説明

押出機

【課題】押出機の溶解・混練部出口から押出機の濾過部であるスクリーンまでの流路に於けるデッドスペースをなくし、樹脂の流動をスムーズにすることにより樹脂の滞留を防止して、滞留によって生ずる劣化樹脂による製品に与える影響を減少させ、また流路を流す樹脂種類変更時の切替ロスを減少させることを提供する。
【解決手段】押出機の溶解・混練部出口9から濾過装置であるスクリーン5までの流路間に於いて、上流部である混練部出口断面を下流部であるスクリーン断面より広くし、混練部出口9からスクリーン5に向けて流れ方向と平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜を設け、流路断面積が狭まっていく流路を持つ構成を備えた押出機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機の流路に関する。詳しくは、押出機の溶解・混練部出口から押出機の濾過部であるスクリーンまでの流路に於けるデッドスペースをなくし、樹脂の流動をスムーズにすることにより樹脂の滞留を防止して、滞留によって生ずる劣化樹脂による製品に与える影響を減少させ、尚かつ樹脂流路中心部と壁近傍の流速差を改善させ、流路を流す樹脂種類変更時の切替ロスを減少させることができる押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、押出機により溶融・混練・押出しされる樹脂材料には、多くの場合、ゴミや劣化樹脂等の溶解しない固形物が不必要に混入している。この混入物を除去するため、押出機には濾過装置が設けられている。濾過装置は、押出機の溶融材料の流路にスクリーンを設け、固形混入物を濾過して除去し、清浄な溶融材料をダイス等の後続する機器へ供給している。
【0003】
押出機のスクリーンケース1は、濾過面積すなわちスクリーン5の表面積を大きくするために、大きな開口断面を有する形状に形成され、小さな開口断面の流入流路から大きな開口断面のスクリーン5の前室に繋がり、スクリーン5の下流室はブレーカプレート4後の大きな開口断面から流出流路の小さな開口断面に合わせるように開口断面が下流方向に滑らかに小さくなるように形成されているものがよく採用されている。
【0004】
しかし、小さな開口断面の流入流路から大きな開口断面のスクリーン5の前室に繋がる部分で溶融樹脂の流れに流速差が発生するため滞留部ができる。その滞留部でできた劣化樹脂は製品に影響を与えることとなってしまう。
【0005】
このような構成を持つ従来用いられている溶融樹脂を流す混練部出口9からスクリーン5間の流路の代表的なものとして、一般に、図1に示すものがよく採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図1に示すように、混練部出口後から導管下流部までは、角柱状または円柱状のスクリーンケース1と、このスクリーンケース1を繋ぐ導管上流部2、導管下流部3とから構成されている。
【0007】
スクリーンケース1には軸鉛直方向に図1中、下方の上流側の面より、ブレーカプレート4が挿入される大径の穴と、この穴の底部に形成された段差部から下流側に向けて縮小する円錐状の穴と、この円錐状の穴と連通する小径の穴が形成されている。
【0008】
前記ブレーカプレート4は、前記大径の穴の底部の段差部まで挿入され、その上流側の面にはスクリーン5が取り付けられる。
【0009】
前記導管上流部2、導管下流部3には、スクリーンケース1の大径と小径の穴に連通する穴が貫通して設けられている。
【0010】
次に動作について説明する。図1に示すように、図示しない押出機上流部分が運転中は、スクリーンケース1と導管上流部2、導管下流部3の穴は連通しており、押出機上流部分からの溶融樹脂は、上流側より下流側に流れる。
【0011】
このような構成の濾過部の流路を有する押出機ではスクリーンケース1の上流側の穴径が、導管上流の穴径より大きく、また、ブレーカプレート4の上流側の面と導管上流との間には空間(X)が設けられているので、溶融樹脂は、スクリーンケース1の大径の穴の壁近傍で滞留して劣化する。そのため、劣化した樹脂が下流側に流れ、製品に影響を与えるという問題がある。
【0012】
この問題を解決するために、図2に示されるような、前記ブレーカプレート4の上流側の面と導管上流部2との間に、ブレーカプレート4に向けて広がる流路を有する滞留防止用アダプタ8を設けた構成の濾過装置もあるが、まだ空間(Y)内に於いて、流路中心部と壁近傍部の流速差は大きく、流路を流す樹脂種類変更時の切替ロス改善には不十分である(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
また、図3に示されるような、混練部出口9からスクリーン5までの間の流路に於いて、途中まで傾斜を設け、その後のスクリーン5までの流路は流れ方向と平行な流路を有する構成の押出機がある。これも、流路が流れ方向と平行にならない傾斜状の流路から流れ方向に平行な流路に変わる部分で、流路の中心部と壁近傍部の流速差は大きくなり、流路を流す樹脂種変更時の切替ロス改善には不十分である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−90635号公報
【特許文献2】特開2002−326272号公報
【特許文献3】特開平9−136322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明は、押出機の溶解・混練部出口からスクリーン間の流路に於けるデッドスペースをなくし、尚かつ樹脂の流動に於いて中心部と壁近傍部の流速差を軽減させ、樹脂をよりスムーズに流すことにより樹脂の滞留を防止し劣化樹脂を減少させ、また流路を流す樹脂種類変更時の切替ロスを減少させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
