押釦スイッチ用部材およびその製造法
【課題】簡易にキートップとゴム状弾性体との接着性に優れ、外観上良好な押釦スイッチ用部材を得る。
【解決手段】キートップ3A,3B若しくはコーティング層3Cと、そのキートップ3A,3B,3D若しくはコーティング層3Cを配置するためのゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dとを貼付して成る押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dにおいて、キートップ3A,3B,3D若しくはコーティング層3Cとゴム弾性体2A,2B,2C,2Dとの接着面間に、珪素酸化物粒子を含む層(珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4)を介在させている。
【解決手段】キートップ3A,3B若しくはコーティング層3Cと、そのキートップ3A,3B,3D若しくはコーティング層3Cを配置するためのゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dとを貼付して成る押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dにおいて、キートップ3A,3B,3D若しくはコーティング層3Cとゴム弾性体2A,2B,2C,2Dとの接着面間に、珪素酸化物粒子を含む層(珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4)を介在させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、携帯情報端末装置等、いわゆるモバイル機器に用いられる押釦スイッチ用部材において、キートップを配置するキーシートの材料には、一般的に、シリコーンゴム等に代表されるゴム状弾性体が用いられている。このゴム状弾性体の上表面には、耐摩耗性および耐汚染性を向上させる目的で、たとえばウレタン結合を有する有機系樹脂がコーティングされる(特許文献1参照)。
【0003】
また、樹脂製のキートップと、ゴム状弾性体で構成される押釦スイッチ用部材とを、紫外線硬化型接着剤によって固着した押釦スイッチ用部材も知られている(特許文献2、3、4を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−296676号公報
【特許文献2】特開平11−86667号公報
【特許文献3】特開平8−253607号公報
【特許文献4】特表2005−517750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のシリコーンゴムに代表されるゴム弾性体は、一般に難接着材料であり、特に異種材料と接着しにくい材料である。このため、ゴム弾性体に樹脂製のキートップを接着する場合、予め、ゴム状弾性体の接着領域にプラズマ処理等の表面活性化処理、さらにはその処理面にプライマー処理を施す必要があった。しかし、かかる処理を施すと、加工工程が多くなるばかりではなく、過剰なプライマー処理によってプライマー成分または希釈溶剤がゴム状弾性体を膨潤させてしまうおそれもある。そのため、プライマー処理は、薄型化に不利な上に、外観状も好ましくない結果を招くおそれがある。
【0006】
また、一般に、プライマー処理に用いられるプライマーの成分は、反応性に富み、大気中の水分等と反応してしまうことがあり、その結果、処理効果の持続性または安定性に欠ける。したがって、プライマー処理は、樹脂製キートップとゴム状弾性体との接着不良を招きやすい上に、ゴム状弾性体を変色させるおそれがある。
【0007】
さらに、プラズマ処理等の表面活性化処理を行う場合には、シリコーンゴムの表面に残留する低分子シロキサンを除去するため、表面活性化処理に先立ち、加熱処理を行うことが不可欠であった。
【0008】
そこで、本発明は、簡易にキートップとゴム状弾性体との接着性に優れ、外観上良好な押釦スイッチ用部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明者は、プラズマ処理およびプライマー処理を行わずにキートップ若しくはコーティング層とゴム状弾性体とを強固に接着する方法を開発してきた結果、珪素化合物を含む燃料を燃焼させて、ゴム状弾性体の接着領域に火炎照射することにより、その接着領域に、珪素酸化物粒子を含む層を形成することができること、その層とキートップ若しくはコーティング層とを貼付することにより、外観上良好で接着性の高い押釦スイッチ用部材を得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る押釦スイッチ用部材は、キートップ若しくはコーティング層と、そのキートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材において、キートップ若しくはコーティング層とゴム弾性体との接着面間に、珪素酸化物粒子を含む層を介在させている。ここで、珪素酸化物粒子とは、シリコンと酸素を含む粒状物を意味し、SiO2以外の物質を含むように広義に解釈される。
【0011】
このような構成により、キートップ若しくはコーティング層とゴム状弾性体との接着性が良好となる。で、かつゴム状弾性体の変色および膨潤のない高品質の押釦スイッチ用部材が得られる。
【0012】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述のゴム状弾性体をJIS硬度の値が30A以上60D以下のものであるものとしている。このJIS硬度の値は、JIS K6253のタイプAデュロメータまたはタイプDデュロメータにより得られる値である。JIS硬度の値を30A以上とすることで、ゴム状弾性体が柔らかくなり過ぎず、十分な形状安定性を得ることができる。またJIS硬度の値を60D以上とすることで、ゴム状弾性体が固くなり過ぎず、ユーザが押圧感触を得ることができる。
【0013】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述の発明に加え、珪素酸化物粒子を含む層を、火炎照射処理により形成された火炎処理層を含むものとしている。この構成を採用することによって、珪素酸化物粒子と火炎処理層とが混在した層を形成でき、珪素酸化物粒子が強固にゴム状弾性体の接着面に固定される。また、この構成を採用することによって、上述のプラズマ処理等の表面活性化処理に先立って行う加熱処理を行わなくても、容易に珪素酸化物粒子を含む層と火炎処理層とが混在した層を形成できる利点を有する。
【0014】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述の発明に加え、珪素酸化物粒子の粒径を50nm以上400nm以下としている。この構成を採用することによって、ゴム状弾性体の接着面とキートップ若しくはコーティング層との接着性をより良好にできる。
【0015】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述の発明に加え、ゴム状弾性体の接着面の原子間力顕微鏡により測定される算術平均粗さを22nm以上37nm以下としている。この構成を採用することによって、ゴム状弾性体の接着面とキートップ若しくはコーティング層との接着性をより良好にできる。
【0016】
また、本発明に係る押釦スイッチ用部材の製造法は、キートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材の製造法において、キートップ若しくはコーティング層をゴム状弾性体とを貼付する前に、キートップの接着面および/またはゴム状弾性体の接着面に火炎照射処理を行う火炎工程を有し、火炎工程では、火炎照射用の燃料として珪素化合物を含ませたものを用いる製造法としている。
【0017】
このような製造法によれば、キートップ若しくはコーティング層とゴム状弾性体との接着性が良好となる。で、かつゴム状弾性体の変色および膨潤のない高品質の押釦スイッチ用部材が得られる。
【0018】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材の製造法は、上述の発明に加え、火炎工程は、珪素化合物を燃焼させ、火炎を放出する火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面とを相対的に移動させて、ゴム状弾性体に珪素酸化物粒子を含む層を、その移動方向に形成する工程であり、その移動の速度が50mm/秒以上100mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を50mm以上120mm以下とし、移動速度が100mm/秒以上300mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上120mm以下とし、移動速度が300mm/秒以上400mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上100mm以下とし、移動速度が400mm/秒以上500mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上80mm以下とする製造法としている。
【0019】
このような製造法によれば、簡易にキートップとゴム状弾性体との接着性に優れ、外観上良好な押釦スイッチ用部材を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、プラズマ処理およびプライマー処理を行わなくてもキートップとゴム状弾性体との接着性が良好な押釦スイッチ用部材およびその製造法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施の形態に係る押釦スイッチ用部材およびその製造法について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(押釦スイッチ用部材の構成)
押釦スイッチ用部材1Aは、携帯電話、携帯情報端末、リモコンあるいは電子手帳等の各種の電気・電子機器の操作部分に使用されるものである。図1(A)に、その正面図を示す。図1(A)に示すように、押釦スイッチ用部材1Aは、ゴム状弾性体2Aと、キートップ3Aと、ゴム状弾性体2Aとキートップ3Aとの間に形成される接着剤層または接着剤層4Aとを備えている。
【0023】
ゴム状弾性体2Aの本体2A1は、柔軟性に富み耐久性に優れ、かつ透光性の高いシリコーンゴムで形成されている。このゴム状弾性体2Aのゴム硬さは60Aである。ただし、本体2A1を、例えば、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、オレフィンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ネオプレンゴム等に代表される合成ゴム、または、天然ゴム等の熱硬化性エラストマー、または、ウレタン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系等に代表される熱可塑性エラストマー等で形成しても良い。本体2A1もシリコーンゴムで形成すると、他のゴム状弾性体の材料を用いた場合と比べて耐久性が極めて高いものとなる。また、本体2A1をウレタン系エラストマーで形成すると、他のゴム状弾性体の材料を用いた場合と比べて薄型化を図りやすくなる。
【0024】
また、ゴム状弾性体2Aは、押釦スイッチ用部材1Aが使用される電気・電子機器の接点部(図示省略)をオンにするための押圧部2A3を備えている。押圧部2A3は、裏面2A2(図1の下面)に形成されている。ゴム状弾性体2の表面側(図1(A)の上面側)には、火炎照射されると共に表面に珪素酸化物粒子(珪素酸化物粒子の一形態)が形成される珪素酸化物層2A4(珪素酸化物粒子を含む層の一例)が形成されている。
【0025】
キートップ3Aのキートップ本体3A1は、樹脂で形成されている。また、透光性を有する樹脂を用いてキートップ本体3A1を形成すると、様々な装飾(色、模様、文字、ホログラム、グラデーション、メタリック等)の付与が容易であり、さらに、内部光源からの光を外に透過させることにより、所望の形状を表示することができる。キートップ本体3A1は、例えば、ポリカーボネートを射出して成型できる。ただし、キートップ本体3A1は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)またはスチレン等の熱可塑性樹脂を射出して成型したものでも良い。さらには、キートップ本体3A1は、不飽和ポリエステルやシリコーン等の硬化性樹脂を熱や光で硬化、成型したものであっても良い。
【0026】
また、キートップ本体3A1は、アルミニウム、ステンレスまたはチタン等の金属、またはセラミック、ガラス等で形成されても良い。キートップ本体3A1が金属で形成される場合には、樹脂に比べ機械的物性が優れるため、薄型化が可能になり、かつ、高級感を発揮できる。
【0027】
キートップ本体3A1の下面(図1(A)の下面)には、文字、図形および/または記号が描かれた装飾層3A2が形成されている。本実施形態では、印刷によって装飾層3A2が形成されている。ただし、装飾層3A2は、キートップ本体3A1の上面(図1(A)の上面)に形成されても良い。
【0028】
接着剤層4Aは、ゴム状弾性体2Aの表面側に形成される珪素酸化物層2A4とキートップ3Aの底面側とを貼り合わせるための接着剤によって構成される層である。その接着剤は、ゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aの材質、接着力、耐熱性および剥離力等を考慮して適宜選択される。この接着剤は、たとえば、光硬化型、溶剤希釈型あるいは熱反応型のいずれかの接着剤であれば良いが、光硬化型の接着剤であることが好ましい。光硬化型の接着剤は、無溶剤であるため、ゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aへの溶媒の膨潤による体積変化や変形が小さいからである。また、光硬化型の接着剤は、高温暴露の必要がないため取扱いが容易であり、かつゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aにダメージを与えにくい。さらに、光硬化型の接着剤は、所定の光線を照射するだけであるから短時間で接着剤としての機能を確保することができる。本実施形態では、紫外線硬化型の接着剤を用いている。
【0029】
(押釦スイッチ用部材1Bの構成)
押釦スイッチ用部材1Bは、押釦スイッチ用部材1Aと同様の用途に用いられるものである。図1(B)に、その正面図を示す。図1(B)に示すように、押釦スイッチ用部材1Bは、ゴム状弾性体2Bと、キートップ3Bと、ゴム状弾性体2Bとキートップ3Bとの間に形成される粘着剤層4Bとを備えている。
【0030】
