説明

押出機の押出材寸法制御方法および装置

【課題】バッチ間或いは同一バッチで押出材の引取り速度を変更する場合があっても、常に、精度よく目標寸法の幅の押出材を得られるようにする押出機の押出材寸法制御方法および装置を提供する。
【解決手段】押出材Rが押出機8から押出された時点から寸法センサ2により押出材Rの幅寸法を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、この検知前時間と押出材Rの引取り速度とに基づいて、制御装置7により寸法センサ2が幅寸法を検知する検知位置を算出するとともに、サーボモータ4を制御してボールネジ3により寸法センサ2を算出した検知位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機の押出材寸法制御方法および装置に関し、さらに詳しくは、ゴムシート材等の押出機において、バッチ間或いは同一バッチで押出材の引取り速度を変更する場合があっても、常に、精度よく目標寸法の幅の押出材を得られるようにした押出機の押出材寸法制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムシート材等の押出材は、タイヤやその他のゴム製品等の材料として使用されている。従来、このような押出材は、押出機から押出された直後から経時的に収縮することにより寸法が変化するので、定位置に固定したセンサにより押出材の寸法(主に幅寸法)を検知し、この検知寸法と目標寸法との比較に基づいて、押出機から押出された押出材の引取り速度を制御して目標寸法の押出材を得るようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、押出機の供給量は後工程が要求する量や速度に応じて変化するために、バッチ間や同一バッチにおいても引取り速度を変更する場合がある。そのため、従来のように寸法センサが定位置にあって押出材の寸法を検知すると、引取り速度の変更により押出材が押出機から押出された時点から寸法を検知する時点までの検知前時間が変動する。この検知前時間に違いが生じると、寸法を検知する時点における押出材の寸法にも経時変化による差が生じるため、引取り速度が異なる場合に検知した寸法どうしの間に経時変化によるばらつきが生じる。そのため検知寸法と目標寸法との比較においても、このばらつきが影響し、適正な引取り速度の制御が困難になり、目標寸法の押出材を精度よく得ることができないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−246817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、バッチ間或いは同一バッチで押出材の引取り速度を変更する場合があっても、常に、精度よく目標寸法の幅の押出材を得られるようにする押出機の押出材寸法制御方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の押出機の押出材寸法制御方法は、押出機から押出された押出材の幅寸法を前記押出機と引取り手段との間に設置した寸法センサにより検知し、該検知寸法と予め設定した目標寸法との寸法差に基づいて前記引取り手段の引取り速度を該押出材の幅を目標寸法にするように制御する押出機の押出材寸法制御方法であって、前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記寸法センサが幅寸法を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記寸法センサの検知位置を変化させることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の押出機の押出材寸法制御装置は、押出機から押出された押出材の幅寸法を検知する寸法センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該寸法センサによる検知寸法と予め設定した目標寸法との寸法差に基づいて前記押出材の幅を目標寸法にするように前記引取り手段の引取り速度を制御する制御装置を設けた押出機の押出材寸法制御装置であって、前記寸法センサを前記押出材の押出し方向に進退移動可能に設け、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記幅寸法を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記寸法センサの検知位置に移動するように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
また、別の本発明の押出機の押出材寸法制御装置は、押出機から押出された押出材の幅寸法を検知する寸法センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該寸法センサによる検知寸法と予め設定した目標寸法との寸法差に基づいて前記押出材の幅を目標寸法にするように前記引取り手段の引取り速度を制御する制御装置を設けた押出機の押出材寸法制御装置であって、前記寸法センサを前記押出材の押出し方向に所定間隔に複数配設し、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記幅寸法を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り時間とに基づいて、前記複数の寸法センサの中から検知位置に該当する寸法センサを選択するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、押出材が押出機から押出された時点から寸法センサにより幅寸法を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、この検知前時間と押出材の引取り速度とに基づいて、寸法センサが幅寸法を検知する検知位置を変化させるようにしたので、バッチ間或いは同一バッチにおいて引取り速度を変更した場合であっても、常に同一の経時変化条件下で幅寸法を検知することができる。