説明

押圧操作装置

【課題】押圧操作を受けて回動する被操作部と押圧操作力を押圧スイッチに伝える押圧力伝達部とが成形された単一の回動操作部材を備え、押圧力伝達部のヒケの発生を抑止しながら十分な剛性を与えることが可能な押圧操作装置を提供する。
【解決手段】押圧操作装置は、押圧スイッチを択一的に押圧するための回動操作部材20と、回動操作部材20を支持する回動支持部材40とを備える。回動操作部材20は、被操作部24と、各回動端部241,242から各押圧スイッチに向かって延びる押圧力伝達部21とを有し、これらが一体に回動するように単一の部材として成形される。押圧力伝達部21は、回動面に対して直交する厚み方向の寸法が回動面と平行な幅方向の寸法よりも小さい断面形状を有する。回動支持部材40は、各押圧力伝達部21の回動面に沿った動きは許容しつつ厚み方向への動きを規制する案内部42bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパネルユニット等に用いられ、一対の押圧スイッチを択一的に押圧操作することが可能な押圧操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の押圧スイッチの択一的な押圧操作が可能な押圧操作装置として、いわゆるシーソースイッチを具備したものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、図12(a)(b)に示すような装置が開示されている。この装置は、回路基板4上に設けられた第1押圧スイッチ5A及び第2押圧スイッチ5Bを択一的に操作するためのもので、前記回路基板4の表側に配設される回動操作部材2と、この回動操作部材2を所定の回動中心軸6を中心として回動可能に支持するパネル1と、前記回動操作部材2と前記各押圧スイッチ5A,5Bとの間にそれぞれ介在する押圧力伝達部材3A,3Bとを備える。
【0004】
前記各押圧スイッチ5A,5Bは、前記回路基板4の法線方向に押圧操作されることが可能な操作部5a,5bをそれぞれ有する。各操作部5a,5bは、押圧操作を受けたときに回路基板4側に後退し、かつ、当該押圧が解除されたときに元の位置に復帰する復帰力を与えられている。
【0005】
前記回動操作部材2は、前記押圧スイッチ5A,5Bの並び方向と平行な方向に延び、その長手方向の中央部位が前記回動中心軸6を介して前記パネル1に支持され、当該長手方向の両端部が回動端部2a,2bを構成する。前記回動中心軸6は、前記回路基板4と平行でかつ前記両押圧スイッチ5A,5Bの並び方向と直交する方向に延び、当該押圧スイッチ5A,5Bの中間に位置する。
【0006】
前記各押圧力伝達部材3A,3Bは、前記各押圧スイッチ5A,5Bの押圧操作方向すなわち前記回路基板4の法線方向と平行な方向に延び、その長手方向に沿ってスライド可能となるように前記パネル1に保持される。
【0007】
この押圧操作装置において、前記回動操作部材2の両回動端部2a,2bが押圧操作されていないときは、両押圧スイッチ5A,5B及び両押圧力伝達部材3A,3Bによって前記回動操作部材2が図12(a)に示すような中立位置に保持される。この状態から例えば前記回動操作部材2の回動端部2bに押圧力が加えられると、図12(b)に示すようにその押圧操作方向に回動端部2bが変位するように回動操作部材2が回動し、前記押圧力が押圧力伝達部材3Bを介して押圧スイッチ5Bの操作部5bに伝達される。これにより、当該操作部5bの押圧操作が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−216515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記図12(a)(b)に示される装置では、回動操作部材2とは別に一対の押圧力伝達部材3A,3Bが必要であり、部品点数が多い。この部品点数を減らすために当該回動操作部材2と当該押圧力伝達部材3A,3Bを例えば合成樹脂により一体に成形することが考えられるが、その場合には、各押圧スイッチ5A,5Bに対して押圧力伝達部材3A,3Bが傾くことによる不都合が生じる。
【0010】
