説明

押圧式入力装置

【課題】過荷重が加えられる場合でも、荷重センサの破損を防止すること。
【解決手段】操作荷重に応じた信号を出力する荷重センサ2と、荷重センサ2に対して操作荷重を伝える腕部12と、荷重センサ2に初期荷重を生じさせるように折り返されたバネ部13と、腕部12を支持する支持部15が形成されたベース部11とを備え、腕部12に加えられた操作荷重を、支持部15を支点として腕部12に対し荷重センサ2の初期荷重を減少させる方向に力を作用させ、バネ部13の折り返し部分を腕部12の側方において当該腕部12の延在方向に沿って形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧式入力装置に関し、特に、液晶ディスプレイを備えた電子機器の操作に用いられる押圧式入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押圧式入力装置として、電子機器のタッチスクリーンに加わる押圧荷重によって、押圧位置を検出するものが知られている(特許文献1参照)。この種の押圧式入力装置は、例えば、タッチスクリーンの裏面の四隅に荷重センサを設けて構成される。押圧式入力装置は、タッチスクリーンに加わる荷重を各荷重センサで受け、各荷重センサで検出された圧力分布の変化により押圧位置を特定する。なお、このような入力装置に使用する荷重センサは、上記特許文献1ではタッチスクリーンの裏面の四隅に設けているが、1箇所でも検出可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−527620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の押圧式入力装置においては、タッチスクリーンの押圧荷重が直に荷重センサに加わるものなので、大きな荷重が加わると荷重センサが破損するおそれがあった。特に、荷重センサに圧電セラミックスが用いられる場合には破損し易いという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、過荷重が加えられる場合でも、荷重センサの破損を防止することができる押圧式入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押圧式入力装置は、操作荷重に応じた信号を出力する荷重センサと、前記操作荷重が加えられる入力位置と前記荷重センサに当接する当接位置とを含むように延在し、前記荷重センサに対して前記操作荷重を伝える腕部と、前記当接位置において前記荷重センサに初期荷重を生じさせるように折り返して形成された付勢部と、前記腕部を支持する支持部が形成されたベース部とを備え、前記入力位置において前記腕部に加えられた前記操作荷重は、前記支持部を支点として前記当接位置において前記腕部に対し前記荷重センサの初期荷重を減少させる方向に力を作用させ、前記付勢部の折り返し部分は、前記腕部の側方において当該腕部の延在方向に沿って形成されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、腕部に加えられる操作荷重により荷重センサに作用する初期荷重が減少されるため、押圧式入力装置に過荷重が加えられても荷重センサが破損することが防止される。また、付勢部の折り返し部分が腕部の側方において当該腕部の延在方向に沿って形成されるため、この折り返し部分によって荷重センサから腕部の延在方向への配線の引き出しが阻害されることがない。よって、例えば、長尺状の設置スペースに押圧式入力装置を配置することができる。
【0008】
また本発明の上記押圧式入力装置において、前記ベース部と前記腕部とが、前記当接位置側において前記付勢部の折り返し部分を介して一体に形成される。この構成によれば、ベース部と腕部と付勢部とが一体化されるため、部品点数を削減してコストを低減でき、さらに組み立て性と組み立て精度を向上できる。
【0009】
また本発明の上記押圧式入力装置において、前記ベース部、前記腕部及び前記付勢部が、金属板材により一体に形成される。この構成によれば、金属板材によって容易に、ベース部と腕部と付勢部とを一体的に形成できる。
【0010】
また本発明の上記押圧式入力装置において、前記ベース部、前記腕部及び前記付勢部が、別体に形成され、前記付勢部の折り返し部分に連なる一対の対向部の間に、前記ベース部及び前記腕部が挟み込まれるように配置される。この構成によれば、ベース部、腕部、付勢部が別体に形成されるため、装置各部の設計変更に柔軟に対応できる。
【0011】
また本発明の上記押圧式入力装置において、前記腕部は、延在方向に直交する側方に突出した一対の突起部を有し、前記支持部は、前記ベース部において前記腕部の延在方向における複数箇所に、前記一対の突起部を位置決め状態で支持するように形成される。この構成によれば、一対の突起部が支持される支持位置の変更によって、操作荷重が加わる力点と支点との距離、荷重センサに当接する作用点と支点との距離を容易に変更でき、荷重センサのセンサ感度を調整できる。また、支持部に対して腕部が位置決めされることで、力点と支点との距離、作用点と支点との距離を精度よく調整できる。
