説明

押出成形装置および弾性体ローラの製造方法

【課題】弾性体ローラを振れ精度良く製造することのできる弾性体ローラの製造方法、振れ精度の良い弾性体ローラを製造するために好適な押出成形装置を提供する。
【解決手段】円筒体の周囲に被膜を形成する押出成形装置であって、円筒体を通過させるための円孔部を有するクロスヘッドと被膜を形成する材料をクロスヘッドに供給するための押出し機とを有し、クロスヘッド内の円孔部に円孔部の他の部分よりも内径が小さい絞り部を一つ以上有し、かつ絞り部の少なくとも一部が弾性を持つ。芯金の周囲に弾性層を有する弾性体ローラの製造方法であって、芯金を、弾性層の原料組成物が連続的に供給されるクロスヘッド内の円孔部を通過させて、芯金の周囲に該原料組成物の被膜を形成する工程を有し、この工程において、円孔部に絞り部を有し、絞り部の断面における内接円の直径が芯金の外直径よりも小さいクロスヘッドを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真プロセスを利用した画像形成装置において、紙送り、帯電、転写、現像などのために用いることのできる弾性体ローラに関する。また本発明は弾性体ローラを製造するための押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真の帯電・転写プロセスにおいて、接触帯電・転写の手法が多く研究されている。図1は、接触帯電方式の転写手段を用いた電子写真装置の構成を模式的に示す図である。1は被帯電体としての像担持体であり、アルミニウムを用いた導電性の基体層とその外周面に形成した光導電層の二層からなるドラム型の電子写真プロセスに用いられる感光体である。2はこの感光体に接し、感光体面を所定の電位に一様に帯電させる帯電部材であり、本例ではローラ形状のものを示す。
【0003】
この帯電ローラは、中心部の芯金と、その外周に形成した導電性弾性体の層から構成される。この帯電ローラは、バネ等の圧接手段で感光体1に所定の圧接力をもって圧接され、感光体1の回転にともない従動回転する。また、この帯電ローラの芯金部に直流+交流(又は、直流のみ)バイアスを印加することで感光体1は所定の電位に接触帯電される。つまり、良好なコピー画像を得るためには、帯電ローラと感光体との均一な接触状態と、帯電ローラの均一な導電性が必要になる。帯電部材2で所定の電位に帯電された感光体1の表面において、レーザー、LED等の露光手段3によって画像情報を露光されることによって、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0004】
次いで、その潜像を現像手段4によってトナー画像9として可視像化する。転写手段6によって転写材5の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで感光体1の表面のトナー画像9が転写材5の表面側に転写される。トナー画像の転写を受けた転写材5は感光体1から分離され、トナー画像9は定着手段7によって熱、圧力で固着される。また、像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段8で転写時における残留トナー等の付着物の除去を受けて清浄面化され、くり返し作像に供される。
【0005】
上記帯電ローラのようなローラの製造には、チューブ状に原料組成物を押出した後に芯金に圧入する方法や、クロスヘッドを用いて芯金と同時に原料組成物を押出す事で原料組成物によって芯金を被覆する方法が行われる。クロスヘッドを用いる方法において、芯金が原料組成物で被覆されたローラの振れ精度が良いと、研磨等の後工程を簡略化或いは省略できるため好ましい。
【0006】
しかし、従来は横方向に押出す際に芯金の自重によって中心がずれてしまったり、クロスヘッドから押出された物を引き取って個々の芯金に分離する際の外力などが精度に対して悪影響を及ぼす事などが課題となる場合があった。
【0007】
これらの課題に対し、従来は押出し方向を下向きにしたり(参照:特許文献1)、クロスヘッドから出てくるローラを精度良く引き取ったりするなどが行われたりしてきた。しかし芯金の太さがばらつく場合や、芯金上に塗布する接着剤の膜厚がばらつく場合等には芯金を通す円孔部と芯金とのガタが大きくなってしまう事があるため、振れ精度がばらついて精度が悪いローラも発生してしまっていた。