具体的に、図12(a)(b)に示すように前記回動操作部材2と前記押圧力伝達部材3A,3Bとが別の部材であれば、前記回動操作部材2の傾きにかかわらず各押圧力伝達部材3A,3Bの姿勢を各押圧スイッチ5A,5Bの押圧操作方向と平行な姿勢に維持することができるのに対し、前記回動操作部材2と前記押圧力伝達部材3A,3Bが単一の部材として一体に成形される場合は、これらが一体に回動することから、例えば図12(b)に示すように回動操作部材2が傾くと押圧力伝達部材3A,3Bも同じように傾くことになる。このような傾きにかかわらず押圧スイッチ5A,5Bの正常な押圧を行うためには、各押圧力伝達部材3A,3Bに高い剛性が求められる。このような押圧スイッチ5A,5Bに対する押圧力伝達部材3A,3Bの傾きに起因するトラブルは、前記回動操作部材2の正規の回動のみならず、パネル1に対する前記回動操作部材2のがたつきにより当該回動操作部材2が傾くことによっても生じ得る。
【0011】
ここで、前記押圧力伝達部材3A,3Bの剛性を高めるためにこれらの断面積を大きくすることが考えられるが、このような断面積の増加は、材料費の高騰のみならず、押圧力伝達部材3A,3Bの成形時にいわゆるヒケを生じさせやすくする。
【0012】
本発明は、このような観点からなされたものであり、押圧操作を受けて回動する被操作部とその押圧操作力を押圧スイッチに伝える押圧力伝達部とが一体に成形された単一の回動操作部材を備え、しかも、その押圧力伝達部のヒケの発生を抑止しながら当該押圧力伝達部に十分な剛性を与えることが可能な押圧操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、特定のスイッチ並び方向に並び、当該スイッチ並び方向と直交する方向に押圧操作を受けることが可能な第1押圧スイッチ及び第2押圧スイッチを択一的に押圧操作するための装置であって、前記第1押圧スイッチ及び前記第2押圧スイッチを択一的に押圧するための回動操作部材と、この回動操作部材を、当該回動支持部材が前記両押圧スイッチを含む平面である回動面に沿って当該回動面と直交する回動中心軸回りに回動可能となるように前記回動操作部材を支持する回動支持部材とを備えた押圧操作装置を提供する。
【0014】
前記回動操作部材は、前記回動支持部材により回動可能に支持されるとともに前記回動中心軸を挟んでその両側に前記第1押圧スイッチ及び前記第2押圧スイッチにそれぞれ対応する第1回動端部及び第2回動端部を有し、いずれかの回動端部が押圧されることによりその押圧操作方向に当該回動端部が変位するように回動する被操作部と、この被操作部の第1回動端部から前記第1押圧スイッチに向かって延び、当該第1回動端部に加えられる押圧力を前記第1押圧スイッチに伝達する第1押圧力伝達部と、前記被操作部の第2回動端部から前記第2押圧スイッチに向かって延び、当該第2回動端部に加えられる押圧力を前記第2押圧スイッチに伝達する第2押圧力伝達部と、を有し、これら被操作部、第1押圧力伝達部、及び第2押圧力伝達部が一体に回動するように単一の部材として成形される。
【0015】
前記第1押圧力伝達部及び前記第2押圧力伝達部は、前記回動面に対して直交する方向である厚み方向の寸法が前記回動面と平行な方向である幅方向の寸法よりも小さい断面形状を有する。前記回動支持部材は、前記各押圧力伝達部のそれぞれについて、当該押圧力伝達部の回動面に沿った動きは許容しつつ当該回動面に対して直交する方向への動きを規制するように当該押圧力伝達部をその厚み方向の両側から拘束する案内部を有する。
【0016】
この装置では、押圧操作を受ける第1回動端部及び第2回動端部を有してその押圧により回動する被操作部と、この被操作部の第1回動端部及び第2回動端部がそれぞれ受ける押圧力を第1押圧スイッチ及び第2押圧スイッチにそれぞれ伝達する第1押圧力伝達部及び第2押圧力伝達部とが単一の部材として一体に成形されることで、部品点数が削減される。この一体成形により、前記被操作部の回動に伴って前記第1回動端部および前記第2回動端部のいずれか一方がこれに対応する第1押圧スイッチまたは第2押圧スイッチに対して傾きながら当該押圧スイッチを押圧することになるが、この傾きながらの押圧を実現するための剛性は、各押圧力伝達部の幅方向の寸法を大きくとることで確保される。その一方、各押圧力伝達部の厚み寸法が小さく抑えられることにより、材料費の節減並びにヒケの発生の抑止が実現される。さらに、回動支持部材の各案内部が各押圧力伝達部をその厚み方向の両側から拘束することで、当該押圧力伝達部の回動面に沿った動きを許容しながら、当該押圧力伝達部の剛性が低い厚み方向への変位を規制することができる。