押出機の溶解・混練部出口から押出機の濾過部であるスクリーンまでの流路間に於いて、上流部である混練部出口断面を下流部であるスクリーン断面より広くし、混練部出口からスクリーンに向けて流れ方向と平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜を設け、流路断面積が狭まっていく流路を有する押出機。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、押出機の溶解・混練部出口9から押出機の濾過部分であるスクリーン5までの流路間に於いて、樹脂滞留部となるデッドスペースをなくし、樹脂の流動をスムーズにすることにより樹脂の滞留を防止して、滞留によって生ずる劣化樹脂による製品に与える影響を減少させ、尚かつ樹脂流路中心部と壁近傍の流速差を改善させ、流路を流す樹脂種類変更時の切替ロスを減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の混練部出口からスクリーン間の流路の構成を示す図。
【図2】従来の混練部出口からスクリーン間の流路の構成を示す図。
【図3】従来の混練部出口からスクリーン間の流路の構成を示す図。
【図4】本発明の混練部出口からスクリーン間の流路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係わる押出機の溶解・混練部出口からスクリーン間の流路について説明をする。
【0020】
本発明者らは鋭意検討した結果、前押出機の溶解・混練部出口9から押出機の濾過部分であるスクリーン5までの流路間に於いて、上流部である混練部出口断面を下流部であるスクリーン5の断面より広くし、混練部出口からスクリーン5に向けて流れ方向と平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜を設け、流路断面積が狭まっていく流路を有する押出機を提供することで、押出機の溶解・混練部からスクリーン5間の流路に於けるデッドスペースをなくし、尚かつ樹脂の流動に於いて中心部と壁近傍部の流速差を軽減させ、樹脂をよりスムーズに流すことにより樹脂の滞留を防止し劣化樹脂を減少させ、また流路を流す樹脂種類変更時の切替ロスを減少させることを見出した。
【0021】
図4は本発明による混練部出口9からスクリーン5間の流路の構成を示す図である。以降、主に図4を用いて本発明の混練部出口からスクリーン5間の流路の構成について詳細に説明する。
【0022】
スクリーンケース1には軸鉛直方向に図1中下方の上流側の面より、ブレーカプレート4が挿入される大径の穴と、この穴の底部に形成された段差部から下流側に向けて縮小する円錐状の穴と、この円錐状の穴と連通する小径の穴が形成されている。
【0023】
前記ブレーカプレート4は、前記大径の穴の底部の段差部まで挿入され、その上流側の面にはスクリーン5が取り付けられる。
【0024】
前記導管上流部2、導管下流部3には、スクリーンケース1の大径と小径の穴に連通する穴が貫通して設けられている。
【0025】
図示しない押出機上流部分が運転中は、スクリーンケース1と導管上流部2、導管下流部3の穴は連通しており、押出機上流部分からの溶融樹脂は、上流側より下流側に流れる。
【0026】
図4にある通り混練部出口9断面は導管上流部2の入り口流路断面より大きく、その間の流路は流れと平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜が付いている。
【0027】
同様に導管上流部2の入り口流路断面は導管上流部2出口流路断面より大きく、その間の流路は流れと平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜が付いている。
【0028】
導管上流部出口流路断面と接するスクリーンケース1上流側入り口流路断面とは同じ大きさとなりスムーズに流路が繋がるようになっている。
【0029】
スクリーンケース1上流側入り口流路断面は前期ブレーカプレート4断面積より大きく、その間の流路は流れと平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜が付いている。
【0030】
このように、混練部出口9からブレーカプレート4に向けて流路は流れ方向と平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜を設け、流路断面積が狭まっていく。このような形状にすることにより、混練部出口9からブレーカプレート4に取り付けられるスクリーン5までの流路にデッドスペースはなくなり、尚かつ樹脂の流動に於いて中心部と壁近傍部の流速差を軽減させ、樹脂をよりスムーズに流すことにより樹脂の滞留を防止し劣化樹脂を減少させ、また流路を流す樹脂種類変更時の切替ロスを減少させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 スクリーンケース
2 導管上流部
3 導管下流部
4 ブレーカプレート
5 スクリーン
6 スクリュー
7 バレル
8 滞留防止用アダプタ
9 混練部出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機の溶解・混練部出口から押出機の濾過部であるスクリーンまでの流路間に於いて、上流部である混練部出口断面を下流部であるスクリーン断面より広くし、混練部出口からスクリーンに向けて流れ方向と平行にならない直線状もしくは曲線状による傾斜を設け、流路断面積が狭まっていく流路を持つ構成を備えた押出機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate