説明

押出成形型

【課題】成形材料の押出成形にて中空孔を有する成形体を成形するにあたり、成形体に破損が生じることを抑制して、安定した生産を行うことができる押出成形型を提供する。
【解決手段】押出成形型Aは、成形材料の流路を前後に仕切ると共に前後に貫通する流通孔3が形成された支持部1と、この支持部1から前方に突出する複数の突部2を具備する。突部2には前後に貫通する通気孔17が設けられ、支持部1には外部から供給される気流が流通すると共に突部2の通気孔17に連通する通気路21が設けられる。支持部1と突部2とは、支持部1の前面側に設けられた接続孔18と突部2の後端に設けられた接続部16との凹凸嵌合により接続される。前記接続部16の外周面には後端側ほど外径が小さくなる外側テーパが形成され、接続孔18の内面には前記外側テーパに合致する内側テーパが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して中空孔を有する成形体を成形するための押出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して形成される、複数の中空孔23を有する成形体B(図20参照)は、建築物の外壁等として使用されている。
【0003】
このような成形体Bを製造するための押出成形型Aとして、本出願人は図21に示すものを提案している。この押出成形型Aは、成形材料が流通する流路83を有する本体型81と、この本体型81内の流路83に配置される中子型82とで構成されている。中子型82は支持体84及びこの支持体84から成形材料の流通方向へ向けて突出する複数の突部2’を備え、突部2’は流路83に沿って平行並列に一列に並んで設けられると共に突部2’の列がその並び方向と直交する方向に並んで千鳥状に多段に設けられている。また、支持体84は前記流路83内を流通する成形材料の流通方向を、段重ね方向に隣り合う突部2’の列の間で段重ね方向に分岐させる分岐部86と、前記分岐された成形材料の流通方向を各列内で隣り合う各突部2’間に分岐する分岐路87とを備えている。このような押出成形型Aでは、中空孔23を有する成形体Bの形成に際し、過大な圧力をかけずに成形することができると共に中空孔23の間に成形材料が充分に充填され、且つ得られる成形体Bの強度低下等の発生を防止して安定した生産を行うことができる。
【0004】
このような押出成形型で成形体材料を押出成形する場合、中空孔23を有する成形体Bが連続して形成され、得られた成形体Bの中空孔23の内部には大気が流入することによりこの中空孔23の内圧は成形体Bの外部と同等なものとなる。
【0005】
しかし、成形材料の押出成形過程において中空孔23の一部が何らかの不具合により埋まってしまった場合には、それ以後に形成される中空孔23の内部には空気が供給されず、その内部の圧力が非常に低くなってしまうことがある。このような場合、形成された成形体Bは中空孔23内と外部との圧力差により破損が生じやすい状態となり、成形中に中空孔23が順次潰れていって中空孔23が形成されなかったり、成形体Bの切断時に荷重をかけた場合などに成形体Bが破損してしまったりするおそれがある。
【0006】
そこで、本出願人は、中空孔23を形成するための突部2’に成形材料の流通方向に貫通する通気孔17を設けると共に、この突部2’を支持する支持部1’(上記従来技術における支持体84に相当)には外部から供給される気流が流通すると共に前記突部2’の通気孔に連通する通気路21’を設けることを提案している(特願2007−255396)。この場合、成形材料を押出成形して成形体Bを得るにあたり、通気路21’及び通気孔17を介して中空孔23に気流を流出することにより中空孔23の内圧が低減することを防止することができて、前記内圧が外部の圧力よりも小さくなることによる成形体Bの破損を抑制することができる。
【0007】
このような突部2’を支持部1’に設ける場合は、図22に示すように、突部2’の後端の接続部16’に雄螺子溝を形成すると共に、支持部1’に雌螺旋溝を有する接続孔18’を設け、両者を螺合することで接合することが考えられる。
【0008】
しかしながら、この場合、通気孔17を有する突部2’の後端に雄螺子溝を設けると、螺旋谷の部分で突部2’の外面と通気孔17の内面との間の厚みが薄くなってしまうため、充分な強度を確保するためには突部2’の外径寸法に対する通気孔17の内径寸法の比率を小さくしなければならなくなり、通気孔17における気流のスムースな流通が確保できなくなるおそれがある。この場合、中空孔23の内圧を充分に上昇することができなくなって、成形体Bの外部の圧力と中空孔23の内圧との間に差が生じ、成形体Bの破損を充分に抑制することができなくなるおそれがある。
【特許文献1】特開2007−296747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、セメント系成形材料等の成形材料を押出成形して中空孔を有する成形体を成形するにあたり、押出成形過程において中空孔の一部が何らかの不具合により埋まるなどの事態が生じた場合であっても、この中空孔の内圧が低下することを抑制し、成形体に破損が生じることを抑制して、安定した生産を行うことができる押出成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る押出成形型Aは、成形材料を押出成形することにより複数の中空孔23を有する成形体Bを成形するために用いられる。この押出成形型Aは、成形材料の流路を前後に仕切り、前後に貫通する流通孔3が形成された支持部1を具備する。また、この支持部1から前方に向けて突出する複数の突部2を具備する。前記突部2には前後方向に貫通する通気孔17が設けられ、前記支持部1には外部から供給される気流が流通すると共に前記突部2の通気孔17に連通する通気路20,21,26が設けられる。前記支持部1と前記突部2とは、支持部1の前面側に設けられた接続孔18と突部2の後端に設けられた接続部16との凹凸嵌合により接続される。前記接続部16の外周面には後端側ほど外径が小さくなる外側テーパが形成され、前記接続孔18の内面には前記外側テーパに合致する内側テーパが形成されている。
【0011】
尚、押出成形型Aによる成形材料の押出方向の順方向を前方、逆方向を後方とする。
【0012】