【0017】
換言すれば、この装置では、前記被操作部と一体に回動する各押圧力伝達部の断面形状について、回動面に沿った変位を許容しなければならない幅方向については(案内部による拘束ではなく)当該幅方向の寸法を大きくとることで剛性が確保される一方、変位を許容する必要のない厚み方向については各押圧力伝達部の寸法を抑えながら当該厚み方向の両側からの案内部による拘束で、同じく剛性が確保される。すなわち、この装置では、幅方向の寸法よりも厚み寸法が小さい各押圧力伝達部の断面形状と、この押圧力伝達部を幅方向の両側から拘束する回動支持部材の案内部との組み合わせが、被操作部と各押圧力伝達部との一体成形による部品点数の削減と、その一体成形された回動操作部材の回動と、その回動に伴う各押圧スイッチの正常な押圧に必要な剛性の確保とを全て同時に実現することを可能にする。
【0018】
前記案内部としては、前記押圧力伝達部の厚み方向の両側の位置で前記押圧操作方向と平行な方向に延びる一対の案内板を有するものが好適である。これらの案内板を備えた案内部は、前記押圧力伝達部の厚み方向の動きをこれと直交する押圧操作方向についての長い領域にわたって安定して拘束することができる。
【0019】
前記各押圧スイッチは、共通の回路基板上に実装されたものであってもよい。この場合、前記回動支持部材としては、前記回路基板を保持する基板保持部を有するパネルであって、前記回路基板上に実装された発光素子から発せられる照明光が前記被操作部に対して裏側から照射されるための空間を囲む枠体を有し、この枠体が前記被操作部を回動可能に支持する回動支持部を有するものが好適である。この回動支持部材(パネル)では、前記枠体の外側面に前記各案内板としての案内リブが突設されることにより、当該案内リブを利用した簡素な構造で前記各押圧力伝達部を安定して拘束することが可能である。
【0020】
前記各押圧力伝達部の断面形状のもう一つの利点は、その幅方向の寸法が厚み方向の寸法よりも大きいことから、当該幅方向に対して直交する厚み方向から見た押圧力伝達部の先端部(すなわち押圧スイッチ側の端部)の外形の自由度が高く、当該形状を押圧スイッチの押圧に適した形状に設定することが可能である点である。例えば、当該押圧力伝達部の先端部の外形を、押圧スイッチに向かって凸の連続した曲線形状とすることにより、当該先端部が前記押圧スイッチに対して円滑に滑りながら当該押圧スイッチを押圧することが可能となる。このことは、当該押圧力伝達部が被操作部と一体に回動するにもかかわらず、当該押圧力伝達部と押圧スイッチとの間での引っ掛かりの少ない滑らかな回動操作部材の回動を可能にし、また、当該押圧力伝達部と当該押圧スイッチとの擦れに起因する当該押圧スイッチの磨耗損傷を抑制する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、押圧操作を受けて回動する被操作部とその押圧操作力を押圧スイッチに伝える押圧力伝達部とが一体に成形された単一の回動操作部材を備え、しかも、その押圧力伝達部の断面積の著しい増加を回避しながら当該押圧力伝達部に十分な剛性を与えることが可能な押圧操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る押圧操作装置の斜視図である。
【図2】前記押圧操作装置の正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3に対応する断面図であって前記押圧操作装置の回動操作部材が回動操作された状態を示す断面側面図である。
【図5】前記押圧操作装置のパネルの要部を示す斜視図である。
【図6】前記押圧操作装置の回動操作部材を表側から見た斜視図である。
【図7】前記回動操作部材を裏側から見た斜視図である。
【図8】前記回動操作部材を裏側から見た背面図である。
【図9】前記回動操作部材における押圧力伝達部の先端部と押圧スイッチとの接触部位を拡大した断面側面図である。
【図10】(a)は前記回動操作部材が中立位置にある状態での前記押圧操作装置の要部を示す一部破断斜視図、(b)は前記回動操作部材が回動操作された状態での前記押圧操作装置の要部を示す一部破断斜視図である。
【図11】(a)は前記押圧操作装置におけるパネルの案内リブが前記押圧力伝達部を拘束している状態を示す断面平面図、(b)は当該案内リブがない場合に回動操作部材が傾いた状態を示す断面平面図である。
