説明

抵抗性昆虫の管理のためのVip3AbとCry1Caの併用

本発明は、フォールアーミーワーム鱗翅類昆虫を防除するための方法および植物を含み、前記植物は、昆虫による抵抗性の発達を遅らせるか阻止するために、V1p3Ab殺虫性タンパク質およびCry1Ca殺虫性タンパク質、ならびにこのタンパク質のペアを含む他のタンパク質の様々な組合せを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
人は、食物用途およびエネルギー用途のためにトウモロコシ(corn)を栽培する。人は、ダイズおよびワタを含む他の多くの作物も栽培する。昆虫は、植物を食べて損傷し、それによってこれらの人の努力を台無しにする。害虫(insect pest)を防除する(control)ために毎年何10億ドルも費やされ、害虫が与える損傷に対してさらに数10億ドルが失われる。合成有機化学殺虫剤は、害虫を防除するために用いられる主な手段であったが、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)に由来する殺虫性タンパク質(insecticidal protein)などの生物殺虫剤(biological insecticide)が一部の領域で重要な役割を演じてきた。Bt殺虫性タンパク質遺伝子による形質転換を通して昆虫抵抗性植物(insect-resistant plant)を作出できたことにより、現代農業が革新し、殺虫性タンパク質およびその遺伝子の重要性および価値が高まっている。
【0002】
今日までに登録され商品化に至った昆虫抵抗性のトランスジェニック植物を作製するために、数種のBtタンパク質が用いられてきた。このBtタンパク質としては、トウモロコシのCry1Ab、Cry1Ac、Cry1FおよびCry3Bb、ワタのCry1AcおよびCry2Ab、ならびにジャガイモのCry3Aが挙げられる。
【0003】
これらのタンパク質を発現する市販製品は、2種のタンパク質の組合せ殺虫スペクトルが所望である場合(例えば、それぞれ鱗翅目害虫(lepidopteran pest)およびルートワーム(rootworm)への抵抗性を付与するために組み合わされた、トウモロコシのCry1AbおよびCry3Bb)、またはそれらのタンパク質のそれぞれ独立した作用により、これらのタンパク質が感受性昆虫集団での抵抗性の発達を遅らせるための手段として有用となる場合(例えば、オオタバコガ(tobacco budworm)のための抵抗性管理を付与するために組み合わされた、ワタのCry1AcおよびCry2Ab)を除いて、単一のタンパク質を発現する。ヘリコベルパ・ゼア(Helicoverpa zea)またはヘリコベルパ・アーミゲライン(Helicoverpa armigerain)の防除のためのCry2タンパク質+Vip3Aa、Cry1FまたはCry1Aに関する米国特許出願公開第2009/0313717号も参照されたい。国際公開第2009/132850号は、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)を防除するためのCry1FまたはCry1AおよびVip3Aaに関する。米国特許出願公開第2008/0311096号は、Cry1F抵抗性のECBを防除するためのCry1Abに一部関する。
【0004】
すなわち、この技術の急速で広範囲な採用をもたらした昆虫抵抗性トランスジェニック植物の特質のいくつかは、これらの植物によって生成される殺虫性タンパク質に対する抵抗性を有害生物集団(pest population)が発達させるという懸念も生む。高用量のタンパク質を、緩衝帯(refuge)と組み合わせて、異なる毒素と交互にまたは同時配置(co-deployment)で配置すること(deploying)を含め、Btに基づく昆虫抵抗性形質の有用性を保存するためのいくつかの戦略が提案されている(McGaughey et al. (1998), "B.t. Resistance Management," Nature Biotechnol. 16:144-146)。
【0005】
あるタンパク質に対して発達した抵抗性が第2のタンパク質に対する抵抗性を付与しない(すなわち、タンパク質に対する交差抵抗性がない)ように、昆虫抵抗性管理(IRM)スタック(stack)で用いるために選択されるタンパク質は、それらの殺虫効果を独立して発揮する必要がある。例えば、「タンパク質A」に抵抗性である有害生物集団が「タンパク質B」に感受性である場合、そこには交差抵抗性はなく、タンパク質Aおよびタンパク質Bの組合せがタンパク質A単独に対する抵抗性を遅らせるのに有効であろうと結論付けられるであろう。
【0006】
抵抗性の昆虫集団が存在しない場合、作用機構および交差抵抗性能力に関連すると推測される他の特性に基づいて評価を行うことができる。交差抵抗性を示す可能性のない殺虫性タンパク質を同定することにおける受容体媒介結合の有用性が示唆されている(van Mellaert et al. 1999)。この手法に特有の交差抵抗性の欠如の重要な予測因子は、殺虫性タンパク質が感受性昆虫種の受容体をめぐって競合しないことである。
【0007】
2つのBt毒素が同じ受容体をめぐって競合する場合には、毒素の1つがその受容体にもはや結合せず、したがって昆虫に対してもはや殺虫性でないようにその受容体がその昆虫で突然変異するならば、昆虫は第2の毒素(同じ受容体に競合的に結合する)にも抵抗性になる場合もある。すなわち、昆虫は両方のBt毒素に交差抵抗性であると言われる。しかし、2つの毒素が2つの異なる受容体に結合する場合には、これは昆虫がそれら2つの毒素に同時に抵抗性にならないことを示す指標であろう。
【0008】
例えば、Cry1Faタンパク質は、ユーロピアンコーンボーラー(European corn borer)(ECB;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(Hubner))およびフォールアーミーワーム(fall armyworm)(FAW;スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda))を含む多くの鱗翅目害虫の種の防除で有用であり、シュガーケーンボーラー(sugarcane borer)(SCB;ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis))に対する活性を有する。イベントTC1507を含むトランスジェニックトウモロコシ植物で生成されるようなCry1Faタンパク質は、FAW防除のための業界をリードする昆虫抵抗性形質を担う。Cry1Faは、Herculex(登録商標)、SmartStax(商標)およびWideStrike(商標)製品でさらに配置されている。
【0009】
さらなるCry毒素は、公式なB.t.命名委員会のウェブサイト(Crickmore et al.; lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/)に記載されている。ほぼ60個の主要群の「Cry」毒素(Cry1〜Cry59)が現在あり、さらなるCyt毒素およびVIP毒素などがある。数字で表した各群の多くは大文字のサブグループを有し、大文字のサブグループは小文字のサブサブグループを有する。(例えば、Cry1はA〜Lを有し、Cry1Aはa〜iを有する)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な要旨
本発明は、Cry1Caタンパク質と組み合わせたVip3Abタンパク質の使用に一部関する。これらのタンパク質の両方とも生成する植物(およびそのような植物を植える地所(acreage))は、本発明の範囲内に含まれる。
【0011】
本発明は、Vip3Abがフォールアーミーワーム(スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda);FAW)の腸(gut)においてCry1Caと結合部位のために競合しないという意外な発見に一部関する。
【0012】
本発明はまた、Vip3AbおよびCry1Caが基礎となるペアである、3つ(以上)の毒素の三重スタックまたは「ピラミッド(pyramid)」に一部関する。一部の好ましいピラミッドの実施形態では、選択される毒素の組合せは、FAWに対する非交差抵抗性の作用を提供する。一部の好ましい「3つの作用部位」のピラミッドの組合せは、対象のタンパク質の基礎となるペアに加えて、FAWを標的にするための第三タンパク質としてCry1Fa、Cry1Da、Cry1BeまたはCry1Eを含む。本発明によるこれらの特定の三重スタックは、FAWに対して3つの作用部位を有利に意外にも提供する。これは、緩衝帯地所の要件を低減または除去するのを助けることができる。
【0013】
さらなる毒素/遺伝子を本発明によって加えることもできる。例えば、Cry1FaまたはCry1Beが対象のタンパク質のペアと一緒にスタックされる場合(Cry1FaおよびCry1Beの両方はFAWおよびユーロピアンコーンボーラー(ECB)の両方に対して活性である)、この三重スタックに2つのさらなるタンパク質を加えることは(ここで、この2つの追加タンパク質はECBを標的にする)、FAWに対する3つの作用部位、およびECBに対する3つの作用部位を提供するであろう。これらの2つの追加タンパク質(第四および第五のタンパク質)は、Cry2A、Cry1I、D1G−3およびCry1Abからなる群から選択され得る。これは、2つの昆虫(ECBおよびFAW)に対して3つの作用部位を有する5タンパク質スタックをもたらすであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、S.フルジペルダ(S. frugiperda)(FAW)幼虫からのBBMVにおける、125I放射標識フルオレセイン−5−マレイミドのトリプシン切断Cry1Caの置換の用量反応曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、Vip3AbおよびCry1Caがフォールアーミーワーム(FAW;スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda))の腸において結合のために互いに競合しないという意外な発見に一部関する。したがって、これらのタンパク質のいずれか単独への抵抗性をFAWが発達させることを遅らせるか阻止するために、Vip3Abタンパク質は、トランスジェニックトウモロコシ(および他の植物、例えばワタおよびダイズ)でCry1Caタンパク質と組み合わせて用いることができる。Cry抵抗性のフォールアーミーワームによる傷害から植物(メイズ植物(maize plant)および/またはダイズ植物など)を保護することにおいて、対象のタンパク質の組は効果を発揮することができる。すなわち、本発明の1つの用途は、Vip3AbまたはCry1Caへの抵抗性を発達させるかもしれないフォールアーミーワーム集団に起因する損害および収量減からトウモロコシおよび他の経済的に重要な植物種を保護することである。
【0016】
したがって、本発明は、これらのタンパク質の一方または両方へのFAWによる抵抗性の発達を阻止または軽減するための、Vip3AbおよびCry1Caを含む昆虫抵抗性管理(IRM)スタックを教示する。
【0017】
本発明は、Vip3Ab殺虫性タンパク質およびCry1Ca殺虫性タンパク質を生成する細胞を含む、鱗翅目害虫を防除するための組成物を提供する。
【0018】
本発明は、Vip3Ab殺虫性タンパク質およびCry1Ca殺虫性タンパク質の両方を生成するように形質転換された宿主であって、微生物または植物細胞である宿主をさらに含む。対象ポリヌクレオチド(複数可)は、好ましくは非バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)プロモーター(複数可)の制御下の遺伝子構築物中にある。対象ポリヌクレオチドは、植物での強化された発現のためのコドン使用頻度を含むことができる。
【0019】
本発明は、鱗翅目害虫を防除する方法であって、前記害虫または前記害虫の環境を、Vip3Abコア毒素含有タンパク質を含み、さらにCry1Caコア毒素含有タンパク質を含む組成物の有効量と接触させることを含む方法を提供することがさらに意図される。
【0020】
本発明の実施形態は、Cry1Ca殺虫性タンパク質をコードする、植物による発現が可能な遺伝子およびVip3Ab殺虫性タンパク質をコードする、植物による発現が可能な遺伝子を含むメイズ植物、およびそのような植物の種子を含む。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、Cry1Ca殺虫性タンパク質をコードする、植物による発現が可能な遺伝子およびVip3Ab殺虫性タンパク質をコードする、植物による発現が可能な遺伝子が移入された(introgress)メイズ植物、およびそのような植物の種子を含む。
【0022】
実施例に記載されているように、放射性標識されたCry1Caタンパク質を用いる競合的受容体結合性試験は、Vip3Abが結合するFAW組織でCry1Caタンパク質が結合のために競合しないことを示す。これらの結果は、Vip3AbおよびCry1Caタンパク質の組合せが、これらのタンパク質のいずれかに対するFAW集団での抵抗性の発達を軽減する効果的な手段になることができることも示す。したがって、本明細書に記載されるデータに一部基づき、Cry1CaおよびVip3Abタンパク質の同時生成(スタッキング)を、FAWのための高用量IRMスタックを生成するために用いることができると考えられる。
【0023】
他のタンパク質をこのペアに加えることができる。例えば、本発明は、3つ(以上)の毒素の三重スタックまたは「ピラミッド」にも一部関し、Vip3AbおよびCry1Caが基礎となるペアである。一部の好ましいピラミッドの実施形態では、選択される毒素は、FAWに対して3つの別々の作用部位を有する。一部の好ましい「3つの作用部位」のピラミッドの組合せは、対象のタンパク質の基礎となるペアに加えて、FAWを標的にするための第三のタンパク質としてCry1Fa、Cry1Da、Cry1BeまたはCry1Eを含む。「別々の作用部位」は、所与のタンパク質のいずれも互いに交差抵抗性を引き起こさないことを意味する。本発明によるこれらの特定の三重スタックは、FAWに対して3つの作用部位を有利に、および意外にも提供する。これは、緩衝帯地所の要件を低減または除去するのを助けることができる。
【0024】
本発明の一部の具体的な実施形態に関して、Cry1Faタンパク質の殺虫活性に抵抗性であるFAW集団は、Vip3Abタンパク質の殺虫活性に、またはCry1Caタンパク質の殺虫活性に抵抗性でないことを我々は示した。FAWの腸において、Cry1CaはCry1Faと結合部位のために競合しないこと、およびVip3AbはCry1Faと結合部位のために競合しないことを我々は実証した。Cry1FaおよびCry1Caに関してUSSN61/284,281(2009年12月16日に出願)を、および同時出願された「抵抗性昆虫の管理のためのVip3AbおよびCRY1Faの併用(COMBINED USE OF Vip3Ab AND CRY1Fa FOR MANAGEMENT OF RESISTANT INSECTS)」という名称のPCT出願を参照されたい。
【0025】
したがって、毒素Cry1FaプラスVip3AbおよびCry1FaプラスCry1Caの対象ペアは、FAWに対する非交差抵抗性の作用を提供する。FAWの腸でVip3Ab1がCry1Caの結合のために競合することができないことは、これらの3つのタンパク質毒素(Cry1Fa、Vip3AbおよびCry1Ca)が、FAWの腸内で3つの別々の標的部位相互作用を提供するCry毒素の三重スタックピラミッドを表すことを実証する。本発明により、これらの特定の三重スタックは、FAWに対する非交差抵抗性作用を都合よく、および意外にも提供する。さらに、これらの3つのタンパク質が互いに競合しないことの証明によって、これが緩衝帯地所の要件を低減または除去するのを助けることができることを当業者は認識しよう。この開示の利点と同様に、Cry1Fa、Vip3AbおよびCry1Caの三重組合せを発現する植物は、これらのタンパク質の個々または組合せに対するFAWでの抵抗性の発達を遅らせるか阻止することにおいて有用となる。
【0026】
さらなる毒素/遺伝子を、本発明によって加えることもできる。例えば、Cry1FaまたはCry1Beが対象のタンパク質のペアと一緒にスタックされる場合(Cry1FaおよびCry1Beの両方はFAWおよびユーロピアンコーンボーラー(ECB)の両方に対して活性である)、この三重スタックに2つのさらなるタンパク質を加えることは(ここで、この2つの追加タンパク質はECBを標的にする)、FAWに対する3つの作用部位、およびECBに対する3つの作用部位を提供するであろう。これらの2つの追加のタンパク質(第四および第五のタンパク質)は、Cr2A、Cry1I、DIG−3(米国特許出願シリアル番号61/284,278(2009年12月16日に出願された)およびUS2010 00269223を参照)およびCry1Abからなる群から選択することができるであろう。これは、2つの昆虫(ECBおよびFAW)に対して3つの作用部位を有する5タンパク質スタックをもたらすであろう。
【0027】
したがって、1つの配置選択肢(deployment option)は、第三毒素/遺伝子と組み合わせて対象のタンパク質のペアを用いること、およびこれらの毒素のいずれかに対するFAWでの抵抗性の発達を軽減するためにこの三重スタックを用いることである。したがって、本発明は、3つ(以上)の毒素の三重スタックまたは「ピラミッド」にも一部関する。一部の好ましいピラミッドの実施形態では、選択される毒素は、FAWに対して3つの別々の作用部位を有する。
【0028】
本発明の配置選択肢には、FAWが抵抗性集団を発達させることができる作物栽培地域において、対象タンパク質の2つ、3つまたはそれ以上のタンパク質を用いることが含まれよう。
【0029】
Cry1FaはFAWおよびECBに対して活性であるので、Vip3AbにCry1CaおよびCry1Faをプラスしたものは、本発明により、FAWに対する3つの作用部位を有利に、および意外にも提供するであろう。これは、緩衝帯地所の要件を低減または除去するのを助けることができる。
【0030】
Cry1Faは、Herculex(登録商標)、SmartStax(商標)およびWideStrike(商標)製品において配置されている。対象の遺伝子のペア(Vip3AbおよびCry1Ca)は、例えばHerculex(登録商標)、SmartStax(商標)およびWideStrike(商標)などのCry1Fa製品に組み込むことができるであろう。したがって、対象のタンパク質のペアは、これらのおよび他のタンパク質への淘汰圧を低減することにおいて有意になり得る。したがって、対象のタンパク質のペアは、トウモロコシおよび他の植物(例えばワタおよびダイズ)のための3遺伝子組合せの場合のように用いることができるであろう。
【0031】
上記のように、さらなる毒素/遺伝子を、本発明により加えることもできる。(FAWを防除するための)Cry1Eの使用については、米国特許出願シリアル番号61/284,278(2009年12月16日に出願された)を参照されたい。
【0032】
対象のタンパク質の組合せのいずれかを生成する植物(およびそのような植物を植える土地)は、本発明の範囲内に含まれる。さらなる毒素/遺伝子を加えることもできるが、上記の特定のスタックは、FAWおよび/またはECBに対する複数の作用部位を有利に、および意外にも提供する。これは、緩衝帯地所の要件を低減または除去するのを助けることができる。したがって、10エーカーを超えるこのように植えられる圃場は、本発明に含まれる。
【0033】
本明細書で開示または言及される遺伝子およびタンパク質のいずれかの配列を得るために、GENBANKを用いることもできる。下の付録Aを参照されたい。関連する配列は、特許でも入手できる。例えば、米国特許第5,188,960号および米国特許第5,827,514号は、本発明の実施で使用するために適するCry1Faコア毒素含有タンパク質を記載する。米国特許第6,218,188号は、本発明で使用するために適するCry1Faコア毒素含有タンパク質をコードする植物最適化DNA配列を記載する。USSN61/284,275(2009年12月16日に出願)は、本発明によって用いることができる一部の切断されたCry1Caタンパク質を提供する。
【0034】
本明細書に記載されるタンパク質の組合せは、鱗翅目害虫を防除するために用いることができる。成体の鱗翅目、例えばチョウおよびガは、主に花蜜を食し、受粉の重要なエフェクターである。ほとんど全ての鱗翅目幼虫、すなわちイモムシは植物を食し、多くは重大な有害生物である。イモムシは、植物の葉の表面もしくは内部、または根部または茎を食し、植物から栄養を奪い、多くの場合植物の物理的支持構造物を破壊する。さらに、イモムシは果物、織物ならびに保存された穀物および小麦粉を食し、売物のこれらの商品を破壊するかそれらの価値を激減させる。本明細書で用いるように、鱗翅目害虫への言及は、幼虫期を含めた、害虫の様々なライフステージを指す。
【0035】
本発明の一部のキメラ毒素は、Bt毒素の完全なN末端コア毒素部分を含み、コア毒素部分の末端を過ぎたある場所で、タンパク質は異種プロトキシン配列への移行(transition)を有する。Bt毒素のN末端の殺虫活性毒素部分は、「コア」毒素と呼ばれる。コア毒素セグメントから異種プロトキシンセグメントへの移行は、ほぼ毒素/プロトキシン接合部(junction)で起こることができるか、代わりに、ネイティブプロトキシンの部分(コア毒素部分を過ぎて伸長する)を保持することができ、異種プロトキシン部分への移行は下流で起こる。
【0036】
例えば、本発明の1つのキメラ毒素は、Cry1Caの完全なコア毒素部分(およそ最初の600アミノ酸)および/または異種プロトキシン(C末端までの残りのアミノ酸)である。好ましい一実施形態では、プロトキシンを含むキメラ毒素の部分は、Cry1Abタンパク質毒素に由来する。好ましい実施形態では、プロトキシンを含むキメラ毒素の部分は、Cry1Abタンパク質毒素に由来する。
【0037】
Bt毒素は、Cry1Caなどの特定のクラス内でさえ、長さおよびコア毒素部分からプロトキシン部分への移行の正確な位置が多少異なることを、当分野の技術者は認識する。一般的に、Cry1Ca毒素は、長さが約1150から約1200アミノ酸である。コア毒素部分からプロトキシン部分への移行は、完全長毒素の約50%から約60%の間で一般的に起こる。本発明のキメラ毒素は、このN末端コア毒素部分の全長(full expanse)を含む。したがって、キメラ毒素は、Cry1Bt毒素タンパク質の完全長の少なくとも約50%を構成する。これは、一般的に少なくとも約590アミノ酸である。プロトキシン部分に関して、Cry1Abプロトキシン部分の全長は、コア毒素部分の末端から分子のC末端まで伸びる。
【0038】
遺伝子および毒素。 本発明による有用な遺伝子および毒素には、開示される完全長配列だけでなく、本明細書で具体的に例示される毒素の特徴的な殺虫活性(pesticidal activity)を保持するこれらの配列の断片、バリアント、突然変異体、および融合タンパク質も含まれる。本明細書で用いる場合、遺伝子の「バリアント(variant)」または「変形形態(variation)」という用語は、同じ毒素をコードするか、殺虫活性を有する同等毒素をコードするヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いる場合、用語「同等毒素」は、標的有害生物に対して特許請求されている毒素と同じか事実上同じである生物的活性を有する毒素を指す。
【0039】
本明細書で用いる場合、「Revision of the Nomenclature for the Bacillus thuringiensis Pesticidal Crystal Proteins」、N. Crickmore, D.R. Zeigler, J. Feitelson, E. Schnepf, J. Van Rie, D. Lereclus, J. Baum, and D.H. Dean. Microbiology and Molecular Biology Reviews (1998) Vol 62: 807-813、により、境界(boundary)は約95%(Vip3AbおよびCry1Ca)、78%(Vip3AbおよびCry1C)および45%(Cry1)の配列同一性を表す。これらのカットオフは、コア毒素だけに適用することもできる。
【0040】
活性毒素をコードする遺伝子は、いくつかの手段を通して同定し、得ることができることは、当分野の技術者に明らかとなるはずである。本明細書で例示される具体的な遺伝子または遺伝子部分は、培養株保管所(culture depository)に寄託されている分離株(isolate)から得ることができる。これらの遺伝子、またはその部分もしくはバリアントは、合成的に、例えば遺伝子合成装置を用いて構築することもできる。遺伝子の変形形態は、点突然変異を作製する標準技術を用いて、容易に構築することができる。また、これらの遺伝子の断片は、市販のエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを標準手順に従って用いることによって作製することができる。例えば、これらの遺伝子の末端からヌクレオチドを体系的に切断するために、Bal31などの酵素または部位特異的突然変異誘発を用いることができる。活性断片をコードする遺伝子は、様々な制限酵素を用いて得ることもできる。これらのタンパク質毒素の活性断片を直接的に得るために、プロテアーゼを用いることができる。
【0041】
例示される毒素の殺虫活性を保持する断片および同等物は、本発明の範囲内である。また、遺伝子コードの冗長性のため、様々な異なるDNA配列が本明細書で開示されるアミノ酸配列をコードすることができる。同じか事実上同じである毒素をコードするこれらの代替DNA配列を作製することは、十分に当業者の技術の範囲内である。これらのバリアントDNA配列は、本発明の範囲内である。本明細書で用いる場合、「事実上同じ」配列への言及は、殺虫活性に実質的な影響を及ぼさないアミノ酸の置換、欠失、付加または挿入を有する配列を指す。殺虫活性を保持するタンパク質をコードする遺伝子の断片も、この定義に含まれる。
【0042】
