説明

押出可能なPVC組成物

本発明は、少なくとも一種の多糖エステル、好ましくは、式I[式中、「A」は、水素であり、または構造I(式中、「R」は、約8〜約40個の炭素原子を有する脂肪族部分または芳香族部分である)の構造を有する]による多糖エステルであって、式Iの少なくとも一種の「A」部分が、構造Iを有する部分である多糖エステルを含む押出可能な樹脂含有組成物を提供する。また、押出方法および本組成物に基づく押出製品も提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願へのクロス・リファレンス
本出願は、本明細書中に援用される2003年2月6日出願の米国仮出願第60/445,492号の優先権に基づき且つこれを請求する。
【0002】
発明の背景
ポリ塩化ビニル(PVC)のような熱可塑性材料の押出は、概して、押出可能な混合物を、それが塑性流れを起こしうる温度に加熱し、そしてその後、それを、一種またはそれより多いオリフィス開口部を含有するプレート(時々、ダイと称される)を介して押し込んで、出てきた押出物に異形材形状を与えることを必要とする。次に、その押出物を、異形材形状を保持するのに充分に硬質になるまで冷却する。
【0003】
概して、押出供給原料組成物は、PVC樹脂のような熱可塑性ポリマーを、滑材のような一種またはそれより多いアジュバントと混合することによって製造する。例えば、押出可能なPVC組成物は、本明細書中に各々援用される、Handbook of Plastic Material and Technology, Ed.I.Rubin, Wiley-Interscience, John Wiley & Sons, Inc. New York, 1990 および Plastics Additives and Modifiers Handbook, Ed.J.Edenbaum, Van Nostrand Reinhold, New York 1992, Chapter 3 に記載されている。追加の成分の例には、充填剤、例えば、炭酸カルシウム;加工助剤、例えば、アクリルコポリマー;および押出工程中の組成物に熱安定性を与える安定剤、例えば、Rohm & Haas 製のTM281(登録商標)などのスズ基材安定剤が含まれる。次に、一般的には、組成物を「溶融」させる、すなわち、それが、実質的に均一であるプラスチック組成物を形成するまで、加熱およびブレンディングを行う。種々の添加剤および用いられる添加剤の量は、溶融工程中も、それが「溶融」された後も、押出可能な組成物の特性に影響する。組成物のそれら特性は、順次、押出中の、または押し出された材料が用いられる後続工程中の材料の加工性などの性能に影響する。典型的な押出可能PVC組成物を構成している種々の成分の内、組成物中に包含される滑剤は、加工性に関連した一種またはそれより多い特性に、更には、押出品の品質に重要な影響を及ぼすことがありうる。熱可塑性プラスチック押出品の特性および性能の標準規格は、例えば、PVC羽目についてのASTM Standard D3679−03e2およびPVCパイプについてのD1785−03、更には、窓およびドア用の耐衝撃性PVC異形材についてのDIN Standard 16830−3が周知である。
【0004】
寸法安定性は、押出製品の商業的価値に、したがって、押出製品を製造するのに用いられる方法および成分の商業的価値に影響する重要な特性である。寸法安定性は、押し出された形状が、押出装置のダイからそれが出てきた後の凝固中に膨張する量を観測することによって評価される。その膨張量は、時々、ダイスエルと称される。
【0005】
ある与えられた押出可能な組成物について、材料が押し出される量を増加させることは、概して可能である。しかしながら、このような押出量増加は、実用限界を有する。例えば、押出量増加を得ることは、押出機をより高温でおよび/またはより高いヘッド圧力で操作することによって可能である。しかしながら、増加する押出機温度のある点において、押出可能な組成物は、概して、スコーチし始めるであろうし、そして押出物の表面および構造の品質は、下落し始めるであろう。更に、ヘッド圧力および押出機トルクが増加するにつれて、概して、押し出された材料の寸法安定性および/または表面状態が許容し得ない点に達する。これら工程限界は、従来の組成物が押し出されうる量について実用限界を生じた。
【0006】
より多い押出量を達成するのに少なくとも理論的に利用可能である別の機構は、押出可能な組成物中に取り込まれる滑剤の量および/またはタイプを増加させることである。しかしながら、滑剤の量を増加させることまたは滑剤タイプを変更することは、押出製品におよび/または押出法の他の側面に有害作用を有することがありうるということも考えられる。例えば、内部滑剤として知られるある種の滑剤の量を増加させることは、押出品の引張強さの減少のような、押出品の一種またはそれより多い固有の物理的性質に影響するかもしれない。更に、外部滑剤の増加量は、押出物の強度にマイナスの影響を与えることがありうるのみならず、溶融時間を増加させることもあり、それが、全工程時間を増加させる。
【0007】
したがって、出願人は、押出可能な組成物、具体的には、高レベルの滑剤に関連した一種またはそれより多い望ましい押出特性を有すると同時に、それ以外に、高レベルの滑剤に関連すると考えられる一種またはそれより多い有害作用を減少させるまたは実質的に排除する押出可能なPVC基材組成物への要求を理解するに至った。本方法および押出可能な組成物は、この要求および他の要求を満たす。
【0008】
発明の要旨
本発明の一つの側面は、押出可能な組成物、より好ましくは、ポリ塩化ビニルのような熱可塑性ポリマーと、少なくとも一種の多糖エステル、好ましくは、ジ多糖エステル、更により好ましくは、スクロースエステルを含む押出可能な組成物を提供する。出願人は、このような組成物が、きわめて望ましいが得るのは難しい特性組合せを示すことができるということを発見した。例えば、若干の好ましい態様において、本押出可能な組成物は、望ましく低い内部粘度数値、および/またはその組成物の押出特性に概して好都合であるおよび/または望ましい他の特性を示すことができるし、同時に、比較的高い引張強さおよび/または比較的高い寸法安定性などの望ましい特性を有する固体へと押出可能である。
【0009】
本発明の別の側面は、熱可塑性組成物、好ましくは、ポリ塩化ビニル基材組成物を押出する方法を伴う。その方法は、好ましくは、
(a)少なくとも一種の熱可塑性ポリマーおよび少なくとも一種の多糖エステル、好ましくは、スクロースエステルを含む押出可能な熱可塑性素材を提供し;そして
(b)その押出可能な素材を押し出して、造形品を成形すること
を含む。多糖エステルは、好ましくは、その組成物中に、押出可能な素材の押出適性を、多糖エステルの不存在下における押出可能な素材の押出適性に比べて、好ましくは、少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%改善するのに有効な量で存在する。押出可能な素材の押出適性は、以下に詳細に記載されるように、押出可能な素材のいくつかの特性のいずれか一つによって測定することができる。
【0010】
本発明の別の側面により、造形品を、本発明の押出可能な組成物および/または押出法に基づいて提供するおよび/またはを用いて成形する。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、熱可塑性ポリマーの押出に関連して最大の適用性を有するであろうということが考えられるが、他の押出可能な組成物への適用性も有するであろうと考えられる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような、厳密には熱可塑性でないポリマーのラム押出は、本発明によって有益に影響されることがありうる。したがって、「押出可能な組成物」という用語は、本明細書中において、熱可塑性を有するポリマーを含有する組成物を意味するのみならず、既知の技法によって容易に押出可能である、またはそれ以外に、押出法に関して熱可塑性ポリマーに類似した挙動を示すポリマーを意味するのにも用いられる。このような押出可能なポリマーは、熱可塑性であれそれ以外であれ、本明細書中において便宜上、時々、樹脂と称される。
【0011】
方法
本発明は、一つの側面において、押出可能な組成物から造形品を成形する方法に関する。概して、最初の工程は、本発明による押出可能な組成物を提供することである。本発明の押出可能な組成物は、当該技術分野において知られているいずれの手段によっても提供することができると考えられるが、概して、押出可能な組成物は、少なくとも、樹脂および本発明の多糖エステルを、押出可能な組成物を形成するのに有効な条件下で混合することによって形成されるのが好適である。当該技術分野において知られているように、押出可能な組成物の要件は、特に、用いられている装置および所望の押出物特性に依存して広く異なるが、全てのこのような押出可能な組成物は、本発明の範囲内である。概して、これら条件には、混合樹脂、多糖エステル、および存在していてよい一種またはそれより多い他の成分を混合することが含まれる。好ましくは、ブレンディング工程は、組成物内に剪断熱を生じるが、その剪断および熱の組合せは、組成物の個々の粒子を軟化させ且つ溶融させて、実質的に均一な素材を生じる。溶融する点(融点)において、組成物中の個々の粒状物の一体性は、好ましくは、実質的に失われる。
【0012】
このような加熱およびブレンディングを既知の標準的な試験条件下で行う場合、融点に達するのに必要なブレンド時間は、「溶融時間」と称される。概して、融点において、組成物の粘度は最大値であるが、ほぼこの同じ点において、素材をブレンドするのに必要なトルクが最大値であろう。そのトルク最大値は、溶融粘度に関係し、溶融トルクとして報告される。継続したブレンディングで、組成物の粘度および組成物をブレンドするのに必要なトルクは、比較的定常状態条件へと減少するであろうと考えられる。その定常状態数値は、平衡粘度と称され、この点における組成物の温度は、平衡温度と称され、そしてこの点において組成物をブレンドするのに必要なトルクは、平衡トルクと称される。更に継続したブレンディングで、組成物は架橋し始めると考えられ、そして組成物の粘度は上昇し始め、したがって、ブレンドトルクは上昇し始めると考えられる。融点と、架橋による測定可能な粘度上昇の開始との間の経過時間は、安定時間と称される。
【0013】
次に、本発明の方法は、提供された押出可能な組成物を押し出して、造形品を成形することを必要とする。好ましくは、その押出工程には、本発明の押出可能な組成物を、それが塑性流れを起こしうる温度にすることが含まれる。好適な態様において、これは、押出可能な組成物を加熱し、そしてその押出可能な組成物を、一種またはそれより多い開口部を含有するダイを介して押し込んで、出てきた押出物に異形材形状を与えることを含む。
【0014】
本方法、および押出適性を測定するのに用いることができる技法の一つの重要な特性は、ダイを介して本組成物を押し込むのに必要とされる力の量に関する。概して、本方法によってダイを介して押出可能な組成物を押し込む工程は、好都合には、本発明によって生じることができるものに匹敵する品質の押出物を生じることができる他の方法と比較して、比較的少ない量の力を必要とする。好ましくは、多糖エステルは、その組成物中に、ダイを介して押出可能な素材を押し込むのに必要な力を、多糖エステルの不存在を除いて実質的に同じである全ての他の条件でダイを介して押出可能な素材を押し込むのに必要な力に比べて少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%減少させるのに有効な量で存在する。
【0015】
出願人は、いずれか特定の操作理論でまたはそれに拘束されるつもりはないが、本発明の好適な押出可能な組成物中の多糖エステルの存在は、内部および外部双方の滑剤の利益を与えると同時に、内部および外部滑剤にこれまでしばしば関連した有害作用を免れると考えられる。「内部滑剤」は、組成物に粘性を与える凝集力を減少させることにより、組成物の加工性に作用すると考えられる。これら力を低下させることにより、組成物の大部分の素材を構成するポリマー分子は、圧力を加えられた場合、互いに一層容易に簡単に「滑り」去ることができると考えられる。この方式で、本発明の多糖エステルは、好ましくは、押出適性の別の尺度である押出可能な組成物の見掛粘度の減少を生じる。したがって、若干の態様において、多糖エステルは、その組成物中に、組成物の見掛粘度を、多糖エステルの存在を除いて実質的に同じである全ての他の条件での組成物の見掛粘度に比べて少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%減少させるのに有効な量で存在する。
【0016】
本発明の好適な押出可能な組成物は、その組成物に塑性流れを与えるのに、比較的に一層少ない力を必要とする。本発明の方法は、したがって、押出法を駆動するのに必要とされる比較的低いヘッド圧力および比較的低いトルクを用いた押出工程を提供することができるが、それらは各々、素材の押出適性を測定することができる特性でもある。若干の態様において、多糖エステルは、好ましくは、その組成物中に、ヘッド圧力を、多糖エステルの存在を除いて実質的に同じである全ての他の条件で必要とされるヘッド圧力に比べて少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%減少させるのに有効な量で存在する。更に、若干の態様において、多糖エステルは、その組成物中に、押出トルクを、多糖エステルの存在を除いて実質的に同じである全ての他の条件で必要とされる押出トルクに比べて少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%減少させるのに有効な量で存在するのが好適である。
【0017】
本発明の好適な方法は、したがって、大きく改善された寸法安定性を有する押出製品を生じることができる。好ましくは、多糖エステルは、その組成物中に、押出製品の寸法安定性を、多糖エステルの存在を除いて実質的に同じである全ての他の条件での押出製品の寸法安定性に比べて少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%増加させるのに有効な量で存在する。もう一度、出願人は、いずれか特定の理論でまたはそれに拘束されるつもりはないが、本発明の押出可能な素材に塑性流れを与えるには、熱および/または圧力の形であろうとなかろうと、より少ないエネルギーしか必要とされないので、本発明の組成物および方法は、この望ましい結果を達成することができると考えられる。重要なことに、本発明の好適な態様は、改善された押出適性の指標である押出エネルギーのこの好都合な減少を、押出製品において、寸法安定性の実質的な犠牲または低下を全く伴うことなく、そして更に、好ましくは、引張強さの実質的な減少を全く伴うことなく達成する。寸法安定性は、押し出された形状が、ダイからそれが出てきた後の凝固中に膨張する量を観測することによって評価される。このような膨張は、時々、ダイスエルと称される。本発明の好適な方法によって、比較的低い押出温度を用いることができるので、押し出された材料は、ダイを離れた後、一層速やかに凝固する。更に、本発明の好適な方法によって、比較的低い押出圧力を用いることができ、それによって、出てきた押出物内の残留弾力の低下を生じる。ダイから出てきた時の材料の膨張によって消費されるにちがいないエネルギー量の減少は、ダイスエルの望ましい減少として現れると考えられる。
【0018】
いずれか特定の理論でまたはそれに拘束されることなく、本発明の多糖エステルは、更に、組成物と、組成物に接触している表面との界面において、例えば、ダイと押出可能な組成物との間の接触点において、外部滑剤として作用すると考えられる。これは、順次、導管またはオリフィスを介する流れ抵抗を克服するのに必要な力を減少させ、そして更に、押出品の表面の平滑性の増加のような、押出物の表面の品質を有益に改善する。押出物表面の品質は、典型的には、その反射能(光沢)を測定することによって評価される。光沢の測定は、例えば、ASTM標準規格D−2523−95およびD2457−97が知られている。好ましくは、多糖エステルは、その組成物中に、押出製品の光沢を、多糖エステルの存在を除いて実質的に同じである全ての他の条件での押出製品の寸法安定性に比べて少なくとも約10%、より好ましくは、少なくとも約20%、更により好ましくは、少なくとも約30%増加させるのに有効な量で存在する。
【0019】
押出物は、オリフィス開口部を出ると、好ましくは、冷却されて、ダイによって与えられる基本的形状を有する比較的硬質の製品を生じる。その造形された押出物は、どれかその押し出された形で、例えば、装飾用成形品として、フェンス用部材として、建築用羽目として、パイプとして、電線管として、窓用部材として、ドア用三方枠として、幅木として、雨押えおよび類似の製品として用いることができるが、本方法によってまたは本組成物を用いて製造される全てのこのような製品は、本発明の範囲内である。その押出物は、更に、後続工程で用いるために、例えば、射出成形法または吹込成形法のための供給原料として、好都合な長さ部品に切断し且つ包装することができる。
【0020】
したがって、好ましい態様における本方法は、少なくとも一種のポリ塩化ビニル樹脂と多糖エステルを、多糖エステルの不存在下である以外は同じ組成物の特性に比べて、押出適性の少なくとも一種の尺度および/または押出物品質の尺度を改善するのに有効な量で含む押出可能な組成物を提供することを含む。好ましくは、本発明の方法は、押出性能の少なくとも一種の尺度におよび押出物品質の一つの尺度に改善を生じる。より詳しくは、本方法は、好ましくは、次の一種またはそれより多い押出適性判定基準、すなわち、押出トルク;ヘッド圧力;および加工安定性に、改善された性能を示す。本方法は、更に好ましくは、次の一種またはそれより多い特性、すなわち、表面光沢;寸法安定性;および引張強さに改善を示す押出品を生じる。
【0021】
組成物
本発明は、押出可能な組成物、押出可能な組成物の配合に有用な添加剤組成物、および本発明の押出可能な組成物より形成される押出組成物を提供する。
【0022】
押出可能な組成物
本発明の好適な組成物は、改善された溶融トルク、平衡トルク、溶融時間、平衡温度および加工安定性(動的熱安定性)を示す。上述のように、これら特性は、概して、押出法の特性の改善をもたらすであろう。言い換えると、本発明者は、押出可能な組成物、好ましくは、PVCを含む組成物中への多糖エステル、好ましくは、スクロースエステルの包含が、多糖エステルの欠如を除いて実質的に同じである組成物と比較して、より大きい動的熱安定性、より低いヘッド圧力、より低い溶融トルク、より低い見掛粘度、そしてそれから製造される押出製品に関しては、改善された寸法安定性および改善された表面光沢を示す組成物を提供することができるということを発見した。
【0023】
樹脂および多糖エステルに加えて、本組成物は、耐衝撃性改良剤、充填剤、熱安定剤、加工助剤、他の滑剤、充填剤、結合剤、着色剤、および他の加工助剤、例えば、Handbook of Plastic Material and Technology, Ed.I.Rubin, Wiley-Interscience, John Wiley & Sons, Inc. New York, 1990 に記載のものおよび Plastics Additives and Modifiers Handbook, Ed.J.Edenbaum, Van Nostrand Reinhold, New York 1992, Chapter 3 に記載のものを包含していてもよい。
【0024】
多糖エステル
モノサッカライドおよびジサッカライドを含めた全てのサッカライドのエステルは、本発明に関連して用いるのに適合しうると考えられる。好適な態様において、多糖エステルは、ジ多糖エステル、より好ましくは、脂肪酸の多糖エステル、更により好ましくは、脂肪酸のジ多糖エステルから本質的に成るまたはそれらを含む。好ましくは、それら脂肪酸エステルは、サッカライド、好ましくは、スクロースを、ダイズ油、商用ベヘン酸および商用ステアリン酸(以下、それぞれ、スクロース「ソイエート」、スクロース「ベヘネート」およびスクロース「ステアレート」)およびそれらの混合物から成る群より得られる一種またはそれより多い脂肪酸部分でエステル化することによって合成される。ステアレートエステルは、ソイエートエステルを水素化することによって合成することができる。好ましくは、好適なサッカライドのエステルは、一種またはそれより多いヒドロキシル水素のところにエステル部分で置換されたサッカライド部分、好ましくは、スクロース部分を含む。好適なジ多糖エステルは、次の式Iの構造を有する。
【0025】
【化1】

【0026】
式中、「A」は、水素であり、または下の構造I
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、「R」は、約8〜約40個の炭素原子を有する直鎖、分岐状または環状の飽和または不飽和の脂肪族または芳香族部分である)
を有し、その際、式Iの少なくとも一種の「A」〜全8個までの「A」部分は、構造Iにしたがう。
【0029】
適する「R」基には、脂肪族部分のいずれかの形であって、その部分のいずれかの炭素上にあってよい一種またはそれより多い置換基を含有するものを含めた形が含まれる。更に含まれるのは、その部分内に官能基、例えば、エーテル、エステル、チオ、アミノまたは類似のものを包含する脂肪族部分である。更に含まれるのは、オリゴマーおよびポリマーの脂肪族部分、例えば、ソルビタン部分、ポリソルビタン部分およびポリアルコール部分である。「R」基を構成する脂肪族または芳香族部分に付いていてよい官能基の例には、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、エーテルおよびエステルの官能基が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0030】
概して、好適なジ多糖エステルは、図Iによるスクロースエステルであり、ここにおいて、「R」基は、脂肪族であり、直鎖または分岐状の飽和または不飽和であり、約8個〜約40個の炭素原子を有する。
【0031】
最も好適なのは、カルボキシル基が、約8〜約25個の炭素原子を有する脂肪酸、例えば、ステアリン酸(CH(CH16C(O)OH)、ベヘン酸(ドコサン酸、(CH(CH20C(O)OH))、およびダイズ油から誘導される脂肪酸から誘導される多糖エステル、好ましくは、スクロースエステルであるが、最後の組成物は、下に一層充分に記載されている。
【0032】
本明細書中で用いられる「多糖エステル」および「スクロースエステル」という用語は、異なった純度を有する組成物、更には、いずれかの純度レベルを有する化合物の混合物を包含する。例えば、スクロースエステル化合物は、実質的な純粋な物質でありうる、すなわち、それは、一つの種だけの構造I部分で置換されたある多数の「A」基を有する化合物を含むことができる(すなわち、全ての「R」基が同じであり、全てのスクロース部分が、同程度に置換されている)。それは、更に、置換度は異なるが、全ての置換基が同じ「R」基構造を有している二つまたはそれより多いスクロースエステル化合物のブレンドを含む組成物を包含する。それは、更に、異なった「A」基置換度を有していて、その際、「R」基置換基部分が、構造Iの二つまたはそれより多い「R」基より独立して選択される化合物の混合物である組成物を包含する。
【0033】
本発明の組成物について、実質的に純粋な化合物を用いる場合、その組成物は、好ましくは、高い置換度を有する多糖エステル化合物、更により好ましくは、スクロースエステル化合物を含んで成るであろう。好ましくは、多糖エステルを含む70重量%を超える質量は、エステル基で完全に置換される部分を含むであろう。
【0034】
概して、式IのA位置におけるR基での置換度は、組成物に与えられた特性に強く影響するであろうと考えられる。すなわち、構造IIの部分で置き換えられた「A」位置におけるプロトン数(1〜8)は、滑性などの組成物の一種またはそれより多い特性に重要であると考えられる。概して、ある一定質量の追加の多糖エステルによって押出可能PVC組成物に与えられる性能改善は、質量増加を含む完全に置換されたスクロースエステルの重量百分率として増加するであろう。
【0035】
本発明の組成物中での使用について、完全に置換されているジ多糖エステル、好ましくは、スクロースエステル、正確には、本明細書中において便宜上、時々、「八置換」スクロースエステルとも称される、スクロース部分に付いた8個のエステル基を有するスクロースエステルを用いることは、好適である。本発明者は、スクロースエステルが押出可能なPVC組成物に与える有益な作用が、組成物中に包含されるスクロースエステルの全体量が八置換されている場合に最大になるということを認めた。これは、押出可能な組成物中に存在する樹脂、好ましくは、PVC樹脂の重量部に比べてある一定重量部のスクロースエステルを含む組成物について、組成物の押出特性の改善が、概して、エステル置換度が増加するにつれて増加するということである。更に、本発明者は、完全より少なく置換されたスクロースエステルのある一定重量の純粋なアリコートの添加によって押出可能PVC組成物に与えられる有益な作用は、追加のエステルアリコートが、ますます多く置換されたエステルを含むにつれて、一層完全に置換された種について認められる不均衡に一層大きい増加で、非直線的に増加するということも認めた。押出可能なPVC組成物への有益な作用は、完全に置換された(八置換された)スクロースエステルの純粋なアリコートを用いる場合に最大になる。
【0036】
スクロースエステル化合物の混合物を用いる場合、その混合物中の約50重量%を超えるエステル化合物は、完全に置換されたジ多糖エステルである、すなわち、ジサッカライド部分の8個の「A」基は全て、構造Iの部分を含む構造を有することが好適である。本発明の組成物において、ジ多糖エステル、好ましくは、スクロースエステルの成分は、約70重量%を超える完全に置換されたエステル部分を含むのが好適である。
【0037】
本発明の押出可能なPVC組成物中に包含するためのスクロースエステルを選択する場合に考慮されるべき因子には、置換基部分の「R」基の長さおよび飽和度が含まれる。考慮されうる追加の因子には、組成物中に存在してよい他の滑剤とのスクロースエステルの適合性、および押出可能なPVC組成物を作るのに用いられる加工条件とのスクロースエステルの物理的形態の適合性が含まれる。例えば、周囲条件下において液体よりもむしろ固体であるスクロースエステルを処理することが、一層好都合でありうる。
【0038】
多糖エステルは、既知のエステル化法による実質的に純粋な脂肪酸(例えば、スクロースステアレートを生じるステアリン酸)でのエステル化によって製造することができる。それらは、例えば、天然源、例えば、脂肪種子から抽出される油、例えば、ダイズ油中に見出されるものから誘導される脂肪酸グリセリドの形の脂肪酸エステルおよびサッカライドを用いたエステル交換によって製造することもできる。脂肪酸グリセリドを用いてスクロースエステルを提供するエステル交換反応は、例えば、Trout et al. による米国特許第6,504,003号および Kenneally et al. による第6,121,440号に記載されている。Trout 特許において、実施例1は、78重量%の生成物エステルがオクチル置換された(完全に置換された)エステルであって、その生成物の残余が、一置換、二置換、三置換、四置換、五置換、六置換および七置換されたスクロースエステルの分布を含んでいるスクロースエステルを提供するエステル交換反応を記載している。
【0039】
上述のように、スクロースエステルは、天然源から誘導されるグリセリドから製造されたメチルエステル供給原料からスクロースのエステル交換によって製造することができる。脂肪酸源の帰結として、スクロースエステルを製造するのに用いられる供給原料は、12〜26個の炭素原子を含有する脂肪酸部分を有する一定範囲の飽和および不飽和の脂肪酸メチルエステルを含有する。これは、生成物を構成しているスクロース部分が、エステル部分置換基の混合物を含有するであろうという点で、このような源から作られる生成物スクロースエステルに反映されるであろうが、ここにおいて、上の構造Iに関して、「R」基は、スクロースエステルを製造するのに用いられた供給原料を反映する比率で、12〜26個の炭素原子を有する混合物であろう。更に、この点を詳しく説明すると、ダイズ油から誘導されるスクロースエステルは、本明細書中に援用される Seventh Ed. Of the Merck Index に記載のように、ダイズ油が、26重量%のオレイン酸(HC−[CH−CH=CH−[CHC(O)OH)のトリグリセリド、49重量%のリノレン酸(HC−[CH−[−CH−CH=CH]−[−CH−]−C(O)OH)のトリグリセリド、11重量%のリノレン酸(HC−[−CH−CH=CH−]−[−CH−]−C(O)OH)のトリグリセリドおよび14重量%の種々の飽和脂肪酸のトリグリセリドを含んでいることを反映する「R」基構造を有する種の混合物であろう。これら脂肪酸部分の全てが、生成物スクロースエステル中の置換基の「R」基に示される。したがって、天然源から誘導される脂肪酸供給原料を用いた反応の生成物として本明細書中でスクロースエステル、例えば、スクロースソイエート、スクロースベヘネートおよびスクロースステアレートを論じる場合、その用語は、スクロース脂肪酸エステルが製造される源の帰結として典型的に見出される種々の成分を全て包含することを意味する。
【0040】
本開発の方法および組成物中での使用について、好適なスクロースエステルは、ダイズ油から得られる脂肪酸グリセリドとのスクロースのエステル交換によって、または天然源からのベヘン酸かまたはステアリン酸およびそれらの混合物から誘導されるエステルまたはグリセリドとのエステル交換によって合成されたものである。このようなスクロースエステルを、本明細書中において、それぞれ、スクロース「ソイエート」、スクロース「ベヘネート」およびスクロース「ステアレート」と称する。
【0041】
本発明の組成物中での使用について、ステアレートでエステル化されたスクロースエステルまたは水素化ソイエート部分、例えば、スクロースステアレートは、特に好適である。商業的に入手可能なステアリン酸は、本明細書中において「ステアリル」基と称される酸の脂肪族部分に12〜18個の炭素原子を有する飽和および不飽和の直鎖脂肪酸種の混合物であるということは理解されるであろう。
【0042】
更に、他のサッカライドおよび多官能価アルコールは、上記のスクロースエステルによって与えられる脂肪酸部分の体積密度を与えるエステル滑剤を与えるようにエステル化することができるということが理解されるであろう。これらエステルの例は、本明細書中に援用される、Trout et al. による米国特許第6,504,003号および Kenneally et al. による第6,121,440号に記載されたポリエステルである。上記の組成物中の若干のまたは全てのスクロースエステルの、上述のポリエステル滑剤での置換は、上記のポリエステルまたは多糖エステルのいずれかを包含していない押出可能なPVC組成物にまさって同様に改善された動的加工改善を有する組成物を与えるであろうと考えられる。
【0043】
本発明の組成物中の多糖エステルの量は、加工パラメーターの所望の改善レベルおよび/または押出可能なPVC組成物の望まれる具体的な特性を含めた多数の因子に依存して広範囲に異なることがありうる。好適な態様において、本組成物は、組成物中の100重量部の樹脂につき(以下、「100重量部の樹脂につき」を、PHRと略記する)約0.01〜約2重量部の多糖エステル、好ましくは、スクロースエステルを含む。他の態様において、組成物は、約0.05PHR〜約0.9PHRの多糖エステル、好ましくは、スクロースエステル、より好ましくは、約0.1PHR〜約0.8PHR、更により好ましくは、約0.1PHR〜約0.4PHRを含有することが好ましい。
【0044】
樹脂
本発明の組成物には、熱可塑性を示すまたはそれ以外には押出可能である一つまたは複数の熱可塑性樹脂が含まれてよい。したがって、ポリカーボネート、ABSプラスチックおよび高エンジニアリングプラスチックなどの樹脂を用いることができると考えられる。しかしながら、概して、本組成物の樹脂は、ビニル基材樹脂、すなわち、出発構造単位としてビニル基(CH=CH)を共有する一種またはそれより多いポリマー(ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等を含めた)を含む、好ましくは、本質的にそれから成るということが好適である。特に好適なのは、ポリ塩化ビニル(PVC)、具体的には、懸濁、分散、エマルジョンまたは塊状のPVC樹脂であり、懸濁および塊状のPVC樹脂が好適である。好適な態様において、本発明のPVC樹脂は、約50〜約70、更により好ましくは、約55〜約65の Filentscher K値を有する。
【0045】
添加剤
上述のように、本発明の押出可能な組成物は、熱安定性を有する添加剤を含めた且つ内部および外部の滑性を有するものも含めた、上記のような押出可能な組成物、好ましくは、PVC樹脂中に典型的に包含される他の添加剤を包含していてもよい。本明細書中では、これらを、滑性および熱安定性をも有する本発明の多糖エステルと区別して、「補足的」と称する。したがって、用いられる多糖エステルの量は、既知の原理にしたがって、組成物中の補足的な滑剤、安定剤等の量によって調整することができる。
【0046】
本発明の押出可能な組成物は、固体または半固体の材料を、他の固体、半固体または液体の材料とブレンドするいずれか既知の手段によって製造することができる。手動の実験室用卓上規模の、例えば、取っ手付き電動式ミキサーおよび容器から、電動式工業規模加工装置までの規模でのいずれかのタイプの混合用またはブレンド用装置を用いることができる。後者のタイプの装置の例には、Henschel ミキサーおよびリボンブレンダーが含まれる。
【0047】
好都合には、押出可能な組成物は、秤量された一定量の樹脂、好ましくは、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)をブレンド用装置中に入れ、順次に、所望の補足的添加剤成分、例えば、安定剤、充填剤、加工助剤、着色剤および顔料、および組成物中に望まれる他の成分を加え、そして上記のような素材に、組成物に加えられる100重量部のPVC樹脂につき更に約0.01〜約2重量部に相当する量の一種またはそれより多いスクロースエステルを加えることによって製造することができる。したがって、組成物中に含有される100重量部のPVC樹脂(PHR)について、組成物は、更に、一種またはそれより多いスクロースエステルを含む約0.01〜約2重量部の素材を含有するであろう。
【0048】
添加剤組成物
本発明は、添加剤組成物も提供する。一つの態様において、本発明の添加剤組成物は、押出可能な樹脂、好ましくは、PVC樹脂を、場合により、他の添加剤と一緒に含む組成物に加えられて、本明細書中に定義のように改善された加工および/または押出物の特性を有する押出可能な組成物を提供するように配合される。
【0049】
概して、添加剤組成物は、押出可能な組成物中での使用について上に記載されたいずれかの添加剤を含むことができる。補足的な内部および外部滑剤、熱安定剤、および押出可能なPVC組成物の他の成分、および押出可能なPVC組成物中で用いられるこれら補足的添加剤の選択および量を左右する変数は、概して、本明細書中に一部分援用される Plastics Additives and Modifiers Handbook, Ed.J.Edenbaum, Van Nostrand Reinhold, New York 1992 に記載されている。好適な添加剤組成物は、少なくとも一種の多糖エステルと、適合性の補足的滑剤および適合性の補足的熱安定剤から成る群の少なくとも一種のメンバーを含む。
【0050】
例えば、一つの態様において、本発明の添加剤組成物は、押出可能なPVC組成物を構成する全ての成分を、PVC樹脂を除いて含むように配合することができる。このタイプの添加剤組成物は、PVC樹脂のみと混合されることによって押出可能なPVC組成物を提供するように配合される。もう一つ別の態様において、添加剤組成物は、押出可能なPVC組成物に、押出可能な組成物を製造するのに用いられる多数の添加剤成分の一つとして加えられるように配合することができる。後者の態様では、添加剤組成物が、押出可能なPVC組成物の最も一般的な成分の少なくともいくつかを含むことが好適であり、それによって、多数の異なった押出可能PVC組成物中で用いることができる単一の添加剤組成物を提供し、同時に、押出可能なPVC組成物を製造するのに必要な添加工程の数を減少させる。
【0051】
広範な相対比率にわたる広範囲の成分は、本明細書中に含有される内容を考えると、本発明での使用に適合しうるであろうと考えられる。更に、本明細書中に含有される内容は、当業者が、特定の押出可能な組成物添加剤が特定の多糖エステルと適合性であるかどうかを容易に決定することを可能にするであろうと考えられる。
【0052】
本発明の添加剤組成物は、混和性材料、例えば、単一相を形成する二つまたはそれより多い成分の混合物の混合に用いられる技法、および二つまたはそれより多い不混和性または部分不混和性の材料のドメイン分離領域の均質な相互浸透性構造を形成するために相分離材料をブレンドするのに用いられる技法を含めた、固体、半固体または液体の材料を他の固体、半固体または液体の材料と混合するためのいずれか既知の手段によって製造することができる。手動の実験室用卓上規模の、例えば、取っ手付き電動式ミキサーおよび容器から、電動式工業規模加工装置までの規模でのいずれかのタイプの混合用またはブレンド用装置を用いることができる。後者のタイプの装置の例には、Henschel ミキサーおよび温度制御撹拌ブレンドタンクが含まれる。本発明の添加剤組成物を、上記のタイプの押出可能な組成物との混合のための別々の成分として製造することができるということは理解されるであろう。或いは、添加剤組成物の成分は、各々、別々に、それらを最初に一緒にブレンドすることなく、同時にかまたは逐次的に、押出可能なPVC組成物に加えることができる。更に、一連の成分として押出可能なPVC組成物に加える場合、概して、その添加順序は臨界的でないということは理解されるであろう。
【0053】
滑剤を基材とする添加剤組成物の製造での使用に好適である補足的内部滑剤の例には、金属石鹸、例えば、ステアリン酸カルシウム、および内部滑剤であることが知られている脂肪酸エステルワックス、例えば、ジステアリルフタレートが含まれる。滑剤を基材とする添加剤組成物の製造での使用に好適な補足的外部滑剤の例は、炭化水素ロウ、例えば、パラフィンロウ、アミドワックス、例えば、エチレンビス(ステアルアミド)ワックス、ポリエチレンワックス、例えば、A−C(登録商標)6A(Honeywell)および酸化ポリエチレンワックス、例えば、A−C(登録商標)629A(Honeywell)である。好適な態様において、それら添加剤組成物は、多糖エステル、好ましくは、スクロースエステルと、パラフィンロウ滑剤、酸化ポリエチレン滑剤およびこれらの組合せから成る群より選択される補足的滑剤を含む。パラフィン滑剤を含有する添加剤組成物については、若干の態様において、水酸化カルシウムおよび脂肪酸が、組成物中に更に包含されることが好適である。或いは、その組成物は、代わりに、脂肪酸塩の直接添加を包含してよい。
【0054】
一般的には、スクロースエステルおよびロウ滑剤、例えば、Rheolub(登録商標)165 Paraffin Wax(Honeywell)から本質的に成る添加剤組成物。それら組成物は、好ましくは、約1重量%〜約50重量%の多糖エステル、より好ましくは、約5重量%〜約30重量%の多糖エステル、更により好ましくは、約5重量%〜約25重量%の多糖エステルを含み、概して、スクロースエステルが使用に好適である。それら組成物は、好ましくは、約1重量%〜約99重量%のロウ滑剤、より好ましくは、約20重量%〜約85重量%のロウ滑剤、更により好ましくは、約30重量%〜約80重量%のロウ滑剤を含み、概して、パラフィンロウ滑剤が使用に好適である。
【0055】
概して、多糖エステル(好ましくは、スクロースエステル)および酸化ポリエチレン滑剤、例えば、A−C629(登録商標)(Honeywell)から本質的に成る添加剤組成物は、好ましくは、約1重量%〜約99重量%の多糖エステル、より好ましくは、約9重量%〜約56重量%の多糖エステル、および約1重量%〜約75重量%の酸化ポリエチレン滑剤、更により好ましくは、約7重量%〜約45重量%のポリエチレン滑剤を含む。
【0056】
概して、添加剤組成物が、一種またはそれより多いパラフィンロウ滑剤と、一種またはそれより多い酸化ポリエチレン滑剤とのブレンドを含む場合、その組成物は、好ましくは、(a)約5重量%〜約85重量%のスクロースエステル、より好ましくは、約5重量%〜約30重量%、より好ましくは、約7重量%〜約20重量%のスクロースエステル;(b)約10重量%〜約90重量%のパラフィンロウ滑剤、より好ましくは、約30重量%〜約70重量%のパラフィンロウ滑剤;および(c)約5重量%〜約20重量%の酸化ポリエチレン滑剤、より好ましくは、約7重量%〜約15重量%の酸化ポリエチレン滑剤を含む。
【0057】
パラフィンロウ滑剤が、更に別の滑剤を伴ってまたは伴うことなく存在する場合、その添加剤組成物は、場合によるが好ましくは、水酸化カルシウムおよび脂肪酸、例えば、ステアリン酸を包含する。概して、水酸化カルシウム:脂肪酸の重量比は、好ましくは、約1:4〜約1:10、より好ましくは、約1:7〜約1:10、更により好ましくは、約1:9である。好ましくは、組成物中の水酸化カルシウムおよび脂肪酸の組合せの量は、添加剤組成物の残りの成分の重量基準での量の約1.1倍まで、更により好ましくは、組成物の他の成分の組合せの重量の約0.02倍〜約1倍の量である。
【0058】
概して、組成物が、脂肪酸および水酸化カルシウムの成分を含有する場合、その組成物は、好ましくは、液体のロウと脂肪酸を一緒にブレンド後、完成した添加剤組成物がブレンドされるべき押出可能なPVC組成物に望まれる特性に関して技術認定されている変数によって規定のように、脂肪酸の少なくとも一部分が中和される条件下で反応工程を行うことによって製造される。好ましくは、脂肪酸および水酸化カルシウムを包含する添加剤組成物の成分をブレンディング中に達せられる混合条件および温度条件は、水酸化物と酸との間の中和反応が、実質的に完了するまで確実に進行するように調整される。この後、組成物中に包含されるべきいずれかの追加の内部または外部滑剤を、好ましくは、素材中に逐次的に溶融ブレンドし、そして包含されるべきいずれか他の添加剤または加工助剤を加える。次に、その素材を、好ましくは、濾過し、そしてそれを添加剤として用いるのに適する形にする既知の手段、例えば、プリル化、フレーク化、ペースト化およびスラブ化によって処理する。
【0059】
上記のように、水酸化カルシウムおよび脂肪酸を添加剤組成物に加える代わりに、脂肪酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウムをその組成物に、典型的には、組成物中の他の成分の組合せの重量の重量基準で約1.1倍までの量で加えることができる。一層多量の脂肪酸塩は、既知の変数に依存して加えることができる。概して、添加剤組成物が脂肪酸塩を包含する場合、それら成分は、好ましくは、本明細書中に記載の原理にしたがって、ドライブレンドされる。
【0060】
上述のように、少なくとも一種のスクロースエステルと、補足的熱安定化用添加剤を構成する少なくとも一種の成分とから本質的に成る添加剤組成物を製造することができる。このような添加剤組成物を配合する場合の使用について、パラフィンロウ滑剤に類似した物理的性質を有し、スクロースエステルがブレンドされうる「担体」のように作用することができる補足的熱安定剤を用いることが好適である。滑剤を基材とする添加剤組成物の製造について上に記載されたのと同様の処理は、熱安定剤を基材とする添加剤組成物の製造において用いることができるということは理解されるであろう。
【0061】
本明細書中で用いられる「補足的熱安定剤」という用語は、押出可能なPVC組成物に加えられた場合に動的熱安定化作用を及ぼすことが知られている補足的添加剤をいずれも包含する。添加剤組成物の製造での使用に適する補足的熱安定剤の例には、押出可能なPVC組成物中で熱安定化用添加剤として一般的に用いられるもの、例えば、スズを含有する化合物、例えば、スズメルカプチドが含まれる。他の技術認定されている熱安定剤、例えば、概して、Plastics Additives and Modifiers Handbook, Ed.J.Edenbaum, Van Nostrand Reinhold, New York 1992(本明細書中に援用される)に記載されたもの、例えば、鉛基材化合物を基材とするもの、例えば、中性ステアリン酸鉛および第二リン酸鉛を用いてもよい。更に、「混合金属」石鹸、例えば、ステアリン酸カルシウム/亜鉛を用いてよい。更に、重金属塩を基材としない熱安定剤、例えば、Crompton Corporation 製の有機基材安定剤(OBS)を用いてよい。上記の技術認定されている滑剤を基材とする添加剤組成物の場合と同様、技術認定されている熱安定剤を基材とする添加剤組成物は、更に、押出可能なPVC組成物中に典型的に取り込まれるいずれかの他の添加剤成分を包含してよいということは理解されるであろう。
【0062】
次の実施例は、前述の説明を更に詳しく説明する目的で示されており、請求の範囲に記載の発明の範囲を制限するためのものではない。
実施例
本発明のPVC樹脂含有押出可能組成物(実施例1)、および同じ成分で製造されるが、既知の外部滑剤(比較例A)および既知の内部滑剤(比較例B)をスクロースエステル滑剤に代用している二つの類似の組成物を下に示す。
【0063】
それら組成物は、構成成分を Warning Blender(強力ミキサー)中に入れ、そして混合羽根を操作しながら、105℃を超える温度に加熱することによって製造した。それら成分が均一にブレンドされた時点で、組成物を排出し、周囲温度に冷却し、24時間(熟成期間)放置した。
【0064】
熟成期間の最後に、組成物から68gの試料を Brabender トルクレオメーター中に入れ、レオメトリー分析を行った。上記のように、各々の組成物に、ASTM標準試験法D2538−02にしたがって、溶融時間および安定時間、平衡トルクおよび溶融トルク、および平衡温度のレオメトリー分析を行った。この手順を用いて、規定のレオメトリー特性の比較を、本発明の組成物(実施例1)と、二つの比較例組成物、すなわち、比較例A(スクロースエステル滑剤の代わりに外部滑剤を含有する)および比較例B(スクロースエステル滑剤の代わりに内部滑剤を含有する)との間で行った。これら測定の結果を、表IIに示し、下で考察する。
【0065】
種々の実施例および比較例の組成物を製造するのに用いられた材料は、次の通りであった。Georgia Gulf 製の1091(登録商標)ポリ塩化ビニル樹脂(樹脂);Rohm & Haas 製のTM281(登録商標)スズ基材熱安定剤(熱安定剤);Honeywell 製の Rheolub(登録商標)165パラフィンロウ(パラフィンロウ)、Norac 製のCOAD10(登録商標)ステアリン酸カルシウム(カルシウム滑剤);Honeywell 製のA−C(登録商標)629酸化ポリエチレンワックス(ポリマーワックス);Rohm & Haas 製のK120N(登録商標)アクリル加工助剤(加工助剤);Rohm & Haas 製のKM334(登録商標)アクリル耐衝撃性改良剤(耐衝撃性改良剤);OMYA製のUFT(登録商標)炭酸カルシウム(炭酸カルシウム);二酸化チタン(TiO)、ステアリルステアレート(エステル滑剤「a」)およびジステアリルフタレート(エステル滑剤「b」)は商品である;そしてびスクロースステアレート(エステル滑剤「c」)は、Procter & Gamble より入手した。材料は全て、受け取ったままで用いた。
【0066】
二つの比較例および一つの実施例組成物を、上記のように、下の表Iに記載の材料を記載の量で用いて製造した。
【0067】
【表1】

【0068】
このように製造された組成物に、上記のようにレオロジー分析を行った。分析を行う場合、レオメーターボウル温度を180℃に設定し、ローター速度を80rpmに設定した。この分析の結果を、下の表IIに示す。
【0069】
【表2】

【0070】
これらデータは、スクロースエステル滑剤を包含するPVC樹脂含有組成物が、技術認定されている滑剤のみを含有する組成物(比較例AおよびB)より優れている押出特性を有するということを示している。平衡温度および平衡トルクの、内部滑剤と比較されるスクロースエステルによる減少は、スクロースエステル滑剤が、一部分は、内部滑剤の方式ではたらくということを示唆する。それは、更に、スクロースエステルが、既知のジステアリルフタレート内部滑剤によって与えられるものより優れた見掛粘度減少を与えるということを示している。
【0071】
これらデータは、更に、本発明の組成物が、ステアリルステアレート外部滑剤と比較した場合、付随する溶融時間の増加を伴うことなく、溶融トルクの減少を示すということを示している。これは、スクロースエステルが、一部分は、ステアリルステアレートよりすぐれた特性を有する外部滑剤としてはたらくということを示唆する。
【0072】
表IIは、更に、本発明の(スクロースエステルを含有する)組成物の加工特性が、類似のレベルの滑性を与えるように調整された補足的滑剤のみを含有する先行技術組成物にまさって改善されていて、しかも動的熱安定性が、先行技術組成物の安定性を超えるということを示している。これらデータから、本発明の組成物は、比較例の組成物と比較した場合、PVC組成物の同じ押出速度について、より少ない押出機トルクおよび/またはより少ない押出機ヘッド圧力しか必要としないであろうと考えられる。更に、本発明の組成物は、技術認定されている外部滑剤のみを含有する組成物にまさる、スクロースエステル組成物によって与えられる優れた外部滑剤性能によって、優れた表面光沢を有する押出品を提供するであろうと考えられる。上述のように、表IIにあるデータは、本組成物が、熱安定時間の増加によって示されるように、増加した動的熱安定性を示すということも示している。
【0073】
実施例II〜VI−添加剤組成物
次は、7種類の、(i)スクロースエステルおよびパラフィンロウ滑剤(実施例II);(ii)スクロースエステルおよび酸化ポリエチレン滑剤(実施例III);(iii)スクロースエステル、パラフィンロウ滑剤および酸化ポリエチレン滑剤(実施例IV);(iv)スクロースエステル、パラフィンロウ滑剤、水酸化カルシウムおよびステアリン酸(実施例V);(v)スクロースエステル、酸化ポリエチレン滑剤、パラフィンロウ滑剤、水酸化カルシウムおよびステアリン酸(実施例VI);(vi)スクロースエステル、パラフィンロウ滑剤およびステアリン酸カルシウム(実施例VII);および(vii)スクロースエステル、酸化ポリエチレン滑剤、パラフィンロウ滑剤およびステアリン酸カルシウム(実施例VIII)を含む添加剤組成物実施例である。実施例標品の全てにおいて、挙げられているスクロースステアレートは、Procter & Gamble より入手した商品であり、挙げられているパラフィンロウは、RL−165−010(登録商標)(Honeywell)であり、挙げられている酸化ポリエチレンワックスは、AC(登録商標)−629(Honeywell)であり、挙げられている水酸化カルシウムは商品であり、そして挙げられているステアリン酸は、Procter & Gamble 製の商用銘柄材料である。
【0074】
次の実施例において、溶融ブレンディングとは、組成物のパラフィン成分およびポリエチレン成分をブレンドタンク中に入れ、約132℃に加熱することを意味する。それら成分を約1時間ブレンドするが、その時間は、それら材料の均一混合物を与えるのに必要とされるように調整する。パラフィン成分およびポリエチレン成分が均一になった時点で、スクロースステアレートを最初に加えた後、その素材に、いずれか残りの成分を各々順次に加える。組成物が、塩基および脂肪酸を組成物中にブレンドすることによって酸塩の製造を必要とする場合、所望の酸価に達するまでブレンディングを続ける。各々の成分を容器に加える時、ブレンディングを、添加の間に約15分間、そして最後の成分の添加後に更に1時間行う。次に、ブレンドされた材料を、バッグフィルターを介して濾過し、プリル化する。
【0075】
若干の実施例に示されるように、ドライブレンド法を用いる。ドライブレンド法は、スクロースエステルおよび組成物の他の成分を、リボンブレンダー中に周囲条件下で入れ、そしてそれら成分を、成分の均質混合物を与えるのに充分な時間ブレンドすることを含む。典型的には、これは、約30分のブレンド時間後に達せられる。
【0076】
各々の実施例に述べられるように、押出可能なPVC組成物に指定量の組成物を加えることによって期待される改善された押出特性には、添加剤組成物が一緒にブレンドされるPVC組成物を押し出すのに必要なヘッド圧力および/または押出トルクの減少、および/またはPVC組成物の動的熱安定性の増加、および/またはそのブレンドを含む押出品の必要面光沢の増加が含まれる。
【0077】
実施例II
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレートおよび33.1gのパラフィンロウを上記の手順にしたがって約132℃の温度で溶融ブレンドすることによって製造する。約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC樹脂含有押出可能PVC組成物のアリコートとブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0078】
実施例III
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレートおよび7.2gの酸化ポリエチレンワックスを上記の手順にしたがって約132℃の温度で溶融ブレンドすることによって製造する。約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC樹脂含有押出可能PVC組成物のアリコートとブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0079】
実施例IV
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレート、33.1gのパラフィンロウおよび7.2gの酸化ポリエチレンワックスを上記の手順にしたがって約132℃の温度で溶融ブレンドすることによって製造する。約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC樹脂含有押出可能PVC組成物のアリコートとブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0080】
実施例V
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレートおよび33.1gのパラフィンロウ(Honeywell)を上記の手順にしたがって約132℃の温度で溶融ブレンドすることによって製造する。そのロウおよびスクロースステアレートを約15分ブレンド後、約5.1gの水酸化カルシウムおよび45.6gのステアリン酸を、その混合物に加える。混合物を約155℃に加熱し、そしてその混合物を滴定して22〜24gKOH/g混合物の酸価を生じるまで継続してブレンドしながら、少なくとも150℃の温度で保持する。
【0081】
押出可能PVC組成物のアリコート中に含有されるPVC樹脂の約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC組成物とブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0082】
実施例VI
添加剤組成物は、実施例IVによって製造された49.3gの添加剤組成物に、実施例Vについて記載の手順にしたがって、5.1gの水酸化カルシウムおよび45.6gのステアリン酸を加えることによって製造する。
【0083】
押出可能PVC組成物のアリコート中に含有されるPVC樹脂の約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC組成物とブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0084】
実施例VII
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレートおよび33.1gのパラフィンロウを、上記のドライブレンド法にしたがって、周囲条件下のリボンブレンダー中において周囲条件下でドライブレンドすることによって製造する。最初のブレンド時間後、50gのステアリン酸カルシウムをその混合物に加えた後、更に約1時間ブレンドする。
【0085】
約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC樹脂含有押出可能PVC組成物のアリコートとブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0086】
実施例VIII
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレート、33.1gのパラフィンロウおよび7.2gの酸化ポリエチレンワックスを、上記の手順にしたがって、リボンブレンダー中において周囲条件下でドライブレンドすることによって製造する。最初のブレンド時間後、50gのステアリン酸カルシウムをその混合物に加えた後、更に約1時間ブレンドする。
【0087】
約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC樹脂含有押出可能PVC組成物のアリコートとブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。
【0088】
次に、技術認定されている熱安定剤およびスクロースステアレートを含む添加剤組成物を記載する。
実施例IX
添加剤組成物は、9gのスクロースステアレートおよび5gの Mark A70(登録商標)(OBS熱安定剤、Crompton Corporation、受け取ったままで用いる)を、上記のドライブレンド法にしたがって、周囲条件下でドライブレンドすることによって製造する。ブレンディングは、均一混合物が得られるまで行う。
【0089】
約0.1重量部のスクロースエステルPHRを与えるのに充分な量のこの組成物を、PVC樹脂含有押出可能PVC組成物のアリコートとブレンドする場合、その押出可能PVC組成物の押出加工特性に改善が認められるであろうと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含有組成物を押出する方法であって、
(a)少なくとも一種の押出可能な樹脂および多糖エステルを含む押出可能な素材を提供し;そして
(b)該押出可能な素材を押し出して押出物を製造することを含む方法。
【請求項2】
前記多糖エステルが、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて押出物の寸法安定性を増加させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出工程が押出機ヘッド圧力を生じ、その際、多糖エステルが、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて該押出機ヘッド圧力を減少させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記押出工程が押出機トルクを生じ、その際、多糖エステルが、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて必要な押出機トルクを減少させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
多糖エステルが、多糖エステルの不存在下における押出可能な素材の押出適性に比べて前記押出可能な素材の押出適性を改善するのに有効な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多糖エステルが、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて押出物光沢を増加させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多糖エステルが、(a)押出可能な素材の押出適性か、押出物の光沢かまたは押出物の寸法安定性を、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて少なくとも約10%増加させる;かまたは(b)押出機のヘッド圧力かまたは押出機トルクを、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて少なくとも10%減少させるのに有効な量で存在する、請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記多糖エステルが、(a)押出可能な素材の押出適性かまたは押出物の寸法安定性を、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて少なくとも約10%増加させる;かまたは(b)押出機のヘッド圧力かまたは押出機トルクを、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて少なくとも10%減少させるのに有効な量で存在し、その際、押出物光沢が、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて実質的に減少していない、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記多糖エステルが、(a)押出機のヘッド圧力かまたは押出機トルクを、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて少なくとも約10%減少させる;かまたは(b)押出可能な素材の押出適性かまたは押出可能な素材の光沢を、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて少なくとも約10%増加させるのに有効な量で存在し、その際、該押出物の寸法安定性が、該多糖エステル不含の同じ組成物の使用に比べて実質的に減少していない、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記多糖エステルが、該多糖エステルの不存在下における該素材に比べて押出可能な素材の動的熱安定性を増加させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリ塩化ビニルおよび少なくとも一種の多糖エステルを含む組成物であって、押出可能な組成物である該組成物。
【請求項12】
前記少なくとも一種の多糖エステル化合物が、該組成物の見掛粘度を減少させるのに有効な量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも一種の多糖エステル化合物が、塑性流れ状態における該組成物の動的熱安定性を増加させるのに有効な量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも一種の多糖エステル化合物が、組成物の押出時に組成物の光沢を増加させるのに有効な量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
多糖エステル化合物が、式I
【化1】

[式中、「A」は、水素であり、または構造I
【化2】

(式中、「R」は、約8〜約40個の炭素原子を有する脂肪族部分または芳香族部分である)
の構造を有する]
を有する一種またはそれより多い化合物を含み、その際、式Iの少なくとも一種の「A」部分は、構造Iを有する部分である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも約70重量%の式Iの多糖エステル化合物の「A」部分が全て、構造Iを有する部分を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
構造Iの「R」部分が、ステアリル部分である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記押出可能な組成物中に存在する多糖エステルの量が、約0.01PHR〜約2PHRである、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
前記多糖エステルが、スクロースソイエート(sucrose soyate)を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記多糖エステルが、スクロースベヘネート(sucrose behenate)を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも約70重量%の前記多糖エステル化合物が、構造Iの「A」基で八置換されていて、その際、構造Iの「R」基が、約8〜約40個の炭素原子を含む直鎖または分岐状の飽和または不飽和である脂肪族部分であって、1個またはそれより多いハロゲン官能基で置換されていてよいものを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
「R」基が、約12〜約25個の炭素原子を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項23】
前記押出可能な組成物中に存在する多糖エステルの量が、約0.05PHR〜約0.9PHRである、請求項11に記載の組成物。
【請求項24】
前記多糖エステルが、請求項11〜23のいずれか1項に記載の組成物中の多糖エステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
押出可能なPVC組成物への添加用の添加剤組成物であって、
(i)少なくとも一種の多糖エステル;
(ii)補足的滑剤および補足的熱安定剤から成る群より選択される少なくとも一種の追加成分であって、該多糖エステルとの化学的および物理的適合性を更に特徴とする該成分;および
(iii)場合により、一種またはそれより多い押出可能なPVC組成物添加剤
を含む組成物。
【請求項26】
多糖エステルが、スクロースステアレート、スクロースソイエートおよびスクロースベヘネートから成る群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記追加成分が、パラフィンロウ滑剤および酸化ポリエチレン滑剤から成る群より選択される少なくとも一種の滑剤を含み、そして前記多糖エステルが、添加剤組成物の約1重量%〜約99重量%の量で存在する、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記追加成分が、スズ基材熱安定剤、有機基材熱安定剤、重金属基材熱安定剤および混合金属基材熱安定剤から成る群より選択される少なくとも一種のメンバーを含み、その際、前記多糖エステルが、添加剤組成物の約1重量%〜約99重量%の量で存在する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
約1:6〜約1:10の比率で存在する水酸化カルシウムおよびステアリン酸の混合物を更に含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ステアリン酸カルシウムを更に含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
押出可能な組成物を成形する方法であって、押出可能な樹脂を提供し、そして少なくとも一種の多糖エステルと、補足的滑剤および補足的熱安定剤から成る群より選択される少なくとも一種の追加成分とを含む添加剤組成物を、該樹脂と混合することを含む方法。
【請求項32】
前記添加剤組成物が、請求項26〜30のいずれか1項に記載の添加剤組成物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ポリ塩化ビニルおよび少なくとも一種の多糖エステルを含む押出製品。
【請求項34】
請求項1〜10および請求項24に記載のいずれか一つの方法より入手可能である、請求項33に記載の製品。
【請求項35】
多糖エステル化合物が、請求項11〜23に記載のいずれか一つの組成物中の一つまたは複数の多糖エステル化合物を含む、請求項33に記載の製品。
【請求項36】
装飾用成形品、一つまたは複数のフェンス用部材、羽目、パイプ、電線管、一つまたは複数の窓用部材、一つまたは複数のドア用三方枠、幅木および雨押えから成る群より選択される部材を含む、請求項33に記載の製品。
【請求項37】
組成物を押出する方法であって、押出可能な樹脂;少なくとも一種の多糖エステル;および補足的滑剤、補足的熱安定剤およびこれらの組合せから成る群より選択される少なくとも一種の追加成分を含む押出可能な組成物;および該押出可能な組成物を押し出して押出物を生じることを含む方法。
【請求項38】
装飾用成形品、一つまたは複数のフェンス用部材、羽目、パイプ、電線管、一つまたは複数の窓用部材、一つまたは複数のドア用三方枠、幅木および雨押えから成る群より選択される部材を含む、請求項37に記載の方法の押出物製品。
【請求項39】
ASTM2003規格D3679−03e2にしたがった、請求項33に記載の製品。
【請求項40】
ASTM2003規格D1785−03にしたがった、請求項33に記載の製品。
【請求項41】
2000年11月1日 German Institute for Standardization 規格DIN16830−3にしたがった、請求項33に記載の製品。

【公表番号】特表2007−524714(P2007−524714A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503380(P2006−503380)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/003478
【国際公開番号】WO2004/072167
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】