【図12】(a)(b)は従来の押圧操作装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図1〜図11を参照しながら説明する。
【0024】
この実施の形態では、本発明に係る押圧操作装置が、図3及び図4に示される回路基板10とともに自動車等のパネルユニットを構成し、前記回路基板10に実装される第1押圧スイッチ11、第2押圧スイッチ12、及びその他の押圧スイッチ13を押圧操作するために用いられる。前記第1押圧スイッチ11及び前記第2押圧スイッチ12は、特定のスイッチ並び方向(この実施の形態では上下方向)に並ぶように配置され、その他の押圧スイッチ13は適所に配置されている。前記回路基板10上には、前記各押圧スイッチ11,12,13の他、これらの押圧スイッチ11〜13を裏側から照明するための発光素子(例えばLED)14が実装されている。
【0025】
各押圧スイッチ11〜13は、スイッチ本体16と、このスイッチ本体16に保持される押圧操作部18とを有する。前記押圧操作部18は前記スイッチ並び方向と直交する方向であって前記回路基板10の法線方向と平行な方向(以下「押圧操作方向」と称する。)に押圧操作されるもので、その押圧操作方向に変位可能となるように前記スイッチ本体16に保持される。スイッチ本体16は、前記押圧操作部18が前記押圧操作方向に変位するのに伴って操作信号を出力するとともに、前記押圧操作部18に前記押圧操作方向と逆方向の復帰力を付与する機構(例えばばね機構)を内蔵する。
【0026】
前記押圧操作装置は、前記各押圧スイッチ11,12を択一的に押圧操作するための回動操作部材であるシーソーボタン20と、その他の押圧スイッチ13を押圧操作するための複数の押しボタン30と、これらのボタン20,30を支持するインナーパネル(回動支持部材)40とを備える。
【0027】
前記インナーパネル40は、自動車の車室等に設けられるものであって、さらにこのインナーパネル40が外側(例えば車室側)から図3及び図4に示すようなアウターパネル50によって覆われる。前記インナーパネル40は、中空の本体枠41と、前記シーソーボタン20を支持するための枠体42と、前記各押しボタン30をそれぞれ支持するための複数の枠体43とを有し、これらが例えば樹脂材料によって一体に形成されている。
【0028】
前記本体枠41は、前記回路基板10を保持する基板保持部を構成するもので、前壁41aと周壁41bとを有する。前記前壁41aは、正面からみて略矩形状をなす。前記周壁41bは、前記前壁41aの全周縁から後方に延び、前記回路基板10を外側から囲む形状を有する。すなわち、この本体枠41は後方に開口した形状を有する。この開口は図略のリアカバーにより塞がれる。前記回路基板10は、前記押圧スイッチ11,12,13及び発光素子14が前方を向く姿勢で前記周壁41bにより外側から保持されながら前記本体枠41内に格納される。
【0029】
前記各枠体42,43は、正面からみて矩形状の空間45を囲む形状を有する。前記前壁41aには、前記各枠体42,43が囲む空間に対応した形状の貫通孔46が設けられ、この貫通孔46の周縁から前記各枠体34,36が前方へ突出している。
【0030】
前記枠体42は、回動操作部材である前記シーソーボタン20を回動可能に支持する。このシーソーボタン20は、後に詳述するように、前記第1押圧スイッチ11及び前記第2押圧スイッチ12を択一的に押圧操作すべく、前記両押圧スイッチ11,12を含む平面である回動面(この実施の形態では垂直面)に沿って当該回動面と直交する回動中心軸(この実施の形態では左右方向の水平軸)回りに回動するように操作される。前記枠体42は、当該回動を許容するように前記シーソーボタン20を支持する。
【0031】
同様に、前記各押しボタン30は、前記回路基板10の法線方向と平行な方向に押圧されるものであって、前記各枠体43は当該押しボタン30がその押圧方向と平行な方向にスライド可能となるように当該押しボタン30を保持する。なお、当該押しボタン30は本発明の必須の構成要素ではなく省略が可能である。
【0032】
次に、前記シーソーボタン20の具体的構成及びこれを支持するための具体的構造について説明する。
【0033】
前記シーソーボタン20は、図6〜図8にも示すように、被操作部24と、第1押圧力伝達部21及び第2押圧力伝達部22とを有し、これらが例えば合成樹脂により単一の部材として成形されている。すなわち、前記被操作部24及び両押圧力伝達部21は、これら全体が一体に回動するように形成されている。
【0034】
前記被操作部24は、前記回動中心軸を中心として回動可能となるように前記枠体42に保持される部位であり、前壁25と周壁26とを一体に有する。前記前壁25は、この実施の形態では正面からみて上下方向に延びる矩形状をなす。前記周壁26はこの前壁25の周縁から後方に延び、その中間部位から外向きに補強リブ26aが突出している。
【0035】
前記周壁26のうち左右両側壁の上下方向中間部位には、これを厚み方向(この実施の形態では前記回動面に対して直交する方向である左右水平方向)に貫通する貫通孔26bが設けられている。一方、前記枠体42のうちの左右両側壁には、外向きに突出する支軸42aが設けられ、これらの支軸42aが前記各貫通孔26bに内側から挿入されるようにして前記周壁26が前記枠体42の外側に嵌め込まれることにより、前記被操作部24が前記支軸42aを中心として回動可能となるように枠体42に支持されている。
【0036】
従って、この構造では、前記両支軸42aの中心を通る線が前記回動中心軸に相当している。また、前記被操作部24の上側端部及び下側端部はそれぞれ第1回動端部241及び第2回動端部242を構成しており、いずれかの回動端部が押圧されることによりその押圧操作方向に当該回動端部が変位するように前記被操作部24が回動する。例えば、図3に示される中立位置から前記第1回動端部241が押圧された場合には、図4に示されるようにこの第1回動端部241が後退するように被操作部24が回動する。
【0037】
前記第1押圧力伝達部21は、前記第1回動端部241に加えられる押圧力を前記第1押圧スイッチ11に伝達するための部位であり、当該第1回動端部241から前記第1押圧スイッチ11に向かって延びる。より詳しくは、前記第1回動端部241における前壁25の裏面から前記周壁26の後端を過ぎて前記第1押圧スイッチ11に至るまで後方に延びる。同様に、前記第2押圧力伝達部22は、前記第2回動端部242に加えられる押圧力を前記第2押圧スイッチ12に伝達するための部位であり、当該第2回動端部242から前記第2押圧スイッチ12に向かって延びる。より詳しくは、前記第2回動端部242における前壁25の裏面から前記周壁26の後端を過ぎて前記第2押圧スイッチ12に至るまで後方に延びる。
【0038】
両押圧力伝達部21,22は、この実施の形態では、図8に示すように、縦方向に長い矩形状の断面を有している。すなわち、両押圧力伝達部21,22は、前記回動面に対して直交する方向(この実施の形態では左右方向)である厚み方向の寸法(以下「厚み寸法」と称する。)tが、前記回動面と平行な方向である幅方向(この実施の形態では上下方向)の寸法(以下「幅寸法」と称する。)wよりも小さい(好ましくは2t<wとなる程度まで十分小さい)断面形状を有している。従って、両押圧力伝達部21,22の断面形状は、前記厚み方向に加えられる荷重に対しての剛性は低い一方、前記幅方向に加えられる荷重に対しての剛性は高い、という特性を有している。
【0039】
このように幅方向に大きな寸法をもつ形状を利用して、各押圧力伝達部21,22の先端部(すなわち各押圧スイッチ11,12の押圧操作部18に直接接触する端部)21a,22aの外形が、押圧スイッチ11,12の押圧に適した形状に設定されている。具体的には、図9にも示すように、押圧スイッチ(同図では代表的に押圧スイッチ11を図示)に向かって凸の連続した曲線形状(例えば半円状)に設定されている。
【0040】
一方、前記厚み方向についての前記各押圧力伝達部21,22の剛性を補うための手段として、前記枠体42には、前記各押圧力伝達部21,22に対応した案内部が設けられる。各案内部は、この実施の形態では、前記枠体42の上側壁および下側壁からそれぞれ突出する一対の案内リブ42bにより構成される。互いに対をなす案内リブ42bは、互いに平行であって前記押圧操作方向と平行な方向に延び、対応する押圧力伝達部21または22の厚み方向の両側に位置する。そして、当該押圧力伝達部21,22の回動面に沿った動きは許容しつつ当該回動面に対して直交する方向(厚み方向)への動きを規制するように当該押圧力伝達部21,22をその厚み方向の両側から拘束する。
【0041】
次に、この装置の作用を説明する。
【0042】
前記シーソーボタン20は、押圧操作されていないときは図3に示される中立位置に保持される。具体的には、上下の押圧スイッチ11,12においてスイッチ本体16から押圧操作部18に与えられる弾性復帰力(押圧操作部18を前側に押し戻す力)が互いに均等な反力としてシーソーボタン20の押圧力伝達部21,22に作用して当該シーソーボタン20を前記中立位置(被操作部24が鉛直方向を向く位置)に保持するように、回路基板10とシーソーボタン20との相対位置が設定されている。
【0043】
この状態から前記被操作部24における両回動端部241,242のうちのいずれか一方が押圧されると、その回動端部がその押圧方向に変位するようにシーソーボタン20全体が回動する。例えば、第1回動端部241が押圧されると、図4に示すように、当該第1回動端部241が後方に変位する方向(図4では時計回り方向)にシーソーボタン20全体が回動する。これに伴い、前記第1回動端部241から延びる第1押圧力伝達部21が第1押圧スイッチ11の押圧操作部18を押圧し、当該第1押圧スイッチ11に操作信号を出力させる。
【0044】
このとき、前記第1押圧力伝達部21は前記被操作部24と一体に回動することから、この第1押圧力伝達部21は前記第1押圧スイッチ11の押圧操作部18に対して傾いた姿勢でこれを押圧することになる。従って、当該第1押圧力伝達部21には回動面(この実施の形態では鉛直面)に沿った曲げ荷重が生じやすいが、これに対抗する剛性は、第1押圧力伝達部21のもつ大きな幅寸法w(図8)によって確保される。この点は第2押圧力伝達部22についても同様である。
【0045】
さらに、この大きな幅寸法wは、前記回動面の法線方向からみた押圧力伝達部21,22の外形の設定の自由度を高くすることから、前記のように、当該押圧力伝達部21,22の先端部21a,22aの形状は、押圧スイッチ11,12の押圧に適した形状、具体的には、押圧スイッチ(同図では代表的に押圧スイッチ11を図示)に向かって凸の連続した曲線形状(例えば半円状)に設定されることが可能である。この形状は、前記先端部21a,22aの端面が前記押圧スイッチ11,12における押圧操作部18の表面に対して円滑に滑りながら当該押圧操作部18を押圧することを可能にする。従って、当該押圧力伝達部21,22が被操作部24と一体に回動するにもかかわらず、当該押圧力伝達部21,22と押圧スイッチ11,12との間での引っ掛かりの少ない滑らかなシーソーボタン20の回動が可能であり、また、当該押圧力伝達部21,22の先端部21a,22aと当該押圧スイッチ11,121の擦れに起因する当該押圧スイッチの磨耗損傷が抑制される。
【0046】
その一方、両押圧力伝達部21,22の厚み寸法tは小さいため、厚み方向についての押圧力伝達部21,22そのものの曲げ剛性は低いが、この曲げ剛性は枠体42に形成された案内リブ42bによって補われ、これによりシーソーボタン20の円滑な回動が保証される。
【0047】
これを第1押圧力伝達部21を例にとって説明すると、図11(a)に示すように当該第1押圧力伝達部21に対応する案内リブ42bがない場合、例えば枠体42の支軸42aと被操作部24の貫通孔26bとの間のガタツキなどにより同図(a)に示すようにシーソーボタン20全体が傾いて第1押圧力伝達部21が第1押圧スイッチ11に対して斜めに押圧したり、当該第1押圧力伝達部21がその厚み方向に撓んだりするおそれがある。しかし、この実施の形態に係る装置では、前記枠体42に形成された案内リブ42bが前記第1押圧力伝達部21をその厚み方向の両側から拘束することで、シーソーボタン20全体を回動面に沿った正規の軌跡で正確に回動させることができる。
【0048】
すなわち、この装置では、i)被操作部24と両押圧力伝達部21,22とを単一の部材であるシーソーボタン20として一体に成形して部品点数を削減しながら、ii)押圧力伝達部21,22の回動を許容しなければならない(すなわち拘束できない)幅方向の剛性についてはその幅寸法wを大きくとることで剛性を確保する一方、iii)押圧力伝達部21,22の拘束が可能な厚み方向については、その厚み寸法tを小さくとることでヒケの発生を抑えながら、当該押圧力伝達部21,22をその厚み方向の両側から案内リブ42bによって拘束することによりシーソーボタン20の正確な回動を保証して、押圧力伝達部21,22との擦れに起因する押圧スイッチ11,12の磨耗損傷や押圧力伝達部21,22の破損を抑止することができる。
【0049】
なお、本発明に係る「案内部」は、必ずしも前記枠体42に形成された案内リブ42bに限られない。例えば、前記インナーパネル40において枠体42がない場合、当該インナーパネル40の本体枠41の周壁41bの内側面から内向きに案内リブが突出してもよい。また、第1及び第2押圧スイッチは、必ずしも共通の回路基板上に実装されたものでなくてもよく、またこれらが実装される場合でも、前記発光素子14は必須のものではない。ただし、前記実施形態では、前記両スイッチ11,12とともに回路基板10上に実装された発光素子14から発せられる照明光を被操作部24に導くための枠体42を利用することにより、前記押圧力伝達部21,22を安定して内側から支持および拘束することができる利点がある。
【符号の説明】
【0050】
10 回路基板
11 第1押圧スイッチ
12 第2押圧スイッチ
14 発光素子
20 シーソーボタン
21 第1押圧力伝達部
21a 第1押圧力伝達部の先端部
22 第2押圧力伝達部
22a 第2押圧力伝達部の先端部
24 被操作部
241 第1回動端部
242 第2回動端部
40 インナーパネル(回動支持部材)
42 枠体
42a 支軸
42b 案内リブ
45 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のスイッチ並び方向に並び、当該スイッチ並び方向と直交する方向に押圧操作を受けることが可能な第1押圧スイッチ及び第2押圧スイッチを択一的に押圧操作するための装置であって、
前記第1押圧スイッチ及び前記第2押圧スイッチを択一的に押圧するための回動操作部材と、
この回動操作部材を、当該回動支持部材が前記両押圧スイッチを含む平面である回動面に沿って当該回動面と直交する回動中心軸回りに回動可能となるように前記回動操作部材を支持する回動支持部材とを備え、
前記回動操作部材は、前記回動支持部材により回動可能に支持されるとともに前記回動中心軸を挟んでその両側に前記第1押圧スイッチ及び前記第2押圧スイッチにそれぞれ対応する第1回動端部及び第2回動端部を有し、いずれかの回動端部が押圧されることによりその押圧操作方向に当該回動端部が変位するように回動する被操作部と、この被操作部の第1回動端部から前記第1押圧スイッチに向かって延び、当該第1回動端部に加えられる押圧力を前記第1押圧スイッチに伝達する第1押圧力伝達部と、前記被操作部の第2回動端部から前記第2押圧スイッチに向かって延び、当該第2回動端部に加えられる押圧力を前記第2押圧スイッチに伝達する第2押圧力伝達部と、を有し、これら被操作部、第1押圧力伝達部、及び第2押圧力伝達部が一体に回動するように単一の部材として成形され、
前記第1押圧力伝達部及び前記第2押圧力伝達部は、前記回動面に対して直交する方向である厚み方向の寸法が前記回動面と平行な方向である幅方向の寸法よりも小さい断面形状を有し、
前記回動支持部材は、前記各押圧力伝達部のそれぞれについて、当該押圧力伝達部の回動面に沿った動きは許容しつつ当該回動面に対して直交する方向への動きを規制するように当該押圧力伝達部をその厚み方向の両側から拘束する案内部を有する、押圧操作装置。
【請求項2】
請求項1記載の押圧操作装置において、前記案内部は、前記押圧力伝達部の厚み方向の両側の位置で前記押圧操作方向と平行な方向に延びる一対の案内板を有する、押圧操作装置。
【請求項3】
請求項2記載の押圧操作装置において、前記回動支持部材は、前記各押圧スイッチが実装された回路基板を保持する基板保持部を有するパネルであって、前記回路基板上に実装された発光素子から発せられる照明光が前記被操作部に対して裏側から照射されるための空間を囲む枠体を有し、この枠体が前記被操作部を回動可能に支持する回動支持部を有する、押圧操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の押圧操作装置において、前記各押圧力伝達部の先端部は、押圧スイッチに向かって凸の連続した曲線形状の外形を有する、押圧操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−146412(P2012−146412A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2056(P2011−2056)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】