説明

押圧式スイッチ

【課題】可動接点部材が弾性復帰する際に生じる異音を低減することができる押圧式スイッチの提供。
【解決手段】ケース2内底部に配置された固定接点3と、固定接点3と接離可能な配置に可動接点4を支持する複数の弾性支持片21,22を有する可動接点部材5と、可動接点4上に配置された操作部材6とを備え、操作部材6の押し込み動作に連動して各弾性支持片21,22が弾性変形することにより可動接点4が固定接点3と接触するようにしてなる押圧式スイッチ1において、各弾性支持片21,22は、各々バネ定数が異なるような形状に形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用操作系パネルや各種電子機器等に使用される押圧式スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の押圧式スイッチには、合成樹脂製ケースの内底部に配置された固定接点と、固定接点に接離可能に配置された可動接点を有する可動接点部材と、可動接点を下向きに移動させるキーステム等の操作部材とを備え、操作部材の押し込み動作に連動して可動接点部材が弾性変形することにより可動接点が固定接点と接触し、操作部材に作用する押圧力の解除に連動して可動接点部材が弾性復帰することにより可動接点が固定接点より離反するようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
可動接点部材100は、図6に示すように、弾性及び導電性を有する金属性板材を打ち抜き・折り曲げ加工することにより中心線CLに対し対称な形状に形成され、円環状の外環部101と、外環部101内縁より並列配置に形成された一対の弾性支持片102,102と、両弾性支持片102,102に支持された可動接点103とを一体に備え、両弾性支持片102,102が弾性変形することにより可動接点103が固定接点と接離可能に移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−323967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、可動接点部材に作用する押圧力が解除され、可動接点部材が弾性復帰する際、その復帰動作に振動を伴う。
【0006】
一方、音の聴こえ方は、発信源の周波数成分によって大きく異なり、一般に周波数2kHz〜5kHzの範囲で感度がよく、その為、可動接点部材が弾性復帰する際、それに伴う振動音の周波数成分のうち特定の周波数、即ち2kHz〜5kHzの範囲に含まれる周波数成分が突出すると、その振動音の音圧レベルが低くとも人の耳に聞こえやすい場合があり、当該振動音が異音として認識されるおそれがあった。
【0007】
また、このような押圧式スイッチをプリント配線基板に装着し、更にそのプリント配線基板を電子機器等に装着することにより上記振動音がプリント配線基板や電子機器等の取り付け部分における固有振動数と共振して増幅され、動作音の高級感を損なうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、可動接点部材が弾性復帰する際に生じる異音を低減することができる押圧式スイッチの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、ケース内底部に配置された固定接点と、該固定接点と接離可能な配置に可動接点を支持する複数の弾性支持片を有する可動接点部材と、前記可動接点上に配置された操作部材とを備え、該操作部材の押し込み動作に連動して前記各弾性支持片が弾性変形することにより前記可動接点が前記固定接点と接触するようにしてなる押圧式スイッチにおいて、前記各弾性支持片は、各々バネ定数が異なるような形状に形成されたことにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記可動接点部材は、前記ケース内に保持される環状の外環部を備え、前記各弾性支持片は、前記外環部の内縁に基端側を支持させて互いに並列配置に形成された起き上がり片と、該両起き上がり片間に配置された前記可動接点と前記各起き上がり片とを連結する連結片とを備えたことにある。
【0011】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記弾性支持片毎に前記各起き上がり片及び/又は連結片の長さを違えたことにある。
