圧計12,13にて測定された電位差と、接地抵抗41,42の抵抗値とを用いて、絶縁抵抗31,32の抵抗値が算出される。そして、算出された抵抗値が外部に通知される。
【0042】
これにより、給電システムの運用中に、負荷装置30の絶縁抵抗31,32の抵抗値の低下を把握することが可能となる。
【0043】
なお、電源電圧が一定に場合には、電圧計12または電圧計13の片方のみであっても、他方の電圧を求めることができるため、電圧計は1つでもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、1つの負荷装置の絶縁抵抗の抵抗値の低下を把握する場合を一例として説明した。但し、例えば電流分配装置等によって電源から複数の負荷装置へ給電される給電システムにおいても、本実施形態で説明した方法を用いることにより、その複数の負荷装置の絶縁抵抗の抵抗値が低下していることを把握することができる。この場合、電源と給電線によって接続されている場所に接地線を接続し、その接地線上に可変抵抗を設けることにより、上述した2つの関係式を導出すればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 抵抗値算出装置
11 可変抵抗
12,13 電圧計
14 制御部
15 出力部
20 電源
30 負荷装置
31,32 絶縁抵抗
41,42 接地抵抗
61 正極線
62 負極線
71,72 接地線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給される給電線を構成する正極線とアースとの間の第1の絶縁抵抗と、前記給電線を構成する負極線とアースとの間の第2の絶縁抵抗とを有する負荷装置の前記第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出し、該算出した抵抗値を外部に通知する抵抗値算出装置であって、
前記正極線とアースとを接続する第1の接地線上に設けられた第1の接地抵抗の両端の電位差を測定する第1の電位差測定部と、
前記負極線とアースとを接続する第2の接地線上に設けられた第2の接地抵抗の両端の電位差を測定する第2の電位差測定部と、
前記第1または第2の接地線上に設けられた可変抵抗と、
前記可変抵抗の抵抗値を変化させ、該変化の前後の抵抗値と、前記変化の前後に前記第1及び第2の電位差測定部にて測定された電位差と、前記第1及び第2の接地抵抗の抵抗値とを用いて、前記第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出する制御部と、
前記制御部にて算出された抵抗値を外部に通知するための出力を行う出力部と、を有する抵抗値算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗値算出装置において、
前記制御部は、前記変化の前後の抵抗値と、前記変化の前後に前記第1及び第2の電位差測定部にて測定された電位差と、前記第1及び第2の接地抵抗の抵抗値と、前記第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値との関係を表す2つの関係式に、前記変化の前後の抵抗値と、前記変化の前後に前記第1及び第2の電位差測定部にて測定された電位差と、前記第1及び第2の接地抵抗の抵抗値とを代入することで、前記第1及び第2の絶縁抵抗の抵抗値を算出する抵抗値算出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の抵抗値算出装置において、
前記出力部は、前記制御部にて算出された抵抗値が所定の抵抗値以下である場合、警報を出力する抵抗値算出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate