説明

押出成型用樹脂組成物、および、成型体

【課題】優れた低線膨張性および寸法安定性を有する軽量な成型体を安定して得られる押出成型用樹脂組成物の提供。
【解決手段】押出成型用樹脂組成物をポリプロピレンおよび針状フィラーで構成するとともに、ポリプロピレンのMFRを10g/10分未満にしているので、押出成型に用いることができ、良好な形状安定性を有する成型体を得ることができる。ポリプロピレンおよび針状フィラーの配合割合を、ポリプロピレン:針状フィラー=40〜80%:20〜60%、の関係を満たすようにしているので、線膨張係数を小さくできるとともに、針状フィラーをポリプロピレンにほぼ均等に練り込むことができ、成型体表面に発生する外観不良を抑制できる。ポリプロピレンへの添加物を針状フィラーとしているので、成型体の低線膨張性を維持しつつ、軽量化を容易に図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性に優れた押出成型に用いられる押出成型用樹脂組成物、および、成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な断面形状を有する異型押出成型で成型された成型体は、土木・建築分野や、家具、機械部品、自動車部品などの多くの分野において使用されている。そして、それらの素材としては、主にポリ塩化ビニル系樹脂が使用されてきた。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時に、塩化水素ガスやダイオキシンなどを発生させるとして、環境衛生面での問題が指摘されている。このため、近年、ポリ塩化ビニル樹脂系材料の代替材料として、ポリオレフィン系材料の開発が盛んに行われている。
例えば、自動車内外装部材や家電品の材料として、ポリプロピレンにタルクを充填した熱可塑性樹脂組成物が用いられている。異形押出成型体は、線膨張係数が低いことが好ましく、ポリプロピレンにタルクを充填した熱可塑性樹脂組成物において、タルクを高充填とすることにより、成型体の線膨張係数を低減させることが行なわれている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−97337号公報
【特許文献2】特許第3189477号公報
【特許文献3】特開2004−18796号公報
【特許文献4】特許第2770199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のような構成では、樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと称す)が10g/10分に設定されており、押出成型に用いることができないおそれがある。また、無理に成型しようとした場合、自重で垂れ下がるいわゆるドローダウン現象が発生してしまうおそれがある。このため、寸法安定性に優れた成型体を得られないおそれがある。
さらに、特許文献3のような構成では、MFRが3g/10分以下の樹脂を使用しているが、低膨張性を確保するための圧縮タルクの添加量が多いため、樹脂および圧縮タルクからなる複合材料の比重が1.3以上となるおそれがある。このため、軽量化を容易に図ることができないおそれがある。
また、特許文献4のような構成では、MD方向(長手方向)の線膨張率を低下させるためにタルクとウィスカーが併用されているが、タルクとウィスカーの密度差があるため(タルク:2.7、塩基性硫酸マグネシウム:2.3、チタン酸カリウム:3.3、ホウ酸アルミニウム:2.9)、実機生産時に樹脂/タルク/ウィスカー系で分級が発生するおそれがあり、安定的に生産することが困難なおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、かかる問題を解決するためになされたものであり、優れた低線膨張性および寸法安定性を有する軽量な成型体を安定して得られる押出成型用樹脂組成物、および、成型体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究したところ、押出成型用樹脂組成物をポリプロピレンおよび針状フィラーで構成するとともに、ポリプロピレンのJIS(Japanese Industrial Standard) K 7210に準拠したMFR(メルトフローレート)を10g/10分以上にすると、押出成型に用いた際にいわゆるドローダウン現象が発生してしまい、10g/10分未満にすると、押出成型に用いることが可能となり良好な形状安定性を有する成型体を得られることを見出した。
また、針状フィラーの配合割合を20%未満にすると、線膨張係数が大きくなり、60%を超えるようにすると、混練時に針状フィラーをポリプロピレンにほぼ均等に練り込むことができず、仮にほぼ均等に練り込むことができたとしても、成型体表面に外観不良が発生するおそれがあり、針状フィラーの配合割合を20〜60%とすることで、前述の不具合が解消されることを見出した。
さらに、ポリプロピレンへの添加物を針状フィラーとすることにより、低線膨張性を維持しつつ、圧縮タルクを用いる構成と比べて比重が小さくなることを見出した。
これらの知見に基づいて、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の押出成型用樹脂組成物は、ポリプロピレンおよび針状フィラーからなり押出成型に用いられる押出成型用樹脂組成物であって、前記ポリプロピレンのメルトフローレートは、10g/10分未満であり、前記ポリプロピレンおよび前記針状フィラーは、以下の式(1)を満たす割合で配合されたことを特徴とする。
【0008】
ポリプロピレン:針状フィラー=40〜80%:20〜60% … (1)
【0009】
この発明によれば、押出成型用樹脂組成物をポリプロピレンおよび針状フィラーで構成するとともに、ポリプロピレンのMFRを10g/10分未満にしているので、押出成型に用いることが可能となり良好な形状安定性を有する成型体を得られる。また、ポリプロピレンおよび針状フィラーの配合割合を、上記式(1)を満たす組成としているので、線膨張係数が小さくなる。さらに、針状フィラーをポリプロピレンにほぼ均等に練り込むことが可能となり、成型体表面に発生する外観不良が抑制される。そして、ポリプロピレンへの添加物を針状フィラーとしているので、成型体の低線膨張性を維持しつつ、軽量化を容易に図れる。
【0010】
また、本発明の押出成型用樹脂組成物では、前記針状フィラーは、ワラストナイトであることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、針状フィラーとして、ワラストナイトを適用している。
ここで、針状フィラーとしては、ワラストナイト、塩基性硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムなどが例示できる。
そして、塩基性硫酸マグネシウムは、ワラストナイトとほぼ同価格であるが、結晶水を持っているため、混練の際に混練機から伝わる熱でホッパーが加熱されて発生する水分でブリッジが発生するおそれがある。すなわち、ホッパー出口で凝集が起きて樹脂やフィラーが詰まってしまい、混練機に原料が供給されない状態が発生するおそれがある。
また、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムは、ワラストナイトと比べて価格が高いため、安価な成型体を提供できないおそれがある。さらに、チタン酸カリウムは、比重が3.5であるため、成型体が重量化してしまうおそれがある。また、ホウ酸アルミニウムは、モース硬度が7である、つまり非常に硬いので、機械自体を傷めてしまい製造安定性が悪くなるおそれがある。
これらのことから、ワラストナイトを適用することにより、より軽量で製造安定性に優れた成型体を安価で得られる。
【0012】
さらに、本発明の押出成型用樹脂組成物では、比重が1.3未満であることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、押出成型用樹脂組成物の比重を1.3未満としている。
ここで、樹脂や樹脂/フィラー系のコンパウンドは、通常、所定重量単位で袋などに収納されて運搬される。このように所定重量単位で運搬される場合、比重を1.3以上とすると、1.3未満としたとき比べて体積が小さくなり、感覚的に重いと感じてしまい、ハンドリング性が低くなるおそれがある。
このため、押出成型用樹脂組成物がより軽量になり、例えば作業時における持ち運びのハンドリング性を容易に高められる。
【0014】
本発明の成型体は、上述した押出成型用樹脂組成物を押出成型して得られたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、優れた低線膨張性および寸法安定性を有する軽量な成型体を得られる。
【0016】
また、本発明の成型体では、線膨張係数が5×10−5/℃以下であることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、成型体の線膨張係数を5×10−5/℃以下としている。
ここで、線膨張係数が5×10−5/℃以下の場合、熱による膨張や収縮がほとんど起きない。
このため、より寸法安定性に優れた成型体が得られる。さらに、成型体が長尺の形状を有していても、夏場の高温時(40℃)や冬場の低温時(0℃)での作業環境において、相手の部材へ容易に取り付けることが可能となる。
【0018】
そして、本発明の成型体では、移動体の部品として用いられることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、成型体を移動体の部品としている。
このため、移動体の軽量化を図れ、低燃費を容易に図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0021】
本発明の押出成型用樹脂組成物は、押出成型、特に、複雑な断面形状を有する異型成型体を得るための押出成型に使用できる。
また、本発明の押出成型用樹脂組成物からなる成型体は、移動体の部品、家具、土木・建築分野で用いられる部品、機械部品などに使用できる。ここで、移動体としては、自動車、飛行機、船舶、自転車などが例示できる。また、移動体の部品としては、バンパー、サイドモール、ロッカーモール、オーバーフェンダなどが例示できる。
【0022】
〔押出成型用樹脂組成物の構成〕
本発明の押出成型用樹脂組成物は、少なくともポリプロピレン系樹脂と、針状フィラーと、を混練してなるものである。
【0023】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンのホモポリマーに限られず、他のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体を使用することができる。また、プロピレンに共重合できるコモノマーとしては、エチレンなどを使用できる。すなわち、本発明の押出成型用樹脂組成物に使用されるポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレンに限定されず、共重合体も含まれるものである。
ポリプロピレン系樹脂は、JIS K 7210に準拠して測定されたMFR(メルトフローレート)が、10g/10分未満であることを要し、好ましくは0.1〜8g/10分である。
MFRが10g/10分以上の場合、押出成型に適さない。すなわち、無理に押出成型しようとすると、ドローダウン現象が発生してしまい、成型することができないためである。
【0024】
本発明に用いられる針状フィラーとしては、特に制限はない。
針状フィラーとして、ワラストナイト、塩基性硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムなどを使用できるが、ワラストナイトが最も好ましい。
使用できるワラストナイトの短径は、0.5〜100μmである。
短径が0.5μm未満の場合、線膨張係数を小さくできない。また、短径が100μmを超える場合、ポリプロピレン系樹脂との混練時に針状フィラーがおれてしまい、線膨張係数などの物性に好影響をもたらさない。
なお、ワラストナイトの短径は、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜40μmである。
【0025】
上述したポリプロピレン系樹脂と、針状フィラーであるワラストナイトとの配合割合は、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂:ワラストナイト=40〜80%:20〜60% … (2)
【0027】
ワラストナイトの配合割合が20%未満の場合、線膨張係数が大きくなってしまう。また、ワラストナイトが60%を超える場合、混練時にワラストナイトをポリプロピレン系樹脂にほぼ均等に練り込むことができない。仮にほぼ均等に練り込むことができたとしても、成型体表面に外観不良が発生し、商品化できない。
なお、ポリプロピレン系樹脂と、ワラストナイトとの好ましい配合割合は、以下の式(3)を満たすものである。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂:ワラストナイト=50〜75%:25〜50% … (3)
【0029】
そして、本発明の押出成型用樹脂組成物は、設定温度180〜260℃で混練することにより製造される。
この製造に使用される混練機としては、特に制限はない。
混練機として、通常の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダなどを用いることができるが、これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
【0030】
このような構成を有する押出成型用樹脂組成物は、比重を1.3未満にすることができる。さらに、この押出成形用樹脂組成物を用いて成型した成型体は、線膨張係数を5×10−5/℃以下にすることができる。このため、優れた低線膨張性および寸法安定性を有する軽量な成型体を得られる。
【0031】
なお、本発明の押出成型用樹脂組成物としては、ポリプロピレン系樹脂および針状フィラー以外に任意の成分を添加することができる。代表的なものとしては、ゴムである。
さらに、アクリル樹脂やスチレン樹脂も、任意の成分として添加できる。その他の任意成分としては、フェノール系やリン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の耐候剤、有機アルミニウム化合物、有機リン化合物などの造核剤、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸分散剤、オレイン酸アミドなどの滑剤、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラックなどの着色物質を使用することができる。
ただし、重要なのは、本発明の効果を著しく損なわない範囲で使用されることである。
【0032】
〔押出成型用樹脂組成物の作用効果〕
上述したように、上記実施形態では、押出成型用樹脂組成物をポリプロピレンと、針状フィラーであるワラストナイトで構成するとともに、ポリプロピレンのMFRを10g/10分未満にしている。このため、押出成型に用いることができ、良好な形状安定性を有する成型体を得ることができる。
また、ポリプロピレンおよびワラストナイトの配合割合を、上記式(2)を満たす組成としている。このため、線膨張係数を小さくできるとともに、ワラストナイトをポリプロピレンにほぼ均等に練り込むことができ、成型体表面に発生する外観不良を抑制できる。したがって、商品化を容易に図ることができる。
そして、ポリプロピレンへの添加物をワラストナイトとしている。このため、成型体の低線膨張性を維持しつつ、軽量化を容易に図ることができる。
さらに、このような押出成型用樹脂組成物を用いることにより、優れた低線膨張性および寸法安定性を有する軽量な成型体を得ることができる。
また、寸法安定性に優れているので、複雑な断面形状を有する異型の成型体を設計通りに製造することができ、利用拡大を容易に図れる。さらに、成型体の軽量化を図ることができるので、軽量化が要求される分野の部品として供給でき、利用拡大を容易に図ることができる。
【0033】
そして、本発明の針状フィラーとして、ワラストナイトを適用している。
このため、針状フィラーとして、塩基性硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムを適用する構成と比べて、より軽量で製造安定性に優れた成型体を安価で得ることができる。
【0034】
さらに、押出成型用樹脂組成物の比重を1.3未満としている。
このため、押出成型用樹脂組成物をより軽量にすることができ、例えば作業時において感覚的に重いと感じることがなく、持ち運びのハンドリング性を容易に高めることができる。
【0035】
また、成型体の線膨張係数を5×10−5/℃以下としている。
このため、より寸法安定性に優れた成型体を得ることができる。さらに、成型体が長尺の形状を有していても、夏場の高温時や冬場の低温時での作業環境において、相手の部材へ容易に取り付けることができる。
【0036】
そして、成型体を移動体の部品としている。
このため、移動体の軽量化を図ることができ、低燃費を容易に実現できる。また、低燃費の実現により、環境負荷を低減できる。
【0037】
〔実施形態の変形例〕
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
【0038】
すなわち、本発明の押出成型用樹脂組成物からなる成型体の用途としては、移動体の部品に限らず、家具、土木・建築分野で用いられる部品、機械部品などに適用してもよい。
そして、針状フィラーとして、塩基性硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムを適用してもよい。
また、成型体の線膨張係数を、5×10−5/℃以上としてもよい。
【実施例】
【0039】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
なお、本発明は、これらの実施例などの記載内容に何ら制限されるものではない。また、元素名を元素記号で示して説明する。
【0040】
[実施例1〜6、比較例1〜4の試料の作製方法]
試料の材料として、以下のものを用いた。
・ポリプロピレン(樹脂)
プライムポリマー株式会社製 E−150GK MFR=0.6g/10分
プライムポリマー株式会社製 E−105GK MFR=0.5g/10分
プライムポリマー株式会社製 J−782HV MFR=12g/10分
・針状フィラー
NYCO Minerals,Inc.製
ワラストナイト ナイグロス8(短径:8μm)
・タルク
富士タルク株式会社製 TP−A25
・滑剤
チバスペシャルティケミカルズ株式会社製
イルガノックス1010 0.2重量部
旭電化株式会社製 アデカスタブ2112 0.2重量部
・酸化防止剤
日本油脂株式会社製 ステアリン酸カルシウム 0.3重量部
日本油脂株式会社製 ステアリン酸マグネシウム 0.3重量部
【0041】
そして、上述したポリプロピレンおよび針状フィラーを以下の表1に示すような配合割合で配合して、実施例1〜6、比較例1〜4の試料を得るための押出成形用樹脂組成物を作製した。
【0042】
【表1】

【0043】
つまり、実施例1〜6の試料用として、ポリプロピレンおよび針状フィラーの配合割合が上記式(2)の条件(以下、配合条件と称す)を満たすとともに、MFRが10g/10分未満の条件(以下、MFR条件と称す)を満たす押出成形用樹脂組成物を作製した。
また、比較例1,2として、MFR条件を満たすが、配合条件を満たさないものを作製した。さらに、比較例3として、配合条件を満たすが、MFR条件を満たさないものを作製した。また、比較例4として、針状フィラーの代わりにタルクを適用したものを作製した。
【0044】
そして、これらの押出成形用樹脂組成物の作製において、混練は、以下のように実施した。
すなわち、株式会社日本製鋼所製の2軸混練押出機TEX30αを用いた。そして、シリンダ、アダプタ、および、ダイス部分の温度を240〜260℃、スクリュ回転数を450rpm、吐出量を50kg/hrに設定して、ポリプロピレン、針状フィラーまたはタルク、滑剤、酸化防止剤を混練した。
【0045】
この後、この混練した押出成形用樹脂組成物を用いて、以下のようにして試料を作製した。
すなわち、コスモテック株式会社製の異型押出成型機SEB−50を用いた。そして、シリンダ、アダプタ、および、ダイス部分の温度を190〜210℃、スクリュ回転数を15rpm、引き取り速度を1.5〜2.0m/分に設定して、実施例1〜6、比較例1〜4の試料を作製した。具体的には、幅40mm、厚さ1.5mmの試料を作製した。
【0046】
[性能試験方法]
実施例1〜6、比較例1〜4の試料から、幅3mm、長さ12mmの試験片を切り出した。そして、セイコー電子工業株式会社製の熱機械分析装置TMA120により、MD方向(マシン方向)について、−40℃〜80℃の範囲において、試験片の線膨張係数を測定した。
また、比重を、JIS K 7112に準拠する方法で測定した。
さらに、押出成形用樹脂組成物の状態、成型性なども調べた。
これらの結果を、表1に示す。
【0047】
[性能評価結果]
表1に示すように、実施例1〜6では、線膨張係数が5×10−5/℃以下となり、かつ、比重が1.3未満になることが確認できた。
また、実施例1〜3と、比較例1との比較から、ポリプロピレンの配合割合を上記配合条件よりも大きくすると、配合条件を満たす構成と比べて、比重が小さくなるが、線膨張係数が大きくなり、5×10−5/℃以上となることが確認できた。
さらに、比較例2から、ワラストナイトの配合割合を配合条件よりも大きくすると、混練ができないことが確認できた。
また、比較例3から、MFRを上記MFR条件よりも大きくすると、ドローダウン現象により押出成型できないことが確認できた。
そして、実施例2と、比較例4との比較から、線膨張係数がほぼ等しい場合(実施例2:3.0×10−5/℃、比較例4:2.8×10−5/℃)、針状フィラーを使用することにより、タルクと比べて、比重を小さくできることが確認できた。これは、所定の線膨張係数を得るためには、針状フィラーと比べてタルクの配合量を多くする必要があり、タルクを使用すると比重が大きくなってしまうためと考えられる。
つまり、上述した配合条件およびMFR条件を満たすことにより、優れた低線膨張性および寸法安定性を有する軽量な成型体を安定して得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、寸法安定性に優れた押出成型に用いられる押出成型用樹脂組成物、および、成型体に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンおよび針状フィラーからなり押出成型に用いられる押出成型用樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレンのメルトフローレートは、10g/10分未満であり、
前記ポリプロピレンおよび前記針状フィラーは、以下の式(1)を満たす割合で配合された
ポリプロピレン:針状フィラー=40〜80%:20〜60% … (1)
ことを特徴とした押出成型用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の押出成型用樹脂組成物であって、
前記針状フィラーは、ワラストナイトである
ことを特徴とした押出成型用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の押出成型用樹脂組成物であって、
比重が1.3未満である
ことを特徴とした押出成型用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の押出成型用樹脂組成物を押出成型して得られた
ことを特徴とした成型体。
【請求項5】
請求項4に記載の成型体であって、
線膨張係数が5×10−5/℃以下である
ことを特徴とした成型体。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の成型体であって、
移動体の部品として用いられる
ことを特徴とした成型体。

【公開番号】特開2009−1736(P2009−1736A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166127(P2007−166127)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000104364)カルプ工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】