押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法
【課題】 成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを容易に識別する。
【解決手段】 押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型10は、雌型の金型20と、雄型の金型30とに大別される。雌型の金型20には、キートップの外形を成型するキートップ成型用凹部21が形成され、雄型の金型30には、可動接点部の外形を成型する可動接点成型用凹部31と、可動接点部の底面に突起部を成型する穴部32とが形成される。
【解決手段】 押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型10は、雌型の金型20と、雄型の金型30とに大別される。雌型の金型20には、キートップの外形を成型するキートップ成型用凹部21が形成され、雄型の金型30には、可動接点部の外形を成型する可動接点成型用凹部31と、可動接点部の底面に突起部を成型する穴部32とが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型として、図11に示すような金型がある。この金型は、押釦スイッチ用カバー部材の裏面側を成型する金型であり、いわゆる雄型の金型50である。この雄型の金型50には、可動接点成型用凹部51が設けられており、この可動接点成型用凹部51によって、キートップの底面に設けられる円柱状の可動接点部が成型される。このような雄型の金型50と、図示しない雌型の金型とを用いることによって、例えば、図1に示す押釦スイッチ用カバー部材1が成型される。この押釦スイッチ用カバー部材1には、可動接点成型用凹部51により成型された可動接点部3が形成されており、この可動接点部3の先端には、接点部材4が一体となって形成されている。この接点部材4は、上述した金型内に弾性ゴム材料が圧入される前に、金型50の可動接点成型用凹部51内に配置される。その後、金型内に弾性ゴム材料が圧入されることによって、可動接点部3の先端に接点部材4が一体形成される。
【0003】
図1に示すような押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型に関する技術は、例えば、下記特許文献1および特許文献2に開示されている。特許文献1の図1ならびに特許文献2の図1および図3には、キートップ部形成側の金型(雌型の金型)と接点部形成側の金型(雄型の金型)とが示されており、接点部形成側の金型には、接点部形成用凹部(可動接点成型用凹部)が設けられている。
【特許文献1】実開平6−36820号公報
【特許文献2】実開平7−2019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した各特許文献に示される金型を用いて押釦スイッチ用カバー部材を成型した場合には、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されずに押釦スイッチ用カバー部材が成型されてしまう事態が生じ得る。すなわち、接点部材の無い押釦スイッチ用カバー部材が成型され得る。したがって、従来は、接点の有無を電気的に検査する工程や、接点の有無を目視で識別する工程をさらに設ける必要があった。そして、接点の有無を目視で識別し易くするために、押釦スイッチ用カバー部材の底面を接点部材の色とは異なる色にするためのラミネート処理や、金型の可動接点成型用凹部51の底面を接点部材の色とは異なる色にするためのメッキ処理等を施す必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型は、キートップの底面に設けられる可動接点部を成型するための可動接点成型用凹部を備え、可動接点成型用凹部の底面の一部に一または複数の穴部を設けることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、例えば、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されている場合には、接点部材が一体となって形成された押釦スイッチ用カバー部材が成型され、一方、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されていない場合には、可動接点部の底面上に、可動接点成型用凹部に設けられた穴部によって成型された突起部を有する押釦スイッチ用カバー部材が成型される。したがって、成型された押釦スイッチ用カバー部材の可動接点部の底面に、上記穴部によって成型された突起部が形成されているか否かを識別することによって、接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【0008】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型において、上記穴部は、可動接点部が成型されるときに、可動接点成型用凹部内に配置された可動接点部の一部を構成する接点部材にかかる圧力が、ほぼ均一になる位置に設けられることが好ましい。また、本発明の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型において、上記穴部は、可動接点部が成型されるときに、可動接点成型用凹部内に配置された可動接点部の一部を構成する接点部材が、当該接点部材にかかる圧力により変形することなく、かつ、傾かない位置に設けられることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、変形を生じていない接点部材が一体となって成型された押釦スイッチ用カバー部材を成型することができる。
【0010】