本発明によれば、成形材料を押出成形して成形体Bを得るにあたり、成形材料が支持部1の流通孔3を通過して突部2を通過することによって、中空孔23を有する成形体Bを成形することができる。この成形時に通気路20,21及び通気孔17を介して中空孔23に気流を流出することにより中空孔23の内圧の低減が抑制される。また、突部2と支持部1との接続は、外側テーパが形成された接続部16と内側テーパが形成された接続孔18との凹凸嵌合によるため、突部2が支持部1に対して強固に接続される。更に、突部2の接続部16に雄螺子溝を形成する必要がなくなり、通気孔17の内面と接続部16の外面との間の厚みが螺旋谷によって薄くなるようなことがなくなって、突部2の外径寸法に対する通気孔17の内径寸法の比率を大きくすることができ、この通気孔17における気流のスムースな流通を確保して、中空孔23の内圧の低減を更に確実に抑制することができる。
【0013】
本発明において、上記接続部16の外側テーパのテーパ角度は、1.0°〜5.0°の範囲であることが好ましい。この場合、接続部16と接続孔18との凹凸嵌合が非常に強固となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押出成形時に支持部の流通孔に成形材料を流通させると共に支持部の通気路及び突部の通気孔を介して中空孔に気流を流出することで中空孔を有する成形体を成形するにあたり、通気孔の内径寸法を気流がスムースに流通可能な寸法に確保することができて、中空孔の内圧が低減することを防止し、成形体の外部の圧力と中空孔の内圧との間に差が生じることを抑制して、成形体が破損を充分に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第一の実施形態を、図1〜10を示して説明する。図示の押出成形型Aは、図1,5,6,9,10に示すように、口金部8、ベース部9、支持部1及び突部2(中空ピン)にて構成されている。
【0016】
以下、この押出成形型Aによる成形材料の押出方向の順方向を前方、逆方向を後方として、押出成形型Aの構成を説明する。
【0017】
口金部8は前後両面が開口する筒状に形成されており、前端側の開口から押出成形後の成形体Bが外部に押し出されるようになっている。また、口金部8の後端側の端部の外周からは、外周方向に向けて鍔部10が延出されている。この口金部8の内部の中空部11は成形材料の流路を構成し、この中空部11内において成形材料が流通するようになっている。図示の例では、板状の成形体Bを成形するために、前記中空部11の断面形状は一対の対向する辺が、他の一対の対向する辺よりも長い断面矩形状に形成されている。
【0018】
ベース部9は一面側が前側、他面側が後側に配置される板状体にて形成されている。このベース部9には、上記口金部8の中空部11と合致する位置に、前後に貫通する中空部12が設けられている。この中空部12も成形材料の流路を構成し、この中空部12内において成形材料がベース部9の前方に向けて流通するようになっている。
【0019】
支持部1は上記口金部8の鍔部10とベース部9との間に介在するように設けられており、前記口金部8の中空部11とベース部9の中空部12とで構成される成形材料の流路を前後に仕切るように設けられている。この支持部1は板状体にて形成されており、その前面が鍔部10の背面と重なると共に背面がベース部9の前面と重なるようになっている。この支持部1の前面には、複数の突部2が成形材料の流通方向に沿って突設されている。この突部2は口金部8の中空部11内に、支持部1から前方に向けて突出する状態で収容されている。また、支持部1にはこの支持部1を前後に貫通する複数の流通孔3が設けられており、ベース部9の中空部12と口金部8の中空部11との間ではこの流通孔3を成形材料が流通するようになっている。
【0020】
また、これらの口金部8の鍔部10、支持部1、並びにベース部9には、互いに合致する位置に複数の連通孔13が穿設されており、この連通孔13を、口金部8、支持部1及びベース部9を重ねて押出成形型Aを構成する際の位置合わせの基準としたり、この連通孔13にボルト等の適宜の固着具を挿通して押出成形機に取着するために利用したりすることができる。
【0021】
本実施形態における支持部1及び突部2の構成について、更に詳細に説明する。
【0022】
突部2は並行並列に複数本突設されており、この複数の突部2の前端面は、全て面一に形成されている。図示の突部2は円柱状であるが、この突部2は成形体Bに形成される中空孔23の形状に応じて六角柱状等の他の適宜の形状に形成される。複数の突部2は互いに間隔をあけて設けられ、且つ平面六方格子状に配列するように設けられている。すなわち、図7等に示すように、隣り合う突部2間の間隔は一定となるように形成され、一つの突部2の周囲を六個の突部2が正六角形状に囲むと共に中心の突部2と周囲の各突部2との間の間隔、並びに周囲の各突部2間の間隔が全て等しくなるように形成されている。尚、図7では一部の突部2を破線で示している。
【0023】
各突部2は図2に示すように、主部25、拡径部15、大径部14、及び接続部16から構成されている。主部25は外径が均一な円柱状に形成されている。大径部14は突部2の前端部に形成されており、前記主部25よりも大きい外径を有する円柱状に形成されている。拡径部15は前記主部25と大径部14との間に介在し、大径部14側に向けて徐々に外径が大きくなるように形成されている。
【0024】
また、接続部16は突部2の後端部に主部25と接続するように形成されており、その外周面には、後端側ほど外径が小さくなる外側テーパが形成されている。このため、接続部16の前端部の径は主部25と同一であり、後端部の径は主部25よりも小さくなっている。この接続部16の外側テーパのテーパ角度は1.0°〜5.0°の範囲であることが好ましい。
【0025】
この突部2には図1,2,7,9等に示すように、その内部を前後に貫通する通気孔17が設けられている。
【0026】
隣り合う突部2間の間隔(大径部14間の間隔)は適宜設定され、この間隔を小さくすれば成形体Bに形成される中空孔23の間隔が小さくなって軽量化に寄与することができるが、成形体Bに充分な強度を付与できる程度の間隔をあけることが好ましく、例えば成形材料としてセメント系成形材料を用いる場合には、この間隔を1.5mm以上とすることが好ましい。また、通気孔17の内径は1mm以上であることが好ましい。