【特許文献1】特開2005−227754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、弾性体ローラを振れ精度良く製造することのできる弾性体ローラの製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、振れ精度の良い弾性体ローラを製造するために好適な、押出成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、円筒体の周囲に被膜を形成する押出成形装置であって、
該円筒体を通過させるための円孔部を有するクロスヘッドと、該被膜を形成する材料を該クロスヘッドに供給するための押出し機とを有し、
該クロスヘッド内の円孔部に、該円孔部の他の部分よりも内径が小さい絞り部を一つ以上有し、かつ該絞り部の少なくとも一部が弾性を持つことを特徴とする押出し成形装置が提供される。
【0011】
本発明により、芯金の周囲に弾性層を有する弾性体ローラの製造方法であって、
芯金を、該弾性層の原料組成物が連続的に供給されるクロスヘッド内の円孔部を通過させて、該芯金の周囲に該原料組成物の被膜を形成する工程を有し、
該工程において、該円孔部に絞り部を有し、該絞り部の断面における内接円の直径が該芯金の外直径よりも小さいクロスヘッドを用いることを特徴とする弾性体ローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、弾性体ローラを振れ精度良く製造することのできる弾性体ローラの製造方法が提供される。
【0013】
本発明により、振れ精度の良い弾性体ローラを製造するために好適な、押出成形装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の押出成形装置は、円筒体の周囲に被膜を形成する押出成形装置であって、円筒体を通過させるための円孔部を有するクロスヘッドと、被膜を形成する材料をクロスヘッドに供給するための押出し機とを有する。
【0015】
円筒体として、クロスヘッドを用いた押出成形装置によって被膜を形成可能な公知の円筒体を採用でき、弾性体ローラの芯金を好適に用いることができる。以下の説明においては、押出成形装置によって弾性体ローラを製造する場合を例にする。従って円筒体として弾性体ローラの芯金を例にして説明する。
【0016】
被膜は円筒体の周囲の少なくとも一部を覆うものであって、その厚さは限定されない。
【0017】
本発明においては、クロスヘッド内の円孔部に、円孔部の他の部分よりも内径が小さい絞り部が一つ以上設けられる。そして、絞り部の少なくとも一部が弾性を持つ。
【0018】
クロスヘッド内部の円孔部に弾性を有する絞り部を配置する事によって、所定の長さを有する芯金を連続的に円孔部に供給しても、円孔部における芯金の位置を安定させる事ができる。そのため、芯金の周囲に円筒状に成形する原料組成物(弾性体を形成するための材料)と芯金との同心度の安定性を向上させる事が可能となり、ローラとしての振れのばらつきを押さえる事ができる。
【0019】
図2に本発明の押出成形装置の一形態の概要を示す。10は押出し機であり、下向きクロスヘッド11に接続され、クロスヘッドに成形用の材料を供給する。クロスヘッド11は円筒体としての芯金を通過させるための円孔部を備え、芯金を挿入する円孔部の入り口には、連続的に所定の長さを有する芯金12を供給できるようにクロスヘッドの入り口側に芯金供給ユニット13を備える。芯金供給ユニット13には、芯金ストッカーから芯金12を取り出し、送りローラ14に供給する機構が備わる。
【0020】
連続的に送りローラ14によって供給される芯金12は、その周囲に原料組成物が円筒状(原料組成物の断面は環状)に被覆されながらクロスヘッド11から押出され、静止していた支持機構17に途中で接触する。支持機構17は押し出された芯金の進行方向に押されて移動する。支持機構17が所定の位置に到達した時点で、半円状に切りかかれた一対の切断刃16が、芯金の周囲に形成された円筒状の原料組成物を切断する。切断の後、支持機構17と切断刃16を芯金の押出し方向に芯金送り速度よりも速い速度で動かし、原料組成物を被覆した芯金(ここで未加硫ローラとする)に一本ずつに分離する。その後オートハンド18によってトレイ19に置かれ次工程に進む。
【0021】
図3にはクロスヘッド11内部の詳細構造の例を模式的に示す。クロスヘッド内部には芯金12を通すための円孔部23が設けられ、原料組成物と芯金が合わさる部分にニップル20が備わる。また、ダイス21を芯金の進行方向に対し、直交二軸の方向に動かせるようにクロスヘッドの周囲に90度ピッチで配置された4本の調芯ボルト15を備える。円筒状の原料組成物と芯金との同心の調整はこの調芯ボルトの調整で行うことができる。芯金を通過させるための円孔部23の一部には、リング状部材22を用いた絞り部24が設けられている。絞り部24では、芯金が通過していないときの内径は芯金径よりも小さなものとなっている。
【0022】
なお、送りローラ14の材質としては、芯金を傷つけることないように、ナイロン、テフロン、POM(ポリオキシメチレン)等の樹脂を用いることが好ましいが、その他に、アルミ、真鍮、銅などやあるいはその合金など、硬度が低い金属でも良い。
【0023】
また、芯金の長さに相当する周期で規則的に芯金送り速度を変化させる事で、円筒状原料組成物の外径をクラウン形状、あるいは逆クラウン形状に仕上げても良い。
【0024】
絞り部は一つでも効果はあるが、一つ以上あっても良く、芯金に傾きを発生させないようにするために二つ以上が特に好ましい。
【0025】
絞り部の形態としては、例えば、円孔部の径を同心的に絞る形態や、円孔部の内側に向かって突出する突起物を設ける形態がある。
【0026】
絞り部の少なくとも一部に弾性を持たせるということは、通過させる力で絞り部が芯金が傷つけないように変形できる事をさす。弾性を持たせるために、絞り部が弾性を持つ機構を備えたり、材料自身が弾性を持つゴムや樹脂などを絞り部に用いたりすることができる。
【0027】
絞り部が弾性を持つために、絞り部がバネを有することができる。
【0028】
例えば、弾性を有する絞り部の一つの形態として、板状バネによる押し付け機構(板状バネを内側に突出させて絞りを形成する)が挙げられる。板状バネによる押し付け機構では押し付け力をバネの材質や板厚を選択することで適宜調整する事が容易である。このため、種々の太さの芯金を用いて成型する際に、板状バネを容易に交換することができる。
【0029】
図4に板状バネ26が備えられたニップルを模式的に示した。図4(a)は上面図であり、図4(b)はA−A断面図である。ニップル25は中央部に芯金を通過させるための円孔部23を設けた円錐形状をなしており、またに円錐形状の径の大きい側にはクロスヘッドに取り付けるためのネジ部41が設けられている。ニップル25の円孔部23に板バネ26を収容するための溝が形成してある。円孔部23において板バネが内側に突出することで絞り部24を形成している。板バネの最も内側に突出した部分(最突出部 BB断面)を含む円孔部断面(押出し方向に垂直な断面)における内接円24aの内径が、円孔部の他の部分の断面における内接円の内径より小さくなっている。
【0030】
ニップル内に設ける溝部とバネの組み合わせは図4においては一組しか示されていないが複数組設けてもよい。例えば120度ピッチで円孔部の周方向に三カ所溝を設け、それぞれの溝に板バネを仕込むことによって、3方向から均等に芯金を押し付けることができる。
【0031】
板バネの材質としては、芯金を傷付けないように芯金(芯金がメッキされている場合にはメッキ層)よりも硬度が低い金属が好ましい。例えば、鉄、SUS、アルミニウム、真鍮などの金属類の中から選択する他、ナイロン、フッ素樹脂、POMなどの樹脂などを用いてもよい。また、板バネの表面は芯金を傷つけないように樹脂、ゴムなどでコーティングしても良い。
【0032】
また、板バネ以外でもコイルバネを用いても良いし、移動できる球形の部材などを介してバネなどで加圧しても良い(例えばボールプランジャー等の機構)。また、リング状に板バネを形成しても良いし、リング状の板バネに樹脂を被覆しても良い。
【0033】
絞り部が弾性を持つために、絞り部がJIS A硬度で70〜90のゴムや樹脂などの弾性材料からなるリング状部材を有することができる。
【0034】
円周方向に対称のリング状部材を使う事で、芯金の位置を円孔部の中心に対してセンタリングする事が可能となるため、芯金径がばらついた場合でも中心を維持する事が容易となり、振れ精度の安定性を向上させる事が容易である。
【0035】
リング状部材の材質としては、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム等を用いる事ができる。
【0036】
図5にリング状部材を用いるためのニップルを模式的に示した。ニップル27の内部にリング状部材として断面が円のO−リング28を円孔部と同軸に配置できるように溝を設け、上方にずれないようにバックアップ部材29を備える。O−リングを備える事で絞り部24を形成する。
【0037】
O−リング28はその最内径(BB断面上に存在する)が、円孔部23の内径より小さくなっている(特に絞り部より芯金出口方向のニップル内径と比較して径が小さいと良い)。
【0038】
リング状部材の硬度(JIS A硬度)は、芯金径のばらつきに対する追従性の観点から、例えば太い芯金でも容易に通過可能とする観点から、90以下が好ましい。一方、センタリング力の観点から70以上が好ましい。
【0039】
ここで、JIS A硬度とは、JIS K 6253に示されるデュロメータ硬さ試験による硬度であり、タイプAデュロメータ(A型)を用いたものである。
【0040】
前記リング状部材が、円孔部の中心軸と直角を成す平面を有することが好ましい。例えば、リング状部材の一部が平面形状であり、かつリング状部材のこの平面を円孔部中心軸と直角を成すように配置する事ができる。
【0041】
リング状の部材の保持部が長方形の場合にリング状部材の断面形状が丸いと、芯金が通過する際の摩擦によるリング状部材の変形が大きく、磨耗やリング状部材の破断などが発生する場合がある。そこで、保持用の溝内の平面と安定して接触させ、リング状部材の変形を小さくするために、リング状部材を保持部に配置した際の円孔部の中心軸と直角を成す方向の平面を持つような形状のリング状部材が耐久性が高く、安定して効果を発揮する事を見出した。
【0042】
例えば、図6(b)のように平面B1を持つリング状部材の形状が好ましく、図7に示されるように円孔部中心軸33に垂直な面(平面B2)をもつように、断面が長方形の溝34で保持すると好ましい。
【0043】
前述のリング状部材を用いる形態において、リング状部材の少なくとも内周面をリング状部材よりも硬度の高い弾性材料で被覆することができる。この場合被覆する前のリング状部材をリング状部材本体とし、被覆した高硬度弾性材料の部分を付加部材とする。リング状部材本体はJIS A硬度70〜90が好ましい。被覆の仕方としては、被覆したい部分に樹脂を塗工しても良いし、別部材として薄い樹脂の部材を用意し、嵌め合わせても良い。ただし、リング状部材本体の弾性を損なわないためにも、リング状部材本体よりも厚みが薄い事が好ましい。
【0044】
例えば、図6(c)のように芯金が通過する際に接触する部分を覆うとよい。図6(c)では、リング状部材の本体31は断面が円で硬度がJIS A硬度70〜90のものが用いられ、その内周面に内径が芯金よりも小さい径の高弾性材料からなる付加部材32で被覆されているものが用いられる。
【0045】
リング状部材の内周面を被覆する硬度の高い弾性材料としては、フッ素、シリコーンを含む樹脂の他、POM、ナイロンなどの低摩擦の材料が特に耐久性を向上させる事ができる観点から好ましい。リング状部材よりも硬度の高い弾性材料の硬度はJIS K 7215に示されるデュロメータD硬度で60以上が好ましく、厚さは1mm以下が好ましい。なお、デュロメータD硬度で60以上であると、JIS A硬度で70〜90の範囲のものよりは一般的に硬度が高いものである。
【0046】
本発明の弾性体ローラの製造方法は、芯金の周囲に弾性層を有する弾性体ローラの製造方法であって、
芯金を、弾性層の原料組成物が連続的に供給されるクロスヘッド内の円孔部を通過させて、芯金の周囲に原料組成物の被膜を形成する工程を有し、
この工程において、円孔部に絞り部を有し、絞り部の断面における内接円の直径が芯金の外直径よりも小さいクロスヘッドを用いることを特徴とする弾性体ローラの製造方法である。
【0047】
芯金径は通常設けられた公差の範囲でばらついている事が通常である。例えばφ(外直径)6mmに対して公差f8を適用した場合には、φ6−0.01mmからφ6−0.046mmの外径範囲となり、最大値と最小値とでは0.036mmの差が存在する。一方、ニップルの内径は芯金が詰まらないように芯金径に対して、通常、芯金径+0.05mmから芯金径+0.15mmの内径のものを用いる。従って、φ5.97mmf8の芯金とφ6.02mmの内径のニップルを用いた場合、芯金外径とニップル内径との間に最大で0.066mmのガタが存在することになり、ローラの振れとしてはそのガタに相当する程度でローラ径がばらつく可能性がある。
【0048】
そこで本発明では、クロスヘッドの円孔部に絞り部を設け、絞り部の断面における内接円を芯金の外径よりも小さくすることで上記ばらつきを抑制する。例えば、実際にニップルに装着した時のリング状部材の内径を芯金の最小径よりも小さくすることによって、周方向均一に押し付け力を発揮してセンタリングさせ、芯金径がばらついても振れを安定化させる事ができる。
【0049】
ここで絞り部の断面における内接円とは、絞り部の最も絞っている部分の断面(芯金送り方向に垂直な断面)を見た場合に形成される内接円を言う。
【0050】
また、芯金を連続的に(芯金を順次互いに接触した状態で)クロスヘッドに供給し、クロスヘッドを通過した芯金を被覆している被覆膜を切断刃により切断し、個々の芯金に分離する場合には、特に本発明の効果が大きい。
【0051】
被覆層をクロスヘッドから出た直後に切断刃を用いて切断することは、接触している次の芯金に対しては進行方向と直角の外力を発生させる。接触している次の芯金がニップルの中に一部が入っていればニップルの中でのニップルと芯金のガタ分だけ変位してしまう事が発生する可能性がある。
【0052】
そこで、切断による外力が働く場合に、ニップル内にリング状部材など絞り部による押し付け力が好ましくは外力よりも大きく働いていれば外力の影響は小さくなり、振れ精度は絞り部が存在しない場合と比較してより良くなる。
【0053】
個々の芯金に分離する手法は、切断刃による切断以外にも、ワークを回転させてねじ切ってもよく、また切断は押出し物を連続的に加硫した後に行っても良い。
【0054】
なお、押出された後の未加硫組成物の加熱は、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等いずれの手法で行ってもよい。例えば、加熱温度は130℃〜250℃で、加熱時間は5分間〜240分間、好ましくは140℃〜220℃で、10分間〜60分間で行われる。この後、必要に応じて2次加硫することもできる。さらに、必要に応じて、その後研磨による外径の調整や、表面処理などを行い弾性体ローラを得る事ができる。
【0055】
弾性体ローラの弾性層の原料組成物としては、この用途に用いられる公知の材料から適宜選んで用いることができる。例えば、ポリマーに加硫剤やその他の充填物や添加物を加えたものを原料組成物として用いることができる。
【0056】
上記原料組成物に用いるポリマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴム等、いずれでもよい。
【0057】
加硫剤としては硫黄、金属酸化物、有機酸化物等、無機充填剤としてカーボンブラック、タルク、クレー等があげられ、その他公知の加硫促進剤、プロセスオイル等が適宜添加される。
【0058】
また、前記ポリマー中に導電材として、導電性カーボン等のカーボン類、グラファイト、TiO2、SnO2、ZnO等の金属酸化物、SnO2とSb23の固溶体、ZnOとAl23の固溶体等の複酸化物、Cu、Ag等の金属粉、導電性の繊維等の導電粉を分散させてもよい。これらは前記ポリマー100質量部に対して例えば5〜200質量部添加される。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、クロスヘッドを備えた押出し装置によって、振れなどが高精度の弾性体ローラを安定的に得ることができる。
【0060】
さらに、本発明により、ローラの接触均一性も向上するため、製品としての安定性・高画質化も実現する。
【実施例】
【0061】
〔実施例1〕
原料組成物として、以下の成分をまず加圧式ニーダーで15分間混練した。
【0062】
・NBR 100質量部