【0012】
また本発明の上記押圧式入力装置において、前記ベース部には、前記当接位置において前記付勢部を位置決め状態で配置する位置決め部が形成される。この構成によれば、付勢部を当接位置に精度よく配置でき、付勢部の付勢力によって腕部を介して荷重センサに適切な初期荷重を生じさせることができる。
【0013】
また本発明の他の押圧式入力装置は、操作荷重に応じた信号を出力する荷重センサと、
前記操作荷重が加えられる入力位置と前記荷重センサに当接する当接位置とを含むように延在し、前記荷重センサに対して前記操作荷重を伝える腕部材と、前記当接位置において前記荷重センサに初期荷重を生じさせる付勢部材と、前記腕部材を支持する支持部が形成されたベース部とを備え、前記入力位置において前記腕部材に加えられた前記操作荷重は、前記支持部を支点として前記当接位置において前記腕部材に対し前記荷重センサの初期荷重を減少させる方向に力を作用させ、前記腕部材は、延在方向に直交する側方に突出した一対の突起部を有し、前記支持部は、前記ベース部材において前記腕部の延在方向における複数箇所に、前記一対の突起部を位置決め状態で支持するように形成されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、腕部材に加えられる操作荷重により荷重センサに作用する初期荷重が減少されるため、押圧式入力装置に過荷重が加えられても荷重センサが破損することが防止される。また、一対の突起部が支持される支持位置の変更によって、操作荷重が加わる力点と支点との距離、荷重センサに当接する作用点と支点との距離を容易に変更でき、荷重センサのセンサ感度を調整できる。また、支持部に対して腕部材が位置決めされることで、力点と支点との距離、作用点と支点との距離を精度よく調整できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過荷重が加えられる場合でも、荷重センサの破損を防止することができ、折り返して形成された付勢部によって荷重センサから腕部の延在方向への配線の引き出しが阻害されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る押圧式入力装置の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る押圧式入力装置の側面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る押圧式入力装置の動作説明図である。
【図4】第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の斜視図である。
【図5】第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の分解斜視図である。
【図6】第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の感度調整の説明図である。
【図7】第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る押圧式入力装置は、液晶ディスプレイを備えた電子機器の操作に用いられるものであるが、これに限定されるものではない。
【0018】
図1および図2を参照して、押圧式入力装置の全体構成について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る押圧式入力装置の斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る押圧式入力装置の側面図である。
【0019】
図1および図2に示す押圧式入力装置1は、電子機器に設けられた操作パネル6(図3参照)の背面の所定の場所に、少なくとも一ヶ所、あるいは四隅に配置され、操作パネル6からの操作荷重を受けるように構成されている。押圧式入力装置1は、荷重センサ2と、荷重センサ2に対して操作パネル6からの操作荷重を伝達する荷重伝達部材3とを備えている。荷重伝達部材3は、ステンレス等の金属板材を折り曲げて、上下方向で対向する一対の平板部間に荷重センサ2を挟み込むように形成されている。
【0020】
荷重センサ2の下側の平板部は、上面視略長方形状のベース部11となっている。ベース部11の一端側の略半部には、フレキシブル基板4が取り付けられている。フレキシブル基板4上には、荷重センサ2が配置される。ベース部11の他端側には、端部を上向きに折り曲げて、上側の平板部(後述する腕部12)を支持する支持部15が形成されている。荷重センサ2の上側の平板部は、ベース部11よりも長尺に形成された上面視略長方形状の腕部12となっている。