本発明により有用な毒素をコードする遺伝子および遺伝子部分を同定するためのさらなる方法は、オリゴヌクレオチドプローブを用いることによるものである。これらのプローブは、検出可能なヌクレオチド配列である。これらの配列は、適当な標識によって検出可能になることができるか、国際出願公開第93/16094号に記載されているように本来的に蛍光性にすることができる。当技術分野で周知であるように、プローブ分子および核酸試料が2つの分子間で強力な結合を形成することによってハイブリダイズする場合、プローブおよび試料は実質的な相同性を有すると合理的に仮定することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えばKeller, G. H., M. M. Manak (1987) DNA Probes, StocktonPress, New York, N.Y., pp. 169- 170に記載されているような、当分野で周知の技術によってストリンジェント条件の下で行われる。塩濃度および温度の組合せの一部の例は、以下の通りである(ストリンジェンシーの低い順序で):室温で2×SSPEまたはSSC;42℃で1×SSPEまたはSSC;42℃で0.1×SSPEまたはSSC;65℃で0.1×SSPEまたはSSC。プローブの検出は、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを既知の方法で判定するための手段を提供する。そのようなプローブ分析は、本発明の毒素コード遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。本発明によるプローブとして用いられるヌクレオチドセグメントは、DNA合成装置および標準手順を用いて合成することができる。本発明の遺伝子を増幅するPCRプライマーとして、これらのヌクレオチド配列を用いることもできる。
【0043】
バリアント毒素。 本発明の特定の毒素が、本明細書で具体的に例示された。これらの毒素は本発明の毒素の例示にすぎないので、本発明が例示毒素と同じか類似した殺虫活性を有するバリアントまたは同等毒素(および同等毒素をコードするヌクレオチド配列)を含むことは容易に明らかなはずである。同等毒素は、例示される毒素とのアミノ酸相同性を有する。このアミノ酸相同性は、一般的に75%を超え、好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超える。アミノ酸相同性は、生物的活性を担うか、最終的に生物的活性を担う3次元構造の決定に関与する毒素の重要な領域で最も高くなる。この点に関しては、それらの置換が活性に重要でない領域にあるか、分子の3次元構造に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換であるならば、特定のアミノ酸置換が許容され、予想することができる。例えば、アミノ酸は以下のクラスに入れることができる:無極性、無電荷極性、塩基性および酸性。1つのクラスのアミノ酸が同じ種類の別のアミノ酸で置換される保存的置換は、その置換が化合物の生物的活性を実質的に変更しない限り本発明の範囲内である。下記は、各クラスに属するアミノ酸の例のリストである。
【0044】
【表1】

【0045】
場合によっては、非保存的置換を行うこともできる。重要な因子は、これらの置換が毒素の生物的活性をあまり損なってはならないということである。
【0046】
組換え体宿主。 本発明の毒素をコードする遺伝子は、多種類の微生物または植物宿主に導入することができる。毒素遺伝子の発現は、直接または間接的に、殺虫剤(pesticide)の細胞内での生成および維持をもたらす。本発明の両毒素を発現するBt株を作製するために、接合転移(conjugal transfer)および組換え転移(recombinant transfer)を用いることができる。他の宿主生物体を毒素遺伝子の一方または両方で形質転換し、次に相乗効果を達成するために用いることもできる。適する微生物宿主、例えばシュードモナス(Pseudomonas)で、微生物を有害生物の位置(situs)へ施用することができ、そこでそれらは増殖して摂取される。結果は、有害生物の防除である。あるいは、毒素遺伝子を受け入れる微生物は、毒素の活性を長引かせ、細胞を安定させる条件の下で処理することができる。毒性活性を保持する処理細胞は、次に標的有害生物の環境に施用することができる。
【0047】
Bt毒素遺伝子が適するベクターを通して微生物宿主に導入され、前記宿主が生きた状態で環境へ施用される場合、特定の宿主微生物が用いられることが必須である。対象の1つまたは複数の作物の「植物圏(phytosphere)」(葉面(phylloplane)、葉圏(phyllosphere)、根圏および/または根面(rhizoplane))を占めることが知られている微生物宿主が選択される。これらの微生物は、特定の環境(作物および他の昆虫生息地)で野生型微生物とよく競合することが可能であるように、ポリペプチド殺虫剤を発現する遺伝子の安定した維持および発現を提供するように、および、望ましくは環境中での分解および不活性化からの殺虫剤の向上した保護を提供するように選択される。
【0048】
多数の微生物が、多種類の重要作物の葉面(植物葉の表面)および/または根圏(植物根を囲む土)に生息することが知られている。これらの微生物には、細菌、藻および真菌類が含まれる。特に興味があるものは、細菌、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)、エルウィニア属(Erwinia)、セラチア属(Serratia)、クレブシェラ属(Klebsiella)、キサントモナス属(Xanthomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、根粒菌属(Rhizobium)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、メチロフィリウス(Methylophilius)、アグロバクテナム属(Agrobactenum)、アセトバクター属(Acetobacter)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ロイコノストック属(Leuconostoc)およびアルカリゲネス属(Alcaligenes);真菌類、特に酵母、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、スポロボロミセス属(Sporobolomyces)、ロドトルラ属(Rhodotorula)およびオーレオバシジウム属(Aureobasidium)などの微生物である。特に興味があるものは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アグロバクテニウム・ツメファシエンス(Agrobactenium tumefaciens)、ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudomonas spheroides)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、リゾビウム・メリオチ(Rhizobium melioti)、アルカリゲネス・エントロファス(Alcaligenes entrophus)およびアゾトバクター・ビンランジ(Azotobacter vinlandii)のような植物圏細菌種;ならびにロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、R.グルチニス(R. glutinis)、R.マリーナ(R. marina)、R.オーランチアカ(R. aurantiaca)、クリプトコックス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、C.ジフルエンス(C. diffluens)、C.ローレンチ(C. laurentii)、サッカロミセス・ロゼイ(Saccharomyces rosei)、S.プレトリエンシス(S. pretoriensis)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、スポロボロミセス・ロゼウス(Sporobolomyces roseus)、S.オドルス(S. odorus)、クルイベロミセス・ベロネ(Kluyveromyces veronae)およびオーレオバシジウム・ポルランス(Aureobasidium pollulans)などの植物圏酵母種である。色の着いた微生物(pigmented microorganism)が、特に興味がある。
【0049】
遺伝子の安定した維持および発現を可能にする条件の下で、毒素をコードするBt遺伝子を微生物宿主に導入するために、多種類の方法を利用できる。これらの方法は当業者に周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,135,867号に記載されている。
【0050】
細胞の処理。 Bt毒素を発現するバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)または組換え体の細胞は、毒素活性を長引かせ、細胞を安定させるために処理することができる。形成される殺虫剤マイクロカプセルは、安定化され、マイクロカプセルが標的有害生物の環境へ施用されるときに毒素を保護する細胞構造の中にBt毒素(複数可)を含む。適する宿主細胞には、原核生物または真核生物のいずれかが含まれてよく、通常、哺乳動物などの高等生物体に有毒である物質を生成しない細胞に限定される。しかし、毒性物質が不安定であるか、哺乳動物宿主への毒性のいかなる可能性も避けるために施用量が十分に低い場合、高等生物体にとって有毒である物質を生成する生物体が用いられるかもしれない。宿主としては、原核生物および真菌類などの下等真核生物が特に興味がある。
【0051】
処理時、細胞は通常そのままの状態(intact)であり、胞子の形態ではなく実質的に増殖形であるが、一部の例では胞子を利用してもよい。
【0052】
微生物細胞、例えばB.t.毒素遺伝子(複数可)を含む微生物の処理は、その技術が毒素の特性に悪い影響を及ぼさず、毒素を保護する細胞の能力も低下させない限り、化学的または物理的な手段によるものであってもよいし、または化学的および/または物理的な手段の組合せによるものであってもよい。化学試薬の例は、ハロゲン化剤、特に原子番号17〜80のハロゲンである。より詳しくは、温和条件の下で、および所望の結果を達成するのに十分な時間、ヨウ素を用いることができる。他の適する技術には、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド;塩化ゼフィランおよび塩化セチルピリジニウムなどの消毒剤;イソプロピルおよびエタノールなどのアルコール;ルゴールヨウ素、ブアン固定液、様々な酸およびヘリー固定液などの様々な組織固定剤(Humason, Gretchen L., Animal Tissue Techniques, W. H. Freeman and Company, 1967を参照);または細胞が宿主環境に投与されるときに細胞で生成される毒素の活性を保存し、長引かせる物理的(熱)および化学的な作用因子の組合せによる処理が含まれる。物理的手段の例は、ガンマ線放射およびX線放射などの短波長放射、凍結、UV照射、凍結乾燥などである。微生物細胞の処理のための方法は、米国特許第4,695,455号および4,695,462号で開示され、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
細胞は、環境条件への抵抗性を増強する強化された構造安定性を一般に有する。殺虫剤がプロ型(proform)である場合、細胞処理の方法は、標的有害生物の病原体による殺虫剤のプロ型から成熟型へのプロセシングを妨げないように選択されるべきである。例えば、ホルムアルデヒドはタンパク質を架橋し、ポリペプチド殺虫剤のプロ型のプロセシングを妨げる可能性がある。処理の方法は、毒素の生物学的利用能または生物活性の少なくとも実質的な部分を保持するべきである。
【0054】
生成のための宿主細胞の選択において特に興味がある特性には、B.t.遺伝子(複数可)を宿主に導入することの容易さ、発現系の入手可能性、発現効率、宿主での殺虫剤の安定性および補助的遺伝子能力の存在(presence of auxiliary genetic capability)が含まれる。殺虫剤マイクロカプセルとして用いるための興味がある特性には、厚い細胞壁、着色および細胞内パッケージングまたは封入体形成などの殺虫剤のための保護特性;水性環境での生存;哺乳動物毒性の欠如;摂取のための有害生物への誘引効果;毒素を損うことのない殺傷および固定の容易さ(ease of killing and fixing without damage to the toxin);などが含まれる。他の考慮事項には、製剤および取扱いの容易さ、経済性、貯蔵安定性などが含まれる。
【0055】
細胞の増殖。 B.t.殺虫性遺伝子(複数可)を含む細胞宿主は、DNA構築物が選択有利性を提供し、細胞の実質的に全てまたは全てがB.t.遺伝子を保持するように選択培地を提供する、任意の便利な栄養培地で増殖させることができる。これらの細胞は、従来の方法に従って次に収穫することができる。あるいは、収穫する前に細胞を処理することができる。
【0056】
本発明の毒素を生成するB.t.細胞は、標準技術の培地および発酵技術を用いて培養することができる。発酵サイクルの終了後、最初に当技術分野で周知である手段によってB.t.胞子および結晶を発酵培養液から分離することによって細菌を収穫することができる。取扱いおよび特定の標的有害生物への施用を容易にするために、界面活性剤、分散剤、不活性担体および他の構成成分の添加によって、回収されたB.t.胞子および結晶を水和剤(wettable powder)、濃厚液剤(liquid concentrate)、粒剤または他の製剤に製剤化することができる。これらの製剤および施用手法は、全て当技術分野で周知である。
【0057】
製剤。 誘引剤ならびにB.t.分離株の胞子、結晶および毒素、または本明細書で開示されるB.t.分離株から入手できる遺伝子を含む組換え体微生物を含む製剤化された餌粒剤は、土に施用することができる。製剤化された製品は、種子コーティングまたは作物サイクルの後期段階で根部処理もしくは植物全体処理として施用することもできる。B.t.細胞の植物および土壌処理は、様々な不活性の材料、例えば無機鉱物(フィロシリケート、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)または植物材料(粉末状の穂軸、籾殻、クルミ殻など)と混合することによって、水和剤、粒剤または粉剤(dust)として使用することができる。製剤は、展着助剤(spreader-sticker adjuvant)、安定化剤、他の殺虫性添加剤または界面活性剤を含むことができる。液体製剤は水性ベースまたは非水性であってよく、フォーム、ゲル、懸濁液、乳剤(emulsifiable concentrate)などとして使用することができる。成分には、流体力学的剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤またはポリマーが含まれてよい。
【0058】
当分野の技術者によって認識されるように、特定の製剤の性質、特にそれが濃厚剤(concentrate)であるか直接的に用いられるものであるかによって、殺虫剤濃度は広く変動する。殺虫剤は少なくとも1重量%で存在し、100重量%であってもよい。乾燥製剤は約1〜95重量%の殺虫剤を有するが、液体製剤は一般に液相中に約1〜60重量%の固形分である。製剤は、1mgにつき約10から約10細胞を一般に有する。これらの製剤は、1ヘクタールにつき約50mg(液体または乾燥)から1kg以上で投与される。
【0059】
製剤は、噴霧(spraying)、散粉(dusting)、散水(sprinkling)その他によって、鱗翅目害虫の環境、例えば葉または土へ施用することができる。
【0060】
植物の形質転換。 本発明の殺虫性タンパク質の生成のための好ましい組換え体宿主は、形質転換された植物である。本明細書で開示されるようなBt毒素タンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野で周知である様々な技術を用いて植物細胞に挿入することができる。例えば、大腸菌(Escherichia coli)の複製系および形質転換細胞の選択を可能にするマーカーを含む多数のクローニングベクターが、高等植物への外来遺伝子の挿入のための調製のために利用できる。ベクターは、例えば、とりわけpBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184を含む。したがって、Bt毒素タンパク質をコードする配列を有するDNA断片は、適する制限部位でベクターに挿入することができる。生じたプラスミドは、大腸菌(E. coli)への形質転換のために用いられる。大腸菌(E. coli)細胞は適する栄養培地で培養され、次に収穫され、溶解される。プラスミドを回収する。配列分析、制限酵素解析、電気泳動および他の生化学的分子生物学的方法が、分析方法として一般に実行される。各操作の後、用いたDNA配列を切断して次のDNA配列に連結することができる。各プラスミド配列は、同じか他のプラスミドにクローニングすることができる。植物への所望の遺伝子の挿入の方法に従い、他のDNA配列が必要なこともある。例えば、植物細胞の形質転換のためにTiまたはRiプラスミドが用いられるならば、TiまたはRiプラスミドT−DNAの少なくとも右の境界、しかし多くの場合右および左の境界が、挿入される遺伝子の隣接領域として連結されなければならない。植物細胞の形質転換のためのT−DNAの使用は集中的に研究されており、EP120516、Lee and Gelvin (2008)、Hoekema (1985)、Fraley et al., (1986)およびAn et al., (1985)で十分に記載され、当技術分野でよく確立されている。