(商品名「Nipol DN219」:日本ゼオン(株)製)
・カーボンブラック1 16質量部
(商品名「旭HS−500」:旭カーボン製)
・カーボンブラック2 4質量部
(商品名「ケッチェンブラックEC600JD」:ライオン製)
・ステアリン酸亜鉛 1質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・液状エポキシ化ポリブタジエン 10質量部
(商品名「アデカザイザーBF−1000」:旭電化工業(株)製)
・炭酸カルシウム 20質量部
(商品名「ナノックス#30」:丸尾カルシウム(株)製)
次に、以下の成分を加えて15分間オープンロールで混練した。
【0063】
・ジベンゾチアゾリルジスルフィド 1質量部
(商品名「ノクセラーDM−P」:大内新興化学(株)製)
・テトラベンジルチウラムジスルフィド 3質量部
(商品名「パーカシットTBzTD」:フレキシス(株)製)
・硫黄(加硫剤) 1.2質量部
得られた原料組成物を芯金の周囲に成形するために、図2に示す構造を有する押出成形装置に内径(直径)が10mmであるダイスをセットし、あらかじめ押出し機とクロスヘッドを80℃に温調した。
【0064】
ニップルとしては、図4に示す構造を有する、鉄製の板バネを内部に配置したニップルを用いた(板バネの肉厚t=0.5mm、ヤング率(JIS Z 2280)=210Mpa)。なお、円孔部の内径はφ(直径)6.05mmである(円孔部の内径はニップルの先端から10mm中に入った断面における内接円の径で示した。)。板バネとニップル内面で構成される内接円24aは約φ(直径)4.5mmであった。
【0065】
次に全長が252mmであり、あらかじめ両端からそれぞれ10mm内側までを除いた領域に接着剤が塗布された芯金を用意した。上記押出成形装置を用い芯金の送り速度を約40mm/secに設定した状態で原料組成物と同時に押出し、原料組成物の被膜が周囲に形成された芯金を得た。接着剤は導電性があるホットメルトタイプのものを用い、膜厚は3μm程度とした。芯金径はφ(直径)5.95、φ(直径)5.97、φ(直径)5.99mmのものをそれぞれ10本ずつ、計30本について成形を行った。芯金の周囲に原料組成物を被覆した後に、両端からそれぞれ10mm内側までの部分の原料組成物を切断、剥離させる事で未加硫ローラを得た。
【0066】
なお、偏心の調整はクロスヘッドに備える調芯ネジを用い、押出し物の振れが30μm以下に一本でも入るまで調整を行った。
【0067】
得られた未加硫ローラ30本に対し振れの測定を行った。外形測定機(Keyence社製。商品名:LS−5000)を用い、両端の芯金露出部をVブロックで支持しながらローラを回転させる事で、長手方向中央部の振れ(エッジ測定モードでの最大値−最小値)を測定した。30本の振れの平均値とばらつきσ(標準偏差)を表1に示した。
【0068】
振れの値としては例えば帯電ローラなどに用いる場合には、接触状態の不安定さに起因する黒もや状の画像不良や、耐久時の汚れムラによる画像不良が発生しないようにするためには、0.06mm以下に収まっている事が好ましい。従って、安定した振れを得るためには、ばらつきσは0.01mm以下が好ましい。
【0069】
また、ニップルの耐久テストとしては、上記と同様に縦型クロスヘッドの装置を用いて、ただし原料組成物を被覆せずに芯金だけをクロスヘッドに供給した。この際に、ニップルの絞り部による拘束力が芯金の自重による力よりも勝った状態が何本目まで維持できるかどうか(芯金落下の有無)を1000本おきに確認した。なお、自重による落下のテストは最も径が細いφ(直径)5.95mmの芯金を用いて行った。ニップルの内径よりも小さい芯金を用いているので、落下が発生しないという事は絞り部が芯金を拘束していることを表しており、絞り部の径が明らかにニップル内径よりも小さい状態を維持している事を示している。
【0070】
実施例1では、後述の比較例と比べてばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは一万本まで落下は発生しなかったが、一部の芯金表面に軽い傷が確認された。
【0071】
〔実施例2〕
図4に示した構造のニップルに替えて、図5に示す構造のニップルを用いた。ニップル25には、リング状部材として、図6(a)に示すO−リング28を装着した。バックアップ部材29によりO−リングを押さえた。O−リングとしては、材質がNBR、JIS−A硬度は60のものを用いた。O−リングの寸法としては内径が約φ(直径)6mm、外径約φ(直径)9.3mmであり断面形状は約φ(直径)1.5mm円状のものを用いた。なお、リング状部材を装着する部分のニップル内径はφ(直径)9mmであった。
【0072】
なお、リング状部材をニップル内に装着する事で外径が規制され、内径が小さくなる。本実施例でリング状部材をニップル内に装着した時点での内径は約φ(直径)5.6mmであり、円孔部の内径φ(直径)6.05よりも細い絞り部を形成しているものである。
【0073】
これ以外は実施例1と同様にしてローラを製作、測定を行った。
【0074】
その結果、表1に示す様に後述の比較例と比べてばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは3000本までは落下が発生しなかった。
【0075】
〔実施例3〕
材質がNBRで、JIS−A硬度が70のO−リングを用いたこと以外は実施例2と同様にしてローラを製作、測定を行った。ニップル内に装着した後の絞り部の内径は、約φ(直径)5.6mmであった。
【0076】
その結果、表1に示す様に後述の比較例及び実施例2と比較してばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは4000本までは落下が発生しなかった。
【0077】
〔実施例4〕
材質がフッ素ゴム、JIS−A硬度が90のO−リングを用いたこと以外は実施例2と同様にしてローラを製作、測定を行った。ニップル内に装着した後の絞り部の内径は、約φ(直径)5.6mmであった。
【0078】
その結果、表1に示す様に後述の比較例及び実施例2と比較してばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは6000本までは落下が発生しなかった。
【0079】
〔実施例5〕
材質がウレタンゴム、JIS−A硬度が94のO−リングを用いたこと以外は実施例2と同様にしてローラを製作し、測定を行った。ニップル内に装着した後の絞り部の内径は、約φ(直径)5.6mmであった。
【0080】
その結果、表1に示す様に後述の比較例と比較してばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは2000本までは落下が発生しなかった。
【0081】
〔実施例6〕
リング状部材として、図6(b)に示す様に、芯金の移動方向に直角な面を持つペンタシール(商品名。株式会社阪上製作所製)30を用いた。その材質はNBRであり、JIS−A硬度は86であった。内径はφ(直径)6mm、外径はφ(直径)9mmである。
【0082】
これ以外は、実施例2と同様にしてローラを製作、測定を行った。ニップル内に装着した後の絞り部の内径は、約φ(直径)5.5mmであった。
【0083】
その結果、表1に示す様に後述の比較例及び実施例1〜5と比べてばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは9000本までは落下が発生しなかった。
【0084】
〔実施例7〕
リング状部材として、図6(c)に示すような、O−リング31の内面にフッ素樹脂の薄板32を被覆した部材であるロッドシールパッキン(商品名。NOK株式会社製)を用いた。なお、ロッドシールパッキンのO−リング部の材質はNBRであり、JIS−A硬度は80であった。また、内面のフッ素樹脂の薄板はデュロメータD硬度で65である四フッ化エチレン樹脂からなり、リング状のNBRよりも硬度が高いものであった。なお、内径としては約φ(直径)6mm、外径としては約φ(直径)9.3mmである。ニップル内に装着した後の絞り部の内径は、約φ(直径)5.5mmであった。
【0085】
これ以外は、実施例2と同様にしてローラを製作、測定を行った。
【0086】
その結果、表1に示す様に後述の比較例と比べてばらつきが小さくなっている事がわかる。ニップルの耐久テストでは1万本まで落下が発生しなく、耐久性の面では実施例2〜6と比較しても良好であった。
【0087】
〔比較例〕