【0021】
腕部12は、支持部15で支持された支持位置を挟んで、一端側で荷重センサ2に当接され、他端側で操作パネルからの操作荷重が加えられる。すなわち、腕部12は、支持部15を支点とした梃子として機能する。また、腕部12の一端側及びベース部11の一端側は、短手方向に位置した一側部において、U字状のバネ部(付勢部)13を介して連なっている。バネ部13は、腕部12とベース部11との連結部分の折り返しによって形成されたU字バネであり、この折り返し部分によって腕部12の一端側とベース部11の他端側とを引き付けている。
【0022】
腕部12の一端側は、このバネ部13によってベース部11上の荷重センサ2に押し付けられる方向に付勢力が発生し、荷重センサ2に対して初期荷重を付与している。よって、腕部12は、操作パネル6からの操作荷重を他端側で受けることで、支持部15を中心として荷重センサ2に作用する初期荷重に対して逆向きに力を作用させる。このように、本実施の形態に係る押圧式入力装置1では、操作パネル6からの操作荷重がバネ部13を押し返すように作用し、荷重センサ2に作用する初期荷重が減少される。そして、電子機器のICにおいて、操作パネル6の背面の少なくとも1ヶ所の各押圧式入力装置1からの入力に基づいて、操作パネル6に対する操作位置や操作荷重が算出される。
【0023】
フレキシブル基板4は、荷重センサ2が設けられた基板であり、例えば、絶縁層としてのポリイミドフィルム上に配線(導電パターン)を形成して構成される。フレキシブル基板4は、ベース部11(腕部12)の延在方向において、ベース部11の一端側から外側に向って帯状に延出している。すなわち、フレキシブル基板4は、ベース部11上において支持部15が形成された側とは逆側で、かつバネ部13の折り返し部分の延在方向に沿って外方に延出している。このため、荷重センサ2からの配線の引き出しが、バネ部13及び支持部15によって阻害されることがない。このように、配線が腕部12の延在方向に引き出し可能なため、例えば、長尺状の設置スペースに押圧式入力装置1の配置が可能となっている。
【0024】
また、フレキシブル基板4は、電子機器の不図示のICに接続され、荷重センサ2からの出力値をICに入力する。荷重センサ2は、例えば、ピエゾ抵抗効果や圧電効果を利用したフォースセンサ等であり、突起21を有する検出面22を上側に向けて配置されている。荷重センサ2の突起21には、ベース部11の一端側に対向する腕部12の一端側が当接されている。この腕部12の当接箇所には、操作パネルからの操作荷重が、荷重センサ2に対する初期荷重を減少させる方向に作用する。よって、操作パネル6に対して過荷重が加えられても、荷重センサ2に初期荷重以上の荷重が作用しないため、荷重センサ2の破損が防止される。
【0025】
また、本実施の形態に係る押圧式入力装置1では、荷重センサ2に対する荷重伝達機構が、金属板材を折り曲げて形成した荷重伝達部材3で構成されている。このため、ベース部11と腕部12とバネ部13とが一体化されるため、簡易な構成で部品点数を削減してコストを低減でき、さらに組み立て性と組み立て精度を向上できる。
【0026】
図3を参照して、押圧式入力装置の動作について説明する。図3は、第1の実施の形態に係る押圧式入力装置の動作説明図である。なお、図3A、Bは操作パネルの非操作状態、図3C、Dは操作パネルの操作状態をそれぞれ示す。
【0027】
図3A、Bに示すように、腕部12は、ベース部11に設けられた支持部15により支持されている。また、腕部12は、一端側において荷重センサ2の突起21に当接され、他端側において押し子5を介して操作パネル6に当接されている。すなわち、腕部12は、ベース部11の支持部15に支持された支持位置を支点P1、押し子5が設けられた操作荷重の入力位置を力点P2、荷重センサ2に当接する当接位置を作用点P3とした梃子として機能する。
【0028】
この操作パネルの非操作状態では、作用点P3において、バネ部13の付勢力により腕部12の一端側が荷重センサ2に引き付けられている。このとき、操作パネル6には操作荷重が加わっていないため、バネ部13の付勢力が腕部12の一端側を介して荷重センサ2に初期荷重F1として付与される。
【0029】
本実施の形態に係る押圧式入力装置1では、腕部12及びベース部11の板厚が約0.2[mm]、腕部12とベース部11との間隔が荷重センサ2を挟まない状態で約0.4[mm]、バネ部13のRが約0.6[mm]、荷重センサ2の高さ寸法が約0.6[mm]に設定されている。そして、ベース部11に荷重センサ2が配置されることで腕部12とベース部11との間隔が約0.2[mm]だけ広がり、荷重センサ2に約4.0[N]の初期荷重が発生する。この初期荷重は荷重センサ2及び荷重伝達部材3が破損しない程度に設定されている。
【0030】