本発明の接点部材欠落識別方法は、上述した金型を用いて成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを識別する接点部材欠落識別方法であって、金型により成型された押釦スイッチ用カバー部材の可動接点部の底面上の一部に、一または複数の突起部が形成されている場合に、接点部材が欠落していると識別することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、押釦スイッチ用カバー部材を成型する際に、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されていない場合には、可動接点部の底面上の一部に、一または複数の突起部が形成されるため、成型された押釦スイッチ用カバー部材の可動接点部の底面上に突起部が形成されているか否かを識別することで、接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法によれば、成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
まず、図1を参照して、実施形態における金型によって成型される押釦スイッチ用カバー部材について説明する。図1は、押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。押釦スイッチ用カバー部材1は、キートップ2と、可動接点部3と、薄肉部5と、支持部6とを有する。可動接点部3の先端には、接点部材4が一体となって形成されている。押釦スイッチ用カバー部材1は、シリコーンゴムを材料として、例えば、圧縮成形法や射出成形法等により、一体成型される。
【0015】
このような押釦スイッチ用カバー部材1が、押釦スイッチを有する製品(例えば、携帯電話機)に取り付けられた場合には、以下のように動作する。まず、キートップ2が押下されると、薄肉部5が屈曲し、キートップ2が下方に移動する。この移動に伴ってキートップ2の底面に設けられた可動接点部3の先端に形成された接点部材4が、対向基板(不図示)上に設けられた金属製の固定接点部材(不図示)に接触する。これにより、電気的に導通状態となる。一方、キートップ2が開放されると、薄肉部5の反発弾性力により、キートップ2が上方に移動する。この移動に伴って接点部材4と、固定接点部材とが乖離する。これにより、電気的に非導通状態となる。
【0016】
次に、図2〜図4を参照して、上述した押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型について説明する。まず、図2は、押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型10の断面図である。図2に示すように金型10は、雌型の金型20と、雄型の金型30とに大別される。雌型の金型20には、キートップ2の外形を成型するキートップ成型用凹部21が形成されている。雄型の金型30には、可動接点部3の外形を成型する可動接点成型用凹部31と、穴部32とが形成されている。また、図3は、雄型の金型30を斜め上方から見た斜視図であり、図4は、雄型の金型30の可動接点成型用凹部31を真上から見た図である。図2〜図4に示すように、穴部32は、可動接点成型用凹部31の底面に形成される。
【0017】
図2に示す金型10を用いて、押釦スイッチ用カバー部材を成型した場合には、通常は、図1に示す押釦スイッチ用カバー部材1が成型される。ところが、可動接点成型用凹部31内に接点部材4が配置されずに押釦スイッチ用カバー部材が成型された場合には、図5に示す押釦スイッチ用カバー部材1Sが成型される。この場合には、可動接点成型用凹部31の底面に設けられた穴部32にシリコーンゴムが入り込むため、成型された押釦スイッチ用カバー部材1Sの可動接点部3の底面には、突起部7が形成される。
【0018】
以上のように、本実施形態における金型10を用いて押釦スイッチ用カバー部材を成型することによって、可動接点成型用凹部31内に接点部材4が配置されている場合には、接点部材4が一体となって形成された押釦スイッチ用カバー部材1が成型されるとともに、可動接点成型用凹部31内に接点部材4が配置されていない場合には、可動接点部3の底面に突起部7が形成された押釦スイッチ用カバー部材1Sが成型される。したがって、成型された押釦スイッチ用カバー部材に突起部7が形成されているか否かを識別することによって、接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【0019】
また、突起部7の有無を識別する方法、すなわち、接点部材の欠落を識別する方法としては、目視により識別することもできるが、これに限られず、例えば、突起部識別装置を用いて接点部材の欠落を識別することとしてもよい。この場合に、突起部識別装置は、成型された押釦スイッチ用カバー部材を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に基づいて突起部の有無を識別する識別手段と、この識別手段により突起部が有ると識別された場合に、接点部材が欠落している旨のメッセージを表示するメッセージ表示手段とを備えることとすればよい。これにより、接点部材が欠落しているか否かを、効率よく識別することが可能となる。
【0020】
なお、上述した実施形態においては、突起部7を成型するための穴部32を、可動接点成型用凹部31の底面中央部の1カ所にのみ形成しているが、穴部32の数や位置はこれに限られない。例えば、図6に示すように可動接点成型用凹部31の底面に複数の穴部32(図6の場合は3カ所)を形成してもよい。図6に示す可動接点成型用凹部31を有する金型によって成型された可動接点部3の底面には、図7に示す3つの突起部7が形成される。
【0021】
ここで、穴部32は、金型10を用いて押釦スイッチ用カバー部材が成型されているときに、(1)接点部材4が当該接点部材にかかる圧力により変形することなく、かつ、(2)接点部材4が当該接点部材にかかる圧力により傾かないことを条件として、任意の数や位置に設けることができる。すなわち、接点部材にかかる圧力が、ほぼ均一になるように穴部の数や位置を任意に設ければよい。なお、接点部材にかかる圧力分布は、例えば、感圧紙を用いることにより調べることができる。
【0022】
また、上述した実施形態における突起部7の形状は、先端が丸みを帯びた細長い円柱状に形成されているが、突起部7の形状はこれに限られず、様々な形状にすることができる。例えば、図8〜図10に示すような形状であってもよい。図8〜図10は、種々の形状をした穴部32によって成型された突起部7a〜7cを、斜め下方側からみた斜視図である。図8に示す突起部7aは、実施形態における突起部7よりも直径が大きな穴部によって成型されたものである。図9に示す突起部7bは、角柱状に形成された突起部であり、図10に示す突起部7cは、先端が尖った細長い円柱状に形成された突起部である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図2】押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型の断面図である。