ニップル内に板バネを設けずに、内径がφ(直径)6.05mmで一定のニップル用いた以外は実施例1と同様にしてローラを製作、測定を行った。
【0088】
表1に示す様に振れのばらつきが大きく、振れが好ましい範囲(0.06mm以下)を超えたものが多く発生していた。
【0089】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】接触帯電方式を用いた電子写真装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の押出成形装置の一例を模式的に表したものであり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の押出成形装置に用いることのできるクロスヘッドの一例を模式的に表した断面図である。
【図4】本発明の押出成形装置に用いることのできるクロスヘッドにおけるニップルの一例を模式的に示したものであり、(a)は側断面図、(b)は上面図である。
【図5】本発明の押出成形装置に用いることのできるクロスヘッドにおけるニップルの別の例を模式的に表した断面図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の押出成形装置に用いることのできるリング状部材の例を模式的に表した図である。
【図7】円孔部の中心軸と直角をなす平面を有するリング状部材を円後部に取り付けた例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0091】
1 像担持体としての電子写真装置に用いられる感光体
2 帯電部材
3 露光手段
4 現像手段
5 転写材
6 転写手段
7 定着手段
8 クリーニング手段
9 トナー画像
10 押し出し機
11 クロスヘッド
12 芯金
13 芯金供給ユニット
14 送りローラ
15 調芯ボルト
16 切断刃
17 支持機構
18 反転用オートハンド
19 トレイ
20 ニップル
21 ダイス
22 リング状部材
23 円孔部
24 絞り部
25 板バネ内蔵用ニップル
26 板バネ
27 リング状部材内蔵用ニップル
28 O−リング
29 バックアップ部材
30 ペンタシール
31 O−リング
32 樹脂リング
33 円孔部中心軸
34 リング状部材保持用の溝
41 ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の周囲に被膜を形成する押出成形装置であって、
該円筒体を通過させるための円孔部を有するクロスヘッドと、該被膜を形成する材料を該クロスヘッドに供給するための押出し機とを有し、
該クロスヘッド内の円孔部に、該円孔部の他の部分よりも内径が小さい絞り部を一つ以上有し、かつ該絞り部の少なくとも一部が弾性を持つことを特徴とする押出し成形装置。
【請求項2】
前記絞り部がバネを有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記絞り部が、JIS A硬度で70〜90の弾性材料からなるリング状部材を有する請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記リング状部材が、前記円孔部の中心軸と直角を成す平面を有する請求項3記載の装置。
【請求項5】
リング状部材の少なくとも内周面が、該リング状部材よりも硬度の高い弾性材料で被覆された請求項3記載の装置。
【請求項6】
芯金の周囲に弾性層を有する弾性体ローラの製造方法であって、
芯金を、該弾性層の原料組成物が連続的に供給されるクロスヘッド内の円孔部を通過させて、該芯金の周囲に該原料組成物の被膜を形成する工程を有し、
該工程において、該円孔部に絞り部を有し、該絞り部の断面における内接円の直径が該芯金の外直径よりも小さいクロスヘッドを用いることを特徴とする弾性体ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−3214(P2008−3214A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171251(P2006−171251)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】