そのため、引取り速度が異なる時に検知する検知寸法どうしの間で、経時変化による影響が生じないように押出材の幅寸法を検知でき、これに伴い、検知寸法と目標寸法とを比較する際にも押出材の経時変化の影響が排除される。したがって、引取り速度を制御する際にも適正な制御を行なうことができ、目標寸法の幅の押出材を精度よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の押出機の押出材寸法制御方法および装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1、図2に例示するように、第1実施形態の押出材寸法制御装置1は、押出機8と引取りコンベヤ9と間に配置されている。押出機8は、図示しない電動モータで回転するスクリュー軸を内設し、押出口8aには押出材Rの断面形状に形成した口金が取付けられている。引取りコンベヤ9は、押出機8から押出された押出材Rを搬送面に載せ、後工程に搬送する。
【0011】
この押出材寸法制御装置1は、押出材Rの押出し方向に延設されたスライドガイドフレーム5の一端部をゴム押出機8の押出口8aの下部に固定している。スライドガイドフレーム5の上面には押出材Rの幅寸法を検知する寸法センサ2が配置され、この寸法センサ2は、一端部をサーボモータ4に接続したボールネジ3に取付けられている。寸法センサ2は、サーボモータ4の駆動でボールネジ3を回転させることにより、スライドガイドフレーム5にガイドされ、押出材Rの押出し方向と平行なボールネジ3の軸方向に進退し、押出材Rの下方位置で、押出し方向の任意の位置に配置できるように構成されている。
【0012】
寸法センサ2の検知信号は制御装置7に入力され、この制御装置7から引取りコンベヤ9に対して引取り速度を制御する制御信号が入力される。また、引取りコンベヤ9の引取り速度データは制御装置7に入力され、制御装置7からはサーボモータ4に対して回転を制御する制御信号が入力される。
【0013】
また、押出材Rが押出機8から押出された時点から寸法センサ2により幅寸法を検知する時点までの検知前時間が、予め一定時間として設定され、この検知前時間が制御装置7に入力されている。また、幅寸法を検知する時点での押出材Rの目標寸法が予め設定され、この目標寸法が制御装置7に入力されている。
【0014】
以下、この押出材寸法制御装置1による押出材寸法制御方法について説明する。押出機8の電動モータを作動させスクリュー軸を回転させることにより、押出機8の内部のゴム材が押出材Rとなって押出口8aから連続的にシート状に押出される。この押出材Rは、引取りコンベヤ9の搬送面に載置され、ロール状に巻き取られ、或いは直接、後工程に搬送される。この押出材Rは、押出口8aから押出された直後から安定するまでの間、収縮し、押出材Rの種類によっては膨張するものもあり、経時的に押出材Rの幅寸法に変化が生じる。
【0015】
ここで、制御装置7は、入力された一定時間の検知前時間となるように、検知前時間を引取り速度で除することにより、寸法センサ2が押出材Rの幅寸法を検知する検知位置(押出口8aからの寸法センサ2の位置)を算出する。次いで、この検知位置となるように、制御装置7からサーボモータ4に制御信号が入力され、これに応じてサーボモータ4が回転して寸法センサ2を検知位置に移動させる。
【0016】
検知位置に配置された寸法センサ2は、例えば、1×10-3秒〜1秒間隔の所定のタイムサイクルで押出機8から押出される押出材Rの幅寸法を検知し、その検知信号が制御装置7に入力され検知寸法が算出される。この検知寸法と予め入力されている目標寸法とが比較される。
【0017】
次いで、制御装置7は、検知寸法と目標寸法の寸法差を小さくして一致させるように、引取りコンベヤ9に制御信号を入力し、この制御信号により引取りコンベヤ9の図示しない駆動モータの回転速度が制御され、引取り速度が適正な速度に制御される。
【0018】
例えば、検知寸法が目標寸法よりも大きい場合は、引取り速度を速くするように制御して押出材Rにテンションを発生させて幅寸法を小さくする。検知寸法が目標寸法よりも小さい場合は、上記の反対の制御を行なう。このようにして、目標寸法(幅寸法)の押出材Rを得ることができる。
【0019】
この押出工程では、バッチ間或いは同一バッチにおいても後工程の要求等により、引取り速度を変更して押出材Rの供給することがある。例えば、短時間に多量の押出材Rが必要となる場合は、これに対応するように引取り速度を速くして押出材Rを供給する。
【0020】
引取り速度を変更した場合には、制御装置7は、設定した一定時間の検知前時間となるように、検知前時間を変更後の引取り速度で除することにより、新たな検知位置を算出する。次いで、新たな検知位置となるように、制御装置7からサーボモータ4に制御信号が入力され、これに応じてサーボモータ4が回転して寸法センサ2を新たな検知位置に移動させる。例えば、引取り速度を2倍に変更した場合には、押出口8aと寸法センサ2との間の距離が1/2倍となるように寸法センサ2を移動させ、検知位置を変化させる。
【0021】
このように、引取り速度を変更した場合でも、常に、検知前時間が一定に保たれるので、押出材Rの幅寸法の経時変化に対し、常に同一条件下で幅寸法を検知することができる。したがって、引取り速度が異なる時に検知する寸法どうしの間で、経時変化による影響を受けることなく押出材Rの幅寸法を検知でき、これに伴い、検知寸法と目標寸法とを比較する際にも押出材Rの経時変化の影響を排除することができる。
【0022】
したがって、引取り速度の加速と減速、増減量を誤ることなく、適正な制御を行なうことができ、目標寸法の幅の押出材Rを精度よく得ることが可能となる。
【0023】
尚、本発明において押出材Rは、ゴムのみで構成されるものだけでなく、ゴムとスチールコードや有機繊維等とから構成されるものを含むものである。ゴムのみから構成される押出材Rの場合は、寸法の経時変化が大きく、引取り速度に応じて幅寸法が変化し易いので、本発明を適用することで、より大きな効果を得ることができる。
【0024】
センサ移動手段は、寸法センサ2を押出材Rの押出し方向に進退移動させることができればよく、上記に例示したものに限定されない。また、上記の実施形態では押出材Rの引取り手段として引取りコンベヤ9を例示したが、押出材Rを引き取ることができればよく、例えば、巻取りローラ等が用いられる。
【0025】
図3に押出材寸法制御装置1の第2実施形態を示す。第2実施形態では、第1実施形態と異なり、定位置に固定した複数の寸法センサ2a〜2dを有している。これらの寸法センサ2a〜2dは、一端部を押出口8aの下部に固定し、押出機8と引取りコンベヤ9との間に配置された固定フレーム6に固定され、押出材Rの押出し方向に所定間隔を開けて配置されている。これら複数の寸法センサ2a〜2dによる検知信号は制御装置7に入力されるようになっている。
【0026】
この寸法制御装置1では、制御装置7が、設定した検知前時間と引取りコンベヤ9の引取り速度とに基づいて検知位置を算出するとともに、複数の寸法センサ2a〜2dの中から、算出した検知位置に該当する(最も近い位置にある)寸法センサ2を一つ選択し、その選択した寸法センサ2の検知信号を用いて押出材Rの検知寸法が算出される。次いで、この検知寸法と予め入力されている目標寸法とが比較され、以後、第1実施形態と同様の制御を行なって目標寸法の押出材Rを得るようにしている。
【0027】
このように、引取り速度の変更に伴い、制御装置7が、複数の固定した寸法センサ2a〜2dの中から検知位置に該当する寸法センサ2を一つ選択して検知位置を変化させるようにしているので、寸法センサ2を移動させる機構が不要となり、構成を簡素化することができる。
【0028】
配置する寸法センサ2の数は特に限定されず、多い程、精度よく目標寸法の押出材Rを得ることができるが、コストや配置スペース等を考慮して、例えば、2〜5個程度とする。
【0029】
この実施形態では、制御装置7が算出した検知位置と選択した寸法センサ2の位置との間に多少の誤差が生じる。この場合、算出した検知位置を挟んで最も隣接する2つの寸法センサ2、2の検知寸法を用い、比例計算等により検知位置における幅寸法を推定し、これを検知寸法として用いることもできる。これにより、検知寸法の精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の押出材寸法制御装置の第1実施形態を例示する平面図である。
【図2】図1の一部を拡大側面図である。
【図3】押出材寸法制御装置の第2実施形態を例示する平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 押出材寸法制御装置
2、2a〜2d 寸法センサ
3 ボールネジ
4 サーボモータ
5 スライドガイドフレーム
6 固定フレーム
7 制御装置
8 押出機 8a 押出口
9 引取りコンベヤ
R 押出材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押出された押出材の幅寸法を前記押出機と引取り手段との間に設置した寸法センサにより検知し、該検知寸法と予め設定した目標寸法との寸法差に基づいて前記引取り手段の引取り速度を該押出材の幅を目標寸法にするように制御する押出機の押出材寸法制御方法であって、前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記寸法センサが幅寸法を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記寸法センサの検知位置を変化させる押出機の押出材寸法制御方法。
【請求項2】
前記検知位置の変化を、前記寸法センサの移動により行なう請求項1に記載の押出機の押出材寸法制御方法。
【請求項3】
前記検知位置の変化を、前記寸法センサを前記押出材の押出し方向に所定間隔に複数配設し、該複数の寸法センサの中から選択することで行なう請求項1に記載の押出機の押出材寸法制御方法。
【請求項4】
押出機から押出された押出材の幅寸法を検知する寸法センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該寸法センサによる検知寸法と予め設定した目標寸法との寸法差に基づいて前記押出材の幅を目標寸法にするように前記引取り手段の引取り速度を制御する制御装置を設けた押出機の押出材寸法制御装置であって、前記寸法センサを前記押出材の押出し方向に進退移動可能に設け、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記幅寸法を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記寸法センサの検知位置に移動するように構成した押出機の押出材寸法制御装置。
【請求項5】
前記寸法センサの移動手段が、サーボモータと、該サーボモータに駆動されるボールネジとから構成される請求項4に記載の押出機の押出材寸法制御装置。
【請求項6】
押出機から押出された押出材の幅寸法を検知する寸法センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該寸法センサによる検知寸法と予め設定した目標寸法との寸法差に基づいて前記押出材の幅を目標寸法にするように前記引取り手段の引取り速度を制御する制御装置を設けた押出機の押出材寸法制御装置であって、前記寸法センサを前記押出材の押出し方向に所定間隔に複数配設し、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記幅寸法を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り時間とに基づいて、前記複数の寸法センサの中から検知位置に該当する寸法センサを選択するように構成した押出機の押出材寸法制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−301921(P2007−301921A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134835(P2006−134835)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】