説明

押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法

【課題】寸法精度が十分に高い成形体を製造できる押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る押出成形装置は、流路断面が略円形であり、ペースト状の原料組成物を移送する流路と、流路の上流側に設けられ、原料組成物を混練すると共に下流側へと移送するスクリューと、流路の下流側に設けられ、原料組成物からなる成形体が押し出されるダイと、流路とダイを連通する抵抗管と、スクリューとダイの間に設けられ、厚さ方向に貫通する複数の開口を有する流量調整板とを備え、流量調整板とダイの間の距離Lと流路の内径Dとの比L/Dが0.5以上5以下であり、流量調整板は原料組成物がダイに導入されるに先立って原料組成物の流速分布を均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造技術に関するものであり、より詳細にはセラミックス成形体を製造するための押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。特許文献1,2には、ハニカム構造体の製造に使用されるダイス及び押出成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−5915号公報
【特許文献2】特許第4099896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DPF用のハニカムフィルタ構造体は一般に剛性を有するケースに収容された状態で使用される。ハニカムフィルタ構造体の寸法精度が低いと熱応力等によってハニカムフィルタ構造体に亀裂が入るなどの不具合が生じやすくなる。そのため、焼成前のグリーン成形体に対して高い寸法精度が要求される。また、ハニカム構造体は、狭いセルピッチ(例えば1.1〜2.8mm程度)を有するものもあり、多数の貫通孔を画成する隔壁の厚さについても高い寸法精度が要求される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、寸法精度が十分に高い成形体を製造できる押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る押出成形装置は、流路断面が略円形であり、ペースト状の原料組成物を移送する流路と、流路の上流側に設けられ、原料組成物を混練すると共に下流側へと移送するスクリューと、流路の下流側に設けられ、原料組成物からなる成形体が押し出されるダイと、流路とダイを連通する抵抗管と、スクリューとダイの間に設けられ、厚さ方向(原料組成物の移送方向)に貫通する複数の開口を有する流量調整板とを備え、流量調整板とダイの間の距離Lと流路の内径Dとの比L/Dが0.5以上5以下であり、流量調整板は原料組成物がダイに導入されるに先立って原料組成物の流速分布を均一化する。
【0007】
通常、流路の内壁面の近傍を流れる原料組成物は流速が低く、他方、流路の中央部を流れる原料組成物は流速が高い。仮に、この流速分布のまま原料組成物をダイから押し出してハニカム構造体用のグリーン成形体を作製すると、グリーン成形体の中央部分の隔壁が他の部分と比較して厚くなったり、隔壁が湾曲したりするといった不具合が生じる。また、ダイを通過する原料組成物の流速が不均一であると、ダイを構成する材料が不均一に摩耗してこれが成形体の寸法精度の低下の原因となるだけでなく、ダイの一部分が優先的に摩耗することにより、ダイの寿命が著しく短くなる場合もある。
【0008】
本発明の押出成形装置においては、ダイの上流側の所定の位置に流量調整板が配設されている。原料組成物をダイに供給するに先立ち、流量調整板を通過させることにより原料組成物の流れが安定化する。これにより、原料組成物の流速分布の不均一性が原因と考えられる不具合を十分に低減でき、寸法精度が十分に高い成形体を製造できる。なお、流量調整板は、流量調整の効果を高めるために網状の抵抗体を有していてもよい。
【0009】
流量調整板は、上流側から原料組成物が到達する全領域のうち、他の領域と比較して高い流速で原料組成物が到達する領域の開口率が他の領域の開口率よりも小さい態様であってもよい。かかる構成を採用することで、原料組成物の流速分布をより一層均一化できる。
【0010】
流量調整板において、特定の領域(高い流速で原料組成物が到達する領域)の開口率を小さくするには、当該特定の領域の開口が他の領域の開口よりも開口面積が小さいという構成を採用してもよいし、あるいは、当該特定の領域の開口密度が他の領域の開口密度よりも低いという構成を採用してもよい。
【0011】
流量調整板における流路の内壁面側の周縁領域及び当該周縁領域に囲まれた中央領域において、中央領域の開口率は周縁領域の開口率よりも小さい態様であってもよい。上述の通り、通常、流路の内壁面の近傍を流れる原料組成物は流速が低く、他方、流路の中央部を流れる原料組成物は流速が高い。流量調整板の周縁領域及び中央領域において開口率に差を設けることで、原料組成物の流速分布をより一層均一化できる。
【0012】
流量調整板の周縁領域及び中央領域において開口率に差を設けるには、中央領域の開口が周縁領域の開口よりも開口面積が小さいという構成を採用してもよいし、あるいは、中央領域の開口密度が周縁領域の開口密度よりも低いという構成を採用してもよい。
【0013】
本発明は、上記押出成形装置を用いた成形体の製造方法を提供する。本発明の方法によれば、流量調整板の作用により、寸法精度が十分に高い成形体を製造できる。
【0014】