ゴム状弾性体2Bは、ゴム状弾性体2Aとほぼ同じ構成である。ただし、ゴム状弾性体2Bは、薄肉部2B5およびベース部2B6を有しており、押釦スイッチ用部材1Bが使用される電気・電子機器の接点部(図示省略)を押すための押圧導電部材2B2を備えている。押圧導電部材2B2は、ゴム状弾性体2Bの本体2B1の裏面2B3に固定されている。ゴム状弾性体2Bは、ゴム状弾性体2Bの上面全体に珪素酸化物層2B4を有している。
【0031】
キートップ3Bは、キートップ3Aとほぼ同じ構成である。粘着剤層4Bは、接着剤層4Aと同一の構成である。ただし、キートップ本体3B1の上面(図1(B)の上面)に、文字、図形および/または記号が描かれた装飾層3B2が形成されている点が、キートップ3Aとの差異点である。なお、装飾層3B2は、キートップ本体3B1の上面(図1(B)の下面)に形成されても良い。粘着剤層4Bは、ゴム状弾性体2Aの表面側に形成される珪素酸化物層2B4とキートップ3Bの底面側とを貼り合わせるための粘着剤によって構成される層である。その粘着剤は、ゴム状弾性体2Bおよびキートップ3Bの材質、粘着力、保持力、耐熱性および剥離力等を考慮して適宜選択される。この粘着剤は、たとえば、光硬化型、溶剤希釈型あるいは熱硬化型のいずれかの粘着剤であれば良いが、光硬化型の粘着剤であることがより好ましい。光硬化型の粘着剤は、無溶剤であるため、ゴム状弾性体2Bおよびキートップ3Bへの溶媒の膨潤による体積変化や変形が小さい。また、光硬化型の粘着剤は、高温暴露の必要がないため取扱いが容易であり、かつゴム状弾性体2Bおよびキートップ3Bにダメージを与えにくい。さらに、光硬化型の粘着剤は、所定の光線を照射するだけであるから短時間で粘着剤としての機能を確保することができる。本実施形態では、紫外線硬化型の粘着剤を用いている。
【0032】
(押釦スイッチ用部材1Cの構成)
押釦スイッチ用部材1Cは、押釦スイッチ用部材1A,1Bと同様の用途に用いられるものである。図1(C)に、その縦断面図を示す。図1(C)に示すように、押釦スイッチ用部材1Cは、ゴム状弾性体2Cと、コーティング層3Cとを備えている。
【0033】
ゴム状弾性体2Cは、ゴム状弾性体2Bと同様の構成である。本体2C1の裏面2C3には、押圧突起2C2が形成されている。装飾層3C1は、ゴム状弾性体2Cの本体2C1の上面に形成されている。本体2C1は、薄肉部2C5およびベース部2C6を有している。珪素酸化物層2C4は、装飾層3C1の上から本体2C1の上面全体を覆うように形成されている。コーティング層3Cは、珪素酸化物層2C4の表面に形成されている。本実施形態では、コーティング層3Cは、ウレタン樹脂によって塗装される塗膜である。なお、コーティング層3Cは、アルキド樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、ふっ素樹脂系等に代表される溶剤系コーティング材、またはエマルジョン、ディスパージョン、水溶性樹脂を用いた水系コーティング材等の有機樹脂系コーティング材からなるものを好適に用いることができる。なかでもゴム状弾性体キーシートに追従する柔軟性または付着性、耐薬品性、耐摩耗性等の信頼性を有するウレタン系樹脂を用いることがより望ましい。
【0034】
(押釦スイッチ用部材1Dの構成)
押釦スイッチ用部材1Dは、押釦スイッチ用部材1A,1B,1Cと同様の用途に用いられるものである。図1(D)に、その縦断面図を示す。図1(D)に示すように、押釦スイッチ用部材1Dは、ゴム状弾性体2Dと、キートップ3Dと、ゴム状弾性体2Dとキートップ3Dとの間に形成される粘着剤層4Dとを備えている。そして珪素酸化物層2D4は、ガラスからなるキートップ3Dの下側の面に形成されている。それ以外の押釦スイッチ用部材1Dの構成は、押釦スイッチ用部材1Bと同じである。
【0035】
(押釦スイッチ用部材1Aの製造方法)
図2は、図1(A)に示す押釦スイッチ用部材1Aの製造工程を示す図である。図2(A)および(B)は、図1(A)に示すキートップ3Aの製造工程を説明するための図である。図2(C)〜(F)は、図1(A)に示すゴム状弾性体2Aの製造工程を説明するための図である。図3は、図2(F)に示す珪素酸化物層2A4を形成する工程(火炎工程)を説明するための図である。図2(G)〜(I)は、ゴム状弾性体2Aへの粘着剤転写の工程およびゴム状弾性体2Aとキートップ3Aとの貼合せの工程を説明するための図である。
【0036】
以下、図2に基づいて押釦スイッチ用部材1Aの製造方法の概略を説明する。
【0037】
まず、キートップ3Aおよびゴム状弾性体2Aをそれぞれ製造する。図2(A)に示すように、金型5を用いた射出成型でキートップ本体3A1の外形を形成する。具体的には、ポリカーボネート系樹脂(商品名:カリバー301−22、住友ダウ株式会社製)を射出成型してキートップ本体3A1の外形を形成する。
【0038】
その後、図2(B)に示すように、キートップ本体3A1の表面(図2(B)の下面)に装飾層3A2を印刷で形成する。使用するインクは、紫外線硬化型のインク(商品名:レイキュアーPF4200、株式会社十条ケミカル製)である。そのインクで厚み10μmの文字、数字または図形等を印刷し、その後、紫外線硬化用メタルハライドランプ(商品名:[D]bulb、Fusion UV システムズ・ジャパン株式会社製)を用いて積算光量500mJ/cm2にて硬化させて、装飾層3A2を形成する。なお、装飾層3A2は、メッキ、塗装、蒸着あるいはホットスタンプ等によって形成されても良い。
【0039】
一方、図2(C)に示すように、金型6を用いた圧縮成型により、ゴム状弾性体2Aの本体2A1の外形を形成する。具体的には、シリコーンゴムコンパウンド(商品名:DY32−6014U、東レ・ダウコーニング株式会社製)100質量部と、架橋剤(商品名:RC−8、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.5質量部とからなる原料を、成型温度180℃、成型時間5分、成型圧力180kg/cm2の条件で圧縮成型して、厚さが0.5mmとなるように、本体2A1の外形を形成する。
【0040】
その後、図2(D)に示すように、本体2A1を個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に、冶具を用いて切り離すと共にバリ等の余剰部分を除去し、個々の本体2A1を形成する。
【0041】
その後、火炎工程を実施して、図2(E)に示すように本体2A1の上面(図2(E)の上側)に珪素酸化物層2A4を形成する。火炎工程については、図3にその概要を示す。燃料は、エアーを80リットル/分、LPガスを3リットル/分、添加剤としてのヘキサメチルジシロキサン(珪素化合物の一例)98mol%とトリメチルエトキシラン(珪素化合物の一例)2mol%の混合溶液を0.3g/分で混合・供給するためのものである。上記添加剤は、燃料中でミストの状態となっていても、気化した状態となっていても良い。なお、上述の添加剤にはヘキサメチルレンジシラン類、テトラエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ジメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン等のアルキルシラン類、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のクロロシラン類、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等のシロキサン類等に代表される珪素化合物を用いることができる。これらの中では、引火を引き起こし難く装置を腐食させ難い有機珪素化合物、特にアルコキシシラン類またはシロキサン類を用いることが好ましい。
【0042】
上記燃料はバーナーに供給され、本体2A1の表面に火炎となって照射される。この火炎照射の条件は、バーナーの開口部とゴム状弾性体の表面との距離を100mmとし、バーナーがゴム状弾性体の表面を100mm/秒の速度で2回走査する条件とする。すると珪素酸化物粒子の粒径が50〜100nmとなり、珪素酸化物層の表面粗さがRa22nmとなる。そして、ゴム状弾性体の表面に火炎処理層(変質層)2A5が形成され、かつその表面側に珪素酸化物層2A4が形成される。この珪素酸化物層2A4は、添加剤が酸化して珪素酸化物粒子となり、その単体の状態または珪素酸化物同士が結合した状態となって、火炎処理層2A5の表面に接着している。ここで、珪素酸化物層2A4は、シリカのみならず、珪素化合物の熱分解および酸化により生成する粒状物をも含む層である。
【0043】
その後、複数の本体2A1を図2(F)に示すように、珪素酸化物層2A4が上面となるように、接着用冶具7に複数固定する。次に、接着剤4を珪素酸化物層2A4の表面に塗布する。接着剤4は、紫外線硬化型粘着剤(商品名:ThreeBond 3042H、株式会社スリーボンド製)を100質量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−603、信越化学工業株式会社製)を0.5質量部、およびシランカップリング剤(商品名:KBM−5103、信越化学工業株式会社製)を0.5質量部配合したものである。
【0044】
一方、図2(G)に示すように、キートップ本体3A1を、装飾層3A2が上面となるように冶具8に固定する。なお、本実施の形態では、キートップ本体3A1が複数繋がった状態で冶具8に固定しているが、キートップ本体3A1を個々のものに切り離した後に冶具8に固定してもよい。
【0045】
次に、図2(H)に示すように、接着用冶具6を反転させて、接着用冶具6に固定した状態のゴム状弾性体2Aの珪素酸化物層2A4と、冶具8に固定した状態のキートップ本体3A1の装飾層3A1とを対向させ、接着剤4によって両者を接着する。
【0046】
その後、紫外線照射コンベアー(商品名:M015L312、強度120W/cm、アイグラフィックス株式会社製)を用い、接着剤4に対してメタルハライドランプにて波長300〜450nmの紫外線を2000mJ/cm2の条件にて照射する。すると、接着剤4が硬化して接着剤層4Aとなる。
【0047】
その後、接着用冶具6からゴム状弾性体2Aを取り出し、冶具8からキートップ本体3A1を取り出す。そして、キートップ本体3A1を個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に、刃冶具により切断し、さらに射出成型で形成されたランナーやゲート等の余剰部分を切断し、押釦スイッチ用部材1Aが完成する。
【0048】
(押釦スイッチ用部材1Bの製造方法)
図4は、図1(B)に示す押釦スイッチ用部材1Bの製造工程を示す図である。図4(A)〜(C)は、図1(B)に示すキートップ3Bの製造工程を説明するための図である。図4(D)〜(G)は、図1(B)に示すゴム状弾性体2Bの製造工程を説明するための図である。図3は、図4(F)に示す珪素酸化物層2B4を形成する工程(火炎工程)を説明するための図である。図4(H)〜(L)は、ゴム状弾性体2Bへの粘着剤転写の工程およびゴム状弾性体2Bとキートップ3Bとの貼合せの工程を説明するための図である。
【0049】
以下、図4に基づいて、押釦スイッチ用部材1Bの製造方法の概略を説明する。
【0050】
まず、キートップ3Bおよびゴム状弾性体2Bをそれぞれ製造する。キートップ3Bは、図2(A)および(B)に基づいて先に説明したキートップ3Aの製造方法とほぼ同様に製造される。たとえばキートップ本体3B1は、金型9を用いて製造される。ただし、装飾層3B2は、キートップ本体3B1の上面(図4(B)における上側の面)に形成される。また、キートップ本体3B1は、装飾層3B2を形成した直後に、個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に刃冶具により切断し、さらに射出成型で形成されたランナーやゲート等の余剰部分を切断して、キートップ3Bとなる。
【0051】
一方、図4(D)に示すように、金型10を用いた圧縮成型により本体2B1と押圧導電部材2B2とが一体化したものを形成する。具体的には、未加硫のシリコーンゴム(商品名:KE951U、信越化学工業株式会社製)100質量部と、カーボンブラック50質量部と、加硫剤としての2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン2質量部の混合物を金型10内に入れ、180℃、200kg/cm2の条件で加熱・加圧して、直径4mmの押圧突起2B2を作成する。
【0052】
その後、押圧突起2B2を金型10内に載置したまま、上述と同じ未加硫のシリコーンゴム100質量部と、着色剤(商品名:SR Color Green、信越化学工業株式会社製)5質量部と、上述と同じ加硫剤2.5質量部とを混合したシリコーンゴムコンパウンドを金型10の押圧突起2B2の上から充填し、180℃、150kg/cm2の条件で加熱・加圧して、図4(E)に示すような、本体2B1と押圧突起2B2とが一体化した成形体を製造する。
【0053】
その後、本体2B1と押圧突起2B2とを一体化した成形体の上面(図4(F)における上側の平面)に、押釦スイッチ用部材1Aにおける珪素酸化物層2A4と同じ条件にて、珪素酸化物層2B4を形成する。
【0054】
その後、個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に刃冶具により本体2B1を切断してバリを除去し、図4(G)に示すようにゴム状弾性体2Bを得る。
【0055】
図4(H)〜(L)は、ゴム状弾性体2Bへ粘着剤層4Bを転写する工程およびゴム状弾性体2Bとキートップ3Bとの貼合せの工程の様子を示す。図4(H)に示す粘着剤層4Bは、粘着剤層4Bを保持する保持部材12によって保持されている。図4(H)に示す粘着剤層4Bから、キートップ3Bを接着するのに不要な領域を除去し、図4(I)に示す粘着剤層4Bおよび保持部材12とする。
【0056】
その後、図4(J)に示すように、ゴム状弾性体2Bの上面に粘着剤層4Bを下側にして保持部材12を載置する。すると、粘着剤層4Bがゴム状弾性体2Bの上面の珪素酸化物層2B4に固着する。そして、図4(K)に示すように、保持部材12を上方に持ち上げると、粘着剤層4Bが保持部材12から剥がれて、ゴム状弾性体2Bの上面の珪素酸化物層2B4に固着する。その後、図4(L)に示すように、キートップ3Bの下面を粘着剤層4Bの上面に載置・固着して、押釦スイッチ用部材1Bが完成する。
【0057】
(押釦スイッチ用部材1Cの製造方法)
図5は、図1(C)に示す押釦スイッチ用部材1Cの製造工程について、(A)から(D)へと進行する際の各状態を縦断面図として示す図である。図3は、図5(C)に示す珪素酸化物層2C4を形成する工程(火炎工程)を説明するための図である。
【0058】
上述のように構成された押釦スイッチ用部材1Cの製造方法の概略を以下に説明する。まず、ゴム状弾性体2Cを製造する。ゴム状弾性体2Cは、ゴム状弾性体2Bと同様に、まず本体2C1と押圧突起2C2とが一体化したものを形成する。この段階を経た状態を図5(A)に示す。
【0059】