この非操作状態から操作パネル6が操作荷重F2で押圧されると、ベース部11の支持部15を支点P1として腕部12の他端側から一端側に操作荷重が伝達される。このとき、操作荷重の大きさが、支点P1から力点P2までの距離と、支点P1から作用点P3までの距離との割合に応じて可変される。例えば、支点P1から力点P2までの距離をXとし、支点P1から作用点P3までの距離をYとした場合、操作荷重F2はX/Y倍されて作用点P3に伝達される。
【0031】
なお、本実施の形態に係る押圧式入力装置1は、ベース部11における支持部15の折り曲げ位置を変更することにより、支点位置を動かすことができる。例えば、支点P1と作用点P3との距離を近付けることで荷重センサ2からの出力を高くして、センサ感度を高くできる。また、支点P1と作用点P3との距離を遠ざけることで荷重センサ2からの出力を低くして、センサ感度を低くできる。よって、電子機器の製品仕様や電子機器に対する取付位置に応じて、荷重センサ2のセンサ感度を調整することも可能である。
【0032】
作用点P3に伝達された操作荷重F2は、初期荷重に対して逆向きに作用するため、荷重センサ2に対する初期荷重が減少される。この結果、バネ部13の付勢力が緩められて初期荷重F1が減少され、荷重センサ2に荷重F3が作用する。このように、操作パネル6に対する操作荷重が大きくなるにつれて、荷重センサ2に作用する荷重が小さくなるため、荷重センサ2に対して初期荷重F1以上の荷重が作用することがない。よって、荷重センサ2に定格荷重以上の荷重が加わることがなく、荷重センサ2の破損を防止できる。
【0033】
荷重センサ2は、腕部12の一端側から受ける荷重を、操作荷重に応じた信号として電子機器のICに出力する。電子機器のICは、荷重センサ2からの出力値に応じて、操作パネル6に対する操作位置及び操作荷重を算出する。例えば、ICは、操作パネル6の四隅に配置された複数の押圧式入力装置1の荷重センサ2からの出力値の割合に基づいて、操作パネル6における操作位置及び操作荷重を特定する。
【0034】
なお、本実施の形態では、電子機器のICによって操作位置及び操作荷重が算出されたが、フレキシブル基板4にICを設けて押圧式入力装置1側で操作位置及び操作荷重が算出されてもよい。また、押圧式入力装置1は操作パネル6に例えば一つ設けられていても良く、操作パネル6の操作位置検出手段から得られた操作位置の出力値と荷重センサ2より得られた操作荷重の出力値とを電子機器のICに出力する。
【0035】
図3C、Dに示す操作状態から操作パネル6に対する押圧が解除されると、腕部12の一端側において初期荷重に対して逆向きに作用する操作荷重が除かれる。そして、バネ部13の弾性力が、腕部12の一端側を介して荷重センサ2に対して初期荷重F1として再び付与される。
【0036】
以上のように、本実施の形態に係る押圧式入力装置1によれば、操作パネル6からの操作荷重により荷重センサ2に作用する初期荷重が減少されるため、操作パネル6に対して過荷重が加えられても、荷重センサ2が破損することが防止される。また、バネ部13の折り返し部分が腕部12の一側部に沿って形成されるため、バネ部13によって荷重センサ2から腕部12(ベース部11)の延在方向に延びる配線の引き出しが阻害されることがない。
【0037】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態に係る押圧式入力装置は、上述した第1の実施の形態に係る押圧式入力装置と荷重伝達機構の各部が別体に形成された点について主に相違する。
【0038】
図4および図5を参照して、押圧式入力装置の全体構成について説明する。図4は、第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の斜視図である。図5は、第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の分解斜視図である。
【0039】
図4及び図5に示すように、押圧式入力装置51は、荷重センサ52と、荷重センサ52に対して操作荷重を伝達するように複数の部材を組み合わせた形成された荷重伝達機構53とを備えている。荷重伝達機構53は、上面開放の溝型形状の断面で長尺状のベース部材(ベース部)61を有している。ベース部材61の底板部62には、開口部64が形成されている。底板部62の背面には、フレキシブル基板54が取り付けられ、フレキシブル基板54の配置された荷重センサ52がベース部材61の開口部64を介して上方に突出される。ベース部材61の側板部63には、底板部62に対向するように腕部材(腕部)71が支持されている。
【0040】
腕部材71は、上面開放の溝型形状の断面でベース部材61よりも長尺状に形成されており、一端側で荷重センサ52に当接され、他端側で操作パネル56(図7参照)からの操作荷重が加えられる。腕部材71の延在方向の途中部分には、側板部63から側方に突出した一対の突起部74が設けられている。腕部材71は、この突起部74を介してベース部材61の側板部63に支持されている。腕部材71の一端側には、側面視U字状のバネ部材(付勢部)81が取り付けられる。バネ部材81の下板部82はフレキシブル基板54の背面に当接し、バネ部材81の上板部83は腕部材71の上面に当接する。
【0041】
腕部材71の一端側は、バネ部材81により荷重センサ52に引き寄せられ、荷重センサ52に対して初期荷重を付与している。腕部材71は、操作パネル56からの操作荷重を他端側で受けることで、一対の突起部74が支持される支持位置を中心として荷重センサ52に作用する初期荷重に対して逆向きに力を作用させる。このように、本実施の形態に係る押圧式入力装置51では、操作パネル56からの操作荷重がバネ部材81を押し返すように作用し、荷重センサ52に作用する初期荷重が減少される。そして、電子機器のICにおいて、操作パネル56の背面の少なくとも1ヶ所の各押圧式入力装置51からの入力に基づいて、操作パネル56に対する操作位置や操作荷重が算出される。
【0042】
ベース部材61は、例えば樹脂材料等により形成され、長尺状の底板部62と、底板部62の短手方向の両端部から立ち上がる一対の側板部63とを有している。底板部62の一端側には、開口部64が形成されている。開口部64は、底板部62からフレキシブル基板54上の荷重センサ52の検出面92を突出させている。一対の側板部63には、外向きに折り返された上端部分を部分的に切り欠いて、一対の突起部74を支持する一対の支持部66とバネ部材81を位置決めする一対の位置決め部67とが形成されている。一対の支持部66は、ベース部材61の他端側において延在方向の2箇所に形成されている。これにより、ベース部材61に対する腕部材71の取付位置が可変可能となっている。
【0043】
一対の支持部66は、溝状に形成されており、一対の突起部74を支持した状態で僅かな隙間が形成される溝幅を有している。このように、一対の支持部66は、一対の突起部74を位置決め状態で支持し、この支持位置を中心として腕部材71を僅かに揺動可能としている。一対の位置決め部67は、ベース部材61の一端側に溝状に形成されており、バネ部材81の上板部83に合わせた溝幅を有している。また、一対の位置決め部67は、荷重センサ52の検出面92とバネ部材81の上板部83とを対向させるように位置決めする。これにより、バネ部材81の付勢力が、腕部材71の一端側を介して荷重センサ52に精度よく作用される。
【0044】
腕部材71は、例えば樹脂材料等により形成され、長尺状の底板部72と、底板部72の短手方向の両端部から立ち上がる一対の側板部73とを有している。腕部材71の一対の側板部73の外面間隔は、ベース部材61の一対の側板部63の内面間隔よりも小さく形成されている。このため、腕部材71の一対の側板部73は、ベース部材61の一対の側板部63の内側に配置される。一対の側板部73には、腕部材71の延在方向の途中部分から外向きに突出した一対の突起部74が設けられている。腕部材71は、一対の突起部74がベース部材61の一対の支持部66に支持されることで、ベース部材61によって揺動可能に支持される。この一対の突起部74は、一対の支持部66に支持されることで腕部材71の支点を構成する。
【0045】
この場合、ベース部材61の延在方向の複数箇所(本実施の形態では2箇所)に一対の支持部66が形成されているため、一対の突起部74の支持位置を可変させることで支点変更が可能となっている。また、一対の突起部74は、腕部材71の延在方向の中心から外れた位置に設けられている。この構成により、支点変更した場合であっても、腕部材71を前後反転してベース部材61に取り付けることで、腕部材71とベース部材61との相対的な位置関係を維持できる。
【0046】
具体的には、ベース部材61の他端付近の一対の支持部66に一対の突起部74が支持される場合には、図4に示す向きで腕部材71がベース部材61に支持される。また、ベース部材61の中央付近の一対の支持部66に一対の突起部74が支持される場合には、図4に示す向きから前後反転して腕部材71がベース部材61に支持される。このように腕部材71の支点変更をした場合に、腕部材71を前後反転することで、ベース部材61の他端側から外方に延出する腕部材71の長さを略一定に保っている。
【0047】
底板部72には、延在方向の複数箇所にスリット状の溝部75が形成されている。溝部75は、操作パネルからの操作荷重を受ける押し子55(図7参照)が取り付けられる。底板部62において押し子55が取り付けられた部分は、押し子55を介して操作パネル56に当接されることで腕部材71の力点を構成する。このように、押し子55の取付位置を腕部材71の延在方向において可変させることで力点変更が可能となっている。また、底板部72において荷重センサ52に対向する部分は、荷重センサ52の突起91に当接することで腕部材71の作用点を構成する。