本発明に係る成形体の製造方法は、流量調整板を交換する工程を備えてもよい。押し出されてくる成形体の様子をチェックし、流速分布の不均一性が原因と考えられる不具合が認められる場合に上記工程を実施して、開口の配置が異なる流量調整板に交換することにより、寸法精度が十分に高い成形体を長期にわたって継続的に製造することが可能となる。流量調整板の交換は、押出成形装置に原料組成物を供給するのを一旦停止して実施してもよいし、あるいは、停止することなく実施してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、寸法精度が十分に高い成形体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)はハニカム構造体用グリーン成形体の一例を示す斜視図、(b)はグリーン成形体の部分拡大図である。
【図2】本発明に係る押出成形装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】流量調整板の一例を示す図である。
【図4】図2の押出成形装置の内部構造を模式的に示す部分断面図である。
【図5】流量調整板が有する開口の他の態様を示す部分断面図である。
【図6】流量調整板の他の例を示す図である。
【図7】(a)は流量調整板が配置された流路内における原料組成物の流速分布を模式的に示す断面図、(b)は流量調整板が配置されていない流路内における原料組成物の流速分布を模式的に示す断面図である。
【図8】湾曲した隔壁を有するグリーン成形体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係る押出成形装置の説明に先立ち、ハニカム構造体用のグリーン成形体について説明する。
【0018】
<グリーン成形体>
図1に示すグリーン成形体70は、原料組成物を押出成形することによって得られたものである。図1の(a)に示すように、グリーン成形体70は多数の貫通孔70aが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70aの断面形状は、図1の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70aは、グリーン成形体70において、端面から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。なお、グリーン成形体70を所定の温度で焼成することによってハニカム構造体が製造される。
【0019】
グリーン成形体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、グリーン成形体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0020】
グリーン成形体70をなす原料組成物は特に限定されないが、DPF用のハニカム構造体を製造する場合にあっては、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。ハニカム構造体の高温耐性の観点から、好適なセラミクス材料として、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、更に、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0021】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体を製造する場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、更に、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0022】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
【0023】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤及び可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0024】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。
【0025】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)などが挙げられる。
【0026】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0027】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。
【0028】
<押出成形装置>
図2〜4を参照しながら、本発明に係る押出成形装置の実施形態について説明する。図2に示す押出成形装置10は、粉末状又はペースト状の原料組成物からグリーン成形体70を製造するためのものである。
【0029】
押出成形装置10は、ハウジング1内の上段に設けられたスクリュー2A及び下段に設けられたスクリュー2Bを備える。スクリュー2A,2Bは、入口1aから供給された原料組成物を混練すると共に流路1bを通じて下流側へと移送するためのものである。スクリュー2A,2Bの間には、真空室3が設けられており、真空室3内を減圧することによって原料組成物を脱気処理できるようになっている。真空室3内の原料組成物はローラ3aによって下段のスクリュー2Bに導入される。
【0030】