次に、本体2C1の上面(図5(B)の上側の平面)に装飾部3C1を形成する。装飾部3C1は、インクベースである商品名「シルマーク」(信越化学工業株式会社製)を100質量部に白色顔料20質量部を加えたものからなる。そして、装飾部3C1を本体2C1の上面にスクリーン印刷法によって印刷し、200℃で60分間加熱して硬化・固着させる。
【0060】
その後、珪素酸化物層2C4を、本体2C1と押圧突起2C2とが一体化した成形体の上面(図5(C)における上側の面)に、押釦スイッチ用部材1Aにおける珪素酸化物層2A4と同じ条件で形成する。
【0061】
その後、本体2C1を、個々のゴム状弾性体2Cに必要な単位に刃冶具により切断し、個々のゴム状弾性体2Cを得る。
【0062】
その後、図5(D)に示すように、ゴム状弾性体2Cの上面(図5(D)における上側の面)に、ウレタン系樹脂塗料(商品名:ダイプラコート、大日精化工業株式会社製)である非シリコーン系有機塗料を、乾燥後に50μmの膜厚となるようにエアスプレーで塗布し、150℃で40分間乾燥させ、硬化し、塗膜を得る。この塗膜がコーティング層3Cである。これで、押釦スイッチ用部材1Cが完成する。
【0063】
(押釦スイッチ用部材1Dの製造方法)
押釦スイッチ用部材1Dは、キートップ3Dにガラス製のものを用い、ゴム状弾性体2Dにウレタン系熱可塑性エラストマーの射出成形品を用い、キートップ3Dに対して押釦スイッチ用部材1A,1B,1Cと同様の火炎工程を行う以外は、押釦スイッチ用部材1Bの製造法と同様に製造される。すなわち図4(H)から図4(K)に示す工程は、押釦スイッチ用部材1Dについても行う。
【0064】
(本発明の実施形態による主な効果)
本発明の実施形態に係る押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dは、火炎工程によって珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成すると、各珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4中に含まれる珪素酸化物粒子による凹凸が形成される。このため、キートップ3A,3B,3Dおよびコーティング層3Cとゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dの接着面との間の接着面積が大きくなる。珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4によるアンカー効果により、キートップ3A,3B,3Dおよびコーティング層3Cとゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dとの接着力が高まる。さらに、火炎工程によって、本体2A1,2B1,2C1の表面が火炎処理層2A5等へと変質するので、珪素酸化物粒子とゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dとの接着力がより高まる。これによって、キートップ3A,3B,3Dおよびコーティング層3Cと本体2A1,2B1,2C1,2D1との接着性が良好となる。また、火炎工程によって本体2A1,2B1,2C1、又はキートップ3Dの表面の異物または汚れ等の、接着を阻害する物質を除去できる。さらに、火炎工程によって本体2A1,2B1,2C1の表面に、接着に寄与するOH基またはCOOH基等の極性基を導入することができる。
【0065】
また、火炎工程は、従来行っていたプラズマ処理またはプライマー処理等とは異なり、処理効果の持続性または安定性に優れ、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの変色を生じさせず、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの硬度が変化させず、膨潤等を生じさせない。また、プライマー処理に伴って従来から行われていた加熱処理工程を省略することができる。さらに、火炎工程によって得られる珪素酸化物粒子は粒径が小さいため、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの透光性が損なわれない。
【0066】
また、火炎工程によって珪素酸化物層2A4,2B4,2C4を形成することで、珪素酸化物粒子表面に存在する水酸基が大気中の水分を吸収し、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの表面電位を0に近づけ、製造工程上、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの表面に異物が付きにくくなる。また、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4の形成後、摩擦を加えても表面電位が大きく変化し難い。さらに、火炎工程によって珪素酸化物層2A4,2B4,2C4を形成することで、その表面における表面摩擦係数が小さくなる。このため、製造工程上、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの表面に異物が付きにくくなる。また、押釦スイッチ用部材1A,1B,1Cは、ゴム状弾性体にシリコーンゴムを採用しているため、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの耐久性が良好である。
【0067】
また、火炎工程によって、燃料に含まれる珪素化合物が珪素酸化物粒子に変化させ、その珪素酸化物粒子を本体2A1,2B1,2C1に付着させることができる。このため、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4の形成が容易である。また、珪素酸化物粒子と火炎処理層2A5等とが混在した層を形成することにより、珪素酸化物粒子が本体2A1,2B1,2C1の接着面に強固に固定される。
【0068】
(他の実施形態)
上述した本実施の形態に係る押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dおよびそれらの製造法は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、以下のように種々変形実施が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態では珪素酸化物粒子を主として有する珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成しているが、珪素化合物の熱分解と酸化物により生成する珪素酸化物以外の物質を含む層であっても良い。また、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4は、火炎工程によって形成されているが、他の手段によって形成されても良い。さらに、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4は、本体2A1,2B1,2C1の全面または上面、若しくはキートップ3Dに形成されているが、本体2A1,2B1,2C1、若しくはキートップ3Dの全面または下面において部分的に(例えば、点在させて)形成されていても良い。また火炎工程は、本体2A1,2B1,2C1とキートップ3A,3B,3Cの双方、若しくはキートップ3Dと本体2D1の双方に対して行うこととしても良い。
【0070】
また、上記実施の形態の火炎工程に用いる燃料は、エアーを80リットル/分、LPガスを3リットル/分、添加剤としてのヘキサメチルジシロキサン98mol%とエトキシメチルシラン2mol%の混合溶液を0.3g/分で供給するための燃料であるが、他の混合比率の混合溶媒とし、他の添加剤を追加または一部削除し、または、LPガス以外の可燃性ガスを使用しても良い。また、燃料の供給速度を変えても良い。
【0071】
また、火炎照射の条件は、バーナーの開口部とゴム状弾性体の表面との距離を100mmとし、バーナーがゴム状弾性体の表面を100mm/秒の速度で2回走査する条件としているが、その距離、走査の回数および速度は、適宜変更できる。また、形成する珪素酸化物粒子の粒径を50〜100nm、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4の算術平均粗さをRa22nmとしているが、これらの値は適宜変更できる。さらに、走査は、必須ではないため省略することができる。
【0072】
また、本実施形態では、押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dについて説明しているが、これら以外の構成の押釦スイッチ用部材に、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成し、その形成に火炎工程を行うこととしても良いことは言うまでもない。さらに、押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dの説明に際し、スイッチに相当する部材について図示しているが、複数のスイッチのスイッチ間に存在するスイッチ機能を有さない部材等にも、本実施形態に係る珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成し、その形成に火炎工程を行うこととしても良い。さらに、本実施形態ではゴム状弾性体へ火炎工程を行っているが、キートップ本体3A1,3B1へ火炎工程を行うこととしても良い。特に、キートップがセラミック、ガラスまたは金属からなるものは、樹脂またはゴム状弾性体に比べて耐熱性が高いため、火炎工程の火炎照射処理条件の範囲を広くすることができ、効果的な条件を決定しやすくなる。
【実施例】
【0073】
(試験に供した押釦スイッチ用部材)
上述の実施の形態において、図2および図3に基づいて説明した製造方法を用いて、複数種類の押釦スイッチ用部材(1Aとする)を製造した。各押釦スイッチ1Aの製造方法にて変化させた点は、火炎工程である。バーナー走査速度(mm/s)を50〜500mm/sの範囲で、バーナーからゴム状弾性体までの距離を20〜150mmの範囲でそれぞれ変化させた。また、火炎工程を行わず、比較例1の押釦スイッチ用部材も製造した(図7を参照)。
【0074】
(接着強度試験)
図6は、実施例1〜10(それぞれ、試料名A〜J)および比較例1の順に接着強度を説明するための図である。押釦スイッチ用部材1Aが平面上に載置され、その平面から突き出た押さえ冶具13により押釦スイッチ用部材1Aの本体2A1を平面に固定する。次に、キートップ本体3A1の上側の部分を引き上げ部材14で強く挟持し、矢印方向(上方)へと持ち上げる。この試験により、キートップ3Aがゴム状弾性体2Aから引き剥がされた際の引っ張り強度(kg)を測定した。
【0075】
図7および図8に、試験結果を示す。この試験は、各押釦スイッチ用部材1Aの製造時の火炎工程におけるバーナーの走査速度およびバーナーの燃料放出口から火炎照射を行う本体2A1部分までの距離を変化させたときの特性を調べるものである。図7に示す「接着性」の項目における「◎」は、引っ張り強度が2kg以上であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が本体2A1部分であることを意味し、「○」は、引っ張り強度が1kg以上2kg未満であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が接着剤層4Aの部分であることを意味し、「△」は、引っ張り強度が0.5kg以上1kg未満であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が接着剤層4Aの部分であることを意味し、「×」は、引っ張り強度が0.5kg未満であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が接着剤層4Aの部分であることを意味する。
【0076】
図7に示すように、火炎工程を省略した試料名「Blank」(比較例1)は、接着性が「×」で、それ以外の火炎工程を行った試料(A〜J)は、いずれも接着性が「△」「○」または「◎」であった。これは、珪素酸化物層2A4の存在によってゴム状弾性体2Aの表面積の増加、および本体2A1の表面が火炎処理層2A5へと変質し、接着性が向上したためと考えられる。なお、図7の試料EおよびFの備考欄には「燃える」と記載している。これは、火炎工程によって試料が熱により形状、寸法または外観が変化し、製品としての品位を損なった状態となったことを意味し、接着性能とは別の視点から試料を評価したものである。
【0077】
また、図8には、バーナー走査速度とバーナーからの距離との関係における接着性の評価結果を示す。図7に記載した試料に相当する条件のところには、その試料名(A〜Jのいずれか)を併せて記載している。また、「燃」の記載があるのは、火炎工程中に試料側から炎の発生が認められたことを意味する。
【0078】
図8に示すように、バーナー走査速度が50mm/秒以上100mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を50mm以上120mm以下とすると、接着性が「○」または「◎」となった。また、バーナー走査速度が100mm/秒以上300mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を20mm以上120mm以下とし、バーナー走査速度が300mm/秒以上400mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を20mm以上100mm以下とし、バーナー走査速度が400mm/秒以上500mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を20mm以上80mm以下とするのが好ましいことがわかった。この傾向は、バーナーへの燃料の供給する速度、バーナーの各寸法等の諸条件を変更した場合にも概ねあてはまる。
【0079】
バーナー走査速度を500mm/秒未満とすると、火炎とゴム状弾性体2Aとの接触が安定するため、火炎照射の良好な効果が得られやすいことがわかった。また、バーナー走査速度を50mm/秒以上とすることで、ゴム状弾性体2Aが燃えるのを抑制できることがわかった。
【0080】
図9に試料A、図10に試料B、図11に試料C、図12に試料Dの火炎工程後の火炎照射部分、図13に試料Blankの本体2A1の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率40000倍)を、それぞれ示す。本体2A1の表面に付着している粒子または粒子群は、珪素酸化物である。
【0081】
試料B、試料C、および試料Dは、珪素酸化物粒子がゴム状弾性体2Aの接着面に点在していることがわかる。また、試料Aは、珪素酸化物粒子の層がゴム状弾性体2Aの接着面に存在していることがわかる。また、試料B、試料C、および試料Dの写真から、試料A〜Jの各珪素酸化物粒子は、その一部が図3に示す火炎処理層または本体2A1に埋設されていることがわかる。また、試料B、試料C、および試料Dの写真から、珪素酸化物粒子と火炎処理層とが混在した層が形成されていることがわかる。このことから、試料Aについても、珪素酸化物粒子と火炎処理層とが混在した層が形成されていると考えられる。