【0027】
一方、支持部1は、その一面側が前方に、他面側が後方に配置される板状体にて形成されている。この支持部1は、前側に配置される板状の前部体1a(図3,4参照)と、後側に配置される板状の後部体1bとを重ね合わせて構成されている。
【0028】
前部体1aには、突部2の突設位置と合致する位置に、前後に貫通する複数の接続孔18が設けられている。すなわち、複数の接続孔18の開口は、前部体1aの両面でそれぞれ平面六方格子状に配列し、且つ突部2の配置と合致する矩形状の領域の内側に設けられる。
【0029】
この接続孔18の内面には、上記突部2の接続部16の外側テーパに合致する内側テーパが形成されており、突部2の接続部16を前記接続孔18に嵌合することにより突部2が支持部1に突設されている(図1等参照)。この接続孔18の後端は、支持部1の背面に開口する中空な接続空間19に連通している。
【0030】
このように突部2と支持部1との接続が、外側テーパが形成された接続部16と内側テーパが形成された接続孔18との凹凸嵌合によってなされることで、接続部16や接続孔18に螺旋溝を形成することなく、突部2が支持部1に対して強固に接続される。特に上記のように接続部16の外側テーパのテーパ角度が1.0°〜5.0°の範囲で有れば、前記凹凸嵌合は非常に強固なものとなる。このため、突部2に通気孔17を形成するにあたり、接続部16に形成する雄螺子溝の螺旋谷による強度低下を考慮する必要がなくなり、突部2の外径寸法に対する通気孔17の内径寸法の比率を大きくすることができる。すなわち、例えば突部2の主部25の外径寸法が3.5mmの場合に、通気孔17の内径寸法を2mmにまで形成することもできる。
【0031】
また、このように接続部16に外側テーパを、接続孔18に内側テーパをそれぞれ形成すると、突部2や支持部1を作製するにあたり、螺旋溝を形成する必要がなくなるため、突部2や支持部1の作製時に曲がりや折れ等の破損が抑制されて突部2や支持部1の作製が容易になり、また加工が容易であるため加工精度が高くなる。また、支持部1と突部2との取り付け或いは取り外しの際には、支持部1又は突部2を少しひねったり、軽く叩打したりすることで、容易に着脱可能となる。
【0032】
また、支持部1には、気流の流路となる通気路20,21として、主通気路20と分枝通気路21とが設けられている。
【0033】
主通気路20は、前部体1aの背面における、上記接続孔18の開口が設けられている矩形状の領域(突部2が突設されている領域)の外側に、背面に開口するように溝状に凹設されている。この主通気路20は前記矩形状の領域の対向する二つの長辺の外側にそれぞれ前記長辺に沿って設けられている。
【0034】
また、分枝通気路21は、上記二つの主通気路20の間に、両端で各主通気路20に連通すると共に背面に開口するように、並行並列に複数凹設されている。この分枝通気路21は接続孔18の開口が設けられている矩形状の領域の内側に形成され、且つ各分枝通気路21は前記領域内の複数の接続孔18の接続空間19を順次横切るように設けられている。これにより、全ての接続孔18の接続空間19がいずれかの分枝通気路21に連通するようになっている。
【0035】
上記主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の背面側の開口は後部体1bによって閉塞されており、このため主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19は支持部1の内部に設けられる。このように支持部1を前部体1aと後部体1bとで形成すると共に主通気路20及び分枝通気路21や接続空間19を前部体1aと後部体1bとに挟まれた空間に形成することで、支持部1の内部に複雑な形態を有する主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19を容易に形成することが可能となる。ここで、図示の形態では前部体1aを凹設して主通気路20、分枝通気路21、接続空間19を背面に開口するように形成すると共にこの主通気路20、分枝通気路21及び接続空間19の開口を後部体1bで閉塞するようにしているが、このような形態に限られず、例えば後部体1bに主通気路20、分枝通気路21、接続空間19の少なくともいずれかを凹設して前部体1aで閉塞しても良い。
【0036】
また、主通気路20の形成位置は上記接続孔18(接続空間19)の開口が設けられている領域(突部2が突設されている領域)の外側であればよく、分枝通気路21の形成位置は前記領域の内側で全ての接続空間19を横切る位置であればよいが、上記のように主通気路20を前記領域の長手方向に沿った両側の外縁の外側にそれぞれ前記長手方向に沿って設けると共に、この主通気路20を結ぶように前記領域の内側に複数の分枝通気路21を、前記領域の短手方向に沿って並行並列に複数個形成すれば、分枝通気路21の経路長を可能な限り短く形成することができる。
【0037】
また、前部体1aの内部には、主通気路20に連通すると共に前部体1aの外周面で開口して支持部1の外部に連通する給気路22が設けられている。この給気路22は各主通気路20ごとに二つずつ設けられており、合計四個の給気路22が設けられている。
【0038】
また、この支持部1に設けられる複数の流通孔3は、その後端が支持部1の背面で開口して上記ベース部9の中空部12と連通し、前端が支持部1の前面で開口して上記口金部8の中空部11と連通し、支持部1を成形材料の流通方向に貫通するように形成されている。
【0039】
この複数の流通孔3は、支持部1から突設されている複数の各突部2の周囲を囲む位置に設けられ、且つこの突部2の周囲を均等に囲むように設けられる。すなわち、各突部2の周囲に設けられた複数の流通孔3は、前記突部2と各流通孔3との間隔がすべて等しくなると共に、流通孔3同士の間隔がすべて等しくなるように形成される。図示の例では各流通孔3は三個の突部2に囲まれた中心位置に形成されると共に、各突部2は正六角形状に配置された六個の流通孔3に囲まれた中心位置に形成され、これにより各突部2とその周囲の各流通孔3との間の間隔が一定であると共に、この周囲の各流通孔3同士の間隔が一定になるように形成されている。
【0040】
この複数の各流通孔3には、前端側の内周面に、前方に向かって内径が増大する流出側テーパ部4が設けられている。この流出側テーパ部4は支持部1の前部体1aに設けられている。また、この各流通孔3の後端側の内周面には、後方に向かって内径が増大する流入側テーパ部5が設けられている。この流入側テーパ部5は支持部1の後部体1bに設けられている。
【0041】
このとき、支持部1の前面では隣り合う流通孔3同士の流出側テーパ部4同士が隣接するように形成されており、複数個(図示では六個)の流出側テーパ部4にて囲まれた位置に、接続孔18が形成される平坦な領域24が確保されている(図7参照)。
【0042】
また、図6,8,10等に示されるように、支持部1の背面では隣り合う流通孔3の流入側テーパ部5同士が隣接するように形成されており、これにより隣り合う流出側テーパ部4同士の境界に尾根部6が形成される。この尾根部6の両側は流出側テーパ部4が形成されていることからそれぞれ前方側に向けて下り傾斜するようになっている。またこの尾根部6は後方からみて直線状に形成され、且つこの尾根部6の稜線が前方に向けて凹入するように形成される。このとき、流通孔3は複数個(図示では三個)の尾根部6に囲まれた位置に形成されている。また、複数個(図示では六個)の尾根部6の端部同士が交わる位置(接続孔18の形成位置と合致する位置)では、後方へ向けて突出する頂部7が形成されている。図示の例では頂部7の先端には小面積の平坦な領域が形成されているが、更に好ましくはこの頂部7の先端を尖形状に形成する。
【0043】
尚、図3では、後部体1bにおける流入側テーパ部5、尾根部6及び頂部7の図示を省略している。
【0044】
次に、このように形成される押出成形型Aを用いた成形体Bの成形について説明する。
【0045】
上記のような押出成形型Aを適宜の押出成形装置に取り付けて、成形材料に押出圧力をかけてベース部9側から押出成形型A内の成形材料の流路へ供給し、口金部8の前面開口から押し出して成形体Bを成形する。
【0046】
成形材料としては、押出成形に用いられる材料であれば特に制限されないが、特にセメント系成形材料を用いることができる。セメント系成形材料としては適宜の組成のものを用いることができるが、例えばセメントに必要に応じて骨材、繊維、着色剤等を配合して水と混練することによって調製されるものであり、セメントとしては普通ポルトランドセメント、スラグセメント、アルミナセメント、早強セメントなど任意のものを用いることができる。また骨材としては、シリカ、珪石粉、珪砂、フライアッシュ、スラグ、砕石等を用いることができる。繊維としてはポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、パルプ、カーボン繊維、綿、麻、金属繊維等を用いることができる。さらに着色剤としては鉄黒、カーボンブラック、酸化クロム等を用いることができる。
【0047】
また、特にセメント系成形材料として、油性物質を含有すると共に更に必要に応じて非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の乳化剤(逆乳化剤)を含有させた逆エマルション(W/Oエマルション)を形成するものを用いることも好ましい。このような逆エマルションタイプのセメント系成形材料は一定の保形性を有するため中空孔23を有する成形体Bを成形した場合にその形状を維持することができ、またこの押出成形型Aによれば後述するように過大な押圧力がかかることなく押出成形を行うことができて、成形時の逆エマルション構造の破壊が抑制され、その後の養生硬化に支障をきたすようなことを防止することができる。
【0048】
上記油性物質としては、水と逆エマルションを形成しうるものであれば、特に制限はなく、通常疎水性の液状物質が利用され、例えば、トルエン、キシレン、灯油、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。このうち、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等の重合性二重結合を有するもの(ビニル単量体)を使用する場合は、基材の硬化成形の際に油性物質の重合を促進するために、有機過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋剤を併用することもできる。
【0049】
この押出成形において、成形材料が支持部1及び突部2を通過する際には、成形材料はまず支持部1の各流通孔3に流入して分岐され、この流通孔3を通過した後、複数の突部2間を通過し、隣り合う突部2の間において各突部2の周囲を成形材料が突部2の突出方向に沿って並列に流動する。このとき、突部2の周囲を囲む位置に均等に配置されるように形成された流通孔3から成形材料が流出することで、突部2の周囲には成形材料の均等な流動が生じる。このため、成形材料を高い押出圧力をかけることなく突部2の周りに充分に充填することができる。また、このように成形材料が突部2間を流動する間、突部2の周囲を流れる成形材料が馴染んで一体化する。
【0050】
このような成形材料の流動の過程においては、成形材料がベース部9の中空部12から流通孔3に流入する際には、支持部1の背面に形成された尾根部6と頂部7とによって成形材料が容易に分岐して流通孔3に導かれやすくなっている。特に頂部7の先端が尖形状に形成されていると、この頂部7における成形材料の堆積が抑制され、成形材料の流通孔3への流入が更に促進される。更に、流通孔3の後端部に流入側テーパ部5が設けられていることによっても、成形材料の流通孔3への流入が促進される。
【0051】
このため、成形材料が流通孔3を通過するために必要とされる押出圧力を低減することができ、成形材料に加わる圧力を抑制することが可能となる。
【0052】
また、成形材料が各流通孔3から口金部8の中空部11側に流出する際には、流通孔3に流出側テーパ部4が設けられていることで、成形材料が横方向に広がりながら流出することとなる。このため、成形材料が流通孔3から流出する際の流動性が向上して成形材料の堆積を抑制することができる。また、成形材料が突部2間を通過する際での突部2の周りでの充填性が更に向上すると共に、突部2の周囲での成形材料間の馴染み性を更に向上することができる。
【0053】
そして、この成形材料が口金部8の前面開口から押し出されることにより、図20に示すような中空孔23を有する成形体Bが形成される。図20(a)は本実施形態のように円柱状の突部2を適用する場合に得られる成形体Bを示し、断面円形状の中空孔23を有する。また、突部2として六角柱状のものを適用する場合には、図20(b)に示すような、断面六角形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができ、その他適宜の形状の突部2を採用することで、所望の形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができる。
【0054】
得られた成形体Bは、必要に応じて所望の寸法となるように切断し、また特にセメント系成形材料にて形成する場合には、必要に応じて養生硬化させる。
【0055】
また、上記のような押出成形過程においては、各給気路22の支持部2の外部の開口からそれぞれエアー等の気流を供給する。このため、供給された気流は各給気路22から各主通気路20に流入し、更に複数の各分枝通気路21に分岐して流入する。このとき複数の各分枝通気路21にはその両側の端部からそれぞれ気流が流入する。そしてこの気流は各分枝通気路21から接続空間19を介して各突部2内の通気孔17に流入し、この各突部2の前面開口から流出する。このため、成形体Bに形成される中空孔23には、エア等の気流が供給されることとなる。
【0056】
このように成形体Bの中空孔23に気流を供給すると、中空孔23内の圧力が低下することを防止し、この中空孔23が埋まってしまわないようにすることができる。
【0057】
また、成形材料の押出成形過程において中空孔23の一部が何らかの不具合により埋まってしまった場合には、それ以後に形成される中空孔23の内部には空気が供給されずその内部の圧力が非常に低くなってしまうことがある。このような場合、形成された成形体Bは中空部内と外部との圧力差により破損が生じやすい状態となってしまう。このため、成形中に中空孔23が順次潰れていって中空孔23が形成されなくなるおそれがあり、また中空孔23が形成されたとしても成形体Bを切断するために荷重をかけた場合などに成形体Bが破損してしまうおそれがある。しかしながら、上記のように成形体Bの中空孔23に気流を供給すると、たとえ中空孔23の一部が埋まってしまったとしても中空孔23の内部の圧力が低下することを防止することができ、前記のような成形体Bの破損を防止することができる。特に、本実施形態では突部2の外径寸法に対する通気孔17の内径寸法の比率を大きくすることが可能であるため、この通気孔17における気流のスムースな流通が確保され、中空孔23の内圧の低減が更に確実に抑制される。
【0058】
ここで、中空孔23内に供給される気流の圧力が高すぎると中空孔23の内部の圧力と成形体Bの外部の圧力との差によって逆に成形体Bが破損するおそれがあるため、この気流の圧力は大気圧近傍の圧力であることが好ましい。このとき給気路22から、主通気路20、分枝通気路21、接続空間19及び通気孔17を介して流出する気流の流路抵抗が大きい場合には、大気圧に近い低圧で気流を供給することが困難となる。
【0059】
しかしながら、本実施形態では既述の通り分枝通気路21の経路長をできるだけ短く形成しており、また気流は分枝通気路21の両端からそれぞれ供給されるため、分枝通気路21における気流の経路長は最大でも分枝通気路21の長さの1/2に留まることとなる。このため気流の全体の経路長が短くなり、流路抵抗が低減される。また、各分枝通気路21に接続されている突部2の通気孔17の個数を低減することができることで、流路抵抗が更に低減される。また、このように分枝通気路21の両側から気流を供給するため、たとえ分枝通気路21の途中で詰まりが生じたとしても気流を各通気孔17に安定して供給することができる。
【0060】
また、各突部2の中空孔23から流出する気流同士の間で、中空孔23から流出するまでの流路抵抗の差が大きくなると、各気流間で圧力の差が大きくなり、成形体Bに形成される各中空孔23内の圧力差が大きくなって、成形体Bの破損の原因となるおそれがある。
【0061】
しかしながら、上記流路抵抗の差は、主として気流が分枝通気路21に流入してから各突部2の通気孔17に流入するまでの間の経路長の差によって生じるが、上記のように分枝通気路21における気流の経路長が短くなるようにすることで、気流の経路長の差が小さくなるようにすることができ、これにより各突部2の中空孔23から流出する気流間の圧力差を低減することができる。
【0062】
また、分枝通気路21の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積をできるだけ大きくすることにより分枝通気路21における流路抵抗を低減すれば、全体の流路抵抗の低減に寄与することができ、気流を更に低圧で供給することができるようになる。また、分枝通気路21における経路長の相違による流路抵抗の差を小さくすることができるため、各突部2の中空孔23から流出する気流間での流路抵抗の差も小さくなり、この気流間の圧力差を更に低減することができる。この場合の分枝通気路21の断面積は、各分枝通気路21につき、この分枝通気路21の断面積をS、この分枝通気路21における気流の流入位置の個数をn、この分枝通気路21に接続されている全ての突部2の通気孔17の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積の合計をsとすると、S≧s/nの関係を有することが必要であり、本実施形態では分枝通気路21の両端からそれぞれ気流が流入するため、n=2となり、S≧s/2の関係を有する必要がある。ここで、通気孔17の断面積は突部2の断面積、すなわち成形体Bに形成される中空孔23の径に依存し、成形体Bの中空孔23の径が小さいと通気孔17の断面積も小さくする必要があるため、成形体Bに形成される中空孔23の径に応じて分子通気路21の断面積を設計する必要がある。
【0063】
上記のような分枝通気路21を形成するにあたり、成形体Bに中空部23を密に形成するために突部2を密に形成する場合には、通気孔17も密に形成されることとなり、分枝通気路21は前記通気孔17の間を縫って形成する必要があるため、分枝通気路21の幅を充分に大きく形成することは困難になる。このため、分枝通気路21の断面積を充分に大きくなるように形成するためにはこの分枝通気路21の深さを充分な大きさに確保する必要がある。そのためには前部体1aの厚みを充分に厚くなるように形成することが好ましい。
【0064】
また、更に主通気路20の長手方向と直交する面(気流の流通方向と直交する面)の断面積をできるだけ大きくすることにより主通気路21における流路抵抗を低減すれば、全体の流路抵抗を更に低減することができる。特に、各主通気路20につき、この主通気路20の断面積をS′、この主通気路20に連通している全ての分枝通気路21の断面積の合計をs′とすると、S′≧s′の関係を有することが好ましい。
【0065】
図11に第二の実施形態を示す。本実施形態は、第一の実施形態の変形例である。本実施形態におけるベース部9は前後方向の筒状体で形成されており、このベース部9の内部には、口金部8の中空部11と合致する位置に、前後に貫通する中空部12が設けられている。このベース部9の前端部には外周方向に突出する前鍔部27が全周に亘って設けられており、この前鍔部27が支持部1に重ねられている。連通孔13はこの前鍔部27に穿設されている。また、ベース部9の後端部には外周方向に突出する後鍔部28が全周に亘って設けられており、この後鍔部28に複数の連通孔42が穿設されている。これらの連通孔13や連通孔42は、口金部8、支持部1及びベース部9を重ねて押出成形型Aを構成する際の位置合わせの基準としたり、この連通孔13,42にボルト等の適宜の固着具を挿通して押出成形機に取着するために利用したりすることができる。また、口金部8の鍔部10、支持部1及びベース部9の前鍔部27には、これらの両側面に沿ってそれぞれ配置される側片43と、各側片43を連結すると共に口金部8の鍔部10、支持部1及びベース部9の前鍔部27の下端面に沿って配置される下面片44とで構成される保持具45が取着されている。
【0066】
本実施形態においても、第一の実施形態の場合と同様に、突部2の後端に形成された外側テーパを有する接続部16と、支持部1に設けられた内側テーパを有する接続孔18とを嵌合させることで、突部2が支持部1に支持される。
【0067】
第三の実施形態について説明する。図13(a)(b)及び図19に示す押出成形金型Aは、内部の空間を流路51として形成した金型本体52と、金型本体52の流路51に収容される中型70とを備えて形成されている。金型本体52及び中型70はステンレス鋼などの金属材料を用いて形成することができる。
【0068】
金型本体52は、複数枚のプレートを組み合わせることにより横長の箱状に形成されるものであって、その前面には横長開口の入口53が形成されていると共に背面には横長開口の出口57が形成されている。入口53は流路51の材料入側と連通しており、出口57は流路51の材料出側と連通している。
【0069】
図14(a)(b)に示すように、中型70は複数の中空の突部2と、この突部2を支持する支持部1で構成されるものであって、金型本体52と同様に横長に形成されている。中型70は複数のピンブロック71、71…を組み合わせて一体化することにより形成することができる。図15(a)〜(c)に示すように、ピンブロック71は複数の突部2、2…を支持バー54に設けて形成され、前記複数の支持バー54で支持部1が構成される。
【0070】
この突部2は第一の実施形態と同様の構成を有する。すなわち、図2に示すように各突部2は主部25、拡径部15、大径部14、及び接続部16から構成されている。主部25は外径が均一な円柱状に形成されている。大径部14は前記主部25よりも大きい外径を有する円柱状に形成されている。拡径部15は前記主部25と大径部14との間に介在し、大径部14側に向けて徐々に外径が大きくなるように形成されている。突部2の各部分の寸法は特に限定されないが、例えば、主部25の外径を4mm、大径部14の外径を6mm、突部2の全体長さを80mm、大径部14の長さを10mm、拡径部15の長さを15mmとすることができる。
【0071】
また、接続部16の外周面には、後端側ほど外径が小さくなる外側テーパが形成されている。このため、接続部16の前端部の径は主部25と同一であり、後端部の径は主部25よりも小さくなっている。この接続部16の外側テーパのテーパ角度は1.0°〜5.0°の範囲であることが好ましい。
【0072】
この突部2には、その内部を成形材料の流通方向に沿って前後に貫通する通気孔17が設けられている。
【0073】
図16(a)(b)に示すように、支持バー54は、支持部材74と蓋部材75とで形成されている。支持部材74は上下一対の保持部76、76と、上下の保持部76、76の間に架設される取付片77とを備えて形成されており、取付片77の両側面には複数のピンベース78、78…が突設されている。ピンベース78は前後方向に長い管状に形成されるものであって、その内部空間はエア流路29として形成されている。また、ピンベース78の外形形状は突部2の主部25(小径部23)の外形形状と同じで、且つピンベース78の内径は突部2の主部25の外径よりもやや小さく形成されている。また、複数のピンベース78、78…は千鳥配置により上下に並べて形成されている。すなわち、複数のピンベース78、78…は取付片77を挟んでジグザグに配置されており、取付片77の一方の側面に設けたピンベース78と他方の側面に設けたピンベース78とが同じ高さ位置になく、上下にややずれた位置に配置されている。また、支持部材74の背面には上下一対のエア溝30、30が凹設されている。上側のエア溝30は上側の保持部76の背面の略中央部から取付片77の背面の略中央部にまで達し、下側のエア溝30は下側の保持部76の背面の略中央部からから取付片77の背面の略中央部にまで達するように形成されている。また、各エア溝30には複数の分岐溝部31が設けられており、分岐溝部31はピンベース78の背面にまで達するように形成されている。そして、ピンベース78に設けたエア流路29の後端が分岐溝部31の底面で開口している。尚、符号32は保持部76の背面に設けたネジ孔である。前記エア流路29、エア溝30、及び分岐溝部31によって、支持部1における通気路26が構成される。
【0074】
この支持部1を構成する支持部材74のピンベース78には、前面に開口する接続孔18が設けられている。この接続孔18の内面には、上記突部2の接続部16の外側テーパに合致する内側テーパが形成されている。また、この接続孔18の後端はピンベース78の内部で上記エア流路29と連通している。
【0075】
蓋部材75は上記支持部材74とほぼ同様の断面形状を有するものであって、上下一対の保持部蓋33、33と、上下の保持部蓋33、33の間に架設される取付片蓋34とを備えて形成されており、取付片蓋34の両側面には複数のピンベース蓋35、35…が突設されている。また、各保持部蓋33の略中央部には前後方向に貫通するエア導入孔59が設けられている。また、蓋部材75の取付片蓋34やピンベース蓋35の角部は面取り加工により滑らかなテーパー形状の面取り部36として形成されている。尚、符号37は保持部蓋33を前後方向に貫通するネジ孔である。
【0076】
そして、支持部材74の背面に蓋部材75の前面を密着させた状態でネジ孔32、37にネジを差し込んで締め付けることによって、支持部材74の背面に蓋部材75を取り付けて支持バー54を形成することができる。このように蓋部材75を取り付けることによって、保持部76におけるエア溝30を保持部蓋33で閉塞し、取付片77におけるエア溝30を取付片蓋34で閉塞し、ピンベース78における分岐溝部31をピンベース蓋35で閉塞することができる。また、蓋部材75に設けた上側のエア導入孔59が上側のエア溝30の上端部と対応する位置に配置されると共に下側のエア導入孔59が下側のエア溝30の下端部と対応する位置に配置されることになり、エア導入孔59とエア溝30とが連通した状態となる。
【0077】
上記の支持部1の各ピンベース78の前側に突部2を取り付けることによって、ピンブロック71が構成されている。突部2は図12に示すようにその接続部16をピンベース78の前面に開口する接続孔18に嵌合することで、支持部1に支持される。
【0078】
このように突部2をピンベース78に取り付けると、突部2の通気孔17とピンベース78のエア流路29とが連通状態となる。従って、蓋部材75のエア導入孔59からエア溝30、分岐溝部31、エア流路29、通気孔17にまで達するエア(気流)の流路を形成することができる。また、ピンベース78を千鳥配置に形成しているため、ピンベース78に取り付けた突部2も千鳥配置に配設することができる。
【0079】
そして、複数の上記のピンブロック71、71…を組み合わせて一体化することにより中型70を形成する。複数のピンブロック71、71…を組み合わせて一体化するにあたっては、まず、複数のピンブロック71、71…を横方向に並べて配置する。ここで、隣接するピンブロック71、71の支持バー54、54の保持部76、76の側面同士が密着するようにする。次に、横方向に並べた複数のピンブロック71、71…の支持バー54、54…の上側と下側に長尺の連結ベース38、38を配置し、上下一対の連結ベース38、38で複数のピンブロック71、71…を横方向の全長にわたって挟持する。次に、図17に示すように、上下の各連結ベース38の背面に押さえ治具39を横方向のほぼ全長にわたって取り付ける。上側の押さえ治具39には下方に突出する押圧片40が突設されており、この押圧片40がピンブロック71の蓋部材75の上側の保持部蓋33の背面に密着している。また、下側の押さえ治具39には上方に突出する押圧片40が突設されており、この押圧片40がピンブロック71の蓋部材75の下側の保持部蓋33の背面に密着している。また、各押圧片40にはエア供給溝41がほぼ全長にわたって形成されており、このエア供給溝41と各ピンブロック71のエア導入孔59とが連通状態となる。また、エア供給溝41は連結ベース38の側端面に開口したエア入口50と連通している。このようにして連結ベース38の前端面よりも前側に複数の突部2、2…が突出した中型70を形成することができる。ここで、図18(a)(b)に示すように、中型70の隣り合う支持バー54、54の間には流通孔3が形成される。この流通孔3を挟んで両側に位置する複数のピンベース78、78…は千鳥配置により上下に並んで配置されている。従って、流通孔3は上下にわたってほぼ一定の幅寸法を有して蛇行するように形成されている。
【0080】
また、上記のようにして形成される中型70を金型本体52の流路51に配置することによって、本発明の押出成形金型Aを形成することができる。このとき、中型70はその支持バー54側を金型本体52の入口53側に向け、突部2の先端を金型本体52の出口57側に向けるようにして配置し、流路51の成形材料に流れ方向の略中央部(入口53と出口57の間のほぼ中間)に中型70の支持バー54、54…を位置させるようにする。従って、流路51の略中央部の空間は複数の支持バー54、54…で所定の間隔で仕切られることになり、入口53側に向かって開口する流通孔3が流路51の略中央部に形成されることになる。また、突部2は流路51内においてピンベース78から出口57の方に向かって突出することになるが、ピンベース78から突部2の先端まではほぼ真っ直ぐで成形材料の押出方向と平行である。尚、図19では、流路51の略中央部に中型70の支持バー54、54…を位置させるようにしたが、これに限らず、流路51の中央部から入口53側や出口57側に偏っていてもよい。
【0081】
本発明の押出成形金型Aは押出機に取り付けて使用する。すなわち、押出機により金型本体52の入口53から流路51に成形材料を供給し、成形材料を出口57に向かって流路51で流動させた後、出口57から連続的に押し出すことにより、図20に示すような成形材料からなる長尺シート状の成形体Bを形成することができる。このシートにはピンベース78及び突部2によりシートの長尺方向(押出方向)に連続する複数の中空孔23、13…を形成することができる。そして、長尺シート状の成形体Bを所望の長さに切断した後、必要に応じて養生硬化することにより、建築板などとして使用することができる。図20(a)は円柱状のピンベース78及び突部2を用いた場合に得られる成形体Bを示し、断面円形状の中空孔23を有するものである。その他図20(b)のように適宜の形状のピンベース78及び突部2を採用することで、所望の形状の中空孔23を有する成形体Bを得ることができる。
【0082】
上記のような成形体Bの押出成形において、成形材料は金型本体52の入口53から流路51に流入した後、中型70の複数の支持バー54、54…で分けられて各流通孔3、3…を通過することになる。このとき、中型70の背面において、取付片77やピンベース78などの支持バー54の流通孔3に臨む縁部を面取り部36として形成してテーパー形状にしたので、入口53から流通孔3を通過する際の成形材料の流れ性を向上させることができ、流路51で成形材料が堆積したり詰まったりすることなく、スムーズに成形することができる。また、各流通孔3はほぼ一定幅に形成されているので、成形材料は流通孔3を通過することでピンベース78及び突部2の周囲で均一に流通することができる。従って、成形材料の切れが発生しなくなって、複数の中空孔23を有する長尺シート状の成形体Bを安定的に成形することができる。