【0061】
挿入されたDNAが一旦植物ゲノムに組み込まれると、それは比較的安定である。形質転換ベクターは、形質転換された植物細胞に、とりわけビアラホス、カナマイシン、G418、ブレオマイシンまたはハイグロマイシンなどの生物致死剤または抗生物質への抵抗性を付与する選択可能マーカーを通常含む。したがって、個々に使用されるマーカーは、挿入されたDNAを含まない細胞ではなく形質転換された細胞の選択を可能にするはずである。
【0062】
DNAを植物宿主細胞に挿入するために、多数の技術を利用できる。それらの技術には、形質転換因子としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)もしくはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いるT−DNAによる形質転換、融合、注射、微粒子銃(biolistics)(微小粒子衝撃(microparticle bombardment))、またはエレクトロポレーションならびに他の可能な方法が含まれる。アグロバクテリウム菌が形質転換のために用いられる場合、挿入されるDNAは特別なプラスミド、すなわち中間型ベクター(intermediate vector)またはバイナリーベクターのいずれかにクローニングされなければならない。中間型ベクターは、T−DNAの配列に相同的である配列のために、相同組み換えによってTiまたはRiプラスミドに組み込むことができる。TiまたはRiプラスミドは、T−DNAの転移のために必要なvir領域も含む。中間型ベクターは、アグロバクテリウム菌ではそれ自身を複製することができない。中間型ベクターは、ヘルパープラスミド(コンジュゲーション)によってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に移動させることができる。バイナリーベクターは、大腸菌(E. coli)およびアグロバクテリウム菌の両方でそれ自身を複製することができる。それらは、左右のT−DNA境界領域によって組まれる選択マーカー遺伝子およびリンカーまたはポリリンカーを含む。それらは、アグロバクテリウム菌に直接に形質転換させることができる(Holsters et al., 1978)。宿主細胞として用いられるアグロバクテリウム菌は、vir領域を運ぶプラスミドを含むものとする。vir領域は、植物細胞へのT−DNAの転移のために必要である。さらなるT−DNAが含まれてもよい。そのように形質転換される細菌は、植物細胞の形質転換のために用いられる。植物外植片は、植物細胞へのDNAの転移のために、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)と都合よく培養することができる。選択のための抗生物質または生物致死剤を含んでもよい適する培地で、感染植物材料(例えば、葉片、茎、根の断片だけでなく、プロトプラストまたは懸濁培養細胞も)から完全体植物を次に再生させることができる。そのように得られる植物は、挿入されたDNAの存在について次に試験することができる。注射およびエレクトロポレーションの場合、プラスミドに特別に要求されるものはない。通常のプラスミド、例えばpUC派生体を用いることができる。
【0063】
形質転換細胞は、植物内で通常の方法で増殖する。それらは胚細胞を形成することができ、子孫植物へ形質転換形質(複数可)を伝えることができる。そのような植物は通常の方法で増殖させること、および同じ形質転換遺伝因子または他の遺伝因子を有する植物と交配することができる。生じるハイブリッド個体は、対応する表現型特性を有する。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、植物は遺伝子で形質転換され、そこではコドン使用頻度が植物のために最適化されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,380,831号を参照。一部のトランケーションされた毒素が本明細書で例示されるが、130kDa型(完全長)毒素がコア毒素であるN末端半分およびプロトキシン「尾部」であるC末端半分を有することは、Bt技術の分野では周知である。したがって、適当な「尾部」を、本発明のトランケーションされた/コア毒素と用いることができる。例えば米国特許第6,218,188号および米国特許第6,673,990号を参照。さらに、植物で使用するための合成Bt遺伝子の作製方法が当技術分野で公知である(Stewart and Burgin, 2007)。好ましい形質転換植物の1つの非限定例は、Vip3Abタンパク質をコードする植物で発現可能な遺伝子を含み、さらにCry1Caタンパク質をコードする第二の植物で発現可能な遺伝子を含む稔性のメイズ植物である。
【0065】
近交系メイズ系統(inbred maize line)へのVip3AbおよびCry1Ca決定形質(複数可)の転移(または遺伝子移入)は、回帰性の選抜育種(recurrent selection breeding)、例えば戻し交配によって達成することができる。この場合には、所望の反復親が、Vip3AbおよびCry1C決定形質のための適当な遺伝子(複数可)を運ぶドナーの近交系(一回親(non-recurrent parent))と先ず交配される。この交配の子孫は、次に反復親と戻し交配され、続いて生じる子孫において、一回親から移される所望の形質(複数可)について選択される。所望の形質(複数可)の選択を伴う反復親との3世代、好ましくは4世代、より好ましくは5世代以上の戻し交配の後、後代は移される形質(複数可)を支配する遺伝子座が異型接合的になるが、ほとんどまたはほとんど全ての他の遺伝子については反復親と同様である(例えば、Poehlman & Sleper (1995) Breeding Field Crops, 4th Ed., 172-175、Fehr (1987) Principles of Cultivar Development, Vol. 1 : Theory and Technique, 360-376を参照)。
【0066】
昆虫抵抗性管理(IRM)戦略。例えばRoush et al.は、「ピラミッド化(pyramiding)」または「スタッキング」とも呼ばれる、殺虫性トランスジェニック作物の管理のための2毒素戦略を概説している。(The Royal Society. Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. (1998) 353, 1777-1786)。
【0067】
彼らのウェブサイトで、米国環境保護庁(epa.gov/oppbppdl/biopesticides/pips bt_corn_refuge_2006.htm)は、標的有害生物に対して活性である単一のBtタンパク質を生成するトランスジェニック作物で用いるための非トランスジェニック(すなわち、非B.t.)緩衝帯(非Bt作物/トウモロコシの区域)を提供するための以下の要件を公表する。
「コーンボーラー保護Bt(Cry1AbまたはCry1F)トウモロコシ製品の特定の構造化要件は、以下の通りである:
構造化緩衝帯:
コーンベルトで20%の非鱗翅目Btトウモロコシ緩衝帯;
コットンベルトで50%の非鱗翅目Bt緩衝帯
ブロック
内部(すなわち、Bt圃場内)
外部(すなわち、任意交配を最大にするためにBt圃場から1/2マイル(可能であれば1/4マイル)以内に別個の圃場)
圃場内の帯状地(strip)
幼虫の移動の影響を低減するために、帯状地は少なくとも4条(row wide)(好ましくは6条)の幅でなければならない」
【0068】
さらに、National Corn Growers Associationも、彼らのウェブサイト:(ncga.com/insect-resistance-management-fact-sheet-bt-corn)で、
緩衝帯要件に関して類似した指針を提供する。例えば:
「コーンボーラーIRMの要件:
・トウモロコシ畑地の少なくとも20%に緩衝帯ハイブリッドを植える
・綿花生産地では、緩衝帯は50%でなければならない
・緩衝帯ハイブリッドの1/2マイル以内に植えなければならない
・緩衝帯は、Bt圃場内に帯状地として植えることができる;緩衝帯の帯状地は少なくとも4条の幅でなければならない
・標的昆虫の経済的閾値に到達する場合だけ、緩衝帯を従来の殺虫剤で処理することができる
・Btベースの噴霧可能な殺虫剤を緩衝帯トウモロコシで用いることはできない
・Btトウモロコシのあらゆる農場に適当な緩衝帯を設けなければならない」
【0069】
Roush et al.(例えば、1780頁および1784頁の右欄)によって述べられているように、標的有害生物に各々有効で、ほとんどもしくは全く交差抵抗性のない2つの異なるタンパク質のスタッキングまたはピラミッド化は、より小さな緩衝帯の使用を可能にする。成功したスタックは、緩衝帯10%未満の緩衝帯サイズが、単一(非ピラミッド化)形質のための約50%の緩衝帯に匹敵する抵抗性管理を提供することができることをRoushは示唆する。今日利用できるピラミッド化Btトウモロコシ製品については、米国環境保護庁は単一形質製品(一般に20%)についてよりもかなり低く(一般に5%)構造化された非Btトウモロコシの緩衝帯を設けることを要求している。
【0070】
Roush et al.(前掲)および米国特許第6,551,962号によってさらに論じられているように、圃場での様々な幾何学的植え付けパターン(geometric planting pattern)(上記のような)および袋入種子混合物(in-bag seed mixture)を含む、緩衝帯のIRM効果を提供する様々な方法がある。
【0071】
上記の百分率または類似した緩衝帯比率は、対象の二重または三重のスタックまたはピラミッドのために用いることができる。単一の標的有害生物に対して3つの作用部位を有する三重スタックについては、目標は緩衝帯がゼロ(または、例えば5%未満の緩衝帯)である。これは、例えば10エーカーを超える商業用の土地に特にあてはまる。
【0072】
本明細書で参照または引用される全ての特許、特許出願、仮出願および刊行物は、それらがこの明細書の明白な教示と矛盾しない範囲で、参照により全体が組み込まれる。
【0073】
具体的に示されるか含意されない限り、本明細書で用いられる場合、用語「a」、「an」および「the」は「少なくとも1つ」を示す。
【0074】
以下は、本発明を実施するための手法を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するものと解釈されるべきでない。特記されない限り全ての百分率は重量によるものであり、全ての溶媒混合割合は容量によるものである。全ての温度は、摂氏温度である。
【実施例1】
【0075】
Vip3AbおよびCry1Caタンパク質の生成およびトリプシン処理
Cry1CaおよびVip3Ab1プロトキシンをコードする遺伝子を蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)発現株で発現させ、完全長タンパク質は不溶性封入体として単離された。洗浄した封入体は、20mM CAPS緩衝液、pH11、+10mM DDT、+0.1%2−メルカプトエタノールを含む緩衝液で37℃において2時間撹拌することによって可溶化した。溶液を37℃で10分間の27,000×gで遠心分離し、上清を0.5%(w/v)TCPK処理トリプシン(Sigma)で処理した。この溶液を室温でさらなる1時間混合しながらインキュベートし、濾過し、次に20mM CAPS、pH10.5で平衡させたPharmacia Mono Q 1010カラムにロードした。ロードしたカラムを2カラム容量の緩衝液で洗浄した後に、15カラム容量の20mM CAPS中の0〜0.5MのNaClの直線濃度勾配を用いて、切断された毒素を1.0ml/分の流速で溶出させた。精製されたトリプシン切断Cryタンパク質は、約0.2〜0.3MのNaClで溶出した。タンパク質の純度は、SDS PAGEおよびクーマシーブリリアントブルー色素を用いる可視化によって検査した。場合によっては、精製された毒素の合わせた分画を濃縮してSuperose 6カラム(直径1.6cm、長さ60cm)にロードし、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。モノマーの分子量の単一のピークを含む分画を合わせ、濃縮して、約60,000kDaの分子量を有するタンパク質の95%を超えて均質である調製物を生成した。
【0076】
Vip3Ab1の処理は、精製完全長85kDaタンパク質(DIG−307)から開始して、同様の方法で達成された。タンパク質(12mg)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.4に透析し、次に1mgの固体トリプシンを加え、室温で1時間インキュベートすることによって処理した。溶液をMonoQ陰イオン交換カラム(直径1cm、長さ10cm)にロードし、7カラム容量にわたる20mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.4中の0〜500mMのNaClの直線濃度勾配で溶出させた。タンパク質の溶出は、SDS−PAGEによって監視した。主要な処理バンドは、比較のための分子量標準を用いるSDS−PAGEによって測定された通り、65kDaの分子量を有した。
【実施例2】
【0077】
Cry1Caコア毒素タンパク質のヨウ素化
Cry1Caは従来の方法を用いて放射標識するのが非常に困難であることを以前の研究は示したが、選定された数例ではそれは受容体結合アッセイで放射標識され、良好に機能するであろう。我々は、Cry1Fa(Prov.69919)を活発に放射標識する働きをした方法である、125I放射標識フルオレセイン−5−マレイミドを用いてCry1Caを放射標識することに決めた。フルオレセイン−5−マレミドのヨウ素化、およびCry1Caとのこの放射標識化学物質の以降のコンジュゲーションは、タンパク質のシステイン特異的放射標識をもたらす。したがって、そのような標識化手法は、標識される残基で高度に特異的である。Cry1Caコア毒素セグメント(残基29〜619)は、210位および438位に2つのシステインアミノ酸残基を含む。Palmer et al. (1997)は、フルオレセイン−5−マレイミドのフェニル環を放射ヨウ素標識し、次にスルフヒドリル基(例えば遊離システイン残基によって提供される)を含むタンパク質と反応させ、タンパク質の遊離システインのアルキル化をもたらし、したがって放射能標識タンパク質を提供することができることを実証した。トリプシン切断されたCry1Caコア毒素は2つのシステイン残基を含み、したがってこれらの2つの(特異的な)部位でのタンパク質のアルキル化および放射標識のための基質を提供する。
【0078】
フルオレセイン−5−マレイミド(F5−M)をDMSO(ジメチルスルホキシド)で10mMに溶解し、その後リン酸緩衝食塩水(PBS;20mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)で1mMに希釈し、これはF5−Mのモル吸光係数(68,000M−1cm−1)で測定された。2つのPierceヨウ素化ビーズ(Thermo Fisher Scientific)を含むPBSの100μL溶液に、鉛シールドの後で1.0mCiのNa125Iを加えた。溶液を室温で5分間混合させ、次に10μLの1mM F5−M溶液を加えた。10分間反応させた後に、溶液をピペットでヨウ素化反応液から取り出し、PBS中の2μgの高度に精製されたトリプシン切断Cry1Caコア毒素タンパク質を溶液に加えた。タンパク質をヨウ素化されたF5−M溶液と一緒に4℃で48時間インキュベートし、14mMの最終濃度までβ−メルカプトエタノールを加えることによって反応を停止した。反応混合液を20mM CAPS、150mM KCl、pH9で平衡させたZebra(商標)スピンカラム(Invitrogen)に加え、2分間の1500×gで遠心分離して、タンパク質から未反応のヨウ素化色素を分離した。125I放射標識フルオレセイン−Cry1Caコア毒素タンパク質をガンマ計数器で数え、投入毒素タンパク質の80%回収率を仮定してその比放射活性を決定した。
【0079】
放射標識されたCry1Caコア毒素タンパク質の比活性は、約6.8μCi/μgタンパク質であった。放射標識タンパク質をSDS−PAGEによって特徴付けし、蛍光画像化によって可視化もして、測定された放射活性がCry1Caコア毒素タンパク質と共有結合していることを確認した。マイラー(商標)膜(厚さ12μm)で包み、Molecular Dynamics(Sunnyvale、CA)貯蔵蛍光スクリーン(35cm×43cm)の下でそれらを1時間曝露することによって、クーマシー染色SDS−PAGEゲルを画像化した。Molecular Dynamics Storm820蛍光造影装置を用いてプレートを現像し、像はImageQuant(商標)ソフトウェアを用いて分析した。一部の放射活性は、Cry1Caコア毒素タンパク質バンドのかなり下のゲル領域で検出可能であった(すなわちサイズが約10kDa以下のCry1Caコア毒素タンパク質より小さな断片)。これらの放射能汚染物質は、そのコア構造へタンパク質を切断するために用いられたトリプシンの作用のために、切断Cry1Caタンパク質におそらく関連する小さなペプチドを表す可能性が高い。
【実施例3】
【0080】
Cry1CaおよびVip3Abのコア毒素タンパク質によるS.フルジペルダ(S. frugiperda)からのBBMVへの競合結合アッセイ。
相同的および非相同的競合結合アッセイは、150μg/mlのBBMVタンパク質および2nMの125I放射性標識Cry1Caコア毒素タンパク質を用いて実施した。反応混合液に加えられた相同的競合的非放射性標識Cry1Caコア毒素タンパク質の濃度は0.1、1、10、100および1000nMであった。非相同的トリプシン切断Vip3Abタンパク質を10および1,000nMで試験し、真の結合競合を保証するために放射性Cry1Caコア毒素タンパク質と同時にタンパク質を加えた。インキュベーションを28℃で1時間実行し、BBMVに未結合の(すなわち、昆虫受容体タンパク質に結合していない)125I標識Cry1Caコア毒素タンパク質の量を、16,000×gで8分間のBBMV混合物の遠心、および生じたペレットから上清を除去することによって結合したタンパク質から分離する。ペレットを氷冷結合緩衝液(PBS;11.9mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4プラス0.1%ウシ血清アルブミン;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で3回洗浄して、残りのいかなる未結合の125I標識Cry1Caを完全に除去する。遠心管の底を切り取り、この部分に含まれるタンパク質ペレットを13×100 mmガラス培養管に入れ、ガンマ計数器で10分間数えてペレット分画中に含まれる結合した放射活性の量を得た。結合したタンパク質分画中の放射活性量は、昆虫受容体に結合したCryタンパク質の量の指標となる(全結合)。1,000nMの非放射標識Cry1Caコア毒素タンパク質の存在下でペレットで得られたカウント数によって、非特異的結合を表した。BBMVに特異的に結合した(特異的な結合)放射標識Cry1Caの量は、全結合レベルを非特異的な結合から引くことで測定された。100パーセントの全結合は、いかなる競合者Cry1Faコア毒素タンパク質もない場合の結合の量であるとみなされた。データは、競合的非標識リガンドの濃度に対する特異的結合125I Cry1Caの百分率で表す。
【実施例4】
【0081】
結果の要約
結果(図1)は、相同的非標識Cry1Caタンパク質が、BBMVタンパク質への特異的結合から放射標識Cry1Caコア毒素タンパク質を用量依存的に効果的に追い出したことを示す。Vip3Abは、示す濃度(10または1,000nM)のいずれでも、結合した125I標識Cry1Caコア毒素タンパク質をその受容体タンパク質(複数可)から追い出さなかった。試験されたVip3Abの最も高い濃度(1,000nM)は、アッセイで用いられた放射標識Cry1Caより500倍高い濃度に相当し、Vip3AbがS.フルジペルダ(S. frugiperda)BBMVで放射標識Cry1Caの結合と効果的に競合しないことを実証する。
【0082】
図1は、S.フルジペルダ(S. frugiperda)(FAW)幼虫からのBBMVにおける、125I放射標識フルオレセイン−5−マレイミドのトリプシン切断Cry1Caの置換の用量反応曲線である。図は、0.1から1,000nMの範囲で用量依存的に標識Cry1Caを置換する、非標識Cry1Ca(●)の能力を示す。チャートは、加えた非放射標識リガンドの濃度に対する、特異的に結合した標識Cry1Ca(全結合から非特異的結合を引いたもの)の百分率をプロットする。10および1,000nMの非放射標識Vip3Ab1(▲)は、特異的に結合した放射標識Cry1Caを置換することができないことを示す。
【0083】
(参考文献)
【表2】

【0084】
【表3】















【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vip3Ab殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1Ca殺虫性タンパク質をコードするDNAを含むトランスジェニック植物。
【請求項2】
前記植物が、Cry1Fa、Cry1Da、Cry1BeおよびCry1Eからなる群から選択される第三の殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
【請求項3】
前記第三のタンパク質が、Cry1FaおよびCry1Beからなる群から選択され、前記植物が、Cry2A、Cry1I、DIG−3およびCry1Abからなる群から選択される第四および第五の殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項2に記載のトランスジェニック植物。
【請求項4】
前記DNAを含む、請求項1から3のいずれかに記載の植物の種子。
【請求項5】
非Bt緩衝帯植物および請求項1から3のいずれかに記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物は前記圃場の全ての作物植物の40%未満を構成する、圃場。
【請求項6】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の30%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項7】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の20%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項8】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の10%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項9】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の5%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項10】
前記緩衝帯植物がブロックまたは帯状地にある、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項11】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子および請求項4に記載の複数の種子を含む種子の混合物であって、前記緩衝帯種子は前記混合物の全ての種子の40%未満を構成する、種子の混合物。
【請求項12】
前記緩衝帯種子が前記混合物の全ての種子の30%未満を構成する、請求項11に記載の種子の混合物。
【請求項13】
前記緩衝帯種子が前記混合物の全ての種子の20%未満を構成する、請求項11に記載の種子の混合物。
【請求項14】
前記緩衝帯種子が前記混合物の全ての種子の10%未満を構成する、請求項11に記載の種子の混合物。
【請求項15】
前記緩衝帯種子が前記混合物の全ての種子の5%未満を構成する、請求項11に記載の種子の混合物。
【請求項16】
昆虫によるCryタンパク質への抵抗性の発達を管理する方法であって、種子を播いて請求項5に記載の植物の圃場を作製することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記植物が10エーカーよりも多くを占める、請求項5から10のいずれかに記載の圃場。
【請求項18】
前記植物がトウモロコシ、ダイズおよびワタからなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の植物。
【請求項19】
前記植物がメイズ植物である、請求項18に記載の植物。
【請求項20】
Cry1Fa殺虫性タンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
【請求項21】
前記植物細胞が、前記Vip3Ab殺虫性タンパク質をコードする前記DNAおよび前記Cry1Ca殺虫性タンパク質をコードする前記DNAを含み、前記Vip3Ab殺虫性タンパク質が配列番号1と少なくとも99%同一であり、前記Cry1Ca殺虫性タンパク質が配列番号2と少なくとも99%同一である、請求項1から3のいずれかに記載の植物の植物細胞。
【請求項22】
前記Vip3Ab殺虫性タンパク質が配列番号1を含み、前記Cry1Ca殺虫性タンパク質が配列番号2を含む、請求項1から3のいずれかに記載の植物。
【請求項23】
請求項21に記載の植物細胞を生成する方法。
【請求項24】
フォールアーミーワーム昆虫をVip3Ab殺虫性タンパク質およびCry1Ca殺虫性タンパク質と接触させることによって前記昆虫を防除する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−514777(P2013−514777A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544849(P2012−544849)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060835
【国際公開番号】WO2011/084634
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】