【0082】
(表面粗さについての検討)
図7に示すように、試料Cを除く各試料について、接着剤層4Aを形成する前に珪素酸化物層2A4の表面粗さを測定した。図中の「Rms」は、珪素酸化物層2A4の高さの標準偏差、「Ra」は珪素酸化物層2A4の算術平均粗さ、「Rmax」は、珪素酸化物層2A4の最大高さと最小高さの差を示している。これらの測定には、市販の原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。各試料については、2箇所の測定箇所にて測定を行っている。
【0083】
図7からわかるように、Raが概ね22nm以上37nm以下で良好な接着性「○」または「◎」が得られており、Raが概ね32nm以上37nmでより良好な範囲の接着性「◎」が得られることがわかった。なお、Raが22nm以上であると、接着剤層4Aとの接触面積を十分に得ることができ、良好な接着強度を得ることができると考えられる。
【0084】
(珪素酸化物粒子の粒子径についての検討)
図7に示すように、各試料について、接着剤層4Aを形成する前に珪素酸化物層2A4を構成する珪素酸化物粒子の粒子径を測定した。この測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる写真を用いて目視によって行った。
【0085】
図7からわかるように、珪素酸化物粒子の粒子径が50nm以上400nm以下で良好な接着性「○」または「◎」が得られ、また、50nm以上120nmでより良好な範囲の接着性「◎」が得られた。なお、珪素酸化物粒子の粒子径が400nmを超えても、接着剤層4Aとの接触面積増加効果による接着性の向上は小さいことがわかった。また、珪素酸化物粒子の粒子径を400nm以下とするとゴム状弾性体2Aの透光性も良好となると考えられる。
【0086】
(シリコーンゴムの硬度変化についての検討)
火炎工程の前後のゴム状弾性体2Aの火炎照射面の硬度試験の結果を図14に示す。この試験は、シリコーンゴムコンパウンド(商品名:HG−060−U、信越化学工業株式会社製)100質量部に架橋剤(信越化学工業(株)製、X93―1220)0.5質量部を添加したシリコーンゴム組成物を金型内に挿入し、成形温度180℃、圧力200kg/cm2、成形時間7分の条件で圧縮成形して、5cm×5cm×1mmのシート体としたもの(以下、第1のシリコーンゴム片という)を用い、図7に示す試料名A,B,C,Dと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例として、表面にプライマーを塗布したものについて行った。プライマーの配合液は、信越化学工業株式会社製の商品名「KBP40」を50質量部とトルエンを50質量部混合したものである。そして、この配合液を1.5mg/cm2塗布後、150℃で40分乾燥させることでプライマー処理を行った。硬度は、Wallace社製の商品名「IRHDマイクロ硬さ計 H12」を用いて測定した。
【0087】
図14に、その測定結果を示す。比較例のようにプライマー処理を行った場合には、本体2A1の硬度は高くなり、試料A,B,C,Dに相当するもののようにプライマー処理を行わない場合は、硬度の変化が殆ど無いことがわかった。なお、本体2A1,2B1,2C1を第1のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても、試料A,B,C,Dに相当するものと同様の結果が得られた。
【0088】
(ゴム状弾性体2Aの色調変化についての検討)
図15に、火炎工程の前後のゴム状弾性体2Aの火炎照射面の色調変化試験の結果を示した。この試験は、第1のシリコーンゴム片を用い、図7に示す試料名A,B,C,Dと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例として、本体2A1の表面にプライマーを塗布したものについて行った。プライマーの配合液および処理は、上述の図14に示す比較例と同じものを用い、同一の条件で行った。色調変化の測定は、ミノルタカメラ社製の商品名「CR−241」の色彩色差計を用いて変化の割合ΔEを求め比較した。
【0089】
図15に、測定結果を示す。比較例のようにプライマー処理を行っている場合には、色調は大きく変化し、試料A,B,C,Dに相当するもののようにプライマー処理を行わない場合は、色調の変化は殆ど無いことがわかる。なお、本体2A1,2B1,2C1を第1のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても試料A,B,C,Dに相当するものと同様の結果が得られた。
【0090】
(基材表面電位変化についての検討)
図17に、火炎工程の前後の本体2A1の表面電位変化試験の結果を示す。この試験は、第2のシリコーンゴム片(第1のシリコーンゴム片のシリコーンゴムコンパウンドを商品名:HG−070L−U、信越化学工業株式会社製のものとした以外は第1のシリコーンゴム片と同条件で作成したシリコーンゴム片)を用い、図7に示す試料名Aと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例2として、本体2A1の表面にコロナ処理を施したもの、ならびに比較例3として本体2A1の表面に何ら処理を施さないものについて行った。
【0091】
また、表面電位の測定時期は、図16(A)に示すように、表面処理(火炎照射またはコロナ処理)の前、図16(B)に示す表面処理を行った後(図16(C))、図16(D)に示すように製版15を本体2A1の上に固定し、製版15の表面をスキージ16によって擦りつけ、本体2A1の表面に摩擦を付与した後(図16(E))の3回の時期とした。なお、表面電位の測定の際および摩擦を付与する際にはシリコーンゴム片2をアルミ製の冶具17に載せた。
【0092】
コロナ処理は、Arcotec社製商品名「HF−CORONA Treatment Unit 90444」を用い、出力0.3kw、処理速度0.5m/分の条件で行った。また、表面電位の測定には、春日電機株式会社製の商品名「KSD−0101」のデジタル定電位測定器を用いた。
【0093】
図17に測定結果を示す。比較例2および比較例3は、表面処理前よりも摩擦後の表面電位が低くなり、その変化が大きいことがわかる。一方、試料Aに相当するものの場合は、表面処理前と摩擦後の表面電位は等しく、その変化が小さいことがわかる。表面電位の変化が小さいと、製造工程等において、本体2A1の表面に異物が付きにくい。また、表面電位が小さいと、本体2A1の表面が帯電し難いため、異物を寄せ付け難く異物による不良が減少する。なお、本体2A1,2B1,2C1,2D1を第2のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても試料Aに相当するものと同様の結果が得られた。
【0094】
(基材表面摩擦係数についての検討)
図18に、火炎工程の後の本体2A1の表面摩擦係数試験の結果を示す。この試験は、第3のシリコーンゴム片(第1のシリコーンゴム片のシリコーンゴムコンパウンドを商品名:KE1978−AおよびKE1978−B、信越化学工業株式会社製のものとした以外は第1のシリコーンゴム片と同条件で作成したシリコーンゴム片)を用い、図7に示す試料名A,B,C,Dと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例1として本体2A1の表面に何ら処理を施さないものについて行った。
【0095】
また、この試験は、JIS K 7125に準拠して行った。具体的には、相手材に厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名:SLA、帝人株式会社製)を用い、100mm/分で摩擦させて、静摩擦係数および動摩擦係数をそれぞれ2回測定して測定値1と測定値2の平均値を算出した。測定器には、株式会社東洋精機製作所製のTR型のものを用いた。
【0096】
図18に示すように、比較例1は、摩擦係数が大きく、試料A,B,C,Dは、摩擦係数が小さいことがわかる。摩擦係数が小さいと、製造工程等において、本体2A1の表面に異物が付きにくい。なお、本体2A1,2B1,2C1を第3のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても試料A,B,C,Dに相当するものと同様の結果が得られた。
【0097】
(ゴム状弾性体のゴム硬さについての検討)
ゴム状弾性体のJIS硬度について、形状安定性およびユーザの押圧感触(クリック感等)の2点の観点から検討し試験した。JIS硬度の測定は、JIS K 6253またはJIS K 7311に準拠して行った。ゴム状弾性体の試料として、図19に示すようにJIS硬度が20A乃至72Dのものを用意した。なお、JIS硬度のタイプAとタイプDは、一部重複して記載できるものがあるため、その一部については両タイプのJIS硬度を示している。また、図19には、各試料の形状安定性、押圧感触、成分、品名(メーカおよび商品名)を示している。各試料の形状安定性、押圧感触は、試験結果としてそれぞれ「○」または「×」で示している。形状安定性が「×」のものは柔らか過ぎて寸法精度を維持できず、形状安定性が「○」のものは軟らか過ぎず形状が安定し、寸法精度を維持するのが容易だった。また、押圧感触が「×」のものは硬過ぎてユーザの押圧感触を得ることができなかったのに対し、押圧感触が「○」のものは硬過ぎず、ユーザの押圧感触を得ることができた。以上のように、形状安定性およびユーザの押圧感触を総合判断すると、ゴム状弾性体は、JIS硬度の値が30A以上60D以下のものが好適であることがわかった。なお、本体2A1,2B1,2C1,2D1は、好適な形状安定性およびユーザの押圧感触が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係る押釦スイッチ用部材の構成を示す図である。
【図2】図1(A)に示す押釦スイッチ用部材の製造工程を示す図である。
【図3】図2(F)に示す珪素酸化物層を形成する火炎工程を説明するための図である。
【図4】図1(B)に示す押釦スイッチ用部材の製造工程を示す図である。
【図5】図1(C)に示す押釦スイッチ用部材の製造工程について、(A)から(D)へと進行する際の各状態を縦断面図として示す図である。
【図6】押釦スイッチ用部材の接着強度試験の状態を示す図である。
【図7】押釦スイッチ用部材の接着強度試験の結果を示す図である。
【図8】押釦スイッチ用部材の接着強度試験の結果を示す図である。
【図9】図7に示す試料Aの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図10】図7に示す試料Bの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図11】図7に示す試料Cの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図12】図7に示す試料Dの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図13】図7に示す試料Blankの本体の表面の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図14】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の火炎照射面の硬度試験の結果を示す図である。
【図15】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の火炎照射面の色調変化試験の結果を示す図である。
【図16】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の表面電位変化試験の表面電位の測定時期を説明するための図である。
【図17】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の表面電位変化試験の結果を示す図である。
【図18】火炎工程の後のシリコーンゴム片の表面摩擦係数試験の結果を示す図である。
【図19】ゴム状弾性体のJIS硬度に対する形状安定性および押圧感触の試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1A,1B,1C,1D 押釦スイッチ用部材
2A,2B,2C,2D ゴム状弾性体(シリコーンゴム、ウレタン系エラストマー等)
2A4,2B4,2C4,2D4 珪素酸化物層(キートップの接着面および/またはゴム状弾性体の接着面、珪素酸化物粒子を含む層)
3A,3B,3D キートップ
3C コーティング層
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、携帯情報端末装置等、いわゆるモバイル機器に用いられる押釦スイッチ用部材において、キートップを配置するキーシートの材料には、一般的に、シリコーンゴム等に代表されるゴム状弾性体が用いられている。このゴム状弾性体の上表面には、耐摩耗性および耐汚染性を向上させる目的で、たとえばウレタン結合を有する有機系樹脂がコーティングされる(特許文献1参照)。
【0003】
また、樹脂製のキートップと、ゴム状弾性体で構成される押釦スイッチ用部材とを、紫外線硬化型接着剤によって固着した押釦スイッチ用部材も知られている(特許文献2、3、4を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−296676号公報
【特許文献2】特開平11−86667号公報
【特許文献3】特開平8−253607号公報
【特許文献4】特表2005−517750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のシリコーンゴムに代表されるゴム弾性体は、一般に難接着材料であり、特に異種材料と接着しにくい材料である。このため、ゴム弾性体に樹脂製のキートップを接着する場合、予め、ゴム状弾性体の接着領域にプラズマ処理等の表面活性化処理、さらにはその処理面にプライマー処理を施す必要があった。しかし、かかる処理を施すと、加工工程が多くなるばかりではなく、過剰なプライマー処理によってプライマー成分または希釈溶剤がゴム状弾性体を膨潤させてしまうおそれもある。そのため、プライマー処理は、薄型化に不利な上に、外観状も好ましくない結果を招くおそれがある。
【0006】
また、一般に、プライマー処理に用いられるプライマーの成分は、反応性に富み、大気中の水分等と反応してしまうことがあり、その結果、処理効果の持続性または安定性に欠ける。したがって、プライマー処理は、樹脂製キートップとゴム状弾性体との接着不良を招きやすい上に、ゴム状弾性体を変色させるおそれがある。
【0007】