【図3】押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型を斜め上方側からみた斜視図である。
【図4】可動接点成型用凹部を真上から見た図である。
【図5】押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図6】変形例における可動接点成型用凹部を真上から見た図である。
【図7】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図8】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図9】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図10】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図11】従来の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型を斜め上方側からみた斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1,1S・・・押釦スイッチ用カバー部材、2・・・キートップ、3・・・可動接点部、4・・・接点部材、5・・・薄肉部、6・・・支持部、7,7a,7b,7c・・・突起部、10・・・金型、20・・・雌型の金型、21・・・キートップ成型用凹部、30,50・・・雄型の金型、31,51・・・可動接点成型用凹部、32・・・穴部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型として、図11に示すような金型がある。この金型は、押釦スイッチ用カバー部材の裏面側を成型する金型であり、いわゆる雄型の金型50である。この雄型の金型50には、可動接点成型用凹部51が設けられており、この可動接点成型用凹部51によって、キートップの底面に設けられる円柱状の可動接点部が成型される。このような雄型の金型50と、図示しない雌型の金型とを用いることによって、例えば、図1に示す押釦スイッチ用カバー部材1が成型される。この押釦スイッチ用カバー部材1には、可動接点成型用凹部51により成型された可動接点部3が形成されており、この可動接点部3の先端には、接点部材4が一体となって形成されている。この接点部材4は、上述した金型内に弾性ゴム材料が圧入される前に、金型50の可動接点成型用凹部51内に配置される。その後、金型内に弾性ゴム材料が圧入されることによって、可動接点部3の先端に接点部材4が一体形成される。
【0003】
図1に示すような押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型に関する技術は、例えば、下記特許文献1および特許文献2に開示されている。特許文献1の図1ならびに特許文献2の図1および図3には、キートップ部形成側の金型(雌型の金型)と接点部形成側の金型(雄型の金型)とが示されており、接点部形成側の金型には、接点部形成用凹部(可動接点成型用凹部)が設けられている。
【特許文献1】実開平6−36820号公報
【特許文献2】実開平7−2019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した各特許文献に示される金型を用いて押釦スイッチ用カバー部材を成型した場合には、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されずに押釦スイッチ用カバー部材が成型されてしまう事態が生じ得る。すなわち、接点部材の無い押釦スイッチ用カバー部材が成型され得る。したがって、従来は、接点の有無を電気的に検査する工程や、接点の有無を目視で識別する工程をさらに設ける必要があった。そして、接点の有無を目視で識別し易くするために、押釦スイッチ用カバー部材の底面を接点部材の色とは異なる色にするためのラミネート処理や、金型の可動接点成型用凹部51の底面を接点部材の色とは異なる色にするためのメッキ処理等を施す必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型は、キートップの底面に設けられる可動接点部を成型するための可動接点成型用凹部を備え、可動接点成型用凹部の底面の一部に一または複数の穴部を設けることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、例えば、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されている場合には、接点部材が一体となって形成された押釦スイッチ用カバー部材が成型され、一方、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されていない場合には、可動接点部の底面上に、可動接点成型用凹部に設けられた穴部によって成型された突起部を有する押釦スイッチ用カバー部材が成型される。したがって、成型された押釦スイッチ用カバー部材の可動接点部の底面に、上記穴部によって成型された突起部が形成されているか否かを識別することによって、接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【0008】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型において、上記穴部は、可動接点部が成型されるときに、可動接点成型用凹部内に配置された可動接点部の一部を構成する接点部材にかかる圧力が、ほぼ均一になる位置に設けられることが好ましい。また、本発明の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型において、上記穴部は、可動接点部が成型されるときに、可動接点成型用凹部内に配置された可動接点部の一部を構成する接点部材が、当該接点部材にかかる圧力により変形することなく、かつ、傾かない位置に設けられることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、変形を生じていない接点部材が一体となって成型された押釦スイッチ用カバー部材を成型することができる。