【0048】
バネ部材81は、ステンレス等の金属板材を折り返して、上板部83と下板部82との間にベース部材61及び腕部材71を挟み込むように形成されている。上板部83及び下板部82は、折り返し部84によって連結されており、側面視U字状に形成されている。バネ部材81は、この折り返し部84によって腕部材71の底板部72とベース部材61の底板部62とを引き付けるように付勢する。また、バネ部材81は、開放された側方側からベース部材61の位置決め部67に装着され、腕部材71を介して荷重センサ52に初期荷重を生じさせる。
【0049】
上板部83は、折り返し部84の上端部から腕部材71の上方を横切るように形成され、腕部材71の底板部72に接する抜け止め部86が形成されている。バネ部材81は、抜け止め部86が腕部材71の一対の側板部73に引っ掛かることで、腕部材71及びベース部材61から外れることが防止される。下板部82は、フレキシブル基板54を介してベース部材61の背面に当接する。
【0050】
フレキシブル基板54は、荷重センサ52が設けられた基板であり、例えば、絶縁層としてのポリイミドフィルム上に配線(導電パターン)を形成して構成される。フレキシブル基板54は、ベース部材61(腕部材71)の延在方向において、ベース部材61の一端側から外側に向って帯状に延出している。すなわち、フレキシブル基板54は、折り返し部84の板幅方向に沿ってベース部材61から外方に延出している。このように、配線が腕部材71の延在方向に引き出し可能なため、荷重センサ52からの配線の引き出しが折り返し部84によって阻害されることがない。これにより、例えば、長尺状の設置スペースに押圧式入力装置51の配置が可能となっている。
【0051】
また、フレキシブル基板54は、電子機器の不図示のICに接続され、荷重センサ52からの出力値をICに入力する。荷重センサ52は、例えば、ピエゾ抵抗効果や圧電効果を利用したフォースセンサ等であり、突起91を有する検出面92を上側に向けて配置されている。荷重センサ52の突起91には、ベース部材61の一端側に対向する腕部材71の一端側が当接されている。この腕部材71の当接箇所には、操作パネル56からの操作荷重が、荷重センサ52に対する初期荷重を減少させる方向に作用する。よって、操作パネル56に対して過荷重が加えられても、荷重センサ52に初期荷重以上の荷重が作用しないため、荷重センサ52の破損が防止される。
【0052】
また、本実施の形態に係る押圧式入力装置51では、荷重センサ52に対する荷重伝達機構53が、複数の部材を組み合わせて構成されている。このため、装置各部の設計変更に対して柔軟に対応することができる。具体的には、バネ部材81のバネ圧にバラツキが生じる場合や、荷重センサ52に対する初期荷重を変更したい場合には、バネ部材81を交換することで対応できる。また、支点変更及び力点変更によって、力点と支点との距離と作用点と支点との距離とを容易に変更でき、荷重センサ52のセンサ感度を調整できる。
【0053】
ここで、図6を参照して、押圧式入力装置の感度調整について説明する。図6は、第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の感度調整の説明図である。図6Bは、図6Aから力点を変更した状態を示し、図6Cは図6Aから支点を変更した状態を示す。
【0054】
図6に示すように、腕部材71は、一対の突起部74によってベース部材61の一対の支持部66に支持されている。また、腕部材71は、一端側において荷重センサ52の突起91に当接され、他端側において押し子55を介して操作パネル56に当接されている。すなわち、腕部材71は、一対の突起部74と一対の支持部66との支持位置を支点P1、押し子55が設けられた位置を力点P2、荷重センサ52の突起91に当接した位置を作用点P3とした梃子として機能する。この状態で、腕部材71の力点P2に操作パネル56から操作荷重が加わると、腕部材71が一対の突起部74を支点P1として僅かに揺動される。
【0055】
このとき、腕部材71の作用点P3に作用する操作荷重の大きさが、支点P1と力点P2との距離、及び支点P1と作用点P3との距離の割合に応じて変化する。例えば、図6Aでは、支点P1と力点P2との距離、及び支点P1と作用点P3との距離が、約1:1に設定されている。したがって、操作パネル56からの操作荷重が、ほぼ変化されることなく腕部材71の作用点P3に伝達される。作用点P3に伝達された操作荷重は、初期荷重に対して逆向きに作用するため、荷重センサ52に対する初期荷重が減少される。
【0056】