さらに、プラズマ処理等の表面活性化処理を行う場合には、シリコーンゴムの表面に残留する低分子シロキサンを除去するため、表面活性化処理に先立ち、加熱処理を行うことが不可欠であった。
【0008】
そこで、本発明は、簡易にキートップとゴム状弾性体との接着性に優れ、外観上良好な押釦スイッチ用部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明者は、プラズマ処理およびプライマー処理を行わずにキートップ若しくはコーティング層とゴム状弾性体とを強固に接着する方法を開発してきた結果、珪素化合物を含む燃料を燃焼させて、ゴム状弾性体の接着領域に火炎照射することにより、その接着領域に、珪素酸化物粒子を含む層を形成することができること、その層とキートップ若しくはコーティング層とを貼付することにより、外観上良好で接着性の高い押釦スイッチ用部材を得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る押釦スイッチ用部材は、キートップ若しくはコーティング層と、そのキートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材において、キートップ若しくはコーティング層とゴム弾性体との接着面間に、珪素酸化物粒子を含む層を介在させている。ここで、珪素酸化物粒子とは、シリコンと酸素を含む粒状物を意味し、SiO2以外の物質を含むように広義に解釈される。
【0011】
このような構成により、キートップ若しくはコーティング層とゴム状弾性体との接着性が良好となる。で、かつゴム状弾性体の変色および膨潤のない高品質の押釦スイッチ用部材が得られる。
【0012】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述のゴム状弾性体をJIS硬度の値が30A以上60D以下のものであるものとしている。このJIS硬度の値は、JIS K6253のタイプAデュロメータまたはタイプDデュロメータにより得られる値である。JIS硬度の値を30A以上とすることで、ゴム状弾性体が柔らかくなり過ぎず、十分な形状安定性を得ることができる。またJIS硬度の値を60D以上とすることで、ゴム状弾性体が固くなり過ぎず、ユーザが押圧感触を得ることができる。
【0013】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述の発明に加え、珪素酸化物粒子を含む層を、火炎照射処理により形成された火炎処理層を含むものとしている。この構成を採用することによって、珪素酸化物粒子と火炎処理層とが混在した層を形成でき、珪素酸化物粒子が強固にゴム状弾性体の接着面に固定される。また、この構成を採用することによって、上述のプラズマ処理等の表面活性化処理に先立って行う加熱処理を行わなくても、容易に珪素酸化物粒子を含む層と火炎処理層とが混在した層を形成できる利点を有する。
【0014】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述の発明に加え、珪素酸化物粒子の粒径を50nm以上400nm以下としている。この構成を採用することによって、ゴム状弾性体の接着面とキートップ若しくはコーティング層との接着性をより良好にできる。
【0015】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材は、上述の発明に加え、ゴム状弾性体の接着面の原子間力顕微鏡により測定される算術平均粗さを22nm以上37nm以下としている。この構成を採用することによって、ゴム状弾性体の接着面とキートップ若しくはコーティング層との接着性をより良好にできる。
【0016】
また、本発明に係る押釦スイッチ用部材の製造法は、キートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材の製造法において、キートップ若しくはコーティング層をゴム状弾性体とを貼付する前に、キートップの接着面および/またはゴム状弾性体の接着面に火炎照射処理を行う火炎工程を有し、火炎工程では、火炎照射用の燃料として珪素化合物を含ませたものを用いる製造法としている。
【0017】
このような製造法によれば、キートップ若しくはコーティング層とゴム状弾性体との接着性が良好となる。で、かつゴム状弾性体の変色および膨潤のない高品質の押釦スイッチ用部材が得られる。
【0018】
また、他の本発明に係る押釦スイッチ用部材の製造法は、上述の発明に加え、火炎工程は、珪素化合物を燃焼させ、火炎を放出する火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面とを相対的に移動させて、ゴム状弾性体に珪素酸化物粒子を含む層を、その移動方向に形成する工程であり、その移動の速度が50mm/秒以上100mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を50mm以上120mm以下とし、移動速度が100mm/秒以上300mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上120mm以下とし、移動速度が300mm/秒以上400mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上100mm以下とし、移動速度が400mm/秒以上500mm/秒未満の場合は、火炎放出口とゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上80mm以下とする製造法としている。
【0019】
このような製造法によれば、簡易にキートップとゴム状弾性体との接着性に優れ、外観上良好な押釦スイッチ用部材を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、プラズマ処理およびプライマー処理を行わなくてもキートップとゴム状弾性体との接着性が良好な押釦スイッチ用部材およびその製造法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施の形態に係る押釦スイッチ用部材およびその製造法について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(押釦スイッチ用部材の構成)
押釦スイッチ用部材1Aは、携帯電話、携帯情報端末、リモコンあるいは電子手帳等の各種の電気・電子機器の操作部分に使用されるものである。図1(A)に、その正面図を示す。図1(A)に示すように、押釦スイッチ用部材1Aは、ゴム状弾性体2Aと、キートップ3Aと、ゴム状弾性体2Aとキートップ3Aとの間に形成される接着剤層または接着剤層4Aとを備えている。
【0023】
ゴム状弾性体2Aの本体2A1は、柔軟性に富み耐久性に優れ、かつ透光性の高いシリコーンゴムで形成されている。このゴム状弾性体2Aのゴム硬さは60Aである。ただし、本体2A1を、例えば、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、オレフィンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ネオプレンゴム等に代表される合成ゴム、または、天然ゴム等の熱硬化性エラストマー、または、ウレタン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系等に代表される熱可塑性エラストマー等で形成しても良い。本体2A1もシリコーンゴムで形成すると、他のゴム状弾性体の材料を用いた場合と比べて耐久性が極めて高いものとなる。また、本体2A1をウレタン系エラストマーで形成すると、他のゴム状弾性体の材料を用いた場合と比べて薄型化を図りやすくなる。
【0024】
また、ゴム状弾性体2Aは、押釦スイッチ用部材1Aが使用される電気・電子機器の接点部(図示省略)をオンにするための押圧部2A3を備えている。押圧部2A3は、裏面2A2(図1の下面)に形成されている。ゴム状弾性体2の表面側(図1(A)の上面側)には、火炎照射されると共に表面に珪素酸化物粒子(珪素酸化物粒子の一形態)が形成される珪素酸化物層2A4(珪素酸化物粒子を含む層の一例)が形成されている。
【0025】
キートップ3Aのキートップ本体3A1は、樹脂で形成されている。また、透光性を有する樹脂を用いてキートップ本体3A1を形成すると、様々な装飾(色、模様、文字、ホログラム、グラデーション、メタリック等)の付与が容易であり、さらに、内部光源からの光を外に透過させることにより、所望の形状を表示することができる。キートップ本体3A1は、例えば、ポリカーボネートを射出して成型できる。ただし、キートップ本体3A1は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)またはスチレン等の熱可塑性樹脂を射出して成型したものでも良い。さらには、キートップ本体3A1は、不飽和ポリエステルやシリコーン等の硬化性樹脂を熱や光で硬化、成型したものであっても良い。
【0026】
また、キートップ本体3A1は、アルミニウム、ステンレスまたはチタン等の金属、またはセラミック、ガラス等で形成されても良い。キートップ本体3A1が金属で形成される場合には、樹脂に比べ機械的物性が優れるため、薄型化が可能になり、かつ、高級感を発揮できる。
【0027】
キートップ本体3A1の下面(図1(A)の下面)には、文字、図形および/または記号が描かれた装飾層3A2が形成されている。本実施形態では、印刷によって装飾層3A2が形成されている。ただし、装飾層3A2は、キートップ本体3A1の上面(図1(A)の上面)に形成されても良い。
【0028】
接着剤層4Aは、ゴム状弾性体2Aの表面側に形成される珪素酸化物層2A4とキートップ3Aの底面側とを貼り合わせるための接着剤によって構成される層である。その接着剤は、ゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aの材質、接着力、耐熱性および剥離力等を考慮して適宜選択される。この接着剤は、たとえば、光硬化型、溶剤希釈型あるいは熱反応型のいずれかの接着剤であれば良いが、光硬化型の接着剤であることが好ましい。光硬化型の接着剤は、無溶剤であるため、ゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aへの溶媒の膨潤による体積変化や変形が小さいからである。また、光硬化型の接着剤は、高温暴露の必要がないため取扱いが容易であり、かつゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aにダメージを与えにくい。さらに、光硬化型の接着剤は、所定の光線を照射するだけであるから短時間で接着剤としての機能を確保することができる。本実施形態では、紫外線硬化型の接着剤を用いている。
【0029】
(押釦スイッチ用部材1Bの構成)
押釦スイッチ用部材1Bは、押釦スイッチ用部材1Aと同様の用途に用いられるものである。図1(B)に、その正面図を示す。図1(B)に示すように、押釦スイッチ用部材1Bは、ゴム状弾性体2Bと、キートップ3Bと、ゴム状弾性体2Bとキートップ3Bとの間に形成される粘着剤層4Bとを備えている。
【0030】
ゴム状弾性体2Bは、ゴム状弾性体2Aとほぼ同じ構成である。ただし、ゴム状弾性体2Bは、薄肉部2B5およびベース部2B6を有しており、押釦スイッチ用部材1Bが使用される電気・電子機器の接点部(図示省略)を押すための押圧導電部材2B2を備えている。押圧導電部材2B2は、ゴム状弾性体2Bの本体2B1の裏面2B3に固定されている。ゴム状弾性体2Bは、ゴム状弾性体2Bの上面全体に珪素酸化物層2B4を有している。
【0031】
キートップ3Bは、キートップ3Aとほぼ同じ構成である。粘着剤層4Bは、接着剤層4Aと同一の構成である。ただし、キートップ本体3B1の上面(図1(B)の上面)に、文字、図形および/または記号が描かれた装飾層3B2が形成されている点が、キートップ3Aとの差異点である。なお、装飾層3B2は、キートップ本体3B1の上面(図1(B)の下面)に形成されても良い。粘着剤層4Bは、ゴム状弾性体2Aの表面側に形成される珪素酸化物層2B4とキートップ3Bの底面側とを貼り合わせるための粘着剤によって構成される層である。その粘着剤は、ゴム状弾性体2Bおよびキートップ3Bの材質、粘着力、保持力、耐熱性および剥離力等を考慮して適宜選択される。この粘着剤は、たとえば、光硬化型、溶剤希釈型あるいは熱硬化型のいずれかの粘着剤であれば良いが、光硬化型の粘着剤であることがより好ましい。光硬化型の粘着剤は、無溶剤であるため、ゴム状弾性体2Bおよびキートップ3Bへの溶媒の膨潤による体積変化や変形が小さい。また、光硬化型の粘着剤は、高温暴露の必要がないため取扱いが容易であり、かつゴム状弾性体2Bおよびキートップ3Bにダメージを与えにくい。さらに、光硬化型の粘着剤は、所定の光線を照射するだけであるから短時間で粘着剤としての機能を確保することができる。本実施形態では、紫外線硬化型の粘着剤を用いている。
【0032】
(押釦スイッチ用部材1Cの構成)
押釦スイッチ用部材1Cは、押釦スイッチ用部材1A,1Bと同様の用途に用いられるものである。図1(C)に、その縦断面図を示す。図1(C)に示すように、押釦スイッチ用部材1Cは、ゴム状弾性体2Cと、コーティング層3Cとを備えている。
【0033】
ゴム状弾性体2Cは、ゴム状弾性体2Bと同様の構成である。本体2C1の裏面2C3には、押圧突起2C2が形成されている。装飾層3C1は、ゴム状弾性体2Cの本体2C1の上面に形成されている。本体2C1は、薄肉部2C5およびベース部2C6を有している。珪素酸化物層2C4は、装飾層3C1の上から本体2C1の上面全体を覆うように形成されている。コーティング層3Cは、珪素酸化物層2C4の表面に形成されている。本実施形態では、コーティング層3Cは、ウレタン樹脂によって塗装される塗膜である。なお、コーティング層3Cは、アルキド樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、ふっ素樹脂系等に代表される溶剤系コーティング材、またはエマルジョン、ディスパージョン、水溶性樹脂を用いた水系コーティング材等の有機樹脂系コーティング材からなるものを好適に用いることができる。なかでもゴム状弾性体キーシートに追従する柔軟性または付着性、耐薬品性、耐摩耗性等の信頼性を有するウレタン系樹脂を用いることがより望ましい。
【0034】
(押釦スイッチ用部材1Dの構成)
押釦スイッチ用部材1Dは、押釦スイッチ用部材1A,1B,1Cと同様の用途に用いられるものである。図1(D)に、その縦断面図を示す。図1(D)に示すように、押釦スイッチ用部材1Dは、ゴム状弾性体2Dと、キートップ3Dと、ゴム状弾性体2Dとキートップ3Dとの間に形成される粘着剤層4Dとを備えている。そして珪素酸化物層2D4は、ガラスからなるキートップ3Dの下側の面に形成されている。それ以外の押釦スイッチ用部材1Dの構成は、押釦スイッチ用部材1Bと同じである。
【0035】
(押釦スイッチ用部材1Aの製造方法)