【0012】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の構成に加え、前記弾性支持片毎に前記各起き上がり片及び/又は連結片の幅を違えたことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る押圧式スイッチは、上述したように、ケース内底部に配置された固定接点と、該固定接点と接離可能な配置に可動接点を支持する複数の弾性支持片を有する可動接点部材と、前記可動接点上に配置された操作部材とを備え、該操作部材の押し込み動作に連動して前記可動接点部材が弾性変形することにより前記可動接点が前記固定接点と接触するようにしてなる押圧式スイッチにおいて、前記各弾性支持片は、各々バネ定数が異なるような形状に形成されたことにより、弾性復帰する際の可動接点部材の振動が複合的となり、可聴感度の高い周波数成分が突出するのを抑制するとともに、振動を効率よく減衰させ、スイッチを動作する際の異音を抑制することができる。
【0014】
また、本発明において、前記可動接点部材は、前記ケース内に保持される環状の外環部を備え、前記各弾性支持片は、前記外環部の内縁に基端側を支持させて互いに並列配置に形成された起き上がり片と、該両起き上がり片間に配置された前記可動接点と前記各起き上がり片とを連結する連結片とを備えたことにより、小型のものであっても弾性変形可能な部分のストロークを好適に確保し、それにより長寿命化に対応させることができる。
【0015】
更に本発明において、前記弾性支持片毎に前記各起き上がり片及び/又は連結片の長さを違えたことにより、又は、前記弾性支持片毎に前記各起き上がり片及び/又は連結片の幅を違えたことにより、好適に各弾性支持片をバネ定数の異なる形状に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る押圧式スイッチの一例を示す縦断面図である。
【図2】同上のA-A線断面図である。
【図3】同上の分解斜視図である。
【図4】図1中の中央固定接点用端子及び外側固定接点用端子を示す平面図である。
【図5】(a)は図1中の可動接点部材の一例を示す平面図、(b)は同正面図である。
【図6】押圧式スイッチに使用する従来の可動接点部材の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る押圧式スイッチの実施の態様を図1〜図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は押圧式スイッチである。
【0018】
押圧式スイッチ1は、ケース2の内底部に配置された固定接点3と、固定接点3に接離可能に配置された可動接点4を有する可動接点部材5と、可動接点4を下向きに移動させるキーステム等の操作部材6と、操作部材6を押し上げ方向に付勢するラバー等の弾性体7とを備え、図3に示すように、ケース2内に可動接点部材5、弾性体7及び操作部材6が組み込まれ、操作部材6の押し込み動作に連動して可動接点部材5が弾性変形することにより可動接点4が固定接点3と接触してスイッチをオン状態とし、操作部材6に作用する押圧力を解除することによりそれに伴い可動接点部材5が弾性復帰し、可動接点4が固定接点3より離反してスイッチをオフ状態にするようになっている。
【0019】
ケース2は、絶縁性樹脂材をもって上面部が開口した中空箱状に形成され、内底部に可動接点部材5が挿入される円形凹穴状の部材収容部8が形成されている。
【0020】
また、このケース2には、底部にインサート成型により図4に示す配置で中央固定接点用端子10及び外側固定接点用端子11が一体的に組み込まれ、部材収容部8内底面中央部に中央固定接点用端子10に一体に形成された固定接点3が露出するとともに、部材収容部8の固定接点3の水平方向外側に外側固定接点用端子11の接続部15a〜15dが露出するようになっている。
【0021】
中央固定接点用端子10は、導電性金属材を持って形成され、中央に凸状の固定接点3が形成された円盤状の固定接点部12と、ケース2底面に露出した接続端子部13と、固定接点部12と接続端子部13とを連結する埋め込み部14とを一体に備えている。
【0022】
