説明

押ボタンスイッチ

【課題】 キートップを操作する際における適度なクリック感を損なうことなく、防湿性及び気密性に優れ、また、少ない部品構成によって前記キートップをムラなく照光するための照光機能を備えた押ボタンスイッチを提供することである。
【解決手段】 ベース体11と、該ベース体11上に配置されるスイッチ本体12と、該スイッチ本体12上に配置されるキートップ14と、該キートップ14の一部が突出するようにして前記スイッチ本体12を収容するケース15とを備えた押ボタンスイッチ10であって、前記スイッチ本体12とキートップ14との間に、前記ケース15の内周面に密着してキートップ14を保持する弾性係合部材13を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器の設定や入力操作を行うための押ボタンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な押ボタンスイッチは、特許文献1,2に示されるように、スイッチ基板上に配置されるスイッチ素子と、このスイッチ素子上に配置されるキートップと、このキートップを押圧可能に支持して前記スイッチ基板及びスイッチ素子を収容するケースとを備えて構成されている。
【0003】
また、前記キートップを照光するため、前記スイッチ素子の周囲に発光素子(以下、LEDという)を配置するなどして構成した照光機能を有した押ボタンスイッチもある(特許文献3)。このようなLEDを備えた押ボタンスイッチにあっては、前記キートップの一部あるいは全部を透光性の部材によって形成することで、入力操作に応じた発光効果を得ることができるようになっている。
【0004】
上記構造による押ボタンスイッチは、携帯電話などの小型の携帯型情報機器に搭載する場合は、ケース内に湿気や埃が入り込まないような防湿性及び気密性が要求され、さらに、照光機能を持たせる場合は、キートップにおける発光にムラや輝度の低下が生じないように、前記LEDの数や配置などを十分考慮して形成される。
【特許文献1】特開平02−230620号公報
【特許文献2】特開平07−282677号公報
【特許文献3】特開平08−161960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構造の押ボタンスイッチにあっては、スイッチ素子を収容するケースからキートップが露出するような構造となっているため、キートップが露出する部分に僅かな隙間が生じ、防湿性が十分でない場合がある。このような隙間を完全になくすには、キートップとケースとの密着性を高めることが必要であるが、密着性を高めるにしたがって、キートップを押したときのクリック感が重くなるなどの操作性が損なわれるおそれがある。また、前記キートップとケースとの間に防湿性を備えた部材を配設するとなると、部品点数が増加するのに伴って製造コストが高くなるといった問題がある。
【0006】
また、照光機能を持たせる場合においては、スイッチの周囲にLEDを配置しただけの構成では、LEDから発せられる光がキートップに至る間に減衰するため、十分な明るさを確保するのが困難となっている。特許文献3では、キートップの一部に導光体を埋め込んで構成されているが、基板上に載置されているLEDからの光を直接導光させているに過ぎず、発光パターンが限られたものとなるなどの装飾性にも乏しいものとなっている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キートップを操作する際における適度なクリック感を損なうことなく、防湿性及び気密性に優れ、また、少ない部品構成によって前記キートップをムラなく照光するための照光機能を備えた押ボタンスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の押ボタンスイッチは、ベース体と、該ベース体上に配置されるスイッチ本体と、該スイッチ本体上に配置されるキートップと、該キートップの一部が突出するようにして前記スイッチ本体を収容するケースとを備えた押ボタンスイッチであって、前記スイッチ本体とキートップとの間に、前記ケースの内周面に密着してキートップを保持する弾性係合部材を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る押ボタンスイッチによれば、スイッチ本体とキートップとの間に、キートップが保持される弾性係合部材をケースの内周面に密着して配設したことによって、キートップが露出する部分における隙間がなくなり、湿気や埃の浸入を防ぐことができる。また、キートップに掛かる押圧力が弾性係合部材によって適度に吸収及び反発するため、スイッチ本体におけるクリック操作を軽快且つ確実に行うことができる。
【0010】
また、前記弾性係合部材が導光性を有する部材によって構成することで、LEDから発せられる光を有効にキートップに向けて導光させることができる。
【0011】
さらに、前記弾性係合部材と連続するような導光領域をキートップにかけて形成することができるので、様々なパターンによる発光効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る押ボタンスイッチの実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、本発明の押ボタンスイッチ10は、ベース体11上に構成されるスイッチ本体を収容するケース15と、このケース15に開設されている孔部29から突出するキートップ14とを備えて構成されている。この押ボタンスイッチ10は、図2及び図3に示すように、ベース体11と、このベース体11の上に配置されるスイッチ本体12と、このスイッチ本体12の上に弾性係合部材13を介して配置されるキートップ14とで構成され、ケース15に前記スイッチ本体12、弾性係合部材13、キートップ14が前記ベース体11とともに収容されている。
【0013】
前記スイッチ本体12は、図3に示したように、電極端子及び電極パターンが形成された基板16と、この基板16の略中央部に実装配置されるプッシュ式のスイッチ素子17と、このスイッチ素子17の周囲に実装配置されるLED18とで構成されている。前記基板16は、ガラス又はエポキシ樹脂で形成され、表面に前記スイッチ素子17やLED18を実装するための配線パターンや端子電極が印刷形成されている。また、前記端子電極には、外部からの電気信号を前記スイッチ素子17やLED18に繋げるためのリード端子19が接続される。
【0014】
前記LED18は、アノード電極及びカソード電極からなる一対の素子電極を有する四角形状のチップであり、電圧を印加することによって、例えば、青色や赤色等の発光色で発光する。前記素子電極は、前記基板16上にパターニングされた電極パターン上にそれぞれダイボンド及びワイヤボンドによってハンダ実装される。前記スイッチ素子17は、下部に固定接点、上部に可動接点とを備え、可動接点の押圧動作、解除動作に応じてON/OFFが切り替わるようになっている。
【0015】
図2及び図3に示したように、前記キートップ14は、キープレート21とこのキープレート21が組み込み固定されるキーフレーム22とで構成されている。前記キープレート21は、押ボタンスイッチ10に割り当てられている入力機能を示す記号や文字等の表示が記され、下端部にはキーフレーム22に固定するための係合突起23が設けられる。キーフレーム22には、前記係合突起23を嵌め込み固定するための係合孔24とスイッチ素子17の上端部に対向する押圧突起26が設けられている。このキーフレーム22は、前記LED18から発せられる光によって発光させるため、アクリル樹脂などの透光性や導光性を備えた透明又は半透明の部材によって形成される。
【0016】
前記弾性係合部材13は、前記押圧突起26及び係合突起23によって前記キーフレーム22を支持する台座部27と、この台座部27の外周から張り出すように延びる外縁部28とで一体に形成されている。前記台座部27は、ケース15に設けられている孔部29を塞ぐように密着して配置され、前記外縁部28は、前記孔部29を除いたケース15の内側上面部の角部(係合部)30に密着するように配置されている。この弾性係合部材13は、防湿性及び可撓性を有するゴムやシリコーンなどのエラストマー樹脂によって形成され、前記キープレート21の押圧操作に応じて前記スイッチ本体12側に弾力を有して撓み変形するようになっている。
【0017】
前記ケース15は、スイッチ本体12が収容される内部スペースと、弾性係合部材13に固定されたキートップ14を突出させるための孔部29とを有して形成されている。また、このケース15の下部側の固定は、前記スイッチ本体12が載置されるベース体11によって行われる。このベース体11は、図2及び図3に示したように、スイッチベース31とスイッチフレーム32とによって構成される。前記スイッチフレーム32は、スイッチ本体12を構成している基板16及びこの基板16上に配置されているスイッチ素子17やLED18の設置スペースの外周に沿うとともに、外周側面がケース15の内周側面に密着し、さらに、上面側が弾性係合部材13の外縁部28を係合部30で挟み込むようにして配設される。なお、ベース体11の固定は、スイッチベース31の側面の数箇所に設けられた係合爪33をケース15の側面に設けられた係合孔34に嵌め合わせることによって行われる。
【0018】
前記ベース体11をケース15の下面側から挿入するように嵌め込むことで、弾性係合部材13の外縁部28がスイッチフレーム32の上面部とケース15の係合部30に圧接する。これによって、前記ケース15の孔部29と、この孔部29から突出するキートップ14との隙間が埋まり、外部の湿気や細かい埃などがケース15内に収容されているスイッチ本体12に浸入するのを効果的に防止することができる。また、前記スイッチベース31が固定されているケース15の下面側を防水性の接着剤又はテープなどで封止することによって、前記スイッチ本体12を完全に密封することができる。
【0019】
図4(a)(b)は、前記押ボタンスイッチ10におけるスイッチング作用を示したものである。(a)はスイッチがOFFの状態を断面で示したものである。この状態は、キートップ14の押圧操作が行われないため、弾性係合部材13の下面がスイッチ素子17の上端に軽く接し、水平状態を維持している。一方、(b)はスイッチがONの状態を断面で示したものである。キートップ14の押圧操作が行われることによって、キートップ14の押圧突起26がスイッチ素子17の上端に向けて押し下げられるため、弾性係合部材13の下面が撓み変形し、スイッチ素子17の上端が押し下げられる。この(b)の状態からキートップ14の押圧操作を解除すると、弾性係合部材13が(a)に示したように押圧操作が行われていない状態に戻り、スイッチ素子17がOFFとなる。
【0020】
上記(a),(b)のいずれのスイッチ動作にあっても、弾性係合部材13の台座部27の側面及び外縁部28がケース15の孔部29から係合部30にかけて密着した状態を保持しているため、スイッチ本体12が収容されているケース15の内部の気密状態を良好に保つことが可能となる。
【0021】
次に、本発明の押ボタンスイッチ10に備わる照光機能について説明する。前記押ボタンスイッチ10は、図5(a)に示すように、スイッチ本体12にLED18を備えており、このLED18から発せられる光をキートップ14に向けて導光させるような構造となっている。前記LED18で発せられる光をキートップ14に向けて導光させるために、前記弾性係合部材13及びキートップ14の一部あるいは全部が導光性を有した部材によって構成される。前記弾性係合部材13においては、特に台座部27が弾性とともに透光性を有するゴムやシリコーンなどのエラストマー樹脂で構成される。また、前記キートップ14にあっては、キーフレーム22が透光性を有するアクリル樹脂材を用いて構成される。
【0022】
図5(a)に示したように、前記LED18から発せられる光(矢印で示す)は、最初に台座部27の下面側から入射し、弾性係合部材13内を通過して上面側に接するキートップ14に抜ける。本実施形態のキートップ14では、前記台座部27を介してキーフレーム22の下面側に導光するため、図5(b)に示すように、キープレート21の外周に沿ってリング状に発光させることができる。
【0023】
図6(a)は、弾性係合部材13の上に配置されるキートップ14全体が導光部材で形成されている場合の例を示したものである。この実施形態の押ボタンスイッチ50は、LED18から発せられた光(矢印で示す)が導光性を有する弾性係合部材13の台座部27を通過してそのままキートップ14全体を照射するようになっている。この実施形態のキートップ14は、前記キープレート21に相当するものがなく、全体が前記キーフレーム22と同じ導光部材で形成されているため、図6(b)に示すように、キートップ14全体を均一に発光させることができる。
【0024】
図7(a)は、キートップ14の輪郭部分と中央部分が導光領域に設定されたキーフレーム22と、前記導光領域を除いた部分に嵌め込まれるキープレート21とで形成されたものである。この実施形態の押ボタンスイッチ60は、LED18から発せられた光(矢印で示す)が導光性を有する弾性係合部材13の台座部27を通過して、輪郭部分と中央部に照射するようになっている。この実施形態のキートップ14によれば、図7(b)に示すように、キートップ14の中央部分と外周部分を際立たせるような発光効果を得ることができる。
【0025】
図8は、LED18から発せられる光の反射作用を利用した反射照光式の押ボタンスイッチ70の実施形態を示したものである。この実施形態の押ボタンスイッチ70は、前記第1実施形態の押ボタンスイッチ10に備わるスイッチフレーム32の上面に反射板41を一部に有した透光プレート42が配設されている。前記反射板41は、各LED18の発光面と対向する位置に設けられ、光反射効果のある白色塗装あるいは鏡面加工が施されている。また、前記LED18が実装されている基板16の表面及びスイッチフレーム32の内周面を前記反射板41と同様に白色塗装あるいは鏡面加工を施すことによって、LED18から発せられる光を有効にキートップ14に向けて導かせることが可能となる。
【0026】
上記反射照光式の押ボタンスイッチ70においては、LED18から発せられる光が弾性係合部材13を介して直接キートップ14を照射するのではなく、基板16やスイッチフレーム32の表面での反射を利用して間接的にキートップ14を照光することができる。このため、前記キートップ14の一部がまぶしすぎることなく、比較的柔らかな発光効果を得ることができる。なお、前記弾性係合部材13の構造及びその防湿性に関する作用効果は、同一であるので説明は省略する。
【0027】
以上説明したように、本発明の押ボタンスイッチによれば、キートップがスイッチ本体の上に弾性係合部材を介してケースに組み込み形成されているので、軽快且つ確実なクリック感を得ることができるとともに、防湿性、防塵性に対しても十分な効果が得られる。また、弾性係合部材が導光性を有する部材によって形成することで、最小限の部品構成でキートップを効果的に照光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る押ボタンスイッチの外観を示す斜視図である。
【図2】上記押ボタンスイッチの断面図である。
【図3】上記押ボタンスイッチの組立斜視図である。
【図4】上記押ボタンスイッチのON/OFF時における断面図である。
【図5】第2実施形態の押ボタンスイッチを示す断面図及び平面図である。
【図6】第3実施形態の押ボタンスイッチを示す断面図及び平面図である。
【図7】第4実施形態の押ボタンスイッチを示す断面図及び平面図である。
【図8】反射発光型の押ボタンスイッチの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,50,60,70 押ボタンスイッチ
11 ベース体
12 スイッチ本体
13 弾性係合部材
14 キートップ
15 ケース
16 基板
17 スイッチ素子
18 LED(発光素子)
19 リード端子
21 キープレート
22 キーフレーム
23 係合突起
24 係合孔
26 押圧突起
27 台座部
28 外縁部
29 孔部
30 係合部
31 スイッチベース
32 スイッチフレーム
33 係合爪
34 係合孔
41 反射板
42 透光プレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体と、該ベース体上に配置されるスイッチ本体と、該スイッチ本体上に配置されるキートップと、該キートップの一部が突出するようにして前記スイッチ本体を収容するケースとを備えた押ボタンスイッチであって、
前記スイッチ本体とキートップとの間に、前記ケースの内周面に密着してキートップを保持する弾性係合部材を配設したことを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項2】
前記弾性係合部材は、前記キートップを保持する台座部と、この台座部の外周に設けられて前記ケースの内周面に沿って密着する外縁部とを備える請求項1記載の押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記外縁部は、防湿性を備えた樹脂材によって形成される請求項2記載の押ボタンスイッチ。
【請求項4】
前記ベース体は、前記スイッチ本体が載置されるスイッチベースと、このスイッチベースの上に設けられ、前記スイッチ本体の外周を囲うスイッチフレームとで構成されている請求項1記載の押ボタンスイッチ。
【請求項5】
前記ケースには、前記弾性係合部材の外縁部が密着する溝状の係合部が設けられる請求項1又は2記載の押ボタンスイッチ。
【請求項6】
前記外縁部は、前記ベース体をケースに組み込むことによって、前記係合部に圧接して密着させる請求項5記載の押ボタンスイッチ。
【請求項7】
前記スイッチ本体は、基板と、この基板上に配置されるスイッチ素子と、このスイッチ素子の周囲に配置される発光素子とを備える請求項1記載の押ボタンスイッチ。
【請求項8】
前記キートップは、キープレートと、このキープレートを保持して前記弾性係合部材の上に載置される導光性を有するキーフレームとで構成される請求項1記載の押ボタンスイッチ。
【請求項9】
前記発光素子と対向する位置に反射板を備え、この反射板によって反射した発光素子からの光を前記弾性係合部材からキートップに導光する請求項7又は8記載の押ボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−146806(P2009−146806A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324576(P2007−324576)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】