押出成形装置10は、スクリュー2Bの下流側に設けられた流量調整板5と、原料組成物からなる成形体70Aが押し出されるダイ8と、流路1bとダイ8を連通する抵抗管9とを更に備える。抵抗管9は、内部の流路がテーパ状になっており、上流側から下流側に向けて流路断面積が徐々に小さくなっている。なお、スクリュー2Bの径よりも径が大きい成形体70Aを製造する場合などには、抵抗管9は上流から下流に向けて流路断面が大きくなる拡大部を有してもよい。ダイ8から押し出された成形体70Aが変形しないように、押出成形装置10の隣には成形体70Aを支持するための支持台15が設置されている。
【0031】
流量調整板5は、ダイ8に原料組成物を導入するに先立ち、その流速分布の均一化を図るためのものである。流量調整板5は、ハウジング1に対して着脱自在に設けられている。図2に示すとおり、ボルト及びナットによってフランジ1c,1dを締め付けることによって流量調整板5はハウジング1に固定される。図3の(a)は流量調整板5を示す正面図であり、図3の(b)は流量調整板5の断面図である。流量調整板5は、厚さ方向に貫通する複数の開口5a,5bを有する板状の部材からなる。流量調整板5は、流量調整の効果を高めるために網状の抵抗体(図示せず)を有していてもよい。
【0032】
流量調整板5は、図4に示す通り、スクリュー2Bとダイ8の間の所定の位置に設けられている。すなわち、流量調整板5とダイ8の間の距離をL(mm)とし、流量調整板5が装着されている位置における流路1bの内径をD(mm)とすると、流量調整板5は比L/Dの値が以下の条件(1)を満たす位置に設けられている。
0.5≦L/D≦5 …(1)
【0033】
L/Dの値が5を超えると、流量調整板5による流量制御効果が不十分となる。他方、L/Dの値が0.5未満であると、流量調整板5を通過した原料組成物の流れが十分に安定しないままダイ8に到達する。これによりグリーン成形体70の寸法精度が不十分となる。L/Dの上限値は4であることが好ましく、3であることがより好ましい。L/Dの下限値は0.6であることが好ましく、0.7であることがより好ましい。
【0034】
流量調整板5は、上流側から圧力を受けてもほとんど歪みを起こさない構造体であることが好ましい。かかる観点から、流量調整板5の材質としては、例えば、炭素鋼等が好ましい。炭素鋼以外の好適な材質として、ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼を例示できる。流量調整板5の厚さは、十分の強度を確保する観点から、10〜100mmであることが好ましい。
【0035】
流量調整板5は、厚さ方向に貫通する直径1〜10mmの開口5a,5bを複数有する。流量調整板5は、図3の(a)に示すように、流路1bの内壁面側の周縁領域R1と、この周縁領域R1に囲まれた中央領域R2とを有する。周縁領域R1には開口5aが複数設けられており、周縁領域R2には開口5aよりも開口面積が小さい開口5bが複数設けられている。これにより、流量調整板5において、中央領域R2の開口率は周縁領域R1の開口率よりも小さく設定されている。ここでいう「開口率」とは、所定の領域における開口の面積の合計を当該所定の領域の面積で除すことによって算出される値を意味する。
【0036】
図5に示すように、開口5a又は開口5bは、原料組成物の流入側の面における開口率を向上するため、流入側にテーパ5cを有するものであってもよい。なお、このように開口の流路断面積が一定ではない流量調整板の場合、流量調整板の厚さ方向(原料組成物の移送方向)の位置によって開口の面積の合計は変化し得るが、「開口率」はこの合計の最小値を用いて算出される値を意味する。
【0037】
周縁領域R1の開口率は、好ましくは50〜80%であり、より好ましく60〜80%である。周縁領域R2の開口率は、好ましくは0〜80%であり、より好ましく0〜70%である。
【0038】
ダイ8は、原料組成物から図1に示す形状の成形体を製造するためのものであり、これに対応する格子状の流路(図示せず)を有する。グリーン成形体70のようなセル構造の成形体の製造に用いられるダイは、流路の設定を緻密に行う必要があり、また一般的に高価である。このため、ダイの交換作業の頻度はなるべく低くすることが望ましい。本実施形態においては、流量調整板5によって原料組成物の流量の均一化することで、ダイ8の長寿命化が図られ、その交換頻度を低くできる。
【0039】
<グリーン成形体の製造方法>
次に、押出成形装置10を用いてグリーン成形体70を製造する方法について説明する。まず、原料組成物を入口1aから流路1b内に導入する。スクリュー2A,2B及びローラ3aを作動させることによって原料組成物を混練すると共に下流側に移送する。混練物を流量調整板5の開口5a,5bを通過させて流速分布を均一化させた後、抵抗管9を通じてダイ8に導入する。ダイ8の下流側における原料組成物の線速度は10〜150cm/分程度とすることができる。
【0040】
流速分布の均一化が図られた原料組成物をダイ8から押し出し、支持台15上に成形体70Aを回収する。成形体70Aを所定の長さに切断することによってグリーン成形体70を得る。
【0041】
原料組成物の流量分布の不均一性が原因と考えられる不具合が認められたときに以下の工程を実施してもよい。例えば、押出成形装置10に原料組成物を供給するのを一旦停止し又は停止することなく、流量調整板5を交換する工程である。開口の配置が異なる流量調整板に交換することにより、ダイ8の設定の変更や交換を実施しなくても寸法精度が十分に高い成形体を長期にわたって継続的に製造することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における流量調整板5は領域R1及び領域R2の開口面積に差を設けたものであるが、図6に示す通り、それぞれの領域の開口の開口密度に差を設けてもよい。図6の(a)は流量調整板6を示す正面図であり、図6の(b)は流量調整板6の断面図である。流量調整板6は、中央領域R2の開口密度が周縁領域R1の開口密度よりも低い設定されている。ここでいう「開口密度」とは単位面積あたりに設けられた開口の個数を意味する。更に、図3の流量調整板5において、領域R1及び領域R2の開口密度に差を設けてもよいし、あるいは、図6の流量調整板6において、開口6a及び開口6bの開口面積に差を設けてもよい。
【0043】
また上記実施形態においては、流量調整板5の中央領域R2に開口面積が小さい開口5bを設ける場合を例示したが、流量調整板5の中心位置を円の中心とした場合、所定の中心角の範囲に偏在するように複数の開口5bを設けてもよい。図7の(a)は、流路1bを流れるペースト状の原料組成物の流速分布を模式的に示したものである。同図に示す流速分布は、流路1bの中央よりも上方の領域の流速が最も高い。この場合、流量調整板15は、高い流速の原料組成物が流れ込む領域15aの開口率を低く設定すればよい。なお、領域15aにおける低い開口率は、領域15aの開口面積及び/又は開口密度を他の領域と比較して小さく設定することによって実現できる。
【0044】
図7の(a)に示すとおり、流量調整板15に流入する前の原料組成物の流速分布V1aは流路の断面に対して不均一であるのに対し、原料組成物が流量調整板15の開口を通過することで、流量調整板15から流出した原料組成物の流速分布V2aは流路の断面に対して均一化が図られる。これにより、セルピッチや隔壁の厚さ等が適正なグリーン成形体70を安定的に得ることができる(図1参照)。
【0045】
他方、図7の(b)は流量調整板15をダイ8の上流側に配置せず、流速分布が不均一なまま原料組成物がダイ8に到達する場合を示したものである。この場合、図8の(b)に示すとおり、グリーン成形体70の隔壁70bが湾曲するなどの不具合が生じる。隔壁70bの湾曲は原料組成物の過剰な供給が原因の一つである。隔壁70bに湾曲が生じている領域を調べることにより、当該領域の原料組成物の流速が高く、供給量が過剰であることを把握できる。この情報に基づいて所定の開口率の分布を有する流量調整板を準備し、これをダイ8の上流側に配置することで流速の不均一に起因する不具合を改善できる。
【0046】
上記実施形態においては、円柱体のグリーン成形体70を例示したが、成形体の形状や構造はこれに限定されない。グリーン成形体70の外形形状は、例えば、四角柱等の角柱や楕円柱でもよい。また、貫通孔70aの配置も、正方形配置でなくてもよく、例えば、略三角配置、略六角配置等でも構わない。更に、貫通孔70aの形状も、正方形でなくてもよく、例えば、略三角形、略六角形、略八角形、略円形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、寸法精度が十分に高い成形体を製造できる。
【符号の説明】
【0048】
1…ハウジング、1b…流路、2B…スクリュー、5,6,15…流量調整板、5a,5b,6a,6b…開口、8…ダイ、9…抵抗管、10…押出成形装置、70…グリーン成形体、70A…成形体、R1…流量調整板の周縁領域、R2…流量調整板の中央領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路断面が略円形であり、ペースト状の原料組成物を移送する流路と、
前記流路の上流側に設けられ、前記原料組成物を混練すると共に下流側へと移送するスクリューと、
前記流路の下流側に設けられ、前記原料組成物からなる成形体が押し出されるダイと、
前記流路と前記ダイを連通する抵抗管と、
前記スクリューと前記ダイの間に設けられ、厚さ方向に貫通する複数の開口を有する流量調整板と、
を備え、
前記流量調整板と前記ダイの間の距離Lと前記流路の内径Dとの比L/Dが0.5以上5以下であり、
前記流量調整板は、前記原料組成物が前記ダイに導入されるに先立って前記原料組成物の流速分布を均一化する、押出成形装置。
【請求項2】
前記流量調整板は、上流側から前記原料組成物が到達する全領域のうち、他の領域と比較して高い流速で前記原料組成物が到達する領域の開口率が前記他の領域の開口率よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
高い流速で前記原料組成物が到達する前記領域の開口は、前記他の領域の開口よりも開口面積が小さい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
高い流速で前記原料組成物が到達する前記領域の開口密度は、前記他の領域の開口密度よりも低い、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記流量調整板における前記流路の内壁面側の周縁領域及び当該周縁領域に囲まれた中央領域において、前記中央領域の開口率が前記周縁領域の開口率よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記中央領域の開口は、前記周縁領域の開口よりも開口面積が小さい、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記中央領域の開口密度は、前記周縁領域の開口密度よりも低い、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の押出成形装置を用いた成形体の製造方法。
【請求項9】
前記押出成形装置の流量調整板を交換する工程を備える、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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