一方、外側固定接点用端子11は、導電性金属材を持って形成され、ケース2に一体化された際に固定接点3の水平方向外周側に配置される複数の接触部15a〜15dと、接触部間を連結する各連結部16,17と、連結部17の外縁に折り曲げ部18を介して連結されたケース2底面に露出した接続端子部19とを一体に備えている。
【0023】
また、部材収容部8には、可動接点部材5が挿入され、外側固定接点用端子11に接続されるとともに可動接点4が固定接点3に接離可能に配置されるようになっている。
【0024】
可動接点部材5は、弾性及び導電性を有する金属性板材を図5(a)に示す形状に打ち抜き、それを図5(b)に示すように折り曲げ加工することにより形成され、円環状の外環部20と、外環部20に並列配置に支持された一対の弾性支持片21,22と、両弾性支持片21,22に支持された可動接点4とを一体に備えている。尚、上述の金属性板材には、コルソン系りん青銅、りん青銅、チタン銅等の弾性を有する材料からなるものを使用することができる。
【0025】
外環部20は、円環状に形成され、部材収容部8内に収容されて底面が部材収容部8内底面に露出した接触部15a〜15dと接触するようになっている。
【0026】
各弾性支持片21,22は、各々バネ定数が異なる形状に形成され、外環部20の内縁に基端側を支持させて互いに並列配置に形成された起き上がり片23,24と、両起き上がり片23,24間に配置された可動接点4と各起き上がり片23,24とを連結する連結片25,26とを備え、連結片25,26を介して各起き上がり片23,24と可動接点4とがスイッチバック状に配置されるようになっている。
【0027】
各起き上がり片23,24は、平面視円弧状に形成され、基端部23a,24aの折り目23b,24bを基軸に先端側を斜め上向きに起こした形状になっている。また、各起き上がり片23,24は、互いに曲率半径、基端部23a,24aの幅、周方向長さ等が異なった形状に形成されている。具体的には、起き上がり片23が起き上がり片24に比べ、曲率半径が小さく、基端部23a幅が広く且つ周方向長さが短く形成されている。
【0028】
連結片25,26は、弾性支持片21,22の先端側より基端側に向けて切り返した形状に形成され、この連結片25,26に形成された折り目25a,26aを基軸に可動接点4側を起き上がり片23,24より斜め上向きに起こした形状に形成されている。各連結片25,26は、長さ、エッジ部25b,26bの半径が異なる形状に形成されている。具体的には、連結片25が連結片26に比べ、長さが短く且つエッジ部25b半径が大きく形成されている。
【0029】
可動接点4は、互いに半径の異なる半円板を一体とした形状に形成され、起き上がり片23,24より斜め上向きに起こした配置であって、外環部20に対して一定の間隔を隔てて斜め下向きに傾けた配置となっている。
【0030】
このように可動接点部材5は、中心線CLに対し非対称形状をなし、一方の弾性支持片21のバネ定数が他方の弾性支持片22のそれより高くなるように形成されており、弾性支持片24側の形状を中心線CLに対し対称に配置した形状のもの(図6に示す従来例を参照)に比べ、高い固有振動数が得られる。
【0031】
操作部材6は、平板状の天板部30と、天板部30の周縁より下向きに立ち上げた形状の周壁部31とを備えて下面側が開口した中空箱状に形成され、天板部30の底面側に下向きに突出した円筒状の押圧部32が形成され、この押圧部32が弾性体7の上面部と常に当接している。
【0032】
また、操作部材6は、周壁部31の4隅に下向きに突出した形状のガイド部33と、周壁部31の互いに対向する位置に配置された抜け止め爪34とを備え、ガイド部33をケース2内側面にガイドさせて上下移動するとともに、所定の押上位置において抜け止め爪34がケース2内側面部に形成された溝35の上縁に係止され抜け止めされている。
【0033】
弾性体7は、弾性及び絶縁性を有するゴム材等をもって形成され、円柱状の頭部40と、頭部40の下縁より下側に向けて拡開した薄肉テーパ筒状のスカート部41とを一体に備え、スカート部41の下端を部材収容部8内に挿入させ、可動接点部材5の外環部20を介してケース2内底部に反力を取って操作部材6を上向きに付勢するようになっている。
【0034】
この弾性体7は、操作部材6を下向きに押圧することにより、頭部40が下向きに押され、それに連動してスカート部41が弾性変形し、所定の位置まで押し下げられるとスカート部41が反転してクリック感が得られるようになっている。