【0010】
本発明の接点部材欠落識別方法は、上述した金型を用いて成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを識別する接点部材欠落識別方法であって、金型により成型された押釦スイッチ用カバー部材の可動接点部の底面上の一部に、一または複数の突起部が形成されている場合に、接点部材が欠落していると識別することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、押釦スイッチ用カバー部材を成型する際に、可動接点成型用凹部内に接点部材が配置されていない場合には、可動接点部の底面上の一部に、一または複数の突起部が形成されるため、成型された押釦スイッチ用カバー部材の可動接点部の底面上に突起部が形成されているか否かを識別することで、接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法によれば、成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型および接点部材欠落識別方法の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
まず、図1を参照して、実施形態における金型によって成型される押釦スイッチ用カバー部材について説明する。図1は、押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。押釦スイッチ用カバー部材1は、キートップ2と、可動接点部3と、薄肉部5と、支持部6とを有する。可動接点部3の先端には、接点部材4が一体となって形成されている。押釦スイッチ用カバー部材1は、シリコーンゴムを材料として、例えば、圧縮成形法や射出成形法等により、一体成型される。
【0015】
このような押釦スイッチ用カバー部材1が、押釦スイッチを有する製品(例えば、携帯電話機)に取り付けられた場合には、以下のように動作する。まず、キートップ2が押下されると、薄肉部5が屈曲し、キートップ2が下方に移動する。この移動に伴ってキートップ2の底面に設けられた可動接点部3の先端に形成された接点部材4が、対向基板(不図示)上に設けられた金属製の固定接点部材(不図示)に接触する。これにより、電気的に導通状態となる。一方、キートップ2が開放されると、薄肉部5の反発弾性力により、キートップ2が上方に移動する。この移動に伴って接点部材4と、固定接点部材とが乖離する。これにより、電気的に非導通状態となる。
【0016】
次に、図2〜図4を参照して、上述した押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型について説明する。まず、図2は、押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型10の断面図である。図2に示すように金型10は、雌型の金型20と、雄型の金型30とに大別される。雌型の金型20には、キートップ2の外形を成型するキートップ成型用凹部21が形成されている。雄型の金型30には、可動接点部3の外形を成型する可動接点成型用凹部31と、穴部32とが形成されている。また、図3は、雄型の金型30を斜め上方から見た斜視図であり、図4は、雄型の金型30の可動接点成型用凹部31を真上から見た図である。図2〜図4に示すように、穴部32は、可動接点成型用凹部31の底面に形成される。
【0017】
図2に示す金型10を用いて、押釦スイッチ用カバー部材を成型した場合には、通常は、図1に示す押釦スイッチ用カバー部材1が成型される。ところが、可動接点成型用凹部31内に接点部材4が配置されずに押釦スイッチ用カバー部材が成型された場合には、図5に示す押釦スイッチ用カバー部材1Sが成型される。この場合には、可動接点成型用凹部31の底面に設けられた穴部32にシリコーンゴムが入り込むため、成型された押釦スイッチ用カバー部材1Sの可動接点部3の底面には、突起部7が形成される。
【0018】
以上のように、本実施形態における金型10を用いて押釦スイッチ用カバー部材を成型することによって、可動接点成型用凹部31内に接点部材4が配置されている場合には、接点部材4が一体となって形成された押釦スイッチ用カバー部材1が成型されるとともに、可動接点成型用凹部31内に接点部材4が配置されていない場合には、可動接点部3の底面に突起部7が形成された押釦スイッチ用カバー部材1Sが成型される。したがって、成型された押釦スイッチ用カバー部材に突起部7が形成されているか否かを識別することによって、接点部材が欠落しているか否かを容易に識別することができる。
【0019】
また、突起部7の有無を識別する方法、すなわち、接点部材の欠落を識別する方法としては、目視により識別することもできるが、これに限られず、例えば、突起部識別装置を用いて接点部材の欠落を識別することとしてもよい。この場合に、突起部識別装置は、成型された押釦スイッチ用カバー部材を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に基づいて突起部の有無を識別する識別手段と、この識別手段により突起部が有ると識別された場合に、接点部材が欠落している旨のメッセージを表示するメッセージ表示手段とを備えることとすればよい。これにより、接点部材が欠落しているか否かを、効率よく識別することが可能となる。
【0020】
なお、上述した実施形態においては、突起部7を成型するための穴部32を、可動接点成型用凹部31の底面中央部の1カ所にのみ形成しているが、穴部32の数や位置はこれに限られない。例えば、図6に示すように可動接点成型用凹部31の底面に複数の穴部32(図6の場合は3カ所)を形成してもよい。図6に示す可動接点成型用凹部31を有する金型によって成型された可動接点部3の底面には、図7に示す3つの突起部7が形成される。
【0021】