図2は、図1(A)に示す押釦スイッチ用部材1Aの製造工程を示す図である。図2(A)および(B)は、図1(A)に示すキートップ3Aの製造工程を説明するための図である。図2(C)〜(F)は、図1(A)に示すゴム状弾性体2Aの製造工程を説明するための図である。図3は、図2(F)に示す珪素酸化物層2A4を形成する工程(火炎工程)を説明するための図である。図2(G)〜(I)は、ゴム状弾性体2Aへの粘着剤転写の工程およびゴム状弾性体2Aとキートップ3Aとの貼合せの工程を説明するための図である。
【0036】
以下、図2に基づいて押釦スイッチ用部材1Aの製造方法の概略を説明する。
【0037】
まず、キートップ3Aおよびゴム状弾性体2Aをそれぞれ製造する。図2(A)に示すように、金型5を用いた射出成型でキートップ本体3A1の外形を形成する。具体的には、ポリカーボネート系樹脂(商品名:カリバー301−22、住友ダウ株式会社製)を射出成型してキートップ本体3A1の外形を形成する。
【0038】
その後、図2(B)に示すように、キートップ本体3A1の表面(図2(B)の下面)に装飾層3A2を印刷で形成する。使用するインクは、紫外線硬化型のインク(商品名:レイキュアーPF4200、株式会社十条ケミカル製)である。そのインクで厚み10μmの文字、数字または図形等を印刷し、その後、紫外線硬化用メタルハライドランプ(商品名:[D]bulb、Fusion UV システムズ・ジャパン株式会社製)を用いて積算光量500mJ/cm2にて硬化させて、装飾層3A2を形成する。なお、装飾層3A2は、メッキ、塗装、蒸着あるいはホットスタンプ等によって形成されても良い。
【0039】
一方、図2(C)に示すように、金型6を用いた圧縮成型により、ゴム状弾性体2Aの本体2A1の外形を形成する。具体的には、シリコーンゴムコンパウンド(商品名:DY32−6014U、東レ・ダウコーニング株式会社製)100質量部と、架橋剤(商品名:RC−8、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.5質量部とからなる原料を、成型温度180℃、成型時間5分、成型圧力180kg/cm2の条件で圧縮成型して、厚さが0.5mmとなるように、本体2A1の外形を形成する。
【0040】
その後、図2(D)に示すように、本体2A1を個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に、冶具を用いて切り離すと共にバリ等の余剰部分を除去し、個々の本体2A1を形成する。
【0041】
その後、火炎工程を実施して、図2(E)に示すように本体2A1の上面(図2(E)の上側)に珪素酸化物層2A4を形成する。火炎工程については、図3にその概要を示す。燃料は、エアーを80リットル/分、LPガスを3リットル/分、添加剤としてのヘキサメチルジシロキサン(珪素化合物の一例)98mol%とトリメチルエトキシラン(珪素化合物の一例)2mol%の混合溶液を0.3g/分で混合・供給するためのものである。上記添加剤は、燃料中でミストの状態となっていても、気化した状態となっていても良い。なお、上述の添加剤にはヘキサメチルレンジシラン類、テトラエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ジメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン等のアルキルシラン類、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のクロロシラン類、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等のシロキサン類等に代表される珪素化合物を用いることができる。これらの中では、引火を引き起こし難く装置を腐食させ難い有機珪素化合物、特にアルコキシシラン類またはシロキサン類を用いることが好ましい。
【0042】
上記燃料はバーナーに供給され、本体2A1の表面に火炎となって照射される。この火炎照射の条件は、バーナーの開口部とゴム状弾性体の表面との距離を100mmとし、バーナーがゴム状弾性体の表面を100mm/秒の速度で2回走査する条件とする。すると珪素酸化物粒子の粒径が50〜100nmとなり、珪素酸化物層の表面粗さがRa22nmとなる。そして、ゴム状弾性体の表面に火炎処理層(変質層)2A5が形成され、かつその表面側に珪素酸化物層2A4が形成される。この珪素酸化物層2A4は、添加剤が酸化して珪素酸化物粒子となり、その単体の状態または珪素酸化物同士が結合した状態となって、火炎処理層2A5の表面に接着している。ここで、珪素酸化物層2A4は、シリカのみならず、珪素化合物の熱分解および酸化により生成する粒状物をも含む層である。
【0043】
その後、複数の本体2A1を図2(F)に示すように、珪素酸化物層2A4が上面となるように、接着用冶具7に複数固定する。次に、接着剤4を珪素酸化物層2A4の表面に塗布する。接着剤4は、紫外線硬化型粘着剤(商品名:ThreeBond 3042H、株式会社スリーボンド製)を100質量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−603、信越化学工業株式会社製)を0.5質量部、およびシランカップリング剤(商品名:KBM−5103、信越化学工業株式会社製)を0.5質量部配合したものである。
【0044】
一方、図2(G)に示すように、キートップ本体3A1を、装飾層3A2が上面となるように冶具8に固定する。なお、本実施の形態では、キートップ本体3A1が複数繋がった状態で冶具8に固定しているが、キートップ本体3A1を個々のものに切り離した後に冶具8に固定してもよい。
【0045】
次に、図2(H)に示すように、接着用冶具6を反転させて、接着用冶具6に固定した状態のゴム状弾性体2Aの珪素酸化物層2A4と、冶具8に固定した状態のキートップ本体3A1の装飾層3A1とを対向させ、接着剤4によって両者を接着する。
【0046】
その後、紫外線照射コンベアー(商品名:M015L312、強度120W/cm、アイグラフィックス株式会社製)を用い、接着剤4に対してメタルハライドランプにて波長300〜450nmの紫外線を2000mJ/cm2の条件にて照射する。すると、接着剤4が硬化して接着剤層4Aとなる。
【0047】
その後、接着用冶具6からゴム状弾性体2Aを取り出し、冶具8からキートップ本体3A1を取り出す。そして、キートップ本体3A1を個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に、刃冶具により切断し、さらに射出成型で形成されたランナーやゲート等の余剰部分を切断し、押釦スイッチ用部材1Aが完成する。
【0048】
(押釦スイッチ用部材1Bの製造方法)
図4は、図1(B)に示す押釦スイッチ用部材1Bの製造工程を示す図である。図4(A)〜(C)は、図1(B)に示すキートップ3Bの製造工程を説明するための図である。図4(D)〜(G)は、図1(B)に示すゴム状弾性体2Bの製造工程を説明するための図である。図3は、図4(F)に示す珪素酸化物層2B4を形成する工程(火炎工程)を説明するための図である。図4(H)〜(L)は、ゴム状弾性体2Bへの粘着剤転写の工程およびゴム状弾性体2Bとキートップ3Bとの貼合せの工程を説明するための図である。
【0049】
以下、図4に基づいて、押釦スイッチ用部材1Bの製造方法の概略を説明する。
【0050】
まず、キートップ3Bおよびゴム状弾性体2Bをそれぞれ製造する。キートップ3Bは、図2(A)および(B)に基づいて先に説明したキートップ3Aの製造方法とほぼ同様に製造される。たとえばキートップ本体3B1は、金型9を用いて製造される。ただし、装飾層3B2は、キートップ本体3B1の上面(図4(B)における上側の面)に形成される。また、キートップ本体3B1は、装飾層3B2を形成した直後に、個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に刃冶具により切断し、さらに射出成型で形成されたランナーやゲート等の余剰部分を切断して、キートップ3Bとなる。
【0051】
一方、図4(D)に示すように、金型10を用いた圧縮成型により本体2B1と押圧導電部材2B2とが一体化したものを形成する。具体的には、未加硫のシリコーンゴム(商品名:KE951U、信越化学工業株式会社製)100質量部と、カーボンブラック50質量部と、加硫剤としての2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン2質量部の混合物を金型10内に入れ、180℃、200kg/cm2の条件で加熱・加圧して、直径4mmの押圧突起2B2を作成する。
【0052】
その後、押圧突起2B2を金型10内に載置したまま、上述と同じ未加硫のシリコーンゴム100質量部と、着色剤(商品名:SR Color Green、信越化学工業株式会社製)5質量部と、上述と同じ加硫剤2.5質量部とを混合したシリコーンゴムコンパウンドを金型10の押圧突起2B2の上から充填し、180℃、150kg/cm2の条件で加熱・加圧して、図4(E)に示すような、本体2B1と押圧突起2B2とが一体化した成形体を製造する。
【0053】
その後、本体2B1と押圧突起2B2とを一体化した成形体の上面(図4(F)における上側の平面)に、押釦スイッチ用部材1Aにおける珪素酸化物層2A4と同じ条件にて、珪素酸化物層2B4を形成する。
【0054】
その後、個々のゴム状弾性体2Aに必要な単位に刃冶具により本体2B1を切断してバリを除去し、図4(G)に示すようにゴム状弾性体2Bを得る。
【0055】
図4(H)〜(L)は、ゴム状弾性体2Bへ粘着剤層4Bを転写する工程およびゴム状弾性体2Bとキートップ3Bとの貼合せの工程の様子を示す。図4(H)に示す粘着剤層4Bは、粘着剤層4Bを保持する保持部材12によって保持されている。図4(H)に示す粘着剤層4Bから、キートップ3Bを接着するのに不要な領域を除去し、図4(I)に示す粘着剤層4Bおよび保持部材12とする。
【0056】
その後、図4(J)に示すように、ゴム状弾性体2Bの上面に粘着剤層4Bを下側にして保持部材12を載置する。すると、粘着剤層4Bがゴム状弾性体2Bの上面の珪素酸化物層2B4に固着する。そして、図4(K)に示すように、保持部材12を上方に持ち上げると、粘着剤層4Bが保持部材12から剥がれて、ゴム状弾性体2Bの上面の珪素酸化物層2B4に固着する。その後、図4(L)に示すように、キートップ3Bの下面を粘着剤層4Bの上面に載置・固着して、押釦スイッチ用部材1Bが完成する。
【0057】
(押釦スイッチ用部材1Cの製造方法)
図5は、図1(C)に示す押釦スイッチ用部材1Cの製造工程について、(A)から(D)へと進行する際の各状態を縦断面図として示す図である。図3は、図5(C)に示す珪素酸化物層2C4を形成する工程(火炎工程)を説明するための図である。
【0058】
上述のように構成された押釦スイッチ用部材1Cの製造方法の概略を以下に説明する。まず、ゴム状弾性体2Cを製造する。ゴム状弾性体2Cは、ゴム状弾性体2Bと同様に、まず本体2C1と押圧突起2C2とが一体化したものを形成する。この段階を経た状態を図5(A)に示す。
【0059】
次に、本体2C1の上面(図5(B)の上側の平面)に装飾部3C1を形成する。装飾部3C1は、インクベースである商品名「シルマーク」(信越化学工業株式会社製)を100質量部に白色顔料20質量部を加えたものからなる。そして、装飾部3C1を本体2C1の上面にスクリーン印刷法によって印刷し、200℃で60分間加熱して硬化・固着させる。
【0060】
その後、珪素酸化物層2C4を、本体2C1と押圧突起2C2とが一体化した成形体の上面(図5(C)における上側の面)に、押釦スイッチ用部材1Aにおける珪素酸化物層2A4と同じ条件で形成する。
【0061】
その後、本体2C1を、個々のゴム状弾性体2Cに必要な単位に刃冶具により切断し、個々のゴム状弾性体2Cを得る。
【0062】
その後、図5(D)に示すように、ゴム状弾性体2Cの上面(図5(D)における上側の面)に、ウレタン系樹脂塗料(商品名:ダイプラコート、大日精化工業株式会社製)である非シリコーン系有機塗料を、乾燥後に50μmの膜厚となるようにエアスプレーで塗布し、150℃で40分間乾燥させ、硬化し、塗膜を得る。この塗膜がコーティング層3Cである。これで、押釦スイッチ用部材1Cが完成する。
【0063】
(押釦スイッチ用部材1Dの製造方法)
押釦スイッチ用部材1Dは、キートップ3Dにガラス製のものを用い、ゴム状弾性体2Dにウレタン系熱可塑性エラストマーの射出成形品を用い、キートップ3Dに対して押釦スイッチ用部材1A,1B,1Cと同様の火炎工程を行う以外は、押釦スイッチ用部材1Bの製造法と同様に製造される。すなわち図4(H)から図4(K)に示す工程は、押釦スイッチ用部材1Dについても行う。
【0064】
(本発明の実施形態による主な効果)
本発明の実施形態に係る押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dは、火炎工程によって珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成すると、各珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4中に含まれる珪素酸化物粒子による凹凸が形成される。このため、キートップ3A,3B,3Dおよびコーティング層3Cとゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dの接着面との間の接着面積が大きくなる。珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4によるアンカー効果により、キートップ3A,3B,3Dおよびコーティング層3Cとゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dとの接着力が高まる。さらに、火炎工程によって、本体2A1,2B1,2C1の表面が火炎処理層2A5等へと変質するので、珪素酸化物粒子とゴム状弾性体2A,2B,2C,2Dとの接着力がより高まる。これによって、キートップ3A,3B,3Dおよびコーティング層3Cと本体2A1,2B1,2C1,2D1との接着性が良好となる。また、火炎工程によって本体2A1,2B1,2C1、又はキートップ3Dの表面の異物または汚れ等の、接着を阻害する物質を除去できる。さらに、火炎工程によって本体2A1,2B1,2C1の表面に、接着に寄与するOH基またはCOOH基等の極性基を導入することができる。
【0065】
また、火炎工程は、従来行っていたプラズマ処理またはプライマー処理等とは異なり、処理効果の持続性または安定性に優れ、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの変色を生じさせず、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの硬度が変化させず、膨潤等を生じさせない。また、プライマー処理に伴って従来から行われていた加熱処理工程を省略することができる。さらに、火炎工程によって得られる珪素酸化物粒子は粒径が小さいため、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの透光性が損なわれない。
【0066】
また、火炎工程によって珪素酸化物層2A4,2B4,2C4を形成することで、珪素酸化物粒子表面に存在する水酸基が大気中の水分を吸収し、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの表面電位を0に近づけ、製造工程上、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの表面に異物が付きにくくなる。また、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4の形成後、摩擦を加えても表面電位が大きく変化し難い。さらに、火炎工程によって珪素酸化物層2A4,2B4,2C4を形成することで、その表面における表面摩擦係数が小さくなる。このため、製造工程上、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの表面に異物が付きにくくなる。また、押釦スイッチ用部材1A,1B,1Cは、ゴム状弾性体にシリコーンゴムを採用しているため、ゴム状弾性体2A,2B,2Cの耐久性が良好である。
【0067】
また、火炎工程によって、燃料に含まれる珪素化合物が珪素酸化物粒子に変化させ、その珪素酸化物粒子を本体2A1,2B1,2C1に付着させることができる。このため、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4の形成が容易である。また、珪素酸化物粒子と火炎処理層2A5等とが混在した層を形成することにより、珪素酸化物粒子が本体2A1,2B1,2C1の接着面に強固に固定される。
【0068】
(他の実施形態)
上述した本実施の形態に係る押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dおよびそれらの製造法は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、以下のように種々変形実施が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態では珪素酸化物粒子を主として有する珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成しているが、珪素化合物の熱分解と酸化物により生成する珪素酸化物以外の物質を含む層であっても良い。また、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4は、火炎工程によって形成されているが、他の手段によって形成されても良い。さらに、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4は、本体2A1,2B1,2C1の全面または上面、若しくはキートップ3Dに形成されているが、本体2A1,2B1,2C1、若しくはキートップ3Dの全面または下面において部分的に(例えば、点在させて)形成されていても良い。また火炎工程は、本体2A1,2B1,2C1とキートップ3A,3B,3Cの双方、若しくはキートップ3Dと本体2D1の双方に対して行うこととしても良い。
【0070】
また、上記実施の形態の火炎工程に用いる燃料は、エアーを80リットル/分、LPガスを3リットル/分、添加剤としてのヘキサメチルジシロキサン98mol%とエトキシメチルシラン2mol%の混合溶液を0.3g/分で供給するための燃料であるが、他の混合比率の混合溶媒とし、他の添加剤を追加または一部削除し、または、LPガス以外の可燃性ガスを使用しても良い。また、燃料の供給速度を変えても良い。
【0071】
また、火炎照射の条件は、バーナーの開口部とゴム状弾性体の表面との距離を100mmとし、バーナーがゴム状弾性体の表面を100mm/秒の速度で2回走査する条件としているが、その距離、走査の回数および速度は、適宜変更できる。また、形成する珪素酸化物粒子の粒径を50〜100nm、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4の算術平均粗さをRa22nmとしているが、これらの値は適宜変更できる。さらに、走査は、必須ではないため省略することができる。
【0072】
また、本実施形態では、押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dについて説明しているが、これら以外の構成の押釦スイッチ用部材に、珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成し、その形成に火炎工程を行うこととしても良いことは言うまでもない。さらに、押釦スイッチ用部材1A,1B,1C,1Dの説明に際し、スイッチに相当する部材について図示しているが、複数のスイッチのスイッチ間に存在するスイッチ機能を有さない部材等にも、本実施形態に係る珪素酸化物層2A4,2B4,2C4,2D4を形成し、その形成に火炎工程を行うこととしても良い。さらに、本実施形態ではゴム状弾性体へ火炎工程を行っているが、キートップ本体3A1,3B1へ火炎工程を行うこととしても良い。特に、キートップがセラミック、ガラスまたは金属からなるものは、樹脂またはゴム状弾性体に比べて耐熱性が高いため、火炎工程の火炎照射処理条件の範囲を広くすることができ、効果的な条件を決定しやすくなる。
【実施例】
【0073】
(試験に供した押釦スイッチ用部材)
上述の実施の形態において、図2および図3に基づいて説明した製造方法を用いて、複数種類の押釦スイッチ用部材(1Aとする)を製造した。各押釦スイッチ1Aの製造方法にて変化させた点は、火炎工程である。バーナー走査速度(mm/s)を50〜500mm/sの範囲で、バーナーからゴム状弾性体までの距離を20〜150mmの範囲でそれぞれ変化させた。また、火炎工程を行わず、比較例1の押釦スイッチ用部材も製造した(図7を参照)。
【0074】
(接着強度試験)
図6は、実施例1〜10(それぞれ、試料名A〜J)および比較例1の順に接着強度を説明するための図である。押釦スイッチ用部材1Aが平面上に載置され、その平面から突き出た押さえ冶具13により押釦スイッチ用部材1Aの本体2A1を平面に固定する。次に、キートップ本体3A1の上側の部分を引き上げ部材14で強く挟持し、矢印方向(上方)へと持ち上げる。この試験により、キートップ3Aがゴム状弾性体2Aから引き剥がされた際の引っ張り強度(kg)を測定した。
【0075】
図7および図8に、試験結果を示す。この試験は、各押釦スイッチ用部材1Aの製造時の火炎工程におけるバーナーの走査速度およびバーナーの燃料放出口から火炎照射を行う本体2A1部分までの距離を変化させたときの特性を調べるものである。図7に示す「接着性」の項目における「◎」は、引っ張り強度が2kg以上であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が本体2A1部分であることを意味し、「○」は、引っ張り強度が1kg以上2kg未満であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が接着剤層4Aの部分であることを意味し、「△」は、引っ張り強度が0.5kg以上1kg未満であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が接着剤層4Aの部分であることを意味し、「×」は、引っ張り強度が0.5kg未満であってキートップ3Aがゴム状弾性体2Aから離れた部分が接着剤層4Aの部分であることを意味する。
【0076】
図7に示すように、火炎工程を省略した試料名「Blank」(比較例1)は、接着性が「×」で、それ以外の火炎工程を行った試料(A〜J)は、いずれも接着性が「△」「○」または「◎」であった。これは、珪素酸化物層2A4の存在によってゴム状弾性体2Aの表面積の増加、および本体2A1の表面が火炎処理層2A5へと変質し、接着性が向上したためと考えられる。なお、図7の試料EおよびFの備考欄には「燃える」と記載している。これは、火炎工程によって試料が熱により形状、寸法または外観が変化し、製品としての品位を損なった状態となったことを意味し、接着性能とは別の視点から試料を評価したものである。
【0077】
また、図8には、バーナー走査速度とバーナーからの距離との関係における接着性の評価結果を示す。図7に記載した試料に相当する条件のところには、その試料名(A〜Jのいずれか)を併せて記載している。また、「燃」の記載があるのは、火炎工程中に試料側から炎の発生が認められたことを意味する。
【0078】
図8に示すように、バーナー走査速度が50mm/秒以上100mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を50mm以上120mm以下とすると、接着性が「○」または「◎」となった。また、バーナー走査速度が100mm/秒以上300mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を20mm以上120mm以下とし、バーナー走査速度が300mm/秒以上400mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を20mm以上100mm以下とし、バーナー走査速度が400mm/秒以上500mm/秒未満の場合は、バーナーからの距離を20mm以上80mm以下とするのが好ましいことがわかった。この傾向は、バーナーへの燃料の供給する速度、バーナーの各寸法等の諸条件を変更した場合にも概ねあてはまる。
【0079】
バーナー走査速度を500mm/秒未満とすると、火炎とゴム状弾性体2Aとの接触が安定するため、火炎照射の良好な効果が得られやすいことがわかった。また、バーナー走査速度を50mm/秒以上とすることで、ゴム状弾性体2Aが燃えるのを抑制できることがわかった。
【0080】
図9に試料A、図10に試料B、図11に試料C、図12に試料Dの火炎工程後の火炎照射部分、図13に試料Blankの本体2A1の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率40000倍)を、それぞれ示す。本体2A1の表面に付着している粒子または粒子群は、珪素酸化物である。
【0081】
試料B、試料C、および試料Dは、珪素酸化物粒子がゴム状弾性体2Aの接着面に点在していることがわかる。また、試料Aは、珪素酸化物粒子の層がゴム状弾性体2Aの接着面に存在していることがわかる。また、試料B、試料C、および試料Dの写真から、試料A〜Jの各珪素酸化物粒子は、その一部が図3に示す火炎処理層または本体2A1に埋設されていることがわかる。また、試料B、試料C、および試料Dの写真から、珪素酸化物粒子と火炎処理層とが混在した層が形成されていることがわかる。このことから、試料Aについても、珪素酸化物粒子と火炎処理層とが混在した層が形成されていると考えられる。
【0082】
(表面粗さについての検討)
図7に示すように、試料Cを除く各試料について、接着剤層4Aを形成する前に珪素酸化物層2A4の表面粗さを測定した。図中の「Rms」は、珪素酸化物層2A4の高さの標準偏差、「Ra」は珪素酸化物層2A4の算術平均粗さ、「Rmax」は、珪素酸化物層2A4の最大高さと最小高さの差を示している。これらの測定には、市販の原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。各試料については、2箇所の測定箇所にて測定を行っている。
【0083】
図7からわかるように、Raが概ね22nm以上37nm以下で良好な接着性「○」または「◎」が得られており、Raが概ね32nm以上37nmでより良好な範囲の接着性「◎」が得られることがわかった。なお、Raが22nm以上であると、接着剤層4Aとの接触面積を十分に得ることができ、良好な接着強度を得ることができると考えられる。
【0084】
(珪素酸化物粒子の粒子径についての検討)
図7に示すように、各試料について、接着剤層4Aを形成する前に珪素酸化物層2A4を構成する珪素酸化物粒子の粒子径を測定した。この測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる写真を用いて目視によって行った。
【0085】
図7からわかるように、珪素酸化物粒子の粒子径が50nm以上400nm以下で良好な接着性「○」または「◎」が得られ、また、50nm以上120nmでより良好な範囲の接着性「◎」が得られた。なお、珪素酸化物粒子の粒子径が400nmを超えても、接着剤層4Aとの接触面積増加効果による接着性の向上は小さいことがわかった。また、珪素酸化物粒子の粒子径を400nm以下とするとゴム状弾性体2Aの透光性も良好となると考えられる。
【0086】
(シリコーンゴムの硬度変化についての検討)
火炎工程の前後のゴム状弾性体2Aの火炎照射面の硬度試験の結果を図14に示す。この試験は、シリコーンゴムコンパウンド(商品名:HG−060−U、信越化学工業株式会社製)100質量部に架橋剤(信越化学工業(株)製、X93―1220)0.5質量部を添加したシリコーンゴム組成物を金型内に挿入し、成形温度180℃、圧力200kg/cm2、成形時間7分の条件で圧縮成形して、5cm×5cm×1mmのシート体としたもの(以下、第1のシリコーンゴム片という)を用い、図7に示す試料名A,B,C,Dと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例として、表面にプライマーを塗布したものについて行った。プライマーの配合液は、信越化学工業株式会社製の商品名「KBP40」を50質量部とトルエンを50質量部混合したものである。そして、この配合液を1.5mg/cm2塗布後、150℃で40分乾燥させることでプライマー処理を行った。硬度は、Wallace社製の商品名「IRHDマイクロ硬さ計 H12」を用いて測定した。
【0087】
図14に、その測定結果を示す。比較例のようにプライマー処理を行った場合には、本体2A1の硬度は高くなり、試料A,B,C,Dに相当するもののようにプライマー処理を行わない場合は、硬度の変化が殆ど無いことがわかった。なお、本体2A1,2B1,2C1を第1のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても、試料A,B,C,Dに相当するものと同様の結果が得られた。
【0088】
(ゴム状弾性体2Aの色調変化についての検討)
図15に、火炎工程の前後のゴム状弾性体2Aの火炎照射面の色調変化試験の結果を示した。この試験は、第1のシリコーンゴム片を用い、図7に示す試料名A,B,C,Dと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例として、本体2A1の表面にプライマーを塗布したものについて行った。プライマーの配合液および処理は、上述の図14に示す比較例と同じものを用い、同一の条件で行った。色調変化の測定は、ミノルタカメラ社製の商品名「CR−241」の色彩色差計を用いて変化の割合ΔEを求め比較した。