また、図6Bに示すように、押し子55の位置を調整して力点変更することにより、支点P1と力点P2との距離、及び支点P1と作用点P3との距離を約1:2に設定してもよい。この場合、操作パネル56からの操作荷重が、ほぼ半減されて腕部材71の作用点P3に伝達される。また、図6Cに示すように、腕部材71を前後反転して支点変更することにより、支点P1と力点P2との距離、及び支点P1と作用点P3との距離を約3:1に設定してもよい。この場合、操作パネル56からの操作荷重が、約3倍に増やされて腕部材71の作用点P3に伝達される。このとき、一対の突起部74は、ベース部材61の支持部66に対して位置決め状態で支持されるため、力点と支点との距離、作用点と支点との距離が精度よく調整される。
【0057】
このように、支点P1及び力点P2の位置を変えることにより、力点P2から入力される操作荷重を変化させて作用点P3に伝達でき、荷重センサ52のセンサ感度を調整できる。具体的には、支点P1と作用点P3との距離を近付けることで荷重センサ52からの出力を高くして、センサ感度を高くできる。逆に、支点P1と作用点P3との距離を遠ざけることで荷重センサ52からの出力を低くして、センサ感度を低くできる。よって、電子機器の製品仕様や電子機器に対する取付位置に応じて、荷重センサ52のセンサ感度を調整できる。また、荷重センサ52に作用する荷重を小さくすることで、定格荷重の小さな荷重センサ52を用いることも可能である。
【0058】
図7を参照して、押圧式入力装置の動作について説明する。図7は、第2の実施の形態に係る押圧式入力装置の動作説明図である。なお、図7A、Bは操作パネルの非操作状態、図7C、Dは操作パネルの操作状態をそれぞれ示す。
【0059】
図7A、Bに示すように、操作パネル56の非操作状態では、バネ部材81の弾性力により腕部材71の一端側が荷重センサ52に引き付けられている。腕部材71は、作用点P3において荷重センサ52の突起91に当接する。このとき、操作パネル56には操作荷重が加わっていないため、バネ部材81の付勢力が腕部材71の一端側を介して荷重センサ52に初期荷重F1として付与される。
【0060】
図7C、Dに示すように、非操作状態から操作パネル56が操作荷重F2で押圧されると、操作荷重が一対の突起部74の支持位置を支点として腕部材71の作用点P3に伝達される。この際、操作荷重F2の大きさは、支点P1と力点P2との距離、支点P1と作用点P3との距離の割合に応じて可変される。本実施の形態では、支点P1と力点P2との距離、支点P1と作用点P3との距離が約1:1に設定されるため、操作荷重F2の大きさがほぼ変化することなく、操作荷重の向きだけが逆向きに変換されて腕部材71の一端側に伝達される。
【0061】
作用点P3に伝達された操作荷重F2は、初期荷重に対して逆向きに作用するため、荷重センサ52に対する初期荷重が減少される。この結果、バネ部材81の付勢力が緩められて初期荷重F1が減少され、荷重センサ52に荷重F3が作用する。このように、操作パネル56に対する操作荷重が大きくなるにつれて、荷重センサ52に作用する荷重が小さくなるため、荷重センサ52に対して初期荷重F1以上の荷重が作用することがない。よって、荷重センサ52に定格荷重以上の荷重が加わることがなく、荷重センサ52の破損を防止できる。
【0062】
荷重センサ52は、腕部材71の一端側から受ける荷重を、操作荷重に応じた信号として電子機器のICに出力する。電子機器のICは、荷重センサ52からの出力値に応じて、操作パネル56に対する操作位置及び操作荷重を算出する。例えば、ICは、操作パネル56の四隅に配置された複数の押圧式入力装置51の荷重センサ52からの出力値の割合に基づいて、操作パネル56における操作位置及び操作荷重を特定する。
【0063】
なお、本実施の形態では、電子機器のICによって操作位置及び操作荷重が算出されたが、フレキシブル基板54にICを設けて押圧式入力装置51側で操作位置及び操作荷重が算出されてもよい。また、押圧式入力装置51は操作パネル56に例えば一つ設けられていても良く、操作パネル56の操作位置検出手段から得られた操作位置の出力値と荷重センサ52より得られた操作荷重の出力値とを電子機器のICに出力する。
【0064】
図7C、Dに示す操作状態から操作パネル56に対する押圧が解除されると、腕部材71の一端側において初期荷重に対して逆向きに作用する操作荷重が除かれる。そして、バネ部材81の弾性力が、腕部材71の一端側を介して荷重センサ52に対して初期荷重F1として再び付与される。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る押圧式入力装置51によれば、操作パネル56からの操作荷重により荷重センサ52に作用する初期荷重が減少されるため、操作パネル56に対して過荷重が加えられても、荷重センサ52が破損することが防止される。また、バネ部材81の折り返し部84が腕部材71の一側部に沿って形成されるため、この折り返し部84によって荷重センサ52から腕部材71(ベース部材61)の延在方向に延びる配線の引き出しが阻害されることがない。また、支点変更及び力点変更によって、支点P1と力点P2との距離、支点P1と作用点P3との距離を容易に変更でき、荷重センサ52のセンサ感度を広い範囲で調整できる。
