説明

押出しによる導電性熱硬化性樹脂

カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法を提供する。カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂の調製方法をも提供する。カーボンナノチューブは、個別の形でも、綿菓子、鳥の巣、コーマ糸又はオープンネットの形に似た巨視的形態を有する凝集体の形とすることができる。好ましい多層カーボンナノチューブは、直径1ミクロン以下であり、好ましい単層カーボンナノチューブは、直径5nm未満である。一般に熱可塑性樹脂用とされていた押出し加工を使用することにより、カーボンナノチューブは、熱硬化性樹脂前駆体中に適切に分散できる。熱硬化性樹脂前駆体は、エポキシ、フェノール、ポリイミド、ウレタン、ポリエステル、ビニルエステル又はシリコーン前駆体とすることができる。好ましい熱硬化性樹脂前駆体は、ビスフェノールA誘導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照により本明細書の記載の一部とする、2004年8月31日出願の米国特許仮出願第60/605,769号に対する優先権及びその利益を主張するものである。
【0002】
本発明は広く、カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂及び導電性熱硬化性樹脂前駆体に関する。この導電性熱硬化性樹脂前駆体は、押出しにより調製され、導電性熱硬化性樹脂の調製のために使用される。
【背景技術】
【0003】
導電性重合体
導電性重合体は、それらが重合体性と導電性の特性を合わせて有するために、久しく要望され、様々な用途に対して多数の利点を提供する。導電性重合体中の重合体成分の形は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂とすることができる。これらの重合体についての一般的な背景情報は、John Haim及びDavid Hyattにより翻訳されたInternational Plastics Handbook、第3版、Hanser/Gardner Publications(1995)並びにlca Manas−Zloczower及びZehev Tadmor編纂のMixing and Compounding of Polymers−Theory and Practice、Hanser/Gardner Publications(1994)などの多数の出版物から得ることができ、この両者は参照により本明細書の記載の一部とする。導電性重合体の導電性要素には、金属粉末又はカーボンブラックが含まれる。
【0004】
導電性重合体を形成する場合、熱可塑性樹脂の方が、その展性及び柔軟性のためにより商業的に実用性があり且つ有望であることが示されてきた。例えば、参照により本明細書の記載の一部とする、Nahassらにより1994年3月30日に出願された米国特許第5,591,382号を参照されたい。熱可塑性樹脂は、押出し加工により導電性添加剤を混合して導電性熱可塑性重合体を形成するのが容易である。さらに、必要時に熱可塑性樹脂を再成型するために加熱して軟化できる。しかし、熱可塑性樹脂には、架橋してより強い重合体を形成する熱硬化性樹脂の有する強度がない。最近の技術的な発展により、熱可塑性樹脂に架橋剤を添加して熱可塑性樹脂により大きな強度を付与することが可能になった。但し、そうした加工には、それ自体の欠点もある(例えば、余分なコスト、努力、実験など)。
【0005】
他方、本質的により剛性且つ非柔軟性である熱硬化性樹脂は、導電性添加剤と混合して導電性熱硬化性重合体を形成するのが困難である。熱可塑性樹脂と異なり、熱硬化性重合体は通常、少なくとも2種の独立の成分又は前駆体による化学反応によって形成される。化学反応には、架橋などの分子間結合を促進するために、触媒、化学薬品、エネルギー、熱又は照射の使用を含めることができる。分子間結合を促進するための様々な反応により、様々な熱硬化性樹脂を形成できる。熱硬化性樹脂の結合/形成加工は、硬化と呼ばれることが多い。熱硬化性樹脂の成分又は熱硬化性樹脂前駆体は通常、硬化する前は液体又は展性のあるものであり、最終的な形に成形されるように、又は接着剤として使用されるように設計されている。しかし、一旦硬化すると、熱硬化性重合体は、熱可塑性樹脂よりも強く、高温用途により適してもいる。というのは熱硬化性重合体は、熱可塑性樹脂のように加熱により容易に軟化したり、再溶融したり、又は再成型したりすることができないからである。したがって、導電性熱硬化性重合体は、強度と導電性の非常に望ましい組合せを産業に提供する。
【0006】
押出しにより導電性添加剤を添加し、分散させるために溶融することができる熱可塑性樹脂と異なり、熱硬化性樹脂は、一旦硬化したら溶融できない。それどころか、最終的な硬化した熱硬化性樹脂生成物が形成される前に、導電性添加剤を前駆体成分中に添加、分散しなければならない。こうした要件のために、導電性熱硬化性樹脂を形成する際の多くの制限事項が創出される。例えば、熱硬化性樹脂中に添加剤を分散させるための好ましい効率的な方法である押出しは一般に、熱硬化性樹脂前駆体に関しては使用されない。というのは、熱硬化性樹脂前駆体の粘度は、典型的に導電性添加剤を前駆体中にうまく分散させるのに十分な大きさではないからである。
【0007】
それどころか、超音波処理、攪拌又はミリングが、導電性添加剤を熱硬化樹脂中分散させるための好ましい方法である。しかし、これらの方法は、工業用としてスケールアップするのが困難であるために、導電性熱硬化性重合体を形成した場合に一貫した実用性のある結果が得られていない。例えば、導電性熱硬化性樹脂を形成する場合、通常導電性添加剤を第1液体前駆体中に混合し、その中で攪拌する。しかし、導電性添加剤を添加すると、第1液体前駆体の粘度が増加し、したがって混合の困難さが増加する。したがって、第1液体前駆体に実際に添加できる導電性添加剤の量には固有の限界がある。そのために、混合された第1液体前駆体をより低粘度の第2液体前駆体に添加し、反応させて(第2液体前駆体がより高い粘度である場合、混合はもっと困難である)熱硬化性重合体又は樹脂を形成する。しかし、第1液体前駆体を第2液体前駆体と混合することにより、熱硬化性樹脂の最終生成物基準では、導電性添加剤の全体の添加はさらに減少することになり、そのために通常導電性熱硬化性樹脂の最終生成物は工業上不適当になる。
【0008】
そのために、導電性熱硬化性樹脂を形成するための新規な方法に対する必要性が存在する。
【0009】
カーボンナノチューブ
カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンフィブリル、金属粉末などを含めて多数の導電性添加剤が当技術分野において知られている。他の導電性添加剤に比較して導電率及び強度が極めて高いので、カーボンフィブリルの人気が上昇している。
【0010】
カーボンフィブリルは通常、カーボンナノチューブと呼ばれる。カーボンフィブリルは、直径が1.0μ未満、好ましくは0.5μ未満、より好ましくは0.2μ未満であるバーミキュラ状カーボンデポジットである。それらは、様々な形状で存在し、金属表面上で様々なカーボン含有気体を解媒分解することにより調製されている。そうしたバーミキュラ状カーボンデポジットは、電子顕微鏡の出現とほとんど同時に観察された。(Baker及びHarris、Walker及びThrower編纂のChemistry and Physics of Carbon、14巻、1978年、83頁;Rodriguez,N.、J.Mater.Research、8巻、3233頁(1993)。
【0011】
1976年にEndoらは(Obelin,A.及びEndo,M.、J.of Crystal Growth、32巻(1976)、335〜349頁を参照)、そうしたカーボンフィブリルが成長する基本的なメカニズムを明らかにした。これを参照により本明細書の記載の一部とする。それらは金属触媒粒子から始まることが分かり、金属触媒粒子は、炭化水素含有気体の存在下でカーボンで過飽和になる。円筒状の規則正しいグラファイトコアが押し出され、Endoらによれば、このグラファイトコアは直ちに熱分解により堆積したグラファイトの外層でコートされる。熱分解性のオーバーコートを有するこれらのフィブリルの直径は通常、0.1μを超え、より通常には0.2〜0.5μである。
【0012】
参照により本明細書の記載の一部とする、1983年の、Tennentの米国特許第4,663,230号は、連続した熱分解性カーボンオーバーコートのない、フィブリル軸に実質的に平行な多層のグラファイト外層を有するカーボンフィブリルを記載する。したがって、それらは、c軸、すなわちグラファイトの曲がった層の接線に垂直、実質的にそれらの円筒軸に垂直である軸を有するものとして特徴付けることができる。それらは一般に、直径が0.1μ以下、長さと直径の比が少なくとも5である。望ましくは、それらは実質的に、連続した熱分解性カーボンオーバーコートがない、すなわち、それらを調製するために使用された供給気体の熱分解に起因する熱分解により堆積したカーボンがない。したがって、Tennentの発明は、より小さな、通常35〜700Å(0.0035〜0070μ)のより小さな直径のフィブリル、及び規則正しい「成長したままの」グラファイト表面にアクセスする方法を提供した。より完全性の低い構造であるが、熱分解性のカーボン外層のないフィブリル性カーボンも成長した。
【0013】
本出願で教示されるように酸化可能なカーボンナノチューブは、市販の連続したカーボンファイバーと区別可能である。アスペクト比(L/D)が、少なくとも10、しばしば10以上であるこれら市販のファイバーと異なり、カーボンフィブリルのアスペクト比は、大きいことが望ましいが、不可避的には有限である。連続したファイバーの直径は、フィブリルのそれよりもはるかに大きく、常に>1.0μ、通常5〜7μである。
【0014】
参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentらの米国特許第5,171,560号は、熱分解性のオーバーコートがなく、フィブリル軸に実質的に平行なグラファイト層であって前記層の前記フィブリル軸への投影が少なくともフィブリル直径の2倍の距離にわたって延伸するようなグラファイト層を有するカーボンフィブリルを記載する。通常、そうしたフィブリルは、実質的に一定の直径の実質的に円筒状のグラファイトナノチューブであり、c軸が円筒軸に実質的に垂直である円筒状のグラファイトシートを含む。それらは、実質的に熱分解性の堆積カーボンがなく、直径が0.1μ未満、長さと直径の比が5を超える。これらのフィブリルは、本発明の方法により酸化できる。
【0015】
グラファイト層のナノチューブ軸上への投影が、ナノチューブ直径の2倍未満の距離延伸する場合、グラファイトナノチューブのカーボン平面は、断面において、ニシン骨のように見える。これらに対しては、魚骨フィブリルという用語が使われる。参照により本明細書の記載の一部とする、Geusの米国特許第4,855,091号は、熱分解性のオーバーコートが実質的にない魚骨フィブリルの調製手順を提供する。これらのカーボンナノチューブは、本発明の実施においても有用である。
【0016】
上記の接触的に成長したフィブリルに類似の形態のカーボンナノチューブが、高温のカーボンアーク中で成長した(Iijima、Nature 354、56、1991年)。これらのカーボンアーク中で成長したナノファイバーが、先に接触的に成長したTennentのフィブリルと同じ形態を有することは現在一般的に受け入れられている。口語的に「バッキーチューブ」と呼ばれるアークで成長したカーボンナノチューブは、本発明においても有用である。
【0017】
有用な単層カーボンナノチューブ及びその調製方法は、例えば、「直径1nmの単殻カーボンナノチューブ(Single−shell carbon nanotubes of 1−nm diameter)」としてS Iijima及びT Ichihashi、Nature、363巻、頁603(1993)、並びに「単原子層を有するカーボンナノチューブのコバルト触媒による成長(Cobalt−catalysed growth of carbon nanotubes with single−atomic−layer walls)」としてD S Bethune、C H Kiang、M S DeVries、G Gorman、R Savoy及びR Beyers、Nature、363巻、頁605(1993)において開示されており、両報文は参照により本明細書の記載の一部とする。
【0018】
単層カーボンナノチューブは、参照により本明細書の記載の一部とする、Moyらの米国特許第6,221,330号にも開示されている。Moyは、場合によっては水素が添加される、それぞれが炭素原子1〜6個及びヘテロ原子としてH、O、N、S又はClのみを含む1つ又は複数のガス状炭素化合物と、接触分解のための反応条件下で不安定であり、反応条件下で分解触媒として作用する金属含有触媒を形成する化合物を含むガス相金属とを含むガス相混合物炭素原料ガスを第1番目に形成するステップと;次いで分解反応条件下で前記分解反応を行わせ、それにより中空の単層カーボンナノチューブを調製するステップとにより1つ又は複数のガス状炭素化合物を接触分解することによる前記ナノチューブの調製方法を開示した。本発明は、ガス相金属含有化合物をやはりガス状炭素源を含む反応混合物中に導入するガス相反応に関するものである。その炭素源は通常、場合によっては水素が混合された、ヘテロ原子としてH、O、N、S又はClを含むC〜C化合物である。一酸化炭素又は一酸化炭素と水素が、好ましい炭素原料である。反応ゾーンの温度を約400℃〜1300℃に、圧力を約0〜約100p.s.i.g.に上昇させると、ガス相金属含有化合物の金属含有触媒への分解が可能になると考えられている。分解は、金属元素まででも、又は部分的に分解した中間種まででもよい。金属含有触媒は、(1)COを接触分解させ、(2)SWNTを接触的に形成する。したがって、本発明は又、炭素化合物の接触分解によるSWNTの形成にも関するものである。
【0019】
米国特許第6,221,330号の発明は、一部の実施形態では、金属含有触媒のエアゾールを反応混合物中に導入するエアゾール技法を採用する場合がある。SWNT調製のエアゾール法の利点は、均一なサイズの触媒粒子を調製し、効率のよい商用又は工業用の連続生産にかかる方法を拡大することが可能であることである。既に議論した電孤放電及びレーザー堆積法はそうした商用又は工業用の生産用に経済的に拡大できない。本発明において有用な金属含有化合物の例には、金属カルボニル、金属アセチルアセトネート、及び分解条件下で分解して非坦持金属触媒を形成する蒸気として導入できる他の材料が含まれる。触媒として活性な金属には、Fe、Co、Mn、Ni及びMoが含まれる。モリブデンカルボニル及び鉄カルボニルは、反応条件下で分解して蒸気相触媒を形成できる好ましい金属含有化合物である。これらの金属カルボニルの固体形は、蒸発する予備処理ゾーンまで輸送することができ、そこで触媒の蒸気相前駆体になる。2種の方法を使用して非坦持触媒上でSWNTを形成できることが分かった。
【0020】
第1の方法は、揮発性触媒の直接投入である。直接投入法は、参照により本明細書の記載の一部とする米国特許出願第08/459,534号に記載されている。揮発性触媒前駆体の直接投入は、モリブデンヘキサカルボニル[Mo(CO)]及びジコバルトオクタカルボニル[Co(CO)]触媒を使用するとSWNTの形成をもたらすことが分かった。両方の材料は室温で固体であるが、周囲又は周囲に近い温度で昇華する−モリブデン化合物は、少なくとも150°まで熱的に安定であり、コバルト化合物は、分解により昇華する(「Organic Syntheses via Metal Carbonyls」I巻、I.Wender及びP.Pino編纂、Interscience Publishers、New York、1968,頁40)。
【0021】
第2の方法は、気化器を用いて金属含有化合物を導入する(図12)。本発明の好ましい実施形態では、図12に示す気化器10は、第2コンパートメントを形成するための底から約1”にあるシール24を有する石英製サーモウエル20を備える。このコンパートメントは、反応ガスに開放され、暴露される2個の1/4”孔26を有する。触媒をこのコンパートメント内に置き、次いで気化器炉32を用いて任意の所望の温度で蒸発させる。第1熱電対22を用いてこの炉を制御する。好ましくは金属カルボニルである金属含有化合物をその分解温度より低い温度で蒸発させ、反応ガスCO又はCO/Hは、前駆体を掃引して反応ゾーン用の炉38及び第2熱電対42により独立に制御されている反応ゾーン34内に入る。出願人らは、特定の操作性理論に限定されることを望むものではないが、反応器の温度で金属含有化合物は、部分的に中間種まで分解されるか、又は完全に金属原子まで分解されるかのいずれかであると考えられている。こうした中間種及び/又は金属原子は、凝集して、実際の触媒であるより大きな凝集粒子になる。次いで、粒子は、COを接触分解すると共にSWNTの成長を促進するための的確なサイズまで成長する。図11の装置では、触媒粒子及び得られた炭素体を石英ウールプラグ36上に集める。粒子の成長速度は、ガス相金属含有中間種の濃度により決まる。この濃度は、気化器中の蒸気圧(したがって温度)により決定される。この濃度が高すぎる場合、粒子の成長は、速すぎてSWNTとは異なる構造体が成長する(例えば、MWNT、非晶質カーボン、オニオンなど)。特許中に記載の例を含めて、米国特許第6,221,330号の内容の全ては参照により本明細書の記載の一部とする。
【0022】
参照により本明細書の記載の一部とするBethuneらの米国特許第5,424,054号は、カーボン蒸気をコバルト触媒と接触させることによる単層カーボンナノチューブの調製方法を記載する。カーボン蒸気は、非晶質カーボン、グラファイト、活性化若しくは脱色カーボン又はそれらの混合物とすることができる固体カーボンを電孤加熱することにより生成される。カーボンを加熱する他の技法も議論されており、例えば、レーザー加熱、電子線加熱及びRF誘導加熱がある。
【0023】
参照により本明細書の記載の一部とするSmalley(Guo,T.、Nikoleev,P.、Thess,A.、Colbert,D.T.及びSmalley,R.E.、Chem.Phys.Lett.243:1〜12(1995))は、グラファイトロッド及び遷移金属を高温レーザーにより加熱して同時に蒸発させる単層カーボンナノチューブの生成法を記載する。
【0024】
参照により本明細書の記載の一部とするSmalley(Thess,A.、Lee,R.、Nikolaev,P.、Dai,H.、Petit,P.、Robert,J.、Xu,C.、Lee,Y.H.、Kim,S.G.、Rinzler,A.G.、Colbert,D.T.、Scuseria,G.E.、Tonarek,D.、Fischer,J.E.及びSmalley,R.E.、Science、273:483〜487(1996))は、少量の遷移金属を含むグラファイトロッドをオーブン中で約1200℃でレーザーにより蒸発させる単層カーボンナノチューブの調製法をも記載する。単層ナノチューブが70%を超える収率で生成したと報告されている。
【0025】
SWNTを形成するための坦持金属触媒も公知である。参照により本明細書の記載の一部とするSmalley(Dai.,H.、Rinzler,A.G.、Nikolaev,P.、Thess,A.、Colbert,D.T.及びSmalley,R.E.、Chem.Phys.Lett.260:471〜475(1996))は、COから、多層ナノチューブと単層ナノチューブの両方を成長させるための坦持Co、Ni及びMo触媒、並びにその形成のための提案されたメカニズムを記載する。
【0026】
カーボンナノチューブは、補強材料として市販されている連続したカーボンファイバー、並びに標準的なグラファイト及びカーボンブラックなどの他の形態のカーボンとは物理的及び化学的に異なる。標準的なグラファイトは、その構造のためにほとんど飽和するまで酸化を受ける。さらに、カーボンブラックは一般に、不規則な核の周囲のカーボン層であるグラフェン構造を有する球状粒子の形態の非晶質カーボンである。この相違のために、グラファイト及びカーボンブラックは、ナノチューブ化学の前兆としては見込みの薄いものとなる。
【0027】
カーボンナノチューブ凝集体
調製されたままの状態では、カーボンナノチューブは、個別のナノチューブか、ナノチューブの凝集体か又はその両者の形態のいずれかである。
【0028】
凝集体として生成又は調製されたナノチューブは、様々な形態を有する(走査型電子顕微鏡により決定される)。形態として、相互に不規則に絡み合って鳥の巣に類似したナノチューブの絡み合ったボールを形成したもの(BN);又は、実質的に相対的に同じ配向を有し、例えばコーマ糸(「CY」)のような外観を有する直線状からやや曲がった又はもつれたカーボンナノチューブの束からなる凝集体として、各ナノチューブの縦軸が個別の曲がり又はもつれにもかかわらず束中の囲んだナノチューブと同じ方向に延伸したもの;又は、相互にゆるやかに絡み合って「オープンネット」(「ON」)構造を形成した直線状からやや曲がった又はもつれたナノチューブからなる凝集体としてのものがある。オープンネット構造では、ナノチューブの絡み合いの程度は、コーマ糸凝集体で見られるのより大きいが(個別のナノチューブは実質的に相対的に同じ配向である)、鳥の巣のそれよりも小さい。他の有用な凝集体構造には、CY構造に類似した綿菓子(「CC」)構造が含まれる。
【0029】
凝集体の形態は、触媒の担体を選択することにより制御する。球状の担体は、あらゆる方向にナノチューブを成長させて鳥の巣凝集体をもたらす。コーマ糸及びオープンネット状の凝集体は、1つ又は複数の容易に劈開する平な表面を有する担体、例えば1つ又は複数の容易に劈開する表面を有し表面積が少なくともグラム当り1平方メートルである担体材料上に堆積した鉄又は鉄含有金属触媒粒子を使用して調製される。参照により本明細書の記載の一部とする、1995年6月6日出願のMoyらの発明の名称が「カーボンフィブリルの調製のための改良方法及び触媒(Improved Methods and Catalysts for the Manufacture of Carbon Fibrils)」である米国特許出願第08/469,430号は、様々な形態(走査型電子顕微鏡により決定される)を有する凝集体として調製されるナノチューブを記載する。
【0030】
カーボンナノチューブ又はナノファイバー凝集体の形成に関する更なる詳細は、Tennentの米国特許第5,165,909号;Moyらの米国特許第5,456,897号;Snyderらの、1988年1月28日出願の米国特許出願第07/149,573号及び1989年1月28日出願のPCT出願US90/00322(「カーボンフィブリル(Carbon Fibrils)」)WO89/07163、及びMoyらの、1989年9月28日出願の米国特許出願第413,837号及び1990年9月27日出願のPCT出願US90/05498(「蓄電池(Battery)」)WO91/05089、及びMandevilleらの1995年6月7日出願の米国特許出願第08/479,864号、Moyらの、1994年8月2日出願の米国特許出願第08/284,917号及び1994年10月11日出願の米国特許出願第08/320,564号の開示において知ることができ、これらの全てが本発明と同じ譲受人に譲渡され、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0031】
カーボンナノチューブの酸化及び/又は官能化
カーボンナノチューブ及び凝集体は酸化してある種の望ましい特性を増強することができる。例えば、酸化を使用して、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の表面上にある種の基を加えたり、カーボンナノチューブ凝集体の絡み合いをゆるくしたり、質量の減少又はカーボンナノチューブからの末端キャップの除去を行ったりすることなどができる。
【0032】
参照により本明細書の記載の一部とする、McCarthyらの1994年10月27日出願の米国特許出願第08/329,774号は、フィブリルの表面を酸化するのに十分な反応条件下(例えば、時間、温度及び圧力)で硫酸(HSO)及び過塩素酸カリウム(KClO)を含む酸化剤とフィブリルを接触させるステップを含むカーボンフィブリル表面の酸化方法を記載する。McCarthyらの方法に従って酸化されたフィブリルは、不均一に酸化される、すなわち、炭素原子が、カルボキシル、アルデヒド、ケトン、フェノール及び他のカルボニル基の混合物で置換されている。
【0033】
フィブリルは、硝酸による処理によっても不均一に酸化された。WO95/07316として1994年9月9日に出願された国際出願PCT/US94/10168号は、官能基の混合物を含む酸化フィブリルの形成を開示する。Hoogenvaad,M.S.ら(1994年9月のSixth International Conference on Scientific Basis for the Preparation of Heterogeneous Catalysts,Brussels,Belgiumで発表された「新規な炭素担体に坦持された金属触媒(Metal Catalysts supported on a Novel Carbon Support)」)は、フィブリル表面を第1番目に硝酸で酸化することがフィブリル坦持貴金属の調製において有利であることも発見した。こうした酸による前処理は、炭素坦持貴金属触媒の調製における標準的なステップであり、そうした炭素の通常の原料が与えられた場合、このステップは、官能化するのに望ましくない材料の表面を清浄にするために非常に役に立つ。
【0034】
出版された成果において、McCarthy及びBening(Polymer Preprints ACS Div.of Polymer Chem.30(1)420(1990))は、表面が様々に酸化された基を含むことを実際に示すために、酸化されたフィブリルの誘導体を調製した。彼らが調製した化合物、フェニルヒドラゾン、ハロ芳香族エステル、臭化物塩などは、例えば、明るい色であるとか、ある種の他の強力で容易に同定され、差別化できる信号を示すなどの分析上の有用性から選択された。これらの化合物は、単離されなかったし、本明細書において記載の誘導体と異なり、実用上の重要性はなかった。
【0035】
全て参照により本明細書の記載の一部とする、Fischerらの、1994年12月8日出願の米国特許出願第08/352,400号、Fischerらの、1997年3月6日出願の米国特許出願第08/812,856号、Tennentらの、1997年5月15日出願の米国特許出願第08/856,657号、Tennentらの、1997年5月13日出願の米国特許出願第08/854,918号、及びTennentらの、1997年5月15日出願の米国特許出願第08/857,383号は、アルカリ金属塩素酸塩の硫酸などの強酸溶液などの強い酸化剤にフィブリルを接触させるステップを含むカーボンフィブリルの表面酸化方法を記載する。カーボンナノチューブの追加の有用な酸化処理には、参照により本明細書の記載の一部とするNiuの2004年5月28日出願の米国特許公開第2005/0002850号に記載のものが含まれる。
【0036】
加えて、これらの出願は、スルホン化、脱酸素化フィブリル表面への求電子付加又は金属化によりカーボンフィブリルを均一に官能化する方法をも記載する。フィブリルのスルホン化は、硫酸又は蒸気相のSOにより行うことができ、それにより、相当量のスルホンを結合したカーボンフィブリルが生成し、そのためにスルホン官能化フィブリルが大きな重量増加を示すようになる。
【0037】
Greenらの米国特許第5,346,683号は、アーク成長したナノチューブのキャップ端領域中の炭素原子と選択的に反応することが可能な、流動反応ガスとの反応により生成されたキャップのない細くしたカーボンナノチューブを記載する。
【0038】
Ebbesenらの米国特許第5,641,466号は、アーク成長したカーボンナノチューブとカーボンナノ粒子及びおそらくは非晶質であるカーボンなどの不純物としてのカーボン材料との混合物を、不純物としてのカーボン材料が、酸化され、ガス相中に消散するまで、酸化剤の存在下、600℃〜1000℃の範囲の温度で加熱することにより、該混合物を精製する手順を記載する。
【0039】
発表された論文において、Ajayan及びIijima(Nature 361、頁334〜337(1993))は、鉛の存在下でカーボンナノチューブを酸素と共に加熱することによるそのアニーリングにより、キャップの付いたチューブの終端が開き、続いて毛細管作用によりチューブが溶融材料で満たされることを議論している。
【0040】
他の発表された成果において、Haddon及びその共同研究者(Science、282、95(1998)及びJ.Mater.Res.、13巻、9号、2423(1998))は、単層カーボンナノチューブ材料(SWNTM)中に化学官能基を組み込むためにSWNTMをジクロロカルベン及びBirch還元条件により処理することを記載する。塩化チオニル及びオクタデシルアミンによるSWNTの誘導体化により、SWNTは、クロロホルム、ジクロロメタン、芳香族溶媒、CSなどの普通の有機溶媒に可溶になった。
【0041】
加えて、官能化されたナノチューブは、1994年12月8日に出願された米国特許出願第08/352,400号及び1997年5月15日に出願された米国特許出願第08/856,657号において広く議論されており、両者は参照により本明細書の記載の一部とする。これらの出願では、ナノチューブ表面は、最初に、強い酸化性又は他の環境に優しくない化学薬剤との反応により酸化される。ナノチューブ表面は、さらに、他の官能基との反応により改変することができる。ナノチューブ表面は、ナノチューブが、様々な基材中の化学基と化学的に反応又は物理的に結合できるように多種多様の官能基により改変された。
【0042】
ナノチューブの複雑な構造は、広い範囲のリンカー用化学物質によりチューブ上の官能基を相互に結合させることにより得られた。
【0043】
代表的な官能化されたナノチューブは以下の式を有する。
[C−]R
式中、nは、整数、Lは、0.1n未満の数、mは、0.5n未満の数、
各Rは、同じであり、SOH、COOH、NH、OH、O、CHO、CN、COCl、ハライド、COSH、SH、R’、COOR’、SR’、SiR’、Si(−OR’−)R’3−y、Si(−O−SiR’−)OR’、R’’、Li、AlR’、Hg−X、TlZ及びMg−Xから選択され、
yは、3以下の整数であり、
R’は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アラルキル又はヘテロアラルキルであり、
R’’は、フルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロシクロアルキル、フルオロアラルキル又はシクロアリールであり、
Xは、ハライドであり、
Zは、カルボキシレート又はトリフルオロアセテートである。
炭素原子Cは、ナノファイバーの表面炭素である。
【0044】
酸化ナノチューブの第2次誘導体
酸化カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体は、さらに処理して表面に第2次の官能基を加えることができる。一実施形態では、酸化ナノチューブは、さらに酸化ナノチューブの部分と反応させるのに適切な反応体と接触させることにより第2次処理ステップにおいてさらに処理され、それにより少なくとももう1つの第2次官能基を付加される。酸化ナノチューブの第2次誘導体は、基本的に無限である。例えば、−COOHのような酸性基を有する酸化ナノチューブは、従来の有機反応により実際に任意の所望の第2次基に転換可能であり、それにより広い範囲の表面の親水性又は疎水性がもたらされる。
【0045】
酸化ナノチューブの部分と反応させることにより付加できる第2次基には、下記に限定されるわけではないが、炭素1〜18個を有するアルキル/アラルキル基、炭素1〜18個を有するヒドロキシル基、炭素1〜18個を有するアミン基、炭素1〜18個を有するアルキルアリールシラン及び炭素1〜18個を有するフルオロカーボンが含まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0046】
従来技術から求められる必要性に対処する本発明は、カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法を提供する。さらに、カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂の調製方法をも提供する。
【0047】
カーボンナノチューブは、個別のフォームでも、綿菓子、鳥の巣、コーマ糸又はオープンネットの形に似た巨視的形態を有する凝集体のフォームでもよい。好ましい多層カーボンナノチューブは、直径1ミクロン以下であり、好ましい単層カーボンナノチューブは、直径5nm未満である。
【0048】
一般に熱可塑性樹脂用とされていた押出し法を使用することによりカーボンナノチューブを熱硬化性樹脂前駆体中に適切に分散できることが見出された。好ましい実施形態では、カーボンナノチューブは、15ポアズを超える粘度を有する熱硬化性樹脂前駆体中に押出しにより分散される。熱硬化性樹脂前駆体は、20〜600ポアズの範囲又は50〜500ポアズの間の粘度を有することができる。熱硬化性樹脂前駆体は、エポキシ、フェノール、ウレタン、シリコーン、ポリイミド、ポリエステル又はビニルエステル前駆体とすることができる。好ましい熱硬化性樹脂前駆体は、ビスフェノールA誘導体である。
【0049】
導電性熱硬化性樹脂前駆体は、好ましくは、0.5〜30重量%のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を含む。
【0050】
熱硬化性樹脂前駆体がエポキシドを含む場合、当量当りのエポキシド重量は、600グラム前駆体/グラム当量エポキシドを超え、好ましくは600〜4000グラム前駆体/グラム当量エポキシド、より好ましくは1000〜3800グラム前駆体/グラム当量エポキシドである。
【0051】
熱硬化性樹脂前駆体はさらに、第2熱硬化性樹脂前駆体と混合して導電性熱硬化性樹脂を形成する前の前駆体を非固体のゲル状又は液体の粘性状態に保つために加えられる希釈又は緩和剤を含む。ブラベンダーミキサ、遊星ミキサ、マルチシャフトミキサなど、せん断力を発生するミキサを使用して導電性熱硬化性樹脂前駆体中に希釈剤を含有又は混合することができる。好ましい実施形態では、希釈剤は、添加によって第1熱硬化性樹脂前駆体と反応して最終熱硬化性樹脂生成物に硬化しない又は変化しない別の熱硬化性樹脂前駆体である。
【0052】
熱硬化性樹脂前駆体の融点は30℃を超えるものとすることができ、又は好都合には30〜350℃とすることができる。
【0053】
押出しは、1軸スクリュー、2軸スクリュー又は添加剤を熱硬化性樹脂前駆体中に分散させるのに有用な任意の他の従来型押出機で行うことができる。さらに、2軸スクリュー押出機は、逆回転でも又は共回転でもよい。
【0054】
次いで、本発明に従って調製される導電性熱硬化性樹脂は、少なくとも1種の第2熱硬化性樹脂前駆体と反応させて導電性熱硬化性樹脂を形成する。導電性熱硬化性樹脂の抵抗率は、1011ohm−cm未満、好ましくは10ohm−cm未満、より好ましくは10ohm−cm未満とすることができる。
【0055】
従来技術を超える本発明の他の改善点は、本発明の好ましい実施形態を説明する以下の説明の結果として確認される。その説明は如何なる意味においても本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の好ましい実施形態の例を提供するものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲において指示される。
【0056】
好ましい実施形態の詳細な説明
定義
用語「ナノチューブ」、「ナノファイバー」及び「フィブリル」は、単層又は多層カーボンナノチューブを指すものとして互換的に使用される。それぞれは、好ましくは、1ミクロン未満(多層ナノチューブの場合)又は5nm未満(単層ナノチューブの場合)の断面(例えば、エッジを有する角のあるファイバー)又は直径(例えば丸い)を有する延伸した中空構造体を指す。用語「ナノチューブ」には「バッキーチューブ」及び魚骨フィブリルも含まれる。
【0057】
本明細書では「多層ナノチューブ」は、例えばTennentらの米国特許第5,171,560号に記載されているような、実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状のグラファイトナノチューブであり、c軸が円筒軸に実質的に垂直である単一の円筒状のグラファイトシート又は層を含むカーボンナノチューブを指す。用語「多層ナノチューブ(multiwalled nanotubes)」は、下記に限定されるわけではないが、「多層ナノチューブ(multi−wall nanotubes)」、「多層ナノチューブ(multi−walled nanotubes)」、「多層ナノチューブ(multiwall nanotubes)」などを含めての前記用語の変形の全てと互換的であることを意味する。
【0058】
本明細書では「単層ナノチューブ(single walled nanotubes)」は、例えばMoyらの米国特許第6,221,330号に記載されているような、実質的に一定の直径を有する実質的に円筒状のグラファイトナノチューブであり、c軸が円筒軸に実質的に垂直である円筒状のグラファイトシート又は層を含むカーボンナノチューブを指す。用語「単層ナノチューブ(single walled nanotubes)」は、下記に限定されるわけではないが、「単層ナノチューブ(single−wall nanotubes)」、「単層ナノチューブ(single−walled nanotubes)」、「単層ナノチューブ(single wall nanotubes)」などを含めての前記用語の変形の全てと互換的であることを意味する。
【0059】
用語「官能基」は、結合している化合物又は物質に特徴的な化学的及び物理的特性を与える原子群を指す。
【0060】
「官能化」表面は、化学基が吸着又は化学的に結合している炭素表面を指す。
【0061】
「グラフェン状」炭素は、炭素原子それぞれが、六方晶系の縮合環を形成する基本的に平面層において3個の他の炭素原子に結合する炭素の形である。その層は、直径が数環しかないプレートレットであるか、又は長さは多数の環で幅は数環しかないリボンとすることができる。
【0062】
「グラフェン類似体」は、グラフェン状表面内に組み込まれた構造を指す。
【0063】
「グラファイト状」炭素は、基本的に相互に平行であり、3.6オングストローム以下しか離れていないグラフェン層からなる。
【0064】
用語「凝集体」は、絡み合ったカーボンナノチューブを含む密な微視的な粒状構造体を指す。
【0065】
用語「前駆体」とは、最終の架橋又は硬化重合体生成物を調製する場合に使用される任意の成分(component又はingredient)を意味する。前駆体は、未だ架橋又は硬化して最終の架橋又は硬化重合体生成物を形成していないモノマー又はポリマーを含む。
【0066】
「熱可塑性樹脂」は一般的に、加熱すると通常軟化又は溶融する一群の重合体を指す。
【0067】
「熱硬化性樹脂」は一般的に、加熱しても溶融しない一群の重合体を指す。
【0068】
用語「粘度」は、流体様状態において材料が示す流動に対する内部抵抗の尺度となり、又は特徴づけるものである。固体などの材料が、流動を可能にする(例えば、固体は流動できないので、粘度が無限大である)ために溶融させることを必要とする場合、溶融材料の内部抵抗の尺度とし、又は特徴づけるために用語「溶融粘度」がしばしば使用される。したがって、本出願及び本明細書で使用される用語では、用語「粘度」及び用語「溶融粘度」は互換的である。というのは、それらは両方とも、材料又は溶融材料の流動に対する内部抵抗の尺度となり、又は特徴づけるからである。
【0069】
カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体
標題「カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes)」又は「カーボンナノチューブの凝集体(Aggregates Of Carbon Nanotubes)」として関連技術の説明(Description Of The Related Art)で説明されたカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体はいずれも、本発明を実施する場合に使用でき、これらの参考文献の全ては参照により本明細書の記載の一部とする。
【0070】
カーボンナノチューブは、好ましくは直径1ミクロン以下、より好ましくは0.2ミクロン以下である。さらにより好ましいのは、直径が2〜100nm(2及び100nmを含む)であるカーボンナノチューブである。最も好ましいのは、直径が5ナノメートル未満又は3.5〜75nm(3.5及び75nmを含む)であるカーボンナノチューブである。
【0071】
ナノチューブは、実質的に直径が一定の実質的に円筒状のグラファイト状カーボンフィブリルであり、実質的に熱分解性の堆積炭素がない。ナノチューブは、長さと直径に比が5を超え、グラファイト層のナノチューブ上への投影が少なくともナノチューブ直径の2倍の距離で延伸したナノチューブを含む。
【0072】
最も好ましい多層ナノチューブは、参照により本明細書の記載の一部とするTennentらの米国特許第5,171,560号に記載されている。最も好ましい単層ナノチューブは、参照により本明細書の記載の一部とするMoyらの米国特許第6,221,330号に記載されている。米国特許第6,696,387号に従って調製されたカーボンナノチューブも好ましく、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0073】
カーボンナノチューブの凝集体は、絡み合ったカーボンナノチューブを含む密な微視的な粒状構造体であり、鳥の巣、綿菓子、コーマ糸又はオープンネットに類似する巨視的形態を有する。米国特許第5,110,693号及びその中の参考文献(その全てが参照により本明細書の記載の一部とする)に開示されているように、2つ以上の個別のカーボンフィブリルは、絡み合ったフィブリルの微視的な凝集体を形成できる。綿菓子凝集体は、5nm〜20nmの範囲とすることができる直径と0.1μm〜1000μmの範囲とすることができる長さを有する絡み合ったフィブリルのスピンドル又はロッドに類似している。フィブリルの鳥の巣凝集体は、0.1μm〜1000μmの範囲とすることができる直径を有し、概略球状とすることができる。それぞれのタイプ(CC及び/又はBN)又はそれぞれの混合物のより大きい凝集体も形成できる。
【0074】
カーボンナノチューブの凝集体は、固く絡み合わされていても、又はゆるく絡み合わされていてもよい。所望であれば、カーボンナノチューブ凝集体は、酸化剤で処理して凝集体構造自体を破壊することなくカーボンナノチューブの絡み合いをさらにゆるくすることができる。
【0075】
導電性熱硬化性樹脂前駆体及び導電性熱硬化性樹脂の調製法
導電性熱硬化性樹脂を形成するのに有用である好ましい熱硬化性樹脂には、フェノール、尿素、メラミン、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、シリコーン、ポリイミド、ウレタン及びポリウレタンが含まれる。
【0076】
前述の標題「導電性重合体」で議論したように、熱硬化性樹脂は一般に、少なくとも2種の別々の成分又は前駆体を化学的に反応させることにより形成される。化学反応は、架橋などの中間的な結合を促進するように触媒、化学薬品、エネルギー、熱又は照射の使用を含めることができる。熱硬化性樹脂の結合/形成加工は硬化と呼ばれることが多い。所望の熱硬化性樹脂を形成するために、成分又は前駆体の様々な組合せ及び様々な化学反応を使用できる。
【0077】
したがって、本発明は、導電性熱硬化性樹脂と導電性熱硬化性樹脂を作成するのに使用される導電性熱硬化性樹脂前駆体又は成分の両方を含む。導電性熱硬化性樹脂及び導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法も本明細書において開示されている。
【0078】
導電性熱硬化性樹脂は、通常熱可塑性樹脂用である押出し加工により調製された導電性熱硬化性樹脂前駆体から形成できることが発見された。ブラベンダーミキサ、遊星ミキサ、ウォーリングブレンダ、超音波装置などの他の従来の混合装置又は加工を使用して希釈剤などの他の材料を導電性熱硬化性樹脂前駆体中に分散又は混合できる。
【0079】
好ましい実施形態では、第1熱硬化性樹脂前駆体を押出し(例えば、押出機を使用して)によりカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体と混合して導電性熱硬化性樹脂前駆体を形成する。第1熱硬化性樹脂前駆体は、液体でも固体でもよい。押出機は、単一スクリュー、レシプロカル1軸スクリュー(例えば、ブス式ニーダー)、2軸スクリュー又は添加剤を熱硬化性樹脂前駆体中に分散させるのに有用な任意の他の通常の押出機とすることができる。さらに、2軸スクリュー押出機は、逆回転でも共回転でもよい。
【0080】
第1熱硬化性樹脂前駆体の押出しは、粘度のクリティカルな範囲内でのみ可能である。粘度は、せん断力の関数である場合が多く、複雑な粘度と応力歪曲線を含む。粘度は、参照により本明細書の記載の一部とする、Macosko、Christopher W.のRheology:Principles,measurements and applications,Wiley−VCH(1994)においてより詳細に説明されている。一方では、押出し加工は、粘度の低い熱硬化性樹脂前駆体中にカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を分散させるのに十分なせん断力を発生しないことが発見された。逆に、粘度の高い熱硬化性樹脂前駆体は、押出機によって加工できない。したがって、一実施形態では、熱硬化性樹脂前駆体は、15ポアズを超える粘度、好ましくは20〜600ポアズ、より好ましくは50〜500ポアズの粘度を有する。所望の粘度を得るために、必要であれば押出機中の温度を調整できる。例えば、固体の熱硬化性樹脂前駆体は、押出し加工に進む前に通常押出機中で溶融される。こうした場合には、熱硬化性樹脂前駆体は、15ポアズを超える粘度又は溶融粘度、好ましくは20〜600ポアズ、より好ましくは50〜500ポアズの粘度又は溶融粘度を有するといわれる。
【0081】
導電性熱硬化性樹脂前駆体の状態又は粘度は、押出し加工により適した粘度又は状態を得るために、希釈剤又は緩和剤を含ませること又は加えることにより調製できる。例えば、固体又は粉末の形の導電性熱硬化性樹脂前駆体は、粘性液体、非固体又はゲル状の状態に維持される導電性熱硬化性樹脂前駆体をもたらす液体、非固体又はゲル状希釈剤を含ませたり、又は混合したりすることができる。希釈剤は、加えた場合に第1熱硬化性樹脂前駆体と反応して最終の熱硬化性樹脂生成物に硬化又は変化しない熱硬化性樹脂前駆体を含む。希釈剤又は緩和剤は、遊星ミキサ、ブラベンダーミキサ、ウォーリングブレンダ、超音波処理機又はこうした成分の混合を促進するのに必要とされるレベルのせん断又は力を発生する他の従来の混合装置を使用して含ませたり、混合したり又は加えたりできる。
【0082】
市販可能な導電性熱硬化性樹脂を形成するために、導電性熱硬化性樹脂前駆体は、0.5〜40%、好ましくは0.5〜30%の添加量でカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を含むことが好ましい。他の例示的なカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量範囲には、5〜40%、1〜15%又は5〜15%が含まれる。
【0083】
導電性熱硬化性樹脂前駆体が一旦形成されると、次いで、導電性熱硬化性樹脂は、この導電性熱硬化性樹脂前駆体を対応する周知の第2熱硬化性樹脂前駆体と反応させて、好ましくは1〜5%のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体添加量を有する導電性熱硬化性樹脂を形成することにより作成できる。第2熱硬化性樹脂前駆体は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を含んでも含まなくてもよい。導電性熱硬化性樹脂は、1011ohm−cm未満、好ましくは10ohm−cm未満、より好ましくは10ohm−cm未満の抵抗率を有することができる。
【0084】
第1熱硬化性樹脂前駆体がエポキシド(反応性の3員の酸素基)を含む場合、前駆体中のエポキシド量はその中へのカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体の分散に影響する場合があることがさらに発見された。一実施形態では、第1熱硬化性樹脂前駆体のエポキシド当りの重量が、600グラム前駆体/グラム当量エポキシドを超える。好ましくは、第1熱硬化性樹脂前駆体中のエポキシド当りの重量が、600〜4000グラム前駆体/グラム当量エポキシドである。より好ましくは、第1熱硬化性樹脂前駆体中のエポキシド当りの重量が、1000〜3800グラム前駆体/グラム当量エポキシドである。
【0085】
第1熱硬化性樹脂前駆体は、押出し加工で使用するために溶融することが必要な場合があるので、第1熱硬化性樹脂前駆体の融点もカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体の分散に影響する場合がある。第1熱硬化性樹脂前駆体の融点は、30℃を超えるか、又は好都合には30〜350℃であることが好ましい。より高い融点は、押出機の供給ポート内での原料のブリッジングの可能性を減少させる。しかし、当業者には、好ましい範囲内の粘度を得るために適切な冷媒を使用して必要なら−40℃という低い温度まで押出機を冷却できることが理解されよう。
【0086】
以下のセクションは、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル及びシリコーンを用いた、特定の導電性熱硬化性樹脂前駆体及び導電性熱硬化性樹脂の様々な調製方法を説明する。このセクションにおける全ての議論は、続くセクションに適用される(すなわち、手順、エポキシド、粘度、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の開示、融点、抵抗率など)。さらに、これらの説明は、完全ではなく、当業者には、本明細書中の教示に従って改変できることが理解されよう。さらに、これらの特定の導電性熱硬化性樹脂についての説明は、一般的な導電性熱硬化性樹脂についての説明と合わせて、導電性ウレタンやフェノールなどの他任意の導電性熱硬化性樹脂前駆体又は導電性熱硬化性樹脂を調製するための知識及びスキルを当業者に提供するものである。
【0087】
導電性エポキシ前駆体及び導電性エポキシ樹脂の調製法
エポキシは、表面コーティング、接着剤、鋳込み成形体、パネル、シールディング材料など様々な用途及び応用例を有するよく知られた熱硬化性樹脂である。導電性エポキシ樹脂は、高温での応用(例えば、最高160℃)を含めての多数の応用例で使用されるはずである。導電性エポキシ樹脂は、静電気の分散(例えば、航空産業用のESDプリプレグ、エレクトロニクスアセンブリ用のESD接着剤など)を促進するのに有用であるはずである。導電性エポキシ樹脂は、電解腐食防止用のコーティングとして使用できる。導電性エポキシ樹脂は、エポキシモールドの表面上へのクロムめっきを可能にする低コストのツールを作製するのにも有用であるはずである。
【0088】
エポキシ樹脂は、反応性の3員酸素基であるエポキシド基を通常含む。エポキシ樹脂は、多数の従来の周知のエポキシ前駆体から形成される。1つの普通の組合せは、エピクロロヒドリンと芳香族ビスフェノールAである。或いは、エポキシは、エピクロロヒドリンとグリセロールなどの脂肪族ポリオールからも形成できる。エポキシは、ジエポキシド化合物から出発してジアミンと共に硬化させることによっても作製できる。別のエポキシ樹脂の形成方法は、ポリオレフィンを過酢酸で酸化して高温で無水物と共に硬化させることを含む。
【0089】
エポキシ樹脂は、加熱により硬化させることができる。或いは、エポキシ中に電流を通すことによっても硬化させることができ、これにより加熱コストが低減し、パーツ及びアセンブリの調製における品質コントロールが改善される。電流を用いて硬化できるので、エポキシは軍事及び航空宇宙用途における非常に有用な接着剤になることが可能である。
【0090】
好ましい実施形態では、導電性エポキシ前駆体は、押出しにより第1エポキシ前駆体をカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体と混合することにより調製される。導電性エポキシ前駆体は、導電性エポキシ前駆体の粘度又は状態を調整するために、希釈又は緩和剤をさらに含むことができる(又はそれらと混合させることができる)。希釈又は緩和剤は、遊星ミキサ、ブラベンダーミキサ、又はこうした成分の混合を促進するのに必要とされるレベルのせん断又は力を発生する他の通常の混合装置を使用して含ませたり、混合したり又は加えたりできる。希釈又は緩和剤は、導電性エポキシ前駆体に含ませたり、混合したり又は加えたりした場合、導電性エポキシ前駆体への添加により硬化して最終のエポキシ樹脂を形成しない他のエポキシ前駆体とすることができる。
【0091】
所望の導電性エポキシ樹脂を形成するために、次いで、導電性エポキシ前駆体を別のエポキシ前駆体(及び/又は必要な他の成分)と混合又は反応させる。
【0092】
導電性エポキシ前駆体中のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量は、0.5〜40%、好ましくは0.5〜30%であることが好ましい。導電性エポキシ前駆体中の他の例示的なカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量範囲には、5〜40%、1〜15%又は5〜15%が含まれる。第2エポキシ前駆体は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を含んでも含まなくてもよい。次いで、混合物は硬化され、最終の導電性エポキシ生成物は、1〜5%のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量を含むことができる。当業者には、最終生成物の導電性添加量はフレキシブルであり、第1及び第2エポキシ前駆体中のそれぞれの導電性添加量によって制御されることが理解されよう。
【0093】
前駆体中のエポキシド量はその中へのカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体の分散に影響する場合があることが発見された。一実施形態では、第1エポキシ前駆体のエポキシド当りの重量が、600グラム前駆体/グラム当量エポキシドを超える。好ましくは、第1エポキシ前駆体中のエポキシド当りの重量が、600〜4000グラム前駆体/グラム当量エポキシドである。より好ましくは、第1エポキシ前駆体中のエポキシド当りの重量が、1000〜3800グラム前駆体/グラム当量エポキシドである。
【0094】
第1エポキシ前駆体の粘度はその中へのカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体の分散に影響する場合があることも発見された。一実施形態では、第1エポキシ前駆体は、15ポアズを超える粘度を有する。好ましくは、第1エポキシ前駆体は、20〜600ポアズ、より好ましくは50〜500ポアズの粘度を有する。
【0095】
第1エポキシ前駆体の融点もカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ凝集体の分散に影響する場合がある。第1エポキシ前駆体の融点は、30℃を超える、より好ましくは30〜350℃であることが好ましい。より高い融点は、押出機の供給ポート内での原料のブリッジングの可能性を減少させる。
【0096】
他の導電性熱硬化性樹脂前駆体及び導電性熱硬化性樹脂の調製法
ポリエステル
ポリエステルは、補強プラスチック、自動車のパーツ、ボートの船体、発泡体、保護コーティング、構造用途、パイピングなどにおける多数の用途を有する別のよく知られた熱硬化性樹脂である。したがって、導電性ポリエステルも、多数の有用な用途を有する。
【0097】
前駆体用のポリエステル樹脂は、ジャケット及び攪拌機付きの反応ケトル中でジカルボン酸(例えば、マレイン及びフマール酸)をグリコール(例えば、プロピレン及びジエチレングリコール)と反応させることにより作製する。実際は、ジカルボン酸の無水形が好ましい。このプロセスは、バッチ操業であり、作製される前駆体樹脂のタイプに応じて6から最高24時間までのサイクル「クック」時間がある。
【0098】
反応がケトル中で進行するにつれて、重合体の分子量は増加し、粘度が増加し、酸値は減少する。これらの2種の前駆体樹脂特性は、樹脂が所定の終点に到達する時間を求めるために、連続的に監視される。終点に到達したら、反応を停止し、熱い前駆体樹脂混合物を、スチレンモノマーを含む攪拌した「ドロップ」タンク中に移す。スチレンモノマーは、溶融樹脂の溶媒としても及び加工業者又は末端ユーザーが使用する場合、架橋剤としても働く。この段階までには、樹脂前駆体は冷却されてしまっている(例えば、約80℃)。
【0099】
ポリエステル前駆体樹脂の調製の如何なる段階においても、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体は、ポリエステル前駆体樹脂と混合され、好ましい実施形態に従って押し出されて導電性ポリエステル前駆体を形成することができる。カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体は、0.5及び40%添加量、好ましくは0.5〜30%で加えることができる。他の例示的なカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量範囲には、5〜40%、1〜15%又は5〜15%が含まれる。
【0100】
一旦押し出されたら、導電性ポリエステル前駆体樹脂は、従来の技法を使用してさらに改変し、樹脂粘度及び反応性特性などの様々な所定の要件を満足させることができる。
【0101】
導電性ポリエステルを形成するために、不飽和ジカルボン酸の無水系(例えば、無水マレイン酸)の組込みに由来する反応性サイトを有する導電性ポリエステル前駆体樹脂は、フリーラジカル反応経由でスチレンモノマーにより架橋される。液体スチレン又は他の反応性不飽和モノマーを使用して導電性ポリエステル前駆体樹脂を架橋することができる。この反応は、過酸化物触媒(例えば、過酸化メチルエチルケトン(MEKP))などの触媒の添加により開始される。最終の導電性ポリエステル生成物は、1〜5%のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体添加量を含むことができる。
【0102】
ビニルエステル
様々な有用な用途を有する別の熱硬化性樹脂は、ビニルエステルである。ポリエステルと異なり、ビニルエステルは、多量の水を吸収せず、硬化時の収縮が少ない。ビニルエステルは、非常に良好な耐薬品性及びヒドロキシル基の存在によるガラスへの結合性をも有する。したがって、導電性ビニルエステル前駆体及び導電性ビニルエステルは、やはり多数の実用的な用途を有する。
【0103】
ビニルエステル樹脂前駆体は、ジエポキシドをアクリル酸又はメタクリル酸と反応させることにより作製される:
【化1】


下記のようなより大きなオリゴマーも使用できる:
【化2】

【0104】
カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体は、アクリル酸と混合される前又は後に、ビニルエステル前駆体のジエポキシド成分と混合することができ、その混合された前駆体樹脂は好ましい実施形態に従って押し出されて導電性ビニルエステル前駆体樹脂を形成できる。カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体は、0.5及び40%添加量、好ましくは0.5〜30%で加えることができる。他の例示的なカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量範囲には、5〜40%、1〜15%又は5〜15%が含まれる。
【0105】
好ましい実施形態では、ポリエステル又はビニルエステル前駆体は、ビスフェノールA誘導体である。したがって、好ましい導電性前駆体は、ビスフェノールA誘導体及びカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を含む。好ましい導電性前駆体は、ナノチューブ又は凝集体をビスフェノールA誘導体中に分散させるのに十分な条件下でビスフェノールA誘導体及びカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を押し出すことにより形成される。
【0106】
次いで、導電性ビニルエステル前駆体樹脂は、硬化又は架橋されてビニル基を重合することによりビニルエステルを形成する。最終の導電性ビニルエステル生成物は、1〜5%のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体添加量を含むことができる。
【0107】
シリコーン
多数の有用な用途を有する更なる別の熱硬化性樹脂は、シリコーンである。シリコーン前駆体には、様々に異なる粘度がある。ある種のシリコーン前駆体は、押出し加工に貢献する室温での粘度を有することが発見された。したがって、これらのシリコーン前駆体は、押出し加工で使用するために最初に高温で溶融する必要がないという点で多数の熱硬化性樹脂前駆体よりもユニークである。
【0108】
したがって、導電性シリコーン前駆体は、好ましい実施形態に従ってカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体を第1シリコーン前駆体と共に押し出すことにより形成できる。好ましくは、シリコーン前駆体は、押出し加工に順応する室温での粘度を有する。そうしたシリコーン前駆体の例は、ビニル末端のポリジメチルシロキサンである。カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体は、0.5及び40%添加量、好ましくは0.5〜30%で加えることができる。他の例示的なカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体の添加量範囲には、5〜40%、1〜15%又は5〜15%が含まれる。
【0109】
次いで、導電性シリコーン前駆体は、第2シリコーン前駆体と混合されて(或いは、第2シリコーン前駆体が必要でない場合は、空気又は他の要素と反応させる)導電性シリコーンを形成できる。最終の導電性シリコーン生成物は、1〜5%のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブ凝集体添加量を含むことができる。
【実施例】
【0110】
以下の例は、更なる本発明の理解を提供するものであるが、如何なる意味においても本発明の有効な範囲を限定するものではない。
【0111】
(例1)
Resolution Performance Productsの調製販売になるエポキシ前駆体であり、エポキシド当りの重量が525〜550グラム前駆体/グラム当量エポキシド(HC−427G又はASTM D−1652−97過塩素酸法で測定)、溶融粘度が4.4ポアズ(Brookfield Viscometerにより150℃でHC−710B又はASTM D−2196−86(1991)e1で測定)、融点範囲が70〜80℃であるEPON 1001Fを用いて実験を行った。
【0112】
5重量%のBNカーボンナノチューブ凝集体をEPON 1001Fに加え、以下の設定である共回転2軸スクリュー押出機中に送った:
【表1】

【0113】
EPON 1001Fを用いた実験は、不成功であった。というのは低粘度のために材料を加工できなかったからである。材料も供給口でブリッジした。多数の加工パラメータを調整したが、受容できる押出しが得られなかった。したがって、この実験は中止された。
【0114】
(例2)
Resolution Performance Productsの調製販売になるエポキシ前駆体であり、エポキシド当りの重量が2300〜3800グラム前駆体/グラム当量エポキシド(HC−427G又はASTM D−1652−97過塩素酸法で測定)、溶融粘度が500ポアズ超(Brookfield Viscometerにより150℃でHC−710B又はASTM D−2196−86(1991)e1で測定)、融点範囲が130〜140℃であるEPON 1009Fを用いて実験を行った。
【0115】
15重量%のBNカーボンナノチューブ凝集体をEPON 1009Fに加え、以下の設定である共回転2軸スクリュー押出機中に送った:
【表2】

【0116】
ストランドがうまくベルトコンベア上に押し出され、空冷されてペレタイザに供給された。材料は容易にペレット化され、重合体の劣化が原因の脆性はほとんど見られなかった。これらの条件で生成物は2時間にわたり定常状態で作製され、試験を終了した。
【0117】
(例3)
BNカーボンナノチューブ凝集体を、2軸スクリュー押出機を使用してResolution Performance Productsの販売になる以下のエポキシ前駆体に加えた:
溶融固体:
【表3】


1−試験方法HC−427G又はASTM D−1652−97(過塩素酸法);グラム当量エポキシドを含む樹脂のグラム数(固体基準)。過塩素酸滴定法は樹脂に応じて変更される。
2−150℃での試験方法HC−710B又はASTM D−2196−86(1991)e1(Brookfield Viscometerによる粘度)。
粉末コーティング/成形粉末用固体:
【表4】


1−試験方法HC−427G又はASTM D−1652−97(過塩素酸法);グラム当量エポキシドを含む樹脂のグラム数(固体基準)。過塩素酸滴定法は樹脂に応じて変更される。
2−150℃での試験方法HC−710B又はASTM D−2196−86(1991)e1(Brookfield Viscometerによる粘度)。
【0118】
(例4)
30%BN/Epon1009F濃縮物33グラムを調製し、低せん断ミキサを使用して3−エトキシプロピオン酸エチル(「e3ep」)24グラム及びキシレン24グラムと合わせる。この第1混合物を2日間熟成する。
【0119】
バージンのEpon1009Fの23グラムを、e3epの17グラム、キシレン17グラム、メチロン75202の29グラム、SR882Mの1.3グラム、85%リン酸1.4グラム及びn−ブタノール10グラムと合わせて第2混合物を形成する。
【0120】
2つの混合物を合わせて約2.3重量%のナノチューブを含むコーティング溶液を作製する。
【0121】
(例5)
上記の例4における合わせた混合物を、No.4 Ford Cupで測定した粘度が20秒になるまで更なるe3epで希釈してスプレーコーティングに適した生成物を調製する。
【0122】
(例6)
30%BN/Epon1009F濃縮物33グラムを調製し、低せん断ミキサを使用して3−エトキシプロピオン酸エチル(「e3ep」)24グラム及びキシレン24グラムと合わせて第1混合物を形成する。
【0123】
TiO77グラム及びバージンのEpon1009Fの23グラムを、e3epの17グラム、キシレン17グラム、メチロン75202の29グラム、SR882Mの1.3グラム、85%リン酸1.4グラム及びn−ブタノール10グラムと合わせて第2混合物を形成する。
【0124】
両方の混合物を2日間熟成し、次いで合わせてコーティング溶液を作製する。
【0125】
(例7)
カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂を使用して燃料電池で使用するための導電性バイポーラプレートを形成できる.例えば、所望の導電性熱硬化性樹脂は、カーボンナノチューブ及び熱硬化性フェノールホルムアルデヒド又はフェノール樹脂を含むことができる。
【0126】
Hyperionからの綿菓子(「CC」)フィブリル凝集体を熱硬化性フェノール樹脂前駆体(架橋用添加剤のない樹脂)と混合した。樹脂前駆体は、棚上に静置した後に結晶化する粉状の形であった。樹脂前駆体を、粉末に戻すように粉砕するためにハンマーミル内を通した。次いで、逆と共回転モードの両方で27mmLeistritz上でコンパウンド化試行を行った。
【0127】
この材料をコンパウンド化する第1の試行は、逆回転モードで行われた。加工プロファイルは下記の通りであった:
【表5】

【0128】
最初のフィブリル濃度は、10%であった。モーターへの負荷は、この添加量では高かったので、濃度を5%まで下げた。未知の理由のために、この実験は成功ではなかった。温度、スクリュー速度及び供給速度を変えても問題は緩和しなかった。スクリューを引き抜くと、コンパウンド化しなかった乾燥カーボンが、カーボン供給ポートのあとの第1混合セクション内で「ケーキ化」していた。これはスクリューのデザインが不適切であったためかもしれない。逆回転モードでは、実質的な試料は収集されなかった。
【0129】
次いで、熱硬化性樹脂前駆体中でのカーボンナノチューブの混合を共回転モードで試みた。カーボン濃度7及び10重量%のコンパウンド化はいくらか成功であった。プロセスパラメータは下記の通りであった:
【表6】

【0130】
これらの比較的低い負荷及び低い処理量でもモーターへの負荷は高い(75〜86%)ことが分かった。フェノール樹脂前駆体は溶融状態では粘度が非常に低いので、この結果は、いささか驚きであった。加えて、材料が供給口で再結晶し、一点ではモーターへの過負荷の原因になった。
【0131】
より低い分子量とより狭い分子量分布を有するものなど、異なるグレードのフェノール前駆体(すなわち、より低い分子量画分の濃度がより低い)は、低分子量のテールはコンパウンド化中カーボンナノチューブとともかくも消極的に反応するという理論に基づけばよりよい結果をもたらすかもしれない。
【0132】
(例8)
導電性フェノール樹脂前駆体を、カーボンナノチューブ及びより小さい分子量だがより狭い分子量分布を有するフェノールベース樹脂前駆体を用いて作製した。より大きいMW材料(より広いMW分布)が、カーボンと消極的に反応する顕著な量のフリンジ材料を有したことが理論づけられている。したがって、フリンジ材料を最小化することにより、加工性が改善されるはずであることが予想された。
【0133】
フェノールベース樹脂前駆体とカーボンナノチューブが、以下の条件下、15%重量フィブリルの濃度でうまくコンパウンド化された。
【表7】

【0134】
より狭いMWDを有するフェノール樹脂前駆体は、カーボンナノチューブをよりよくコンパウンド化したことが分かった。
【0135】
(例9)
より小さい粘度(より狭い分子量分布)のフェノール樹脂前駆体を用いて10ポンドの試料を作製した。この試料はCCフィブリル15重量%含有した。
【0136】
以下の条件でマスターバッチを加工した。
【表8】

【0137】
(例10)
カーボンナノチューブを例9よりももっと狭い分子量分布のフェノール樹脂前駆体と、27mm Leistritzで合わせた。
【0138】
カーボンナノチューブを以下の条件で27mm Leistritzのサイドスタッファから供給した。
【表9】

【0139】
非常に狭い分子量分布を有するフェノール樹脂前駆体は、例8及び9のフェノール樹脂前駆体ほどスムースにカーボンナノチューブとコンパウンド化しないことが分かった。ブリッジングを防止するために、供給口を手作業で連続的に清浄化する必要があるはずである。又、美観の観点からも、押出し物は、例8及び9で作製された試料ほどよくなかった。約10ポンドを集めた。
【0140】
(例11)
例8及び9の導電性フェノール樹脂前駆体から燃料電池で使用するためのプレートを作製した。50ohm/sq.未満、好ましくは10〜20ohm/sq.の電気抵抗率(ohm/sq.の表面抵抗率)が求められている。
【0141】
(例12)
例8に記載の手順を使用して、鳥の巣フィブリル凝集体(「BN」)をフェノール樹脂前駆体と合わせた。
【0142】
以下の条件でマスターバッチをうまく調製した:
【表10】

【0143】
50ポンドを集めた。
【0144】
(例13)
押出し加工を使用してカーボンナノチューブを周知のエポキシ前駆体であるEPON 1009と混合してカーボンナノチューブ15重量%を含み、融点が140℃である導電性エポキシ前駆体を形成した。導電性エポキシ前駆体を#20篩を通過するように細かく粉砕した。
【0145】
液体又はゲル状の希釈剤、EPON 828を、様々な量の導電性エポキシ前駆体に混合又は添加した。混合を促進するために導電性エポキシ前駆体を150℃まで、次いで170℃まで加熱した。低せん断速度の遊星ミキサ(Ross Mixers,Hauppauge,NY)を使用してEPON 828中に混合しようとする最初の試みは、成功しなかった。より大きいせん断速度を有するマルチシャフトミキサ、VersaMix(VM)(Ross Mixers,Hauppauge,NY)を使用してEPON 828中に混合しようとする続いての試みは、成功であった。試料1〜13を調製した。試料11は、VersaMixが均一に混合できるよりも粘性が高いように見えた試料10にもっとEPON 828を添加して調製した。試料1〜12を引き出して、温度をかけた数時間の加工プロセス中に追加の粉砕された導電性エポキシ前駆体を加えた。試料13を単一の中断なしのバッチで作製した。
【表11】


WPE=エポキシ当量当りの重量
【0146】
材料は全て粘性があり、室温において固体までの境界のレベルはかなり高い。
【0147】
(例14)
例13から選択された導電性エポキシ前駆体の試料を第2エポキシ前駆体、Epi−cure 3234硬化剤とブレンドして導電性エポキシを形成し、硬化した供試体の抵抗率を測定した。粘性のあったものと室温でトリアミンの液体であるEpi−cure 3234とブレンドしたものとの両方の導電性エポキシ前駆体試料を、硬化を加速するために加熱した。Epi−cure 3234は、WPEに基づいた化学量論によって添加し、約11重量%であった。
【0148】
加えて、ウォーリングブレンダ(WB)か超音波処理機(SON)かいずれかによりEPON 828を添加した又は混合した導電性エポキシ前駆体も含ませた。これらの試料のラベルはH1〜H7である。
【0149】
大部分の導電性エポキシ試料は、導電性エポキシ前駆体及びEpi−cure 3234をジッパーでロックされたPEバッグに加えることにより調製され、80℃のホットプレート上で暖められ、ハンドローラーで混合された。混合された試料をPEバッグからPTFEシート上に絞り出し、加重PTFE小片で覆ってフラットな硬化供試体を形成した。硬化は、オーブン中、ホットプレート上又は加熱した熱盤を有するCarverプレス中のいずれかで行った。硬化した導電性エポキシの小片を切り出し、対向する表面をサンドペーパーで磨き、Ag塗料でコートした。抵抗をDMM(デジタルマルチメーター)により測定した。
【0150】
硬化温度の効果の可能性を調査するために、試料6とEpi−cure 3234との試料を約60℃まで加熱し、ローラーにより混合し、次いで3部分、すなわち1つは室温硬化(6−RT)、1つはホットプレート上で80℃(6−HP)、3番目はCarverプレス中で116℃(6−CP)に分割した。室温試料6−RTは、非常に脆く、その抵抗は、DMM(限界2E7ohm)で測定範囲外であった。別の実験では、別の6−RT試料を3連ロールミルの最初の2連のロールから調製した。得られた試料も非常に脆く、その抵抗は、DMMで測定範囲外であった。Ag塗料を使用したが、接触抵抗が問題であったかもしれない。
【0151】
抵抗率の実験に関するデータを以下に要約する。
【表12】


CNT%は、硬化剤添加の前に計算した。EPON 828のWPEは188であり、計算用に使用されたEPON 1009FのWPEは3000であった。
【0152】
上記の例により、ESDレベルの導電率を有する硬化エポキシは、導電性エポキシ前駆体を希釈剤により負荷レベル〜1〜4%まで緩和することにより得ることができることが確認された。
【0153】
用いられた用語及び表現は、説明の用語として使用されるものであり、限定の用語として使用されるものではなく、かかる用語又は表現の使用においてその一部分として示され、説明された特徴の如何なる等価物をも排除する意図はなく、本発明の範囲内において様々な改変形態が可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が15ポアズを超える第1熱硬化性樹脂前駆体を用意するステップと、
押出しにより前記第1熱硬化性樹脂前駆体中にカーボンナノチューブを分散させて導電性熱硬化性樹脂前駆体を形成するステップとを含み、前記カーボンナノチューブが1ミクロン未満の直径を有する、導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項2】
前記第1熱硬化性樹脂前駆体が、エポキシ前駆体、フェノール前駆体、ポリイミド前駆体、ウレタン前駆体、ポリエステル前駆体、ビニルエステル前駆体又はシリコーン前駆体である、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項3】
前記第1熱硬化性樹脂前駆体が、ビスフェノールA誘導体である、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項4】
前記第1熱硬化性樹脂前駆体中のエポキシド当りの重量が、600から4000グラム前駆体/グラム当量エポキシドまでの範囲にある、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項5】
前記第1熱硬化性樹脂前駆体の粘度が、20から600ポアズまでの範囲にある、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項6】
前記第1熱硬化性樹脂前駆体の融点が、30と350℃の間にある、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブが、直径5ナノメートル未満の単層カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが凝集体の形をとり、前記凝集体が、鳥の巣、綿菓子、コーマ糸又はオープンネットに似た巨視的形態を有する、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項9】
前記押出し加工が、共回転又は逆回転2軸スクリュー押出機の使用を含む、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブの濃度が、0.5から30重量%までの範囲にある、請求項1に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体の調製方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法により導電性熱硬化性樹脂前駆体を調製するステップと、
前記導電性熱硬化性樹脂前駆体を少なくとも1種の第2熱硬化性樹脂前駆体と反応させて導電性熱硬化性樹脂を形成するステップとを含み、
前記第1熱硬化性樹脂前駆体の粘度が、15ポアズを超え、
前記第2熱硬化性樹脂前駆体の粘度が、前記第1熱硬化性樹脂前駆体よりも低く、
前記カーボンナノチューブの直径が1ミクロン未満である、
カーボンナノチューブを含む導電性熱硬化性樹脂の調製方法。
【請求項12】
粘度が15ポアズを超える熱硬化性樹脂前駆体と、
直径が1ミクロン未満であるカーボンナノチューブとを含み、
前記カーボンナノチューブが、0.5から30重量%までの濃度で存在する、導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂前駆体が、エポキシ前駆体、フェノール前駆体、ポリイミド前駆体、ウレタン前駆体、ポリエステル前駆体、ビニルエステル前駆体又はシリコーン前駆体である、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂前駆体が、ビスフェノールA誘導体である、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項15】
前記熱硬化性樹脂前駆体中のエポキシド当りの重量が、600から4000グラム前駆体/グラム当量エポキシドまでの範囲にある、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項16】
前記熱硬化性樹脂前駆体の粘度が、20から600ポアズまでの範囲にある、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項17】
前記熱硬化性樹脂前駆体の融点が、30と350℃の間にある、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項18】
前記カーボンナノチューブが、直径5ナノメートル未満の単層カーボンナノチューブを含む、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項19】
前記カーボンナノチューブが凝集体の形をとり、前記凝集体が、鳥の巣、綿菓子、コーマ糸又はオープンネットに似た巨視的形態を有する、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項20】
前記カーボンナノチューブを押出しにより前記熱硬化性樹脂前駆体中に分散させた、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項21】
前記カーボンナノチューブを、共回転又は逆回転2軸スクリュー押出機を使用して前記熱硬化性樹脂前駆体中に分散させた、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項22】
前記熱硬化性樹脂前駆体が室温において固体でない、請求項12に記載の導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項23】
請求項1に記載の方法により形成された、導電性熱硬化性樹脂前駆体。
【請求項24】
請求項11に記載の方法により形成された、導電性熱硬化性樹脂。
【請求項25】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ、ポリイミド、フェノール、ウレタン、ポリエステル、ビニルエステル又はシリコーン重合体である、請求項24に記載の導電性熱硬化性樹脂。
【請求項26】
前記カーボンナノチューブが、直径5ナノメートル未満の単層カーボンナノチューブを含む、請求項24に記載の導電性熱硬化性樹脂。
【請求項27】
前記カーボンナノチューブが凝集体の形をとり、前記凝集体が、鳥の巣、綿菓子、コーマ糸又はオープンネットに似た巨視的形態を有する、請求項24に記載の導電性熱硬化性樹脂。
【請求項28】
抵抗率が、1011ohm−cm未満である、請求項24に記載の導電性熱硬化性樹脂。

【公表番号】特表2008−511741(P2008−511741A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530327(P2007−530327)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/031041
【国際公開番号】WO2006/026691
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(593169485)ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】