【0089】
図15に、測定結果を示す。比較例のようにプライマー処理を行っている場合には、色調は大きく変化し、試料A,B,C,Dに相当するもののようにプライマー処理を行わない場合は、色調の変化は殆ど無いことがわかる。なお、本体2A1,2B1,2C1を第1のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても試料A,B,C,Dに相当するものと同様の結果が得られた。
【0090】
(基材表面電位変化についての検討)
図17に、火炎工程の前後の本体2A1の表面電位変化試験の結果を示す。この試験は、第2のシリコーンゴム片(第1のシリコーンゴム片のシリコーンゴムコンパウンドを商品名:HG−070L−U、信越化学工業株式会社製のものとした以外は第1のシリコーンゴム片と同条件で作成したシリコーンゴム片)を用い、図7に示す試料名Aと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例2として、本体2A1の表面にコロナ処理を施したもの、ならびに比較例3として本体2A1の表面に何ら処理を施さないものについて行った。
【0091】
また、表面電位の測定時期は、図16(A)に示すように、表面処理(火炎照射またはコロナ処理)の前、図16(B)に示す表面処理を行った後(図16(C))、図16(D)に示すように製版15を本体2A1の上に固定し、製版15の表面をスキージ16によって擦りつけ、本体2A1の表面に摩擦を付与した後(図16(E))の3回の時期とした。なお、表面電位の測定の際および摩擦を付与する際にはシリコーンゴム片2をアルミ製の冶具17に載せた。
【0092】
コロナ処理は、Arcotec社製商品名「HF−CORONA Treatment Unit 90444」を用い、出力0.3kw、処理速度0.5m/分の条件で行った。また、表面電位の測定には、春日電機株式会社製の商品名「KSD−0101」のデジタル定電位測定器を用いた。
【0093】
図17に測定結果を示す。比較例2および比較例3は、表面処理前よりも摩擦後の表面電位が低くなり、その変化が大きいことがわかる。一方、試料Aに相当するものの場合は、表面処理前と摩擦後の表面電位は等しく、その変化が小さいことがわかる。表面電位の変化が小さいと、製造工程等において、本体2A1の表面に異物が付きにくい。また、表面電位が小さいと、本体2A1の表面が帯電し難いため、異物を寄せ付け難く異物による不良が減少する。なお、本体2A1,2B1,2C1,2D1を第2のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても試料Aに相当するものと同様の結果が得られた。
【0094】
(基材表面摩擦係数についての検討)
図18に、火炎工程の後の本体2A1の表面摩擦係数試験の結果を示す。この試験は、第3のシリコーンゴム片(第1のシリコーンゴム片のシリコーンゴムコンパウンドを商品名:KE1978−AおよびKE1978−B、信越化学工業株式会社製のものとした以外は第1のシリコーンゴム片と同条件で作成したシリコーンゴム片)を用い、図7に示す試料名A,B,C,Dと同じ条件で火炎工程を行ったもの、および比較例1として本体2A1の表面に何ら処理を施さないものについて行った。
【0095】
また、この試験は、JIS K 7125に準拠して行った。具体的には、相手材に厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名:SLA、帝人株式会社製)を用い、100mm/分で摩擦させて、静摩擦係数および動摩擦係数をそれぞれ2回測定して測定値1と測定値2の平均値を算出した。測定器には、株式会社東洋精機製作所製のTR型のものを用いた。
【0096】
図18に示すように、比較例1は、摩擦係数が大きく、試料A,B,C,Dは、摩擦係数が小さいことがわかる。摩擦係数が小さいと、製造工程等において、本体2A1の表面に異物が付きにくい。なお、本体2A1,2B1,2C1を第3のシリコーンゴム片に代えて試験対象としても試料A,B,C,Dに相当するものと同様の結果が得られた。
【0097】
(ゴム状弾性体のゴム硬さについての検討)
ゴム状弾性体のJIS硬度について、形状安定性およびユーザの押圧感触(クリック感等)の2点の観点から検討し試験した。JIS硬度の測定は、JIS K 6253またはJIS K 7311に準拠して行った。ゴム状弾性体の試料として、図19に示すようにJIS硬度が20A乃至72Dのものを用意した。なお、JIS硬度のタイプAとタイプDは、一部重複して記載できるものがあるため、その一部については両タイプのJIS硬度を示している。また、図19には、各試料の形状安定性、押圧感触、成分、品名(メーカおよび商品名)を示している。各試料の形状安定性、押圧感触は、試験結果としてそれぞれ「○」または「×」で示している。形状安定性が「×」のものは柔らか過ぎて寸法精度を維持できず、形状安定性が「○」のものは軟らか過ぎず形状が安定し、寸法精度を維持するのが容易だった。また、押圧感触が「×」のものは硬過ぎてユーザの押圧感触を得ることができなかったのに対し、押圧感触が「○」のものは硬過ぎず、ユーザの押圧感触を得ることができた。以上のように、形状安定性およびユーザの押圧感触を総合判断すると、ゴム状弾性体は、JIS硬度の値が30A以上60D以下のものが好適であることがわかった。なお、本体2A1,2B1,2C1,2D1は、好適な形状安定性およびユーザの押圧感触が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係る押釦スイッチ用部材の構成を示す図である。
【図2】図1(A)に示す押釦スイッチ用部材の製造工程を示す図である。
【図3】図2(F)に示す珪素酸化物層を形成する火炎工程を説明するための図である。
【図4】図1(B)に示す押釦スイッチ用部材の製造工程を示す図である。
【図5】図1(C)に示す押釦スイッチ用部材の製造工程について、(A)から(D)へと進行する際の各状態を縦断面図として示す図である。
【図6】押釦スイッチ用部材の接着強度試験の状態を示す図である。
【図7】押釦スイッチ用部材の接着強度試験の結果を示す図である。
【図8】押釦スイッチ用部材の接着強度試験の結果を示す図である。
【図9】図7に示す試料Aの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図10】図7に示す試料Bの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図11】図7に示す試料Cの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図12】図7に示す試料Dの火炎工程後の火炎照射部分の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図13】図7に示す試料Blankの本体の表面の電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図14】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の火炎照射面の硬度試験の結果を示す図である。
【図15】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の火炎照射面の色調変化試験の結果を示す図である。
【図16】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の表面電位変化試験の表面電位の測定時期を説明するための図である。
【図17】火炎工程の前後のシリコーンゴム片の表面電位変化試験の結果を示す図である。
【図18】火炎工程の後のシリコーンゴム片の表面摩擦係数試験の結果を示す図である。
【図19】ゴム状弾性体のJIS硬度に対する形状安定性および押圧感触の試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1A,1B,1C,1D 押釦スイッチ用部材
2A,2B,2C,2D ゴム状弾性体(シリコーンゴム、ウレタン系エラストマー等)
2A4,2B4,2C4,2D4 珪素酸化物層(キートップの接着面および/またはゴム状弾性体の接着面、珪素酸化物粒子を含む層)
3A,3B,3D キートップ
3C コーティング層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップ若しくはコーティング層と、そのキートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材において、
上記キートップ若しくは上記コーティング層とゴム弾性体との接着面間に、珪素酸化物粒子を含む層を介在させていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記ゴム状弾性体は、JIS硬度の値が30A以上60D以下のものであることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記珪素酸化物粒子を含む層は、火炎照射処理により形成された火炎処理層を含むことを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記珪素酸化物粒子の粒径は、50nm以上400nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記珪素酸化物粒子を含む層の表面の原子間力顕微鏡により測定される算術平均粗さは、22nm以上37nm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
キートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材の製造法において、
上記キートップ若しくは上記コーティング層を上記ゴム状弾性体とを貼付する前に、上記キートップの接着面および/または上記ゴム状弾性体の接着面に火炎照射処理を行う火炎工程を有し、
上記火炎工程では、火炎照射用の燃料として珪素化合物を含ませたものを用いることを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造法。
【請求項7】
前記火炎工程は、前記珪素化合物を燃焼させ、火炎を放出する火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面とを相対的に移動させて、前記ゴム状弾性体に珪素酸化物粒子を含む層を、その移動方向に形成する工程であり、
その移動の速度が50mm/秒以上100mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を50mm以上120mm以下とし、上記移動速度が100mm/秒以上300mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上120mm以下とし、上記移動速度が300mm/秒以上400mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上100mm以下とし、上記移動速度が400mm/秒以上500mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上80mm以下とすることを特徴とする請求項6記載の押釦スイッチ用部材の製造法。
【請求項1】
キートップ若しくはコーティング層と、そのキートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材において、
上記キートップ若しくは上記コーティング層とゴム弾性体との接着面間に、珪素酸化物粒子を含む層を介在させていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記ゴム状弾性体は、JIS硬度の値が30A以上60D以下のものであることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記珪素酸化物粒子を含む層は、火炎照射処理により形成された火炎処理層を含むことを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記珪素酸化物粒子の粒径は、50nm以上400nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記珪素酸化物粒子を含む層の表面の原子間力顕微鏡により測定される算術平均粗さは、22nm以上37nm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
キートップ若しくはコーティング層を配置するためのゴム状弾性体とを貼付して成る押釦スイッチ用部材の製造法において、
上記キートップ若しくは上記コーティング層を上記ゴム状弾性体とを貼付する前に、上記キートップの接着面および/または上記ゴム状弾性体の接着面に火炎照射処理を行う火炎工程を有し、
上記火炎工程では、火炎照射用の燃料として珪素化合物を含ませたものを用いることを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造法。
【請求項7】
前記火炎工程は、前記珪素化合物を燃焼させ、火炎を放出する火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面とを相対的に移動させて、前記ゴム状弾性体に珪素酸化物粒子を含む層を、その移動方向に形成する工程であり、
その移動の速度が50mm/秒以上100mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を50mm以上120mm以下とし、上記移動速度が100mm/秒以上300mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上120mm以下とし、上記移動速度が300mm/秒以上400mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上100mm以下とし、上記移動速度が400mm/秒以上500mm/秒未満の場合は、上記火炎放出口と前記ゴム状弾性体側の接着面との距離を20mm以上80mm以下とすることを特徴とする請求項6記載の押釦スイッチ用部材の製造法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−218168(P2009−218168A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62998(P2008−62998)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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