【0066】
また、上記した各実施の形態において、バネ部及びバネ部材が片持ちで付勢力を生じさせる構成としたが、これに限定されない。バネ部及びバネ部材は、ベース部からのフレキシブル基板の延出を阻害しないように形成されればよく、例えば両持ちで付勢力を生じさせる構成でもよい。
【0067】
また、上記した各実施の形態において、腕部及び腕部材は、直線状に延在する構成としたが、これに限定されない。腕部及び腕部材は、操作荷重が入力される入力位置と荷重センサに当接する当接位置とを含むように延在すればよい。また、腕部材は、入力位置と当接位置との間に支持位置が設定される構成に限らず、端部に支持位置が設定されてもよい。この場合、腕部材の端部は、一端部を上下から挟み込む支持部によって支持される。
【0068】
また、上記した各実施の形態においては、バネ部及びバネ部材が金属板材で形成されたが、これに限定されない。バネ部及びバネ部材は、例えば、樹脂材料によって形成されてもよい。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、51 押圧式入力装置
2、52 荷重センサ
3 荷重伝達部材
4、54 フレキシブル基板
11 ベース部
12 腕部
13 バネ部(付勢部)
15、66 支持部
53 荷重伝達機構
61 ベース部材(ベース部)
67 位置決め部
71 腕部材(腕部)
74 突起部
81 バネ部材(付勢部)
82 下板部(対向部)
83 上板部(対向部)
84 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作荷重に応じた信号を出力する荷重センサと、
前記操作荷重が加えられる入力位置と前記荷重センサに当接する当接位置とを含むように延在し、前記荷重センサに対して前記操作荷重を伝える腕部と、
前記当接位置において前記荷重センサに初期荷重を生じさせるように折り返して形成された付勢部と、
前記腕部を支持する支持部が形成されたベース部とを備え、
前記入力位置において前記腕部に加えられた前記操作荷重は、前記支持部を支点として前記当接位置において前記腕部に対し前記荷重センサの初期荷重を減少させる方向に力を作用させ、
前記付勢部の折り返し部分は、前記腕部の側方において当該腕部の延在方向に沿って形成されることを特徴とする押圧式入力装置。
【請求項2】
前記ベース部と前記腕部とが、前記当接位置側において前記付勢部の折り返し部分を介して一体に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の押圧式入力装置。
【請求項3】
前記ベース部、前記腕部及び前記付勢部が、金属板材により一体に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の押圧式入力装置。
【請求項4】
前記ベース部、前記腕部及び前記付勢部が、別体に形成され、
前記付勢部の折り返し部分に連なる一対の対向部の間に、前記ベース部及び前記腕部が挟み込まれるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の押圧式入力装置。
【請求項5】
前記腕部は、延在方向に直交する側方に突出した一対の突起部を有し、
前記支持部は、前記ベース部において前記腕部の延在方向における複数箇所に、前記一対の突起部を位置決め状態で支持するように形成されたことを特徴とする請求項4に記載の押圧式入力装置。
【請求項6】
前記ベース部には、前記当接位置において前記付勢部を位置決め状態で配置する位置決め部が形成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の押圧式入力装置。
【請求項7】
操作荷重に応じた信号を出力する荷重センサと、
前記操作荷重が加えられる入力位置と前記荷重センサに当接する当接位置とを含むように延在し、前記荷重センサに対して前記操作荷重を伝える腕部材と、
前記当接位置において前記荷重センサに初期荷重を生じさせる付勢部材と、
前記腕部材を支持する支持部が形成されたベース部とを備え、
前記入力位置において前記腕部材に加えられた前記操作荷重は、前記支持部を支点として前記当接位置において前記腕部材に対し前記荷重センサの初期荷重を減少させる方向に力を作用させ、
前記腕部材は、延在方向に直交する側方に突出した一対の突起部を有し、
前記支持部は、前記ベース部材において前記腕部の延在方向における複数箇所に、前記一対の突起部を位置決め状態で支持するように形成されたことを特徴とする押圧式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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