【0035】
また、押し下げられた頭部40は、可動接点4と接触して可動接点4を押し下げ、所定の位置まで押し下げることにより可動接点4と固定接点3とが接触してスイッチがオン状態となる。
【0036】
一方、操作部材6に作用する押圧力を解除すると、スカート部41が弾性復帰して元の形状に復帰し、可動接点部材5より離脱するとともに、その弾性力により操作部材6を上向きに押上げて操作部材6を元の位置に復帰させるようになっている。
【0037】
このように構成された押圧式スイッチ1は、弾性体7の弾性力に抗しつつ操作部材6を押し下げると、操作部材6に押圧された弾性体7の頭部40が可動接点4と当接して可動接点4を下向きに押圧し、それにより可動接点4がケース2の内底部に配置された固定接点3に接触し、スイッチがオン状態となる。
【0038】
一方、操作部材6に作用する押圧力を解除すると、弾性体7が弾性復帰し、それに伴い操作部材6を元位置に押し戻すとともに頭部40が可動接点部材5(可動接点4)より離脱する。
【0039】
そして、頭部40が離脱してフリーとなった可動接点部材5は、振動しつつ元の形状に弾性復帰し、それにより可動接点4が固定接点3より離脱してスイッチがオフ状態となる。
【0040】
この弾性復帰する際の可動接点部材5の振動は、各弾性支持片21,22が各々バネ定数の異なる形状に形成されているため、それぞれ異なる振動挙動をとり、そのような弾性支持片21,22が可動接点4を介して連結されているので、互いに他の弾性支持片の振動挙動に干渉し、可動接点部材5全体で複合的に振動挙動を示す。
【0041】
従って、可動接点部材5の振動は、可聴感度の高い特定の振動数成分の突出が抑制され、且つ高い減衰率をもって収束するため異音の発生を抑制することができる。
【0042】
尚、可動接点部材の形状は、上述の実施例で説明した形状に拘泥されず、可動接点を支持する複数の弾性支持片を備え、各弾性支持片を各々ばね定数が異なる形状に形成したものであればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 押圧式スイッチ
2 ケース
3 固定接点
4 可動接点
5 可動接点部材
6 操作部材
7 弾性体
8 部材収容部
10 中央固定接点用端子
11 外側固定接点用端子
12 固定接点部
13 接続端子部
14 埋め込み部
15 接触部
16,17 連結部
18 折り曲げ部
19 接続端子部
20 外環部
21,22 弾性支持片
23,24 起き上がり片
25,26 連結片
30 天板部
31 周壁部
32 押圧部
33 ガイド部
34 抜け止め爪
35 溝
40 頭部
41 スカート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内底部に配置された固定接点と、該固定接点と接離可能な配置に可動接点を支持する複数の弾性支持片を有する可動接点部材と、前記可動接点上に配置された操作部材とを備え、該操作部材の押し込み動作に連動して前記各弾性支持片が弾性変形することにより前記可動接点が前記固定接点と接触するようにしてなる押圧式スイッチにおいて、
前記各弾性支持片は、各々バネ定数が異なるような形状に形成されたことを特徴としてなる押圧式スイッチ。
【請求項2】
前記可動接点部材は、前記ケース内に保持される環状の外環部を備え、前記各弾性支持片は、前記外環部の内縁に基端側を支持させて互いに並列配置に形成された起き上がり片と、該両起き上がり片間に配置された前記可動接点と前記各起き上がり片とを連結する連結片とを備えた請求項1に記載の押圧式スイッチ。
【請求項3】
前記弾性支持片毎に前記各起き上がり片及び/又は連結片の長さを違えた請求項2に記載の押圧式スイッチ。
【請求項4】
前記弾性支持片毎に前記各起き上がり片及び/又は連結片の幅を違えた請求項2又は3に記載の押圧式スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110056(P2013−110056A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255873(P2011−255873)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】