ここで、穴部32は、金型10を用いて押釦スイッチ用カバー部材が成型されているときに、(1)接点部材4が当該接点部材にかかる圧力により変形することなく、かつ、(2)接点部材4が当該接点部材にかかる圧力により傾かないことを条件として、任意の数や位置に設けることができる。すなわち、接点部材にかかる圧力が、ほぼ均一になるように穴部の数や位置を任意に設ければよい。なお、接点部材にかかる圧力分布は、例えば、感圧紙を用いることにより調べることができる。
【0022】
また、上述した実施形態における突起部7の形状は、先端が丸みを帯びた細長い円柱状に形成されているが、突起部7の形状はこれに限られず、様々な形状にすることができる。例えば、図8〜図10に示すような形状であってもよい。図8〜図10は、種々の形状をした穴部32によって成型された突起部7a〜7cを、斜め下方側からみた斜視図である。図8に示す突起部7aは、実施形態における突起部7よりも直径が大きな穴部によって成型されたものである。図9に示す突起部7bは、角柱状に形成された突起部であり、図10に示す突起部7cは、先端が尖った細長い円柱状に形成された突起部である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図2】押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型の断面図である。
【図3】押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型を斜め上方側からみた斜視図である。
【図4】可動接点成型用凹部を真上から見た図である。
【図5】押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図6】変形例における可動接点成型用凹部を真上から見た図である。
【図7】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図8】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図9】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図10】変形例における突起部を斜め下方側からみた斜視図である。
【図11】従来の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型を斜め上方側からみた斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1,1S・・・押釦スイッチ用カバー部材、2・・・キートップ、3・・・可動接点部、4・・・接点部材、5・・・薄肉部、6・・・支持部、7,7a,7b,7c・・・突起部、10・・・金型、20・・・雌型の金型、21・・・キートップ成型用凹部、30,50・・・雄型の金型、31,51・・・可動接点成型用凹部、32・・・穴部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型であって、
キートップの底面に設けられる可動接点部を成型するための可動接点成型用凹部を備え、
前記可動接点成型用凹部の底面の一部に一または複数の穴部を設けることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型。
【請求項2】
前記穴部は、前記可動接点部が成型されるときに、前記可動接点成型用凹部内に配置された前記可動接点部の一部を構成する接点部材にかかる圧力が、ほぼ均一になる位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型。
【請求項3】
前記穴部は、前記可動接点部が成型されるときに、前記可動接点成型用凹部内に配置された前記可動接点部の一部を構成する接点部材が、当該接点部材にかかる圧力により変形することなく、かつ、傾かない位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型を用いて成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを識別する接点部材欠落識別方法であって、
前記金型により成型された前記押釦スイッチ用カバー部材の前記可動接点部の底面上の一部に、一または複数の突起部が形成されている場合に、前記接点部材が欠落していると識別することを特徴とする接点部材欠落識別方法。
【請求項1】
押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型であって、
キートップの底面に設けられる可動接点部を成型するための可動接点成型用凹部を備え、
前記可動接点成型用凹部の底面の一部に一または複数の穴部を設けることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型。
【請求項2】
前記穴部は、前記可動接点部が成型されるときに、前記可動接点成型用凹部内に配置された前記可動接点部の一部を構成する接点部材にかかる圧力が、ほぼ均一になる位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型。
【請求項3】
前記穴部は、前記可動接点部が成型されるときに、前記可動接点成型用凹部内に配置された前記可動接点部の一部を構成する接点部材が、当該接点部材にかかる圧力により変形することなく、かつ、傾かない位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材を成型するための金型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型を用いて成型された押釦スイッチ用カバー部材から接点部材が欠落しているか否かを識別する接点部材欠落識別方法であって、
前記金型により成型された前記押釦スイッチ用カバー部材の前記可動接点部の底面上の一部に、一または複数の突起部が形成されている場合に、前記接点部材が欠落していると識別することを特徴とする接点部材欠落識別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−236842(P2006−236842A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51405(P2005−51405)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]