【0083】
また、流通孔3を通過した後の成形材料は突部2の周囲の空間(流路51)を出口57の方に向かって流れるが、このとき、支持バー54、54によって分離された成形材料はその界面が馴染んで一体化する。また、突部2にはその主部25よりも出口57側に、主部25よりも径が大きな拡径部15や大径部14が形成されているため、突部2の周囲を成形材料が流通する際に、拡径部15で徐々に圧縮されることになり、成形材料の連続性や付着性を向上させることができる。また、拡径部15で圧縮した成形材料のスプリングバックを大径部14により防止することができる。
【0084】
さらに、突部2の先端面の通気孔17の開口からエア(気流)を吹き出しながら上記の押出成形を行うようにする。すなわち、中型70の連結ベース38のエア入口50にエアポンプ等を接続して押さえ治具39のエア供給溝41にエアを供給し、エア供給溝41に接続されるエア導入孔59を通じて上記エアを、エア流路29、エア溝30及び分岐溝部31で構成される通気路26に供給する。すなわち、このエアは支持バー54のエア溝30に供給され、この後、エア溝30に供給されたエアは分岐溝部31を通じてピンベース78に設けたエア流路29を流通する。このエアはエア流路29から突部2の通気孔17に導入される。この後、突部2の先端面の通気孔17の開口からエアが吹き出される。そして、このように突部2の先端面の通気孔17の開口からエア(気流)を吹き出しながら成形材料を流路51の出口57から押出成形することによって、万一、出口57から押出成形された長尺シート状の成形体Bにタレ(垂れ)や変形が生じて部分的に中空孔23が塞がっても通気孔17からのエアの供給により中空孔23内が減圧状態にならないようにすることができる。従って、中空孔23の塞がった部分以降において中空孔23が連続的に潰れることを防止することができる。
【0085】
尚、本実施形態において、中型70を構成するピンブロック71の個数を変更することにより、成形体Bに形成される中空孔23の個数を変更することも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第一の実施の形態の要部を示す一部の断面図である。
【図2】同上の突部の構成を示すものであり(a)は側面図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態における、支持部及び突部の構成を示す分解斜視図である。
【図4】図1の一部拡大図である。
【図5】本発明の第一の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第一の実施形態を示す他の斜視図である。
【図7】本発明の第一の実施形態を示す正面図である。
【図8】本発明の第一の実施形態を示す一部の背面図である。
【図9】本発明の第一の実施形態を示す一部破断した斜視図である。
【図10】本発明の第一の実施形態を示す一部破断した他の斜視図である。
【図11】本発明の第二の実施形態を示す一部破断した他の斜視図である。
【図12】本発明の第二の実施形態の要部を示す一部の断面図である。
【図13】本発明の第三の実施形態を示し、(a)は材料入側から見た斜視図、(b)は材料出側から見た斜視図である。
【図14】本発明の第三の実施形態における中型を示し、(a)は材料入側から見た斜視図、(b)は材料出側から見た斜視図である。
【図15】本発明の第三の実施形態におけるピンブロックを示し、(a)は斜視図、(b)は背面図、(c)は前面図である。
【図16】(a)は本発明の第三の実施形態におけるピンブロックの分解斜視図、(b)は支持部材の斜視図である。
【図17】本発明の第三の実施形態における中型を示し、一部を破断した斜視図である。
【図18】本発明の第三の実施形態における中型を示し、(a)は一部の背面図、(b)は一部の前面図である。
【図19】本発明の第三の実施形態を示す断面図である。
【図20】(a)及び(b)は成形体の例を示す一部破断した斜視図である。
【図21】従来技術の一例を示すものであり、(a)は側方から視た断面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図22】従来技術の他の一例を示すものであり、(a)は突部を示す断面図、(b)は突部を示す側面図、(c)は突部の取り付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0087】
A 押出成形型
B 成形体
1 支持部
2 突部
3 流通孔
16 接続部
17 通気孔
18 接続孔
20 通気路(主通気路)
21 通気路(分枝通気路)
23 中空孔
26 通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を押出成形することにより複数の中空孔を有する成形体を成形するための押出成形型であって、
成形材料の流路を前後に仕切る、前後方向に貫通する流通孔が形成された支持部と、この支持部から前方に向けて突出する複数の突部とを具備し、
前記突部には前記流通方向に貫通する通気孔が設けられ、前記支持部には外部から供給される気流が流通すると共に前記突部の通気孔に連通する通気路が設けられ、
前記支持部と前記突部とが、支持部の前面側に設けられた接続孔と突部の後端に設けられた接続部との凹凸嵌合により接続され、
前記接続部の外周面には後端側ほど外径が小さくなる外側テーパが形成されると共に、前記接続孔の内面には前記外側テーパに合致する内側テーパが形成されていることを特徴とする押出成形型。
【請求項2】
上記接続部の外側テーパのテーパ角度が、1.0°〜5.0°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の押出成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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